JP2020124178A - 天然物由来の多機能性粉体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、飲食用および皮膚適用への汎用性のある添加物として、膨化およびその維持機能と乳化機能をあわせ持ち、弾力性付加機能を有する天然物由来のものを提供し、加えて、アレルギー対策としても有効な素材を提供することを目的とする。【解決手段】本発明によれば、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを所定の粒径に粉砕した粉体物が提供され、当該粉体物には所望の機能性があることから、上記課題が解決され得るものである。【選択図】図1

Description

本発明は、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕した機能性原料に関するものである。さらに詳細には、膨化・維持機能と乳化機能を備え、かつ、弾力性付与効果を有するため餅様の触感を有する加工食品が提供可能な白色アラゲキクラゲに係る機能性原料に関するものである。
ライフスタイルの変遷に伴い、食生活は様々な変化を遂げ、パン類等の小麦を主体とした加工食品やカロリーの高い乳製品を食する機会が増えてきた。とともに、嗜好品も多種多様存在し、消費やのニーズに応えるべく食材や添加物の開発も盛んである。食材に求められる機能は味、食感、安全性及び日持ち向上等が同時に求められ、総じて多機能であることも近年の特徴である。
嗜好品については、小麦や卵を使った食材が中心であるが、加工品を作るうえでは近年、アレルギー対策を考慮することが必須である。また、食への安全意識の高まりに伴い、合成の食品添加物は敬遠される一方、天然由来の素材が強く求められる傾向にある。
このような実情に加え、健康志向の強まる時代背景もあり、いろいろな生理活性等を期待しつつ、低カロリーの機能性食材として、キノコ類への注目が集まっているが、現状、まだまだ多機能型添加物としての応用例は少ない。
小麦粉膨化食品の添加物として、シロキクラゲに含まれる多糖の応用が知られている。例えば、特開2018−61485号公報(特許文献1)が挙げられる。本発明には、味に影響せず、膨化後の小麦粉膨化食品の軟化、口溶け、老化防止などの点で従来よりもすぐれた品質を有する新規小麦粉膨化食品および該膨化食品の製造方法が開示されており、解決手段としては、小麦粉膨化食品の生地中の小麦粉100重量部に対し、シロキクラゲ由来の水溶性多糖体を0.005〜0.1重量部含有させる工程を含むものである。
しかしながら、上記発明の解決課題は、口溶けがよく、食感がソフトである小麦膨化食品を提供することであるところ、小麦膨化食品を食する際の官能的な品質面に着目した配合技術に関連したものであって、加工品自体の特徴的品質を獲得することに対する課題、例えば弾力性や膨化力を向上させる等において、粉体の多機能性付与を企図したものではない。
また、特許文献1に係るシロキクラゲ由来の水溶性多糖は、乳化力が弱いため小麦膨化食品の生地につき、成形性確保のために、合成の乳化剤を併用するか、乳化助剤の役割を担う卵の使用が必須である。卵にはレシチンが含まれ、当該レシチンが乳化剤としても機能するが、持続安定性に欠ける。
さらに注目すべきは、特許文献1に係る発明が、小麦粉膨化食品であり、卵の使用が必須であることから、アレルギーを有する消費者に対して使用ができない問題が内在することである。ここで、特許文献1に係る実施態様において、仮に小麦に変えて米粉を使用した場合には、食する際にはしっとり感が消失し、パサつき感が発生する一方、経時的には生地が硬化し、弾力性が一気に減衰する結果を招来する。当然、食感にも大きく影響する。
一方、飲食品用の乳化機能を備える天然乳化剤としては、例えば、特開2011−110458号公報があげられる(特許文献2)。しかしながら、当該発明によれば、液状や流動状の食品には適しているが、膨化とその維持機能や弾力性付加機能はなく、小麦粉食品用途としての機能は企図されておらず、汎用性に劣っている。
医薬化粧品等のスキンケア製剤においても、近年の乳化剤に対する要求水準は上がっている。化粧品等の皮膚適用の形態としては、クリーム及び乳液等の乳化製剤が主流を占めているが、粘度調整やチキソトロピーの応用を含めると乳化タイプのバリエーションは多種である。しかしながら、これら乳化タイプの製剤は、物流において経時安定性維持が難しく、分離防止のために乳化剤を多用する傾向にある。その結果、必然的に乳化剤の特性に絡んだ皮膚刺激が問題となる。皮膚刺激の発現には個人差があり、人によって一次刺激や感作性が偶発的に発生するため、完全になくすことは難しいが、合成系の添加物を使用しないことでかなり発生のリスクを軽減することは可能である。また、一般的なニーズとしては合成系ではなく、刺激の少ない天然系の乳化剤の提供が求められている。
以上のように、飲食用および皮膚適用への汎用性を加味すれば、膨化とその維持機能と乳化機能をあわせ持ち、弾力性付加機能を有する天然物由来の添加物開発には大変意義があり、加えて、アレルギー対策としても有効な素材の提供は昨今強く望まれている喫緊の課題である。
特開2018−61485号公報 特開2011−110458号公報
本発明は、上記の未達の問題に鑑みてなされたものであり、膨化及びその維持機能と乳化機能をあわせ持ち、弾力性付加機能を有する天然物由来の添加物であって、アレルギー対策としても有効な多機能性の原料とこれを使用した飲食および皮膚適用品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、素材の探索を続けた結果、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲが所望の効果を発揮されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕した機能性原料が提供され、当該機能性原料は、膨化とその維持機能、乳化機能および弾力性付与機能を兼ね備えていることから、汎用性が広く、特に飲食用として許容される形態の添加剤若しくは皮膚適用として許容され得る形態の添加剤として応用可能な原料である。
また、本発明を飲食の添加物として使用するメリットとして、小麦粉膨化食品において、卵と小麦粉を米粉に置き換えた場合にも、品質を損なわない食感と生地弾力性の維持がなされることから、アレルギー対策として有効な原料である。
本発明の多機能性原料は、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕したものであり、特に膨化とその維持機能、乳化機能および弾力性付与機能を兼ね備えていることから、食品に使用した場合には、膨張剤の量低減と無駄な安定剤使用の回避が可能である他、小麦粉を米粉に置き換え、かつ、卵を使用しなくとも生地や加工品の成形・持続性に優れ、独特のモチモチとしっとりとした食感が得られる。
また、カロリーの面でも、油の使用を低減できることから、ダイエット効果にも寄与するものである。具体的に例示すると、シフォンケーキで使用するサラダ油150gのうち130gを白色アラゲキクラゲパウダーで置き換えた場合、脂質が60%カットでき、カロリーは30%カットできた。
さらに、食物アレルギーが懸念される消費者に対しても、本発明の機能性原料を使用することで、ノンアレルギー食品を安心して提供できるものである。汎用性が広いため、飲食用として許容される形態の添加剤の他にも、皮膚適用として許容され得る形態の添加剤として応用可能である。
本発明の膨化試験におけるパウンドケーキの焼き上がり直後の状態を示す図である。 本発明の官能性試験における識別結果とその検定結果を示す図である。 本発明の官能性試験における嗜好結果とその検定結果を示す図である。
本発明は、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕したものを応用した多機能性原料である。粉砕は、通常使用される粉砕機でも良いが、処理後の褐変の発生を防ぐために好適には、低温乾燥粉砕機(例えば、ミクロパウテック株式会社製のセントリドライミル製法)を用いて瞬間的な粉砕を行うのが良い。
製造までの前処理工程は、先ず白色アラゲキクラゲを収穫後に水洗し、石づきをカットする。その後、最高温度70℃で5時間乾燥し4分間ブランチングする。 セントリドライミルに投入し、粉末化(数秒)する。粉末化した白色アラゲキクラゲをチッソ充填によりパック詰めし、製品とする。
このようにして製した粉体は、通常の粒度範囲は50〜300ミクロン程度である。なお、当該粒度は粉砕時間の長短によって、調整が可能である。
食品用として加工処理に最適な粒度範囲は、20〜70ミクロン程度である。溶解性を上げ取り扱いを容易にするため、適宜造粒して顆粒状にすると良い。
化粧品用の乳化剤としての最適な粒度範囲は、使用の目的によって適宜調整可能であるが、使用感の面から考えて食用品より小さいものが良く、5乃至50ミクロン程度である。
本発明によれば、アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕物は、膨化及びその維持機能と乳化機能を備え、弾力性付与効果を有するため、食品に応用した場合、餅様の触感を有する加工食品が提供可能である。
作用機序の詳細は不明であるが、出願人の研究においては、白色アラゲキクラゲ粉末を餅に少量添加した場合に、餅の柔らかさが維持されることも確認されている。乳化作用を持つ物質の中には、澱粉を構成するアミロースやアミロペクチンと複合体を形成し、硬化を予防することが知られているが、このことから類推すると、白色アラゲキクラゲ粉末が、餅米中のアミロペクチンと複合体を形成し、硬化を防いでいる可能性も考えられる。
また、白色アラゲキクラゲには豊富な食物繊維が含まれていることが知られている。よって、食物繊維の持つ保水力により水分を維持し、もちの柔らかさが保たれた可能性も考えられる。
食品への応用は、特に制限されないが、例えば、ドリンク、サプリメントなどの栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品などのほか、清涼飲料、スープ、シフォンケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、どら焼き、饅頭、中華まん、餃子、焼売、麺類、ドーナツ、ちぎりパン、マカロン、クッキー、プリン、ゼリー、ババロア、キャンディー、グミ、ガム、アイスクリーム、ジェラート等の各種一般加工食品が挙げられる。これらの中でも、素材の特性がいかんなく発揮される点で特に好ましいものとしては、小麦や米等の粉を使用した加工品が挙げられる。
ここで、これらの食品のうち、粉体を使用する場合、特に小麦粉を使用した膨化食品においては、米粉に代替した場合でも優れた品質(保湿と膨化維持)と食感(モチモチ感)の加工品が提供される。
本発明の機能性原料は、市場取引や物流においては、飲食用として許容される形態、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤、液剤及びゼリー剤などの添加剤やプレミックス原料として構成され得るものである。
化粧品等の製剤に応用した場合、乳化機能の特性と膨化機能(基剤成型性)とその維持機能によって、皮膚刺激の少ない原料構成による製剤設計が図れ、肌質がデリケートな人にも適用可能な製剤の提供が可能である。
本発明の機能性原料は、医薬品や医薬部外品および化粧品のカテゴリーにおいて皮膚適用として許容され得る形態、例えば、クリーム、軟膏、乳剤、リニメント剤、ペースト剤、ローション、乳液、エッセンス、ゲル剤、シャンプー、リンス、コンディショナー及びトニックなどの添加剤として構成され得るものである。
本発明の外用剤は、医薬品、医薬部外品および化粧品のカテゴリーとして許容しうる形態を含むものであり、その剤型としては、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制約されない。
製剤設計時の配合基剤(賦形剤)については、皮膚施用上許容し得る任意の液状及び固形状の原料を幅広く使用できる。その際、必要に応じて機能性成分、保湿剤、酸化防止剤など種々の汎用の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で任意に加えることができる。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は当該実施例に限定されるものではない。
<試験例1>膨化・維持機能試験(パウンドケーキを用いた物性測定)
(試験方法)
本発明素材の白色アラゲキクラゲの粉末(粒子径40μm)を使用して、以下の要領でパウンドケーキを試作した。
小麦600gにバター450gを加え、全卵500g、砂糖500g、ベーキングパウダー10g、アーモンドプードル200gを混ぜ込ませたものを六等分し、そこに小麦粉100gに対してそれぞれ、0g(無添加), 1g, 2g, 3g, 4g及び5gを添加したサンプルを作製し、同一条件(200度、15分間)でオーブンにかけ、6種類のパウンドケーキを得た。
これらのパウンドケーキの膨化率を以下の基準で算出した。
膨化率(%)=(白色アラゲキクラゲの粉末添加のケーキ生地高さ)−(粉末無添加のケーキ生地高さ)/(粉末無添加のケーキ生地高さ)×100
当該膨化率は、パウンドケーキ焼き上がり直後及び24時間後(25℃、湿度60%の恒温保管)の2回測定した。結果は表1に示した。
(結果と考察)
作製したパウンドケーキを図1に示した。写真で見てもわかるように白色アラゲキクラゲの粉を加えることでパウンドケーキの沈み込みが無くなることがわかった。
また、表1に示したように、24時間の経時測定によれば、粉末無添加は生地の中央部が5%落ち込む一方、添加したケーキ生地は不変であることから、かえって相対的に膨化率の差が広がる結果となった。
なお、食感を確認したところ、無添加物に比べて、保湿性に起因するしっとり感と弾力性に起因するもっちり感及びふんわり感の差が歴然としていた。本発明の白色アラゲキクラゲの粉末を少量使うことで、原材料の小麦を不使用あるいは、小麦の量を極端に減らすことが可能となることが示唆された。

<試験例2>乳化機能試験 その1
(試験方法)粒度と乳化活性の関係を調べた。
1 供試試料の粉砕
粗粉砕した本発明の加熱処理白色アラゲキクラゲを高速振動粉砕機((株)CMT製T1-100)で3, 5, 8, 10, 13及び20分の6条件で処理して粉砕物(以下、供試試料)を得た。
2 可溶化率
供試試料を1%になるよう水に分散させ、30分間撹拌した。懸濁液を遠心分離(10,000xg, 10分)し、上清の固形分濃度より可溶化率を算出した。
可溶化率(%)=上清の固形分濃度/懸濁液の固形分濃度×100
ただし、懸濁液の固形分濃度は1%とした。
3 懸濁液の粒度分布
供試試料の1%懸濁液を所定濃度に希釈し、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD-2000)にて体積平均粒子径を測定した。
4 懸濁液の粘度
粘弾性測定装置(MCR102(Anton Paar))を用いて供試試料の1%懸濁液のせん断粘度を測定した。ただし、測定条件は、ジオメトリー(φ50 mm コーンプレート)、温度25℃およびせん断速度は、10−1,0001/s(可変)とした。
せん断粘度については、せん断速度10, 100及び1,000s-1の特に粘度をそれぞれ低せん断、中せん断及び高せん断粘度と規定した。
5 乳化活性
Pearceと Kinsellaの 方法を参考に、白色アラゲキクラゲ粉末の乳化活性を測定した。供試試料懸濁液(1%)2 mLとナタネ油1 mLを10 mL容バイアルにいれ、氷水で冷却しながら超音波ホモジナイザー(BRANSON製Sonifier 150;出力15〜20 w)で3分間処理し、乳化物を得た。乳化活性は、乳化物を0.5% SDS溶液で600倍希釈して波長500 nmにおける吸光度を測定することにより表した。
吸光度の測定時期はエマルション調製直後及び24時間後とした。吸光度測定はマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス製M5)を用いて行い、光路長1cmの吸光度に換算した。なお、測定値は、同一検体で3回測定し、3回の平均値として表した。
(結果と考察)
結果を表2および表3に示す。
粉砕時間が長くなるにつれ平均粒子径は低下し、それに伴って可溶化率の向上が認められた。また、懸濁液の粘度は、低せん断領域(せん断速度10[s-1])では平均粒子径が高いものの方が高く、高せん断領域(せん断速度1,000[s-1])では、逆に平均粒子径が低いものの方がやや高くなる傾向が認められた。
天然系乳化剤として知られているレシチン乳化剤と遜色のない効果が得られ、乳化剤として、また処方構成(O/Wの水相の比率)によっては、乳化助剤として実効性の高い使用が可能である。



<試験例2>乳化機能試験 その2
(試験方法)加熱が乳化特性に及ぼす影響を調べた。
1 供試試料の粉砕
生の白色アラゲキクラゲ粗粉末を高速振動粉砕機((株)CMT製T1-100)で3, 8, 13分の3条件で処理して粉砕物(供試試料)を得た。
2 測定については、前項の「乳化機能試験 その1」に準拠した。
(結果と考察)
各種白色アラゲキクラゲ粉末の物理特性を表4に示す。
同一粉砕時間で比較した場合、非加熱区と加熱処理区では加熱処理区の方が懸濁液中での平均粒子径および粘度が大きく、水中で粒子がより膨潤している傾向が認められた。
次に、各種白色アラゲキクラゲ粉末の乳化特性を表5に示す。
調製直後の吸光度は、加熱処理区に比べて非加熱処理区が明らかに高い傾向が認められた。また、24時間後の吸光度は粉砕時間が長いものの方が高く、粉砕度が上がることによって乳化安定性がより上昇することが示唆された。



<試験例3>官能試験
(試験方法)以下の条件で用時調製した餅を用いて、試験に供した。
1 供試試料
白色アラゲキクラゲパウダーを添加していない餅(無添加餅)
白色アラゲキクラゲパウダーを1%添加した餅(1%添加餅)
白色アラゲキクラゲパウダーを2%添加した餅(2%添加餅)
2 官能評価の方法
1)パネル:食味検査に合格した一定基準パネラー(20代)の21名
2)項目:識別と嗜好の2つの観点から、以下のとおりとした
識別検査(きめの細かさ、しっとり感、もちもち感、硬さ)
嗜好検査(きめの細かさ、しっとり感、もちもち感、硬さ、味、総合評価)
3)評価方法:5点評価法(-2、-1、0、1、2)
4)検定方法:一元配置の分散分析後、Tukey-Kramer法により、危険率5%または10%の水準で有意差を検定した。
(結果と考察)
餅の官能評価(識別試験)の結果を表6と図2に示す。全ての項目で無添加餅と1%および2%餅との間に有意差が認められ、添加の有用性が明らかとなった。
次に、嗜好試験の結果であるが、当該試験においても、「無添加餅<1%添加餅<2%添加餅」の順に好まれ、すべての項目で有意差が認められた(表7と図3)。
特に、味や総合評価についても有意に好まれたことは非常に興味深い結果である。以上のことから、本発明素材の白色アラゲキクラゲを添加することで、餅の食味性が増したといえる。ここで特筆すべきは、餅は時間とともに硬くなる性質があるため最も差異が出現しにくい性質の食品の一つであるが、発明品の添加により、保存性も増すことが期待されることである。
また、少量の白色アラゲキクラゲのパウダー添加でこのような結果が得られることから、小麦粉よりも米などグルテンが含まれない食材に混ぜることによって、例えば、抗アレルギー食品の提供においても、白色アラゲキクラゲの特徴を存分に活かすことができることが示唆されたものと考える。
さらに、小麦を使った食品の食味性を高めるためには、添加量や調理・加工条件を調整することで所望の食感を呈する加工品の提供が可能である。




<試験例4>レオロジー特性(弾力性試験)
(試験方法)
クリープメータ(山電:RE2-33005C (XZ))を用いて白色アラゲキクラゲ粉末添加食品(試験例3で用いたサンプル)の破断強度解析を行った。プランジャーは、W13×D10×30°先端 1mm幅平面くさびを用いた。測定に供したサンプルは、作製後24時間が経過したものを用いた。
なお、サンプルの餅は、試験例3で示した如く、白色アラゲキクラゲ粉末無添加、1%および2%添加の3種類である。
(結果と考察)
物性の測定結果を表8に示した。値は、サンプル厚を約10mmとし、サンプル厚に対しプランジャーが50%貫入したときの荷重及びエネルギー値を示した。これは、サンプルを噛む際に要する力を数値として示したものである。
サンプルにかかる荷重は、それぞれ無添加(0%)では17.3N、1%では13.8N、2%では6.4Nであった。
このように、0%粉末添加サンプルと比較して2%粉末添加サンプルにかかる荷重が有意に小さいことが明らかとなった。
また、粉末試料0%添加時の荷重を100とした時の各試料の荷重を割合で示した。粉末添加により荷重が減り、1%添加では2割程度、2%添加では6割程度、もちが固くなることを防いでいることが確認された。
さらに、サンプルにかかるエネルギー値は、粉末添加量0%と比較して、粉末試料添加量1%、2%で有意に減少することが確認された。
本発明の白色アラゲキクラゲは、餅の日持ち向上(柔らかさと食感維持)の効果が十分に期待される天然素材である。




Claims (6)

  1. アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕した機能性原料。
  2. 膨化およびその維持機能を有する請求項1に記載の機能性原料。
  3. 乳化機能を有する請求項1乃至請求項2に記載の機能性原料。
  4. 弾力性付与機能を有する請求項1乃至請求項3に記載の機能性原料。
  5. 飲食用として許容される形態の添加剤として構成される請求項1乃至請求項4に記載の機能性原料。
  6. 皮膚適用として許容され得る形態の添加剤として構成される請求項1乃至請求項4に記載の機能性原料。
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