JP2020097698A - 水系組成物、水系塗料、塗膜、複合塗膜、及び塗装製品 - Google Patents

水系組成物、水系塗料、塗膜、複合塗膜、及び塗装製品 Download PDF

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Abstract

【課題】濃色基材でも外観を損なわず、塗膜のクラック及び塗膜の保水性が良好で、長期に亘って、外観、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持できる塗膜が形成可能な水系組成物を提供する。【解決手段】光触媒活性を有しない無機酸化物Bと、光触媒活性を有する無機酸化物Cと、を含有し、前記光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径が30nm超160nm以下である、水系組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、水系組成物、水系塗料、塗膜、複合塗膜、及び塗装製品に関する。
建築外装、橋梁、タンク等の屋外構造物の表面は塗料等により塗装されているが、その塗膜表面は、空気中の埃、煤煙及び砂等、シーリング材から溶出する汚れ成分、建物の排出口から排出される汚染物質、又は藻カビ等に代表される生物等により汚染される。このような塗膜の汚染は、通常薄黒い色、あるいは緑色であり、建物や屋外構造物の美観を著しく損ねる。
上述したような塗膜の汚染を抑制する水性上塗りコーティング剤組成物として、下塗り層と、当該下塗り層上に設けられた上塗り層と、を備え、前記下塗り層がシリコーン変性樹脂と有機防カビ剤とを含む層であり、前記上塗り層が光触媒粒子と無機酸化物粒子と加水分解性シリコーンとを含む層である、複数塗膜塗装体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定組成の共重合体の水分散体に防藻剤防カビ剤を含む水系コーティング剤組成物も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許4092434号公報 特開2017−149869号公報
特許文献1及び2に記載の技術は、下塗り層に防カビ剤を含むため、耐生物汚染性に優れる技術である。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術は、建築現場での塗装を想定したスプレー適性、基材への塗液の濡れ広がり性、塗膜のクラック及び/又は塗膜の保水性に関しては改良の余地がある。
そこで本発明においては、上述した事情に鑑み、濃色基材でも外観を損なわず、塗膜のクラック及び塗膜の保水性が良好で、長期に亘って、外観、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持できる塗膜が形成可能な水系組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、光触媒活性を有しない無機酸化物Bと、光触媒活性を有する無機酸化物Cを含有し、前記光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径が、所定の範囲である水系組成物を用いることで、上述した従来技術の課題の解決が図られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
光触媒活性を有しない無機酸化物Bと、光触媒活性を有する無機酸化物Cと、を含有し、
前記光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径が30nm超160nm以下である、水系組成物。
〔2〕
固形分換算で、重合体Aを0〜40質量部、光触媒活性を有しない無機酸化物Bを20〜99質量部、光触媒活性を有する無機酸化物Cを1〜40質量部を含有する(ただし、重合体Aと光触媒活性を有しない無機酸化物Bと光触媒活性を有する無機酸化物Cとの合計量を100質量部とする)、前記〔1〕記載の水系組成物。
〔3〕
フルオロカーボン界面活性剤Dを、さらに含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の水系組成物。
〔4〕
退色性色素Eを、さらに含有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水系組成物。
〔5〕
前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水系組成物を含有する水系塗料。
〔6〕
前記〔5〕に記載の水系塗料から得られる塗膜。
〔7〕
前記〔6〕に記載の塗膜と、下塗り層からなる塗膜と、の少なくとも2層からなる複合塗膜であって、
前記下塗り層からなる塗膜が、重合体と、防藻及び/又は防カビ剤と、を含有する、複合塗膜。
〔8〕
基材と、前記〔6〕に記載の塗膜又は前記〔7〕に記載の複合塗膜と、を含む、塗装製品。
〔9〕
前記基材が、有機基材である、前記〔8〕に記載の塗装製品。
本発明によれば、濃色基材でも外観を損なわず、塗膜のクラック及び塗膜の保水性が良好で、長期に亘って、外観、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持できる塗膜が形成可能な水系組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と記載する。)について、詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
〔水系組成物〕
本実施形態の水系組成物は、光触媒活性を有しない無機酸化物Bと、光触媒活性を有する無機酸化物Cを含有し、前記光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径が30nm超160nm以下である。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜は、濃色基材でも外観を損なわず、塗膜のクラック及び塗膜の保水性が良好で、長期に亘って、外観、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持することができる。
<重合体A>
本実施形態の水系組成物は、重合体A(以下、単にA成分と記載する場合がある。)の水分散体AD(以下、単にAD成分と記載する場合がある。)を含有してもよい。
本実施形態の水系組成物において、固形分換算で、重合体Aと後述する光触媒活性を有しない無機酸化物Bと後述する光触媒活性を有する無機酸化物Cとの合計量を100質量部とした時に、重合体Aを好ましくは0〜40.0質量部、より好ましくは0〜30.0質量部、さらに好ましくは0〜27.0質量部を含有してもよい。水系組成物中のA成分の含有量を上記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及び保水性に一層優れた水系組成物を得ることができる。
重合体Aとしては、特に限定されないが、例えば、乳化重合等の方法で得られる重合体等を用いることができる。重合体(A)としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合のいずれかの重合反応を水性媒体中で行うことにより得られる重合体等が挙げられる。
重合体Aの数平均粒子径は、好ましくは10nm〜200nm、より好ましくは10nm〜150nm、さらに好ましくは10nm〜100nmであり、よりさらに好ましくは10nm〜40nmである。
本実施形態の水系組成物は、数平均粒子径が上記範囲である重合体Aを用いることで、濃色基材に塗装しても白濁がなく、得られる塗膜は外観を損なわない傾向にある。さらに、重合体Aの数平均粒子径が10nm以上であることで、塗膜の耐汚染性が一層向上し、重合体Aの数平均粒子径が40nm以下であることで、塗膜の耐候性が一層向上する。
重合体Aの数平均粒子径を上述した範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合体Aの製造に用いる界面活性剤量を調整する方法が挙げられ、界面活性剤量を多くすることで、数平均粒子径を小さくすることができる。
また、重合体Aの数平均粒子径は、湿式粒度分析計を用いて測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
A成分の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、ポリビニルアセテート系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル系重合体、エチレン酢酸ビニル系重合体、シリコーン系重合体、フッ素系重合体、ポリブタジエン系重合体、スチレンブタジエン系重合体、NBR系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、塩素化ポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリスチレン系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系重合体、スチレン−無水マレイン酸系重合体等に代表される単独重合体又は共重合体、シリコーン変性(メタ)アクリル系重合体、フッ素−(メタ)アクリル系重合体、(メタ)アクリル−シリコーン系重合体、エポキシ−(メタ)アクリル系重合体等に代表される変性共重合体が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
上述した重合体Aの単独重合体、共重合体、変性共重合体等(以下、これらを「重合体」と総称する場合がある。)は、水分散体の状態で得られることが好ましい。これら重合体の好適な態様としてはエマルジョンが挙げられ、その具体例としては、特に限定されないが、例えば、アクリルエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。これらは、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体や後述する加水分解性珪素化合物等の乳化重合により得ることができる。
本実施形態の水系組成物は、A成分以外にも、前記重合体Aに含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物をさらに含んでもよい。このような化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(ポリ)イソシアネート化合物、(ポリ)エポキシ化合物、アミノ化合物、(ポリ)カルボキシ化合物、(ポリ)ヒドロキシ化合物、グリコール化合物、シラノール化合物、シリル化合物、アルコキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体Aの重合体構成成分として、ビニル単量体を用いることができる。
A成分の製造に用いることができるビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、カルボキシル基含有ビニル化合物、水酸基含有ビニル化合物、グリシジル基含有ビニル化合物、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物、アニオン型ビニル化合物等の官能基を含有するビニル単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜100のエチレンオキシド基を有する(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の2塩基酸のハーフエステルが挙げられる。カルボキシル基を含有するビニル単量体を用いることによって、(A)成分にカルボキシル基を導入することができる。これにより、エマルジョンとしての安定性を一層向上させ、外部からの分散破壊作用に対する高い抵抗力を塗膜に付与できるものと推測される。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
導入するカルボキシル基は、その一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。上述したビニル単量体の総量におけるカルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、耐水性の観点から、好ましくは0〜50質量%であるが、これに限定されるものではない。
水酸基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1〜100である(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート;プロピレンオキシド基の数が1〜100である(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学社製のカプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
上述したビニル単量体の総量における水酸基含有ビニル単量体の割合は、以下に限定されるものではないが、塗膜の耐水性の観点から、好ましくは0〜80質量%であり、より好ましくは0.1〜50質量%であり、さらに好ましくは0.1〜45質量%である。
グリシジル基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
上述したビニル単量体の中でも、グリシジル基含有ビニル単量体を使用するとA成分の反応性が一層向上する。そのため、ヒドラジン誘導体、カルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等を用いて架橋させることで、耐溶剤性等が一層優れた塗膜を得ることができる。かかる観点から、上述したビニル単量体の総量における、グリシジル基含有ビニル単量体の使用量の総量は、好ましくは0〜50質量%であり、より好ましくは0〜45質量%であり、さらに好ましくは0〜40質量%である。
2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上述したビニル単量体以外のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;ブタジエン等のジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類;アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記A成分を重合反応によって製造する場合、使用するビニル単量体の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。
連鎖移動剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタン等の芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸等のチオカルボン酸又はこれらの塩若しくはこれらのアルキルエステル類;ポリチオール類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド等のジスルフィド類;チオグリコール、α−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述したビニル単量体の総量に対する連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%である。
重合体Aは、上述したビニル単量体と加水分解性珪素化合物との重合反応で製造することが、好ましい形態として挙げられる。
重合体Aを製造するのに用いる加水分解性珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で表される化合物、シランカップリング剤、及びこれらの縮合物が好ましいものとして挙げられる。
SiWxy ・・・(1)
前記式(1)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。
Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数であり、x+y=4の関係を満たす。
Wが複数の場合、Rが複数の場合、それぞれのW及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記式(1)で表される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、式(1)で表される珪素アルコキシド等が挙げられる。珪素アルコキシドとしては、加水分解速度の観点から、4官能の珪素アルコキシドが好ましい。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、加水分解性基(例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種等)と、他の化合物との反応性を有する官能基(例えば、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、チオール基、イソシアネート基等)を有する加水分解性珪素化合物(シランカップリング剤)等が挙げられる。
このようなシランカップリング剤を加水分解性珪素化合物として用いることで、加水分解性珪素化合物とビニル単量体の重縮合物等同士を化学的に結合させることができる。これにより、相溶性が一層向上し、塗膜の透明性が一層向上する。
シランカップリング剤としては、上記の中でも、ビニル重合性基及び/又はチオール基を少なくとも有するシランカップリング剤が好ましく、ビニル重合性基を少なくとも有するシランカップリング剤がより好ましい。
ビニル重合性基やチオール基は、上述したビニル単量体との反応性が高いため、ビニル単量体との共重合反応又は連鎖移動反応によって化学結合を効率的に形成できる。そのため、ビニル重合性基又はチオール基を有するシランカップリング剤を用いることにより、A成分を構成する他の成分(例えば、ビニル単量体等)と効率よく複合化することができる。このような、加水分解性珪素化合物(或いはその重合生成物)及び/又はビニル単量体(或いはその重合生成物)等が化学結合により複合化されたA成分を用いることにより、耐候性や強度等が一層向上した塗膜を得ることができる。
なお、本実施形態の効果は、係る特性に限定されない。
ビニル重合性基を有するシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
チオール基を有するシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が好ましいものとして挙げられる。
前記式(1)で表される加水分解性珪素化合物及びシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等が挙げられる。
これらの中でも、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類が好ましく、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランがより好ましく、加水分解速度が高いという観点から、4官能の珪素アルコキシドであるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがさらに好ましい。
重合体Aを製造するために用いる加水分解珪素化合物としては、前記式(1)で表される化合物又はシランカップリング剤の縮合物を用いることが好ましい形態として挙げられる。
式(1)で表される化合物やシランカップリング剤の縮合物を、重合体Aを製造するのに用いる加水分解性珪素化合物として適用する場合、前記式(1)で表される化合物又はシランカップリング剤の縮合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000であり、さらに好ましくは300〜950である。
重量平均分子量が前記範囲である縮合物を用いることで、重合安定性が一層向上する。
前記式(1)で表される珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。その中でも、水系組成物や得られる塗膜の性能向上の観点から、前記式(1)で表される珪素アルコキシドとシランカップリング剤とを併用することが好ましく、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びジメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種と、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランとを併用することがより好ましい。
A成分100質量部におけるビニル重合性基及び/又はチオール基を少なくとも有するシランカップリング剤の使用量の総量は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。
本実施形態においては、重合体Aを製造するために用いる加水分解性珪素化合物として、上述したものに加えて、環状シロキサンオリゴマーを併用することができる。環状シロキサンオリゴマーの併用により、柔軟性等が一層優れた塗膜を得ることができる。
環状シロキサンオリゴマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
(R’2SiO)m ・・・(2)
前記式(2)中、R’は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、及びハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。mは2以上20以下の整数である。
環状シロキサンオリゴマーの中でも、反応性等の観点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
A成分を製造する際には、加水分解性珪素化合物とともに、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、それらの縮合生成物又はキレート化物を併用することもできる。これらの化合物の併用により、耐水性等が一層優れた塗膜を得ることができる。
チタンアルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、その縮合物を用いてもよく、その場合、その縮合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。
ジルコニウムアルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウムが挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、その縮合物を用いてもよく、その場合、その縮合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。
重合体Aを重合する際に用いるビニル単量体に対する加水分解性珪素化合物の質量比(加水分解性珪素化合物/ビニル単量体)は、好ましくは0.5/99.5〜99.5/0.5であり、より好ましくは0.5/99.5〜15/85である。
A成分は、ジメチルジメトキシシラン(a)由来の構造単位を加水分解縮合物換算で20〜70質量%含有することが好ましい。
A成分中のジメチルジメトキシシラン由来の構造単位の含有量の下限値は、加水分解縮合物換算で好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上である。
A成分中のジメチルジメトキシシラン由来の構造単位の含有量の上限値は、加水分解縮合物換算で好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは68質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。
A成分中のジメチルジメトキシシラン由来の構造単位の含有量が前記範囲であると、塗膜の耐候性向上の効果が得られる。
なお、ここでいう加水分解縮合物とは、ジメチルジメトキシシランの反応性基(例えば、アルコキシ基等)が、加水分解や縮合反応によって、シラノール結合に変換された縮合物である。
ジメチルジメトキシシランの加水分解縮合物換算の含有量(質量%)は、AD成分の加熱残分として求められる重合体Aの含有量(全固形分量)、ジメチルジメトキシシランの仕込み量から、計算で求めることができる。
ジメチルジメトキシシランの加水分解縮合物換算の含有量(質量%)=ジメチルジメトキシシランの仕込み量(g)×0.617/全固形分量(g)×100
A成分を製造する際には、金属化合物の遊離金属イオンに配位してキレート化物を形成するキレート化剤を併用することもできる。
好ましいキレート化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチル等が挙げられる。
キレート化剤の分子量は、以下に限定されるものではないが、好ましくは1万以下である。
これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性珪素化合物等の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が一層向上する。
キレート化剤の配合量は、特に限定されないが、配位させる遊離金属イオン1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合であることが好ましい。
A成分の製造に用いることができる乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤;当該酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、当該酸性乳化剤のアンモニウム塩;脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤;ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等が挙げられる。
これらの乳化剤の中でも、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤(反応性乳化剤)が好ましい。このような反応性乳化剤を用いることで、重合体Aの水分散安定性が非常に良好になるとともに、得られる塗膜の耐水性も一層向上する。
アニオン性の反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられ、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。
例えば、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば、三洋化成社製、「エレミノール(商標)JS−20」、例えば、花王社製、「ラテムル(商標)S−120」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」等が挙げられる。)、例えば、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロン(商標)HS−10」等が挙げられる。)、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)SE−10N」等が挙げられる。)、例えば、アンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロンKH−1025」等が挙げられる。)、例えば、スチレンスルホン酸塩(例えば、東ソー有機化学社製、「スピノマー(商標)NaSS」等が挙げられる)、例えば、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)SR−1025」等が挙げられる。)、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルの硫酸エステル塩(例えば、花王社製、「ラテムル(商標)PD−104」等が挙げられる。)等が挙げられる。
これらの中でも、アンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩が好ましい。
また、ノニオン型の反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、(ADEKA社製、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」等が挙げられる。)、例えば、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」等が挙げられる。)、例えば、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)ER−10」等が挙げられる。)、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテル(例えば、花王社製、「ラテムル(商標)PD−420」等が挙げられる)等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、重合体であるA成分の原料(例えば、加水分解性珪素化合物、及びビニル単量体)の総量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。乳化剤の使用量を前記範囲とすることで、重合安定性が一層向上し、塗膜の耐水性が一層良好となる。
重合体Aを製造する際の、ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物の重合は、重合触媒存在下で実施することが好ましい。
ビニル単量体の重合触媒としては、特に限定されないが、熱又は還元性物質等によって自身がラジカル分解することで、ビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好ましい。
このようなラジカル重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられる。これらは水溶性であってもよいし、油溶性であってもよい。
ラジカル重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
ラジカル重合触媒の配合量は、特に限定されないが、ビニル単量体の総量100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進や低温(例えば、70℃以下等)での効率的な重合を望む場合、例えば、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と併用することが好ましい。
加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類;酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類;硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類;酸性又は弱酸性の無機塩;フタル酸、リン酸、硝酸等の酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン等の塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物が挙げられる。
これらの中で、加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての機能も有する観点から、酸性乳化剤類が好ましい。酸性乳化剤類としては、炭素数5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等)がより好ましい。
ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより複合化が効率よく達成できるので好ましい。
A成分を得る好適な方法としては、例えば、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物を重合させる、いわゆる乳化重合が挙げられる。乳化重合の具体的な方法としては、特に限定されず、例えば、ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物は、そのまま又は乳化した状態で、一括若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧〜10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合する方法等が挙げられる。
反応温度及び反応圧力は、反応条件等によっては上記した条件でなくてもよい。
乳化重合によって得られる乳化物中の固形分量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜70質量%であり、より好ましくは1〜55質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。
乳化重合の際に粒子径をより制御したい場合は、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法を採用することが好ましい。この場合の重合系のpHは、特に限定されないが、好ましくは1.0〜10.0であり、より好ましくは1.0〜6.0である。このpHは、燐酸二ナトリウム、四硼酸ナトリウム(ボラックス等)、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することができる。
A成分を製造する方法として、特に限定されないが、例えば、水及び乳化剤の存在下に、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体を、必要により溶媒存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を更に添加する手法も採用できる。但し、得られたA成分の粒子径制御が容易であるといった観点等から、乳化重合が好ましい。
A成分は、コアと、1層又は2層以上のシェル層とを有する、コア/シェル構造を有することが好ましい。
コア/シェル構造を有することで、得られる塗膜の機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)が一層向上するため好ましい。
A成分のコア/シェル構造の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により行うことができる。
コア/シェル構造を有するA成分を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、多段乳化重合が好ましい方法として挙げられる。
ここでいう多段乳化重合とは、ビニル単量体や加水分解性珪素化合物を含有する組成の異なる2種類以上の反応溶液を調製し、これらを別々の段階に分けて重合させる方法である。
多段乳化重合の一例として、2段乳化重合によってコア/シェル構造を有するA成分を合成する方法を中心に説明する。
2段乳化重合の一例としては、特に限定されないが、例えば、水及び乳化剤の存在下で、ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物を重合させてシード粒子を得る工程(第1段)と、得られたシード粒子の存在下で、加水分解性珪素化合物とビニル単量体とをそれぞれ重合する工程(第2段)とを有する方法等が挙げられる。
2段乳化重合によるA成分の製造は、第1系列(ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物)を供給して乳化重合する第1段の重合と、第1段に引き続き、第2系列(ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物)を供給し、水性媒体中において更に乳化重合する第2段の重合とからなる2段階の重合工程により行われる。この際、第2系列中の固形分量(M2)に対する第1系列中の固形分量(M1)の質量比((M1)/(M2))は、特に限定されないが、好ましくは9/1〜1/9である。
このような多段乳化重合を行うことで、粒子径がより均一な重合体粒子を得ることができる。多段乳化重合における原料の添加方法としては、第1段の重合においてシード粒子(コア)を作製し、その後に他の単量体等を追添加する方法等が好ましい。これにより、第1段の重合で得られるシード粒子(コア)の体積平均粒子径/数平均粒子径の比率が変動することなく、第2段の重合で得られる重合体粒子の粒子径を大きくすることも可能となる。
3段以上の多段乳化重合を実施する場合、2段重合と同様にして、重合の段数を増加させればよい。
本実施形態の水系組成物中のA成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0〜5.0質量%であり、より好ましくは0〜4.0質量%であり、さらに好ましくは0〜3.0質量%である。
水系組成物中のA成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及び保水性が一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜中のA成分の含有量は、好ましくは0〜38.0質量%であり、より好ましくは0〜28.0質量%、さらに好ましくは0〜25.0質量%である。塗膜中のA成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及び保水性が一層優れた塗膜を得ることができる。
<光触媒活性を有しない無機酸化物B>
本実施形態の水系組成物は、光触媒活性を有しない無機酸化物Bを含有する。ここでいう光触媒活性を有しないとは、光照射によって、酸化反応及び還元反応のいずれもが起こらないことをいう。本明細書中、光触媒活性を有しない無機酸化物Bを、単にB成分と記載する場合がある。
B成分としては、特に限定されず、例えば、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム及びそれらの複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、表面水酸基が多いという観点から、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、及びこれらの複合酸化物が好ましく、二酸化珪素がより好ましい。
B成分として用いられる無機酸化物粒子は、水和物等のコロイド粒子として存在していることが好ましい。すなわち、無機酸化物コロイド粒子であることにより、C成分といった他の成分との更なる複合化も可能となり、水性組成物としての安定性が一層向上する。
二酸化珪素は、コロイダルシリカであることが好ましい。コロイダルシリカとしては、特に限定されず、例えば、二酸化珪素を基本単位とするシリカの水又は水溶性溶媒の分散体であるコロイダルシリカ等が挙げられる。
コロイダルシリカの製造方法は、特に限定されず、例えば、ゾル−ゲル法で調製することもできる。ゾル−ゲル法で調製する場合には、Werner Stober et al.; Journal of Colloid And Interface Science, vol. 26, pp. 62−69 (1968)や、Rickey D. Badley et al.; Lang muir 6, 792−801 (1990)や、「色材協会誌」、61[9]488−493(1988)等を参照することができる。
B成分の数平均粒子径の下限は、通常30nm超であり、好ましくは35nm以上であり、より好ましくは40nm以上である。B成分の数平均粒子径の上限としては、通常160nm以下であり、好ましくは150nm以下であり、より好ましくは130nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。
B成分の数平均粒子径を30nm超とすることで、塗膜のクラックと塗膜の保水性が一層向上する。クラックが向上するメカニズムは明確にはなっていないが、数平均粒子径を30nm超とすることで、水系組成物が乾燥して塗膜になる過程の粘度上昇が抑えられるため、塗膜にクラックが生じにくくなると推測される。また、数平均粒子径を30nm超とすることで、(B)成分の乾燥物の比表面積が小さくなり、保水性が一層向上すると推測される。B成分の数平均粒子径を160nm以下とすることで、濃色基材を用いた場合における外観が一層向上する。なお、数平均粒子径は、後述する実施例に記載の透過電子顕微鏡を用いた方法により測定することができる。
コロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性、塩基性のいずれでもよい。
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、日産化学工業社製の「スノーテックス(商標)−OL」、「スノーテックス−OYL」等が挙げられる。
塩基性のコロイダルシリカとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミン等の添加により安定化されたコロイダルシリカが挙げられる。これらは市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、日産化学工業社製の「スノーテックス−30L」、「スノーテックス−XL」、「スノーテックス−YL」、「スノーテックス−ZL」、「スノーテックス−MP−1040」、日揮触媒化成社製の「カタロイドSI−45P」、「カタロイドSI−80P」、「カタロイドSS−120」、「カタロイドSS−140」、等が挙げられる。
水溶性溶媒を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、日産化学工業社製の「IPA−ST−L(イソプロピルアルコール分散タイプ)」、「IPA−ST−ZL(イソプロピルアルコール分散タイプ)」等が挙げられる。
上述したコロイダルシリカは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、少量成分として、アルミナやアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよい。また、コロイダルシリカは、安定剤として、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等)、有機塩基(テトラメチルアンモニウム等)を含んでいてもよい。
本実施形態の水系組成物中のB成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.3〜8.0質量%であり、より好ましくは0.7〜7.5質量%であり、さらに好ましくは1.0〜7.0質量%である。
水系組成物中のB成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及びクラックが一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物において、固形分換算で、重合体Aと光触媒活性を有しない無機酸化物Bと後述する光触媒活性を有する無機酸化物Cとの合計量を100質量部とした時に、光触媒活性を有しない無機酸化物Bを好ましくは20〜99質量部、より好ましくは40〜98質量部、さらに好ましくは50〜98.0質量部を含有してもよい。水系組成物中のB成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及びクラックが一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜中のB成分の含有量は、好ましくは18.25〜99.85質量%であり、より好ましくは46.00〜99.85質量%であり、さらに好ましくは56.00〜99.85質量%である。
塗膜中のB成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及びクラックが一層優れた塗膜を得ることができる。
<光触媒活性を有する無機酸化物C>
本実施形態の水系組成物は、光触媒活性を有する無機酸化物Cを含有する。
これにより、塗膜に光が照射されることで光触媒活性や親水性を発現させることができる。
本明細書中、光触媒活性を有する無機酸化物Cを、単にC成分と記載する場合がある。
光触媒活性を有する無機酸化物Cとしては、光触媒活性を有する無機酸化物であればよく、その種類は特に限定されない。
C成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、TiO2、ZnO、SrTiO3、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、RuO2、CeO2;Ti、Nb、Ta、及びVからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば、特開昭62−074452号公報、特開平02−172535号公報、特開平07−024329号公報、特開平08−089799号公報、特開平08−089800号公報、特開平08−089804号公報、特開平09−248465号公報、特開平10−099694号公報、特開平10−244165号公報等)が挙げられる。
C成分としては、化学的安定性、毒性、環境面等の観点から、好ましくはTiO2(酸化チタン)である。酸化チタンとしては、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれの結晶構造であってもよい。好ましくはルチル型である。
C成分は、光触媒活性を有する無機酸化物であって、その粒子表面を修飾処理された光触媒活性を有する無機酸化物であることが好ましい。
粒子表面を修飾処理することにより、H22又は・OH等の活性酸素種の発生量を抑制でき、塗膜の損傷を一層抑制することができる。
粒子表面を修飾する物質としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミ、銅酸化物、鉄酸化物等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。なお、Fe、Cu、Al、Pt等の金属、塩化白金酸等の錯体で粒子表面を修飾しても同様の効果が得られる。
C成分の表面を修飾処理する方法について、酸化チタンを一例にして説明する。
酸化チタンの表面を修飾処理する方法としては、特に限定されず、例えば、酸化チタンのスラリーに珪素化合物を添加し、中和処理等の工程を経て珪素の含水酸化物を析出させる方法等が挙げられる。
珪素化合物としては、特に限定されず、例えば、ケイ酸ナトリウム等の水溶性ケイ酸アルカリ金属塩を用いることができる。これらの中でも、無色であり、酸化チタンゾルが着色しないという観点から、ケイ酸ナトリウムが好ましい。
珪素の含水酸化物による修飾処理量は、酸化チタンに対して酸化物基準で3〜25質量%が好ましく、4〜23質量%がより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
当該修飾処理量が前記下限値以上であることで、活性酸素種量の増加を抑えることができるので、塗膜の損傷を防ぐことができる。また、当該修飾処理量が前記上限値以下であることで、酸化チタンの凝集を抑制し、ゾルの粘度上昇も抑制できるので、分散性及び透明性が一層向上する。
C成分としては、光触媒活性を有する粒子表面を修飾処理された無機酸化物であって、この無機酸化物に、金、銀、銅、白金、亜鉛等の金属元素が担持された無機酸化物を用いることもできる。
C成分に金属を担持する方法としては、特に限定されず、例えば、粒子表面を修飾処理された酸化チタンに、塩化銅二水和物、硝酸銀、テトラ塩化金酸四水和物等をクエン酸三ナトリウム二水和物やタンニン酸等と反応させて得る方法が挙げられ、さらに強固に担持させる目的でチオール基又はアミノ基などを有するシラン化合物などを用いてもよい。チオール基を有するシラン化合物としては、特に限定されず、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4−ジメルカプト−2−(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリブトキシシリル)ブタン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリブトキシシラン、(トリメルカプトメチル)メトキシシラン、(トリメルカプトエチル)メトキシシラン、(トリメルカプトプロピル)メトキシシラン等が挙げられる。中でも加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
金属担持量としては、酸化チタンに対して金属が0.1〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4.8質量%であることがより好ましく、0.1〜4.6質量%であることがさらに好ましい。
当該担持量が前記範囲であることで、金属担持酸化チタンの沈降を抑制し、耐生物汚染性に優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物中のC成分の含有量は、好ましくは0.05〜2.5質量%であり、より好ましくは0.10〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.15〜1.4質量%である。
C成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、クラック、及び保水性が一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物において、固形分換算で、重合体Aと光触媒活性を有しない無機酸化物Bと光触媒活性を有する無機酸化物Cとの合計量を100質量部とした時に、特に限定されないが、光触媒活性を有する無機酸化物Cを好ましくは1〜40質量部、より好ましくは3〜38質量部、さらに好ましくは3〜35質量部を含有してもよい。水系組成物中の光触媒活性を有する無機酸化物Cの含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、クラック、及び保水性が一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜中のC成分の含有量は、特に限定されないが好ましくは1質量%〜35.0質量%であり、より好ましくは4.0〜35.0質量%であり、さらに好ましくは4.0質量%〜33.0質量%、さらにより好ましくは6.0質量%〜33.0質量%、よりさらに好ましくは6.0質量%〜29.0質量%である。
C成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、及び保水性が一層優れた塗膜を得ることができる。
<フルオロカーボン界面活性剤D>
本実施形態の水系組成物は、フルオロカーボン界面活性剤Dをさらに含有することが好ましい。
本明細書中、フルオロカーボン界面活性剤Dを単にD成分と記載する場合がある。
D成分を含有することにより、本実施形態の水系組成物及びこれを含む水系塗料を用いて塗装する際における、有機基材等への濡れ性が一層向上し、はじき等の外観上のトラブルも一層抑制することができる。さらには、塗膜の均一性も一層向上する。これらの理由としては定かではないが、D成分を含有することにより、水系組成物の表面張力を低下させることができると推測される。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
D成分としては、特に限定されないが、例えば、両性界面活性剤が好ましい。
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン性両性界面活性剤、陰イオン性両性界面活性剤、陽イオン性両性界面活性剤等が挙げられる。好ましい具体例としては、例えば、炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を有する両性界面活性剤が挙げられる。
炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を有する両性界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、陰イオン性基と陽イオン性基とを有するパーフルオロアルキル化合物等が挙げられる。これらの中でも、塗料の表面張力の低下の観点から、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、陰イオン性基と陽イオン性基とを有するパーフルオロアルキル化合物が好ましい。
パーフルオロアルキルスルホン酸塩としては、以下に限定されないが、例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸塩としては、例えば、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されないが、例えば、AGCセイミケミカル社製の「サーフロンS−211」等が挙げられる。
パーフルオロアルキルアミンオキシドとしては、例えば、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されないが、例えば、AGCセイミケミカル社製の「サーフロンS−241」等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物としては、例えば、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されないが、例えば、DIC社製の「メガファックF−444」、AGCセイミケミカル社製の「サーフロンS−242」等が挙げられる。
陰イオン性基と陽イオン性基とを有するパーフルオロアルキル化合物としては、例えば、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、以下に限定されないが、例えば、AGCセイミケミカル社製の「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系組成物中のD成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.0001〜0.50質量%であり、より好ましくは0.001〜0.45質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.40質量%である。
D成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、及び耐生物汚染性が一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜中のD成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.002質量%〜17.5質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜10.0質量%、さらに好ましくは0.15質量%〜10.0質量%である。D成分の含有量を前記範囲とすることで、濡れ性とスプレー適性とが優れた水系組成物を得ることができ、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、及び耐生物汚染性が一層優れた塗膜を得ることができる。
<退色性色素E>
本実施形態の水系組成物は、退色性色素Eをさらに含有することが好ましい。
本明細書中、退色性色素Eを、単にE成分と記載する場合がある。
本実施形態の水系組成物が退色性色素Eを含有することにより、塗装忘れ、重複塗装、塗装むら等のトラブルを防ぐことができる。
E成分としては、太陽光の照射により失色し、下地の意匠性を損ねないものが好ましい。失色までの時間は季節や照射方角等により異なるが、通常、目視で失色が確認されるまでの期間が、20日以下であることが好ましく、より好ましくは10日以下であり、さらに好ましくは3日以下である。
E成分としては、太陽光の照射で失色する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントブルーFCF、エリスロシン、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、及びファーストグリーンFCFからなる群より選ばれる1種等が挙げられる。これらの中でも、発色性が良好で、失色速度も速い観点から、メチレンブルーが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の水系組成物中のE成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.0005〜0.04質量%であり、より好ましくは0.001〜0.035質量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.03質量%である。水系組成物中のE成分の含有量を前記範囲とすることで、塗膜の発色性及び退色性が一層向上する。ここでいう発色性とは、塗装面と未塗装面とが色の違いから目視で区別される程度まで発色する性質をいい、退色性とは、基材の意匠性を損ねない色の程度まで退色する性質をいう。
本実施形態の水系組成物から得られる塗膜中のE成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜1.0質量%であり、より好ましくは0.05〜0.9質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.8質量%である。E成分の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、及び耐生物汚染性が一層優れた塗膜を得ることができる。
<消泡剤F>
本実施形態の水系組成物は、消泡剤Fを含有してもよい。消泡剤Fを含有することにより、本実施形態の水系組成物及びこれを含む水系塗料を用いて塗装する際における、有機基材等への濡れ性が一層向上し、はじきや泡の巻き込みによるクレーター(スプレー適性)等の外観上のトラブルも一層抑制できる。消泡剤Fとしては、特に限定されないが、例えば、鉱物油系消泡剤などを用いることができる。鉱物油系消泡剤とは、キャリアと呼ばれる消泡成分に鉱物油を含む消泡剤である。
消泡剤は、通常「キャリア」と「核剤」とから構成される。核剤としては、特に限定されないが、例えば、無機系の疎水性シリカ、有機系の金属石鹸又はアマイドワックス等を用いることができる。
鉱物油系消泡剤としては、特に限定されないが、市販品を用いることもできる。
疎水性シリカタイプの鉱物油系消泡剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ノプコ8034、ノプコ8034−L、SNデフォーマーAP、SNデフォーマーH−2、SNデフォーマーTP−33、SNデフォーマーVL、SNデフォーマー113、SNデフォーマー154、SNデフォーマー154S、SNデフォーマー313、SNデフォーマー314、SNデフォーマー316、SNデフォーマー317、SNデフォーマー318、SNデフォーマー319、SNデフォーマー321、SNデフォーマー323、SNデフォーマー364、SNデフォーマー414、SNデフォーマー456、SNデフォーマー474、SNデフォーマー476−L、SNデフォーマー480、SNデフォーマー777、SNデフォーマー1341、SNデフォーマー1361(サンノプコ社製)BYK−1740(BYK社製)が挙げられ、金属石鹸タイプの鉱物油系消泡剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ノプコDF−122、ノプコDF−122−NS、ノプコNDW、ノプコNXZ、SNデフォーマー122−SV、SNデフォーマー269、SNデフォーマー1010(サンノプコ社製)が挙げられ、アマイドワックスタイプの鉱物油系消泡剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ノプコ267−A、ノプコDF−124−L、SNデフォーマーTP−39、SNデフォーマー477T、SNデフォーマー477−NS、SNデフォーマー479、SNデフォーマー1044、SNデフォーマー1320、SNデフォーマー1340、SNデフォーマー1360、SNデフォーマー5100(サンノプコ社製)が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の水系組成物中の、消泡剤Fの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001質量%〜5.000質量%、より好ましくは0.0020質量%〜4.5000質量%であり、さらに好ましくは、0.0025〜4.000質量%である。消泡剤Fの含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、スプレー適性、及び濡れ性が一層優れた水系塗料及び塗膜を得ることができる。
塗膜中の消泡剤Fの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.024質量%〜1.250質量%、より好ましくは0.040質量%〜1.200質量%、さらに好ましくは0.0625〜1.1000質量%である。消泡剤Fの含有量を前記範囲とすることで、塗膜を得る水系組成物のスプレー適性、濡れ性を良好にし、濃色基材での外観、耐候性、及び耐汚染性が一層優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系組成物中の固形分の含有量(固形分量)は、特に限定されないが、塗膜の均一性の観点から、好ましくは0.5〜10.0質量%であり、より好ましくは1.0〜8.0質量%であり、さらに好ましくは1.5〜6.0質量%である。
水系組成物中の固形分の含有量を前記下限値以上とすることにより、耐汚染性が一層向上する。水系組成物中の固形分の含有量を前記上限値以下とすることにより、透明性と塗膜のクラックとが一層向上する。
ここでいう固形分量は、後述する実施例に記載の方法によって求めることができる。さらに、塗膜の用途によっては、塗膜の膜厚が薄いことも要求される場合がある。そのような場合であっても、水系組成物中の固形分量が前記上限値以下であることにより、薄い膜厚でありながら、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性といった物性に優れた塗膜とすることができる。水系組成物中の固形分量が前記下限値以上であることにより、塗膜形成時に要する乾燥時間を短縮することが可能となり、作業効率を一層向上させることができる。
〔水系塗料〕
本実施形態の水系塗料は、上述した水系組成物を含有する。
本実施形態の水系塗料は、例えば、上述した水系組成物に、必要に応じて他の成分を混合することにより得られる。
前記他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、防錆剤、可塑剤、増粘剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤、帯電調整剤等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顔料としては、例えば光触媒活性を有さない無機酸化物が挙げられる。以下に限定されるものではないが、例えば酸化銅(II)(CIKナノテック社製、「CUAP15WT%−G180」)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられる。
本実施形態の水系塗料から得られる塗膜中の顔料の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜5.0質量%であり、より好ましくは0.02〜4.5質量%である。顔料の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、及び耐生物汚染性が優れた塗膜を得ることができる。
本実施形態の水系塗料は、その用途や塗布対象の材料等に応じて、適宜好適な方法で塗布することができる。塗布方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法が挙げられる。好ましくはスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法が挙げられ、より好ましくはスプレーコーティング法である。
〔塗膜〕
本実施形態の塗膜は、上述の水系塗料から得られる。
具体的には、例えば、前記水系塗料を所定の塗布対象に塗布した後、乾燥させて揮発分を除去することにより得られる。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、例えば3〜40℃の温度で風乾させてもよいし、40〜120℃程度の温度での加熱乾燥処理や、紫外線照射処理等を行ってもよい。好ましくは、3〜40℃の温度で風乾させることである。乾燥する時の湿度は、特に限定されるものではないが、3〜40℃の温度で乾燥する場合は、湿度10〜100RH%であることが好ましい。上記の乾燥条件とすることで、塗膜の外観及び塗膜のクラックを一層向上させることができる。
本実施形態の塗膜の厚みは、特に限定されないが、0.15μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.15μm以上4.0μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上3.5μm以下、よりさらに好ましくは0.15μm以上3.0μmである。塗膜の厚みが上記範囲であることにより、塗膜の外観や塗膜のクラックを一層向上させることができ、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性が一層優れた塗膜を得ることができる。
〔複合塗膜〕
本実施形態の複合塗膜は、上述の塗膜と、下塗り層からなる塗膜との少なくとも2層を有し、前記下塗り層からなる塗膜が、重合体と、防藻及び/又は防カビ剤とを含有する。
本実施形態の複合塗膜は、例えば、下塗り層からなる塗膜の表面に、上述した水系組成物を含有する前記水系塗料を塗布し、乾燥させて塗膜を形成することで得られる。
前記下塗り層からなる塗膜は、重合体と、1種以上の防藻及び/又は防カビ剤を含有することが好ましい。
(下塗り層からなる塗膜に含まれる重合体)
本実施形態の複合塗膜を構成する下塗り層からなる塗膜は、重合体を含有する。これにより、耐候性に優れる複合塗膜を形成することができる。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
重合体としては、特に限定されないが、例えば、乳化重合等の方法で得られる重合体を用いることができる。重合体としては、以下に限定されないが、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合のいずれかの重合反応を水性媒体中で行うことにより得られる重合体等が挙げられる。
前記重合体としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、ポリビニルアセテート系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル系重合体、エチレン酢酸ビニル系重合体、シリコーン系重合体、フッ素系重合体、ポリブタジエン系重合体、スチレンブタジエン系重合体、NBR系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、塩素化ポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリスチレン系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系重合体、スチレン−無水マレイン酸系重合体等に代表される単独重合体又は共重合体、シリコーン変性(メタ)アクリル系重合体、フッ素−(メタ)アクリル系重合体、(メタ)アクリル−シリコーン系重合体、エポキシ−(メタ)アクリル系重合体等に代表される変性共重合体が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
上述した重合体の単独重合体、共重合体、変性共重合体等(以下、これらを「重合体」と総称する場合がある。)は、水分散体の状態で得られることが好ましい。これら重合体の好適な態様としてはエマルジョンが挙げられ、その具体例としては、以下に限定されないが、例えば、アクリルエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。これらは、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体又は後述する加水分解性珪素化合物等の乳化重合により得ることができる。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜には、前記重合体以外にも、重合体に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物をさらに含んでもよい。
このような化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(ポリ)イソシアネート化合物、(ポリ)エポキシ化合物、アミノ化合物、(ポリ)カルボキシ化合物、(ポリ)ヒドロキシ化合物、グリコール化合物、シラノール化合物、シリル化合物、アルコキシ化合物、(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合体は、重合単量体としてビニル単量体を用いることができる。
重合体の製造に用いることができるビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、カルボキシル基含有ビニル化合物、水酸基含有ビニル化合物、グリシジル基含有ビニル化合物、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物、アニオン型ビニル化合物等の官能基を含有するビニル単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜50のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜100のエチレンオキシド基を有する(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられる。
カルボキシル基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の2塩基酸のハーフエステルが挙げられる。カルボキシル基を含有するビニル単量体を用いることによって、重合体にカルボキシル基を導入することができる。これにより、エマルジョンとしての安定性を一層向上させ、外部からの分散破壊作用に対する高い抵抗力を塗膜に付与できるものと推測される。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。導入するカルボキシル基は、その一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類やNaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。重合体の製造に用いるビニル単量体の総量におけるカルボキシル基含有ビニル単量体の使用量は、耐水性の観点から、好ましくは0〜50質量%である。
水酸基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキシド基の数が1〜100である(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート;プロピレンオキシド基の数が1〜100である(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学社製のカプロラクトン付加モノマーの商品名)、又は、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
重合体の製造に用いるビニル単量体の総量における水酸基含有ビニル単量体の割合は、以下に限定されるものではないが、塗膜の耐水性の観点から、好ましくは0〜95質量%である。
グリシジル基含有ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
2級及び/又は3級アミド基を有するビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
前記重合体は、重合単量体として、上述したビニル単量体以外のビニル単量体を用いることができる。
上述したビニル単量体以外のビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;ブタジエン等のジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類;アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体を重合反応によって製造する場合、使用するビニル単量体の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。
連鎖移動剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタン等の芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸等のチオカルボン酸又はこれらの塩若しくはこれらのアルキルエステル類;ポリチオール類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド等のジスルフィド類;チオグリコール、α−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合体は、上述したビニル単量体と加水分解性珪素化合物との重合反応で製造することが好ましい。
かかる場合、当該重合体を製造するのに用いる加水分解性珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で表される化合物、シランカップリング剤、及びこれらの縮合物が好ましいものとして挙げられる。
SiWxRy ・・・(1)
前記式(1)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。
Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表す。
xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数であり、x+y=4の関係を満たす。
Wが複数の場合、Rが複数の場合、それぞれのW及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記式(1)で表される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、式(1)で表される珪素アルコキシド等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、加水分解性基(例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種等)と、他の化合物との反応性を有する官能基(例えば、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、チオール基、イソシアネート基等)を有する加水分解性珪素化合物(シランカップリング剤)等が挙げられる。
このようなシランカップリング剤を加水分解性珪素化合物として用いることで、加水分解性珪素化合物とビニル単量体の重縮合物等同士を化学的に結合させることができる。これにより、相溶性が一層向上し、塗膜の透明性が一層向上する。
上述したシランカップリング剤の中でも、ビニル重合性基及び/又はチオール基を少なくとも有するシランカップリング剤が好ましく、ビニル重合性基を少なくとも有するシランカップリング剤がより好ましい。
ビニル重合性基やチオール基は、上述したビニル単量体との反応性が高いため、ビニル単量体との共重合反応又は連鎖移動反応によって化学結合を効率的に形成できる。そのため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を用いることで、重合体を構成する他の成分(例えば、ビニル単量体等)と効率よく複合化することができる。このような、加水分解性珪素化合物(或いはその重合生成物)及び/又はビニル単量体(或いはその重合生成物)等が化学結合により複合化された重合体を用いることで、耐候性や強度等が一層向上した複合塗膜を得ることができる。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
ビニル重合性基を有するシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
チオール基を有するシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が好ましいものとして挙げられる。
前記式(1)で表される加水分解性珪素化合物及びシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等が挙げられる。
これらの中でも、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類が好ましく、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランがより好ましい。
これらの式(1)で表される珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水系組成物や得られる塗膜の性能向上の観点から、前記式(1)で表される珪素アルコキシドとシランカップリング剤とを併用することが好ましく、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びジメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種と、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランとを併用することがより好ましい。
重合体を製造する際には、加水分解性珪素化合物とともに、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、それらの縮合生成物又はキレート化物を併用することもできる。
これらの化合物の併用により、耐水性等が一層優れた塗膜を得ることができる。
チタンアルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウムが挙げられる。
重合体を製造する際には、金属化合物の遊離金属イオンに配位してキレート化物を形成するキレート化剤を併用することもできる。
好ましいキレート化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチル等が挙げられる。
キレート化剤の分子量は、以下に限定されるものではないが、好ましくは1万以下である。
これらのキレート化剤を用いることにより、加水分解性珪素化合物等の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が一層向上する。
キレート化剤の配合量は、特に限定されないが、配位させる遊離金属イオン1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合であることが好ましい。
重合体の製造に用いることができる乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤;当該酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、当該酸性乳化剤のアンモニウム塩;脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤;ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等が挙げられる。
これらの乳化剤の中でも、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤(以下、単に反応性乳化剤と記載する場合がある。)が好ましい。このような反応性乳化剤を用いることで、重合体の水分散安定性が非常に良好になるとともに、得られる塗膜の耐水性も一層向上する。
アニオン性の反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられ、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。
アニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば、三洋化成社製、「エレミノール(商標)JS−20」、花王社製、「ラテムル(商標)S−120」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロン(商標)HS−10」等が挙げられる。)、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)SE−10N」等が挙げられる。)、アンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロンKH−1025」等が挙げられる。)、スチレンスルホン酸塩(例えば、東ソー有機化学社製、「スピノマー(商標)NaSS」等が挙げられる)、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)SR−1025」等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルの硫酸エステル塩(例えば、花王社製、「ラテムル(商標)PD−104」等が挙げられる。)等が挙げられる。
これらの中でも、アンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩が好ましい。
また、ノニオン型の反応性乳化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、(ADEKA社製、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」等が挙げられる。)、α−〔2−〔(アリルオキシ)−1−(アルキルオキシメチル)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製、「アデカリアソープ(商標)ER−10」等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテル(例えば、花王社製、「ラテムル(商標)PD−420」等が挙げられる)等が挙げられる。
上述した乳化剤の使用量は、重合体の原料(例えば、加水分解性珪素化合物、及びビニル単量体)の総量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下である。乳化剤の使用量を前記範囲とすることで、重合安定性が一層向上し、塗膜の耐水性が一層良好となる。
ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物の重合は、重合触媒存在下で実施することが好ましい。
ビニル単量体の重合触媒としては、特に限定されないが、熱又は還元性物質等によって自身がラジカル分解することで、ビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好ましい。
このようなラジカル重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられる。これらは水溶性であってもよいし、油溶性であってもよい。
ラジカル重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
ラジカル重合触媒の配合量は、特に限定されないが、ビニル単量体の総量100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進や低温(例えば、70℃以下等)での効率的な重合を望む場合、例えば、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と併用することが好ましい。
加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類;酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類;硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類;酸性又は弱酸性の無機塩;フタル酸、リン酸、硝酸等の酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン等の塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物が挙げられる。
これらの中で、加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての機能も有する観点から、酸性乳化剤類が好ましい。酸性乳化剤類としては、炭素数5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等)がより好ましい。
ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより複合化が効率よく達成できるため、好ましい。
重合体を得る好適な方法としては、例えば、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物を重合させる、いわゆる乳化重合が挙げられる。
乳化重合の具体的な方法としては、特に限定されず、例えば、ビニル単量体及び加水分解性珪素化合物は、そのまま又は乳化した状態で、一括若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧〜10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合する方法等が挙げられる。
反応温度及び反応圧力は、反応条件等によっては前記条件に限定されない。
乳化重合によって得られる乳化物中の固形分量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜70質量%であり、より好ましくは1〜55質量%である。
乳化重合の際に粒子径をより制御したい場合は、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法を採用することが好ましい。この場合の重合系のpHは、特に限定されないが、好ましくは1.0〜10.0であり、より好ましくは1.0〜6.0である。このpHは、燐酸二ナトリウム、四硼酸ナトリウム(ボラックス等)、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することができる。
重合体を製造する方法においては、特に限定されないが、例えば、水及び乳化剤の存在下で、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体を、必要により溶媒存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水をさらに添加する手法も採用できる。なお、得られた重合体の粒子径の制御が容易であるといった観点等から、乳化重合で重合体を得ることが好ましい。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜中の重合体の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜80質量%であり、より好ましくは1.0〜75質量%であり、さらに好ましくは5.0〜70質量%である。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜中の重合体の含有量を前記範囲とすることで、濃色基材での外観、耐候性、耐汚染性、及び耐生物汚染性が一層優れた複合塗膜を得ることができる。
(下塗り層からなる塗膜に含まれる防藻及び/又は防カビ剤)
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜は、防藻及び/又は防カビ剤をさらに含有する。
これにより、太陽光等の光が照射されにくい場所においても、耐生物汚染性に優れる複合塗膜を形成することができる。なお、本実施形態の作用はこれらに限定されない。
防藻及び/又は防カビ剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、有機ヨウ素系化合物、アルコール系化合物、ニトリル化合物、ジスルフィド系化合物、チオカーバメート系化合物、含窒素環化合物等が挙げられる。これらの中でも、含窒素環化合物が好ましい。含窒素環化合物としては、チアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。これらの中でもイソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
特に防藻性に優れたものとしては、例えば、トリアジン系化合物等が挙げられる。
特に防カビ性に優れたものとしては、例えば、チアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜においては、防藻性と防カビ性とを併せ持つものを使用してもよく、そのようなものとしては、特に限定されないが、例えば、分子中に塩素原子を含むイソチアゾリン系化合物等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
チアゾリン系化合物としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、特に限定されないが、例えば、日本曹達社製の「ミルカット−180」、「バイオカット−LC3」、大和化学工業社製の「アモルデンALK」等が挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、特に限定されないが、例えば、日本曹達社製の「バイオカット−TR120」、アーチケミカルズ社製の「PROXEL GXL」、「PROXEL BDN」、ダウケミカル社製「KLARIX 4000」、「ROZONE 2000」、「ROCIMA 252」、「ROCIMA 200」、「ROCIMA 345」、「ROCIMA 350」、「ROCIMA 553」、「BIOBAN 551S」、「スケーンM−8」等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、特に限定されないが、例えば、日本曹達社製の「バイオカット−N35」、「DP−2159」、「DP−2615」。「DP−2619」、「DP−2623」、大和化学工業社製の「アモルデンNBP−8」、「アモルデンNBPconc」、三協化成社製の「サンアルガ1907」等が挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、特に限定されないが、例えば、日本曹達社製の「バイオカット−N35」、「バイオカット−AF40」、「DX−2」、ダウケミカル社製の「ROCIMA 363」等が挙げられる。
下塗り層からなる塗膜中の防藻及び/又は防カビ剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%〜30.0質量%であり、より好ましくは0.01質量%〜15.0質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%〜15.0質量%である。下塗り層からなる塗膜中の防藻及び/又は防カビ剤の含有量を前記下限値以上とすることで、複合塗膜の耐生物汚染性が一層向上する。
本実施形態の複合塗膜においては、本実施形態の効果が得られる範囲内において、他の抗菌剤も併用してもよい。
他の抗菌剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、銀系化合物、銅系化合物、亜鉛系化合物等が挙げられる。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜は、例えば、上述した重合体、並びに、防藻及び/又は防カビ剤以外に、必要に応じて他の成分を混合することもできる。
前記他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、防錆剤、可塑剤、増粘剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤、帯電調整剤等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の複合塗膜は、上述の塗膜、すなわち、上述の水系組成物を含有する水系塗料により得られる塗膜と、上述した下塗り層からなる塗膜との、少なくとも2層を有する。
本実施形態の複合塗膜は、下塗り層からなる塗膜の上に、直接上述の塗膜が形成されていてもよく、他の所定の層を介した多層構造、あるいは他の所定の層が下塗り層からなる塗膜の下に形成された多層構造であってもよい。上述の水系組成物を含有する水系塗料により得られる塗膜が、最上層にあることが好ましい。
本実施形態の複合塗膜に用いる下塗り層からなる塗膜は、その用途や塗布対象の材料等に応じて、適宜好適な方法で塗布して得ることができる。
塗布方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ワイヤーバーコート法等が挙げられる。
上述の塗膜は、下塗り層又は他の所定の層の上に、例えば、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法を適用して形成することができ、これにより、本実施形態の複合塗膜を作製することができる。
〔塗装製品〕
本実施形態の塗装製品は、基材と、上述の塗膜又は上述の複合塗膜と、を含む。上述の塗膜又は上述の複合塗膜は、前記基材の表面の少なくとも一部に形成された状態であればよい。
本実施形態の塗装製品は、例えば、上述の水系組成物を含有する水系塗料を、各種基材の表面に塗布して乾燥させることにより得られる。
また、本実施形態の塗装製品は、基材と、上述した複合塗膜とを具備する形態とすることもできる。当該複合塗膜を具備する塗装製品は、上述した重合体と防藻及び/又は防カビ剤とを含有する下塗り層を各種基材の表面に塗布して乾燥させることにより形成した後、さらに下塗り層の表面に上述の水系塗料を塗布して乾燥させることにより得られる。
本実施形態の塗装製品に使用する基材としては、その表面に塗膜が形成可能なものであれば特に限定されず、有機基材、無機基材のいずれでもよいが、耐候性、耐汚染性向上の観点から、有機基材が好ましい。
基材の材料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、合成樹脂、天然樹脂等の有機基材;金属、セラミックス、ガラス、石、セメント、コンクリート等の無機基材が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記合成樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂等)が挙げられる。
合成樹脂の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン−アクリル樹脂等が挙げられる。
天然樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、セルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂等が挙げられる。
基材が上述した合成樹脂又は天然樹脂等を用いた樹脂製の基材である場合、必要に応じて、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
本実施形態の塗装製品は、基材と、その基材上に形成された前記塗膜とを備えることが好ましく、その塗膜はコーティング等としても有用である。
本実施形態の水系塗料により得られる塗膜は、濃色基材でも外観を損なわず、長期に亘り、外観、防汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持できるため、従来では使用困難であった環境にも好適に用いることができる。
かかる観点から、本実施形態の塗装製品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、各種レンズ、構造部材、住宅等建築設備、車両用照明灯のカバー及び窓ガラス、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用及び鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で用いられる電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装が挙げられる。
本実施形態の塗装製品の製造方法としては、例えば、基材の表面の少なくとも一部に、上述した水系塗料又は上述の水系組成物を塗布し、必要に応じて乾燥等を行うことで、塗膜を形成させる方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態の塗膜を、基材上に塗布した後、その塗膜をその基材から剥離させて、別の基材に接着してもよい。あるいは、本実施形態の塗膜を、基材上に塗布した後、その基材と密着させた状態で、別の基材に接着させてもよい。
本実施形態の水系組成物は、各種の水系塗料に配合してもよい。かかる水系塗料は、外観、耐汚染性、シーリング汚染性、耐生物汚染性、さらには透明性、及び耐候性等に優れた塗膜を形成することができる。このように、本実施形態の塗膜は、外観、耐汚染性やシーリング汚染性、耐生物汚染性、さらには透明性、及び耐候性等にも優れており、建築物の外装塗料等を含む広い用途に用いることができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
後述する特性の測定の際に用いる基材を下記のようにして製造した。
〔エナメル塗料を予め塗装した7cm×15cmの基材の作製〕
(顔料ディスパージョンの作製)
分散剤(BASFジャパン社製、「Pig.Disperser MD20」)5.35g、アンモニア水0.5g、プロピレングリコール23.5g、水147.5g、酸化チタン(塩素法ルチル型酸化チタン;石原産業社製、「タイペークCR−97」)333.5g、及び消泡剤(変性シリコーン系;サンノプコ社製、「SNデフォーマー1310」)2.85gの配合物を、卓上サンドミル(カンペパピオ社製、バッチ式卓上サンドミル)にて20分間分散させて、顔料ディスパージョンを得た。
(防藻防カビ剤を含まないエナメル塗料Xの作製)
後述する〔製造例1〕で得られた重合体エマルジョン109.0gに、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート(チッソ社製、「CS−12」)10.0g、エチレングリコールモノブチルエーテル50質量部と水50質量部との混合液10.0g、上述のようにして得た顔料ディスパージョン51.4g、及び増粘剤(旭電化工業社製、「アデカノールUH−438」)の10質量%水溶液0.5gを添加し、1時間混合してエナメル塗料Xを得た。
(エナメル塗料Xを予め塗装した7cm×15cmの基材の作製)
7cm×15cmの硫酸アルマイト板に上述のようにして得たエナメル塗料Xを、ワイヤーコーターNo.50を用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%で48時間乾燥させ、エナメル塗料Xを予め塗装した7cm×15cmの基材を得た。
(防藻防カビ剤を含むエナメル塗料Yの作製)
後述する〔製造例1〕で得られた重合体エマルジョン109.0gに、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート(チッソ社製、「CS−12」)10.0g、エチレングリコールモノブチルエーテル50質量部と水50質量部との混合液10.0g、上述のようにして得た顔料ディスパージョン51.4g、増粘剤(旭電化工業社製、「アデカノールUH−438」)の10質量%水溶液0.5g、防藻防カビ剤N−35(日本曹達社製、固形分量35質量%)0.9g、防藻防カビ剤AF−40(日本曹達製、固形分量40質量%)0.4gを添加し、1時間混合してエナメル塗料Yを得た。
(エナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材の作製)
7cm×15cmの硫酸アルマイト板に上述のようにして得たエナメル塗料Yを、ワイヤーコーターNo.50を用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%で48時間乾燥させ、エナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材を得た。
各種物性を下記1〜3により測定した。
(1.各成分の含有量及び固形分量)
試料2.0gをアルミ皿にとり、150℃で1時間加熱した。加熱前後の試料の質量を測定し、その差から固形分量(質量%)を計算した。この方法に準拠して、各成分及び水系組成物中の固形分量をそれぞれ測定した。各成分の固形分量から、塗膜中の成分の含有量を算出した。
(2.光触媒活性を有する無機酸化物C及び重合体Aの水分散体の数平均粒子径)
試料の水分散体について、ローディングインデックスが1.5〜3.0となるようイオン交換水を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックUPA−9230」)を用いて数平均粒子径を測定した。測定条件を以下に示す。
・ローディングインデックス:1.5〜3.0
・測定時間:60秒
・測定回数:3回
(3.ガラス転移温度)
セイコーインスツル社、「DCS6220」を用いて、測定用サンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、得られたDSC曲線の変極点よりガラス転移温度を求めた。なお、測定条件を以下に示す。
・測定用セル:アルミニウム製容器
・測定用サンプルの作製:アルミニウム製容器に後述する〔製造例1〕で得られた重合体エマルジョン40mgを入れて、130℃で1時間乾燥させて測定用サンプルを作製した。
各種特性等を下記4〜13により測定した。
(4.塗装前後の色差)
7cm×15cmの硫酸アルマイト板に水性セラミシリコンSR−422(エスケー化研製)を、ワイヤーコーターNo.50を用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%で48時間乾燥させ、水性セラミシリコンを塗装した7cm×15cmの基材を得た。水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて水性セラミシリコンを塗装した基材に塗装した。水系組成物を塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。試験板について、塗装前後の色差をBYKガードナー社製「カラーガイド」を用いて測定した。色差4.0以下であれば濃色下地での色差変化が少なく良好であることを示す。
(5.耐候性試験:3000時間後の光沢保持率)
上述のようにして作製したエナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。スガ試験器製、「サンシャインウェザーメーター」を使用して曝露試験(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/2時間)を行った。曝露試験前の試験板の60°光沢度と、曝露試験3000時間後の試験板の60°光沢度を、光沢計(BYKガードナー社製、「マイクロトリグロスμ」)を用いてそれぞれ測定した。
そして、下記式に基づき、曝露試験3000時間後の試験板の光沢保持率を算出した。なお、エナメル塗料Yを予め塗装した基材のみで評価した結果は、曝露3000時間後の光沢保持率80%であり、この値よりも光沢保持率の値が大きい場合、耐候性は良好であることを示す。
光沢保持率(%)=曝露試験3000時間後の60°光沢度/曝露試験前の60°光沢度×100
(6.耐汚染性)
上述のようにして作製したエナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。試験板を一般道路(トラック通行量500〜1000台/日程度)に面したフェンスに貼り付けて、6ヶ月間又は1年間静置した。
静置後の試験板の汚染の度合いを、以下の基準に基づく目視で評価した。
なお、エナメル塗料Yを予め塗装した基材のみで評価した結果は、6ヶ月間、1年間共に「×」の評価であった。
[評価基準]
○:ほとんど汚れが確認されなかった。
△:多少の汚れが確認されたものの、実用上問題がない程度であった。
×:多量の汚れが確認された。
(7.シーリング汚染性)
上述のようにして作製したエナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。試験板上に、1成分形シリコーン系シーリング材8060プロ(セメダイン社製)を、乾燥後のシーリング材の大きさが、面積が1cm×2cm、高さ1cmになるよう塗布し、シーリング材を10日間乾燥させた。
試験板を一般道路(トラック通行量500〜1000台/日程度)に面したフェンスに貼り付けて所定期間静置した。
静置後の試験板の汚染の度合いを、静置前後の色差(L値)をBYKガードナー社製「カラーガイド」を用いて測定した。
以下の基準に基づき評価した。
◎:8週間の静置でL値の差が2以下、12週間の静置でL値の差が3以下
○:8週間の静置でL値の差が2以下、12週間の静置でL値の差が3超4以下
△:8週間の静置でL値の差が2以下、12週間の静置でL値の差が4超
×:8週間の静置でL値の差が2超
(8.耐生物汚染性)
<下塗り層に防藻防カビ剤を含まない耐生物汚染性>
エナメル塗料Xを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。
試験板を茨城県笠間市で、周囲に木が茂っている建屋の北面に面したフェンスに、水平面から45°傾けて、塗装された面が上向きになるよう貼り付けて、6月から2か月間静置した。
静置後の試験板の汚染の度合いを、以下の基準に基づく目視で評価した。
なお、エナメル塗料Xを予め塗装した基材のみで評価した結果は、「×」の評価であった。
[評価基準]
○:ほとんど藻やカビの汚れが確認されなかった。
△:多少の藻やカビの汚れが確認されたものの、実用上問題がない程度であった。
×:多量の藻やカビの汚れが確認された。
<下塗り層に防藻防カビ剤を含む耐生物汚染性>
防藻防カビ剤を含むエナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。
試験板を茨城県笠間市で、周囲に木が茂っている建屋の北面に面したフェンスに、水平面から45°傾けて、塗装された面が上向きになるよう貼り付けて、6月から1年間静置した。
静置後の試験板の汚染の度合いを、以下の基準に基づく目視で評価した。
なお、防藻防カビ剤を含むエナメル塗料Yを予め塗装した基材のみで評価した結果は、1年は「〇」の評価であった。
[評価基準]
○:ほとんど藻やカビの汚れが確認されなかった。
△:多少の藻やカビの汚れが確認されたものの、実用上問題がない程度であった。
×:多量の藻やカビの汚れが確認された。
(9.光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径)
光触媒活性を有しない無機酸化物Bを水に希釈し、コロジオン膜上で乾燥させた。このコロジオン膜を、透過電子顕微鏡(日立製作所製製、H−7100)を用い、加速電圧75kV、倍率10万倍にして撮影した。撮影した視野に含まれる粒子を、画像解析ソフトウェアA像くん(旭化成エンジニアリング社製)を用い画像から無機酸化物Bの粒子径を測定した。90個以上150個以下の数の各粒子の粒子径を測定し、これらを相加平均した粒子径を無機酸化物Bの数平均粒子径として算出した。
(10.塗膜のクラック)
7cm×15cmの硫酸アルマイト板に水性セラミシリコンSR−422(エスケー化研製)を、ワイヤーコーターNo.50を用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%で48時間乾燥させ、水性セラミシリコンを塗装した7cm×15cmの基材を得た。水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて水性セラミシリコンを塗装した基材に塗装して塗膜を形成した。水系組成物の塗膜を形成した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。これを、マイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−5000)を用いて、倍率1000倍にて塗膜のクラックを撮影した。撮影した写真のクラックが視野の面積の何%に相当するかを、画像解析ソフトウェアA像くん(旭化成エンジニアリング社製)を用いて、算出した。この面積が小さいほど、塗膜のクラックは良好である。
(11.塗膜の保水性)
水系組成物2gを、50℃で2時間乾燥して塗膜を形成した。乾燥した塗膜を40℃の真空乾燥機を用いて減圧下で3時間さらに乾燥して塗膜乾燥物を得た。この塗膜乾燥物を、20℃、湿度15%で2時間養生し、測定サンプルとした。測定サンプル10mgを、示唆熱熱重量計(日立ハイテクサイエンス社製、STA−7200)を用いて下記条件で測定した。40℃から150℃までの塗膜の重量減少率を算出した。重量減少率は、空気中の水分によって塗膜乾燥物に付着した水分量に相当するため、重量減少率が少ないほど塗膜の保水性が良好となる。
昇温条件:40℃で5分ホールド。
40℃から600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温。
(12.膜厚)
7cm×15cmのアクリル板(商品名「デラグラスK」、旭化成社製、厚み2mm)に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装して塗膜を形成した。塗膜を形成した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。大塚電子製反射分光膜厚計FE−3000を用いて、試験板における塗膜の膜厚を求めた。
(13.クラック幅)
上述のようにして作製したエナメル塗料Yを予め塗装した3cm×3cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるように、スプレーを用いて水系組成物を塗装して塗膜を形成した。塗膜を形成した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。試験板上に、日本電子株式会社製試料コーターMP−19010NCTRを用いて、金を3〜9nmコーティングした。日本電子株式会社製卓上走査電子顕微鏡JCM−5000を用いて塗膜の表面を観察した。観察倍率は、クラック幅が5μmを超える試験板は500倍とし、クラック幅が3μm超5μm以下の試験板は1000倍とし、クラック幅が3μm以下は3000倍とした。評価は、各試験板で4視野分を観察し、1視野に対して5か所の幅を測定した。合計20か所のうち、クラック幅が、小さい方から18か所分のクラック幅の最小値と最大値との範囲を求めた。
(14.塗膜外観)
水系組成物100gを、100mlのポリ容器に入れ、30秒間強く振った。その後、水系組成物の入ったポリ容器を10分間静置した。防藻防カビ剤を含むエナメル塗料Yを予め塗装した7cm×15cmの基材に、水系組成物の塗付量が17.0g/m2の割合となるようにスプレーを用いて塗装した。塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置し、試験板とした。静置後の試験板の外観を、以下の基準に基づく目視で評価した。
[評価基準]
○:ほとんどクレーターやハジキが確認されなかった。
△:多少のクレーターやハジキが確認されたものの、実用上問題がない程度であった。
×:多くのクレーターやハジキが確認された。
以下の製造例1において、前記エナメル塗料用の重合体エマルジョンを製造した。
〔製造例1〕
(重合体エマルジョンの合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水292.0g、及び反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)8.0g投入し、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10.0g添加し、その5分後に、メタクリル酸メチル10.0g、メタクリル酸シクロヘキシル5.0g、アクリル酸n−ブチル75.0g、メタクリル酸5.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)4.0g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液15.0g、及びイオン交換水49.0gからなる乳化混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で60分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた。
次に、メタクリル酸メチル70.0g、メタクリル酸シクロヘキシル90.0g、アクリル酸n−ブチル232.0g、メタクリル酸8.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)16.0g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液60.0g、及びイオン交換水196.0gからなる乳化混合液と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0g、ジメチルジメトキシシラン20.0g、及びメチルトリメトキシシラン20.0gからなる混合液とを、別々の滴下槽より160分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。
室温まで冷却後、反応器中の反応液の水素イオン濃度を測定したところ、pH2.2であった。25%質量アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した後、100メッシュの金網で反応液を濾過して、上述したエナメル塗料用の重合体エマルジョンを得た。
得られた重合体エマルジョンの固形分量は44.5質量%であった。この重合体エマルジョンに含まれる重合体について、上述した方法に準拠してDSC曲線の変極点より求めたガラス転移温度は、−5℃であった。
以下の製造例2〜8において、重合体の水分散体を製造した。
〔製造例2〕
(重合体A−1の水分散体AD−1の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水1364.2g、及び反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)28.8g投入し、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10.0g添加し、その5分後に、メタクリル酸メチル40.0g、アクリル酸n−ブチル36.0g、アクリル酸4.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)3.2g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液12.0g、及びイオン交換水34.8gからなる乳化混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で60分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた。
次に、メタクリル酸メチル250.0g、アクリル酸n−ブチル66.0g、アクリル酸4.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)12.8g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液48.0g、及びイオン交換水149.2gからなる乳化混合液を、滴下槽より160分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。
室温まで冷却後、25%質量アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した。全固形分量は412.6gであった。反応液を100メッシュの金網で濾過した。反応生成物をイオン交換水で固形分量10.0質量%に調整し、重合体として数平均粒子径30nmの重合体A−1の水分散体AD−1を得た。
〔製造例3〕
(重合体A−2の水分散体AD−2の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水1364.2g、及び反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)28.8g投入し、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液を10.0g添加し、その5分後に、メタクリル酸メチル40.0g、アクリル酸n−ブチル36.0g、アクリル酸4.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)3.2g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液12.0g、及びイオン交換水34.8gからなる乳化混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で60分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた。
次に、メタクリル酸メチル250.0g、アクリル酸n−ブチル66.0g、アクリル酸4.0g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)12.8g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液48.0g、及びイオン交換水149.2gからなる乳化混合液と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.0g、ジメチルジメトキシシラン20.0g、及びメチルトリメトキシシラン20.0gからなる混合液とを、別々の滴下槽より160分かけて滴下した。その後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。
室温まで冷却後、25質量%アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した。全固形分量は436.2gであった。反応液を100メッシュの金網で濾過した。反応生成物をイオン交換水で固形分量10.0質量%に調整し、重合体として数平均粒子径30nmの重合体A−2の水分散体AD−2を得た。
当該水分散体を合成する際に用いたジメチルジメトキシシランの量を加水分解縮合物換算すると、重合体A−2中の2.8質量%であった。
〔製造例4〕
(重合体A−3の水分散体AD−3の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水850.0g、及び10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液40.0gを投入した後、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、ジメチルジメトキシシラン85.5g、及びメチルトリメトキシシラン193.0gからなる混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて滴下した。
その後、反応器中の温度を80℃に維持して30分攪拌を続けた。
次に、10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液14.8gを投入した後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。そこに、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液6.6gを投入した後、メタクリル酸メチル22.5g、アクリル酸n−ブチル11.2g、フェニルトリメトキシシラン20.0g、テトラエトキシシラン28.6g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.1gからなる混合液と、アクリル酸0.9g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)1.2g、反応性乳化剤(第一工業製薬社製、「アクアロンKH−1025」;固形分量25質量%水溶液)1.2g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液30.0g、及びイオン交換水286.4gからなる混合液とを、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて同時に滴下した。
さらに、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた後、室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した。全固形分量は211.4gであった。反応液を100メッシュの金網で濾過した。反応生成物をイオン交換水で固形分量10.0質量%に調整し、重合体として数平均粒子径15nmの重合体A−3の水分散体AD−3を得た。
当該水分散体を合成する際に用いたジメチルジメトキシシランの量を加水分解縮合物換算すると、重合体A−3中の25.0質量%であった。
〔製造例5〕
(重合体A−4の水分散体AD−4の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水850.0g、及び10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液40.0gを投入した後、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、ジメチルジメトキシシラン109.0g、フェニルトリメトキシシラン29.5g、及びメチルトリメトキシシラン136.5gからなる混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて滴下した。
その後、反応器中の温度を80℃に維持して30分攪拌を続けた。
次に、10.0質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液14.8gを投入した後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。そこに、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液6.6gを投入した後、メタクリル酸メチル1.0g、アクリル酸n−ブチル1.0g、フェニルトリメトキシシラン29.5g、テトラエトキシシラン27.8g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.1gからなる混合液と、アクリル酸0.9g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)4.5g、反応性乳化剤(第一工業製薬社製、「アクアロンKH−1025」;固形分量25質量%水溶液)2.3g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液30.0g、及びイオン交換水256.4gからなる混合液とを、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて同時に滴下した。
さらに、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた後、室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した。全固形分量は192.4gであった。反応液を100メッシュの金網で濾過した。反応生成物をイオン交換水で固形分量10.0質量%に調整し、重合体として数平均粒子径20nmの重合体A−4の水分散体AD−4を得た。
当該水分散体を合成する際に用いたジメチルジメトキシシランの量を加水分解縮合物換算すると、重合体A−4中の35.0質量%であった。
〔製造例6〕
(重合体A−5の水分散体AD−5の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び攪拌装置を有する反応器に、イオン交換水1000.0g、及び10質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液40.0gを投入した後、攪拌下で反応器中の温度を80℃に加温した。この反応器中に、ジメチルジメトキシシラン220.0g、フェニルトリメトキシシラン5.0g、及びメチルトリメトキシシラン106.0gからなる混合液を、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて滴下した。
その後、反応器中の温度を80℃に維持して30分攪拌を続けた。
次に、10.0質量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液14.8gを投入した後、反応器中の温度を80℃に維持して120分攪拌を続けた。そこに、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液6.6gを投入した後、メタクリル酸メチル1.0g、アクリル酸n−ブチル1.0g、フェニルトリメトキシシラン5.0g、テトラエトキシシラン10.0g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.1gからなる混合液と、アクリル酸0.9g、反応性乳化剤(ADEKA社製、「アデカリアソープSR−1025」;固形分量25質量%水溶液)4.5g、反応性乳化剤(第一工業製薬社製、「アクアロンKH−1025」;固形分量25質量%水溶液)2.3g、2質量%の過硫酸アンモニウム水溶液30.0g、及びイオン交換水256.4gからなる混合液とを、反応器中の温度を80℃に保った状態で120分かけて同時に滴下した。
さらに、反応器中の温度を80℃に維持して60分攪拌を続けた後、室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を反応液に添加してpHを8.0に調整した。全固形分量は208.9gであった。反応液を100メッシュの金網で濾過した。反応生成物をイオン交換水で固形分量10.0質量%に調整し、重合体として数平均粒子径35nmの重合体A−5の水分散体AD−5を得た。
当該水分散体を合成する際に用いたジメチルジメトキシシランの量を加水分解縮合物換算すると、重合体A−5中の65.0質量%であった。
〔製造例7〕
(光触媒活性を有する無機酸化物C−1の合成)
<シリカ修飾ルチル型酸化チタン>
TiO2として200g/Lの濃度の四塩化チタン水溶液700mLと、Na2Oとして100g/Lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を、反応液のpHを5〜9に維持しながら、反応器に添加した。その後、反応液のpHを7に調整した後、濾過し、濾液の導電率が100μS/cmとなるまで洗浄し、固形分量が28.3質量%である酸化チタン湿ケーキ1を得た。この酸化チタン湿ケーキ1は、ルチル型構造を有する微粒子を含有し、その1次粒子の数平均粒子径は8nmであった。
得られた酸化チタン湿ケーキ1を純水で希釈して、1モル/Lのスラリーを調製した。
このスラリー1Lを3Lのフラスコに仕込み、さらに、酸化チタン/硝酸のモル比が1/1となるように1規定の硝酸を添加し、95℃の温度に加熱し、この温度で2時間維持して、酸加熱処理を行った。酸加熱処理後のスラリーを室温まで冷却し、28%アンモニア水を用いてpH6.7に中和し、濾過した。その後、濾液の導電率が100μS/cmとなるまで洗浄し、固形分量が25質量%の酸化チタン湿ケーキ2を得た。
得られた酸化チタン湿ケーキ2に、10質量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加してリパルプし、その後、超音波洗浄機で3時間分散して、pH10.5、固形分量10質量%のアルカリ性酸化チタンゾルを得た。
このアルカリ性酸化チタンゾル2Lを3Lのフラスコに仕込み、当該フラスコを、70℃の温度に昇温し、SiO2として432g/Lの濃度のケイ酸ナトリウム水溶液69.4mLを添加し、その後90℃に昇温して1時間維持した後、10%の硫酸を添加してpHを6に調整して、酸化チタンの表面をケイ素の含水酸化物で表面処理された酸化チタンゾルを得た。
得られた酸化チタンゾルを室温まで冷却し、5.4Lの純水を添加し、脱塩濃縮装置を用いて、不純物の除去、及び濃縮を行い、pH7.3、固形分量29質量%、導電率1.18mS/cmの中性ルチル型酸化チタンゾル(光触媒活性を有する無機酸化物C−1の水分散体)を得た。
この中性ルチル型酸化チタンゾルは、TiO2に対してSiO2基準で15質量%のケイ素の含水酸化物を含有していた。このゾル中の酸化チタンの1次粒子の数平均粒子径は9nmであった。
〔製造例8〕
(光触媒活性を有する無機酸化物C−2の合成)
<シリカ修飾アナタース型酸化チタン>
チタン鉱石を硫酸と反応させて得られた硫酸チタン溶液を加熱加水分解して生成させた凝集メタチタン酸を、TiO2換算で30質量%の水性スラリーとした。このスラリーにアンモニア水を添加してpH7に中和し、その後濾過・洗浄によって硫酸イオンを除去して、脱水ケーキを得た。
得られた脱水ケーキに硝酸を加えることで解膠処理して、アナタース型結晶構造を有する酸化チタン微粒子(1次粒子の数平均粒子径7nm)からなるpH1.5の酸性酸化チタンゾルを得た。
得られた酸性酸化チタンゾルを純水で希釈して、TiO2換算濃度が200g/Lの酸化チタンゾル600mLとした後、70℃に昇温し、SiO2換算濃度が432g/Lであるケイ酸ナトリウム水溶液20.8mLを20%硫酸と同時に反応器に添加した。その後、30分間熟成した。
次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液のpHを8に調整した後、2%硫酸水溶液で反応液のpHを6に調整し、反応液の濾過・洗浄を行い、湿ケーキを得た。
この湿ケーキを純水中にリパルプした後、超音波分散して、固形分量20質量%、pH7.5の中性域で安定なアナタース型酸化チタンゾル(光触媒活性を有する無機酸化物C−2の水分散体)を得た。
このアナタース型酸化チタンゾルには、酸化チタン微粒子の表面に凝集シリカが多孔質の状態で被着しており、その含有量は、TiO2100質量部に対してSiO2換算で7質量部であった。
〔実施例1〕
重合体A−3の水分散体AD−3 3.839g(固形分量10.0質量%)に、透過電子顕微鏡による数平均粒子径53nmの水分散コロイダルシリカB−1(日産化学工業社製、「スノーテックス30L」;固形分量30質量%)3.839gと、光触媒活性を有する無機酸化物C−1の水分散体1.324g(固形分量29質量%)と、エタノールにより固形分量を10.0質量%に調整したフルオロカーボン界面活性剤D−1(DIC社製、「メガファックF−444」)0.576gと、イオン交換水により固形分量を1.0質量%に調整した退色性色素E−2(保土ヶ谷化学工業社製、「アシッドレッド」)0.960gと、消泡剤F−1(サンノプコ社製、「SNデフォーマーAP」)0.013gと、エタノール10.0gと、イオン交換水79.450gとを混合し、攪拌することにより、固形分量2.0質量%の水系組成物G−1を得た。
次に、水性セラミシリコンSR−422を予め塗装した基材の片面(水性セラミシリコンを予め塗装した面)と、エナメル塗料を予め塗装した基材の片面(エナメル塗料を予め塗装した面)とに、水系組成物G−1を塗付量17.0g/m2となるようにスプレーを用いて塗装して塗膜を形成した。
塗装した基材を水平に保ち、温度23℃、相対湿度50%、照度20000ルクスで48時間静置して、水性セラミシリコンSR−422塗装基材上に塗膜が形成された試験板H−1と、エナメル塗料塗装基材上に塗膜が形成された試験板I−1とを得た。
水系組成物G−1と、塗膜及び試験板H−1と、塗膜及び試験板I−1との各種物性及び特性評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜14〕
実施例1と同様の手順により、表1及び2記載の質量比率で水系組成物G−2〜G−14、塗膜及び試験板H−2〜H−14、並びに、塗膜及び試験板I−2〜I−14を作製して、これらの各種物性等の測定及び特性評価を行った。結果を表1及び2に示す。
〔比較例1〜5〕
実施例1と同様の手順により、表3記載の質量比率で水系組成物G−15〜G−19、塗膜及び試験板H−15〜H−19、並びに、塗膜及び試験板I−15〜I−19を作製して、これらの各種物性等の測定及び特性評価を行った。結果を表3に示す。
表1〜3中の光触媒活性を有しない無機酸化物B、フルオロカーボン界面活性剤D、退色性色素E、及び消泡剤Fは、各々下記を用いた。
B−1:透過電子顕微鏡による数平均粒子径53nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックス30L」;固形分量30質量%、BET法による粒子径:45nm)
B−2:透過電子顕微鏡による数平均粒子径62nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックスXL」;固形分量40質量%、BET法による粒子径:55nm)
B−3:透過電子顕微鏡による数平均粒子径98nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックスZL」;固形分量40質量%、BET法による粒子径:79nm)
B−4:透過電子顕微鏡による数平均粒子径110nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックスMP−1040」;固形分量40質量%、遠心沈降法による粒子径:130nm)
B−5:透過電子顕微鏡による数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックスNS」;固形分量20質量%、遠心沈降法による粒子径:130nm)
B−6:透過電子顕微鏡による数平均粒子径180nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックスMP−2040」;固形分量40質量%、遠心沈降法による粒子径:180nm)
B−7:透過電子顕微鏡による数平均粒子径25nmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業社製、「スノーテックス50」;固形分量48質量%、BET法による粒子径:25nm)
B−8:透過電子顕微鏡による数平均粒子径37nmの水分散コロイダルシリカ(日揮触媒化成社製、「カタロイドSI−45P」;固形分量40質量%、BET法による粒子径:35nm)
D−1:エタノールにより固形分量を10.0質量%に調整したフルオロカーボン界面活性剤(DIC社製、「メガファックF−444」)
D−2:フルオロカーボン界面活性剤(AGCセイミケミカル社製、「サーフロンS−232」;固形分量30質量%)
D−3:エタノールにより固形分量を10.0質量%に調整したポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(信越化学工業社製、「KF−643」)
E−1:イオン交換水により固形分量を1.0質量%に調整した退色性色素(キシダ化学社製、「メチレンブルー」)
E−2:イオン交換水により固形分量を1.0質量%に調整した退色性色素(保土ヶ谷化学工業社製、「アシッドレッド」)
F−1:鉱物油系消泡剤(サンノプコ社製、「SNデフォーマーAP」)
F−2:鉱物油系消泡剤(サンノプコ社製、「SNデフォーマーVL」)
F−3:鉱物油系消泡剤(サンノプコ社製、「ノプコ8034L」)
実施例の水系組成物は、いずれも、濃色基材でも外観を損なわず、塗膜のクラック及び塗膜の保水性が良好で、長期に亘って、外観、耐汚染性、シーリング汚染性及び耐生物汚染性を高いレベルで維持できる塗膜が形成可能であることが確認された。
本発明の水系組成物、水系塗料、塗膜、複合塗膜、及び塗装製品は、建築外装用途、外装表示用途、自動車用部品、ディスプレイ及びレンズ等の光学部品等の各種部材等として、産業上の利用可能性を有している。

Claims (9)

  1. 光触媒活性を有しない無機酸化物Bと、光触媒活性を有する無機酸化物Cと、を含有し、
    前記光触媒活性を有しない無機酸化物Bの数平均粒子径が30nm超160nm以下である、水系組成物。
  2. 固形分換算で、重合体Aを0〜40質量部、光触媒活性を有しない無機酸化物Bを20〜99質量部、光触媒活性を有する無機酸化物Cを1〜40質量部を含有する(ただし、重合体Aと光触媒活性を有しない無機酸化物Bと光触媒活性を有する無機酸化物Cとの合計量を100質量部とする)、請求項1記載の水系組成物。
  3. フルオロカーボン界面活性剤Dを、さらに含有する、請求項1又は2に記載の水系組成物。
  4. 退色性色素Eを、さらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の水系組成物を含有する水系塗料。
  6. 請求項5に記載の水系塗料から得られる塗膜。
  7. 請求項6に記載の塗膜と、下塗り層からなる塗膜と、の少なくとも2層からなる複合塗膜であって、
    前記下塗り層からなる塗膜が、重合体と、防藻及び/又は防カビ剤と、を含有する、複合塗膜。
  8. 基材と、請求項6に記載の塗膜又は請求項7に記載の複合塗膜と、を含む、塗装製品。
  9. 前記基材が、有機基材である、請求項8に記載の塗装製品。
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