以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。まず図1を参照して、鉄道の線路の保線作業における人員の配置について説明する。図1では、保線作業の対象となる線路を当該線Aとしている。また、線路が複線の場合、当該線Aに隣接する線路を隣接線Bとしている。保線作業には、例えば、2名の中継見張員911、912と、1名の管理員92と、複数の作業員93と、が携わっている。
中継見張員911、912は、列車の接近を見張り、列車が接近した場合にその列車の接近を管理員92に連絡する役目を有する。本実施形態の場合、2名の中継見張員911、912は、それぞれ作業現場から離れた場所に配置されており、当該線A及び隣接線Bに接近する列車を見張っている。この場合、当該線Aの進行方向の上流側に配置された中継見張員911は、当該線Aに接近する列車を見張る。また、隣接線Bの進行方向の上流側に配置された中継見張員912は、隣接線Bに接近する列車を見張る。なお、以下の説明において、中継見張員911、912を区別しない場合は単に中継見張員91と称する。管理員92は、作業現場に配置されており、中継見張員91から列車接近の連絡を受けた場合に、現場の作業員93に対して退避の指示を行う。作業員93は、作業現場において保線作業を行う。
ここで、管理員92が退避の指示を行ってから実際に列車が作業現場を通過するまでの期間を退避猶予期間とする。この場合、この退避猶予期間が長すぎると現場の作業効率が低下してしまう。一方で、この退避猶予期間が短すぎると、作業員が退避するための十分な時間を確保することができず、作業員の安全性が低下してしまう。そのため、退避猶予期間は、作業効率と安全性の両立を考慮すると、1分程度であることが好ましい。この場合、例えば列車の速度が時速約100kmとすると、1分間の退避猶予期間を確保するためには約1.7km手前で列車の接近を連絡する必要がある。
そこで、本実施形態の中継見張員911、912は、例えば作業現場から約1.5km〜2.0km離れた位置に配置されている。これにより、1分前後の退避猶予期間を確保することができる。なお、中継見張員91の位置は、通過する列車の運行速度等に応じて適宜変更することができる。なお、作業現場の見通しが良く、作業現場から約1.5km〜2.0km離れた位置にいる列車を確認できる場合は、中継見張員911、912を作業現場付近に配置しても良い。
次に、通報支援システム1の構成について説明する。なお、以下の説明において、ユニキャスト及びブロードキャストの用語の意味は、無線通信技術の分野において用いられる一般的な用語の意味である。この場合、ユニキャストとは、通信の相手として特定の1つの相手を指定する1対1の通信を行う通信方式を意味する。また、ブロードキャストとは、特に通信の相手を指定せず、同一のグループやネットワークに属する相手全員、例えば無線通信の通信範囲内のある相手全員に対してデータを送信する通信方式を意味する。
図1に示す通報支援システム1は、鉄道の線路の保線作業において、作業現場の作業員に対して列車が接近していることを通報するためのものである。通報支援システム1は、見張員用発報装置10、中継器20、管理員用装置30、作業員用発信装置40、作業員用報知装置50、及び警告器用制御装置60、を備えている。
見張員用発報装置10は、列車が進来した場合に発報信号を送信する発報装置の一例である。見張員用発報装置10は、各中継見張員91が携帯するものであり、中継見張員91が列車の進来を発見した場合に中継見張員91によって操作されることにより発報信号を送信するものである。見張員用発報装置10は、中継器20とユニキャストの通信により2km以上の長距離通信が可能である。
見張員用発報装置10は、図2に示すように、制御部11、無線通信部12、当該線発報スイッチ131、隣接線発報スイッチ132、当該線応答表示部141、隣接線応答表示部142、電源部15、及び充電池16を有している。制御部11は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部11は、見張員用発報装置10の各要素の制御を行う。
無線通信部12は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部11によって駆動制御される。無線通信部12は、例えばユニキャストの無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が1.5km以上の長距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部12の通信距離は2kmに設定されている。本実施形態の場合、無線通信部12のアンテナ121は、見張員用発報装置10の筐体101から外部に露出した外付け方式を採用している。
当該線発報スイッチ131及び隣接線発報スイッチ132は、例えば押しボタン式のスイッチであって、中継見張員91によって操作されるものである。この場合、当該線発報スイッチ131は、当該線Aを見張る中継見張員911が操作するものである。当該線Aの中継見張員911は、当該線Aに列車が接近した場合に、当該線発報スイッチ131を操作する。同様に、隣接線発報スイッチ132は、隣接線Bを見張る中継見張員912が操作するものである。隣接線Bの中継見張員912は、隣接線Bに列車が接近した場合に、隣接線発報スイッチ132を操作する。
当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142は、例えばLEDなどの光源を有した表示ランプで構成されている。当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142の点灯及び消灯は、制御部11によって制御される。当該線応答表示部141は、当該線発報スイッチ131の操作によって送信された発報信号が、中継器20で正常に受信されていることを示すための表示である。当該線応答表示部141は、当該線発報スイッチ131の操作による発報信号が、中継器20で正常に受信された場合に点灯する。
同様に、隣接線応答表示部142は、隣接線発報スイッチ132の操作によって送信された発報信号が、中継器20で正常に受信されていることを示すための表示である。隣接線応答表示部142は、隣接線発報スイッチ132の操作による発報信号が、中継器20で正常に受信された場合に点灯する。
電源部15は、充電池16からの電力を、制御部11、無線通信部12、当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142に供給する機能を有する。充電池16は、着脱可能な充電式の乾電池や、いわゆるモバイルバッテリーなどである。
中継器20は、見張員用発報装置10と作業現場との間に設置される装置である。本実施形態の場合、中継器20は、作業現場に設置されている。中継器20は、見張員用発報装置10と、作業員用発信装置40、管理員用装置30、及び警告器用制御装置60との間の無線通信を中継する機能を有する。中継器20は、見張員用発報装置10との間でユニキャストの通信により1対1の無線通信が可能である。また、中継器20は、見張員用発報装置10以外の機器に対してブロードキャストによる通信が可能である。つまり、中継器20は、送信対象を特定しない一斉送信、この場合、例えば管理員用装置30、作業員用発信装置40、及び警告器用制御装置60へ向けて一斉送信する無線通信が可能である。
見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離は、中継器20のブロードキャストによる通信距離よりも長距離に設定されている。すなわち、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストによる通信は長距離無線通信であり、中継器20と他の装置30、40、60との間のブロードキャストによる通信は短距離無線通信である。この場合、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離は2km以上に設定されている。これに対し、中継器20のブロードキャストによる通信距離は、数100m程度に設定されている。なお、中継器20のブロードキャストによる通信距離は、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離と同程度の通信距離に設定されていても良い。
中継器20は、図3に示すように、制御部21、無線通信部22、電源部23、及び充電池24を有している。制御部21は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部11は、中継器20の各要素の制御を行う。
無線通信部22は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部21によって駆動制御される。無線通信部22は、例えば無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が1.5km以上の長距離無線通信、及び通信距離が500m未満の短距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部22の通信距離は、長距離無線通信が2kmに設定されており、短距離無線通信が200mに設定されている。本実施形態の場合、中継器20は、無線通信部22のアンテナ221を複数本有している。そして、各アンテナ221は、中継器20の筐体201から外部に露出した外付け方式を採用している。
この中継器20は、長距離無線通信を用いる場合、見張員用発報装置10と1対1の無線通信が可能である。また、中継器20は、短距離無線通信を用いる場合、例えば作業員用発信装置40、管理員用装置30、及び警告器用制御装置60へ向けて一斉送信する短距離無線通信つまり短距離のブロードキャストが可能である。
制御部21は、見張員用発報装置10から、当該線の発報信号又は隣接線の発報信号を正常に受信した場合、無線通信部22を制御して長距離無線通信により、見張員用発報装置10に対して応答信号を返信する。その後、制御部21は、短距離無線通信により、管理員用装置30、作業員用発信装置40、及び警告器用制御装置60へ向けて、通報信号を一斉送信する。
電源部23は、充電池24からの電力を、制御部21及び無線通信部22に供給する機能を有する。充電池16は、着脱可能な充電式の乾電池や、いわゆるモバイルバッテリーなどである。
管理員用装置30、作業員用発信装置40、作業員用報知装置50、及び警告器用制御装置60は、作業現場の管理員92又は作業員93が携帯するもの若しくは作業現場に設置されるものであって、中継器20から一斉送信された通報信号を受信した場合に、通報信号を受信した旨を直接的又は間接的に管理員92又は作業員93に報知するための現場用報知装置である。
管理員用装置30は、管理員92が携帯するものであり、見張員用発報装置10によって送信された発報信号に基づく列車の接近情報を受信するための装置である。管理員用装置30は、見張員用発報装置10と同様の機能を有しているが、見張員用発報装置10と比べて通信距離が短く、また、見張員用発報装置10に対して解除スイッチ37及びブザー38を更に備えている点で異なっている。
管理員用装置30は、制御部31、無線通信部32、当該線発報スイッチ331、隣接線発報スイッチ332、当該線通報表示部341、隣接線通報表示部342、電源部35、充電池36、解除スイッチ37、及びブザー38を有している。制御部31は、制御部11と同様に、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部31は、管理員用装置30の各要素の制御を行う。
無線通信部32は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部31によって駆動制御される。無線通信部32は、例えば無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が500m未満の短距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部32の通信距離は200mに設定されている。本実施形態の場合、無線通信部32のアンテナ321は、管理員用装置30の筐体301内に収容されている。
当該線発報スイッチ331及び隣接線発報スイッチ332は、見張員用発報装置10の当該線発報スイッチ131及び隣接線発報スイッチ132と同様に、例えば押しボタン式のスイッチである。当該線発報スイッチ331及び隣接線発報スイッチ332は、万一中継見張員91が見張員用発報装置10の発報スイッチ131、132を押し忘れた場合などに管理員92によって操作される予備的なものである。
当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342は、見張員用発報装置10の当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142と同様に、例えばLEDなどの光源を有した表示ランプで構成されている。当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342の点灯及び消灯は、制御部31によって制御される。
当該線通報表示部341は、見張員用発報装置10から当該線の発報信号が送信されたこと、つまり見張員用発報装置10から送信された当該線の発報信号が中継器20を介して通報信号となって管理員用装置30で受信されたことを示すための表示である。つまり、当該線通報表示部341は、管理員92に対して、当該線Aに列車が接近していることを視認可能な表示により報知するためのものである。当該線通報表示部341は、中継器20から一斉送信された当該線の発報信号に基づく通報信号を、管理員用装置30において正常に受信した場合に点灯する。
同様に、隣接線通報表示部342は、見張員用発報装置10から隣接線の発報信号が送信されたこと、つまり見張員用発報装置10から送信された隣接線の発報信号が中継器20を介して通報信号となって管理員用装置30で受信されたことを示すための表示である。つまり、隣接線通報表示部342は、管理員92に対して、隣接線Bに列車が接近していることを視認可能な表示により報知するためのものである。隣接線通報表示部342は、中継器20から一斉送信された隣接線の発報信号に基づく通報信号を、管理員用装置30において正常に受信した場合に点灯する。
電源部35は、充電池36からの電力を、制御部31、無線通信部32、当該線通報表示部341、隣接線通報表示部342、及びブザー38に供給する機能を有する。充電池36は、着脱可能な充電式の乾電池や、いわゆるモバイルバッテリーなどである。
解除スイッチ37は、管理員用装置30の当該線発報スイッチ331及び隣接線発報スイッチ332と同様に、例えば押しボタン式のスイッチであって、管理員92によって操作されるものである。解除スイッチ37は、作業員93に対する退避指示を解除して通常の作業に復帰させる際に押される。すなわち、管理員92は、列車の通過完了を確認し、作業員93の退避の必要がなくなって作業現場の安全が確保された場合に、解除スイッチ37を押す。解除スイッチ37が操作されると、制御部31は、無線通信部32を制御して、中継器20を介して見張員用発報装置10に対して解除信号を送信する。この場合、制御部31は、中継器20を介して見張員用発報装置10以外の他の装置、例えば管理員用装置30と作業員用発信装置40と警告器用制御装置60とにも解除信号を送信する。
ブザー38は、制御部31によって制御されており、管理員92に対して音による接近情報の報知を行うためのものである。制御部31は、当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342の点灯表示に連動してブザー38を鳴動させる。ブザー38は、当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342に対応させて、少なくとも2種類の異なる音を発することができる。
例えば当該線通報表示部341が点灯表示した場合には、ブザー38は第1音声として連続音を発する。また、隣接線通報表示部342が点灯表示した場合には、ブザー38は第1音声とは異なる第2音声として間欠音を発する。これにより、管理員92は、ブザー38から発せられる音声を聞くことで、当該線通報表示部341又は隣接線通報表示部342を直接見ることなく、当該線に列車が接近しているか隣接線に列車が接近しているか、を直感的に把握することができる。
なお、管理員用装置30は、ブザー38と併用して又はブザー38に換えて振動発生させることができる振動発生部を有していても良い。この場合、振動発生部は、ブザー38の第1音声に対応した第1振動として連続的な振動を発生させるとともに、ブザー38の第2音声に対応した第2振動として間欠的な振動を発生させるようにすることができる。
作業員用発信装置40は、作業現場に設置されるものであって、中継器20から通報信号を受信した場合に通報信号を受信した旨を、作業員用報知装置50を介して各作業員に間接的に報知するためのものである。この場合、作業員用発信装置40は、中継器20と作業員用報知装置50との間の通信を更に中継する機能を有する。作業員用発信装置40は、図5に示すように、無線通信ユニット41、デジタル簡易無線送信器42、電源部43、及び充電池44を有している。無線通信ユニット41、デジタル簡易無線送信器42、電源部43、及び充電池44は、防水性を有し持ち運び可能な筐体401内に収容されている。
無線通信ユニット41は、プライベートLoRa方式の無線通信を行うための機器であり、制御部411、無線通信部412、通報表示部413、及び音声信号再生回路414を有している。無線通信ユニット41は、デジタル簡易無線送信器42と独立した構成となっている。
制御部411は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部411は、作業員用発信装置40の各要素の制御を行う。
無線通信部412は、管理員用装置30の無線通信部32と同様の構成である。すなわち、無線通信部412は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部411によって駆動制御される。無線通信部412は、例えば無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が500m未満の短距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部412の通信距離は例えば200mに設定されている。本実施形態の場合、無線通信部412のアンテナ415は、筐体401内に収容されている。
通報表示部413は、見張員用発報装置10の応答表示部141、142、及び管理員用装置30の通報表示部341、342と同様に、例えばLEDなどの光源を有した表示ランプで構成されている。通報表示部413の点灯及び消灯は、制御部411によって制御される。通報表示部413は、当該線及び隣接線の通報を兼用している。すなわち、通報表示部413は、見張員用発報装置10から当該線又は隣接線の発報信号が送信されたこと、つまり見張員用発報装置10から送信された当該線の発報信号が中継器20を介して通報信号となって管理員用装置30で受信されたことを示すための表示である。通報表示部413は、中継器20から一斉送信された当該線の発報信号又は隣接線の発報信号に基づく通報信号を、作業員用発信装置40において正常に受信した場合に点灯する。
音声信号再生回路414は、制御部411によって制御されており、デジタル簡易無線送信器42を介し、各作業員93に対して列車の接近情報の報知を行うためのものである。管理員用装置30のブザー38と同様に、制御部411は、通報表示部413の点灯表示に連動して音声信号再生回路414を鳴動させる。音声信号再生回路414は、管理員用装置30のブザー38と同様に、当該線における列車の接近と、隣接線における列車の接近との両方に対応させて、少なくとも2種類の異なる音を発することができる。
作業員用発信装置40が当該線の発報信号に基づく通報信号を受信した場合、音声信号再生回路414は第1音声として連続音を発する。また、作業員用発信装置40が隣接線の発報信号に基づく通報信号を受信した場合、音声信号再生回路414は第1音声とは異なる第2音声として間欠音を発する。
デジタル簡易無線送信器42は、無線通信ユニット41とは独立した構成となっており、例えば市販されているデジタルトランシーバであり、無線通信部412とは通信方式が異なっている。デジタル簡易無線送信器42の外部音声信号入力部421は、例えばマイクなどであり、筐体401内において、ブザーなどを有して構成された音声信号再生回路414から発せられた音声を拾うことができる位置に配置されている。また、デジタル簡易無線送信器42のアンテナ422は、筐体401内に収容されている。
なお、作業員用発信装置40は、各作業員用報知装置50に対して通報信号を一斉送信する無線送信器として、デジタル簡易無線送信器42に換えて、携帯電話回の通信網を用いたIP無線機や、Bluetooth(登録商標)や無線LANを用いた通信機器などを用いることができる。この場合、IP無線機には、LTE無線機や、PoC(Push−to−Talk over Cellular)無線機、無線LANトランシーバなどが含まれる。
電源部43は、充電池44からの電力を、無線通信ユニット41及びデジタル簡易無線送信器42に供給する機能を有する。つまり、無線通信ユニット41及びデジタル簡易無線送信器42は、電源部43及び充電池44を共用している。充電池16は、着脱可能な充電式の乾電池や、いわゆるモバイルバッテリーなどである。
この場合、制御部411は、中継器20から通報信号を無線通信部412において受信すると、通報表示部413を点灯させるとともに、発報信号の種類に合った音声で音声信号再生回路414を鳴動させる。すると、デジタル簡易無線送信器42の外部音声信号入力部421が、音声信号再生回路414から発せられた音声を取得し、その音声をデジタル簡易無線送信器42によって作業員用報知装置50に送信する。これにより、作業員用発信装置40は、中継器20から送信された通報信号を音声信号再生回路414によって音声に変換し、デジタル簡易無線送信器42を用いて音声として送信する。
作業員用報知装置50は、各作業員93が例えば身体に装着して携帯するものであって、作業員用発信装置40を介して中継器20からの通報信号を受信した場合に、その通報信号を受信した旨を直接的に報知するものである。作業員用報知装置50は、デジタル簡易無線送信器42から送信される音声を受信した場合に当該音声を再生するとともに当該音声に応じた振動を発生させる機能を有している。作業員用報知装置50は、例えば作業員93が使用するヘルメットに内蔵されている。
作業員用報知装置50は、図6に示すように、制御部51、簡易デジタル無線受信部52、スピーカ53、振動発生部54、電源部55、及び充電池56を有している。制御部51は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部51は、作業員用報知装置50の各要素の制御を行う。
簡易デジタル無線受信部52は、デジタル簡易無線送信器42に対応した通信方式の受信機器であり、デジタル簡易無線送信器42から送信された音声を受信することができる。なお、作業員用発信装置40がデジタル簡易無線送信器42に換えて、IP無線機や、Bluetooth(登録商標)又は無線LANを用いた通信機器などを備えたものである場合、作業員用報知装置50は、簡易デジタル無線受信部52に換えて、IP無線機や、Bluetooth(登録商標)又は無線LANを用いた通信機器などに対応した受信器を備えるものとする。
スピーカ53は、制御部51によって制御されており、作業員93に対して音により接近情報の報知を行うためのものである。制御部51は、作業員用発信装置40のデジタル簡易無線送信器42から発せられた音声を簡易デジタル無線受信部52で受信した場合に、スピーカ53を駆動制御し、受信した音声をスピーカ53から流す。
振動発生部54は、制御部51によって制御されており、作業員93に対して振動により接近情報の報知を行うためのものである。振動発生部54は、例えば小型の振動モータ等で構成されている。制御部51は、作業員用発信装置40のデジタル簡易無線送信器42から発せられた音声を簡易デジタル無線受信部52で受信した場合に、振動発生部54を駆動制御し、作業員用報知装置50の一部又は全体を振動させる。
この場合、振動発生部54は、スピーカ53の鳴動と連動して動作させても良いし、非連動で動作させても良い。また、スピーカ53からは、本実施形態の場合、連続的な音声である第1音声と、間欠的な音声である第2音声とのいずれかが流れる。この場合、制御部51は、スピーカ53から第1音声を流す場合には、振動発生部54に発生させる振動の種類を連続的な振動である第1振動にし、スピーカ53から第2音声を流す場合には、振動発生部54に発生させる振動の種類を間欠的な振動である第2振動にしても良い。これによれば、作業員93は、当該線Aに列車が接近しているか、隣接線Bに列車が接近しているかを、音だけでなく振動の種類によっても容易に把握することができる。
警告器用制御装置60は、作業現場に設置されるものであって、中継器20から送信された通報信号を受信した場合に、その通報信号を受信した旨を管理員92及び各作業員93に間接的に報知するためのものである。警告器用制御装置60は、警告灯70等の警報器に接続されており、通報信号の受信に基づいて警告灯70の動作を制御する。この場合、警告器用制御装置60は、警告灯70への電力の供給及び遮断を制御することで、警告灯70の点灯及び消灯を制御する。
警告器用制御装置60は、図7に示すように、制御部61、無線通信部62、通報表示部63、電源部64、充電池65、及びリレー66を有している。制御部61は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部61は、警告器用制御装置60の各要素の制御を行う。
無線通信部62は、管理員用装置30の無線通信部32及び作業員用発信装置40の無線通信部412と同様の構成である。すなわち、無線通信部62は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部61によって駆動制御される。無線通信部62は、例えば無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が500m未満の短距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部62の通信距離は200mに設定されている。本実施形態の場合、無線通信部62のアンテナ621は、警告器用制御装置60の筐体601内に収容されている。
通報表示部63は、作業員用発信装置40の通報表示部413と同様の構成である。すなわち、通報表示部63は、例えばLEDなどの光源を有した表示ランプで構成されている。通報表示部63の点灯及び消灯は、制御部61によって制御される。通報表示部63は、当該線及び隣接線の通報を兼用している。すなわち、通報表示部63は、見張員用発報装置10から当該線又は隣接線の発報信号が送信されたこと、つまり見張員用発報装置10から送信された当該線の発報信号が中継器20を介して通報信号となって管理員用装置30で受信されたことを示すための表示である。通報表示部63は、中継器20から一斉送信された当該線の発報信号又は隣接線の発報信号に基づく通報信号を、警告器用制御装置60において正常に受信した場合に点灯する。
電源部64は、充電池65からの電力を、制御部61、無線通信部62、通報表示部63、及びリレー66に供給する機能を有する。充電池16は、着脱可能な充電式の乾電池や、いわゆるモバイルバッテリーなどである。
リレー66は、例えば電力供給用のパワーリレーであり、制御部61の制御を受けて動作する。リレー66は、警告灯70と、電源71との間に設けられている。制御部61は、リレー66の開閉を制御することで、警告灯70の消灯及び点灯の動作を制御する。この場合、リレー66が閉じられると、電源71と警告灯70との間が接続されて、警告灯70が点灯する。また、リレー66が開かれると、電源71と警告灯70との間が開放されて、警告灯70が消灯する。
次に、通報支援システム1の動作フローについて、図8〜図10を参照して説明する。
まず、図8を参照して、中継見張員911、912が、当該線A又は隣接線Bに進来する列車を発見した場合について説明する。当該線Aの中継見張員911が当該線Aに進来する列車を発見した場合、及び隣接線Bの中継見張員912が隣接線Bに進来する列車を発見した場合の動作フローは、いずれも共通している。
すなわち、当該線Aの中継見張員911は、当該線Aにおける列車の接近を発見すると、図8のステップA11に示すように、自己が携帯する見張員用発報装置10の当該線発報スイッチ131を操作する。すると、見張員用発報装置10は、ステップA12に示すように、無線通信部12の機能により、中継器20に対して当該線の発報信号をユニキャストの長距離無線通信により送信する。中継器20は、ステップA21において、見張員用発報装置10から送信された当該線の発報信号を正常に受信すると、ステップA22に示すように、見張員用発報装置10に対して応答信号を送信する。
見張員用発報装置10は、ステップA13に示すように中継器20から応答信号を受信すると、ステップA14に示すように、当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142のうち、操作した発報スイッチ131、132に対応するもの、この場合、当該線応答表示部141を点灯させる。なお、発報スイッチ131、132を操作したにも関わらず対応する応答表示部141、142が点灯しない場合は、無線通信が失敗した可能性がある。この場合、中継見張員911、912は、対応する応答表示部141、142が点灯するまで繰り返し発報スイッチ131、132の操作を行う。
また、見張員用発報装置10は、ステップA22において応答信号を送信すると、ステップA23に示すように、当該線の発報信号を受信したことを示す通報信号を、ブロードキャストの短距離無線通信によって送信対象を特定せずに一斉に送信する。そして、管理員用装置30、作業員用発信装置40、及び警告器用制御装置60は、中継器20から送信された通報信号を受信すると、列車の接近を報知するための必要な動作をそれぞれ実行する。
この場合、管理員用装置30は、ステップA31に示すように、中継器20から送信された通報信号を受信すると、ステップA32に示すように、当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342のうち発報信号に対応するもの、この場合、当該線通報表示部441を点灯させる。そして、管理員用装置30は、ブザー38を、第1音声及び第2音声のうち発報信号に対応するもの、この場合、当該線の発報に対応した第1音声で鳴動させる。これにより、管理員用装置30を携行する管理員92は、通報表示部341、342の点灯及びブザー38から発せられる音声によって、作業現場に列車が接近していること、及びその列車が当該線A及び隣接線Bのいずれを走行しているかを、把握することができる。そして、管理員92は、各作業員93に対して例えば口頭により退避指示を行う。
また、作業員用発信装置40は、ステップA41に示すように、中継器20から送信された通報信号を受信すると、ステップA42に示すように、通報表示部443を点灯させる。そして、作業員用発信装置40は、ステップA43において、音声信号再生回路414を鳴動させるとともに、その音声信号再生回路414から発せられた音声を、デジタル簡易無線送信器42を用いて一斉送信つまりトランシーバによるブロードキャストによって一斉送信する。そして、作業員用発信装置40から送信されたデジタル無線の音声を作業員用報知装置50が受信すると、作業員用報知装置50は、スピーカ53からその受信した音声を再生して流すとともに、振動発生部54によってその音声に対応した振動を発生させる。これにより、各作業員93は、スピーカ53から流れる音声、及び振動発生部54で発生した振動によって、作業現場に列車が接近していること、及びその列車が当該線A及び隣接線Bのいずれを走行しているかを、把握することができる。そして、各作業員93は、管理員92の退避指示に従って、退避指示が解除されるまで安全な場所に退避する。
そして、警告器用制御装置60は、ステップS61に示すように、中継器20から送信された通報信号を受信すると、ステップA62に示すように、通報表示部63を点灯させるとともに、ステップA63に示すように、リレー66を制御して、警告灯70を点灯させる。これにより、管理員92及び各作業員93は、警告灯70の点灯を見ることによって、作業現場に列車が接近していることを把握することができる。なお、警告灯70は、例えば矢印形状の表示を行うことで、列車の進行方向を表すようにしても良い。
次に、図9を参照して、管理員92が退避指示を解除する場合について説明する。
退避指示を解除する場合、管理員92は、まず、図9のステップB31に示すように、管理員用装置30の解除スイッチ37を操作する。すると、管理員用装置30は、ステップB32に示すように、中継器20に対して解除信号を送信する。中継器20は、ステップB21において解除信号を受信すると、ステップB22に示すように、ユニキャストによる長距離無線通信を用いた通信によって見張員用発報装置10に対して解除応答信号を送信するとともに、ブロードキャストによる短距離無線通信を用いた通信によって解除応答信号を一斉送信する。
見張員用発報装置10は、ステップB11に示すように、中継器20から送信された解除応答信号を受信すると、ステップB12に示すように、当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142を消灯する。これにより、中継見張員91は、列車が作業現場を通過して退避指示が解除されたことを把握することができる。
また、管理員用装置30は、ステップB33に示すように、中継器20からブロードキャストにより一斉送信された解除応答信号を受信すると、ステップB34に示すように、通報表示部341、342を消灯するとともに、ブザー38の鳴動を停止する。
また、作業員用発信装置40は、ステップB41に示すように、中継器20からブロードキャストにより一斉送信された解除応答信号を受信すると、ステップB42に示すように、通報表示部413を消灯するとともに、デジタル簡易無線送信器42からの送信つまりトランシーバの送信を停止する。すると、各作業員93が装着している作業員用報知装置50のスピーカ53から流れる音声が停止するとともに、振動発生部54の振動が停止する。これにより、各作業員93は、退避指示が解除されたことを把握することができる。
そして、警告器は、ステップB61に示すように、中継器20からブロードキャストにより一斉送信された解除応答信号を受信すると、ステップB62に示すように、通報表示部63を消灯するとともに、リレー66の制御を停止して接点を開く。すると、警告灯70への電力供給が遮断されて、警告灯70が停止つまり消灯する。これによっても、各作業員93は、警告灯70の動作が停止したことを確認することで、退避指示が解除されたことを把握することができる。
次に、見張員用発報装置10又は管理員用装置30において、当該線発報スイッチ131、331と隣接線発報スイッチ132、332とが同時期に操作された場合について、図10を参照して説明する。本実施形態の場合、通報支援システム1は、当該線発報スイッチ131、331と隣接線発報スイッチ132、332とが同時期に操作された場合には、当該線発報スイッチ131、331による発報信号を優先する。この場合、同時期とは、当該線発報スイッチ131、331と隣接線発報スイッチ132、332の一方が操作されてから、解除スイッチ37が操作されるまでの期間を意味する。
すなわち、通報支援システム1は、当該線発報スイッチ131、331が操作された後、解除スイッチ37が操作される前に隣接線発報スイッチ132、332が更に操作された場合、及び隣接線発報スイッチ132、332が操作された後、解除スイッチ37が操作される前に当該線発報スイッチ131、331が更に操作された場合には、当該線発報スイッチ131、331による発報信号を優先する。
この場合、中継器20は、図10のステップA21に示すように、各見張員用発報装置10からそれぞれ当該線の発報信号と隣接線の発報信号を同時期に受信した場合、ステップA22に示すように、当該線の発報信号を送信した見張員用発報装置10にのみ応答信号を送信する。これにより、例えば見張員用発報装置10において当該線応答表示部141が点灯したり、管理員用装置30において当該線通報表示部341が点灯したりするなど、各装置10、30、40、50、60では、当該線における列車の接近に関する動作が実行される。
なお、通報支援システム1は、この構成に限られず、当該線発報スイッチ131、331と隣接線発報スイッチ132、332とが同時期に操作された場合に、見張員用発報装置10において当該線応答表示部141及び隣接線応答表示部142の両方を点灯させたり、管理員用装置30において当該線通報表示部341及び隣接線通報表示部342の両方を点灯させたりするなど、各装置10、30、40、50、60において当該線及び隣接線の両方における列車の接近に関する動作を実行するようにしても良い。
以上説明した実施形態によれば、通報支援システム1は、鉄道の線路の保線作業において作業現場の作業員93に対して列車が接近していることを通報するための通報支援システムである。通報支援システム1は、見張員用発報装置10と、中継器20と、現場用報知装置としての管理員用装置30、作業員用発信装置40、作業員用報知装置50、及び警告器用制御装置60と、を備えている。見張員用発報装置10は、発報装置の一態様であり、作業現場から離れた中継見張員91が携帯するものであって、中継見張員91の操作によって発報信号を送信する機能を有している。
中継器20は、見張員用発報装置10と作業現場との間に設置されるものであって、見張員用発報装置10とユニキャストによる長距離無線通信が可能である。また、中継器20は、見張員用発報装置10以外の装置、この場合、管理員用装置30、作業員用発信装置40、及び警告器用制御装置60に対してブロードキャストの通信が可能である。中継器20は、見張員用発報装置10から送信された発報信号を受信した場合に、ブロードキャストの通信により通報信号を一斉送信する機能を有する。そして、現場用報知装置としての管理員用装置30、作業員用発信装置40、作業員用報知装置50、及び警告器用制御装置60は、作業現場の管理員92又は作業員93が携帯するもの若しくは作業現場に設置されるものであって、通報信号を受信した場合に通報信号を受信した旨を報知する機能を有する。
これによれば、管理員92は、自己が携帯するり管理員用装置30や作業現場に設置された警告器用制御装置60に接続された警告器70の動作によって、見張員用発報装置10から発報信号を受信した旨つまり列車が接近していることを知ることができる。また、各作業員93は、管理員92の声だけでなく、自己が携帯する作業員用報知装置50や作業現場に設置された警告器用制御装置60に接続された警告器70の動作によって、見張員用発報装置10から発報信号を受信した旨つまり列車が接近していることを知ることができる。これにより、作業現場の各作業員93に対して列車接近の情報を短時間で漏れなく確実に周知させることができる。
また、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離は、中継器20のブロードキャストによる通信距離よりも長距離に設定されている。例えば本実施形態の場合、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離は2kmに設定されており、中継器20のブロードキャストによる通信距離は200mに設定されている。そして、中継器20は、作業現場付近に設置される。この場合、作業現場付近とは、作業現場に配置される管理員用装置30、作用員用発信装置40、及び警告器用制御装置60に対して、中継器20からのブロードキャストによる無線通信が届く範囲内を意味する。
これによれば、見張員用発報装置10と中継器20との間の通信距離を長くし、中継器20を作業現場付近に設置することで、見張員用発報装置10を作業現場から遠く離れた位置に配置できる。これによれば、作業現場の見通しが悪い場合に中継見張員91を作業現場から遠く離れた場所に配置することができるため、列車の進来を事前に確実に確認することができ、その結果、安全性が向上する。更に、中継器20のブロードキャストによる通信距離を、見張員用発報装置10と中継器20との間のユニキャストの通信による通信距離よりも短距離に設定するにより、ブロードキャストによる通信の出力を弱くでき、その結果、中継器20の消費電力を低減することができる。このように、本実施形態によれば、ユニキャストによる長距離通信とブロードキャストによる短距離通信とを併用することにより、安全性を向上しつつ消費電力を低減することができる。
また、中継器20は、見張員用発報装置10から発信された発報信号を正常に受信した場合に、見張員用発報装置10に対して発報信号を正常に受信した旨を示す応答信号を送信する機能を有している。そして、見張員用発報装置10は、中継器20から応答信号を受信した場合に応答信号を受信した旨を、例えば応答表示部141、142を点灯させることにより報知する機能を有している。
これによれば、中継見張員91は、発報信号が中継器20に送信されたことを確実に把握することができる。すなわち、実際の使用環境によっては、例えば中継見張員91が発報スイッチ131、132を操作していないにも関わらず操作したと誤認したり、中継器20との無線通信に一時的な通信障害が発生したりして、中継器20で発報信号が受信されてない可能性がある。この場合、列車が接近しているにも関わらず中継器20で発報信号が受信されてないことに中継見張員91が気付かないでいると、列車の接近を作業現場の管理員92や作業員93に伝達できないため危険である。
これに対し、本実施形態によれば、中継見張員91は、応答表示部141、142の点灯状態を見ることで、中継器20に発報信号が確実に送信されたか否かを把握することができる。そして、中継見張員91は、応答表示部141、142が点灯表示されるまで発報スイッチ131、132を繰り返し操作するなどの措置を取ることができる。このため、本実施形態によれば、中継見張員91の誤解や中継器20による発報信号の受信が失敗した場合などにおいて、中継見張員91がその失敗に気付かずに放置してしまうことを抑制することができる。これにより、列車の接近を作業現場により確実に伝達することができ、その結果、作業現場の安全性を更に向上させることができる。
また、通報支援システム1は、現場用報知装置として、作業現場の管理員92が携帯する管理員用装置30を備えている。管理員用装置30は、管理員92の操作によって、中継器20を介して見張員用発報装置10に対して解除信号を送信する機能を有している。そして、見張員用発報装置10は、解除信号を受信した場合に、例えば応答表示部141、12を消灯することにより解除信号を受信した旨を報知する機能を有している。
これによれば、管理員92は、自己が携帯する管理員用装置30を操作することによって、退避指示の状態を解除することができるため、利便性が向上する。また、中継見張員91は、自己が携帯する見張員用発報装置10の応答表示部141、12の消灯を確認することで、列車が作業現場を通過して退避指示が解除されたことを把握することができる。
また、通報支援システム1は、現場用報知装置として、作業現場の作業員93が携帯する作業員用報知装置50を備えている。作業員用報知装置50は、中継器20から作業員用発信装置40を介して通報信号を受信した場合に、例えば振動発生部54による振動又はスピーカ53による音声の少なくともいずれかにより通報信号を受信した旨を作業員93に報知する機能を有している。これによれば、表示等による提示に対して、現場で作用する作業員93の注意を素早くより確実に引くことがき、作業員93の退避猶予時間を極力長く確保することができる。その結果、作業現場の安全性を更に向上させることができる。
また、通報支援システム1は、中継器20と各作業員用報知装置50との間の通信を中継する作業員用発信装置40を更に備えている。本実施形態の場合、作業員用発信装置40は、各作業員用報知装置50へブロードキャストを行う通信機器としてデジタル簡易無線送信器42を含んで構成されている。作業員用発信装置40は、中継器20から通報信号を受信した場合に当該通報信号を音声に変換してデジタル簡易無線送信器42から一斉送信する機能を有している。また、作業員用報知装置50は、デジタル簡易無線送信器42から送信される音声を受信した場合に当該音声を例えばスピーカ53で再生することで通報するとともに、当該音声に対応した振動を振動発生部54で振動させることで通報する機能を有している。
これによれば、上述したように、表示等による提示に対して、現場で作用する作業員93の注意を素早くより確実に引くことがき、作業員93の退避猶予時間を極力長く確保することができる。その結果、作業現場の安全性を更に向上させることができる。更に、通報信号は、音声に変換されてデジタル簡易無線送信器42から一斉送信されるため、各作業員93に対して列車の接近を一斉に瞬時に周知させることができる。その結果、作業現場の安全性の更なる向上を図ることができる。
また、通報支援システム1は、現場用報知装置として警告器用制御装置60を備えている。警告器用制御装置60は、作業現場に設置されるものであり、当該作業現場に設置される警告灯等の警告器70に接続されて当該警告器70の動作を制御する。そして、警告器用制御装置60は、リレー66を含み、通報信号を受信した場合にリレー66を制御することで警告器70の動作を制御する機能を有している。
これによれば、管理員92及び作業員93は、警告器70の動作を見ることで列車の接近情報を知ることができる。そのため、管理員92及び作業員93に対して列車の接近情報をより確実に通報することができ、その結果、作業現場の安全性の更なる向上が図られる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。
本実施形態の通報支援システム1は、上記第1実施形態の見張員用発報装置10に換えて、自動発報装置80を備えている。自動発報装置80は、第1実施形態において中継見張員91が配置される場所と同様の場所に配置される。自動発報装置80は、列車の進来を例えばセンサや画像処理などにより自動で検知する機能を有している。そして、自動発報装置80は、列車の進来を検知した場合に、中継器20に対してユニキャストの長距離通信により発報信号を自動で送信する機能を有している。
本実施形態の場合、自動発報装置80は、図12に示すように、制御部81、無線通信部82、撮像部83、画像処理部84、電源部85、及び充電池86を有している。制御部81は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御部81は、自動発報装置80の各要素の制御を行う。
無線通信部82は、上記第1実施形態における見張員用発報装置10の無線通信部12と同様の構成である。すなわち、無線通信部82は、外部の機器と無線通信を行うためのものであり、制御部81によって駆動制御される。無線通信部82は、例えばユニキャストの無線通信方式として920MHz帯のプライベートLoRa方式を採用しており、通信距離が1.5km以上の長距離無線通信が可能である。本実施形態の場合、無線通信部82の通信距離は2kmに設定されている。本実施形態の場合、無線通信部82のアンテナ821は、自動発報装置80の筐体801から外部に露出した外付け方式を採用している。
撮像部83は、列車の進来を自動で検出する自動検出手段である。撮像部83は、例えば筐体801の外部に設けられたカメラ装置であり、連続した静止画又は動画を撮影可能に構成されている。なお、撮像部83は、筐体801と一体に構成しても良い。また、撮像部83は、温度画像を撮像できる赤外線カメラなどであっても良い。更に、自動発報装置80は、自動検出手段として、撮像部83に換えてセンサを有していても良い。
撮像部83は、進来する列車を撮影する。画像処理部84は、撮像部83で撮影した画像を処理し、その画像に進来する列車が含まれているか否かを判断する。画像処理部84は、予め記憶しているプログラムに従って列車を認識するものでも良いし、AIなどによる学習を通して認識精度を高めていくものでも良い。また、画像処理部84は、制御部81でプログラムを実行することによって仮想的に実現するものでもよいし、制御部81とは別の半導体回路などによって構成したものでも良い。
制御部11は、撮像部83及び画像処理部84によって列車の進来を検出すると、無線通信部82を駆動させて、中継器20に対してユニキャストの長距離無線通信により発報信号を自動で送信する。これによれば、自動発報装置80は、第1実施形態の中継見張員91を必要とせずに、列車の進来を自動で検知して発報信号を送信することができる。このため、列車の進来を見張るための人員を削減することができる。
なお、本発明の実施形態は、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
実施形態の鉄道の線路の保線作業において作業現場の作業員に対して列車が接近していることを通報するための通報支援システムであって、列車の進来を見張る中継見張員によって操作された場合に、又は列車の進来を検知した場合に発報信号を送信する発報装置と、前記発報装置と前記作業現場との間に設置されるものであって前記発報装置との間で通信の相手として特定の1つの相手を指定する1対1の通信を行う通信方式であり通信距離が1.5km以上の長距離無線通信によるユニキャストの無線通信が可能でかつ前記発報装置以外の装置に対して特に通信の相手を指定せず無線通信の通信範囲内にある相手全員に対してデータを送信する通信方式であるブロードキャストの無線通信が可能であり、前記発報装置からユニキャストの通信により前記発報信号を受信した場合にブロードキャストの通信により通報信号を一斉送信する中継器と、前記作業現場の管理員又は作業員が携帯するもの若しくは前記作業現場に設置されるものであって、前記通報信号を受信した場合に前記通報信号を受信した旨を報知する現場用報知装置と、を備える。
実施形態の鉄道の線路の保線作業において作業現場の作業員に対して列車が接近していることを通報するための通報支援システムであって、列車の進来を見張る中継見張員によって操作された場合に、又は列車の進来を検知した場合に発報信号を送信する発報装置と、前記発報装置と前記作業現場との間に設置されるものであって前記発報装置との間で通信の相手として特定の1つの相手を指定する1対1の通信を行う通信方式であり通信距離が1.5km以上の長距離無線通信によるユニキャストの無線通信が可能でかつ前記発報装置以外の装置に対して特に通信の相手を指定せず無線通信の通信範囲内にある相手全員に対してデータを送信する通信方式であるブロードキャストの無線通信が可能であり、前記発報装置からユニキャストの通信により前記発報信号を受信した場合に前記発報装置に対して前記発報信号を正常に受信した旨を示す応答信号を送信するとともにブロードキャストの通信により通報信号を一斉送信する中継器と、前記作業現場の管理員又は作業員が携帯するもの若しくは前記作業現場に設置されるものであって、前記通報信号を受信した場合に前記通報信号を受信した旨を報知する現場用報知装置と、を備える。