JP2020084427A - 河川等の区域閉鎖式浄化工法 - Google Patents

河川等の区域閉鎖式浄化工法 Download PDF

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Abstract

【課題】河川や湖沼、池等の底面に堆積固着したヘドロを、広い水域に汚染を生じたり、砂や土壌を喪失することなしに、高能率で安全且つ安価に浚渫する。【解決手段】ヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上面側及び下面側を開口とした樹脂シート製筒体と筒体の上端縁に固定した浮子と筒体の下端縁に固定した重錘とから成る区画用筒体を沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ1、次に、区画用筒体内の水に生分解性の磁性凝集剤を攪拌混合して成る混合水をポンプ加圧して底面へ向けて噴射し、噴射水によりヘドロ層を掘削分離して水中に分散させる2aと共に、分散されたヘドロを含有する水と噴射された混合水とを攪拌混合させ、混合水内の生分解性の磁性凝集剤の攪拌混合2bにより、ヘドロを凝集させた3あと、磁性搬送装置により凝集されたヘドロ等の凝集物を区画用筒体内から外部へ搬出し4、その後、区画用筒体を隣接する区域上へ移動させる5。【選択図】図1

Description

本発明は、河川、湖沼、池等の浄化工法の改良に関するものであり、河川等の底部に堆積したヘドロ等の浚渫時に生ずる河床等を形成する土砂層の喪失や悪臭の発生、水質の汚染等の環境破壊を有効に防止しつつ、高能率で経済的に、ヘドロの排出除去(浚渫)と水質の浄化を同時に出来るようにした河川等の区域閉鎖式浄化工法に関するものである。
汚染された河川や湖沼等の環境の回復には、水内の汚濁物質を除去して水質そのものの改善を図ると共に、川底等に堆積したヘドロを水内への再拡散(再浮上)を生ずることなしに排出除去することとが、夫々必要となる。
而して、本願発明者は、永年に亘って河川等の浄化処理技術の開発及びその施工に携わっており、これ迄にも、各種の河川等の浄化処理工法(例えば特開2005−205281号、特開2015―203210号等)や浄化処理剤(特開2004−321977号、WO2008/105521号等)を開発し、これを公開している。
上記特開2005−205281号は、図6に示すように、小型船舶Aに搭載した薬剤混合・噴射装置C等から河川水内へ凝集用薬剤Bを噴出し、船舶Aのスクリュー等により凝集用薬剤Bを水内へ撹拌混合すると共に、凝集剤Bの撹拌により汚濁物質を凝集し、水内に浮遊した汚濁物質の凝集物(フロッグ)を、船舶Aにより牽引するメッシュ状薄板体Dから成る回収具Dの外表面に付着させ、これにより水中に浮遊する凝集物(フロッグ)を回収するものであり、水内に浮遊する汚濁物質を比較的効率よく除去することが出来る。
しかし、当該工法では、河川の底部等に堆積、沈着したヘドロ等を除去することが不可能であり、当該工法により河川の底部に堆積固着したヘドロ等を回収除去するためには、先ず、堆積したヘドロ等を掻き混ぜして水中に再浮遊させ、次に、これに凝集用薬剤Bを撹拌混合して浮遊したヘドロを凝集物(フロッグ)とし、その後、この凝集物(フロッグ)を回収具Dにより回収することとなり、作業能率や経済性、下流域に於ける環境汚染の発生等の点で多くの問題が残されている。
そのため、現実には、河川床(河川底部)に堆積固着したヘドロの除去は、従前から掘削機や掬取用バケット、ホッパ、吸引ポンプ等を備えた浚渫船(台船)を用いて施工されており、所謂掘削掬取式や掘削吸引式の浚渫工法が一般に広く用いられている。
ところが、当該掘削掬取式や掘削吸引式の浚渫装置を用いるヘドロ浚渫には、(1)ヘドロの掘削掬取や掘削吸引時に水中へ巻き上がるヘドロにより、周辺水域が広範囲に亘って著しく汚染されること、(2)河床を形成する土壌や砂等も一緒に浚渫されるため、河川の自然浄化作用が喪失されること、(3)土壌や砂の浚渫により、河川床の貧酸素化が生じ、水中生物への悪影響が甚大になること、等の基本的な問題が存在する。
一方、上記特開2015―203210号は、図8に示すように、掘削ケーシング設置工程21、ヘドロ掘削工程22、凝集剤混入撹拌工程23、ヘドロ凝集工程24、ヘドロ凝集物搬出工程25、掘削ケーシング移動工程26等から構成されている。
具体的には、図7に示すように、先ず、ヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上方開口が上蓋27により開閉されると共に下方を開口とした掘削ケーシング28を沈めてその下端部をヘドロ層内へ貫入させ、次に、掘削ケーシング28内のヘドロ層を外部からケーシング28内へ挿入した掘削機や高圧噴射水(図示省略)等を用いて機械的に掘削してこれを水中に分離分散させると共に、ケーシング28内へ生分解性の凝集用薬剤(図示省略)を混合撹拌させて上記掘削分離したヘドロを凝集させ、当該ヘドロ凝集物を掘削ケーシング28内から排出ポンプ(図示省略)により河川の外部へ搬出したあと、前記掘削ケーシング28を隣接する区域上へ移動させるものである。
尚、図7に於いて、29は補器類(ポンプ等)の格納室、30は浚渫船、31は吊上用ワイヤー、32は河川床である。
上記特開2015―203210号では、掘削ケーシング28を用いて浚渫区域を限定しているため、河川の汚染範囲をより少なくすることが出来ると共に、機械的な掘削装置に変えて圧力水噴射によるヘドロ層の掘削分離を採用することにより、ヘドロ層の浚渫時に於ける河川床32を形成する土壌や砂等の喪失が防止されることになる。
しかし、当該工法に於いては、上面を開閉自在とした大型の掘削ケーシング28を必要とするため、(1)ヘドロの浚渫作業が大掛かりとなり、浚渫費用の低減や作業効率の向上を図り難いこと、(2)浚渫作業中に於ける掘削ケーシング28の気密性の保持が容易でなく、各工程に於ける掘削ケーシング28の上面開口部の上蓋27の開閉毎に、ケーシング28内部から多量の汚濁物質が河川水内へ漏出し、これによって周辺水域が広範囲に亘って汚染されること、等の問題がある。
また、当該工法に於いては、河川水中に掘削ケーシング28を沈めて浚渫領域を限定すると共に、掘削ケーシング28の内部だけへ凝集用薬剤を混入する構成としているため、薬剤使用量を低減できると言う利点はあるものの、掘削ケーシング28の内部以外の領域の河川水には浄化処理が全く施されず、その結果、河川水そのものは全く浄化処理されないと言う問題がある。
特開2005−205281号 特開2004−321927号 WO2008−105521号 特開2015−203210号
本発明は、従前の特開2015−203210号等に開示の河川等の底面に堆積固着したヘドロの区分閉鎖式浚渫に於ける上述の如き問題、即ち、(イ)上面を開閉自在とした大型の掘削ケーシング28を必要とするため、ヘドロの浚渫作業が大掛かりとなり、浚渫費用の低減や作業効率の向上を図り難いこと、(ロ)浚渫作業中に於ける掘削ケーシング28の気密性の保持が容易でなく、掘削ケーシング28の上面開口部の上蓋27を開閉する毎に、ケーシング28の内部から多量の汚濁物質が河川水内へ漏出し、周辺水域が広範囲に亘って汚染されること、(ハ)薬剤使用量を低減できると言う利点はあるものの、掘削ケーシング28の外部領域の河川水は全く清浄化されないこと等の問題を解決し、河川証を形成する土砂層の喪失や環境汚染等を全く生じることなしに、高い作業能率でもってより経済的に、しかも、ヘドロ等の浚渫と同時に河川水等の水質浄化をも行えるようにした河川等の区域閉鎖式浄化工法を提供することを、発明の主目的とするものである。
請求項1の発明は、河川等のヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上面側及び下面側を開口とした所定の高さ及び内容積を有する樹脂シート製筒体と当該筒体の上端部に固定した浮子と前記筒体の下端縁に固定した重錘とから成る区画用筒体を沈め、当該区画用筒体の下端部をヘドロ層内へ貫入させてその下端縁に固定した重錘を河川等の底面の土砂層上に載置すると共に、区画用筒体の上端部を前記浮子により引上げしてその上面開口を水面上方に位置させ、次に、加圧水噴射装置により前記区画用筒体内の水に生分解性の磁性凝集剤を攪拌混合して成る混合水をポンプ加圧して当該加圧混合水を噴射ノズルから筒体内部の底面へ向けて噴射し、当該噴射水により前記ヘドロ層を掘削分離して水中に分散させると共に、当該分散されたヘドロを含有する水と前記噴射された混合水内の磁性凝集剤とを攪拌混合させ、その後、所定時間前記混合水の噴射を止めて、攪拌混合をした混合水内の磁性凝集剤により前記掘削分離して水中に分散されたヘドロを凝集させてヘドロ凝集物としたあと、前記区画用筒体内へ磁性搬送装置を搬入して当該磁性搬送装置により前記凝集されたヘドロ凝集物を区画用筒体内から外部へ搬出し、その後、前記区画用筒体を隣接する区域上へ移動するようにしたことを発明の基本構成とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、断面形状が四角形の樹脂シート製筒体の下端縁に、断面形状が三角形のステンレス鋼を用いて形成した四角形の重錘を固定し、当該重錘により樹脂シート製筒体から成る区画用筒体を沈めるようにしたものである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、区画用筒体の内部に圧力水供給ポンプと磁性凝集剤タンクとポンプ加圧水内へ磁性凝集剤を混入するエジェクターとエジェクターからの混合水を噴出する噴射ノズルとから成る加圧水噴射装置を設け、磁性凝集剤を混入した混合水を前記噴射ノズルから区画用筒体内のヘドロ層内へ噴出することにより、ヘドロ層の掘削分離及び水中に分散したヘドロと磁性凝集剤との撹拌混合を行うようにしたものである。
請求項4の発明は、請求項1、請求項2又は請求項2の発明に於いて、磁性凝集剤を、磁性材製の微粒体とポリマー系の凝集剤とを含有して成る磁性凝集剤とすると共に、区画用筒体内の水の内容積1mに対して5〜1000grの磁性凝集剤を撹拌混合するようにしたものである。
請求項5の発明は、請求項4の発明に於いて、磁性凝集剤を、磁性材製の微粒体に、これに結合させた珪素化合物を介してポリマー系の凝集剤を結合して成る磁性凝集剤としたものである。
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5の発明に於いて、ポリマー系の凝集剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性の凝集剤とするようにしたものである。
請求項7の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3の発明に於いて、磁性搬送装置を磁性型コンベアー装置とし、区画用筒体内のヘドロ凝集物を前記磁性型コンベアー装置により区画用筒体外へ搬出するようにしたものである。
本発明では、河川等のヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上面側及び下面側を開口とした所定の高さ及び内容積を有する樹脂シート製筒体と当該筒体の上端部に固定した浮子と前記筒体の下端縁に固定した重錘とから成る区画用筒体を沈め、当該区画用筒体の下端部をヘドロ層内へ貫入させてその下端縁に固定した重錘を河川等の底面の土砂層上に載置すると共に、区画用筒体の上端部を前記浮子により引上げしてその上面開口を水面上方に位置させ、次に、加圧水噴射装置により前記区画用筒体内の水に生分解性の磁性凝集剤を攪拌混合して成る混合水をポンプ加圧して当該加圧混合水を噴射ノズルから筒体内部の底面へ向けて噴射し、当該噴射水により前記ヘドロ層を掘削分離して水中に分散させると共に、当該分散されたヘドロを含有する水と前記噴射された混合水内の磁性凝集剤とを攪拌混合させ、その後、所定時間前記混合水の噴射を止めて、攪拌混合をした混合水内の磁性凝集剤により前記掘削分離して水中に分散されたヘドロを凝集させてヘドロ凝集物としたあと、前記区画用筒体内へ磁性搬送装置を搬入して当該磁性搬送装置により前記凝集されたヘドロ凝集物を区画用筒体内から外部へ搬出し、その後、前記区画用筒体を隣接する区域上へ移動するようにしている。
即ち、区画用筒体を、上面側及び下面側を開口とした所定の高さ寸法と内容積を有する樹脂シート製筒体と、当該筒体の上端部に固定した浮子と、前記筒体の下端縁に固定した重錘とから成る構造が極めて簡単で且つ軽量な区画用筒体としているため、区画用筒体の製作、現場への搬送及び据付け等の作業等が極めて容易となり、浄化費用の大幅な低減が可能となる。
また、区画用筒体の内部に設けた加圧水噴射装置の噴射ノズルから区画用筒体内の水と磁性凝集剤との混合水を高圧で噴射することにより、へドロ層の掘削を行う構成としているため、噴射水の圧力や噴射方向を調整することにより、河床を形成する土壌や砂から成る土砂層を掘削することなしに、その上に堆積固着したヘドロ層のみを効率よく掘削分離させることが出来る。そのため、河川等の自然浄化に必要な河床底面を形成する土砂層の喪失が殆ど無くなり、浄化処理によって生息する魚介類や水棲生物の生態系が破壊されてしまうということが皆無となる。
更に、区画用筒体内部の全域に噴射ノズルから混合水を噴射して、混合水内の磁性凝集剤を区画用筒体内部の水と攪拌混合させるようにしているため、掘削分離したヘドロ浮遊物だけでなく、区画用筒体内の河川水に含まれる様々な汚濁物質にも磁性凝集剤が撹拌混合されることになる。その結果、ヘドロだけで無しに河川水内に浮遊するその他の汚濁物質も同時に凝集物として回収されることになり、区画用筒体内の水が全て完全に浄化処理されて、河川水の浄化とヘドロの浚渫との同時施工が可能となる。
磁性凝集薬剤を使用してヘドロやその他の汚濁物質を磁性凝集物(フロッグ)とし、このヘドロ等の磁性を有する凝集物を磁性型コンベアー装置により区画用筒体外へ排出するようにしているため、ヘドロ等の凝集物の搬出を高能率で行うことができる。また、凝集剤そのものが生分解性であって無害なものであるため、極めて安全性の高い河川水等の浄化が可能となると共に、排出したヘドロ凝集物を農業用資材や建設用資材として、安全に再利用することが出来る。
本発明による河川等の区域閉鎖式浄化工法の工程説明図である。 区画用筒体の配置状況の一例を示す平面概要図である。 区画用筒体の一例を示すものであり、(a)は斜面図、(b)は図3のイーイ部断面概要図、(c)はローロぶ断面概要図である。 圧力水噴射装置の構成を示す説明図である。 区画用筒体内の圧力水噴射ノズルの配置の一例を示すものであり、(a)は側面図、(b)はイーイ視断面概要図、(c)はロ―ロ視断面概要図である。 従前の凝集剤を用いる河川等の浄化方法の説明図である。 従前の掘削方式によるヘドロ浚渫工法の工程説明図である。 従前の掘削方式によるヘドロ浚渫工法の説明図である。
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る河川等の区域閉鎖式浄化工法の工程説明図であり、図1に於いて1は区画用筒体設置工程、2aはヘドロ掘削分離工程、2bは磁性凝集剤攪拌混合工程、3はヘドロ等汚濁物質凝集工程、4は凝集物搬出工程、5は区画用筒体移動工程であり、上記各工程から本浄化工法が構成されている。
前記区画用筒体設置工程1は、後述する樹脂シート製筒体6aや浮子6b、重錘6c等から成る区画用筒体6を河川や湖沼等の所定箇所へ沈める工程であり、前記区画用筒体6は、図2及び図3に示すように、樹脂シート製筒体6aや浮子6b、重錘6c等から形成されている。当該区画用筒体6を沈めることにより、ヘドロの掘削・・・浚渫及び河川水の浄化を行う区域が河川等の他の領域から完全に分離され、区画用筒体6の内部がほぼ完全な閉鎖区域とされる。
尚、当該区画用筒体設置工程1では、浚渫対象の種類や形状、周囲の環境状況に応じて、適宜の作業用機器・装置、例えば台船や河岸に沿って走行する走行型クレーンK等が多く使用される。また、ヘドロの掘削・浚渫を行う領域の水深や堆積したヘドロ層の厚さは予め計測されており、この計測した水深とヘドロ層厚さの合計値に応じて、当該工程で使用する区画用筒体6の高さ寸法H等が適宜に選定される。
図2は、走行型クレーンKを利用して、河川Eの浄化を行う場合の区画用筒体6の設置状態の一例を示すものであり、深さ2.5m程度の河川E内へ高さH=3.0m、横幅W=5m、縦幅L=8mの区画用筒体6を4基、連接して配置し、浄化作業を行う場合を示す平面概要図である。当該区画用筒体6は、その下端部に取付した重錘が河川の底面、即ち河川の底面を形成する土砂層の上に載置された状態で、河川の所定箇所に設置される。
また、当該区画用筒体6の高さ寸法Hは、図3に示すように、区画用筒体6の上方の開口面が河川水Gの水面より若干上方に位置する寸法に選定されており、区画用筒体6の上端部への浮子6cの取付位置を適宜に調整することにより、区画用筒体6を形成する樹脂シート製筒体6aが略垂直状に保持されると共に、図3の(c)に示すように、区画用筒体6の上方開口面と河川水面間の距離も、適宜の距離に保持される。
尚、図2に於いて、Fは河川管理道、Gは河川水である。また、図2に於いては、4基の区用筒体6を連接して配置し、各区画用筒体6の領域を同時に浄化する場合を示しているが、1基の区画用筒体6を用いて、一つの区画領域を順次浄化していくようにしても良いことは勿論である。
また、河川水Gの水流が早い場合には、水流圧によって区画用筒体6の形態が所謂菱形状に若干変形する場合が生ずるが、そのような場合には、後述するように、区画用筒体6の上部枠体6dの一部を河川岸へ固定したり、或いは、上部枠体6dを走行クレーンKを用いて所定の位置に保持固定するのが望ましい。
前記へドロ掘削分離工程2a及び磁性凝集剤攪拌混合工程2bでは、後述するように、区画用筒体6の内部若しくは外部に設けた図4に示す加圧水噴射装置7から、 河川等に沈めた区画用筒体6の内部領域の底面に堆積固着したヘドロ層8内へ、区画用筒体6内の河川水に磁性凝集剤を混入した混合水を高圧で噴射することにより、前記ヘドロ層8を掘削分離すると共に、掘削分離されたヘドロや河川水中の汚濁物質と噴射した混合水内の磁性凝集剤との攪拌混合が、夫々行われる。
また、上記、図1のへドロ掘削分離工程2a及び磁性凝集剤攪拌混合工程2bに於いては、区画用筒体6内に設けた加圧水噴射装置7の水中ポンプを用いて、噴射ノズル7dから、区画用筒体6内の水に磁性凝集剤を混合した混合水を高圧で噴出することにより、ヘドロ層を掘削分離すると共に、分離分散されたヘドロや河川水内の汚濁物質と混合水内の磁性凝集剤とを攪拌混合するようにしているが、外部から区画用筒体6内へ別途に適宜の分離用掘削機(図示省略)を吊下げ配置し、当該掘削機を用いて機械的にヘドロ層のみを掘削分離したり、或いは、河川水を噴射ノズル7dから噴射してヘドロ層の掘削分離を行い、その後に、噴射ノズル7dから磁性凝集剤を混合した混合水を噴出することにより、掘削分離したヘドロと磁性凝集剤とを攪拌混合するようにしてもよいことは勿論である。
尚、上記掘削分離されたヘドロは、区画用筒体6内の水中に浮遊した状態となり、区画用筒体6の外部へ漏出することは殆ど起らない。
更に、図1のへドロ掘削分離工程2a及び磁性凝集剤攪拌混合工程2bに於いては、区画用筒体6内に設けた加圧水噴射装置7のポンプ7aを用いて、噴射ノズル7dから区画用筒体6内の水や水と磁性凝集剤との混合水を噴出することにより、当該噴射水の運動エネエルギーを用いて掘削分離されたヘドロと磁性凝集剤とを同時に攪拌混合するようにしているが、別途に撹拌混合機(図示省略)等を区画用筒体6内へ吊下げ配備し、当該撹拌機を用いて凝集剤を攪拌・混合するようにしても良いことは勿論である。
前記加圧水噴射装置7の噴射ノズル7dから区画用筒体6内へ噴射する混合水内の凝集剤としては、生分解性を有するγ−ポリグルタミン酸を主体とし、これに磁性微粒体を混合若しくは結合させることにより形成した磁性凝集剤(商品名MGA・株式会社ポリグル製)7eが使用されており、被処理水量1tonに対して5〜1000g(望ましくは10〜100gr)の量の磁性凝集剤7eが混入される。
尚、上記磁性凝集剤(MGA凝集剤)7eや、その基材を構成する生分解性のγ−ポリグルタミン酸を主体とする凝集剤PGα21Caは、特開2006−142183号、特開2006−205281号及びWO2008−105521号等により既に公知であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
前記へドロ掘削分離工程2a及び磁性凝集剤攪拌混合工程2bが完了すると、噴射ノズル7dからの混合水の噴射を止めてヘドロ等汚濁物質凝集工程3に入り、前記掘削分離されたヘドロや河川水内の汚濁物質と磁性凝集剤と水との混合体を、区画用筒体6内に於いて20〜60分間静置状態に置く。これにより、掘削分離された細かなヘドロや河川水内に含有されていた汚濁物質が、磁性凝集剤7eを介して相互に結合、凝集し、比較的大きな磁性を有するヘドロ凝集物(フロック・図示省略)となって、区画用筒体6の下方部に集積されると共に、その1部は水中に浮遊集積した状態となる。
上記ヘドロ等汚濁物質凝集工程3が完了すると、ヘドロ凝集物の搬出工程4に於いて、区画用筒体6の下方部の水中に集積した磁性を備えたヘドロ凝集物を、所謂磁気型搬送装置を用いて区画用筒体6の外部へ搬出する。
搬出の方法としては、区画用筒体6内へ外部より磁気型搬送装置(図示省略)、たとえば磁気型コンベアー装置を挿入し、当該磁気型搬送装置を介して、磁性を有するヘドロ凝集物(図示省略))を掻き上げる方法等が用いられる。
上記区画用筒体6内のへドロ凝集物の搬出が終われば、区画用筒体移動工程5に於いて、走行型クレーンK等を用いて区画用筒体6を予め定めた隣接する区域上へ移動させ、上記と同様の工程により新たな分割区域内のヘドロ浚渫作業を開始する。
尚、区画用筒体6の移動方法は如何なる方法であってもよく、本実施形態に於いては、区画用筒体6を、その下端面が川底のヘドロ層の上方に位置するまで引き上げ、その後、下流方向又は横方向へ区画用筒体6を移動させ、これを着床させるようにしている。
次に、本発明の実施に使用する前記区画用筒体6について説明をする。図3を参照して、当該区画用筒体6は、上面及び底面が解放された合成樹脂製筒体6aと、合成樹脂製筒体6aの下端に取付した重錘6bと、合成樹脂製筒体6aの上端部に取付した浮子6cとから構成されており、本実施例に於いては、四角形の合成樹脂製筒体6aの下端に取付したステンレス鋼製の四角形の枠体を重錘6bとしている。
尚、重錘6bを構成するステンレス鋼製の四角形枠体は、その断面形状が三角状(▽)の鋼材を用いて形成されており、下方の先端が突出した状態になっているため、比較的固いヘドロ層8であっても、合成樹脂製筒体6aの下端は容易にヘドロ層8内へ貫入し、土砂層9の上面へ到達することが出来る。
また、重錘6bと合成樹脂製筒体6aの取付方法は如何なる方法であっても良く、本実施例に於いては、図3の(b)及び図5の(b)に示すように、合成樹脂製筒体6aの下端縁を外側へ折り曲げし、三角状(▽)重錘6bの上面へ重錘固定具6gにより挟付け固定するようにしている。
前記合成樹脂製筒体6aは、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリエステル等の適宜の厚さ、例えば0.5〜2.5mm程度の厚さを有するシート材から形成されており、その断面形状は、四角のみならず円形や多角形であっても良い。尚、本実施例に於いては、合成樹脂製筒体6aとして、ポリエチレン製の高さHが3m、横幅Wが5m、縦幅Lが6mの四角状の筒体が使用されている。
また、合成樹脂製筒体6aの高さ寸法Hは、河川Eの底面、即ち河川底面を構成する土砂層9と河川Eの水面より若干上方位置までの長さに選定されており、後述する浮子6cの取付用紐6eの下端を合成樹脂製筒体6aの上端部へ固定する位置を調節したり、或いは、浮子6cを固定するために合成樹脂製筒体6aの上端部に取付した合成樹脂製又はステンレス鋼製の上部枠体6dの取付高さ位置を調節することにより、その上方開口面が 河川水面より僅かに上方となる高さ寸法に調整される。
尚、上記上部枠体6dは、図3の(b)及び図5の(b)に示すように、上部枠体固定具6hにより合成樹脂製筒体6aの上端部に取付固定されている。
前記浮子6cには、ウレタン製の球状浮子が使用されており、合成樹脂製筒体6aの上端部に直接、或いは、合成樹脂製筒体6aの上端部に取付した合成樹脂製又はステンレス鋼製の上部枠体6dを介して、固定されている。
また、前記浮子6cと合成樹脂製筒体6aの上端との間の間隔は、取付用紐6eの長さを変たり、或いは、上部枠体6dの合成樹脂製筒体6aへの取付高さ位置を変えることにより、適宜に調節される。
更に、前記図1、図3及び図5に於いては、浮子6cや重錘6bを合成樹脂製筒体6aの外側に配置するようにしているが、浮子6cや重錘6bを合成樹脂製筒体6aの内部側に位置させて取付しても良いことは勿論である。尚、図3に於いて、6fは合成樹脂製筒体6aの上端に設けた吊上用フックである。
図4を参照して、前記加圧水噴射装置7は、ポンプ7a、エジェクター7b、磁性凝集剤タンク7c、噴射ノズル7d等から構成されており、ポンプ7aの作動により合成樹脂製筒体6a内の水が加圧され、圧力水がエジェクター7b内を流通することにより、磁性凝集剤タンク7cから所定量の磁性凝集剤7eが圧力水内へ吸引され、磁性凝集剤の混合水7fが噴射ノズル7dから噴出される。
尚、前記磁性凝集剤7eの混合率は、磁性凝集剤タンク7cの出口に設けた調整バルブ(図示省略)により任意に調節される。また、必要な場合には、磁性凝集剤7eの混合を停止し、合成樹脂製筒体6a内の水のみを噴射ノズル7dから噴射することにより、ヘドロの掘削分離や先に合成樹脂製筒体6a内へ放出した磁性凝集剤7eの攪拌混合が、行なわれる。
また、前記加圧水噴射装置7は、区画用筒体6の内部に、適宜の方法、例えば、吊下支持や河床を形成する土砂層9上へ載置することより支持固定されており、合成樹脂製筒体6a内の水を吸水して、これを噴射ノズル7dから噴出する。
尚、本実施例に於いては、加圧水噴射装置7の構成部材の全体を合成樹脂製筒体6aの内部へ配置するようにしているが、噴射ノズル7dの部分のみを合成樹脂製筒体6a内に配置し、ポンプ7aやエジェクター7b、磁性凝集剤タンク7cを合成樹脂製筒体6aの外部に配置するようにしても良いことは勿論である。
前記加圧噴射装置7の噴射ノズル7dは、図5に示すように、河川の底面に溜まったヘドロ層8へ向けて下方向若しくは斜め下方向に水又は混合水7fを噴出するノズル部7d1と、合成樹脂製筒体6a内ヘ水又は混合水7fを横方向若しくは斜め横方向に噴出するノズル部7d2とを備えており、前者は主としてヘドロ層8の掘削分離の作用を、また、後者は主とし合成樹脂製筒体6a内部の攪拌混合の作用を夫々行うものである。
前記加圧噴射装置7からの水や混合水7fの噴射によるヘドロ層8の掘削分離及び磁性凝集剤の攪拌混合が完了すると、各ノズルからの水又は混合水の噴射が停止される。そして、一定時間、例えば20分〜40分間ほど、合成樹脂製筒体6a内の水を静止状態に保持することにより、分離分散されたヘドロや河川水内の汚濁物質等が磁性凝集剤7eを核にして凝集して、比較的大きな磁性を備えた固形凝集物(所謂フッログ・図示省略)となる。そして、当該固形凝集物の形成が確認されると、加圧噴射装置7を合成樹脂製筒体6a内から引き揚げ、これに変えて磁性搬送装置(図示省略)を合成樹脂製筒体6a内へ配置し、形成された磁性を備えた固形凝集物と磁性搬送装置の磁性コンベアーとの間の磁気吸引力を利用して、固形凝縮物を合成樹脂製筒体6a外へ搬出する。
本実施例に於いては、前記磁性搬送装置として公知の磁性型コンベアー装置を用いており、当該磁性型コンベアー装置に直流励磁電流を流してコンベアー体を所定の極性に磁化することにより、合成樹脂製筒体6a内の磁性を備えた固形凝縮物をコンベアー体に吸着させ、これを外部へ搬出するようにしている。尚、磁性搬送装置そのものは公知であるため、ここではその説明を省略する。
本発明は河川や湖沼、池のみならず、海洋等のヘドロ浚渫にも適用することができるものである。
E 河川
F 河川管理道路
G 河川水
Ga 河川水の水面
K 走行型クレーン
1 区画用筒体設置工程
2a ヘドロ掘削分離工程
2b 磁性凝集剤攪拌混合工程
3 へドロ等汚濁物質凝集工程
4 凝集物搬出工程
5 区画用筒体移動工程
6 区画用筒体
6a 樹脂シート製筒体
6b 重錘(ステンレス鋼製枠体)
6c 浮子
6d 上部枠体
6e 取付用紐
6f 吊上用フック
6g 重錘固定具
6h 上部枠体固定具
7 加圧水噴射装置
7a ポンプ
7b エジェクター
7c 磁性凝集剤タンク
7d 噴射ノズル
7d1 下方向噴射ノズル
7d2 水平方向噴射ノズル
7e 磁性凝集剤
7f 混合水
8 ヘドロ層
9 土砂層
10 吊下げ用ワイヤー

Claims (7)

  1. 河川等のヘドロ層が堆積する区域の上方より水内へ、上面側及び下面側を開口とした所定の高さ及び内容積を有する樹脂シート製筒体と当該筒体の上端部に固定した浮子と前記筒体の下端縁に固定した重錘とから成る区画用筒体を沈め、当該区画用筒体の下端部をヘドロ層内へ貫入させてその下端縁に固定した重錘を河川等の底面の土砂層上に載置すると共に、区画用筒体の上端部を前記浮子により引上げしてその上面開口を水面上方に位置させ、次に、加圧水噴射装置により前記区画用筒体内の水に生分解性の磁性凝集剤を攪拌混合して成る混合水をポンプ加圧して当該加圧混合水を噴射ノズルから筒体内部の底面へ向けて噴射し、当該噴射水により前記ヘドロ層を掘削分離して水中に分散させると共に、当該分散されたヘドロを含有する水と前記噴射された混合水内の磁性凝集剤とを攪拌混合させ、その後、所定時間前記混合水の噴射を止めて、攪拌混合をした混合水内の磁性凝集剤により前記掘削分離して水中に分散されたヘドロを凝集させてヘドロ凝集物としたあと、前記区画用筒体内へ磁性搬送装置を搬入して当該磁性搬送装置により前記凝集されたヘドロ凝集物を区画用筒体内から外部へ搬出し、その後、前記区画用筒体を隣接する区域上へ移動するようにしたことを特徴とする河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  2. 断面形状が四角形の樹脂シート製筒体の下端縁に、断面形状が三角形のステンレス鋼を用いて形成した四角形の重錘を固定し、当該重錘により樹脂シート製筒体から成る区画用筒体を沈めるようにした請求項1に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  3. 区画用筒体の内部に圧力水供給ポンプと磁性凝集剤タンクとポンプ加圧水内へ磁性凝集剤を混入するエジェクターとエジェクターからの混合水を噴出する噴射ノズルとから成る加圧水噴射装置を設け、磁性凝集剤を混入した混合水を前記噴射ノズルから区画用筒体内のヘドロ層内へ噴出することにより、ヘドロ層の掘削分離及び水中に分散したヘドロと磁性凝集剤との撹拌混合を行うようにした請求項1又は請求項2に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  4. 磁性凝集剤を、磁性材製の微粒体とポリマー系の凝集剤とを含有して成る磁性凝集剤とすると共に、区画用筒体内の水の内容積1mに対して5〜1000grの磁性凝集剤を撹拌混合するようにした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  5. 磁性凝集剤を、磁性材製の微粒体に、これに結合させた珪素化合物を介してポリマー系の凝集剤を結合して成る磁性凝集剤とした請求項4に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  6. ポリマー系の凝集剤を、γ−ポリグルタミン酸を主体とする生分解性の凝集剤とするようにした請求項5に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
  7. 磁性搬送装置を磁性型コンベアー装置とし、区画用筒体内のヘドロ凝集物を前記磁性型コンベアー装置により区画用筒体外へ搬出するようにした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の河川等の区域閉鎖式浄化工法。
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