以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態)
ティシューを含む衛生薄葉紙の触感の定量評価には人による官能評価が用いられることがある。しかし、官能評価は被験者の属性やその時の心理状態といった内的因子に左右されるため、不安定性が存在する。不安定要素を小さくするために、官能評価には多くの被験者を用いなければならないが、調査のために長い時間が必要となる。このため、物理量を用いて触感を定量的に評価することが望ましい。
図1は、実施形態の衛生薄葉紙の触感評価方法を示すフローチャートである。図2は、評価モデル作成ステップを示すフローチャートである。図3は、評価ステップを示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の衛生薄葉紙の触感評価方法は、評価モデル作成ステップS1と、評価ステップS2と、を含む。
図2に示すように、評価モデル作成ステップS1においては、衛生薄葉紙のサンプルに対する官能評価実験が行われる(官能評価実験ステップS11)。官能評価実験は、人の感覚を数値的に表したデータを得ることを目的とする。
図4は、官能評価実験に使用したサンプルを示す図である。図5は、官能評価実験に使用したサンプルの設置状況を示す図である。図6は、官能評価実験で用意された評価語を示す図である。図7は、評価語選定実験の結果を示す図である。図8は、評価語選定実験の結果を示す図である。図9は、官能評価実験の結果をセマンティック・プロフィールとして示す図である。
官能評価実験ステップS11においては、まず触り方確認実験が行われる。触り方確認実験は、被験者の衛生薄葉紙の触り方の特徴を把握するための実験である。触り方確認実験の結果に基づいて、官能評価実験時の衛生薄葉紙の触り方が決定される。
以下において、触り方確認実験の一例を示す。触り方確認実験においては、被験者4人が図4に示す10種類の衛生薄葉紙のサンプルを触った。被験者は、初めに卓上に置かれた10種類全てのサンプルを箱から取り出して触った後、1種類ずつサンプルを新たに箱から取り出して触った。箱の設置順は、ランダムである。被験者が評価するサンプルの順番は、指定されない。箱による触感のイメージを持たせないために、実験で用いるサンプルは、全て図5に示す透明の箱に入れられる。
触り方確認実験では、被験者4人全員がサンプルを片手の親指、人差し指及び中指、又は両手の親指、人差し指及び中指で挟むように擦り合わせた。1枚ずつサンプルを取り出し触る実験では、被験者の触り方に差が見られなかった。このため、以降に行った評価語選定実験、及び官能評価実験では触り方は、指定されなかった。なお、触り方確認実験の結果に応じては、評価語選定実験、及び官能評価実験での触り方が指定されてもよい。
官能評価実験ステップS11においては、触り方確認実験の後、評価語選定実験が行われる。評価語選定実験は、サンプルの触感について評価可能な評価語を選定することを目的とする。
以下において、評価語選定実験の一例を示す。サンプルの触感を表現すると思われる複数の評価語が用意された。被験者12人に対して「この評価語は様々なティシューの触感の違いを評価できるか」という質問がされた。被験者は、用意された全てのサンプルを触った後、「評価できる」又は「評価できない」の2択で答えた。用意された評価語は、図6に示す33語である。33語のうち22語が低次触感に相当する語である。33語のうち11語が高次触感に相当する語である。また、サンプルとしては、図4に示す10種類全てが用いられた。
図7及び図8に示すように、被験者の66.7%以上(12人中8人以上)が「評価できる」と回答した低次触感に相当する語は、15語であった。被験者の66.7%以上が「評価できる」と回答した高次触感に相当する語は、6語であった。被験者の66.7%以上が「評価できる」と回答した21語は、衛生薄葉紙の触感を表現するために適する語であると判断された。評価語選定実験の後の官能評価実験および分析においては、上述した21語の評価語が用いられた。
官能評価実験ステップS11においては、評価語選定実験の後、官能評価実験が行われる。以下において、官能評価実験の一例を示す。触り方確認実験と同様に、被験者は、初めに卓上に置かれた10種類全てのサンプルを箱から取り出して触った後、1種類ずつサンプルを新たに箱から取り出して触りながら評価した。箱の設置順は、ランダムである。被験者が評価するサンプルの順番は、指定されない。箱による触感のイメージを持たせないために、実験で用いるサンプルは、全て図5に示す透明の箱に入れられる。用いられた評価方法は、SD(Semantic differential)法である。SD法は、言葉などの意味を測定でき、被験者それぞれの好み又は経験に基づき評価する手法である。
官能評価実験の被験者は、41人であった。被験者のうち21人が男性であり、20人が女性であった。被験者の年齢は、18歳以上27歳以下であった。被験者は、学生である。官能評価実験は、室温が25.0±1.0℃であり且つ湿度が53.8±5.2%RHの環境下で行われた。SD法による評価尺度は、7段階の単極尺度が用いられた。7段階の単極尺度は、互いに反対の意味を有する一対の形容詞で両極が構成される評定尺度を7段階に刻んだ尺度である。例えば、「ざらざらする」という評価語については、「ざらざらする」と「ざらざらしない」が両極に設定される。「ざらざらする」と「ざらざらしない」が両極である評価尺度が、7段階に刻まれる。「ざらざらする」を1とする。「ざらざらしない」を7とする。被験者は、1から7の数値を回答する。用いられる評価語は、評価語選定実験で選定された21語の評価語である。
図9は、官能評価実験の結果を示す。図9において、1から10の番号は、図4に示すサンプル番号である。セマンティック・プロフィールを用いることによって、評価の傾向が類似しているサンプル、又は各評価語に対する評価値の差を確認することが可能である。
図2に示すように、官能評価実験ステップS11の後、官能評価実験の結果を用いた主成分分析によって、触感に関する主成分が抽出される(主成分抽出ステップS12)。主成分分析とは、多変量データの中から相互に相関が強い特性の合成変量を主成分として抽出し、複数の特性値が持つ情報をより少ない数の主成分へと集約する手法である。p個の変数についてn個のデータを測定した時の算出過程が以下に記載される。主成分分析においては逆行列の計算が必要になるため、変数の数よりデータ数が多い必要がある。すなわち、n>pである必要がある。主成分Zは、式(1)のように定義できる。
主成分分析の分散Vは、式(2)で表される。
ラグランジュの未定乗数法を用いて、Vを最大にする固有ベクトル[a1,a2,…,ap]が求められる。すなわち、式(3)次の固有方程式を解くことによって、λ1,λ2,…,λPが求められる。1つの固有値λi(i =1,2,…,P)に対する固有ベクトル[ai1,ai2,…,aip]は、連立方程式(4)を解くことによって算出される。
よって、t番目のサンプルのデータの主成分得点は、式(5)で表される。
さらに、主成分軸の説明力の大きさを表す指標として寄与率ρがある。全体の固有値に対するj番目の主成分の固有値の比率を、寄与率ρjとする。寄与率ρjは、式(6)で定義される。各主成分における寄与率の任意の主成分数までの合計は、累積寄与率と呼ばれる。累積寄与率は、主成分によってどの程度全体の構造を反映しているかを表す指標となる。
以下において、主成分分析の一例を示す。主成分分析において、バリマックス回転が用いられた。固有値が大きい主成分ほど、その主成分の説明力が大きいことを意味する。このため、抽出する主成分数を決定するための条件として、第1条件が設定された。第1条件は、各主成分の固有値が1以上であること、である。さらに、バリマックス回転を用いたことによって、抽出された主成分間に直交性がある(各主成分が独立している)と言える。そこで、各評価語が独立した主成分に属することから、第2条件及び第3条件が設定された。第2条件は、各評価語の主成分に対する最大の主成分負荷量の絶対値が0.600以上であること、である。第3条件は、各評価語の最大の主成分負荷量をもつ主成分以外の主成分に対する主成分負荷量の絶対値が0.300未満であること、である。第1条件の下で算出された結果に対して、第2条件及び第3条件を満たさない評価語が除外され、再度主成分分析が行われた。評価語の削除は,第2条件及び第3条件を満たすまで繰り返された。
図10は、低次触感における主成分分析の結果を示す図である。図11は、低次触感における主成分分析の結果を示す図である。図12は、低次触感における主成分分析の最終結果を示す図である。図13は、高次触感における主成分分析の最終結果を示す図である。図14は、低次触感と高次触感との関係を示す図である。図15は、各説明変数の調整済み寄与率及び有意確率を示す図である。図16は、各説明変数の調整済み寄与率及び有意確率を示す図である。
図10は、低次触感を表す評価語に対して主成分分析を行った結果である。上述した第1条件、第2条件及び第3条件に基づき、図10において下線を付した「ごわごわする」、「ふっくらする」、「硬い」、「かさかさする」、「しなやかである」及び「厚みのある」の6語が除外された。残った評価語に対して再度主成分分析が行われた。図11は、再度行われた主成分分析の結果である。図11において下線を付した「ざらざらする」が第3条件を満たさないため除外された。残った評価語に対して再度主成分分析が行われた。図12は、再度行われた主成分分析の結果である。いずれの評価語も第1条件、第2条件及び第3条件を満たした。このため、図12に示す結果を用いて、主成分負荷量の値が大きい成分同士がグルーピングされた。「すべすべする」、「つるつるする」、「滑らかである」、「さらさらする」及び「きめが細かい」を第1のグループとした。第1のグループは、「摩擦感」と名付けられた。第1のグループ(摩擦感)は、触感に関する主成分の1つである。「ふんわりする」、「柔らかい」及び「しっとりする」を第2のグループとした。第2のグループは、「柔らか感」と名付けられた。第2のグループ(柔らか感)は、触感に関する主成分の1つである。「しっかりする」を第3のグループとした。第3のグループは、「剛性感」と名付けられた。第3のグループ(剛性感)は、触感に関する主成分の1つである。以上から、「摩擦感」、「柔らか感」及び「剛性感」によって衛生薄葉紙の低次触感の71.600%を説明できることが示された。
低次触感と同様に、高次触感について主成分分析が行われた。図13は、高次触感を表す評価語に対して主成分分析を行った結果である。いずれの評価語も、第1条件、第2条件及び第3条件を満たしたため、除外されなかった。この結果、「高級感のある」、「触り心地が良い」、「特別感のある」、「安っぽい」、「しっくりくる」及び「親しみのある」の6語で1つのグループが形成された。6語で形成される1つのグループは、「高級感」と名付けられた。グループ(高級感)は、触感に関する主成分の1つである。「高級感」によって衛生薄葉紙の高次触感の65.844%を説明できることが示された。
「摩擦感」、「柔らか感」及び「剛性感」と、「高級感」との関係性を求めるため、重回帰分析が行われた。重回帰分析とは、多変量データに基づき、目的変数yを式(7)のような2つ以上の説明変数xi(i=0,1,2,…)の1次式として表現し、目的変数の予測、又は各説明変数の目的変数に対する影響度分析を行う手法である。
yは目的変数である。x1,…,xpは説明変数である。β0は定数項である。β1,…,βは偏回帰係数である。偏回帰係数βiは最小自乗法によって求められる。βiについて解くと、残差平方和Seは、式(8)で表される。ここで、β0及びβ1は、式(8)を各々で偏微分して0とおいた連立方程式(9)の解である。
連立方程式(9)を変形すると、式(10)となる。
式(10)の第1式の両辺をnで除すると、式(11)が求まる。式(11)は目的変数及び各説明変数の平均値を通る回帰直線である。式(11)をβ0について解き、式(10)の第2式以降に代入し、整理したものを偏差積和Sij,Siy、偏差平方和Siiによって表すと、式(12)となる。ただし、偏差積和Sij,Siyは、式(13)で表される。
偏差積和及び偏差平方和からなる行列式をSとし、逆行列をS−1とすると、S及びS−1は、それぞれ式(14)及び式(15)と表される。
よって、以下の行列式(16)が導出される。
行列式(16)を解くことによって、偏回帰係数βiは、式(17)で表される。偏回帰係数βiには単位があるため、基準化した説明変数xi’を用いた重回帰式は式(18)のように表される。
βi’は、標準偏回帰係数と呼ばれ、単位に無関係な回帰係数である。重回帰分析における全平方和STのうち、導出した重回帰式による回帰平方和で説明できる割合を寄与率という。寄与率は、R2と表される。寄与率R2の定義式は、式(19)である。
寄与率は、重回帰式がどの程度目的変数を説明できているかを示す尺度であり、0から1までの値である。寄与率が1に近いほど、目的変数を説明できていると解釈できる。さらに、回帰式に用いる説明変数が増加するほど寄与率も増加する状態を調整するために、各々を自由度で割った分散比によって得られる寄与率を調整済み寄与率という。調整済み寄与率は、R’2と表される。調整済み寄与率R’2の定義式は、式(20)である。
重回帰分析においては、信頼区間を95%として、ステップワイズ法が用いられた。ステップワイズ法は、重回帰分析をする際の説明変数を選択する手法であり、先に設定した信頼区間を下回ったものを除外し条件を満たすように調整する。目的変数を高次触感(高級感)の主成分得点とし、説明変数を低次触感(摩擦感、柔らか感、剛性感)の主成分得点とした。
ステップワイズ法に基づいて、「摩擦感」及び「柔らか感」が回帰式に投入された。具体的には、まず「摩擦感」、「柔らか感」及び「剛性感」がそれぞれ説明変数として選ばれ、選ばれた説明変数と目的変数である「高級感」との重回帰式が構築される。その結果、「柔らか感」が選択された時の調整済み寄与率R’2が一番高く導出されたため、「柔らか感」が選択される。次に、「柔らか感」に加えて「摩擦感」及び「剛性感」のそれぞれを説明変数として選択した時の重回帰式が構築される。その結果、「剛性感」が加えられた場合よりも、「摩擦感」が加えられた場合に調整済み寄与率R’2が大きくなるため、「摩擦感」が選択される。さらに「剛性感」が加えられた場合には「剛性感」の有意確率pが所定の値を越えてしまうため、「剛性感」は選択されなかった。図14は、「摩擦感」及び「柔らか感」を回帰式に投入した結果を示す。図15は、全体の調整済み寄与率R’2と、有意確率pを示す。図16は、各説明変数の標準偏回帰係数β’と有意確率pを示す。また、回帰式は式(21)である。
ただし、yは高級感の主成分得点である。x1は摩擦感の主成分得点である。x2は、柔らか感の主成分得点である。x1及びx2の係数は、偏回帰係数である。偏回帰係数を標準化した標準偏回帰係数を比較すると、柔らか感の方が摩擦感よりも大きく、高級感に対する影響度が高い成分だといえる。この結果から、摩擦感及び柔らか感を数値的に算出できれば、高級感を推定できるモデルを形成することが可能である。
図2に示すように、主成分抽出ステップS12の後、官能評価実験の結果を用いた主成分分析によって、振動測定装置10を用いて、サンプルとしての衛生薄葉紙が移動する時の振動情報が測定される(振動測定ステップS13)。
図17は、実施形態の振動測定装置の模式図である。図18は、振動測定装置の本体及び直動機構の斜視図である。図19は、直動機構の性能を示す図である。図20は、振動測定装置の固定機構の斜視図である。図21は、衛生薄葉紙を支持した状態における振動測定装置の固定機構の斜視図である。図22は、振動測定装置の挟み機構の斜視図である。図23は、挟み機構のセンサユニットの斜視図である。図24は、挟み機構のセンサユニットの分解斜視図である。図25は、センサユニットの接触子の側面図である。図26は、センサの性能を示す図である。図27は、センサユニットの中板の平面図である。図28は、シリコーンゴムの生成材料を示す図である。図29は、接触子を成形するために用いられる型の斜視図である。図30は、中板が嵌められた状態における型の斜視図である。図31は、挟み機構の挟持ユニットの斜視図である。図32は、挟み機構の挟持ユニットの分解斜視図である。図33は、挟み機構の可動板の動きを説明するための模式図である。図34は、挟み機構の可動板の動きを説明するための模式図である。図35は、振動測定装置によって測定された振動波形を示すグラフである。
図17に示すように、振動測定装置10は、本体20と、直動機構30と、固定機構40と、挟み機構50と、動ひずみ測定器11と、ポジションコントローラ13と、を備える。振動測定装置10においては、固定機構40によって支持されるサンプル100(衛生薄葉紙)を挟み機構50が挟んだ状態で、直動機構30によって挟み機構50が移動させられる。振動測定装置10は、挟み機構50が移動する時にサンプル100に生じる振動を取得できる。
図17に示すように、本体20は、1つの面に凹部有する略直方体状の部材である。本体20は、長手方向が鉛直方向に沿うように配置される。直動機構30は、挟み機構50を直動させるための装置である。直動機構30は、挟み機構50を鉛直方向に沿って移動させる。図18に示すように、直動機構30は、本体20に取り付けられる。直動機構30は、図19に示す性能を有する。直動機構30は、モータ31と、ボールねじ33と、ステージ35と、を備える。モータ31は、本体20に固定されている。モータ31は、例えばステッピングモータである。ボールねじ33は、ねじ軸及びナットを備える。ボールねじ33のねじ軸は、モータ31によって回転する。ボールねじ33のねじ軸が回転すると、ねじ軸に取り付けられたナットが軸方向に移動する。ステージ35は、ボールねじ33のナットに固定される。このため、モータ31が駆動すると、ステージ35が移動する。
固定機構40は、サンプル100を支持するための装置である。図20に示すように、固定機構40は、本体20に取り付けられる。固定機構40は、土台41と、固定バー43と、滑り止め部材45と、を備える。土台41は、本体20に固定される。固定バー43は、土台41に固定部材によって固定される。固定部材は、例えばネジである。土台41及び固定バー43は、例えばアクリルであって、NC加工機を用いて形成される。滑り止め部材45は、固定バー43に取り付けられる。滑り止め部材45は、例えば接着剤によって固定バー43に固定される。滑り止め部材45は、固定バー43のうち土台41に面する表面に配置される。滑り止め部材45は、例えばゴムである。図21に示すように、土台41と固定バー43との間にサンプル100が配置される。固定部材が締め付けられることによって、土台41と滑り止め部材45とによって挟まれる。これにより、サンプル100が固定機構40によって吊り下げられる。
挟み機構50は、固定機構40によって吊り下げられたサンプル100を挟むための装置である。図22に示すように、挟み機構50は、固定板51と、可動板52と、センサユニット53と、挟みユニット54と、ガイド棒55と、弾性部材56と、紐57と、プーリ58と、錘59と、を備える。
図22に示すように、固定板51は、ステージ35に固定される。可動板52は、固定板51と平行に配置される。固定板51と可動板52との間には隙間が設けられる。ガイド棒55は、固定板51に固定され、可動板52を貫通する。ガイド棒55は、軸受を介して可動板52を支持する。すなわち、ガイド棒55が貫通する可動板52の穴には、軸受が設けられる。軸受は、例えばスライドブッシュ(シングル型スライドブッシュ)である。このため、可動板52は、固定板51から離れる方向、又は固定板51に近付く方向に、滑らかに移動できる。すなわち、可動板52は、固定板51に対して平行移動できる。
図22に示すように、センサユニット53は、固定板51に取り付けられる。図23に示すように、センサユニット53は、土台531と、2つの中板533と、接触子535と、振動板537と、センサ539と、を備える。
土台531は、図22に示すように固定板51に固定される。2つの中板533は、例えばネジによって互いに固定される。2つの中板533は、例えばネジによって土台531に固定される。土台531及び中板533は、例えばアルミニウム合金であって、NC加工機を用いて形成される。図27に示すように、中板533は、基部533aと、挟み部533bと、を備える。基部533aは、略U字状である。挟み部533bは、基部533aの内側に配置される。一方の中板533の挟み部533bと、他方の中板533の挟み部533bとの間には、隙間Gが設けられる。隙間Gの大きさは、0.05mm以上0.15mm以下であることが望ましい。例えば本実施形態において、隙間Gの大きさは、0.1mmである。2つの挟み部533bは、略H字を描くように配置される。
接触子535は、サンプル100に接する部材である。接触子535は、例えばシリコーンゴムで形成される。接触子535は、中板533と一体である。図25に示すように、接触子535は、円柱部535aと、固定部535bと、を備える。円柱部535aは、サンプル100に接する半円柱上の部材である。固定部535bは、中板533に接する略直方体状の部材である。固定部535bは、複数の穴535cを備える。穴535cは、中板533の挟み部533bが嵌まる穴である。図25は、水平方向であってステージ35と平行な方向から接触子535を見た図である。図25に示す曲率半径R1は、例えば6mmである。図25に示すL1は、例えば12mmである。図25に示すL2は、例えば42mmである。図25に示すL3は、例えば2mmである。図25に示すL14は、例えば3mmである。図25に示すL5は、例えば2mmである。図25に示すL6は、例えば1mmである。
振動板537は、振動する板である。振動板537は、例えばリン青銅で形成される。振動板537の一部は、接触子535の内部に配置される。振動板537の一部は、図27に示す隙間Gに配置される。振動板537の厚さは、0.05mm以上0.20mm以下であることが望ましい。例えば本実施形態において、振動板537の厚さは、0.1mmである。センサ539は、振動板537に生じる振動を検出する。センサ539は、例えばひずみゲージである。センサ539は、図26に示す性能を有する。センサ539は、振動板537の両面に配置される。センサ539は、例えば接着剤によって振動板537の表面に固定される。
接触子535は、図29に示す型19を用いて成形される。接触子535を成形する時、まずシリコーンゴムの主剤、硬化剤、シンナーを図28に示す配分で混ぜて、混合液を作成する。次に、真空脱泡装置を用いて混合液中の気泡が除去される。次に、混合液が図29に示す型19の半分程度まで流し込まれる。次に、振動板537を挟んだ状態の中板533が、図30に示すように型19に設置される。次に、混合液が中板533の上面に達するまで型19に流し込まれる。次に、再び真空脱泡装置を用いて混合液の気泡が除去される。次に、型19が高温乾燥器に入れることによって、反応が促進される。シリコーンゴムが固まったら、接触子535が中板533と共に型19から取り外される。このように、中板533と接触子535が一体に形成される。
図22に示すように、挟みユニット54は、可動板52に取り付けられる。図31に示すように、挟みユニット54は、土台541と、中板543と、接触子545と、を備える。挟みユニット54は、センサを備えていない。
土台541は、図22に示すように可動板52に固定される。中板543は、例えばネジによって土台541に固定される。土台541及び中板543は、例えばアルミニウム合金であって、NC加工機を用いて形成される。
接触子545は、サンプル100に接する部材である。接触子545は、例えばシリコーンゴムで形成される。接触子545は、中板543と一体である。接触子545は、上述した接触子535と同様の形状を備える。
弾性部材56は、固定板51と可動板52との間に配置される。弾性部材56は、例えばコイルばねである。ガイド棒55が弾性部材56を貫通している。弾性部材56は、接触子535と接触子545とで挟まれるサンプル100に加わる力を調整するために設けられる。
図22に示すように、紐57は、可動板52及び固定板51に架け渡される。プーリ58は、固定板51に固定される。紐57は、プーリ58に巻きかけられ、鉛直方向下方に延びている。錘59は、紐57の端部に取り付けられ、紐57によって吊り下げられる。
図17に示す動ひずみ測定器11は、動ひずみ測定器11は、センサ539のひずみ量を電気信号として取り込み、電圧値として表示する装置である。ポジションコントローラ13は、直動機構30を駆動するための装置である。
以下において、振動測定ステップS13の一例を示す。振動測定ステップS13において、振動を測定する時、まずセンサ539の導線が動ひずみ測定器11に接続される。次に、サンプル100が、図21に示すように、鉛直方向に吊り下がるように固定機構40に固定される。サンプル100を固定機構40に固定する時、サンプル100の中央部にある折れ目が接触子535及び接触子545に接触しないように、サンプルの100位置が調整される。そして、弾性部材56及び可動板52がガイド棒55に通される。その後、可動板52に取り付けられた紐57の先端に錘59が取り付けられる。紐57がプーリ58にかけられる。その後、直動機構30を駆動することによって、振動の測定が開始される。
振動測定ステップS13において、サンプル100は、接触子535と接触子545とによって所定の力で挟まれる。所定の力は、0.05N以上0.12N以下であることが望ましい。例えば本実施形態において、所定の力は、0.1Nである。サンプル100に加わる力を0.1Nにするために、各部材の特性は例えば下記のように設定された。錘59の重量は、0.05kgである。錘59は2つ設けられるので、可動板52には合計0.1kgの荷重が作用する。弾性部材56のばね定数は、1.035N/mmである。接触子535と接触子545とが接触する時の弾性部材56の長さは、30.4mmである。上記の条件において、弾性部材56の自然長が31.0mmである場合に、接触子535と接触子545とで挟まれるサンプル100に加わる力が0.1Nとなる。
振動測定ステップS13において、直動機構30のステージ35は、所定の速度で移動する。所定の速度は、1mm/sec以上8mm/sec以下であることが望ましい。例えば本実施形態において、所定の速度は、5mm/secである。ステージ35は、所定の時間移動させられる。所定の時間は、1秒以上であることが望ましい。例えば本実施形態において、所定の時間は、3秒間である。サンプリング周波数は10kHzである。各サンプル100に対して10回ずつ測定が行われた。図35は、振動測定装置10によって測定された振動波形を示すグラフである。図35に示すグラフは、各サンプル100の1回分の測定結果である。いずれのサンプル100においても、振動が測定されている。
なお、振動測定装置10は、必ずしも上述した構成を備えていなくてもよい。例えば、サンプルを挟む所定の力は、必ずしも錘59及び弾性部材56によって調節されなくてもよく、別の方法で調節されてもよい。また、挟みユニット54は、センサユニット53と同様に振動を検出するためのセンサ等を備えていてもよい。また、挟みユニット54が固定板51に固定され、センサユニット53が可動板52に固定されてもよい。
振動測定装置10の各構成の材料は、必ずしも上述した材料に限定されない。例えば、接触子535及び接触子545の材料は、シリコーンゴムに限定されず、他の材料であってもよい。振動板537の材料は、リン青銅に限定されず、その他の金属であってもよいし、金属以外の材料であってもよい。
図2に示すように、振動測定ステップS13の後、サンプルの振動情報に基づき、周波数ごとの振幅スペクトルが算出される(振幅スペクトル算出ステップS14)。以下において、振幅スペクトル算出ステップS14の一例を示す。振幅スペクトルは、例えば、フーリエ変換によって算出される。
任意の周期信号f(t)は、三角関数の和で表示できる。周期信号は、フーリエ級数展開を行うことで、構成する三角関数に分解できる。これにより、周期信号に含まれる周波数又はスペクトル等の特徴量がわかるようになる。
任意の周期信号f(t)に対し、フーリエ級数展開を行うと、式(22)のように表される。ただし、フーリエ係数a0、an、bnは、それぞれ式(23)、式(24)、式(25)で表される。
周期信号f(t)は、オイラーの公式である式(26)を用いることによって、式(27)のように複素関数で表される。ただし、フーリエ係数gnは、式(28)で表される。
デジタル信号の処理には離散的フーリエ変換(DFT)が使用される。離散信号f[n]を用いると式(29)が成り立つ。F[k]は、f[n]の周波数スペクトルと呼ばれる。
DFTの計算から得られるF[k]は一般的に複素数である。F[k]の実部をRe{F[k]]}とし、F[k]の虚部をIm{F[k]]}とすると、式(30)、式(31)及び式(32)が成り立つ。|F[k]|を振幅スペクトルという。argF[k]を位相スペクトルという。
振幅スペクトル及び位相スペクトルの算出には、N2回の計算が必要になる。高速フーリエ変換(FFT)は、DFTを2点のDFTの組み合わせに分解することによって、計算回数がNlog2N回になるため、計算時間を短縮できる。
振動測定ステップS13で得られた振動情報のうち、直動機構30が駆動した直後の最初の1秒間の情報に対して、数値解析ソフトウェアを用いてFFT処理が行われた。データ点数は8192点である。窓関数にはハミング窓が用いられた。図36は、算出された振幅スペクトルを示す図である。図36において、縦軸は、振幅スペクトル(Amplitude Spectrum)である。
図2に示すように、振幅スペクトル算出ステップS14の後、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき、第1振動刺激値、第2振動刺激値、及び第3振動刺激値が算出される(振動刺激値算出ステップS15)。以下において、振動刺激値算出ステップS15の一例を示す。
図37は、振動検出閾値曲線を示す図である。人が物を触った際に皮膚に加わる機械的刺激を知覚するものは、機械受容器である。機械受容器は、人の触感覚に大きく関与する。機械受容器としては、マイスナー小体、パチニ小体、メルケル触盤及びルフィニ終末が存在する。機械受容器は、機械受容器とそれに連なる神経線維を合わせた受容野の形態と、機械的刺激への神経発火特性の性質とから、速順応I形(FAI)、速順応II形(FAII)、遅順応I形(SAI)及び遅順応II形(SAII)に分類される。受容野の大きさは、FAIとSAIは直径数mm程度と小さい。これに対し、FAIIとSAIIは、大きく、且つ境界が不鮮明である。また、FAIは加えられた刺激の速度成分に対して神経発火する。FAIIは加えられた刺激の加速度成分に対し神経発火する。SAIとSAIIは加えられた機械刺激の変位に対して神経発火する。マイスナー小体がFAIに分類されている。パチニ小体がFAIIに分類されている。メルケル触盤がSAIに分類されている。ルフィニ終末がSAIIに分類されている。
受容野に対して加わった機械的刺激の大きさによって機械受容器が神経発火する。これにより、人は触感を得る。人が検出できる振動の閾値に関する情報として、振動検出閾値曲線がある。図37に示すように、SAIに関しては、1Hz以上100Hz以下付近で周波数を変化させても検出閾値は、あまり変動しない。FAIに関しては、10Hz以上40Hz以下で検出閾値が最小になる。FAIIに関しては、100Hz以上1000Hz以下で検出閾値が最小になる。最低振動検出閾値近似線は、各周波数における最小の振動検出閾値を結んだ線である。図37において、最低振動検出閾値近似線は、太い線で示される。最低振動検出閾値曲線よりも大きい振幅の刺激が加われば、いずれかの受容器が神経発火し、人は触感を認識すると考えられる。また、SAIIの振動検出閾値曲線は、いずれの周波数帯においても他のどの受容器よりも閾値が高く、最低振動検出閾値曲線に影響を与えないため省略されている。
図38は、最低振動検出閾値近似線を示す図である。図37で示す最低振動検出閾値曲線は、図38に示す最低振動検出閾値近似線で表すことができる。最低振動検出閾値近似線の近似式は、式(33)、式(34)、式(35)及び式(36)で定義される。
ただし、SAIは変位のセンサであることから、LSAIの値は、全てのサンプルにおいて0よりも大きくなる必要がある。3Hz以下の周波数において、最小の振幅スペクトルとなるサンプルの値と一致するようにLSAIの値が決定される。
LSAI、LFAI、LFAII、はそれぞれSAI、FAI、FAIIの振動検出閾値近似線である。fは振動刺激の周波数である。また、LFAI,40HzとLFAII,250Hzはそれぞれ40Hz時の閾値、250Hz時の閾値を示す。
図39は、振幅スペクトル及び最低振動検出閾値近似線を示す図である。図39は、最低振動検出閾値近似線と、図36に示すグラフを両対数表記したものと、を示す図である。図39において、最低振動検出閾値近似線を超えた部分が振動刺激値である。振動刺激値Iiは、式(37)、式(38)及び式(39)によって求められる。
Piはピリオドグラムにおけるi番目のデータの振幅スペクトルである。Liは、最低振動検出閾値近似線のi番目の値である。fl及びfhは、各周波数帯の周波数における最小値および最大値である。最低振動検出閾値近似線を示す受容野ごとに分割して、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)が算出される。第1振動刺激値は、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における振動刺激値である。第2振動刺激値は、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における振動刺激値である。第3振動刺激値は、周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における振動刺激値である。
式(37)に周波数ごとの測定された振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とが代入される。値が代入された式(37)と式(38)を用いて、各周波数領域ごとに合計をして振動刺激値が算出される。
図40は、算出された第1振動刺激値、第2振動刺激値、及び第3振動刺激値を示す図である。図40に示すように、サンプル間において、振動刺激値の傾向になっていることが読み取れる。ただし、3Hz以下の周波数において最小の振幅スペクトルを示したものは第6サンプルの測定時であったため、式(33)のconst.の値は0.2272とした。
図2に示すように、振動刺激値算出ステップS15の後、主成分を目的変数とし、第1振動刺激値、第2振動刺激値及び第3振動刺激値を説明変数とした重回帰分析によって、回帰式が導出される(回帰式導出ステップS16)。以下において、回帰式導出ステップS16の一例を示す。
低次触感(摩擦感及び柔らか感)を目的変数とし、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)を説明変数とし、統計解析ソフトウェアを用いて重回帰分析が行われた。分析条件は、信頼区間95%として、ステップワイズ法が用いられた。この条件は以後の全ての重回帰分析に適用された。
図41は、振動刺激値と摩擦感との関係を示す図である。図42は、振動刺激値を用いた重回帰分析の各値を示す図である。摩擦感については、ステップワイズ法の条件下で第3振動刺激値(IFAII)が回帰式に投入された。回帰式の導出過程は、上述した説明変数が高級感の場合と同様である。すなわち、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)がそれぞれ説明変数として選ばれ、選ばれた説明変数と目的変数である摩擦感との重回帰式が構築される。その結果、第3振動刺激値(IFAII)が選択された時の調整済み寄与率R’2が一番高く導出された。図41は、「摩擦感」及び「柔らか感」を回帰式に投入した結果を示す。図42は、調整済み寄与率R’2と有意確率p、及び説明変数の標準偏回帰係数β’と有意確率pを示す。また、回帰式は式(40)である。ただし、yが摩擦感の主成分得点であり、x1をIFAIIの値である。式(40)から、IFAIIが大きいほど摩擦感の主成分得点yが大きくなる。すなわち、IFAIIが大きいほど、摩擦感が増す。
なお、本実施形態の評価モデル作成ステップS1において、振動測定ステップS13、振幅スペクトル算出ステップS14、及び振動刺激値算出ステップS15は、必ずしも主成分抽出ステップS12の後に配置されなくてもよい。振動測定ステップS13、振幅スペクトル算出ステップS14、及び振動刺激値算出ステップS15は、少なくとも回帰式導出ステップS16よりも前に配置されていればよい。
図2に示す評価モデル作成ステップS1によって、評価モデルとしての回帰式が導出される。図1に示すように、評価モデル作成ステップS1の後、評価モデル(回帰式)を用いて衛生薄葉紙の触感が評価される(評価ステップS2)。
図3に示すように、評価ステップS2においては、上述した振動測定装置10を用いて評価対象物としての衛生薄葉紙が移動する時の振動情報が測定される(評価用振動測定ステップS21)。次に、振動刺激値算出ステップS15と同様に、衛生薄葉紙の振動情報に基づき、周波数ごとの振幅スペクトルが算出される(評価用振幅スペクトル算出ステップS22)。次に、振動刺激値算出ステップS15と同様に、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)が算出される(評価用振動刺激値算出ステップS23)。そして、回帰式導出ステップS16で導出された回帰式、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)に基づき、衛生薄葉紙の触感が評価される(触感評価ステップS24)。
以上で説明したように、本実施形態の衛生薄葉紙の触感評価方法は、評価モデルを作成する評価モデル作成ステップS1と、評価モデルを用いて衛生薄葉紙の触感を評価する評価ステップS2と、を含む。評価モデル作成ステップS1は、主成分抽出ステップS12と、振動測定ステップS13と、振幅スペクトル算出ステップS14と、振動刺激値算出ステップS15と、回帰式導出ステップS16と、を含む。主成分抽出ステップS12は、衛生薄葉紙のサンプルに対する官能評価実験の結果を用いた主成分分析によって、触感に関する主成分を抽出する。振動測定ステップS13は、サンプルを挟む接触子535及び振動を検出するためのセンサ539を備える振動測定装置10を用いて、サンプルが移動する時の振動情報を測定する。振幅スペクトル算出ステップS14は、サンプルの振動情報に基づき、周波数ごとの振幅スペクトルを算出する。振動刺激値算出ステップS15は、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における第1振動刺激値(ISAI)、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における第2振動刺激値(IFAI)、及び周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における第3振動刺激値(IFAII)を算出する。回帰式導出ステップS16は、主成分を目的変数とし、第1振動刺激値、第2振動刺激値及び第3振動刺激値を説明変数とした重回帰分析によって、回帰式を導出する。
これにより、振動測定装置10を用いて測定された物理量を用いた評価結果が、官能評価による評価結果と近くなりやすくなる。本実施形態の衛生薄葉紙の触感評価方法によれば、評価結果と人の感じ方との間のずれを小さくできる。
振動測定ステップS13において、接触子535及び接触子545はサンプルを0.1Nの圧力で挟む。サンプルの移動する速度は5mm/secである。これにより、サンプルが移動する時の振動情報を、より正確に測定することができる。
振動測定ステップS13において、サンプルの移動する時間は1秒間以上である。これにより、サンプルが移動する時の振動情報を、より正確に測定することができる。
振動測定装置10は、サンプルを支持する固定機構40と、接触子535及びセンサ539を備え且つ固定機構40に対して鉛直方向で下側に配置される挟み機構50と、挟み機構50を移動させる直動機構30と、を備える。これにより、サンプルが移動する時の振動情報を、より正確に測定することができる。
(変形例)
図43は、変形例の衛生薄葉紙の触感評価方法を示すフローチャートである。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図43に示すように、変形例の評価モデル作成ステップS1Aにおいては、Emtec社製のティシューソフトネスアナライザー(Tissue Softness Analyzer:TSA)を用いて、サンプルの触感に関する指標値が測定される(指標値測定ステップS17)。ティシューソフトネスアナライザーは、衛生薄葉紙の触感を測定し、測定結果から人の手触り感を算出することが可能な装置である。ティシューソフトネスアナライザーにおいて、ブレードのついた測定ヘッドの下にサンプルが固定される。測定ヘッドが所定の圧力でサンプルに押し当てながら回転する。生じた騒音がサンプルの下にある音響センサで録音される。ティシューソフトネスアナライザーにおいては、3種類の指標値「TS7」、「TS750」及び「D」が測定される。ティシューソフトネスアナライザーは、ティシューソフトネス測定装置とも呼ばれる。
「TS7」は柔らかさに関する値である。衛生薄葉紙に押し当てたブレードが表面を動く時、個々の繊維の硬さによってブレードが振動する大きさが変化する。硬い繊維の場合、ブレードが大きくしなるため、繊維を通過した際の振動が大きくなる。柔らかい繊維の場合、繊維自体もしなるため、ブレードのしなりは小さくなる。このため、繊維を通過した時の振動が小さくなる。振動による騒音が音響スペクトルとして測定される。測定された振動波形がFFT処理される。約7kHzに生じる振動のピーク値が「TS7」の値である。「TS7」の値が小さいほど、衛生薄葉紙が柔らかい。
「TS750」は滑らかさに関する値である。衛生薄葉紙に押し立てたブレードが表面を動くとき、衛生薄葉紙が膜のように垂直振動する。騒音が大きい場合、表面がより粗い衛生薄葉紙である。騒音が小さい場合、表面が滑らかな衛生薄葉紙である。測定された振動波形をFFT処理される。約750Hzに生じる振動のピーク値が「TS750」である。「TS750」の値が小さいほど、衛生薄葉紙が滑らかである。
「D」は剛性に関する値である。引っ張った状態のサンプルを1Nの力で押した際の変位(mm)である。「D」の値が高いほど、衛生薄葉紙のクッション性が高く、高品質である。
以下において、指標値測定ステップS17の一例を示す。ティシューソフトネスアナライザーを用いた測定において、衛生薄葉紙に0.1Nの圧力が加えられた。ブレードの回転数は、2.0rpsであった。図44は、ティシューソフトネスアナライザーを用いた指標値の測定結果を示す図である。
図43に示すように、指標値測定ステップS17の後、主成分を目的変数とし、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、第3振動刺激値(IFAII)、及び指標値(TS7、TS750、D)を説明変数とした重回帰分析によって、回帰式が導出される(回帰式導出ステップS18)。
図45は、振動刺激値と摩擦感との関係、及び指標値と摩擦感との関係を示す図である。図46は、振動刺激値と指標値とを用いた重回帰分析の各値を示す図である。摩擦感については、ステップワイズ法の条件下でIFAII及びDが回帰式に投入された。回帰式の導出過程は、上述した説明変数が高級感の場合と同様である。すなわち、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、第3振動刺激値(IFAII)、及び指標値(TS7、TS750、D)がそれぞれ説明変数として選ばれ、選ばれた説明変数と目的変数である摩擦感との重回帰式が構築される。その結果、第3振動刺激値(IFAII)及びDが選択された時の調整済み寄与率R’2が一番高く導出された。図45は、「摩擦感」を回帰式に投入した結果を示す。図46は、調整済み寄与率R’2と有意確率p、及び説明変数の標準偏回帰係数β’と有意確率pを示す。また、回帰式は式(41)である。ただし、yが摩擦感の主成分得点であり、x1がIFAIIの値であり、x3がDの値である。式(41)から、IFAIIとDが大きいほど摩擦感の主成分得点yが大きくなる。すなわち、IFAIIとDが大きいほど、摩擦感が増す。
図47は、振動刺激値と柔らか感との関係、及び指標値と柔らか感との関係を示す図である。図48は、指標値を用いた重回帰分析の各値を示す図である。柔らか感については、ステップワイズ法の条件下でTS7が回帰式に投入された。回帰式の導出過程は、上述した説明変数が高級感の場合と同様である。すなわち、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、第3振動刺激値(IFAII)、及び指標値(TS7、TS750、D)がそれぞれ説明変数として選ばれ、選ばれた説明変数と目的変数である柔らか感との重回帰式が構築される。その結果、TS7が選択された時の調整済み寄与率R’2が一番高く導出された。図47は、「柔らか感」を回帰式に投入した結果を示す。図48は、調整済み寄与率R’2と有意確率p、及び説明変数の標準偏回帰係数β’と有意確率pを示す。また、回帰式は式(42)である。ただし、yが柔らか感の主成分得点であり、x2がTS7の値である。式(42)から、TS7が大きいほど柔らか感の主成分得点yが大きくなる。すなわち、TS7が大きいほど、柔らか感が増す。
図49は、振動刺激値と指標値によって回帰式から求めた主成分得点(主成分得点A)と、官能評価から得られた主成分得点(主成分得点B)との比較を示す図である。主成分得点Aは、式(41)及び式(42)に振動刺激値及び指標値を代入して算出される。図49に示すように、摩擦感について、いずれのサンプルにおいてもy=xに漸近して分布している。柔らか感についても、y=x上に漸近して分布する傾向がある。
なお、変形例の評価モデル作成ステップS1Aにおいて、指標値測定ステップS17は、必ずしも振動刺激値算出ステップS15の後に配置されなくてもよい。指標値測定ステップS17は、少なくとも回帰式導出ステップS18よりも前に配置されていればよい。
以上で説明したように、変形例の評価モデル作成ステップS1Aは、ティシューソフトネスアナライザーを用いて、サンプルの触感に関する指標値を測定する指標値測定ステップS17を含む。回帰式導出ステップS18において、主成分を目的変数とし、第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)及び指標値(TS7、TS750、D)を説明変数とした重回帰分析によって、回帰式が導出される。
これにより、振動測定装置10を用いて測定された物理量を用いた評価結果が、官能評価による評価結果と近くなりやすくなる。変形例の衛生薄葉紙の触感評価方法によれば、評価結果と人の感じ方との間のずれをより小さくできる。