JP2020124178A - 天然物由来の多機能性粉体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、カロリーの面でも、油の使用を低減できることから、ダイエット効果にも寄与するものである。具体的に例示すると、シフォンケーキで使用するサラダ油150gのうち130gを白色アラゲキクラゲパウダーで置き換えた場合、脂質が60%カットでき、カロリーは30%カットできた。
さらに、食物アレルギーが懸念される消費者に対しても、本発明の機能性原料を使用することで、ノンアレルギー食品を安心して提供できるものである。汎用性が広いため、飲食用として許容される形態の添加剤の他にも、皮膚適用として許容され得る形態の添加剤として応用可能である。
作用機序の詳細は不明であるが、出願人の研究においては、白色アラゲキクラゲ粉末を餅に少量添加した場合に、餅の柔らかさが維持されることも確認されている。乳化作用を持つ物質の中には、澱粉を構成するアミロースやアミロペクチンと複合体を形成し、硬化を予防することが知られているが、このことから類推すると、白色アラゲキクラゲ粉末が、餅米中のアミロペクチンと複合体を形成し、硬化を防いでいる可能性も考えられる。
また、白色アラゲキクラゲには豊富な食物繊維が含まれていることが知られている。よって、食物繊維の持つ保水力により水分を維持し、もちの柔らかさが保たれた可能性も考えられる。
(試験方法)
本発明素材の白色アラゲキクラゲの粉末(粒子径40μm)を使用して、以下の要領でパウンドケーキを試作した。
小麦600gにバター450gを加え、全卵500g、砂糖500g、ベーキングパウダー10g、アーモンドプードル200gを混ぜ込ませたものを六等分し、そこに小麦粉100gに対してそれぞれ、0g(無添加), 1g, 2g, 3g, 4g及び5gを添加したサンプルを作製し、同一条件(200度、15分間)でオーブンにかけ、6種類のパウンドケーキを得た。
これらのパウンドケーキの膨化率を以下の基準で算出した。
膨化率(%)=(白色アラゲキクラゲの粉末添加のケーキ生地高さ)−(粉末無添加のケーキ生地高さ)/(粉末無添加のケーキ生地高さ)×100
当該膨化率は、パウンドケーキ焼き上がり直後及び24時間後(25℃、湿度60%の恒温保管)の2回測定した。結果は表1に示した。
作製したパウンドケーキを図1に示した。写真で見てもわかるように白色アラゲキクラゲの粉を加えることでパウンドケーキの沈み込みが無くなることがわかった。
また、表1に示したように、24時間の経時測定によれば、粉末無添加は生地の中央部が5%落ち込む一方、添加したケーキ生地は不変であることから、かえって相対的に膨化率の差が広がる結果となった。
なお、食感を確認したところ、無添加物に比べて、保湿性に起因するしっとり感と弾力性に起因するもっちり感及びふんわり感の差が歴然としていた。本発明の白色アラゲキクラゲの粉末を少量使うことで、原材料の小麦を不使用あるいは、小麦の量を極端に減らすことが可能となることが示唆された。
(試験方法)粒度と乳化活性の関係を調べた。
1 供試試料の粉砕
粗粉砕した本発明の加熱処理白色アラゲキクラゲを高速振動粉砕機((株)CMT製T1-100)で3, 5, 8, 10, 13及び20分の6条件で処理して粉砕物(以下、供試試料)を得た。
2 可溶化率
供試試料を1%になるよう水に分散させ、30分間撹拌した。懸濁液を遠心分離(10,000xg, 10分)し、上清の固形分濃度より可溶化率を算出した。
可溶化率(%)=上清の固形分濃度/懸濁液の固形分濃度×100
ただし、懸濁液の固形分濃度は1%とした。
3 懸濁液の粒度分布
供試試料の1%懸濁液を所定濃度に希釈し、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD-2000)にて体積平均粒子径を測定した。
4 懸濁液の粘度
粘弾性測定装置(MCR102(Anton Paar))を用いて供試試料の1%懸濁液のせん断粘度を測定した。ただし、測定条件は、ジオメトリー(φ50 mm コーンプレート)、温度25℃およびせん断速度は、10−1,0001/s(可変)とした。
せん断粘度については、せん断速度10, 100及び1,000s-1の特に粘度をそれぞれ低せん断、中せん断及び高せん断粘度と規定した。
5 乳化活性
Pearceと Kinsellaの 方法を参考に、白色アラゲキクラゲ粉末の乳化活性を測定した。供試試料懸濁液(1%)2 mLとナタネ油1 mLを10 mL容バイアルにいれ、氷水で冷却しながら超音波ホモジナイザー(BRANSON製Sonifier 150;出力15〜20 w)で3分間処理し、乳化物を得た。乳化活性は、乳化物を0.5% SDS溶液で600倍希釈して波長500 nmにおける吸光度を測定することにより表した。
吸光度の測定時期はエマルション調製直後及び24時間後とした。吸光度測定はマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス製M5)を用いて行い、光路長1cmの吸光度に換算した。なお、測定値は、同一検体で3回測定し、3回の平均値として表した。
結果を表2および表3に示す。
粉砕時間が長くなるにつれ平均粒子径は低下し、それに伴って可溶化率の向上が認められた。また、懸濁液の粘度は、低せん断領域(せん断速度10[s-1])では平均粒子径が高いものの方が高く、高せん断領域(せん断速度1,000[s-1])では、逆に平均粒子径が低いものの方がやや高くなる傾向が認められた。
天然系乳化剤として知られているレシチン乳化剤と遜色のない効果が得られ、乳化剤として、また処方構成(O/Wの水相の比率)によっては、乳化助剤として実効性の高い使用が可能である。
(試験方法)加熱が乳化特性に及ぼす影響を調べた。
1 供試試料の粉砕
生の白色アラゲキクラゲ粗粉末を高速振動粉砕機((株)CMT製T1-100)で3, 8, 13分の3条件で処理して粉砕物(供試試料)を得た。
2 測定については、前項の「乳化機能試験 その1」に準拠した。
各種白色アラゲキクラゲ粉末の物理特性を表4に示す。
同一粉砕時間で比較した場合、非加熱区と加熱処理区では加熱処理区の方が懸濁液中での平均粒子径および粘度が大きく、水中で粒子がより膨潤している傾向が認められた。
次に、各種白色アラゲキクラゲ粉末の乳化特性を表5に示す。
調製直後の吸光度は、加熱処理区に比べて非加熱処理区が明らかに高い傾向が認められた。また、24時間後の吸光度は粉砕時間が長いものの方が高く、粉砕度が上がることによって乳化安定性がより上昇することが示唆された。
(試験方法)以下の条件で用時調製した餅を用いて、試験に供した。
1 供試試料
白色アラゲキクラゲパウダーを添加していない餅(無添加餅)
白色アラゲキクラゲパウダーを1%添加した餅(1%添加餅)
白色アラゲキクラゲパウダーを2%添加した餅(2%添加餅)
2 官能評価の方法
1)パネル:食味検査に合格した一定基準パネラー(20代)の21名
2)項目:識別と嗜好の2つの観点から、以下のとおりとした
識別検査(きめの細かさ、しっとり感、もちもち感、硬さ)
嗜好検査(きめの細かさ、しっとり感、もちもち感、硬さ、味、総合評価)
3)評価方法:5点評価法(-2、-1、0、1、2)
4)検定方法:一元配置の分散分析後、Tukey-Kramer法により、危険率5%または10%の水準で有意差を検定した。
餅の官能評価(識別試験)の結果を表6と図2に示す。全ての項目で無添加餅と1%および2%餅との間に有意差が認められ、添加の有用性が明らかとなった。
次に、嗜好試験の結果であるが、当該試験においても、「無添加餅<1%添加餅<2%添加餅」の順に好まれ、すべての項目で有意差が認められた(表7と図3)。
特に、味や総合評価についても有意に好まれたことは非常に興味深い結果である。以上のことから、本発明素材の白色アラゲキクラゲを添加することで、餅の食味性が増したといえる。ここで特筆すべきは、餅は時間とともに硬くなる性質があるため最も差異が出現しにくい性質の食品の一つであるが、発明品の添加により、保存性も増すことが期待されることである。
また、少量の白色アラゲキクラゲのパウダー添加でこのような結果が得られることから、小麦粉よりも米などグルテンが含まれない食材に混ぜることによって、例えば、抗アレルギー食品の提供においても、白色アラゲキクラゲの特徴を存分に活かすことができることが示唆されたものと考える。
さらに、小麦を使った食品の食味性を高めるためには、添加量や調理・加工条件を調整することで所望の食感を呈する加工品の提供が可能である。
(試験方法)
クリープメータ(山電:RE2-33005C (XZ))を用いて白色アラゲキクラゲ粉末添加食品(試験例3で用いたサンプル)の破断強度解析を行った。プランジャーは、W13×D10×30°先端 1mm幅平面くさびを用いた。測定に供したサンプルは、作製後24時間が経過したものを用いた。
なお、サンプルの餅は、試験例3で示した如く、白色アラゲキクラゲ粉末無添加、1%および2%添加の3種類である。
物性の測定結果を表8に示した。値は、サンプル厚を約10mmとし、サンプル厚に対しプランジャーが50%貫入したときの荷重及びエネルギー値を示した。これは、サンプルを噛む際に要する力を数値として示したものである。
サンプルにかかる荷重は、それぞれ無添加(0%)では17.3N、1%では13.8N、2%では6.4Nであった。
このように、0%粉末添加サンプルと比較して2%粉末添加サンプルにかかる荷重が有意に小さいことが明らかとなった。
また、粉末試料0%添加時の荷重を100とした時の各試料の荷重を割合で示した。粉末添加により荷重が減り、1%添加では2割程度、2%添加では6割程度、もちが固くなることを防いでいることが確認された。
さらに、サンプルにかかるエネルギー値は、粉末添加量0%と比較して、粉末試料添加量1%、2%で有意に減少することが確認された。
本発明の白色アラゲキクラゲは、餅の日持ち向上(柔らかさと食感維持)の効果が十分に期待される天然素材である。
Claims (6)
- アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)の突然変異により産生された白色アラゲキクラゲを粉砕した機能性原料。
- 膨化およびその維持機能を有する請求項1に記載の機能性原料。
- 乳化機能を有する請求項1乃至請求項2に記載の機能性原料。
- 弾力性付与機能を有する請求項1乃至請求項3に記載の機能性原料。
- 飲食用として許容される形態の添加剤として構成される請求項1乃至請求項4に記載の機能性原料。
- 皮膚適用として許容され得る形態の添加剤として構成される請求項1乃至請求項4に記載の機能性原料。
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