JP2020084053A - 熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜 Download PDF

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佑也 森脇
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Abstract

【課題】安価で硬化性も良好であり、各種の用途において使用することができるエステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分、並びに、エステル交換触媒を含有する樹脂組成物であって、上記エステル交換触媒は、熱酸発生剤であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、特定のエステル交換触媒を利用したエステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
塗料や接着剤等の用途において、多くの熱硬化性樹脂組成物が使用されている。このような熱硬化性樹脂組成物の多くは、2以上の水酸基を有する樹脂を硬化剤と併用し、硬化剤と水酸基との架橋反応によって樹脂を硬化させるものである。
このような硬化剤としては、メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物が汎用されている。これらの硬化剤は、熱反応性が良好で、得られた硬化樹脂の性質が優れているため、広く一般的に使用されている。しかし、メラミン樹脂は、ホルムアルデヒドを発生するためシックハウス症候群の原因とされるため、近年は用途が制限される場合もある。更に、ポリイソシアネート化合物は、硬化反応が高いものの高価であること等の理由から、更に安価で低温硬化可能な硬化剤が見いだされれば、好ましいと考えられる。
特許文献1には、エステル交換反応を硬化反応とする粉体塗料が記載されている。しかし、粉体塗料への使用が記載されているのみであり、一般的な溶剤系や水系の組成物に使用することについては開示されていない。
また、塗料や接着剤として利用する場合には耐水性が求められるが、その点について記載されていない。実際に特許文献1に従い溶液型の塗料を製造して確認すると、耐水性が出なかったり、架橋反応性が充分でなかったりする。更に、汎用的な塗料・接着剤の用途に使用できるような触媒組成についての検討はなされていない。
特許文献2には、エステル交換反応を硬化反応とする溶剤系塗料用樹脂組成物が開示されている。また、エステル交換触媒としてオニウム塩も例示はされている。しかしながら、オニウム塩は、好ましいエステル交換触媒ではないとされており、それ以上の具体的で詳細な検討はなされていない。
ポリエステル樹脂の製造時に三酸化アンチモンを使用することが周知であるが(例えば、特許文献3)、主に熱可塑性のポリエチレンテレフタレートの重合に使用されており、熱硬化性樹脂組成物における硬化反応の触媒としての使用は記載されていない。また触媒の化学構造が全く違う。
特許文献4には、アンチモン化合物が記載されている。しかし、当該文献においては、カチオン重合開始剤としての記載がなされているのみであり、エステル交換の触媒としての使用に関しては一切言及されていない。
本発明者らは、特許文献5において、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物を開示した。しかし、特許文献5においては、触媒についての充分な検討はなされておらず、熱酸発生剤を使用することに関する記載もなされていない。
また、一般的に汎用されている熱硬化性組成物においては、短時間で硬化反応が終了することが要求される。すなわち、硬化時間が長ければ、ライン上で塗料や接着剤の硬化時間を長くとる必要が生じ、生産効率の低下につながってしまう。この点で、従来のエステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物は、改善の余地があり、反応速度が速い硬化触媒が求められている。熱酸発生剤は、エポキシ樹脂の硬化剤等としては公知の化合物である。しかし、これをエステル交換反応を架橋反応とする熱硬化性樹脂組成物の触媒として使用することについては、知られていない。
特開平9−59543号公報 特開2001−220554号公報 特開2007‐84836号公報 特開2010‐235579号公報 特許第6398026号
本発明は、上記に鑑み、安価で硬化性も良好であり、各種の用途において使用することができるエステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明は、アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分、並びに、エステル交換触媒を含有する樹脂組成物であって、上記エステル交換触媒は、熱酸発生剤であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
上記エステル交換触媒は、カチオン部分とアニオン部分で構成されるオニウム塩、硫酸エステル、及び、スルホン酸エステルから選択される少なくとも1の化合物であることが好ましい。
上記オニウム塩は、カチオン部分が、フッ素化アルキルリン酸、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、又は(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF 、PF 、SbF 、又は[BX(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)であることが好ましい。
本発明は、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化反応させることで形成されたことを特徴とする熱硬化性膜でもある。
本発明の樹脂成分は、一分子中にアルキルエステル基と水酸基を含有する化合物であっても良いし、アルキルエステル基を含有する化合物と水酸基を含有する化合物の混合物でもよい。
本発明の樹脂成分は、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリシラン化合物、エポキシ樹脂等と併用してもよい。また、本触媒はカチオン重合触媒としても働くため、エポキシ基、ビニルエーテル基などを有する化合物、及び共重合体と併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分を、特定のエステル交換触媒存在下でエステル交換反応によって、硬化させるものである。特定のエステル交換触媒を使用することにより、幅広い樹脂成分においてすみやかに低温での反応を生じさせることができるものである。
比較例1の剛体振り子試験機データ。 実施例5の剛体振り子試験機データ。 実施例4の剛体振り子試験機データ。
以下、本発明を詳細に説明する。
(エステル交換触媒)
本発明の場合は、反応性が高い触媒を使用するため、樹脂中の架橋点が高い割合で架橋鎖を形成することとなる。このため、過剰量の架橋点を導入する必要がなく、反応後の未架橋点の残存量を低下させることができる。すなわち、未架橋点を減少させることで、耐水性も良好な硬化物を得ることができる点で好ましい。
更に、上述したような、熱酸発生剤であることから、加熱前においては系中で架橋反応を触媒することがないため、組成物の安定性を得ることができる。
本発明のエステル交換触媒は30℃以上、好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上のいずれかの温度に加熱することで酸を発生する熱酸発生剤であることが好ましい。上記熱酸発生剤とは、一般に加熱を行うことで酸を発生し、発生した酸を触媒とした重合反応あるいは架橋反応により硬化性化合物を短時間に確実に重合させて良好な物性を有する硬化物を得ることが可能な材料のことである。本発明において使用されるエステル交換触媒は、30℃以上のいずれかの温度に加熱することで酸を発生する熱酸発生剤であるため、硬化系の室温での貯蔵安定性が向上する。
更に、熱酸発生剤は、一般的に加熱時に非常に強い酸を発生する化合物であり、このために、反応を触媒する作用が非常に強力なものとなる。したがって、反応を触媒する作用が非常に強いものとなる。これによって、上述した効果が得られると推測される。
上記熱酸発生剤によって発生する酸は、酸解離定数(pKa)の上限が5であることが好ましい。上記上限を超えると、触媒効果が不充分となるおそれがある。
上記エステル交換触媒は、室温では酸ではないが、30℃以上に加熱することで酸を発生する化合物であることが好ましい。ここで、30℃以上に加熱することで酸を発生する化合物とは、30℃以上のいずれかの温度に加熱することで、酸を発生し、エステル交換反応を触媒する化合物を指す。このような範囲内に属するか否かは、例えば、本明細書の実施例1の樹脂組成物に実施例1と同様の割合で混合して、30℃以上に加熱した場合に、ゲル分率の上昇が生じているか否か、という観点から確認することができる。
30℃以上に加熱することで酸を発生する化合物として、具体的には、カチオン部分とアニオン部分で構成されるオニウム塩、硫酸エステル、スルホン酸エステル等を挙げることができる。
上記カチオン部分とアニオン部分で構成されるオニウム塩から選択される少なくとも1の化合物は、カチオン部分が、フッ素化アルキルリン酸、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、又は(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF 、PF 、SbF 、又は[BX(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)であることがより好ましい。
このような化合物を使用することにより、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を特に効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得ることができる。このため、エステル交換反応においても反応が進行しにくいとされる1級または2級エステルでもエステル交換反応を効率よく行うことができ、3級エステルでは更に好適に反応を行うことができる。このため低温硬化を実現することができる。また、一般に使用されるエステル交換触媒である塩基性触媒や酸性触媒などと比較して、有機溶剤中への溶解性が良く触媒効果が向上すると共に様々な系に使用することができる。
このような化合物は、加熱することによって、超酸と呼ばれる極めて強い酸を発生するものであり、このような超酸によって強力に触媒されることで、上述した効果を得ることができる。また、室温では、上述した超酸は存在しない状態であるため、組成物の保存安定性が悪化することもない。
従来、エステル交換触媒によってエステル交換反応を生じさせることで、樹脂を硬化させる試みは行われているが、上述したような化合物によって硬化させる試みは行われていない。
上記フッ素化アルキルリン酸としては、例えば4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ベンジル(4−ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート等を使用することができる。
また、上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウム テトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、上記芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
また、上記チアンスレニウム塩としては、[5−(4−メトキシフェニル)チアンスレニウム、5−フェニルチアンスレニウム及び5−トリルチアンスレニウムカチオン等を使用することができる。
また、上記チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル 2−イソプロピル チオキサントニウム ヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
また、上記(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラフルオロボレート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
上記熱酸発生剤としては、スルホン酸エステル化合物を使用することもできる。スルホン酸エステルは、加熱によってスルホン酸となり、このスルホン酸が触媒として作用するものである。このようなスルホン酸エステルとしては、特に限定されず、ジメチル硫酸、ジプロピル硫酸等のアルキル硫酸エステル類、p−トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル等を挙げることができる。
上記エステル交換触媒としては、例えば、CPI−100P、CPI−101A、CPI−110P、CPI−200K、CPI−210S(以上、サンアプロ(株)製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーSP−300(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−180(以上、三新化学工業(株)製)、エサキュア1064、エサキュア1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア250(BASFジャパン(株)製)、ロードシル フォトイニシエーター2074(RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローディア・ジャパン(株)製)、WPAG−699(和光純薬(株))TA−100(サンアプロ(株))等の市販品を使用することもできる。
なかでも、カチオン部分が芳香族スルホニウム、アニオン部分がSbF であるものが好ましい。
通常、エステル交換反応による熱硬化性樹脂組成物においては、三級エステル基の反応性が高く、二級エステル基は比較的反応性が緩やかとなり、一級エステル基は更に反応が遅い。このため、通常のエステル交換触媒によっては、三級エステル基は反応させやすいが、二級エステル基・一級エステル基においても、汎用的な用途で使用できるほど、早い反応時間での反応を行う方法はこれまで知られていなかった。
カチオン部分が芳香族スルホニウム、アニオン部分がSbF であるものを使用した場合には、特に触媒反応を活性化する効果が強く、このため、三級エステルはもちろん、二級エステルや一級エステル基を使用したエステル交換反応においても、好適な硬化反応を行うことができる点で好ましい。
上記エステル交換触媒としては、ベンジル(4−ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモナート(三新化学工業株式会社製、サンエイドSI−80L)が特に好ましく使用することができる。また、上述した化合物の2種以上を併用するものであっても差し支えない。
上記エステル交換触媒の使用量は、アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分の重量に対して、0.01〜50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、10重量%であることが更に好ましい。
(樹脂成分)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分を含有する組成物である。すなわち、樹脂成分に含まれるアルキルエステル基と水酸基とのエステル交換反応によって、硬化させるものである。
上記樹脂成分としては、水酸基及びアルキルエステル基を含む樹脂、又は、これらを別々に含む化合物又は樹脂の混合物が使用できる。
このような樹脂としては特に限定されず、必要な官能基を含むアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂等の混合物であってもよい。
本発明においては、上述の特定のエステル交換触媒の反応促進効果が高いため、アルキルエステル基を限定されることはない。しかしながら、二級アルキルエステル基や一級アルキルエステル基に比べてエステル交換反応が生じやすく、すみやかに低温での反応を生じさせることができるため、三級アルキルエステル基をアルキルエステル基のうちの一部又は全部として含むことがより好ましい。すなわち三級アルキルエステル基は、先行文献に記載された触媒を使用しても架橋反応を生じさせることができた。しかし、本発明のエステル交換触媒を使用すると、より低温での硬化反応を生じさせられるという利点を有する。低温での硬化反応を生じさせることができると、硬化のラインにおけるエネルギー効率を向上させることができる点等から好ましいものである。
当該三級アルキルエステル基としては、t−ブチルエステル基が特に好適である。また、三級以外のアルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n−ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec−ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は硬化反応後に揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が50以下のものであることが好ましい。
このような本発明の熱硬化性樹脂組成物において使用することができる樹脂として、以下に具体的なものを例示する。なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、以下に例示するものに限定されるものではない。
なお、以下の本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
本発明においては、熱硬化性化合物組成物において、化合物組成物中にアルキルエステル基と水酸基が存在することが必要である。
本発明のアルキルエステル基は、
で表される官能基であり、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化反応は、エステル交換反応によってアルキル基に対応したアルコールが生成する化合物である。
本発明においては、上記一般式Rのアルキルエステル基を限定されることはない。しかしながら、二級アルキルエステル基や一級アルキルエステル基に比べてエステル交換反応が生じやすく、すみやかに低温での反応を生じさせることができるため、三級アルキルエステル基をアルキルエステル基のうちの一部又は全部として含むことがより好ましい。当該三級アルキルエステル基としては、t−ブチルエステル基が特に好適である。また、三級以外のアルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n−ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec−ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は50以下のものとすることができる。上記アルキル基は、硬化反応後に揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発する対応したアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
本発明における樹脂成分としては、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物を使用するものであってもよいし、アルキルエステル基を有する化合物と水酸基を有する化合物とを混合するものであってもよい。更には、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物及び水酸基を有する化合物の2種又はすべてを混合するものであってもよい。
また、これらの分子量や性状等も特別限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整して使用するものであってよい。例えば、いずれも樹脂状態のものを複数混合して使用するものであってもよいし、樹脂状態の成分と低分子量化合物とを混合して使用するものであってもよい。更に、液状の成分であっても、固形状の成分であってもよい。
本発明において、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、水酸基を有する化合物は、それぞれ低分子量化合物、オリゴマー、樹脂のいずれであってもよい。これらの化合物が樹脂である場合は、上記官能基を有するものである限り、樹脂種は特に限定されず、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエポキシ樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーン樹脂、多糖類等の任意の樹脂を基材樹脂とするものとできる。
樹脂を使用する場合は、これらの樹脂のなかでも、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。これらの樹脂においては、水酸基やアルキルエステル基は、周知の方法で容易に系中に導入でき、これらの官能基量のコントロールも容易であり、かつ、使用する単量体の種類や配合割合を変更することによって、容易に樹脂物性を調整できる点で好ましいものである。
上記アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、水酸基を有する化合物が低分子量化合物である場合、その化学構造については、特に限定されず、所定の官能基を有する化合物を任意に使用することができる。
以下、本発明において使用できる樹脂、低分子量化合物の例を例示する。本発明は、以下の樹脂、低分子量化合物を使用するものに限定されるものではなく、以下に例示したもの及び上記官能基を有する化合物を適宜必要に応じて組み合わせて使用することができる。
(1)不飽和結合の重合によって得られた重合体
アクリル樹脂のような、不飽和結合の重合によって得られた重合体は、塗料や接着剤等の熱硬化性樹脂の分野において汎用される樹脂であり、水酸基やアルキルエステル基を有する単量体を使用すれば、使用した単量体の割合で樹脂中にこれらの官能基が存在するものとなる。このため、樹脂中の官能基量のコントロールや樹脂物性の調整も容易であり、本発明の目的に容易に使用することができる。
特に、水酸基・アルキルエステル基を導入する場合、以下のような単量体(1−1)、(1−2)によって導入することができる。
(1−1)水酸基含有単量体
水酸基含有単量体としては、特に限定されず、以下のものを挙げることができる。
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応主成分などである。
また、単量体としての水酸基含有単量体は、直接水酸基を有するものではなく、分子数5以上の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合には、水酸基が樹脂中で動きやすくなるため、反応を生じやすいという点で好ましい。
(1−2)アルキルエステル基含有単量体
上記アルキルエステル基含有単量体としては、非常に多くの種類のアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体が知られているが、典型的には、下記一般式で表される化合物を挙げることができる。
(1−2−a)
(式中、R,R,Rは、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基を表す。
は、炭素数50以下の炭化水素基を表す。)
このような一般式(1)で表される化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等の公知の不飽和カルボン酸のエステル誘導体を挙げることができる。
上記一般式(1)で表されるアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体として最も代表的なものは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらのなかでも、架橋の反応性という観点において、t−ブチル(メタ)アクリレート等の3級アルキルエステルが最も好ましい。
t−ブチル(メタ)アクリレートは、3級アルキルのエステルであることから、エステル交換反応速度が速く、このため硬化反応が効率よく進行する。このため、1級アルキルエステルや2級アルキルエステルよりも架橋反応性に優れ、本発明の目的を達成するエステル基を供与する上で非常に好ましい原料である。
また、t−ブチル(メタ)アクリレートを以下で詳述するその他の単量体と共重合させて、Tgを調整してもよい。この場合、Tgを80℃以下とすることが好ましい。
(1−2−b)
上記アルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体は、上述した一般式(1)で表される化合物のほかに、重合性不飽和結合とエステル基が連結基を介して結合した化合物であってもよい。
:1〜10
式中、R6、,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R10−[COOR11n1で表される構造を表す。
10は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
R11は、炭素数50以下のアルキル基。)
の一般式で表されるものを使用することができる。
当該構造では、アクリル樹脂主鎖から連結基を介してアルキルエステル基が存在するものである。このような構造の好ましい点については、以下に詳述する。
上記一般式(2)で表される構造としてより具体的には、例えば、
:1〜10
(式中、R12は、H又はメチル基。
13は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
14は、炭素数50以下のアルキル基。)
で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
上記R13の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましく、20以下であることが更に好ましい。R13の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。更に具体的には、R13の主鎖中には、アルキル基のほかにエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。
このような、(メタ)アクリル酸とエステル基とをR13で表される連結基を介して結合した化合物は、特に、エステル交換の反応速度が速くなる傾向がある点で好ましい。反応速度が速くなるのは、側鎖構造が長鎖となり、その末端にエステル基が存在していると、エステル基が動きやすく、自由度が大きくなるため、水酸基とも接近しやすく、これによって反応が促進されると推測される。このことは水酸基を持つ分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物にも同様に促進される。
また、上記一般式(2)〜(3)で表される化合物においても、R11又はR14に3級アルキル基(例えば、t−ブチル基)を使用すると、最もエステル交換の反応速度が速くなるため、好ましいものである。このような、エステル交換反応を生じさせやすい化学構造を有する樹脂において、本発明のエステル交換触媒を適用すると、非常に高い反応性が得られ、低温でも良好な硬化反応を生じさせることができる点で、好ましいものである。
上記一般式(2)〜(3)で表される化合物の具体的な構造の例を以下に示す。
(1−3)その他の単量体
本発明において使用される重合体は、上記(1−1)、(1−2)に示した単量体のみからなるホモポリマー、共重合体とすることもできるし、その他の単量体を使用した共重合体とすることもできる。
上記重合体において使用可能なその他のモノマーとしては特に限定されず、重合可能な不飽和基を有する単量体であれば任意のものを使用することができる。使用できる単量体を以下に例示する。
エチレン、プロピレンもしくはブテン−1のような、種々のα−オレフィン類;
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンのような、フルオロオレフィンを除く、種々のハロゲン化オレフィン類;
スチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエンのような、種々の芳香族ビニル化合物;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのような、種々のアミノ基含有アミド系不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのような、種々のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートのような、種々のアミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸のような、種々のカルボキシル基含有単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アリルグリシジルエーテルのような、種々のエポキシ基含有単量体;マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のような、各種のα、β−不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1〜18である一価アルコールとのモノ−ないしはジエステル類;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのような、種々の加水分解性シリル基を含有する単量体;
ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレンのような、種々のふっ素含有α−オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルのような、各種のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルないしは(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(ただし、アルキル基の炭素数は1〜18の範囲内であるものとする。)などのような種々のフッ素原子含有単量体;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェニルエチルビニルエーテルのような、種々のアルキルビニルエーテルないしは置換アルキルビニルエーテル類;
シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルのような、種々のシクロアルキルビニルエーテル類;ビニル−2,2−ジメチルプロパノエート、ビニル−2,2−ジメチルブタノエート、ビニル−2,2−ジメチルペンタノエート、ビニル−2,2−ジメチルヘキサノエート、ビニル−2−エチル−2−メチルブタノエート、ビニル−2−エチル−2−メチルペンタノエート、ビニル−3−クロロ−2,2−ジメチルプロパノエートなどをはじめ、さらには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニルもしくはラウリン酸ビニル、C9 である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11である分岐脂肪族カルボン酸ビニルまたはステアリン酸ビニルのような、種々の脂肪族カルボン酸ビニル;あるいはシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp−tert−ブチル安息香酸ビニルのような、環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル類などを挙げることができる。
本発明においては、上述した(1−1)〜(1−3)の各種単量体を必要に応じて組み合わせ、重合させることによって、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、水酸基を有する化合物とすることができる。
上記重合体は、その製造方法を特に限定されるものではなく、公知の方法により重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、UV硬化法、等の重合方法を挙げることができる。
また、有機溶媒中での溶液重合を行った後で、水への分散を行って水性化したものや、水中での重合を行って得られた樹脂を有機溶媒に溶解したものであってもよい。
また、上述した単量体を含む組成物を重合させることによって得られた重合体の側鎖官能基を反応させることによって、側鎖に水酸基及び/又はアルキルエステル基を導入したものであってもよい。側鎖への反応としては特に限定されず、エステル交換、イシアネートとの反応、エポキシとの反応、付加反応、加水分解、脱水縮合、置換反応等を挙げることができる。
(2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
ポリエステルポリオールは、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150〜約250℃で、約5〜約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオールを製造することができる。
(3)マロン酸エステルと、ビニル基との付加反応によって得られる化合物
マロン酸エステルと、ビニル基との付加反応によって得られる化合物も本発明のアルキルエステル基を有する化合物として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
上記一般式中、R19は、炭素数50以下のアルキル基を示す。
10は、1〜10である。n11は、1〜20である。
15,R16,R17,R18は、特に限定されず、目的に応じて任意の官能基とすることができる。
より具体的には、H、C1〜20のアルキル基、カルボキシル基、エステル基、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、エポキシ基、ウレタン基、シラン基、エチレングリコール基、フェノキシ基、更に任意の連結基を介して1つ以上のビニル基を含有しても良い。
汎用的には(メタ)アクリレート誘導体、多価(メタ)アクリレート誘導体等を挙げることができる。
上記マロン酸エステル構造を有する化合物の場合も、エステル基中のアルキル基は、t−ブチル基等の3級アルキル基であることが最も好ましい。3級アルキル基とすることで、エステル交換反応が効率よく進行する点で好ましいものである。
また、上記(3)マロン酸エステルと、ビニル基との付加反応によって得られる化合物は、一分子中に1以上の不飽和結合を有する化合物を原料とするものを使用し、マロン酸エステルに由来する骨格を一分子中に1以上有するものであってもよい。
マロン酸エステルに由来する構造を有する化合物はそのほかにも多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。
このような化合物の例を以下に示す。
(4)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物
多官能カルボン酸と、アルコールとの反応によって得られる化合物も本発明のアルキルエステル基を有する化合物として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
各種の多官能カルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このような多官能カルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。エステル化は、上述した炭素数50以下のアルキル基によるものとすることができ、特に、t−ブチル基等の3級アルキル基によってエステル化したものが好ましい。
このような化合物をアルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
ここで使用する多官能カルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
本発明においては、上述した多官能カルボン酸のアルキルエステル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコールとの脱水縮合等の公知の方法を適用することができる。
上記多官能カルボン酸のアルキルエステル化物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4000以下、2000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
(5)低分子量ポリオール
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用してもよい。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
このような低分子量ポリオールは、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。更に低分子ポリオールは水溶性が強く、水系での硬化を目的とする場合は架橋剤として好適に使用できる。近年では環境問題が叫ばれており、VOCの低減を進める上では非常に重要な架橋剤として好適に使用ができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その形態を特に限定されるものではないが、粉体塗料、有機溶媒系又は水系組成物の形態を有するものであることが特に好ましい。これによって、薄膜塗装可能であり、低温硬化を行うことができる点で好ましい。水系としては、水溶性、水分散性のいずれであってもよく、水に加えて、エタノール、メタノール、アルコール系、グリコール系、エーテル系、ケトン系等の水と任意の割合で混合することができる水性溶媒を含有するものであってもよい。
有機溶媒系の熱硬化性樹脂組成物は、各種有機溶媒中に上記成分が溶解又は分散した状態の組成物である。使用することができる有機溶媒は特に限定されず、1−ヘキサン、1−オクタン、1−デカン、1−テトラデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、トリクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系炭化水素、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン等の公知の任意のものを使用することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その形態を特に限定されるものではないが、有機溶媒系又は水系の形態を有するものであることが特に好ましい。これによって、薄膜塗装可能であり、低温硬化を行うことができる点で好ましい。水系としては、水溶性、水分散性のいずれであってもよく、水に加えて、エタノール、メタノール、アルコール系、グリコール系、エーテル系、ケトン系等の水と任意の割合で混合することができる水性溶媒を含有するものであってもよい。
有機溶媒系の熱硬化性樹脂組成物は、各種有機溶媒中に上記成分が溶解又は分散した状態の組成物である。使用することができる有機溶媒は特に限定されず、1−ヘキサン、1−オクタン、1−デカン、1−テトラデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、等のケトン、トリクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系炭化水素、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、シクロヘキサノン等の公知の任意のものを使用することができる。
また、2液型の樹脂組成物として、アルキルエステル基含有化合物を含む溶液と、水酸基含有化合物を含む溶液とを組み合わせて、使用直前に混合して使用するものであってもよい。このようにすることで、保存安定性が良好なものとなる点で好ましい。また、アルキルエステル基含有化合物を含む溶液と、水酸基含有化合物を含む溶液に、エステル交換触媒を含む触媒溶液を混合するタイプの2液型とすることもできる。
更に、粉体塗料等の、粉体形状の熱硬化性樹脂組成物とする場合は、アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分、アルキルエステル基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、エステル交換触媒を通常の方法によって乾燥・混合・粉砕することによって製造することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性塗料、熱硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1〜500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量%である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
上記熱硬化性塗料は、所望により、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE−60」、「ACRYSOLTT−615」、「ACRYSOLRM−5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM−8W」、「ACRYSOLRM−825」、「ACRYSOLRM−2020NPR」、「ACRYSOLRM−12W」、「ACRYSOLSCT−275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
また、上記ポリアマイド系増粘剤は市販されており、例えば、共栄社化学製の「フローノンSP−1000」、「ターレン7200−20」、「フローノンHR−2」、「フローノンHR−2G」、「フローノンHR−4AF」、「フローノンSH−290」、「フローノン295S」、「フローノン350」(以上、商品名)等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えばアクリルポリマー、ビニルエーテルポリマー、ブタジエンポリマー、オレフィンポリマー、シリコーン含有ポリマー、フッ素含有ポリマー、フッ素変性シリコーン、高沸点溶剤などが挙げられる。
上記消泡剤は、市販されており、例えば、共栄社化学製の「フローレンAC−220F」、「フローレンAC−230」、「フローレンAC−247」、「フローレンAC−253」、「フローレンAC−265」、「フローレンAC−300」、「フローレンAC−303」、「フローレンAO−82」、「フローレンAO−98」、「フローレンAO−106」、「フローレンAO−108」(以上、商品名)等が挙げられる。
上記高沸点溶剤は、市販されており、テキサノール、ブチルグリコール、γブチロラクトンやクラレ製の「ソルフィット」、JXTGエネルギー製の「T−SOL150」(以上、商品名)等が挙げられる。
上記表面調整剤としては、例えばアクリルポリマー、変性シリコーン、シリコーン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。
表面調整剤としては、市販されており、共栄社化学製「ポリフローNo.36」、「ポリフローNo.56」、「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.85」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローNo.99C」、「ポリフローKL−100」、「ポリフローKL−700」、「ポリフローKL−401」、「LE−604」(以上、商品名)等が挙げられる。
上記熱硬化性塗料を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。自動車用塗料として使用する場合は、中塗り塗料、ベース塗料、クリヤー塗料等の任意の層の硬化に用いることができる。
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
上記熱硬化性塗料の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80〜約180℃、より好ましくは約100〜約170℃、そしてさらに好ましくは約120〜約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10〜約60分間、そしてより好ましくは約15〜約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80〜140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量部を表す。
合成例1
n−ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)317部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)145部、スチレン38部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)250部およびシクロヘキサノン250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Aを得た。
合成例2
メチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)437部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)63部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)250部およびシクロヘキサノン250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Bを得た。
合成例3
シクロヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルCH)462部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)38部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)250部およびシクロヘキサノン250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Cを得た。
合成例4
n−ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)245部、t−ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB)110部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)115部、スチレン30部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)250部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Dを得た。
合成例5
エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート54部、t−ブチルアクリレート58部、炭酸カリウム38部、18−クラウン−6エーテル2部、テトラヒドロフラン112部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーAを得た。
合成例6
n−ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)200部、モノマーA175部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)90部、スチレン25部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)490部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Eを得た。
合成例7
トリメチロールプロパントリアクリレート80部、マロン酸ジ−t−ブチル37部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン117部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Aを得た。
比較例1
ポリマー溶液Aにドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)をポリマー溶液Aの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
比較例2
ポリマー溶液Bにドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)をポリマー溶液Bの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
比較例3
ポリマー溶液Cにドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)をポリマー溶液Cの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
比較例4
ポリマー溶液Dにドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)をポリマー溶液Dの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、120℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例1
ポリマー溶液Aに熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)をポリマー溶液Aの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。なお、サンエイドSI−80Lは、ベンジル(4−ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモナートである。当該化合物は、80℃に加熱することで酸を発生するものである。
実施例2
ポリマー溶液Bに熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)をポリマー溶液Bの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例3
ポリマー溶液Cに熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)をポリマー溶液Cの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例4
ポリマー溶液Dに熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)をポリマー溶液Dの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、120℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例5
ポリマー溶液Aに非アンチモン系カチオン重合開始剤(和光純薬(株)品 WPAG−699)をポリマー溶液Aの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
なお、WPAG−699は、下記一般式で表される化合物である。
実施例6
ポリマー溶液Bに非アンチモン系カチオン重合開始剤(和光純薬(株)品 WPAG−699)をポリマー溶液Bの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例7
ポリマー溶液Cに非アンチモン系カチオン重合開始剤(和光純薬(株)品 WPAG−699)をポリマー溶液Cの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例8
ポリマー溶液Dに非アンチモン系カチオン重合開始剤(和光純薬(株)品 WPAG−699)をポリマー溶液Dの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、120℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例9
ポリマー溶液Aに非アンチモン系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)品 TA−100)をポリマー溶液Aの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。なお、TA−100は、100℃に加熱することで酸を発生するものである。
実施例10
ポリマー溶液Bに非アンチモン系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)品 TA−100)をポリマー溶液Bの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例11
ポリマー溶液Cに非アンチモン系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)品 TA−100)をポリマー溶液Cの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例12
ポリマー溶液Dに非アンチモン系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)品 TA−100)をポリマー溶液Dの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、120℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例13
ポリマー溶液Eに熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)をポリマー溶液Eの固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、120℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例14
ポリマー溶液Aとマロン酸ジ‐t‐ブチルを100:18(wt)で混合し、熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)を混合液の固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例15
ポリマー溶液Aとエステル化合物Aを100:9(wt)で混合し、熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)を混合液の固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
実施例16
ポリマー溶液Aと脂環エポキシ樹脂(ダイセル(株)品 セロキサイド2021P)を100:10(wt)で混合し、熱潜在カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80L)を混合液の固形分に対して3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、140℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、耐水性及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
*熱潜在カチオン重合開始剤は、三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80Lを使用した。
*非アンチモン熱潜在カチオン重合開始剤Iは、和光純薬(株)品 WPAG−699を使用した。
*非アンチモン熱潜在カチオン重合開始剤IIは、サンアプロ(株)品 TA−100を使用した。
比較例1〜3では、エステル交換反応において反応が進行しにくいとされる1級または2級エステルでは硬化反応が進みにくいことがわかる。
比較例4では、エステル交換反応を効率よく行うことができる3級エステルであっても低温での硬化は進みにくいことがわかる。
実施例1〜3では、エステル交換反応において反応が進行しにくいとされる1級または2級エステルであっても、熱潜在性カチオン重合開始剤(SI−80L)を用いた場合、良好な硬化を示すことがわかる。
実施例4では、3級エステルをエステル基として用いた場合、より反応性が向上し、低温条件でも良好な硬化を示すことがわかる。
実施例5〜12では、アンチモン系と同等の触媒性能を持つ非アンチモン系熱潜在性カチオン重合開始剤を用いた結果を示す。これらも、アンチモン系と同様に良好な硬化を示すことがわかる。
*熱潜在カチオン重合開始剤は、三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80Lを使用した。
*脂環エポキシ樹脂は、ダイセル(株)品 セロキサイド2021Pを使用した。
*熱潜在カチオン重合開始剤は、三新化学工業(株)品 サンエイドSI−80Lを使用した。
実施例13では、長い側鎖の3級エステル基を利用した場合の結果を示している。また、実施例14〜16では、アルキルエステル基を含有する化合物と水酸基を含有する化合物の混合物の場合、脂環エポキシ樹脂との混合の場合の結果を示している。何れの実施例においても良好な硬化を示していることがわかる。
なお、上記表1〜6中の各物性は、以下の方法によって測定したものである。
ゲル分率は、実施例で得られた皮膜をソックスレーを用いてアセトン還流中で30分間溶解を行い、皮膜の残存重量%をゲル分率として測定した。
ゲル分率は0〜40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40〜80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80〜100%を性能が優れているものとして◎とした。
キシレンラビングは、PETフィルムに実施例の熱硬化性樹脂を塗膜化し、キシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦り、表面を観察した。
評価は実用に耐えられないものを×とし、実用に耐えられるものを○とし、更に性能が優れているものを◎とした。
耐水性の評価は、ポリマーと架橋剤及び触媒の混合溶液をガラス板に塗工し、各焼き付け条件にて処理後、80℃温水に5時間、半浸漬した。
評価は実用に耐えられないものを×とし、実用に耐えられるものを○とし、更に性能が優れているものを◎とした。
剛体振り子試験器
エーアンドディ社製剛体振り子試験器(型番 RPT−3000W)を用いて、昇温速度 10℃/分 で140℃まで昇温後保持しその時の周期及び対数減衰率の変化を求めた。特に塗膜の硬化状態を確認するために用いた。
振り子:FRB−100
膜厚(WET):100μm
評価は実用に耐えられないものを×(図1 比較例1)とし、実用に耐えられるものを○(図2 実施例5)とし、更に性能が優れているものを◎(図3 実施例4)とした。
ゲル分率が40以上であれば、一定の硬化反応を生じるものであると判断され、硬化性樹脂組成物としての機能を有するものであることが明らかである。
また、キシレンラビング、耐水性といった性能において優れた性質を有するものは、これらの性質に基づいて塗料(特に最外層を形成する塗料)を含めた多くの用途での使用にも適したものとなる。
ゲル分率は高いが、キシレンラビング、耐水性といった性能が重要ではない場合は、本件の硬化性樹脂組成物は、粘着剤や接着剤の分野や複層塗膜における内層等の分野において使用できるものとなる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、種々の熱硬化性樹脂組成物において使用することができ、特に、各種塗料組成物(自動車塗料、PCM塗料、CAN塗料、電着塗料)や接着剤組成物、コーティング剤の膜形成、成形材料、積層材料、及びレジスト材料において好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. アルキルエステル基及び水酸基を有する樹脂成分、並びに、エステル交換触媒を含有する樹脂組成物であって、
    前記エステル交換触媒は、熱酸発生剤であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. エステル交換触媒は、カチオン部分とアニオン部分で構成されるオニウム塩、硫酸エステル、及び、スルホン酸エステルから選択される少なくとも1の化合物である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. オニウム塩は、カチオン部分が、フッ素化アルキルリン酸、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、又は(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF 、PF 、SbF 、又は[BX(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)である請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1、2又は3記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化反応させることで形成されたことを特徴とする熱硬化性膜。
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