JP2020103636A - 歯ブラシ - Google Patents

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JP2020103636A JP2018246146A JP2018246146A JP2020103636A JP 2020103636 A JP2020103636 A JP 2020103636A JP 2018246146 A JP2018246146 A JP 2018246146A JP 2018246146 A JP2018246146 A JP 2018246146A JP 2020103636 A JP2020103636 A JP 2020103636A
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Yoshihiro Hachisuga
良祐 蜂須賀
雅史 柳田
Masafumi Yanagida
雅史 柳田
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【課題】高い汎用性をもって適正なブラッシング圧を認識することが可能な歯ブラシを提供する。【解決手段】感知部70は、基端が第2領域に位置し、第1領域に向けて長軸方向に延びる第1係合部80Aと、基端が第1領域に位置し、第2領域に向けて長軸方向に延びる第2係合部80Bとを有し、第1係合部と第2係合部とは、第1方向の外力がしきい値以下のときに第1方向に離間し、しきい値を超えた外力により係合し、且つ、第1方向の相対位置関係が逆転し、感知部は、第1係合部と第2係合部とが係合し、且つ、第1方向の相対位置関係が逆転する外力までは弾性変形する弾性変形部90を備え、第1方向の外力により弾性変形部が変形する経路と、第1方向の外力により第1係合部が変形する経路とは非干渉に設けられているとともに、第1方向の外力により弾性変形部が変形する経路と、第1方向の外力により第2係合部が変形する経路とは非干渉に設けられている。【選択図】図4

Description

本発明は、歯ブラシに関するものである。
80歳で20本の歯を有する人の割合は約5割となった一方で、高齢者う蝕(根面う蝕)の割合が増加している。根面う蝕は、歯肉退縮により露出した象牙質のう蝕であるが、象牙質はエナメル質よりも有機成分の構成比率が高いため、う蝕の進行が早い。上記歯肉退縮の原因の一つとして、適正値よりも大きなブラッシング圧でブラッシングを行うオーバーブラッシングが挙げられる。
ブラッシング圧は、荷重/植毛面積で定義されるため、ブラッシング圧を小さくするには、荷重の低減と植毛面積の増大との少なくとも一方により実現できる。荷重の低減については、ネック部を植毛面上方に予め傾け、ブラッシング時にネック部が撓み、ブラッシング時にネック部がストレートになる状態の力で磨くように設計された仕様の歯ブラシ、径が細い用毛を用いた柔らかめ仕様の歯ブラシ、把持部の重心をハンドル後端部寄りに配置することで植毛部に力が掛かりにくい仕様の歯ブラシ等が市販されている。また、植毛面積の増大については、ヘッド幅が広い仕様の歯ブラシ等が市販されている。ところが、これらの仕様において、ブラッシング圧を低減することは可能であるものの、適正なブラッシング圧を全ての使用者に同じレベルで認識させ、ブラッシング圧を制御することは困難である。
また、適正なブラッシング方法については、歯科医院で指導を受けているものの、力の加減が明確に分からない等の理由で自身での対処が難しいことから、オーバーブラッシングを自覚しつつも改善に至っていない使用者が少なくないことが判明している。
そこで、適正なブラッシング圧を使用者に認識させる手段としては、例えば、特許文献1に開示された歯ブラシが挙げられる。特許文献1に開示された歯ブラシは、ヘッド部と把持部との間に配置され、通常使用時に圧縮応力が加わる後側ビームと、引張応力が加わる顔側ビームとの2ビーム構造を有している。
この歯ブラシでは、使用者が把持部を把持した状態で、決定された力を超えた圧縮力が加わった後側ビームは、弾性的に座屈して上方に凸状になった円弧から下方に凸状になった円弧に反転する。このように、特許文献1に開示された歯ブラシは、後側ビームが反転することにより、適正なブラッシング圧を超えたことを使用者に認識させることができる。
特表平6−504937号公報
しかしながら、上述した特許文献1に開示された歯ブラシは、過剰なブラッシング荷重が加わった際に後側ビームが顔側ビームに接近する方向に変形するため、後側ビームの変形量に限界があり汎用性が十分とは言えない。
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、高い汎用性をもって適正なブラッシング圧を認識することが可能な歯ブラシを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、長軸方向先端側に設けられ植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記植毛面と前記把持部との間に配置されたネック部とを有し、前記植毛面よりも後端側に、前記植毛面と直交する第1方向の外力がしきい値を超えたことを感知させる感知部が設けられ、前記感知部は、基端が当該感知部よりも前記後端側の第2領域に位置し、当該感知部よりも前記先端側の第1領域に向けて前記長軸方向に延びる第1係合部と、基端が前記第1領域に位置し、前記第2領域に向けて前記長軸方向に延びる第2係合部とを有し、前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記第1方向の外力がしきい値以下のときに前記第1方向に離間し、前記しきい値を超えた前記外力による、前記第1方向で前記植毛面とは逆側である背面側への前記ヘッド部の変形に伴って係合し、且つ、前記第1方向の相対位置関係が逆転し、前記感知部は、前記第1領域と前記第2領域とをつなぎ、少なくとも前記第1係合部と前記第2係合部とが係合し、且つ、前記第1方向の相対位置関係が逆転する前記外力までは弾性変形する弾性変形部を備え、前記第1方向の外力により前記弾性変形部が変形する経路と、前記第1方向の外力により前記第1係合部が変形する経路とは非干渉に設けられているとともに、前記第1方向の外力により前記弾性変形部が変形する経路と、前記第1方向の外力により前記第2係合部が変形する経路とは非干渉に設けられていることを特徴とする歯ブラシが提供される。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1方向の外力がしきい値以下のときに、前記第1係合部は、前記第1方向で前記第2係合部よりも前記背面側に配置されていることを特徴とする。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1方向の外力がゼロのときに、前記第1係合部と前記第2係合部とは、それぞれの先端同士の前記長軸方向の距離が2mm以下であることを特徴とする。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1方向の外力がゼロのときに、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記第1方向で対向する面同士の最短距離は、5mm以下であることを特徴とする。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ前記第1方向の厚さが1mm以上、5mm以下であることを特徴とする。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ硬質樹脂で形成され、
前記弾性変形部は、少なくとも前記第1方向及び前記長軸方向とそれぞれ直交する第2方向の周囲が前記硬質樹脂よりも硬度が低い樹脂で形成されていることを特徴とする。
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1方向及び前記長軸方向とそれぞれ直交する第2方向に前記弾性変形部とそれぞれ隙間をあけて配置されていることを特徴とする。
本発明では、高い汎用性をもって適正なブラッシング圧を認識することが可能な歯ブラシを提提供できる。
本発明の実施の形態を示す図であって、歯ブラシ1の正面図である。 同歯ブラシ1を幅方向の中心を含む平面で切断した断面図である。 厚さ方向及び幅方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。 厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。 硬質部70Hにおける感知部70周辺の部分的な正面図である。 硬質部70Hにおける感知部70周辺の部分的な側面図である。 係合部80A、80Bが係合した第2状態を説明するための、厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。 係合部80A、80Bの係合が外れた第3状態を説明するための、厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。 係合部80A、80Bの変形例を示す、厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、図1ないし図9を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。また、以下の説明においては、側面視における植毛面と直交する方を上下方向とし、植毛面側を上側、植毛面と逆側の背面側を下側として適宜説明する。なお、上下方向、上側および下側とは、単に説明のために用いられる名称であって、本発明における実際の位置関係や方向を限定しない。
図1は、歯ブラシ1の正面図である。図2は、歯ブラシ1を幅方向(図1における上下方向)の中心を含む平面で切断した断面図である。
本実施形態の歯ブラシ1は、長軸方向の先端側(以下、単に先端側と称する)に配置され用毛の毛束(図示せず)が植毛されたヘッド部10と、ヘッド部10の長軸方向後端側(以下、単に後端側と称する)に延設されたネック部20と、ネック部20の後端側に延設された感知部70と、感知部70の後端側に延設された把持部30(以下、ヘッド部10、ネック部20、把持部30及び感知部70とを合わせてハンドル体2と称する)とを備える。
本実施形態の歯ブラシ1は、硬質樹脂で形成された硬質部Hと、軟質樹脂で形成された軟質部Eとが一体的に成形された成形体である。硬質部Hは、ヘッド部10、ネック部20、把持部30及び感知部70のそれぞれについて少なくとも一部を構成する。軟質部Eは、把持部30及び感知部70のそれぞれについて一部を構成する(詳細は後述)。
[ヘッド部10]
ヘッド部10は、厚さ方向(図1における紙面と直交する方向)の一方側に植毛面11を有している。なお、以後、上記厚さ方向で植毛面11側を、正面方向の正面側とし、植毛面と反対側を背面側とし、上記厚さ方向及び長軸方向と直交する方向を幅方向(または適宜、側面方向)とする。植毛面11には、植毛穴12が複数形成されている。植毛穴12には、用毛の毛束(図示せず)が植設されている。
ヘッド部10の幅、すなわち正面側において植毛面11と平行で、長軸方向と直交する幅方向の長さ(以下、単に幅と称する)は、特に限定されず、例えば、7mm以上、13mm以下が好ましい。上記下限値以上であれば、毛束を植設する面積を十分に確保でき、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。
ヘッド部10の長軸方向の長さ(以下、単に長さと称する)は、特に限定されず、例えば、10mm以上、33mm以下が好ましい。ヘッド部10の長さが上記下限値以上であれば、毛束を植設する面積を十分に確保でき、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。なお、本実施形態におけるネック部20とヘッド部10との長軸方向の境界は、ネック部20からヘッド部10方向に向けて、ネック部20の幅が最小値となった位置とする。
ヘッド部10の厚さ方向の長さ(以下、単に厚さと称する)は、材質等を勘案して決定でき、2.0mm以上、4.0mm以下が好ましい。ヘッド部10の厚さが上記下限値以上であれば、ヘッド部10の強度をより高められる。ヘッド部10の厚さが上記上限値以下であれば、奥歯の奥への到達性を高められるとともに、口腔内での操作性をより高められる。
毛束は、複数の用毛を束ねたものである。植毛面11から毛束の先端までの長さ(毛丈)は、毛束に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、6〜13mmとされる。全ての毛束は同じ毛丈であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
毛束の太さ(毛束径)は、毛束に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、1〜3mmとされる。全ての毛束は同じ毛束径であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
毛束を構成する用毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面11から毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先が植毛面11に略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン(6−12NY)、6−10ナイロン(6−10NY)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛が挙げられる。
用毛の横断面形状は、特に限定されず、真円形、楕円形等の円形、多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等としてもよい。全ての用毛の断面形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
用毛の太さは、材質等を勘案して決定でき、横断面が円形の場合、例えば、6〜9mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。また、使用感、刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
[ネック部20]
ネック部20の長さは、操作性の点で40mm以上、70mm以下であることが好ましい。
ネック部20の幅は、一例として、最小値となる位置から後端側に漸次大きくなるように形成されている。本実施形態におけるネック部20は、幅が最小値となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されている。また、ネック部20は、厚さが、最小となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されている。
ネック部20は、最小となる位置における幅と厚さはいずれも3.0mm以上、4.5mm以下が好ましい。最小となる位置におけるネック部20の幅と厚みが上記下限値以上であれば、ネック部20の強度をより高められ、上記上限値以下であれば、唇が閉じやすく、また奥歯への到達性を高められるとともに、口腔内での操作性をより高められる。最小値となる位置から後端側に向かうのに従って漸次大きくなるように形成されているネック部20の幅及び厚さは、材質等を勘案して適宜決定できる。
ネック部20の側面方向視における正面側は、後端側に向かうに従って正面側に向かう方向に傾斜している。ネック部20の側面方向視における背面側は、後端側に向かうに従って背面側に向かう方向に傾斜している。ネック部20は、正面視において、幅方向中心からの距離が後端側に向かうに従って大きくなる方向に傾斜している。
本実施形態におけるネック部20と感知部70との境界は、後述する弾性変形部90が設けられるネック側20の先端の位置とする。ここでは、ネック部20から把持部30に向けて幅が正面視及び側面視の双方で円弧状の輪郭で拡大し、当該円弧の曲率中心の位置が変化した長軸方向の位置と一致している。より詳細には、ネック部20と感知部70との境界は、図1に示す正面視においては、曲率中心が円弧状の輪郭の外側から幅方向中心側に変化した長軸方向の位置と一致している。また、ネック部20と感知部70との境界は、図2に示す側面視においては、曲率中心が円弧状の輪郭の外側から厚さ方向中心側に変化した長軸方向の位置と一致している。
[把持部30]
把持部30は、長軸方向に沿って配置されている。図1に示すように、把持部30の幅方向の長さは、感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に、略一定の長さで延びている。図2に示すように、把持部30の厚さ方向の長さは、感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に、略一定の長さで延びている。
本実施形態における感知部70と把持部30との境界は、後述する弾性変形部90が設けられる把持部側30の先端の位置とする。ここでは、感知部70から把持部側30に向けて幅が正面視及び側面視の双方で円弧状の輪郭で縮小し、当該円弧の曲率中心の位置が変化した長軸方向の位置と一致している。より詳細には、と感知部70と把持部30との境界は、図1に示す正面視においては、曲率中心が幅方向中心側から円弧状の輪郭の外側に変化した長軸方向の位置と一致している。また、感知部70と把持部30の境界は、図2に示す側面視においては、曲率中心が厚さ方向中心側から円弧状の輪郭の外側に変化した長軸方向の位置と一致している。
把持部30の幅方向の長さが感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さとなる長軸方向の位置と、把持部30の厚さ方向の長さが感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さとなる長軸方向の位置は同一である。
把持部30は、正面側における幅方向の中央に軟質部31Eを有している。軟質部31Eは、軟質部Eの一部を構成する。軟質部31Eは、正面視で感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。正面視において、軟質部31Eの側縁と把持部30の幅方向外側の側縁とは略一定の距離で形成されている。
把持部30は、硬質部30Hを有している。硬質部30Hは、硬質部Hの一部を構成する。硬質部30Hは、正面側に軟質部31Eの一部が埋設される窪み31Hを有している。窪み31Hは、正面視で感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。
軟質部31Eの一部は、正面側に露出する硬質部30Hよりも突出している。他の軟質部31Eは、正面側に露出する硬質部30Hと略面一である。
把持部30は、背面側における幅方向の中央に軟質部32Eを有している(図1、図2参照)。軟質部32Eは、軟質部Eの一部を構成する。軟質部32Eは、正面視で軟質部31Eの外形輪郭と略同一の外形輪郭を有している。すなわち、軟質部32Eは、感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。背面視において、軟質部32Eの側縁と把持部30の幅方向外側の側縁とは略一定の距離で形成されている。
硬質部30Hは、背面側に軟質部32Eの一部が埋設される窪み32H(図2参照)を有している。窪み32Hは、背面視で感知部70との境界から後端側に向かうのに従って漸次狭くなった後に略一定の長さで延びている。
軟質部32Eの一部は、背面側に露出する硬質部30Hよりも突出している。他の軟質部32Eは、正面側に露出する硬質部30Hと略面一である。
把持部30の正面側に軟質部31Eが設けられ、背面側に軟質部32Eが設けられているため、把持部30を把持した際のグリップ性が向上する。
[感知部70]
感知部70は、植毛面11と直交する第1方向の外力がしきい値を超えたことを感知させる。感知部70は、図1に示すように、感知部70より先端側のネック部20と、感知部70よりも後端側の把持部30とをつなぐ係合部80A、80B及び弾性変形部90とを有している。
図3は、係合部80Bを通り、厚さ方向及び幅方向と平行な平面で感知部70を切断したときに先端側から視た断面図である。図4は、厚さ方向及び長軸方向と平行な平面で感知部70を切断した断面図である。
図3に示すように、弾性変形部90は、係合部80A、80Bの幅方向両側に隙間Sをあけてそれぞれ設けられている。隙間Sは、厚さ方向に貫通する貫通孔Kで形成されている。貫通孔Kは、図1に示すように、長軸方向に延びる平面視矩形状に形成されている。
隙間Sを設けることで、周囲の構造と干渉せずに係合部80A、80Bが厚さ方向に変形が容易になる。また、係合部80A、80Bが厚さ方向に変形する際に、弾性変形部90と干渉せず、係合部80A、80Bの変形が弾性変形部90の変形に追従しないため、係合部80A、80Bと弾性変形部90の機能的役割(後述)を独立させることができる。更に、隙間Sを厚さ方向に設けることで、ブラッシング時に刷毛部(用毛)に負荷する荷重のベクトルと隙間の開口する方向、さらに係合部80A、80Bと弾性変形部90とが変形する方向が並行となり(図7参照)、係合部80A、80Bの係合および係合後の相対位置関係の逆転(以下、位置逆転と称する、詳細は後述)による振動・音の発生をブラッシング荷重と連動させることが容易となる。また、隙間Sを貫通孔Kによって正面側と背面側とを貫通させることで、撓みに伴う、表面での引張り挙動、裏面での圧縮挙動が阻害されにくくなり、ブラッシング時の荷重に対する、ハブラシ骨格の撓み機能を担う弾性変形部90の可動領域を更に拡大することができる。
弾性変形部90と係合部80A、80Bとの間に貫通孔Kが存在しない場合には、弾性変形部90の可動領域が狭くなる。この場合、係合部80A、80Bの係合および位置逆転が生じる契機を適切な荷重範囲で与えられず、適切な荷重範囲に達する前に係合部80A、80Bが係合および位置逆転すること、あるいは適切な荷重範囲であっても係合および位置逆転が生じないという事態が想定される。これに対して、弾性変形部90と係合部80A、80Bとの間に貫通孔Kを設けることにより、後述する係合部80A、80Bが係合および位置逆転するための「しきい値」を、より細かい範囲で制御することができる。
図3に示すように、各弾性変形部90は、硬質部90Hと軟質部90Eとを有している。図4に示すように、硬質部90Hと軟質部90Eは、ネック部20の後端と把持部30の前端とをつないでいる。図3及び図4に示すように、一対の弾性変形部90の間には、正面側に開口する窪み71と、背面側に開口する窪み72とが設けられている。窪み71及び窪み72における幅方向両端側の底部は、それぞれ貫通孔Kとつながっている。窪み71及び窪み72における幅方向中央の底部には係合部80A、80Bがそれぞれ露出して設けられている。窪み71、72を設けることで、ブラッシング時の荷重に対する、ハブラシ骨格の撓み機能を担う弾性変形部90の可動領域を更に拡大することができる。
一対の弾性変形部90は、正面側及び背面側の両方において、軟質部90Eの長軸方向の端部同士が幅方向でつながっている。一対の弾性変形部90の軟質部90Eは、正面視で長円状の窪み71、72の周囲に設けられている。軟質部90Eの後端側は、把持部30の軟質部31Eと接続している。
弾性変形部90の先端側及び後端側の双方で軟質部90Eが幅方向に繋がることにより、係合部80A、80Bが係合および位置逆転を繰り返してもヒンジ構造の末端に応力が集中しにくく、折れにくくなる。また、軟質部90Eが幅方向に繋がることにより、射出成形時に軟質樹脂(エラストマー)が有する熱量が増えるため、ネック部20と感知部70の接着性(ネック部20と弾性変形部90)が高まる。さらに、弾性変形部90の先端側及び後端側の双方で軟質部90Eが幅方向に繋がることにより感知部70における異方性が高まり、一対の弾性変形部90はブラッシング時の動きに対して、厚さ方向に対して捻れずに撓むことが可能となる。
図5は、感知部70における硬質部70H周辺の部分的な正面図である。図6は、感知部70における硬質部70H周辺の部分的な側面図である。
図5に示すように、硬質部70Hは、長軸方向でネック部20である硬質部20Hと、把持部30の硬質部30Hとをつなぐ平面視矩形状に形成されている。
硬質部70Hは、一対の硬質部90Hの先端側の端部及び係合部80Bの先端側の端部を支持して幅方向に繋ぐ支持部77Hと、一対の硬質部90Hの後端側の端部及び係合部80Aの後端側の端部を支持して幅方向に繋ぐ支持部78Hとを有している。
図6に示すように、硬質部70H(支持部77H)における正面側の先端側は、側面視で円弧状の曲面73Hで硬質部20Hと接続されている。硬質部70H(支持部78H)における正面側の後端側は、側面視で円弧状の曲面74Hで硬質部30Hと接続されている。曲面73H、74Hの円弧中心は、側面視で硬質部70Hよりも正面側に位置する。硬質部70Hにおける背面側の先端側は、側面視で円弧状の曲面75Hで硬質部20Hと接続されている。硬質部70Hにおける背面側の後端側は、側面視で円弧状の曲面76Hで硬質部30Hと接続されている。曲面75H、76Hの円弧中心は、側面視で硬質部70Hよりも背面側に位置する。
曲面73H〜76Hが存在しない場合には、硬質部70Hの先端側と硬質部20Hとの境界、および硬質部70Hの後端側と硬質部30Hとの境界に応力が集中する可能性がある。これに対して、曲面73H〜76Hが存在することで集中する応力が緩和される。更に、曲面73H〜76Hが存在することで、弾性変形部90、および係合部80A、80Bの先端側及び後端側の双方が柔軟性をもって変形することができる(係合および位置逆転する契機となる弾性変形部90の変形度合いを、より細かく感知することができる)。
硬質部70Hは、係合部80A、80Bの幅方向両側に設けられた貫通孔73を有している。貫通孔73は、長軸方向にそれぞれ延びている。貫通孔73の長軸方向の長さは、貫通孔73の先端側端部が硬質部20Hと離間し、貫通孔73の後端側端部が硬質部30Hと離間する長さである。図3に示すように、貫通孔73のうち、幅方向で硬質部90H寄りには軟質部90Eが設けられ、幅方向で係合部80A、80B寄りには貫通孔Kが形成される。
硬質部70Hにおいて、係合部80A、80Bを中心として幅方向の両側に貫通孔73を介して硬質部90Hが配置されているため、荷重が負荷されて弾性変形部90が変形しても、係合部80A、80Bの形状を維持できる。歯ブラシ1を全長に亘って構成する硬質部Hが撓んだ際に、その蓄積した歪みエネルギーを開放しようとして感知部70の係合部80A、80Bが係合および位置逆転する。例えば、硬質部70Hが係合部80A、80Bのみでネック部20と把持部30とが繋がっている場合、そのエネルギーを蓄積できないので、すぐに係合および位置逆転してしまうことになる。
硬質部90Hは、硬質部70Hのうち、貫通孔73よりも幅方向外側に形成されている。図3に示すように、硬質部90Hは、略矩形の断面形状である。硬質部90Hは、軟質部90Eに埋設されている。硬質部90Hが軟質部90Eに埋設されているため、強度面からは硬質部90Hに負荷される応力を緩和することができる。また、荷重に対する歯ブラシ1の撓み度合いの点からは、弾性変形部90の弾性挙動のコントロールが可能になる。
硬質部Hの素材としては、一例として、曲げ弾性率(JIS7171)が1500MPa以上、3500MPa以下である樹脂が挙げられ、例えば、ポリアセタール樹脂(POM)が挙げられる。硬質部Hの曲げ弾性率としては、2000MPa以上、3500MPa以下がより好ましい。高弾性率の素材(例えば、POM)を用いることにより、形状を細く、あるいは薄くしても、後述するように、過剰な荷重が負荷した際に係合部80Aと係合部80Bとが係合する第2状態となった後に、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れ、係合部80Aと係合部80Bとの厚さ方向に関する相対位置関係が逆転する第3状態に移行して振動および音を発現する。また、高弾性率の素材を用いることで第1状態から第2状態を介して第3状態に移行した後に迅速に初期状態(弾性変形部90の撓みが解放される状態)に戻ることができる。
軟質部Eの素材としては、飛び移り座屈が生じる際の荷重が、推奨されるブラッシング荷重の値に近くなる点で、一例として、ショア硬度Aが90以下のものが好ましく、ショア硬度Aが50〜80のものがより好ましい。軟質樹脂としては、例えば、エラストマー(例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等)、シリコーンが挙げられる。ポリアセタール樹脂との混和性に優れることからスチレン系エラストマーが好ましい。
係合部80A、80Bは、図5に示すように、正面視において長軸方向と平行に延び、それぞれ幅方向の中央に配置されている。係合部80A、80Bは、硬質樹脂で形成されている。係合部80A、80Bは、図3に示すように、長軸方向と直交する断面形状がそれぞれ矩形である。係合部80A、80Bの上記断面形状は、幅方向が長辺であり、厚さ方向が短辺の矩形である。
係合部80Aは、基端が貫通孔73よりも後端側の第2領域A2(支持部78H)における幅方向中央に位置している。係合部80Aの先端は、窪み72内に先端側に向けて突出している。係合部80Aの厚さ方向中央の位置は、一例として、弾性変形部90の厚さ方向中央よりも背面側に配置されている。
係合部80Bは、基端が貫通孔73よりも先端側の第1領域A1(支持部77H)における幅方向中央に位置している。係合部80Bの先端は、窪み71内に後端側に向けて突出している。係合部80Bの厚さ方向中央の位置は、一例として、弾性変形部90の厚さ方向中央よりも正面側に配置されている。
係合部80Aと係合部80Bとは、ヘッド部10に背面側への外力が加わっていない(または、後述する所定のしきい値以下の外力が加わった)図1および図4に示す第1状態において、厚さ方向に隙間をあけて離間して配置されている。
把持部30を把持した状態でヘッド部10に背面側への外力が加わった際に、少なくとも外力の大きさが所定のしきい値を超えるまで、弾性変形部90は、外力の大きさに応じてしなって弾性変形する。一方、係合部80Bは、外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合、図7に示すように、ネック部20の背面側への変形に伴って、側面視における弾性変形部90の後端側端部近傍に位置し幅方向に延びる軸線周りに背面側に移動し、係合部80Bの背面側の面が係合部80Aの正面側の面に接触して係合する第2状態となる。係合部80Bの背面側の面が係合部80Aの正面側の面に接触して係合することにより、係合部80Aの先端は背面側に変形する。
さらに、上記外力により係合部80Bが背面側に変形すると、図8に示すように、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れ、係合部80Aと係合部80Bとの厚さ方向に関する相対位置関係が逆転する第3状態となる。すなわち、しきい値を超える外力がヘッド部10に加わる前には、厚さ方向で係合部80Aが背面側に位置し、係合部80Bが正面側に配置されていたが、しきい値を超える外力がヘッド部10に加わることにより、係合部80Bは背面側に変形して係合部80Aに係合した後に、係合部80Aよりも厚さ方向の背面側に配置される。
このとき、歯ブラシ1の把持部30を把持した使用者は、ブラッシング圧を外力としてヘッド部10に付与するが、外力の大きさが所定のしきい値以下の第1状態であれば感知部70においては弾性変形部90の弾性復元力を負荷として認識する。
一方、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えた場合、使用者は、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れるまでの第2状態では弾性変形部90の弾性復元力に加えて、係合部80Aの弾性復元力および係合部80Bの弾性復元力を負荷として認識する。
そして、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超え、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れた第3状態では、係合部80Aの弾性復元力および係合部80Bの弾性復元力の負荷が解放されるため、使用者は負荷が低減したことを認識できる。また、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れた際には、外力による係合部80A、80Bの変形によって溜まった歪みエネルギーが瞬時に解放され、そのときに生じた振動によりクリック音が発現する。すなわち、使用者は、係合部80Aの弾性復元力および係合部80Bの弾性復元力の負荷の増加と、増加した当該負荷の低減とを手指を介して認識するとともに、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れた際に生じたクリック音を聴覚によって認識することで、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えたオーバーブラッシング圧であることを感知できる。
上記第1状態から第3状態への移行については、係合部80A、80Bと弾性変形部90との間に貫通孔Kが設けられているため、係合部80A、80Bと弾性変形部90とは、互いに独立して変形可能となり、係合部80A、80Bを係合および位置逆転させやすくなる。すなわち、ブラッシング荷重が負荷した際に、貫通孔Kが設けられているため、互いの変形挙動を阻害することなく、まず弾性部材90だけが撓んだ後に係合部80A、80Bが撓むことができる。
外力の大きさがゼロの場合に、係合部80Aの先端と、係合部80Bの先端との長軸方向の距離は、係合部80Aと係合部80Bとが長軸方向に離間している場合および長軸方向で重なっている場合の双方とも、2mm以下であることが好ましい。係合部80Aの先端と、係合部80Bの先端との長軸方向の距離が2mmを超えると、係合部80Aと係合部80Bとが長軸方向に離間している場合には、所定のしきい値を超えた大きさの外力により係合部80Bが背面側に変形しても係合部80Aに係合せず、第1状態から第2状態及び第3状態に移行できない可能性がある。また、係合部80Aの先端と、係合部80Bの先端との長軸方向の距離が2mmを超えると、係合部80Aと係合部80Bとが長軸方向に重なっている場合には、所定のしきい値を超えた大きさの外力により係合部80Bが背面側に変形した際に係合部80Aに係合して、第1状態から第2状態に移行するものの、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れずに厚さ方向の位置逆転が生じず、第2状態から第3状態に移行できない可能性がある。
従って、外力の大きさが所定のしきい値を超えた際に、第1状態から係合部80A、80B同士が係合する第2状態に移行し、さらに係合部80A、80B同士の係合が外れた第3状態に移行して、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えたオーバーブラッシング圧であることを感知するためには、係合部80Aの先端と、係合部80Bの先端との長軸方向の距離は、外力の大きさがゼロの場合に、2mm以下であることが好ましい。
外力の大きさがゼロの場合に、係合部80Aと係合部80Bとが厚さ方向で対向する面同士の最短距離は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。係合部80Aと係合部80Bとが厚さ方向で対向する面同士の最短距離が5mmを超えると、所定のしきい値を超えた大きさの外力により係合部80Bが背面側に変形しても係合部80Aに係合せず、第1状態から第2状態及び第3状態に移行できない可能性がある。
従って、外力の大きさが所定のしきい値を超えた際に、第1状態から係合部80A、80B同士が係合する第2状態に移行し、さらに係合部80A、80B同士の係合が外れた第3状態に移行して、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えたオーバーブラッシング圧であることを感知するためには、係合部80Aと係合部80Bとが厚さ方向で対向する面同士の最短距離は、外力の大きさがゼロの場合に、5mm以下であることが好ましい。
係合部80A及び係合部80Bの最大厚さとしては、1mm以上、5mm以下であることが好ましく、1mm以上、3mm以下であることがより好ましい。係合部80A及び係合部80Bの最大厚さが1mm未満の場合は、曲げ剛性が小さいため、上記第2状態から第3状態に移行する際に、振動およびクリック音が生じない可能性がある。係合部80A及び係合部80Bの最大厚さが5mmを超えた場合は、曲げ剛性が大きく第2状態から第3状態に移行できない可能性がある。
従って、外力の大きさが所定のしきい値を超えた際に、第1状態から係合部80A、80B同士が係合する第2状態に移行し、さらに係合部80A、80B同士の係合が外れた第3状態に移行して、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えたオーバーブラッシング圧であることを感知するためには、係合部80A及び係合部80Bの最大厚さとしては、1mm以上、5mm以下であることが好ましい。
係合部80A及び係合部80Bの長軸方向の長さとしては、それぞれ5mm以上、15mm以下であることが好ましい。係合部80A及び係合部80Bの長軸方向の長さは、同じあっても異なっていてもよい。係合部80A及び係合部80Bの長軸方向の長さが5mm未満の場合は、係合部80A及び係合部80Bの曲げ強度が大きくなるため、第2状態から第3状態に移行する際に発現するクリック音を大きくできる一方で、第3状態から第1状態に移行する可逆性が困難になる可能性がある。係合部80A及び係合部80Bの長軸方向の長さが15mmを超えると、曲げ強度が小さくなるため、上記可逆性は高まる一方で、第2状態から第3状態に移行する際に発現するクリック音が小さくなる可能性がある。
従って、係合部80A及び係合部80Bの長軸方向の長さをそれぞれ5mm以上、15mm以下とした場合には、第2状態から第3状態に移行する際に発現するクリック音を大きくできるとともに、第3状態から第1状態に移行する可逆性を向上させることが可能となる。
係合部80A及び係合部80Bの幅としては、感知部70の幅に対して、50%以下が好ましく、30%以下であることがより好ましい。係合部80A及び係合部80Bの幅が感知部70の幅に対して50%を超えると、係合部80A及び係合部80Bの曲げ強度が大きくなるため、第3状態から第1状態に移行する可逆性が困難になる可能性がある。
硬質部Hの一部を構成する係合部80A、80Bは、曲げ弾性率が1500MPa以上とすることにより、第2状態から第3状態に移行する際に発現するクリック音を大きくすることができる。また、係合部80A、80Bの曲げ弾性率を3500MPa以下とすることにより、曲げ強度を小さくして第3状態から第1状態へ容易に移行することができる。
弾性変形部90における硬質部90Hの厚さとしては、2.0mm以下であり、幅が厚さよりも大きいことが好ましい。硬質部90Hの厚さ2.0mm以下の場合、平面応力状態となるため、硬質部90Hは、内部応力を生じにくくなる。その結果、変形しても破断しにくくなり、係合部80A、80Bの係合および位置逆転に要するエネルギーを十分に蓄積することが可能となる。
なお、適正なブラッシング荷重(刷掃荷重)としては、例えば、200gである。この場合、しきい値としては、230g以上、250g以下であることが好ましい。しきい値を230g以上、250g以下とすることにより、実際に使用者が歯ブラシ1を用いてブラッシングした際の刷掃荷重を約200gとすることができる。
また、本実施形態の歯ブラシ1においては、係合部80A、80B及び弾性変形部90が幅方向に隙間をあけて配置されているため、感知部70を正面側及び背面側には変形させやすく、長軸方向及び幅方向にはほとんど変形しない平面応力状態とすることができる。すなわち、本実施形態の歯ブラシ1においては、係合部80A、80B及び弾性変形部90が変形する方向は、幅方向に互いに離間した厚さ方向であり、同一平面上に存在しない構成となっている。換言すると、厚さ方向の外力により弾性変形部90が変形する経路と、厚さ方向の外力により係合部80Aが変形する経路とは非干渉に設けられているとともに、厚さ方向の外力により弾性変形部90が変形する経路と、厚さ方向の外力により係合部80Bが変形する経路とは非干渉に設けられている。そのため、本実施形態の歯ブラシ1では、係合部80A、80Bの係合および位置逆転に要するエネルギーを一層十分に蓄積することが可能となる。
また、実施形態の歯ブラシ1においては、幅方向にぶれることが抑制されているため、ブラッシングによる厚み方向の撓みを、ロスすることなく係合部80A、80Bに伝えることができる。また、係合部80A、80B及び弾性変形部90が幅方向に配置されることで、弾性変形部90の撓みと係合部80A、80Bの係合および位置逆転を独立させて、タイミングをずらすことが可能になる。仮に、厚さ方向に弾性変形部90と係合部80A、80Bとを配置した場合は、弾性変形部90の撓みと係合部80A、80Bの係合および位置逆転に対し、互いの役割が阻害される可能性がある。
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ1においては、少なくとも係合部80Aと係合部80Bとが係合し、且つ、厚さ方向の相対位置関係が逆転する外力までは弾性変形する弾性変形部90と、第2領域A2から先端側に向けて延びる係合部80Aと、第1領域A1から後端側に向けて延びる係合部80Bとを有し、係合部80Aと係合部80Bとが、厚さ方向の外力がしきい値以下のときに厚さ方向に離間し、しきい値を超えた外力による、背面側への前記ヘッド部の変形に伴って係合し、且つ、厚さ方向の相対位置関係が逆転する。そのため、本実施形態の歯ブラシ1において使用者は、変形量に制限を受けることなく、係合部80Aの弾性復元力および係合部80Bの弾性復元力の負荷の増加と、増加した当該負荷の低減とを手指を介して認識するとともに、係合部80Aと係合部80Bとの係合が外れた際に生じたクリック音を聴覚によって認識することで、ヘッド部10に付与する外力の大きさが所定のしきい値を超えたオーバーブラッシング圧であることを高い汎用性をもって感知できる。
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1〜9、比較例1〜2)
[表1]に示す仕様に従って、曲げ弾性率、第1係合部と第2係合部の先端同士の長軸方向の距離、第1係合部と第2係合部とが厚さ方向で対向する面同士の最短距離、第1係合部と第2係合部の厚さが異なる歯ブラシを実施例1〜9、比較例1〜2のサンプルとした。なお、実施例1〜9、比較例2における「第1係合部と第2係合部の先端同士の長軸方向の距離」は、先端同士が重なる仕様での距離である。比較例1については、感知部(係合部及び弾性変形部)を有さない歯ブラシ(ライオン株式会社製、クリニカアドバンテージハブラシ)をサンプルとした。比較例2については、実施例2に対して弾性変形部と係合部とが厚さ方向に並んでいる歯ブラシをサンプルとした。
[評価方法]
(1)係合部の振動発現
[試験方法]専門パネル(5名)が、各サンプルを用いてブラッシングし、係合部の位置関係が逆転した際に振動を感じるか否かを実使用で5段階の評点で評価し、評点の平均値で下記のように評価した。評点の平均値は、小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までの桁とした。
[評点]5点:非常に感じる、4点:感じる、3点:やや感じる、2点:あまり感じない、1点:全く感じない
[評価]◎:4.5〜5点、○:4.1〜4.5点、△:3.1〜4.0点、×:3.0点以下
(2)係合部の可逆的な位置関係の逆転
[試験方法]専門パネル(5名)が、各サンプルを1週間使用し、1週間後の位置関係の可逆的な逆転の有無を評価した。
[評価]○:逆転有、×:逆転無(1本でも反転しなければ×)
(3)200〜250g程度での振動発現
[試験方法]各サンプルについては、ヘッド部の植毛面が水平になるように感知部70と把持部30の境界から把持部30側を固定した。ヘッド部の植毛面に厚さ方向背面側への荷重を付与する試験を行った。プッシュプルゲージ(DS2-50N、IMADA社製)の押圧子でヘッド部における植毛面の正面視中心を押し込み、係合部を逆転させた際の荷重を測定した。
測定は3回行いその平均値を測定値とした。平均値については、小数点第1位を四捨五入した。
[評価]◎:200〜250g、○:251〜300g、△:150〜199g、×:149g以下、もしくは301g以上、−:振動しない
評価結果については、◎、○、△を合格(OK)とし、×を不合格(NG)とした。
測定された荷重に関する評価は、逆転時の振動を、例えば、230〜250gの範囲で発現させることにより、実際に使用者が歯ブラシ1を用いてブラッシングした際の荷重が、推奨値である200gとなる値である。
Figure 2020103636
[表1]に示されるように、係合部の位置関係が逆転した実施例1〜9のサンプルでは、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動、及び荷重200〜250g程度での振動が発現することを確認できた。また、曲げ弾性率が1500MPa以上、3500MPa以下であり、第1係合部と第2係合部の先端同士の長軸方向の距離が2mm以下であり、第1係合部と第2係合部とが厚さ方向で対向する面同士の最短距離が5mm以下であり、第1係合部及び第2係合部の厚さが1mm以上、5mm以下である実施例1〜4、6、8〜9のサンプルでは、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動、及び荷重200〜250g程度での振動が発現することを確認できた。曲げ弾性率が1500MPa以上、3500MPa以下であり、第1係合部と第2係合部とが厚さ方向で対向する面同士の最短距離が5mm以下であり、第1係合部及び第2係合部の厚さが1mm以上、5mm以下である実施例5のサンプルについても、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動、及び荷重200〜250g程度での振動が発現することを確認できた。また、曲げ弾性率が1500MPa以上、3500MPa以下であり、第1係合部と第2係合部の先端同士の長軸方向の距離が2mm以下であり、第1係合部及び第2係合部の厚さが1mm以上、5mm以下である実施例7のサンプルについても、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動、及び荷重200〜250g程度での振動が発現することを確認できた。
一方、曲げ弾性率が1500MPa以上、3500MPa以下の範囲であっても、感知部(係合部及び弾性変形部)を有さない比較例1のサンプルは位置関係の逆転自体が生じず、従って、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動及び荷重約200〜250g程度での振動の発現が生じなかった。また、曲げ弾性率が1500MPa以上、3500MPa以下であり、第1係合部と第2係合部の先端同士の長軸方向の距離が2mm以下であり、第1係合部と第2係合部とが厚さ方向で対向する面同士の最短距離が5mm以下であり、第1係合部及び第2係合部の厚さが1mm以上、5mm以下であっても、弾性変形部と係合部とが厚さ方向に並んでいる比較例2のサンプルは、可逆的な位置関係の逆転、位置関係の逆転に伴う振動及び荷重約200〜250g程度での振動の発現が生じなかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、係合部80A、80Bが長軸方向と平行に延びる構成を例示したが、第1状態において係合部80A、80Bが厚さ方向に離間していればこの構成に限定されない。係合部80A、80Bとしては、例えば、図9に示すように、側面視において長軸方向に対して傾斜する構成であってもよい。
係合部80A、80Bが長軸方向に対して傾斜する方向としては、外力がしきい値以下(第1状態)のときに、係合部80A、80Bの双方とも、後端側に向かうに従って背面側に向かう方向に傾斜して延びていることが好ましい。
例えば、側面視において、係合部80Aが長軸方向と平行に延び、係合部80Bが長軸方向に対して後端側に向かうに従って正面側に向かう方向に傾斜して延びている場合、係合部80Bが背面側に変形して係合部80Aに係合し、第2状態から第3状態に移行するまでの幅方向に延びる軸線周りの角度が小さく、弾性変形によるエネルギーの蓄積は大きくない。これに対して、係合部80A、80Bの双方とも、後端側に向かうに従って背面側に向かう方向に傾斜して延びている場合、係合部80Bが背面側に変形して係合部80Aに係合し、第2状態から第3状態に移行するまでの幅方向に延びる軸線周りの角度が大きくなり、弾性変形によるエネルギーの蓄積が大きいため、クリック音を大きくすることが可能になる。
また、上記実施形態では、感知部70がネック部20と把持部30との間に設けられる構成を例示したが、この構成に限定されない。感知部70としては、ネック部20に設けられる構成や、把持部30に設けられる構成であってもよい。
例えば、二つの係合部80A、80Bを設ける場合、一方を適正なブラッシング荷重の上限値で係合する厚さ等に形成し、他方を適正なブラッシング荷重の下限値で係合する厚さ等に形成する構成とすることにより、ブラッシング荷重の上限値及び下限値の双方を容易に規定することが可能となる。
1…歯ブラシ、 2…ハンドル体、 10…ヘッド部、 11…植毛面、 20…ネック部、 30…把持部、 70…感知部、 80A、80b…係合部、 81、82…溝部、 E、31E、32E…軟質部、 H…硬質部、 K…貫通孔、 S…隙間

Claims (7)

  1. 長軸方向先端側に設けられ植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記植毛面と前記把持部との間に配置されたネック部とを有し、
    前記植毛面よりも後端側に、前記植毛面と直交する第1方向の外力がしきい値を超えたことを感知させる感知部が設けられ、
    前記感知部は、
    基端が当該感知部よりも前記後端側の第2領域に位置し、当該感知部よりも前記先端側の第1領域に向けて前記長軸方向に延びる第1係合部と、
    基端が前記第1領域に位置し、前記第2領域に向けて前記長軸方向に延びる第2係合部とを有し、
    前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記第1方向の外力がしきい値以下のときに前記第1方向に離間し、前記しきい値を超えた前記外力による、前記第1方向で前記植毛面とは逆側である背面側への前記ヘッド部の変形に伴って係合し、且つ、前記第1方向の相対位置関係が逆転し、
    前記感知部は、前記第1領域と前記第2領域とをつなぎ、少なくとも前記第1係合部と前記第2係合部とが係合し、且つ、前記第1方向の相対位置関係が逆転する前記外力までは弾性変形する弾性変形部を備え、
    前記第1方向の外力により前記弾性変形部が変形する経路と、前記第1方向の外力により前記第1係合部が変形する経路とは非干渉に設けられているとともに、前記第1方向の外力により前記弾性変形部が変形する経路と、前記第1方向の外力により前記第2係合部が変形する経路とは非干渉に設けられていることを特徴とする歯ブラシ。
  2. 前記第1方向の外力がしきい値以下のときに、前記第1係合部は、前記第1方向で前記第2係合部よりも前記背面側に配置されている、
    請求項1に記載の歯ブラシ。
  3. 前記第1方向の外力がゼロのときに、前記第1係合部と前記第2係合部とは、それぞれの先端同士の前記長軸方向の距離が2mm以下である、
    請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
  4. 前記第1方向の外力がゼロのときに、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記第1方向で対向する面同士の最短距離は、5mm以下である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
  5. 前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ前記第1方向の厚さが1mm以上、5mm以下である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
  6. 前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ硬質樹脂で形成され、
    前記弾性変形部は、少なくとも前記第1方向及び前記長軸方向とそれぞれ直交する第2方向の周囲が前記硬質樹脂よりも硬度が低い樹脂で形成されている、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
  7. 前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1方向及び前記長軸方向とそれぞれ直交する第2方向に前記弾性変形部とそれぞれ隙間をあけて配置されている、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
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