以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として玉葱苗を移植する移植機10を示す左側面図であり、図2は右側面図、図3は背面図、図4は正面図、図5は平面図であると共に、図6は底面図である。
なお、以下の説明では、操縦ハンドル47を配置した側を後とし、その反対側、すなわちエンジン41を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
本実施の形態の移植機10は、図1から図6に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体40と、走行車体40の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル47と、圃場に苗を植え付ける植付装置42と、植付装置42に苗を供給する苗供給装置43を備えている。
走行車体40は、機体前部にミッションケース39を設け、該ミッションケース39の前側に駆動源となるエンジン41を設ける。前記ミッションケース39の左右両側の機体後側下部には、後輪44の左右位置を変更するトレッド調節が可能な車軸を覆う車軸カバー101が各々連結され、該車軸カバー101の機体外側端部には、機体後側に設ける後輪44に駆動力を伝動する走行伝動ケース38を各々上下回動可能に装着する。
なお、左右の後輪44は、走行伝動ケース38と、後述するメインフレーム103の左右間に各々配置することで、機体の左右幅を抑える構成としている。但し、苗の植付作業を行う畝幅等の条件に対応させるべく、左右の後輪44を走行伝動ケース38の機体外側に装着できる構成としておくと、対応可能な作業条件を増やすことができる。
より正確には、左右の車軸カバー101が内部の車軸(図示省略)を支点として回転可能に装着され、これらの車軸カバー101に走行伝動ケース38を各々装着し、後述する昇降用油圧シリンダ300やローリングシリンダ310の伸縮により車軸カバー101が回転することで、走行伝動ケース38が上下回動する構成である。
前記ミッションケース39内には、前記左右の走行伝動ケース38への伝動を各々入切するサイドクラッチ201,201と、植付装置42及び苗供給装置43への伝動を入切する植付クラッチ202と、エンジン41からの駆動力の入切を切り替える主クラッチ200を備える。
該左右のサイドクラッチ201,201は、図1または図2に示す、操縦ハンドル47の後側左右両側に設けるサイドクラッチレバー47b,47bの操作により、サイドクラッチケーブル(図示省略)、またはサイドクラッチアクチュエータ201aを介して入切される構成とする。また、該植付クラッチ202は、走行車体40の車高を上下調節して植付装置42による苗の植付深さを調節する車高調節レバー123を操作して、植付作業位置に移動させると植付クラッチケーブル(図示省略)、または植付クラッチアクチュエータ202aを介して入になり、植付作業位置から離間させると切になる構成とする。
そして、前記主クラッチ200は、機体後部に設ける主クラッチレバー125の操作により、主クラッチケーブル(図示省略)、または主クラッチアクチュエータ200aを介して入切される構成とする。
なお、前記サイドクラッチケーブル、植付クラッチケーブル、及び主クラッチケーブルは、対応する各操作レバーと各クラッチの間にスプリングを装着しておき、各操作レバーの操作位置が入状態または切状態にあるときでも、条件を満たすと各操作レバーの操作に依らず、各クラッチアクチュエータの作動により各クラッチが入状態または切状態に切り替わる構成とする。
上記構成により、機体に設ける制御装置100の記録部であるストレージ100aに条件を記録しておき、後述する各センサ類の検知に合わせて各アクチュエータを作動させ、サイドクラッチ201,201、植付クラッチ202、及び主クラッチ200を自動的に入切することが可能になる。
なお、上記ストレージ100aは、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)、あるいはフラッシュメモリを用いるものとする。
移植機を用いて作業する際、作業者は苗の植付状態の確認や、苗供給装置43への苗の投入、走行車体40の進行方向の調節等、植付走行の状態に気を配る必要があり、機体前方の障害物、例えば他の作業者、水の入ったタンク、目印用のポール、あるいは壁等に接近していることに気付かないことがある。こうした障害物に接触すると、機体の構成部材が変形する等の破損が生じることや、機体の進行が妨害されて苗の植付の株間(前後間隔)が設定と異なる(狭くなる、または広くなる)ことが生じるおそれがある。
また、圃場が傾斜していると、機体も傾斜方向に傾き、圃場面の凹凸等を通過する際に機体のバランスが崩れると、傾斜方向に向かって転倒する可能性がある。機体が転倒すると、機体の破損、植付作業の中断による作業能率の低下、機体を引き起こす作業者の労力の増大に加えて、苗供給装置43や後述する予備苗枠50に積載した苗が圃場に落下する際に傷付く問題や、落下した苗を拾い集める作業に要する労力の増大といった問題が生じる。
上記の問題点を解消すべく、図1、図2、図5及び図20に示すとおり、走行車体40の機体前側、例えば作業者が機体前側から乗り降りする際に足を乗せる左右の前側搭乗ステップ113,113の下部や、左右の前輪45を支持する横フレーム16または縦フレーム17等に、走行車体40の前方の障害物の有無を検知すると共に撮影する前側撮影ユニット401を各々設ける。該前側撮影ユニット401は、画像を撮影する第1カメラ402と、該第1カメラ402が撮影した画像内の障害物と判断される対象との距離を検知する第1距離センサ403で構成する。
前記第1カメラ402が撮影した画像は、逐次前記制御装置100に送信され、ストレージ100aに記録されている条件、例えば、
「画像中における苗の色(緑)や圃場の色(茶色〜黒色)と異なる画素の数あるいは面積が一定以上になる」
「事前に記録した画像データと一致または近似する」
「所定時間内に一定以上の画素が移動している(別の作業者や、別の作業者が操作する作業機が移動している)」
等、に合致するかどうかを判断する。図21から図23に示すとおり、撮影された画像が条件に合致すると、制御装置100は前記主クラッチアクチュエータ200aを作動させ、主クラッチ200を切状態にする。このとき、突然主クラッチ200が切状態になり、走行や植付が停止すると、作業者が気付かず植付作業が中断される時間が長くなり、作業能率が低下するおそれがあるので、ブザー404aやランプ404b等の報知装置404を作動させる構成とするとよい。
但し、上記の条件が満たされても、走行車体40から十分に離れていれば、接近するまでに作業者が気付き得るので、前記第1距離センサ403が検知する走行車体40と障害物の距離が所定範囲未満となった時に、前記主クラッチアクチュエータ200a及び報知装置404を作動させるものとする。
なお、条件に合致すると同時に主クラッチアクチュエータ200aが作動すると、誤検知の際にも植付作業が停止してしまうので、所定時間(例:2〜5秒)に亘って条件が満たされると主クラッチアクチュエータ200aを作動させる制御とすると、作業能率の低下が軽減される。
また、前記報知装置404の作動は、主クラッチアクチュエータ200aの作動前に行わせ、停止することを事前に作業者に認識させる構成とすると、停止後の操作に備えることができ、作業が中断される時間が短縮される。
そして、図1、図2、図5及び図20に示すとおり、走行車体40の左右側部、例えば、作業者が乗り降りすると共に作業時の足場となる側部ステップ118の下部、予備苗枠50の苗載支柱51や載置台55、あるいは走行伝動ケース38の回動支点付近の上部等に、走行車体40の左右側方の障害物の有無を検知すると共に撮影する側方撮影ユニット405を各々設ける。該側方撮影ユニット405は、画像を撮影する第2カメラ406と、該第2カメラ406が撮影した画像内の障害物と判断される対象との距離を検知する第2距離センサ407で構成する。
前記第2カメラ406が撮影した画像は、図21から図23に示すとおり、逐次前記制御装置100に送信され、上記のとおり、条件が満たされ、且つ障害物に所定距離未満まで接近すると、主クラッチアクチュエータ200aや報知装置404を作動させるものとする。
さらに、図1、図2、図5及び図20に示すとおり、走行車体40の後部、例えば、機体後側に向かって二又に分岐して突出する操縦ハンドル47の下部に、植付装置42が植え付けた苗や後方から追従する作業者を撮影する後側撮影ユニット408を各々設ける。該後側撮影ユニット408は、画像を撮影する第3カメラ409と、該第3カメラ409が撮影した画像内の作業者との距離を検知する第3距離センサ410で構成する。
なお、後側撮影ユニット408は、作業者だけでなく、機体後方から追従すする作業機(肥料や薬剤の供給作業機や、水や苗等を積載した搬送台車など)を撮影し、距離を検知するものとしてもよい。
前記第3カメラ409が撮影した画像、及び第3距離センサ410が検知する走行車体40から作業者までの距離は、逐次前記制御装置100に送信される。図24に示すとおり、撮影した画像内の苗は、前記ストレージ100aに記録された正常と判断する基準となる画像の画素の数または面積と一致または近似するか否かを判断される。ここでいう「正常な植付」とは、平均的な上下長さの苗を、圃場面を基準として略垂直となる姿勢で植え付けることをいう。
上記の判定で、苗とみなされる画素が全く無い箇所は植付が行われていない、画素自体は検知されるものの基準となる画像に対して画素数または面積が不足している、あるいは過剰であるものは、圃場面に対して傾斜した姿勢で植え付けられた可能性が高いので、「異常」と判定される。
これに加えて、第3カメラ409は、少なくとも前後方向の2つの苗を撮影範囲に含むものとし、苗の植付位置が左右方向にどれだけずれているかを判断する。画素の位置が大幅に離れているときは、走行車体40が直進方向から外れており、崩れやすい畝端寄りに苗が植え付けられた可能性があるので、このときも「異常」と判定する。
なお、苗の植付姿勢が前後方向の傾斜であるときは、画素数または面積の過不足から判断ができるが、左右方向の傾斜であるときは、許容範囲内に収まる可能性があるので、例えば、図25に示すとおり、第3カメラ409が撮影する画像の左右中央から左右方向の所定範囲A内の画素を計測し、範囲外の画素は計測しない構成とする。
なお、前記第3カメラ409は、図5に示すとおり、植付装置42に対して一つ設けるものとし、本件であれば、左右一対設けるものとする。植付装置42を四条分備える機体においては、第3カメラ409は4つ設けられる。
さらに、作業者が電話を受ける等して、その場で立ち止まるなどして走行車体40から大幅に離れると、苗の供給作業や進路の修正などが行われず、苗の植付位置が乱れたり、苗が植え付けられないまま走行車体40が前進してしまい、走行車体40を後進させて作業を再開させる必要が生じる。これにより、余分な苗や燃料が消費され、作業コストが上昇してしまうと共に、作業に要する時間が長くなる問題が生じる。
従って、図26に示すとおり、前記第3距離センサ410が検知する走行車体40から作業者までの距離が所定値以上となり、且つ所定時間(例:10〜20秒)以内に所定値未満にならない、即ち作業者が走行車体40に追従してこないときは、作業者が離れ過ぎているという「異常」状態であると判定する。
上記の「異常」とする条件が満たされると、主クラッチアクチュエータ200aや報知装置404を作動させるものとする。
但し、作業者が追従しない状況は、例えば電話の通話が長い、急用により圃場から退出するなど、長時間続く可能性があり、エンジン41が作動したまま放置されて余分に燃料を消費すると共に、排気ガスを放出することになるおそれがある。
これを防止すべく、主クラッチアクチュエータ200aや報知装置404の作動に代えて、制御装置100は、エンジンスロットルモータ41aを作動させてエンジン41を停止させる制御を行うものとしてもよい。
あるいは、主クラッチアクチュエータ200a及び報知装置404の作動による植付走行の自動停止から、所定時間(例:5〜10分)が経過するとエンジン41を停止させる構成とすると、追従しない時間が短時間であるときにエンジン41を再始動させる必要が無く、作業能率の低下が防止される。
上記構成により、走行車体40が障害物に接近しすぎると自動的に植付走行を停止させることができるので、機体の破損や、設定と異なる植付間隔での苗の植付が行われることが防止される。
また、作業者が走行車体40から離れ過ぎた状態が続いても自動的に植付走行を停止させることができるので、苗を植え付けない、あるいは生育に適さない植え付けを行いながら走行車体40が前進し続けることを防止できるので、苗の植付精度が向上すると共に、植付作業をやり直す位置まで走行車体40を移動させる必要が無くなり、作業に要する時間と労力の軽減が図られる。
前記制御装置100には、前側撮影ユニット401、側方撮影ユニット405、及び後側撮影ユニット408の撮影した画像、及び前側撮影ユニット401または側方撮影ユニット405で検知された障害物との距離等の情報を、走行車体40の後方から追従する作業者、あるいは圃場内または圃場外の別の作業者が持つ、タブレット等の情報端末411に送信し、且つ情報端末411から発信される信号を受信する通信ユニット412を設ける。
該通信ユニット412は、情報を逐次発信する方式、あるいは所定時間ごとに発信する方式の、いずれの方式も選択可能とする。
走行車体40に追従する作業者は、例えば苗供給装置43の中央部等に情報端末411を載置し、走行車体40の進路の修正や苗供給装置43への苗の投入を行っていても、情報端末411に表示される画像から、障害物への接近や苗の植付状態の確認を容易にする。
また、別の作業者が持つ情報端末411にも同様の画像が表示されることにより、走行車体40に追従する作業者が障害物の接近や苗の植付の異常に気付かないときに指示を出させることができるので、障害物との接触が防止されると共に、異常な植え付けが行われた、あるいは苗が植え付けられなかった箇所での植え直し作業を能率よく行うことができる。
また、第3カメラ409が撮影する画像から「異常」な苗の植付が検知されたときは、情報端末411に「異常」が発生したことを示すメッセージを表示し、作業者に異常な植付の発生を確実に気付かせるものとする。
上記に加えて、第1距離センサ403、第2距離センサ407、及び第3距離センサ410は、走行車体40と圃場面の距離を検知することも可能である。走行車体40が圃場の傾斜により傾斜すると、各距離センサのうち走行車体40の低位置に位置するものは圃場面を検知範囲に含むことになる。このとき、圃場面を障害物として認識すると植付走行を停止させ、作業能率を低下させる恐れがあるので、画素の大部分が圃場と認識する色であるときは停止条件を満たさないものとする。
前記走行車体40が傾斜するとき、植付走行に支障が無い角度であれば、各距離センサが検知する距離は比較的長い距離になる。一方、正常な植え付けができない、及び走行に支障が出るほどに傾斜すると、各距離センサが検知する距離は短くなる。この距離が極端に短い(例:5〜10cm未満)、あるいは略0になったときは、機体が一側方向に転倒しているものと判断される。
このとき、走行装置である後輪44や植付装置42が作動していると、機体の破損を招くだけでなく、機体を起こす作業者の動きを妨げるので、制御装置100は、画素数または面積に障害物と判定し得るものがなくても、各距離センサのうちいずれか一つが極端に短い距離を検知したときは、主クラッチアクチュエータ200a、またはエンジンスロットルモータ41aを作動させるものとする。
これにより、転倒した機体を容易に起こして作業に復帰させることができるので、作業能率が向上する。
上記の障害物の検知、苗の植付の異常、及び走行車体40の転倒等の問題は、圃場のどこで、いつ発生したかを記録しておくと、作業者の機体操縦の改善すべき点や、圃場の整備すべき点、あるいは耕耘等の圃場造りの改善点の抽出に役立ち得る。しかしながら、苗の植付作業を行う作業者が逐一記録していると、作業能率が低下することになる。
作業能率を維持しつつ問題の発生を記録させるべく、図20、及び図27に示すとおり、前記制御装置100は、主クラッチアクチュエータ200aの作動制御、報知装置404の作動制御、またはエンジン41の停止制御を行ったとき、各カメラが直近で撮影した画像、各距離センサの検知している距離、及び内蔵された時計100bが示す時間(例:年/月/日/時/分/秒)と共にストレージ100aに記録する。
上記では、どの位置で発生したかは作業者が記録された時間を見て推察することになるが、より正確な位置を把握すべく、走行車体40にGPS受信機413を設ける、または走行車体40に積載する情報端末411に内装されるGPS受信機413で取得する位置情報もストレージ100aに記録させる。
上記のストレージ100aに記録した情報を、情報端末411等にインストールするアプリケーションを用いて作業マップ化することで、視覚的に機体操縦や圃場造りの改善に役立てることができ、次回以降、問題の発生しにくい圃場で能率的且つ精度の高い植付作業を行うことを可能にする。
機体後方を撮影する前記第3カメラ409は、作業者の少なくとも上腕部まで撮影範囲の上限に収める撮影角度のものとする。そして、図28に示すとおり、前記ストレージ100aには、作業者の腕の動作、例えば右から左への移動、上から下への移動等の画像を記録させると共に、画像ごとに実行する機体の設定変更を関連付けて記録させる。
一例として、腕を右から左に所定範囲以上に亘って振るとエンジン41の出力を増加させ、左から右に所定範囲以上に亘って振ると出力を低下させる構成が考えられる。これにより、作業者はスロットルレバー等を操作すべく移動する必要がなくなるので、苗供給装置43への苗の投入作業が行いやすく、且つ畝溝等の歩きやすい箇所から移動する必要が無く、作業能率が向上する。これに加えて、誤って植え付けられた苗を踏み付けることも防止される。
また、腕を上から下に所定範囲以上に亘って振ると左右のサイドクラッチアクチュエータ201a、または主クラッチアクチュエータ200を作動させて走行を停止させる構成としたり、腕を下から上に所定範囲以上に亘って振ると植付クラッチアクチュエータ202aを作動させて植付装置42を停止させ、走行のみを行う構成としたりすることも可能である。
なお、作業者の意図しない誤動作を防ぐべく、第3カメラ409が撮影する作業者の動作に基づく機体設定の変更は、走行車体40の操縦ハンドル47、あるいは情報端末411に設けるモーションスイッチ414を入状態にしているときのみ受け付けるものとするとよい。
走行車体40の後方に追従する作業者と、離れた位置から情報端末411を介して作業を監視する作業者とでは、苗の植付状態や走行の見え方が異なり、認識の相違により不要な作業の中断が発生し、作業能率を低下させることがある。また、走行車体40までの距離があると、外部から植付状況を把握することがそもそも困難である。
この問題を解消すべく、図20に示すとおり、追従する作業者の視点を共有すべく、追従する作業者は頭部に視点カメラ415を装着し、他の作業者はヘッドマウントディスプレイ416を装着して、該視点カメラ415で撮影した画像をヘッドマウントディスプレイ416に送信して表示させる構成とする。
これにより、複数の作業者が略同じ視点で苗の植付状態を確認できるので、異常な苗の植付の発生を見つけやすくなり、苗の植え直しを能率よく行うことが可能になる。
そして、図6から図10に示すとおり、前記左右の車軸カバー101の機体後側上部には、平面視でL字形状の連結ステー102を各々設け、該連結ステー102の機体後側に、前後方向を長手方向とするメインフレーム103の前端部を各々連結する。該左右のメインフレーム103の取付位置は、前記走行伝動ケース38よりも機体内側である。
前記左右のメインフレーム103は、図5から図8に示すとおり、機体前後方向に直線状に配置されるが、側面視において後輪44の前後中央部よりも機体後側位置と、後述する植付ホッパ20a,20bよりも機体前側位置との前後間で各々機体外側且つ機体上方、即ち、機体外側ほど上方に向かう傾斜姿勢で屈曲させる。さらに、後述する苗供給装置43の左右両外側の下方となる位置で、メインフレーム103を機体後側に向けて屈曲させる。これにより、左右のメインフレーム103の前端部側の左右幅よりも、後端部側の左右幅が広い構成となる。
そして、図3、図6から図8に示すとおり、前記左右のメインフレーム103の後端部を、作業者が機体後部に立ち、旋回走行時等に機体後部を押し下げる操作や、収納作業時等に機体の進行方向の操作を行う操縦ハンドル47を装着する、左右方向のハンドルフレーム104の左右両端部に各々連結する。
上記のとおり、左右のメインフレーム103を、左右間隔を空けて配置することにより、メインフレーム103同士の左右空間部に構成部材を配置する構成となり、メインフレーム103が部材の配置位置を分断しにくい構成となるので、設計の自由度が高くなる。
また、メインフレーム103を、後輪44の前後中央部より後側で、且つ植付ホッパ20a,20bよりも前側位置で機体外側方向で且つ上方に向けて屈曲させたことにより、メインフレーム103の屈曲部は、走行伝動ケース38が回動するときの上下移動量の大きい後部側から上方に離間すると共に、後輪44からも大きく上方に離間するので、車高の変更をメインフレーム103が妨げることが防止される。
また、メインフレーム103の機体後側への屈曲部を、苗供給装置43の左右両側の下方を通過させる構成により、苗供給装置43を構成する、投入された苗を収容して所定の落下位置まで搬送する複数の苗収容体22の移動をメインフレーム103が妨げることを防止できる。
そして、左右のメインフレーム103の前端部を、連結ステー102を介して各々車軸カバー101に連結すると共に、左右の後端部をハンドルフレーム104に連結することにより、移植機のフレーム構造を四角形の枠状に構成できるので、機体強度の向上が図られる。
図7及び図8に示すとおり、前記左右のメインフレーム103のうち、機体左右両外側で且つ上方への屈曲部よりも機体前側には、後上がり傾斜姿勢となる取付支持プレート105を各々設け、該取付支持プレート105の左右間には、前後方向に所定間隔を空けて梁フレーム106f,106rを各々装着する。該前後の梁フレーム106f,106rのうち、機体後側に位置する後側梁フレーム106rは、前側梁フレーム106fよりも機体上方に配置される。
前記前後の梁フレーム106f,106rの左右中央部、即ち機体の左右中央と左右のメインフレーム103の左右方向の中間位置付近には、作業者が前記苗収容具22に投入した苗を所定位置まで搬送し、左右の植付ホッパ20a,20bに各々供給する苗供給装置43を下方から支持する供給支持フレーム107を各々設ける。
そして、該左右の供給支持フレーム107の下部には、前記ミッションケース39から駆動力を受け、前記苗供給装置43や、左右の植付ホッパ20a,20bの上下動機構21に伝動する伝動ケース26を設け、左右の供給支持フレーム107の下端部を、該伝動ケース26の機体上側の側面と、前記前後の梁フレーム106f,106rに取り付ける。
なお、前記左右の供給支持フレーム107は、側面視でL字形状の板体であり、且つ、上下方向を長手方向とする機体後部側を、機体内側に向かって折り曲げる構成としている。
上記の構成により、伝動系を内装すべく強固な造りとなっている伝動ケース26を、左右の供給支持フレーム107の支持部材として用いることができるので、苗供給装置43の荷重を受けて変形し、苗供給装置43が傾くなどして苗が供給できなくなることが防止される。
また、前記ミッションケース39の機体前側で且つ左右両側には、正面断面視でコの字形状のバンパー支持フレーム108を機体前側に突出させて設ける。そして、該左右のバンパー支持フレーム108の前方には、機体前側に突出するバンパー109を設ける。
なお、図11から図13に示すとおり、バンパー109は、板体の機体前側と左右両側を下方に折り曲げたバンパープレート109aと、該バンパープレート109aの上面に着脱可能なフロントウエイト109bと、バンパープレート109aから左右方向に延びるバンパーロッド109cで構成している。該フロントウエイト109bは、鉄等の比較的重量があり且つ硬度の高い素材の塊で構成し、バンパープレート109aよりも機体前側に突出する形状とする。
これにより、重量と硬度を有する塊であるフロントウエイト109bが最も機体前方に突出するので、障害物に接触したときにバンパープレート109aまで損傷が及ぶことを防止できる。
前記左右のバンパー支持フレーム108の機体前側で、且つ機体下部側には機体下側が開口部となる凹部(図示省略)を形成し、これらの凹部に、機体左右方向を長手方向とする前部梁フレーム110を差し込んで固定する。
該前部梁フレーム110を設けることにより、左右のバンパー支持フレーム108とミッションケース39とで機体前側にも四角形にフレームが組み上げられるので、機体前側の強度が向上する。特に、バンパー109が障害物に接触した際、前部梁フレーム110に左右のバンパー支持フレーム108を差し込んで固定しているので、左右のバンパー支持フレーム108の後部側に破損や衝撃が伝播しにくくなる。
また、ミッションケース39を機体に組み付ける際、左右のバンパー支持フレーム108の凹部を前部梁フレーム110に差し込んでから左右方向に移動させることにより、ミッションケース39の前後位置を固定したうえで左右位置を調節できるので、ミッションケース39の取付位置のずれにより組立作業が滞ることが防止される。
なお、図7及び図8に示すとおり、前記ミッションケース39の前側で且つ左右一側に前記エンジン41の後部を積載し、エンジン41の前部は、前部梁フレーム110の左右中央部付近に配置するエンジンマウントに積載する構成とするが、エンジン41が配置される側のバンパー支持フレーム108とエンジン41は、上下方向に間隔を空けて配置する構成とする。即ち、バンパー支持フレーム108は、エンジン41を下方から受ける部材ではない。
上記構成により、バンパー109が障害物に接触したときの衝撃が、バンパー支持フレーム108からエンジン41に伝播することを防止できるので、エンジン41が破損することや、衝撃により作動不良を起こすことを防止できる。
また、バンパー支持フレーム108が衝撃で変形しても、エンジン41の積載状態に影響を及ぼしにくい構成となり、バンパー109が破損してもエンジン41の動力で作業や移動を行うことができる。
そして、図11から図13に示すとおり、前記バンパープレート109aの左右両側には、バンパーロッド109cを装着する左右方向の凹部を有するステップ支持プレート111を各々装着する。該左右のステップ支持プレート111は、前記前部梁フレーム110の機体後側で且つ左右両側に各々設ける補強アーム112を介して支持する構成とする。該左右のステップ支持プレート111の上面は平坦であり、ここに作業者が機体前側から乗り降りする際に足を乗せる前側搭乗ステップ113を装着する。
なお、該左右の前側搭乗ステップ113は、台形状の枠内に複数の板体を配置し、大小の空間部を形成する構成であり、作業者が足を乗せる際に靴底に付着している土を下方に落下させるものである。板体の上面には凹凸を形成すると、靴底の溝に凸部が接しやすくなり、土落とし効果が向上する。
これにより、機体上に土が持ち込まれにくくなるので、土の除去作業に要する労力の軽減が図られる。
上記のとおり、前側搭乗ステップ113は複数の空間部が形成されているので、障害物との接触時に変形が生じやすい構造であるが、バンパー109よりも機体後側に位置していることにより、バンパー109が先に障害物に接触しやすい。これにより、前側搭乗ステップ113の破損が防止される。
前記エンジン41及びミッションケース39の左右両側は、作業者が走行車体40の前側から乗降する際に通過する必要があるので、足場となるステップを設ける必要がある。しかしながら、ミッションケース39はエンジン41よりも機体下側に配置されていることにより、左右共通のステップにすると、一方のステップがミッションケース39と干渉して取り付けられない。
従って、エンジン41が偏倚して設けられる側の前側ステップ114Rは平板上とし、エンジン41と左右一側のバンパー支持フレーム108の上下間に入り込ませて配置する。一方、エンジン41とは反対側に設ける前側ステップ114Lには、ミッションケース39を露出させる切欠部114Laを形成し、左右他側のバンパー支持フレーム108上を覆わせる。
上記により、左右の前側ステップ114L,114Rを装着できるので、作業者は乗り降りがしやすい側で乗り降りができるので、作業能率が向上する。
また、エンジン41が偏倚する側には切欠部114Laを形成しないので、足場を広く確保できると共に、右側の前側114Rの強度の向上が図られる。
なお、前記左右の前側ステップ114L,114Rは、各々一枚の板体を折り曲げ、左右の前側搭乗ステップ113の後部に左右の前側搭乗ステップ113と略水平姿勢となる下部ステップ115と、下部ステップ115を後上方に折り曲げた立上傾斜ステップ116と、立上傾斜ステップ116を折り曲げて下部ステップ115と平行な姿勢とした上部ステップ117を各々有する。なお、立上傾斜ステップ116と上部ステップ117には、各々切欠きを形成すると、ミッションケース39やその周辺のメンテナンス作業時に手や工具を移動させる空間が広がり、作業能率が向上する。
そして、前記左右の上部ステップ117と、前記左右のメインフレーム103の後上方屈曲部よりも機体前側には、機体側方から作業者が乗り降りすると共に、作業時の足場となる側部ステップ118を各々設ける。該側部ステップ118は、枠内に縦横に板体を配置して複数の空間部を形成しており、作業者の靴底に付着した土を下方に落下させる構成とする。
前記左右の側部ステップ118の左右間には、搭乗する作業者の足場となる中央ステップ119を着脱可能に設ける。該中央ステップ119の下方で、且つ左右のメインフレーム103の左右間には、図8及び図10に示すとおり、前後の補強梁フレーム120f,120rを前後間隔を空けて設ける。該前後の補強梁フレーム120f,120rを固定するボルトは、中央ステップ119の下面に接触しない、あるいは中央ステップ119の上面から露出しない長さとし、左右のメインフレーム103の左右間に設ける補強フレーム121に各々装着する構成とすると、中央ステップ119上における作業者の足の動きをボルトが邪魔することがなく、作業能率が向上する。
以上により、フロアステップ122が構成される。
左右の前側ステップ114L,114R、左右の側部ステップ118、及び中央ステップ119の取付は、各々独立して行う、即ち、一つの取付部材(ボルト等)で共締めしないものとする。これにより、部分的なメンテナンス作業時に各ステップ構成体を取り外す際、別のステップ構成体を取り外す必要が無く、メンテナンス作業の能率が向上する。
また、前後の補強梁フレーム120f,120rを前後間隔を空けて配置することにより、後述する昇降用油圧シリンダ300や、圃場面の左右傾斜に合わせて植付姿勢を水平にするローリング機構の油圧天秤303のメンテナンス作業を走行車体40上から行いやすくなるので、作業能率が向上する。
また、走行車体40の機体前側の左右両側で、且つ後輪44よりも機体前側には、前部梁フレーム110の下部側に設けられて機体左右方向に突出する横フレーム16を介して、転動自在に支持した前輪45を設ける。
そして、前記走行伝動ケース38の前部の回動軸心位置には、ミッションケース39から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース39内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が走行伝動ケース38内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は走行伝動ケース38内の伝動機構を介して、走行用伝動ケース38の後輪車軸12に伝動し、後輪44が駆動回転する構成としている。
なお、前記ミッションケース39内に設けた左右それぞれのサイドクラッチ201,201により、左右の各後輪44の駆動を断つことが出来る構成になっている。従って、機体を旋回させるときには、サイドクラッチ201,201により旋回内側となる左右一方の後輪44を非駆動状態にしてスムーズに旋回できる構成としている。
また、前記走行伝動ケース38には、走行伝動ケース38の前部側を回動支点として後輪44を上下させる、上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、走行伝動ケース38のミッションケース39への取付部には、上方に延びるアーム13が一体的に取り付けられており、アーム13がミッションケース39に固定された昇降用油圧シリンダ300のピストンロッド先端に取り付けた連結体の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、連結ロッドで連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に対応して伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダで連結している。
昇降用油圧シリンダ300が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右のアーム13は後方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ300のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右のアーム13は前方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が上方に回動して、機体が下降する。
この昇降用油圧シリンダ300は、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動に伴って動作する畝面センサ14によって作動する。畝面センサ14の動作は機体の位置を基準とした畝上面高さを検出する動作となり、その畝面センサ14の検出動作に基づいて機体を畝上面高さに対応して設定高さになる構成で昇降用油圧シリンダ300が作動する構成としている。
また、左右水平制御用油圧シリンダが伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダと連結する左側のアーム13が回動して、左側の後輪44のみを上下動させ、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダは、左右水平を基準として機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて作動して、機体を左右水平にする構成としている。
上記の昇降用油圧シリンダ300は、前記畝面センサ14による検知、または機体後部に設ける前記車高調節レバー123の操作によって伸縮し、車高を変化させるものである。
図1、図2及び図5に示すとおり、前記横フレーム16は、前部梁フレーム110に前後方向の軸中心にローリング回動可能に装着されており、該横フレーム16の左右両側部には、上下に長い縦フレーム17を装着する。そして、左右の前輪45は、縦フレーム17の下端部側方に固着した前輪車軸18に回転自在に取り付けられている。従って、左右の前輪45は、機体の左右中央の前後方向の軸心回りにローリング動自在となっている。また、横フレーム16の左右両側部を基準として、縦フレーム17が上下調節可能に設けられており、前輪45の高さ調節をすることが出来る構成としている。
前記操縦ハンドル47は、機体後部に設けられており、後輪44の後輪車軸12より機体後側に位置している。具体的には、ミッションケース39に前端部を固定した機体フレーム19の後端部に取り付けられている。
機体フレーム19は、機体の左右中央で後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。
操縦ハンドル47は、機体フレーム19の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル47のグリップ部としている。
なお、図2では、グリップ部を左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル47の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
植付装置42は、先端が下方に向かう嘴状の複数の植付具と、植付具の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに植付具を上下動させる上下動機構21と、嘴状の植付具の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と植付具の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能とする開状態とに植付具を開閉する開閉機構とを備える。
図1から図6に示すとおり、本実施の形態の植付装置42は、第1植付ホッパ20aと第2植付ホッパ20bを左右に並べて配備した、二条植の構成としている。これらの第1植付ホッパ20a及び第2植付ホッパ20bは、ミッションケース39から伝動される伝動ケース26の左右両側部に設けられた上下動機構21に各々装着されている。
上下動機構21は、上下一対のリンクアーム21a,21bで構成されており、該上下のリンクアーム21a,21bは、前端部側を伝動ケース26に上下回動可能に各々装着すると共に、後端部側を左右のリンクホルダ210,210の左右間に上下回動可能に各々装着する。上側リンクアーム21aの前端部は、伝動ケース26に回転可能に装着する非円形カム211の回転軸から外周縁部側に離間する位置に設け、上下動機構21により上下動される植付ホッパ20a,20bを前から後に揺動させる構成とする。
なお、伝動ケース26は、機体フレーム19に下部を固定した取付部材の上部に固着されている。また、植付ホッパ20a,20b及び上下動機構21の後端部側は、側面視で左右の後輪44,44の後端部よりも機体後側に位置しており、各々の機体外側方は他の部材の無い空間部となっている。
特に、上側リンクアーム21aの前端部を非円形カム211に装着する位置は、植付ホッパ20a,20bの静軌跡において、苗を受け取ってから下死点に向かうまでの間に植付ホッパ20a,20bを後傾姿勢から圃場面に対して略垂直な姿勢に変化すると共に、下死点から上昇し始めると垂直な姿勢から前傾姿勢に変化する位置とする。
これにより、植付ホッパ20a,20bの動軌跡において、苗を植え付けるべく土中に進入する時間、及び距離を短くできるので、植付ホッパ20a,20bが圃場に形成する植付孔の大きさを小さく抑えられるので、苗が倒れて植付姿勢が乱れることが防止される。
また、植付ホッパ20a,20bが上死点付近で大きく前傾した姿勢になるので、作業者が投入する苗を所定位置まで搬送して落下供給する苗供給装置43の落下供給位置に植付ホッパ20a,20bの上端部を近付けることができるので、苗が植付ホッパ20a,20b内に供給されず、欠株が発生することが防止される。
そして、苗が落下供給されるときの植付ホッパ20a,20bが傾斜姿勢であることにより、植付ホッパ20a,20b内に入り込んだ苗を上部側から下部側に向かって滑らせて移動させることができるので、植付ホッパ20a,20b内に苗が留まり、植付ホッパ20a,20bが土中に入り込んでも苗が植え付けられず、欠株が発生することが防止される。
なお、前記非円形カム211と上側リンクアーム21aの間には、複数の円弧上の調節長孔212a…を形成した調節プレート212を配置し、調節長孔212a…にボルト等の固定部材を差し込む位置を変更することで、作業者が意図する植付ホッパ20a,20bの前後傾斜角度に調節可能な構成とする。
これにより、苗の長さや植付深さ等の作業条件に合わせて植付ホッパ20a,20bの前後傾斜角度を適切に調節できるので、苗が生育に適した姿勢や植付深さで植え付けられ、苗の生育が良好になる。
前記上下動機構21の昇降駆動力は、前記非円形カム211の回転軸よりも機体後側に設ける昇降駆動軸213から伝動される。該昇降駆動軸213には、不等円形状の昇降カム214を装着し、該昇降カム214と上側リンクアーム21aの左右間に、上側リンクアーム21aを上下回動させる昇降クランク215を設ける。なお、下側リンクアーム21bは、上側リンクアーム21aの上下回動に連動して上下回動するものであり、上下動機構21を平行リンクとするものである。
前記昇降クランク215は、一端を昇降カム214から機体外側に向かう回動軸に装着し、他端を上側リンクアーム21aの機体内側に設ける連結プレート216に装着し、植付ホッパ20a,20bの軌跡を苗の植付、及び苗供給装置43からの苗の受け取りに適したものとする。
なお、連結プレート216は上側リンクアーム21aから機体下方に向かって突出させ、下端部を下側リンクアーム21bの上端部乃至上端部よりも僅かに上方に位置させて配置し、連結プレート216の下端部付近に昇降クランク215の他端部を装着する。
上記構成により、昇降クランク215を機体下方寄りに配置できるので、重心が機体下部寄りとなることで、機体が部材の重量等により前後に傾斜しにくくなり、苗の植付深さや植付姿勢が安定する。
また、昇降クランク215の他端部を連結プレート216に装着することにより、上側リンクアーム21aが昇降クランク215から直接負荷を受けない構成となるので、上側リンクアーム21aの耐久性の向上が図られる。
上記のとおり、昇降動作により掛かる負荷が小さいので、上下のリンクアーム21a,21bは、内部が中空の角パイプで構成するとよい。上下のリンクアーム21a,21bが軽量であると、昇降クランク215や昇降カム214を通じて伝動ケース26に伝わる負荷が小さくなるので、伝動ケース26の耐久性も向上する。
また、重量によって上昇速度が遅くなり過ぎることや、下降速度が速くなり過ぎることがなく、植付ホッパ20a,20bの昇降軌跡が安定し、苗の植付姿勢や植付深さが安定し、生育が良好になる。
さらに、伝動ケース26と上下動機構21の左右間に昇降カム214、昇降クランク215及び連結プレート216を配置したことにより、上下のリンクアーム21a,21bが上下回動時に干渉しない構成となるので、上下のリンクアーム21a,21bを両方とも直線状にでき、構成の簡素化や強度の維持が可能になる。
なお、植付ホッパ20a,20bの昇降及び前後傾動を苗の植付により適したものとすべく、上側リンクアーム21aと下側リンクアーム21bの前後長さは異なるものとする。本件では、上側リンクアーム21aが下側リンクアーム21bよりも短く構成している。
上下のリンクアーム21a,21bの後端部は、上記のとおり左右のリンクホルダ210,210の左右間に、上下間隔を空けて装着するが、このとき、上側リンクアーム21aの装着位置を下側リンクアーム21bの装着位置よりも機体前側に位置させる。
これにより、植付ホッパ20a,20bが上死点付近に上昇したときは、上下のリンクアーム21a,21bの後端部側の支点間距離が長くなり、植付ホッパ20a,20bの前後揺動量を小さく抑えられるので、苗供給装置43の落下供給位置付近で植付ホッパ20a,20b上側の前後位置量が変化しにくく、苗を受け取り損なうことが減少する。
また、植付ホッパ20a,20bが下死点付近に上昇したときは、上下のリンクアーム21a,21bの後端部側の支点間距離が短くなり、植付ホッパ20a,20bの前後揺動量が大きくなるので、植付ホッパ20a,20bを後傾姿勢から前傾姿勢に変更させることができ、植付ホッパ20a,20bが苗に接触して倒したり傷付けたりすることが防止される。
前記下側リンクアーム21bの前端部には、植付ホッパ20a,20bを昇降位置に合わせて開閉させる開閉機構を作動させる開閉ワイヤ220を上端部側に装着した、開閉アーム218を前後回動可能に装着する。該開閉アーム218の上部後側には、前記非円形カム211の径が一定以上である部分が通過する際に接触する接触ローラ219を設ける。
非円形カム211が接触すると開閉アーム218が前方回動して開閉ワイヤ220を引くことで、植付ホッパ20a,20bが閉じていき、非円形カム211が接触しなくなると開閉アーム218が後方回動して開閉ワイヤ220が緩むことで、植付ホッパ20a,20bが開いていく構成である。
なお、植付ホッパ20a,20bが開くのは、下降途中から苗を植え付けて上昇し始める間であり、閉じるのは、苗を植え付けて上昇し始めてから苗を受けて再び下降する間であり、非円形カム211の形状は対応するものである。
前記左右のホッパホルダ210,210の後部側には、機体後側に開口するコの字形状に切欠部221を各々形成する。該切欠部221の上部及び下部には、ホッパホルダ210の構成体が機体後方に突出するものとする。
そして、前記左右のホッパホルダ210,210の後部には、図15から図19に示す、側面視で機体前側が開口するコの字形状の条間調節プレート222を設ける。該条間調節プレート222の上下の前方突出部222aには、左右方向の切溝222b…を、左右のホッパホルダ210,210の左右間隔と略同じ左右間隔を空けて各々形成し、該切溝222b…各々ホッパホルダ210,210に差し込んで装着する。このとき、切欠部221と条間調節プレート222の前後間には、側面視で四角形の調整空間部223が形成される。
前記条間調節プレート222は、左右中央部が上下動機構21を構成する上下のリンクアーム21a,21bの後方に位置し、左右方向に略同じ長さに突出しており、機体後部に位置する上下の壁面には、左右方向に亘って条間調節長孔224を形成している。
該条間調節プレート222の後部には、植付ホッパ20a,20bを機体後側に支持するホッパホルダ225を設ける。該ホッパホルダ225は、上部側を機体前側にL字状に折り曲げて接続部225aを形成すると共に、左右両側には、機体後側に突出して植付ホッパ20a,20bとボルト等の締結部材209を介して連結する連結部225b,225bを形成する。また、接続部225aの下方で且つ連結部225b,225bよりも上側の上下方向の壁面には、ボルト等の締結部材209の取付孔(図示省略)が一または左右方向に複数形成されている。なお、ホッパホルダ225は、側面視でL字状の接続部225aを条間調節プレート222の上側と後部側に沿わせ、条間調節長孔224と取付孔が同じ上下高さに位置する状態で装着する。これにより、締結部材209を外す、または緩めると、ホッパホルダ225を条間調節プレート222に沿って左右方向に摺動可能になる構成である。
左右の植付ホッパ20a,20bの左右の植付間隔、即ち条間を調節するときは、上記のとおり締結部材209を外すかあるいは緩め、ホッパホルダ225を条間調節プレート222の左右幅内の任意の位置に移動させ、締結部材209を取り付けるかあるいは締めることで決定される。
なお、締結部材209は、ホッパホルダ225の取付孔を介して差し込んでおき、調整空間部223側に設けるナットにねじ込む、あるいは抜き出すことで位置固定状態と条間調節状態に切替可能な構成とする。
上記の構成では、条間調節長孔224内に締結部材209が入り込んでいることにより、締結部材209がストッパとなりホッパホルダ225が条間調節プレート222の左右端部から脱落することを防止できる。
左右の植付ホッパ20a,20bを備える、本件の条間調節構成では、左右の条間調節プレート222,222の左右間隔を大きく確保できることにより、左右の植付ホッパ20a,20bの条間が最も狭くなるとき、即ち各ホッパホルダ225,225を各条間調節プレート222,222の機体内側端部まで移動させたときでも、左右の植付ホッパ20a,20b同士が干渉し合わない配置となる。これにより、条間をより狭く設定できるので、従来よりも多様な作業条件に対応できる。
また、条間調節プレート222を上下動機構21の後部に設けたことにより、条間調節プレート222が植付ホッパ20a,20bの左右移動を妨げることを防止できるので、条間調節プレート222の左右幅に亘ってより広い範囲で条間を設定することができ、さらに多様な作業条件に対応できる。
また、リンクホルダ210,210の前後間と条間調節プレート222の開口部の間に調整空間部223が形成されることにより、作業者は左右の後輪44,44の後側で且つ機体外側の空間部でナットを締めたり緩めたりする作業を行うことができるので、条間調節作業を能率よく行うことができる。
なお、ナットの厚みは調整空間部223の前後幅の半分以下とすると、条間調節プレート222の左右中央部、即ち上下のリンクアーム21a,21bの後方にナット着脱用の工具を入り込ませる作業空間が確保されるので、条間調節プレート222の左右幅内で植付ホッパ20a,20bを固定できない位置が発生せず、必要な条間設定が可能になる。
上記の条間調節機構では、左右の植付ホッパ20a,20bは基本的に左右対称の方向に移動させる。例えば、条間を70cmとするときは、左右の植付ホッパ20a,20bを条間調節プレート222,222の左右外側端部に各々移動させ、条間を30cmとするときは、左右の植付ホッパ20a,20bを条間調節プレート222,222の左右内側端部に各々移動させる。その他の条間は、条間調節プレート222,222の左右幅内の任意の位置に移動させて設定するが、条間を何cmに設定しているかを作業者が視覚的にわかりやすくすべき、条間調節プレート222,222にインジケータを設けるとよい。このインジケータは、シールを印刷したものを貼り付ける、条間調節プレート222に書き込む、または彫り込むものとする。
しかしながら、作物の種類や圃場環境によっては、幅広い畝に二条よりも多い条、例えば四条を植え付けることもあり得る。一つの畝を一往復して四条植え付ける場合、植付位置を畝の進行方向における左右一側にオフセットさせるべく、左右の植付ホッパ20a,20bを共に条間調節プレート222,222の左右一側に寄せても苗の植付を行うことが可能である。これにより、さらにさらに多様な作業条件に対応できる。
前記植付ホッパ20a,20bは、ホッパホルダ225の上方にホッパカバー226を機体後側向きに向けて被せ、機体後側で且つ左右両側の上面を切り欠いて開放空間部を形成する。そして、前記ホッパホルダ225の後部側の壁面とホッパカバー226の後部側の壁面の前後間に左右の回動支軸227,227を各々設け、該回動支軸227,227には各々回動アーム228,228を回動可能に装着する。該左右の回動アーム228,228は、大部分が開放空間部から上方に突出させる。
該左右の回動支軸227,227は、リンクホルダ210,210の切欠き部221や、条間調節プレート222よりも機体下側に配置する。
これにより、ホッパホルダ225側の回動支軸227,227を条間調節プレート222の下部側で、且つリンクホルダ210,210と前後間隔を大きく開けることなく配置できるので、植付ホッパ20a,20bの前後位置が後ろに寄り過ぎず、コンパクトな構成とすることができる。
なお、該回動アーム228,228のうち、機体外側に開閉ワイヤ220のケーブルアウターを装着し、機体内側にケーブルインナーを接続して、開閉ワイヤ220の引っ張りと弛みにより左右の回動アーム228,228が回動する構成とする。
また、前記左右の回動支軸227,227には、左右一対のホッパステー229,229を下部側に装着する、コの字形状の開閉アーム230,230を左右回動可能に各々装着する。該開閉アーム230,230は、ホッパステー229,229の前後及び側面の上方を覆う形状であり、図18に示すとおり、前後面の上部側には、左右方向の凹凸が上下方向に交互に噛み合うギア部230a,230aが各々形成されている。このギア部230a,230aの噛み合いにより、開閉アーム230,230の開閉時の回動量を同調させる構成であり、植付ホッパ20a,20bから苗を偏りなく開放可能な開度となる構成とする。
また、開閉アーム230,230の前後面の機体下部側には、左右各々に支持ピン232,232を設け、該左右の支持ピン232,232に、左右の開閉アーム230,230を互いに近接し合う方向に付勢するスプリング233を前後に各々配置する。
また、前記ホッパステー229,229は、前後の上方に折り曲げた部分を開閉アーム230,230の前後部と連結し、前後方向の底部の各機体内側部には、左右一対のホッパ構成体231,231を装着する半円形状の切欠部(図示省略)を形成している。該左右のホッパ構成体231,231は、開くときには下端部側ほど左右方向に大きく開くと共に、閉じたときは上下に亘って端面同士が略均等に接する構成とする。また、ホッパ構成体231,231の下端部付近は板状に形成し、土中に進入するときの抵抗を軽減する形状とする。
さらに、前記ホッパカバー226に、左右のホッパ構成体231,231の最上部と略同径、乃至僅かに小径の開口部(図示省略)を形成し、この開口部に、苗供給装置43から供給される苗を入り込ませて左右のホッパ構成体231,231の内部に案内する苗ガイド234を差し込んで装着する。なお、前記左右のホッパ構成体231,231の上端部付近の径は、上端部付近から下側の径よりも大径とする。
該苗ガイド234のうち、ホッパカバー226よりも下側は略同径とし、ホッパカバー226よりも上側は、機体上側ほど大径に構成し、側面視及び背面視でテーパ形状とする。
苗ガイド234の上部側がテーパ形状であることにより、上端側の径が最大になるので、苗が落下供給される位置が多少ずれても苗を受け止めることができ、植付ホッパ20a,20bが苗を植え付け損なうことが防止される。
また、苗ガイド234の下部側の径を、ホッパ構成体231,231の上端部の径と略同径、乃至僅かに小径としたことにより、苗ガイド234とホッパ構成体231,231の間に隙間が生じないので、苗を確実に引き継がせることができ、確実に苗を植え付けられる。
各苗収容体22は、上下に開口する筒状体と、その筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋とを有し、互いにループ状に連結している。
移動機構23は、連結した各苗収容体22が左右の植付ホッパ20a,20bの上方近傍を通過する状態で、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で、連結した苗収容体22を左回りに周回動させる。
苗落下機構は、苗収容体22の底蓋を、その苗収容体22に対応する、植付ホッパ20a,20bの上方位置で開放する。
本実施の形態では、苗収容体22の外周に円筒外周部を形成し、その円筒外周部に外側から回動自在に接続する係合部(丸孔)を設けて、2つの苗収容体22を連結する連結体を複数形成した。そして、その連結体の係合部を苗収容体22の円筒外周部に回動自在に接続し、その円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体22が回動自在に連結する状態として、複数の苗収容体22を互いに連結した構成としている。すなわち、苗収容体22と連結体とで無端チェーンの如く連結した構成である。
これにより、苗収容体22は、直線的に移動する直線状部分28でも円弧状に移動する円弧状部分29でも隣接する苗収容体22との間隔が変わらないので、苗収容体22から左右の植付ホッパ20a,20bに苗を供給する個所で、苗収容体22の左右の植付ホッパ20a,20bを基準とした位置ズレが生じ難くなり、苗供給が適正に行われて適確な苗の植え付けが出来る。
苗供給装置43の移動機構23は、無端チェーンの如く互いに連結する苗収容体22を、左右に設けたスプロケットの外周の円弧状切欠部に巻き掛け、この左右のスプロケットを伝動ケース26内から取り出した動力で駆動回転することにより、各苗収容体22を周回動させる構成としている。
苗収容体22が周回する周回移動経路は、平面視で左右方向に延びる直線状部分28と、スプロケットにより直線状部分28から前側または後側に円弧状に曲がる円弧状部分29とを備えた長円状であり、左右の後輪44より機体内側に配置されている。
また、左右の植付ホッパ20a,20bは、後輪車軸12の位置よりも後側に配置している。
苗供給装置43は、左右の植付ホッパ20a,20bに合わせて苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
植付ホッパ20a,20bは、それぞれ第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bで、苗収容体22から苗が落下供給される。
そして、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して落下供給する苗を収容する苗収容体22を各別に設けており、苗収容体22が対応する左右の植付ホッパ20a,20bの上方にきたときのみ底蓋が開き、対応しない左右の植付ホッパ20a,20bの上方では底蓋が開かない構成としている。
すなわち、植付ホッパ20aに対応する苗収容体22は第1落下供給位置31aにきたときのみ、植付ホッパ20bに対応する苗収容体22は第2落下供給位置31bにきたときのみ、それぞれの底蓋が開いて対応する植付ホッパ20a,20bに苗が供給される構成となっている。
なお、第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bは、左右の植付ホッパ20a,20bの条間を調節した際、対応する位置に移動可能な構成とする。
移動機構23の作動周期は、上下動機構21の作動周期に同期する設定にされており、左右の植付ホッパ20a,20bに対応する苗収容体22を合わせて1つの苗収容体ユニットとして、その苗収容体ユニットを複数連結した構成とすることにより、苗収容体22が左右の落下供給位置31a、31bを直列的に通過しながら、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗供給漏れが生じることなく苗を供給でき、且つ左右の落下供給位置31a、31bを通過した後に苗が供給されなかった苗収容体22が生じなくすべく、余すことなく左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗を供給出来る構成としている。
本実施の形態の移植機10は、左右の植付ホッパ20a,20bが植え付けた苗に合わせて覆土鎮圧することに利用される覆土鎮圧輪37を左右の植付ホッパ20a,20bの苗植え付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。該左右の覆土鎮圧輪37は、別個に上下回動可能な支持アームに各々装着する。
上記左右の植付ホッパ20a,20bは、苗の植付作業条件に合わせて左右位置を調節し、条間を変更することが可能であるが、設定条間に合わせて前記畝面センサ14の接地位置を変更しないと、検知精度が低下するおそれがある。
前記走行車体40は、昇降用油圧シリンダ300により左右の走行伝動ケース38を上下回動させて植付深さを変更する構成であることは上述しているが、左右の植付ホッパ20a,20bの植付深さを各々できる限り適切にすべく、左右の走行伝動ケース38のうち、左右一方、本件では機体左側の走行伝動ケース38を別個に上下回動させる、ローリング制御も組み込まれている。
具体的には、前記左側の走行伝動ケース38と、油圧天秤303の機体左側端部の間にローリングシリンダ310を配置し、前記左右の覆土鎮圧輪37の上下回動量の差に合わせて、ローリングシリンダ310を伸長または収縮する構成である。
上記のローリングシリンダ310を機体左側に寄せて設けているので、畝面センサ14は、機体右側の植付ホッパ20bの前方を検知すると、機体の左右バランスが取りやすい。
従って、前記畝面センサ14は、図6及び図8に示すとおり、左右のメインフレーム103よりも下方に設ける底部梁フレーム133に設ける調節基部プレート14aと、該調節基部プレート14aに左右方向に取付位置を調節自在に設ける接地プレート14bで構成する。
該調節基部プレート14aの機体後部側には、左右方向の調節長孔14cが形成されており、接地プレート14bを該調節長孔14cに沿って左右方向の位置を決め、ボルト等の固定部材で固定することにより、畝面センサ14の検知位置が設定される構成である。
上記構成により、左右の植付ホッパ20a,20bの条間設定に合わせて畝面センサ14の検知位置を適切な位置に調節できるので、設定条間に合わせた植付深さの自動制御がより適切に行われ、苗の植付精度が向上する。
本件の移植機には、苗供給装置43に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業を行うべく、作業者が座る作業座席46を設けている。具体的には、苗供給装置43の前側となる機体左右中央位置に後向きに作業座席46を配置している。作業座席46に座る作業者は、苗供給装置43の前側部に向って後側向き姿勢で着座して、苗供給装置43の前側部、特に苗収容体22の周回移動経路における前側の直線状部分28に対応して苗補給作業を行う。
また、前記操縦パネル47aの左右他側には、ミッションケース39に内装され、左右の走行伝動ケース38及び伝動ケース26への駆動力の伝動を入切する前記主クラッチレバー125を設ける。
本発明の移植機において、機体後部の操縦ハンドル47による作業者の操作は、圃場への移動、輸送手段からの積み下ろし、倉庫への収納や、圃場端での旋回のときに行われるものである。一方、苗の植付作業時には、作業者は走行車体40の作業座席46に搭乗しており、操縦ハンドル47の操縦パネル47aでの操作を行うことは困難である。
従って、走行車体40上には、作業座席46に搭乗した作業者用の、車体上操縦部126を設ける。
図4、図7及び図9に示すとおり、前記苗供給装置43の下部には、機体後側に上方傾斜する後部ステップ127を設け、該後部ステップ127の左右どちらか一側、本件では機体右側(作業座席46に着座した作業者を基準とすると左側)の端部に、車体上操縦部126を設ける。
該車体上操縦部126は、最も機体外側に、走行車体40の車高を調節して植付ホッパ20a,20bの植付深さを調節する第2車高調節レバー128を配置し、該第2車高調節レバー128よりも機体内側に、第2主クラッチレバー129を配置する。
なお、苗の植付作業時は、基本的に車高を固定する必要が無いので、第2車高調節レバー128は「高」ポジションと「低」ポジションのみを有する構成とする。
そして、前記後部ステップ127の外側端部には、第2車高調節レバー128を枠内に収めると共に車高の目安を示す表示目盛りを形成した車高調節レバーガイド130を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設け、該車高調節レバーガイド130の機体内側方には、第2主クラッチレバー129を枠内に収める主クラッチレバーガイド131を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設ける。
なお、第2車高調節レバー128は、第2主クラッチレバー129よりも機体前側への突出量を大きくする。
また、前記第2車高調節レバー128と第2主クラッチレバー129は、機体左右一側(機体右側)の前記取付支持プレート105、及び前後の梁フレーム106f,106rに基部側を回動可能に装着するものとすると、別途取付部材を設ける必要が無く、部品点数の削減が図られる。
さらに、前記車体上操縦部126よりも機体左右他側、即ち機体左側には、左右のサイドクラッチ201,201を入切操作するサイドクラッチペダル132L,132Rを、後部ステップ127の上面に露出させて設ける。
前記車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131は、側部ステップ118の上面との間に一定の上下間隔Sを空けて配置するものとする。上記の上下間隔Sは、作業者の足を入り込ませても空間が確保される程度(例:15〜20cm程度)とする。
上記構成により、フロアステップ122上、及び作業座席46に搭乗した作業者は、走行車体40から降りることなく植付深さの手動操作や、植付作業の入切を手動操作することができるので、作業能率が向上すると共に、苗の植付精度が向上する。
また、第2主クラッチレバー129を第2車高調節レバー128よりも作業座席46に近付く機体内側に配置したことにより、苗の補充や植付状態の修正、休憩等の際に使用する第2主クラッチレバー129に作業者の手が届きやすく、労力の軽減が図られる。
特に、問題の発生時に速やかに苗の植付作業を中断でき、苗の植え直し作業が不要になると共に、生育に適さず破棄される苗の数が減少する。
また、第2車高調節レバー128を第2主クラッチレバー129よりも機体前側に突出させたことにより、作業座席46から遠い側の第2車高調節レバー128を操作する際に腕を大きく伸ばす必要が無く、作業者の労力が軽減される。
そして、後部ステップ127に左右のサイドクラッチペダル132L,132Rを設けたことにより、走行車体40の進行方向が畝を基準とする直進方向から外れかけているときに前記サイドクラッチペダル132L,132Rのどちらかを操作して対応するサイドクラッチ201,201を一時的に切状態とすることで、走行車体40の進路を修正でき、苗の植付位置が左右方向に蛇行することが防止される。
また、車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131、即ち車体上操縦部126と側部ステップ118の上下間に上下間隔Sが形成される構成としたことにより、作業座席46に搭乗する作業者の足の動きが妨げられず、作業者は楽な姿勢で操縦座席46に搭乗でき、労力の軽減が図られる。
作業座席46の左右両側で機体側面視で後輪44の後輪車軸12の上方位置に、苗供給装置43に補給する苗を収容可能な予備苗枠50を設けている。
前記予備苗枠50は、走行車体40の機体外側に突出する苗載支柱51の上部に支持ステー52を設け、該支持ステー52に回動状態と非回動状態を切替可能な苗載回動アーム53を設け、該苗載回動アーム53には上下方向の苗枠フレーム54,54を間隔を開けて配置すると共に、該苗枠フレーム54,54の同じ面に、補充用の苗を収容する苗箱や苗トレイ等の容器を載置する載置台55の一側端部を装着して構成する。
該載置台55は、上下方向に一つだけ設けてもよいが、容器の取り出しに支障の無い上下方向の間隔を空けて複数配置してもよい。
上記構成の予備苗枠50は、走行車体40の左右両側に各々設け、状況に合わせて支持ステー52上で苗載回動アーム53を回動させる。
例えば、苗の植付作業時には、載置台55の長手方向を機体前後方向に向けることで、載置台55から苗の容器を取り出したり、空になった容器を戻しやすくすることで、作業能率を向上させることができる。
また、この位置では載置台55が走行車体40の左右両側に位置するので、作業者が走行車体40の搭乗可能な部分の端部を把握しやすくなり、走行車体40上から足がはみ出し、姿勢を崩すことが防止される。
また、走行車体40に作業者が乗り降りするときには、苗載回動アーム53を約90度回動させる。
これにより、走行車体40の左右両側に乗り降りの空間部が形成される。
また、作業者は走行車体40の機体前側からも乗り降りすることができるが、苗載回動アーム53を回動させて苗枠フレーム54,54が機体前側に位置し、載置台55が機体後側に位置する状態とすると、作業者は苗枠フレーム54,54を手摺りとして用いることができるので、走行車体40の乗り降りを円滑に行うことができる。
また、載置台55に苗の容器を積載、あるいは取り出す際、機体後側からであれば容器の積載、取り出しを妨げる部材が無いので、作業能率が向上する。
前記作業座席46の走行車体40への取付は、正面視または背面視においてコの字形状であり、エンジン41等の上方を覆う機体カバー48を跨ぐ座席フレーム49のうち、機体左右方向となる部分の上部に装着する。該座席フレーム49の上部には、機体前側に向かう左右のシートステー49aの基部が装着されており、作業座席46は左右のシートステー49aの基部側の左右方向の回動支点を中心に、機体前後方向に回動可能に装着される。
これにより、作業座席46を苗供給装置43の機体前側端部付近に接触する姿勢で載置できるので、作業中断時に作業者の着座部分に砂や雨水が付着することを防止できる。
圃場に苗を移植する際、圃場の土質や周辺の水環境、あるいは作業前の天候等の条件を考慮して、植え付けた苗の付近に水を供給する、所謂灌水作業を行うことがある。
本件の移植機には、図4で示すとおり、走行車体40の左右両側に設けられる苗載支柱51のうち少なくとも一方を、フロアステップ122の下部から機体外側に突出する側方突出部51aを有すると共に、該側方突出部51aの機体外側端部を走行伝動ケース38の機体外側端部付近で上方に向けて屈曲させ、上下部51bを有する構成とし、該側方突出部51aと上下部51bに、平面視で長方形の枠形状の水タンクホルダ601を設けている。
該水タンクホルダ601は、図1に示すとおり、機体前後方向に長辺部が向く配置とし、機体外側部で、且つ機体前後方向中央部よりも後側位置に、苗載支柱51の上下部51bと連結する左右方向の第1ジョイント602を設けると共に、機体内側部で、且つ機体前後方向中央部よりも後側位置に、苗載支柱51の側方突出部51aと連結する上下方向の第2ジョイント603を設けている。
水タンクホルダ601の取付位置が機体前後方向中央部よりも後側位置であることにより、積載する水タンク600の機体後部が後輪44から機体前側に離間するので、車高調節時等に水タンク600が後輪44に接触し、車高調節を妨げることが防止される。
また、走行伝動ケース38のうち、上下回動時の上下位置が変化しにくい機体前側、即ち回動支点付近の上方に水タンク600の後部が位置するので、走行伝動ケース38に水タンク600が干渉することが防止され、車高調節を妨げることが防止される。
そして、水タンクホルダ601を、第1ジョイント602及び第2ジョイント603を介して苗載支柱51の側方突出部51aと上下部51bに各々連結することにより、苗載支柱51を水タンクホルダ601の取付部材とすることができるので、部品点数の削減が図られる。
加えて、苗載支柱51の側方突出部51aを水タンク600の底部受けとするので、水を満載した水タンク600に耐え得る底部支持部材を別途用意する必要が無く、部品点数の削減がいっそう図られる。
なお、左右両方の苗載支柱51を同じ形状とし、両方に水タンクステー601を設けてもよい。
前記水タンク600に貯留された灌水用の水は、走行車体40の底部で、且つ機体前後中央付近に設けられる灌水ポンプ700の動作によって汲み上げられると共に、植付ホッパ20a,20bが苗を植え付ける位置に排出される。該灌水ポンプ700は、植付ホッパ20a,20bの数に合わせて配置し、走行車体40の左右中央部を基準として、間隔を空けて左右に配置する。
前記灌水ポンプ700にホースを装着し、水タンク600から灌水ポンプ700を経由して散水ノズル710から水を排出する構成とすることもできるが、灌水ポンプ700のピストンシリンダ(図示省略)の動作により、排出方向に送り出された水の一部が水タンク600側に戻されることがある。これにより、圃場に供給される1回当たりの灌水量が減少し、水不足により苗の生育が遅れたり、生育不良により収穫物の品質を低下させるおそれがある。
これを防止すべく、前記左右の側部ステップ118の機体外側の下部に、送水方向を一方に制限するチェックバルブ720を各々設け、水タンク600とチェックバルブ720の給水側を吸水ホース721で連結すると共に、チェックバルブ720の排水側と排水ノズル710を排水ホース722で連結する。また、チェックバルブ720と灌水ポンプ700を、中継ホース723で連結する。
より具体的には、図27で示すとおり、まず、機体前側から後側への送水を許容する方向に向けた吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725を上下に並べて側部ステップ118の機体外側端部の下部に装着する。そして、前記吸水ホース721の一側を水タンク600内に入り込ませ、他側を吸水チェックバルブ724の入口、即ち機体前側と連結し、前記排水ホース722の一側を排水チェックバルブ725の出口、即ち機体後側と連結し、他側を前記排水ノズル710に連結する。
前記灌水ポンプ700には、機体左右方向の第1中継ホース723aの基部側を装着し、端部側には、三又形状の分岐ジョイント723dの収束ポートを装着する。そして、該分岐ジョイント723dの吸水ポートと吸水チェックバルブ724の出口(機体後側)の間には、第2中継ホース723bを設け、分岐ジョイント723dの排水ポートと排水チェックバルブ725の入口(機体前側)の間には、第3中継ホース723cを設ける。
なお、排水ノズル710は、圃場に直接水を供給してもよいが、植付ホッパ20a,20bの上側開口部から内部に灌水をある程度の水勢で投入し、植付ホッパ20a,20b内に付着した泥土の除去に利用する構成としてもよい。
これにより、植付ホッパ20a,20bが開いている間に内部に入り込み、泥土を除去するスクレーパが不要になるので、部品点数の削減が図られる。
上記スクレーパが、植付ホッパ20a,20bの昇降に連動して所定の軌跡を描くものであれば、所定の軌跡で昇降させる機構の部品を削減できるので、部品点数の大幅な削減と、機体構成の簡略化が図られる。
さらに、泥土を灌水で圃場に戻すことができるので、圃場外を泥土で汚染することを防止できると共に、圃場内の養分の流出が軽減される。
上記構成により、チェックバルブ720が機体左右外側の空間部に配置されるので、詰まり等の問題が生じた際に原因の調査やメンテナンス作業が行いやすく、労力の軽減や作業時間の短縮が図られる。
また、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725の送水方向が同じになる配置としたことにより、分解後の組付作業時に取付方向を間違えにくくなり、作業能率が向上する。
また、チェックバルブ720が水タンク600の後側で、植付ホッパ20a,20bの前側で、且つ灌水ポンプ700の機体外側に配置されることにより、吸水ホース721、排水ホース722、第1中継ホース723a、第2中継ホース723b及び第3中継ホース723cの屈曲を最低限に抑え、且つ重複しにくい配置とすることができる。
なお、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725は透明な筒とし、内部のスプリングや逆流防止用のボールを外部から確認できるものとすると、送水方向が視認でき、取付間違いがより生じにくくなる。
前記水タンク600に貯留される水は、水道水であれば問題は無いが、農業用水は圃場近くの川や池から汲むことも多く、砂や藻、その他の夾雑物を含みやすい。夾雑物が送水経路内に入り込むと、特に排水ノズル710やチェックバルブ720で詰まりが生じやすく、潅水作業が停止する問題が生じる。
この問題に対応すべく、図30(a)に示すとおり、前記吸水ホース721には、金網、あるいは小さな孔部を無数にパンチングした薄い金属板を円筒状、または角柱状に形成したメッシュフィルタ726を装着する。これにより、水は孔部から吸水ホース721内に入り込み、夾雑物は該メッシュフィルタ726によって進入を妨げられるので、夾雑物が詰まることによる灌水の中断が防止される。
しかしながら、メッシュフィルタ726は内部が中空であることにより、強い力が加えられると変形して孔部が大きくなり、夾雑物が通過可能になることがある。作業者が誤ってメッシュフィルタ726を踏む等して、修復不可能な変形が生じると、メッシュフィルタ726を交換する必要が生じる。
この問題を防止すべく、図30(b)に示すとおり、前記メッシュフィルタ726の内部に、メッシュフィルタ726の内周径と略同径のコイルバネ727を設ける。該コイルバネ727の長さは、メッシュフィルタ726を吸水ホース721に装着しても圧縮されない程度の長さとし、コイルバネ727が伸長する力でメッシュフィルタ726が外されることを防止する。
上記構成により、多少の力が加えられてもコイルバネ727がメッシュフィルタ726の変形を抑えることができるので、メッシュフィルタ726が破損することを防止できる。
次に、夾雑物を取り込まない吸水ホース721の別構成例について説明する。
図31(a)(b)に示すとおり、前記吸水ホース721の端部付近に無数の小さい孔部を形成すると共に、吸水ホース721の端部の開口部に樹脂または金属のキャップ728を挿入する。また、吸水ホース721とキャップ728の間にはOリング(図示省略)等を設け、水のリークを防止する構成とするとよい。さらに、吸水ホース721の端部とキャップ728の外周にクランプ(図示省略)を設け、キャップ728を外れにくくするとよい。
なお、前記キャップ728は重い物質で構成すると、吸水ホース721が浮き上がりにくくなるので、水を効率的且つ継続的に吸い上げることが可能になる。
上記構成により、吸水ホース721を誤って握ったり踏んだりしても夾雑物の進入防止部分が破損しにくい構成とすることができ、部品交換の手間やコストが生じることが防止される。
また、図32に示すとおり、水タンク600内に送水パイプ728を固定して設け、該送水パイプ728の上端部にホースニップル729を形成し、灌水作業時は該ホースニップル729に前記吸水ホース721の端部を差し込む構成としてもよい。前記ホースニップル729に吸水ホース721を差し込んだ後、吸水ホース721の外周にクランプ(図示省略)を設け、吸水ホース721を外れにくくするとよい。
また、前記送水パイプ728の下端部には、半球状のストレーナ730を設け、夾雑物の送水パイプ728への進入を防止する構成とする。
上記構成により、水タンク600の外側から吸水ホース721を着脱して灌水作業状態にする際、網状であり比較的変形しやすいストレーナ730に触れる必要が無くなるので、ストレーナ730が破損して水が吸い上げられなくなる、あるいは夾雑物が入り込める状態になることが防止される。
また、半球状のストレーナ730を用いることにより、多少の変形が生じても夾雑物の進入を防止しつつ吸水が可能な個所が多く残りやすく、交換の頻度を抑えることができる。
なお、前記送水パイプ728の上部にホースニップル729を形成せず、ワンタッチカプラ(図示省略)を介して吸水ホース721と送水パイプ728を連結し、着脱が容易な構成としてもよい。