<概要>
本開示の実施形態に係る表示装置の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
本実施形態における表示装置は、被検者がレンズを適用した状態における被検眼の見え方を表示する。例えば、本実施形態の表示装置を用いることで、被検者に、所定の距離に配置された物体が、レンズを適用した際にどのように見えるのかを事前に呈示することができる。なお、被検者が装用するレンズとは、眼鏡レンズ、眼内レンズ、コンタクトレンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。
例えば、本実施形態における表示装置は、後述するライトフィールドディスプレイを備える。また、例えば、本実施形態における表示装置は、後述する信号受付手段、領域設定手段、距離設定手段、等を備える。また、例えば、本実施形態における表示装置は、さらに、後述するレンズ情報取得手段、被検眼情報取得手段、信号出力手段、切換手段、等の少なくともいずれかを備えていてもよい。
<ライトフィールドディスプレイ>
本実施形態における表示装置は、ライトフィールドディスプレイ(例えば、LFD2)を備える。ライトフィールドディスプレイは、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFDは、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFDは、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向、等の少なくともいずれか)に応じて、表示する画像の特徴値(例えば、被検眼に対する画像の呈示距離、被検眼の円柱度数の矯正量、被検眼の円柱軸の方向、の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。
ライトフィールドディスプレイとしては、どのような方式で光線を再現するものを採用してもよい。例えば、本実施形態では、微小素子アレイ方式のライトフィールドディスプレイが採用されてもよい。微小素子アレイ方式のライトフィールドディスプレイは、画像源(例えばディスプレイ等)の正面側(画像を視認するユーザ側であり、本実施形態では被検者側)に微小素子アレイを備える。微小素子アレイとは、複数の画素集合単位の各々に対応して設けられる複数の微小素子が、二次元上に並べて(例えば格子状に)配置された光学部材である。微小素子アレイには、例えば、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイ、複数のマイクロホールを備えるマイクロホールアレイ、複数の回折素子を備える回折素子アレイ、複数の偏光素子を備える偏光素子アレイ、および、複数の屈折素子を備える屈折素子アレイ等の少なくともいずれかを採用できる。
もちろん、例えば、ライトフィールドディスプレイとしては、複数ディスプレイ方式、バリア基盤方式、等のLFDを採用することもできる。複数ディスプレイ方式のライトフィールドディスプレイでは、複数のディスプレイがスタック状に組み合わされている。複数ディスプレイ方式のLFDには、例えばテンソルディスプレイ等がある。バリア基盤方式のライトフィールドディスプレイでは、細かいスリットが形成されたバリア基盤が、画像源(例えばディスプレイ等)の背面側(画像を視認するユーザ側の反対側)に設けられている。
なお、ライトフィールドディスプレイの構成は、画素からの光を被検眼に向けて出射する構成でもよいし、スクリーンに画素を投影する構成でもよい。また、ライトフィールドディスプレイは、光を走査させることで画像を表示してもよい。
<被検者情報取得手段>
本実施形態における表示装置は、被検眼情報取得手段(例えば、CPU51)を備えてもよい。被検眼情報取得手段は、被検眼の被検眼情報を取得する。例えば、被検眼情報は、被検眼の光学特性(言い換えると、被検眼の処方値)であってもよい。また、例えば、被検眼情報は、被検眼の瞳孔情報(例えば、瞳孔径、瞳孔間距離、等)であってもよい。
被検眼情報取得手段は、検者により入力される被検眼情報を受信することによって、被検眼情報を取得してもよい。また、被検眼情報取得手段は、表示装置とは異なる装置(例えば、検眼装置、等)を用いて測定された被検眼情報を受信することによって、被検眼情報を取得してもよい。
<レンズ情報取得手段>
本実施形態における表示装置は、レンズ情報取得手段(例えば、CPU51)を備えてもよい。レンズ情報取得手段は、被検者に適用されるレンズのレンズ情報を取得する。例えば、レンズのレンズ情報とは、レンズの種類であってもよい。一例として、眼鏡レンズの場合は、単焦点レンズ、二重焦点レンズ、累進焦点レンズ(例えば、遠近両用レンズ、中近両用レンズ、近近両用レンズ、等)等の種類であってもよい。また、一例として、眼内レンズの場合は、単焦点眼内レンズ、多焦点眼内レンズ(マルチフォーカル眼内レンズ)、等の種類であってもよい。また、一例として、コンタクトレンズの場合は、単焦点コンタクトレンズ、多焦点コンタクトレンズ(マルチフォーカルコンタクトレンズ)、等の種類であってもよい。例えば、レンズのレンズ情報とは、レンズの光学特性(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸、等)であってもよい。なお、累進焦点レンズの場合は、レンズの光学特性として、さらに、累進帯長、加入度数、等が含まれてもよい。
レンズ情報取得手段は、操作手段(例えば、操作部6)から入力されるレンズ情報を受信することによって、レンズ情報を取得してもよい。また、レンズ情報取得手段は、レンズを識別するための識別情報(例えば、ID、一次元コード、二次元コード、製品番号、等)を受信し、予め蓄積されたデータの中から該当するデータを呼び出すことで、レンズ情報を取得してもよい。
<信号出力手段>
本実施形態における表示装置は、第1信号出力手段(例えば、CPU51)を備えてもよい。第1信号出力手段は、レンズ情報に基づく領域設定信号を出力する。領域設定信号は、ライトフィールドディスプレイに表示される画像の被検眼に対する呈示領域の数を設定するための信号であってもよい。一例として、領域設定信号は、ライトフィールドディスプレイの表示面の分割数(領域数)、レイアウト、等の少なくともいずれかを設定するための信号であってもよい。なお、レンズ情報と、ライトフィールドディスプレイに表示される画像の呈示領域と、は予め対応付けられていてもよい。
本実施形態における表示装置は、第2信号出力手段(例えば、CPU51)を備えてもよい。第2信号出力手段は、レンズ情報に基づく距離設定信号を出力する。距離設定信号は、ライトフィールドディスプレイに表示される画像の呈示領域における呈示距離を設定するための信号であってもよい。なお、レンズ情報と、ライトフィールドディスプレイに表示される画像の呈示距離と、は予め対応付けられていてもよい。
例えば、本実施形態においては、第1信号出力手段と、第2信号出力手段と、が別々に設けられてもよい。この場合、レンズ情報取得手段がレンズ情報を取得した際に、第1信号出力手段がレンズ情報に基づく領域設定信号を出力するとともに、第2信号出力手段がレンズ情報に基づく距離設定信号を出力する構成としてもよい。また、例えば、本実施形態においては、第1信号出力手段と、第2信号出力手段と、が兼用されてもよい。この場合、レンズ情報取得手段がレンズ情報を取得した際に、第1信号出力手段(または、第2信号出力手段)がレンズ情報に基づく領域設定信号と距離設定信号を出力する構成としてもよい。
例えば、表示装置がこれらの信号出力手段を備える構成であることにより、検者は複雑な設定操作等を行わなくても、レンズ情報を入力するのみで、被検眼に呈示する画像の呈示領域と呈示距離を容易に設定することができる。
<信号受付手段>
本実施形態における表示装置は、第1信号受付力手段(例えば、CPU51)を備える。第1信号受付手段は、領域設定信号を受け付ける。第1信号受付手段は、操作手段から入力される領域設定信号を受け付けてもよい。例えば、ユーザ(検者または被検者)が操作手段を操作することで入力される領域設定信号を受け付けてもよい。また、第1信号受付手段は、レンズ情報に基づいて出力された領域設定信号を受け付けてもよい。つまり、第1信号受付手段は、第1信号出力手段から出力された領域設定信号を受け付けてもよい。
本実施形態における表示装置は、第2信号受付力手段(例えば、CPU51)を備える。第2信号受付手段は、距離設定信号を受け付ける。第1信号受付手段は、第2信号受付手段と同様に、操作手段から入力される領域設定信号を受け付けてもよい。また、第2信号受付手段は、レンズ情報に基づいて出力された距離設定信号を受け付けてもよい。つまり、第2信号受付手段は、第2信号出力手段から出力された距離設定信号を受け付けてもよい。
例えば、本実施形態においては、第1信号受付手段と第2信号受付手段とが別々に設けられてもよいし、第1信号受付手段と第2信号受付手段とが兼用されてもよい。
例えば、表示装置がこれらの信号受付手段を備える構成であることにより、被検眼がレンズを使用する様々な状況に合わせた呈示領域と呈示距離を設定することができ、被検眼の見え方を適切に表示して、より現実に近いシミュレーションを行うことができる。被検者は、このような表示装置を観測することで、実際にレンズを使用した際のイメージをもちやすくなる。
<領域設定手段>
本実施形態における表示装置は、領域設定手段(例えば、CPU51)を備える。領域設定手段は、領域設定信号に基づいて、ライトフィールドディスプレイに表示する画像の被検眼に対する呈示領域を設定する。なお、領域設定手段は、領域設定信号に基づいて、ライトフィールドディスプレイに表示する画像の被検眼に対する少なくとも1つ以上の呈示領域を設定してもよい。
例えば、領域設定手段は、ライトフィールドディスプレイの画面に1つの呈示領域を設定してもよい。すなわち、領域設定手段は、ライトフィールドディスプレイの表示面を1つの表示領域として、被検眼に対する画像の呈示領域を1つに設定してもよい。また、例えば、領域設定手段は、ライトフィールドディスプレイの画面に複数(少なくとも2つ以上)の呈示領域を設定してもよい。すなわち、領域設定手段は、ライトフィールドディスプレイの表示面を複数の表示領域として、被検眼に対する画像の呈示領域を複数に設定してもよい。
<距離設定手段>
本実施形態における表示装置は、距離設定手段(例えば、CPU51)を備える。距離設定手段は、距離設定信号に基づいて、ライトフィールドディスプレイに表示する画像の呈示領域における呈示距離を設定する。言い換えると、距離設定手段は、距離設定信号に基づいて、ライトフィールドディスプレイに表示する画像の呈示位置(つまり、画像の結像面の位置)を設定する。なお、距離設定手段は、距離設定信号に基づいて、ライトフィールドディスプレイに表示する画像の呈示領域における少なくとも1つ以上の呈示距離を設定してもよい。
例えば、距離設定手段は、領域設定手段により設定された1つの呈示領域において、1つの呈示距離を設定してもよい。また、例えば、距離設定手段は、領域設定手段により設定された1つの呈示領域において、複数(少なくとも2つ以上)の呈示距離を、同時に設定してもよいし、順次に設定してもよい。なお、本実施形態における「順次に」とは、同一の画像を、少なくともいずれかの特徴値を連続的に変化させてライトフィールドディスプレイに表示する場合を含む。一例として、ライトフィールドディスプレイに、画像を一定の呈示距離間隔で複数表示する場合等を含む。
例えば、ライトフィールドディスプレイに、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の画像を同時または順次に表示させると、被検眼の球面度数に応じて、呈示された複数の画像の各々の見え方が異なる。また、例えば、ライトフィールドディスプレイに、被検眼が度数の異なるレンズのそれぞれを適用した際の見え方等を、画像を切り換えなくても呈示することができる。
例えば、距離設定手段は、領域設定手段により設定された複数の呈示領域において、各々に画像の呈示距離を設定してもよい。例えば、このような構成であることによって、ライトフィールドディスプレイ上に設定した複数の領域のそれぞれに、被検者が異なるレンズを適用した場合(一例として、単焦点レンズと累進焦点レンズを適用した場合、等)のそれぞれの見え方を表現するように呈示距離を設定することができる。
また、例えば、このような構成であることによって、ライトフィールドディスプレイ上に設定した複数の領域のそれぞれにおいて、分解能を適宜設定することができる。例えば、分解能を低く設定し、画像の呈示距離の最大幅(最大範囲)を大きくした呈示領域と、分解能を高く設定し、画像の呈示距離を細かいピッチで変更することができる呈示領域と、を設けてもよい。つまり、複数の呈示領域毎に、画像の呈示距離の間隔(ステップ)を変更してもよい。これによって、例えば、被検眼の球面度数の検査等を円滑に実行することもできる。
例えば、距離設定手段が、領域設定手段により設定された複数の呈示領域において、各々に画像の呈示距離を設定する場合、距離設定手段は、完全には互いに重複しない複数の呈示領域のうち、すべての呈示領域が異なる呈示距離となるように、各々の呈示距離を設定してもよい。また、この場合、距離設定手段は、完全には互いに重複しない複数の呈示領域のうち、少なくとも2つの呈示領域が同一の呈示距離となるように、各々の呈示距離を設定してもよい。一例として、LFDに2つの呈示領域(第1呈示領域および第2呈示領域)が設定された状態では、第1呈示領域と第2呈示領域が同一の呈示距離とされてもよい。また、一例として、LFDに3つの呈示領域(第1呈示領域、第2呈示領域、および第3呈示領域)が設定された状態では、第1呈示領域と第2呈示領域が同一の呈示距離とされ、第3呈示領域が異なる呈示距離とされてもよい。なお、第1呈示領域〜第3呈示領域において、同一の呈示距離あるいは異なる呈示距離とされる組み合わせは、これに限定されない。もちろん、第1呈示領域、第2呈示領域、および第3呈示領域のすべてが同一の呈示距離とされてもよい。
例えば、上記のような、少なくとも2つの呈示距離の設定あるいはすべてが異なる呈示領域の設定は、切換手段(例えば、CPU51)により切り換えられてもよい。例えば、被検眼が複数の焦点をもつレンズを適用する際には、少なくとも2つの呈示領域が同一の呈示距離となるように切り換えられてもよい。また、例えば、被検眼が1つの焦点をもつレンズを適用する際には、すべての呈示領域が異なる呈示距離となるように切り換えられてもよい。これによって、被検眼がレンズを使用する様々な状況に合わせた被検眼の見え方を適切に表示することができる。
例えば、距離設定手段は、領域設定手段により設定された複数の呈示領域の各々において、複数の呈示距離を設定してもよい。つまり、複数の画像を別々の呈示領域に呈示してもよい。この場合にも、各々の呈示領域において、距離設定信号に基づく複数の呈示距離が、同時にまたは順次に設定されてもよい。
例えば、距離設定手段は、前述の被検眼情報とレンズ情報に基づいて、呈示距離を設定してもよい。これによって、例えば、被検眼がレンズを適用した際の被検眼情報により変化する見え方をシミュレートすることも可能である。一例としては、被検眼が、被検眼に入射する光の量によって見え方が異なる多焦点眼内レンズを挿入する場合等、瞳孔径により変化する見え方をシミュレートすることが可能である。これによって、被検者は、呈示された物体がどのように見えるのかを事前に把握することができる。
<実施例>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つである実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、表示装置1の概略構成を示す図である。表示装置1は、ライトフィールドディスプレイ(LFD)2、制御ユニット5、および操作部6を備える。一例として、本実施例の表示装置1では、LFD2、制御ユニット5、および操作部6等の複数の構成が、1つの筐体内に設けられている。しかし、表示装置では、LFD2および制御ユニット5等の複数の構成のうち、少なくとも2つ以上の構成が、別々の筐体(別々のデバイス)に設けられていてもよい。
<ライトフィールドディスプレイ>
LFD2は、後述する各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFD2は、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFD2は、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向、等の少なくともいずれか)に応じて、表示する画像の特徴値(例えば、被検眼に対する画像の呈示距離、被検眼の円柱度数の矯正量、被検眼の円柱軸の方向、等の少なくともいずれか)を適宜設定することが可能である。
本実施例において、LFD2は、被検眼に対する画像の呈示領域の数を適宜設定することができる。また、本実施例において、LFD2は、被検眼に対する画像の呈示距離を適宜設定することができる。なお、これらについての詳細は後述する。
LFD2としては、例えば、微小素子アレイ方式、複数ディスプレイ方式、およびバリア基盤方式、等により光線を再現するLFDを採用することが可能である。本実施例では、マイクロレンズアレイを備えた微小素子アレイ方式のLFD2を採用する場合を例示して説明を行う。
本実施例のLFD2は、画像源10、バックライト20、微小素子アレイ30、および分解能変更部40を備える。なお、図1では、LFD2の構成の理解を容易にするために、画像源10、バックライト20、および微小素子アレイ30の各々が分解された状態が示されている。
画像源10は、画像を視認するユーザ(本実施例では被検者)の視線方向に交差する二次元の方向(つまり、ディスプレイの表示面に平行な二次元方向)に並べられた複数の画素を有する。一例として、本実施例の画像源10には、多数の画素を備えた(つまり、高解像度の)ディスプレイが使用されている。しかし、ディスプレイ以外の画像源が使用されてもよい。例えば、物体が放つ光線を再現するための所定の画像が印刷された印刷媒体(紙等)が、画像源10として使用されてもよい。この場合、印刷媒体が交換されることで、LFD2によって表示(呈示)される画像が変更されてもよい。
バックライト20は、画像源10の背面側に設けられており、画像源10を背面側から照明する。なお、画像源10自体が十分な強さで発光可能な場合等には、バックライト20を省略することも可能である。
微小素子アレイ(本実施例ではマイクロレンズアレイ)30は、複数の微小素子31(本実施例ではマイクロレンズ)を備える。複数の微小素子31は、二次元上に並べて(本実施例では格子状に)配置されている。各々の微小素子31には、画像源10における複数の画素に対応する。詳細には、画像源10のうち、各々の微小素子31の領域を背面側に投影した領域内に配置された複数の画素が、1つの画素集合単位11となる。画素集合単位11内の画素から出射される光は、画素集合単位11に対応する微小素子31(つまり、画素集合単位11の正面側に配置された微小素子31)を通過して、正面側に出射される。
分解能変更部40は、画像の呈示距離を変更する際の分解能を調整する。つまり、分解能とは、LFD2が変更することが可能な画像の呈示距離の最小ピッチである。LFD2は、分解能調整部によって分解能を高くすることで、細かいピッチで画像の呈示距離を変更することができる。また、LFD2は、分解能調整部によって分解能を低くすることで、変更可能な画像の呈示距離の最大幅(最大範囲)を大きくすることができる。
分解能変更部40の具体的な構成は、適宜選択できる。一例として、本実施例の分解能変更部40は、微小素子アレイ(マイクロレンズアレイ)30が備える複数の微小素子(マイクロレンズ)31の焦点距離を変更することで、画像の呈示距離の分解能を変更することができる。詳細には、本実施例では、焦点距離を変更することが可能な焦点距離可変レンズ(例えば、液晶レンズ等)が、微小素子アレイ30のマイクロレンズとして使用されている。分解能変更部40は、焦点距離可変レンズを駆動させることで、焦点距離を変更する。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、特徴値の分解能が高くなる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、設定可能な特徴値の最大幅が大きくなる。
また、本実施例の分解能変更部40は、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更することで、画像の呈示距離の分解能を変更することができる。一例として、本実施例の分解能変更部40は、アクチュエータ(例えばモータ等)を駆動し、微小素子アレイ30と画像源10の少なくともいずれかを、表示面に垂直な方向に移動させる。その結果、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離が変更されて、呈示距離の分解能が変更される。微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くすると、呈示距離の分解能が高くなる。逆に、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を短くすると、設定可能な呈示距離の最大幅が大きくなる。
なお、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を長くした際に、光線を通過させる物質(例えば、ガラスおよび樹脂等の少なくともいずれか)が、微小素子アレイ30と画像源10の間に挿入されてもよい。この場合、微小素子アレイ30と画像源10の間の位置調整(所謂「アライメント」)等が容易になる。また、微小素子アレイ30と画像源10の間の距離を変更して呈示距離の分解能を変更する場合、マイクロレンズアレイ以外の微小素子アレイ30(例えば、マイクロホールアレイ、回折素子アレイ、偏光素子アレイ、または、屈折素子アレイ等)が使用されていてもよい。
<ライトフィールドディスプレイの呈示領域>
LFD2は、ディスプレイの表示面に画像を表示する表示領域の数を設定することで、被検眼に対する画像の呈示領域の数を設定することができる。LFD2における画像の呈示領域の数は、検者が任意に設定できてもよい。また、LFD2における画像の呈示領域の数は、被検者に適用するレンズのレンズ情報(例えば、レンズの種類、レンズの特性(光学特性、累進帯長、加入度数、等))に基づいて設定されてもよい。
本実施例において、LFD2は、ディスプレイの表示面を1つの表示領域とし、被検眼に対する画像の呈示領域を1つに設定してもよい。また、本実施例において、LFD2は、ディスプレイの表示面を分割して複数の表示領域とし、被検眼に対する画像の呈示領域を複数に設定してもよい。一例としては、ディスプレイの表示面を4分割することで、被検眼に対する画像の呈示領域の数を、第1呈示領域〜第4呈示領域の4つに設定してもよい。なお、この場合、ディスプレイの表示面は、2×2分割(上下方向及び左右方向にそれぞれ2分割)でもよいし、1×4分割(左右方向に4分割)でもよいし、4×1分割(上下方向に4分割)でもよい。もちろん、これらとは異なるレイアウトで分割してもよい。
<ライトフィールドディスプレイの呈示距離>
LFD2は、被検眼に対する画像の呈示距離を設定することができる。この場合、被検者は、画像の呈示位置が、被検眼の遠点から近点までの間に存在する場合に、呈示された画像を明確に視認することができる。被検眼から遠点までの距離は、被検眼の遠視の焦点距離となる。つまり、被検眼から遠点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体(例えば、画像等)を明確に視認可能な最も遠い距離となる。また、被検眼から近点までの距離は、被検眼からの距離のうち、被検眼が物体を明確に視認可能な最も近い距離となる。
図2を参照して、被検眼に対する画像の呈示距離を設定する方法の一例について説明する。図2は、LFD2が被検眼に対する画像の呈示距離を設定した場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。図2(A)は、画像の呈示位置を、図2(B)の呈示位置PP2に比べて、被検眼の位置EPに近い位置PP1とした場合の、光線の状態の一例である。
図2(A)、(B)に示すように、LFD2は、被検眼に対する画像の呈示位置(つまり、画像の結像面の位置)を、前後方向(図2における左右方向)に変化させることができる。一例として、本実施例のLFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の集合の数を変化させることで、画像の呈示位置を変化させることができる。また、LFD2は、各々の画素集合単位11のうち、発光させる画素の位置を変えることで、画角を変更することも可能である。
なお、被検眼に対する画像の呈示距離を設定するための具体的な方法は、適宜選択されればよい。例えば、図2(A)、(B)に示す例では、設定される呈示距離に関わらず、各々の画素集合単位11(つまり、各々のマイクロレンズ31)から画像用の光線が出射される。従って、被検者によって観測される画像の解像度が低下し難い。しかし、LFD2は、各々の呈示距離毎に、光線を出射させる画素集合単位11を区別してもよい。また、LED2は、画像の表示面(本実施形態ではマイクロレンズアレイ30)とユーザの間に、各々の画素集合単位11から出射される複数の光線がいずれも通過する光学素子(例えば、レンズ等)を備えていてもよい。
<ライトフィールドディスプレイの呈示領域における呈示距離>
LFD2は、被検眼に対する画像の呈示領域において、呈示距離を適宜設定することが可能である。言い換えると、LFD2は、被検眼に対する画像の呈示領域において、被検眼から画像の呈示位置までの距離を適宜設定することが可能である。
LFD2は、1つの呈示領域において、1つの呈示距離を設定してもよい。つまり、LFD2は、1つの呈示領域において、1つの画像のみを、設定された呈示距離に呈示してもよい。
また、LFD2は、1つの呈示領域において、複数の呈示距離を設定してもよい。つまり、LFD2は、1つの呈示領域において、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像(例えば、図2(A)の画像と図2(B)の画像)を呈示してもよい。この場合、LFD2は、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像を同時に表示してもよい。また、この場合、LFD2は、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像を順次に表示してもよい。被検者には、同時または順次に表示される複数の画像のうち、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に呈示された画像が、焦点の合った状態で観測される。
また、LFD2は、複数の呈示領域において、各々に呈示距離を設定してもよい。つまり、LFD2は、複数の呈示領域において、各々の画像を、各々に設定された呈示距離に呈示することができる。
図3は、LFD2の複数の呈示領域(本実施例では、第1呈示領域R1〜第3呈示領域R3の3つの呈示領域)において設定される呈示距離の一例である。図3(A)は、LFD2が、第1呈示領域R1と第3呈示領域R3に同一の呈示距離を設定し、第2呈示領域R2には異なる呈示距離を設定した場合である。図3(B)は、LFD2が、第1呈示領域R1、第2呈示領域R2、および第3呈示領域R3の各々に異なる呈示距離を設定した場合である。
LFD2は、複数の呈示領域のうちの少なくとも2つの呈示領域に、同一の呈示距離を設定してもよい。例えば、図3(A)のように、LFD2は、第1呈示領域R1と第3呈示領域R3においては、被検眼の球面度数に対応する呈示位置PP2に画像を呈示し、第2呈示領域R2においては、被検眼の球面度数に対応しない呈示位置PP1に画像を呈示してもよい。被検眼に調節力がない場合(被検眼の調節が働かない場合)、被検者には、第1呈示領域R1と第3呈示領域R3において、呈示された画像が焦点の合った状態で観測されるが、第2呈示領域R2において、呈示された画像が焦点の合わない状態(つまり、ぼやけた状態)で観測される。なお、例えば、LFD2は、第1呈示領域R1、第2呈示領域R2、および第3呈示領域R3の各々において、被検眼の球面度数に対応する呈示位置PP2に画像を呈示してもよい。この場合、被検者には、第1呈示領域R1、第2呈示領域R2、および第3呈示領域R3のすべての呈示領域で、呈示された画像が焦点の合った状態で観測される
また、LFD2は、複数の呈示領域のうちのすべての呈示領域に、異なる呈示距離を設定してもよい。例えば、図3(B)のように、LFD2は、第1呈示領域R1では、被検眼の球面度数に対応する呈示位置PP2に画像を呈示し、第2呈示領域R2と第3呈示領域R3では、被検眼の球面度数に対応しないそれぞれの呈示位置PP1aと呈示位置PP1bに画像を呈示してもよい。この場合、被検者には、第1呈示領域R1では呈示された画像が焦点の合った状態で観測されるが、第2呈示領域および第3呈示領域では呈示された画像が焦点の合わない状態で観測される。
もちろん、LFD2は、複数の呈示領域のそれぞれにおいて、複数の呈示距離を設定してもよい。つまり、LFD2は、複数の呈示領域のそれぞれにおいて、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像を呈示してもよい。この場合にも、LFD2は、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像を同時に表示してもよいし、順次に表示してもよい。
<制御ユニット>
制御ユニット5は、CPU51、不揮発性メモリ(Non−volatile memory:NVM)52、等を備える。CPU51は、表示装置1の制御(例えば、LFD2による画像の表示制御、等)を司る。NVM52は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ、等を不揮発性メモリ52として使用してもよい。
制御ユニット5は、LFD2および操作部6に接続されている。操作部6は、検者および被検者等の少なくともいずれかのユーザによって、各種指示および応答を表示装置1に入力するために操作される。操作部6には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部6とともに、または操作部6に代えて、各種指示および応答を入力するためのマイク等が使用されてもよい。この場合、例えば、画像を観測した結果を示す声をユーザが出すことで、画像の表示等の切り換えが実行されてもよい。
なお、前述したように、制御ユニット5および操作部6は、表示装置1の筐体とは別の筐体に設けられていてもよい。例えば、表示装置1に接続されたパーソナルコンピュータの制御ユニットが、表示装置1の制御ユニット5として機能してもよい。
<制御動作>
表示装置1の制御動作を説明する。
本実施例においては、LFD2を用いて、被検眼に対する画像の呈示領域の数と呈示距離を適切に設定することで、被検者がレンズを適用した際の被検眼の見え方をシミュレートすることができる。より詳細には、被検者がレンズを適用した際に、被検眼に対して所定の距離に配置された物体がどのように見えるのか(言い換えると、被検眼に対して所定の距離に配置された物体が、レンズで矯正するとどのように見えるのか)を呈示することができる。
例えば、LFD2を用いることで、被検眼に対してある1つの距離に配置された物体を呈示することが可能である。また、例えば、LFD2を用いることで、被検眼に対して複数の距離(例えば、遠距離、中距離、近距離、等から選択される任意の複数の距離)に配置された物体を呈示することが可能である。例えば、本実施例では、被検者がレンズを適用した際に、被検眼に対して遠距離および近距離に配置された物体がどのように見えるのかが呈示される。
これについて、図4に示すフローチャートを用いて、被検眼が近視をともなう老視(例えば、球面度数−1D、乱視度数0D、乱視軸0度であるが、調節力が低下して、近距離に焦点を合わせられない状態)であり、この被検眼に眼内レンズ(intraocular lens:IOL)を適用する際の見え方をシミュレートする場合を例に挙げて説明する。なお、本実施例では、単焦点IOLと多焦点IOLを挿入する場合をそれぞれ例示する。
<単焦点IOLを挿入する場合のシミュレーション>
まず、被検眼に単焦点IOLを挿入した際の見え方をシミュレートする場合について説明する。例えば、このような場合には、LFD2の呈示領域における呈示距離が、異なる呈示距離に設定されてもよい。
<被検眼情報の取得>
CPU51は、被検者の被検眼情報を取得する(S1)。被検眼情報とは、被検眼に関わる情報である。本実施例では、被検者情報として、図示なき検眼装置等により測定された被検眼の光学特性(言い換えると、被検眼の処方値であり、ここでは、球面度数−1D、乱視度数0D、乱視軸0度)が取得される。
検者は、操作部6を操作して、被検眼の処方値を入力する。制御ユニット5のCPU51は、検者に入力された処方値を取得し、これをNVM52へ記憶させる。なお、CPU51は、検眼装置等により測定された被検眼の処方値を受信することで取得し、これをNVM52へ記憶させてもよい。
なお、例えば、被検眼に適用するレンズ(ここでは、単焦点IOL)の光学特性は、被検眼の処方値に基づいて決定されるため、このような被検眼情報は、後述のレンズ情報として用いられてもよい。
<領域設定信号の取得>
次に、CPU51は、LFD2に表示される画像の被検眼に対する呈示領域の数を設定するための領域設定信号を取得する(S2)。例えば、領域設定信号は、ディスプレイの表示面をどのように分割するかを設定するための信号であってもよい。一例として、領域設定信号は、ディスプレイの表示面の分割数、レイアウト、等の少なくともいずれかを設定するための信号であってもよい。検者は、操作部6を操作して、このような領域設定信号を入力する。例えば、検者は、操作部6を操作して、ディスプレイの表示面を1×2分割(左右方向に2分割)する領域設定信号を入力する。CPU51は、操作部6からの領域設定信号を受け付けることで、領域設定信号を取得する。
なお、本実施例では、検者により領域設定信号が直接的に入力される場合を例示するが、被検眼に適用するレンズのレンズ情報(例えば、レンズの種類であり、ここでは単焦点IOL)に基づいて領域設定信号が入力されてもよい。この場合、CPU51は、検者により入力されるレンズ情報を取得し、これに基づく領域設定信号を取得してもよい。また、CPU51は、レンズを識別するための識別情報(例えば、ID、一次元コード、二次元コード、製品番号、等)を読み取ることでレンズ情報を取得し、これに基づく領域設定信号を取得してもよい。例えば、レンズ情報に対する領域設定信号は予め対応付けられていてもよい。
<呈示領域の設定>
次に、CPU51は、LFD2に表示される画像の被検眼に対する呈示領域を設定する(S3)。本実施例では、検者により入力されたLFD2の呈示領域を設定するための領域設定信号に応じて、第1呈示領域R1と第2呈示領域R2の2つの呈示領域(図5参照)が設定される。例えば、第1呈示領域R1は、被検眼に対して遠距離に配置された物体がどのように見えるかを示すための領域である。例えば、第2呈示領域R2は、被検眼に対して近距離に配置された物体がどのように見えるかを示すための領域である。
<距離設定信号の取得>
次に、CPU51は、LFD2に表示される画像の呈示領域における呈示距離を設定するための距離設定信号を取得する(S4)。例えば、被検眼に単焦点IOLを挿入する場合、LFD2の各々の呈示領域に対して、各々の呈示距離を設定するための距離設定信号が取得される。検者は、操作部6を操作して、第1呈示領域R1と第2呈示領域R2における距離設定信号を入力する。CPU51は、操作部6からの距離設定信号を受け付けることで、それぞれの距離設定信号を取得する。
なお、本実施例では、検者により距離設定信号が直接的に入力される場合を例示するが、領域設定信号と同様、レンズ情報に基づいて距離設定信号が入力されてもよい。例えば、レンズ情報に対する距離設定信号は予め対応付けられていてもよい。
<呈示距離の設定>
次に、CPU51は、LFD2の呈示領域における呈示距離を設定する(S5)。本実施例において、被検眼が単焦点IOLを挿入した場合、被検眼は一定の距離にしか焦点を合わせられなくなる。例えば、被検眼は、遠距離には焦点を合わせられるが、近距離には焦点を合わせられなくなる。より詳細には、被検眼が遠距離を観測した際には、遠距離に配置された物体に焦点が合い、被検眼が近距離を観測した際には、近距離に配置された物体に焦点が合わない状態になる。このような、被検眼が単焦点IOLを挿入したときの見え方は、LFD2の各々の呈示領域に対して呈示距離を適切に設定することで、事前に被検眼に呈示することができる。
図5は、被検眼が単焦点IOLを挿入する場合の、LFD2の呈示領域における呈示距離の設定を説明する図である。図5(A)は、LFD2に各々の呈示距離で表示される画像の光線の状態を模式的に示す図である。図5(B)は、図5(A)の状態において、被検眼がLFD2を観測した際の見え方である。
本実施例における被検眼は、近視をともなう老視である。このため、被検眼の球面度数に対応する呈示距離(すなわち、被検眼の遠距離における焦点位置である遠点a)に画像を呈示すれば、被検眼は画像に焦点を合わせることができる。CPU51は、LFD2の第1呈示領域R1における呈示距離を、被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1(すなわち、呈示距離1m)に設定する。
また、被検眼は、調節力が低下しているため、近距離に焦点を合わせることができない。このような被検眼の近距離の焦点位置である近点bは、被検眼が老視でない場合の近点よりも遠い位置となる。そこで、例えば、被検眼が老視でない場合の近点付近(すなわち、被検眼の調節限界点である近点bよりも短い呈示距離)に画像を呈示すれば、被検眼は画像に焦点を合わせることができなくなる。CPU51は、LFDの第2呈示領域R2における呈示距離を、被検眼の近点よりも短い距離K2(例えば、呈示距離30cm)に設定する。
<画像の表示>
次いで、CPU51は、LFD2の表示面に画像を表示させる(S6)。CPU51は、被検眼に呈示する画像における呈示距離のピッチや分解能を調整することで、設定された呈示距離に画像を表示させる。例えば、本実施例において、第1呈示領域R1には、遠距離に配置された物体の画像(例えば、本実施例では、木の画像)が、被検眼から1m先の位置に表示されるように、光線が再現される。また、例えば、第2呈示領域R2には、近距離に配置された物体の画像(例えば、本実施例では、本の画像)が、被検眼から30cm先の位置に表示されるように、光線が再現される。
例えば、被検眼がこのように光線を再現したLFD2を観測すると、図5(B)のように各々の物体が見える。すなわち、被検眼が第1呈示領域R1を観測した場合には、遠距離に配置された物体(木)に焦点が合って見える。また、被検眼が第2呈示領域R2を観測した場合には、近距離に配置された物体(本)に焦点が合わないように見える。
<多焦点IOLを挿入する場合のシミュレーション>
次に、被検眼に多焦点IOLを挿入した際の見え方をシミュレートする場合について説明する。例えば、このような場合には、LFD2の呈示領域における呈示距離の各々が、同一の呈示距離に設定されてもよい。
例えば、本実施例では、検者が領域設定信号を入力することで、CPU51により、第1呈示領域R1と第4呈示領域R2の2つの呈示領域が設定される。また、例えば、本実施例では、検者が距離設定信号を入力することで、これらの呈示領域において同一の呈示距離が設定される。なお、本実施例では、被検眼に単焦点IOLを挿入する場合と同様に、被検眼に多焦点IOLを挿入する場合にも、第1呈示領域R1と第2呈示領域R2の呈示領域を設定する場合を例示するが、これに限定されない。例えば、被検眼に多焦点IOLを挿入する場合には、1つの呈示領域のみを設定し、この呈示領域に対して所定の呈示距離を設定してもよい。
本実施例において、被検眼が多焦点IOLを挿入した場合、被検眼は複数の距離に焦点を合わせられるようになる。例えば、被検眼は、遠距離にも近距離にも焦点を合わせられるようになる。より詳細には、被検眼が遠距離を観測した際には、遠距離に配置された物体に焦点が合い、被検眼が近距離を観測した際には、近距離に配置された物体に焦点が合う状態となる。このような、被検眼が多焦点IOLを挿入したときの見え方も、LFD2の各々の呈示領域に対して呈示距離を適切に設定することで、事前に被検眼に呈示することができる。
図6は、被検眼が多焦点IOLを挿入する場合の、LFD2の呈示領域における呈示距離の設定を説明する図である。図6(A)は、LFD2に同一の呈示距離で表示される画像の光線の状態を模式的に示す図である。図6(B)は、図6(A)の状態において、被検眼がLFD2を観測した際の見え方である。
被検眼は近視をともなう老視であるため、被検眼の球面度数に対応する呈示距離(すなわち、遠点a)に画像を呈示すれば、被検眼は画像に焦点を合わせることができる。CPU51は、LFD2の第1呈示領域R1における呈示距離を、被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1に設定する。また、CPU51は、LFD2の第2呈示領域R2における呈示距離を、あたかも近距離を見ているかのように画像を表示するために、被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1に設定する。
CPU51が、第1呈示領域R1と第2呈示領域R2に、遠距離に配置された物体(木)の画像、および近距離に配置された物体(本)の画像を、被検眼から1m先の位置に表示するように光線を再現することで、被検眼には図6(B)のように各々の物体が見える。すなわち、被検眼が第1呈示領域R1を観測した場合には、遠距離に配置された物体(木)に焦点が合って見える。また、被検眼が第2呈示領域R2を観測した場合には、近距離に配置された物体(本)に焦点が合って見える。
なお、多焦点IOLには、被検眼に入射する光の量によって、被検眼の見え方が変化するものがある。一例として、被検者が居る環境(例えば、明視下と暗視下)、被検眼の瞳孔径、等により、被検眼に入射する光の量が異なり、見え方が変化する。このような多焦点IOLを被検眼が挿入した際の見え方も、LFD2を用いることでシミュレートすることができる。例えば、この場合には、LFD2の1つの呈示領域において、複数の呈示距離が設定されてもよい。
例えば、本実施例では、LFD2における呈示領域が、被検眼の被検眼情報とレンズ情報に基づく領域設定信号により設定されてもよい。例えば、検者による操作部6の操作により、被検眼情報として被検眼の瞳孔径が入力されるとともに、CPU51が瞳孔径に対応する1つの呈示領域を設定する。また、本実施例では、検者が距離設定信号を入力することで、1つの呈示領域に対する複数の呈示距離(ここでは、2つの呈示距離)が設定される。
被検眼が、被検眼に入射する光の量によって見え方が異なる多焦点IOLを挿入した場合、被検眼の瞳孔径によって遠距離と近距離に分配される光量が変化し、被検眼の見え方が変化する。例えば、被検眼が暗視下にある場合、被検眼は散瞳した状態であり、IOLにおける遠距離に焦点を合わせるための領域と、近距離に焦点を合わせるための領域と、にそれぞれ光量が分配される。しかし、被検眼が明視下にある場合、被検眼は縮瞳した状態となるので、近距離に焦点を合わせるための領域が虹彩に遮られ、近距離に焦点を合わせるための領域から入射する光量が低下する。このため、被検者は明るいところで近距離が見づらくなる。なお、本実施例は一例であり、どのような条件下において、どの距離が見づらくなるかは、IOLにより様々である。そこで、本実施例では、LFD2における所定の呈示領域に対して複数の呈示距離を適切に設定することで、被検眼が、被検眼に入射する光の量によって見え方が異なる多焦点IOLを挿入したときの見え方も、事前に被検眼に呈示することができる。
図7は、被検眼が、被検眼に入射する光の量によって見え方が異なる多焦点IOLを挿入する場合の、LFD2の呈示領域における呈示距離の設定を説明する図である。図7(A)は、LFD2に複数の呈示距離で表示される画像の光線の状態を模式的に示す図である。図7(B)は、図7(A)の状態において、被検眼がLFD2を観測した際の見え方である。
例えば、被検眼が縮瞳した状態での見え方を表示するために、被検眼の光軸の中心部から出射される光を用いて、被検眼の球面度数に対応する呈示距離(すなわち、遠点a)に、近距離に配置された物体(本)を再現する。CPU51は、LFD2の1つの呈示領域Rにおいて、一方の呈示距離を、被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1に設定する。また、例えば、被検眼が散瞳した状態での見え方を表示するために、被検眼の光軸の周辺から出射される光を用いて、被検眼の球面度数に対応しない呈示距離(すなわち、近点bよりも近い距離)にも、近距離に配置された物体(本)を再現する。CPU51は、LFDの1つの呈示領域Rにおいて、他方の呈示距離を、被検眼の近点よりも短い距離K2に設定する。
CPU51が、1つの呈示領域Rに、近距離に配置された物体(木)の画像を被検眼から距離K1(1m先の位置)および距離K2(30cm先の位置)に表示するように光線を再現することで、被検眼には図7(B)のように各々の物体が見える。例えば、表示装置1が設置された環境(部屋等)の照明を調節することで、被検眼にこのような物体の見え方が呈示されてもよい。また、例えば、表示装置1がタブレット端末等である場合は、被検者が表示装置1を所持して明視下と暗視下を移動することで、被検眼にこのような物体の見え方が呈示されてもよい。
例えば、被検眼がLFD2を明るいところで観測したとき等、被検眼が縮瞳した際には、光軸の周辺部から出射された実線で示す光が虹彩に遮られ、光軸の中心部から出射された点線で示す光のみが眼底に到達する。このため、被検眼には距離K2に配置された物体が焦点の合わない状態で観測され、被検眼に明視下では近距離が見づらくなることを呈示できる。また、例えば、被検眼がLFD2を暗いところで観測したとき等、被検眼が散瞳した際には、光軸の中心部から出射された実線で示す光のみが眼底に到達する。このため、被検眼には距離K1に配置された物体が焦点の合った状態で観測され、被検眼に暗視下では近距離が見やすくなることを呈示できる。
なお、上記では、LFD2の1つの呈示領域において複数の呈示距離を設定する場合を例に挙げて、被検眼が入射する光の量によって見え方が異なる多焦点IOLを挿入したときの見え方を説明したがこれに限定されない。LFD2に複数の呈示領域を設定するとともに、各々の呈示領域に対して各々の呈示距離を設定することでも、明視下と暗視下での見え方を呈示することができる。例えば、本実施例では、LFD2に、被検眼が散瞳した状態を表現するための第1呈示領域と、被検眼が縮瞳した状態を表現するための第2呈示領域と、の2つの呈示領域を設定してもよい。また、例えば、本実施例では、第1呈示領域において呈示距離を距離K2に設定し、第2呈示領域において呈示距離を距離K1に設定してもよい。
以上説明したように、例えば、本実施例における表示装置は、ライトフィールドディスプレイを備え、被検眼に対する画像の呈示領域の数を設定するための領域設定信号を受け付ける第1信号受付手段と、呈示領域における呈示距離を設定するための距離設定信号を受け付ける第2信号受付手段と、領域設定信号に基づいて画像の呈示領域を設定する領域設定手段と、距離設定信号に基づいて画像の呈示領域における呈示距離を設定する距離設定手段と、を備えている。これにより、検者は、被検眼がレンズを使用する様々な状況に合わせた呈示領域と呈示距離を設定することができ、被検眼の見え方を適切に表示して、より現実に近いシミュレーションを行うことができる。被検者は、このような表示装置を観測することで、実際にレンズを使用した際のイメージをもちやすくなる。
また、例えば、本実施例における表示装置は、被検者に適用されるレンズのレンズ情報を取得するレンズ情報取得手段と、レンズ情報に基づいて領域設定信号を出力する第1信号出力手段と、レンズ情報に基づいて距離設定信号を出力する第2信号出力手段と、を備えている。これにより、例えば、検者は複雑な設定操作等を行わなくても、レンズ情報を入力するのみで、被検眼に呈示する画像の呈示領域と呈示距離を容易に設定することができる。
また、例えば、本実施例における表示装置は、ライトフィールドディスプレイの表示面に複数の呈示領域を設定し、距離設定手段が複数の呈示領域において各々に画像の呈示距離を設定する。これによって、ライトフィールドディスプレイ上に設定した複数の領域のそれぞれに、被検者が異なるレンズを適用した場合(一例として、単焦点レンズと累進焦点レンズを適用した場合、等)のそれぞれの見え方を表現するように呈示距離を設定することができる。また、これによって、ライトフィールドディスプレイ上に設定した複数の領域のそれぞれにおいて、分解能を適宜設定し、複数の呈示領域毎に、画像の呈示距離の間隔(ステップ)を変更することもできる。
また、例えば、本実施例における表示装置は、ライトフィールドディスプレイの表示面に設定された複数の呈示領域における画像の呈示距離を切り換える切換手段を備え、複数の呈示領域のうち、少なくとも2つの呈示領域が同一の呈示距離となるように、または、すべての呈示領域が異なる呈示距離となるように、呈示距離を切り換える。例えば、被検眼が複数の焦点をもつレンズを適用する際には、少なくとも2つの呈示領域が同一の呈示距離となるように切り換えられてもよい。また、例えば、被検眼が1つの焦点をもつレンズを適用する際には、すべての呈示領域が異なる呈示距離となるように切り換えられてもよい。これによって、被検眼がレンズを使用する様々な状況に合わせた被検眼の見え方を適切に表示することができる。
また、例えば、本実施例における表示装置は、1つの呈示領域において、複数の呈示距離を同時にまたは順次に設定する。これによって、被検眼がレンズを適用した際の被検眼の見え方を、容易に呈示することができる。例えば、被検眼が度数の異なるレンズのそれぞれを適用した際の見え方等を、画像を切り換えなくても呈示することができる。
また、例えば、本実施例における表示装置は、被検眼の被検眼情報を取得する被検眼情報取得手段を備え、距離設定手段が、レンズ情報と被検眼情報とに基づいて、画像の呈示距離を設定する。例えば、これによって、被検眼がレンズを適用した際の瞳孔径等により変化する見え方もシミュレートすることができる。
<変容例>
なお、本実施例では、LFD2が、被検眼に対する画像の呈示距離を調整して、被検眼に画像を呈示する構数の矯正量および円柱軸の方向が適切に設定されている場合、被検者は、乱視の影響が抑成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。LFD2は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向を調整して、被検眼に画像を呈示することも可能である。つまり、LFD2は、ディスプレイの表示面に平行な平面上に画像を呈示するだけでなく、円柱軸を中心に湾曲させた面上に画像を呈示することも可能である。さらに換言すると、LFD2は、円柱軸からの距離に応じてフォーカスを変化させた画像を呈示することもできる。被検眼の乱視度数および乱視軸の方向に応じて、円柱度制された状態で、呈示された画像を観測することができる。
もちろん、LFD2は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の画像を、1つの呈示領域において同時または順次に表示してもよい。また、LFD2は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の画像を、複数の呈示領域に別々または交互に表示してもよい。
なお、本実施例では、被検眼の片眼に対して、被検眼にレンズを適用した際の被検眼の見え方をシミュレートする構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。被検眼の両眼に対して、被検眼にレンズを適用した際の被検眼の見え方をシミュレートする構成としてもよい。例えば、この場合には、LFD2に表示する画像に視差を設定することで、現実により近い見え方をシミュレートしてもよい。つまり、被検眼がLFD2を両眼視した際に、LFD2に表示した画像が浮き上がる(もしくは、沈み込む)ようにして立体感をもたせることで、現実により近い見え方をシミュレートしてもよい。これについて、LFD2に1つの呈示領域Rを設定し、呈示領域Rにおいて複数の呈示距離を設定することで、被検眼に視差を形成する場合を例に挙げる。
図8は、LFD2に表示する画像に視差を設定する場合について説明する図である。図8(A)は、LFD2の1つの呈示領域Rに、各々の呈示距離で表示される画像の光線の状態を模式的に示す図である。図8(B)は、被検眼がLFD2を観測した際の見え方である。CPU51は、複数の左眼用画像と右眼用画像を各々の呈示距離に表示する。左眼用画像と右眼用画像は、所定の角度をもたない同一の画像であってもよい。また、左眼用画像と右眼用画像は、各々に所定の角度をもたせた画像であってもよい。所定の角度は、被検眼の瞳孔中心間距離、輻輳角度、等に基づいて予め決定されていてもよく、角度をもたせておくことで、より立体感を表現することができる。
例えば、被検眼の遠距離に配置された物体の左眼用画像と右眼用画像(本実施例では、木の画像)が、被検眼の球面度数に対応する呈示距離K1に、所定の角度にて表示される。これによって、被検眼から遠い呈示距離に、遠距離に配置された物体(木)の画像を浮き上がらせることができる。また、例えば、被検眼の近距離に配置された物体の左眼用画像と右眼用画像(本実施例では、本の画像)が、被検眼の球面度数に対応しない呈示距離K2に、所定の角度にて表示される。これによって、被検眼から遠い呈示距離に、近距離に配置された物体(本)の画像を浮き上がらせることができる。
被検眼がこのように光線を再現したLFD2を観測すると、図8(B)のように各々の物体が見える。すなわち、例えば、被検眼が遠距離を観測した状態で、遠距離に配置された物体(木)に焦点を合わせたとき、近距離に配置された物体(本)はぼやけて見える。
なお、図8では、LFD2における異なる画素集合単位から、遠距離に配置された物体の画像と、近距離に配置された物体の画像と、を表示するための光を出射しているがこれに限定されない。例えば、LFD2における同一の画素集合単位から、遠距離に配置された物体の画像と、近距離に配置された物体の画像と、を表示するための光を出射することによっても、LFD2に表示する画像に視差を設定することが可能である。
例えば、このように、本実施例における表示装置は、被検眼に画像を呈示したときに被検眼に両眼視差を形成させることが可能である。被検者は、呈示された物体を立体的に観測することができ、より現実に近い見え方をシミュレートすることができる。
なお、本実施例では、LFD2を用いた被検眼の見え方のシミュレーションを、被検眼がIOLを挿入する場合に適用する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、LFD2を用いたシミュレーションは、被検眼が眼鏡レンズ(例えば、単焦点レンズ、二重焦点レンズ、累進焦点レンズ、等)を装用する場合に適用されてもよい。この場合、被検眼が装用する眼鏡レンズの屈折のレイアウトに合わせて、呈示領域が設定されてもよい。一例として、被検眼が累進焦点レンズのうちの遠近両用レンズを装用する場合には、LDF2の呈示領域が、遠近両用レンズの遠用部にあたる第1呈示領域R1および第2呈示領域R2と、遠近両用レンズの近用部にあたる第3呈示領域R3および第4呈示領域R4との4つの領域に設定されてもよい。もちろん、遠近両用レンズの遠用部と近用部にあたる呈示領域に加えて、遠近両用レンズの中間部にあたる呈示領域が、遠近両用レンズの加入度数に基づいて設定されてもよい。
図9は、被検眼が遠近両用レンズを装用する場合の、LFDの呈示領域における呈示距離の設定を説明する図である。図9(A)および図9(B)は、LFD2に各々の呈示距離で表示される画像の光線の状態を模式的に示す図である。図9(C)は、図9(A)および図9(B)の状態において、被検眼がLFD2を観測した際の見え方である。なお、図9において、被検眼は近視(例えば、球面度数−1D、乱視度数0D、乱視軸0度)をともなう老視である場合を例に挙げる。
遠近両用レンズの遠用部は遠距離に焦点が合うように処方されるため、遠用部を介した場合、遠距離に配置された物体には焦点が合って観測されるが、近距離に配置された物体には焦点が合わずに観測される。また、遠近両用レンズの近用部は近距離に焦点が合うように処方されるため、近用部を介した場合、遠距離に配置された物体には焦点が合わずに観測されるが、近距離に配置された物体には焦点が合って観測される。
このため、CPU51は、第1呈示領域R1と第2呈示領域R2に、被検眼が遠近両用レンズの遠用部を介して、遠距離に配置された物体と近距離に配置された物体をそれぞれ見た状態を呈示してもよい。例えば、CPU51は、第1呈示領域R1の呈示距離を被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1(すなわち、遠点a)に設定し、遠距離に配置された物体(木)の画像を表示する。また、例えば、CPU51は、第2呈示領域R2の呈示距離を近点bよりも短い距離K2に設定し、近距離に配置された物体(本)の画像を表示する。これによって、被検眼には、図9(C)のように各々の物体が見える。つまり、被検眼が第1呈示領域R1を観測した場合には、遠距離に配置された物体に焦点が合って見える。また、被検眼が第2呈示領域R2を観測した場合には、近距離に配置された物体に焦点が合わないように見える。
また、CPU51は、第3呈示領域R3と第4呈示領域R4に、被検眼が遠近両用レンズの近用部を介して、遠距離に配置された物体と近距離に配置された物体をそれぞれ見た状態を呈示してもよい。例えば、CPU51は、第3呈示領域R3の呈示距離を遠点aよりも長い距離K3に設定し、遠距離に配置された物体(木)の画像を表示する。また、例えば、CPU51は、第4呈示領域R4の呈示距離を被検眼の球面度数−1Dに相当する距離K1(すなわち、遠点a)に設定し、近距離に配置された物体(本)の画像を表示する。これによって、被検眼には、図9(C)のように各々の物体が見える。つまり、被検眼が第3呈示領域R3を観測した場合には、遠距離に配置された物体に焦点が合わないように見える。また、被検眼が第4呈示領域R4を観測した場合には、近距離に配置された物体に焦点が合って見える。
なお、本実施例では、被検眼が老視眼(調節力が低下した状態)である場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。もちろん、被検眼が老視眼でない場合であっても、被検眼に対する画像の呈示領域、および、呈示領域における呈示距離を適切に設定することで、被検眼の見え方をシミュレートすることができる。
被検眼が老視眼でない場合には、被検眼の調節力を考慮した呈示距離に画像を呈示するようにしてもよい。これについて、被検眼の遠方度数が−1D、近方度数が−2Dであり、被検眼に遠近両用レンズを適用する場合を例に挙げて説明する。被検眼は、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に画像を呈示すれば、画像に焦点を合わせることができるようになる。このため、遠近両用レンズの遠用部にあたる呈示領域には、被検眼の遠方度数である−1Dに相当する呈示距離に画像を表示すればよい。遠近両用レンズの近用部にあたる呈示領域には、調節力を考慮する場合、被検眼の近方度数である−2D(すなわち、50cm)に相当する呈示距離に画像を表示すればよい。なお、遠近両用レンズの近用部にあたる呈示領域には、調節力を考慮しない場合、遠用部にあたる呈示領域と同一の呈示領域に画像を表示してもよい。例えば、被検眼は、このように呈示距離を調整することで、いずれの呈示領域に表示された画像にも焦点を合わせることができる。
なお、本実施例では、LFD2における1つの呈示領域に複数の画像を表示する際、LFD2の回転角度に対応させて、複数の画像を切り換えて表示する構成としてもよい。この場合、表示装置1は、LFD2の回転角度を検出するためのセンサ(例えば、ジャイロセンサ、等)を備え、センサの検出信号に基づいて、複数の画像を表示してもよい。一例として、LFD2が略垂直に配置されたときに、被検眼に対して遠距離に配置された物体の画像を表示し、LFD2が略水平に配置されたときに、被検眼に対して近距離に配置された物体の画像を表示するようにしてもよい。
なお、本実施例におけるこのようなLFD2を用いた被検眼の見え方のシミュレーションは、被検眼の光学特性を自覚的に検査する自覚式検査において行われてもよい。すなわち、各々の画素集合単位から方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するLFDを備え、被検眼の光学特性を自覚的に検査するための自覚式検眼装置であって、LFDに表示される画像の被検眼に対する呈示領域を設定するための領域設定信号を受け付ける第1受付手段と、画像の呈示領域における呈示距離を設定するための距離設定信号を受け付ける第2受付手段と、領域設定信号に基づいて、画像の呈示領域を設定する領域設定手段と、距離設定信号に基づいて、画像の呈示領域における呈示距離を設定する距離設定手段と、を備える自覚式検眼装置に採用されてもよい。
これによって、自覚式検眼装置は、LFD2に設定する呈示領域毎に、複数の画像のそれぞれを、異なる呈示距離で表示することができる。すなわち、LFD2に設定する呈示領域毎に、呈示距離の分解能を低くしたり、高くしたりすることで、複数の画像を異なる呈示距離で表示することができる。呈示距離の分解能を低くすると、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の画像を、大きなピッチで設定することができる。この場合、被検眼は画像を区別しやすくなるが、被検眼の光学特性の検査精度は粗くなる。一方、呈示距離の分解能を高くすると、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の画像を、細かなピッチで設定することができる。この場合、被検眼は画像を区別しづらくなるが、被検眼の光学特性の検査精度は細かくなる。
このため、例えば、LFD2の表示面において、呈示距離の分解能を低く設定し、被検眼の光学特性を大まかに検査するための呈示領域と、呈示距離の分解能を高く設定し、被検眼の光学特性を細かく検査するための呈示領域と、を予め設けておいてもよい。自覚式検眼装置をこのような構成とすることで、被検眼の光学特性を大まかに検査した後に、設定を切り換えて細かな検査を開始する必要がなく、より効率的に検査を行うことができる。