以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態に係る水中推進装置20を備える水上乗り物1の構成について詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態の一例としての水中推進装置20を備える水上乗り物1が示された側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、水中推進装置20の推進方向(水上乗り物1の進行方向)である図1における左側を船首方向とし、右側を船尾方向とする。また、推進方向に対して直交して、かつ水平である図1における手前側を左方向、奥側を右方向とする。また、推進方向に対して直交して、かつ鉛直である図1における上側を上方向、下側を下方向とする。また、図1において、水上乗り物1は進行状態であり、後述する水上浮遊部2の船首側の記載は省略されている。
図1に示されるように、水上乗り物1は、水上浮遊部2と、水中推進装置20と、船首水中翼43及び船尾水中翼44と、水面センサ4とを備える。水中推進装置20は、支柱3を介して水上浮遊部2に連結される。水面センサ4は、支柱3に取り付けられている。図1では省略されているが、水上乗り物1は、バッテリ、水中推進装置20を操作するための操作具、水中推進装置20を制御する制御部等をさらに備えていてもよい。
水上乗り物1は、水の中で使用される。使用者は、水上浮遊部2の上面に搭乗する。水中推進装置20は、水上浮遊部2の下方であって、水中に配置される。水上乗り物1は、水中推進装置20の推進力によって船首方向へ進む。
水上浮遊部2は、進行方向に延びた板状部材である。水上浮遊部2の材料としては、水に対して浮力を生じる材料、例えば、ポリウレタンやポリスチレン等の合成樹脂に発泡剤を加えて生成される発泡樹脂等を用いることができるが、特に限定されるものではない。水上浮遊部2には、バッテリ、制御部等が防水処理されて内蔵されるとともに、操作具が取り付けられる。なお、防水の方法は特に限定されるものではない。例えば、ガスケット等を用いて防水構造とされた収容室に、バッテリ、制御部等を収容させても良い。
バッテリは、充電が可能な二次電池であり、直流電力を供給する。バッテリから供給される直流電力の電圧は、例えば30V〜60V程度である。バッテリとしては、鉛蓄電池やリチウムイオン電池等を用いることができる。
操作具としては、使用者に把持されるグリップに防水構造とされた押圧式スイッチが取り付けられた構成が例示できる。なお、水上浮遊部2は、使用者が搭乗した際に水中に沈まない浮力を有するように構成にされる。水上浮遊部2としては、例えば、既存のサーフボード、ボディーボード、パドルボード、あるいはウインドサーフボード等を流用することができる。
支柱3は、上下方向に延びる筒状部材である。支柱3は、例えば、左右方向の幅が狭く、水平断面形状が進行方向に延びた流線形に形成される。支柱3の材料としては、軽量かつ高い強度を有する材料、例えばジュラルミン等のアルミニウム合金等を用いることができるが、特に限定されるものではない。支柱3の上端は、水上浮遊部2の下面に固定される。支柱3の下端には、水中推進装置20が取り付けられる。
水面センサ4は、バー5と、当接板6とを備える。バー5は、進行方向に延びる。バー5の前端は、支柱3の上端近傍に上下方向へ回動自在に取り付けられる。バー5の後端には、当接板6が取り付けられる。
水面センサ4は、水上乗り物1が水上浮遊部2を水面7より上方に浮上させた状態で進行する際に、自重によって下方へ回動する。これにより、当接板6が水面7と当接する。水面センサ4は、支柱3に対する回動量によって、水上浮遊部2と水面7との距離を検出できるように構成されている。バー5と当接板6の材料としては、ステンレス鋼等を例示できるが、特に限定されるものではない。
次に本実施形態に係る水中推進装置20の構成について詳細に説明する。図2は水中推進装置20の斜視図であり、図3は水中推進装置20の側面図であり、図4は水中推進装置20の底面図であり、図5は水中推進装置20の背面図であり、図6は図3のVI−VI線断面図であり、図7は図6の船尾側の拡大図である。なお、図2は、船首側の斜め上方から見る水中推進装置20の斜視図である。また、図3におけるVI−VI線は、水中推進装置20の中心を通り水平に延びる直線であり、図6は水中推進装置20の水平断面図である。また、図5において、船首水中翼43、船尾水中翼44等の記載は省略されている。また、図6、図7において、船首水中翼43、船尾水中翼44、後述するインバータ25、制御部26、冷却水路としての配管等の記載は省略されている。また、図6、図7において、後述するモータ22と動力伝達軸24は断面ではなく、平面視で示されている。
図2及び図3に示すように、水中推進装置20は、本体部21と、モータ22と、プロペラ23と、動力伝達軸24と、インバータ25と、制御部26とを備える。本体部21は、推進方向に延びている。本体部21は、中空に形成されている。動力伝達軸24は、モータ22とプロペラ23とを接続する。本実施形態において、インバータ25は、モータ駆動回路に相当する。
図6に示すように、本体部21の内部は、船首側の第1室27と船尾側の第2室28とに区画されている。第1室27は、防水構造とされている。第1室27には、モータ22、インバータ25、制御部26等が収容される。第2室28には、プロペラ23が収容される。第2室28は導水口29と、噴流口30とを有する。導水口29は、第2室28において、プロペラ23よりも船首側に形成される。噴流口30は、第2室28の船尾側の端に形成される。水中推進装置20は、モータ22によってプロペラ23を回転させて、導水口29から第2室28に水を吸い込み、噴流口30から水を噴出することによって、船首方向へ進む推進力を発生させることができるように構成される。
本体部21は、図6、図7、図8に示すように、船首部31と、胴部32と、蓋部33と、船尾部34とを備える。ここで、図8は、本体部21の構成が示された分解斜視図であり、船尾側の斜め上方から見る本体部21の分解斜視図である。なお、図8において、本体部21は、船首部31、胴部32、蓋部33、及び船尾部34が分離されて示されている。また、図8には、支柱3の下端部も分離されて示されている。また、図8において、本体部21に収容される部材、例えば、モータ22、プロペラ23、動力伝達軸24等の記載は省略されている。
船首部31は、船尾側の端が開放した中空状に形成される。船首部31は、例えば、船首側へ向かって先細りの砲弾状に形成される。船首部31の船尾側の端部は、胴部32の船首側の端部にシール部材35を介して嵌合される。
胴部32は、円筒状をなす。胴部32は、実質的に同一径で水中推進装置20の進行方向に延びている。
蓋部33は、嵌合部36と、突出部37とを有する。嵌合部36は、円柱状をなす。突出部37は、略円錐台状に形成される。突出部37は、嵌合部36から船尾側へ向かって縮径している。嵌合部36の船首側は、胴部32の船尾側の端部にシール部材38を介して嵌合される。
船尾部34は、概略円筒状をなす。船尾部34の船首側の端部の外径は胴部32の外径と実質的に等しい。船尾部34の船尾側の外径は、船尾側に向かって徐々に小さくなっている。船尾部34の船首側の端部は、蓋部33の嵌合部36の船尾側に嵌合される。この際、蓋部33の突出部37は、船尾部34の内部に挿入される。
本体部21の内部は、蓋部33によって船首側の第1室27と船尾側の第2室28とに区画されている。第1室27は、船首部31と、円柱状の胴部32と、蓋部33とから構成されている。船首部31は、シール部材35を介して円柱状の胴部32に嵌合される。蓋部33は、シール部材38を介して胴部32に嵌合される。これにより、第1室27は、防水構造とされている。シール部材35,38は、Oリングに限定されるものではなく、ゴムシート等であっても良い。
第2室28は、船尾部34によって構成されている。船尾部34は、船首側の端部の左右に、側面視で矩形状の導水口29を有する。導水口29は、フィルタ39によって覆われている。フィルタ39は、推進方向に延びる複数のスリットを有する。フィルタ39は、例えば、船尾部34の外形に沿うように円弧状に湾曲している。船尾部34の外径は、導水口29よりも船尾側の部分から船尾方向に向かって徐々に小さくなっている。船尾部34は、船尾側の端に噴流口30を有する。噴流口30は、背面視で円形状である。
船首部31、胴部32、及び船尾部34の材料としては、ステンレス鋼等を例示できるが、特に限定されるものではない。また、蓋部33の材料としては、アルミニウム等を例示できるが特に限定されるものではない。
船首部31及び蓋部33は、胴部32の筒軸方向に働く締結力によって胴部32に固定される。船尾部34は、胴部32の筒軸方向に働く締結力によって蓋部33に固定される。より詳細には、図8に示されるように、船首部31及び蓋部33は、3つのねじ40によって胴部32に固定され、船尾部34は、4つのねじ41によって蓋部33に固定される。
ねじ40の各々は、胴部32の筒軸方向に延びる。ねじ40は、船首部31を貫通して蓋部33の嵌合部36まで延びる。ねじ40の船尾側の部分には、おねじが形成されている。ねじ40のおねじは、嵌合部36に形成されるめねじ(図示略)に螺合される。ねじ40が締め付けられることで、船首部31は胴部32に押し付けられ、蓋部33は胴部32に引き付けられる。ねじ40は、胴部32の内周面の近傍に配置される。ねじ40は、胴部32の周方向に略等間隔に配置される。好ましくは、船首部31のねじ40が貫通する部位には防水処理が施され、第1室27への水の浸入が防止される。防水の方法は、特に限定されるものではなく、例えばOリングによる防水であっても良い。
ねじ41の各々は、胴部32の筒軸方向に延びる。ねじ41は、船尾部34を貫通して蓋部33の突出部37まで延びる。ねじ41の船首側の部分には、おねじが形成されている。ねじ41のおねじは、突出部37に形成されるめねじ42に螺合される。ねじ41が締め付けられることで、船尾部34は蓋部33に押し付けられる。2つのねじ41は、船尾部34の上部を貫通し、他の2つのねじ41は船尾部34の下部を貫通する(図5参照)。ねじ41は、側面視で導水口29を横切らないように配置されている。したがって、ねじ41は、導水口29からプロペラ23へ流れる水の流れに影響を与えにくい。
ねじ40及びねじ41による胴部32の筒軸方向に働く締結力によって、船首部31及び蓋部33が胴部32に固定され、船尾部34が蓋部33に固定される。したがって、胴部32に船首部31、蓋部33、及び船尾部34をねじ締結するための貫通孔等を設ける必要がなく、簡易な構成で第1室27の防水性を確保することができ、水中推進装置20の生産性が向上される。
ねじ40及びねじ41の配置や数等は上述の構成に限定されるものではなく、適宜設計できる。また、船首部31及び蓋部33の胴部32への固定、船尾部34の蓋部33への固定は、上述のねじ40及びねじ41によるものに限定されるものではない。
例えば、船首部31の船尾側の端部の外周面に形成されるおねじ構造と、胴部32の船首側の端部の内周面に形成されるめねじ構造とが螺合されることによって、船首部31が胴部32に固定される構成であっても良い。同様に、蓋部33の嵌合部36の船首側の端部の外周面に形成されるおねじ構造と、胴部32の船尾側の端部の内周面に形成されるめねじ構造とが螺合されることによって、蓋部33が胴部32へ固定される構成であっても良い。更に、船尾部34の船首側の端部の内周面に形成されるめねじ構造と、蓋部33の嵌合部36の船尾側の端部の外周面に形成されるおねじ構造とが螺合されることによって、船尾部34が蓋部33に固定される構成であっても良い。
このような構成であっても、胴部32の筒軸方向に働く締結力によって、船首部31及び蓋部33が胴部32に固定され、船尾部34が蓋部33に固定され、上述と同様の効果が得られる。また、船首部31にねじ40が貫通される貫通孔を設ける必要がなく、第1室27の密閉性が向上される。
図9に示されるように、本体部21には、船首水中翼43及び船尾水中翼44が取り付けられる。より詳細には、船首部31には、船首水中翼43が着脱可能に取り付けられる。船尾部34には、船尾水中翼44が着脱可能に取り付けられる。つまり、船首部31は、船首水中翼43を有することが可能な構成である。船尾部34は、船尾水中翼44を有することが可能な構成である。ここで、図9は、本体部21に船首水中翼43及び船尾水中翼44が取り付けられる状態が示された斜視図である。なお、図9において、本体部21は支柱3に取り付けられた状態である。
船首水中翼43は、左右対称形状である。船首水中翼43は、ドーム45と、右翼46と、左翼47とを有する。ドーム45は、船首方向へ向けて膨らんだ形状を有する。右翼46は、ドーム45の右側から右方向に延びる。左翼47は、ドーム45の左側から左方向に延びる。
ドーム45は、船首部31に対応した形状である。ドーム45の内面には、内方へ向かって突出するリブ48が形成される。リブ48は、ドーム45の右側から船首側の端を通って左側まで水平に延びる。また、ドーム45の船首側の端には、ねじ49を挿通するための図示せぬ貫通孔が形成される。右翼46のドーム45の側の端は、その船首側がドーム45に接合されている。同様に、左翼47のドーム45の側の端は、その船首側がドーム45に接合されている。
ここで、図6に示されるように、船首部31の船首側の端には、ねじ49と螺合するめねじ50が形成されている。船首部31の外面には、内方へ向かって窪む溝51が形成される。溝51は、ドーム45のリブ48に対応している。溝51は、船首部31の右側から船首側の端を通って左側まで水平に延びている。
図9に戻り、ドーム45は、船首部31を船首側から覆うようにして船首部31に被せられる。この際、リブ48が溝51に嵌合され、船首水中翼43の周方向の位置決めがされる。ねじ49を船首部31のめねじ50(図6)に螺合させることで、船首水中翼43が船首部31に固定される。
船首水中翼43は、水上乗り物1が進行することで上向きの揚力が生じるように構成される。船首水中翼43の右翼46及び左翼47の形状や大きさ等は、水上乗り物1の重量、水上乗り物1の重心に対する船首水中翼43及び船尾水中翼44の位置等に応じて適宜設計される。船首水中翼43の材料としては、軽量かつ高い強度を有する材料、例えば炭素繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
船尾水中翼44は、左右対称形状である。船尾水中翼44は、リング52と、平板53と、右翼54と、左翼55と、取り付け部56とを有する。
リング52は、胴部32の筒軸方向に延びる円筒状をなす。平板53は、リング52の内部を上下に分割する。平板53は、リング52の筒軸を通って水平に延びる。平板53は、リング52の内周面に接合される。平板53は、平面視で矩形状をなす。平板53は、船首側の端はリング52の船首側の端に位置し、船尾側の端はリング52の船尾側の端よりも船尾側に位置している。つまり、平板53は、リング52から船尾側に突出している。
右翼54は、リング52から右方向に延びる。左翼55は、リング52から左方向に延びる。右翼54のリング52の側の端は、リング52及び平板53に接合されている。同様に、左翼55のリング52の側の端は、リング52及び平板53に接合されている。
取り付け部56は、側面視で胴部32の筒軸方向に延びた略矩形状に形成される。取り付け部56の船首側の端部には、ねじ57を挿通するための図示せぬ貫通孔が形成される。取り付け部56は、右翼54と左翼55にそれぞれ連結される。右側の取り付け部56の船尾側の端部は、右翼54に対して上下方向へ揺動自在に連結される。左側の取り付け部56の船尾側の端部は、左翼55に対して上下方向へ揺動自在に連結される。
船尾水中翼44を船尾部34に取り付ける際、リング52は、胴部32の筒軸と同心で配置される。ここで、図7に示されるように、船尾部34の船尾側の左右には、ねじ57と螺合するめねじ58が形成されている。左右の取り付け部56の船首側の端部が、それぞれねじ57によって船尾部34に取り付けられることで、船尾水中翼44が船尾部34に取り付けられる。
船尾水中翼44は、進行時の水上乗り物1の船首方向及び船尾方向への傾倒を抑制し、水上乗り物1の進行の安定を図るように構成される。右翼54及び左翼55の形状や大きさ等は、水上乗り物1の重量、水上乗り物1の重心に対する船首水中翼43及び船尾水中翼44の位置等に応じて適宜設計できる。船尾水中翼44の材料としては、軽量かつ高い強度を有する材料、例えば炭素繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック等を用いることができるが、特に限定されるものではない。また、船尾水中翼44を構成する各部材を異なる材料から形成しても良く、例えば、リング52及び平板53がステンレス鋼から形成され、右翼54、左翼55、取り付け部56が炭素繊維強化プラスチックから形成されても良い。
上述した通り、船首水中翼43は、ねじ49による締結で船首部31に固定されるため、着脱が容易である。船尾水中翼44は、ねじ57による締結で船尾部34に取り付けられるため、着脱が容易である。したがって、水中推進装置20は、船首水中翼43及び船尾水中翼44を取り外した状態に容易にすることができ、水上乗り物1の携帯性が向上される。
船首水中翼43及び船尾水中翼44は、本体部21に直接取り付けられる。このため、本体部21において、船首水中翼43及び船尾水中翼44の取付部材を設ける必要がない。
本体部21は、図9に示されるように、胴部32の上部に形成される台座部59が、支柱3の下端のフランジ8にねじ締結される。台座部59は、平面視で胴部32の筒軸方向に延びた矩形状である。台座部59は、胴部32の上部に溶接等で固定される。台座部59の材料としては、ステンレス鋼等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
図8に戻り、台座部59の上面60は、水平な平坦面である。台座部59は、上面60に下方へ向けて窪んだ凹部61を有する。凹部61は、台座部59の左右方向の中央に位置する。凹部61は、台座部59の推進方向の略中央から船尾側の端まで延びている。台座部59において、凹部61よりも船首側には、貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、胴部32及び台座部59を貫通して第1室27に連通する。貫通孔62には、第1室27に収容される装置と、水上浮遊部2に配設される装置とを電気的に接続する信号線と動力線等が通される。これらの信号線と動力線は、第1室27に収容される装置から、貫通孔62を介して支柱3の内部を通り、水上浮遊部2に配設される装置に接続される。
フランジ8は、平面視で推進方向に延びた矩形状である。フランジ8は、台座部59に対応した形状を有する。フランジ8は、下面が台座部59の上面60に重ね合わされ、四隅がねじ締結されて台座部59に固定される。なお、台座部59は、接着剤を用いてフランジ8に固定されても構わない。
フランジ8の下面の船尾側には、上方へ向けて窪んだ凹部9が形成されている。凹部9は、台座部59の凹部61に対応している。そして、台座部59がフランジ8に固定された際、フランジ8の凹部9と台座部59の凹部61とによって、支柱3の内部と外部とを連通させる通路63が形成される(図5参照)。
貫通孔62には防水処理が施され、貫通孔62から第1室27に水が入り込まないようにされることが好ましい。防水の方法は、特に限定されるものではなく、ゴムチューブの密着嵌合による防水が例示できる。図示による説明は省略するが、貫通孔62に対応して支柱3の内部へと延びる円筒状の固定管を台座部59に溶接等で固着させる。固定管は、剛性を有する管であって、例えばアルミニウムから形成される。固定管の外径は、ゴムチューブの内径よりも大とされる。ゴムチューブは、支柱3の内部を通って水上浮遊部2まで延びる。ゴムチューブの下端部に固定管を圧入させる。そして、ゴムチューブに、貫通孔62を通過する信号線と動力線等が通される。このような構成にすることで、第1室27への水の浸入を防止できる。なお、ゴムチューブと固定管との嵌合部には、締め付けバンドが取り付けられても良い。
図7に戻り、本体部21の内部の構成について詳細に説明する。本体部21の第1室27に収容されるモータ22は、交流モータであり、アウターロータ型である。モータ22は、直流モータであっても良く、インナーロータ型であっても良く、特に限定されるものではない。モータ22は、第1室27の蓋部33の近傍に配置される。
モータ22の出力軸64は、胴部32の筒軸上に配置され、蓋部33に向かって延びている。モータ22の出力軸64には、カップリング65を介して動力伝達軸24の船首側の端部が接続される。動力伝達軸24は、胴部32の筒軸上に配置される。動力伝達軸24は、蓋部33を貫通して第2室28の船尾側の端部の近傍まで延びている。動力伝達軸24は、ベアリング66によって、蓋部33に回転自在に支持されている。ベアリング66よりも船尾側には、パッキン67が配設されている。このパッキン67によって、第1室27への水の浸入が防止される。
プロペラ23は、円筒状の筒部68と、筒部68から径方向外方へ延びる3つの翼69とを備える(図5参照)。プロペラ23は、第2室28内において、導水口29よりも船尾側に配置される。プロペラ23は、筒部68に動力伝達軸24が挿通された上で、動力伝達軸24に固定される。プロペラ23は、回転することで、導水口29から第2室28に水を吸い込み、噴流口30から水を噴出するように構成される。なお、プロペラ23の動力伝達軸24への固定方法は、特に限定されるものではない。プロペラ23は、例えば、ねじ締結、キー溝、スプライン、圧入等によって動力伝達軸24に固定される。
筒部68の外径は、蓋部33の突出部37の船尾側の端の外径と略同一である。また、突出部37と筒部68との間には、動力伝達軸24に挿通された円筒状のスペーサ70が配置される。スペーサ70の外径は、筒部68の外径と略同一である。突出部37の外周面、スペーサ70の外周面、及び筒部68の外周面は、滑らかに接続している。これにより、導水口29からプロペラ23へ流れる水の流れに乱れが生じるのを抑制することができる。
船尾部34の内径は、導水口29の船尾側の端から船尾方向に向かって徐々に小さくなり、プロペラ23が位置する部位ではプロペラ23の外径と略同一となる。船尾部34の内径は、船尾部34の船尾側の端部において、船尾方向に向かって徐々に小さくなっている。つまり、導水口29から噴流口30へ流れる水の流路の断面積は、導水口29からプロペラ23へ向かって漸次減少し、プロペラ23の位置で一定になった後、噴流口30の近傍で更に減少するように構成されている。したがって、プロペラ23の回転によって導水口29から噴流口30へ流れる水の流速は、流路の断面積の減少に応じて速くなり、噴流口30の近傍で最速となる。
蓋部33の突出部37の外周面は、内方へ窪むように湾曲している。これにより、導水口29からプロペラ23へ流れる水の流れに乱れが生じるのを抑制することができる。しかしながら、突出部37の外周面は、このような形状に限定されるものではない。例えば、突出部37の外周面は、外方へ向けて膨らむように湾曲していても構わない。
動力伝達軸24の船尾側の端部は、支持部71によって回転自在に支持される。支持部71は、円筒状の筒部72と、3つの整流板73とを備える(図5参照)。整流板73は、筒部72から径方向外方へ延びて船尾部34の内周面に接合される。整流板73は、プロペラ23の翼69とは逆向きに捻られている。
動力伝達軸24の船尾側の端部は、筒部72に挿入されてベアリング(図示略)によって支持部71に回転自在に支持される。つまり、動力伝達軸24は、船首側の端部とともに船尾側の端部が回転自在に支持され、回転振れが低減されている。また、プロペラ23の回転によって噴流口30から噴出される水は、整流板73によって動力伝達軸24周りの回転が打ち消された状態となる。したがって、水中推進装置20は、効果的な推進力を発生させることができる。
動力伝達軸24は、推進方向に延びてモータ22とプロペラ23を接続すれば良く、上述の構成に限定されるものではない。例えば、動力伝達軸24は、船尾側の端部が支持部71によって支持されず、蓋部33によって片持ち状に回転自在に支持される構成であっても構わない。また、プロペラ23の翼69及び整流板73の数や形状は特に限定されるものではなく、適宜設計できる。
プロペラ23は、その外径が第1室27の最大径よりも小さい。つまり、プロペラ23の外径は、胴部32の外径よりも小さく形成されている。好ましくは、プロペラ23の外径は、胴部32の内径よりも小さい。このような構成にすることで、第1室27に収容されるモータ22に対するプロペラ23の大きさが大きくなり過ぎることがない。よって、モータ22には過剰な負荷がかからず、モータ22の故障、寿命の低下が防止される。また、水中推進装置20は、長時間連続駆動することも可能となり、使い勝手が良い。また、水中推進装置20は、減速機を用いることなく、モータ22を小型である低トルク高速回転のモータとすることができる。したがって、水中推進装置20は、推進出力を低下させることなく、コンパクト化、軽量化、及び抗力の低減が図れる。
一般に、プロペラの外径が大きくなると、高トルクを出すことができるモータが必要になる。ところが、高トルクを出すことができるモータの直径は当然ながら大きいため、モータを水中に存在させる場合にはそのモータの直径を小さくしたいという要請と相反する。一方、小径、すなわち高速回転のモータでトルクを増すには、モータとプロペラとの間に減速機を取り付ける必要があるところ、減速機を設けると水中推進装置の機構が複雑になり、コスト面でも好ましくない。これに対して、本実施形態に係る水中推進装置20では、プロペラ23の外径が第1室27の径よりも小さいため、減速機を用いることなく、小径で高速回転のモータを使用することが可能となる。また、プロペラ23を本体部21内に完全に収容することができる。
導水口29と噴流口30の各断面積は、プロペラ23及びモータ22の性能に応じて適宜設計できる。また、導水口29は、プロペラ23よりも船首側で動力伝達軸24の周方向に形成されていれば良く、形状や周方向の位置は特に限定されるものではない。例えば、導水口29は、動力伝達軸24の周方向の全周に形成されていても構わない。
一般的な水上バイク等は下側(船底)に導水口が形成されている。しかしながら、本実施形態に係る水中推進装置20の本体部21は、完全に水中に没した中空の推進体であり、導水口29は、下方へ向けて開口していないことが好ましい。以下、図10を参照しつつ、好ましい導水口29の構成について説明する。図10は水中推進装置20の鉛直断面図であり、より詳細には、図3のX−X線断面図である。
図10において、L1は、動力伝達軸24の軸心Oを通って鉛直上方向に延びる直線である。L2は、動力伝達軸24の軸心Oと導水口29の下端29aとを通る直線である。導水口29は、直線L1と直線L2とのなす角θが90°以上、160°以下となるように構成されることが好ましい。このような構成にすることで、導水口29の面積を確保しつつ、水中推進装置20が水底(海底、湖底、川底等)に近づいた際に、水底の砂礫等の異物が第2室28に吸い込まれにくくなり、水中推進装置20の異物の吸い込みによる破損が防止される。
上述した通り、導水口29がフィルタ39によって覆われている。このため、第2室28への藻、ゴミ等の異物の侵入が防止されている。したがって、水中推進装置20は、異物の吸い込みよる破損が防止され、耐久性が向上する。
フィルタ39は、第2室28への異物の侵入を防止できる構成であれば良く、スリットの数や幅等は適宜設計できる。また、フィルタ39は、例えばスリットが周方向に延びる構成であっても良く、金属線をより合わせて形成される金網等であっても良く、スリットと金網が組み合わされた構成であっても良い。しかしながら、フィルタ39は、本実施形態のように、推進方向に延びる複数のスリットを有する構成であることが好ましい。この構成であれば、フィルタ39に異物が引っ掛かりにくく、異物によって導水口29が閉塞されにくいため、水中推進装置20の推進力の低下を抑制することができる。
防水構造の第1室27には、上述したように、モータ22、インバータ25、制御部26等が収容される。インバータ25、制御部26等は、図11に示すインナーケース74によって支持された状態で、胴部32に収容される。図11は、インナーケース74の一例が示された斜視図であり、船首側の斜め上方から見るインナーケース74の斜視図である。図11において、モータ22、蓋部33、インナーケース74は、ここでは図示せぬ胴部32に収容された位置関係で示されている。図11において、右側が船首側であり、左側が船尾側である。
インナーケース74は、図11に示されるように、胴部32の筒軸方向に延びる筒状の収容部75と、収容部75から船尾側へ延びる3つの脚部76a,76b,76cと、モータ22を囲う保護部77とを備える。
収容部75は、上部に水平な平坦面78を有する。収容部75の下部は、円弧状に形成される。収容部75の内径はモータ22の外径よりも大である。収容部75の内部は、仕切板79によって上室80と下室81とに仕切られている。インバータ25は下室81に収容される。制御部26は上室80に収容される。インバータ25及び制御部26は、インナーケース74に固定される。
下側の脚部76aは、モータ22の下方を覆うように収容部75の船尾側の端から船尾方向へ延びる。脚部76aは、円弧状の収容部75の下部が延長されるようにして形成される。上側の脚部76b,76cは、収容部75の船尾側の端から船尾方向へ延びる。脚部76b,76cは、収容部75の上部の左右の隅が延長されるようにして形成される。脚部76a,76b,76cの船尾側の端は、蓋部33の嵌合部36の船首側の端に当接している。
保護部77は、モータ22の船首側に配置される円形状の保護板82と、モータ22の左右の側方に配置される2つの保護板83等によって構成される。保護板82の外径は、モータ22の外径よりも大である。保護板82の下部は、脚部76aに接合されている。保護板83は、モータ22の外周面に沿って円弧状に湾曲されている。保護板83の上部は、脚部76b,76cに接合される。保護板83の船首側の端部は、保護板82に接合されている。保護部77によって、モータ22の左右及びモータ22の船首側が覆われている。
インナーケース74内において、モータ22の左右両側及び船首側には、保護部77によってモータ22と隔離された空間が形成される(図7参照)。この空間、及び収容部75の平坦面78と胴部32の内周面との間の空間等に、図示せぬ動力線及び信号線や、後述する冷却水路等が配索される。動力線、信号線、及び冷却水路等は、モータ22と接触することがないように保護部77によってモータ22から隔離されている。
インナーケース74の材料としては、軽量かつ加工が容易な材料、例えばプラスチック(ABS樹脂)等を用いることができるが、特に限定されるものではない。なお、インナーケース74には、胴部32の筒軸と平行に延び、収容部75と脚部76a,76b,76cを貫通する3つの取り付け孔84が形成されている。また、蓋部33の嵌合部36には、この取り付け孔84に対応したここでは図示せぬめねじが形成される。上述した船首部31及び蓋部33を胴部32に固定させるねじ40は、取り付け孔84に挿通されて、嵌合部36のめねじに螺合される。
インバータ25は、スイッチング素子等を備え、バッテリから供給される直流電力を所望の周波数の交流電力に変換するように構成される。モータ22へ供給される交流電力の周波数を変更することで、モータ22の回転数が変更される。インバータ25は、インナーケース74に収容された状態で胴部32に収容され、モータ22の船首側に隣接して配置される。なお、インバータ25の構成は特に限定されるものではない。また、モータ駆動回路は、インバータ25に限定されるものではなく、モータ22の構成に応じて適宜設計できる。例えば、モータ22が直流モータである場合には、モータ駆動回路は、バッテリから供給される直流電力を所望の電圧でモータ22に供給できるような構成とされる。そして、モータ22へ供給される直流電力の電圧を変更することで、モータ22の回転数が変更される。
制御部26は、インバータ25を制御することでモータ22を制御するように構成される。制御部26は、インバータ25と電気的に接続されている。制御部26は、特に図示しないが、水上浮遊部2に内蔵されるコンバータを介してバッテリに接続され、バッテリから所定の電圧の直流電力が供給される。詳細については後述するが、制御部26は、水上浮遊部2に内蔵される制御部にも電気的に接続されている。
制御部26としては、演算処理及び制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、データが格納される主記憶装置、タイマ、入力回路、出力回路等の含まれた制御盤が例示される。ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)に例示される主記憶装置には、制御プログラム、各種データが格納されている。制御部26は、インナーケース74に収容された状態で胴部32に収容される。制御部26の構成は特に限定されるものではなく、例えば、複数の制御盤から構成されても構わない。
インバータ25及び制御部26は、インナーケース74ごと胴部32に収容することができる。したがって、インバータ25及び制御部26を胴部32に容易に収容させることができ、水中推進装置20の生産性が向上される。
インバータ25は、推進方向において、モータ22よりも船首側に配置される。すなわち、モータ22、インバータ25、及びプロペラ23が、推進方向に並べて配置されることになる。これにより、本体部21の径方向(上下方向及び左右方向)の寸法をコンパクトにすることができ、水中推進装置20の推進抵抗を低減することができる。
より好ましくは、インバータ25は、モータ22よりも船首側であって、モータ22に隣接して配置される。したがって、モータ22とインバータ25との間の動力線を短くすることができ、水中推進装置20のコンパクト化が図れる。また、この動力線が短くなることで、動力線から生じる発熱量、動力線における電圧降下、動力線から発生する電磁ノイズ等を低減することができる。
また、モータ22とインバータ25との距離が近いため、モータ22とインバータ25との間の動力線として、絶縁体で被覆された電線ではなく、バスバーを用いることができる。バスバーの断面積は、電線の断面積と比較して小さい。このため、動力線としてバスバーを使用した場合、本体部21を小径化することができ、水中推進装置20をコンパクトに形成することができる。
モータ22が三相交流モータである場合には、モータ22とインバータ25との間の動力線は3本となるため、この動力線を配索するための広いスペースを確保する必要がある。しかしながら、インバータ25がモータ22に隣接して配置されることで、動力線を配索するために必要なスペースを小さくすることができ、モータ22が三相交流モータであっても水中推進装置20のコンパクト化が図れる。
水上乗り物1は、水上浮遊部2にインバータ25を内蔵するのではなく、水中推進装置20がインバータ25を備える構成である。したがって、水上乗り物1は、モータ22が三相交流モータであっても支柱3の内部に3本の動力線を通す必要がなく、支柱3を細くすることができ、水の抵抗が減少された進行ができる。
インナーケース74は、インバータ25及び制御部26を収容できる構成であれば、上述の構成に限定されるものではない。例えば、インナーケース74は、仕切板79によって、収容部75の内部が左右に仕切られる構成であっても構わない。
図11に示すように、モータ22は、連結部材86を介して蓋部33の嵌合部36に固定される。連結部材86は、円環状の接合部87と、接合部87から船尾側へ延びる3つの脚部88等を備える。脚部88は、周方向に略等間隔で配設されている。接合部87には、モータ22の出力軸64が挿通され(図7参照)、モータ22の船尾側の端部が固定される。
連結部材86の脚部88は、蓋部33の嵌合部36に固定される。すなわち、モータ22は、胴部32に支持されるのではなく、連結部材86を介して蓋部33に片持ち支持されている。このように構成することで、胴部32にモータ22をねじ締結するための貫通孔等を設ける必要がなく、第1室27の密閉性が向上される。また、胴部32は、内部にモータ22を支持する台等を設けた複雑な構造とする必要がない。そして、モータ22が固定された状態の蓋部33を胴部32に挿入することで、モータ22が胴部32の内部に配置される。したがって、水中推進装置20は、胴部32の内部へのモータ22の配置が容易であり、生産性が向上される。
モータ22が蓋部33に固定可能であることにより、水中推進装置20の組立前に駆動機構部が完結する。このため、駆動機構部の取付精度や取付剛性が低下するのを抑制することができる。
水中推進装置20は、図12に示されるように、配管89,90を更に備える。配管89,90は、第1室27の内部を通過する冷却水路である。図12は、配管89,90の一例が示された斜視図であり、船首側の斜め下方から見る配管89,90の斜視図である。図12には、モータ22、インバータ25、及び蓋部33も記載されており、モータ22、インバータ25、及び蓋部33は、ここでは図示せぬ胴部32に収容された位置関係で示されている。また、図12において、右側が船尾側であり、左側が船首側である。
配管89の一端部には、吸入口91が形成される。配管89は、インバータ25の内部を推進方向に往復するように通過する。配管89の他端は、モータ22の冷却水路(図示略)の一端に接続される。モータ22の冷却水路の他端には、配管90の一端が接続される。配管90の他端には、排出口92が形成されている。
胴部32のうち、配管89が貫通する部位及び蓋部33の配管90が貫通する部位には防水処理が施され、第1室27への水の浸入が防止されることが好ましい。防水の方法は、特に限定されるものではなく、Oリングによる防水、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等によって隙間を埋める防水等が例示できる。
配管89,90には水が流される。この配管89,90を流れる水によって、モータ22及びインバータ25は冷却される。水は、吸入口91から配管89に取り込まれる。そして、この水は、インバータ25の内部を通過する配管89、モータ22の冷却水路、配管90の順に流れ、配管90の他端である排出口92から排出される。
配管89,90の材料としては、ステンレス鋼等を用いることができるが、特に限定されるものではない。配管89,90は、組み立て性の観点において、部分的にフレキシブルなゴムチューブ等で形成されても構わない。
図4及び図5に示すように、配管89の吸入口91は、胴部32から径方向外方へ突出している。図7に示すように、配管90は、蓋部33を推進方向に貫通して、第2室28と連通している。
図7に示すように、排出口92は、導水口29と連通されている。より詳細には、排出口92は、プロペラ23の回転によって導水口29から噴流口30へ流れる水の流路であって、プロペラ23よりも上流側の部位に配置されている。この部位は、プロペラ23が回転することによって、吸入口91(図4及び図5)が位置する本体部21の外部よりも圧力が大きく低下する。水は、吸入口91と排出口92との圧力差によって、吸入口91から配管89に吸入され、配管90を通って排出口92から排出される。したがって、水中推進装置20は、配管89,90に水を流すためのアクチュエータ、例えばポンプ等を用いることなく、簡易な構成でモータ22及びインバータ25を冷却することができる。
吸入口91は、進行方向に向かって開いている。好ましくは、吸入口91は、進行方向に対して実質的に垂直に配置されている。よって、水上乗り物1が進行することで、水は吸入口91に押し込まれるように吸入される。したがって、水中推進装置20は、配管89,90に水を流すためのアクチュエータ等を用いることなく、配管89,90を流れる水の流量を増加させることができ、簡易な構成でモータ22及びインバータ25の冷却効率を向上することができる。
吸入口91の位置や向きは、特に限定されるものではない。例えば、吸入口91が形成される配管89の端部は、船首部31から外方へ突出されても構わない。また、吸入口91は、本体部21の外方で進行方向に対して傾斜して配置されていても良い。
例えば、吸入口91は、第2室28であって、プロペラ23の外周の近傍に配置されていても良い。プロペラ23の外周の近傍は、プロペラ23が回転することによって、排出口92が位置する第2室28の水の流路のうちプロペラ23の上流側よりも圧力が大きく上昇する。この圧力差によって吸入口91から配管89に水を押し込むことができる。このような構成であっても、水中推進装置20は、配管89,90に水を流すためのアクチュエータ等を用いることなく、配管89,90を流れる水の流量を増加することができ、簡易な構成でモータ22及びインバータ25の冷却効率を向上することができる。
モータ22とインバータ25を冷却する冷却水路は、上述の配管89,90の構成に限定されるものではない。冷却水路は、吸水口91と排出口92とを有し、第1室27の内部を通過するように構成されていれば良い。例えば、冷却水路は、モータ22の次にインバータ25を冷却するように構成されても構わない。また、冷却水路は、モータ22とインバータ25とともに制御部26も冷却するように構成されても構わない。
次に、図3に戻り、船尾水中翼44の揺動動作について説明する。上述したように、船尾水中翼44は、船尾部34に上下方向へ揺動自在に取り付けられる。船尾水中翼44には、リンク機構93が接続されている。船尾水中翼44は、リンク機構93によって、水面センサ4に連動連結されている。
リンク機構93は、ワイヤ94,95と、連結アーム96とを備える。ワイヤ94の一端は、船尾水中翼44に連結されている。ワイヤ95の一端は、水面センサ4(図1)に連結されている。連結アーム96は、ワイヤ94とワイヤ95とを接続する。
ワイヤ94の一端は、船尾水中翼44のリング52の上端に連結される。ワイヤ94は、胴部32の上部に沿って進行方向に延びる。ワイヤ94は、胴部32の台座部59と支柱3のフランジ8との間に形成される通路63(図5)を介して支柱3の内部まで延びる。ワイヤ95及び連結アーム96は、支柱3に収容される。ワイヤ95の一端は、水面センサ4のバー5(図1)の回動軸に形成されるクランク(図示略)に連結される。連結アーム96は、側面視で略逆L字状に形成される。連結アーム96は、屈曲部を支点として支柱3に上下方向へ揺動自在に支持される。連結アーム96の下方側の端には、ワイヤ94の他端が連結される。連結アーム96の上方側の端には、ワイヤ95の他端が連結される。
船尾水中翼44は、以上のような構成のリンク機構93によって水面センサ4に連動連結されている。船尾水中翼44は、水面センサ4の支柱3に対する回動動作に応じて上下に揺動される。図1に示されるように、水上乗り物1の進行時において、水上浮遊部2と水面7との距離が所定の距離である場合には、船尾水中翼44は、右翼54及び左翼55が水平に延びる定常状態とされる。
図13は、水上乗り物1の進行状態の一例が示された側面図である。定常状態である図1の状態から図13に示されるように、水上浮遊部2と水面7との距離が所定の距離よりも大となった場合には、水面センサ4は自重によって下方へ回動する。一方、図示による説明は省略するが、定常状態である図1の状態から、水上浮遊部2と水面7との距離が所定の距離よりも小となった場合には、水面センサ4は上方へ回動する。船尾水中翼44は、水面センサ4の回動に応じ、水上浮遊部2と水面7との距離を所定の距離に保つように支柱3に対して揺動する。
図14は、水上乗り物1の停止状態の一例が示された側面図である。水上乗り物1が停止状態では、水面センサ4は、図14に示されるように、浮力によって上方へ回動した状態となる。
リンク機構93は、水面センサ4と船尾水中翼44とを連動連結させる構成であれば良く、上述の構成に限定されるものではない。リンク機構93は、支柱3の外部に配設されても構わない。しかしながら、抗力の低減、保護等の観点から、リンク機構93は、支柱3の内部に配設されることが好ましい。
次に、水上乗り物1の制御系統について詳述する。図15は、水上乗り物1の制御系統の要部ブロック図である。図15おいて、電力の供給は破線で示されている。水上乗り物1は、水上浮遊部2に内蔵されるバッテリ10と、制御部11と、水上浮遊部2に取り付けられる操作具12とを更に備える。
制御部11は、水中推進装置20の制御部26、及び操作具12と電気的に接続される。また、制御部11は、水上浮遊部2に内蔵される図示せぬコンバータを介してバッテリ10に接続され、所定の電圧の直流電力がバッテリ10から供給される。制御部11は、種々の設定値及び操作具12からの入力信号を読み込み、この入力信号に基づいて水中推進装置20の制御部26へ制御信号を出力するように構成されている。
制御部11としては、水中推進装置20の制御部26と同様に、演算処理及び制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、データが格納される主記憶装置、タイマ、入力回路、出力回路等の含まれた制御盤が例示される。ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)に例示される主記憶装置には、制御プログラム、各種データが格納されている。なお、制御部11の構成は特に限定されるものではなく、例えば、複数の制御盤から構成されても構わない。
制御部11が操作具12からの入力信号に基づいて水中推進装置20の制御部26へ制御信号を出力し、水中推進装置20の制御部26がこの制御信号に基づいてインバータ25へ制御信号を出力する。そして、インバータ25が入力される制御信号に基づいてモータ22へ供給する交流電力の周波数を変更することで、モータ22の回転数が変更され、水上乗り物1の進行速度が変更される。
ここで、水上浮遊部2の制御部11と水中推進装置20の制御部26は、相互通信ができるように構成されても構わない。制御部11と制御部26との通信は、シリアル通信であっても良く、パラレル通信であっても良い。しかしながら、抗力を減少させる観点において、制御部11と制御部26との通信は、シリアル通信であることが好ましい。シリアル通信とすることで、制御部11と制御部26とを接続する通信線を1本とすることができる。これにより、支柱3の内部を通る通信線の数が減って支柱3を細くすることができるため、抗力が減少された水上乗り物1の進行ができる。
水中推進装置20は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、水中推進装置20は、制御部26を備えない構成であっても良い。このような構成の場合には、水中推進装置20は、水上浮遊部2に内蔵される制御部11からインバータ25へ制御信号が出力される構成とする。
水中推進装置20は、水上乗り物1の進行速度を測定するための圧力センサ、モータ22やインバータ25の温度を測定するための温度センサ、水上乗り物1の傾き等を測定するための加速度センサ等を備える構成であっても良い。これらの各種センサは制御部26に電気的に接続される。この場合、制御部26は、圧力センサの検出値に基づいて水上乗り物1の進行速度を算出したり、温度センサの検出値に基づいてモータ22やインバータ25の温度を算出したり、あるいは加速度センサの検出値に基づいて水上乗り物1の傾き等を算出したりするように構成される。
水中推進装置20が各種センサを備える場合には、制御部11によって制御される表示装置を水上浮遊部2に配設することが好ましい。表示装置は、制御部26によって算出された速度、温度、傾き等を表示する。表示装置には、バッテリ10の電力量、進行可能な距離等を表示させても良い。表示装置としては、特に限定されるものではなく、防水構造とされた液晶モニタ等を用いることができる。このような構成にすることで、使用者は水上乗り物1の進行状態を把握することができ、使い勝手が良い。
制御部26が各種センサの検出値に基づいてモータ22を制御するように構成することも可能となる。例えば、水上乗り物1の速度が所定の速度以上とならいようにするモータ22の制御等が可能となる。更に、水中推進装置20は、船尾水中翼44を能動的に揺動させる駆動機構を備えるとともに、制御部26が各種センサの検出に基づいてこの駆動機構を制御する構成とされても良い。このような構成にすることで、水上乗り物1の姿勢制御を行うことも可能となる。
制御部26に替わって制御部11が各種の値を算出する構成にしても良い。加速度センサは、水上浮遊部2に配設されても構わない。また、水上浮遊部2に測位衛星からの電波を受信する受信装置を配設し、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて進行速度を算出するように構成されても良い。
水中推進装置20の船首水中翼43は、例えば、胴部32や船尾部34に取り付けられても構わない。水中推進装置20は、船首水中翼43を備えなくても良い。船首水中翼43は、支柱3等に備えられていてもよい。
水中推進装置20は、船尾水中翼44が本体部21に固定される構成であっても良い。船尾水中翼44は、噴流口30の近傍以外の場所に配置されても構わない。水中推進装置20は、船尾水中翼44を備えなくても良い。船尾水中翼44は、支柱3等に備えられていてもよい。
また、水中推進装置20の本体部21は、上述の構成に限定されるものではない。本体部21は、例えば、船首部31と胴部32とが一体的に構成されても構わない。しかしながら、生産性の観点から、上述のように、船首部31と、胴部32と、船尾部34とが別体であることが好ましい。
以上、本実施形態の一実施形態について説明したが、本開示に係る水中推進装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。