以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されて描かれている場合もある。
A.燃料電池システムの全体構成
図1を参照すると、燃料電池システム1は、第1燃料電池系統100、第2燃料電池系統200及び制御部としてのECU(Electronic Control Unit)2を備える。
第1燃料電池系統100は、第1燃料電池スタック101を備える。第1燃料電池スタック101は、燃料電池セルを積層して形成されている。各燃料電池セルは、膜状の電解質と、電解質の一側に形成されたアノード極と、電解質の他側に形成されたカソード極とを備えた膜電極接合体を有する。アノード極及びカソード極は一方ではDC/DCコンバータ及びインバータを介して、例えば、車両駆動用の電気モータに電気的に接続され、他方ではDC/DCコンバータを介して蓄電器に電気的に接続される。なお、図1において、膜電極接合体、DC/DCコンバータ、インバータ及び蓄電池等の図示は省略されている。
第1燃料電池スタック101内には、アノード極にアノードガスを供給する第1アノードガス流路110と、カソード極にカソードガスを供給する第1カソードガス流路120と、第1燃料電池スタック101内に冷却水を供給するための第1冷却水流路130が形成されている。
第1アノードガス流路110の入口には、第1アノードガス供給流路111の一端が接続されている。第1アノードガス供給流路111の他端には、アノードガスである水素が貯留された第1水素タンク112が接続されている。第1アノードガス供給流路111には、第1アノードガス流路110へ供給するアノードガス流量を調整する第1レギュレータ113が配置されている。第1アノードガス流路110の出口には、第1アノードガス流路110から排出されるアノードオフガスが流れる第1アノードオフガス流路114が接続されている。
第1カソードガス流路120の入口には、第1カソードガス供給流路121の一端が接続されている。第1カソードガス供給流路121の他端は、大気開放されており、第1カソードガス流路120に大気を取り込む。第1カソードガス供給流路121には、第1圧縮器122aが配置されている。第1圧縮器122aは、第1モータ122bによって駆動され、カソードガスを第1カソードガス流路120へ圧送する。第1圧縮器122aには、その回転数を計測する第1回転数計123が設けられている。第1カソードガス流路120の出口には、第1カソードガス流路120から排出されるカソードオフガスが流れる第1カソードオフガス流路124が接続されている。第1カソードオフガス流路124には、第1調圧弁125が設けられている。第1調圧弁125は、その開度を調節することで第1カソードガス流路120及びこれと接続されている第1カソードガス供給流路121内の圧力を調節する。第1調圧弁125は、第1カソードガス流路120へ供給されるカソードガス流量を調節するときに、第1圧縮器の122aの稼働状態とともに、その開度が調節される。具体的に、第1調圧弁125は、第1カソードガス流路120内の圧力が第1圧縮器122aの運転可能領域となるように開度調整される。また、第1調圧弁125は、第1燃料電池スタック101内の湿度状態を調節するときにも開度調整される。具体的に、第1調圧弁125は、第1燃料電池スタック101内の湿度を高めたい場合に、第1カソードガス流路120内の圧力を高め、水蒸気分圧を高めるように開度調整される。
第1カソードガス供給流路121は第1バイパス流路126を介して第1カソードオフガス流路124と接続されている。第1バイパス流路126は、第1カソードガス供給流路121の第1圧縮器122aの下流側と第1カソードオフガス流路124の第1調圧弁125の上流側とを接続している。第1バイパス流路126には、第1バイパス弁127が設けられている。
第1カソードガス供給流路121の第1圧縮器122aと第1バイパス流路126との分岐点との間には、第1圧力計128が設けられている。第1圧力計128の測定値は、第1調圧弁125の開度調整の際に参照され、第1カソードガス流路120、第1カソードガス供給流路121内の圧力が所望の圧力となるように第1調圧弁125の開度調整が行われる。
第1冷却水流路130の入口には、第1冷却水供給流路131の一端が接続されている。第1冷却水供給流路131の他端は、第1冷却水チラー132に接続されている。第1冷却水流路130の出口には、第1冷却水排水流路133の一端が接続されている。第1冷却水排水流路133の他端は、第1冷却水チラー132に接続されている。冷却水は、第1冷却水流路130と第1冷却水チラー132との間を循環し、第1燃料電池スタック101を冷却する。第1冷却水排水流路133には、第1燃料電池スタック101の温度として冷却水の温度を測定する第1温度計134が設けられている。
第2燃料電池系統200は、第1燃料電池系統100と同様の構成を有する。すなわち、第2燃料電池系統200は、第2燃料電池スタック201、第2アノードガス流路210、第2アノードガス供給流路211、第2水素タンク212、第2レギュレータ213、第2アノードオフガス流路214を備える。また、第2燃料電池系統200は、第2カソードガス流路220、第2カソードガス供給流路221、第2圧縮器222a、第2モータ222b、第2回転数計223、第2カソードオフガス流路224、第2調圧弁225を備える。また、第2燃料電池系統200は、第2バイパス流路226、第2バイパス弁227及び第2圧力計228を備える。さらに、第2燃料電池系統200は、第2冷却水流路230、第2冷却水供給流路231、第2冷却水チラー232、第2冷却水排水流路233を備える。これらの構成要素は、第1燃料電池系統100において対応する構成要素と共通するので、その詳細な説明は省略する。
このように、燃料電池システム1は、第1燃料電池系統100と第2燃料電池系統200を備えることで、複数の燃料電池スタック101,201、複数のカソードガス供給流路121,221を備える。燃料電池システム1は、第1燃料電池系統100に属する第1カソードガス供給流路121と第2燃料電池系統200に属する第2カソードガス供給流路221とを接続する連通流路10を備えている。連通流路10は、第1カソードガス供給流路121の第1圧縮器122aの下流側と第2圧縮器222aの下流側とを接続している。連通流路10には、切替弁11が設けられている。切替弁11は、連通流路10の状態を、第1カソードガス供給流路121と第2カソードガス供給流路221とを連通させる状態と、第1カソードガス供給流路121と第2カソードガス供給流路221との連通を遮断する状態との間で切り替える。切替弁11が開弁されると、カソードガス供給流路121,221間でカソードガスの流通が可能となり、切替弁11が閉弁されると、カソードガス供給流路121,221間でカソードガスの流通が遮断される。
ECU2は、ハードウェア構成として、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する演算回路と、プログラムメモリやデータメモリその他のRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を有する記憶装置等からなるマイクロコンピュータを主に備える。ECU4は、機能的に、出力制御部3、圧縮器停止判定部(以下、単に「停止判定部」という)4、圧縮器選定部5、カソードガス流路制御部6、第1圧縮器制御部7及び第2圧縮器制御部8を有している。
出力制御部3は、アクセル開度センサ9、レギュレータ113,213と電気的に接続されている。出力制御部3は、第1圧縮器制御部7を介して第1圧縮器122aと電気的に接続され、また、第2圧縮器制御部8を介して第2圧縮器222aと電気的に接続されている。出力制御部3は、アクセル開度センサ9の信号に基づいて、第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に対する要求出力を算出する。ここで、第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に対する要求出力は、それぞれ燃料電池システム1全体の要求出力の1/2ずつである。出力制御部3は、算出した要求出力に基づいて第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に必要なアノードガス供給量が得られるようにレギュレータ113,213に制御信号を出力する。
出力制御部3は、また、第1圧縮器制御部7と第2圧縮器制御部8に対し、要求出力に基づき第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に必要なカソードガス供給量が得られるように制御信号を出力する。ここで、第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に必要なカソードガス流量は、燃料電池システム1の要求出力に基づくシステム全体のカソードガス流量Fallの1/2ずつの流量である。これは、第1燃料電池スタック101及び第2燃料電池スタック201に対する要求出力が、それぞれ燃料電池システム1全体の要求出力の1/2ずつだからである。第1圧縮器制御部7は、第1燃料電池スタック101に必要なカソードガス流量が得られるように第1モータ122bの回転数を制御する。同様に、第2圧縮器制御部8は、第2燃料電池スタック201に必要なカソードガス流量が得られるように第2モータ222bの回転数を制御する。
停止判定部4は、燃料電池システム1の状態が、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのいずれかを停止し、一方の圧縮器のみを運転させる状態であるか否かを判定する。ここで、図2から図4を参照して、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのいずれかを停止させる場合について説明する。
まず、図2(A)及び図2(B)を参照して、一般的な圧縮器の特性と一般的な燃料電池スタックにおける要求圧力について説明する。図2(A)は一般的な圧縮器が吐出するカソードガス流量とカソードガス流路圧力との関係を示すグラフであり、図2(B)はカソードガス流路におけるスタック温度と要求圧力との関係を示すグラフである。
本実施形態に用いられている第1圧縮器122aや第2圧縮器222aも含めて一般的な圧縮器には、その仕様に基づいて運転可能領域と運転不可領域の境界となる上限圧力が決まっている。この上限圧力はサージラインと称されることもある。例えば、圧縮器が吐出したいカソードガス流量がF1aだとすると、圧縮器がカソードガスを吐出するカソードガス供給流路と繋がっているカソードガス流路の圧力は、P(F1a)以下の値でなければならない。仮に、カソードガス流路圧力がP(F1a)よりも高い値であると、圧縮器は運転できない。同様に、圧縮器が吐出したいカソードガス流量がF1bである場合に、カソードガス流路圧力がP(F1b)よりも高い値であると、圧縮器は運転できない。
一方、燃料電池スタックは、そのスタック温度に応じて、カソードガス流路の圧力を高めたい場合がある。例えば、スタック温度が高い場合に、カソードガス流路内の圧力を高め、ひいては水蒸気分圧を高めることで、燃料電池スタック内の乾燥を抑制したいような場合である。図2(B)を参照すると、例えば、スタック温度がT1であるとき、要求圧力、すなわち、燃料電池スタック内の乾燥を抑制すべくカソードガス流路圧力に求められる圧力は、P(T1)である。同様に、スタック温度がT2であるとき、要求圧力は、P(T2)である。
ここで、例えば、燃料電池システムを搭載した車両が登坂した後、アクセルが閉じられ、燃料電池システムの要求出力が小さくなり、これに伴ってカソードガス流量も少なくなる場合を想定する。車両が登坂する場合、燃料電池スタックの負荷も高くなることからスタック温度が高くなる。このときのスタック温度が例えばT2であると、要求圧力はP(T2)となる。一方、登坂直後、アクセルが閉じられることで要求されるカソードガス流量がF1aになったとする。このカソードガス流量F1aに対応する上限圧力はP(F1a)である。ここで、圧力P(F1a)は、圧力P(T2)より低い。
このため、圧縮器をカソードガス流路圧力がP(F1a)よりも低い環境下で運転しようとすると、燃料電池スタック側の要請である圧力P(T2)による運転が行われないことになる。このような場合には、圧縮器をより高い圧力である圧力P(T2)で運転し、カソードガス流量F1aよりも増えてしまったカソードガスについては、バイパスする等して燃料電池スタックのカソードガス流路に供給されないようにすることが考えられる。
つぎに、図3及び図4を参照して本実施形態のように、二つの圧縮器が装備された燃料電池システムにおけるカソードガス流路圧力の上限圧力について説明する。ここで、二つの圧縮器は同一物であり、同一の特性を有している。まず、図3を参照すると、燃料電池システムに要求されるシステム全体のカソードガス流量Fallを二つの圧縮器によって賄う場合、第1圧縮器と第2圧縮器は、それぞれ、1/2Fallずつのカソードガス流量を分担する。この場合、第1圧縮器の上限圧力と第2圧縮器の上限圧力は、いずれもカソードガス流量1/2Fallに対応する値となる。これに対し、システム全体のカソードガス流量Fallを第1圧縮器と第2圧縮器のどちらか一方の圧縮器によって賄う場合、二つの圧縮器を用いる場合と比較して上限圧力は、高くなる。このため、例えば、図4(A)及び図4(B)に示すようにスタック温度がT3であり、燃料電池スタック側の要求圧力がP(T3)である場合、一つの圧縮器でカソードガス流量Fallを賄えば要求圧力に関する条件が満たされる。
停止判定部4は、上限圧力と要求圧力との関係に基づき第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの双方を運転するのか、または、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのいずれかを停止し、一方の圧縮器のみを運転するのか判定する。停止判定部4には、第1温度計134と第2温度計234が電気的に接続されている。
圧縮器選定部5は、第1回転数計123と第2回転数計223と電気的に接続されている。圧縮器選定部5は、停止判定部4がいずれか一方の圧縮器を停止させると判定した場合に、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのうち、停止させる圧縮器を選定する。
カソードガス流路制御部6は、第1調圧弁125、第1バイパス弁127、第1圧力計128、第2調圧弁225、第2バイパス弁227、第2圧力計228及び切替弁11と電気的に接続されている。カソードガス流路制御部6は、第1圧縮器122aや第2圧縮器222aによって吐出されたカソードガスをどの流路に流すかを制御する。カソードガス流路制御部6は、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの一方が運転される場合に切替弁11を開弁し、第1燃料電池スタック101と第2燃料電池スタック201の双方にカソードガスを供給できるようにする。
また、カソードガス流路制御部6は、第1バイパス弁127や第2バイパス弁227を制御して、カソードガスをバイパスさせる。例えば、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのいずれか一方のみの運転としても依然として要求圧力に関する条件が満たされない場合がある。このような場合に、選定された圧縮器の吐出量を増すことで上限圧力を高め、これにより要求圧力を満たす制御が行われることがある。このような制御に伴って増量されたカソードガス流量は第1燃料電池スタック101や第2燃料電池スタック201をバイパスさせる。このとき、第1バイパス弁127や第2バイパス弁227が開弁される。
B.圧縮器停止制御
つぎに、図5から図9を参照して、燃料電池システム1において行われる圧縮器停止制御の一例について説明する。図5及び図6は、説明の都合上、一つのフローチャートを二つに分けて表したものとなっている。図5における符号A1、B1及びC1は、それぞれ図6における符号A2、B2及びC2に繋がっている。また、図6におけるD1は図5における符号D2に繋がっている。
まず、ステップS1において、出力制御部3は、アクセル開度センサ9の信号に基づいて、燃料電池システム1全体に対する要求電力Idemandallを算出する。そして、出力制御部3は、ステップS2において、第1燃料電池スタック101に対する要求電力Idemand1及び第2燃料電池スタック201に対する要求出力Idemand2を算出する。本実施形態における要求電力Idemand1と要求電力Idemand2は、同値であり、要求電力Idemandallの1/2とされている。
ステップS2に引き続いて行われるステップS3では、出力制御部3は、第1燃料電池スタック101の要求出力Idemand1に対応するカソードガス流量Fdemand1を推定する。カソードガス流量Fdemand1は、例えば、下記の式1によって算出される。
式1
Fdemand1
=(n×Idemand1×22.4×60)/(4×96500×0.21)
ここで、定数「n」は、第1燃料電池スタック101が有する燃料電池セルの枚数、定数「22.4」は、エア量(モル)を体積(リットル)に換算するための係数、定数「60」は、分を秒に換算するための係数、定数「96500」はファラデー定数、定数「0.21」は空気中の酸素含有率である。なお、カソードガス流量Fdemand1は、要求出力Idemand1との相関性に基づいて予め準備されたマップを用いて推定するようにしてもよい。
ステップS3に引き続いて行われるステップS4では、停止判定部4は、カソードガス流量Fdemand1に対応する上限圧力Plevel1を推定する。上限圧力Plevel1は、図7(A)に示す予め準備された上限圧力推定マップに基づいて推定される。なお、図7(A)に示す上限圧力推定マップは、後に推定される第2圧縮器222aに対する上限圧力Plevel2を推定する際にも用いられる。また、図7(A)に示す上限圧力推定マップは、カソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量に対応する上限圧力Plevelallを推定する際にも用いられる。
ステップS5では、停止判定部4は、第1温度計134の測定値であるスタック温度Tstack1を取得する。そして、ステップS6では、スタック温度Tstackに対応する要求圧力Pdemand1を推定する。要求圧力Pdemand1は、図7(B)に示す予め準備された要求圧力推定マップに基づいて推定される。なお、図7(B)に示す要求圧力推定マップは、後に推定される第2燃料電池スタック202における要求圧力Pdemand2を推定する際にも用いられる。
なお、ステップS3とステップS4による上限圧力Plevel1の推定と、ステップS5とステップS6による要求圧力Pdemand1の推定とは、その順序を問わないため、先に要求圧力Pdemand1を推定してもよいし、両者を同時に推定するようにしてもよい。
ステップS3からステップS6に引き続いて行われるステップS7では、停止判定部4は、要求圧力Pdemand1が第1圧縮器122aの上限圧力Plevel1よりも大きいか否かを判定する。停止判定部4は、ステップS7でNOと判定したときは、ステップS8へ進み、ステップS7でYESと判定したときは、ステップS16へ進む。
ステップS8からステップS11では、第2燃料電池スタック201について、第1燃料電池スタック101についてのステップS3からステップS6と同様の処理が行われる。ステップS8からステップS11は、対象としている燃料電池スタックが異なっているだけで、その内容は、ステップS3からステップS6と共通しているので、その詳細な説明は省略する。
ステップS8からステップS11に引き続いて行われるステップS12では、停止判定部4は、要求圧力Pdemand2が第2圧縮器222aの上限圧力Plevel2よりも大きいか否かを判定する。停止判定部4は、ステップS12でNOと判定したときは、ステップS13へ進み、ステップS12でYESと判定したときは、ステップS16へ進む。
停止判定部4がステップS7でNOと判定し、さらに、ステップS12でNOと判定したときは、第1燃料電池系統100と第2燃料電池系統200のいずれにおいても要求圧力が上限圧力を超えていない場合である。すなわち、この状態は、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aをそれぞれ運転することができ、各系統において要求圧力も満たされている状態である。そこで、ステップS13においてカソードガス流路制御部6は、切替弁11を閉弁し、第1カソードガス供給流路121と第2カソードガス供給流路222の連通を遮断した状態とする。
ステップS13に引き続いて行われるステップS14では、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aが作動し、双方が運転状態とされる。そして、ステップS15において、それまでの第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの総回転数NACP1,NACP2に今回の運転における回転数が加算され、加算された値が新たな総回転数NACP1,NACP2として記録が更新される。ここで総回転数とは、第1圧縮器122aや第2圧縮器222aが新品の状態やオーバーホールされた状態からの積算された回転数である。積算された回転数は、回転数計123,223によって計測されている。ステップS14の後、一連の処理は、リターンとなり、ステップS1からの処理を繰り返す。
つぎに、ステップS16について説明する。ステップS16は、ステップS7でYES判定がされた場合やステップS12でYES判定された場合に実行される。すなわち、ステップS16は、第1燃料電池系統100と第2燃料電池系統200のいずれかにおいて要求圧力が上限圧力を超えている場合に行われる。第1燃料電池系統100と第2燃料電池系統200のいずれかにおいて要求圧力が上限圧力を超えている場合には、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの一方を停止させる。そして、他方のみの運転によって第1燃料電池スタック101と第2燃料電池スタック201に発電させる。このため、ステップS16では、カソードガス流路制御部6は、切替弁11を開弁し、第1カソードガス供給流路121と第2カソードガス供給流路221とを連通させる。
ステップS17では、停止判定部4は、図7(A)に示す上限圧力推定マップを用い、カソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量に対応する上限圧力Plevelallを推定する。
そして、ステップS18において、停止判定部4は、第1燃料電池スタック101の要求圧力Pdemand1が上限圧力Plevelallよりも小さいか否かを判定する。停止判定部4は、ステップS18でYESと判定したときは、ステップS19へ進み、ステップS18でNOと判定したときはステップS27へ進む。
ステップS19では、停止判定部4は、第2燃料電池スタック201の要求圧力Pdemand2が上限圧力Plevelallよりも小さいか否かを判定する。停止判定部4は、ステップS19でYESと判定したときは、ステップS20へ進み、ステップS19でNOと判定したときはステップS38へ進む。
ステップS18とステップS19でともにYESと判定され、ステップS20へ進む場合は、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのいずれかによってカソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量を賄う。これにより、燃料電池システム1は、第1燃料電池スタック101における要求圧力Pdemand1と第2燃料電池スタック201における要求圧力Pdemand2が満たされた状態で運転することができる。ステップS20では、圧縮器選定部5は、圧縮器毎の使用履歴に基づいて停止させる圧縮器を選定する。
具体的に、ステップS20において、圧縮器選定部5は、それまでの第1圧縮器122aの総回転数NACP1が第2圧縮器222aの総回転数NACP2よりも多いか否かを判定する。ここで、総回転数NACP1と第2圧縮器222aの総回転数NACP2は、圧縮器毎の使用履歴に含まれる値である。停止させる圧縮器を選定する際、使用頻度が高い圧縮器を選定し、使用頻度が高い圧縮器を優先的に停止させることで第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの使用頻度を近づけることができる。第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの使用頻度を近づけ、平準化することで、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのメンテナンス時期や交換時期を一致させることができる。この結果、複数の圧縮器を備える燃料電池システム1のメンテナンスを効率的に行うことができるようになり、燃料電池システム1に対するメンテナンス回数を低減することができる。
ステップS20でYESと判定されたとき、すなわち、第1圧縮器122aの総回転数NACP1の方が第2圧縮器222aの総回転数NACP2よりも多い場合は、ステップS21へ進む。ステップS21では、第1圧縮器制御部7が第1圧縮器122aを停止させるともに、カソードガス流路制御部6が第1調圧弁125を閉弁する。そして、ステップS22において、第2圧縮器制御部8が第2圧縮器222aを作動させて運転状態とする。ステップS22に引き続いて行われるステップS23では、第2圧縮器222aの総回転数NACP2に今回の運転における回転数が加算され、加算された値が新たな総回転数NACP2として記録が更新される。ステップS23の後、一連の処理は、リターンとなり、ステップS1からの処理を繰り返す。
一方、ステップS20でNOと判定されたとき、すなわち、第2圧縮器222aの総回転数NACP2の方が第1圧縮器122aの総回転数NACP1よりも多い場合は、ステップS24へ進む。ステップS24では、第2圧縮器制御部8が第2圧縮器222aを停止させるともに、カソードガス流路制御部6が第2調圧弁225を閉弁する。そして、ステップS25において、第1圧縮器制御部7が第1圧縮器122aを作動させて運転状態とする。ステップS25に引き続いて行われるステップS26では、第1圧縮器122aの総回転数NACP1に今回の運転における回転数が加算され、加算された値が新たな総回転数NACP1として記録が更新される。ステップS26の後、一連の処理は、リターンとなり、ステップS1からの処理を繰り返す。
つぎに、ステップS18においてNOと判定された場合について説明する。ステップS18でNOと判定された場合は、要求された流量を一つの圧縮器で賄い、上限圧力を引き上げているにも拘わらず要求圧力Pdemand1が上限圧力Plevelallよりも高い場合である。このような場合は、停止判定部4は、ステップS27へ進む。
ステップS27では、停止判定部4は、第1燃料電池スタック101における要求圧力Pdemand1が第2燃料電池スタック201における要求圧力Pdemand2よりも小さいか否かを判定する。ステップS27は、要求圧力Pdemand1と要求圧力Pdemand2のいずれが支配的であるかを判定するものである。ステップS27でNOと判定した場合は、ステップS28へ進み、ステップS27でYESと判定した場合は、ステップS38へ進む。
ステップS27でNOと判定された場合は、要求圧力Pdemand1が支配的となる場合である。そこで、ステップS28では第1圧縮器122aまたは第2圧縮器222aが要求圧力Pdemand1を満たすために必要となる最小流量Fmin1を算出する。最小流量Fmin1は、図8に示す予め準備された最小流量算出マップに基づいて算出される。なお、図8に示す最小流量算出マップは、後に説明する最小流量Fmin2を算出する際にも用いられる。
ステップS28に引き続いて行われるステップS29では、バイパス流量Fpath1を算出する。ステップS28では、要求圧力Pdemand1を満たすために必要となる最小流量Fmin1を算出しているが、要求圧力Pdemand1は上限圧力Plevelallよりも高い。従って、最小流量Fmin1は、第1圧縮器122aまたは第2圧縮器222aが賄うべきカソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量よりも多い。そこで、ステップS29では、最小流量Fmin1がカソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量を超える量をバイパス流量Fpath1として算出する。バイパス流量Fpath1は、以下の式2によって算出される。
式2
Fpath1
=Fmin1−(Fdemand1+Fdemand2)
ステップS29に引き続いて行われるステップS30では、バイパス流量Fpath1に対応する第1バイパス弁127または第2バイパス弁227の開度Vo1が算出される。開度Vo1は、図9に示す予め準備されたバイパス弁開度算出マップに基づいて推定される。なお、図9に示すバイパス弁開度算出マップは、後に説明する開度Vo2を算出する際にも用いられる。
ステップS30に引き続いて行われるステップS31からステップS37の制御内容は、基本的には、ステップS20からステップS26までの制御内容と共通している。すなわち、ステップS31からステップS37は、圧縮器毎の使用履歴に含まれる第1圧縮器122aの総回転数NACP1と第2圧縮器222aの総回転数NACP2に基づいて停止させる圧縮器を選定し、選定した圧縮器を停止させる。そして、運転させた圧縮器の総回転数NACP1又は総回転数NACP2に今回の回転数が加算され、加算された値が新たな総回転数NACP1又は総回転数NACP2として記録が更新される。
ただし、ステップS33では、ステップS22の制御に加えて、第2燃料電池系統200に含まれる第2バイパス弁227の開度がVo1とされる。また、ステップS36では、ステップS25の制御に加えて、第1燃料電池系統100に含まれる第1バイパス弁127の開度がVo1とされる。その他のステップS31からステップS37の制御内容は、ステップS20からステップS26までの制御内容と共通しているので、その詳細な説明は省略する。
なお、本実施形態では、バイパス流量Fpath1をバイパスさせる場合であっても、その前提として、一つの圧縮器のみを運転して上限圧力を高め、要求圧力と上限圧力との差を小さくしている。このため、本実施形態は、二つの圧縮器を用いる場合と比較して、バイパス流量を少なくすることができる。
つぎに、ステップS19においてNOと判定されたときについて説明する。ステップS19でNOと判定された場合は、要求された流量を一つの圧縮器で賄い、上限圧力を引き上げているにも拘わらず要求圧力Pdemand2が上限圧力Plevelallよりも高い場合である。このような場合は、停止判定部4は、ステップS38へ進む。
なお、ステップS27でYESと判定された場合もステップS38以降の処理が実行される。ステップS19でNOと判定された場合は、要求圧力Pdemand1が上限圧力Plevelallよりも小さいことが前提となっている。従って、ステップS19でNOと判定された場合は、要求圧力Pdemand2が要求圧力Pdemand1よりも大きく、要求圧力Pdemand2が支配的である。このような状態は、ステップS27でYESと判定された場合も同様である。このため、ステップS27でYESと判定された場合もステップS19でNOと判定された場合と同様にステップS38以降の処理の対象となる。
ステップS38では第1圧縮器122aまたは第2圧縮器222aが要求圧力Pdemand2を満たすために必要となる最小流量Fmin2を算出する。最小流量Fmin2は、図8に示す予め準備された最小流量算出マップに基づいて算出される。
ステップS38に引き続いて行われるステップS39では、バイパス流量Fpath2が算出される。バイパス流量Fpath2はバイパス流量Fpath1と同様に、最小流量Fmin2がカソードガス流量Fdemand1とFdemand2を合算した流量を超える量として算出される。バイパス流量Fpath2は、以下の式3によって算出される。
式3
Fpath2
=Fmin2−(Fdemand1+Fdemand2)
ステップS39に引き続いて行われるステップS40では、バイパス流量Fpath2に対応する第1バイパス弁127または第2バイパス弁227の開度Vo2が算出される。開度Vo2は、図9に示す予め準備されたバイパス弁開度算出マップに基づいて推定される。
ステップS40に引き続いて行われるステップS41からステップS47の制御内容は、基本的には、ステップS31からステップS37までの制御内容と共通している。ただし、ステップS33では第2燃料電池系統200に含まれる第2バイパス弁227の開度がVo1とされていたのに対し、ステップS43では、第2バイパス弁227の開度がVo2とされる。また、ステップS36では第1燃料電池系統100に含まれる第1バイパス弁127の開度がVo1とされていたのに対し、ステップS46では、第1バイパス弁127の開度がVo2とされている。その他のステップS41からステップS47までの制御内容は、ステップS31からステップS37までの制御内容と共通しているので、その詳細な説明は省略する。
以上のように、本実施形態の燃料電池システム1では、停止させる圧縮器を選定する際、使用頻度が高い圧縮器を選定し、使用頻度が高い圧縮器を優先的に停止させることで第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの使用頻度を近づけることができる。第1圧縮器122aと第2圧縮器222aの使用頻度を近づけ、平準化することで、第1圧縮器122aと第2圧縮器222aのメンテナンス時期や交換時期を一致させることができる。この結果、複数の圧縮器を備える燃料電池システム1のメンテナンスを効率的に行うことができるようになり、燃料電池システム1に対するメンテナンス回数を低減することができる。
(第2実施形態)
つぎに、図10を参照して、第2実施形態の燃料電池システム51について説明する。第2実施形態の燃料電池システム51は、第1実施形態の燃料電池システム1の構成に加えて、第3燃料電池系統300を備えている。第3燃料電池系統300は、第1燃料電池系統100や第2燃料電池系統200と同様の構成を有する。すなわち、第3燃料電池系統300は、第3燃料電池スタック301、第3アノードガス流路310、第3アノードガス供給流路311、第3水素タンク312、第3レギュレータ313、第3アノードオフガス流路314を備える。また、第3燃料電池系統300は、第3カソードガス流路320、第3カソードガス供給流路321、第3圧縮器322a、第3モータ322b、第3回転数計323、第3カソードオフガス流路324、第3調圧弁325を備える。また、第3燃料電池系統300は、第3バイパス流路326、第3バイパス弁327及び第3圧力計328を備える。さらに、第3燃料電池系統300は、第3冷却水流路330、第3冷却水供給流路331、第3冷却水チラー332、第3冷却水排水流路333を備える。また、これに伴って、ECU2内に第3圧縮器制御部52が設けられている。これらの構成要素は、第1燃料電池系統100、第2燃料電池系統200において対応する構成要素と共通するので、その詳細な説明は省略する。
燃料電池システム51は、燃料電池システム1と同様に連通流路10を備える。但し、燃料電池システム51の連通流路10は、第1燃料電池系統100の第1カソードガス供給流路121、第2燃料電池系統200の第2カソードガス供給流路221、第3燃料電池系統300の第3カソードガス供給流路321を接続している。連通流路10には、第1カソードガス供給流路121と第2カソードガス供給流路221との間に切替弁11が設けられ、第2カソードガス供給流路221と第3カソードガス供給流路321との間に切替弁53が設けられている。切替弁53は、切替弁11と同様にカソードガス流路制御部6に電気的に接続されている。
このように、三つの燃料電池系統を備えた場合であっても、実施形態1と同様の制御を行うことができる。すなわち、各燃料電池系統において、燃料電池スタックに要求される要求圧力が、各圧縮器に要求されるカソードガス流量に応じた上限圧力よりも高いか否かを判定する。そして、いずれかの燃料電池系統において要求圧力が上限圧力よりも高い状態であるとき、複数の圧縮器のいずれかを停止させる。また、これとともに、切替弁11,53を開弁して第1カソードガス供給流路121、第2カソードガス供給流路221及び第3カソードガス供給流路321を連通させる。
停止させる圧縮器を選定するときは、圧縮器毎の使用履歴に基づき、総回転数が多い圧縮器を優先的に停止させる。これにより、第1圧縮器122a、第2圧縮器222a及び第3圧縮器322aの使用頻度を近づけることができる。第1圧縮器122a、第2圧縮器222a及び第3圧縮器322aの使用頻度を近づけ、平準化することで、第1圧縮器122a、第2圧縮器222a及び第3圧縮器322aのメンテナンス時期や交換時期を一致させることができる。この結果、燃料電池システム51に対するメンテナンス回数を低減することができる。
このように、第2実施形態であっても、第1実施形態と同様に、圧縮器のメンテナンス時期を合わせ、メンテナンス回数を低減することができる。
第2実施形態では、三つの燃料電池系統を備えた例について説明したが、燃料電池系統の数は、これらに限定されず、四つ以上であってもよい。
上記実施形態は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。