JP2020085030A - ショックアブソーバ - Google Patents

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Abstract

【課題】緩衝機能および回生効率、力行機能に優れたショックアブソーバを得る。【解決手段】流体を収容するシリンダ1aと、シリンダ1aの内部を第1流体室R1と第2流体室R2とに仕切りつつシリンダ1aに対して往復移動するピストン1bと、第1流体室R1に連通する第1ポートP1および第2流体室R2に連通する第2ポートP2を有し、第1ポートP1と第2ポートP2との間を流通する流体の流通量を変更する流量変更部を備えたポンプ2と、ポンプ2と連動回転する電気ロータおよび電気ロータとの間で磁界を形成するステータと、を備えるショックアブソーバS。【選択図】図6

Description

本発明は、流体を利用し、緩衝効果が可変でありエネルギー回生機能および伸縮動作機能を有するショックアブソーバに関する。
従来、このようなショックアブソーバとしては例えば以下の特許文献1(〔0007〕〜〔0012〕段落など参照)に記載されたものがある。
特許文献1に記載されたショックアブソーバは、互いに相対移動する本体ハウジングとピストンハウジングとを備えている。本体ハウジングには本体ハウジングと相対回転するねじ部材が設けられ、ピストンハウジングにはねじ部材に螺合するナット部材が設けられている。ピストンハウジングが上下することで一体に設けられたナット部材が上下し、ねじ部材が従動回転する。ねじ部材には、CVT機構が連結されており、ねじ部材の回転速度がベルト部材を介して適宜変更されつつモータ部に伝達される。
このように、特許文献1の技術は、ピストンハウジングの直線動作を回転動作に変換してモータ部に伝達し、その際に回転速度を適宜変更することで、ピストンハウジングの動作負荷を変更し、緩衝効果や回生効率を制御しようというものである。
特開2009−214836号公報
ただし、特許文献1のショックアブソーバでは、動力伝達機構としてねじ部材を用いるため、長期の使用に際しては、ねじ部材が摩耗し、部材間のガタつきが生じる。摩耗粉が生じる結果、ピストンハウジングの動作について円滑性が損なわれ易いという不都合も生じる。
また、CVT機構を用いる結果、回転伝達の変速機構などが大きくなり、各種装置への搭載性が損なわれる。さらに、回転速度を変更するには、伝達ベルトに係合するプーリーの少なくとも一つの形状を変更制御する必要があって装置が複雑になる。その他、装置の重量が嵩むうえ、コスト増大の懸念も生じる。
これらの結果、ショックアブソーバの緩衝機能の応答性が低下するばかりでなく緩衝機能の安定維持が困難となる。ショックアブソーバの伸縮がモータ部に伝達される際に伝達ロスが生じ、エネルギーの回生効率も低下する。このようなエネルギーの消耗は、モータ部を駆動してねじ部材を回転させ、ピストンハウジングの伸縮状態を制御する力行制御についても生じるから、サスペンションの車高調節等を行う際にも応答性が悪化する。
このように、これまでのショックアブソーバにあっては種々の改善すべき点が残存しており、従来から緩衝機能および回生効率、力行機能に優れたショックアブソーバが求められている。
(特徴構成)
本発明に係るショックアブソーバの特徴構成は、
流体を収容するシリンダと、
前記シリンダの内部を第1流体室と第2流体室とに仕切りつつ前記シリンダに対して往復移動するピストンと、
前記第1流体室に連通する第1ポート、および、前記第2流体室に連通する第2ポートを有し、前記第1ポートと前記第2ポートとの間を流通する前記流体の流通量を前記第1流体室および前記第2流体室の流体の圧力を用いて変更する流量変更部を備えたポンプと、
前記ポンプと連動回転する電気ロータおよび前記電気ロータとの間で磁界を形成するステータと、を備えた点にある。
(効果)
本構成のショックアブソーバが、例えば車両の車輪に設けられ、走行中に第1流体室が圧縮された場合、第1流体室の流体はポンプの第1ポートから第2ポートに流通し、ポンプを駆動させる。このようにショックアブソーバが保持している流体がそのままポンプの駆動に利用されるから、ショックアブソーバとポンプの間には流体の流路だけを設ければよく、装置の構成を極めてコンパクトに構成することができる。
また、流体駆動のポンプを用いているため、ねじ部材などを用いた伝達機構で生じ易いバックラッシュなどの心配がなく、円滑で応答性の高い緩衝効果を発揮することができる。
さらに、本構成であれば、第1流体室および第2流体室の流体の圧力を用いて流量変更部を動作させるから、電気的な駆動部を別途用意する必要がなく、装置の構造を簡略化することができる。
(特徴構成)
本発明に係るショックアブソーバでは、前記第1流体室および前記第2流体室と接続され、内部に備えた弁体によって、前記第1流体室および前記第2流体室のうち流体圧の高い側が切替連通される高圧ポート、および、前記流体圧の低い側が切替連通される低圧ポートを有する第1バルブを備え、
前記ポンプが、複数のベーンを保持する流体ロータと、前記ベーンが当接するリング部材とを有し、
前記流量変更部が、前記流通量が増大するよう前記低圧ポートの前記流体圧を前記リング部材に作用させる第1圧力室、および、前記流通量が減少するよう前記高圧ポートの前記流体圧を前記リング部材に作用させる第2圧力室を有し、
前記第1圧力室による前記流体圧の作用方向に沿って前記リング部材を付勢する付勢部により、前記リング部材が前記流体ロータの回転軸芯に対して直角方向に往復移動可能に形成されていると好都合である。
(効果)
本構成のポンプはベーンポンプであり、流体ロータの回転軸芯に対してリング部材を移動させることで、ポンプの流量を変更することができる。例えば、第1流体室が圧縮され、第1流体室の圧力が増大する場合、流体は第1ポートからベーンポンプの内部に流入し第2ポートに流通する。このとき、第1流体室の高圧流体が第2圧力室に流入してリング部材を押圧する。
リング部材は付勢部によって流体ロータの回転軸芯に対して所定の方向に常時付勢されている。この付勢方向は、ベーンポンプの流通量が増える状態、即ち、流体ロータの回転軸芯に対してリング部材の中心のオフセット量が大きくなる方向である。
この状態で第1流体室の流体が第2圧力室に流入する結果、上記偏心量が減少し、ベーンポンプを流通する流体の量が少なくなる。つまり、ピストンの動きに抵抗が生じ、緩衝効果が発揮される。
このようなベーンポンプは小さなもので良く、装置全体がコンパクトになり、各種装置に対する搭載性が向上する。
さらに、流体ロータと電気ロータとを連動回転させる構成は極めて簡単であるから、装置が増大化することがなく、装置の製造コストを抑えることができる。
(特徴構成)
本発明に係るショックアブソーバにおいては、前記高圧ポートおよび前記低圧ポートと、前記第2圧力室および前記第1圧力室と、を連通する流路の断面積および連通先を変更制御する第2バルブが設けられていると好都合である。
(効果)
本構成の第2バルブを設けておくことで、ショックアブソーバの作動とは独立して第1圧力室および第2圧力室の圧力を調節することができる。つまり、ショックアブソーバの作動に際して、ベーンポンプを流通する流体量を調節することができる。これは、回生運転に際して流体ロータの回転数を任意に調節できることであり、力行運転に際して流体の流通量を任意に調節できることである。よって、回生効率やショックアブソーバの伸長状態を任意に設定することができる。
(特徴構成)
本発明に係るショックアブソーバにおいては、前記流体の圧力を調節する圧力調節部を備えることができる。
(効果)
ショックアブソーバがピストンおよびシリンダを備える場合、通常、ピストンからはロッドが延設される。このため、ピストンのうち第1流体室に面する部位の面積と、第2流体室に面する部位の面積とは異なる。つまり、ピストンを挟んで反対方向に作用する流体圧には差が生じる。ただし、流体圧の少ない側には例えばショックアブソーバを装着した車両等の重量が加わることで、ピストンに作用する双方の圧力が等しくなり、ピストンの位置が固定される。
そこで、本構成の如く圧力調節部を設けることで、ショックアブソーバに収容された流体全体の圧力を変更し、ピストンを挟んで対向する流体圧どうしの差を変更する。これにより、ピストンの位置が変更され、つまりは車両の初期車高などを適宜変更することができる。
第1実施形態に係るショックアブソーバの構成と回生動作を示す説明図 第1実施形態に係るショックアブソーバの構成を示す説明図 第1実施形態に係るショックアブソーバの構成と回生動作を示す説明図 第1実施形態に係るショックアブソーバの力行動作を示す説明図 第1実施形態に係るショックアブソーバの力行動作を示す説明図 第2実施形態に係るショックアブソーバの構成と回生動作を示す説明図 第3実施形態に係るショックアブソーバの構成と回生動作を示す説明図 第3実施形態に係る第2バルブの動作態様を示す説明図 第4実施形態に係るショックアブソーバの動作態様を示す説明図 第5実施形態に係るショックアブソーバの構成を示す説明図
〔第1実施形態〕
図1乃至図5に、第1実施形態に係るショックアブソーバSを示す。本発明に係るショックアブソーバSは、例えば、車両のサスペンションに利用される。当該ショックアブソーバSは、流体である作動油を内部に収容するシリンダ1aと、このシリンダ1aの内部を第1流体室R1と第2流体室R2とに仕切りつつ往復移動するピストン1bとを有する。シリンダ1aとピストン1bでアブソーバ本体1が構成される。シリンダ1aには作動油の流量を変更することができるポンプ2が併設され、さらに、ポンプ2には、ポンプ2を構成する動作部材と連動する回転電気子3が設けられる。これらにより、ピストン1bの動作速度が調節され、あるいは、ピストン1bを積極的に動作させて車高の調節などが行われる。
ここではポンプ2の一例としてベーンポンプ21を用いる。車両の走行時にピストン1bが往復移動することで、第1流体室R1と第2流体室R2との間で作動油の出入りが生じる。作動油はベーンポンプ21を流通しており、ベーンポンプ21の流通抵抗を変更することで、ピストン1bの動きが緩和される。
また、回転電気子3は、ベーンポンプ21を発電用の流体圧モータとして、或いは、流体圧を発生させる流体圧ポンプとして機能させるために作用する。流体圧モータとして機能する際には、ベーンポンプ21の回転速度を変更することで回生効率が変更される。一方、流体圧ポンプとして機能する際には、ベーンポンプ21を介してピストン1bの位置が変更され、車高調整が可能となる。
(アブソーバ本体)
図1に示すように、シリンダ1aの内部に、ロッド1cを有するピストン1bが内挿されている。ピストン1bは、シリンダ1aの内部を第1流体室R1と第2流体室R2とに仕切っている。シリンダ1aの壁部には、第1流体室R1に連通するシリンダ第1ポート1fと、第2流体室R2に連通するシリンダ第2ポート1gと、が形成されている。
ピストン1bには第1流体室R1と第2流体室R2とを連通する一対の一方向弁1dが設けられている。後述するベーンポンプ21が仮に故障し、ベーンポンプ21を介して第1流体室R1と第2流体室R2との間で作動油の流通が不可能になったとき、これら一方向弁1dが作動して、ピストン1bの往復移動を可能とする。
シリンダ1aの外部には、例えば、第1流体室R1に連通する状態に流体量調整部1hが備えられている。例えば、ピストン1bがシリンダ1aに対して出退する際には、シリンダ1aの内部におけるロッド1cの体積割合が変化し、装置全体の流路Cに存在する流体量および流体圧が変化する。このとき流体圧の変化に応じて流体が出入りできる流体量調整部1hを設けておくことで全体の流体圧が一定に維持される。
(ベーンポンプ)
図1に示すように、ベーンポンプ21は、複数のベーン2aを保持する流体ロータ2bと、ベーン2aが当接するリング部材2cとを有する。夫々のベーン2aは、流体ロータ2bの回転中心Xに対して径方向に複数設けられた溝部2dに挿入配置されている。流体ロータ2bの回転に際して、夫々のベーン2aは遠心力で振り出され、リング部材2cの内面に対して摺動する。
リング部材2cは、外側リング部材2c1と内側リング部材2c2とを有する。流体ロータ2bの回転に際しては、夫々のベーン2aは通常は遠心力で振り出され、外側リング部材2c1に摺接する。一方、内側リング部材2c2は、流体ロータ2bの回転速度が遅く夫々のベーン2aに十分な遠心力が作用しない場合や、流体ロータ2bの溝部2dに異物が侵入してベーン2aの動きに抵抗が生じた場合等に夫々のベーン2aを強制的に外側リング部材2c1の側に移動させる。
リング部材2cは、作動油によって位置変更可能であり、ベーンポンプ21を流通する作動油の流量を変更する流量変更部として機能する。外側リング部材2c1のうち互いに反対の位置には、一対のガイド突起2eが形成してある。一方のベーンポンプ21の本体には、一対のガイド溝2fが形成してあり、ガイド突起2eの夫々がこれらガイド溝2fに密着しつつ摺動可能に内挿されている。
図1に示すように、これらガイド突起2eおよびガイド溝2fは、作動油の油圧が作用する第1圧力室R3および第2圧力室R4を形成する。第1圧力室R3には、外側リング部材2c1の中心を流体ロータ2bの回転中心Xから偏心する側に押圧する付勢部2gを設けてある。この付勢部2gは、例えばコイルスプリングである。
外側リング部材2c1と夫々のベーン2aとの間には、作動油を保持して搬送する複数のポンプ室Vが形成される。ポンプ室Vは、第1流体室R1に対して第1ポートP1を介して連通する第1ポンプ室V1と、第2流体室R2に対して第2ポートP2を介して連通する第2ポンプ室V2とが形成されている。
流体ロータ2bに対する外側リング部材2c1の偏心量が大きくなるほど、流体ロータ2bの回転に伴うポンプ室Vの容積変化が大きくなり、ベーンポンプ21の流量が増大する。本実施形態では、付勢部2gによって外側リング部材2c1を常時付勢しているから、ベーンポンプ21の初期状態は流量が最大となる状態である。つまり、ピストン1bが素早く動くとき、作動油はベーンポンプ21を容易に通過するからピストン1bの減衰効果は少なくなる。また、多くの作動油が流通可能であるため、流体ロータ2bの回転数は少なくなる。よって、後述する回転電気子3の回転速度も高まらず、回生効果が小さくなる。
(第1バルブ)
ピストン1bの動きが速くなるときに減衰効果を高めようとすれば、外側リング部材2c1の偏心量を少なくしてポンプ室Vの回転に伴う容積変化を小さくする必要がある。そのために、本第1実施形態では、図1に示すように第1バルブ4を設けてある。
第1バルブ4は、第1流体室R1に接続される二つのポート4aと、第2流体室R2に接続される二つのポート4bを有し、内部に弁体4cを備えている。弁体4cは、第1流体室R1の油圧と第2流体室R2の油圧との差に応じて変位し、第1流体室R1および第2流体室R2のうち油圧の高い側を高圧ポートPHに連通させ、油圧の低い側を低圧ポートPLに連通させる。図1に示すように、高圧ポートPHおよび低圧ポートPLは各々ベーンポンプ21の第2圧力室R4および第1圧力室R3に接続される。
(減衰効果)
図1に示すように、例えばピストン1bが下方に移動し、第1流体室R1の油圧が高まったとき、第1流体室R1の作動油は、ベーンポンプ21の第1ポートP1から第1ポンプ室V1に流入し、流体ロータ2bを反時計方向に回転させつつ第2ポンプ室V2から第2ポートP2を介して排出され、第2流体室R2に流入する。一方、第1流体室R1から流出した作動油は、第1バルブ4の高圧ポートPHを介して第2圧力室R4に流入し、外側リング部材2c1を押圧して流体ロータ2bとの偏心量を減少させる。このとき第1圧力室R3の容積が減少し、第1圧力室R3の作動油が第1バルブ4の低圧ポートPLに流入し、さらに第2流体室R2に戻される。
逆に、図3に示すように、ピストン1bが上方に移動し、第2流体室R2の油圧が高まったとき、第2流体室R2の作動油は、第2ポートP2を介して第2ポンプ室V2に流入し、流体ロータ2bを時計方向に回転させつつ第1ポンプ室V1から第1ポートP1を介して排出され、第1流体室R1に流入する。一方、第2流体室R2から流出した作動油は、第1バルブ4の高圧ポートPHを介して第2圧力室R4に流入し、外側リング部材2c1を押圧して流体ロータ2bとの偏心量を減少させる。このとき第1圧力室R3の容積が減少し、第1圧力室R3の作動油が第1バルブ4の低圧ポートPLに流入し、さらに第1流体室R1に戻される。
このように、本実施形態のショックアブソーバSでは、ピストン1bの動作速度が大きいほどベーンポンプ21の流量が制限され、ピストン1bの減衰効果が高まる。ただし、ピストン1bの動作方向に応じて流体ロータ2bの回転方向が変更される。
(回生運転)
図2に示すように、流体ロータ2bの回転軸2hには回転電気子3としての電気ロータ3iが接続されている。当該接続の態様は任意である。例えば、一つの軸に流体ロータ2bと電気ロータ3iとが固定されていても良いし、歯車やベルトを介して流体ロータ2bと電気ロータ3iとが連動回転するものであっても良い。電気ロータ3iの周囲には電気ロータ3iとの間で磁界を形成するステータ3jが設けられている。これらにより、流体ロータ2bが回転することで電気ロータ3iが回転し回生電流が発生する。これを蓄電池6に電気エネルギーとして蓄える。
回生電流は、電気ロータ3iの回転速度によって変動する。本実施形態では、ピストン1bの動きが速いほど外側リング部材2c1の偏心量が少なくなり、作動油の流量が減少する結果、流体ロータ2bの回転数が高まって回生電流が大きくなる。
尚、図1における回生運転と図3における回生運転とは外側リング部材2c1の押圧方向は同じになるが、流体ロータ2bおよび電気ロータ3iの回転方向は反対になる。
(力行運転)
図4に示すように、電気ロータ3iおよびステータ3jは駆動モータとして機能させることもできる。つまり、ベーンポンプ21を積極的に回転させることで作動油を流通させピストン1bを動作させる。例えば、電気ロータ3iに駆動電流を印加して電気ロータ3iおよび流体ロータ2bを時計方向に回転させる。これにより第2流体室R2から第2ポンプ室V2に作動油が吸引され、第1ポンプ室V1を介して第1流体室R1に流入する。この結果、ピストン1bが上方に押し上げられ、車両の車高が上げられる。力行運転に際しては、例えば、ピストン1bとシリンダ1aとの間にストロークセンサ1eを備えておき、ピストン1bの位置変化を制御部7でモニターしつつ、電気ロータ3iの回転速度を変化させる。
電気ロータ3iの回転速度を調節することで車高調節の応答速度を変えることができる。例えば、図4は電気ロータ3iおよび流体ロータ2bの回転速度が低い場合を示し、このときベーンポンプ21を流通する作動油の量は少ないから、第2ポンプ室V2の圧力と第1ポンプ室V1の圧力との差は少ない。ただし、吐出側となる第1ポンプ室V1の圧力は吸引側の第2ポンプ室V2の圧力よりも高いから、第1ポンプ室V1から吐出された作動油の一部が第1バルブ4に流入し、高圧ポートPHから第2圧力室R4に作動油を流入させる。
これにより外側リング部材2c1は偏心量を減らす側に押されるが、当初の流体ロータ2bの回転数が低いため外側リング部材2c1の偏心量は減少し難い。この結果、流体ロータ2bの偏心量は多く維持され、ベーンポンプ21を流通する作動油の流量が大きく設定される。つまり、ピストン1bを素早く動かすことができる高応答特性を発揮することができる。尚、この場合、流体ロータ2bの回転速度はそれほど高くはなく、ピストン1bを動作させる推力は小さいと言える。
一方、電気ロータ3iおよび流体ロータ2bの回転速度を高く設定すると、図5に示すように、ベーンポンプ21を流通する作動油の量が増え、第2ポンプ室V2の圧力と第1ポンプ室V1の圧力との差が大きくなる。よって第1ポンプ室V1から吐出された作動油の一部は、第1バルブ4を介して第2圧力室R4に勢いよく流入し、外側リング部材2c1の偏心量をより少なくする。この結果、ベーンポンプ21を流通する作動油の流量が絞られ、ピストン1bを緩やかに動かす、所謂、小応答特性が発揮される。尚、流体ロータ2bの回転速度は高いため、作動油は確実にベーンポンプ21を流通することとなり、ピストン1bを動作させる推力は大きくなる。
本実施形態のように、アブソーバ本体1とベーンポンプ21とが作動油の流路Cで連結され、アブソーバ本体1が保持している作動油がそのままベーンポンプ21の回転駆動に利用されるのであれば、アブソーバ本体1とポンプ2との間には作動油の流路Cだけを設ければよく、装置構成を極めてコンパクトにすることができる。
また、ベーンポンプ21は流体駆動するため、ねじ部材などを用いた伝達機構で生じ易いバックラッシュなどの心配がなく、円滑で応答性の高い緩衝効果を発揮することができる。
さらに、本構成であれば、第1流体室R1および第2流体室R2の作動油の圧力を用いて外側リング部材2c1を動作させるから、電気的な駆動部を別途用意する必要がなく、装置の構造を簡略化することができる。
このようなベーンポンプ21は小さなもので良く、装置全体がコンパクトになり、各種装置に対する搭載性が向上する。その他、流体ロータ2bと電気ロータ3iとを連動回転させる構成は極めて簡単であるから、装置が増大化することがなく、装置の製造コストを抑えることができる。
〔第2実施形態〕
図6は、上記第1実施形態のうち、第1バルブ4を省略した例である。ここでは、シリンダ第1ポート1fからの流体を第1ポートP1および第2圧力室R4に接続し、シリンダ第2ポート1gからの流体を第2ポートP2および第1圧力室R3に接続してある。
図6は、ピストン1bが相対的に下がっている状態であり、例えば、車両の車輪が突き上げられて第1流体室R1の流体が押し出される状態を示す。このような状態では、車輪の突き上げを防止する必要があり、ベーンポンプ21を流通する流体量を減少させる必要がある。
第1流体室R1から流出した流体は第2圧力室R4に流入し、リング部材2cを押圧して、流体ロータ2bの回転中心Xに近づける。この結果、第1ポンプ室V1から第2ポンプ室V2に流通する流体量が減少し、ピストン1bの動作が緩衝される。また、このとき流体ロータ2bは勢いよく回転するから良好な回生運転が行える。
一方、ピストン1bが相対的に上昇する場合、即ち、車輪が急激に下降する場合には、ピストン1bの動作を緩衝しない方が、車輪が地面との設置状態を維持できて好ましい。その場合には、シリンダ第2ポート1gから流出した流体が第1圧力室R3に流入し、リング部材2cを押圧して、流体ロータ2bとの偏心量を大きく確保する。この結果、第2ポンプ室V2から第1ポンプ室V1への流体の流通量が多く維持され、ピストン1bの緩衝効果が小さくなる。
尚、車高を上げるべく第1流体室R1に流体を供給する場合には、回転電気子3を通電駆動するとよい。図6の例では、流体ロータ2bを時計方向に回転させることになる。その場合、高圧の流体が第2圧力室R4に流入してリング部材2cの偏心量が少なくなる。つまり、第2ポンプ室V2から第1ポンプ室V1への流体の流通量が減少して、車高調節の応答性は低下するが、持ち上げトルクの大きな力行運転を行うことができる。
〔第3実施形態〕
図7および図8に示すように、ベーンポンプ21と第1バルブ4との間に電気的駆動によって作動油の流通経路および流通量を変更できる第2バルブ5を設けることもできる。第2バルブ5としては例えばOCV(Oil Control Valve)を用いる。
第2バルブ5の内部には中央に貫通流路5eを有するプランジャ5aが備えられ、例えば、アブソーバ本体1のピストン1bとシリンダ1aとの間に設けたストロークセンサ1eと、このストロークセンサ1eから得た信号に基いて制御部7が第2バルブ5に駆動信号を出し、プランジャ5aの位置を制御するように構成する。
第2バルブ5では、高圧ポートPHからの作動油が、第2バルブ5に設けた二つの受入口5bの一方に接続され、低圧ポートPLからの作動油が、受入口5bの他方に接続される。また、第2バルブ5には二つの吐出口5cが形成されており、内部のプランジャ5aの位置を切り換えて二つの受入口5bと二つの吐出口5cとの連通状態を切り換える。プランジャ5aの位置は制御部7からの駆動信号によりソレノイド部5dを操作して行う。
図7および図8(a)は、例えば、サスペンションを硬めに設定したい場合やオフロードを走行する場の例である。この場合、外側リング部材2c1の偏心量が小さく維持されるように、つまり、作動油が第2圧力室R4に多く保持されるように第2バルブ5を駆動し、プランジャ5aを下方に移動させ、作動油が第1バルブ4の高圧ポートPHから第2圧力室R4に至るようにする。これにより、ピストン1bの動作が減衰され、車高の変化が抑えられて、車体の下部が地面に接触するような事態が生じるのを抑制する。
一方、図8(b)は、車両が高速道路を走行する場合などの例である。車輪の上下動によってピストン1bの位置が変化し、第1ポンプ室V1と第2ポンプ室V2との圧力差が生じる場合に、第1ポンプ室V1と第2ポンプ室V2との作動油の流通量を多く確保する。つまり、プランジャ5aを上昇させて、高圧ポートPHを第1圧力室R3に接続し、低圧ポートPLを第2圧力室R4に接続する。これにより、外側リング部材2c1のオフセット量が大きい状態に維持され、第1ポンプ室V1から第2ポンプ室V2に流通する作動油の量が多く維持される。ピストン1bの移動はあまり減衰されず、高速走行する車両の車輪は上下するものの、車体には上下動が現れず安定した走行状態を得ることができる。
図8(c)のように、第1バルブ4と第1圧力室R3および第1バルブ4と第2圧力室R4との作動油の流通を遮断すると、外側リング部材2c1の偏心量が固定される。これにより、例えばサスペンションの硬さ設定を一定にすることができる。
電気ロータ3iを駆動させて車高調節を行う場合は、第2バルブ5の状態は、例えば、図8(a)乃至図8(c)の何れの状態でもよい。電気ロータ3iを駆動させることで作動油が流動し、第1流体室R1あるいは第2流体室R2に作動油が流入してピストン1bの高さが変化する。このときストロークセンサ1eでピストン1bの位置変化を測定しておけば、仮に、電気ロータ3iを逆回転させた場合でも素早く反転させることができる。
また、車高を素早く上げる力行運転を行う場合には、第2バルブ5を制御して図8(b)の状態とし、作動油が第1圧力室R3に多く流入する状態にして外側リング部材2c1の偏心量を大きくする。これにより、作動油はベーンポンプ21の第2ポンプ室V2から第1ポンプ室V1により多く流通し、ピストン1bを押し上げて車高を素早く上げることができる。
〔第4実施形態〕
図9には、本発明の第4実施形態に係るショックアブソーバSを示す。ここでは、作動油の流路Cの何れかの場所に、作動油の圧力を調節する圧力調節部8を設ける。圧力調節部8としては、例えば、作動油を保持したアキュムレータ81を用いる。アキュムレータ81の内部には、作動油を保持する油室8aと、高圧気体を保持する気体室8bと、が設けられている。尚、この気体室8bは、作動油に圧力を加えられるものであれば、バネを備えたもの等であっても良い。
油室8aは、第3バルブ8cを介して、例えば、第1流体室R1と第1バルブ4との間の流路Cに接続する。第3バルブ8cとしては、例えば、流路Cの開閉を通電によってON-OFF制御できるOSV(Oil Switching Valve)を用いる。
例えば、アブソーバ本体1のピストン1bを上昇させて車高を上げたい場合に、第3バルブ8cを開き操作し、油室8aの作動油を流路Cに放出する。これにより、流路Cの全体の圧力が上昇する。一方、ピストン1bの寸法に着目すると、ピストン1bの両面のうち、ロッド1cが設けられた側の面積が、ロッド1cの断面積の分だけ小さい。よって、ピストン1bの両面のうち、ロッド1cがない側の面に作用する圧力が大きくなりピストン1bが上昇する。これにより車高が上がる。
尚、所定の高さだけ車高が上がると、例えば、アブソーバ本体1に併設されているコイルバネ(図外)が伸び、コイルバネによる支持荷重が小さくなる。よって、ピストン1bに加えられた上向き荷重と、コイルバネの支持荷重の減少分、車両重量などがバランスして車高は所定高さで一定となる。
図9では、シリンダ1aの外部に流体量調整部1hを設けてあり、通常のピストン1bの上下動に際しては、流体量調整部1hが装置全体の流体圧を維持する。ただし、アキュムレータ81を備えた本実施形態では、流体量調整部1hを廃止し、通常時の流体圧の維持をアキュムレータ81に兼務させてもよい。
〔第5実施形態〕
上記各実施形態では、ポンプ2としてベーンポンプ21を用いたが、その他に、ポンプ容量を変更できるものであれば何れのタイプのポンプも利用可能である。例えば、図10に示すように、複数のプランジャ22aを傾斜カム22eに沿って回転させるアキシャルポンプ22を利用し、ピストン1bの動きに連動して傾斜カム22eの角度を変更するものでも良い。
このアキシャルポンプ22は、四つのプランジャ22aがホルダ22bに保持されており、夫々のプランジャ22aはバネ部材(図示省略)によって、ケース22dの内部に設けられた傾斜カム22eに押し付けられる。ホルダ22bの底部には、各プランジャ22aによって形成される流体室に通じる連通口22fが設けてある。
ケース22dの底部には、連通口22fの二つずつに通じる円弧状の第1開口部22gと第2開口部22hとが設けられている。第1開口部22gはシリンダ第1ポート1fと連通しており、第2開口部22hはシリンダ第2ポート1gと連通している。よって、流体が何れのポートから吐出されるかによって、第1開口部22gおよび第2開口部22hは、アキシャルポンプ22の吸引口あるいは吐出口となる。
さらに、ケース22dの底部には、ホルダ22bと連動回転する回転電気子3が設けられており、アキシャルポンプ22を発電用の流体圧モータとして、或いは、流体圧を発生させる流体圧ポンプとして機能させるよう作用する。
傾斜カム22eは、ケース22dに揺動可能に支持されており、一部に設けたアーム22iにより傾斜角度が変更される。アーム22iは、カム用シリンダ22kの内部を二つの空間に仕切りつつ往復移動するカム用ピストン22jに連結されている。カム用シリンダ22kの内部の空間の一方にはバネ部材22mが設けてあり、傾斜カム22eの傾斜角度が大きくなる側にカム用ピストン22jを常時付勢する。本実施形態では、これら傾斜カム22eと、カム用ピストン22j、カム用シリンダ22kが、アキシャルポンプ22を流通する流体の流量を変更する流量変更部として機能する。
シリンダ1aとカム用シリンダ22kとの間には、高圧の流体を常に高圧ポートPHから吐出させ、低圧の流体を常に低圧ポートPLから流入させる第1バルブ4が設けてある。シリンダ第1ポート1fが、第1バルブ4の一組のポート4aに接続され、シリンダ第2ポート1gが、第1バルブ4の他の一組のポート4bに接続されている。高圧ポートPHは、カム用シリンダ22kの空間のうちバネ部材22mが設けられていない側に接続され、低圧ポートPLは、バネ部材22mが設けられた側に接続されている。また、シリンダ第1ポート1fはアキシャルポンプ22の第1開口部22gに接続され、シリンダ第2ポート1gが第2開口部22hに接続されている。
図10は、ピストン1bが押し下げられ、第1流体室R1の流体が押し出されている状態である。図10の状態では、流体が第1開口部22gから流入し、プランジャ22aが押し上げられるため、ホルダ22bは矢印の方向に右回転する。傾斜カム22eの内側にはベアリングを介して回転カム22nが設けられており、プランジャ22aの頂部に当接した状態で回転可能である。これにより、プランジャ22aの出退動作が円滑となる。
傾斜カム22eは、初期状態では最大傾斜角度を有し、ホルダ22bの回転に伴うプランジャ22aの出退量が最大となる。つまり、アキシャルポンプ22の流体流通量が最大となって、ピストン1bの作動を緩衝する効果は小さい。例えば車両が滑らかな路面を走行している場合には、ピストン1bは比較的自由に上下動することとなり、車両の微小上下動が軽減される。
ピストン1bが急激に下げられた場合には、第1バルブ4の高圧ポートPHからカム用シリンダ22kに流入した流体によってカム用ピストン22jが押し下げられ、傾斜カム22eの傾斜角度が小さくなる。この結果、プランジャ22aの出退量が少なくなり、アキシャルポンプ22の流体流通量が少なくなってピストン1bの緩衝効果が高まる。このとき、所定量の流体を流通させるためにホルダ22bの回転速度が高まり、これに回転電気子3が連動して回生効率が高まる。
逆に、ピストン1bが急上昇し、シリンダ第2ポート1gから高圧の流体が吐出される場合にはホルダ22bは逆回転する。その場合にも、ピストン1bの上昇速度が大きいほど傾斜カム22eの傾斜角度が小さくなり、ピストン1bの緩衝効果が高まる。例えば、車両が比較的大きな凹凸のある路面を走行している場合には、ピストン1bの動作が緩衝を受け、車両の過度な上下動が軽減される。
このように、回生運転では、ピストン1bが何れの方向に動作する場合でもピストン1bの動作速度が速いほど緩衝効果が高まり、多くの回生電流を発生させることができる。
一方、力行運転に際しては、回転電気子3に通電することでホルダ22bを任意の方向に駆動回転させ、例えば第1開口部22gから流体を吐出させることで、ピストン1bを上昇させることができる。
尚、当該アキシャルポンプ22は、図7に示したような第2バルブ5を用いる実施形態、および、図9に示したような圧力調節部8を用いる実施形態にも適用可能である。
本発明に係るショックアブソーバは、作動油の流量を調節してピストンの動きを減衰させると共に回生電流を生じさせ、あるいは、ピストンを作動させるものであって、例えば、車両のショックアブソーバや車高調節機構などに広く適用することができる。
1a シリンダ
1b ピストン
2 ポンプ
21 ベーンポンプ
2a ベーン
2b 流体ロータ
2c1 外側リング部材
2g 付勢部
3i 電気ロータ
3j ステータ
4 第1バルブ
4c 弁体
5 第2バルブ
8 圧力調節部
C 流路
PH 高圧ポート
PL 低圧ポート
R1 第1流体室
R2 第2流体室
R3 第1圧力室
R4 第2圧力室
S ショックアブソーバ
V1 第1ポンプ室
V2 第2ポンプ室

Claims (4)

  1. 流体を収容するシリンダと、
    前記シリンダの内部を第1流体室と第2流体室とに仕切りつつ前記シリンダに対して往復移動するピストンと、
    前記第1流体室に連通する第1ポート、および、前記第2流体室に連通する第2ポートを有し、前記第1ポートと前記第2ポートとの間を流通する前記流体の流通量を変更する流量変更部を備えたポンプと、
    前記ポンプと連動回転する電気ロータおよび前記電気ロータとの間で磁界を形成するステータと、を備えるショックアブソーバ。
  2. 前記第1流体室および前記第2流体室と接続され、内部に備えた弁体によって、前記第1流体室および前記第2流体室のうち流体圧の高い側が切替連通される高圧ポート、および、前記流体圧の低い側が切替連通される低圧ポートを有する第1バルブを備え、
    前記ポンプが、複数のベーンを保持する流体ロータと、前記ベーンが当接するリング部材とを有し、
    前記流量変更部が、前記流通量が増大するよう前記低圧ポートの前記流体圧を前記リング部材に作用させる第1圧力室、および、前記流通量が減少するよう前記高圧ポートの前記流体圧を前記リング部材に作用させる第2圧力室を有し、
    前記第1圧力室による前記流体圧の作用方向に沿って前記リング部材を付勢する付勢部により、前記リング部材が前記流体ロータの回転軸芯に対して直角方向に往復移動可能に形成されている請求項1に記載のショックアブソーバ。
  3. 前記高圧ポートおよび前記低圧ポートと、前記第2圧力室および前記第1圧力室と、を連通する流路の断面積および連通先を変更制御する第2バルブを備えている請求項2に記載のショックアブソーバ。
  4. 前記流体の圧力を調節する圧力調節部を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載のショックアブソーバ。
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