図1は、実施例1のスロットマシン1の斜視図である。スロットマシン1は、正面側に開口部を有する筐体2と、該筐体2の開口部を前方から覆う前扉3とを備えている。図2に示すように、前扉3は筐体2の一側縁に軸支されて、筐体2の開口部を開閉可能となっている。前扉3の中央部には、筐体2の内部に配設された三つのリール9を視認するための視認窓4が設けられる。また、前扉3の正面側には、視認窓4の下方に、遊技操作に用いるベットスイッチ5a,5b、スタートスイッチ6、ストップスイッチ7、払出スイッチ8等の各種スイッチが配設され、さらには、メダルXを一枚ずつ投入可能な投入口10が開口している。また、前扉3の下部には、メダルXが排出される払出口11が開口するとともに、払出口11から排出されるメダルXを受け入れる受皿12が配設される。
図2に示すように、筐体2の内部には、リール9の下方に、ホッパー装置13が配設される。ホッパー装置13は、払出口11へメダルXを払い出すものであり、図2に示すように、筐体2の底板に係止される。メダルXを貯留するメダルタンク13aと、メダルタンク13a内に貯留したメダルXの払い出しを行うホッパー本体13bとを備える。メダルタンク13aは、上部が開放されており、後述するように、投入口10に投入されたメダルXをメダルタンク13aに受け入れて貯留する。ホッパー本体13bは、メダルタンク13aの底部から円板状のロータ(図示省略)でメダルXを取り込んで、ホッパー装置13の正面側のメダル送出部13cから前方へ一枚ずつ送り出し、当該メダルXを前扉3の払出口11から受皿12へ払い出す。
図2に示すように、前扉3の背面側には、投入口10から投入されたメダルXを振り分けるメダルセレクタ15が配設される。メダルセレクタ15は、投入口10に投入されたメダルXを受け入れて、メダルタンク13aに取り込む取込メダルと、前扉3の払出口11へ返却する返却メダルとに選別し、夫々異なる出口から排出する。また、前扉3の背面側には、メダルセレクタ15から排出される返却メダルを払出口11へ流下させるメダルシュート16が配設される。
図3,4に示すように、メダルセレクタ15やメダルシュート16は、前扉3の背面側に装着される。具体的には、前扉3の正面側中央部に形成された開口部18に、投入口10を備える投入口部材19が嵌着される。そして、前扉3の背面側には、投入口部材19の直下にセレクタホルダ20が配設され、セレクタホルダ20に対して、メダルセレクタ15が脱着可能に装着される。また、メダルシュート16は、メダルセレクタ15の配設位置と、払出口11の開口位置とを結ぶように前扉3の背面側に配設される。
以下に、前扉3に取り付けられる各部品について説明するが、以下の説明における、各部品の正面、背面、上下、左右は、図3の右上部に示す方向、すなわち、前扉3に取り付けた状態における方向を指すものである。
図5に示すように、投入口部材19は、投入口10が形成された樹脂部材であり、前扉3の開口部18と嵌合する嵌合部19aと、嵌合部19aの上部に配設されて前扉3の正面側に突出する突出部19bとを備えている。投入口10は、規定サイズのメダル一枚が漸く通過可能な寸法のスリット状の貫通孔であり、嵌合部19aと突出部19bを上下に貫通している。投入口部材19は、メダルセレクタ15と位置合わせするために、前扉3の開口部18に嵌着された状態で、前扉3の背面側のセレクタホルダ20と連結される。具体的には、図5,6に示すように、投入口部材19は、横辺部22aと、横辺部22aの端縁から垂下する一対の縦辺部22b,22bとからなるL字状の連結金具22を介して、セレクタホルダ20の上部と連結される。連結金具22の横辺部22aと縦辺部22b,22bには、ネジ挿通孔23a〜23cが夫々形成されており、図5に示すように、連結金具22は、横辺部22aのネジ挿通孔23aに挿通したネジ24aを、投入口部材19の底部に形成されたネジ孔25aに螺合させることにより、投入口部材19の底部に螺着される。そして、図6に示すように、投入口部材19と連結金具22を螺着した状態で、縦辺部22bのネジ挿通孔23b,23cに挿通したネジ24b,24cを、セレクタホルダ20の上部に形成されたネジ孔25b,25cに螺合させることにより、投入口部材19が、セレクタホルダ20の上部に連結される。ここで、本実施例では、連結金具22を投入口部材19に螺着した状態では、連結金具22の上面を投入口部材19の底面に当接させることにより、投入口部材19と連結金具22を上下方向に位置決めし、また、投入口部材19の底部に形成された前後方向のリブ19cを、横辺部22aに形成された前後方向の切込22cと嵌合させることにより、投入口部材19と連結金具22を水平方向に位置決めしている。また、投入口部材19とセレクタホルダ20を連結するネジ24a〜24cの頭部は、セレクタホルダ20にメダルセレクタ15を装着した際に、メダルセレクタ15によって覆われるよう構成されている。
図6,7に示すように、セレクタホルダ20は、金属板片を屈曲加工してなるものであり、上下に形成されたネジ挿通孔23d〜23gを介して、前扉3に螺着される。セレクタホルダ20は、メダルセレクタ15の正面側に配置される主板部20aと、主板部20aの左右両側縁から背面側に延出する側板部20b,20cと、主板部20aの右上部から上方に延出する投入口連結部20dと、左側の側板部20cから左方に延出するガイド装着部20eと左側の側板部20cから左方に延出するガイド装着部20eとを備えてなる。後述するように、左右の側板部20b,20cには、メダルセレクタ15が係止される。投入口連結部20dは、上述したように、連結金具22を介して投入口部材19が連結される部分である。
図6,7に示すように、セレクタホルダ20のガイド装着部20eには、メダルガイド26が装着される。メダルガイド26は、メダルセレクタ15から取込メダルとして排出されたメダルXを背面側のメダルタンク13aへ案内する樹脂部材であり、メダルXの進行方向を転換させる案内面26aと、案内面26aの両側に形成されてメダルXが案内面26aの上から外れるのを防止する側壁26b,26bとを備えている。図8に示すように、メダルガイド26の上部には、ガイド装着部20eの上部と係合するクリップ部26cと、ネジ孔25dが形成されたボス26dとが配設される。メダルガイド26は、クリップ部26cをガイド装着部20eの上部に係合させた状態で、ガイド装着部20eに形成されたネジ挿通孔23hにネジ24dを挿通して、ボス26dのネジ孔25dと螺合させることにより、セレクタホルダ20に固定される。
また、図6,7に示すように、主板部20aの背面側には、アースとしてのシールドフィンガー27が固着される。すなわち、シールドフィンガー27は、セレクタホルダ20に装着されたメダルセレクタ15の通路切替ソレノイド39(図9(a)参照)と当接して、通路切替ソレノイド39とセレクタホルダ20とを短絡する。
図9,10に示すように、メダルセレクタ15は、前後寸法の短い直方体形状をなしている。メダルセレクタ15は、板状のセレクタベース部材30の背面側に、板状のセレクタカバー部材31を重ねてなるものである。重ね合わせたセレクタベース部材30とセレクタカバー部材31の間隙には、前後に狭幅なメダル通路32が形成される。すなわち、狭幅のメダル通路32の正面側をセレクタベース部材30が形成し、背面側をセレクタカバー部材31が形成する。
メダルセレクタ15は、投入口10へ投入されるメダルXをメダル通路32に受け入れて、メダルタンク13aに取り込む取込メダルと、前扉3の払出口11へ返却する返却メダルとに振り分けて、夫々異なる出口から排出する。詳述すると、メダルセレクタ15の右上部には、セレクタベース部材30とセレクタカバー部材31の間に投入メダル入口34が形成されており、投入口10へ投入されたメダルXは、投入メダル入口34からメダル通路32に流入する。そして、投入メダル入口34から流入したメダルXは、メダル通路32の流下中に返却メダルと取込メダルに振り分けられる。そして、返却メダルは、メダルセレクタ15の底部に形成された返却メダル出口35から排出され、取込メダルは、メダルセレクタ15の左側部に形成された取込メダル出口36から排出される。また、メダルセレクタ15には、投入メダル入口34や取込メダル出口36等を通過するメダルXを検知するメダルセンサ(図示省略)が各所に配設される。
ここで、セレクタベース部材30とセレクタカバー部材31は、お互いの左上部で相互回動可能に連結されており、セレクタカバー部材31は、図10(a)に示すように、セレクタベース部材30の背面に最も近接して狭幅なメダル通路32を形成する閉止位置から、図10(b)に示すように、前記メダル通路32を拡幅して開放する方向に離間可能に構成されている。そして、セレクタカバー部材31は、セレクタベース部材30との連結部分に取り付けられたコイルバネ33によって、通常は閉止位置に付勢される。かかる構成によれば、コイルバネ33に抗してセレクタカバー部材31をセレクタベース部材30の背面側に回動させて、メダル通路32を開放することにより、メダル通路32に詰まったメダルXの除去や、メダル通路32の清掃等を簡便に行うことができる。
返却メダルと取込メダルの選別について詳述すると、メダルセレクタ15は、通常は、適正サイズのメダルXが取込メダルに振り分けられ、不適正なサイズのメダルXが返却メダルに振り分けられる。具体的には、メダル通路32では、適正な直径のメダルXのみが、メダル通路32の底部に配置された支持レール38で支持されて、メダルセレクタ15の左側部の取込メダル出口36へと流下するよう構成されている。そして、不適正な直径のメダルXについては、支持レール38の上から脱落して、返却メダル出口35へと流下するよう構成されている。また、メダルセレクタ15には、通路切替ソレノイド39が配設されており、通路切替ソレノイド39の非通電状態では、支持レール38がメダル通路32から退避することで、メダルXのサイズに関わらず、メダル通路32を流下する全てのメダルXが返却メダル出口35へと流下するよう構成されている。
メダルセレクタ15は、前扉3に螺着されたセレクタホルダ20に対して脱着可能に係止されることで、前扉3の背面側の、所定の装着位置に保持される。具体的には、図9に示すように、セレクタベース部材30の左右両側には、係止ピン40a,40bが上部と下部に1本ずつ突設され、また、セレクタベース部材30の左側下部には、可撓性の係合片41が配設される。一方、図7に示すように、セレクタホルダ20の左右の側板部20b,20cには、メダルセレクタ15の上側の係止ピン40aを引っ掛ける係止フック20fと、下側の係止ピン40bを嵌着する係止溝20gが形成される。また、左の側板部20cの下部には、係合片41に形成された突部41aと係合する係止孔20hが形成される。
そして、メダルセレクタ15をセレクタホルダ20に装着する場合には、まず、図11(a)に示すように、上側の係止ピン40aをセレクタホルダ20の左右の係止フック20fに引っ掛ける。そして、かかる状態から、メダルセレクタ15の下部を前方に回動させて、下側の係止ピン40bを左右の係止溝20gに嵌着すると、図11(b)に示すように、メダルセレクタ15の係合片41の突部41aがセレクタホルダ20の係止孔20hに係合して、メダルセレクタ15が装着位置に係止される。メダルセレクタ15の装着位置では、メダルセレクタ15の投入メダル入口34が投入口部材19の投入口10と接続されて、投入口10に投入されたメダルXをメダル通路32に受入可能となる。また、メダルセレクタ15の取込メダル出口36は、メダルガイド26の案内面26aと接続され、返却メダル出口35は、メダルシュート16の上端部に開口する返却メダル受入口46(図12参照)と接続される。なお、装着位置において、メダルセレクタ15は、セレクタベース部材30の係止ピン40a,40bと係合片41を介してセレクタホルダ20に係止されており、セレクタカバー部材31はセレクタホルダ20と係合していない。このため、メダルセレクタ15は、セレクタホルダ20に係止された状態であっても、セレクタカバー部材31を閉止位置から背面側へ回動させることができる。
メダルセレクタ15を装着位置に係止した状態にあって、メダルセレクタ15の係合片41の突部41aと、セレクタホルダ20の係止孔20hとの係合は、係合片41の端部を内側に撓ませることにより解除可能である。すなわち、メダルセレクタ15を装着位置から取り外す場合には、係合片41と係止孔20hの係合を解除して、メダルセレクタ15の下部を背面側に回動させた後に、上側の係止ピン40aを係止フック20fから取り外せばよい。
図3,4,12に示すように、メダルシュート16は、前扉3の背面側に取り付けられて、前扉3との間にメダル返却通路45を形成する。メダル返却通路45は、メダルセレクタ15の返却メダル出口35と、前扉3の下部に開口する払出口11とを連通して、返却メダル出口35から排出されるメダルXを払出口11へ流下させて、払出口11から受皿12に返却するための通路である。具体的には、図12に示すように、メダル返却通路45の上端部には、メダルセレクタ15の返却メダル出口35の直下に開口して、返却メダル出口35から排出されるメダルXを受け入れる返却メダル受入口46が設けられている。メダル返却通路45の下端部は、背面側から払出口11に接続しており、返却メダル受入口46から受け入れたメダルXは、メダル返却通路45に沿って払出口11の背面側へ流下し、払出口11から正面側の受皿12に排出される。
図2〜4に示すように、メダルシュート16の背面側下部には、スリット状の払出メダル受入口47が開口している。払出メダル受入口47は、前扉3の閉止状態では、ホッパー装置13のメダル送出部13cと接続されており、メダル送出部13cから弾き出されるメダルXは、払出メダル受入口47からメダル返却通路45に進入して、払出口11から受皿12へ払い出される。
図12に示すように、メダル返却通路45は、上端部の返却メダル受入口46からメダルXを左斜め下方に流下させた後に、真下に流下させるように、く字状に屈曲している。また、メダル返却通路45には、払出口11から返却メダル受入口46へ不正器具を挿通されるのを防止するために、メダルシュート16の内側面からメダル返却通路45の内側下方に突出する返し片48a〜48cが形成される。
図13,14に示すように、メダルシュート16は、前扉3の下部背面側に固定される固定樋50と、固定樋50に対して回動可能に配設される可動樋51とを備えてなる。また、固定樋50の下端部には金属製の補強カバー52が内側に配設され、固定樋50の正面側には金属製の補強プレート53が配設される。補強カバー52は、メダル返却通路45を流下するメダルXによって、メダルシュート16の下端部が摩耗するのを防止するためのものであり、補強プレート53は、払出メダル受入口47からメダル返却通路45に勢いよく進入するメダルXによって、前扉3が摩耗するのを防止するためのものである。
図13,14に示すように、固定樋50は、メダル返却通路45を構成する凹部が正面側に形成された樹脂部材である。メダル返却通路45をメダルXの流下方向に対して上流部、中流部、下流部に三等分した場合、メダル返却通路45の中流部と下流部の全体と、上流部の下半分は、固定樋50によって形成される。固定樋50には、上部と中央部にネジ挿通孔23i,23jが形成されており、図4に示すように、固定樋50は、前扉3の背面下部に当接した状態で、ネジ挿通孔23i,23jを介して前扉3に螺着される。なお、固定樋50の上部は、セレクタホルダ20とともに前扉3に共締めされており、これにより、メダルセレクタ15とメダルシュート16が位置合わせされる(図16参照)。また、上述した払出メダル受入口47は固定樋50の背面側に形成され、返し片48a〜48cは固定樋50の凹部の内側に突成される。また、固定樋50の上端部には、可動樋51を軸支する軸受部54が形成される。
可動樋51は、一体の樹脂部材によって構成されるものであり、メダル返却通路45を形成する樋部56と、樋部56の上方に形成されてメダルセレクタ15の背面側を覆うセレクタ規制部57と、下端部に形成される左右一対の回動軸58,58とを備えている。そして、可動樋51は、固定樋50の軸受部54に回動軸58を軸支されることにより、図13(a)に示すように、固定樋50の上端部から起立する通路形成位置から、図13(b)に示すように、回動軸58を中心に背面側に約90°傾倒する退避位置まで回動可能となっている。なお、可動樋51は、回動軸58の周囲に形成された回動規制部59が固定樋50と当接することにより、通路形成位置よりも前方、及び、退避位置より下方へは回動不能となっている。
可動樋51の樋部56は、メダル返却通路45を形成する部位であり、図14に示すように、メダル返却通路45の背面側を形成する背板部56aと、左右両側を形成する側板部56b,56cとからなる。具体的には、図15,17に示すように、可動樋51が通路形成位置にある状態では、樋部56が前扉3の背面側に当接して、メダル返却通路45の上流部の上半分の背面側と左右両側を形成し、樋部56の上縁が返却メダル受入口46を形成する。一方、可動樋51が退避位置にある状態では、図16,18に示すように、樋部56はメダル返却通路45の背面側下方に退避して、メダル返却通路45を形成しないため、メダル返却通路45の上流部の上半分の背面側及び左右両側部が開放される。
図14に示すように、セレクタ規制部57は、メダルセレクタ15の背面よりも一回り大きい矩形板状をなし、樋部56の背板部56aの上縁から上方に延出している。また、セレクタ規制部57の下部には、正面側に膨隆する横方向の押圧リブ57aが形成される。セレクタ規制部57は、図15,17に示すように、可動樋51の通路形成位置では、返却メダル受入口46の背面側から返却メダル出口35の背面側を通り、メダルセレクタ15の背面側全体を覆う制限位置に配置される。そして、図19に示すように、かかる制限位置において、セレクタ規制部57の押圧リブ57aが、閉止位置にあるセレクタカバー部材31の背面の下縁31aに背面側から当接する。このように、制限位置ではセレクタ規制部57が、閉止位置のセレクタカバー部材31の背面に当接するため、セレクタカバー部材31は、制限位置のセレクタ規制部57によって閉止位置から背面側への回動を制限される。一方、可動樋51の退避位置においては、図16,18に示すように、セレクタ規制部57は、メダルセレクタ15の背面側下方に退避する非制限位置に配置される。かかる非制限位置では、セレクタ規制部57がセレクタカバー部材31の回動範囲から退避するため、セレクタ規制部57に制限されることなく、セレクタカバー部材31を閉止位置の背面側に回動して、メダル通路32を開放することができる。
セレクタ規制部57の左右両側縁には、セレクタホルダ20と係合して可動樋51を通路形成位置に保持するための係脱手段60が形成される。係脱手段60は、先端に係止爪60aが形成された、正面側に突出する係止部60bと、係止部60bの基端から背面側に突出する解除操作部60cとからなる。図15,16に示すように、かかる係脱手段60は、可動樋51の通路形成位置において、セレクタホルダ20の左右の係止フック20fの前縁20i(図7参照)に係止爪60aを夫々係合させることにより、可動樋51が背面側へ回動しないようセレクタホルダ20に係止して、可動樋51を通路形成位置に保持する。上述のように、可動樋51は、通路形成位置から退避位置に変換することで、メダル返却通路45の上流部を開放させることができ、また、セレクタカバー部材31を閉止位置から背面側に回動させてメダル通路32を開放可能となるが、このように、可動樋51は係脱手段60によって通路形成位置に保持されるため、係脱手段60とセレクタホルダ20の係合を解除しなければ、メダル返却通路45やメダル通路32を開放し得ないよう構成される。
係脱手段60とセレクタホルダ20との係合は、解除操作部60cを内側に押圧して、係止爪60aを外側に撓ませることにより解除可能である。すなわち、解除操作部60cを操作可能な前扉3の開放状態であれば、係脱手段60とセレクタホルダ20の係合を解除して、可動樋51を通路形成位置から退避位置に変換できる。なお、退避位置へ傾倒させた可動樋51は、回動規制部59が固定樋50と当接することによって退避位置から下方に回動しないよう保持される。そして、退避位置の可動樋51を上方に回動させて通路形成位置に復帰させた場合は、係脱手段60がセレクタホルダ20に再係合して、可動樋51は再び通路形成位置に保持される。
以上のように、本実施例では、前扉3を開放し、係脱手段60とセレクタホルダ20との係合を解除して、可動樋51を通路形成位置から退避位置に変換すれば、メダル返却通路45の上流部を開放させることができる。このため、本実施例にあっては、メダル返却通路45でメダル詰まりが発生した際には、可動樋51を退避位置に変換してメダル返却通路45を開放し、当該開放部分からメダル返却通路45に指や工具を挿入して、詰まったメダルXを摘まんだり、掻き出したりするなどして、メダル詰まりを解消できる。特に、退避位置に変換した可動樋51は、退避位置で保持されるため、本実施例ではメダルシュート16を前扉3から取り外す手間は不要である。また、可動樋51は、メダル返却通路45の上流部のみしか形成しておらず、可動樋51を退避位置に変換しても、メダル返却通路45の下流部は開放されないため、メダル詰まり発生時に可動樋51を退避位置に変換しても、メダル返却通路45に滞留するメダルXがこぼれ難いという利点がある。このように、本実施例では、メダル返却通路45で重度のメダル詰まりが発生した場合でも、メダルシュート16を取り外すことなくメダル詰まりを解消でき、また、メダル詰まり解消作業においてメダル返却通路45からメダルXがこぼれ落ちるおそれも少ないため、メダル返却通路45におけるメダル詰まりを従来構成よりも容易に解消できる。
また、本実施例では、不正器具の挿通を防止するためにメダル返却通路45の内部に返し片48a〜48cが配設されており、返し片48a〜48cの配設部位でメダル詰まりが比較的発生し易くなっている。しかしながら、本実施例では、図16,18に示すように、メダル返却通路45の、可動樋51の退避位置で開放される部分の近傍に返し片48a,48bが配設されているため、返し片48a,48bの配設部位で生じるメダル詰まりを、メダル返却通路45の開放部分から容易に解消できるという利点がある。また、本実施例では、可動樋51を退避位置に変換した際に、返し片48a,48bの配設部位は開放されず、返し片48a,48bの配設部位の上方でメダル返却通路45が開放されるため、可動樋51を退避位置に変換してメダル返却通路45を開放した際に、返し片48a,48bの配設部位に詰まったメダルXがこぼれ落ちにくいという利点がある。
また、本実施例では、可動樋51が、通路形成位置において、メダル返却通路45の上流部の背面側及び左右両側部を形成するとともに、下端部の回動軸58を中心に通路形成位置から背面側に傾倒することによって、メダル返却通路45が開放されるよう構成される。かかる構成にあっては、図16,18に示すように、メダル返却通路45の上流部の開放部分からメダル返却通路45の内部を覗き込み易く、また、当該開放部分からメダル返却通路45に指や工具を挿入する際に、退避位置の可動樋51が邪魔となり難いため、メダル返却通路45におけるメダル詰まりを比較的容易に解消となる。また、本実施例では、可動樋51を通路形成位置から退避位置に変換した際に、メダル返却通路45の背面側と左右両側を形成していた樋部56が、メダル返却通路45の開放部分の背面側下方に退避するため、メダル返却通路45の開放部分からメダルXがこぼれ落ちた場合でも、背面側下方に退避した樋部56で当該メダルXを受け止めて、当該メダルXが床面にこぼれ落ちるのを防止できるという利点がある。
また、本実施例では、可動樋51は上方に延出するセレクタ規制部57を備え、可動樋51の通路形成位置では、セレクタ規制部57がセレクタカバー部材31の閉止位置からの回動を制限する制限位置に配置され、可動樋51の通路形成位置では、セレクタ規制部57がセレクタカバー部材31の閉止位置からの回動を制限する制限位置に配置されるよう構成されている。かかる構成によれば、メダルシュート16によって、メダルセレクタ15のセレクタカバー部材31の回動を適切に制限できる。すなわち、メダルシュート16は、返却メダルをメダルセレクタ15から受け入れるために、メダルセレクタ15に近接配置されるものであるため、セレクタ規制部57を配設する目的で、メダルシュート16を無理にメダルセレクタ15に近接配置する必要はなく、メダルシュート16の配置自由度が損なわれることはない。また、セレクタ規制部57の配設に要するスペースも最低限で済むため、他の部材を配置するスペースをメダルセレクタ15の周囲に確保し易いという利点もある。
また、本実施例では、図18に示すように、セレクタ規制部57は、制限位置において、返却メダル受入口46の背面側から返却メダル出口35の背面側を通り、閉止位置のセレクタカバー部材31の背面側まで延出している。このように、本実施例では、可動樋51の通路形成位置において、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分の背面側に、セレクタ規制部57が配置されるため、払出口11から挿入した不正器具を、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分から筐体2の内部に侵入させる不正行為が困難となっている。特に、本実施例に係るセレクタ規制部57は、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の全幅に亘って配設されているため、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分から背面側の筐体2へ不正器具を挿通するのを確実に防止できる。
また、可動樋51は、係脱手段60によって通路形成位置に係止されるよう構成されており、係脱手段60は、前扉3の背面側であって、メダル返却通路45の外側に配設された解除操作部60cの操作により係止解除可能に構成されているため、払出口11に挿入した不正器具等によってメダル返却通路45の内部から可動樋51を退避位置に変換されることがない。
また、従来構成のように固定樋50に返却メダル受入口46を形成する場合には、メダルセレクタ15の脱着の邪魔とならないように、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の間に一定のクリアランスを設ける必要となるが、本実施例では、可動樋51が返却メダル受入口46を形成しており、メダルセレクタ15を脱着する際は、可動樋51をメダルセレクタ15の回動の邪魔にならない退避位置に退避しておくことができるため、従来構成に比べて、返却メダル受入口46をメダルセレクタ15の返却メダル出口35に近接配置できる。このため、本実施例にあっては、従来構成に比べて、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分に不正器具を挿通し難いという利点がある。
本実施例は、上記実施例1からメダルシュート等の構成を変更した変形例である。このため、以下の説明では、実施例1と共通する構成については、本文中及び図中で共通符号を使用して詳細な説明を省略する。
実施例1からの変更点について説明すると、まず、図21に示すように、本実施例では、セレクタホルダ20の右上部に、係止フック20fから右方に延出するロック片装着部20jが形成されており、当該ロック片装着部20jの背面側に、ロック片42が回動可能に取り付けられている。ロック片42は、図21(a)に示すように、セレクタホルダ20に装着されたメダルセレクタ15の上方に回動して、メダルセレクタ15の装着位置からの取外しを許容する解除位置と、図21(b)に示すように、装着位置のメダルセレクタ15の背面側に回動して、メダルセレクタ15の装着位置に係止するロック位置とに変換可能となっている。すなわち、本実施例では、メダルセレクタ15は、係合片41のセレクタホルダ20との係合だけでなく、ロック片42との係合によっても装着位置に保持される。また、図21(b)に示すように、ロック片42は、ロック位置において閉止位置のセレクタカバー部材31の背面側右上部に配置されるため、ロック位置では、セレクタカバー部材31の閉止位置からの回動も制限する。
また、図22,23に示すように、本実施例に係るメダルシュート16bは、固定樋50bと、固定樋50bの上端部に回動可能に配設される可動樋51bとを備えているが、実施例1(図13,14参照)に比べて、固定樋50bが大きく、可動樋51bが小さくなっている。具体的には、図23に示すように、固定樋50bは、実施例1の固定樋50よりも上方に延出して、メダル返却通路45を実施例1の固定樋50よりも上流側まで形成するものであり、可動樋51bを軸支する軸受部64は実施例1よりも上部に形成されている。一方、図23に示すように、可動樋51bは、メダル返却通路45を形成する樋部66と、セレクタカバー部材31の回動を制限するセレクタ規制部67と、下端部に形成される回動軸68,68とを備えている。そして、可動樋51bは、回動軸68を固定樋50bの軸受部64に保持されることにより、固定樋50bの上端部から起立する通路形成位置(図22(a)参照)から、回動軸68を中心に背面側に約45°傾倒する退避位置(図22(b)参照)まで回動可能となっている。ここで、可動樋51bを退避位置に傾倒させた状態では、回動軸68の周囲の回動規制部69が固定樋50bと当接することにより、可動樋51bは、それ以上傾倒不能となって退避位置に保持される。
可動樋51bの樋部66は、図23に示すように、メダル返却通路45の背面側を形成する背板部66aと、左右両側を形成する側板部66b,66cとからなり、図24(a),25(a)に示すように、可動樋51bの通路形成位置において、樋部66は返却メダル出口35の直下で、メダル返却通路45の上流部の背面側と左右両側を形成する。ここで、本実施例では、固定樋50bが実施例1よりも上流側までメダル返却通路45を形成しているため、可動樋51bの樋部66がメダル返却通路45を形成するのは、返却メダル受入口46が形成される上流部の上端部のみとなっている。このため、本実施例では、可動樋51bを退避位置に変換して、樋部66を背面側下方に退避させると、図24(b),25(b)に示すように、メダル返却通路45の返却メダル受入口46の近傍部分が開放される。
図23に示すように、セレクタ規制部67は、樋部66の背板部66aの上縁から上方に延出する矩形板状をなしている。本実施例のセレクタ規制部67は、横幅はメダルセレクタ15と同程度であるが、縦幅はメダルセレクタ15の1割程度となっている。また、セレクタ規制部67には、実施例1と同様に、正面側に膨隆する横方向の押圧リブ67aが形成される。かかるセレクタ規制部67は、図24(a),25(a)に示すように、可動樋51bの通路形成位置では、閉止位置にあるセレクタカバー部材31の背面の下縁31aに当接する制限位置に保持されて、セレクタカバー部材31の、閉止位置から背面側への回動を制限する。一方、図24(b),25(b)に示すように、可動樋51bの退避位置においては、セレクタ規制部67は、メダルセレクタ15の背面側下方に退避する非制限位置に配置される。そして、かかる非制限位置では、セレクタ規制部67がセレクタカバー部材31の回動範囲から退避するため、セレクタ規制部67に制限されることなく、セレクタカバー部材31を閉止位置の背面側に回動して、メダル通路32を開放することができる。
図22に示すように、本実施例の可動樋51bは樋部66の側板部66bから突出する連動部70を備え、かかる連動部70をメダルセレクタ15と係合させることによって、可動樋51bが通路形成位置に、セレクタ規制部67が制限位置に保持される。具体的には、連動部70は、可動樋51bの退避位置では、図22(b)に示すように、上方に突出する第1位置に保持される。そして、連動部70は、可動樋51bを退避位置から通路形成位置へ回動するのに伴って、第1位置から正面側に傾倒して、図22(a)に示すように、可動樋51bの通路形成位置では、正面側前方に斜めに突出する第2位置に保持される。そして、図26(c)に示すように、メダルセレクタ15が装着位置に係止され、かつ、可動樋51bが通路形成位置に配置された状態では、第2位置の連動部70の背面側に、セレクタベース部材30の下部が配置されて、第2位置において連動部70がセレクタベース部材30と前後に係合することにより、可動樋51bを背面側へ回動不能となって、可動樋51bが通路形成位置に、セレクタ規制部67が制限位置に保持される。
このように、本実施例では、装着位置のメダルセレクタ15によって、可動樋51bが通路形成位置に、セレクタ規制部67が制限位置に保持されるため、メダルセレクタ15の装着位置での係止を解除して、図24(b),25(b)に示すように、メダルセレクタ15を装着位置から回動させなければ、可動樋51bを退避位置に、セレクタ規制部67を非制限位置に変換できない。すなわち、本実施例では、メダルセレクタ15を装着位置から回動させて、投入口10やメダル返却通路45からメダル通路32を分離しなければ、セレクタベース部材31を回動してメダル通路32を開放させることができない。したがって、本実施例では、投入口10やメダル返却通路45からメダル通路32に不正器具を挿入して、メダル通路32を開放させる不正行為が困難となる。
本実施例では、メダルセレクタ15を装着位置へ係止する際に、メダルセレクタ15と連動して、可動樋51bが退避位置から通路形成位置へ、セレクタ規制部67が非制限位置から制限位置に回動するよう構成される。具体的には、メダルセレクタ15を装着位置へ係止する際には、図26(a)→26(b)→26(c)に示すように、メダルセレクタ15の上側の係止ピン40aをセレクタホルダ20の係止フック20fに引っ掛けて、当該係止ピン40aを中心に、メダルセレクタ15の下部を前方に回動させて、下側の係止ピン40bをセレクタホルダ20の係止溝20gに嵌着する。ここで、本実施例では、図26(a)に示すように、可動樋51bの退避位置にあって、第1位置の連動部70がメダルセレクタ15の回動範囲に突出しており、図26(b)に示すように、係止ピン40aを中心にメダルセレクタ15を装着位置まで前方回動させる途上で、メダルセレクタ15(セレクタベース部材30)の下部が、第1位置の連動部70に背面側から当接することとなる。このため、図26(b)の状態から、そのままメダルセレクタ15を前方回動させると、連動部70がメダルセレクタ15に押圧されて前方回動し、可動樋51aが通路形成位置方向に回動する。そして、図26(c)に示すように、メダルセレクタ15を装着位置まで回動させると、連動部70が第2位置まで回動して、可動樋51bが通路形成位置に、セレクタ規制部67が制限位置に変換される。
このように、本実施例では、メダルセレクタ15を装着位置に装着すれば、可動樋51bが通路形成位置へ、セレクタ規制部67が制限位置へ自然に保持されて、メダル返却通路45が閉鎖されるとともに、セレクタカバー部材31の回動が制限される。このため、本実施例では、可動樋51bを退避位置に保持したまま前扉3を閉止して、メダル返却通路45が開放され、また、セレクタカバー部材31の回動が制限されない状態で遊技が行われるのを防止できる。また、メダルセレクタ15を装着位置へ係止する際に、メダルセレクタ15と連動して、可動樋51bが回動するよう構成されているので、例えばメダルXがメダル返却通路45から外れることを予防する背板部66aを可動樋51bに設けずに固定樋50bに設ける場合に比べ、背面板66aが、メダルセレクタ15を装着位置へ係止する際の邪魔となりにくい。
また、本実施例では、前扉3の閉止時に、メダルシュート16bの背面側には、筐体2の内部のホッパー装置13が配置されるが(図2参照)、本実施例では、可動樋51bを退避位置に傾倒させたまま前扉3を閉じたとしても、メダルシュート16bがホッパー装置13と衝突して破損するおそれはない。図26に示すように、本実施例では、可動樋51bをホッパー装置13の上縁の高さ(図26中のH線)よりも上方で軸支するとともに、退避位置における背面側への傾倒角度を小さくすることで、退避位置においても可動樋51bが、ホッパー装置13の上縁(図26中のH線)よりも上方に配置されるためである。
本実施例は、実施例3に係る可動樋51bの構成を一部変更したものである。具体的には、実施例3の可動樋51bが樋部66の上縁にセレクタ規制部67を備えているのに対して、本参考例に係る可動樋51cは、図27に示すように、樋部66の上縁にセレクタ規制部が配設されていない。このため、実施例では、図27に示すように、可動樋51cは、通路形成位置にあるときでも、セレクタカバー部材31の回動範囲に存在しない。したがって、本実施例では、可動樋51が通路形成位置にあるときでも、ロック片42を解除位置に保持すれば、セレクタカバー部材31を閉止位置から背面側に回動してメダル通路32を開放することができる。
<参考例1>
本参考例は、上記実施例3からメダルシュート16bの構成を変更した変形例である。このため、以下の説明では、実施例3と共通する構成については、本文中及び図中で共通符号を使用して詳細な説明を省略する。
図28に示すように、本参考例に係るメダルシュート16dは、固定樋50dと、固定樋50dの上端部に回動可能に配設される可動部51dとを備えてなる構成となっている。本参考例の固定樋50dは、メダル返却通路45を全長に亘って形成するものであり、固定樋50dの上端部には、返却メダル出口35の直下に返却メダル受入口46が形成される。一方、可動部51dは、セレクタカバー部材31の回動を制限するセレクタ規制部77と、固定樋50dに軸支される回動軸78と、正面側に突出する連動部80とを備えてなるものであり、メダル返却通路45を形成する樋部は具備していない。可動部51dは、図28(a)に示すように、連動部80が装着位置のメダルセレクタ15と係合する定常位置から、図28(b)に示すように、回動軸78を中心にして定常位置から背面側に約30°傾倒する退避位置まで回動可能となっている。
本参考例のセレクタ規制部77は、メダルセレクタ15と同じ程度の横幅を有する矩形板状をなすものであり、図28(a)に示すように、可動部51dの定常位置では、メダルセレクタ15の背面側を覆う制限位置に保持されて、セレクタカバー部材31の閉止位置から背面側への回動を制限する。ここで、本参考例に係るセレクタ規制部77は、制限位置において、閉止位置のセレクタカバー部材31の背面には当接せず、セレクタカバー部材31を閉止位置から背面側に約10°回動した時点で、セレクタカバー部材31と当接して、当該位置から背面側への回動を規制するよう構成される。また、セレクタ規制部77は、制限位置において、返却メダル受入口46の背面側及び返却メダル出口35の背面側を通り、閉止位置のセレクタカバー部材31の背面側まで延出している。このため、セレクタ規制部87の制限位置では、払出口11から挿入した不正器具を、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分から背面側の筐体2へ侵入させる不正行為が困難となる。
一方、図28(b)に示すように、可動部51dの退避位置においては、セレクタ規制部77は、メダルセレクタ15の背面側下方に退避する非制限位置に配置される。そして、かかる非制限位置では、セレクタ規制部77がセレクタカバー部材31の回動範囲から退避するため、セレクタ規制部77に制限されることなく、セレクタカバー部材31を閉止位置の背面側に回動して、メダル通路32を開放することができる。
図28(a)に示すように、本参考例に係る可動部51dは、実施例3に係る可動樋51bと同様に、連動部80を装着位置のメダルセレクタ15と係合させることによって定常位置に保持される。また、図28(b)に示すように、メダルセレクタ15を装着位置から背面側に回動させると、連動部80とメダルセレクタ15の係合が解除され、メダルセレクタ15によってセレクタ規制部77を押圧されることにより、可動部51dが退避位置に傾倒するよう構成されている。一方、背面側に回動させたメダルセレクタ15を装着位置まで回動させると、メダルセレクタ15の回動範囲に配置された連動部80が、メダルセレクタ15に押圧されて連動することにより、可動部51dが正面側上方に回動して定常位置に復帰するよう構成されている。このように、本参考例に係る可動部51dは、メダルセレクタ15を装着位置から取り外す際に、自然と退避位置に傾倒してセレクタ規制部77が非制限位置となるため、セレクタ規制部77がメダルセレクタ15を取り外す作業の邪魔になり難い。また、可動部51dは、メダルセレクタ15を装着位置に取り付ける際に、自然と定常位置に回動して、セレクタ規制部77が制限位置となるため、メダルセレクタ15の装着後に、セレクタ規制部77を制限位置に復帰させる手間が不要であり、セレクタ規制部77を制限位置に戻し忘れるおそれもない。
このように、セレクタ規制部は、メダル返却通路を開閉しない可動部に配設することも可能である。なお、本参考例に係るセレクタ規制部77は、制限位置においてメダルセレクタ15の背面側を覆う矩形板状をなしているが、かかるセレクタ規制部77とは別に、メダルセレクタ15の一側又は両側を覆う側板部を可動部51dに配設してもよい。かかる側板部を配設すれば、払出口11から挿入した不正器具を、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分の側方から、筐体2へ侵入させる不正行為が一層困難となる。
<参考例2>
本参考例は、参考例1からセレクタ規制部77の形状を変更した変形例である。具体的には、図29(a)に示すように、本参考例に係る可動部51eのセレクタ規制部87は、可動部51eの定常位置で回動軸78から上方に延出する上方延出部87bと、該上方延出部87bの先端部から正面側に向けて突出する突出部87cとによって構成されており、セレクタ規制部87は全体として、メダルセレクタ15と同程度の横幅を有する側面視L字状をなしている。このように、本参考例に係るセレクタ規制部87は、制限位置において上端が正面側に屈曲するL字状をなしているため、セレクタ規制部87の制限位置では、払出口11から挿入した不正器具を、返却メダル出口35と返却メダル受入口46の接続部分から背面側の筐体2へ侵入させる不正行為が一層困難となる。なお、図29(b)に示すように、可動部51eの退避位置では、セレクタ規制部87はメダルセレクタ15の回動範囲から退避する非制限位置に保持されるため、セレクタ規制部87の突出部87cがメダルセレクタ15の脱着の邪魔となることはない。
なお、本発明のスロットマシンは、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、メダルセレクタやセレクタホルダの構成は、上記実施例の構成に限らず、既存一般のメダルセレクタを適宜採用可能である。
また、上記実施例に係る可動樋51は、下部を軸支されて通路形成位置から背面側に傾倒した位置を退避位置とするものであるが、本発明に係る可動樋は、通路形成位置から水平方向に回動した位置を退避位置とするものであってもよいし、通路形成位置からスライドした位置を退避位置とするものであってもよい。
また、上記実施例では、メダルシュート16が主に固定樋50と可動樋51によって構成されるが、本発明に係るメダルシュートは、可動樋の他に、メダル返却通路を開閉可能な第3の部材を具備するものであってもよい。
また、上記実施例に係るセレクタ規制部57は、制限位置においてセレクタカバー部材31の背面に当接して、セレクタカバー部材31を閉止位置に保持するよう構成されているが、本発明に係るセレクタ規制部は、セレクタカバー部材31を閉止位置に保持するものに限られず、セレクタカバー部材が閉止位置から所定角度回動した時点でセレクタカバー部材と当接して、その回動を制限するようなものであってもよい。具体的には、既存のスロットマシンには、メダル通路でメダル詰まりが発生した際に、前扉の正面側に配設されたメダル排出スイッチを操作することによって、セレクタカバー部材を一定角度範囲だけ回動させて、メダル通路を一定幅だけ拡開させ得るよう構成されたものが知られているが、このようなスロットマシンに対しても、本発明は適用可能である。