(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1〜図3に示す車輪Wは、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bと回転接触する部材である。車輪Wは、レール頭部3c,4cの頭頂面と接触して摩擦抵抗を受ける踏面W1と、脱輪を防止するために車輪Wの外周部に連続して形成されたフランジ面W2などを備えている。
図1及び図2に示す分岐器1は、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。図1及び図2に示す分岐器1は、基準線LMが直線であり分岐線(他の一線)LBが曲線である片開き分岐器である。分岐器1は、例えば、図1に示すように、トングレール4a,4bがD1方向に転換したときが常時開通している方向(定位)であり、図2に示すようにトングレール4a,4bがD2方向に転換したときが常時開通していない方向(反位)である。ここで、転換とは、列車又は車両の進路を変えるためにトングレール4a,4bの状態を切り替えることをいう。図1及び図2に示す分岐器1は、図16に示す従来の分岐器101とは異なり動作かん108aを備えていない。分岐器1は、ポイント部2などを備えている。
図1及び図2に示すポイント部2は、分岐器1を構成する部分のうち軌道を分ける部分である。ポイント部2は、図1〜図4に示す基本レール3a,3bと、トングレール4a,4bと、図3及び図4に示すレールブレス5と、図3に示す床板6と、図1及び図2に示す分岐まくらぎ7A,7Bなどを備えている。ポイント部2は、図3及び図4に示す転換装置8の駆動力発生部9にトングレール4a,4bが連結されており、図1及び図2に示すように転換装置8の動作と連動してトングレール4a,4bがD1,D2方向に転換動作する。ポイント部2は、図1に示すように、トングレール4a,4bがD1方向に転換したときには、トングレール4aが基本レール3aと密着し、トングレール4bが基本レール3bから離間する。一方、ポイント部2は、図2に示すように、トングレール4a,4bがD1方向とは反対方向のD2方向に転換したときには、トングレール4aが基本レール3aから離間し、トングレール4bが基本レール3bと密着する。
図1〜図4に示す基本レール3a,3bは、トングレール4a,4bの先端部が密着及び離間する固定レールである。基本レール3a,3bは、図3に示す床板6を介して分岐まくらぎ7A,7Bに締結されている。基本レール3aは、図3及び図4に示すように、車輪Wと接触するレール頭部3cと、床板6を介して分岐まくらぎ7A,7Bに支持されるレール底部(フランジ部)3dと、レール頭部3cとレール底部3dとを繋ぐレール腹部(ウェブ部)3eなどを備えている。レールブレス5は、基本レール3a,3bの転倒を防止する部材である。レールブレス5は、トングレール4aと接触する側とは反対側の基本レール3aと密着した状態で、基本レール3aの底部上面を押さえ付けて、基本レール3aを床板6上に着脱自在に取り付けている。
図1〜図4に示すトングレール4a,4bは、先端部を尖らせた転換可能な可動レールである。トングレール4a,4bは、図4〜図6に示す基本レール3a,3bのレール頭部3cと密着及び離間するレール頭部4cと、床板6上にしゅう動自在に支持されるレール底部4dと、レール頭部4cとレール底部4dとを繋ぐレール腹部4eと、図1及び図2に示すトングレール4a,4bがD1,D2方向に転換するときに回転中心となるように固定される後端部4fと、図9に示すレール腹部4eを貫通する貫通孔4gなどを備えている。貫通孔4gは、図17に示す従来の分岐器101の連結板114aを締結部材116Aによってトングレール104a,104bに取り付けるために、この締結部材116Aの締結ボルトが貫通する既存の貫通孔を利用可能である。
図3に示す床板6は、トングレール4a,4bを移動自在に支持する部材である。床板6は、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bと分岐まくらぎ7A,7Bとの間に挿入される部材であり、これらの間に挟み込まれた状態で分岐まくらぎ7A,7Bに締結される締結用部材である。床板6は、トングレール4a,4bのレール底部4dの底部下面をしゅう動自在に支持するとともに、基本レール3a,3bのレール底部3dの底部下面を支持する。床板6は、分岐まくらぎ7Bの両縁部に沿ってこの分岐まくらぎ7Bの幅方向に間隔をあけて、分岐まくらぎ7Bに取り付けられている。
図1及び図2に示す分岐まくらぎ7A,7Bは、分岐器1を支持する支持体(支承体)である。分岐まくらぎ7A,7Bは、基本レール3a,3bを固定し軌間を正確に保持するとともに、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bから伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bと道床との間に設置される。図1及び図2に示す分岐まくらぎ7A,7Bは、低倍率発泡させたポリウレタン系樹脂でガラス繊維を固めた合成樹脂製のまくらぎであり、天然の樹木から製造され防腐処理が施された木まくらぎの代替品として主に分岐器1に使用される。分岐まくらぎ7A,7Bは、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bを離散的に支持している。図1及び図2に示す分岐まくらぎ7Aは、図16に示す従来の分岐まくらぎ107と同じまくらぎである。図1〜図4に示す分岐まくらぎ7Bは、収容装置25に転換装置8を収容した状態で、収容装置25が上面凹部7aに装着されている転換装置8を内蔵するまくらぎである。分岐まくらぎ7Bは、図1及び図2に示す分岐まくらぎ7Aの厚さとこの分岐まくらぎ7Bの厚さが同じであるが、分岐まくらぎ7Aの幅よりもこの分岐まくらぎ7Bの幅が広く形成されている。分岐まくらぎ7Bは、図4に示すように、上面凹部7aを備えている。
図4に示す上面凹部7aは、収容装置25を装着するための部分である。上面凹部7aは、分岐まくらぎ7Bの上面に形成されており、所定の幅、長さ及び深さで形成されている。上面凹部7aは、例えば、分岐まくらぎ7Bの製造時にこの分岐まくらぎ7Bと一体に成型、又は分岐まくらぎ7Bの製造後に機械加工によって形成される。上面凹部7aは、分岐器1の左右の基本レール3a,3b間(軌間内側)に形成されており、図3に示すように分岐まくらぎ7Bの幅よりも狭く形成されている。上面凹部7aは、分岐まくらぎ7Bの幅方向における床板6間にこれらの床板6と隙間をあけて形成されている。上面凹部7aは、図4に示すように、分岐まくらぎ7Bの上面と平行に形成された平坦な装着面(底面)7bを備えている。
図1〜図6に示す転換装置8は、分岐器1を転換する装置である。転換装置8は、図1〜図4に示すように、収容装置25に収容された状態で分岐器1を転換する。転換装置8は、分岐器1を転換するための駆動力(転換力)を発生して、トングレール4a,4bをD1,D2方向に移動させる。転換装置8は、トングレール4a,4bを基本レール3a,3bに密着させた状態に保持し、分岐器1を転換できないようにする鎖錠装置としての機能も有する転てつ装置である。転換装置8は、作動流体の流体圧によって動作して分岐器1を転換する。転換装置8は、図4に示すように、この転換装置8を構成する機器が収容装置25に収容されている。転換装置8は、図16に示す従来の転てつ機108及び転てつ棒108aなどに相当する機器が収容装置25に収容された状態で、左右の基本レール3a,3b間に配置されている。転換装置8は、図3〜図6に示す駆動力発生部9と、図7に示すロック機構部12と、図3〜図6に示す接続部13A,13Bと、図5、図6及び図8に示す絶縁部17と、図5に示す位置検出部18と、荷重検出部19と、情報記憶部20と、電源部21と、信号入力部22と、信号出力部23と、制御部24などを備えている。転換装置8は、駆動力発生部9、ロック機構部12、位置検出部18、荷重検出部19、情報記憶部20、電源部21、信号入力部22、信号出力部23及び制御部24などの構成機器がユニット化されている。
図3〜図6に示す駆動力発生部9は、トングレール4a,4bを転換するための駆動力を発生する手段である。駆動力発生部9は、作動流体の流体圧によってトングレール4a,4bを転換するための駆動力を発生して、トングレール4a,4bをD1,D2方向に転換する。駆動力発生部9は、例えば、作動油の油圧によって駆動力を発生する油圧シリンダ及び油圧回路などを備えるアクチュエータである。駆動力発生部9は、図6に示すシリンダ部10と流体圧回路11などを備えている。
図6に示すシリンダ部10は、作動流体の流体圧によって駆動力を発生する手段である。シリンダ部10は、図3〜図6に示すシリンダチューブ10aと、図5及び図6に示すピストン10bと、図3〜図6に示すピストンロッド10c,10dと、図8に示す雄ねじ部10eと、図4及び図5に示す保護部10fなどを備えている。シリンダ部10は、ピストンロッド10c,10dをシリンダチューブ10aの両端部から突出させて、ピストンロッド10c,10dを両方向(D1,D2方向)に往復駆動させる両ロッド型の複動シリンダである。シリンダ部10は、ピストンロッド10c,10dを往復駆動させることによって、トングレール4a,4bをD1,D2方向に転換する。
図3〜図6に示すシリンダチューブ10aは、作動流体が流入及び流出する部分である。シリンダチューブ10aは、このシリンダチューブ10aの両端部が収容装置25の天板にブラケットなどの支持部材によって着脱自在に支持されている。図5及び図6に示すピストン10bは、作動流体の流体圧を受けてシリンダチューブ10a内を移動する部分である。ピストン10bは、シリンダチューブ10a内に往復移動自在に収容されており、シリンダチューブ10a内を二つのシリンダ室C1,C2に区画している。ピストン10bは、このピストン10bの外周面がシリンダチューブ10aの内周面としゅう動自在である。図3〜図6に示すピストンロッド10c,10dは、ピストン10bの往復動作に連動して往復動作する部分である。ピストンロッド10c,10dは、ピストン10bの一方の受圧面と他方の受圧面とにそれぞれ後端部が固定されている。図8に示す雄ねじ部10eは、連結部15の雌ねじ部15aと噛み合う部分である。雄ねじ部10eは、ピストンロッド10c,10dの先端部に形成されている。図3及び図4に示す保護部10fは、ピストンロッド10c,10dを保護する部分である。保護部10fは、収容装置25の貫通孔25bから雨水又は塵埃などの異物が収容装置25内に浸入するのを防止するとともに、雨水又は飛石などの異物からピストンロッド10c,10dを保護する。保護部10fは、ピストンロッド10c,10dに進退動作に連動して伸縮するベローズ構造である。保護部10fは、一方の端部がピストンロッド10c,10dの先端部に取り付けられており、他方の端部が収容装置25に取り付けられている。
図6に示す流体圧回路11は、シリンダ部10を動作させる手段である。流体圧回路11は、シリンダ部10のピストンロッド10c,10dの移動方向を切り替える。流体圧回路11は、例えば、シリンダ部10に作動油を供給するための油圧ユニットなどである。流体圧回路11は、動作切替部11aと、流体圧源11bと、作動流体収容部11cと、流路11d〜11gなどを備えている。
動作切替部11aは、ピストンロッド10c,10dの動作を切り替える手段である。動作切替部11aは、例えば、作動流体が流れる流路11d,11eを切り替える。動作切替部11aは、シリンダ室C1,C2に作動流体を流入、流出及び停止させることによって、ピストンロッド10c,10dの移動方向(D1,D2方向)を切り替えるとともに、ピストンロッド10c,10dを停止させる。動作切替部11aは、例えば、作動油の流路を制御する方向制御弁などである。動作切替部11aは、ソレノイドSOL-1が通電状態になったときには、ピストンロッド10c,10dがD1方向に動作するように、流体圧源11bからシリンダ室C1に流路11dを通じて作動流体を供給させ、シリンダ室C2から作動流体収容部11cに流路11eを通じて作動流体を排出させる。動作切替部11aは、ソレノイドSOL-2が通電状態になったときには、ピストンロッド10c,10dがD2方向に動作するように、流体圧源11bからシリンダ室C2に流路11eを通じて作動流体を供給させ、シリンダ室C1から作動流体収容部11cに流路11dを通じて作動流体を排出させる。動作切替部11aは、ソレノイドSOL-1,SOL-2が非通電状態になったときには、ピストンロッド10c,10dが停止するように、流路11d,11eを閉鎖してシリンダ室C1,C2に作動流体を供給及び排出させない。
流体圧源11bは、シリンダ部10に作動流体を供給する手段である。流体圧源11bは、作動流体収容部11cから動作切替部11aを通じてシリンダ部10に作動流体を供給する。流体圧源11bは、例えば、作動油を送出する油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動する駆動モータなどを備えている。作動流体収容部11cは、作動流体を収容する手段である。作動流体収容部11cは、例えば、シリンダ室C1,C2に流入する作動油を収容するとともに、シリンダ室C1,C2から流出する作動油を回収する油圧タンクなどを備えている。流路11dは、シリンダ室C1と動作切替部11aとの間で作動流体が流れる管路である。流路11eは、シリンダ室C2と動作切替部11aとの間で作動流体が流れる管路である。流路11fは、作動流体収容部11cから流体圧源11bを通じて動作切替部11aに作動流体が流れる管路である。流路11gは動作切替部11aから作動流体収容部11cに作動流体が流れる管路である。
図7に示すロック機構部12は、トングレール4a,4bを転換後にロックする手段である。ロック機構部12は、トングレール4a,4bを停止位置で鎖錠(固定)及び解錠(固定解除)する鎖錠装置として機能する。ロック機構部12は、分岐器1がD1方向に転換してトングレール4aが基本レール3aと密着したときにこのトングレール4aをロックするとともに、分岐器1がD2方向に転換してトングレール4bが基本レール3bと密着したときにこのトングレール4bをロックする。ロック機構部12は、例えば、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに接着(例えば、通常2〜3kN程度)し密着(例えば、5kN程度)してもトングレール4a,4bが移動しなかったときに、トングレール4a,4bをロックする。ロック機構部12は、シリンダ部10のピストン10bを固定する。ロック機構部12は、ピストン10b及びピストンロッド10cの内部を貫通して作動流体が流入する流路12aと、流路12aを開閉することによってロック状態又はロック解除状態にピストン10bの動作を切り替える動作切替部12bと、流路12aに作動流体を供給する流体圧源12cと、作動流体を収容する作動流体収容部12dと、ピストン10bの外周部の両端に嵌め込まれてシリンダチューブ10aとピストン10bとの間を密封するパッキン12eなどを備えている。ロック機構部12は、通常のシリンダ装置とは異なりピストン10bの幅が広く形成されており、流体圧源12cから供給されて増圧器(図示省略)によって昇圧(例えば、7〜14MPa程度の油圧ポンプからの作動油を32MPa程度に昇圧)された作動流体を流路12aに供給する。ロック機構部12は、図7(A)に示すように、パッキン12e間に作動流体が流入すると、パッキン12e間のシリンダチューブ10aが作動流体の流体圧によって外側に膨張して、ピストン10bをロック解錠状態に切り替える。ロック機構部12は、トングレール4a,4bの転換時には、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間に作動流体を流入させてこれらの間に隙間Δ3を形成する。一方、ロック機構部12は、図7(B)に示すように、パッキン12e間に作動流体が流出すると、パッキン12e間のシリンダチューブ10aが膨張状態から復元してシリンダチューブ10aの内周部とピストン10bの外周部とが締り嵌め状態になり、ピストン10bをロック状態に切り替える。ロック機構部12は、トングレール4a,4bのロック時には、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間への作動流体の流入を停止させてこれらを密着させる。
図3〜図6に示す接続部13A,13Bは、分岐器1と駆動力発生部9とを接続する手段である。接続部13Aは、駆動力発生部9のピストンロッド10cとトングレール4bとを接続し、接続部13Bは駆動力発生部9のピストンロッド10dとトングレール4aとを接続する。接続部13A,13Bは、分岐器1を転換装置8が転換するときに、駆動力発生部9から分岐器1にまくらぎ長さ方向には力を作用させ、まくらぎ幅方向には力を作用させず、かつ、曲げモーメントを作用させないように、分岐器1と駆動力発生部9とを接続している。接続部13A,13Bは、いずれも同一構造であり、以下では一方の接続部13Bについて説明し、他方の接続部13Aについては詳細な説明を省略する。接続部13Bは、図5、図6及び図8に示す連結部14,15と、図8に示す締結部16などを備えている。接続部13Bは、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15との間に曲げモーメントが作用しないように、これらを結合している。接続部13Bは、連結部14側の平面と連結部15側の球面とを点接触させてこれらを回転可能に接続するピボット軸受に近似した軸受構造を備えている。接続部13Bは、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15との間に所定の隙間Δ1,Δ2を形成しており、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15とを回転可能に接続している。ここで、隙間Δ1は、連結部14と連結部15との間にレール長さ方向に形成されており、隙間Δ2は連結部14と連結部15との間にまくらぎ長さ方向に形成されている。
図5、図6、図8及び図9に示す連結部14は、駆動力発生部9側の連結部15と嵌合することによって連結する手段である。連結部14は、分岐器1側に取り付けられている。連結部14は、図5及び図6に示すように、トングレール4bに着脱自在に取り付けられるトングレール金具であり、一般構造用圧延鋼材などの金属を機械加工して、図9に示すように平面形状が長方形のブロック体に形成されている。連結部14は、図5及び図6に示すように、トングレール4bの軌間内側のレール腹部4eに取り付けられている。連結部14は、図8及び図9に示す貫通孔14aと、図8に示す締結ナット14bと、図8及び図9に示す嵌合凹部14cなどを備えている。連結部14は、図11及び図12に示すように、連結部15の中心軸に対して動揺可能である。
図8及び図9に示す貫通孔14aは、締結部16の締結ボルト16aが貫通する部分である。貫通孔14aは、図9(A)に示すように、連結部14の長さ方向の両端部寄りにそれぞれ形成されている。図8に示す締結ナット14bは、ピストンロッド10cの雄ねじ部10eに装着される部材である。締結ナット14bは、連結部15の雌ねじ部15aとピストンロッド10cの雄ねじ部10eとの緩みを防止して、連結部15とピストンロッド10cとが分離するのを防止する。図8及び図9に示す嵌合凹部14cは、連結部15の嵌合凸部15bと嵌合する部分である。嵌合凹部14cは、図9に示すように、一対の貫通孔14a間に形成されており、連結部15の嵌合凸部15bを上下方向から挿入可能なように、図9(A)に示すように連結部14の上面部から下面部まで形成されている。嵌合凹部14cは、図8及び図9に示すように、押付力受け部14dと引張力受け部14eなどを備えている。押付力受け部14dは、連結部15から連結部14に作用する押付力F1を受ける部分である。押付力受け部14dは、連結部15の押付力作用部15cと接触する平坦面であり、嵌合凹部14cの底部に形成されている。引張力受け部14eは、連結部15から連結部14に作用する引張力F2を受ける部分である。引張力受け部14eは、連結部15の嵌合凸部15bを引っ掛ける段部であり、図9(B)に示すように嵌合凹部14cの開口部側の幅がこの嵌合凹部14cの底部側の幅よりも狭くなるように形成されている。引張力受け部14eは、連結部15の引張力作用部15dと接触する平坦面であり、押付力受け部14dと間隔をあけて平行に形成されており、嵌合凹部14cの開口部に形成されている。
図5、図6、図8及び図10に示す連結部15は、分岐器1側の連結部14と嵌合することによって連結する手段である。連結部15は、駆動力発生部9側に取り付けられている。連結部15は、駆動力発生部9のピストンロッド10cに着脱自在に取り付けられるシリンダ先端金具であり、機械構造用炭素鋼などの金属を機械加工して、大径部と小径部とを有するブロック体に形成されている。連結部15は、図8に示すように、ピストンロッド10cの先端部に着脱自在に取り付けられている。連結部15は、駆動力発生部9が分岐器1を引っ張るときにときに、締結部16にせん断力が殆ど作用しないように、締結部16の長さ方向とほぼ同じ方向に引張力F2を作用させる。連結部15は、図8及び図10に示すように、雌ねじ部15aと嵌合凸部15bなどを備えている。
図8及び図10に示す雌ねじ部15aは、ピストンロッド10cの雄ねじ部10eと噛み合う部分である。雌ねじ部15aは、図10(A)に示すように、連結部15の後端部側に所定の深さで形成されている。図8及び図10に示す嵌合凸部15bは、連結部14の嵌合凹部14cと嵌合する部分である。嵌合凸部15bは、連結部15の先端部に形成されている。嵌合凸部15bは、図8及び図10に示すように、押付力作用部15cと引張力作用部15dなどを備えている。押付力作用部15cは、連結部15から連結部14に押付力F1を作用させる部分である。押付力作用部15cは、連結部14の押付力受け部14dと点接触する球面である。押付力作用部15cは、図11及び図12に示すように、トングレール4bの転換時に押付力受け部14dが傾斜しても、押付力受け部14dと常に点接触してトングレール4bに押付力F1を作用させる。図8及び図10に示す引張力作用部15dは、連結部15から連結部14に引張力F2を作用させる部分である。引張力作用部15dは、連結部14の嵌合凹部14cを引っ掛ける段部であり、図10(A)に示すように嵌合凸部15bの先端部側の外径よりもこの嵌合凸部15bの後端部側の外径が小さくなるように形成されている。引張力作用部15dは、連結部14の引張力受け部14eと接触する平坦面である。引張力作用部15dは、トングレール4bの転換時に引張力受け部14eが傾斜しても、引張力受け部14eと常に接触してトングレール4bに引張力F2を作用させる。
図8に示す締結部16は、分岐器1側の連結部14をこの分岐器1に締結する手段である。締結部16は、ピストンロッド10cの進退動作に連動してトングレール4bが転換するように、トングレール4bと連結部14とを締結している。締結部16は、トングレール4bの貫通孔4g、絶縁板17aの貫通孔17c及び絶縁ブシュ17bの貫通孔17dに挿入される締結ボルト16aと、この締結ボルト16aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を有する締結ナット16bと、締結ナット16bと連結部14との間に挟み込まれる座金16cなどを備えている。
図5、図6及び図8に示す絶縁部17は、分岐器1と駆動力発生部9との間を電気的に絶縁する手段である。絶縁部17は、図1〜図6に示す左右のトングレール4a,4b間を電気的に絶縁することによって、列車の有無を検知する軌道回路が電気的に短絡されるのを防止する。絶縁部17は、図8に示すように、絶縁板17aと絶縁ブシュ17bなどを備えている。絶縁板17aは、分岐器1と連結部14とを電気的に絶縁する部材である。絶縁板17aは、ポリアセタール樹脂などの絶縁性合成樹脂を機械加工して形成されており、トングレール4bのレール腹部4eと連結部14との間に挟み込まれている。絶縁板17aは、絶縁ブシュ17bの先端部が貫通する貫通孔17cを備えている。絶縁ブシュ17bは、締結部16と連結部14とを電気的に絶縁する部材である。絶縁ブシュ17bは、ポリアセタールなどの絶縁性樹脂を機械加工して形成されており、連結部14の貫通孔14aと締結ボルト16aとの間と、連結部14の表面と座金16cとの間に挟み込まれている。絶縁ブシュ17bは、締結部16の締結ボルト16aが貫通する貫通孔17dを備えている。
図5に示す位置検出部18は、トングレール4a,4bの位置を検出する手段である。位置検出部18は、駆動力発生部9のストロークを検出することによってトングレール4a,4bのポイントストロークを検出する。位置検出部18は、例えば、駆動力発生部9のピストン10b又はピストンロッド10c,10dのストローク(変位)を検出することによって、トングレール4a,4bの位置を検出する。トングレール4a,4bの位置として検出する。位置検出部18は、ピストン10b又はピストンロッド10c,10dの変位を光学的又は磁気的手法によって検出する変位センサと、この変位センサの出力信号に基づいてトングレール4a,4bの位置を演算する位置演算部などを備えている。位置検出部18は、トングレール4a,4bの位置を位置検出信号(位置情報)として制御部24に出力する。
荷重検出部19は、トングレール4a,4bに作用する荷重を検出する手段である。荷重検出部19は、シリンダ部10又は流体圧回路11の作動流体の流体圧を検出することによって、トングレール4a,4bに作用する荷重(転換力)を検出する。荷重検出部19は、例えば、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着したときの密着力を検出する。ここで、密着力とは、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着している状態で加えられている力である。荷重検出部19は、シリンダ室C1,C2内又は流路11d,11e内の作動流体の流体圧を検出する圧力センサと、この圧力センサの出力信号に基づいてトングレール4a,4bに作用する荷重を演算する荷重演算部などを備えている。荷重検出部19は、トングレール4a,4bに作用する荷重を荷重検出信号(荷重情報)として制御部24に出力する。
情報記憶部20は、転換装置8に関する種々の情報を記憶する手段である。情報記憶部20は、分岐器1の状態に異常があるか否かを判定するときに基準となる判定基準を記憶する。情報記憶部20は、正常停止位置Th1及び正常密着力Th2を判定基準情報として記憶するメモリである。正常停止位置Th1は、トングレール4a,4bの停止位置が正常な停止位置であるか否かを判定するときの判定基準である。正常停止位置Th1は、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着して密着力が正常な範囲内になるときに、トングレール4a,4bが停止する所定範囲内の位置である。正常停止位置Th1は、例えば、分岐器1の組立時又は敷設時に分岐器1の線形が最適な状態に調整されている場合に、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに正常に密着したときのトングレール4a,4bが停止する所定範囲内の停止位置(転換位置)に設定されている。正常密着力Th2は、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着するときの密着力が正常であるか否かを判定するときの判定基準である。正常密着力Th2は、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bと正常に密着して密着力が所定範囲内(例えば、5kN程度)になるときに、トングレール4a,4bに作用する所定範囲内の荷重値である。正常密着力Th2は、例えば、分岐器1の組立時又は敷設時に分岐器1の線形が最適な状態に調整されている場合に、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに正常に密着したときに、トングレール4a,4bに作用する所定範囲内の荷重値に設定されている。
電源部21は、転換装置8に電力を供給する手段である。電源部21は、転換装置8を動作させるために必要な電力を制御部24に供給する。電源部21は、例えば、太陽光を電力に変換して出力する太陽電池、充電によって繰り返し使用が可能な二次電池(蓄電池)又は電力会社などから供給される交流電源若しくは直流電源などである。
信号入力部22は、転換装置8に種々の信号を入力させる手段である。信号入力部22は、例えば、車両を安全かつ効率的に制御する連動装置から送信されて、分岐器1をD1,D2方向に転換させるための転換指令信号(制御情報)を制御部24に入力させる。信号出力部23は、転換装置8から種々の信号を出力させる手段である。信号出力部23は、例えば、ロック機構部12による分岐器1のロック(鎖錠)及びロック解除(解錠)、位置検出部18の検出結果、荷重検出部19の検出結果などを表示信号(表示情報)として連動装置に出力する。
制御部24は、転換装置8に関する種々の動作を制御する手段である。制御部24は、位置検出部18の検出結果に基づいて、駆動力発生部9を制御する。制御部24は、トングレール4a,4bが正常停止位置Th1に停止するように駆動力発生部9を制御する。制御部24は、位置検出部18が出力する位置情報と情報記憶部20が記憶する正常停止位置情報とを比較し、目標停止位置である正常停止位置Th1にトングレール4a,4bが停止するまで駆動力発生部9にトングレール4a,4bを駆動させる。制御部24は、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着するときの密着力が正常密着力Th2の範囲内になるように駆動力発生部9を制御する。制御部24は、荷重検出部19が出力する荷重情報と、情報記憶部20が記憶する判定基準情報とを比較し、トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2の範囲内になるように駆動力発生部9を制御する。制御部24は、例えば、分岐器1の転換方向の切替を動作切替部11aに指令したり、流体圧源11bに作動流体の供給及び停止を指令したり、ロック機構部12に転換後の分岐器1の固定及び固定解除を動作切替部12b指令したり、流体圧源12cに作動流体の供給及び停止を指令したり、位置検出部18にトングレール4a,4bの位置の検出を指令したり、荷重検出部19にトングレール4a,4bに作用する荷重の検出を指令したり、荷重検出部19の検出結果に基づいて駆動力発生部9を制御したり、信号出力部23に表示情報の出力を指令したりする。制御部24には、流体圧回路11、ロック機構部12、位置検出部18、荷重検出部19、情報記憶部20、電源部21、信号入力部22及び信号出力部23などが接続されている。
図1〜図5に示す収容装置25は、転換装置8を収容する装置である。収容装置25は、図3及び図4に示すように、転換装置8を密閉した状態で収容する筐体である。収容装置25は、転換装置8を構成する各構成機器をユニット化した状態で収容しており、転換装置8を支持する支持部としても機能する。収容装置25は、風雨や飛石から転換装置8を保護しており、金属製のフレーム部材を組み立てた枠組に金属製又は合成樹脂製の板状部材を取り付けてこの転換装置8を被覆している。収容装置25は、図3に示すように、この収容装置25の下部が分岐まくらぎ7Bの上面凹部7aに着脱自在に嵌合しており、この収容装置25の上部が分岐まくらぎ7Bの上面から露出している。収容装置25は、この収容装置25の長さ及び幅が上面凹部7aの幅及び長さよりも僅かに小さく設定されており、車両を安全に運行するために軌道上に確保されている建築限界を超えない範囲内にこの収容装置25の高さが設定されている。収容装置25は、図4に示す分岐まくらぎ7Bの上面凹部7aと接合するように平坦面に形成されておりこの上面凹部7aに装着される装着部(底面部)25aと、図3及び図4に示すピストンロッド10c,10dが進退自在に貫通する貫通孔25bなどを備えている。
次に、この発明の第1実施形態に係る分岐まくらぎの作用について説明する。
図16に示す従来の分岐まくらぎ107を図1〜図4に示す分岐まくらぎ7Bに既設の線路で交換する場合には、従来の分岐器101の転てつ棒108aに隣接する前後2本の分岐まくらぎ107が1本の分岐まくらぎ7Bに置き換えられる。先ず、図16に示す転てつ機108の動作かんと転てつ棒108aとを分離し転てつ機108を作業者が分岐まくらぎ107から取り外すとともに、トングレール104a,104bから転てつ棒108aを作業者が取り外す。次に、基本レール103a,103b及びトングレール104a,104bから2本の分岐まくらぎ107を軌道上から作業者が撤去する。
工場内で転換装置8を組み立てて収容装置25内に転換装置8が予め組み込まれて、分岐まくらぎ7Bの上面凹部7aに収容装置25が装着された状態で、分岐まくらぎ7Bが現場に搬入される。図1〜図4に示す転換装置8が内蔵された分岐まくらぎ7Bを作業者が軌道上に敷設し、図8に示す駆動力発生部9のピストンロッド10c,10dの雄ねじ部10eを連結部15の雌ねじ部15aに作業者がねじ込む。締結ナット14bを作業者が締め付けると、ピストンロッド10c,10dに連結部15が取り付けられる。次に、連結部14の嵌合凹部14cに連結部15の嵌合凸部15bを作業者が嵌め込み、連結部14の貫通孔14aに絶縁部17の絶縁ブシュ17bを作業者が挿入する。トングレール4a,4bのレール腹部4eと連結部14との間に絶縁板17aを挟み込んだ状態で、締結部16を作業者が締め付けるとトングレール4a,4bに連結部14が取り付けられる。図5及び図6に示すように、連結部14と連結部15とが連結された状態になって、駆動力発生部9と分岐器1とが接続された後に、図1及び図2に示す分岐まくらぎ7Bの周辺に道床バラストが挿入されてつき固めが実施される。新設の線路で分岐まくらぎ7Bを新たに敷設する場合についても、既設の線路で分岐まくらぎ7Bを交換する場合と同様の手順で施工される。
古い分岐まくらぎ7Bを新しい分岐まくらぎ7Bに交換する場合には、分岐まくらぎ7Bを敷設する場合とは逆の手順によって、駆動力発生部9と分岐器1とが切り離される。図5及び図6に示す接続部13A,13Bの連結部14と連結部15とを作業者が分離して、古い分岐まくらぎ7Bを新しい分岐まくらぎ7Bに交換し、連結部14と連結部15とを作業者が連結する。その後に、図1及び図2に示す分岐まくらぎ7Bの周辺に道床バラストが挿入されてつき固めが実施される。転換装置8のみを交換又は点検する場合には、転換装置8とともに収容装置25を上面凹部7aから作業者が取り外し、接続部13A,13Bの連結部14と連結部15とを作業者が分離する。点検後又は交換後の転換装置8とともに収容装置25を上面凹部7aに作業者が再装着し、連結部14と連結部15とを作業者が連結する。
図1及び図2に示す分岐まくらぎ7Bが分岐まくらぎ7Aと同じ合成まくらぎであるため、分岐器1が全て同じ合成まくらぎによって支持される。このため、分岐器1を列車が通過するときに、基本レール3a,3b及びトングレール4a,4bに車輪Wから作用する輪重が変動せず乗り心地が低下しない。
次に、この発明の第1実施形態に係る転換装置の動作について説明する。
以下では、図5に示す制御部24の動作を中心に説明する。
図13に示すステップ(以下、Sという)100において、転換指令信号が入力したか否かを制御部24が判断する。図1に示すD1方向に分岐器1を転換するときには、D1方向に分岐器1を転換するように指令する転換指令信号が、図5に示す信号入力部22を通じて制御部24に入力する。一方、図2に示すD2方向に分岐器1を転換するときには、D2方向に分岐器1を転換するように指令する転換指令信号が、図5に示す信号入力部22を通じて制御部24に入力する。転換指令信号が制御部24に入力したときにはS110に進み、転換指令信号が制御部24に入力していないときにはS110の処理を制御部24が繰り返す。
S110において、ロック機構部12に分岐器1のロック解除を制御部24が指令する。ロック機構部12に分岐器1のロック解除を制御部24が指令すると、図7に示す動作切替部12bのSOL-1を通電状態に制御部24が切り替えて、流体圧源12cに作動流体の供給を制御部24が指令する。図7(A)に示すように、流体圧源12cが作動流体収容部12dから作動流体を流路12aに送出すると、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間に作動流体が流入する。このため、作動流体の流体圧が増加してシリンダチューブ10aが外側に膨張して弾性変形し、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間に隙間Δ3が形成されて、シリンダチューブ10a内をピストン10bが移動可能になる。
S120において、表示信号の出力を制御部24が信号出力部23に指令する。ロック機構部12による分岐器1のロック解除(解錠)を表示信号として信号出力部23から連動装置に出力する。
S130において、D1,D2方向への転換を駆動力発生部9に制御部24が指令する。図1に示すように、トングレール4a,4bをD1方向に転換するときには、図5に示す流体圧回路11にD1方向への分岐器1の転換を制御部24が指令する。このため、図6に示す動作切替部11aのSOL-2を通電状態に制御部24が切り替えて、流体圧源11bに作動流体の供給を制御部24が指令する。流体圧源11bが作動流体収容部11cから作動流体を流路11fに送出すると、動作切替部11a及び流路11eを通じてシリンダ室C2に作動油が流入するとともに、シリンダ室C1から動作切替部11a及び流路11d,11gを通じて作動流体が流出しこの作動流体が作動流体収容部11cに戻る。その結果、図6に示すピストン10bがD1方向に移動して、図1に示すようにトングレール4a,4bがD1方向に転換する。
一方、図2に示すように、トングレール4a,4bをD2方向に転換するときには、図5に示す流体圧回路11にD2方向への分岐器1の転換を制御部24が指令する。このため、図6に示す動作切替部11aのSOL-1を通電状態に制御部24が切り替えて、流体圧源11bに作動流体の供給を制御部24が指令する。流体圧源11bが作動流体収容部11cから作動流体を流路11fに送出すると、動作切替部11a及び流路11dを通じてシリンダ室C1に作動油が流入するとともに、シリンダ室C2から動作切替部11a及び流路11e,11gを通じて作動流体が流出しこの作動流体が作動流体収容部11cに戻る。その結果、図6に示すピストン10bがD2方向に移動して、図2に示すようにトングレール4a,4bがD2方向に転換する。
図13に示すS140において、トングレール4a,4bの位置の検出を位置検出部18に制御部24が指令するとともに、トングレール4a,4bに作用する荷重の検出を荷重検出部19に制御部24が指令する。このため、図5に示すトングレール4a,4bの現在位置を位置検出部18が検出を開始して、位置検出部18が位置検出信号を制御部24に出力するとともに、トングレール4a,4bに作用する荷重を荷重検出部19が検出を開始して、荷重検出部19が荷重検出信号を制御部24に出力する。
図1及び図2に示すように、トングレール4a,4bがD1,D2方向に転換するときには、トングレール4a,4bが後端部4fを回転中心として回転し、図11及び図12に示すようにトングレール4a,4bの先端部の位置がレール長さ方向に微小変位(僅かに前進又は後退)する。例えば、図8に示す連結部14と連結部15との間に隙間Δ1,Δ2が形成されていない場合には、トングレール4a,4bのレール長さ方向への微小変位が規制される。このため、ピストンロッド10cからトングレール4bにレール長さ方向に力が伝達してしまうとともに、ピストンロッド10cとトングレール4bとの間に曲げモーメントが作用してしまう。この実施形態では、図8に示すように、連結部14と連結部15との間に隙間Δ1,Δ2が形成されており、トングレール4a,4bのレール長さ方向への微小変位が許容されている。このため、図11に示すように、連結部15の引張力作用部15dと連結部14の引張力受け部14eとが接触した状態で互いに回転可能であるとともに、図12に示すように連結部15の押付力作用部15cと連結部14の押付力受け部14dとが接触した状態で互いに回転可能である。その結果、図11(B)及び図12(A)に示すように、トングレール4bを転換するときに、嵌合凸部15bの中心線O1に対して嵌合凹部14cの中心線O2が傾いても、ピストンロッド10cからトングレール4bにまくらぎ長さ方向に押付力F1及び引張力F2が常に伝達する。また、レール長さ方向には殆ど力が伝達せず、ピストンロッド10cとトングレール4bとの間に曲げモーメントが作用しない。その結果、図8に示す締結部16には引張力F2が作用し、締結部16にはせん断力が殆ど作用しない。
図13に示すS150において、トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2に達したか否かを制御部24が判断する。トングレール4a,4bに作用する密着力と正常密着力Th2とを制御部24が比較し、トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2に達したか否かを制御部24が判定する。トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2に達したと制御部24が判定したときにはS160に進む。一方、トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2に達していないと制御部24が判定したときにはS130に戻り、トングレール4a,4bに作用する密着力が正常密着力Th2に達するまでS130以降の処理を制御部24が繰り返す。
S160において、トングレール4a,4bが正常停止位置Th1で停止したか否かを制御部24が判断する。トングレール4a,4bの現在位置と正常停止位置Th1とを制御部24が比較して、トングレール4a,4bが正常停止位置Th1で停止したか否かを制御部24が判定する。トングレール4a,4bが正常停止位置Th1で停止していないと制御部24が判断したときにはS170に進み、トングレール4a,4bが正常停止位置Th1に停止していると制御部24が判定したときにはS180に進む。
S170において、表示信号の出力を制御部24が信号出力部23に指令する。S160において、トングレール4a,4bに作用する荷重が判定基準Th2の範囲内に達したにもかかわらず、トングレール4a,4bが判定基準Th1の範囲内で停止していないと制御部24が判断したときには、トングレール4a,4bが正常な停止位置の手前又は正常な停止位置を超えて停止している。このため、分岐器1の線形に異常がある可能性がある。トングレール4a,4bが正常な停止位置で停止していないと制御部24が判断したときには、分岐器1の線形の異常を表示信号として信号出力部23が連動装置に出力する。
S180において、ロック機構部12に分岐器1のロックを制御部24が指令する。ロック機構部12に分岐器1のロック解除を制御部24が指令すると、図7に示す動作切替部12bのSOL-2を通電状態に制御部24が切り替えて、流体圧源12cに作動流体の供給停止を制御部24が指令する。図7(A)に示すように、流体圧源12cが作動流体の送出を停止すると、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間への作動流体の流入が停止する。このため、作動流体の流体圧が低下してシリンダチューブ10aが復元し、シリンダチューブ10aとピストン10bとが密着して締り嵌め状態となり、シリンダチューブ10a内でピストン10bが固定される。
S190において、表示信号の出力を制御部24が信号出力部23に指令する。例えば、ロック機構部12による分岐器1のロック(鎖錠)を表示信号として信号出力部23が連動装置に出力する。
この発明の第1実施形態に係る分岐まくらぎには、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、分岐器1を転換する転換装置8を収容する収容装置25を上面凹部7aに装着する。このため、図16に示す従来の分岐器101とは異なり前後の分岐まくらぎ107間の転てつ棒108aをなくすことができ、道床バラストの挿入やつき固め作業ができない箇所をなくすことができる。その結果、前後の一般区間の軌道と同様に保守作業を実施することができるとともに、従来の分岐器101と転てつ機108とを分離するような作業が不要になって保守作業の省力化を図ることができる。また、転換装置8を分岐まくらぎ7Bと一体化することができるため、図16に示す従来の分岐器101の転てつ機108のような機器を軌間外側に設置する必要がなくなって、軌間外側に有効なスペースを確保することができる。
(2) この第1実施形態では、分岐器1の左右の基本レール3a,3b間に上面凹部7aが形成されている。このため、分岐まくらぎ7Bに転換装置8を内蔵させることができ、道床バラストの挿入やつき固めができない箇所をなくし、保守作業を省力化することができる。また、比較的スペースを確保することができる左右の基本レール3a,3b間に転換装置8をコンパクトに配置することができる。
(3) この第1実施形態では、トングレール4a,4bを転換するための駆動力を作動流体の流体圧によって駆動力発生部9が発生する。このため、分岐器1を転換するための駆動力として作動流体の流体圧を利用することができ、転換装置8を簡単な構造にすることができる。
(4) この第1実施形態では、合成まくらぎの上面に上面凹部7aが形成されている。このため、前後の分岐まくらぎ7Aと同様の材質の合成まくらぎを分岐まくらぎ7Bに使用することができる。例えば、分岐まくらぎ7Bを前後の分岐まくらぎ7Aとは材質が異なる鋼製又は鋳鉄製の鉄まくらぎやコンクリート製のコンクリートまくらぎにした場合には、列車が通過するときにレールに作用する輪重が変動し足り、乗り心地が低下することがある。この実施形態では、前後の分岐まくらぎ7A,7Bが同じ材質の合成まくらぎであるため、前後の分岐まくらぎ7A,7Bのレールの支持状態が同じであり、乗り心地が低下するのを防ぐことができる。また、基本レール3a,3bを分岐まくらぎ7Bに締結するレール締結装置を分岐まくらぎ7Bにねじくぎによって固定する場合に、分岐まくらぎ7Bが合成まくらぎであるときにはレール締結装置を任意の位置に自由にねじくぎによって固定することができる。
(5) この第1実施形態では、収容装置25に転換装置8を収容した状態で、この収容装置25が上面凹部7aに装着されている。このため、分岐まくらぎ7Bに転換装置8を内蔵させた状態で、この分岐まくらぎ7Bを現場に搬入し、既設の分岐まくらぎ107と簡単に短時間で交換することができる。
この発明の第1実施形態に係る転換装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、分岐器1を支持する分岐まくらぎ7Bの上面凹部7aに装着される装着部25aを収容装置25が備えている。このため、分岐まくらぎ7Bを交換する場合や転換装置8を交換又は点検する場合には、収容装置25ごと転換装置8を分岐まくらぎ7Bから容易に着脱することができ、交換作業や点検作業の負担が軽減されて作業性が向上し、交換作業や点検作業を短時間に実施することができる。
(2) この第1実施形態では、分岐まくらぎ7Bの左右の基本レール3a,3b間の上面凹部7aに収容装置25が装着される。このため、分岐まくらぎ7Bに転換装置8を内蔵させることができ、道床バラストの挿入やつき固めができない箇所をなくし、保守作業を省力化することができる。また、転換装置8を軌間内側に収めることができ、転換装置8の故障時やメンテナンス時などに転換装置8を容易に交換することができる。
(3) この第1実施形態では、トングレール4a,4bを転換するための駆動力を駆動力発生部9が発生する。このため、分岐まくらぎ7Bの左右の基本レール3a,3b間に駆動力発生部9を配置することができ、従来の分岐器101の転てつ機108を軌間外側に配置する必要がなくなって軌道上の限られたスペースを有効に活用することができる。
(4) この第1実施形態では、作動流体の流体圧によって駆動力発生部9が駆動力を発生する。このため、分岐器1を転換するための駆動力として作動流体の流体圧を利用することができ、転換装置8を簡単な構造にすることができる。
(5) この第1実施形態では、トングレール4a,4bが基本レール3a,3bに密着するときの密着力が判定基準Th2の範囲内になるように、駆動力発生部9を制御部24が制御する。このため、トングレール4a,4bと基本レール3a,3bとの間に隙間があかないようにトングレール4a,4bを基本レール3a,3bに確実に密着させることができ、分岐器1の走行安全性を大幅に向上させることができる。
(6) この第1実施形態では、分岐器1と駆動力発生部9との間を絶縁部17が電気的に絶縁する。このため、駆動力発生部9を通じて左右のレール間が通電状態になるのを防止して、列車が存在しないにもかかわらずこの列車の有無を検知する軌道回路が電気的に短絡されるのを防止することができる。また、トングレール4a,4bとシリンダ部10との間の少ないスペースで、左右のレール間を確実に絶縁することができる。
(7) この第1実施形態では、分岐器1と駆動力発生部9とを接続部13A,13Bが接続しており、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15とが互いに嵌合することによって連結されている。また、この第1実施形態では、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15との間に所定の隙間を形成しており、分岐器1側の連結部14と駆動力発生部9側の連結部15とを回転可能に接続している。このため、トングレール4a,4bとシリンダ部10との間の少ないスペースで、トングレール4a,4bと転換装置8とを確実に繋ぐことができる。また、トングレール4a,4bを転換するときに、まくらぎ長さ方向にシリンダ部10からトングレール4a,4bに力を作用させることができ、レール長さ方向に駆動力発生部9からトングレール4a,4bに殆ど力を作用させないようにすることができる。また、駆動力発生部9とトングレール4a,4bとの間に曲げモーメントが作用しないようにすることができる。さらに、図17に示す連結板114aと連結板114bとを締結部材116Bによって連結する構造では、トングレール104aを引っ張るときに転てつ棒ボルト116aにせん断力が作用する。この第1実施形態では、連結部14と連結部15とが互いに嵌合することによって連結されており、転てつ棒ボルト116aのような締結部材116Bによって連結されておらず、分岐器1側の連結部14を分岐器1に締結部16のみが締結している。このため、駆動力発生部9が分岐器1を引っ張るときにときに、締結部16の長さ方向とほぼ同じ方向に駆動力発生部9側の連結部15が引張力F2を作用させる。その結果、転換装置8が分岐器1を転換するときに、締結部16に引張力F2のみが作用し締結部16にせん断力が殆ど作用しないので、締結部16の破断を防ぐことができる。また、図17に示す連結板114aと連結板114bとを締結部材116Bによって連結する構造に比べて、連結部14と連結部15とを互いに嵌合させて連結する構造であるため、構造が簡単になり短時間で組立及び分解することができる。
(8) この第1実施形態では、トングレール4a,4bを転換後にロック機構部12がロックする。このため、トングレール4a,4bを所定の位置で固定(鎖錠)することができるとともに、トングレール4a,4bを基本レール3a,3bに密着した状態に維持することができる。
(9) この第1実施形態では、トングレール4a,4bの転換時には、駆動力発生部9のシリンダチューブ10aとピストン10bとの間にロック機構部12が作動流体を流入させてこれらの間に隙間Δ3を形成する。また、この第1実施形態では、トングレール4a,4bのロック時には、シリンダチューブ10aとピストン10bとの間への作動流体の流入をロック機構部12が停止させてこれらを密着させる。このため、作動流体の流体圧を利用して分岐器1を簡単にロック(鎖錠)及びロック解除(解錠)することができる。
(第2実施形態)
以下では、図1及び図2に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図14及び図15に示す転換装置8A〜8Dは、図1〜図6に示す転換装置8と同一構造であり、分岐器1のレール長さ方向に間隔をあけて複数配置されている。転換装置8A〜8Dは、各転換装置8A〜8Dの設置位置でそれぞれトングレール4a,4bを転換する。
この発明の第2実施形態に係る転換装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、分岐器1のレール長さ方向に間隔をあけて転換装置8A〜8Dが複数配置される。その結果、複数の転換装置8A〜8Dによって分岐器1を転換するため、分岐器1の分岐の度合い(分岐器1の番数)が大きくトングレール4a,4bが比較的長い分岐器1を確実に転換することができる。また、複数の転換装置8A〜8Dによって分岐器1を転換するため、トングレール4a,4bの横たわみを低減するために左右のトングレール4a,4bを繋ぐ控え棒が不要になり、分岐器1の構造が簡単になって分岐器1の敷設作業や点検作業を容易に実施することができる。その結果、分岐器1の全ての位置で道床バラストの挿入やつき固めを実施することができる。さらに、トングレール4a,4bの位置を複数の転換装置8A〜8Dの制御部24によって制御するため、トングレール4a,4bの線形を維持し管理することができ、第1実施形態に比べて分岐器1の走行安全性とメンテナンス性をより一層向上させることができる。
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、分岐器1が片開き分岐器である場合を例に挙げて説明したが、片開き分岐器に限定するものではない。例えば、両開き分岐器、内方分岐器、外方分岐器、振分分岐器、三枝分岐器、複分岐器、三線式分岐器又はノーズ可動分岐器などについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、分岐器類として分岐器1を例に挙げて説明したが、分岐器1に限定するものではない。例えば、ノーズ可動クロッシング、はウィング可動クロッシング若しくは鈍端可動クロッシングのような可動クロッシング、可動K字クロッシングを有する可動ダイヤモンドクロッシング、シングルスリップスイッチ又はダブルスリップスイッチなどの分岐器類についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、基本レール3a,3bのような固定レールやトングレール4a,4bのような可動レールを例に挙げて説明したが、クロッシング部のヘ形レールのような固定レールやクロッシング部の可動レールについても、この発明を適用することができる。
(2) この実施形態では、駆動力発生部9が油圧シリンダである場合を例に挙げて説明したが、空気圧シリンダ、リニアモータ、ラック・ピニオン機構部又は送りねじ機構部などの他の駆動力発生部についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、駆動力発生部9の流体圧回路11と別系統の流体圧回路によってロック機構部12を駆動する場合を例に挙げて説明したが、駆動力発生部9の流体圧回路11から作動流体を増圧器によって昇圧してロック機構部12を駆動する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、収容装置25の全体が転換装置8,8A〜8Dを密閉する筐体である場合を例に挙げて説明したが、収容装置25の全体が枠体である場合や、収容装置25の一部が枠体で残部が筐体である場合などについても、この発明を適用することができる。例えば、収容装置25の上部のみを板状部材で被覆する場合についてもこの発明を適用することができる。