本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態では、π/4シフトQPSK変調信号を復調する復調装置について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る復調装置について説明する。図1に、本発明の第1の実施形態に係る復調装置1の構成例を示す。図1に示す復調装置1は、IQ信号算出部11と、位相信号算出部12と、シンボル同期部13−1と、復調信号生成部14とを備える。
IQ信号算出部11は、位相シフトQPSK変調信号に対して、直交復調処理、A/D変換処理、及びローパスフィルタ処理を行い、シンボル周期中に予め定められたサンプリング周期でAD変換された、I信号I(n)及びQ信号Q(n)を算出する。そして、IQ信号算出部11は、I信号I(n)及びQ信号Q(n)を位相信号算出部12に出力する。ここで、nはサンプル点のカウント値である。
位相信号算出部12は、IQ信号算出部11から入力されたI信号I(n)及びQ信号Q(n)から、位相シフトQPSK変調信号の位相信号を次式(1)により算出する。そして、位相信号算出部12は、位相信号をシンボル同期部13−1に出力する。
θ(n)=tan-1(Q(n)/I(n)) (1)
シンボル同期部13−1は、位相信号算出部12から位相信号を入力し、シンボル同期点における位相信号を復調信号生成部14に出力する。図1に示すように、シンボル同期部13−1は、変化量算出部131と、最小値検出部132と、同期信号生成部133と、出力部134とを備える。
変化量算出部131は、位相信号算出部12から入力された位相信号の変化量(位相変化量)を算出する。そして、変化量算出部131は、位相変化量を最小値検出部132に出力する。具体的には、位相変化量θdiffは、次式(2)に示すように、1サンプル前の位相信号と差の絶対値で表される。
θdiff=|θ(n)−θ(n-1)| (2)
最小値検出部132は、変化量算出部131から入力された位相変化量について、所定のタイミングで所定期間(例えば、シンボル周期)内における最小値を検出する。そして、最小値検出部132は、位相変化量の最小値を同期信号生成部133に出力する。ノイズの影響を無視した理想的な場合には、位相変化量の最小値に対応するタイミングは、シンボル同期点と一致する。その理由を、図2、図3、及び図4を参照して説明する。
図2は、π/4シフトQPSK変調信号のシンボルと位相の関係を示す図である。π/4シフトQPSK変調は、図2(a)に示すように、黒丸で示すQPSKの信号点配置と、それらをπ/4シフトした白丸で示す信号点配置とを、1シンボルごとに交互に用いて位相変調を行う方式である。したがって、先行するシンボルとの位相差Δφは必ずπ/4の奇数倍となり、入力された単位データ(X,Y)との関係は、図2(b)の表のように表される。
図3は、サンプリングされたIQ信号の軌跡の一例を示す図である。ここでは、IQ信号の軌跡が、点Aから、+3π/4(点B)→+π/4(点C)→−3π/4(点D)→−π/4(点E)と移動していく様子を示している。サンプリング数は、1シンボル当たり8点としている。
図4は、IQ信号が図3に示すように移動した場合における、隣り合うIQ信号の位相変化量を示す図である。このように、シンボル点付近の軌跡は位相変化量が最小になる。そのため、位相変化量の最小値に対応するタイミング(図中ではtA〜tE)は、シンボル同期点と一致する。
同期信号生成部133は、同期シンボル点に同期した同期タイミングを示す信号である同期信号を生成する。同期信号生成部133は、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に対応するタイミングに基づいて同期信号の同期タイミングを調整する。そして、同期信号生成部133は、同期信号を出力部134に出力する。なお、調整前の同期タイミングは復調開始のタイミングによって決定される。例えば、復調開始のタイミングでシンボル周期の中点を同期タイミングの初期位置とする。
ここで、復調開始のタイミングによっては同期信号の同期タイミングと、位相変化量の最小値に対応するタイミングとにずれが生じる。したがって、同期信号生成部133は、両者にずれが生じている場合には、差が縮まるように同期タイミングを調整する。同期信号生成部133は、上記タイミングのずれを検出するために、変化量算出部131から位相変化量を入力し、同期信号の同期タイミングにおける位相変化量の値が、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値と一致するか判定してもよい。あるいは、同期信号生成部133は、最小値検出部132から位相変化量の最小値を検出したときのタイミングを入力してもよい。
同期信号生成部133は、位相変化量の最小値に対応するタイミングと一致するように同期タイミングを調整してもよい。
出力部134は、同期信号生成部133から入力された同期信号の同期タイミングに同期した位相信号を復調信号生成部14に出力する。
復調信号生成部14は、出力部134から入力された位相信号を用いて遅延検波を行い、復調信号を生成する。図1に示すように、復調信号生成部14は、遅延検波部141と、データ判定部142と、P/S変換部143とを備える。
遅延検波部141は、出力部134から入力された位相信号に対して遅延検波を行う。すなわち、1シンボル先行する位相信号との位相差Δφを検出する。そして、遅延検波部141は、検出した位相差Δφをデータ判定部142に出力する。
データ判定部142は、遅延検波部141から入力された位相差Δφごとに、2ビットのデータ(X,Y)を判定する(図2(b)参照)。そして、データ判定部142は、判定結果をP/S変換部143に出力する。
P/S変換部143は、データ判定部142から入力された2ビットのデータをシリアルデータに変換して、復調信号として外部に出力する。
上述したように、第1の実施形態に係る復調装置1は、位相シフトQPSK変調信号の位相変化量を算出し、アイパターンではなく位相変化量の最小値に対応するタイミングに基づいて同期信号を調整する。そしてその際には、位相変化量の最小値に対応するタイミングとの差が縮まるように同期タイミングを調整した同期信号を生成し、該同期タイミングに同期した位相信号を用いて遅延検波を行う。このため、復調装置1によれば、位相偏移変調信号を高精度に復調することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る復調装置について説明する。図5に、本発明の第2の実施形態に係る復調装置2の構成例を示す。図5に示す復調装置2は、IQ信号算出部11と、位相信号算出部12と、シンボル同期部13−2と、復調信号生成部14とを備える。シンボル同期部13−2以外の処理は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
シンボル同期部13−2は、変化量算出部131と、最小値検出部132と、同期信号生成部133と、出力部134とを備える。
変化量算出部131は、第1の実施形態と同様に、位相変化量を算出する。そして、変化量算出部131は、位相変化量を最小値検出部132及び同期信号生成部133に出力する。
最小値検出部132は、第1の実施形態と同様に、変化量算出部131から入力された位相変化量について、所定のタイミングで所定期間内における最小値を検出し、最小値を同期信号生成部133に出力する。
同期信号生成部133は、変化量算出部131から入力された位相変化量が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、同期信号生成部133は、位相変化量が閾値以上となる場合にのみ、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に対応するタイミングに基づいて同期信号の同期タイミングを調整する。つまり、同期信号生成部133は、位相変化量が閾値以上であり、且つ同期信号の同期タイミングと位相変化量の最小値に対応するタイミングとがずれている場合に、差が縮まるように同期タイミングを調整し、位相変化量が閾値未満である場合には同期タイミングの調整を行わない。この理由を以下に説明する。
図4に示したように、位相差が+3π/4及び−3π/4のシンボル変化の場合、シンボル間の位相差の変化が大きいため、グラフの山のピークが大きくなる。一方、位相差が+π/4及び−π/4のシンボル変化の場合、シンボル間の位相差の変化が+3π/4及び−3π/4の場合に比べて小さいため、グラフの山のピークが小さくなる。
図6に、システムのS/N比が小さい場合の位相変化量の変化を示す。点線は、ノイズがない場合の理想的な位相変化量を示しており、実線は、ノイズの影響が大きい場合の位相変化量を示している。図6に示すように、ノイズが大きい場合に、先行するシンボルとの位相差がπ/4又は−π/4となる、シンボル点の位相変化が小さいデータが連続すると、位相変化がノイズによって乱れてしまい、位相変化量の最小点とシンボル同期点とが一致しなくなることがある。
その点、第2の実施形態に係る復調装置2は、上述したように、位相変化量が閾値以上となる場合にのみ、同期信号の同期タイミングを調整する。つまり、位相変化量が小さいデータはS/N比が小さくなるため、シンボル同期点の判定には用いないで、位相変化量が大きいデータのみを用いてシンボル同期点の判定を行う。そのため、復調装置2によれば、復調装置1よりもさらに高精度に位相偏移変調信号を復調することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る復調装置について説明する。図7に、本発明の第3の実施形態に係る復調装置3の構成例を示す。図7に示す復調装置3は、IQ信号算出部11と、位相信号算出部12と、シンボル同期部13−3と、復調信号生成部14とを備える。シンボル同期部13−3以外の処理は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
シンボル同期部13−3は、変化量算出部131と、最小値検出部132と、同期信号生成部133と、出力部134と、最大値検出部135とを備える。第3の実施形態は、第2の実施形態と比較して、最大値検出部135をさらに備える点が相違する。
変化量算出部131は、第1の実施形態と同様に、位相変化量を算出する。そして、変化量算出部131は、位相変化量を最小値検出部132及び最大値検出部135に出力する。
最小値検出部132は、第1の実施形態と同様に、変化量算出部131から入力された位相変化量について、所定のタイミングで所定期間内における最小値を検出し、最小値を同期信号生成部133に出力する。
最大値検出部135は、変化量算出部131から入力された位相変化量について、所定のタイミングで所定期間(例えば、シンボル周期)内における最大値を検出する。そして、最大値検出部135は、最大値を同期信号生成部133に出力する。
同期信号生成部133は、最大値検出部135から入力された最大値が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。そして、同期信号生成部133は、最大値が予め定められた閾値以上となる場合にのみ、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に対応するタイミングに基づいて同期信号の同期タイミングを調整する。つまり、同期信号生成部133は、位相変化量の最大値が閾値以上であり、且つ同期信号の同期タイミングと位相変化量の最小値に対応するタイミングとがずれている場合に、差が縮まるように同期タイミングを調整し、位相変化量が閾値未満である場合には同期タイミングの調整を行わない。
上述したように、第3の実施形態に係る復調装置3は、位相変化量の最大値を検出する最大値検出部135をさらに備え、同期信号生成部133は、該最大値が閾値以上となる場合に、同期タイミングを調整する。そのため、復調装置3によれば、伝送路のノイズが大きい場合でも、第2の実施形態と比較して、位相変化量が大きいデータのみを用いてより正確にシンボル同期点の判定を行うことができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る復調装置について説明する。図8に、本発明の第4の実施形態に係る復調装置4の構成例を示す。図8に示す復調装置4は、IQ信号算出部11と、位相信号算出部12と、シンボル同期部13−4と、復調信号生成部14とを備える。シンボル同期部13−4以外の処理は、第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
シンボル同期部13−4は、変化量算出部131と、最小値検出部132と、同期信号生成部133と、出力部134と、最大値検出部135とを備える。同期信号生成部133は、カウンタ値制御部136と、カウンタ137とを備える。
カウンタ137は、サンプリング周期ごとにカウンタ値が更新され、1つのシンボル周期で一周する。カウンタ137は、カウンタ値を最小値検出部132、出力部134、及び最大値検出部135に出力する。
最小値検出部132は、カウンタ137から入力されたカウンタ値が所定値となるごとに、カウンタが1周する間における位相変化量の最小値を検出する。本実施形態では、最小値検出部132は、カウンタ137のカウンタ値が最終値になるごとに、カウンタ値が直前の初期値から最終値となるまでの間における、位相変化量の最小値を検出する。そして、最小値検出部132は、位相変化量が最小値となる時のカウンタ値をカウンタ値制御部136に出力する。
最大値検出部135は、カウンタ137から入力されたカウンタ値が所定値となるごとに、カウンタが1周する間における位相変化量の最大値を検出する。本実施形態では、最大値検出部135は、カウンタ137のカウンタ値が最終値になるごとに、カウンタ値が直前の初期値から最終値となるまでの間における、位相変化量の最大値を検出する。そして、最大値検出部135は、検出した位相変化量の最大値をカウンタ値制御部136に出力する。
カウンタ値制御部136は、最大値検出部135から入力された位相変化量の最大値、及び最小値検出部132から入力されたカウンタ値に基づいて、カウンタ137の初期値を制御する。処理の詳細については後述する。
出力部134は、カウンタ137の予め定められた値(以下、「同期カウンタ値」という。)となるタイミングに同期して、位相信号を復調信号生成部14に出力する。なお、本実施形態における同期信号生成部133は、カウンタ137のカウンタ値を示す信号を同期信号として出力部134に出力するが、カウンタ137が同期カウンタ値となるタイミングのみを示す信号を同期信号としてもよい。
<カウンタ制御の第1の例>
次に、カウンタ値制御部136によるカウンタ制御の第1の例について説明する。カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値を決定する。最大値検出部135から入力された位相変化量の最大値が閾値未満である場合には、シンボル間の位相変化が小さいデータは同期位置を判定するのに有効なデータではないと判断し、カウンタ137の初期値の調整を行わない。一方、最大値検出部135から入力された位相変化量の最大値が閾値以上である場合には、同期位置を判定するのに有効なデータであると判断し、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に基づいてカウンタ137の初期値を、次に説明するように調整する。
カウンタ値制御部136は、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に対応するタイミングにおいて、カウンタ137のカウンタ値が同期カウンタ値よりも小さい場合には、同期タイミングが最小値に対応するタイミングに近づくように、カウンタ137の次回の初期値を調整する。また、最小値検出部132から入力された位相変化量の最小値に対応するタイミングにおいて、カウンタ137のカウンタ値が同期カウンタ値よりも大きい場合には、カウンタ137の次回の初期値を予め定められたサンプリング周期保持するように制御する。すなわち、カウンタ値が0からスタートする場合には、カウンタ137の初期値として0を予め定められたサンプリング周期連続して設定する。また、最小値検出部132から入力された最小値に対応するタイミングにおいて、カウンタ137のカウンタ値が予め同期カウンタ値と等しい場合には、カウンタ137の次回の初期値の調整を行わない。
カウンタ値制御部136によるカウンタ制御の第1の例を、図9を参照して説明する。図9は、復調装置4のカウンタ制御の第1の例を説明するための図である。この例では、カウンタ137のカウンタ値を0〜7とする。また、同期カウンタ値を4とする。すなわち、出力部134は、カウンタ137のカウンタ値が4となるタイミングに同期して、位相信号を出力する。
図9(a)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
図9(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は2であり、同期カウンタ値の4よりも小さい(1から3の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値を調整し、1を設定する。
図9(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は3であり、同期カウンタ値の4よりも小さい。そのため、カウンタ値制御部136は時刻t2と同様に、カウンタ137の初期値を調整し、1を設定する。
図9(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t4では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は4であり、同期カウンタ値の4と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
また、図9(b)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
図9(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は6であり、同期カウンタ値の4よりも大きい(5から7の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値を0に設定し、さらに次の1サンプリング周期の間、カウンタ値を保持する。
図9(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は5であり、同期カウンタ値の4よりも大きい。そのため、カウンタ値制御部136は時刻t2と同様に、カウンタ137の初期値を0に設定し、さらに次の1サンプリング周期の間、カウンタ値を保持する。
図9(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t4では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は4であり、同期カウンタ値の4と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
なお、位相変化量が最小値となる時のカウンタ値が0であった場合には、該カウンタ値が同期カウンタ値よりも小さい場合の処理を行ってもよいし、該カウンタ値が同期カウンタ値よりも大きい場合の処理を行ってもよい。あるいは、この場合は位相変化量が最小となるタイミングとカウンタの中央値とのずれが大きいため、無効なデータとして扱い、カウンタ137の初期値の調整を行わないようにしてもよい。
<カウンタ制御の第2の例>
次に、カウンタ値制御部136によるカウンタ制御の第2の例を、図10を参照して説明する。図10は、復調装置4のカウンタ制御の第2の例を説明するための図である。図9に示した例では、±1サンプルの同期点移動により位置合わせを行ったが、図10に示す例では、±Mサンプルの同期点移動によって高速に同期点を合わせこむ。また、図9と同様に、カウンタ137のカウンタ値を0〜7とし、同期カウンタ値を4とする。
図10(a)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
図10(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は2であり、同期カウンタ値の4よりも小さい(1から3の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の次の初期値をPに設定する。Pは、同期カウンタ値と、位相変化量が最小となるタイミングに対応するカウンタ値との差分値とする。ここでは、P=4−2=2となる。
図10(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は4であり、同期カウンタ値4と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。時刻t4についても同様の制御となる。
また、図10(b)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。
図10(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値が6であり、同期カウンタ値の4よりも大きい(5から7の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の次の初期値を0に設定し、さらに次のQサンプリング周期の間、カウンタ値を保持する。Qは、位相変化量が最小となるタイミングに対応するカウンタ値と、同期カウンタ値との差分値とする。ここでは、Q=6−4=2となる。
図10(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が0から7の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は4であり、同期カウンタ値の4と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり0となる。時刻t4についても同様の制御となる。
上述した復調装置4の動作について、図11を参照して説明する。図11は、復調装置4の動作例を示すフローチャートである。
復調装置4には、最初に各初期値が設定される(ステップS101)。初期値は、カウンタ137のカウンタ値n=0、位相変化量の最小値θmin=180°、位相変化量が最小となる時のカウンタ値(以下、「カウンタ判定値」という。)n_min=0、位相変化量の最大値θmax=0°、カウンタ値を保持するサンプリング周期数(以下、「カウンタ値保持回数」という。)n_hold=0とする。
復調装置4は、位相シフトQPSK変調信号が入力されると、IQ信号算出部11により、I信号I(n)及びQ信号Q(n)を算出し(ステップS102)、位相信号算出部12により、位相シフトQPSK変調信号の位相信号θ(n)を算出し(ステップS103)、変化量算出部131により、位相変化量θdiffを算出する(ステップS104)。
続いて、最小値検出部132により、位相変化量θdiffの最小値を検出する。具体的には、カウンタ値n≧1のときに、位相変化量θdiffが最小であれば最小値をθminとして更新し、その時のカウンタ値をn_minとして記憶する(ステップS105)。
また、最大値検出部135により、位相変化量θdiffの最大値を検出する。具体的には、カウンタ値n≧1のときに、位相変化量θdiffが最大であれば最大値をθmaxとして更新する(ステップS106)。なお、復調装置4は、ステップS106の処理を行った後に、ステップS105の処理を行ってもよいし、ステップS105及びステップS106の処理を並行して行ってもよい。
出力部134は、カウンタ値nが同期カウンタ値であるときの位相信号θ(n)を同期データとして出力する(ステップS107)。ここでは、同期カウンタ値をNs/2としている。Nsはカウンタ137のカウンタサイズ(1シンボル当たりのサンプリング数)である。
カウンタ値制御部136は、カウンタ値nがNs−1以外であるか否かを判定する(ステップS108)。そして、カウンタ値nがNs−1以外である場合には(ステップS108−Yes)、カウンタ値保持回数n_holdが0である場合には(ステップS109−Yes)、カウンタ値nを1インクリメントし(ステップS110)、カウンタ値保持回数n_holdが0でない場合には(ステップS109−No)、カウンタ値nのインクリメントを行わないで、カウンタ値保持回数n_holdを1デクリメントする(ステップS111)。
カウンタ値制御部136は、カウンタ値nがNs−1である場合(ステップS108−No)、すなわちカウンタ値nが最終値になった場合には、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth未満であるか否かを判定する(ステップS112)。カウンタ値制御部136は、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth未満である場合には(ステップS112−Yes)、カウンタ値nを0に設定し(ステップS113)、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth以上である場合には(ステップS112−No)、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値(Ns/2)未満であるか否かを判定する(ステップS114)。
カウンタ値制御部136は、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値未満である場合には(ステップS114−Yes)、カウンタ値nをNs/2−n_minに設定する(ステップS115)。一方、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値以上である場合には(ステップS114−No)、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しいか否かを判定する(ステップS116)。
カウンタ値制御部136は、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しい場合には(ステップS116−Yes)、カウンタ値nを0に設定する(ステップS117)。一方、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しくない場合(ステップS116−No)、すなわちカウンタ判定値n_minが同期カウンタ値を超える場合には、カウンタ値nを0に設定するとともに、カウンタ値保持回数n_holdをn_min−Ns/2に設定する(ステップS118)。
<カウンタ制御の第3の例>
次に、カウンタ値制御部136によるカウンタ制御の第3の例を、図12を参照して説明する。図12は、復調装置4のカウンタ制御の第3の例を説明するための図である。図10に示した例では、カウンタの初期値を0としたが、図12に示す例では、カウンタ137は制御前の初期値を4とし、11までカウントアップする。また、同期カウンタ値を8とする。
図12(a)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり4となる。
図12(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は6であり、同期カウンタ値の8よりも小さい(5から7の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値をRに設定する。Rは、同期カウンタ値と、位相変化量が最小となるタイミングに対応するカウンタ値との差分値に、カウンタ137の制御前の初期値を加えた値とする。ここでは、R=8−6+4=6となる。
図12(a)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は8であり、同期カウンタ値の8と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり4となる。時刻t4についても同様の制御となり、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の次の初期値を4に設定する。
また、図12(b)において、カウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t1では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値未満である。したがって、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり4となる。
図12(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t2では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は10であり、同期カウンタ値の8よりも大きい(9から11の範囲)。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の次の初期値をSに設定する。Sは、カウンタ137の制御前の初期値から、位相変化量が最小となるタイミングに対応するカウンタ値と同期カウンタ値との差分値を減じた値とする。ここでは、S=4−(10−8)=2となる。
図12(b)において、次にカウンタ137のカウンタ値が最終値となる時刻t3では、直前のカウンタ値が4から11の間における位相変化量の最大値は閾値以上である。また、位相変化量が最小となる時のカウンタ値は8であり、同期カウンタ値の8と等しい。この場合には、カウンタ値制御部136は、カウンタ137の初期値の調整を行わず、初期値は通常どおり4となる。時刻t4についても同様の制御となる。
上述した復調装置4の動作について、図13を参照して説明する。図13は、復調装置4の動作例を示すフローチャートである。
復調装置4には、最初に各初期値が設定される(ステップS201)。初期値は、カウンタ137のカウンタ値n=Ni、位相変化量の最小値θmin=180°、位相変化量が最小となる時のカウンタ値(カウンタ判定値)n_min=0、位相変化量の最大値θmax=0°、カウンタ最終値N=Ni+Ns−1とする。ここで、Niはカウンタ137の制御前の初期値であり、Nsは1シンボル当たりのサンプリング数である。
復調装置4は、位相シフトQPSK変調信号が入力されると、IQ信号算出部11により、I信号I(n)及びQ信号Q(n)を算出し(ステップS202)、位相信号算出部12により、位相シフトQPSK変調信号の位相信号θ(n)を算出し(ステップS203)、変化量算出部131により、位相変化量θdiffを算出する(ステップS204)。
続いて、最小値検出部132により、位相変化量θdiffの最小値を検出する。具体的には、カウンタ値n≧Ni+1のときに、位相変化量θdiffが最小であれば最小値をθminとして更新し、その時のカウンタ値をn_minとして記憶する(ステップS205)。
また、最大値検出部135により、位相変化量θdiffの最大値を検出する。具体的には、カウンタ値n≧Ni+1のときに、位相変化量θdiffが最大であれば最大値をθmaxとして更新する(ステップS206)。なお、復調装置4は、ステップS206の処理を行った後に、ステップS205の処理を行ってもよいし、ステップS205及びステップS206の処理を並行して行ってもよい。
出力部134は、カウンタ値nが同期カウンタ値であるときの位相信号θ(n)を同期データとして出力する(ステップS207)。ここでは、同期カウンタ値をNi+Ns/2としている。
カウンタ値制御部136は、カウンタ値nがカウンタ最終値N以外であるか否かを判定する(ステップS208)。そして、カウンタ値nがカウンタ最終値N以外である場合には(ステップS208−Yes)、カウンタ値nを1インクリメントし(ステップS209)、カウンタ値nがカウンタ最終値Nである場合には(ステップS208−No)、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth未満であるか否かを判定する(ステップS210)。
カウンタ値制御部136は、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth未満である場合には(ステップS210−Yes)、カウンタ値nをNiに設定し(ステップS211)、位相変化量の最大値θmaxが閾値θth以上である場合には(ステップS210−No)、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値(Ni+Ns/2)未満であるか否かを判定する(ステップS212)。
カウンタ値制御部136は、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値未満である場合には(ステップS212−Yes)、カウンタ値nを(Ni+Ns/2)−n_min+Niに設定する(ステップS213)。一方、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値以上である場合には(ステップS212−No)、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しいか否かを判定する(ステップS214)。
カウンタ値制御部136は、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しい場合には(ステップS214−Yes)、カウンタ値nをNiに設定する(ステップS215)。一方、カウンタ判定値n_minが同期カウンタ値と等しくない場合(ステップS214−No)、すなわちカウンタ判定値n_minが同期カウンタ値を超える場合には、カウンタ値nをNi−{n_min−(Ni+Ns/2)}に設定する(ステップS216)。
上述したように、第4の実施形態に係る復調装置4の同期信号生成部133は、サンプリング周期ごとにカウンタ値が更新され、1つのシンボル周期で一周するカウンタ137と、カウンタの初期値を制御するカウンタ値制御部136と、を備え、カウンタ137の同期カウンタ値に対応するタイミングで同期信号を出力する。カウンタ値制御部136は、位相変化量の最小値となる時のカウンタ値と、同期カウンタ値とが異なる場合には、両者が近付くようにカウンタ137の初期値を制御する。例えば、カウンタ値制御部136は、位相変化量の最小値となる時のカウンタ値が同期カウンタ値よりも小さい場合には、同期タイミングが、位相変化量の最小値に対応するタイミングに近づくようにカウンタ137の初期値をずらし、位相変化量の最小値となる時のカウンタ値が同期カウンタ値よりも大きい場合には、カウンタ137の初期値を予め定められたサンプリング周期保持するようにカウンタ137を制御する。そのため、復調装置4によれば、正確に同期タイミングを調整することができ、位相偏移変調信号をさらに高精度に復調することができる。
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。