以下に添付図面を参照して、実施の形態となる三次元造形装置の説明をする。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態)
一例ではあるが、実施の形態の三次元造形装置は、熱溶解積層法(FFF(Fused Filament Fabrication))により三次元造形物を造形する。なお、三次元造形装置は、熱溶解積層法(FFF)以外の造形方式で三次元造形物を造形してもよい。
図1及び図2は、実施の形態の三次元造形装置の構成を示す図である。図1は、三次元造形装置の構成の一例を示す図である。図2は、図1に示す吐出モジュール10の構成を示す断面図である。ここでは説明を分かり易くするために三次元造形物の造形材料としてモデル材を使用する場合を一例に説明する。なお、モデル材とサポート材とを使って三次元造形物を造形することもある。サポート材は、通常、三次元造形物を構成するモデル材とは異なる材料である。サポート材により造形されるサポート部材は、最終的にはモデル材により造形されるモデル部材から除去される。そこで、以下では、モデル材とサポート材とを使用する場合の構成について、必要に応じて適宜説明する。
まず、図1及び図2を参照しながら三次元造形装置の構成について説明する。三次元造形装置1における筐体2の内部は、三次元造形物MOを造形するための処理空間となっている。筐体2の内部には造形用の台(造形台)としての造形テーブル3が設けられており、造形テーブル3上に三次元造形物MOが層の積み上げによって造形される。
造形には、造形材料として熱可塑性樹脂をマトリックスとした樹脂組成物からなる長尺のフィラメントFを用いてもよい。フィラメントFは、細長いワイヤー形状の固体材料であり、筐体2の外部のリール4に巻き回された状態でセットされている。リール4は、フィラメントFの駆動部であるエクストルーダ11の回転に引っ張られることで、大きく抵抗力を働かせることなく自転する。
筐体2の内部の造形テーブル3の上方には、造形材料を吐出する吐出モジュール10(「吐出部」の一例)が設けられている。吐出モジュール10には、2つの吐出ノズルが設けられている。第1の吐出ノズルは、三次元造形物MOを構成するモデル材のフィラメントを溶融して吐出し、第2の吐出ノズルは、そのモデル材を支持するサポート材のフィラメントを溶融して吐出する。図1において、第1の吐出ノズルは手前側に配置され、第2の吐出ノズルは奥側に配置されている。なお、吐出ノズルの数は2個に限らず任意であってよい。
第1の吐出ノズルと第2の吐出ノズルの構成は、共に同様に説明することができる。以下では、説明を簡単にするために第1の吐出ノズルについての構成を取り上げて説明する。第2の吐出ノズルについては必要に応じて随所で図示して説明する。
吐出モジュール10は、図2に示すようにエクストルーダ11、冷却ブロック12、フィラメントガイド14、加熱ブロック15、吐出ノズル18、撮像モジュール101、ねじり回転機構102、及びその他の部品によってモジュール化されている。フィラメントFは、エクストルーダ11によって引き込まれることで吐出モジュール10へ順次供給される。
撮像モジュール101は、吐出モジュール10に引き込まれたフィラメントFの通過部分の全方位の画像(360°像)を撮像する。撮像モジュール101は、一例としては、レンズなどの結像光学系と、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子と、を備えたカメラなどである。なお、図2に示す例では、吐出モジュール10に2つの撮像モジュール101を設けているが、例えば、反射板を用いて、1つの撮像モジュール101によりフィラメントFの360°像を撮像してもよい。
ねじり回転機構102は、ローラにより構築されており、吐出モジュール10に引き込まれるフィラメントFを、幅方向に回転させることでフィラメントFの方向を規制する。加熱ブロック15は、ヒータなどの熱源16と、熱源16の温度を制御するための熱電対17と、を有し、加熱ブロック15に供給されたフィラメントFを加熱溶融する。加熱ブロック15は、加熱溶融後、造形材料としてフィラメントFMを吐出ノズル18へ供給する。
冷却ブロック12は、加熱ブロック15の上部に設けられる。冷却ブロック12は、冷却源13を有し、溶融したフィラメントFMの吐出モジュール10内の上部への逆流、フィラメントFを押し出す抵抗の増大、あるいは、フィラメントFMの固化による移送路内での詰まりを防ぐ。加熱ブロック15と冷却ブロック12との間には、フィラメントガイド14が設けられている。
吐出モジュール10は、筐体2内部において3軸直交座標系(XYZ直交座標系)のXY平面のX軸方向とY軸方向へ移動可能に保持されている。具体的に、吐出モジュール10は、筐体2の対向する2つの側面に渡し架けられたX軸駆動軸31(図1のX軸方向に延びる駆動軸)に連結されキャリッジ30に保持されている。キャリッジ30は、X軸駆動軸31の回転によりX軸方向にスライド移動する連結部を有する。X軸駆動モータ32の駆動力でX軸駆動軸31が回転することにより、キャリッジ30と一体に吐出モジュール10がX軸の正又は負の方向へ移動する。
また、X軸駆動軸31とそのX軸駆動モータ32は、筐体2の2つの側面に沿ってY軸方向に渡し架けられたY軸駆動軸(図1のY軸方向に延びる駆動軸)に同じようにスライド移動可能に保持されている。従って吐出モジュール10は、Y軸駆動モータ33の駆動力によりX軸駆動軸31やキャリッジ30などと一体にY軸の正又は負の方向へ移動する。
造形テーブル3は、Z軸駆動軸34(図1のZ軸方向に延びる駆動軸)及びガイド軸35に通され、Z軸駆動軸34に昇降可能に保持されている。造形テーブル3は、Z軸駆動モータ36の駆動力により昇降する。なお、造形テーブル3には、積層された造形物を加熱する加熱部を設けてもよい。上述したX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動させる移動部の構成は、「第1の移動部」の一例である。ここでは、吐出モジュール10をX軸方向とY軸方向へ移動し、造形テーブル3をZ軸方向へ昇降させる構成を示しているが、「第1の移動部」は、この構成に限らず、吐出モジュール10と造形テーブル3とを相対的に移動することができる構成であればよい。
図1及び図2に示すように、吐出モジュール10の下端部に、造形材料であるフィラメントFMを吐出する吐出ノズル18が設けられている。吐出ノズル18は、加熱ブロック15から供給された溶融状態あるいは半溶融のフィラメントFMを造形テーブル3上に線状に押し出すようにして吐出する。吐出されたフィラメントFMは、冷却固化され、三次元造形物MOの一つの層が形成される。吐出ノズル18は、形成後の層に、溶融状態あるいは半溶融状態のフィラメントFMを、線状に押し出すようにして吐出する操作を繰り返し、新たな層を順次積み上げていく。これにより三次元造形物MOが得られる。
改質モジュール20は、吐出モジュール10により形成中の層の下層を改質させるものである。ここで改質とは、既に固化した下層を再度軟化させることを意味する。ここでは一例として、吐出モジュール10により上層の造形を行っている際に、造形中の層の直下の層(下層)の対象位置、具体的にはフィラメントFMが吐出される直前の領域に、改質部により光を照射して再加熱する。この再加熱は、溶融したフィラメントFMが冷却されて固化した後の再加熱を意味する。再加熱の温度は、特に限定されないが、下層のフィラメントFMが溶融(再溶融)する温度以上であることが好ましい。下層の表面を再加熱することにより、再加熱された層と、その表面に吐出されたフィラメントFMとの温度差が小さくなり、下層と吐出されたフィラメントFMとが混ざり合い、積層方向の接着性が向上する。
改質部としては、例えばレーザを用いた光照射部が適しており、ここでは一例としてレーザを照射するレーザ光源21を設けた場合を示している。レーザ光源21には、一例としては半導体レーザを使用することができる。レーザの照射波長には445nmなどを使用することができる。なお、レーザ光源や照射波長は一例であり、これに限定するものではない。
改質部は、光ではなく、その他の、熱を加えることができるものに変更してもよい。また、改質部は、造形材料の種類に応じて、改質が可能なものに変更してもよい。
改質モジュール20は、キャリッジ30に支持されるなどして吐出モジュール10の近傍に設けられている。改質モジュール20は、吐出モジュール10と一定の配置を保ち吐出モジュール10とともにXY平面を移動する。また、改質モジュール20は、吐出モジュール10に対して位置を移動させる移動部を備える。移動部は「第2の移動部」、「移動部」の一例である。この移動部により、吐出モジュール10の造形方向(造形中の進行方向)に応じて吐出モジュール10に対して相対的にXY方向へ移動する。
従って、吐出モジュール10は、X軸駆動モータ32とY軸駆動モータ33の駆動によりキャリッジ30に保持されてXY平面の各位置に移動する。改質モジュール20は、キャリッジ30に保持されて吐出モジュール10と一体に移動するが、キャリッジ30の移動とは独立に、移動部の制御により吐出モジュール10に対し相対的にXY方向へ移動することもできる。上記移動部の構成については後に図を用いて詳しく説明する。
なお、フィラメントの溶融と吐出を経時で続けると、吐出ノズル18の周辺部が溶融した樹脂で汚れることがある。これに対して、三次元造形装置1に設けられたクリーニングブラシ37により、吐出ノズル18の周辺部に対し定期的にクリーニング動作を行うことで、吐出ノズル18の先端に樹脂が固着することを防ぐことができる。好ましくは、クリーニング動作は、固着防止の観点から、樹脂の温度が下がりきらないうちに実行されることが好ましい。この場合、クリーニングブラシ37は、耐熱性部材からなることが好ましい。クリーニング動作時に生じる研磨粉については、三次元造形装置1に設けられたダストボックス38に集積させて、定期的に捨ててもよいし、あるいは吸引路を設けて、外部へ排出させてもよい。
<改質モジュール>
図3は、改質モジュール20の構成の一例を示す図である。図1に示す2つの改質モジュール20(第1の改質モジュール20と第2の改質モジュール20)は、キャリッジ30への取り付けの向きが異なるだけで、構成は共に同じである。各改質モジュール20は独立して動くことができる。図3には、1つの改質モジュール20の構成を模式的に示している。
図3に示すように、改質モジュール20は、改質部の一例であるレーザ光源21と、ここでは、さらにレーザ光源21が照射する領域の温度を測定する温度センサ104を備える。温度センサ104は「測定部」の一例である。また、上述した移動部としてXYステージ22を備える。レーザ光源21と温度センサ104は、支持部材に対して所定の向きで固定され、その支持部材はXYステージ22に固定されている。XYステージ22は、吐出モジュール10を保持するキャリッジ30に固定されている。
図4は、レーザ光源21の取り付け角度について説明する図である。図4には、吐出モジュール10が、溶融されたフィラメントFMを吐出ノズル18から押し出して三次元造形物MOの3層目を形成する途中の状態を示している。図4に示す矢印Lは吐出モジュール10の造形方向(進行方向)を示している。改質モジュール20は、キャリッジ30の移動により吐出モジュール10と一体に造形方向Lに移動する。改質モジュール20のレーザ光源21は、下層(この例では2層目)に照射方向を傾けて支持部材に固定されている。レーザ光源21は、支持部材に固定された状態で、XYステージ22により、XYZ直交座標系に対してレーザ光源21の向きを保つ移動経路(向きと移動経路については後述する)で移動される。この例では、吐出ノズル18からこれからフィラメントFMが押し出される位置(領域)にXYステージ22により移動され、図4に破線で示すように吐出ノズル18からフィラメントFMが押し出される直前の下層領域をレーザ照射で再加熱して改質する。
加熱前の下層温度は、温度センサ104により、センシングされる。温度センサ104の位置は、加熱前の下層面(加熱する直前の位置に限らない)をセンシング可能な任意の位置に配置される。加熱前の下層温度を温度センサ104によりセンシングして、センシングの結果に基づいてレーザ光源21が照射するレーザの出力を調整し、下層を所定の温度以上に再加熱する。別の方法として、再加熱中の下層温度を温度センサ104によりセンシングして、センシングの結果が所定の温度以上になるまで、レーザにより下層へ熱エネルギーの入力を行い続けてもよい。その際には、温度センサ104の位置は、加熱面をセンシング可能な任意の位置に配置するものとする。温度センサ104としては、接触式や非接触式の任意の温度装置を使用してよい。例えば熱電対を用いたものなどを使用する。
図3には、温度センサ104を支持部材に固定してレーザ光源21と共にXY平面内を移動させる構成を示しているが、この構成に限らない。造形テーブル3や筐体2側に設けてもよい。
図5は、XYステージ22の構成の一例を示す図である。図5には、図4のXYステージ22を下側から見たときの斜視図を示している。図5に示すXYステージ22は、X軸駆動モータ201の駆動によりX軸方向へ移動し、Y軸駆動モータ251の駆動によりY軸方向へ移動する。この例では、X軸駆動モータ201の出力軸202に回転運動を直線運動に変換する変換ユニット203が接続されている。変換ユニット203には固定部材210が固定され、固定部材210にY軸方向への移動部(Y軸駆動モータ251と変換ユニット253)が取り付けられている。
X軸駆動モータ201の出力軸202が回転すると変換ユニット203と固定部材210とがスライド部材211にガイドされながらX軸の正又は負の方向に移動する。
Y軸駆動モータ251と変換ユニット253は、Y軸駆動モータ251の出力軸252により接続されている。変換ユニット253は回転運動を直線運動に変換する変換ユニットである。変換ユニット253は、固定部材210に対してスライド可能に保持されている。Y軸駆動モータ251の出力軸252が回転すると変換ユニット253が固定部材210にガイドされながらY軸の正又又は負の方向に移動する。このようにX軸駆動モータ201とY軸駆動モータ251の駆動を制御することによりXYステージ(可動ステージ部分)22はX軸方向とY軸方向に移動する。レーザ光源21と温度センサ104の支持部材は可動ステージ部分の平面に対して垂直(Z軸方向)に取り付けられている。
<ハードウェア構成>
図6は、三次元造形装置のハードウェア構成の一例を示す図である。三次元造形装置1は、制御部100を有する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)などを含むコンピュータ構成のものあるいは回路などで構築されたものであり、図6に示す各部と電気的に接続されている。制御部100は、各部に制御信号を出力したり、各部から信号を受信したりするなどして造形処理において各部を統括的に制御する。
ここでは、既に説明済みの箇所についての説明は適宜省略し、説明していない主な箇所について説明する。
制御部100は、吐出モジュール10のX軸方向位置を検知するX軸座標検知機構から得た検知結果に基づいてX軸駆動モータ32の駆動を制御する。この制御により、キャリッジ30ごと(吐出モジュール10及び改質モジュール20を含む)X軸方向へ移動し、吐出モジュール10を目標のX軸方向位置へ移動する。また、制御部100は、吐出モジュール10のY軸方向位置を検知するY軸座標検知機構から得た検知結果に基づいてY軸駆動モータ33の駆動を制御する。この制御により、キャリッジ30ごと(吐出モジュール10及び改質モジュール20を含む)Y軸方向へ移動し、吐出モジュール10を目標のY軸方向位置へ移動する。さらに、制御部100は、造形テーブル3のZ軸方向位置を検知するZ軸座標検知機構から得た検知結果に基づいてZ軸駆動モータ36の駆動を制御し、造形テーブル3を目標のZ軸方向位置へ移動させる。
つまり、制御部100は、吐出モジュール10のXY平面内の移動と、造形テーブル3のZ軸方向への昇降移動とを制御することにより、吐出モジュール10を造形テーブル3に対して相対的に目標の三次元位置に移動させる。
制御部100は、吐出モジュール10を目標の三次元位置に移動する際、造形データから得られる造形方向を示す情報に基づき、次の目標の三次元位置に移動する吐出モジュール10の移動方向に応じて改質モジュール20をXYステージ22の移動で適宜先回りさせる。制御部100は、X軸駆動モータ32とY軸駆動モータ33とは独立に、XYステージ22の駆動モータ(X軸駆動モータ201とY軸駆動モータ251)を駆動して改質モジュール20を移動させる。例えば、XYステージ22のX軸方向位置を検知するX軸座標検知機構から得た検知結果に基づいてX軸駆動モータ201の駆動を制御し、XYステージ22のY軸方向位置を検知するY軸座標検知機構から得た検知結果に基づいてY軸駆動モータ251の駆動を制御する。
また、制御部100は、温度センサ104から下層の温度を取得し、取得した温度に基づいてレーザ光源21のレーザの出力を制御する。
また、制御部100は、造形データに基づいて、造形材料を吐出ノズル18から吐出する制御を行う。
径測定部103は、撮像モジュール101により撮像されたフィラメントFの画像から、X軸、Y軸の2方向におけるフィラメントFのエッジ間の幅を、それぞれ径として測定し、規格外の径を検出した際、エラー情報を出力する。エラー情報の出力先は、ディスプレイであってもよいし、スピーカであってもよいし、他の装置であってもよい。径測定部103は、回路であってもよいし、CPUの処理によって実現される機能であってもよい。
なお、その他の主な箇所については説明済みのため、ここでの説明を省略する。
<改質モジュールの移動経路>
図7〜図9は、造形処理時における改質モジュールの移動経路について説明する図である。なお「移動経路」を「軌跡」として説明する場合もある。図7は、改質モジュール20が移動する移動範囲について説明する図である。図7には、造形テーブル3側から吐出モジュール10が有る上方(図1に示す+Z軸側)を平面視した場合の図を示している。ここでは説明を分かり易くするために吐出モジュール10として吐出ノズル18のみを示し、その他の部分については図示を省略した。
図7に示すように、1つの吐出ノズル18に対し2組の改質モジュール20を備えている。図7には、それぞれの改質モジュール20を区別するため第1の改質モジュールについては符号「20A」とし、第2の改質モジュールについては符号「20B」として示している。
吐出ノズル18による吐出位置180の周囲に示す曲線(この例では円)23は、吐出ノズル18(つまり吐出モジュール10)がXY平面の任意の方向へ進行した場合にレーザ光源21を先回りさせて進行方向において照射する照射位置(改質位置)であり、全方位へ進行した場合のすべての点をまとめて円で表している。円23の半径は一例として2mmとする。第1の改質モジュール20AのXYステージ22を、図7に示すように、円23の左側半分の円弧と同じカーブの円弧(この例では半径2mmの円弧)24A上に位置するようにXY方向に制御する。これにより、円23の左側半分の円弧上の任意の点(及びその近傍領域)は第1の改質モジュール20AのXYステージ22のXY方向の移動だけで照射可能となる。また、第2の改質モジュール20BのXYステージ22を、図7に示すように、円23の右側半分の円弧と同じカーブの円弧(半径2mmの円弧)24B上に位置するようにXY方向に制御する。これにより、円23の右側半分の円弧上の任意の点(及びその近傍領域)は第2の改質モジュール20BのXYステージ22のXY方向の移動だけで照射可能となる。
なお、この例は、吐出ノズル18(つまり吐出モジュール10)を任意の方向(すべての方向)に移動して造形を行う場合の構成である。吐出ノズル18(つまり吐出モジュール10)の移動方向を制限して造形を行う場合にはこの限りではない。例えば、円23の左側半分の円弧が示されている方向に吐出ノズル18(つまり吐出モジュール10)を移動させるときにのみ造形を行う場合は、1つの吐出ノズル18に対し1組の改質モジュール20(この場合、第1の改質モジュール20A)を備えるだけでもよいことになる。
また、この例では、円23の左側半分の円弧と右側半分の円弧とに分けて2組の改質モジュール20を備えたが、円23を例えば120°毎など、更に細分化した場合は、それぞれに対応する改質モジュール(つまり3組以上の改質モジュール)を設けてもよい。
この例において改質モジュール20は吐出ノズル18の移動に先回りして、吐出中の位置から2mmの位置を照射する。具体的には、レーザ光源21が、XYステージ22により、XYZ直交座標系に対してレーザ光源21の照射向きを所定の向きに保つ移動経路で移動され、先回りした先で、所定の向きのままレーザを照射する。
図8は、吐出ノズル18の造形方向に伴い改質モジュール20が移動する様子を示した模式図である。図8には、造形テーブル3を斜め上方から見た場合の吐出モジュール10の造形方向と、この造形方向に対応する1つの改質モジュール20のレーザ光源21の位置とを示している。なお、レーザ光源21は、XYステージ22の移動と共に照射向きを変えずに保ちながら移動する。このため、レーザ光源21が移動する軌跡も、XYステージ22の移動の軌跡(円弧24A又は円弧24B)と同じである。
一例として、吐出ノズル18が図7に示す円23の右側半分の円弧が示される方に進行して造形する場合について示す。ここでは、図7の+Y軸方向を0度と定義し、吐出ノズル18の造形方向を反時計回りに、0度、60度、90度、150度と変化させたときのレーザ光源21の各位置を示している。レーザ光源21がA〜Dに移動する軌跡(図8中に示す円弧)は円弧24Bに対応する。
各図において造形テーブル3上には少なくとも1層が形成されており、その上方を吐出モジュール10がフィラメントFMを押し出しながらそれぞれの造形方向Lに進み造形する。ここで、層の上面から吐出モジュール10の下端(吐出ノズルの吐出面)までの高さは造形テーブル3の昇降により略同じに調節されるものとする。なお、図8の各図には、各パターンにおけるレーザ光源21の照射位置が分かるように照射光の光軸の向きを矢印Pで示した。
吐出モジュール10の造形方向が0度方向である場合(図8(a)参照)、レーザ光源21は、軌跡上のA点にある。吐出モジュール10の造形方向が60度方向に変わる場合(図8(b)参照)、レーザ光源21は、軌跡に沿ってB点に移動する。吐出モジュール10の造形方向が90度方向に変わる場合には(図8(c)参照)、レーザ光源21は、軌跡に沿ってC点に移動する。吐出モジュール10の造形方向が150度方向に変わる場合には(図8(d)参照)、レーザ光源21は、軌跡に沿ってD点に移動する。なお、ここでは、吐出ノズル18の造形方向を反時計回りに、0度、60度、90度、150度と変化させたときのレーザ光源21の移動について説明したが、時計回りに変化させる場合は、軌跡に沿ってD点、C点、B点、A点と移動する。
このように、レーザ光源21は、円23と同じカーブの軌跡をXYステージ22側で2軸の駆動により移動し、移動先の円周上の座標に停止する。これにより、レーザ光源21は、吐出ノズル18の造形方向がその他の方向に変わっても、吐出ノズル18がフィラメントFMを吐出する位置に即座に先回りして、その下層をレーザ光により改質することができる。
図9は、一例として、改質モジュール20を上述したXYステージ22で移動する場合と、これとは異なる構成の回転テーブルで移動させる場合との効果の違いについて説明する図である。
図9には、回転テーブルで移動する場合のレーザ光源21の軌跡の半径をrBで示し、XYステージ22で移動する場合のレーザ光源21の軌跡の半径をrAで示している。ここで、半径rAは、レーザ光源21により照射させる全方位の位置を示す円23の半径に等しい。回転テーブルでレーザ光源21を移動する場合、レーザ光源21の軌跡は、円23の半径よりも大きくなる。つまり、rA<rBである。
ここでは一例として、rA=2[mm]、rB=40[mm]とした場合に2つのレーザ光源21が移動する移動量を求める。XYステージ22の場合と回転テーブルの場合のそれぞれの移動量lA、lBは以下のように計算される。
lA=2×rA×π=12.6[mm]
lB=2×rB×π=251.2[mm]
この計算結果の例では、回転テーブルと比較してXYステージ22では1/20の移動量でレーザ光源21を先回りさせることができることが分かる。つまりレーザ光源21の移動が短くなる。また、図9に示されるレーザ光源21の移動範囲から、回転テーブルでは半径rBのスペースを必要とするが、XYステージ22では、それよりも少ないスペースで実現することができることが分かる。
<第1の吐出ノズルと第2の吐出ノズルに共通の改質モジュールの構成>
図10は、モデル材を吐出する第1の吐出ノズルとサポート材を吐出する第2の吐出ノズルとに対して共通の改質モジュール20を組み合わせる場合の一例を示す図である。図10には、各吐出ノズル(第1の吐出ノズル18−1、第2の吐出ノズル18−2)の両サイドに共通の改質モジュール(改質モジュール20A、20B)を構成した例を示している。
図10に示す両サイドの改質モジュール(改質モジュール20A、20B)は、2つの吐出モジュール(第1の吐出ノズル18−1、第2の吐出ノズル18−2)のそれぞれの円(第1の円23−1、第2の円23−2)にレーザを照射することができるようにY軸方向への移動範囲を大きく設計している。第1の吐出ノズル18−1からモデル材を吐出した後で、第2の吐出ノズル18−2からサポート材を吐出する場合は、各改質モジュール(改質モジュール20A、20B)をXYステージ22の駆動により−Y軸方向のみに移動する。これにより、第1の円23−1の制御範囲から第2の円23−2の制御範囲に移動する。そして、第2の円23−2の制御範囲においてXYステージ22を上述した円弧24A又は円弧24Bに沿ってXY方向に制御する。
また、第2の吐出ノズル18−2からサポート材を吐出した後で、第1の吐出ノズル18−1からモデル材を吐出する場合は、その逆の制御となる。つまり、各改質モジュール(改質モジュール20A、20B)をXYステージ22の駆動により+Y軸方向のみに移動する。これにより、第2の円23−2の制御範囲から第1の円23−1の制御範囲に移動する。そして、第1の円23−1の制御範囲においてXYステージ22を上述した円弧24A又は円弧24Bに沿ってXY方向に制御する。
各吐出モジュール(第1の吐出ノズル18−1、第2の吐出ノズル18−2)毎にそれぞれに対応する改質モジュール20を設ける構成については、これまでの説明で明らかなので、ここでの更なる説明を省略する。
<造形方法>
続いて、三次元造形装置1による造形方法について説明する。図11は、上層形成時の造形物の状態を示す模式図である。以下、吐出モジュール10により造形中の層を上層Ln、造形中の層の一つ下の層を下層Ln−1、下層Ln−1の一つ下の層を下層Ln−2と表す。図11〜図14中の実線矢印は、吐出モジュール10の移動経路(ツールパス)を示す。図11以降では、吐出モジュール10のツールパスが分かるように、吐出されたフィラメントを楕円柱で表している。このため、フィラメントとフィラメントとの間に空隙が形成されているが、実際は、強度の点で空隙が形成されないように造形することが好ましい。
図11の(A)は、下層を再加熱せずに上層を形成するときの造形物を示す模式図である。図11中の実線矢印が示す向きに、吐出ノズル18が移動して造形物を形成していく。下層Ln−1を再加熱せずに上層Lnを形成すると、下層Ln−1が固化した状態で上層Lnを形成できるため、外形面OSの変形は、生じない。ただし、この場合、上層Lnと下層Ln−1との間(接着面AS)で十分な接着強度が得られない。
図11の(B)は、下層を再加熱しながら上層を形成するときの造形物を示す模式図である。下層Ln−1を再加熱しながら上層Lnを形成すると、接着性はあるものの、下層Ln−1が溶融した状態で、上層Lnを形成できるため外形面OSが変形する。
図11の(C)は、下層を再加熱しながら上層を形成するときの造形物を示す模式図である。図11の(C)の例では、モデル部Mの下層Ln−1を再加熱しながら上層Lnを形成しても、接着性もあり、サポート部Sによりモデル部Mは支えらえるため、モデル部Mの外形面OSは変形しない。
本実施の形態では、下層Ln−1を部分的に再溶融させた状態で上層Ln層を形成する。これにより、上層Lnと、下層Ln−1との間の高分子の絡み合いが促進され、造形物の強度が向上する。また、再溶融の条件を適切に設定することで、形状精度とモデル部Mの積層方向強度の両立を図ることができる。
なお、モデル材とサポート材とは、同じ材料であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、モデル部Mとサポート部Sとを同じ材料で形成した場合でも、これらの界面の強度をコントロールすることで、造形後に分離することができる。
図12は、上層形成時の造形物の状態を示す模式図である。図12の(A)の造形方法では、三次元造形装置1は、下層Ln−1におけるモデル部Mの表面及びサポート部Sにおける外周部を除く表面を再加熱し、再溶融部RMを形成して、上層Lnを形成する。
この方法によると、モデル部Mにおける外形面OS側の領域を再溶融させて造形するので、層間の接着性が向上し、積層方向の強度が向上する。また、外形面OS側を溶融させることで、サポート部Sとモデル部Mとの造形中の剥がれが生じにくくなり、造形精度が向上する。
ただし、サポート部Sとモデル部Mとの接着性が高くなりすぎると、造形後のサポート部Sの離型性が低下する。さらに、加熱温度によっては、モデル部Mの中にサポート部Sが混ざり合うことで、モデル部Mの強度が減少することもある。材料の混ざり合いは、積層面に対し非接触により加熱する方法を用いたり、接触して加熱する場合には、接触部材の動きを工夫したり、接触部材をクリーニングしたりすることで、防止することができる。
また、サポート部Sの離型性については、サポート材として、モデル材と異なる材料であり、モデル材よりも融点が低い材料を用いることで、改良される。
図12(B)の造形方法では、三次元造形装置1は、モデル材及びサポート材を用いてサポート部Sを形成する。この場合、三次元造形装置1は、サポート部Sにおけるモデル部M側の領域Ssにサポート材を配置し、外周側の領域Smにモデル材を配置する。この場合、三次元造形装置1は、モデル部M及びサポート部Sにおける領域Smをモデル材により形成し、続いて、モデル材の隙間にサポート材を流し込むことで造形してもよい。続いて、三次元造形装置1は、下層Ln−1におけるモデル部Mの表面、ならびにサポート部Sの外周部を除く表面を再加熱しながら上層Lnを形成する。
図12(B)の造形方法は、サポート部Sの離型性に優れる場合に適している。また、図12(B)の造形方法は、領域Ssの形状精度や構造体としての強度が低い場合でも、領域Smが、領域Ssを支えることで、領域Ssの形状精度や強度を補える点で好ましい。
図12の(C)の造形方法では、三次元造形装置1は、モデル部Mにおける外形面OS近傍を除く表面を再加熱しながら上層Lnを形成する。この方法によると、再溶融時に、モデル部Mの熱はサポート部Sに伝わりにくいので、サポート部Sの形状が安定する。図12の(C)の造形方法は、モデル部Mの形状を維持しやすく、モデル部Mとサポート部Sとの離型性を確保しやすい点で有効であるが、モデル部Mの表面の全体を再溶融する造形方法と比較すると、積層方向の強度は弱くなる。従って、図12の(C)の造形方法は、内部構造が強固な造形物を造形する場合や、造形精度や離型性に重点を置く場合に有効である。
図13は、上層形成時の造形物の状態を示す模式図である。図13の(A)の造形方法は、モデル部Mの表面における再溶融しない領域を外形面OSからより離れた位置まで広げて、再溶融部RMをより小さくした点で図12の(C)の造形方法と異なる。図13の(A)の造形方法によると、図12の(C)の造形方法と比較して、サポート部Sの形状が安定するので、モデル部Mの形状を維持できる点でより有効である一方で、モデル部Mにおける積層方向の強度はより小さくなる。
図13の(B)の造形方法は、モデル部Mにおける外形面OS近傍まで下層Ln−1の表面を再加熱する点で、図12の(C)の造形方法と異なる。図13の(B)の造形方法は、モデル材よりもサポート材の融点が高い場合に有効である。図13の(B)の造形方法によると、図12の(C)の造形方法と比較して、モデル部Mにおける積層方向の強度が大きくなる。
図13の(C)の造形方法では、三次元造形装置1は、先に上層Lnのサポート材を吐出してサポート部Sを形成してから、下層Ln−1のモデル部Mを再溶融させて、上層Lnのモデル部Mを形成する。サポート部Sは、造形後に最終的には除去されるため、造形中に剥がれない程度の強度を有していればよく、モデル材ほどの強度は要求されない。このため、サポート材としては、モデル材もより高精度に積層可能な材料を選択することが好ましい。下層Ln−1が固化している状態で上層Lnのサポート部Sを形成することで、サポート部Sの造形精度は向上する。
図13の(C)の造形方法によると、サポート部Sとモデル部Mとを独立して形成する。このため、三次元造形装置1は、サポート部Sの積層ピッチをモデル部Mの積層ピッチよりも細かくすることもできる。例えば、図13の(C)の構成では、サポート部Sの積層ピッチは、モデル部Mの積層ピッチの1/2となっている。溶融したモデル材はサポート部Sの形状にならうため、サポート部Sの積層ピッチを細かくすることで、モデル部Mの外形面OSがより滑らかになる。モデル部Mに比べサポート部Sの方が精度よく造形できる場合には、図13の(C)の方法は好適である。
図14は、上層形成時の造形物の状態を示す模式図である。図14の(A)の造形方法は、先に上層Lnにおけるサポート部Sを形成してから、上層Lnにおけるモデル部Mを形成する点で、図13の(B)と異なる。モデル材よりもサポート材の融点が高い場合、モデル部Mにおける外形面OSの近傍まで加熱しても、サポート部Sは溶融しない。図14の(A)の造形方法によると、離型性に優れ、積層方向の強度が高い造形物が得られ、造形精度が向上する。
図14の(B)の造形方法は、先に上層Lnにおけるサポート部Sを形成してから、上層Lnにおけるモデル部Mを形成する点で、図12の(B)の方法と異なる。図14の(B)の方法によると、領域Ssの形状精度や構造体としての強度が低い場合でも、領域Smが、領域Ssを支えることで、領域Ssの形状精度や構造体としての強度を補える。ただし、図14の(B)の造形方法によると、再溶融時に領域Ssが溶融すると、サポート部Sの離型性が低下することもある。
図14の(C)の造形方法は、先に上層Lnにおけるモデル部Mの外周側を形成してから、上層におけるモデル部Mの残りの部分を造形する点で図13の(A)と異なる。図14の(C)の造形方法によると、モデル部Mのみで造形するので、形状が安定し、造形精度が向上する。また、上層Lnにおけるモデル部Mの側面の一部を再溶融させながら造形するためモデル部Mの強度も向上する。
図15は、改質モジュール20(レーザ光源21)による再加熱範囲の一例を示す模式図である。三次元造形装置1は、外形形状維持を目的として、三次元造形物MOにおける外周部を再加熱せず、再溶融部RMを意図的に狭めることで、造形物の形状を維持しつつ、積層間の密着性を向上させる。なお、外周部を再加熱してもよい。これにより、より狭い領域に対して強度を出すことができる。
<三次元造形装置の造形動作>
続いて、三次元造形装置1の造形動作について説明する。三次元造形装置1の制御部100は、立体モデルのデータの入力を受け付ける。立体モデルのデータは、立体モデルを所定間隔でスライスしたときの層ごとの画像データによって構築される。制御部100は、その画像データを解析し、予め指定された造形方法に基づき吐出ノズルや造形経路などを設定する。そして、制御部100は、その順序データに基づき、X軸駆動モータ32又はY軸駆動モータ33を駆動して吐出モジュール10を移動し、造形経路に従って造形テーブル3上に溶融されたフィラメントFMを吐出する。以下では、特に説明しないが、吐出モジュール10が造形経路に沿って移動する際に、指定された吐出ノズルから対象位置にフィラメントFMが順次吐出されるものとする。また、造形テーブル3が順次下降することにより一つ上の層が形成されるものとする。
図16は、三次元造形装置の造形動作全体の一例を示すフロー図である。三次元造形装置1の制御部100は、先ず、層番号を示すパラメータnを、1層目(最下層)を示す「1」に設定する(ステップS11)。
そして、制御部100は、最下層の順序データに従って各部を制御することにより、造形テーブル3上に最下層のスライス画像の層を形成する(ステップS12)。
最下層の形成が終わると、続いて制御部100は、次の層を形成するためにパラメータnを1つインクリメントする(ステップS13)。
そして、制御部100は、n=n+1(ここではn=2)の層の順序データに従って各部を制御することにより、造形テーブル3上に形成した下層の上にn=n+1のスライス画像の層を形成する(ステップS14)。制御部100は、上層(n=2以上)を形成する場合、直下の層(下層)を改質するための改質制御を行う。改質制御については、図17を用いて説明する。
n=n+1の層の形成が終わると、制御部100は、その層の形成が再表層の層の形成であったかを判定する(ステップS15)。その層の形成が再表層の層の形成でないと判定した場合(ステップS15:No判定)、制御部100は、ステップS13に移行し、次の層を形成するためにパラメータnを1つインクリメントする。つまり、ステップS13〜ステップS15を繰り返すことにより、各層が上に積み上げられていく。
そして、再表層の層の形成が終わると(ステップS15:Yes判定)、造形動作を終了する。
図17は、ステップS14で行われる改質制御の一例を示すフロー図である。先ず、制御部100は、層形成を行う前に層形成を行う造形方向へXYステージ22を移動させる(ステップS141)。具体的には、制御部100はXYステージ22のX軸駆動モータ201とY軸駆動モータ251とを制御することにより、レーザ光源21が造形方向に照射できるように先回りさせる。
続いて、制御部100は、レーザ光源21と共に先回りさせた温度センサ104により加熱前の下層面の温度(下層温度)をセンシングさせて、その結果(下層温度の情報)を取得する(ステップS142)。
続いて、制御部100は、センシング結果に基づいてレーザ光源21の照射制御を行う(ステップS143)。
続いて、制御部100は、次の位置で造形方向が変わるかを判定する(ステップS144)。次の位置で造形方向が変わるかは、順序データから予測して判定することができる。
制御部100は、次の位置で造形方向が変わらないと判定した場合(ステップS144:No判定)、続いてn番目の層の形成が終了したかを判定する(ステップS145)。n番目の層の形成が終了していない場合(ステップS145:No判定)、ステップS142に移行し、ステップS142から同様の制御を行い、各位置において下層温度を取得して最適な出力で照射制御を行う。
一方、ステップS144において、次の位置で造形方向が変わると判定された場合は(ステップS144:Yes判定)ステップS141に移行されて、制御部100はレーザ光源21を造形方向に照射できるように、その変わる方向へ先回りさせる。
制御部100は、n層目の形成が終了すると(ステップS145:Yes判定)、レーザ光源21の照射を停止するなどして改質制御を終了する。
なお、制御部100は、図12の(C)、図13の(A)、(C)、図14の(C)の造形方法のように、画像データの示す範囲の内部にレーザを照射させてもよい。あるいは、制御部100は、例えば、図12の(A)、(B)、図14の(B)の造形方法のように、画像データの示す範囲を超えて、レーザを照射させてもよい。ステップS143における下層の加熱温度は、フィラメントの溶融温度以上に制御される。
<改質部の移動制御パターン>
続いて、保持部であるキャリッジ30と一体に移動する吐出モジュール10の切替方向に応じた改質部の移動制御パターンの一例について説明する。改質とは、下層に上層を密着させるための下層表面の再溶融や、造形物の強度を出すために造形物の外周部に対して行う再加熱や、吐出後の造形表面の温度を冷やすために行う冷却などである。ここでは、各種の改質を行う場合の移動制御パターンを示すが、各種の改質を行う移動制御パターンをこれらに限定するものではない。なお、分かり易くするために、以下では吐出モジュール10の吐出ノズル18と、吐出ノズル18に対して移動制御するように選択されている改質モジュール20のレーザ光源21との1組を例に説明するがこれに限定されない。また、レーザ光源21を複数利用する場合は、その都度、レーザ光源21を複数利用していることを明示する。
<移動制御パターン1>
図18は、移動制御パターン1の説明図である。図18には、三次元造形物の一例として直方体の造形途中の様子を上面側から示している。矩形の破線は、直方体の外周部を示している。この例は、吐出ノズル18が直方体の一辺(長手方向の直線)を造形方向に移動しながら造形材料であるフィラメントを吐出し、直方体の角部で進行方向(造形方向)を90度方向に切り替えて進行する場合を想定している。
図18(A)〜図18(F)までの図は、直方体の造形動作の一部を直方体の上方から見た場合の図である。各図には、吐出ノズル18が造形方向に移動しながら造形材料を吐出する位置(吐出位置1800)と、吐出ノズル18よりも先行してレーザ光源21がレーザを照射する改質位置(レーザ照射位置2100)とを模式的に、時間を追って示している。以下、吐出モジュール10(つまり吐出ノズル18)を移動するキャリッジ30の移動制御とキャリッジ30に対してレーザ光源21を移動する移動部の移動制御とについて、吐出ノズル18の吐出位置1800とレーザ光源21のレーザ光が照射されるレーザ照射位置2100とを参照しながら順を追って説明する。なお、以下において吐出ノズル18の位置(ノズル位置)と吐出位置1800とは同じ位置のことを指しているものとする。また、後述する各移動制御パターンについても同様とする。
先ず、外周部の長手方向の直線上において、吐出ノズル18は移動しながら造形材料であるフィラメントを吐出する。レーザ光源21は、吐出ノズル18の吐出位置1800から当該ノズルの進行方向(直線上の進行方向)に先行させるレーザ照射位置2100に向け、レーザ光を照射する(図18(A))。この例では吐出位置1800から距離Rだけ先行する位置をレーザ照射位置に指定している。ここで距離Rは、例えば図7においては、円23の半径で示される距離に対応する。
その後、距離Rだけ先行しているレーザ照射位置2100が、吐出ノズル18が到達により進行方向を90度方向に変える位置(切替位置)に先行して達すると(図18(B))、移動部(本例ではXYステージ22)が、キャリッジ30に対してレーザ光源21の位置を相対的に移動する制御を行って、吐出ノズル18に先行して90度方向にレーザ照射位置2100を切り替える移動を開始する(図18(C))。この段階では、吐出ノズル18は切替位置から距離R手前に位置し、その後も切替位置までは直線上(長手方向の直線上)を進行して造形を行う。
吐出ノズル18とレーザ光源21は、同じ保持部材(キャリッジ30)で保持されている。吐出ノズル18は切替位置までの残りの距離Rを移動して切替位置において90度方向に向きを変え、その後は90度方向に移動する。
具体的には、長手の直線方向に進行する吐出ノズル18の速度ベクトル(図18に示す「ノズルの速度ベクトル」に対応)と、吐出ノズル18に対するレーザ光源21の速度ベクトル(図18に示す「レーザの速度ベクトル」に対応)との、共に同じ時点におけるレーザ照射位置2100における合成ベクトル(図18に示す「レーザの移動ベクトル」に対応)が、ノズル位置が動く軌跡(つまり吐出位置1800の軌跡)上をノズル位置から距離Rだけ先行して動くようにする。この制御は、例えば、長手方向へ進行する吐出ノズル18の移動速度(つまりキャリッジ30の移動速度)と移動部によるレーザ光源21の移動速度(XYステージ22のX方向及びY方向の移動速度)との制御により実施する。
例えば、図18(A)〜図18(B)では、合成ベクトルはノズルの速度ベクトルの成分のみでレーザの速度ベクトルの大きさを0とする。つまり、キャリッジ30の直進方向の移動制御のみとする。この制御により、レーザ照射位置2100での合成ベクトルは、キャリッジ30の一方向の移動によるノズルの速度ベクトルのみで表され、吐出位置1800の一方向の軌跡上をノズル位置から距離Rだけ先行して動く。図18(C)〜図18(D)では、吐出ノズル18は一方向に直進したままで、切替位置に先に達したレーザ照射位置2100は移動部により90度方向に向きが切り替わる制御が行われる。具体的には、長手方向に直進する吐出ノズル18の速度ベクトルと、90度方向にレーザ照射位置2100を先行して移動させるように制御されたレーザ光源21の速度ベクトルとの合成ベクトルが常に90度方向を向くようにする。この速度制御により、吐出ノズル18が造形方向を90度方向に切り替える場合(例えば直方体の角部での切り替え)においても、90度方向に向きを変える際のノズル位置の軌跡(つまり吐出位置1800の軌跡)と同じ軌跡上をレーザ照射位置2100が先行して移動する。従って、吐出ノズル18が造形材料を吐出する吐出位置1800を、つまり意図通りの軌跡を、常に距離Rだけ先行する位置(先行位置)で改質することができる。
さらに、ノズル位置が切替位置までの距離Rを移動する時間と、90度方向にレーザ照射位置2100が距離Rだけ移動する時間とが同じ、つまり、それぞれにより他の方向へ切り替える移動を同時に完了するように、吐出ノズル18の移動速度と移動部によるレーザ光源21の移動速度とを制御することが好ましい。例えば、図18(D)から図18(E)に示すように、吐出ノズル18の速度ベクトルと、90度方向に進むレーザ光源21の合成ベクトルとが常に同じ大きさになるようにレーザ光源21の移動速度(XYステージ22のX方向及びY方向の移動速度)を制御する。このようにすることにより、吐出ノズル18が切替位置に到達する前後を含む期間に、吐出ノズル18やレーザ光源21がタイミングを合わせるために移動を停止して待機することのないようにすることができる。
そして、吐出ノズル18の造形方向が90度方向へ切り替わった後も吐出ノズル18の進行方向(この場合、直方体の短手方向)の距離R先をレーザ光源21のレーザ照射位置2100が先行して改質し、その軌跡上を吐出ノズル18が移動して造形材料であるフィラメントを吐出する(図18(F))。
なお、ここでは造形方向を90度方向に切り替える場合について説明したが、これは一例であり、切り替える方向を90度に限定するものではない。一例として移動制御パターン3では、吐出ノズル18が進行方向を45度方向に切り替える場合について説明している。
このように、吐出ノズル18の移動速度とレーザ光源21の移動速度とを上述した条件で制御することにより、図18(G)に示すように吐出ノズル18(つまり吐出位置1800)が移動する軌跡上に先行してレーザ光源21によりレーザ照射を行うことが可能になる。例えば90度方向など角部でも正確に下層の改質を行うことが可能である。
<移動制御パターン2>
移動制御パターン1では、距離Rだけ先行しているレーザ照射位置2100が、吐出ノズル18が到達により進行方向を変える切替位置に先行して達すると、その切替られる方向にレーザ照射位置2100の移動を開始する場合について説明した。移動制御パターン2では、吐出ノズル18が切替位置に到達するのを待ってからレーザ照射位置2100の移動を開始する場合について説明する。
図19は、移動制御パターン2の説明図である。ここでは主に、移動制御パターン1とは異なる箇所について説明し、共通する箇所の説明は適宜省略する。図19(A)〜図19(G)までの図は、図18と同様に三次元造形物MO(図15参照)の造形途中を上面から見た場合の図である。図19(A)〜図19(B)は、図18(A)〜図18(B)に対応している。
移動制御パターン2では、図19(B)〜図19(C)に示すように、レーザ照射位置2100が距離Rだけ先行して切替位置に到達した後も、吐出ノズル18が切替位置に到達するまで引き続き直線上の造形の制御を行う。
そして、吐出ノズル18が切替位置に到達すると、移動部により図19(D)に矢印で示すようにレーザ照射位置2100の移動を開始し、造形方向が切り替わる方向(一例として90度方向とする)に吐出ノズル18よりもレーザ照射位置2100を先行させる(図19(E))。
続いて、レーザ照射位置2100が切替位置から開始されるように、キャリッジ30を移動し、図19(E)に矢印で示すように吐出ノズル18及びレーザ照射位置2100を90度方向に対して後退させる。この例では、吐出ノズル18は一度直方体の外側に位置する。
その位置から、吐出ノズル18の造形方向(90度方向)の距離R先をレーザ照射しながら、吐出ノズル18による造形材料の吐出により90度方向の直線上の造形を開始する(図19(G))。
図19(H)には、造形方向を切り替える際のノズル位置とレーザ照射位置2100との一連の軌跡を示している。移動制御パターン2では、移動制御パターン1に比べて吐出ノズル18の移動に余分な移動が必要になり、レーザ照射位置2100の移動にも時間がかかる。また、切替位置での軌跡の正確性が移動制御パターン1に比べて劣るため、精度を上げる必要性がある場合は、移動制御パターン1の制御を選択することが望ましい。
<移動制御パターン3>
移動制御パターン1では、吐出ノズル18が進行方向を90度方向に切り替える場合について説明した。移動制御パターン3では、吐出ノズル18が進行方向を45度方向に切り替える場合について説明する。
図20は、移動制御パターン3の説明図である。基本的には、切替方向が90度方向の場合と同様の制御になる。ここでは主に、移動制御パターン1とは異なる箇所について説明し、共通する箇所の説明は適宜省略する。
図20(A)〜図20(F)は、図18(A)〜図18(F)の状態に対応している。図20(A)〜図20(F)は、切替方向が45度方向とされている点を除き、基本的には図18(A)〜図18(F)と同様の状態を説明する図となっている。
ここでの主な違いは、図18(C)〜図18(D)に示すように、ノズル位置の移動速度を示すベクトルとレーザ照射位置2100の移動速度を示すベクトルの合成ベクトルが常に45度方向を向くように吐出ノズル18の移動速度と移動部によるレーザ光源21の移動速度とを制御することである。このような速度制御により、吐出ノズル18が造形方向を45度方向に切り替える場合でも、吐出ノズル18が移動する45度方向の軌跡上を先行してレーザ光源21が照射することが可能になる。つまり、45度方向のノズル位置の軌跡とレーザ照射位置2100の軌跡とが同じになる(図20(G))。
なお、吐出ノズル18が切替位置に達すると同時に移動部による移動制御も完了するように、吐出ノズル18の移動速度と移動部によるレーザ光源21の移動速度とを制御することが好ましい。
45度方向の場合、90度方向よりも切り替える角度が緩やかであるため、レーザ光源21を移動する移動距離はさらに短くなる。
<移動制御パターン4>
移動制御パターン1では、吐出ノズル18の進行方向をレーザ光で改質する場合について説明した。これに対し、吐出ノズル18の進行方向の後ろ、つまり吐出後の造形表面を改質する場合について説明する。例えば、吐出後の造形表面の温度を冷やすために、風を送るなどして改質する改質部を構成する場合がある。その場合、吐出ノズル18の進行方向に当たる先行位置ではなく、吐出ノズル18の進行方向の後方に当たる後方位置(後追い位置)で、吐出ノズル18を後追いしながら改質する。そこで、移動制御パターン4では、吐出ノズル18の進行方向の後ろを改質部(一例としてファンなどの送風部)で改質する場合の制御について説明する。
図21は、移動制御パターン4の説明図である。後追いの場合も、先回りの場合と同様の考え方を適用する。違いは、吐出ノズル18の吐出位置1800を後追いで冷風などのエアを吹き付ける点である。従って、図21においてエア位置に重ねて示すベクトルの方向が異なっている。
具体的には、先ず、直方体の外周部の直線上において、吐出ノズル18は移動しながら造形材料であるフィラメントを吐出し、吐出ノズル18の吐出位置1800から吐出ノズル18の進行方向(直線上の進行方向)の後方の距離Rの位置に送風部がエアを吹き付ける(図21(A))。なお、距離Rは適宜決めて良い。
その後、吐出ノズル18が90度方向に切り替える位置(切替位置)に達すると(図21(B))、吐出ノズル18を保持するキャリッジ30が90度方向に移動する制御を開始し、キャリッジ30に保持されている移動部(本例ではXYステージ22)が、キャリッジ30に対して送風部の位置を相対的に移動する制御を開始する。この段階ではエア位置が吐出ノズル18の切替位置から距離R手前に位置している。このため、移動部は、エア位置が切替位置にくるまでエア位置を直線上に進行させるように送風部の位置の移動を制御する。
図21(B)〜図21(D)には、そのときの送風部の移動をエア位置に重ねて速度ベクトルを使って示している。図21(B)〜図21(C)では、送風部を、吐出ノズル18が90度方向へ移動する速度ベクトルとキャリッジ30に対する送風部の速度ベクトルとの合成ベクトルが90度方向の切替前の直線方向を常に向くように吐出ノズル18の移動速度と移動部による送風部の移動速度とを制御する。図21(D)の位置では、移動部による送風部の移動を停止し、図21(D)〜図21(E)では、キャリッジ30の移動により吐出ノズル18と送風部とを距離Rを保って90度方向へ移動させる。
図21(D)〜図21(E)では、90度方向を直線的に吐出ノズル18が造形を行うと共に吐出ノズル18の距離R後ろを後追いで送風部が冷風を吹き付ける。
なお、吐出ノズル18が切替位置から90度方向の距離Rの位置に達すると同時に移動部による移動制御も完了するように、吐出ノズル18の移動速度と移動部によるレーザ光源21の移動速度とを制御することが好ましい。
このような速度制御により、吐出ノズル18が造形方向を90度方向に切り替える場合でも、図21(F)に示すように、吐出ノズル18が造形材料を吐出しながら移動するノズル位置の軌跡に対し、エアを吹き付けるエア位置が常に後追いで重なるようになる。つまり、直方体の角部などでも吐出された造形材料に対して正確に改質を行うことが可能になる。
<移動制御パターン5>
続いて、吐出ノズル18が進行方向を180度方向に切り替える場合について説明する。例えばインフィル部分(造形物の内側部分)を造形する場合には、往復走査を伴い、吐出ノズル18の進行方向がその都度反対の向きに切り替わる。このように進行方向を180度方向に切り替える際は、同じ種類の2つの改質部(第1の改質部と第2の改質部)を併用した方が効率がよい。そこで、2つの改質部を、それぞれの改質対象の位置が走査ライン(パス、ツールパス)上で吐出ノズル18を中心として対向配置になる位置で固定し、その位置を移動させずに保ったまま、交代でつまり進行方向に応じて2つの改質部を切り替えて使用する。
図22は、移動制御パターン5の説明図である。この構成では、吐出ノズル18の進行方向の前後に2つの改質部として2つのレーザ光源21を構成している。図22には、ノズル位置の進行方向の前後に各レーザ光源21のレーザ照射位置2100(第1のレーザ照射位置2101及び第2のレーザ照射位置2102)を示している。
図22(A)に矢印で示す造形方向では、吐出ノズル18の進行方向の第1のレーザ光源を使って、ノズル位置の進行方向の距離Rの位置に示すレーザ照射位置2101にレーザを照射する。
第2のレーザ光源が、第2のレーザ光源によるレーザ照射位置2102に達すると、キャリッジ30の制御により走査ラインを変える(図22(B)〜図22(D))。この間、第1のレーザ光源によるレーザ照射は停止させる。
そして、移動先の走査ラインでは、折り返しの向きにおいて、ノズル位置から距離Rの位置のレーザ照射位置2102に、第2のレーザ光源を使ってレーザを照射し、その向き(折り返しの方向)に吐出ノズル18を移動させて造形する(図22(E))。
<移動制御パターン6>
切替位置の近傍の改質が不要である場合の制御方法について説明する。図23は、移動制御パターン6の説明図である。ここでは主に、移動制御パターン1とは異なる箇所について説明し、共通する箇所の説明は適宜省略する。
図23(A)〜図23(F)は、図18(A)〜図18(F)の各状態に対応している。図23(A)〜図23(F)は、切替位置の近傍において速度制御が異なる。具体的には、図23(B)に示すように、レーザ照射位置2100が吐出ノズル18の切替位置に達する前に、先行してレーザ照射位置2100の90度方向への移動制御を開始する。従って、図23(B)〜図23(D)に示すように、吐出ノズル18の移動速度つまりノズル位置の移動速度を示すベクトルとレーザ照射位置2100の移動速度を示すベクトルの合成ベクトルが90度方向よりも小さな角度を指すように移動速度の制御を行う。この場合、レーザ照射位置2100は、切替位置には向かわずに、90度方向の直線上にショートカットして到達する。なお、レーザ照射位置2100の移動開始のタイミング及び移動開始後の速度は、吐出ノズル18の移動速度、及び切替方向の角度に応じて適宜変更してよい。
ショートカットした後は、図23(E)に示すレーザ照射位置2100から改質しながら90度方向の直線上の造形を行う(図23(E)〜図23(F))。
図23(G)には、造形方向を切り替える際のノズル位置とレーザ照射位置2100との一連の軌跡を示している。移動制御パターン6では、切替位置の近傍の改質を不要としたことにより、ノズル位置の軌跡が切替位置を通る軌跡であるのに対し、レーザ照射位置2100の軌跡が切替位置に達する前に90度方向へ移動を開始し、切替位置を通らないショートカットする軌跡になる。なお、切替位置の近傍とする範囲は、切替位置において求められる改質の精度に応じて適宜設定してよい。
なお、吐出ノズル18が切替位置に達する前又は同時に移動部による移動制御も完了するように、移動部によるレーザ光源21の移動速度を制御することが好ましい。
このように方向切替時に切替位置の近傍の改質を行わない場合には、レーザ光源の移動をショートカットしてもよい。例えば、造形形状により、端部は形状維持のために改質を行わない場合がある。そのような場合、移動制御パターン6で制御を行うことは有効である。吐出ノズル18の移動速度は制御する必要性がないため、所定の速度でよく、より高い生産性も実現できる。
また、切替位置の近傍を改質しない場合、切替位置の近傍においてノズル位置の軌跡に対してレーザ照射位置2100の軌跡は正確な軌跡を描く必要がない。そのため、ここではレーザの照射制御に関しては特に言及しなかったが、ショートカットする移動経路において照射強度を小さくしたり照射OFFにしたりするなどの照射制御も考えられる。
<移動制御パターン7>
移動制御パターン6では、吐出ノズル18が進行方向を90度方向に切り替える場合について説明した。移動制御パターン7では、吐出ノズル18が進行方向を45度方向に切り替える場合について説明する。
図24は、移動制御パターン7の説明図である。基本的には、切替方向が90度方向の場合と同様の制御になる。図24(A)〜図24(F)は、図23(A)〜図23(F)の状態に対応している。図24(A)〜図24(F)は、切替方向が45度方向とされている点を除き、基本的には図23(A)〜図23(F)と同様の状態を説明する図となっている。つまり、レーザ照射位置2100は45度方向への切替位置に達する前に45度方向への移動を開始し、切替位置を通らずに45度方向の直線上にショートカットする。また、図24(G)には、45度方向に造形方向を切り替える際のノズル位置とレーザ照射位置2100との一連の軌跡を示している。これ以上の説明は、移動制御パターン6の繰り返しの説明になるため説明を省略する。
<移動制御パターン8>
次に、実施の形態の三次元造形装置1における移動制御パターン8の説明をする。実施の形態の三次元造形装置1は、図1及び図10等に例示したように、例えば一対のXYステージ22を有している。そして、実施の形態の三次元造形装置1は、造形しながら長方形又は正方形等の90度角の箇所にレーザを照射する場合、レーザの照射を担当させるXYステージ22を、造形する辺に基づいて、一方のXYステージ22から他方のXYステージ22に、又は、他方のXYステージ22から一方のXYステージ22に交替制御する。なお、XYステージ22は、一つでもよいし、3つ以上でもよい。以下、XYステージ22は、一対であることとして説明を進める。
具体的に説明すると、まず、図25にノズル周辺部及び一対のXYステージ22を詳細に図示した斜視図を示す。図25(a)は、ノズル周辺部の斜視図である。図25(b)は、三次元造形装置1の筐体2の前方に設けられている前方XYステージ22a(第1の改質部の一例)の斜視図である。図25(c)は、三次元造形装置1の筐体2の後方に設けられている後方XYステージ22b(第2の改質部の一例)の斜視図である。
上述したが、吐出モジュール10は、図25(a)に示すように、2つの吐出ノズルが設けられている。第1の吐出ノズルは、三次元造形物MOを構成するモデル材のフィラメントを溶融して吐出する第1の吐出ノズル10a、及び、モデル材を支持するサポート材のフィラメントを溶融して吐出する第2の吐出ノズル10bを有している。
また、前方XYステージ22aには、図25(b)に示すように、三次元造形物MOにレーザ光を照射するためのレーザ光源21a(改質機能の一例)の他、三次元造形物MOにエアを吹き付けて空冷するための空冷ノズル29a(冷却機能の一例)が設けられている。同様に、後方XYステージ22bには、図25(c)に示すように、三次元造形物MOにレーザ光を照射するためのレーザ光源21bの他、三次元造形物MOにエアを吹き付けて空冷するための空冷ノズル29bが設けられている。各XYステージ22a、22bは、各吐出ノズル10a、10bの進行方向に対してやや先に対してレーザ照射を行い、各吐出ノズル10a、10bのやや後ろとなる位置を空冷する構成となっている。
図26は、吐出モジュール10及び各XYステージ22a、22bの移動座標系を示す図である。この図26に示すように、吐出モジュール10は、X軸方向、X軸方向に2次元上で直交する方向であるY軸方向、及び、X軸及びY軸に対して垂直となるZ軸方向に、いわば3次元的に移動可能となっている。
また、前方XYステージ22aは、吐出モジュール10が移動するX軸方向に沿った方向となるX0軸方向、及び、吐出モジュール10が移動するY軸方向に沿った方向となるY0軸方向に移動可能となっている。図25に示すレーザX0モータ39X0は、前方XYステージ22aをX0軸方向へ移動させる。また、図25に示すレーザY0モータ39Y0は、前方XYステージ22bをY0軸方向へ移動させる。
同様に、後方XYステージ22bは、吐出モジュール10が移動するX軸方向に沿った方向となるX1軸方向、及び、吐出モジュール10が移動するY軸方向に沿った方向となるY1軸方向に移動可能となっている。図25に示すレーザX1モータ39X1は、前方XYステージ22aをX1軸方向へ移動させる。また、図25に示すレーザY1モータ39Y1は、前方XYステージ22bをY1軸方向へ移動させる。
各XYステージ22a、22bは、図26に示す各座標系に基づいて移動先が指定される。また、レーザ光源21a、21bは、図26に示す各座標系において、自由に移動可能となっている。
各XYステージ22a、22bのうち、三次元造形物MOに対してレーザ光を照射するXYステージは、図27に示すように、吐出モジュール10の移動方向に基づいて決定されるようになっている。一例ではあるが、図27に示す例は、吐出モジュール10をY軸方向に移動させた際のY成分が「0(ゼロ)未満」である場合、前方XYステージ22aにより、三次元造形物MOに対するレーザ光の照射が行われることを示している。また、吐出モジュール10をY軸方向に移動させた際のY成分が「0(ゼロ)以上」である場合、後方XYステージ22bにより、三次元造形物MOに対するレーザ光(及びエア)の照射が行われることを示している。
すなわち、吐出モジュール10の移動方向に基づいて、レーザ光の照射を担当するステージ22(前方又は後方)が決定される。レーザ光の照射を担当しないXYステージ22は、エアによる空冷制御を担当する。
図28は、各XYステージ22a、22bを「反時計回り」に移動させて長方形の三次元造形物MOを造形した際における、各XYステージ22a、22bの移動経路、レーザ光の照射を担当するXYステージ、及び、空冷を担当するXYステージの交替タイミングを示す図である。同様に、図29は、各XYステージ22a、22bを「時計回り」に移動させて長方形の三次元造形物MOを造形した際における、各XYステージ22a、22bの移動経路、レーザ光の照射を担当するXYステージ、及び、空冷を担当するXYステージの交替タイミングを示す図である。
図28の例の場合、左上角部40R1を介して反時計回りに連続する第1の長辺部41a及び第1の短辺部42aを前方XYステージ22aで形成する。左下角部40R2まで三次元造形物MOの造形が完了すると、レーザ光の照射を担当するXYステージを、前方XYステージ22aから後方XYステージ22bに交替する。次に、後方XYステージ22bで、右下角部40R3を介して反時計回りに連続する第2の長辺部41b及び第2の短辺部42bを形成する。右上角部40R4まで三次元造形物MOの造形が完了すると、レーザ光の照射を担当するXYステージを、後方XYステージ22bから前方XYステージ22aに交替する。なお、左下角部40R2及び右上角部40R4は、造形物の対角線上に位置する2つの角部の一例である。
図29の例の場合は、後方XYステージ22bを時計回り方向に移動させながら、右上角部40R4まで第1の長辺部41aの形成が完了すると、レーザ光の照射を担当するXYステージを、後方XYステージ22bから前方XYステージ22aに交替する。次に、前方XYステージ22aで、右下角部40R3を介して時計回りに連続する及び第2の短辺部42b及び第2の長辺部41bを形成する。左下角部40R2まで三次元造形物MOの造形が完了すると、レーザ光の照射を担当するXYステージを、前方XYステージ22aから後方XYステージ22bに交替する。そして、後方XYステージ22bで、三次元造形物MOの第1の短辺部42aを形成する。
図30は、図28の右下角部40R3又は図29の左上角部40R1のように、レーザ光の照射を担当するXYステージ22の交替を行わない角部における、後方XYステージ22bが移動する座標(レーザ光の照射を行うレーザ座標)を示す図である。この図30において、点線は、吐出モジュール10の移動経路に対応する座標系(ノズル座標系)を示し、実線は、後方XYステージ22bのレーザ座標を示している。
この図30からわかるように、吐出モジュール10がノズル座標系(−2,0)に移動した時点で、後方XYステージ22bのレーザ照射点は、ノズル座標系原点(0,0)となる。図6に示す制御部100(第2の移動部の一例)は、吐出モジュール10がノズル座標系(−2,0)からノズル座標系原点(0,0)に移動すると、後方XYステージ22bのレーザ照射点を、ノズル座標系原点(0,0)からノズル座標系(2,0)に移動するように、後方XYステージ22bを制御する。これにより、ノズル座標系原点(0,0)含めてもれなく、レーザ光の照射を行うことができる。
図31は、ノズル座標系(0,0)にレーザ照射点が移動した後の、後方ステージ座標系における、後方XYステージ22bのレーザ照射点の移動制御を示す図である。この図31に示すように、制御部100は、ノズル座標系(0,0)にレーザ照射点が移動すると、後方XYステージ22bを、後方ステージ座標系(2,0)から後方ステージ座標系(0,2)に移動制御する。この際、制御部100は、後方ステージX軸−方向及び後方ステージY軸+方向の各軸速度成分が、ノズル座標系における吐出モジュール10の移動速度と同じ速度で移動するように、後方XYステージ22bを制御する。これにより、吐出モジュール10をノズル座標系のX軸+方向に移動し続けても、レーザ照射点をY軸+方向に沿って移動して、レーザ光の照射を継続することができる。
図32は、図28及び図29の左下角部40R2、右上角部40R4のように、レーザ光の照射を担当するXYステージ22の交替を行う角部における、各XYステージ22a、22bの交替の様子を示す図である。この場合、制御部100は、吐出モジュール10からのフィラメントFMの吐出は止めることなく、吐出モジュール10がノズル座標系(0,2)に移動した際に、空冷を担当している側のXYステージ22の空冷を停止制御する。そして、制御部100は、ノズル座標系X軸+方向に対する吐出モジュール10の移動制御に備えて、各XYステージ22a、22bの交替制御を行う。そして、制御部100は、前方XYステージ22a及び後方XYステージ22bを、それぞれ図32に示す軌跡に沿って、ノズル座標系における吐出モジュール10の移動速度と同じ移動速度で移動制御する。
これにより、吐出モジュール10がノズル座標系原点(0,0)に移動した時点で、各XYステージ22a、22bにおける、レーザ照射/空冷の交替制御は完了させることができ、ノズル座標系X軸+方向に造形された三次元造形物MOに対してレーザ光を照射可能とすることができる。
(交替制御が不要の場合)
図33は、各XYステージ22a、22bのレーザ照射及び空冷の交替制御が不要の場合における、レーザ光の照射位置、空冷用のエアの送風位置及び吐出モジュール10の移動位置を示す。この図33において、黒丸「●」のマークは、レーザ光の照射位置を示し、白丸「○」のマークは、吐出モジュール10の移動位置を示し、三角「△」のマークは、空冷用のエアの照射位置を示している。図33(a)に示すように、吐出モジュール10の移動位置の、例えば2mm先等の数mm先にレーザ光を照射し、吐出モジュール10の移動位置の、例えば2mm後等の数mm後を、エアで空冷するようになっている。
図33(b)に示すように、レーザ光の照射位置が、吐出モジュール10の方向切り替え位置である、右下角部40R3まで移動すると、制御部100は、図33(c)に示すように、レーザ光の照射を担当しているXYステージ22を、マイナスX軸方向及びプラスY軸方向に、吐出モジュール10の移動速度と同じ速度で移動制御する。これにより、吐出モジュール10が移動する右下角部40R3等の角部に対して、漏れなくレーザ光を照射することができる。そして、図33(d)に示すように、吐出モジュール10が、方向切り替え位置である右下角部40R3に移動した後も、図33(e)に示すように、吐出モジュール10の移動位置の数mm先に対するレーザ光の照射を、継続して行うことができる。
(交替制御が必要な場合)
図34は、各XYステージ22a、22bのレーザ照射及び空冷の交替制御が必要な場合における、レーザ光の照射位置、空冷用のエアの送風位置及び吐出モジュール10の移動位置を示す。この図34も、図33と同様に、黒丸「●」のマークは、レーザ光の照射位置を示し、白丸「○」のマークは、吐出モジュール10の移動位置を示し、三角「△」のマークは、空冷用のエアの照射位置を示している。また、図34(a)に示すように、吐出モジュール10の移動位置の、例えば2mm先等の数mm先にレーザ光を照射し、吐出モジュール10の移動位置の、例えば2mm後等の数mm後を、エアで空冷するようになっている。
図34(b)に示すように、レーザ光の照射位置が、吐出モジュール10の方向切り替え位置である、左下角部40R2に移動する手前で、制御部100は、空冷を担当しているXYステージ22及びレーザ照射を担当しているXYステージ22を、それぞれ停止制御する。また、制御部100は、図34(c)に示すように、それまで空冷を担当していたXYステージ22を、吐出モジュール10の数mm先にレーザ光を照射可能な位置に移動制御する。また、これと共に、制御部100は、図34(c)に示すように、それまでレーザ照射を担当していたXYステージ22を、吐出モジュール10の数mm後を空冷可能な位置に移動制御する(図32参照)。
次に、図34(d)に示すように、吐出モジュール10が、方向切り替え位置である、左下角部40R2に移動すると、制御部100は、それまで空冷を担当していたXYステージ22を、レーザ光の照射を担当するように切り替え制御し、また、それまでレーザ光の照射を担当していたXYステージ22を、空冷を担当するように切り替え制御する。これにより、吐出モジュール10が左下角部40R2に移動した後は、図34(e)に示すように、それまで空冷を担当していたXYステージ22で、吐出モジュール10の数mm先に対するレーザ光の照射が行われ、また、それまでレーザ光の照射を担当していたXYステージ22で、吐出モジュール10の数mm後に対する空冷が行われる。
なお、制御部100は、90度角の左下角部40R2の辺(0,0)〜(2,0)部分に対するレーザの照射は行わず、吐出モジュール10の移動方向を変更した際に、直ちにフィラメントFMの吐出を開始制御する。
(移動制御パターン8の効果)
このように、移動制御パターン8においては、制御部100が、吐出モジュール10の前方(例えば数mm前)にレーザ光を照射するように一方のXYステージ22を制御し、吐出モジュール10の後方(例えば数mm後)を空冷するように他方のXYステージ22を制御しながら三次元造形物MOの造形を行う。
また、制御部100は、三次元造形物MOの角部に吐出モジュール10が移動する前(例えば角部の直前等)に、各XYステージ22のレーザ照射及び空冷を停止制御すると共に、それまでレーザ照射を行っていた一方のXYステージ22を、吐出モジュール10の後方(例えば数mm後)を空冷する位置に移動制御する。また、制御部100は、それまで空冷を行っていた他方のXYステージ22を、吐出モジュール10の前方(例えば数mm前)にレーザ光を照射する位置に移動制御する。そして、制御部100は、三次元造形物MOの角部に吐出モジュール10が移動した際に、一方のXYステージ22をレーザ照射から空冷に切り替えて駆動し、他方のXYステージ22を空冷からレーザ照射に切り替えて駆動する。
これにより、例えば直方体又は立方体等の所定の角部(図28、図29の角部40R2,40R4)の造形時に、各XYステージ22をレーザ照射から空冷に切り替え、又は、空冷からレーザ照射に切り替えながら三次元造形物MOを造形できる。
(実施の形態の変形例1)
続いて、実施の形態の変形例1について上記の実施の形態と異なる点を説明する。変形例1として改質モジュール20のレーザ光源21を温風源(「送風部」の一例)に替えた例を示す。
図35は、変形例1に設けられている温風源により改質動作を行う場合の一例を示す図である。図35に示すように、改質モジュール20は、温風源21´を有する。温風源21´としては、ヒータ及びファンが例示される。図35に示すように、温風源21´は高温の温風を吹き付けることにより下層を加熱して再溶融する。このように、変形例1ではレーザ光源21のような光の代りに温風で下層を加熱する。なお、送風部をファンで構成し、吐出ノズル18が造形材料であるフィラメントを吐出した後に、送風部から冷風を吹き付けて吐出後の造形表面の温度を冷やす改質を行うように使用してもよい。
(実施の形態の変形例2)
続いて、実施の形態の変形例2について上記の実施の形態と異なる点を説明する。変形例2として改質モジュール20の変形例を示す。
図36は、変形例2に設けられている改質モジュールにより改質動作を行う場合の一例を示す図である。図36に示す改質モジュール20´(「加熱部」の一例」)は、三次元造形物MOにおける下層を加熱及び加圧する加熱プレート28と、加熱プレート28を加熱する加熱ブロック25と、加熱ブロック25からの熱伝導を防ぐための冷却ブロック50と、を備える。加熱ブロック25は、ヒータなどの熱源26と、加熱プレート28の温度を制御するための熱電対27と、を備える。冷却ブロック50は、冷却源51を備える。加熱ブロック25と冷却ブロック50との間には、ガイド53が設けられている。
改質モジュール20´は、XYステージ22(図3参照)により保持されている。改質モジュール20´は、加熱ブロック25によって加熱されて高温になる。その熱がキャリッジ30からX軸駆動モータ32(図1参照)に伝わるのを低減するため、フィラメントガイド14等を含めた移送路又はガイド53は、低熱伝導性であることが好ましい。
改質モジュール20´において、加熱プレート28の下端は、吐出ノズル18の下端よりも、1層分低くなるように配置されている。吐出モジュール10及び改質モジュール20´は図35に示す造形方向(白抜きの矢印で示す方向)に移動しながら、吐出モジュール10が吐出ノズル18からフィラメントFMを吐出すると同時に、加熱プレート28が、造形中の層の一つ下の層(下層)を再加熱する。これにより、造形中の層と、一つ下の層との温度差が小さくなり、層間で材料が混ざり合うので、造形物の層間強度が向上する。
(三次元造形物の引張強度実験の一例)
実施の形態及び各変形例に示す三次元造形装置1を使用し、後述するように比較実験を実施して造形物の最大引張強度を測定した。なお、造形物の最大引張強度の測定に際してはオートグラフAGS−5kNX(島津製作所製)を用いた。
図37は、引張試験片を示す図である。この引張試験片は、ASTM D638−02a Type−Vに準拠している。この引張試験片は、三次元造形装置1を使用して後述する設定で、造形テーブル3に対して造形材料を垂直上方STに積層して造形したものであり、図37に示す長辺方向に層が積層されてなる。オートグラフに、この引張試験片の積層下面と積層上面をチャックして200mm/minで上下方向T1,T2に引っ張ることで、造形物の最大引張強度プロファイルを得る。
(設定1)
三次元造形装置1により下層の再溶融の動作を実行せずに引張試験片の造形を行う設定を示す。この設定では、造形材料であるフィラメントとして、熱で溶解する樹脂を用いた。吐出モジュール10の導入部にはφ12のSUS304製の対となるローラを用いた。吐出モジュール10の移送路の寸法形状は断面が円の棒状とする。先端の吐出ノズル18は真鍮で作製し、先端の開口径を0.5mmとした。移送路となる部分はφ2.5mmの空洞となるようにした。冷却ブロック12はSUS304製とし、水冷管を通しておき、チラーに接続した。チラーの設定温度は10℃とした。加熱ブロック15も冷却ブロック12と同様にSUS304製とした。加熱ブロック15には、熱源16となるカートリッジヒータを通しておき、フィラメントと対称となる側に熱電対17を配置し、温度制御を行った。カートリッジヒータの設定温度は樹脂の溶融温度以上とした。造形時の吐出ノズル18の走査速度を10mm/secとして、図37に示すような引張試験片を造形した。加えて、造形テーブル3は、テーブルに吐出材料が固着できる温度範囲に設定した。造形物の積層方向の解像度としてのZ軸方向の1層の厚みは0.25mmとした。
(設定2)
設定2では、造形材料であるフィラメントとして、熱で溶解する樹脂を用いた。吐出モジュール10の導入部にはφ12のSUS304製の対となるローラを用いた。吐出モジュール10の移送路の寸法形状は断面が円の棒状とする。先端の吐出ノズル18は真鍮で作製し、先端の開口径を0.5mmとした。移送路となる部分はφ2.5mmの空洞となるようにした。冷却ブロック12はSUS304製とし、水冷管を通しておき、チラーに接続した。チラーの設定温度は10℃とした。加熱ブロック15も冷却ブロック12と同様にSUS304製とした。加熱ブロック15には、熱源16となるカートリッジヒータを通しておき、フィラメントと対称となる側に熱電対17を配置し、温度制御を行った。カートリッジヒータの設定温度は樹脂の溶融温度以上とした。造形時の吐出ノズル18の走査速度を50mm/secとして、図37に示すような引張試験片を造形した。加えて、造形テーブル3は、テーブルに吐出材料が固着できる温度範囲に設定した。造形物の積層方向の解像度としてのZ軸方向の1層の厚みは0.25mmとした。
(比較実験1)
三次元造形装置1により、設定1の設定(利用する画像データ、温度、走査速度)で改質制御を実施して引張試験片を造形した。つまり、下層が冷却した後、フィラメントの融点よりも高い温度に再加熱して下層の表面を再溶融し、上層を形成する処理を繰り返した。
(比較実験2)
三次元造形装置1により、設定2の設定(利用する画像データ、温度、走査速度)で改質制御を実施して引張試験片を造形した。
比較実験1と比較実験2とを実施した結果、下層の再溶融の動作を実行しなかった場合の設定1と設定2の結果を何れの場合も上回る最大引張強度を得ることができた。従って、本実施の形態の一例として示す三次元造形装置1により層の積層と共に改質制御を行えば三次元造形物の積層方向の強度を高めることが可能となることを確認できた。
<実施の形態及び変形例の主な効果>
以上のように、実施の形態の三次元造形装置1(造形装置の一例)の吐出モジュール10(吐出部の一例)は、溶融したフィラメント(造形材料の一例)を吐出して、造形材料層を形成する。三次元造形装置1の改質モジュール20(改質部の一例)は、形成された造形材料層を改質する。3軸の直交座標系に対してレーザ照射方向などの向きを保つ移動経路で移動するため、その移動距離が短くなり、生産性を向上させることも可能になる。
三次元造形装置1の改質モジュール20が下層の造形材料層を加熱により改質する制御を行う場合、吐出モジュール10は、加熱された造形材料層に対し、溶融したフィラメントを吐出することで、造形材料層を積層させて造形する。このように、再溶融し造形材料層(下層)にフィラメントを吐出して造形材料層(上層)を積層させることで、層間の材料が混ざり合うので、造形物における積層方向の強度を向上させることができる。また、上層を積層させる処理により、外形の視認性に影響を与えることなく、造形することができる。
また、三次元造形装置1のXYステージ22は、所定位置に対し三次元造形装置1のXY平面、YZ平面、XZ平面のうち少なくとも2つの平面に対して一定の角度を保つように改質部を移動させる。これにより、改質部は、吐出モジュール10の移動に追従して、造形材料層を加熱することが可能となる。
また、三次元造形装置1は改質モジュール20を吐出モジュール10の移動に先行して駆動する制御を行うことで、効率的に造形材料層を加熱しながら造形することができる。
また、三次元造形装置1の改質モジュール20は、造形材料層の所定の領域を選択的に加熱することもできる。これにより、造形物の形状を維持しながら造形することが可能となる。
また、三次元造形装置1は改質部によって加熱される造形材料層の温度を測定する温度センサ104(測定部の一例)を備える。改質部は、温度センサ104によって測定された温度に基づいて、造形材料層を加熱する。これにより、三次元造形装置1は、層間の接着強度あるいは造形精度などの所望の特性に応じて、適切に造形材料層を再加熱することができる。
また、改質部は、レーザ光を照射するレーザ光源21(「光照射部」の一例)であってもよい。これにより、改質部は、造形物に接触することなく、選択的に造形物を加熱することができる。
また、改質部は、加熱した空気を送風する温風源(「送風部」の一例)であってもよい。これにより、改質部は、造形物に接触することなく、造形物を選択的に加熱することができる。この場合、層間の材料を物理的に混ぜる事で、層間の界面の密着力を向上させることができる。また、造形物の外形を崩さずに、選択的に下層を加熱し、下層が再溶融している間に次の吐出を行うことで、界面の密着力が向上する。
また、改質モジュールとして造形材料層に接触して加熱する加熱プレート28又はタップノズル(「加熱部」の一例)であってもよい。これにより、改質モジュールは、造形物を選択的に加熱することができる。
また、三次元造形装置1は、複数の改質モジュールを備えていてもよい。これにより、吐出モジュール10の走査方向が変わっても、いずれかの改質モジュールにより造形物を加熱できるようになるので、造形時間が短縮される。
また、三次元造形装置1に、造形材料により形成される加熱した層や造形物の外周部などを冷却する冷却部を設けてもよい。冷却する方法としては、雰囲気温度を設定する方法、所定の時間放置する方法、もしくは、ファンなどを利用する方法などが例示される。これにより、三次元造形装置1は、造形物の形状を維持したまま造形することができる。
また、フィラメントには、粘度の異なる複数の材料が配置されている。これにより、吐出モジュール10は、制御部100による制御に基づいて、外周部により粘度の低い材料が配置されるように、フィラメントを吐出することが可能となる。
また、三次元造形装置1は、形成された造形材料層を支持するアシスト機構を設けても良い。これにより、形成された造形材料層の形状を維持しながら造形することが可能となる。
また、三次元造形装置1は、射出成形では金型が複雑になる、あるいは、射出成形できないような三次元造形物を造形することができる。
また、三次元造形物MOの角部に吐出モジュール10が移動する前(例えば角部の直前等)に、各XYステージ22のレーザ照射及び空冷を停止制御すると共に、それまでレーザ照射を行っていた一方のXYステージ22を、吐出モジュール10の後方(例えば数mm後)を空冷する位置に移動制御する。また、それまで空冷を行っていた他方のXYステージ22を、吐出モジュール10の前方(例えば数mm前)にレーザ光を照射する位置に移動制御する。そして、三次元造形物MOの角部に吐出モジュール10が移動した際に、一方のXYステージ22をレーザ照射から空冷に切り替えて駆動し、他方のXYステージ22を空冷からレーザ照射に切り替えて駆動する。
これにより、例えば直方体又は立方体等の所定の角部(図28、図29の角部40R2,40R4)の造形時に、各XYステージ22をレーザ照射から空冷に切り替え、又は、空冷からレーザ照射に切り替えながら三次元造形物MOを造形できる。
最後に、上述の各実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、各実施の形態及び各実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。