JP2020097769A - 浸硫処理方法および浸硫処理装置 - Google Patents

浸硫処理方法および浸硫処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ワークの機械的特性に影響をほとんど与えることなく、表面に対して、極めて平滑な状態を維持したまま浸硫層を形成する、浸硫処理方法の提供。【解決手段】浸硫処理方法では、熱処理炉内に収納した鋼製のワークを、該熱処理炉によって100℃以上且つ200℃以下に加熱保持した状態で、熱処理炉内に対して0.5vol%以上の濃度となる硫化水素ガスを供給し、ワークの表面に浸硫層を生成する。【選択図】図2

Description

本発明は、例えば鋼からなるワークの表面に浸硫層を形成する為の浸硫処理方法等に関する。
浸硫処理は、母材(ワーク)の表面に硫化層を形成する。硫化層は、その硫化物の潤滑効果により、金属転移現象の発生を防止して、摩耗抵抗や耐焼付性を向上させ、疲労強度を改善できることが知られている。このような浸硫処理は、従来、硫化物を添加した溶融塩浴に被処理品を浸漬する塩浴法や、ガス雰囲気を利用して浸炭処理と同時に浸硫を行う複合処理法などにより行われている。
例えば、塩浴法の場合、ワークを塩浴中で170〜180℃に加熱することによって、被処理品の表面にFeS層を形成する(特許文献1参照)。
ガス雰囲気を利用した複合処理法の場合、例えば、850℃でワークを加熱しつつ、窒素雰囲気中で、硫化水素ガスと浸炭性ガスを供給してワーク表面に浸炭層及び浸硫層を形成する(特許文献2参照)。
特許第3382108号 特許第4518604号
従来の塩浴法の場合、浸硫層の表面が雲状に浸食するので、母材表面の平滑性が悪化する。また、母材の種類によって塩浴の濃度や成分を変更しなければならず、作業者による管理負担が大きい。さらに塩浴中のシアン化合物が、公害を発生させる可能性がある。
一方、従来のガス雰囲気を利用した複合処理法の場合、浸硫層を形成する為に、熱処理炉内でワークを高温で保持することになるので、結局、ワークが変形したり、鋼の組成や機械的特性が変化したりする。
本発明は、従来の上記課題に着目してなされたものであって、ワークの硬度や衝撃値等の機械的特性に影響をほとんど与えることなく、表面に対して、極めて平滑な状態を維持したまま浸硫層を形成することが可能な浸硫処理方法等を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、熱処理炉内に収納した鋼製のワークを、該熱処理炉によって100℃以上且つ200℃以下に加熱保持した状態で、前記熱処理炉内に対して0.5vol%以上の濃度となる硫化水素ガスを供給し、前記ワークの表面に浸硫層を生成することを特徴とする浸硫処理方法である。
上記浸硫処理方法に関連して、前記熱処理炉内のキャリアガスとして窒素ガスを用いることを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記熱処理炉内に対して、アンモニアガスまたは水素ガスを供給することを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記アンモニアガスまたは水素ガスの濃度が5.0vol%以上に設定されることを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記硫化水素ガスの濃度が1.0vol%以上に設定されることを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記硫化水素ガスの濃度が1.0vol%を超えるように設定されることを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記硫化水素ガスを、1時間以上且つ5時間以下供給することを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記硫化水素ガスを、4時間以下供給することを特徴とする。
上記浸硫処理方法に関連して、前記浸硫層が、平均0.5μm以上の厚さで形成されることを特徴とする。
上記目的を達成する本発明は、鋼製のワークを収容する熱処理炉と、前記熱処理炉内を100℃以上且つ200℃以下に加熱する加熱装置と、0.5vol%以上の濃度となる硫化水素ガスを前記熱処理炉内に供給するガス供給装置と、を備えることを特徴とする浸硫処理装置である。
本発明によれば、ワークの機械的特性に影響をほとんど与えることなく、表面に対して、極めて平滑な状態を維持したまま浸硫層を形成できるという優れた効果を奏し得る。
本発明の実施の形態に係る浸硫処理装置の構成を示した概略図である。 浸硫処理方法のタイムチャートの一例を示した図である。 炭素鋼の焼き戻し温度と硬さ及び衝撃値の変化を示すグラフである。 (A)は第一実施例における浸硫層の状態を示す断面図であり、(A)は第一比較例の浸硫層の状態を示す断面図である。 (A)は第二実施例及び第二比較例における潤滑摩擦摩耗特性試験の結果を示したグラフであり、(B)はFAVILLE試験機による試験方法を示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
本実施形態に係る硫処理方法および硫処理装置は、ワークに硫化層を形成するためのベースガスとして硫化水素(HS)を使用する。母材となるワークの材料は、炭素鋼や低合金鋼等、様々な鋼が対象となり得る。特に、ワークは生材の他、浸炭、浸炭窒化、浸窒焼入れ、焼入れ、窒化、軟窒化等の様々な下地処理(前処理)が行われたものも対象と成り得る。
図1は、本実施形態に係る浸硫処理装置1の構成の一例を示した概略図である。浸硫処理装置1は、熱処理炉10と、熱処理炉10に各種ガスを供給するガス供給装置20と、熱処理炉10内の雰囲気ガスを排出する排気装置30と、浸硫処理装置1の各部を制御する制御装置40とを備えている。
熱処理炉10は、被処理材であるワーク100を収容して加熱すると共に、炉内の雰囲気ガスによって浸硫処理を行う。熱処理炉10は、ワーク100を収容する炉内が外部から気密状態に保たれると共に、適宜の断熱材によって保温されるように構成されている。また、熱処理炉10は、炉内を加熱する加熱装置(例えば電熱線ヒータ)12と、炉内の温度を測定する温度計(例えば熱電対)14と、炉内の圧力を測定する圧力計16と、炉内のガス成分の濃度(例えば硫化水素濃度)を測定する濃度計15と、炉内の雰囲気ガスを攪拌する攪拌装置(例えばファン)18とを備えている。また、熱処理炉10内は、適宜の治具11等に載置された状態で複数のワークを収容可能に構成されている。
ガス供給装置20は、硫化水素(HS)を含むベースガスと、アンモニア(NH)を含む反応促進ガスと、不活性の窒素(N)を含む搬送ガスと、不活性の窒素(N)を含み、炉内をパージするためのパージガスを熱処理炉10内に供給するものである。従って、ガス供給装置20は、不活性ガスとなる搬送ガスとパージガスを供給する不活性ガス供給系統22と、ベースガスを供給するベースガス供給系統24と、反応促進ガスを供給する反応促進ガス供給系統26とを備えている。
不活性ガス供給系統22は、不活性ガスとなる窒素を収容したガスボンベ等からなる不活性ガス供給源22aと、不活性ガス供給源22aと熱処理炉10内を繋ぐ二本の供給配管23a、23bとを備えている。なお、一方の供給配管23aはパージガス供給系統であり、他方の供給配管23bは搬送ガス供給系統となる。各供給配管23a、23bの途中には、不活性ガスの流量を調整するための流調弁23c、23dと、制御装置40に制御されて開閉する電磁弁23e、23fと、不活性ガスの流量を測定する流量計23g、23hが設けられている。
ベースガス供給系統24は、ベースガスを収容したベースガス供給源24aと、ベースガス供給源24aと熱処理炉10内を繋ぐ供給配管24bと、ベースガスの流量を調整するための流調弁24cと、制御装置40に制御されて開閉する電磁弁24dと、ベースガスの流量を測定する流量計24eとを備えている。
なお、ベースガス供給源24aには、硫化水素と窒素が予めミックスされたブレンドガスが貯留される。本実施形態のブレンドガスは、硫化水素が3vol%、窒素が97vol%に設定されており、万が一、ブレンドガスが直接大気中に漏えいした場合であっても、作業者の危険性が低くなるようにしている。なお、危険性を回避するためには、ブレンドガスの硫化水素の比率は10vol%以下に設定しておくことが望ましい。もちろん、本発明はこれに限定されず、硫化水素発生器あるいはボンベ入りの硫化水素を100%のまま供給し、炉内で希釈してもよいが、硫化水素を窒素によって数%に希釈したボンベ入りガスを使用することが、微量な硫化水素を制御するうえで、あるいは安全管理のうえで望ましい。
反応促進ガス供給系統26は、反応促進ガスを収容した反応促進ガス供給源26aと、反応促進ガス供給源26aと熱処理炉10内を繋ぐ供給配管26bと、反応促進ガスの流量を調整するための流調弁26cと、制御装置40に制御されて開閉する電磁弁26dと、反応促進ガスの流量を測定する流量計26eとを備えている。
パージガスは、熱処理炉10内に供給することで炉内の雰囲気ガスを排出して置換するためのガスである。本実施形態では、パージガスとして窒素ガス(N)を使用しているが、例えばアルゴン等のその他の不活性ガスを使用するようにしてもよい。搬送ガスは、浸硫反応用の材料(ここでは硫化水素とアンモニア)を搬送するための不活性ガスである。本実施形態では、搬送ガスとして窒素ガス(N)を使用しているが、例えばアルゴン等のその他の不活性ガスを使用するようにしてもよい。
ベースガスは、ワーク100中に侵入させる硫黄(S)を供給するものである。本実施形態では、ベースガスとして硫化水素と窒素(不活性ガス)のブレンドガスを使用しているが、硫化水素単体のガスをベースガスとするようにしてもよい。
反応促進ガスは、ベースガスに添加されるガスであり、炉内を還元性雰囲気にすることで、硫化水素による浸硫反応(HS+Fe→FeS+H、または、2HS+Fe→FeS+2H)を促進するためのガスである。この反応促進ガスにより、ワーク100中への硫黄の侵入が促進される。また、分子中に酸素原子を含まないことから、雰囲気ガス中に水蒸気(HO)を発生させないという利点も有している。本実施形態では、反応促進ガスとしてアンモニアを使用することにより、結果として短時間で十分な厚みの硫化物層をワーク100の表面近傍に生成することが可能となっている。なお、アンモニア以外にも、例えば還元性を有する水素を反応促進ガスとして使用するようにしてもよい。
排気装置30は、熱処理炉10内の雰囲気ガスを適度に排出することで炉内を大気圧以上に保ち、これにより炉内への外気の流入を防止するものである。排気装置30は、熱処理炉10内に繋がる排気管32と、排気管32に設けられる電磁弁34と、炉内の雰囲気ガスを吸引するポンプ35と、排気管32に接続される分解炉36と、分解炉36の下流側に接続される燃焼塔38とを備えている。このうち、電磁弁34は制御装置40に制御されて熱処理炉10内からの雰囲気ガスの排出流量を調整する。また、分解炉36は、熱処理炉10内から排出された雰囲気ガス中に残留するアンモニアや硫化水素を分解するものであり、燃焼塔38は、分解炉36から排出された排出ガス中に含まれる可燃性ガスを燃焼する。
また、本実施形態では、ガス供給装置20および排気装置30を適宜に構成することで、浸硫処理装置1を他の熱処理用の装置として兼用することが可能となっている。
制御装置40は、適宜のマイコンから構成され、浸硫処理装置1全体を制御するものである。制御装置40は、温度計14の信号出力に基づいて加熱装置12を制御し、熱処理炉10内を予め設定された浸硫処理温度T1や待機温度T2に制御し、保持する。制御装置40はまた、ガス供給装置20の各電磁弁23e、23f、24d、26dを制御し、不活性ガス(搬送ガス・パージガス)、ベースガスおよび反応促進ガスの熱処理炉10への供給を所定のタイミングで開始または停止する。また、制御装置40は、圧力計16の信号出力に基づいて電磁弁34を制御し、熱処理炉10内からの雰囲気ガスの排出流量を調整することで、熱処理炉10内を予め設定された圧力に保持する。
次に、本実施形態の浸硫処理方法の具体的な手順について説明する。
図2は、本実施形態の浸硫処理方法のタイムチャートの一例を示した図である。本実施形態では、浸硫処理を開始する前に、予め流調弁23c、23d、24c、26cの開度を調整して不活性ガス、ベースガスおよび反応促進ガスの供給流量を設定しておく。各ガスの個別の供給流量は、特に限定されるものではないが、浸硫処理中における雰囲気ガスに含まれる硫化水素ガスが、0.5%vol以上の濃度となるように設定される。雰囲気ガスの総流量については、熱処理炉10内の容積やワーク100の表面積、必要な化合物層の厚み等に応じて適宜に設定すればよい。
なお、本実施形態では、パージガスは1.5Nm/Hr(25NL/min)、硫化水素3.0vol%となるベースガスは3.0NL/min、反応促進ガスは1.0NL/min、搬送ガスは3.0NL/minに設定される。浸硫処理中は、ベースガス、反応促進ガス、搬送ガスが雰囲気ガスとして供給されるので、雰囲気ガス中の硫化水素の濃度は1.29vol%となる。雰囲気ガス中の硫化水素の濃度は、0.5vol%以上が好ましく、より望ましくは雰囲気ガス中の硫化水素の濃度は1.0vol%以上とし、更に望ましくは1.0vol%を超える濃度とし、一層好ましくは、1.2vol%以上とする。このように、硫化水素を高濃度化することで、超低温環境下であっても、浸硫処理による浸硫層を形成可能となる。
浸硫処理を開始する際、まず、制御装置40が電磁弁23eを開いて熱処理炉10内にパージガスを供給し、炉内の雰囲気ガスを不活性ガスに置換する。熱処理炉10内の雰囲気ガスが不活性ガスに置き換わったならば、電磁弁23eを閉じて、熱処理炉10内にワーク100を配置する。
熱処理炉10内にワーク100が配置されたならば、制御装置40は加熱装置12を制御し、予め設定された昇温期間tsをかけて、常温から、予め設定された浸硫処理温度T1まで熱処理炉10内を昇温する。なお、ここでは昇温行程の期間tsとして1.0時間かけて昇温を行う。制御装置40はまた、昇温の開始と略同時に電磁弁23f、24d、26dを開いて、熱処理炉10内に、搬送ガス、ベースガスおよび反応促進ガスの供給を開始する。昇温期間tsが経過し、熱処理炉10内が浸硫処理温度T1となったならば、制御装置40は熱処理炉10内を浸硫処理温度T1に保持するように加熱装置12を制御する。
本実施形態では、浸硫処理温度T1として、100℃以上且つ200℃以下の範囲内に設定され、より好ましくは、150℃以上且つ且つ200℃以下の範囲内に設定される。なお、ここでは170℃となっている。
制御装置40は、熱処理炉10内が浸硫処理温度T1となった後、予め設定された浸硫行程期間t1について浸硫処理を継続する。この浸硫行程期間t1は、1時間以上且つ5時間以下であることが好ましく、より望ましくは4時間以下とする。ここでは3時間に設定される。
浸硫行程期間t1の後、電磁弁23f、24d、26dを閉じ、搬送ガス、ベースガスおよび反応促進ガスの供給を停止すると同時に、制御装置40が電磁弁23fを開いて熱処理炉10内にパージガスを再び供給して炉内の雰囲気ガスを不活性ガスに置換する。さらに制御装置40は、浸硫行程期間t1が経過したタイミングで第一降温行程に移行し、加熱装置12による加熱温度を、任意の間teをかけて、浸硫処理温度T1よりも低い待機温度T2まで低下させる。この降温期間teは、およし15分〜1.0時間程度とする。
本実施形態では、待機温度T2として、60℃以上且つ180℃以下の範囲内に設定しており、より好ましくは、80℃以上且つ150℃以下の範囲内に設定する。なお、ここでは100℃となっている。
待機行程期間t2は、15分以上且つ2時間以下であることが好ましく、より望ましくは1時間以下とする。ここでは30分に設定される。
待機行程期間t2の経過後は、任意の期間tfとなる第二降温行程に遷移し、加熱装置12を停止して、熱処理炉10内を常温まで降温させる。第二降温行程が終了したら、ワーク100に対する浸硫処理が完了する。
なお、本実施形態では、浸硫行程期間t1では、主にワーク100中へ硫黄を積極的に侵入させる期間として設定され、待機行程期間t2は主にワーク100中に侵入した硫黄を拡散させる期間として設定されている。
本実施形態では、浸硫処理温度T1として、100℃以上且つ200℃以下の範囲内に設定され、より好ましくは、150℃以上且つ且つ200℃以下の範囲内に設定される。なお、ここでは170℃となっている。図3に示すように、炭素鋼について、焼き戻し温度として、200℃超〜350℃以下の範囲でワーク100を2時間加熱すると、その後の冷却によって鋼材の衝撃値が極端に急減し、ワーク100の表面が脆性状態に陥りやすい。更に、350℃超の範囲にワーク100を加熱すると、表面の硬さが低下する。
そこで本実施形態では、200℃以下の温度で浸硫処理を実現しているので、ワーク100の表面硬さや衝撃値などの機械的特性に悪影響を生じさせないで済む。例えば、事前に浸炭処理や高周波焼き入れ等によって表面硬度を向上させたワーク100に対して、本実施形態の浸硫処理を施したとしても、表面硬度が低下を抑制しつつ、耐摩耗性等を向上させることができる。
本実施形態では、熱処理炉10内を、浸硫処理としては極端に低い200℃以下の浸硫処理温度T1に保持した状態で、浸硫処理期間t1にわたって、0.5vol%以上となる高濃度の硫化水素と、アンモニアを含む雰囲気ガスを供給する。この条件によれば、アンモニア自身によるワーク100への窒化反応を促すことなく、このアンモニアが、主として硫化水素による浸硫反応(HS+Fe→FeS+H、または、2HS+Fe→FeS+2H)を促進する目的のみに活用できる。ちなみに、熱処理温度を300℃以上にすると、アンモニア自身よるワークの窒化反応が進んでしまう(窒素がワーク表面に侵入してしまう)ことになる。
なお、アンモニアの添加量が少ないと、浸硫処理の時間が長くなり現実的ではなく、一方、アンモニアの添加量が多いと、その効果が飽和し無駄になる。従って、アンモニアの濃度は5vol%以上が好ましく、望ましくは25vol%以下とする。なお、浸硫処理を促進する促進ガスは、アンモニアに限られず、例えば、還元性ガスとなる水素を導入してもよい。一方で、中性ガスの窒素や、不活性ガスのArは、浸硫を促進する効果は得られない。
なお、ワーク100の表面に必要な量の浸硫層を形成するためには、熱処理炉10内を浸硫処理温度T1に保持した状態において十分な期間にわたって供給されることが好ましく、本願発明者の知見によれば、浸硫行程期間t1の長さは、少なくとも待機行程期間t2の長さ以上に設定されることが好ましい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の浸硫処理方法および浸硫処理装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、密閉型の熱処理炉10を備える浸硫処理装置1の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、浸硫処理装置1は、開放型の熱処理炉10を備えるものであってもよい。この場合、例えば搬送ガス等の供給流量を増やすことで、外部から炉内への大気の流入を適宜に防止してもよい。
また、ガス供給装置20は、共通の配管を介して各ガスを熱処理炉10内に供給するものであってもよいし、ガスごとに複数の供給系統を備えるものであってもよい。また、流調弁23c、23d、24c、26cは、制御装置40の制御によって各ガスの供給流量を調整するものであってもよい。
また、上記実施形態では、熱処理炉10内の昇温の開始と略同時に、ベースガスおよび/または反応促進ガスの供給を開始する場合の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば熱処理炉10内の温度が100℃〜200℃に上昇したタイミングで、ベースガスおよび/または反応促進ガスの供給を開始する等、供給開始タイミングをずらすようにしてもよい。また、パージガス(不活性ガス)の供給を、浸硫行程期間t1および待機行程期間t2においても継続して行うようにしてもよく、これにより外部から炉内への大気の流入を防止するようにしてもよい。
また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
第一実施例
本実施形態の実施例について説明する。なお、本発明は、本実施例に何ら限定されるものではない。
第一実施例では、上記実施形態の浸硫処理装置1を使用し、図2に示すタイムチャートに沿って浸硫処理を行った。ワークには、炭素量0.13〜0.18%程度のクロムモリブデン鋼となるSCM415を素材とする歯車を選定し、このテストピースについて浸硫処理を行った後、X線マイクロアナライザ等を用いて、浸硫状況を確認した。なお、成膜状態の確認場所としては、歯車の軸挿入用の内周面とした。また、第一比較例として、同じワークを、硫化物を添加した溶融塩浴中で170〜200℃に加熱する塩浴法によって、ワークの表面に浸硫層(FeS層)を形成した。その結果を図4に示す。
図4(A)の第一実施例のワーク100では、表面から平均0.5μm以上であって、実質的に平均1μm程度の安定した膜厚で浸硫層Eが形成されていた。浸硫層Eの濃度のピークは約1%程度であり、また、浸硫層Eにおいて0.3%〜0.9程度の濃度が占める面積が大きかった。なお、浸硫層Eは、好ましくは平均0.5μm以上、より望ましくは平均1.0μm以上形成する。
図4(B)の第一比較例のワーク200では、塩浴法によって表面が雲状に侵食されており、その侵食表面に沿って平均1μm程度の膜厚で浸硫層Fが形成されていたが、膜厚の変動が大きかった。浸硫層Fの濃度のピークは約1%程度であり、また、浸硫層Fにおいて0.3%〜0.9%程度の濃度が占める面積が大きかった。
図4(A)の第一実施例のワーク100の表面Pは、浸硫処理前の表面に対して平均0.5〜1.0μm盛り上がっている(内径で表現すると平均1〜2μm縮小している)ことが確認できた。一方、図3(B)の第一比較例のワーク200の表面Qは、浸硫処理前の表面に対して、平均して1μm以上侵食している(内径で表現すると平均2μm以上拡大している)ことが確認できた。
更に面粗度を測定すると、浸硫処理前のワーク表面は、Rz(最大高さ)0.6〜3.0であったところ、第一実施例の浸硫処理後はRz2.1〜2.8となっており浸硫処理前の面粗度を維持できることを確認した。一方、第一比較例の浸硫処理後はRz7.9〜11.3となっており、塩浴法による表面侵食によって表面が荒されていることを確認した。
第二実施例
FAVILLE試験機を用いて潤滑摩擦摩耗特性を調査した。第二実施例となるワーク100は、炭素量0.13〜0.18%程度のクロムモリブデン鋼となるSCM415を素材として選定し、この素材に対して事前に浸炭処理を行った後、浸硫処理温度T1を190℃に変更して本実施形態と同様の浸硫処理を行った。なお、事前に行った浸炭処理は、特許第4518527号の記載に沿って、アセチレンをパルス状に供給しながら850℃〜950℃の熱処理温度で行った。
第二比較例として、第二実施例と同じ浸炭処理のみを行ったワーク200Aと、特許第4518604号の記載に沿って850℃程度で加熱しつつ、窒素雰囲気中で硫化水素ガスと浸炭性ガスを供給して浸炭層及び浸硫層を形成する浸硫浸炭処理を行ったワーク200Bを用意した。
ちなみに、潤滑摩擦摩耗特性の試験は、図5(B)に示すように、直径6.5mmの棒状のワーク100を、V溝が形成される一対のVブロック300で挟み込んで、挟持荷重Wを増大させながら、回転装置400によってワーク100を300rpmで回転させた。なお、ワーク表面の滑り速度は0.1m/secとし、Vブロック300の作製は、SCM415材を所望形状に切削加工してから、ガス浸炭焼入焼戻しを行った。試験環境は室温とし、ワーク100とVブロック300を、添加剤を含有しないパラフィン基油の潤滑油槽(図示省略)の中に浸しながら試験を行った。パラフィン基油は、室温と同じ温度に温度制御した。
試験結果を図4(A)に示す。第二実施例のワーク100は、(挟持)荷重Wを25000Nまで増大させても、摩擦係数が増大することなく、焼き付きも生じなかった。一方、第二比較例のワーク200Aは、荷重Wが15000Nを超えると摩擦係数が増加し、約16000Nで油膜破壊を起こして焼き付きが生じた。第二比較例のワーク200Bは、荷重Wが17000Nを超えると摩擦係数が次第に増加し、約21700Nで油膜破壊を起こして部分的にスカッフィングが生じ、折損した。即ち、本実施形態の浸硫処理によれば、耐焼き付き性、耐摩耗性の双方を飛躍的にできることが明らかとなった。
なお、上記実施形態や実施例では、浸硫処理の前処理として浸炭処理を行う場合を例示したが、前処理についてはこれに限定されない。例えば、600℃〜900℃等で行う浸窒焼入れ処理、浸窒焼入れに加えて250℃〜350℃等の時効処理を行う浸窒時効処理、410℃〜600℃等で行うガス浸硫窒化処理等、様々な前処理を行ってもよい。さらに、複数種類の前処理を組み合わせてもよい。本発明の浸硫処理は、200℃以下で行うことから、あらゆる前処理工程で得られたワークの特性を、そのまま維持できるという利点がある。
1 浸硫処理装置
10 熱処理炉
100 ワーク
T1 浸硫処理温度
T2 待機温度
t1 浸硫行程期間
t2 待機行程期間

Claims (10)

  1. 熱処理炉内に収納した鋼製のワークを、該熱処理炉によって100℃以上且つ200℃以下に加熱保持した状態で、前記熱処理炉内に対して0.5vol%以上の濃度となる硫化水素ガスを供給し、前記ワークの表面に浸硫層を生成することを特徴とする浸硫処理方法。
  2. 前記熱処理炉内のキャリアガスとして窒素ガスを用いることを特徴とする、
    請求項1に記載の浸硫処理方法。
  3. 前記熱処理炉内に対して、アンモニアガスまたは水素ガスを供給することを特徴とする、
    請求項1または2に記載の浸硫処理方法。
  4. 前記アンモニアガスまたは水素ガスの濃度が5.0vol%以上に設定されることを特徴とする、
    請求項3に記載の浸硫処理方法。
  5. 前記硫化水素ガスの濃度が1.0vol%以上に設定されることを特徴とする、
    請求項1ないし4のいずれかに記載の浸硫処理方法。
  6. 前記硫化水素ガスの濃度が1.0vol%を超えるように設定されることを特徴とする、
    請求項5に記載の硫処理方法。
  7. 前記硫化水素ガスを、1時間以上且つ5時間以下供給することを特徴とする、
    請求項1ないし6のいずれかに記載の浸硫処理方法。
  8. 前記硫化水素ガスを、4時間以下供給することを特徴とする、
    請求項7に記載の硫処理方法。
  9. 前記浸硫層が、平均0.5μm以上の厚さで形成されることを特徴とする、
    請求項1ないし8のいずれかに記載の浸硫処理方法。
  10. 鋼製のワークを収容する熱処理炉と、
    前記熱処理炉内を100℃以上且つ200℃以下に加熱する加熱装置と、
    0.5vol%以上の濃度となる硫化水素ガスを前記熱処理炉内に供給するガス供給装置と、を備えることを特徴とする浸硫処理装置。
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