JP2020093518A - 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版が得られる平版印刷版原版、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷方法を提供すること。【解決手段】支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む平版印刷版原版、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、並びに、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷方法。【選択図】なし

Description

本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
本開示において、このような機上現像に用いることができる平版印刷版原版を、「機上現像型平版印刷版原版」という。
従来の平版印刷版原版又は平版印刷版原版を用いた印刷方法としては、例えば、特許文献1又は2に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、親水性表面を有する支持体または親水性層が設けられた支持体およびその上に設けられたコーティングであって、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、結合剤および赤外線吸収色素を含む画像記録層を含むコーティング;上記疎水性熱可塑性ポリマー粒子は、光子相関分光法により測定された平均粒子直径が10nm以上40nm未満であり、上記IR色素の量は、任意の対イオンを考慮せずに、流体力学的分画によって測定された前記熱可塑性ポリマー粒子の総表面積1mあたり0.80mg、および画像形成層の成分の総重量に対する疎水性熱可塑性ポリマー粒子の量は少なくとも60%である感熱性ネガ型平版印刷版原版が記載されている。
特許文献2には、平版用基板;並びにa)ラジカル重合性成分;b)画像形成用輻射線に暴露したときに重合反応を開始するのに十分なラジカルを発生させることができる開始剤系;及びc)疎水性主鎖を有し、そしてi)該疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダント・シアノ基を有する構成ユニット、及びii)親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む高分子バインダーを含んで成る画像形成可能要素が記載されている。
欧州特許出願公開第1,859,935号明細書 特表2008−503365号公報
平版印刷版においては、版の印刷可能な枚数(以下、「耐刷性」ともいう。)に優れた平版印刷版が求められている。
特に、近年においては、印刷におけるインキとして、紫外線(UV)の照射により硬化するインキ(「紫外線硬化型インキ、又は、UVインキ」ともいう。)が用いられる場合がある。
UVインキは、瞬間乾燥可能なため生産性が高い、一般に溶剤の含有量が少ない、又は、無溶剤であるため環境汚染が低減されやすい、熱による乾燥を行わないか、又は、熱による乾燥を短時間として画像を形成できるため、印刷対象などの応用範囲が広がる等の利点を有している。
そのため、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版を提供することができる平版印刷版原版は、産業上非常に有用であると考えられる。
本発明者は、鋭意検討した結果、特許文献1又は特許文献2に記載の平版印刷版原版では、特にインキとしてUVインキを用いた場合に、得られる平版印刷版の耐刷性が不十分であることを見出した。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、又は、平版印刷方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む、平版印刷版原版。
<2> 上記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、60℃〜150℃である、上記<1>に記載の平版印刷版原版。
<3> 上記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物より形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂A含み、
上記樹脂Aにおける上記芳香族ビニル化合物より形成される構成単位の含有量が、上記シアノ基を有する構成単位の含有量より多い、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径が、1nm以上80nm未満である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記画像記録層の全質量に対する上記熱可塑性樹脂粒子の含有量が、10質量%以上50質量%以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 上記重合開始剤が、電子受容型重合開始剤を含む、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<7> 前記電子受容型重合開始剤のLUMOが、−3.0eV以下である、<6>に記載の平版印刷版原版。
<8> 前記電子受容型重合開始剤のLUMOと前記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.70eV以下である、<6>又は<7>に記載の平版印刷版原版。
<9> 前記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を更に含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<10> 前記赤外線吸収剤のHOMOと前記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、<9>に記載の平版印刷版原版。
<11> 前記赤外線吸収剤が、メソ位に酸素原子又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素である、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<12> 前記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、及び、電子移動により分解する分解性赤外線吸収剤である、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<13> 前記分解性赤外線吸収剤が、下記式1−1で表わされる赤外線吸収剤である、<12>に記載の平版印刷版原版。
式1−1中、Rは下記式2で表される基を表し、R11〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−R、−OR、−SR又は−NRを表し、R〜Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11〜R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は−NR10−を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
式2中、Rは、アルキル基を表し、波線は、前記式1−1中のLで表される基との結合部位を表す。
<14> 前記赤外線吸収剤の含有量が、前記画像記録層の全質量に対し、0.1質量%〜10質量%である、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<15> 前記重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量が、200g/mol以下である、<1>〜<14>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<16> 前記重合性化合物の重量平均分子量が、1,500以下である、<1>〜<15>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<17> 前記重合性化合物が、3官能以上の重合性化合物を含む、<1>〜<16>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<18> 前記画像記録層が、2種以上の重合性化合物を含む、<1>〜<17>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<19> 前記画像記録層が、さらに酸発色剤を含む、<1>〜<18>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<20> 前記画像記録層が、現像促進剤を更に含む、<1>〜<20>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<21> 前記画像記録層が、感脂化剤を更に含む、<1>〜<20>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<22> 前記支持体が画像記録層側の表面にマイクロポアを有し、
前記表面におけるマイクロポアの平均径が13nmを超え100nm以下である、<1>〜<21>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<23> 前記支持体が画像記録層側の表面に陽極酸化被膜を有し、
前記陽極酸化皮膜が、前記画像記録層側の陽極酸化皮膜表面から深さ方向にのびる前記マイクロポアを有し、
前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm〜1,000nmの位置までのびる大径孔部と、
前記大径孔部の底部と連通し、前記連通位置から深さ20nm〜2,000nmの位置までのびる小径孔部と、から構成され、
前記大径孔部の平均径が、13nmを超え100nm以下であり、
前記小径孔部の平均径が、前記大径孔部の平均径の5%〜80%である、<22>に記載の平版印刷版原版。
<24> <1>〜<22>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
<25> <1>〜<22>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む、
平版印刷方法。
本開示の一実施形態によれば、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷版の印刷方法を提供することができる。
本開示の平版印刷版原版の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。 図2A中のマイクロポアの1つを拡大した概略断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。 第1陽極酸化処理工程から第2陽極酸化処理工程までを工程順に示す陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
(平版印刷版原版)
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む。
本開示に係る平版印刷版原版は、ネガ型平版印刷版原版であることが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像型平版印刷版原版であることが好ましい。
本発明者が鋭意検討した結果、得られる平版印刷版において、UVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層において、赤外線吸収剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、熱可塑性樹脂粒子とを併用することによって、熱可塑性樹脂粒子同士の熱融着に加えて、熱可塑性樹脂粒子の熱融着物と混ざり合いながら重合性化合物が重合することにより、より強固な膜が形成されUVインクを用いた場合であっても耐刷性に優れると推定している。
平版印刷版において、版の印刷可能な枚数が多いことを、「耐刷性に優れる」という。UVインキを用いた場合の耐刷性を、以下、「UV耐刷性」ともいう。
更に、本開示に係る平版印刷版原版によれば、インキ着肉性(以下、単に「着肉性」ともいう。)に優れた平版印刷版が得られやすいと考えられる。これは、画像記録層において熱可塑性樹脂粒子を用いることにより画像部の疎水性の向上、熱可塑性樹脂粒子同士の熱融着に加えて、熱可塑性樹脂粒子の熱融着物と混ざり合いながら重合性化合物重合することにより、より強固な膜が形成されることによるUV耐刷性の相乗的な効果等によるものであると推測される。
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層において、赤外線吸収剤と、重合開始剤と、重合性化合物と、熱可塑性樹脂粒子とを併用することによって、強固な膜が形成されるため、耐薬品性にも優れやすいと推測される。
また、同様の理由から、経時保管後であっても機上現像性(以下、「経時機上現像性」ともいう。)にも優れやすいと推定される。
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に形成された画像記録層を有する。
本開示における画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
〔熱可塑性樹脂粒子〕
本開示において用いられる画像記録層は、熱可塑性樹脂粒子を含む。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、それらの共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂はラテックス状態であってもよい。
本開示に係る熱可塑性樹脂は、後述する露光工程において生成された熱により、熱可塑性樹脂が溶融又は軟化することで、記録層を形成する疎水性の膜の一部又は全部を形成する樹脂であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、インキ着肉性及びUV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂A含むことが好ましい。
−芳香族ビニル化合物により形成される構成単位−
熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有することが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、及びp−メトキシ−β−メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1−ビニルナフタレン、メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等が挙げられ、1−ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式A1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
式A1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RA3は置換基を表し、nは0以上Arの最大置換基数以下の整数を表す。
式A1中、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式A1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式A1中、RA3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式A1中、RA3が複数存在する場合、複数のRA3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式A1中、nは0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aにおいて、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、後述するシアノ基を有する構成単位の含有量よりも多いことが好ましく、熱可塑性樹脂の全質量に対し、15質量%〜85質量%であることがより好ましく、30質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
−シアノ基を有する構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、シアノ基を有する構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として樹脂Aに導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位がより好ましい。
また、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位としては、下記式B1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
式B1中、RB1は水素原子又はアルキル基を表す。
式B1中、RB1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
樹脂Aにおけるシアノ基を有する構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、上記芳香族ビニル化合物により形成されるよりも少ないことが好ましく、樹脂Aの全質量に対し、55質量%〜90質量%であることがより好ましく、60質量%〜85質量%であることがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂に含まれる樹脂Aが芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びシアノ基を有する構成単位を含む場合、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びシアノ基を有する構成単位の含有量比(芳香族ビニル化合物により形成される構成単位:シアノ基を有する構成単位)としては、質量基準で5:5〜9:1であることが好ましく、より好ましくは、6:4〜8:2である。
−N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位を更に有することが好ましい。
N−ビニル複素環化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルコハク酸イミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルイミダゾールが挙げられ、N−ビニルピロリドンが好ましい。
また、N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位としては、下記式C1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
式C1中、Arは窒素原子を含む複素環構造を表し、Ar中の窒素原子が*で示した炭素原子と結合する。
式C1中、Arにより表される複素環構造は、ピロリドン環、カルバゾール環、ピロール環、フェノチアジン環、スクシンイミド環、フタルイミド環、カプロラクタム環、及びイミダゾール環であることが好ましく、ピロリドン環であることがより好ましい。
また、Arにより表される複素環構造は公知の置換基を有していてもよい。
樹脂Aにおける、N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。
−酸性基を有する構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、酸性基を有する構成単位を含有してもよいが、機上現像性及びインキ着肉性の観点からは、酸性基を有する構成単位を含有しないことが好ましい。
具体的には、熱可塑性樹脂における酸性基を有する構成単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
また、熱可塑性樹脂の酸価は、160mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、40mgKOH/g以下であることが更に好ましい。上記酸価の下限は特に限定されず、0mgKOH/gであってもよい。
本開示において、酸価はJIS K0070:1992に準拠した測定法により求められる。
−疎水性基を有する構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を含有してもよい。
上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アリール(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、上記アリール基は公知の置換基を有していてもよい。アリール(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アラルキル(メタ)アクリレート化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aにおける、疎水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
−親水性基を有する構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、UV耐刷性、耐薬品性及び機上現像性の向上の観点から、親水性基を有する構成単位を含んでもよい。
上記親水性基としては、−OH、−CN、−CONR、−NRCOR(R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。RとRとは結合して環を形成してもよい。)−NR、−N(R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xはカウンターアニオンを表す)、下記式POにより表される基等が挙げられる。
これら親水性基の中でも、−CONR又は式POにより表される基が好ましく、式POにより表される基がより好ましい。
式PO中、Lはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは1〜100の整数を表す。
式PO中、Lはそれぞれ独立に、エチレン基、1−メチルエチレン基又は2−メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
式PO中、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式PO中、nは1〜10の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましい。
樹脂Aにおける、親水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂Aの全質量に対し、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
−その他の構成単位−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂Aは、その他の構成単位を更に含有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位を特に限定なく含有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成される構成単位が挙げられる。
アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、などが挙げられる。
熱可塑性樹脂における、その他の構成単位の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
−熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度−
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、UV耐刷性及びインキ着肉性の観点から、60℃〜150℃であることが好ましく、80℃〜140℃であることがより好ましく、90℃〜130℃であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合には、後述するFOX式により求められた値を、熱可塑性樹脂のガラス転移温度という。
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のTgは下記のように求められる。
1つ目の熱可塑性樹脂のTgをTg1(K)、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する1つ目の熱可塑性樹脂の質量分率をW1とし、2つ目のTgをTg2(K)とし、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する2つ目の樹脂の質量分率をW2としたときに、熱可塑性樹脂粒子のTg0(K)は、以下のFOX式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
また、熱可塑性樹脂粒子が3種の樹脂を含むか、含まれる熱可塑性樹脂種の異なる3種の熱可塑性樹脂粒子が前処理液に含有される場合、熱可塑性樹脂粒子のTgは、n個目の樹脂のTgをTgn(K)、熱可塑性樹脂粒子における樹脂成分の合計質量に対するn個目の樹脂の質量分率をWnとしたときに、上記と同様、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)・・・+(Wn/Tgn)
本明細書において、Tgは、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)により測定される値である。示差走査熱量計(DSC)としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社のEXSTAR6220を用いることができる。
−粒子径−
熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径は、UV耐刷性の観点から、1nm以上200nm以下であることが好ましく、3nm以上80nm未満であることがより好ましく、10nm以上49nm以下であることが更に好ましい。
本開示における熱可塑性樹脂粒子における算術平均粒子径は、特に断りのない限り、動的光散乱法(DLS)によって測定された値を指す。DLSによる熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径の測定は、Brookhaven BI−90(Brookhaven Instrument Company製)を用い、上記機器のマニュアルに沿って行われる。
−分子量−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、3,000〜300,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましい。
−熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の製造方法−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、スチレン化合物と、アクリロニトリル化合物と、必要に応じて上記N−ビニル複素環化合物、上記エチレン性不飽和基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記酸性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記疎水性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、及び、上記その他の構成単位の形成に用いられる化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、とを、公知の方法により重合することにより得られる。
−具体例−
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の具体例を下記表に示すが、本開示において用いられる熱可塑性樹脂はこれに限定されるものではない。
また、上記具体例中、各構成単位の含有比は、上述の各構成単位の含有量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
また、上記具体例に示す各化合物の重量平均分子量は、上述の熱可塑性樹脂の重量平均分子量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
−含有量−
画像記録層は、熱可塑性樹脂粒子を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
画像記録層の全質量に対する熱可塑性樹脂粒子の含有量は、UV耐刷性の観点から、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、10質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含む。本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
本開示において、重合性を有する化合物であっても、上述の熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂、後述するポリマー粒子、及び、後述する熱可塑性樹脂以外のバインダーポリマーに該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
また重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましく、50以上2,000以下であることがより好ましい。また、UV耐刷性、インキ着肉性、耐薬品性、及び、経時での非画像部機上現像性の観点から、重合性化合物の分子量が、1,500以下であることが好ましい。
上記重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合1molあたりの質量(「エチレン性不飽和結合当量」ともいう。)は、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、200g/mol以下であることが好ましく、50g/mol以上200g/mol以下であることがより好ましく、80g/mol以上180g/mol以下であることが更に好ましく、100g/mol以上150g/mol以下であることが特に好ましい。
本開示において、重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量を、具体的には例えば、以下のように求めることができる。
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、分子量578、エチレン性不飽和結合6個)のエチレン性不飽和結合当量:578÷6=96.3(g/mol)
・スチレン(分子量104、エチレン性不飽和結合1個)のエチレン性不飽和結合当量:104÷1=104(g/mol)
・「DPHA10gとスチレン20gとの混合物」のエチレン性不飽和結合当量:(10+20)/{10/96.3+20/104}=101(g/mol)
本開示におけるエチレン性不飽和結合当量は、重合性化合物の分子量及びエチレン性不飽和結合の数、並びに、上記画像記録層中における重合性化合物の組成を、公知の方法により特定し、上記計算方法により求めることができる。
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
中でも、上記重合性化合物としては、UV耐刷性の観点から、3官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましい。
−オリゴマー−
画像記録層に含まれる重合性化合物は、オリゴマーを含有することが好ましい。
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
また、耐薬品性及びUV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性により優れる観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
耐薬品性及びUV耐刷性により優れる観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
本明細書においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
<<ウレタン結合を有する化合物>>
ウレタン結合を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、2官能〜5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート、9H−フルオレン−9−オン−2,7−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、トリレン−2,4−ジイソシアナート、トリレン−2,6−ジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の重合性基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の重合性基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac−1)又は式(Ac−2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac−1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
式(Ac−1)及び式(Ac−2)中、L〜Lはそれぞれ独立に、炭素数2〜20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
〜Lとしては、それぞれ独立に、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(Ac−1)又は式(Ac−2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae−1)又は式(Ae−2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
式(Ae−1)及び式(Ae−2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac−1)及び式(Ac−2)における波線部との結合位置を表す。
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
<<エステル結合を有する化合物>>
また、エステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
<<エポキシ残基を有する化合物>>
エポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2〜6であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記オリゴマーの含有量は、30質量%〜100質量%であることが好ましく、50質量%〜100質量%であることがより好ましく、80質量%〜100質量%であることが更に好ましい。
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、末端にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1〜1/10であることが好ましく、10/1〜3/7であることがより好ましく、10/1〜7/3であることが更に好ましい。
重合性化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)及び、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、又は、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV−1700B、UV−6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U−15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
中でも、上記画像記録層は、UV耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%〜75質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることがより好ましく、15質量%〜60質量%であることが更に好ましい。
また、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、0質量%を超え400質量%以下であることが好ましく、25質量%〜300質量%であることがより好ましく、50質量%〜200質量%であることが更に好ましい。
画像記録層において、熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂と上記重合性化合物とは、海島構造をとることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂の海(連続相)の中に、上記重合性化合物が島状に分散(不連続層)した構造を採用することができる。上記重合性化合物の全質量に対する上記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の含有量を上記範囲内の値とすることにより、海島構造を形成しやすいと考えられる。
〔重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、重合開始剤を含有する。
重合性開始剤としては、特に制限はなく、電子受容型重合開始剤、電子供与型重合開始剤等が挙げられる。
−電子受容型重合開始剤−
上記画像記録層は、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱又はその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム化合物が挙げられる。
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0022〜0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028〜0030に記載の化合物が好ましい。
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム化合物が挙げられる。中でも、UV耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が更に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
上記電子受容型重合開始剤と後述の電子供与型重合開始剤とが塩を形成している態様の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
また、上記電子受容型重合開始剤は、発色性、露光後経時発色性、現像性、及び、得られる平版印刷版原版におけるUV耐刷性の観点から、下記式(I)で表される化合物を好適に用いることができる。
式中、Xはハロゲン原子を表し、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、塩素原子又は臭素原子は、感度に優れるため好ましく、臭素原子が特に好ましい。
Aは−CO−、−SO−、−SO−、−PO−及び−PO−よりなる群から選ばれる2価の連結基を表す。これらのうち、−CO−、−SO−及び−SO−がより好ましく、−CO−及び−SO−が特に好ましい。RX1及びRX2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜20までの1価の炭化水素基を表す。
炭化水素基を構成する炭化水素としては、特開2002−162741号公報の段落0013〜段落0014に記載の炭化水素等を挙げることができるが、具体的には、炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ノナン、デカン、オクタデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、デカヒドロナフタレン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプタデセン、2−ブテン、2−ヘキセン、4−ノネン、7−テトラデセン、ブタジエン、ピペリレン、1,9−デカジエン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、ノルボルニレン、オクタヒドロナフタレン、ピシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、アセチレン、1−プロピン、2−ヘキシン等の炭素数1から30までの脂肪族炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
このような炭化水素基を構成する炭素原子は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で1個以上置換されてもよい。
置換基としては水素を除く、1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これら置換基は可能であるならば置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基はさらに置換されていてもよい。
好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が挙げられる。
及びnはそれぞれ1〜3までの整数を表す。ただし、m+n=2〜4である。感度の点でm=1及びn=3、又は、m=2及びn=2であることが好ましい。m及びnが2以上である場合には、(R1−A)及びXはそれぞれ異なっていてもよい。また、m=1、及び、n=1である場合にもRx2は互いに異なっていてもよい。
上記式(I)で表される化合物の中でも、下記式(II)及び(III)で表される化合物は、視認性に優れるため好ましい。
式(II)及び(III)において、Xは式(I)におけるものと同義であり、R、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1〜20までの1価の炭化水素基を表す。
ここで、R、R及びRは、アリール基であることが好ましく、アリール基がアミド基で置換されているものは、感度と保存性のバランスに優れるためさらに好ましい。
下記式(II)及び(III)で表される化合物の中でも、式(IV)で表される化合物が特に好ましい。
式(IV)において、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜20までの1価の炭化水素基を表す。p及びqは1から5までの整数を表す。ただし、p+q=2〜6である。
上記式(I)で表される電子受容型重合開始剤の具体例としては、下記式に示す化合物などが挙げられるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)は、耐薬品性及びUV耐刷性の観点から、−3.00eV以下であることが好ましく、−3.02eV以下であることがより好ましい。
また、下限としては、−3.80eV以上であることが好ましく、−3.60eV以上であることがより好ましい。
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%であることがより好ましく、0.8質量%〜20質量%であることが特に好ましい。
〔電子供与型重合開始剤〕
重合開始剤は、平版印刷版における耐薬品性、及び、UV耐刷性の向上に寄与する観点から、電子供与型重合開始剤を更に含むことが好ましく、電子供与型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤の両方を含むことがより好ましい。
電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N−フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N−フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
これら電子供与型重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート化合物が特に好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、耐薬品性及びUV耐刷性の観点から、−6.00eV以上であることが好ましく、−5.95eV以上であることがより好ましく、−5.93eV以上であることが更に好ましい。
また、上限としては、−5.00eV以下であることが好ましく、−5.40eV以下であることがより好ましい。
本開示において、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)の計算は、以下の方法により行う。
まず、計算対象となる化合物における対アニオンは無視する。
量子化学計算ソフトウェアGaussian09を用い、構造最適化はDFT(B3L
YP/6−31G(d))で行う。
MO(分子軌道)エネルギー計算は、上記構造最適化で得た構造でDFT(B3LYP/6−31+G(d,p)/CPCM(solvent=methanol))で行う。
上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の公式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。
Escaled=0.823168×27.2114×Ebare−1.07634
なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、0.823168と−1.07634とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOとを計算が実測の値に合うように定める。
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B−1〜B−8及び他の化合物を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Buはn−ブチル基を表し、Zは対カチオンを表す。
で表される対カチオンとしては、Na、K、N(Bu)等が挙げられる。上記Buはn−ブチル基を表す。
また、Zで表される対カチオンとしては、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウムイオンも好適にあげられる。
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜25質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が更に好ましい。
また、本開示における好ましい態様の一つは、上記電子受容型重合開始剤と、上記電子供与型重合開始剤と、が塩を形成している態様である。
具体的には、例えば、上記オニウム化合物が、オニウムイオンと、上記電子供与型重合開始剤におけるアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)との塩である態様が挙げられる。また、より好ましくは、上記ヨードニウム塩化合物におけるヨードニウムカチオン(例えば、ジ−p−トリルヨードニウムカチオン)と、上記電子供与型重合開始剤におけるボレートアニオンとが塩を形成した、ヨードニウムボレート化合物が挙げられる。
上記電子受容型重合開始剤と上記電子供与型重合開始剤とが塩を形成している態様の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
〔赤外線吸収剤〕
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
上記赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
シアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落0017〜0019に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落0016〜0021、特開2002−040638号公報の段落0012〜0037に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落0034〜0041、特開2008−195018号公報の段落0080〜0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号公報の段落0035〜0043に記載の化合物、特開2012−206495号公報の段落0105〜0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5−5005号公報の段落0008〜0009、特開2001−222101号公報の段落0022〜0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008−195018号公報の段落0072〜0076に記載の化合物が好ましい。
また、上記赤外線吸収剤が、分解性赤外線吸収剤であることが好ましい。
上記赤外線吸収剤として、分解性赤外線吸収剤色素を用いることにより、上記赤外線吸収剤又はその分解物が重合を促進し、また、上記熱可塑性樹脂を用いることにより極性の高い膜を得ることができ、更に、上記赤外線吸収剤の分解物と上記重合性化合物とが相互作用することにより、UV耐刷性に優れると推定している。
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して、発色する機能を有する赤外線吸収剤であることが好ましい。ここで、「発色」とは、赤外線露光前は可視光領域(400nm以上750nm未満の波長域)にほとんど吸収がないが、赤外線露光により可視光領域に吸収を生じることを意味し、可視光領域よりも低波長領域の吸収が可視光領域に長波長化することも包含する。
以降、分解性赤外線吸収剤が、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して形成される発色した化合物を、「分解性赤外線吸収剤の発色体」ともいう。
また、分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有することが好ましい。
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線波長域(波長750nm〜1mm)の少なくとも1部の光を吸収し、分解するものであればよいが、750nm〜1,400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤であることが好ましい。
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤であることが好ましく、赤外線露光に起因する電子移動により分解する赤外線吸収剤であることがより好ましい。ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって分解性赤外線吸収剤のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
上記分解性赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、赤外線露光により分解する、シアニン色素が好ましい。
上記赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、下記式1−1で表される化合物であることがより好ましい。
式1−1中、Rは赤外線露光によりR−L結合が開裂する基を表し、R11〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−Ra、−ORb、−SRc又は−NRdReを表し、Ra〜Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11〜R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は−NR10−を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
式1−1で表されるシアニン色素は、赤外線で露光されると、R−L結合が開裂し、Lは、=O、=S又は=NR10となって、分解性赤外線吸収剤の発色体が形成される。Rは離脱して、ラジカル体又はイオン体を形成する。これらは、画像記録層に含まれる重合性を有する化合物の重合に寄与する。
式1−1において、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、−Ra、−ORb、−SRc又は−NRdReが好ましい。
Ra〜Reにおける炭化水素基は、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜15の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基が更に好ましい。上記炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
式1−1におけるR11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
また、Lが結合する炭素原子と結合する炭素原子に結合するR11及びR13は、アルキル基が好ましく、両者が連結して環を形成することがより好ましい。上記形成される環は5員環又は6員環が好ましく、5員環がより好ましい。
が結合する炭素原子に結合するR12及びAが結合する炭素原子に結合するR14は、それぞれ、R15及びR17と連結して環を形成することが好ましい。
式1−1におけるR15は、炭化水素基が好ましい。また、R15と、A が結合する炭素原子に結合するR12とが連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドリウム環、ピリリウム環、チオピリリウム環、ベンゾオキサゾリン環又はベンゾイミダゾリン環が好ましく、発色性の観点から、インドリウム環がより好ましい。
式1−1におけるR17は、炭化水素基が好ましい。また、R17と、Aが結合する炭素原子に結合するR14とが連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドール環、ピラン環、チオピラン環、ベンゾオキサゾール環、又は、ベンゾイミダゾール環が好ましく、発色性の観点から、インドール環がより好ましい。
式1−1におけるR15及びR17は同一の基であることが好ましく、それぞれが環を形成する場合、同一の環を形成することが好ましい。
式1−1におけるR16及びR18は同一の基であることが好ましい。
更に、式1−1により表される化合物の水溶性を向上させる観点から、R16及びR18はそれぞれ独立に、(ポリ)オキシアルキレン基を有するアルキル基又はアニオン構造を有するアルキル基が好ましく、アルコキシアルキル基、カルボキシレート基又はスルホネート基を有するアルキル基がより好ましく、末端にスルホネート基を有するアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。
上記アニオン構造の対カチオンは、式1−1中のR−Lに含まれうるカチオン又はA であってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
上記スルホネート基の対カチオンは、式1−1中のR−Lに含まれうるカチオン又はA であってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
また、式1−1により表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、R16及びR18はそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香環を有するアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。芳香環を有するアルキル基としては、末端に芳香環を有するアルキル基が好ましく、2−フェニルエチル基、2−ナフタレニルエチル基又は2−(9−アントラセニル)エチル基がより好ましい。
式1−1におけるn11及びn12は同一の0〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、2が特に好ましい。
式1−1におけるA及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、窒素原子が好ましい。
式1−1におけるA及びAは同一の原子であることが好ましい。
式1−1におけるZaは、電荷を中和する対イオンを表す。アニオン種を表す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。カチオン種を表す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンがより好ましい。
11〜R18及びR−Lは、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R11〜R18及びR−Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R11〜R18及びR−Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
また、式1−1で表されるシアニン色素が、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは存在しない。
式1−1において、Rで表される赤外線露光によりR−L結合が開裂する基については、後で詳細に記載する。
上記分解性赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、下記式1−Aで表されるシアニン色素がより好ましい。
式1−A中、Rは赤外線露光によりR−L結合が開裂する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R及びRが互いに連結して環を形成してもよく、Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、−COM基又は−PO基を表し、Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は−NR10−を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
式1−Aにおいて、R〜R及びRにおけるアルキル基は、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜15のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2−ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
におけるアリール基は、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましく、炭素数6〜12のアリール基が更に好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
アリール基の中で、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ジメチルアミノフェニル基又はナフチル基が好ましい。
及びRは、連結して環を形成していることが好ましい。
及びRが連結して環を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−NR−又はジアルキルメチレン基を表し、−NR−又はジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。
又はRで表されるアルキル基は、置換アルキルであってもよい。R又はRで表される置換アルキル基としては、下記式(a1)〜式(a4)のいずれかで表される基が挙げられる。
式(a1)〜式(a4)中、RW0は炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Wは単結合又は酸素原子を表し、nW1は1〜45の整数を表し、RW1は炭素数1〜12のアルキル基又は−C(=O)−RW5を表し、RW5は炭素数1〜12のアルキル基を表し、RW2〜RW4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基を表し、Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
式(a1)において、RW0で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基が好ましく、n−プロピレン基が特に好ましい。
W1は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
W1で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
W5で表されるアルキル基は、RW1で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様もRW1で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
式(a1)で表される基の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
式(a2)〜式(a4)において、RW2〜RW4で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基等が挙げられ、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基が好ましく、エチレン基、n−プロピレン基が特に好ましい。
式(a3)において、2つ存在するMは同じでも異なってもよい。
式(a2)〜式(a4)において、Mで表されるオニウム基としては、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。
式(a1)〜式(a4)で表される基の中で、式(a1)又は式(a4)で表される基が好ましい。
式1−Aにおいて、R及びRはそれぞれ無置換アルキル基であることが好ましい。R及びRは、同じ基であることが好ましい。
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ホスホン酸基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基が好ましい。
また、式1−Aで表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版の耐刷性を向上させる観点から、Ar及びArはそれぞれ独立に、ナフタレン環、又は、アルキル基もしくはアルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が好ましく、ナフタレン環、又は、アルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基がより好ましく、ナフタレン環、又は、メトキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が特に好ましい。
式1−Aにおいて、Ar又はArが、下記式(b1)で表される基を形成する基であることが好ましい。
式(b1)中、R19は炭素数1〜12のアルキル基を表す。n3は1〜4の整数を表す。*は結合部位を表す。
Zaは、電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式1−Aで表される化合物が、その構造中に対応するイオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。Zaがアニオン種を示す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。Zaがカチオン種を示す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンがより好ましい。
〜R、R、Ar、Ar、Y及びYは、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R〜R、R、Ar、Ar、Y及びYの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R〜R、R、Ar、Ar、Y及びYに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
上記式1−1及び式1−Aにおいて、Rで表される赤外線露光によりR−L結合が開裂する基について以下に説明する。
式1−1又は式1−AにおいてLが酸素原子である場合、Rは、発色性の観点から、下記式(1−1)〜式(1−7)のいずれかで表される基が好ましく、下記式(1−1)〜式(1−3)のいずれかで表される基がより好ましい。
式(1−1)〜(1−7)中、●は、式1−1又は式1−A中のLで表される酸素原子との結合部位を表し、R20はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27を表し、R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R22はアリール基、−OR24、−NR2526、−SR27、−C(=O)R28、−OC(=O)R28又はハロゲン原子を表し、R23はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R24〜R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R28はアルキル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27を表し、Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
20、R21及びR24〜R28がアルキル基である場合の好ましい態様は、R〜R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
20及びR23におけるアルケニル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。
20〜R28がアリール基である場合の好ましい態様は、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
発色性の観点から、式(1−1)におけるR20は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、−OR24、−NR2526又は−SR27が好ましく、アルキル基、−OR24、−NR2526又は−SR27がより好ましく、アルキル基又は−OR24が更に好ましく、−OR24が特に好ましい。
また、式(1−1)におけるR20がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールスルホニル基を有するアルキル基であってもよく、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基が好ましい。
式(1−1)におけるR20が−OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基又はtert−ブチル基が更に好ましく、t−ブチル基が特に好ましい。
式(1−1)におけるR20がアルケニル基である場合、上記アルケニル基は、アリール基、又はヒドロキシアリール基を有するアルケニル基であってもよい。
発色性の観点から、式(1−2)におけるR21は、水素原子が好ましい。
また、発色性の観点から、式(1−2)におけるR22は、−C(=O)OR24、−OC(=O)OR24又はハロゲン原子が好ましく、−C(=O)OR24又は−OC(=O)OR24がより好ましい。式(1−2)におけるR22が−C(=O)OR24又は−OC(=O)OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましい。
発色性の観点から、式(1−3)におけるR21はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基が好ましく、また、式(1−3)における少なくとも1つのR21は、アルキル基がより好ましい。
また、R21におけるアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10のアルキル基がより好ましい。
更に、R21におけるアルキル基は、分岐又は環構造を有するアルキル基が好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、tert−ブチル基がより好ましい。また、R21におけるアルキル基は、第二級又は第三級アルキル基であることが好ましい。
また、発色性の観点から、式(1−3)におけるR23は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基が好ましく、p−ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基がより好ましく、ピリジニウム基が更に好ましい。
23におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基が好ましい。
中でも、ピリジニウム基が好ましく、N−アルキル−3−ピリジニウム基、N−ベンジル−3−ピリジニウム基、N−(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)−3−ピリジニウム基、N−アルコキシカルボニルメチル−3−ピリジニウム基、N−アルキル−4−ピリジニウム基、N−ベンジル−4−ピリジニウム基、N−(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)−4−ピリジニウム基、N−アルコキシカルボニルメチル−4−ピリジニウム基、又は、N−アルキル−3,5−ジメチル−4−ピリジニウム基がより好ましく、N−アルキル−3−ピリジニウム基、又は、N−アルキル−4−ピリジニウム基が更に好ましく、N−メチル−3−ピリジニウム基、N−オクチル−3−ピリジニウム基、N−メチル−4−ピリジニウム基、又は、N−オクチル−4−ピリジニウム基が特に好ましく、N−オクチル−3−ピリジニウム基、又は、N−オクチル−4−ピリジニウム基が最も好ましい。
また、R23がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、p−トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
発色性の観点から、式(1−4)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、2つのR20のうち、一方はアルキル基、他方はアリール基がより好ましい。上記2つのR20は、連結して環を形成していてもよい。
発色性の観点から、式(1−5)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、p−メチルフェニル基が更に好ましい。
発色性の観点から、式(1−6)におけるR20はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
発色性の観点から、式(1−7)におけるZは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンが好ましく、p−トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
式1−1又は式1−AにおいてLが酸素原子である場合、発色性の観点から、更に好ましくは、Rは下記式(5)で表される基である。
式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Eはオニウム基を表し、*は式1−1又は式1−A中のLで表される酸素原子との結合部位を表す。
15又はR16で表されるアルキル基は、R〜R及びRにおけるアルキル基と同様であり、好ましい態様もR〜R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
15又はR16で表されるアリール基は、Rにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様も、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
Eで表されるオニウム基は、R23におけるオニウム基と同様であり、好ましい態様もR23におけるオニウム基の好ましい態様と同様である。
式(5)において、Eで表されるオニウム基は、下記式(6)で表されるピリジニウム基が好ましい。
式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0〜4の整数を表す。R18はアルキル基又はアリール基を表す。Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
17又はR18で表されるアルキル基又はアリール基は、R〜R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様もR〜R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
17で表されるアルコキシ基は、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
n2は、好ましくは、0である。
で表される電荷を中和するための対イオンは、式(1−7)におけるZと同様であり、好ましい態様も式(1−7)におけるZの好ましい態様と同様である。
以下に、式1−1又は式1−AにおいてLが酸素原子の場合、Rで表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、TsOはトシレートアニオンを表し、●は式1−1又は式1−AのLで表される酸素原子との結合部位を表す。

Lが酸素原子である場合、Rがアリール基又は直鎖のアルキル基であると、赤外線露光によるR−O結合の開裂は起こらない。
式1−1又は式1−AにおいてLが硫黄原子である場合、Rは、下記式(2−1)で表される基が好ましい。
式(2−1)中、●は、式1−1又は式1−A中のLで表される硫黄原子との結合部位を表し、R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R22はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表す。
式1−1又は式1−AにおいてLが−NR10−である場合、Nに結合するRは、下記式(3−1)で表わされる基が好ましい。
式(3−1)中、●は、式1−1又は式1−A中のLに含まれる窒素原子との結合部位を表し、X及びXはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、上記式(2−1)で表される基を表す。
上記式(2−1)において、R21及びR22で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基及びオニウム基については、上記式(1−1)〜式(1−7)において記載したアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基及びオニウム基に関する記載を援用することができる。
式1−1又は式1−Aにおいて、Lが硫黄原子又は−NR10−を表し、R10が水素原子、アルキル基又はアリール基を表すことが、耐刷性の向上という観点から好ましい。
上記式1−1及び式1−AにおけるRは、下記式2で表される基であることが好ましい。
また、上記式2で表される基は、赤外線露光により、式2中のR−O結合が開裂する基であることが好ましい。
式2中、Rは、アルキル基を表し、波線部分は、式1−1又は式1−A中のLで表される基との結合部位を表す。
で表されるアルキル基としては、上述のR〜R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、上記アルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、上記アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3〜6の分岐鎖状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基又はtert−ブチル基が特に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
以下に、上記式2で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1−1又は式1−AのLとの結合部位を表す。
以下に、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
また、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008−544322号公報、又は、国際公開第2016/027886号に記載のものを好適に用いることができる。
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%〜10.0質量%が好ましく、0.5質量%〜5.0質量%がより好ましい。
〔電子供与型重合開始剤と、電子受容型重合開始剤と、赤外線吸収剤との関係〕
本開示における画像記録層は、上記電子供与型重合開始剤と、上記電子受容型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、を含み、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが−6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが−3.0eV以下であることが好ましい。
上記電子供与型重合開始剤のHOMO、及び、上記電子受容型重合開始剤のLUMOのより好ましい態様は、それぞれ上述の通りである。
本開示における画像記録層において、上記電子供与型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、上記電子受容型重合開始剤とは、例えば、下記化学式に記載のようにエネルギーの受け渡しを行っていると推測される。
そのため、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが−6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが−3.0eV以下であれば、ラジカルの発生効率が向上するため、耐薬品性及びUV耐刷性により優れやすいと考えられる。
UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、−0.200eV以上であることが好ましく、−0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差は、1.00eV〜−0.200eVであることが好ましく、0.700eV〜−0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、上記赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
また、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、−0.200eV以上であることが好ましく、−0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤のLUMOと、上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差は、1.00eV〜−0.200eVであることが好ましく、0.700eV〜−0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記赤外線吸収剤のLUMOが、上記電子受容型重合開始剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
〔ポリマー粒子〕
上記画像記録層は、ポリマー粒子を含んでいてもよい。なお、上記熱可塑性樹脂粒子は、ポリマー粒子に該当しない。
ポリマー粒子は、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部のUV耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度やUV耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
また、ポリマー粒子としては、UV耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012−206495号公報の段落0032〜0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
更に、ポリマー粒子としては、UV耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、−[CHCH(C≡N)−]又は−[CHC(CH)(C≡N)−]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10〜100であることが好ましく、25〜75であることがより好ましく、40〜50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008−503365号公報の段落0039〜0068に記載のものが好ましく挙げられる。
ポリマー粒子の平均粒径は、0.01μm〜3.0μmが好ましく、0.03μm〜2.0μmがより好ましく、0.10μm〜1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記各粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対し、5質量%〜90質量%が好ましい。
〔酸発色剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、酸発色剤を更に含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
このような酸発色剤の例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ピロリジノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−N−エチル−N−フェニルアミノフェニル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド等のフタリド類、
4,4−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(4−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(4−クロロアニリノ)ラクタム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジ−n−ヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’,3’−ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、
3−N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−オクチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−(2’−メトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−テトラヒドロフルフリル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(4’−メチルフェニル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3’−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2−ビス〔4’−(3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチルフルオラン)−7−イルアミノフェニル〕プロパン、3−〔4’−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔4’−(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ−5,7−ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−n−プロポキシカルボニルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジn−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ブトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン−3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
その他、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン−3−オン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3’−N,N−ジベンジルアミノ−6’−N,N−ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、2’−(N−メチル−N−フェニル)アミノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンなどが挙げられる。
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H−3035、BLUE203、ATP、H−1046、H−2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE−DCF、Vermilion−DCF、PINK−DCF、RED−DCF、BLMB、CVL、GREEN−DCF、TH−107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB−2、ODB−4、ODB−250、ODB−BlackXV、Blue−63、Blue−502、GN−169、GN−2、Green−118、Red−40、Red−8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、H−3035、ATP、H−1046、H−2114、GREEN−DCF、Blue−63、GN−169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
〔熱可塑性樹脂粒子以外のバインダーポリマー〕
画像記録層は、熱可塑性樹脂粒子以外のバインダーポリマー(以下、「他のバインダーポリマー」ともいう。)を含んでもよい。
上記熱可塑性樹脂粒子、及び、上記ポリマー粒子は、上記他のバインダーポリマーに該当しない。すなわち、他のバインダーポリマーは、粒子形状ではない重合体である。
他のバインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
中でも、他のバインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
また、他のバインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012−148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
星型高分子化合物は、特開2008−195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基(スチリル基)などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルフェニル基(スチリル基)が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
他のバインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000〜300,000であることが更に好ましい。
必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
本開示において用いられる画像記録層においては、他のバインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のバインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましい。
また、本開示における画像記録層が他のバインダーポリマーを含む場合、上記熱可塑性樹脂粒子と他のバインダーポリマーとの合計質量に対する他のバインダーポリマーの含有量は、0質量%を超え99質量%以下であることが好ましく、20質量%〜95質量%であることがより好ましく、40質量%〜90質量%であることが更に好ましい。
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版におけるUV耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオール化合物がより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。

連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜40質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
〔感脂化剤〕
画像記録層は、インキ着肉性を向上させるために、感脂化剤を更に含有することが好ましい。
感脂化剤は、SP値が18.0未満であることが好ましく、14〜18未満であることがより好ましく、15〜17であることが更に好ましく、16〜16.9であることが特に好ましい。
また、感脂化剤は、分子量(分子量分布があるときは、重量平均分子量)が2,000以上の化合物であってもよく、分子量が2,000未満の化合物であってもよい。
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(MPa)1/2))は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターを用いるものとする。
ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においてはSP値をδ(単位:(MPa)1/2)で表し、下記式を用いて算出される値を用いる。
δ(MPa)1/2=(δd+δp+δh1/2
なお、この分散項δd、極性項δp、及び、水素結合項δhは、ハンセンやその研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII−698〜711に詳しく掲載されている。
また本開示において、ポリマーのSP値は、ポリマーの分子構造からPolymer Handbook fourth editionに記載のHoy法により計算する。
上記感脂化剤としては、例えば、オニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等のアンモニウム化合物などが挙げられる。
特に、オーバーコート層に無機層状化合物を含有させる場合、これら化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
また、感脂化剤は、着肉性の観点から、オニウム化合物であることが好ましい。
オニウム化合物としては、ホスホニウム化合物、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、オニウム化合物としては、上記観点から、ホスホニウム化合物及びアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
また、後述する、現像促進剤又は電子受容型重合開始剤におけるオニウム化合物はSP値が18を超える化合物であり、感脂化剤には含まれない。
ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナート等が挙げられる。
アンモニウム化合物としては、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等を好ましく挙げることができる。
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。
中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。
具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号公報の段落0021〜0037に記載の化合物、特開2009−90645号公報の段落0030〜0057に記載の化合物等が挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5mol%〜80mol%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号公報の段落0089〜0105に記載のポリマーが挙げられる。
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009−208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000〜150,000が好ましく、17,000〜140,000がより好ましく、20,000〜130,000が特に好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%〜40.0質量%が好ましく、2質量%〜25.0質量%がより好ましく、3質量%〜20.0質量%が更に好ましい。
画像記録層は、感脂化剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、感脂化剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性を両立させる観点から、感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することがより好ましい。
〔現像促進剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、現像促進剤を更に含むことが好ましい。
現像促進剤は、SP値の極性項の値が6.0〜26.0であることが好ましく、6.2〜24.0であることがより好ましく、6.3〜23.5であることが更に好ましく、6.4〜22.0であることが特に好ましい。
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(cal/cm1/2)の極性項の値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターにおける極性項δpの値を用いるものとする。ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においては上記極性項δpを用いる。
δp[cal/cm]はHansen 溶解度パラメーター双極子間力項、V[cal/cm]はモル体積、μ[D]は双極子モーメントである。δpとしては、一般的にはHansenとBeerbowerによって簡素化された下記式が用いられている
現像促進剤としては、親水性高分子化合物又は親水性低分子化合物であることが好ましい。
本開示において、親水性とは、SP値の極性項の値が6.0〜26.0であることをいい、親水性高分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000以上の化合物をいい、親水性低分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000未満の化合物をいう。
親水性高分子化合物としては、セルロース化合物等が挙げられ、セルロース化合物が好ましい。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物の置換度は、0.1〜6.0であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000〜5,000,000であることが好ましく、5,000〜200,000であることがより好ましい。
親水性低分子化合物としては、グリコール化合物、ポリオール化合物、有機アミン化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルファミン化合物、有機硫酸化合物、有機ホスホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられ、ポリオール化合物、有機スルホン酸化合物又はベタイン化合物が好ましい。
グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びこれらの化合物のエーテル又はエステル誘導体類が挙げられる。
ポリオール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等及びその塩が挙げられる。
有機スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等及びその塩が挙げられ、アルキル基の炭素数が1〜10のアルキルスルホン酸が好ましく挙げられる。
有機スルファミン化合物としては、アルキルスルファミン酸等及びその塩が挙げられる。
有機硫酸化合物としては、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等及びその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸化合物としては、フェニルホスホン酸等及びその塩、が挙げられる。
有機カルボン酸化合物としては、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸等及びその塩が挙げられる。
ベタイン化合物としては、ホスホベタイン化合物、スルホベタイン化合物、カルボキシベタイン化合物等が挙げられ、トリメチルグリシンが好ましく挙げられる。
親水性低分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、100以上3,000未満であることが好ましく、300〜2,500であることがより好ましい。
現像促進剤は、環状構造を有する化合物であることが好ましい。
環状構造としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基の少なくとも一部が置換されていてもよいグルコース環、イソシアヌル環、ヘテロ原子を有していてもよい芳香環、ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環等が挙げられ、グルコース環又はイソシアヌル環が好ましく挙げられる。
グルコース環を有する化合物としては、上述のセルロース化合物が挙げられる。
イソシアヌル環を有する化合物としては、上述のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
芳香環を有する化合物としては、上述のトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族環を有する化合物としては、上述のアルキル硫酸であって、アルキル基が環構造を有する化合物等が挙げられる。
また、上記環状構造を有する化合物は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
ヒドロキシ基を有し、かつ、環状構造を有する化合物としては、上述のセルロース化合物、及び、上述のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましく挙げられる。
また、現像促進剤としては、オニウム化合物であることが好ましい。
オニウム化合物としては、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、アンモニウム化合物が好ましい。
オニウム化合物である現像促進剤としては、トリメチルグリシン等が挙げられる。
また、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウム化合物はSP値の極性項の値が6.0〜26.0ではない化合物であり、現像促進剤には含まれない。
画像記録層は、現像促進剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、現像促進剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性の観点から、現像促進剤として、上記ポリオール化合物及び上記ベタイン化合物、上記ベタイン化合物及び上記有機スルホン酸化合物、又は、上記ポリオール化合物及び上記有機スルホン酸化合物を含むことが好ましい。
画像記録層の全質量に対する現像促進剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落0114〜段落0159の記載を参照することができる。
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落0142〜段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%〜50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m〜3.0g/mが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層の膜厚は、0.1μm〜3.0μmであることが好ましく、0.3μm〜2.0μmであることがより好ましい。
本開示において、平版印刷版原版における各層の膜厚は、平版印刷版原版の表面に対して垂直な方向に切断した切片を作製し、上記切片の断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
<オーバーコート層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の、支持体側とは反対の側の面上にオーバーコート層(「保護層」と呼ばれることもある。)を有していてもよい。
上記オーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚よりも厚いことが好ましい。
オーバーコート層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性のオーバーコート層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。オーバーコート層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできるが、機上現像性の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
オーバーコート層において用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報及び特開2006−259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
上記水溶性ポリマーの中でも、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含むことが更に好ましい。
上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
また、オーバーコート層の一態様として、ポリビニルアルコールと、ポリエチレングリコールとを含む態様も好ましく挙げられる。
本開示におけるオーバーコート層が水溶性ポリマーを含む場合、オーバーコート層の全質量に対する水溶性ポリマーの含有量は、1質量%〜99質量%であることが好ましく、3質量%〜97質量%であることがより好ましく、5質量%〜95質量%であることが更に好ましい。
オーバーコート層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有してもよい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å〜15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm〜20μm、より好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは1μm〜5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm〜50nm程度、面サイズ(長径)が1μm〜20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、オーバーコート層の全質量に対して、1質量%〜60質量%が好ましく、3質量%〜50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
オーバーコート層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤をオーバーコート層に含有させてもよい。
オーバーコート層は公知の方法で塗布される。オーバーコート層の塗布量(固形分)は、0.01g/m〜10g/mが好ましく、0.02g/m〜3g/mがより好ましく、0.02g/m〜1g/mが特に好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、0.1μm〜5.0μmであることが好ましく、0.3μm〜4.0μmであることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚に対し、1.1倍〜5.0倍であることが好ましく、1.5倍〜3.0倍であることがより好ましい。
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。親水性表面としては、水との接触角が10°より小さいものが好ましく、5°より小さいものがより好ましい。
本開示における水接触角は、協和界面化学(株)製DM−501によって、25℃における表面上の水滴の接触角(0.2秒後)として測定される。
本開示に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版原版に用いられる支持体について図面を用いて説明するが、図面の説明中、符号が省略される場合がある。
陽極酸化被膜の厚さは、200nm〜2,000nmであることが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図を図2Aに示す。図2Aにおいて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体12は、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20(以後、単に「陽極酸化皮膜20」とも称する)とをこの順に有する。アルミニウム支持体12中の陽極酸化皮膜20は、図1における平版印刷版原版10の画像記録層16側に位置する。即ち、平版印刷版原版10は、アルミニウム板18、陽極酸化皮膜20、下塗り層14、及び、画像記録層16を有する。
〔アルミニウム板〕
アルミニウム板(アルミニウム支持体)は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属、即ち、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。アルミニウム板は、純アルミニウム板又はアルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板からなる。
アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。アルミニウム板としては、純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは製錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含むものでもよい。アルミニウム板18としては、その組成が限定されるものではなく、公知公用の素材のもの(例えばJIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、及び、JIS A 3005)を適宜利用することができる。
アルミニウム板の幅は400mm〜2,000mm程度、厚さはおよそ0.1mm〜0.6mm程度が好ましい。この幅又は厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、及び、ユーザーの希望により適宜変更できる。
本開示に係る平版印刷版原版に用いられる支持体は、画像記録層側の表面にマイクロポアを有することが好ましく、画像記録層側の表面に陽極酸化被膜を有し、陽極酸化被膜表面に、マイクロポアを有することが好ましい。
平版印刷版原版の画像記録層において、上記赤外線吸収剤と、上記重合開始剤と、上記重合性化合物と、上記熱可塑性樹脂粒子とを併用することによって、熱可塑性樹脂粒子同士の熱融着に加えて、熱可塑性樹脂粒子の熱融着物と混ざり合いながら重合性化合物が重合することにより、より強固な膜が形成されるとともに、陽極酸化被膜表面にマイクロポアを有することで、マイクロポア内でも重合性化合物の上記と同様の重合によって支持体と画像記録層との密着性が向上されることにより、UV耐刷性に優れると推定している。
上記表面におけるマイクロポアの平均径は、UV耐刷性の観点から、13nmを超え100nm以下であることが好ましく、15nm〜80nmであることがより好ましく、20nm〜60nmであることがより好ましい。
本開示において、マイクロポアという用語は、支持体の画像記録層側の表面に形成されたポア、具体的には、陽極酸化皮膜中のポアを表す一般的に使われる用語であり、ポアのサイズを規定するものではない。
〔陽極酸化皮膜〕
本開示に係る平版印刷版原版に用いられる支持体は、画像記録層側の表面に陽極酸化被膜を有することが好ましい。
図2Aにおいて、陽極酸化皮膜20は、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に一般的に作製される、皮膜表面に略垂直であり、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22を有する陽極酸化アルミニウム皮膜を指す。マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面から厚み方向(アルミニウム板18側)に沿ってのびている。
陽極酸化皮膜の厚さX1は、200nm〜2,000nmであることが好ましく、より好ましくは500nm〜1,800nm、更に好ましくは750nm〜1,500nmである。
本開示に係る平版印刷版原版に用いられるアルミニウム支持体は、下記態様1〜態様3のいずれかの態様であることが好ましい。
(態様1)
上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nmを超える位置までのびており、上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径に対する、マイクロポア底部の平均径の割合が0.8倍以上1.2倍以下である。
(態様2)
上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm〜1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ方向に20nm〜2,000nmの位置までのびる小径孔部と、から構成され、上記大径孔部の平均径が、13nmを超え100nm以下であり、上記小径孔部の平均径が、上記大径孔部の平均径の5%〜80%である。
(態様3)
上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径が10nm〜30nm以下であり、内部の最大径の平均値が20nm〜300nmであり、上記内部の最大径の平均値が上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径よりも大きい。
以下、それぞれの態様について図面を用いて説明する。
〔態様1について〕
図2Aは、上記態様1の一実施形態を示す断面概略図である。
図2Aにおいて、マイクロポア22が、陽極酸化皮膜20表面から深さ10nmを超える位置までのびており、上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径に対する、マイクロポア底部の平均径の割合が0.8倍以上1.2倍以下である。
マイクロポア22の深さX2は10nmを超え、50nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
上記マイクロポア22の深さX2は、陽極酸化皮膜20の断面をFE−SEMで観察し(15万倍)、得られた画像において、25個のマイクロポアの深さを測定し、算術平均値として求められる。
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1は、13nmを超え100nm以下であることが好ましく、15nm以上75nm以下であることがより好ましく、20nm以上50nm以下であることが更に好ましい。
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の、深さX2に対する平均径Y1の割合(X2/Y1)は、2倍以上10倍以下が好ましく、2.5倍以上7倍以下がより好ましく、3倍以上6倍以下が更に好ましい。
また、マイクロポア22の底部の平均径Y2は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上75nm以下であることがより好ましく、20nm以上50nm以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、マイクロポア22底部の平均径Y2の割合は、0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましく、0.85倍以上1.15倍以下であることがより好ましく、0.9倍以上1.1倍以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、マイクロポア22の底部の平均径Y2の割合は、下記式1Aにより求められる値である。
式1A:(陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1)/(マイクロポア22の底部の平均径Y2)
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y1は、陽極酸化皮膜20の表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を測定し、算術平均値として求められる。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの形状(開口部の形状)が円状でない場合は、円相当径を用いる。
マイクロポア22の底部の平均径Y2は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の底部の径(直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE−SEMで観察して、マイクロポア22の底部の平均径Y2を求めてもよい。
なお、マイクロポア底部の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
また、底部の形状が平面状ではない場合、例えば図2Bに記載のY2−1を底部の平均径として測定する。
図2Bは図2A中のマイクロポアの1つを拡大した概略断面図である。
態様1におけるマイクロポア22の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状等が挙げられ、略直管状が好ましい。マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凹状)であっても、平面状であってもよい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y1に対する、中央部の径Y1Aの割合は(Y1A/Y1)は、0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましい。
マイクロポア22の中央部の平均径Y1Aは、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の中央部の径(直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE−SEMで観察して、マイクロポア22の底部の中央部の径Y1Aを求めてもよい。
−その他の特性−
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm〜2,000個/μmであることが好ましく、200個/μm〜1,000個/μmであることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20の表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
〔態様2について〕
図3Aは、上記態様2の一実施形態を示す断面概略図である。
陽極酸化皮膜20中のマイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面から深さ(深さA:図3A参照)が10nm〜1,000nm位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ方向にのびる小径孔部26とから構成される。
以下に、大径孔部24と小径孔部26について詳述する。
−大径孔部−
陽極酸化皮膜表面の大径孔部に、支持体と接している本開示における画像記録層が一部入り込むことによって、アンカー効果を発揮して画像部と支持体との密着性が高まり、印刷時における画像部の耐刷性が向上すると推察される。
大径孔部24の陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径(平均開口径)は、10nm〜100nm以下であることが好ましい。UV耐刷性がより優れる点で、マイクロポアの平均径は、13nmを超え100nm以下であることがより好ましく、15nm〜60nmが更に好ましく、18nm〜40nmが特に好ましい。
上記マイクロポアの平均径が13nmより大きい場合、UV耐刷性に優れた平版印刷版が得られやすい。また、上記マイクロポアの平均径が100nm以下であれば、放置払い性に優れた平版位刷版が得られやすい。
本明細書において、放置払い性に優れるとは、平版印刷版を用いて印刷を行った後に、印刷を中断(例えば、数時間の中断など)して、印刷を再開したときに、汚れが認められない印刷物が得られるまでに要する印刷枚数が少ないことをいう。
大径孔部24の平均径は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部)の径(直径)を測定し、算術平均値として求められる。
なお、大径孔部24の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
大径孔部24の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ(以後、「深さA」とも称する場合がある)が10nm〜1,000nm位置にあることが好ましい。つまり、大径孔部24は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に10nm以上のびる孔部であることが好ましい。中でも、本開示の効果がより優れる点で、深さAは、10nmを超え1000nm以下が好ましく、25nm〜200nmがより好ましく、70nm〜100nmが更に好ましい。
上記深さAが10nm以上であれば、小点耐刷性、小点の現像ラチチュード、及び、ベタ画像部の耐刷性に優れた平版印刷版がより得られやすい。また、上記深さAが1,000n以下であれば、特に放置払い性により優れた平版位刷版が得られやすい。
本明細書において「小点耐刷性」とは、特に小点(例えば、直径(円相当径)が数μm〜数十μm等の画像部)の耐刷性を意味する。
上記陽極酸化皮膜表面からの深さは、陽極酸化皮膜20の断面をFE−SEMで観察し(15万倍)、得られた画像において、25個の大径孔部の深さを測定し、算術平均値として求められる。
大径孔部24の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。大径孔部の底部における径は、通常、開口部の径と1nm〜10nm程度の差があってもよい。大径孔部24の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凹状)であっても、平面状であってもよい。
−小径孔部−
図3Aに示すように、上記マイクロポアは、大径孔部24の底部と連通して、連通位置よりさらに深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である、小径孔部26を更に有することが好ましい。
ひとつの小径孔部26は、通常ひとつの大径孔部24と連通するが、2つ以上の小径孔部26がひとつの大径孔部24の底部と連通していてもよい。
小径孔部26の連通位置における平均径は特に限定されないが、大径孔部24の底部と連通における小径孔部26の平均径は、大径孔部24の平均径よりも小さく、20nm未満であることが好ましく、15nm以下がより好ましく、13nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。平均径は、5nm以上であることが好ましい。平均径が20nm未満の場合、放置払い性に優れた平版印刷版が得られやすい。
小径孔部26の平均径は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(小径孔部)の径(直径)を測定し、算術平均値として求められる。
なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部(大径孔部のある領域)を、例えば、アルゴンガス等で切削し、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE−SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部26の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
小径孔部26の底部は、上記の大径孔部24との連通位置(上述した深さAに該当)からさらに深さ方向に、20nm〜2,000nm(より好ましくは100nm〜1,940nm未満)の場所に位置することが好ましい。言い換えると、小径孔部26の深さは20nm〜2,000nm(より好ましくは100nm〜1,940nm未満)であることが好ましい。中でも、本開示の効果がより優れる点で、小径孔部26は連通位置から深さ300nm〜1600nmの位置までのびることが好ましく、小径孔部26は連通位置から深さ900nm〜1300nmの位置までのびることがより好ましい。
連通位置からの深さが20nm以上の場合、耐傷性に優れた平版印刷版原版が得られやすい。連通位置からの深さが2,000nm以下の場合、処理時間が短期化し、生産性及び経済性に優れやすい。
上記小径孔部の深さは、陽極酸化皮膜20の断面をFE−SEMで観察し(5万倍)、得られた画像において、25個の小径孔部の深さを測定し、算術平均値として求められる。
小径孔部26の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向に向かって枝分かれしていく樹枝状が挙げられ、略直管状が好ましい。小径孔部26の底部における径は、通常、連通位置における径と1〜5nm程度の差があってもよい。小径孔部26の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凹状)であっても、平面状であってもよい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体は、上記連通位置における上記小径孔部の平均径が、上記陽極酸化皮膜表面における上記大径孔部の平均径よりも小さいことが、好ましい。小径孔部の平均径が、上記大径孔部の平均径よりも小さいことにより、耐汚れ性(放置払い性)に優れた平版印刷版が得られやすい。
大径孔部の平均径と小径孔部の平均径に関しては、その比率、即ち、大径孔部の平均径/小径孔部の平均径が、1.1〜12.5が好ましく、1.5〜10がより好ましい。
また、UV耐刷性に優れる観点から、小径孔部の平均径が、陽極酸化皮膜表面における上記大径孔部の平均径よりも小さいことが好ましく、上記大径孔部の平均径の5%〜80%であることがより好ましく、更に好ましくは10%〜60%である。
マイクロポアは、図3Bのように、大径孔部の底部における平均径が、陽極酸化被膜表面における平均径よりも大きい形状であってもよく、さらに大径孔部の底部に連通する小径孔部を有するようなマイクロポアであってもよい。大径孔部の底部における平均径が、陽極酸化被膜表面における平均径よりも大きい場合、陽極酸化被膜の表面における平均径は10nm〜100nmであることが好ましく、より好ましくは13nmを超え100nm以下であり、底部の平均径は20nm〜300nmであることが好ましい。
大径孔部の底部における平均径が、陽極酸化被膜表面における平均径よりも大きい形状である場合、陽極酸化被膜の表面におけるマイクロポアの平均径は、10nm〜100nmであることが好ましく、耐汚れ性(放置払い性)の観点から、より好ましくは13nmを超え30nmである。底部の平均径は、20nm〜300nmであれば構わないが、好ましくは40nm〜200nmである。
また、陽極酸化被膜表面から深さ方向10nm〜100nmの部分の厚さは10nm〜500nmであれば好ましいが、耐傷性の観点から50nm〜300nmがより好ましい。
−その他の特性−
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm〜2,000個/μmであることが好ましく、200個/μm〜1,000個/μmであることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
〔態様3について;マイクロポアの平均径〕
図4Aは、上記態様3の一実施形態を示す断面概略図である。
図4Aにおいて、上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポア22の平均径Y3が10nm〜30nmであり、内部の最大径の平均値Y4が20nm〜300nmであり、上記内部の最大径の平均値Y4が上記表面孔径上記陽極酸化皮膜表面における上記マイクロポアの平均径Y3よりも大きい。
マイクロポア22の深さX4は10nmを超え、30nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
上記マイクロポア22の深さX4は、陽極酸化皮膜20の断面をFE−SEMで観察し(15万倍)、得られた画像において、25個のマイクロポアの深さを測定し、算術平均値として求められる。
上記陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y3は、10nm以上30nm以下であることが好ましく、11nm以上25nm以下であることがより好ましく、12nm以上20nm以下であることが更に好ましい。
また、マイクロポア内部の最大径の平均値Y4は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、15nm以上200nm以下であることがより好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y3に対する、マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4の割合は、1.2倍以上10倍以下であることが好ましく、1.5倍以上8倍以下であることがより好ましく、2倍以上5倍以下であることが更に好ましい。
マイクロポア22の平均径Y3に対する、マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4の割合は、下記式1Bにより求められる値である。
式1B:(マイクロポア22の内部の最大径の平均値Y4)/(陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径Y3)
陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポアの平均径Y3は、上述の態様1におけるY1と同様の方法により求められる
マイクロポア22内部の最大径の平均値Y4は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア22の径の最大値(直径)を測定し、算術平均値として求められる。なお、マイクロポア22の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20上部を陽極酸化被膜と水平に切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20表面を上記FE−SEMで観察して、マイクロポア22の底部の平均径Y4を求めてもよい。
なお、マイクロポア22の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。
態様3におけるマイクロポア22の形状は特に限定されず、例えば、略直管状(略円柱状)、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状、深さ方向(厚み方向)に向かって径が大きくなる逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状等が挙げられ、略直管状が好ましい。マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凹状)であっても、平面状であってもよい。
また、図4Bに示すように、直径が小さい円柱と、直径が大きい円柱とを組み合わせた形であってもよい。これらの円柱についても、略直管状、円錐状、逆円錐状、中央部の径が大きい円柱状、中央部の径が小さい円柱状であってもよく、略直管状が好ましい。図4に示す形状においても、マイクロポア22の底部の形状は特に限定されず、曲面状(凹状)であっても、平面状であってもよい。
−その他の特性−
陽極酸化被膜20の表面におけるマイクロポア22の密度は、特に限定されないが、陽極酸化被膜の単位面積に対し、200個/μm〜2,000個/μmであることが好ましく、200個/μm〜1,000個/μmであることがより好ましい。
上記密度は、陽極酸化皮膜20表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの数を計測し、計測値の算術平均値として算出される。
陽極酸化被膜20において、上記マイクロポア22は、陽極酸化被膜の全面に分布していてもよいし、少なくとも一部に分布していてもよいが、全面に分布していることが好ましい。
マイクロポア22は、陽極酸化皮膜表面22に略垂直であることが好ましい。
また、マイクロポア22は、個々が均一に近い状態で分布していることが好ましい。
〔アルミニウム支持体の製造方法〕
以下に、本開示に係る平版印刷版原版における陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法について説明する。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は特に限定されないが、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
(粗面化処理工程)アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
(第1陽極酸化処理工程)粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(ポアワイド処理工程)第1陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
(第2陽極酸化処理工程)ポアワイド処理工程で得られたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(親水化処理工程)第2陽極酸化処理工程で得られたアルミニウム板に親水化処理を施す工程
以下に上記各工程について詳述する。なお、粗面化処理工程、親水化処理工程は、必要がなければ実施しなくてもよい。
上記製造方法によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
第1陽極酸化処理工程から第2陽極酸化処理工程までを工程順に示す陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の模式的断面図を、図5に示す。
〔粗面化処理工程〕
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。粗面化処理工程は、後述する第1陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理及び/又は化学的粗面化処理とを組み合わせて施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を施すのが好ましい。
機械的粗面化処理は、例えば図8に示した装置を使って行われる。具体的には、例えば、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行われる。図8において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(束植ブラシ等)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
電気化学的粗面化処理は、硝酸や塩酸の水溶液中で施すのが好ましい。
機械的粗面化処理は、一般的には、アルミニウム板の表面を表面粗さRa:0.35μm〜1.0μmとする目的で施される。
機械的粗面化処理の諸条件は特に限定されないが、例えば、特公昭50−40047号公報に記載されている方法に従って施すことができる。機械的粗面化処理は、パミストン懸濁液を使用したブラシグレイン処理により施したり、転写方式で施したりすることができる。
化学的粗面化処理も特に限定されず、公知の方法に従って施すことができる。
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を施すことが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、平版印刷版の耐汚れ性(放置払い性)を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子等の不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ(水酸化ナトリウム)、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダ等が好適に挙げられる。
アルカリ剤は、アルミニウムイオンを含有してもよい。アルカリ溶液の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
アルカリ溶液の温度は室温以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、また、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
エッチング量は、0.1g/m以上が好ましく、1g/m以上がより好ましく、また、20g/m以下が好ましく、10g/m以下がより好ましい。
処理時間は、エッチング量に対応して2秒〜5分が好ましく、生産性向上の点から2〜10秒がより好ましい。
機械的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すのが好ましい。
酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。酸性溶液の濃度は、1質量%〜50質量%が好ましい。また、酸性溶液の温度、20℃〜80℃が好ましい。酸性溶液の濃度及び温度がこの範囲であると、平版印刷版の耐汚れ性(放置払い性)がより向上する。
上記粗面化処理は、所望により機械的粗面化処理及び化学エッチング処理を施した後に、電気化学的粗面化処理を施す処理であるが、機械的粗面化処理を行わずに電気化学的粗面化処理を施す場合にも、電気化学的粗面化処理の前に、カセイソーダ等のアルカリ水溶液を用いて化学エッチング処理を施すことができる。これにより、アルミニウム板の表面近傍に存在する不純物等を除去することができる。
電気化学的粗面化処理は、アルミニウム板の表面に微細な凹凸(ピット)を付与することが容易であるため、印刷性の優れた平版印刷版を作製するのに適している。
電気化学的粗面化処理は、硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、直流または交流を用いて行われる。
電気化学的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を行うことが好ましい。電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板の表面には、スマットや金属間化合物が存在する。電気化学的粗面化処理の後に行われる化学エッチング処理においては、特にスマットを効率よく除去するため、まず、アルカリ溶液を用いて化学エッチング処理(アルカリエッチング処理)をすることが好ましい。アルカリ溶液を用いた化学エッチング処理の諸条件は、処理温度は20℃〜80℃が好ましく、処理時間は1秒〜60秒が好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンを含有することが好ましい。
電気化学的粗面化処理後にアルカリ溶液を用いる化学エッチング処理を行った後、それにより生じる生成物を除去するために、低温の酸性溶液を用いて化学エッチング処理(デスマット処理)を行うことが好ましい。
電気化学的粗面化処理後にアルカリエッチング処理を行わない場合においても、スマットを効率よく除去するため、デスマット処理を行うことが好ましい。
上述した化学エッチング処理は、浸せき法、シャワー法、塗布法等により行うことができ、特に限定されない。
〔第1陽極酸化処理工程〕
第1陽極酸化処理工程は、上述した粗面化処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、アルミニウム板表面に深さ方向(厚み方向)にのびるマイクロポアを有するアルミニウムの酸化皮膜を形成する工程である。この第1陽極酸化処理により、図5(A)に示されるように、アルミニウム板31の表面に、マイクロポア33aを有するアルミニウムの陽極酸化皮膜32aが形成される。
第1陽極酸化処理は、この分野で従来から行われている方法で行うことができるが、上述したマイクロポアを最終的に形成できるように適宜製造条件が設定される。
具体的には、第1陽極酸化処理工程において形成されるマイクロポア33aの平均径(平均開口径)は、4nm〜14nm程度であることが好ましく、より好ましくは5nm〜10nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポアが形成しやすく、得られる平版印刷版原版の性能もより優れる。
また、マイクロポア33aの深さは、60nm〜200nm未満程度であることが好ましく、より好ましくは70nm〜100nmである。上記範囲内であれば、上述した所定の形状を有するマイクロポアが形成しやすく、得られる平版印刷版原版の性能もより優れる。
マイクロポア33aのポア密度は特に限定されないが、ポア密度が50個/μm〜4000個/μmであることが好ましく、100個/μm〜3000個/μmであることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版のUV耐刷性及び放置払い性、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の膜厚は、70nm〜300nmが好ましく、より好ましくは80nm〜150nmである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版のUV耐刷性、放置払い性、耐汚れ性(放置払い性)、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、0.1g/m〜0.3g/mが好ましく、より好ましくは0.12g/m〜0.25g/mである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版のUV耐刷性、放置払い性、耐汚れ性(放置払い性)、並びに、平版印刷版原版の現像性に優れる。
第1陽極酸化処理工程においては、硫酸、シュウ酸、リン酸等の水溶液を主に電解浴として用いることができる。場合によっては、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等又はこれらの二種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液を用いることもできる。上記のような電解浴中でアルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。電解液の種類を変えると大きくポア径が変化する事が知られていて、大まかに言えば、硫酸電解液でのポア径<シュウ酸電解液でのポア径<リン酸電解液でのポア径である。
従って、電解液を交換して、2回処理したり、また、処理装置を2連、3連に繋げて、2段、3段に連続して処理を行って、陽極酸化皮膜構造にする事が可能である。
特開2002−365791に記載されているような方法で、リン酸電解液を使用して、陽極酸化皮膜の表面口部のポア径を維持したまま、底部のポアが大きい皮膜を得ることができる。
電解浴にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1g/L〜10g/Lが好ましい。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1質量%〜80質量%(好ましくは5質量%〜20質量%)、液温5℃〜70℃(好ましくは10℃〜60℃)、電流密度0.5A/dm〜60A/dm(好ましくは5A/dm〜50A/dm)、電圧1V〜100V(好ましくは5V〜50V)、電解時間1秒〜100秒(好ましくは5秒〜60秒)の範囲が適当である。
上記陽極酸化処理のうちでも特に、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中にて高電流密度で陽極酸化する方法が好ましい。
〔ポアワイド処理工程〕
ポアワイド処理工程は、上述した第1陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。このポアワイド処理により、図5(B)に示されるように、マイクロポア33aの径が拡大され、より大きな平均径を有するマイクロポア33bを有する陽極酸化皮膜32bが形成される。
ポアワイド処理により、マイクロポア33bの平均径は、10nm〜100nm(好ましくは、15nm〜60nm、より好ましくは、18nm〜40nm)の範囲まで拡大される。マイクロポア33bは、上述した大径孔部24(図5(A))に該当する部分となる。
ポアワイド処理により、マイクロポア33bの表面からの深さは、上述した深さA(図3A)と同程度となるように調整することが好ましい。
ポアワイド処理は、上述した第1陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
ポアワイド処理工程においてアルカリ水溶液を使用する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムから選ばれる少なくとも一つのアルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1質量%〜5質量%が好ましい。
アルカリ水溶液のpHを11〜13に調整した後、10℃〜70℃(好ましくは20℃〜50℃)の条件下で、アルミニウム板をアルカリ水溶液に1秒〜300秒(好ましくは1秒〜50秒)接触させることが適当である。
アルカリ処理液中に炭酸塩、硼酸塩、燐酸塩等の多価弱酸の金属塩を含んでもよい。
ポアワイド処理工程において酸水溶液を使用する場合、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は、1質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜50質量%である。
酸水溶液の液温5℃〜70℃(好ましくは10℃〜60℃)の条件下で、アルミニウム板を酸水溶液に1秒〜300秒(好ましくは1秒〜150秒)接触させることが適当である。
アルカリ水溶液または酸水溶液中にはアルミニウムイオンが含まれていてもよい。アルミニウムイオンの含有量は特に限定されないが、1g/L〜10g/Lが好ましい。
〔第2陽極酸化処理工程〕
第2陽極酸化処理工程は、上述したポアワイド処理が施されたアルミニウム板に陽極酸化処理を施すことにより、深さ方向(厚み方向)にのびたマイクロポアを形成する工程である。この第2陽極酸化処理工程により、図5(C)に示されるように、深さ方向にのびたマイクロポア33cを有する陽極酸化皮膜32cが形成される。
第2陽極酸化処理工程によって、平均径が拡大されたマイクロポア33bの底部に連通し、平均径がマイクロポア33b(大径孔部24に該当)の平均径より小さく、連通位置から深さ方向にのびる新たな孔部が形成される。上記孔部が、上述した小径孔部26に該当する。
第2陽極酸化処理工程においては、新たに形成される孔部の平均径が0より大きく20nm未満で、大径孔部20との連通位置からの深さが上述した所定範囲になるように処理が実施される。処理に使用される電解浴は上記の第1陽極酸化処理工程と同じであり、処理条件としては使用される材料に応じて適宜設定される。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、一般的には、電解液の濃度が1質量%〜80質量%(好ましくは5質量%〜20質量%)、液温5℃〜70℃(好ましくは10℃〜60℃)、電流密度0.5A/dm〜60A/dm(好ましくは1A/dm〜30A/dm)、電圧1V〜100V(好ましくは5V〜50V)、電解時間1秒〜100秒(好ましくは5秒〜60秒)の範囲が適当である。
第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の膜厚は、200nm〜2,000nmであることが好ましく、より好ましくは750nm〜1,500nmである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版のUV耐刷性及び放置払い性に優れる。
第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の皮膜量は、2.2g/m〜5.4g/mであることが好ましく、より好ましくは2.2g/m〜4.0g/mである。上記範囲内であれば、得られる平版印刷版のUV耐刷性及び放置払い性、並びに、平版印刷版原版の現像性、耐傷性に優れる。
第1陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の厚み(皮膜厚み1)と、第2陽極酸化処理工程により得られる陽極酸化皮膜の厚み(皮膜厚み2)との比(皮膜厚み1/皮膜厚み2)は、0.01〜0.15が好ましく、0.02〜0.10がより好ましい。上記範囲内であれば、平版印刷版用支持体の耐傷性に優れる。
上述した小径孔部26(図5(A)参照)の形状を製造するために、第2陽極酸化処理工程の処理中において、印加する電圧を段階的または連続的に増加させてもよい。印加する電圧が増加することにより、形成される孔部の径が大きくなり、結果として上述した小径孔部26のような形状が得られる。
〔第3陽極酸化処理工程〕
第2陽極酸化処理工程に続いて、第3陽極酸化処理工程を行ってもよい。
第3陽極酸化処理工程における陽極酸化処理は、第2陽極酸化処理工程と同様の方法により、液成分、電流密度、時間等を、求められる支持体表面の面状に応じて適宜設定することにより行えばよい。
〔親水化処理工程〕
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法は、上述した極酸化処理工程の後、親水化処理を施す親水化処理工程を有していてもよい。親水化処理としては、特開2005−254638号公報の段落0109〜段落0114に開示される公知の方法が使用できる。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬させる方法等により、親水化処理を行うことが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書及び米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法及び手順に従って行うことができる。
本開示の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体としては、上記アルミニウム板に対して、以下のA〜Dの態様に示す各処理を、以下に示す順に施して得られる支持体が好ましく、耐刷性の点から、特にA態様が好ましい。以下の各処理の間に水洗を行うことが望ましい。ただし、連続して行う2つの工程(処理)が同じ組成の液を使用する場合は水洗を省いてもよい。
〔A態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(4)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(8)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(9)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第3デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(硫酸)、ポアワイド処理、第2陽極酸化処理(硫酸))
(11)親水化処理
上記A態様によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
〔B態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(硫酸)、ポアワイド処理)
(11)親水化処理
上記B態様によれば、上述の態様1に係るアルミニウム支持体が得られる。
〔C態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(リン酸)、第2陽極酸化処理(硫酸))
(11)親水化処理
上記C態様によれば、上述の態様2に係るアルミニウム支持体が得られる。
〔D態様〕
(2)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(12)塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理
(5)アルカリ水溶液中で化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液中で化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(10)陽極酸化処理(第1陽極酸化処理(リン酸))
(11)親水化処理
上記D態様によれば、上述の態様3に係るアルミニウム支持体が得られる。
上記A〜Dの態様の(2)の処理の前に、必要に応じて、(1)機械的粗面化処理を実施してもよい。耐刷性などの観点からは、(1)の処理は各態様に含まれないほうが好ましい。
ここで、上記(1)〜(12)における機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理、化学エッチング処理、陽極酸化処理及び親水化処理は、上述した処理方法、条件と同様の方法で行うことができるが、以下に説明する処理方法、条件で施すことが好ましい。
機械的粗面化処理は、毛径が0.2mm〜1.61mmの回転するナイロンブラシロールと、アルミニウム板表面に供給されるスラリー液で機械的に粗面化処理することが好ましい。研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。スラリー液の比重は1.05〜1.3が好ましい。勿論、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いる方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式などを用いてもよい。
アルカリ水溶液中での化学エッチング処理(第1〜第3アルカリエッチング処理)に用いるアルカリ水溶液の濃度は1質量%〜30質量%が好ましく、アルミニウム及びアルミニウム合金中に含有する合金成分を0質量%〜10質量%含有していてよい。
アルカリ水溶液としては、特に苛性ソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温(25℃)〜95℃で、1秒〜120秒間処理することが好ましい。
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
第1アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m〜30g/mが好ましく、1.0g/m〜20g/mがより好ましく、3.0g/m〜15g/mが更に好ましい。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001g/m〜30g/mが好ましく、0.1g/m〜4g/mがより好ましく、0.2g/m〜1.5g/mが更に好ましい。
第3アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.001g/m〜30g/mが好ましく、0.01g/m〜0.8g/mがより好ましく、0.02g/m〜0.3g/mが更に好ましい。
酸性水溶液中で化学エッチング処理(第1〜第3デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸が好適に用いられる。酸性水溶液の濃度は0.5質量%〜60質量%が好ましい。酸性水溶液中にはアルミニウム及びアルミニウム合金中に含有する合金成分が0質量%〜5質量%溶解していてもよい。
液温は常温から95℃で実施され、処理時間は1秒〜120秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うのが好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる水溶液について説明する。
第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L〜100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和濃度まで添加して使用することができる。
硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5質量%〜2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3g/L〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃〜90℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
第2電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L〜100g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。
塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、塩酸0.5質量%〜2質量%水溶液中にアルミニウムイオンが3g/L〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃〜60℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
一方、B態様における塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液を使用でき、1g/L〜100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L〜30g/L添加して使用することができる。この水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムなどの塩酸イオン;等を有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。
塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、硝酸0.5質量%〜2質量%水溶液中に、アルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いるのが好ましい。
液温は10℃〜60℃が好ましく、20℃〜50℃がより好ましい。なお、次亜塩素酸を添加してもよい。
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、三角波などを用いることができる。周波数は0.1Hz〜250Hzが好ましい。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフを図6に示す。
図6において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1ms〜10msが好ましい。
電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが1以上であると電流波形の立ち上がり時必要な電源電圧が小さくなり、電源の設備コストの点から好ましい。10ms以下であれば、電解液中の微量成分の影響を受けにくくなり均一な粗面化が行われやすくなる。
電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件は、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1〜20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3〜20、アノード反応時間taが5ms〜1000ms、の範囲にあるのが好ましい。tc/taは2.5〜15がより好ましい。Qc/Qaは2.5〜15がより好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10A/dm〜200A/dmが好ましい。Ic/Iaは0.3〜20の範囲にあることが好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は25C/dm〜1000C/dmが好ましい。
交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。
交流を用いた電気化学的な粗面化には図7に示した装置を用いることができる。図7は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図7において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a,53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a、53bにより電解処理される。電解液55は電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a、53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは次いで補助陽極槽60で電解処理される。補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6−35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性の低下を抑制しながら現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは0.2mmol〜5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m〜100mg/mが好ましく、1mg/m〜30mg/mがより好ましい。
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程及び機上現像工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程である。
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。750nm〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm〜300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm〜450nm又は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。300nm〜450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750nm〜1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。300nm〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
(実施例1〜62及び比較例1〜4)
<支持体の作製>
<<表面処理A>>
〔大径孔部及び小径孔部を有する支持体〕
(A−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ(水酸化ナトリウム)濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、1.0g/mであった。
(A−b)酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)
次に、酸性水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。デスマット液はスプレーにより吹き付けて、3秒間デスマット処理した。その後、水洗処理を行った。
(A−c)塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電解粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は125C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
(A−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
(A−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5.0g/L溶解)を用いた。液温は30℃であった。デスマット液はスプレーに吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(A−f)第1段階の陽極酸化処理
図9に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
(A−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表1に示す条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
(A−h)第2段階の陽極酸化処理
図9に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
以上の表面処理Aから、実施例の支持体S1を得た。
上記で得られた第2陽極酸化処理工程後のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜中の大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(nm)、小径孔部の連通位置における平均径(nm)、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、ピット密度(マイクロポアの密度、単位;個/μm)、並びに、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(nm)を、表2にまとめて示す。
なお、マイクロポアの平均径(大径孔部及び小径孔部の平均径)は、大径孔部表面及び小径孔部表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部及び小径孔部)の径を測定し、平均した値である。なお、大径孔部の深さが深く、小径孔部の径が測定しづらい場合、および、小径孔部中の拡径孔部の測定を行う場合は、陽極酸化皮膜上部を切削し、その後各種径を求めた。
マイクロポアの深さ(大径孔部及び小径孔部の深さ)は、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE−SEMで観察し(大径孔部深さ観察:15万倍、小径孔部深さ観察:5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
なお、表1中、第1陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)量と第2陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)とは、各処理で得られた皮膜量を表す。なお、使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
<<表面処理B>>
〔大径孔部を有する支持体〕
(B−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、1.0g/mであった。
(B−b)酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)
次に、酸性水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。デスマット液はスプレーにより吹き付けて、3秒間デスマット処理した。その後、水洗処理を行った。
(B−c)塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電解粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は125C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
(B−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
(B−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5.0g/L溶解)を用いた。液温は30℃であった。デスマット液はスプレーに吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(B−f)第1陽極酸化処理
図9に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
(B−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表1に示す条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
以上の表面処理Bから、実施例の支持体S2を得た。得られた支持体S2の詳細を表2にまとめて示す。
<平版印刷版原版の形成>
上記支持体上に、下記組成の下塗り液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布し、100℃30秒間オーブンで乾燥し、下塗り層を有する支持体を作製した。
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量0.60g/m(膜厚=約0.60μm)の画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
更にその後、画像記録層上に、下記組成のオーバーコート層塗布液(1)を塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/m(膜厚=約1.0μm)のオーバーコート層(疎水部を含む)を形成し、平版印刷版原版を得た。
〔下塗り液(1)〕
・下記の下塗り化合物1:0.18部
・メタノール:55.24部
・蒸留水:6.15部
−下塗り化合物1の合成−
<<モノマーM−1の精製>>
ライトエステル P−1M(2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製)420部、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部及び蒸留水1,050部を分液ロートに加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄した後、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部を加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄してモノマーM−1の水溶液(固形分換算10.5質量%)を1,300部得た。
<<下塗り化合物1の合成>>
三口フラスコに、蒸留水を53.73部、以下に示すモノマーM−2を3.66部加え、窒素雰囲気下で55℃に昇温した。次に、以下に示す滴下液1を2時間掛けて滴下し、30分撹拌した後、VA−046B(富士フイルム和光純薬(株)製)0.386部を加え、80℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応液を室温(25℃)に戻した後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを8.0に調整したのち、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−OH−TEMPO)を0.005部加えた。以上の操作により、下塗り化合物1の水溶液を180部得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算値とした重量平均分子量(Mw)は17万であった。
<<滴下液1>>
・上記モノマーM−1水溶液:87.59部
・上記モノマーM−2:14.63部
・VA−046B(2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、富士フイルム和光純薬(株)製):0.386部
・蒸留水:20.95部
<画像記録層塗布液(1)>
・表3〜表6に記載の赤外線吸収剤(下記構造の化合物):表3〜表6に記載の量
・表3〜表6に記載の重合性化合物A及びB(下記構造の化合物):表3〜表6に記載の量
・表3〜表6に記載の熱可塑性樹脂1〜5:表3に記載の量
・BYK306(Byk Chemie社):0.008部
・1−メトキシ−2−プロパノール:8.609部
・メチルエチルケトン:1.091部
・表3〜表6に記載の電子受容型重合開始剤:表3〜表6に記載の量
・表3〜表6に記載の電子供与型重合開始剤:表3〜表6に記載の量、「なし」と記載の場合は0部
・表3〜表6に記載の現像促進剤:表3〜表6に記載の量
・表3〜表6に記載の感脂化剤:表3〜表6に記載の量
・表3〜表6に記載の酸発色剤:表3〜表6に記載の量
<オーバーコート層(OC層)塗布液>
・ポバールPVA105((株)クラレ製、けん化度80%以上):0.6質量部
・PEG4000(東京化成工業(株)製):0.39質量部
・界面活性剤(ラピゾールA−80、日油(株)製):0.01質量部
・水:全体が10質量部となる量
<評価>
〔UV耐刷性〕
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inch=2.54cm)の条件で露光した。露光画像にはベタ画像、20μmドットFMスクリーンの50%網点チャート及び非画像部を含むようにした。
得られた露光済み平版印刷原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。版胴に対して給水ローラーを5%減速させた上で、Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とUVインキ(T&K UV OFS K−HS墨GE−M((株)T&K TOKA製))とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を50,000枚行った。
印刷枚数の増加にともない、徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン3%網点の網点面積率をX−Rite(X−Rite社製)で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数としてUV耐刷性を評価した。
〔耐薬品性〕
各実施例又は比較例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光及び印刷を行った。5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム(株)製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加えた以外は、上記耐刷性の評価と同様にして、耐薬品性を評価した。
具体的には、上記耐刷性の評価における刷了枚数に対する、上記版面を拭く工程を加えた場合の刷了枚数の割合を指標値とし、下記評価基準により評価した。
上記指標値が大きいほど、クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷性の変化が小さいといえ、耐薬品性に優れるものといえる。
−評価基準−
5:指標値が95%以上100%以下である
4:指標値が80%以上95%未満である
3:指標値が60%以上80%未満である
2:指標値が40%以上60%未満である
1:指標値が40%未満である
〔経時での非画像部の機上現像性〕
経時サンプル(平版印刷版原版の経時品)は、下記方法で高温高湿下環境に放置することによって経時を加速させたサンプルとして作製した。
上記で得られた、露光前の平版印刷版原版を温度25℃、湿度70%の環境に1時間曝露させ、外気の出入りがないように梱包した後、温度50℃の環境で3日放置し、経時サンプルとした。
上記経時サンプルを赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm(revolutions per minute)、レーザー出力70%、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inch=2.54cm)の条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済みの平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とスペースカラーフュージョンG墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(連量:76.5kg)紙に印刷を500枚行った。
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測し、以下の基準で評価した。枚数が少ないほど、機上現像性に優れるといえる。
−評価基準−
5:機上現像枚数が25枚以下である
4:機上現像枚数が26枚〜30枚である
3:機上現像枚数が31枚〜35枚である
2:機上現像枚数が36枚〜40枚である
1:機上現像枚数が40枚を超える
〔インキ着肉性(印刷初期インキ着肉性)〕
得られた平版印刷版原版を上記UV耐刷性の評価における露光と同様の露光条件により露光した(露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。)平版印刷版を、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(DIC(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して印刷を開始し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
ベタ画像部におけるインキ濃度を、マクベス濃度計(X−Rite社製、exact)を用いて測定し、1.0以上となるまでに要した印刷用紙の枚数をインキ着肉性(印刷初期インキ着肉性)の指標値として下記評価基準に従い評価した。枚数が少ないほど、平版印刷版は着肉性に優れるといえる。
−評価基準−
1:指標値が100枚以上である
2:指標値が50枚以上100枚未満である
3:指標値が30枚以上50枚未満である
4:指標値が20枚以上30枚未満である
5:指標値が20枚未満である
表3〜表6中、熱可塑性樹脂の構成単位比の欄は、左から(芳香族ビニル化合物の構成単位の量比)/(シアノ基を有する構成単位)/(N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位)の順で記載している。電子受容型重合開始剤の「種類」の欄の記載は、下記化合物IA−1、及び、IA−5〜IA−11のいずれかを使用したかを示している。電子供与型重合開始剤の「種類」の欄の記載は、下記化合物D−1又は化合物D−2を使用したかを示している。
ΔLUMOとは、赤外線吸収剤のLUMOと上記電子受容型重合開始剤のLUMOとの差(赤外線吸収剤のLUMO−電子受容型重合開始剤のLUMOの値)を示している。ΔHOMOとは、電子供与型重合開始剤のHOMOと、上記赤外線吸収剤のHOMOとの差(電子供与型重合開始剤のHOMO−赤外線吸収剤のHOMOの値)を示している。
なお、LUMO及びHOMOの単位は、eVである。
表3〜表6中、赤外線吸収剤の「種類」の欄の記載は、下記赤外線吸収剤IR−1、IR−3又はIR−6のいずれの化合物を使用したかを示している。赤外線吸収剤の「メソ位の原子の種類」の欄の記載において、Nは窒素原子を示し、Oは酸素原子を示す。
表3〜表6中、熱可塑性樹脂の欄の「種類」の欄の記載は、下記熱可塑性樹脂1〜熱可塑性樹5のいずれの化合物を使用したかを示している。
表3〜表6に記載の化合物の詳細は下記の通りである。
〔熱可塑性樹脂粒子の合成〕
−熱可塑性樹脂1の合成−
モノマーとしてスチレン及びアクリロニトリルを使用してシード乳化重合によりポリマーエマルジョン(熱可塑性樹脂)を調製した。下記の表面活性剤が、モノマーを加える前に反応槽中に存在することを確認した。2リットルの二重ジャケット反応槽に、10.35gのChemfac PB−133(Chemax社製、Chemfac PB−133、リン酸アルキルエーテル表面活性剤)、1.65gのNaHCO及び1482.1gの脱塩水を加えた。上記反応槽に窒素を流し、75℃まで加熱した。反応槽の内容物の温度が75℃に達した時、1.5%のモノマー混合物を加えた(即ち、2.29gのスチレン及び1.16gのアクリロニトリルのモノマー混合物)。モノマー混合物を15分間、75℃で乳化し、続いて37.95gの2質量%過硫酸ナトリウム水溶液を加えた。続いて反応槽を80℃の温度に30分間加熱した。次いで残るモノマー混合物(150.1gのスチレン及び76.5gのアクリロニトリルのモノマー混合物)を、180分間にわたり反応混合物に投入した。モノマー混合物の添加と同時に、追加量の過硫酸ナトリウム水溶液を加えた(37.95gの2質量%Na水溶液)。モノマー混合物の添加が完了した後、反応槽を60分間、80℃で加熱した。残存モノマーの量を減らすために、減圧蒸留を80℃で1時間行った。続いて反応槽を室温に冷却し、100ppmのProxel Ultra 5(Arch Biocides UK社製、1,2−ベンズイソチアゾール3(2H)−オンの5質量%水溶液)を殺菌剤として加え、そしてラテックス状態のポリマーを粗い濾紙を使用して濾過し、熱可塑性樹脂1を調製した。
熱可塑性樹脂1は、スチレンにより形成される構成単位と、アクリロニトリルにより形成される構成単位との組成比は2:1(質量比)であり、固形分量は、20質量%であり、平均粒子径は25nmであり、ガラス転移温度は120℃であった。
−熱可塑性樹脂2、4及び5の合成−
使用するモノマー及びその使用量を適宜変更した以外は、上記熱可塑性樹脂1と同様の方法により合成を行った。
−熱可塑性樹脂3の合成−
三口フラスコに、メチルエチルケトン300gを入れ、窒素気流下、80℃に加熱した。この反応容器に、スチレン:50.0g、アクリロニトリル:30.0g、N−ビニルピロリドン:20.0g、AIBN:0.7g、メチルエチルケトン100gからなる混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、更に7.5時間反応を続けた。その後、AIBN 0.3gを加え、更に12時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。スチレンにより形成される構成単位と、アクリロニトリルにより形成される構成単位と、N−ビニルピロリドンにより形成される構成単位の組成比は50:30:20(質量比)であり、熱可塑性樹脂3の重量平均分子量は75,000であった。また、固形分量は、20質量%であった。
−ポリエチレン−
Polybead Polystyrene Microspheres(2.5% Solids−Latex)、0.20μm(Polyscience社製)、粒子径;200nm
−シリカ粒子−
スノーテックMP−1040(日産化学(株)製)、粒子径70nm〜130nm
〔重合性化合物〕
−重合性化合物A−
M−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー、UA−510H 共栄社化学(株)製、官能基数;10、Mw;1,217
M−2:ジメチルアクリルアミド、官能基数;1、Mw;99
M−3;ポリエステルアクリレート、EBECRYL450 ダイセル・オルネクス(株)製、官能基数;6 Mw;1,600
−重合性化合物B−
M−4:下記構造の化合物
〔電子供与型重合開始剤〕
D−1:下記構造の化合物 HOMO(eV)=−6.329
D−2:下記構造の化合物 HOMO(eV)=−6.052
〔電子受容型重合開始剤〕
IA−1:下記構造の化合物
IA−5〜IA−11:下記構造の化合物
〔赤外線吸収剤〕
IR−1:下記構造の化合物
IR−3:下記構造の化合物
IR−6:下記構造の化合物、非分解性赤外線吸収剤
〔現像促進剤〕
A−1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、SP値の極性項の値=6.4
〔感脂化剤〕
感脂化剤−1:1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート、SP値=16.2
〔酸発色剤〕
色素−1:下記化合物
色素−2:下記化合物
表3〜表6に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版は、比較例に係る平版印刷版原版と比べて、UV耐刷性に優れた平版印刷版が得られることがわかる。また、本開示に係る平版印刷版原版は、耐薬品性、インキ着肉性及び経時での非画像部の機上現像性にも優れた平版印刷版が得られることがわかる。
10:平版印刷版原版、12:アルミニウム支持体、16:画像記録層、14:下塗り層、18:アルミニウム板、20:陽極酸化皮膜、24:大径孔部、26:小径孔部、31:アルミニウム板、32a、32b及び32c:アルミニウムの陽極酸化皮膜、33a、33b及び33c:マイクロポア、50:主電解槽、52:ラジアルドラムローラ、51:交流電源、53a及び53b:主極、55:電解液、54:電解液供給口、56:スリット、57:電解液通路、60:補助陽極槽、58:補助陽極、Ex:電解液排出口、S:給液、W:アルミニウム板、1:アルミニウム板、2及び4:ローラ状ブラシ、3:研磨スラリー液、5、6、7及び8:支持ローラ、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618:電解液、620:給電電極、622:ローラ、624:ニップローラー、626:電解液、628:ローラ、630:電解電極、632:仕切り、634:直流電源、A:深さ、W:アルミニウム板、X1及びX3:陽極酸化皮膜の厚さ、X2及びX4:マイクロポア22の深さ、Y1及びY3:陽極酸化皮膜表面におけるマイクロポア22の平均径、Y2及びY4:マイクロポア22の底部の平均径、ta:アノード反応時間、tc:カソード反応時間、tp:電流が0からピークに達するまでの時間、Ia:アノードサイクル側のピーク時の電流、Ic:カソードサイクル側のピーク時の電流、AA:アルミニウム板のアノード反応の電流、CA:アルミニウム板のカソード反応の電流

Claims (25)

  1. 支持体上に画像記録層を有し、
    前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む、
    平版印刷版原版。
  2. 前記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、60℃〜150℃である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル化合物より形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂Aを含み、
    前記樹脂Aにおける前記芳香族ビニル化合物より形成される構成単位の含有量が、前記シアノ基を有する構成単位の含有量より多い、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径が、1nm以上80nm未満である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  5. 前記画像記録層の全質量に対する前記熱可塑性樹脂粒子の含有量が、10質量%以上50質量%以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  6. 前記重合開始剤が、電子受容型重合開始剤を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  7. 前記電子受容型重合開始剤のLUMOが、−3.0eV以下である、請求項6に記載の平版印刷版原版。
  8. 前記電子受容型重合開始剤のLUMOと前記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.70eV以下である、請求項6又は請求項7に記載の平版印刷版原版。
  9. 前記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を更に含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  10. 前記赤外線吸収剤のHOMOと前記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、請求項9に記載の平版印刷版原版。
  11. 前記赤外線吸収剤が、メソ位に酸素原子又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  12. 前記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、及び、電子移動により分解する分解性赤外線吸収剤である、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  13. 前記分解性赤外線吸収剤が、下記式1−1で表わされる赤外線吸収剤である、請求項12に記載の平版印刷版原版。

    式1−1中、Rは下記式2で表される基を表し、R11〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−R、−OR、−SR又は−NRを表し、R〜Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11〜R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は−NR10−を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。

    式2中、Rは、アルキル基を表し、波線は、前記式1−1中のLで表される基との結合部位を表す。
  14. 前記赤外線吸収剤の含有量が、前記画像記録層の全質量に対し、0.1質量%〜10質量%である、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  15. 前記重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量が、200g/mol以下である、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  16. 前記重合性化合物の重量平均分子量が、1,500以下である、請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  17. 前記重合性化合物が、3官能以上の重合性化合物を含む、請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  18. 前記画像記録層が、2種以上の重合性化合物を含む、請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  19. 前記画像記録層が、さらに酸発色剤を含む、請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  20. 前記画像記録層が、現像促進剤を更に含む、請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  21. 前記画像記録層が、感脂化剤を更に含む、請求項1〜請求項20のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  22. 前記支持体が画像記録層側の表面にマイクロポアを有し、
    前記表面におけるマイクロポアの平均径が13nmを超え100nm以下である、請求項1〜請求項21のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  23. 前記支持体が画像記録層側の表面に陽極酸化被膜を有し、
    前記陽極酸化皮膜が、前記画像記録層側の陽極酸化皮膜表面から深さ方向にのびる前記マイクロポアを有し、
    前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm〜1,000nmの位置までのびる大径孔部と、
    前記大径孔部の底部と連通し、前記連通位置から深さ20nm〜2,000nmの位置までのびる小径孔部と、から構成され、
    前記大径孔部の平均径が、13nmを超え100nm以下であり、
    前記小径孔部の平均径が、前記大径孔部の平均径の5%〜80%である、請求項22に記載の平版印刷版原版。
  24. 請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
    印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
    平版印刷版の作製方法。
  25. 請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
    印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
    得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む、
    平版印刷方法。
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