JP2020105036A - 分極測定によるチオ硫酸濃度管理を含んだ硫酸ニッケルの製造方法 - Google Patents

分極測定によるチオ硫酸濃度管理を含んだ硫酸ニッケルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】硫酸ニッケル結晶へのチオ硫酸の混入を抑制可能な硫酸ニッケルの製造方法の提供。【解決手段】原料の硫化物スラリーの調製を行うスラリー調製工程S1と、該硫化物スラリーを浸出処理する浸出工程S2と、該浸出工程S2で得た金属イオンとして少なくともNi、Co及びFeを含む粗硫酸水溶液に含まれるチオ硫酸を除去する不純物除去工程S3と、該不純物除去工程S3でチオ硫酸が除去された硫酸水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる結晶工程S4とからなる硫酸ニッケルの製造方法であって、該粗硫酸水溶液に含まれるチオ硫酸の濃度をサイクリックボルタンメトリーにより求め、その結果に基づいて該不純物除去工程S3の処理条件を調整する。【選択図】図1

Description

本発明は、非鉄金属製錬における硫酸ニッケルの製造方法に関し、特に分極測定によるチオ硫酸濃度管理を含んだ硫酸ニッケルの製造方法に関する。
硫酸ニッケルは、ニッケルめっきのめっき液原料や、電池材料用の水酸化ニッケル粉末の原料等の様々な用途に使われている。硫酸ニッケルは、例えばHPAL法(High Pressure Acid Leaching)とも称する高圧酸浸出法によって作製される中間原料のニッケル・コバルト混合硫化物を経て湿式法により作製することができる。
すなわち、先ず上記高圧酸浸出法により、原料としてのニッケル酸化鉱石に硫酸を加えて高温高圧下で酸浸出処理し、得られたニッケル及びコバルトを含む浸出液を中和処理して鉄などの不純物を除去した後、不純物が除去された該浸出液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加する。これにより、硫化反応を生じさせてミックスサルファイド(MS)とも称するニッケル・コバルト混合硫化物を生成させる。
次に、特許文献1に示されているように、このニッケル・コバルト混合硫化物に水を加えて調製したスラリーを高温高圧下で浸出処理することで下記式1及び式2で表される硫黄の酸化反応を生じさせて不純物を含む粗硫酸ニッケル水溶液を生成させる。この粗硫酸ニッケル水溶液から不純物を除去することで高純度硫酸ニッケル水溶液を得た後、晶析により硫酸ニッケル結晶を生成させる。
[式1]
NiS+2O→Ni2++SO 2−
[式2]
CoS+2O→Co2++SO 2−
特開2017−149609号公報
しかしながら、上記の高温高圧下におけるニッケル・コバルト混合硫化物の浸出工程では、上記式1及び式2の硫黄の酸化反応の進行が不十分な場合は、下記式3に示すように硫酸イオン(SO 2−)だけでなくチオ硫酸イオン(S 2−)が生成する場合があった。
[式3]
NiS+O→Ni2++SO 2−+S 2−
上記の浸出工程で生成したチオ硫酸イオンは、一般的な不純物除去工程では除去することが困難であるため、最終製品である硫酸ニッケル結晶に混入する可能性がある。このようなチオ硫酸が混入した硫酸ニッケル結晶を原料にしてニッケルめっきを行うと、めっきの表面品質が低下する問題が生じることがあった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便且つ迅速にチオ硫酸濃度を分析することで、硫酸ニッケル結晶へのチオ硫酸の混入を抑制可能な硫酸ニッケルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る硫酸ニッケルの製造方法は、金属イオンとして少なくともNi、Co及びFeを含む粗硫酸水溶液に含まれるチオ硫酸を除去する除去工程と、該除去工程でチオ硫酸が除去された硫酸水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる結晶工程とからなる硫酸ニッケルの製造方法であって、前記粗硫酸水溶液のチオ硫酸濃度をサイクリックボルタンメトリーにより求め、その結果に基づいて前記除去工程の処理条件を調整することを特徴としている。
本発明によれば、熟練した技能や高価な分光光度測定器を必要とすることなくチオ硫酸濃度を正確且つ迅速に求めることができるので、チオ硫酸をほとんど含まない硫酸ニッケルを製造することが可能になる。
本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法のプロセスフローである。 チオ硫酸濃度のみが異なる複数の硫酸ニッケル水溶液をそれぞれサイクリックボルタンメトリーにより分析することで得た分極曲線のグラフである。
1.硫酸ニッケルの製造方法
以下、本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法について図面を参照しながら説明する。この本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法は、図1に示すように、中間原料のニッケル硫化物スラリーから硫酸ニッケル結晶を作製する方法であり、該ニッケル硫化物スラリーの調製を行うスラリー調製工程S1と、該ニッケル硫化物スラリーに対して加圧下で浸出処理及び酸化処理を行って浸出液を得る浸出工程S2と、該浸出液に含まれる不純物を除去する不純物除去工程S3と、該不純物除去工程S3で得た高純度硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる晶析工程S4とを有している。以下、各工程について具体的に説明する。
(スラリー調製工程S1)
硫酸ニッケルの製造方法の原料には、ニッケル・コバルト混合硫化物に代表されるニッケル硫化物が用いられる。このニッケル硫化物は前述したようにニッケル酸化鉱石を高圧酸浸出して得た浸出液を中和処理及び硫化処理することで作製され、これにより例えばニッケル品位が50〜60質量%程度、コバルト品位が4〜6質量%程度、硫黄品位が30〜34質量%程度のニッケル・コバルト混合硫化物が得られる。
スラリー調製工程S1では、このニッケル硫化物を必要に応じて粉砕及び分級し、水を添加してスラリー化することでニッケル硫化物スラリーを調製する。このニッケル硫化物スラリーの固形分濃度には特に限定はないが、100〜300g/Lが好ましく、200g/L程度がより好ましい。この固形分濃度が300g/Lを超えると、スラリー粘度が高くなりすぎ、ポンプによる送液不良が発生するおそれがある。逆にこの固形分濃度が100g/L未満の場合は、固形分濃度が薄すぎるため、生産性が低下する。
(浸出工程S2)
浸出工程S2では、上記のスラリー調製工程S1で調製したニッケル硫化物スラリーを高温高圧下で硫酸浸出処理することで浸出液を生成する。より詳細に説明すると、先ず、ニッケル硫化物スラリーを硫酸と共にオートクレーブとも称する圧力容器に供給する。このオートクレーブには更に酸化剤として空気などの酸素含有ガスを供給することで酸化反応を伴う浸出処理を行い、浸出液を生成させる。その際、該ニッケル硫化物スラリーの組成や粒度、滞留時間に影響する該ニッケル硫化物スラリーの供給流量、該ニッケル硫化物スラリーに対する硫酸及び酸化剤の供給割合、オートクレーブ内の温度及び圧力などの各種浸出条件を適宜調整する。
例えば、オートクレーブに高圧蒸気を吹き込むことで、オートクレーブ内の温度を150〜180℃に調整し、圧力を1〜2MPaGに調整するのが好ましい。本発明の実施形態の硫酸ニッケルの製造方法においては、このオートクレーブにおいて生成された浸出液に対して、サイクリックボルタンメトリーにより該浸出液のチオ硫酸濃度を測定し、その測定結果に基づいて後工程の不純物除去工程の処理条件を調整する。このサイクリックボルタンメトリーについては後で詳細に説明する。
(不純物除去工程S3)
上記浸出工程S2で生成される硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液は、例えばニッケル濃度100〜120g/L程度、コバルト濃度10g/L程度の組成を有している。この浸出液は上記のニッケルやコバルト等の有価金属のほか、鉄に代表される不純物を含んでいるため、粗硫酸ニッケル水溶液とも称される。この浸出液中の不純物を除去するため、不純物除去工程S3では、酸化中和法により不純物を沈殿除去したり、溶媒抽出法により不純物を除去したりすることが行われる。これにより、ある程度純度の高い硫酸ニッケル水溶液が得られるものの、上記の酸化中和法や溶媒抽出法では、チオ硫酸イオンはほとんど除去されない。
そこで、上記浸出工程S2で生成される浸出液のサイクリックボルタンメトリーによるチオ硫酸の濃度測定の結果、チオ硫酸が検出された場合は、追加の酸化処理を行うことでこのチオ硫酸の酸化分解が行われる。これにより、製品となる硫酸ニッケル結晶へのチオ硫酸の混入を防ぐことができる。上記追加の酸化処理による硫酸ニッケル溶液中のチオ硫酸の具体的な酸化分解法としては、硫酸ニッケル溶液への空気吹き込み(以下、エアレーションとも記載する)、酸素吹き込み、過酸化水素水の添加等を挙げることができる。この酸化処理後に再度分極測定によりチオ硫酸濃度を測定し、その測定結果に基づいて上記の空気や酸素の吹き込み量、過酸化水素水の添加量等を調整してもよい。これにより、酸化剤の添加量に過不足を生じさせることなく極めて効率的に酸化処理を行うことが可能となる。
(晶析工程S4)
晶析工程S4では、上記の不純物除去工程S3で不純物を除去することによって得た高純度硫酸ニッケル水溶液を晶析装置に装入し、該高純度硫酸ニッケル水溶液を濃縮することで硫酸ニッケル結晶を晶析させる。この晶析工程S4で処理される高純度硫酸ニッケル水溶液はチオ硫酸イオンをほとんど含んでいないので、該チオ硫酸イオンが硫酸ニッケル水溶液中に残存することで生じる結晶中のチオ硫酸塩(チオ硫酸ニッケル(NiS)の形態の不純物)に起因する品質上の問題を防ぐことができる。
上記のように、本発明の実施形態の硫酸ニッケルの製造方法は、浸出工程S2で生成される浸出液に含まれるチオ硫酸の濃度を迅速且つ正確に分析可能なサイクリックボルタンメトリーにより求めるので、その結果を、後工程の不純物除去工程S3において、酸化剤の添加によるチオ硫酸の酸化分解に迅速に反映させることができる。よって、該酸化剤の添加量に過不足を生じさせることなくチオ硫酸の濃度管理を行うことができ、高品質の硫酸ニッケル結晶を極めて効率的に作製することが可能になる。次に、このサイクリックボルタンメトリーについて詳細に説明する。
2.分極測定によるチオ硫酸濃度測定
従来、ニッケル硫化物を浸出処理することで得られる硫酸ニッケル水溶液に含まれるチオ硫酸の濃度を定量分析する場合は、高木誠司著の「定性分析化学」(南江堂)の「第3章、チオ硫酸」に記載されているような、ヨウ素−ヨウ化物−デンプン試薬を脱色する反応を用いた滴定法が用いられてきた。しかし、この滴定法で正確な濃度分析を行うには熟練を要するうえ、分析結果が得られるまでに1時間程度かかるため、分析結果を硫酸ニッケルの製造方法にタイミングよく反映させにくかった。その結果、浸出液中のチオ硫酸濃度が高いことが判明しても、既に硫酸ニッケル結晶中にチオ硫酸塩が混入してしまう問題が生ずることがあった。
また、浸出工程で生成されるチオ硫酸の量をある程度想定して、例えばこの想定した量のチオ硫酸を除去するために必要な量の酸化剤を浸出工程の後工程において添加して酸化処理を行うことが考えられるが、この場合は実際に生成したチオ硫酸の量が想定した量よりも多いと酸化剤の量が不足することになるので硫酸ニッケル結晶製品にチオ硫酸が混入してしまい、逆に実際に生成したチオ硫酸の量が想定した量より少ないと酸化剤が過剰に添加されることになるので不経済となる。従って、実際に生成したチオ硫酸に対して過不足のない酸化処理を行うためには、チオ硫酸濃度の迅速且つ正確な定量分析が必要となる。
かかる実情に鑑み、本発明者らは、ニッケル硫化物の硫酸浸出処理により生成される浸出液中のチオ硫酸濃度の迅速且つ正確な測定方法について鋭意検討を行ったところ、電気化学的測定法であるサイクリックボルタンメトリー(以下、SVとも称する)によって、該浸出液中に含まれる微量のチオ硫酸の濃度を迅速且つ正確に測定可能であることを見出した。なお、サイクリックボルタンメトリーとは、測定対象の溶液に電極を浸漬させ、該電極の電位を掃引しながら電流を計測することで定性分析及び定量分析を行うことが可能な電気化学的分析法であり、一定の掃引速度で電位を増減させることで電位を掃引するものである。
すなわち、本発明の硫酸ニッケルの製造方法の実施形態においては、チオ硫酸濃度のみが異なる複数の硫酸ニッケル水溶液の各々に対してサイクリックボルタンメトリーにより分極曲線を作成し、得られた複数の分極曲線からチオ硫酸濃度と所定の電流値における電圧値との関係を予め求めておく。その際、横軸をチオ硫酸濃度、縦軸を電圧値とするグラフ上に上記の関係をプロットして検量線を作成してもよい。そして、測定対象の浸出液に対して同様の条件でサイクリックボルタンメトリーを行うことで測定用分極曲線を作成し、該測定用分極曲線の上記所定の電流値における電圧値を読み取って、この電圧値を上記のチオ硫酸濃度と電圧値との関係に照合することで該浸出液中のチオ硫酸濃度を求めるものである。
以下、図2を参照しながらより具体的に説明する。なお、本明細書では濃度の単位をmg/Lに代えてppmと表記することがある。先ず、一般的なニッケル・コバルト混合硫化物の硫酸浸出処理により得られる浸出液とほぼ同一のNi、Co、Fe及び硫酸の濃度を有する模擬液としての硫酸ニッケル水溶液を調製し、これを5つに小分けする。そして、これら小分けした5つの模擬液に、チオ硫酸濃度が0.1mg/Lから10mg/Lの範囲内でそれぞれ異なるようチオ硫酸を添加する。このようにして調製した5種類の模擬液の各々を、好適には純水により2倍希釈する。なお、このように2倍希釈しないと、サイクリックボルタンメトリーの際に副反応が起こりやすくなり、正確な測定ができなくなるおそれがある。逆に、3倍以上に希釈すると、濃度が薄くなりすぎて、分析精度が低下するので好ましくない。
上記の2倍希釈した5種類の模擬液の各々を、サイクリックボルタンメトリー用セルに10mL入れて液温度25℃に調整し、この液に作用電極、対極、及び参照電極の先端部を浸漬させる。この状態でこれら3つの電極をALS社製ALS2325バイポテンショスタットに接続し、下記表1に示す条件でサイクリックボルタンメトリーを行う。
Figure 2020105036
これにより、図2に示すような、チオ硫酸濃度のみが異なる5種類の硫酸ニッケル水溶液にそれぞれ対応する5つの分極曲線が得られる。これら5つの分極曲線を1つのグラフ上に重ね合わせることで分かるように、チオ硫酸濃度が異なると、電流値−1.0mAの分極曲線のうち電位を負側に掃引する際に生じる還元波(−1.1V付近)は、電位−1.10Vから−1.16V程度の範囲に亘って最も大きくばらついている。そこで、この電流値−1.0mAにおける電位とチオ硫酸濃度との関係を、例えば検量線を作成することで予め求めておく。
次に、測定対象の硫酸ニッケル水溶液として、例えば前述したHPAL法で作製したニッケル・コバルト混合硫化物のスラリーを加圧下のオートクレーブ内で硫酸浸出処理することで生成した浸出液を採取し、この採取した浸出液を純水により2倍に希釈した後、上記と同様の条件でサイクリックボルタンメトリーを行って測定用分極曲線を作成する。そして、この測定用分極曲線の電流値−1.0mAにおける電位を読み取り、この読み取った電圧値を上記の予め求めた関係と照らし合わせる。これにより、測定対象となる浸出液に含まれるチオ硫酸の濃度を求めることができる。
上記の分極測定においては、浸出液の採取から濃度を求めるまでにかかる時間は10分足らずであるので、前述した浸出工程S1の後工程の不純物除去工程S2において、主にチオ硫酸以外の不純物の除去処理に要する時間に比べて短時間で済ませることができる。よって、このチオ硫酸以外の不純物の除去処理の後段において行われる追加の酸化処理において、上記のサイクリックボルタンメトリーの結果を反映させることができ、該追加の酸化処理において添加する酸化剤に過不足を生じさせることなく効率よくチオ硫酸を酸化分解することができる。
[実施例1]
図1に示すようなプロセスフローに沿ってニッケル・コバルト混合硫化物スラリーから硫酸ニッケル結晶を作製した後、この硫酸ニッケル結晶を用いて無電解めっきによりニッケルめっき膜を作製して目視により評価した。具体的には、先ずスラリー調整工程S1において、公知のHPAL法により製造したNiを55質量%、Coを5.3質量%含むニッケル・コバルト混合硫化物に対して湿式粉砕及び目開き0.2mmの篩で篩別し、0.2mmオーバーの粗大粒子を除去した後、0.2mmアンダーの粒子に水を添加して原料スラリーを調製した。
次に、浸出工程S2において、上記原料スラリーをオートクレーブに装入し、温度165℃、圧力1.8MPaGに調整された条件下で、硫酸及び空気を供給して硫酸浸出処理を行った。このオートクレーブから抜き出した浸出液を採取して純水で2倍に希釈し、上記表1に示す条件でサイクリックボルタンメトリーによる分極測定を行って測定用分極曲線を作成した。その結果、電流値−1.0mAにおける電位は−1.115Vであった。この電位値を、前述した図2から求めた電流値−1.0mAにおける電位とチオ硫酸濃度との関係に照合することにより、浸出液のチオ硫酸濃度が5mg/Lであることが分かった。この浸出液の採取からそのチオ硫酸濃度が求まるまでに要した時間は8分であった。
上記にて判明した浸出液内のチオ硫酸を分解するため、不純物除去工程S3において、直ちに浸出液1000cc当たり標準状態で10cc/minの流量の空気を60分間吹き込むエアレーションを行った。このエアレーション後に再度、上記と同じ条件でサイクリックボルタンメトリーを行ってその分極曲線から上記と同様にチオ硫酸濃度を求めたところ、分析限界以下であった。このようにして不純物除去工程S3で不純物を除去することで得た高純度硫酸ニッケル水溶液に対して、晶析工程S4において濃縮することで硫酸ニッケル結晶を生成させた。
上記にて作製した硫酸ニッケル結晶を溶解し、得られた硫酸ニッケル水溶液にジ亜リン酸ナトリウムを添加して、硫酸ニッケル25g/L、ジ亜リン酸ナトリウム20g/Lとなるよう組成を調整しためっき液を作製した。このめっき液を容量1Lのビーカーに入れ、温度90±3℃、めっき時間10分の条件で5cm×5cmのステンレス製薄板上にニッケルめっき皮膜を形成させた。このめっき皮膜が形成された薄板をビーカーから取り出して水洗し、目視によりめっき皮膜の外観を評価したところ、平滑なめっき皮膜が形成されていた。
(実施例2)
実施例1とは異なる日時に採取した浸出液を用いた以外は実施例1と同様に硫酸浸出処理し、該硫酸浸出処理で得た浸出液を採取してサイクリックボルタンメトリーにより測定用分極曲線を作成した。その結果、電流値−1.0mAにおける電位は−1.12Vであった。この電位値を図2から求めた電流値−1.0mAにおける電位とチオ硫酸濃度との関係に照合することにより、浸出液のチオ硫酸濃度が1mg/Lであることがわかった。この浸出液の採取からそのチオ硫酸濃度が求まるまでに要した時間は8分であった。
以降は、エアレーションの際の空気の流量を10cc/minに代えて2cc/minにした以外は実施例1と同様にして不純物除去工程S3、晶析工程S4、及びニッケルめっき皮膜の形成を行ったところ、エアレーション後に再度行った上記と同様の分極測定によるチオ硫酸濃度は分析限界以下であった。また、実施例1と同様の平滑なめっき皮膜が形成されていた。
(比較例1)
実施例1及び実施例2とは異なる日時に採取した浸出液を用い、実施例1と同様に硫酸浸出処理した後、該硫酸浸出処理で得た浸出液に対してサイクリックボルタンメトリーに代えてヨウ素滴定法によりチオ硫酸濃度測定した。その結果、チオ硫酸濃度が3mg/Lであることが分かった。このヨウ素滴定法は、ヨウ素添加後の未反応ヨウ素を逆滴定するため、測定に要した時間は60分であった。以降は、エアレーションの際の空気の流量を10cc/minに代えて6cc/minにした以外は実施例1と同様に不純物除去工程S3、晶析工程S4、及びニッケルめっき皮膜の形成を行ったところ、エアレーション後に再度行った滴定法によるチオ硫酸濃度は分析限界以下であった。
しかしながら、無電解ニッケルめっき膜を目視にて評価したところ、微細な凹凸が発生しており、表面性状が実施例1や2に比べて悪化していた。これは、チオ硫酸の測定に要した時間が長かったため、浸出液に含まれるチオ硫酸が不純物除去工程S3において十分に酸化分解されず、このチオ硫酸を含んだ浸出液が次工程の晶析工程S4に流出したためと考えられる。
S1 スラリー調製工程
S2 浸出工程
S3 不純物除去工程
S4 晶析工程

Claims (3)

  1. 金属イオンとして少なくともNi、Co及びFeを含む粗硫酸水溶液に含まれるチオ硫酸を除去する除去工程と、該除去工程でチオ硫酸が除去された硫酸水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる結晶工程とからなる硫酸ニッケルの製造方法であって、前記粗硫酸水溶液のチオ硫酸濃度をサイクリックボルタンメトリーにより求め、その結果に基づいて前記除去工程の処理条件を調整することを特徴とする硫酸ニッケルの製造方法。
  2. 前記チオ硫酸濃度を求める方法が、チオ硫酸濃度のみが異なる複数の硫酸ニッケル水溶液の各々に対してサイクリックボルタンメトリーにより分極曲線を作成し、得られた複数の分極曲線からチオ硫酸濃度と所定の電流値における電圧値との関係を予め求めておき、測定対象の前記浸出液に対してサイクリックボルタンメトリーを行うことで測定用分極曲線を作成し、該測定用分極曲線の前記所定の電流値における電圧値を前記予め求めた関係と照合することで、該浸出液中のチオ硫酸濃度を求めることを特徴とする、請求項1に記載の硫酸ニッケルの製造方法。
  3. 前記所定の電流値が−1.0mAであることを特徴とする、請求項2に記載の硫酸ニッケルの製造方法。
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