JP2020083900A - 扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜を基材ないしは部品に形成する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第一に、扁平粉の扁平面同士を重ね合わせる。第二に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを塗料化する。第三に、塗料を基材ないしは部品に塗付し塗膜を形成する。第四に、塗膜を熱処理すると、扁平粉の集まりが、基材や部品に一定の強度で付着する。【解決策】扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが液体中に沈降した塗料を、平面からなる容器の底面に浸漬させる。また、基材ないしは部品を、塗料を収納した容器から近距離に配置させたベルトコンベアー上で水平方向に移動させる。さらに、前記容器を傾斜させ、塗膜の幅からなる塗料が、傾斜した容器から自重で零れ落ち、基材ないしは部品に前記塗料からなる塗膜が形成される。この後、前記塗料のアルコールを気化させ、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜が、基材や部品に形成される。【選択図】図1
Description
本発明は、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜を、基材ないしは部品に形成する方法に係わる。すなわち、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、一定の粘度を持つ液体のアルコール希釈液に沈降した塗料を作成する。第二に、ベルトコンベアー上を水平に移動する基材ないしは部品に、塗料が入った容器を近接させ、さらに、容器を傾斜させ、基材ないしは部品に、塗膜の幅からなる帯状の塗料として、塗料を自重で流れ落とす。第三に、塗料からアルコールを気化させる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、一定の粘度を持つ液体で覆われた皮膜が、基材や部品に形成される。この皮膜の表面は、液体による撥水性と防汚性とを持つ。なお、扁平粉の使用量を抑えて塗料を製造すれば、皮膜の厚みは数ミクロンに抑えられる。また、扁平粉の使用量を液体の使用量の2倍より多くすれば、皮膜の表面を形成する液体の被膜の厚みは、扁平粉の厚みより薄く、皮膜は扁平粉の性質を持つ。なお、厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい粉体を、扁平粉、フレーク粉、鱗片粉、薄片粉、円板粉、薄板粉と様々に記述されるが、本発明では扁平粉として記述する。いっぽう、軟質金属ないしはガラスからなる扁平粉は、フレーク粉として記述するのが一般的であり、フレーク粉として記述する。また、黒鉛の鱗片粉についても同様である。
扁平粉は材質に応じて様々な用途に用いられている。最も汎用的な扁平粉に、金属の扁平粉がある。アルミニウムや真鍮の扁平粉は、メタリック塗料に求められる輝きを表現する装飾用顔料の原料として用いられている。銅や銀の扁平粉は、導電性ペーストの原料となり、電気回路の配線の形成、セラミックコンデンサの内部電極の形成、太陽電池セルの電極形成、電磁波シールド膜や帯電防止膜の形成などに用いられている。純鉄の扁平粉は、磁束密度が高く、扁平処理による形状異方性によって透磁率が増大するため、圧粉磁心や電磁波をシールドするシートなどに用いられている。いっぽう、ガラスの扁平粉は、熱可塑性樹脂と複合化させ、熱可塑性樹脂の耐熱性、耐食性、機械的強度を増大させるフィラーとして、また、ガラスの扁平粉の表面に、金属や金属酸化物をコーティングさせた扁平粉は、様々な光沢を表現する光輝性無機顔料に用いられ、さらに、化粧品の原料としても用いられている。その他に、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化鉄などの金属酸化物からなる扁平粉や、鱗状黒鉛ないしは鱗片状黒鉛と呼ばれる黒鉛の扁平粉がある。
扁平粉の集まりからなる皮膜を形成するにあたり、扁平面同士が重なり合えば、使用する扁平粉の量が少なく、また、扁平面の性質を皮膜に生かすことができる。さらに、皮膜に占める扁平粉の体積が大きいほど、皮膜は扁平粉の性質に近づく。しかしながら、こうした事例は、皆無である。
例えば、特許文献1には、3級アミン置換ポリスチレンで銅の扁平粉を被覆する導電性ペーストが記載されている。しかしながら、銅の扁平粉同士が、3級アミン置換ポリスチレンを介して接合し、また、3級アミン置換ポリスチレンの導電率が、銅の導電率より著しく低いため、導電性ペーストを用いて形成した導電皮膜の導電性は、銅に比べて劣る。さらに、銅の扁平粉の扁平同士が重なり合って皮膜を形成しないため、3級アミン置換ポリスチレンが皮膜に占める割合が一定でなく、部分的に多くの割合を皮膜に占めることで、皮膜の導電性はさらに下がる。また、導電性を向上させるために、導電性ペーストに占める銅の扁平粉の割合を増大させると、銅の扁平粉の分散性が悪化する。また、導電性ペーストの粘度が上昇し、導電性ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
また、特許文献2には、高周波数の電磁ノイズを抑制する複合磁性シートとして、有機バインダーに分散した磁性扁平粉が記載されている。しかしながら、有機バインダーは非磁性体であるため、有機バインダーの存在によって、電磁ノイズを吸収する効率が下がる。また、磁性扁平粉の扁平面同士が重なり合って複合磁性シートを形成しないため、扁平面が電磁ノイズを吸収せず、扁平磁性粉が吸収する電磁ノイズの効率が下がる。また、特許文献1と同様に、電磁ノイズを吸収する効率を向上させるために、バインダーに占める磁性扁平粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
さらに、特許文献3には、フレーク粉末が有機バインダーに分散された導電パターンを形成する導電性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、有機バインダーは絶縁性であるため、有機バインダーの存在によって、導電パターンの導電性が低下する。また、フレーク粉の扁平面同士が重なり合って導電パターンを形成しないため、特許文献1と同様に、有機バインダーが導電パターンに占める割合が一定でなく、導電パターンの導電性が低下する。また、特許文献1と同様に、導電性を向上させるために、ペーストに占めるフレーク粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
以上に3つの従来技術を説明したが、いずれも扁平粉の扁平面同士が重なり合わない。また、固体の有機物質を介して扁平粉を結合させるため、扁平粉の集まりに、有機物質の性質が反映される。
例えば、特許文献1には、3級アミン置換ポリスチレンで銅の扁平粉を被覆する導電性ペーストが記載されている。しかしながら、銅の扁平粉同士が、3級アミン置換ポリスチレンを介して接合し、また、3級アミン置換ポリスチレンの導電率が、銅の導電率より著しく低いため、導電性ペーストを用いて形成した導電皮膜の導電性は、銅に比べて劣る。さらに、銅の扁平粉の扁平同士が重なり合って皮膜を形成しないため、3級アミン置換ポリスチレンが皮膜に占める割合が一定でなく、部分的に多くの割合を皮膜に占めることで、皮膜の導電性はさらに下がる。また、導電性を向上させるために、導電性ペーストに占める銅の扁平粉の割合を増大させると、銅の扁平粉の分散性が悪化する。また、導電性ペーストの粘度が上昇し、導電性ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
また、特許文献2には、高周波数の電磁ノイズを抑制する複合磁性シートとして、有機バインダーに分散した磁性扁平粉が記載されている。しかしながら、有機バインダーは非磁性体であるため、有機バインダーの存在によって、電磁ノイズを吸収する効率が下がる。また、磁性扁平粉の扁平面同士が重なり合って複合磁性シートを形成しないため、扁平面が電磁ノイズを吸収せず、扁平磁性粉が吸収する電磁ノイズの効率が下がる。また、特許文献1と同様に、電磁ノイズを吸収する効率を向上させるために、バインダーに占める磁性扁平粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
さらに、特許文献3には、フレーク粉末が有機バインダーに分散された導電パターンを形成する導電性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、有機バインダーは絶縁性であるため、有機バインダーの存在によって、導電パターンの導電性が低下する。また、フレーク粉の扁平面同士が重なり合って導電パターンを形成しないため、特許文献1と同様に、有機バインダーが導電パターンに占める割合が一定でなく、導電パターンの導電性が低下する。また、特許文献1と同様に、導電性を向上させるために、ペーストに占めるフレーク粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
以上に3つの従来技術を説明したが、いずれも扁平粉の扁平面同士が重なり合わない。また、固体の有機物質を介して扁平粉を結合させるため、扁平粉の集まりに、有機物質の性質が反映される。
ところで、平均粒径がミクロンサイズで、厚みがサブミクロンからなる扁平粉は、固有の形状と粒度分布とを持ち、扁平粉同士を直接結合することは困難を伴う。このため、従来は、バインダー中の有機溶剤を気化させ、固体の高分子材料同士の結合を介して扁平粉同士を結合させる。しかし、高分子材料が扁平粉とは異なる性質を持つため、結合された扁平粉の集まりに、高分子材料の性質が反映する。このように、一定の体積を占有する固体の異種材料の結合を介して扁平粉を結合すると、異種材料の性質が反映され、扁平粉が持つ固有の性質を犠牲にせざるを得ない。さらに、扁平粉の扁平面同士を重なり合わせ、扁平粉同士を直接結合することは、さらに困難である。
つまり、固体は一定の形と体積とを持つため、固体を介して扁平粉同士を結合すると、固体が一定の体積を占め、扁平粉の集まりに、固体の性質が反映する。これに対し、液体は、分子が自由に動くエネルギーを持ち、液体の形状は自由に変わる。しかし、液体を介して扁平面同士を重ね合わせ、さらに、この扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に液体を介して接合させるには、液体に接合力を実現させることから容易でない。
しかしながら、第一に、扁平粉の集まりを基材ないしは部品に形成する際に、基材ないしは部品の表面に存在する空気を排除する。第二に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、基材ないしは部品の表面の凹部に、空気と入れ替わって入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体が、凹部から出にくくなるアンカー効果を発揮する。第三に、前記粘稠性の液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。第四に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを、前記粘稠性の液体で被覆する。第五に、前記液体の皮膜と前記液体の被膜の双方の厚みが、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。第六に、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりの厚みは、数ミクロンと薄い。これら6つの事項が実現できれば、第一に、粘稠性の液体のアンカー効果で、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着する。第二に、前記扁平粉の集まりが極めて軽量で、前記粘稠性の液体によるアンカー効果の付着力が小さくても、前記扁平粉の集まりは、基材ないしは部品から剥がれにくい。第三に、前記液体の被膜が極薄く、該液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、扁平粉の性質を示す。第四に、使用する扁平粉の量が極僅かで、高価な扁平粉を用いても、安価な費用で前記扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着できる。しかし、こうした試みはこれまでのところ皆無である。
ところで、扁平粉は、前記のように、無機物、金属酸化物、金属あるいは合金など様々な材質からなり、様々な用途に用いられている。さらに、表面を加工し、様々な色彩を放つ扁平粉も存在する。従って、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の全般について、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを液体の被膜で覆った皮膜を、基材ないしは部品に付着させ、この皮膜が数ミクロンの厚みであれば、僅かな量の扁平粉で、一定の面積を持つ皮膜が安価に製造できる。この扁平粉の性質を持つ皮膜は、様々な用途に用いることができる。
この皮膜を実現するには、前記した6つの事項が実現できなければならない。さらに、第七に、前記粘稠性の液体が、常温における蒸気圧が小さく、蒸発量が極めて僅かであれば、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、長期に亘って撥水性と防汚性とを維持する。第八に、前記液体の発火点が高ければ、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは難燃性ないしは不燃性を持つ。これら8つの要件が実現できれば、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品に、扁平粉の性質をはじめとする様々な性質を、長期間付与する画期的な皮膜になる。
さらに、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に形成するには、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体を希釈した液体に浸漬した塗料が作成できる。第二に、様々な材質と形状からなる基材ないしは部品に、塗料を塗付して塗膜が形成できる。第三に、塗膜から前記液体を希釈した液体を気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気が塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面の凹部に、前記粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、アンカー効果を発揮する。これら3つの事項が実現できれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが基材ないしは部品に付着できる。しかし、このような試みもこれまでのところ全くない。
従って、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に付着させるには、次の課題が発生する。第一に、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の扁平面同士を重ね合わせる。第二に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを塗料化する。第三に、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、塗料を基材ないしは部品に塗付し塗膜を形成する。第四に、塗膜を熱処理すると、扁平粉の性質を持ち、厚みが極めて薄く、極軽量の粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に一定の強度で付着する。本発明が解決しようとする課題は、これら4つの事項で、4つの課題を解決すると、粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に付着する。
つまり、固体は一定の形と体積とを持つため、固体を介して扁平粉同士を結合すると、固体が一定の体積を占め、扁平粉の集まりに、固体の性質が反映する。これに対し、液体は、分子が自由に動くエネルギーを持ち、液体の形状は自由に変わる。しかし、液体を介して扁平面同士を重ね合わせ、さらに、この扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に液体を介して接合させるには、液体に接合力を実現させることから容易でない。
しかしながら、第一に、扁平粉の集まりを基材ないしは部品に形成する際に、基材ないしは部品の表面に存在する空気を排除する。第二に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、基材ないしは部品の表面の凹部に、空気と入れ替わって入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体が、凹部から出にくくなるアンカー効果を発揮する。第三に、前記粘稠性の液体を介して扁平面同士を重ね合わせる。第四に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを、前記粘稠性の液体で被覆する。第五に、前記液体の皮膜と前記液体の被膜の双方の厚みが、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。第六に、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりの厚みは、数ミクロンと薄い。これら6つの事項が実現できれば、第一に、粘稠性の液体のアンカー効果で、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着する。第二に、前記扁平粉の集まりが極めて軽量で、前記粘稠性の液体によるアンカー効果の付着力が小さくても、前記扁平粉の集まりは、基材ないしは部品から剥がれにくい。第三に、前記液体の被膜が極薄く、該液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、扁平粉の性質を示す。第四に、使用する扁平粉の量が極僅かで、高価な扁平粉を用いても、安価な費用で前記扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着できる。しかし、こうした試みはこれまでのところ皆無である。
ところで、扁平粉は、前記のように、無機物、金属酸化物、金属あるいは合金など様々な材質からなり、様々な用途に用いられている。さらに、表面を加工し、様々な色彩を放つ扁平粉も存在する。従って、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の全般について、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを液体の被膜で覆った皮膜を、基材ないしは部品に付着させ、この皮膜が数ミクロンの厚みであれば、僅かな量の扁平粉で、一定の面積を持つ皮膜が安価に製造できる。この扁平粉の性質を持つ皮膜は、様々な用途に用いることができる。
この皮膜を実現するには、前記した6つの事項が実現できなければならない。さらに、第七に、前記粘稠性の液体が、常温における蒸気圧が小さく、蒸発量が極めて僅かであれば、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、長期に亘って撥水性と防汚性とを維持する。第八に、前記液体の発火点が高ければ、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは難燃性ないしは不燃性を持つ。これら8つの要件が実現できれば、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品に、扁平粉の性質をはじめとする様々な性質を、長期間付与する画期的な皮膜になる。
さらに、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に形成するには、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体を希釈した液体に浸漬した塗料が作成できる。第二に、様々な材質と形状からなる基材ないしは部品に、塗料を塗付して塗膜が形成できる。第三に、塗膜から前記液体を希釈した液体を気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気が塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面の凹部に、前記粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、アンカー効果を発揮する。これら3つの事項が実現できれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが基材ないしは部品に付着できる。しかし、このような試みもこれまでのところ全くない。
従って、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に付着させるには、次の課題が発生する。第一に、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の扁平面同士を重ね合わせる。第二に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを塗料化する。第三に、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、塗料を基材ないしは部品に塗付し塗膜を形成する。第四に、塗膜を熱処理すると、扁平粉の性質を持ち、厚みが極めて薄く、極軽量の粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に一定の強度で付着する。本発明が解決しようとする課題は、これら4つの事項で、4つの課題を解決すると、粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に付着する。
本発明に係わる扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが液体中に沈降した塗料を製造する製造方法は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールの粘度の30倍より高い粘度を持つ第二の性質と、沸点が180℃より高い、ないしは、不揮発性である第3の性質を兼備する液体を、前記アルコールに10重量%より少ない割合で混合してアルコール希釈液を作成し、該アルコール希釈液の密度の2.5倍より高い密度を有する扁平粉の集まりを、前記液体の体積の2.0倍より多い体積を占める量として、前記アルコール希釈液に混合して懸濁液を作成する、この後、該懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、該容器にホモジナイザー装置を配置し、該ホモジナイザー装置によって、前記懸濁液に衝撃を加え、さらに、前記容器に3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加える、これによって、前記扁平粉の集まりは、扁平面同士が重なり合って前記容器の底面の全体に広がって沈み、該扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が製造される、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが液体中に沈降した塗料を製造する製造方法である。
本塗料の製造方法は、次の簡単な6つの工程を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が製造される。第一の工程で、液体のアルコール希釈液を作成する。第二の工程で、アルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、懸濁液を作成する。第三の工程で、懸濁液を平面からなる底面を持つ容器に移す。第四の工程で、容器にホモジナイザー装置を配置する。第五の工程で、懸濁液に衝撃を加える。第六の工程で、容器に3方向の振動を繰り返し加える。このため、安価な製造費で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
すなわち、第一の処理は、3つの性質を持つ液体をアルコールで希釈するだけである。第二の処理は、アルコール希釈液に扁平粉を混合するだけである。第三の処理は、懸濁液を容器に移すだけである。第四の処理は、容器にホモジナイザー措置を配置するだけである。第五の処理は、ホモジナイザー装置によって、懸濁液に衝撃を加えるだけである。第六の処理は、容器に3方向の振動を繰り返し加えるだけである。こうした極めて簡単な6つの処理を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
ここで、前記した第五と第六の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降する過程を説明する。
扁平粉は、厚さに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、大気雰囲気で取り扱う際に、扁平面同士が複雑に重なり合う。また、扁平粉が微細で軽量であるため、扁平面同士で重なり合っているか否かは識別しにくい。いっぽう、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉の集まりで皮膜を形成し、この皮膜に応力が加わると、扁平粉の集まりの厚みが薄いほど、扁平面同士が重なり合った部位で、扁平粉の集まりが分離する。また、複雑に重なり合った扁平粉が、個々の扁平粉に分離できれば、扁平粉の使用量が減る。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、確実に分離させる必要がある。いっぽう、大気雰囲気で、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉を分離しようとすると、重なり合った扁平面に摩擦力が発生し、分離は容易でない。また、扁平面同士が重なり合っているか否かの識別自体が難しい。しかし、低粘度のアルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、希釈液に衝撃を加えると、衝撃がアルコール希釈液の全体に広がり、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位にも加わり、重なり合った扁平面が容易に分離する。このため、第五の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉を、確実に分離できる。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、アルコール希釈液で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が、アルコール希釈液の全体に継続して発生し、重なり合った扁平粉が短時間で個々の扁平粉に分離する。この結果、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。
この後、前記した第六の処理において、容器に、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、前記した第五の処理によって、全ての扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触しているため、全ての扁平粉が低粘度のアルコール希釈液中を自在に移動する。なお、扁平粉の密度が、アルコール希釈液の密度の2.5倍より大きいため、振動を加えられた扁平粉は、希釈液に沈んだ状態で移動する。左右方向と前後方向との振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に左右方向と前後方向との振動加速度を掛けた値に近い力が扁平粉に作用し、容器の底面の左右方向と前後方向とに、扁平面を上下方向にして扁平粉が広がり、容器の底面を扁平粉の集まりが占める。また、上下方向の振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に上下方向の振動加速度を掛けた値に近い力が扁平面に作用し、扁平面同士が重なり合う。最後に上下方向の振動を加え、容器への加振を停止する。この結果、扁平面同士がアルコール希釈液の薄い皮膜を介して重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、容器の底面の全体に広がって製造される。従って、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの厚みは、容器の底面積と、使用した扁平粉の量によって決まる。従って、使用する扁平粉の量が少なくなるほど、重なり合った扁平粉の集まりの厚みは薄くなる。なお、扁平粉が極めて軽量であるため、加える振動加速度は0.5Gより小さい。
ここで、本塗料の製造方法で製造した塗料の作用効果を説明する。
第一に、複雑に重なり合った扁平粉が、確実に個々の扁平粉に分離するとともに、扁平粉の材質、形状、粒度分布に拘わらず、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。なお、扁平粉はいずれも表面は疎水性で、アルコール希釈液と反応せず、扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触する。この後、扁平粉の集まりに、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加えると、扁平粉が容器の底面の全体に広がり、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、平面からなる容器の底面の全体に浸漬して製造される。これによって、5段落に記載した第一と第二の課題とが解決された。
第二に、アスペクト比が大きい扁平粉について、個々の扁平粉に分離した扁平粉が、扁平面同士で重なり合うため、極僅かな扁平粉の使用量によって、扁平粉の集まりは一定の面積を持つ。このため、高価な扁平粉を用いても、安価な塗料になる。
第三に、液体の使用量が、体積に換算して、扁平粉の使用量の1/2より少ないため、扁平粉の使用量が少なければ、液体の使用量がさらに少なくなる。従って、不揮発性の液体が高価であっても、塗料の製造費は安価で済む。
第四に、安価な材料を用い、安価な費用で、塗料が製造できる。すなわち、使用する液体と扁平粉との量が僅かである。また、塗料を製造する製造方法は、いずれも極めて簡単な6つの処理からなり、塗料の製造費は安価で済む。
以上に説明したように、本製造方法で製造した塗料は、個々の扁平粉に分離された扁平粉が、液体を介して扁平面同士が重なり合うという観点から、従来の扁平粉の集まりにはない画期的な扁平粉の集まりになる。
すなわち、第一の処理は、3つの性質を持つ液体をアルコールで希釈するだけである。第二の処理は、アルコール希釈液に扁平粉を混合するだけである。第三の処理は、懸濁液を容器に移すだけである。第四の処理は、容器にホモジナイザー措置を配置するだけである。第五の処理は、ホモジナイザー装置によって、懸濁液に衝撃を加えるだけである。第六の処理は、容器に3方向の振動を繰り返し加えるだけである。こうした極めて簡単な6つの処理を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
ここで、前記した第五と第六の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降する過程を説明する。
扁平粉は、厚さに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、大気雰囲気で取り扱う際に、扁平面同士が複雑に重なり合う。また、扁平粉が微細で軽量であるため、扁平面同士で重なり合っているか否かは識別しにくい。いっぽう、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉の集まりで皮膜を形成し、この皮膜に応力が加わると、扁平粉の集まりの厚みが薄いほど、扁平面同士が重なり合った部位で、扁平粉の集まりが分離する。また、複雑に重なり合った扁平粉が、個々の扁平粉に分離できれば、扁平粉の使用量が減る。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、確実に分離させる必要がある。いっぽう、大気雰囲気で、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉を分離しようとすると、重なり合った扁平面に摩擦力が発生し、分離は容易でない。また、扁平面同士が重なり合っているか否かの識別自体が難しい。しかし、低粘度のアルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、希釈液に衝撃を加えると、衝撃がアルコール希釈液の全体に広がり、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位にも加わり、重なり合った扁平面が容易に分離する。このため、第五の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉を、確実に分離できる。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、アルコール希釈液で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が、アルコール希釈液の全体に継続して発生し、重なり合った扁平粉が短時間で個々の扁平粉に分離する。この結果、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。
この後、前記した第六の処理において、容器に、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、前記した第五の処理によって、全ての扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触しているため、全ての扁平粉が低粘度のアルコール希釈液中を自在に移動する。なお、扁平粉の密度が、アルコール希釈液の密度の2.5倍より大きいため、振動を加えられた扁平粉は、希釈液に沈んだ状態で移動する。左右方向と前後方向との振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に左右方向と前後方向との振動加速度を掛けた値に近い力が扁平粉に作用し、容器の底面の左右方向と前後方向とに、扁平面を上下方向にして扁平粉が広がり、容器の底面を扁平粉の集まりが占める。また、上下方向の振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に上下方向の振動加速度を掛けた値に近い力が扁平面に作用し、扁平面同士が重なり合う。最後に上下方向の振動を加え、容器への加振を停止する。この結果、扁平面同士がアルコール希釈液の薄い皮膜を介して重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、容器の底面の全体に広がって製造される。従って、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの厚みは、容器の底面積と、使用した扁平粉の量によって決まる。従って、使用する扁平粉の量が少なくなるほど、重なり合った扁平粉の集まりの厚みは薄くなる。なお、扁平粉が極めて軽量であるため、加える振動加速度は0.5Gより小さい。
ここで、本塗料の製造方法で製造した塗料の作用効果を説明する。
第一に、複雑に重なり合った扁平粉が、確実に個々の扁平粉に分離するとともに、扁平粉の材質、形状、粒度分布に拘わらず、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。なお、扁平粉はいずれも表面は疎水性で、アルコール希釈液と反応せず、扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触する。この後、扁平粉の集まりに、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加えると、扁平粉が容器の底面の全体に広がり、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、平面からなる容器の底面の全体に浸漬して製造される。これによって、5段落に記載した第一と第二の課題とが解決された。
第二に、アスペクト比が大きい扁平粉について、個々の扁平粉に分離した扁平粉が、扁平面同士で重なり合うため、極僅かな扁平粉の使用量によって、扁平粉の集まりは一定の面積を持つ。このため、高価な扁平粉を用いても、安価な塗料になる。
第三に、液体の使用量が、体積に換算して、扁平粉の使用量の1/2より少ないため、扁平粉の使用量が少なければ、液体の使用量がさらに少なくなる。従って、不揮発性の液体が高価であっても、塗料の製造費は安価で済む。
第四に、安価な材料を用い、安価な費用で、塗料が製造できる。すなわち、使用する液体と扁平粉との量が僅かである。また、塗料を製造する製造方法は、いずれも極めて簡単な6つの処理からなり、塗料の製造費は安価で済む。
以上に説明したように、本製造方法で製造した塗料は、個々の扁平粉に分離された扁平粉が、液体を介して扁平面同士が重なり合うという観点から、従来の扁平粉の集まりにはない画期的な扁平粉の集まりになる。
前記した製造方法で製造した塗料を用いて、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法は、前記した塗料を製造する際に用いた容器の底面より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が開放され、該解放された側面の部位から塗料が零れ落ちる構造を持つ第二の特徴を兼備する容器に、前記した製造方法で製造した塗料を移し、該容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加える、この後、該容器を予め設定した角度に傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、前記傾斜した容器の底面に、該底面の垂直方向に継続して加える、さらに、前記塗料を塗布する基材ないしは部品は、前記傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する、この後、前記傾斜した容器の側面の一部を、前記基材ないしは前記部品に形成する塗膜の幅に相当する幅で開放し、さらに、前記基材ないしは前記部品を、前記ベルトコンベアー上を予め定めた速度で水平方向に移動させ、前記解放した容器の側面から、前記塗膜の幅に相当する帯状の塗料が、該塗料の自重で零れ落ち、前記基材ないしは前記部品に前記塗膜を形成する、この後、前記基材ないしは前記部品を、前記塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、前記塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する、これによって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体の被膜で覆われた皮膜が、前記基材ないしは前記部品に形成される、前記した製造方法で製造した塗料を用いて、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法である。
つまり、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成するには、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に浸漬した塗料の構造を、塗膜が維持することが必須になる。このため、塗膜を形成する際に、塗料に余計な力が作用せず、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れないことが必要になる。従って、基材ないしは部品が、容器から近距離に配置させたベルトコンベアー上で水平方向に移動し、また、塗料を収納した容器を傾斜させ、塗膜の幅からなる塗料が、傾斜した容器から自重で零れ落ち、これによって、基材ないしは部品に塗膜を形成する方法が有効であると考えた。
しかし、自重で零れ落ちた塗料が、基材ないしは部品に付着力を発生しなければならない。このため、塗膜が形成された基材ないしは部品を昇温し、過剰のアルコールを塗膜から気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気がアルコールとともに塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、この液体がアンカー効果を発揮する。この結果、基材ないしは部品に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性を持つ液体の被膜で覆われた構成からなる皮膜が付着する。いっぽう、皮膜の面積が広がると、皮膜の重量が増大するが、粘稠性の液体のアンカー効果も増加する。皮膜が極めて軽量であれば、アンカー効果の増加の割合が、皮膜の重量の増加の割合を超え、皮膜の面積が広がるほど、皮膜の付着力が増大すると考えた。従って、皮膜は厚みが数ミクロンと薄く、極めて軽量である。
この考えを実現させるため、最初に、塗料が自重で零れ落ちる容器を準備する。すなわち、6段落に記載した塗料を製造する際に用いた容器より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が、形成する塗膜の幅に応じた幅で開放でき、傾斜させた容器の側面から塗料が零れ落ちる構造からなる第二の特徴とを兼備する容器を用意する。さらに、6段落で記載した方法で製造した塗料を容器に移し、容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加え、6段落で説明した塗料と同様に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、容器の底面の全体に広がって作成される。さらに、塗料が入った容器を、予め設定した角度で傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、容器の底面の垂直方向に継続して加え、塗料が自重で継続して零れ落ちるようにする。なお、傾斜した容器に加える振動が強すぎると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れるため、事前に、扁平粉の配列が壊れないことを確認する。こうして、塗料が自重で零れ落ちる容器の準備ができた。
次に、塗料が塗布される基材ないしは部品を準備する。基材ないしは部品は、前記した傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する。これによって、基材ないしは部品の準備ができた。
さらに、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、塗料が自重で零れ落ちる速度、すなわち、容器の傾斜角度と容器の底面に加える上下方向の振動加速度と、基材ないしは部品がベルトコンベアー上を移動する速度とを事前に調整し、基材ないしは部品の表面に、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、零れ落ちた塗料が、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に浸漬した状態を維持する塗膜として形成される条件を、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、容器の傾斜角度と、容器の底面に加える上下方向の振動加速度の大きさと、ベルトコンベアーの移動速度として、予め求める。
この後、傾斜させた容器の下端部に、予め求めた距離でベルトコンベアーを配置し、また、容器を予め求めた角度で傾斜させ、さらに、基材ないしは部品を、ベルトコンベアー上を予め求めた速度で水平方向に移動させ、この後、容器の側面の一部を、塗膜の幅に相当する幅で開放し、容器の側面から、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、基材ないしは部品に塗膜を形成する。
こうして、基材ないしは部品の大きさや形状に依らず、基材ないしは部品に塗膜が形成できる。これによって、5段落に記載した第三の課題が解決された。
いっぽう、連続して基材ないしは部品に塗膜を形成する場合は、予め次の準備を行う。すなわち、基材ないしは部品が、ベルトコンベアー上を移動する速度と、ベルトコンベアーに配置される間隔との双方が、容器の側面の一部を開放するタイミングと開放時間とに、合致する条件を予め求め、基材ないしは部品の同一個所に、同一の塗膜を形成する準備を行う。
この後、基材ないしは部品を、塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する。この際、基材ないしは部品の表面に存在する空気が体積膨張し、膨張した空気が気化したアルコールとともに塗膜から外界に吐き出る。例えば、180℃に昇温すると、空気の体積は、20℃に比べ、1.55倍に体積が膨張する。また、180℃における空気の密度は、0.754×10−3g/cm3と液体の密度より3桁も小さい。さらに、アルコールの蒸気密度は空気の密度の3倍より小さい。このため、体積膨張した空気と気化したアルコールとが、粘稠性の液体を押しのけ、塗膜から外界に吐き出され、空気と入れ替わって、粘稠性の液体が基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体は、アンカー効果によって凹部から出にくくなる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性の液体の被膜で覆われた皮膜が、基材ないしは部品に付着する。これによって、5段落に記載した第四の課題が解決され、5段落に記載した全ての課題が解決された。なお、気化したアルコールは、回収装置で回収し、再利用する。
なお、基材ないしは部品に付着した皮膜の表面は、沸点が180℃より高く、常温における蒸発量が極めて僅かな液体で覆われる、ないしは、不揮発性の液体で覆われる。このため、皮膜の表面は長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、液体で覆われた皮膜は、難燃性ないしは不燃性の性質を持つ。
さらに、塗料を作成する際に、扁平粉の量を、液体の2倍より多い体積を占める量として用いたため、皮膜を覆う液体の被膜の厚みは、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。また、容器内の塗料に3方向の振動を加え、扁平粉の集まりを容器の底面に広げるとともに、扁平面同士を重ね合わせ、この後、過剰なアルコールを気化させたため、扁平面同士を付着させる液体の皮膜は、前記液体の被膜の厚みよりさらに厚みが薄い。このため、皮膜は扁平粉の性質を持つ。さらに、塗料を作成する際の扁平粉の使用量を少なくすれば、皮膜が数ミクロンの厚みになり、基材ないしは部品に形成した皮膜は認知されにくい。また、皮膜を模倣して製造するには、6段落に記載した塗料の製造方法と、8段落に記載した皮膜の形成方法との理解が必須になるため難しい。さらに、極めて軽量である皮膜は、基材ないしは部品の表面から離脱しにくい。
以上に説明したように、本皮膜を形成する方法による液体で覆われた扁平粉の集まりは、5段落で説明した8つの要件を満たし、基材ないしは部品に付着する。
しかし、自重で零れ落ちた塗料が、基材ないしは部品に付着力を発生しなければならない。このため、塗膜が形成された基材ないしは部品を昇温し、過剰のアルコールを塗膜から気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気がアルコールとともに塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、この液体がアンカー効果を発揮する。この結果、基材ないしは部品に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性を持つ液体の被膜で覆われた構成からなる皮膜が付着する。いっぽう、皮膜の面積が広がると、皮膜の重量が増大するが、粘稠性の液体のアンカー効果も増加する。皮膜が極めて軽量であれば、アンカー効果の増加の割合が、皮膜の重量の増加の割合を超え、皮膜の面積が広がるほど、皮膜の付着力が増大すると考えた。従って、皮膜は厚みが数ミクロンと薄く、極めて軽量である。
この考えを実現させるため、最初に、塗料が自重で零れ落ちる容器を準備する。すなわち、6段落に記載した塗料を製造する際に用いた容器より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が、形成する塗膜の幅に応じた幅で開放でき、傾斜させた容器の側面から塗料が零れ落ちる構造からなる第二の特徴とを兼備する容器を用意する。さらに、6段落で記載した方法で製造した塗料を容器に移し、容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加え、6段落で説明した塗料と同様に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、容器の底面の全体に広がって作成される。さらに、塗料が入った容器を、予め設定した角度で傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、容器の底面の垂直方向に継続して加え、塗料が自重で継続して零れ落ちるようにする。なお、傾斜した容器に加える振動が強すぎると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れるため、事前に、扁平粉の配列が壊れないことを確認する。こうして、塗料が自重で零れ落ちる容器の準備ができた。
次に、塗料が塗布される基材ないしは部品を準備する。基材ないしは部品は、前記した傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する。これによって、基材ないしは部品の準備ができた。
さらに、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、塗料が自重で零れ落ちる速度、すなわち、容器の傾斜角度と容器の底面に加える上下方向の振動加速度と、基材ないしは部品がベルトコンベアー上を移動する速度とを事前に調整し、基材ないしは部品の表面に、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、零れ落ちた塗料が、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に浸漬した状態を維持する塗膜として形成される条件を、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、容器の傾斜角度と、容器の底面に加える上下方向の振動加速度の大きさと、ベルトコンベアーの移動速度として、予め求める。
この後、傾斜させた容器の下端部に、予め求めた距離でベルトコンベアーを配置し、また、容器を予め求めた角度で傾斜させ、さらに、基材ないしは部品を、ベルトコンベアー上を予め求めた速度で水平方向に移動させ、この後、容器の側面の一部を、塗膜の幅に相当する幅で開放し、容器の側面から、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、基材ないしは部品に塗膜を形成する。
こうして、基材ないしは部品の大きさや形状に依らず、基材ないしは部品に塗膜が形成できる。これによって、5段落に記載した第三の課題が解決された。
いっぽう、連続して基材ないしは部品に塗膜を形成する場合は、予め次の準備を行う。すなわち、基材ないしは部品が、ベルトコンベアー上を移動する速度と、ベルトコンベアーに配置される間隔との双方が、容器の側面の一部を開放するタイミングと開放時間とに、合致する条件を予め求め、基材ないしは部品の同一個所に、同一の塗膜を形成する準備を行う。
この後、基材ないしは部品を、塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する。この際、基材ないしは部品の表面に存在する空気が体積膨張し、膨張した空気が気化したアルコールとともに塗膜から外界に吐き出る。例えば、180℃に昇温すると、空気の体積は、20℃に比べ、1.55倍に体積が膨張する。また、180℃における空気の密度は、0.754×10−3g/cm3と液体の密度より3桁も小さい。さらに、アルコールの蒸気密度は空気の密度の3倍より小さい。このため、体積膨張した空気と気化したアルコールとが、粘稠性の液体を押しのけ、塗膜から外界に吐き出され、空気と入れ替わって、粘稠性の液体が基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体は、アンカー効果によって凹部から出にくくなる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性の液体の被膜で覆われた皮膜が、基材ないしは部品に付着する。これによって、5段落に記載した第四の課題が解決され、5段落に記載した全ての課題が解決された。なお、気化したアルコールは、回収装置で回収し、再利用する。
なお、基材ないしは部品に付着した皮膜の表面は、沸点が180℃より高く、常温における蒸発量が極めて僅かな液体で覆われる、ないしは、不揮発性の液体で覆われる。このため、皮膜の表面は長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、液体で覆われた皮膜は、難燃性ないしは不燃性の性質を持つ。
さらに、塗料を作成する際に、扁平粉の量を、液体の2倍より多い体積を占める量として用いたため、皮膜を覆う液体の被膜の厚みは、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。また、容器内の塗料に3方向の振動を加え、扁平粉の集まりを容器の底面に広げるとともに、扁平面同士を重ね合わせ、この後、過剰なアルコールを気化させたため、扁平面同士を付着させる液体の皮膜は、前記液体の被膜の厚みよりさらに厚みが薄い。このため、皮膜は扁平粉の性質を持つ。さらに、塗料を作成する際の扁平粉の使用量を少なくすれば、皮膜が数ミクロンの厚みになり、基材ないしは部品に形成した皮膜は認知されにくい。また、皮膜を模倣して製造するには、6段落に記載した塗料の製造方法と、8段落に記載した皮膜の形成方法との理解が必須になるため難しい。さらに、極めて軽量である皮膜は、基材ないしは部品の表面から離脱しにくい。
以上に説明したように、本皮膜を形成する方法による液体で覆われた扁平粉の集まりは、5段落で説明した8つの要件を満たし、基材ないしは部品に付着する。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する方法であり、該導電性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてイオン液体を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する、導電性の皮膜を形成する方法である。
つまり、導電性に優れた扁平粉を用い、液体として導電性のイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた導電性が付与される。
こうした導電性に優れた第一の扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉がある。なお、軟質金属からなる扁平粉は、フレーク粉と呼ばれることが多いため、ここでは、フレーク粉として記載する。すなわち、アルミニウムを除く金、銀、銅、錫ないしは亜鉛などから軟質金属の粉体を、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で軟質金属粉の集まりを叩き、薄いフレーク状に金属粉を延ばすことで製造される。原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。なお、アルミニウムについては、微粒子の活性度が高いため、アトマイズ法で製造した微粒子を、湿式ボールミルで扁平処理する。従って、扁平粉は、金属の電気導電度を持ち、扁平粉の真密度は金属の密度になる。さらに、粉体の厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜が形成できる。また、フレーク粉の摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。従って、皮膜が摺接摩擦を行う際は、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑るため、摺接部材によるせん断応力が緩和され、皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。また、フレーク粉の耐荷重性は600MPaと高いため、軟質金属からなるフレーク粉を用いると、皮膜は導電性皮膜の機能のみならず、潤滑性皮膜としても作用する。いっぽう、アルミニウムと錫を除く軟質金属のフレーク粉の耐熱温度は軟化点で決まり、最も軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属のフレーク粉を用いた皮膜は、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、アルミニウムの軟化点は350℃である。また、錫の融点は232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫のフレーク粉からなる皮膜は、使用温度が制限される。
導電性に優れた第二の扁平粉として、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛は、天然黒鉛を精製して製造する扁平粉である。また、熱分解黒鉛は、炭化ケイ素SiCを生成する際の副産物として生成される。いずれも安価な粉体である。これらの黒鉛粉は、固定炭素が98%以上からなり、最も黒鉛の結晶度が高い炭素材料である。また、粉体が層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊する機械的な異方性を持つ。このため、摺接摩擦によって、層間結合が優先して破壊する自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。さらに、黒鉛粉の扁平面同士が重なり合った黒鉛粉の集まりからなる皮膜は、摺接部材が扁平面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、摩耗係数はさらに小さくなる。また、黒鉛粉は、電導性についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmで、銅の比抵抗の23倍に過ぎない。これに対し、黒鉛の結晶面に垂直な方向の比抵抗は、7.6×10−3Ωmと劣る。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、電流は比抵抗が小さい扁平面方向に優先して流れ、皮膜の導電度は、結晶面に平行な方向の導電度に近く、金属に準ずる導電度を示す。従って、皮膜は潤滑性皮膜の機能のみならず、導電性皮膜としても作用する。なお、黒鉛粉は大気雰囲気で450℃付近から酸化が始まるが、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜ないしは帯電防止膜などの用途に対しては、十分な耐熱性を持つ。また、低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。
なお、上記した扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、イオン液体は、第一に、カチオンとアニオンとの組み合わせからなるイオンだけからなる物質である。第二に、−30℃−300℃の温度範囲で液体である。第三に、蒸気圧を殆ど持たない不揮発性の液体であるため不燃性である。第四に、熱安定性に優れ、多くのイオン液体は、300℃でも熱分解しない。第五に、10−5−10−2S/cmと高いイオン導電率を持つ導電性物質である。第六に、疎水性のアニオンからなる一部のイオン液体を除く多くのイオン液体は親水性で、メタノールに任意の割合で混和する。第七に、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。すなわち、イオン液体は、同じカチオンでもアニオンによって粘度が大きく変わる。例えば、脂肪族四級アンモニウムカチオンに四フッ化ホウ酸アニオンを組み合わせたイオン液体の粘度は335mPa秒であるが、パーフルオロアルキル鎖を導入したアニオンとの組み合わせでは、粘度が58mPa秒に低減する。しかし、メタノールの粘度の30倍の粘度である17.7mPa秒に比べて高い。従って、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。第八に、1.2−1.6g/cm3の密度を持つ。なお、イオン液体の粘度が高いため、メタノール希釈液におけるメタノールの希釈割合を10重量%よりさらに高めれば、前記した黒鉛粉の密度は、イオン液体のメタノール希釈液の密度の2.5倍より高い密度になる。
以上に説明したように、イオン液体は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。さらに、高い導電性を持ち、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。また、不揮発性の液体であるため、導電性の皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、導電性の皮膜は、不燃性の性質を持つ。
いっぽう、イオン液体は、現在は高価な物質であるが、導電性皮膜を形成する際に使用する量が極少量であるため、導電性の皮膜を形成する原料費は高価にならない。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。なお、エタノールの蒸気密度が空気の1.6倍で、1−プロパノールと2−プロパノールとの双方の蒸気密度が空気の2.1倍で、1−ブタノールの蒸気密度が2.6倍である。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、導電性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に導電性皮膜が形成できる。
こうした導電性に優れた第一の扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉がある。なお、軟質金属からなる扁平粉は、フレーク粉と呼ばれることが多いため、ここでは、フレーク粉として記載する。すなわち、アルミニウムを除く金、銀、銅、錫ないしは亜鉛などから軟質金属の粉体を、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で軟質金属粉の集まりを叩き、薄いフレーク状に金属粉を延ばすことで製造される。原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。なお、アルミニウムについては、微粒子の活性度が高いため、アトマイズ法で製造した微粒子を、湿式ボールミルで扁平処理する。従って、扁平粉は、金属の電気導電度を持ち、扁平粉の真密度は金属の密度になる。さらに、粉体の厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜が形成できる。また、フレーク粉の摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。従って、皮膜が摺接摩擦を行う際は、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑るため、摺接部材によるせん断応力が緩和され、皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。また、フレーク粉の耐荷重性は600MPaと高いため、軟質金属からなるフレーク粉を用いると、皮膜は導電性皮膜の機能のみならず、潤滑性皮膜としても作用する。いっぽう、アルミニウムと錫を除く軟質金属のフレーク粉の耐熱温度は軟化点で決まり、最も軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属のフレーク粉を用いた皮膜は、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、アルミニウムの軟化点は350℃である。また、錫の融点は232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫のフレーク粉からなる皮膜は、使用温度が制限される。
導電性に優れた第二の扁平粉として、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛は、天然黒鉛を精製して製造する扁平粉である。また、熱分解黒鉛は、炭化ケイ素SiCを生成する際の副産物として生成される。いずれも安価な粉体である。これらの黒鉛粉は、固定炭素が98%以上からなり、最も黒鉛の結晶度が高い炭素材料である。また、粉体が層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊する機械的な異方性を持つ。このため、摺接摩擦によって、層間結合が優先して破壊する自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。さらに、黒鉛粉の扁平面同士が重なり合った黒鉛粉の集まりからなる皮膜は、摺接部材が扁平面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、摩耗係数はさらに小さくなる。また、黒鉛粉は、電導性についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmで、銅の比抵抗の23倍に過ぎない。これに対し、黒鉛の結晶面に垂直な方向の比抵抗は、7.6×10−3Ωmと劣る。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、電流は比抵抗が小さい扁平面方向に優先して流れ、皮膜の導電度は、結晶面に平行な方向の導電度に近く、金属に準ずる導電度を示す。従って、皮膜は潤滑性皮膜の機能のみならず、導電性皮膜としても作用する。なお、黒鉛粉は大気雰囲気で450℃付近から酸化が始まるが、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜ないしは帯電防止膜などの用途に対しては、十分な耐熱性を持つ。また、低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。
なお、上記した扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、イオン液体は、第一に、カチオンとアニオンとの組み合わせからなるイオンだけからなる物質である。第二に、−30℃−300℃の温度範囲で液体である。第三に、蒸気圧を殆ど持たない不揮発性の液体であるため不燃性である。第四に、熱安定性に優れ、多くのイオン液体は、300℃でも熱分解しない。第五に、10−5−10−2S/cmと高いイオン導電率を持つ導電性物質である。第六に、疎水性のアニオンからなる一部のイオン液体を除く多くのイオン液体は親水性で、メタノールに任意の割合で混和する。第七に、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。すなわち、イオン液体は、同じカチオンでもアニオンによって粘度が大きく変わる。例えば、脂肪族四級アンモニウムカチオンに四フッ化ホウ酸アニオンを組み合わせたイオン液体の粘度は335mPa秒であるが、パーフルオロアルキル鎖を導入したアニオンとの組み合わせでは、粘度が58mPa秒に低減する。しかし、メタノールの粘度の30倍の粘度である17.7mPa秒に比べて高い。従って、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。第八に、1.2−1.6g/cm3の密度を持つ。なお、イオン液体の粘度が高いため、メタノール希釈液におけるメタノールの希釈割合を10重量%よりさらに高めれば、前記した黒鉛粉の密度は、イオン液体のメタノール希釈液の密度の2.5倍より高い密度になる。
以上に説明したように、イオン液体は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。さらに、高い導電性を持ち、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。また、不揮発性の液体であるため、導電性の皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、導電性の皮膜は、不燃性の性質を持つ。
いっぽう、イオン液体は、現在は高価な物質であるが、導電性皮膜を形成する際に使用する量が極少量であるため、導電性の皮膜を形成する原料費は高価にならない。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。なお、エタノールの蒸気密度が空気の1.6倍で、1−プロパノールと2−プロパノールとの双方の蒸気密度が空気の2.1倍で、1−ブタノールの蒸気密度が2.6倍である。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、導電性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に導電性皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する方法であり、該熱伝導性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する、熱伝導性の皮膜を形成する方法である。
つまり、熱伝導性に優れた扁平粉を用い、液体として比熱容量が大きいグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた熱伝導性を付与できる。
ところで、熱伝導性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した銀、銅、金からなるフレーク粉がある。すなわち、熱伝導率が420W/mKである銀が、金属の中で最も熱伝導性に優れ、熱伝導率が398W/mKである銅が銀に続き、熱伝導率が320W/mKである金が銅に続く。
第二の熱伝導性に優れた扁平粉に、11段落で説明した鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。つまり、黒鉛粉は、熱伝導度度についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導率は300°Kで1950W/mKで、銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀より優れた熱導電性を示す。
第三の熱伝導性に優れた扁平粉に、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉がある。つまり、窒化ホウ素は、六方晶系と立方晶系との2つの結晶構造をとるが、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持ち、前記した黒鉛粉と同様に、熱伝導度に対し異方性を持つ。すなわち、結晶面に平行な方向の熱伝導率は410W/mKで、結晶面に垂直な方向の熱伝導率は、2W/mKである。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀に近い熱導電性を示す。
従って、熱伝導性に優れた扁平粉を用いた皮膜は、熱導電性皮膜として作用する。
なお、前記した熱伝導性の扁平粉の中で、黒鉛粉の密度が最も小さく、2.26g/cm3である。いっぽう、液体として用いるグリコール類の密度は、1.0−1.1g/cm3である。メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は、比熱容量が大きな液体であり、熱伝導の媒体として好適である。すなわち、最も比熱容量が大きな液体に、20℃で4.18kJ/kg・Kの比熱容量を持つ水がある。いっぽう、代表的なグリコール類であるエチレングリコールの比熱容量は、20℃で2.38kJ/kg・Kである。また、プロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.51kJ/kg・Kで、ジプロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.18kJ/kg・Kである。このように、グリコール類は、大きな比熱容量を持つ液体で、熱伝導性皮膜を構成する熱伝導の媒体として好適である。
また、グリコール類は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。すなわち、エチレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の36倍で、沸点が197℃で、発火点が398℃で、密度が1.1132g/cm3の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールの粘度の61倍で、沸点が244℃で、発火点が358℃で、密度が1.1160g/cm3の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、メタノールの粘度の82倍で、沸点が188℃で、発火点が420℃で、密度が1.038g/cm3の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の127倍で、沸点が232℃で、発火点が310℃で、密度が1.022g/cm3の液状モノマーである。
従って、グリコール類は、前記した熱伝導性の扁平粉とともに、熱伝導性皮膜を形成する際の優れた原料になる。なお、これら液状モノマーは昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。つまり、光や熱で容易に重合反応を起こす有機化合物を、液状モノマーとして用いる時は、必ず重合禁止剤ないしは重合防止剤が液状モノマーに添加されている。このため、これら液状モノマーは、昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。
また、エチレングリコールの沸点は197℃で、25℃における蒸気圧が6.67Pa(蒸気濃度が0.013%に相当する)と極めて低い。この蒸気圧は、−50℃における飽和水蒸気圧に近い値で、−50℃における飽和水蒸気量は0.038g/m3と極僅かである。従って、エチレングリコールの常温における蒸発量は極僅かである。また、プロピレングリコールは、グリコール類の中で最も低い188℃の沸点を持つが、20℃における蒸気圧は10.6Paと極めて低く、−41℃における飽和水蒸気圧に近い値である。さらに、ジエチレングリコールの蒸気圧は25℃で0.76Paと低く、ジプロピレングリコールの蒸気圧は20℃で1.3Paと低い。従って、グリコール類の常温における蒸発量は極僅かで、熱伝導性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。
さらに、最も発火点が低いジプロピレングリコールの発火点が310℃である。このため、熱伝導性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、熱伝導性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に熱伝導性皮膜が形成できる。
ところで、熱伝導性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した銀、銅、金からなるフレーク粉がある。すなわち、熱伝導率が420W/mKである銀が、金属の中で最も熱伝導性に優れ、熱伝導率が398W/mKである銅が銀に続き、熱伝導率が320W/mKである金が銅に続く。
第二の熱伝導性に優れた扁平粉に、11段落で説明した鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。つまり、黒鉛粉は、熱伝導度度についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導率は300°Kで1950W/mKで、銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀より優れた熱導電性を示す。
第三の熱伝導性に優れた扁平粉に、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉がある。つまり、窒化ホウ素は、六方晶系と立方晶系との2つの結晶構造をとるが、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持ち、前記した黒鉛粉と同様に、熱伝導度に対し異方性を持つ。すなわち、結晶面に平行な方向の熱伝導率は410W/mKで、結晶面に垂直な方向の熱伝導率は、2W/mKである。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀に近い熱導電性を示す。
従って、熱伝導性に優れた扁平粉を用いた皮膜は、熱導電性皮膜として作用する。
なお、前記した熱伝導性の扁平粉の中で、黒鉛粉の密度が最も小さく、2.26g/cm3である。いっぽう、液体として用いるグリコール類の密度は、1.0−1.1g/cm3である。メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は、比熱容量が大きな液体であり、熱伝導の媒体として好適である。すなわち、最も比熱容量が大きな液体に、20℃で4.18kJ/kg・Kの比熱容量を持つ水がある。いっぽう、代表的なグリコール類であるエチレングリコールの比熱容量は、20℃で2.38kJ/kg・Kである。また、プロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.51kJ/kg・Kで、ジプロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.18kJ/kg・Kである。このように、グリコール類は、大きな比熱容量を持つ液体で、熱伝導性皮膜を構成する熱伝導の媒体として好適である。
また、グリコール類は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。すなわち、エチレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の36倍で、沸点が197℃で、発火点が398℃で、密度が1.1132g/cm3の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールの粘度の61倍で、沸点が244℃で、発火点が358℃で、密度が1.1160g/cm3の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、メタノールの粘度の82倍で、沸点が188℃で、発火点が420℃で、密度が1.038g/cm3の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の127倍で、沸点が232℃で、発火点が310℃で、密度が1.022g/cm3の液状モノマーである。
従って、グリコール類は、前記した熱伝導性の扁平粉とともに、熱伝導性皮膜を形成する際の優れた原料になる。なお、これら液状モノマーは昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。つまり、光や熱で容易に重合反応を起こす有機化合物を、液状モノマーとして用いる時は、必ず重合禁止剤ないしは重合防止剤が液状モノマーに添加されている。このため、これら液状モノマーは、昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。
また、エチレングリコールの沸点は197℃で、25℃における蒸気圧が6.67Pa(蒸気濃度が0.013%に相当する)と極めて低い。この蒸気圧は、−50℃における飽和水蒸気圧に近い値で、−50℃における飽和水蒸気量は0.038g/m3と極僅かである。従って、エチレングリコールの常温における蒸発量は極僅かである。また、プロピレングリコールは、グリコール類の中で最も低い188℃の沸点を持つが、20℃における蒸気圧は10.6Paと極めて低く、−41℃における飽和水蒸気圧に近い値である。さらに、ジエチレングリコールの蒸気圧は25℃で0.76Paと低く、ジプロピレングリコールの蒸気圧は20℃で1.3Paと低い。従って、グリコール類の常温における蒸発量は極僅かで、熱伝導性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。
さらに、最も発火点が低いジプロピレングリコールの発火点が310℃である。このため、熱伝導性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、熱伝導性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に熱伝導性皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する方法であり、該絶縁性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する、絶縁性の皮膜を形成する方法である。
つまり、絶縁性に優れた扁平粉を用い、液体として絶縁性のグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に優れた絶縁性が付与される。
ところで、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素からなる扁平粉の電気抵抗率は、いずれも1014Ωcm以上の高い絶縁性を持つ。従って、極めて大きな絶縁抵抗を持つ絶縁性皮膜が形成される。なお、ガラス扁平粉は、ソーダ石灰ガラスのみが、1012Ωcmの電気抵抗率を持つ。また、ヘマタイト(酸化第二鉄Fe2O3のアルファ相からなる物質)の扁平粉は、電気抵抗率は108Ωcmと低い。しかし、扁平粉の厚みがサブミクロンであり、ヘマタイトの扁平粉の断面積を0.3μm×10μmとすると、扁平粉の単位長さ当たりの電気抵抗は、3.3×1016Ω/cmになる。いっぽう、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの電気抵抗は、極めて多数の扁平粉の電気抵抗の直列接続になり、ヘマタイトの扁平粉の集まりからなる絶縁性皮膜は、高い絶縁性を示す。なお、ヘマタイトの扁平粉は、ベンガラと呼ばれる赤色顔料で、汎用的な扁平粉である。
なお、シリカの扁平粉が、絶縁性の扁平粉の中で最も密度が小さく、2.2g/cm3である。いっぽう、グリコール類の密度は1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、シリカの密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなる扁平粉は、絶縁性の皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は絶縁性であるが、前記した扁平粉より絶縁性が低い。最も分子量が少なく、絶縁性が低い、エチレングリコールの比抵抗は106Ωcmである。しかし、皮膜を形成するグリコール類の厚みが極薄いため、例えば、厚みが0.1μmで、幅が1cmからなるエチレングリコールの皮膜の単位長さ当たりの電気抵抗は、1011Ω/cmと高い絶縁性を示す。また、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。従って、グリコール類に属する有機化合物は、前記した絶縁性の扁平粉とともに、絶縁性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類の沸点が高く、常温における蒸発量は極僅かであるため、絶縁性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類は発火点が高いため、絶縁性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。このため、メタノールは、絶縁性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
ところで、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素からなる扁平粉の電気抵抗率は、いずれも1014Ωcm以上の高い絶縁性を持つ。従って、極めて大きな絶縁抵抗を持つ絶縁性皮膜が形成される。なお、ガラス扁平粉は、ソーダ石灰ガラスのみが、1012Ωcmの電気抵抗率を持つ。また、ヘマタイト(酸化第二鉄Fe2O3のアルファ相からなる物質)の扁平粉は、電気抵抗率は108Ωcmと低い。しかし、扁平粉の厚みがサブミクロンであり、ヘマタイトの扁平粉の断面積を0.3μm×10μmとすると、扁平粉の単位長さ当たりの電気抵抗は、3.3×1016Ω/cmになる。いっぽう、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの電気抵抗は、極めて多数の扁平粉の電気抵抗の直列接続になり、ヘマタイトの扁平粉の集まりからなる絶縁性皮膜は、高い絶縁性を示す。なお、ヘマタイトの扁平粉は、ベンガラと呼ばれる赤色顔料で、汎用的な扁平粉である。
なお、シリカの扁平粉が、絶縁性の扁平粉の中で最も密度が小さく、2.2g/cm3である。いっぽう、グリコール類の密度は1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、シリカの密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなる扁平粉は、絶縁性の皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は絶縁性であるが、前記した扁平粉より絶縁性が低い。最も分子量が少なく、絶縁性が低い、エチレングリコールの比抵抗は106Ωcmである。しかし、皮膜を形成するグリコール類の厚みが極薄いため、例えば、厚みが0.1μmで、幅が1cmからなるエチレングリコールの皮膜の単位長さ当たりの電気抵抗は、1011Ω/cmと高い絶縁性を示す。また、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。従って、グリコール類に属する有機化合物は、前記した絶縁性の扁平粉とともに、絶縁性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類の沸点が高く、常温における蒸発量は極僅かであるため、絶縁性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類は発火点が高いため、絶縁性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。このため、メタノールは、絶縁性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する方法であり、該潤滑性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する、潤滑性の皮膜を形成する方法である。
つまり、潤滑性に優れた扁平粉を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた潤滑性を付与できる。
ところで、潤滑性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した軟質金属からなるフレーク粉がある。11段落で説明したように、摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。さらに、アスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉の集まりで、潤滑性被膜が形成できる。さらに、扁平面同士が重なり合って潤滑性被膜を形成するため、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。さらに、軟質金属は、金属間の相互溶解度が低い金属との組み合わせが可能になり、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少なくなる。例えば、銅フレーク粉の表面をメッキによって銀をコーティングした銀コート銅フレーク粉は、ないしは、銀フレーク粉は、鉄、ニッケル、コバルトないしはクロムと、銀との相互溶解度がゼロに近いため、これらの金属からなる摺接部材と、銀コート銅フレーク粉、ないしは、銀フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量はさらに少なくなる。また、鉄、クロム、アルミニウム、マグネシウムないしはケイ素と、錫との相互溶解度がゼロに近く、これらの金属からなる摺接部材と、錫フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性に優れ、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少ない。また、クロム、モリブデン、タングステンないしはニオブと、銅との相互溶解度が小さく、これらの金属からなる摺接部材と、銅フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量が少ない。
さらに、11段落で説明したように、錫とアルミニウムを除く金属フレーク粉の耐熱温度は、800℃以上と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属からなるフレーク粉の集まりからなる潤滑性皮膜は、油潤滑が適用できない高温、極低温、超真空、超高圧下など、過酷な環境でも使用できる。さらに、耐荷重性は600MPaと高い。このように、軟質金属からなるフレーク粉は、潤滑性皮膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。
潤滑性に優れた第二の扁平粉に、層状の結晶構造を持つ扁平粉がある。すなわち、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などの無機化合物からなる扁平粉と、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、いずれも層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊される。このため、摺接摩擦によって、層間結晶が優先して破壊される自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。また、本発明の潤滑性被膜の形成方法によれば、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりで潤滑性被膜が形成されるため、潤滑性皮膜の摩擦係数はさらに小さい。さらに、摺接部材が滑らかな面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜の摩耗速度がさらに遅くなる。なお、窒化ホウ素は、13段落で説明したように、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持つ。
いっぽう、耐熱温度は、窒化ホウ素は酸素ガスを含む雰囲気で900℃の耐熱性を持つ。これに対し、二硫化モリブデンは350℃付近から、二硫化タングステンは425℃付近から、黒鉛は450℃付近から酸化が始まる。フッ化黒鉛の熱分解の開始温度は、原料炭素によって変わるが、320−490℃である。このように、耐熱温度は材質によって変わるが、油潤滑より耐熱性が高い。なお、二硫化モリブデンが三酸化モリブデンに酸化されても、層状の結晶構造は維持されるため、酸化鉛に近い潤滑性能を持つが、酸化の際に硫黄ガスが発生するため、近辺にある金属を硫化させる恐れがある。また、耐荷重性が油潤滑より著しく高く、例えば、二硫化モリブデンと二硫化タングステンは780MPaで、黒鉛粉は490MPaと高い。
このように、層状の結晶構造を持つ無機化合物からなる扁平粉、ないしは、黒鉛粉は、潤滑性被膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。いっぽう、黒鉛粉は、層間に吸着するガスで潤滑され、真空中では吸着するガスがなくなり、摩擦係数が急増する。
なお、上記した潤滑性の扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。しかし、13段落で説明したように、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ無機化合物のフレーク粉と黒鉛粉とは、本発明の潤滑性被膜を形成する方法における好適な扁平粉である。従って、潤滑性被膜に求められる仕様に応じて扁平粉の材質を選択すれば、本発明における潤滑性被膜は汎用性を持つ。
いっぽう、グリコール類は、13段落で説明したように、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備し、潤滑性皮膜を形成する際の液体として用いることができる。また、潤滑性皮膜の表面を覆うグリコール類からなる被膜は、サブミクロンの厚みからなる扁平粉の厚みよりさらに薄いため、グリコール類の被膜が扁平粉の集まりと一体になって潤滑性皮膜を形成し、摺動部材が潤滑性皮膜の表面で摺接摩擦する際に、潤滑性皮膜の滑らかな面で摺動部材が滑り、被膜は摺動部材によって剥がされ難い。また、潤滑性皮膜は、摺動部材から応力を受けるが、摺動部材の応力は、潤滑性の重なり合った扁平面が受け止め、応力によってグリコール類の被膜が変形するが、応力が解除されると、グリコール類の被膜は、元の被膜に戻る。なお、グリコール類の表面の被膜が、潤滑性皮膜の表面からたとえ剥がされても、潤滑性皮膜の表面に、扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが現れるため、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。さらに、最も表層の扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが剥がされた場合は、グリコール類の極薄い皮膜が表面に現れ、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。こうした表面の摩耗現象が繰り返されるため、本発明の潤滑性皮膜の潤滑性の寿命は長い。さらに、表面の摩耗現象の際に、グリコール類と扁平粉とが剥がされるため、剥がされた扁平粉にグリコール類が付着するため、剥がされた扁平粉が潤滑性皮膜に直接凝着し、この扁平粉による凝着摩耗は起こりにくい。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、潤滑性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
ところで、潤滑性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した軟質金属からなるフレーク粉がある。11段落で説明したように、摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。さらに、アスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉の集まりで、潤滑性被膜が形成できる。さらに、扁平面同士が重なり合って潤滑性被膜を形成するため、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。さらに、軟質金属は、金属間の相互溶解度が低い金属との組み合わせが可能になり、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少なくなる。例えば、銅フレーク粉の表面をメッキによって銀をコーティングした銀コート銅フレーク粉は、ないしは、銀フレーク粉は、鉄、ニッケル、コバルトないしはクロムと、銀との相互溶解度がゼロに近いため、これらの金属からなる摺接部材と、銀コート銅フレーク粉、ないしは、銀フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量はさらに少なくなる。また、鉄、クロム、アルミニウム、マグネシウムないしはケイ素と、錫との相互溶解度がゼロに近く、これらの金属からなる摺接部材と、錫フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性に優れ、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少ない。また、クロム、モリブデン、タングステンないしはニオブと、銅との相互溶解度が小さく、これらの金属からなる摺接部材と、銅フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量が少ない。
さらに、11段落で説明したように、錫とアルミニウムを除く金属フレーク粉の耐熱温度は、800℃以上と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属からなるフレーク粉の集まりからなる潤滑性皮膜は、油潤滑が適用できない高温、極低温、超真空、超高圧下など、過酷な環境でも使用できる。さらに、耐荷重性は600MPaと高い。このように、軟質金属からなるフレーク粉は、潤滑性皮膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。
潤滑性に優れた第二の扁平粉に、層状の結晶構造を持つ扁平粉がある。すなわち、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などの無機化合物からなる扁平粉と、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、いずれも層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊される。このため、摺接摩擦によって、層間結晶が優先して破壊される自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。また、本発明の潤滑性被膜の形成方法によれば、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりで潤滑性被膜が形成されるため、潤滑性皮膜の摩擦係数はさらに小さい。さらに、摺接部材が滑らかな面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜の摩耗速度がさらに遅くなる。なお、窒化ホウ素は、13段落で説明したように、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持つ。
いっぽう、耐熱温度は、窒化ホウ素は酸素ガスを含む雰囲気で900℃の耐熱性を持つ。これに対し、二硫化モリブデンは350℃付近から、二硫化タングステンは425℃付近から、黒鉛は450℃付近から酸化が始まる。フッ化黒鉛の熱分解の開始温度は、原料炭素によって変わるが、320−490℃である。このように、耐熱温度は材質によって変わるが、油潤滑より耐熱性が高い。なお、二硫化モリブデンが三酸化モリブデンに酸化されても、層状の結晶構造は維持されるため、酸化鉛に近い潤滑性能を持つが、酸化の際に硫黄ガスが発生するため、近辺にある金属を硫化させる恐れがある。また、耐荷重性が油潤滑より著しく高く、例えば、二硫化モリブデンと二硫化タングステンは780MPaで、黒鉛粉は490MPaと高い。
このように、層状の結晶構造を持つ無機化合物からなる扁平粉、ないしは、黒鉛粉は、潤滑性被膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。いっぽう、黒鉛粉は、層間に吸着するガスで潤滑され、真空中では吸着するガスがなくなり、摩擦係数が急増する。
なお、上記した潤滑性の扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。しかし、13段落で説明したように、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ無機化合物のフレーク粉と黒鉛粉とは、本発明の潤滑性被膜を形成する方法における好適な扁平粉である。従って、潤滑性被膜に求められる仕様に応じて扁平粉の材質を選択すれば、本発明における潤滑性被膜は汎用性を持つ。
いっぽう、グリコール類は、13段落で説明したように、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備し、潤滑性皮膜を形成する際の液体として用いることができる。また、潤滑性皮膜の表面を覆うグリコール類からなる被膜は、サブミクロンの厚みからなる扁平粉の厚みよりさらに薄いため、グリコール類の被膜が扁平粉の集まりと一体になって潤滑性皮膜を形成し、摺動部材が潤滑性皮膜の表面で摺接摩擦する際に、潤滑性皮膜の滑らかな面で摺動部材が滑り、被膜は摺動部材によって剥がされ難い。また、潤滑性皮膜は、摺動部材から応力を受けるが、摺動部材の応力は、潤滑性の重なり合った扁平面が受け止め、応力によってグリコール類の被膜が変形するが、応力が解除されると、グリコール類の被膜は、元の被膜に戻る。なお、グリコール類の表面の被膜が、潤滑性皮膜の表面からたとえ剥がされても、潤滑性皮膜の表面に、扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが現れるため、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。さらに、最も表層の扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが剥がされた場合は、グリコール類の極薄い皮膜が表面に現れ、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。こうした表面の摩耗現象が繰り返されるため、本発明の潤滑性皮膜の潤滑性の寿命は長い。さらに、表面の摩耗現象の際に、グリコール類と扁平粉とが剥がされるため、剥がされた扁平粉にグリコール類が付着するため、剥がされた扁平粉が潤滑性皮膜に直接凝着し、この扁平粉による凝着摩耗は起こりにくい。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、潤滑性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に着色した皮膜を形成する方法であり、該着色した皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、着色したフレーク粉、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に、様々な色彩からなる着色した皮膜を形成する、着色した皮膜を形成する方法である。
つまり、扁平粉として、着色したフレーク粉、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、液体として透明性を持つグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな着色したフレーク粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、様々な色彩に着色した皮膜が付与できる。
ところで、着色したフレーク粉には様々な種類がある。第一の着色したフレーク粉に、11段落で説明したアルミニウムや、15段落で説明したマイカなどの軽量で安価なフレーク粉に、様々な着色顔料を付着させ、さらに、合成樹脂でコーティングさせたフレーク粉がある。第二の着色したフレーク粉に、白雲母のフレーク粉に二酸化チタンをコーティングし、コーティングの膜厚が厚くなるにつれて、銀、金、赤紫、青、緑の色調を発色するパール顔料と呼ばれるフレーク粉がある。第三の着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、金や銀などの金属、ないしは、チタニアや酸化鉄などの金属酸化物をコーティングし、光沢感と透明感とがある光輝性の様々な色彩に着色されたフレーク粉がある。
いっぽう、フレーク粉の平均粒径がミクロンオーダーで、微細なフレーク粉に着色できる色彩は単色に限られる。これに対し、本発明において、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、さらに、複数種類のフレーク粉の混合割合を変えると、皮膜が放つ色彩が任意に設定できる。また、複数種類の微細なフレーク粉が、平面上にランダムに混合されて皮膜を形成するため、類似した皮膜を模倣して製造することは難しい。
従って、着色したフレーク粉を、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を、6段落に記載した塗料の製造方法における扁平粉として用い、また、13段落で説明したグリコール類を、6段落に記載した3つの性質を兼備する液体として用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造する。この塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に皮膜を形成する方法に従って、皮膜を形成すると、基材ないしは部品に、様々な色彩に着色した皮膜が形成される。この皮膜は、扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、少ない量のフレーク粉で、一定の面積を持つ皮膜が、安価に製造できる。また、フレーク粉の使用量が少なければ、厚みが数ミクロンの着色した皮膜も製造できる。
なお、着色したフレーク粉の中で、最も密度が小さいフレーク粉は、密度が3.0g/cm3より小さい着色したガラスフレーク粉がある。いっぽう、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の密度は、1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、着色したフレーク粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
さらに、13段落で説明したグリコール類に属する有機化合物の屈折率は、1.43−1.45で、可視光線に対する透明性を持ち、可視光線の波長領域(380−780nm)では、屈折率の有効数字の3桁目が変わる程度の波長依存性である。すなわち、20℃において、波長が589.3nmであるナトリウムのD線で測った屈折率(屈折率n20/Dと記載される)は、エチレングリコールが1.4316で、ジエチレングリコールが1.4472で、プロピレングリコールが1.4310で、ジプロピレングリコールが1.442である。このため、グリコール類の可視光線の波長領域における表面反射率は僅かに3%で、全光線反射率は94%に及び、グリコール類の被膜は、ガラスに劣らぬ可視光線の透過率を持つ透明性を発揮する。なお、表面反射率は、グリコール類と空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。また、グリコール類の被膜に入り込む光の透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。
なお、前記した様々な着色したフレーク粉の表面は、いずれも疎水性であり、着色したフレーク粉は、グリコールのメタノール希釈液と反応せず、塗料を製造する際に、着色したフレーク粉の表面は変化しない。また、メタノールを気化させた後は、着色したフレーク粉はグリコール類と反応せず、皮膜は長期に亘って同一の色彩を発色する。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の常温における蒸発量は極僅かで、着色した皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類の発火点が高く、着色した皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは着色した皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、着色したフレーク粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に着色した皮膜が形成できる。
ところで、着色したフレーク粉には様々な種類がある。第一の着色したフレーク粉に、11段落で説明したアルミニウムや、15段落で説明したマイカなどの軽量で安価なフレーク粉に、様々な着色顔料を付着させ、さらに、合成樹脂でコーティングさせたフレーク粉がある。第二の着色したフレーク粉に、白雲母のフレーク粉に二酸化チタンをコーティングし、コーティングの膜厚が厚くなるにつれて、銀、金、赤紫、青、緑の色調を発色するパール顔料と呼ばれるフレーク粉がある。第三の着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、金や銀などの金属、ないしは、チタニアや酸化鉄などの金属酸化物をコーティングし、光沢感と透明感とがある光輝性の様々な色彩に着色されたフレーク粉がある。
いっぽう、フレーク粉の平均粒径がミクロンオーダーで、微細なフレーク粉に着色できる色彩は単色に限られる。これに対し、本発明において、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、さらに、複数種類のフレーク粉の混合割合を変えると、皮膜が放つ色彩が任意に設定できる。また、複数種類の微細なフレーク粉が、平面上にランダムに混合されて皮膜を形成するため、類似した皮膜を模倣して製造することは難しい。
従って、着色したフレーク粉を、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を、6段落に記載した塗料の製造方法における扁平粉として用い、また、13段落で説明したグリコール類を、6段落に記載した3つの性質を兼備する液体として用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造する。この塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に皮膜を形成する方法に従って、皮膜を形成すると、基材ないしは部品に、様々な色彩に着色した皮膜が形成される。この皮膜は、扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、少ない量のフレーク粉で、一定の面積を持つ皮膜が、安価に製造できる。また、フレーク粉の使用量が少なければ、厚みが数ミクロンの着色した皮膜も製造できる。
なお、着色したフレーク粉の中で、最も密度が小さいフレーク粉は、密度が3.0g/cm3より小さい着色したガラスフレーク粉がある。いっぽう、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の密度は、1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、着色したフレーク粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
さらに、13段落で説明したグリコール類に属する有機化合物の屈折率は、1.43−1.45で、可視光線に対する透明性を持ち、可視光線の波長領域(380−780nm)では、屈折率の有効数字の3桁目が変わる程度の波長依存性である。すなわち、20℃において、波長が589.3nmであるナトリウムのD線で測った屈折率(屈折率n20/Dと記載される)は、エチレングリコールが1.4316で、ジエチレングリコールが1.4472で、プロピレングリコールが1.4310で、ジプロピレングリコールが1.442である。このため、グリコール類の可視光線の波長領域における表面反射率は僅かに3%で、全光線反射率は94%に及び、グリコール類の被膜は、ガラスに劣らぬ可視光線の透過率を持つ透明性を発揮する。なお、表面反射率は、グリコール類と空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。また、グリコール類の被膜に入り込む光の透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。
なお、前記した様々な着色したフレーク粉の表面は、いずれも疎水性であり、着色したフレーク粉は、グリコールのメタノール希釈液と反応せず、塗料を製造する際に、着色したフレーク粉の表面は変化しない。また、メタノールを気化させた後は、着色したフレーク粉はグリコール類と反応せず、皮膜は長期に亘って同一の色彩を発色する。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の常温における蒸発量は極僅かで、着色した皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類の発火点が高く、着色した皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは着色した皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、着色したフレーク粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に着色した皮膜が形成できる。
実施例1
本実施例は、導電性扁平粉として銅フレーク粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、銅フレーク粉(福田金属箔粉工業株式会社の製品MS−800)は、見掛け密度が0.6−1.0g/cm3で、+75μmが4%より高く、+45μmが25%より高く、−45μmが75%より低い粒度分布からなり、厚みが0.3−0.4μmである。また、イオン液体は、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートC8H18BF4NO(日清紡ホールディング株式会社の製品)を用いた。このイオン液体は親水性で、密度が1.23g/cm3で、粘度が25℃において154mPa秒で、導電率が2.9mS/cmである。
最初に、イオン液体をメタノールに5重量%の割合で希釈させた。次に、イオン液体のメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、銅フレーク粉を35gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、銅フレーク粉の体積は、イオン液体の体積の2.12倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、銅フレーク粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、導電性扁平粉として銅フレーク粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、銅フレーク粉(福田金属箔粉工業株式会社の製品MS−800)は、見掛け密度が0.6−1.0g/cm3で、+75μmが4%より高く、+45μmが25%より高く、−45μmが75%より低い粒度分布からなり、厚みが0.3−0.4μmである。また、イオン液体は、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートC8H18BF4NO(日清紡ホールディング株式会社の製品)を用いた。このイオン液体は親水性で、密度が1.23g/cm3で、粘度が25℃において154mPa秒で、導電率が2.9mS/cmである。
最初に、イオン液体をメタノールに5重量%の割合で希釈させた。次に、イオン液体のメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、銅フレーク粉を35gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、銅フレーク粉の体積は、イオン液体の体積の2.12倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、銅フレーク粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例2
実施例1で作成した塗料を用い、透明性でガスバリア性に優れたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社の製品テオネックスQ51)に、導電性皮膜を形成する。このフィルムの融点は269℃で、トリアセテートTACフィルムに次いで高い。また、絶縁破壊電圧は7.5kVで、合成樹脂のフィルムの中では最も高い。破断強度は280MPaで、ポリイミドPIフィルムと同等の強度を持つ。耐有機溶剤性は、ポリイミドPIフィルムとポリエチレンナフタレートPETフィルムとともに優れる。フィルムの厚みは50μmである。
なお、本実施例における導電性フィルムは、例えば、フレキシブル基板として用いることができる。従来のフレキシブル基板における、金属箔の接着と、金属箔のエッチングによる配線と絶縁層の形成とが不要になり、フレキシブル基板の製造費用が大幅に下がる。
最初に、実施例1で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.25Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を5mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
次に、フィルムの表面に形成した皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計(シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST―4)によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□未満であったため、皮膜は銅に近い表面抵抗を有した。
さらに、皮膜が形成された表面の摩擦係数を、摩擦感テスター(カトーテック株式会社の製品KES−SE)を用い、平均摩擦係数を測定した。つまり、皮膜の表面は、イオン液体からなる極薄い皮膜が形成されている。こうした液体で構成された表面の「なめらかさ」という感触を、平均摩擦係数の測定によって数値化できる。平均摩擦係数は0.05±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.45±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は導電性の皮膜のみならず、潤滑性皮膜の機能を発揮する。
なお、摩擦係数を測定する際に、10mm×10mmのセンサに重りを載せ、このセンサの感知面を皮膜の表面に接触させ、2mm/秒の移動速度で皮膜の表面を摺動させ、平均摩擦係数を測定する。表面抵抗と平均摩擦係数との測定後に、皮膜の表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でフィルムに付着している。
この後、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特長を持つ。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、皮膜を観察した。表面の観察では、イオン液体の被膜の内側に、銅のフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、イオン液体の被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、内側に銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、フィルムの表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の観察結果から、銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、このフレーク粉の集まりを、イオン液体が0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの導電性の皮膜が透明フィルムの表面に形成された。
以上に説明した観察結果から、透明フィルムの表面に形成した導電性の皮膜は、例えば、フレキシブル基板の潤滑性を持つ配線として用いることができる。
以上の結果を、試料の断面構造として図1に模式的に示した。1はPEN樹脂フィルムで、2は銅のフレーク粉で、3はイオン液体である。
なお、銅のフレーク粉とイオン液体とメタノールを用い、導電性皮膜を形成する実施例を示したが、導電性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。11段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に導電性の皮膜が形成できる。
実施例1で作成した塗料を用い、透明性でガスバリア性に優れたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社の製品テオネックスQ51)に、導電性皮膜を形成する。このフィルムの融点は269℃で、トリアセテートTACフィルムに次いで高い。また、絶縁破壊電圧は7.5kVで、合成樹脂のフィルムの中では最も高い。破断強度は280MPaで、ポリイミドPIフィルムと同等の強度を持つ。耐有機溶剤性は、ポリイミドPIフィルムとポリエチレンナフタレートPETフィルムとともに優れる。フィルムの厚みは50μmである。
なお、本実施例における導電性フィルムは、例えば、フレキシブル基板として用いることができる。従来のフレキシブル基板における、金属箔の接着と、金属箔のエッチングによる配線と絶縁層の形成とが不要になり、フレキシブル基板の製造費用が大幅に下がる。
最初に、実施例1で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.25Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を5mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
次に、フィルムの表面に形成した皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計(シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST―4)によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□未満であったため、皮膜は銅に近い表面抵抗を有した。
さらに、皮膜が形成された表面の摩擦係数を、摩擦感テスター(カトーテック株式会社の製品KES−SE)を用い、平均摩擦係数を測定した。つまり、皮膜の表面は、イオン液体からなる極薄い皮膜が形成されている。こうした液体で構成された表面の「なめらかさ」という感触を、平均摩擦係数の測定によって数値化できる。平均摩擦係数は0.05±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.45±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は導電性の皮膜のみならず、潤滑性皮膜の機能を発揮する。
なお、摩擦係数を測定する際に、10mm×10mmのセンサに重りを載せ、このセンサの感知面を皮膜の表面に接触させ、2mm/秒の移動速度で皮膜の表面を摺動させ、平均摩擦係数を測定する。表面抵抗と平均摩擦係数との測定後に、皮膜の表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でフィルムに付着している。
この後、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特長を持つ。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、皮膜を観察した。表面の観察では、イオン液体の被膜の内側に、銅のフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、イオン液体の被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、内側に銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、フィルムの表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の観察結果から、銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、このフレーク粉の集まりを、イオン液体が0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの導電性の皮膜が透明フィルムの表面に形成された。
以上に説明した観察結果から、透明フィルムの表面に形成した導電性の皮膜は、例えば、フレキシブル基板の潤滑性を持つ配線として用いることができる。
以上の結果を、試料の断面構造として図1に模式的に示した。1はPEN樹脂フィルムで、2は銅のフレーク粉で、3はイオン液体である。
なお、銅のフレーク粉とイオン液体とメタノールを用い、導電性皮膜を形成する実施例を示したが、導電性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。11段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に導電性の皮膜が形成できる。
実施例3
本実施例は、熱伝導性の扁平粉として鱗片状黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉は、固定炭素が98.0%からなり、最も扁平率が大きい黒鉛粉で、平均粒径が250μm(伊藤黒鉛工業株式会社の製品XD−100)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、鱗片状黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、熱伝導性の扁平粉として鱗片状黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉は、固定炭素が98.0%からなり、最も扁平率が大きい黒鉛粉で、平均粒径が250μm(伊藤黒鉛工業株式会社の製品XD−100)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、鱗片状黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例4
実施例3で作成した塗料を用い、熱伝導性に優れたポリブチレンテレフタレートPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の製品HCD01−2)からなるシートに、熱伝導性皮膜を形成する。なお、PBT樹脂は、流動方向の熱伝導率が27℃で20.9W/mKと高い値を持つ。このシートの厚みは0.5mmである。
なお、実施例は、鱗片状黒鉛粉を扁平面同士が重なり合うように結合させ、熱伝導度が高い扁平面方向に優先して熱伝導するとともに、比抵抗が小さい扁平面方向に優先して導電する。従って、本実施例のシートは、優れた熱伝導性と電気導電性と潤滑性を兼ねた皮膜が、シートに形成される。
最初に、実施例3で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、シートの表面に形成した皮膜の複数個所の熱伝導度を、熱伝導率測定装置(岩崎通信機株式会社の測定装置IE1230)で測定した。75±5W/mKであったため、シートより高い熱伝導度を持つ皮膜が、シートの表面に形成されていた。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は熱伝導性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって、平均擦係数を測定した。平均摩擦係数は0.02±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.40±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、熱伝導度と表面抵抗と摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この鱗片状黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの熱伝導性と電気導電性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、鱗片状黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、熱伝導性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。13段落で説明したように、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜が形成できる。
実施例3で作成した塗料を用い、熱伝導性に優れたポリブチレンテレフタレートPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の製品HCD01−2)からなるシートに、熱伝導性皮膜を形成する。なお、PBT樹脂は、流動方向の熱伝導率が27℃で20.9W/mKと高い値を持つ。このシートの厚みは0.5mmである。
なお、実施例は、鱗片状黒鉛粉を扁平面同士が重なり合うように結合させ、熱伝導度が高い扁平面方向に優先して熱伝導するとともに、比抵抗が小さい扁平面方向に優先して導電する。従って、本実施例のシートは、優れた熱伝導性と電気導電性と潤滑性を兼ねた皮膜が、シートに形成される。
最初に、実施例3で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、シートの表面に形成した皮膜の複数個所の熱伝導度を、熱伝導率測定装置(岩崎通信機株式会社の測定装置IE1230)で測定した。75±5W/mKであったため、シートより高い熱伝導度を持つ皮膜が、シートの表面に形成されていた。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は熱伝導性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって、平均擦係数を測定した。平均摩擦係数は0.02±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.40±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、熱伝導度と表面抵抗と摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この鱗片状黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの熱伝導性と電気導電性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、鱗片状黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、熱伝導性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。13段落で説明したように、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜が形成できる。
実施例5
本実施例は、絶縁性の扁平粉として六方晶系の窒化ホウ素の鱗片粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。窒化ホウ素の扁平粉(昭和電工株式会社の製品UHP−2)は、鱗片形状の扁平粉で、抵抗率が1014Ωcmで、平均粒径が11μmで、BET比表面積が3−5m2/gである。
いっぽう、窒化ホウ素は、絶縁性のセラミックスの中で、窒化アルミニウム、窒化ケイ素に次いで、高い熱伝導率を持つ。さらに、13段落で説明したように、六方晶系の窒化ホウ素は層状の結晶構造を持ち、黒鉛粉と同様に、熱伝導率が異方性を持つ。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近い熱伝導性を持ち、金属に近い熱導電性を示す。また、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の鱗片粉は、17段落で説明したように、自己潤滑性に基づく潤滑作用を発揮する。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、窒化ホウ素の扁平粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、窒化ホウ素粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.24倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、絶縁性の扁平粉として六方晶系の窒化ホウ素の鱗片粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。窒化ホウ素の扁平粉(昭和電工株式会社の製品UHP−2)は、鱗片形状の扁平粉で、抵抗率が1014Ωcmで、平均粒径が11μmで、BET比表面積が3−5m2/gである。
いっぽう、窒化ホウ素は、絶縁性のセラミックスの中で、窒化アルミニウム、窒化ケイ素に次いで、高い熱伝導率を持つ。さらに、13段落で説明したように、六方晶系の窒化ホウ素は層状の結晶構造を持ち、黒鉛粉と同様に、熱伝導率が異方性を持つ。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近い熱伝導性を持ち、金属に近い熱導電性を示す。また、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の鱗片粉は、17段落で説明したように、自己潤滑性に基づく潤滑作用を発揮する。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、窒化ホウ素の扁平粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、窒化ホウ素粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.24倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例6
実施例5で作成した塗料を用い、厚みが70μmの銅箔シートに、絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねる皮膜を形成する。
最初に、実施例5で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、絶縁抵抗計でシートの表面に形成した皮膜の抵抗を測定したところ、抵抗値は10MΩより大きい値であった。次に、実施例4と同様に、皮膜の熱伝導度を測定した。30±3W/mKであった。さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって測定した。平均摩擦係数は0.03±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、1.5±0.1であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが著しく向上した。このため、皮膜は、絶縁性とともに熱伝導性と潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、絶縁抵抗と熱伝導度と平均摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この窒化ホウ素粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、窒化ホウ素の鱗片粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、絶縁性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。15段落で説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカまたはヘマタイトからなるいずれか1種類の絶縁性扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
実施例5で作成した塗料を用い、厚みが70μmの銅箔シートに、絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねる皮膜を形成する。
最初に、実施例5で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、絶縁抵抗計でシートの表面に形成した皮膜の抵抗を測定したところ、抵抗値は10MΩより大きい値であった。次に、実施例4と同様に、皮膜の熱伝導度を測定した。30±3W/mKであった。さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって測定した。平均摩擦係数は0.03±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、1.5±0.1であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが著しく向上した。このため、皮膜は、絶縁性とともに熱伝導性と潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、絶縁抵抗と熱伝導度と平均摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この窒化ホウ素粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、窒化ホウ素の鱗片粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、絶縁性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。15段落で説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカまたはヘマタイトからなるいずれか1種類の絶縁性扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
実施例7
本実施例は、潤滑性の扁平粉として熱分解黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い塗料を作成した。熱分解黒鉛は、平均粒径が42μmの熱分解黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社の製品PC99−300M)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、熱分解黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、熱分解黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、潤滑性の扁平粉として熱分解黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い塗料を作成した。熱分解黒鉛は、平均粒径が42μmの熱分解黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社の製品PC99−300M)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、熱分解黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、熱分解黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例8
実施例7で作成した塗料を用い、厚みが5mmの杉の板材に、潤滑性皮膜を形成する。なお、木材の引火点は250−260℃で、グリコール類の沸点より高い。また、木材の着火点が420−460℃で、グリコール類の発火点より高い。
最初に、実施例6で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記した板材を、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動する板材に対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、板材の表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚の板材の表面に塗膜を形成した。この後、5枚の板材を大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、実施例2と同様に、板材の表面に形成した皮膜の表面の平均摩擦係数を、摩擦感テスターで測定した。平均摩擦係数は0.04±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、5.0±1.0であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は潤滑性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の熱伝導度を測定した。50±3W/mKであった。このため、皮膜は潤滑性と電気導電性とともに、熱伝導性の機能を発揮する。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、板材の表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この熱分解黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの潤滑性と電気導電性と熱伝導性とを兼ねた皮膜が板材の表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、熱分解黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、潤滑性皮膜を形成する実施例を示したが、潤滑性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。17段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛ないしは鱗状黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
実施例7で作成した塗料を用い、厚みが5mmの杉の板材に、潤滑性皮膜を形成する。なお、木材の引火点は250−260℃で、グリコール類の沸点より高い。また、木材の着火点が420−460℃で、グリコール類の発火点より高い。
最初に、実施例6で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記した板材を、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動する板材に対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、板材の表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚の板材の表面に塗膜を形成した。この後、5枚の板材を大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、実施例2と同様に、板材の表面に形成した皮膜の表面の平均摩擦係数を、摩擦感テスターで測定した。平均摩擦係数は0.04±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、5.0±1.0であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は潤滑性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の熱伝導度を測定した。50±3W/mKであった。このため、皮膜は潤滑性と電気導電性とともに、熱伝導性の機能を発揮する。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、板材の表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この熱分解黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの潤滑性と電気導電性と熱伝導性とを兼ねた皮膜が板材の表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、熱分解黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、潤滑性皮膜を形成する実施例を示したが、潤滑性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。17段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛ないしは鱗状黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
実施例9
本実施例は、扁平粉として着色したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉(日本板硝子株式会社の製品メタシャイン)を用いた。赤(品種E025RR)と青(品種E025RB)とに着色されたガラスフレーク粉の2種類を用い、同じ量のガラスフレーク粉を混合して塗料を作成した。なお、着色したフレーク粉は、厚みが0.5μmで、平均粒径が25μmで、密度が2.6g/cm3である。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、赤に着色されたフレーク粉と青に着色されたフレーク粉の各々を9gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、ガラスフレーク粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.35倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、扁平粉として着色したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉(日本板硝子株式会社の製品メタシャイン)を用いた。赤(品種E025RR)と青(品種E025RB)とに着色されたガラスフレーク粉の2種類を用い、同じ量のガラスフレーク粉を混合して塗料を作成した。なお、着色したフレーク粉は、厚みが0.5μmで、平均粒径が25μmで、密度が2.6g/cm3である。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、赤に着色されたフレーク粉と青に着色されたフレーク粉の各々を9gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、ガラスフレーク粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.35倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例10
実施例9で作成した塗料を用い、実施例2で用いたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルムに、着色した皮膜を形成する。なお、フィルムの厚みは100μmである。
最初に、実施例9で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社の製品CM−700d)によって、皮膜の分光反射率を調べた。分光反射率は、青の色彩を放つ470nmの波長付近と、赤の色彩を放つ700nmの波長付近で最も高かった。
次に、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、ガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、ガラスフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、フィルム表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
いっぽう、扁平粉の基材が透明で平坦なガラスフレーク粉であり、このガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合って皮膜を形成したため、強い光沢感と透明感と高い輝度感を兼ね備えた赤紫の色彩が、皮膜から発光された。さらに、エチレングリコールが透明性に優れるため、皮膜の表面での乱反射が少なく、澄んだ赤紫の色彩が皮膜から発光された。
以上に説明したように、ガラスのフレーク粉に酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、着色した皮膜を形成する実施例を示したが、着色した皮膜の形成は、本実施例に限定されない。19段落で説明したように、着色したフレーク粉として、19段落に記載したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に、様々な色彩を放つ着色した皮膜が形成できる。
実施例9で作成した塗料を用い、実施例2で用いたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルムに、着色した皮膜を形成する。なお、フィルムの厚みは100μmである。
最初に、実施例9で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社の製品CM−700d)によって、皮膜の分光反射率を調べた。分光反射率は、青の色彩を放つ470nmの波長付近と、赤の色彩を放つ700nmの波長付近で最も高かった。
次に、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、ガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、ガラスフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、フィルム表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
いっぽう、扁平粉の基材が透明で平坦なガラスフレーク粉であり、このガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合って皮膜を形成したため、強い光沢感と透明感と高い輝度感を兼ね備えた赤紫の色彩が、皮膜から発光された。さらに、エチレングリコールが透明性に優れるため、皮膜の表面での乱反射が少なく、澄んだ赤紫の色彩が皮膜から発光された。
以上に説明したように、ガラスのフレーク粉に酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、着色した皮膜を形成する実施例を示したが、着色した皮膜の形成は、本実施例に限定されない。19段落で説明したように、着色したフレーク粉として、19段落に記載したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に、様々な色彩を放つ着色した皮膜が形成できる。
1 PEN樹脂フィルム 2 銅のフレーク粉 3 イオン液体
本発明は、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜を、基材ないしは部品に形成する方法に係わる。すなわち、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、一定の粘度を持つ液体のアルコール希釈液に沈降した塗料を作成する。第二に、ベルトコンベアー上を水平に移動する基材ないしは部品に、塗料が入った容器を近接させ、さらに、容器を傾斜させ、基材ないしは部品に、塗膜の幅からなる帯状の塗料として、塗料を自重で流れ落とす。第三に、塗料からアルコールを気化させる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、一定の粘度を持つ液体で覆われた皮膜が、基材や部品に形成される。この皮膜の表面は、液体による撥水性と防汚性とを持つ。なお、扁平粉の使用量を抑えて塗料を製造すれば、皮膜の厚みは数ミクロンに抑えられる。また、扁平粉の使用量を液体の使用量の2倍より多くすれば、皮膜の表面を形成する液体の被膜の厚みは、扁平粉の厚みより薄く、皮膜は扁平粉の性質を持つ。なお、厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい粉体を、扁平粉、フレーク粉、鱗片粉、薄片粉、円板粉、薄板粉と様々に記述されるが、本発明では扁平粉として記述する。いっぽう、軟質金属ないしはガラスからなる扁平粉は、フレーク粉として記述するのが一般的であり、フレーク粉として記述する。また、黒鉛の鱗片粉についても同様である。
扁平粉は材質に応じて様々な用途に用いられている。最も汎用的な扁平粉に、金属の扁平粉がある。アルミニウムや真鍮の扁平粉は、メタリック塗料に求められる輝きを表現する装飾用顔料の原料として用いられている。銅や銀の扁平粉は、導電性ペーストの原料となり、電気回路の配線の形成、セラミックコンデンサの内部電極の形成、太陽電池セルの電極形成、電磁波シールド膜や帯電防止膜の形成などに用いられている。純鉄の扁平粉は、磁束密度が高く、扁平処理による形状異方性によって透磁率が増大するため、圧粉磁心や電磁波をシールドするシートなどに用いられている。いっぽう、ガラスの扁平粉は、熱可塑性樹脂と複合化させ、熱可塑性樹脂の耐熱性、耐食性、機械的強度を増大させるフィラーとして、また、ガラスの扁平粉の表面に、金属や金属酸化物をコーティングさせた扁平粉は、様々な光沢を表現する光輝性無機顔料に用いられ、さらに、化粧品の原料としても用いられている。その他に、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化鉄などの金属酸化物からなる扁平粉や、鱗状黒鉛ないしは鱗片状黒鉛と呼ばれる黒鉛の扁平粉がある。
扁平粉の集まりからなる皮膜を形成するにあたり、扁平面同士が重なり合えば、使用する扁平粉の量が少なく、また、扁平面の性質を皮膜に生かすことができる。さらに、皮膜に占める扁平粉の体積が大きいほど、皮膜は扁平粉の性質に近づく。しかしながら、こうした事例は、皆無である。
例えば、特許文献1には、3級アミン置換ポリスチレンで銅の扁平粉を被覆する導電性ペーストが記載されている。しかしながら、銅の扁平粉同士が、3級アミン置換ポリスチレンを介して接合し、また、3級アミン置換ポリスチレンの導電率が、銅の導電率より著しく低いため、導電性ペーストを用いて形成した導電皮膜の導電性は、銅に比べて劣る。さらに、銅の扁平粉の扁平同士が重なり合って皮膜を形成しないため、3級アミン置換ポリスチレンが皮膜に占める割合が一定でなく、部分的に多くの割合を皮膜に占めることで、皮膜の導電性はさらに下がる。また、導電性を向上させるために、導電性ペーストに占める銅の扁平粉の割合を増大させると、銅の扁平粉の分散性が悪化する。また、導電性ペーストの粘度が上昇し、導電性ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
また、特許文献2には、高周波数の電磁ノイズを抑制する複合磁性シートとして、有機バインダーに分散した磁性扁平粉が記載されている。しかしながら、有機バインダーは非磁性体であるため、有機バインダーの存在によって、電磁ノイズを吸収する効率が下がる。また、磁性扁平粉の扁平面同士が重なり合って複合磁性シートを形成しないため、扁平面が電磁ノイズを吸収せず、扁平磁性粉が吸収する電磁ノイズの効率が下がる。また、特許文献1と同様に、電磁ノイズを吸収する効率を向上させるために、バインダーに占める磁性扁平粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
さらに、特許文献3には、フレーク粉末が有機バインダーに分散された導電パターンを形成する導電性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、有機バインダーは絶縁性であるため、有機バインダーの存在によって、導電パターンの導電性が低下する。また、フレーク粉の扁平面同士が重なり合って導電パターンを形成しないため、特許文献1と同様に、有機バインダーが導電パターンに占める割合が一定でなく、導電パターンの導電性が低下する。また、特許文献1と同様に、導電性を向上させるために、ペーストに占めるフレーク粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
以上に3つの従来技術を説明したが、いずれも扁平粉の扁平面同士が重なり合わない。また、固体の有機物質を介して扁平粉を結合させるため、扁平粉の集まりに、有機物質の性質が反映される。
例えば、特許文献1には、3級アミン置換ポリスチレンで銅の扁平粉を被覆する導電性ペーストが記載されている。しかしながら、銅の扁平粉同士が、3級アミン置換ポリスチレンを介して接合し、また、3級アミン置換ポリスチレンの導電率が、銅の導電率より著しく低いため、導電性ペーストを用いて形成した導電皮膜の導電性は、銅に比べて劣る。さらに、銅の扁平粉の扁平同士が重なり合って皮膜を形成しないため、3級アミン置換ポリスチレンが皮膜に占める割合が一定でなく、部分的に多くの割合を皮膜に占めることで、皮膜の導電性はさらに下がる。また、導電性を向上させるために、導電性ペーストに占める銅の扁平粉の割合を増大させると、銅の扁平粉の分散性が悪化する。また、導電性ペーストの粘度が上昇し、導電性ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
また、特許文献2には、高周波数の電磁ノイズを抑制する複合磁性シートとして、有機バインダーに分散した磁性扁平粉が記載されている。しかしながら、有機バインダーは非磁性体であるため、有機バインダーの存在によって、電磁ノイズを吸収する効率が下がる。また、磁性扁平粉の扁平面同士が重なり合って複合磁性シートを形成しないため、扁平面が電磁ノイズを吸収せず、扁平磁性粉が吸収する電磁ノイズの効率が下がる。また、特許文献1と同様に、電磁ノイズを吸収する効率を向上させるために、バインダーに占める磁性扁平粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
さらに、特許文献3には、フレーク粉末が有機バインダーに分散された導電パターンを形成する導電性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、有機バインダーは絶縁性であるため、有機バインダーの存在によって、導電パターンの導電性が低下する。また、フレーク粉の扁平面同士が重なり合って導電パターンを形成しないため、特許文献1と同様に、有機バインダーが導電パターンに占める割合が一定でなく、導電パターンの導電性が低下する。また、特許文献1と同様に、導電性を向上させるために、ペーストに占めるフレーク粉の割合を増大させると、ペーストの粘度が上昇し、ペーストの印刷ないしは塗布が困難になる。
以上に3つの従来技術を説明したが、いずれも扁平粉の扁平面同士が重なり合わない。また、固体の有機物質を介して扁平粉を結合させるため、扁平粉の集まりに、有機物質の性質が反映される。
ところで、平均粒径がミクロンサイズで、厚みがサブミクロンからなる扁平粉は、固有の形状と粒度分布とを持ち、扁平粉同士を直接結合することは困難を伴う。このため、従来は、バインダー中の有機溶剤を気化させ、固体の高分子材料同士の結合を介して扁平粉同士を結合させる。しかし、高分子材料が扁平粉とは異なる性質を持つため、結合された扁平粉の集まりに、高分子材料の性質が反映する。このように、一定の体積を占有する固体の異種材料の結合を介して扁平粉を結合すると、異種材料の性質が反映され、扁平粉が持つ固有の性質を犠牲にせざるを得ない。さらに、扁平粉の扁平面同士を重なり合わせ、扁平粉同士を直接結合することは、さらに困難である。
つまり、固体は一定の形と体積とを持つため、固体を介して扁平粉同士を結合すると、固体が一定の体積を占め、扁平粉の集まりに、固体の性質が反映する。これに対し、液体は、分子が自由に動くエネルギーを持ち、液体の形状は自由に変わる。しかし、液体を介して扁平面同士を重ね合わせ、さらに、この扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に液体を介して接合させるには、液体に接合力を実現させることから容易でない。
しかしながら、第一に、扁平粉の集まりを基材ないしは部品に形成する際に、基材ないしは部品の表面に存在する空気を排除する。第二に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、基材ないしは部品の表面の凹部に、空気と入れ替わって入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体が、凹部から出にくくなるアンカー効果を発揮する。第三に、前記粘稠性の液体からなる被膜を介して扁平面同士を重ね合わせる。第四に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを、前記粘稠性の液体からなる皮膜で被覆する。第五に、前記液体の皮膜と前記液体の被膜の双方の厚みが、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。第六に、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりの厚みは、数ミクロンと薄い。これら6つの事項が実現できれば、第一に、粘稠性の液体のアンカー効果で、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着する。第二に、前記扁平粉の集まりが極めて軽量で、前記粘稠性の液体によるアンカー効果の付着力が小さくても、前記扁平粉の集まりは、基材ないしは部品から剥がれにくい。第三に、前記液体の被膜が極薄く、該液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、扁平粉の性質を示す。第四に、使用する扁平粉の量が極僅かで、高価な扁平粉を用いても、安価な費用で前記扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着できる。しかし、こうした試みはこれまでのところ皆無である。
ところで、扁平粉は、前記のように、無機物、金属酸化物、金属あるいは合金など様々な材質からなり、様々な用途に用いられている。さらに、表面を加工し、様々な色彩を放つ扁平粉も存在する。従って、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の全般について、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを液体の被膜で覆った皮膜を、基材ないしは部品に付着させ、この皮膜が数ミクロンの厚みであれば、僅かな量の扁平粉で、一定の面積を持つ皮膜が安価に製造できる。この扁平粉の性質を持つ皮膜は、様々な用途に用いることができる。
この皮膜を実現するには、前記した6つの事項が実現できなければならない。さらに、第七に、前記粘稠性の液体が、常温における蒸気圧が小さく、蒸発量が極めて僅かであれば、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、長期に亘って撥水性と防汚性とを維持する。第八に、前記液体の発火点が高ければ、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは難燃性ないしは不燃性を持つ。これら8つの要件が実現できれば、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品に、扁平粉の性質をはじめとする様々な性質を、長期間付与する画期的な皮膜になる。
さらに、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に形成するには、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体を希釈した液体に浸漬した塗料が作成できる。第二に、様々な材質と形状からなる基材ないしは部品に、塗料を塗付して塗膜が形成できる。第三に、塗膜から前記液体を希釈した液体を気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気が塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面の凹部に、前記粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、アンカー効果を発揮する。これら3つの事項が実現できれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが基材ないしは部品に付着できる。しかし、このような試みもこれまでのところ全くない。
従って、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に付着させるには、次の課題が発生する。第一に、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の扁平面同士を重ね合わせる。第二に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを塗料化する。第三に、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、塗料を基材ないしは部品に塗付し塗膜を形成する。第四に、塗膜を熱処理すると、扁平粉の性質を持ち、厚みが極めて薄く、極軽量の粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に一定の強度で付着する。本発明が解決しようとする課題は、これら4つの事項で、4つの課題を解決すると、粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に付着する。
つまり、固体は一定の形と体積とを持つため、固体を介して扁平粉同士を結合すると、固体が一定の体積を占め、扁平粉の集まりに、固体の性質が反映する。これに対し、液体は、分子が自由に動くエネルギーを持ち、液体の形状は自由に変わる。しかし、液体を介して扁平面同士を重ね合わせ、さらに、この扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に液体を介して接合させるには、液体に接合力を実現させることから容易でない。
しかしながら、第一に、扁平粉の集まりを基材ないしは部品に形成する際に、基材ないしは部品の表面に存在する空気を排除する。第二に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、基材ないしは部品の表面の凹部に、空気と入れ替わって入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体が、凹部から出にくくなるアンカー効果を発揮する。第三に、前記粘稠性の液体からなる被膜を介して扁平面同士を重ね合わせる。第四に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを、前記粘稠性の液体からなる皮膜で被覆する。第五に、前記液体の皮膜と前記液体の被膜の双方の厚みが、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。第六に、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりの厚みは、数ミクロンと薄い。これら6つの事項が実現できれば、第一に、粘稠性の液体のアンカー効果で、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着する。第二に、前記扁平粉の集まりが極めて軽量で、前記粘稠性の液体によるアンカー効果の付着力が小さくても、前記扁平粉の集まりは、基材ないしは部品から剥がれにくい。第三に、前記液体の被膜が極薄く、該液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、扁平粉の性質を示す。第四に、使用する扁平粉の量が極僅かで、高価な扁平粉を用いても、安価な費用で前記扁平粉の集まりが、基材ないしは部品に付着できる。しかし、こうした試みはこれまでのところ皆無である。
ところで、扁平粉は、前記のように、無機物、金属酸化物、金属あるいは合金など様々な材質からなり、様々な用途に用いられている。さらに、表面を加工し、様々な色彩を放つ扁平粉も存在する。従って、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の全般について、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを液体の被膜で覆った皮膜を、基材ないしは部品に付着させ、この皮膜が数ミクロンの厚みであれば、僅かな量の扁平粉で、一定の面積を持つ皮膜が安価に製造できる。この扁平粉の性質を持つ皮膜は、様々な用途に用いることができる。
この皮膜を実現するには、前記した6つの事項が実現できなければならない。さらに、第七に、前記粘稠性の液体が、常温における蒸気圧が小さく、蒸発量が極めて僅かであれば、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、長期に亘って撥水性と防汚性とを維持する。第八に、前記液体の発火点が高ければ、ないしは、不揮発性であれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは難燃性ないしは不燃性を持つ。これら8つの要件が実現できれば、液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりは、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品に、扁平粉の性質をはじめとする様々な性質を、長期間付与する画期的な皮膜になる。
さらに、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に形成するには、第一に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体を希釈した液体に浸漬した塗料が作成できる。第二に、様々な材質と形状からなる基材ないしは部品に、塗料を塗付して塗膜が形成できる。第三に、塗膜から前記液体を希釈した液体を気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気が塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面の凹部に、前記粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、アンカー効果を発揮する。これら3つの事項が実現できれば、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが基材ないしは部品に付着できる。しかし、このような試みもこれまでのところ全くない。
従って、前記液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりを、基材ないしは部品に付着させるには、次の課題が発生する。第一に、扁平粉の材質、形状、表面状態、粒度分布に拘わらず、扁平粉の扁平面同士を重ね合わせる。第二に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりを塗料化する。第三に、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、塗料を基材ないしは部品に塗付し塗膜を形成する。第四に、塗膜を熱処理すると、扁平粉の性質を持ち、厚みが極めて薄く、極軽量の粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に一定の強度で付着する。本発明が解決しようとする課題は、これら4つの事項で、4つの課題を解決すると、粘稠性の液体の被膜で覆われた扁平粉の集まりが、基材や部品に付着する。
本発明に係わる扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが液体中に沈降した塗料を製造する製造方法は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールの粘度の30倍より高い粘度を持つ第二の性質と、沸点が180℃より高い、ないしは、不揮発性である第3の性質を兼備する液体を、前記アルコールに10重量%より少ない割合で混合してアルコール希釈液を作成し、該アルコール希釈液の密度の2.5倍より高い密度を有する扁平粉の集まりを、前記液体の体積の2.0倍より多い体積を占める量として、前記アルコール希釈液に混合して懸濁液を作成する、この後、該懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、該容器にホモジナイザー装置を配置し、該ホモジナイザー装置によって、前記懸濁液に衝撃を加え、該衝撃が前記扁平粉の扁平面同士が重なり合った部位に加わり、該扁平面同士が重なり合った扁平粉を個々の扁平粉に分離する、さらに、前記容器に3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加える、これによって、前記扁平粉の集まりは、該扁平粉の扁平面同士が前記アルコール希釈液を介して重なり合って、前記容器の底面の全体に広がって沈み、該扁平粉の扁平面同士が前記アルコール希釈液を介して重なり合った扁平粉の集まりが、前記アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が製造される、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが液体中に沈降した塗料を製造する製造方法である。
本塗料の製造方法は、次の簡単な6つの工程を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が製造される。第一の工程で、液体のアルコール希釈液を作成する。第二の工程で、アルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、懸濁液を作成する。第三の工程で、懸濁液を平面からなる底面を持つ容器に移す。第四の工程で、容器にホモジナイザー装置を配置する。第五の工程で、懸濁液に衝撃を加える。第六の工程で、容器に3方向の振動を繰り返し加える。このため、安価な製造費で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
すなわち、第一の処理は、3つの性質を持つ液体をアルコールで希釈するだけである。第二の処理は、アルコール希釈液に扁平粉を混合するだけである。第三の処理は、懸濁液を容器に移すだけである。第四の処理は、容器にホモジナイザー措置を配置するだけである。第五の処理は、ホモジナイザー装置によって、懸濁液に衝撃を加えるだけである。第六の処理は、容器に3方向の振動を繰り返し加えるだけである。こうした極めて簡単な6つの処理を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
ここで、前記した第五と第六の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降する過程を説明する。
扁平粉は、厚さに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、大気雰囲気で取り扱う際に、扁平面同士が複雑に重なり合う。また、扁平粉が微細で軽量であるため、扁平面同士で重なり合っているか否かは識別しにくい。いっぽう、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉の集まりで皮膜を形成し、この皮膜に応力が加わると、扁平粉の集まりの厚みが薄いほど、扁平面同士が重なり合った部位で、扁平粉の集まりが分離する。また、複雑に重なり合った扁平粉が、個々の扁平粉に分離できれば、扁平粉の使用量が減る。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、確実に分離させる必要がある。いっぽう、大気雰囲気で、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉を分離しようとすると、重なり合った扁平面に摩擦力が発生し、分離は容易でない。また、扁平面同士が重なり合っているか否かの識別自体が難しい。しかし、低粘度のアルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、希釈液に衝撃を加えると、衝撃がアルコール希釈液の全体に広がり、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位にも加わり、重なり合った扁平面が容易に分離する。このため、第五の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉を、確実に分離できる。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、アルコール希釈液で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が、アルコール希釈液の全体に継続して発生し、重なり合った扁平粉が短時間で個々の扁平粉に分離する。この結果、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。
この後、前記した第六の処理において、容器に、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、前記した第五の処理によって、全ての扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触しているため、全ての扁平粉が低粘度のアルコール希釈液中を自在に移動する。なお、扁平粉の密度が、アルコール希釈液の密度の2.5倍より大きいため、振動を加えられた扁平粉は、希釈液に沈んだ状態で移動する。左右方向と前後方向との振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に左右方向と前後方向との振動加速度を掛けた値に近い力が扁平粉に作用し、容器の底面の左右方向と前後方向とに、扁平面を上下方向にして扁平粉が広がり、容器の底面を扁平粉の集まりが占める。また、上下方向の振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に上下方向の振動加速度を掛けた値に近い力が扁平面に作用し、扁平面同士が重なり合う。最後に上下方向の振動を加え、容器への加振を停止する。この結果、扁平面同士がアルコール希釈液の薄い皮膜を介して重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、容器の底面の全体に広がって製造される。従って、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの厚みは、容器の底面積と、使用した扁平粉の量によって決まる。従って、使用する扁平粉の量が少なくなるほど、重なり合った扁平粉の集まりの厚みは薄くなる。なお、扁平粉が極めて軽量であるため、加える振動加速度は0.5Gより小さい。
ここで、本塗料の製造方法で製造した塗料の作用効果を説明する。
第一に、複雑に重なり合った扁平粉が、確実に個々の扁平粉に分離するとともに、扁平粉の材質、形状、粒度分布に拘わらず、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。なお、扁平粉はいずれも表面は疎水性で、アルコール希釈液と反応せず、扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触する。この後、扁平粉の集まりに、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加えると、扁平粉が容器の底面の全体に広がり、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、平面からなる容器の底面の全体に浸漬して製造される。これによって、5段落に記載した第一と第二の課題とが解決された。
第二に、アスペクト比が大きい扁平粉について、個々の扁平粉に分離した扁平粉が、扁平面同士で重なり合うため、極僅かな扁平粉の使用量によって、扁平粉の集まりは一定の面積を持つ。このため、高価な扁平粉を用いても、安価な塗料になる。
第三に、液体の使用量が、体積に換算して、扁平粉の使用量の1/2より少ないため、扁平粉の使用量が少なければ、液体の使用量がさらに少なくなる。従って、不揮発性の液体が高価であっても、塗料の製造費は安価で済む。
第四に、安価な材料を用い、安価な費用で、塗料が製造できる。すなわち、使用する液体と扁平粉との量が僅かである。また、塗料を製造する製造方法は、いずれも極めて簡単な6つの処理からなり、塗料の製造費は安価で済む。
以上に説明したように、本製造方法で製造した塗料は、個々の扁平粉に分離された扁平粉が、液体を介して扁平面同士が重なり合うという観点から、従来の扁平粉の集まりにはない画期的な扁平粉の集まりになる。
すなわち、第一の処理は、3つの性質を持つ液体をアルコールで希釈するだけである。第二の処理は、アルコール希釈液に扁平粉を混合するだけである。第三の処理は、懸濁液を容器に移すだけである。第四の処理は、容器にホモジナイザー措置を配置するだけである。第五の処理は、ホモジナイザー装置によって、懸濁液に衝撃を加えるだけである。第六の処理は、容器に3方向の振動を繰り返し加えるだけである。こうした極めて簡単な6つの処理を連続して実施すると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した塗料が、平面からなる容器の底面の全体に広がって製造される。
ここで、前記した第五と第六の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降する過程を説明する。
扁平粉は、厚さに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きい扁平面を有する。さらに、扁平面の大きさと厚みとにバラツキがある。このような扁平粉の集まりは、大気雰囲気で取り扱う際に、扁平面同士が複雑に重なり合う。また、扁平粉が微細で軽量であるため、扁平面同士で重なり合っているか否かは識別しにくい。いっぽう、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉の集まりで皮膜を形成し、この皮膜に応力が加わると、扁平粉の集まりの厚みが薄いほど、扁平面同士が重なり合った部位で、扁平粉の集まりが分離する。また、複雑に重なり合った扁平粉が、個々の扁平粉に分離できれば、扁平粉の使用量が減る。従って、扁平面同士が重なり合った部位を、確実に分離させる必要がある。いっぽう、大気雰囲気で、扁平面同士が複雑に重なり合った扁平粉を分離しようとすると、重なり合った扁平面に摩擦力が発生し、分離は容易でない。また、扁平面同士が重なり合っているか否かの識別自体が難しい。しかし、低粘度のアルコール希釈液に扁平粉の集まりを混合し、希釈液に衝撃を加えると、衝撃がアルコール希釈液の全体に広がり、衝撃が扁平面同士の重なり合った部位にも加わり、重なり合った扁平面が容易に分離する。このため、第五の処理によって、扁平面同士が重なり合った扁平粉を、確実に分離できる。なお、ホモジナイザー装置として、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、扁平粉の扁平面よりさらに2桁以上小さく莫大な数からなる気泡の発生と気泡の消滅とが、アルコール希釈液で繰り返され(キャビテーションという)、気泡がはじける際の衝撃波が、アルコール希釈液の全体に継続して発生し、重なり合った扁平粉が短時間で個々の扁平粉に分離する。この結果、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。
この後、前記した第六の処理において、容器に、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加える。この際、前記した第五の処理によって、全ての扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触しているため、全ての扁平粉が低粘度のアルコール希釈液中を自在に移動する。なお、扁平粉の密度が、アルコール希釈液の密度の2.5倍より大きいため、振動を加えられた扁平粉は、希釈液に沈んだ状態で移動する。左右方向と前後方向との振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に左右方向と前後方向との振動加速度を掛けた値に近い力が扁平粉に作用し、容器の底面の左右方向と前後方向とに、扁平面を上下方向にして扁平粉が広がり、容器の底面を扁平粉の集まりが占める。また、上下方向の振動が扁平粉の集まりに加わると、扁平粉の重量に上下方向の振動加速度を掛けた値に近い力が扁平面に作用し、扁平面同士が重なり合う。最後に上下方向の振動を加え、容器への加振を停止する。この結果、扁平面同士がアルコール希釈液の薄い皮膜を介して重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、容器の底面の全体に広がって製造される。従って、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの厚みは、容器の底面積と、使用した扁平粉の量によって決まる。従って、使用する扁平粉の量が少なくなるほど、重なり合った扁平粉の集まりの厚みは薄くなる。なお、扁平粉が極めて軽量であるため、加える振動加速度は0.5Gより小さい。
ここで、本塗料の製造方法で製造した塗料の作用効果を説明する。
第一に、複雑に重なり合った扁平粉が、確実に個々の扁平粉に分離するとともに、扁平粉の材質、形状、粒度分布に拘わらず、全ての扁平粉の表面に、アルコール希釈液が接触する。なお、扁平粉はいずれも表面は疎水性で、アルコール希釈液と反応せず、扁平粉の表面にアルコール希釈液が接触する。この後、扁平粉の集まりに、左右、前後、上下の3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加えると、扁平粉が容器の底面の全体に広がり、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が、平面からなる容器の底面の全体に浸漬して製造される。これによって、5段落に記載した第一と第二の課題とが解決された。
第二に、アスペクト比が大きい扁平粉について、個々の扁平粉に分離した扁平粉が、扁平面同士で重なり合うため、極僅かな扁平粉の使用量によって、扁平粉の集まりは一定の面積を持つ。このため、高価な扁平粉を用いても、安価な塗料になる。
第三に、液体の使用量が、体積に換算して、扁平粉の使用量の1/2より少ないため、扁平粉の使用量が少なければ、液体の使用量がさらに少なくなる。従って、不揮発性の液体が高価であっても、塗料の製造費は安価で済む。
第四に、安価な材料を用い、安価な費用で、塗料が製造できる。すなわち、使用する液体と扁平粉との量が僅かである。また、塗料を製造する製造方法は、いずれも極めて簡単な6つの処理からなり、塗料の製造費は安価で済む。
以上に説明したように、本製造方法で製造した塗料は、個々の扁平粉に分離された扁平粉が、液体を介して扁平面同士が重なり合うという観点から、従来の扁平粉の集まりにはない画期的な扁平粉の集まりになる。
前記した製造方法で製造した塗料を用いて、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法は、前記した塗料を製造する際に用いた容器の底面より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が開放され、該解放された側面の部位から塗料が零れ落ちる構造を持つ第二の特徴を兼備する容器に、前記した製造方法で製造した塗料を移し、該容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加える、この後、該容器を予め設定した角度に傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、前記傾斜した容器の底面に、該底面の垂直方向に継続して加える、さらに、前記塗料を塗布する基材ないしは部品は、前記傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する、この後、前記傾斜した容器の側面の一部を、前記基材ないしは前記部品に形成する塗膜の幅に相当する幅で開放し、さらに、前記基材ないしは前記部品を、前記ベルトコンベアー上を予め定めた速度で水平方向に移動させ、前記解放した容器の側面から、前記塗膜の幅に相当する帯状の前記塗料が、該塗料の自重で零れ落ち、前記基材ないしは前記部品に該塗料からなる塗膜を形成する、この後、前記基材ないしは前記部品を、前記塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、前記塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する、これによって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記液体の被膜で覆われた皮膜として、前記基材ないしは前記部品に形成される、前記した製造方法で製造した塗料を用いて、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法である。
つまり、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成するには、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に浸漬した塗料の構造を、塗膜が維持することが必須になる。このため、塗膜を形成する際に、塗料に余計な力が作用せず、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れないことが必要になる。従って、基材ないしは部品が、容器から近距離に配置させたベルトコンベアー上で水平方向に移動し、また、塗料を収納した容器を傾斜させ、塗膜の幅からなる塗料が、傾斜した容器から自重で零れ落ち、これによって、基材ないしは部品に塗膜を形成する方法が有効であると考えた。
しかし、自重で零れ落ちた塗料が、基材ないしは部品に付着力を発生しなければならない。このため、塗膜が形成された基材ないしは部品を昇温し、過剰のアルコールを塗膜から気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気がアルコールとともに塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、この液体がアンカー効果を発揮する。この結果、基材ないしは部品に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性を持つ液体の被膜で覆われた構成からなる皮膜が付着する。いっぽう、皮膜の面積が広がると、皮膜の重量が増大するが、粘稠性の液体のアンカー効果も増加する。皮膜が極めて軽量であれば、アンカー効果の増加の割合が、皮膜の重量の増加の割合を超え、皮膜の面積が広がるほど、皮膜の付着力が増大すると考えた。従って、皮膜は厚みが数ミクロンと薄く、極めて軽量である。
この考えを実現させるため、最初に、塗料が自重で零れ落ちる容器を準備する。すなわち、6段落に記載した塗料を製造する際に用いた容器より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が、形成する塗膜の幅に応じた幅で開放でき、傾斜させた容器の側面から塗料が零れ落ちる構造からなる第二の特徴とを兼備する容器を用意する。さらに、6段落で記載した方法で製造した塗料を容器に移し、容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加え、6段落で説明した塗料と同様に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、容器の底面の全体に広がって作成される。さらに、塗料が入った容器を、予め設定した角度で傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、容器の底面の垂直方向に継続して加え、塗料が自重で継続して零れ落ちるようにする。なお、傾斜した容器に加える振動が強すぎると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れるため、事前に、扁平粉の配列が壊れないことを確認する。こうして、塗料が自重で零れ落ちる容器の準備ができた。
次に、塗料が塗布される基材ないしは部品を準備する。基材ないしは部品は、前記した傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する。これによって、基材ないしは部品の準備ができた。
さらに、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、塗料が自重で零れ落ちる速度、すなわち、容器の傾斜角度と容器の底面に加える上下方向の振動加速度と、基材ないしは部品がベルトコンベアー上を移動する速度とを事前に調整し、基材ないしは部品の表面に、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、零れ落ちた塗料が、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に浸漬した状態を維持する塗膜として形成される条件を、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、容器の傾斜角度と、容器の底面に加える上下方向の振動加速度の大きさと、ベルトコンベアーの移動速度として、予め求める。
この後、傾斜させた容器の下端部に、予め求めた距離でベルトコンベアーを配置し、また、容器を予め求めた角度で傾斜させ、さらに、基材ないしは部品を、ベルトコンベアー上を予め求めた速度で水平方向に移動させ、この後、容器の側面の一部を、塗膜の幅に相当する幅で開放し、容器の側面から、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、基材ないしは部品に塗膜を形成する。
こうして、基材ないしは部品の大きさや形状に依らず、基材ないしは部品に塗膜が形成できる。これによって、5段落に記載した第三の課題が解決された。
いっぽう、連続して基材ないしは部品に塗膜を形成する場合は、予め次の準備を行う。すなわち、基材ないしは部品が、ベルトコンベアー上を移動する速度と、ベルトコンベアーに配置される間隔との双方が、容器の側面の一部を開放するタイミングと開放時間とに、合致する条件を予め求め、基材ないしは部品の同一個所に、同一の塗膜を形成する準備を行う。
この後、基材ないしは部品を、塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する。この際、基材ないしは部品の表面に存在する空気が体積膨張し、膨張した空気が気化したアルコールとともに塗膜から外界に吐き出る。例えば、180℃に昇温すると、空気の体積は、20℃に比べ、1.55倍に体積が膨張する。また、180℃における空気の密度は、0.754×10−3g/cm3と液体の密度より3桁も小さい。さらに、アルコールの蒸気密度は空気の密度の3倍より小さい。このため、体積膨張した空気と気化したアルコールとが、粘稠性の液体を押しのけ、塗膜から外界に吐き出され、空気と入れ替わって、粘稠性の液体が基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体は、アンカー効果によって凹部から出にくくなる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性の液体の被膜で覆われた皮膜が、基材ないしは部品に付着する。これによって、5段落に記載した第四の課題が解決され、5段落に記載した全ての課題が解決された。なお、気化したアルコールは、回収装置で回収し、再利用する。
なお、基材ないしは部品に付着した皮膜の表面は、沸点が180℃より高く、常温における蒸発量が極めて僅かな液体で覆われる、ないしは、不揮発性の液体で覆われる。このため、皮膜の表面は長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、液体で覆われた皮膜は、難燃性ないしは不燃性の性質を持つ。
さらに、塗料を作成する際に、扁平粉の量を、液体の2倍より多い体積を占める量として用いたため、皮膜を覆う液体の被膜の厚みは、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。また、容器内の塗料に3方向の振動を加え、扁平粉の集まりを容器の底面に広げるとともに、扁平面同士を重ね合わせ、この後、過剰なアルコールを気化させたため、扁平面同士を付着させる液体の皮膜は、前記液体の被膜の厚みよりさらに厚みが薄い。このため、皮膜は扁平粉の性質を持つ。さらに、塗料を作成する際の扁平粉の使用量を少なくすれば、皮膜が数ミクロンの厚みになり、基材ないしは部品に形成した皮膜は認知されにくい。また、皮膜を模倣して製造するには、6段落に記載した塗料の製造方法と、8段落に記載した皮膜の形成方法との理解が必須になるため難しい。さらに、極めて軽量である皮膜は、基材ないしは部品の表面から離脱しにくい。
以上に説明したように、本皮膜を形成する方法による液体で覆われた扁平粉の集まりは、5段落で説明した8つの要件を満たし、基材ないしは部品に付着する。
しかし、自重で零れ落ちた塗料が、基材ないしは部品に付着力を発生しなければならない。このため、塗膜が形成された基材ないしは部品を昇温し、過剰のアルコールを塗膜から気化させる際に、基材ないしは部品の表面の空気が体積膨張し、体積膨張した空気がアルコールとともに塗膜から外界に吐き出され、基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に、一定の粘度を持つ粘稠性の液体が、空気と入れ替わって入り込み、この液体がアンカー効果を発揮する。この結果、基材ないしは部品に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性を持つ液体の被膜で覆われた構成からなる皮膜が付着する。いっぽう、皮膜の面積が広がると、皮膜の重量が増大するが、粘稠性の液体のアンカー効果も増加する。皮膜が極めて軽量であれば、アンカー効果の増加の割合が、皮膜の重量の増加の割合を超え、皮膜の面積が広がるほど、皮膜の付着力が増大すると考えた。従って、皮膜は厚みが数ミクロンと薄く、極めて軽量である。
この考えを実現させるため、最初に、塗料が自重で零れ落ちる容器を準備する。すなわち、6段落に記載した塗料を製造する際に用いた容器より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が、形成する塗膜の幅に応じた幅で開放でき、傾斜させた容器の側面から塗料が零れ落ちる構造からなる第二の特徴とを兼備する容器を用意する。さらに、6段落で記載した方法で製造した塗料を容器に移し、容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加え、6段落で説明した塗料と同様に、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体のアルコール希釈液に沈降した塗料が、容器の底面の全体に広がって作成される。さらに、塗料が入った容器を、予め設定した角度で傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、容器の底面の垂直方向に継続して加え、塗料が自重で継続して零れ落ちるようにする。なお、傾斜した容器に加える振動が強すぎると、扁平面同士が重なり合った扁平粉の配列が壊れるため、事前に、扁平粉の配列が壊れないことを確認する。こうして、塗料が自重で零れ落ちる容器の準備ができた。
次に、塗料が塗布される基材ないしは部品を準備する。基材ないしは部品は、前記した傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する。これによって、基材ないしは部品の準備ができた。
さらに、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、塗料が自重で零れ落ちる速度、すなわち、容器の傾斜角度と容器の底面に加える上下方向の振動加速度と、基材ないしは部品がベルトコンベアー上を移動する速度とを事前に調整し、基材ないしは部品の表面に、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、零れ落ちた塗料が、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、アルコール希釈液に浸漬した状態を維持する塗膜として形成される条件を、傾斜させた容器の下端部とベルトコンベアーとの距離と、容器の傾斜角度と、容器の底面に加える上下方向の振動加速度の大きさと、ベルトコンベアーの移動速度として、予め求める。
この後、傾斜させた容器の下端部に、予め求めた距離でベルトコンベアーを配置し、また、容器を予め求めた角度で傾斜させ、さらに、基材ないしは部品を、ベルトコンベアー上を予め求めた速度で水平方向に移動させ、この後、容器の側面の一部を、塗膜の幅に相当する幅で開放し、容器の側面から、塗膜の幅に相当する帯状の塗料が自重で零れ落ち、基材ないしは部品に塗膜を形成する。
こうして、基材ないしは部品の大きさや形状に依らず、基材ないしは部品に塗膜が形成できる。これによって、5段落に記載した第三の課題が解決された。
いっぽう、連続して基材ないしは部品に塗膜を形成する場合は、予め次の準備を行う。すなわち、基材ないしは部品が、ベルトコンベアー上を移動する速度と、ベルトコンベアーに配置される間隔との双方が、容器の側面の一部を開放するタイミングと開放時間とに、合致する条件を予め求め、基材ないしは部品の同一個所に、同一の塗膜を形成する準備を行う。
この後、基材ないしは部品を、塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する。この際、基材ないしは部品の表面に存在する空気が体積膨張し、膨張した空気が気化したアルコールとともに塗膜から外界に吐き出る。例えば、180℃に昇温すると、空気の体積は、20℃に比べ、1.55倍に体積が膨張する。また、180℃における空気の密度は、0.754×10−3g/cm3と液体の密度より3桁も小さい。さらに、アルコールの蒸気密度は空気の密度の3倍より小さい。このため、体積膨張した空気と気化したアルコールとが、粘稠性の液体を押しのけ、塗膜から外界に吐き出され、空気と入れ替わって、粘稠性の液体が基材ないしは部品の表面のサブミクロンの大きさからなる凹部に入り込み、いったん凹部に入り込んだ液体は、アンカー効果によって凹部から出にくくなる。この結果、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、粘稠性の液体の被膜で覆われた皮膜が、基材ないしは部品に付着する。これによって、5段落に記載した第四の課題が解決され、5段落に記載した全ての課題が解決された。なお、気化したアルコールは、回収装置で回収し、再利用する。
なお、基材ないしは部品に付着した皮膜の表面は、沸点が180℃より高く、常温における蒸発量が極めて僅かな液体で覆われる、ないしは、不揮発性の液体で覆われる。このため、皮膜の表面は長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、液体で覆われた皮膜は、難燃性ないしは不燃性の性質を持つ。
さらに、塗料を作成する際に、扁平粉の量を、液体の2倍より多い体積を占める量として用いたため、皮膜を覆う液体の被膜の厚みは、サブミクロンの厚みの扁平粉の厚みよりさらに薄い。また、容器内の塗料に3方向の振動を加え、扁平粉の集まりを容器の底面に広げるとともに、扁平面同士を重ね合わせ、この後、過剰なアルコールを気化させたため、扁平面同士を付着させる液体の皮膜は、前記液体の被膜の厚みよりさらに厚みが薄い。このため、皮膜は扁平粉の性質を持つ。さらに、塗料を作成する際の扁平粉の使用量を少なくすれば、皮膜が数ミクロンの厚みになり、基材ないしは部品に形成した皮膜は認知されにくい。また、皮膜を模倣して製造するには、6段落に記載した塗料の製造方法と、8段落に記載した皮膜の形成方法との理解が必須になるため難しい。さらに、極めて軽量である皮膜は、基材ないしは部品の表面から離脱しにくい。
以上に説明したように、本皮膜を形成する方法による液体で覆われた扁平粉の集まりは、5段落で説明した8つの要件を満たし、基材ないしは部品に付着する。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する方法であり、該導電性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてイオン液体を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する、導電性の皮膜を形成する方法である。
つまり、導電性に優れた扁平粉を用い、液体として導電性のイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた導電性が付与される。
こうした導電性に優れた第一の扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉がある。なお、軟質金属からなる扁平粉は、フレーク粉と呼ばれることが多いため、ここでは、フレーク粉として記載する。すなわち、アルミニウムを除く金、銀、銅、錫ないしは亜鉛などから軟質金属の粉体を、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で軟質金属粉の集まりを叩き、薄いフレーク状に金属粉を延ばすことで製造される。原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。なお、アルミニウムについては、微粒子の活性度が高いため、アトマイズ法で製造した微粒子を、湿式ボールミルで扁平処理する。従って、扁平粉は、金属の電気導電度を持ち、扁平粉の真密度は金属の密度になる。さらに、粉体の厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜が形成できる。また、フレーク粉の摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。従って、皮膜が摺接摩擦を行う際は、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑るため、摺接部材によるせん断応力が緩和され、皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。また、フレーク粉の耐荷重性は600MPaと高いため、軟質金属からなるフレーク粉を用いると、皮膜は導電性皮膜の機能のみならず、潤滑性皮膜としても作用する。いっぽう、アルミニウムと錫を除く軟質金属のフレーク粉の耐熱温度は軟化点で決まり、最も軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属のフレーク粉を用いた皮膜は、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、アルミニウムの軟化点は350℃である。また、錫の融点は232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫のフレーク粉からなる皮膜は、使用温度が制限される。
導電性に優れた第二の扁平粉として、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛は、天然黒鉛を精製して製造する扁平粉である。また、熱分解黒鉛は、炭化ケイ素SiCを生成する際の副産物として生成される。いずれも安価な粉体である。これらの黒鉛粉は、固定炭素が98%以上からなり、最も黒鉛の結晶度が高い炭素材料である。また、粉体が層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊する機械的な異方性を持つ。このため、摺接摩擦によって、層間結合が優先して破壊する自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。さらに、黒鉛粉の扁平面同士が重なり合った黒鉛粉の集まりからなる皮膜は、摺接部材が扁平面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、摩耗係数はさらに小さくなる。また、黒鉛粉は、電導性についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmで、銅の比抵抗の23倍に過ぎない。これに対し、黒鉛の結晶面に垂直な方向の比抵抗は、7.6×10−3Ωmと劣る。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、電流は比抵抗が小さい扁平面方向に優先して流れ、皮膜の導電度は、結晶面に平行な方向の導電度に近く、金属に準ずる導電度を示す。従って、皮膜は潤滑性皮膜の機能のみならず、導電性皮膜としても作用する。なお、黒鉛粉は大気雰囲気で450℃付近から酸化が始まるが、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜ないしは帯電防止膜などの用途に対しては、十分な耐熱性を持つ。また、低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。
なお、上記した扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、イオン液体は、第一に、カチオンとアニオンとの組み合わせからなるイオンだけからなる物質である。第二に、−30℃−300℃の温度範囲で液体である。第三に、蒸気圧を殆ど持たない不揮発性の液体であるため不燃性である。第四に、熱安定性に優れ、多くのイオン液体は、300℃でも熱分解しない。第五に、10−5−10−2S/cmと高いイオン導電率を持つ導電性物質である。第六に、疎水性のアニオンからなる一部のイオン液体を除く多くのイオン液体は親水性で、メタノールに任意の割合で混和する。第七に、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。すなわち、イオン液体は、同じカチオンでもアニオンによって粘度が大きく変わる。例えば、脂肪族四級アンモニウムカチオンに四フッ化ホウ酸アニオンを組み合わせたイオン液体の粘度は335mPa秒であるが、パーフルオロアルキル鎖を導入したアニオンとの組み合わせでは、粘度が58mPa秒に低減する。しかし、メタノールの粘度の30倍の粘度である17.7mPa秒に比べて高い。従って、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。第八に、1.2−1.6g/cm3の密度を持つ。なお、イオン液体の粘度が高いため、メタノール希釈液におけるメタノールの希釈割合を10重量%よりさらに高めれば、前記した黒鉛粉の密度は、イオン液体のメタノール希釈液の密度の2.5倍より高い密度になる。
以上に説明したように、イオン液体は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。さらに、高い導電性を持ち、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。また、不揮発性の液体であるため、導電性の皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、導電性の皮膜は、不燃性の性質を持つ。
いっぽう、イオン液体は、現在は高価な物質であるが、導電性皮膜を形成する際に使用する量が極少量であるため、導電性の皮膜を形成する原料費は高価にならない。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。なお、エタノールの蒸気密度が空気の1.6倍で、1−プロパノールと2−プロパノールとの双方の蒸気密度が空気の2.1倍で、1−ブタノールの蒸気密度が2.6倍である。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、導電性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に導電性皮膜が形成できる。
こうした導電性に優れた第一の扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉がある。なお、軟質金属からなる扁平粉は、フレーク粉と呼ばれることが多いため、ここでは、フレーク粉として記載する。すなわち、アルミニウムを除く金、銀、銅、錫ないしは亜鉛などから軟質金属の粉体を、スタンプミル(搗砕機に相当する)により、多数の金属製の杵で軟質金属粉の集まりを叩き、薄いフレーク状に金属粉を延ばすことで製造される。原料となる金属粉は、多くの場合は、金属の純度が高く、鉛フリーの電解金属粉を用いる。なお、アルミニウムについては、微粒子の活性度が高いため、アトマイズ法で製造した微粒子を、湿式ボールミルで扁平処理する。従って、扁平粉は、金属の電気導電度を持ち、扁平粉の真密度は金属の密度になる。さらに、粉体の厚みに対する長径と短径との平均値の比率であるアスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉で、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりからなる皮膜が形成できる。また、フレーク粉の摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。従って、皮膜が摺接摩擦を行う際は、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑るため、摺接部材によるせん断応力が緩和され、皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。また、フレーク粉の耐荷重性は600MPaと高いため、軟質金属からなるフレーク粉を用いると、皮膜は導電性皮膜の機能のみならず、潤滑性皮膜としても作用する。いっぽう、アルミニウムと錫を除く軟質金属のフレーク粉の耐熱温度は軟化点で決まり、最も軟化点が低い電解銅でも800℃と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たず、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属のフレーク粉を用いた皮膜は、高温、極低温、真空、高圧下など、過酷な環境でも使用できる。なお、アルミニウムの軟化点は350℃である。また、錫の融点は232℃で、−40℃付近で低温脆性を起こし、錫のフレーク粉からなる皮膜は、使用温度が制限される。
導電性に優れた第二の扁平粉として、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛は、天然黒鉛を精製して製造する扁平粉である。また、熱分解黒鉛は、炭化ケイ素SiCを生成する際の副産物として生成される。いずれも安価な粉体である。これらの黒鉛粉は、固定炭素が98%以上からなり、最も黒鉛の結晶度が高い炭素材料である。また、粉体が層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊する機械的な異方性を持つ。このため、摺接摩擦によって、層間結合が優先して破壊する自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。さらに、黒鉛粉の扁平面同士が重なり合った黒鉛粉の集まりからなる皮膜は、摺接部材が扁平面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、摩耗係数はさらに小さくなる。また、黒鉛粉は、電導性についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmで、銅の比抵抗の23倍に過ぎない。これに対し、黒鉛の結晶面に垂直な方向の比抵抗は、7.6×10−3Ωmと劣る。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、電流は比抵抗が小さい扁平面方向に優先して流れ、皮膜の導電度は、結晶面に平行な方向の導電度に近く、金属に準ずる導電度を示す。従って、皮膜は潤滑性皮膜の機能のみならず、導電性皮膜としても作用する。なお、黒鉛粉は大気雰囲気で450℃付近から酸化が始まるが、電気回路の配線、電極、電磁波シールド膜ないしは帯電防止膜などの用途に対しては、十分な耐熱性を持つ。また、低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。
なお、上記した扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、イオン液体は、第一に、カチオンとアニオンとの組み合わせからなるイオンだけからなる物質である。第二に、−30℃−300℃の温度範囲で液体である。第三に、蒸気圧を殆ど持たない不揮発性の液体であるため不燃性である。第四に、熱安定性に優れ、多くのイオン液体は、300℃でも熱分解しない。第五に、10−5−10−2S/cmと高いイオン導電率を持つ導電性物質である。第六に、疎水性のアニオンからなる一部のイオン液体を除く多くのイオン液体は親水性で、メタノールに任意の割合で混和する。第七に、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。すなわち、イオン液体は、同じカチオンでもアニオンによって粘度が大きく変わる。例えば、脂肪族四級アンモニウムカチオンに四フッ化ホウ酸アニオンを組み合わせたイオン液体の粘度は335mPa秒であるが、パーフルオロアルキル鎖を導入したアニオンとの組み合わせでは、粘度が58mPa秒に低減する。しかし、メタノールの粘度の30倍の粘度である17.7mPa秒に比べて高い。従って、メタノールの粘度の30倍より著しく高い粘度を持つ。第八に、1.2−1.6g/cm3の密度を持つ。なお、イオン液体の粘度が高いため、メタノール希釈液におけるメタノールの希釈割合を10重量%よりさらに高めれば、前記した黒鉛粉の密度は、イオン液体のメタノール希釈液の密度の2.5倍より高い密度になる。
以上に説明したように、イオン液体は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。さらに、高い導電性を持ち、導電性皮膜を形成する際の優れた原料になる。また、不揮発性の液体であるため、導電性の皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、導電性の皮膜は、不燃性の性質を持つ。
いっぽう、イオン液体は、現在は高価な物質であるが、導電性皮膜を形成する際に使用する量が極少量であるため、導電性の皮膜を形成する原料費は高価にならない。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。なお、エタノールの蒸気密度が空気の1.6倍で、1−プロパノールと2−プロパノールとの双方の蒸気密度が空気の2.1倍で、1−ブタノールの蒸気密度が2.6倍である。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、導電性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に導電性皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する方法であり、該熱伝導性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する、熱伝導性の皮膜を形成する方法である。
つまり、熱伝導性に優れた扁平粉を用い、液体として比熱容量が大きいグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた熱伝導性を付与できる。
ところで、熱伝導性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した銀、銅、金からなるフレーク粉がある。すなわち、熱伝導率が420W/mKである銀が、金属の中で最も熱伝導性に優れ、熱伝導率が398W/mKである銅が銀に続き、熱伝導率が320W/mKである金が銅に続く。
第二の熱伝導性に優れた扁平粉に、11段落で説明した鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。つまり、黒鉛粉は、熱伝導度度についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導率は300°Kで1950W/mKで、銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀より優れた熱導電性を示す。
第三の熱伝導性に優れた扁平粉に、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉がある。つまり、窒化ホウ素は、六方晶系と立方晶系との2つの結晶構造をとるが、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持ち、前記した黒鉛粉と同様に、熱伝導度に対し異方性を持つ。すなわち、結晶面に平行な方向の熱伝導率は410W/mKで、結晶面に垂直な方向の熱伝導率は、2W/mKである。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀に近い熱導電性を示す。
従って、熱伝導性に優れた扁平粉を用いた皮膜は、熱導電性皮膜として作用する。
なお、前記した熱伝導性の扁平粉の中で、黒鉛粉の密度が最も小さく、2.26g/cm3である。いっぽう、液体として用いるグリコール類の密度は、1.0−1.1g/cm3である。メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は、比熱容量が大きな液体であり、熱伝導の媒体として好適である。すなわち、最も比熱容量が大きな液体に、20℃で4.18kJ/kg・Kの比熱容量を持つ水がある。いっぽう、代表的なグリコール類であるエチレングリコールの比熱容量は、20℃で2.38kJ/kg・Kである。また、プロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.51kJ/kg・Kで、ジプロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.18kJ/kg・Kである。このように、グリコール類は、大きな比熱容量を持つ液体で、熱伝導性皮膜を構成する熱伝導の媒体として好適である。
また、グリコール類は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。すなわち、エチレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の36倍で、沸点が197℃で、発火点が398℃で、密度が1.1132g/cm3の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールの粘度の61倍で、沸点が244℃で、発火点が358℃で、密度が1.1160g/cm3の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、メタノールの粘度の82倍で、沸点が188℃で、発火点が420℃で、密度が1.038g/cm3の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の127倍で、沸点が232℃で、発火点が310℃で、密度が1.022g/cm3の液状モノマーである。
従って、グリコール類は、前記した熱伝導性の扁平粉とともに、熱伝導性皮膜を形成する際の優れた原料になる。なお、これら液状モノマーは昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。つまり、光や熱で容易に重合反応を起こす有機化合物を、液状モノマーとして用いる時は、必ず重合禁止剤ないしは重合防止剤が液状モノマーに添加されている。このため、これら液状モノマーは、昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。
また、エチレングリコールの沸点は197℃で、25℃における蒸気圧が6.67Pa(蒸気濃度が0.013%に相当する)と極めて低い。この蒸気圧は、−50℃における飽和水蒸気圧に近い値で、−50℃における飽和水蒸気量は0.038g/m3と極僅かである。従って、エチレングリコールの常温における蒸発量は極僅かである。また、プロピレングリコールは、グリコール類の中で最も低い188℃の沸点を持つが、20℃における蒸気圧は10.6Paと極めて低く、−41℃における飽和水蒸気圧に近い値である。さらに、ジエチレングリコールの蒸気圧は25℃で0.76Paと低く、ジプロピレングリコールの蒸気圧は20℃で1.3Paと低い。従って、グリコール類の常温における蒸発量は極僅かで、熱伝導性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。
さらに、最も発火点が低いジプロピレングリコールの発火点が310℃である。このため、熱伝導性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、熱伝導性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に熱伝導性皮膜が形成できる。
ところで、熱伝導性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した銀、銅、金からなるフレーク粉がある。すなわち、熱伝導率が420W/mKである銀が、金属の中で最も熱伝導性に優れ、熱伝導率が398W/mKである銅が銀に続き、熱伝導率が320W/mKである金が銅に続く。
第二の熱伝導性に優れた扁平粉に、11段落で説明した鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉がある。つまり、黒鉛粉は、熱伝導度度についても異方性を持ち、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導率は300°Kで1950W/mKで、銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。従って、黒鉛の結晶面である扁平面同士が重なり合って、皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、黒鉛の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀より優れた熱導電性を示す。
第三の熱伝導性に優れた扁平粉に、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉がある。つまり、窒化ホウ素は、六方晶系と立方晶系との2つの結晶構造をとるが、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持ち、前記した黒鉛粉と同様に、熱伝導度に対し異方性を持つ。すなわち、結晶面に平行な方向の熱伝導率は410W/mKで、結晶面に垂直な方向の熱伝導率は、2W/mKである。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近く、銀に近い熱導電性を示す。
従って、熱伝導性に優れた扁平粉を用いた皮膜は、熱導電性皮膜として作用する。
なお、前記した熱伝導性の扁平粉の中で、黒鉛粉の密度が最も小さく、2.26g/cm3である。いっぽう、液体として用いるグリコール類の密度は、1.0−1.1g/cm3である。メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は、比熱容量が大きな液体であり、熱伝導の媒体として好適である。すなわち、最も比熱容量が大きな液体に、20℃で4.18kJ/kg・Kの比熱容量を持つ水がある。いっぽう、代表的なグリコール類であるエチレングリコールの比熱容量は、20℃で2.38kJ/kg・Kである。また、プロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.51kJ/kg・Kで、ジプロピレングリコールの比熱容量は、25℃で2.18kJ/kg・Kである。このように、グリコール類は、大きな比熱容量を持つ液体で、熱伝導性皮膜を構成する熱伝導の媒体として好適である。
また、グリコール類は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。すなわち、エチレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の36倍で、沸点が197℃で、発火点が398℃で、密度が1.1132g/cm3の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールの粘度の61倍で、沸点が244℃で、発火点が358℃で、密度が1.1160g/cm3の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、メタノールの粘度の82倍で、沸点が188℃で、発火点が420℃で、密度が1.038g/cm3の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールに溶解し、メタノールの粘度の127倍で、沸点が232℃で、発火点が310℃で、密度が1.022g/cm3の液状モノマーである。
従って、グリコール類は、前記した熱伝導性の扁平粉とともに、熱伝導性皮膜を形成する際の優れた原料になる。なお、これら液状モノマーは昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。つまり、光や熱で容易に重合反応を起こす有機化合物を、液状モノマーとして用いる時は、必ず重合禁止剤ないしは重合防止剤が液状モノマーに添加されている。このため、これら液状モノマーは、昇温や光の照射によってポリマーに重合しない。
また、エチレングリコールの沸点は197℃で、25℃における蒸気圧が6.67Pa(蒸気濃度が0.013%に相当する)と極めて低い。この蒸気圧は、−50℃における飽和水蒸気圧に近い値で、−50℃における飽和水蒸気量は0.038g/m3と極僅かである。従って、エチレングリコールの常温における蒸発量は極僅かである。また、プロピレングリコールは、グリコール類の中で最も低い188℃の沸点を持つが、20℃における蒸気圧は10.6Paと極めて低く、−41℃における飽和水蒸気圧に近い値である。さらに、ジエチレングリコールの蒸気圧は25℃で0.76Paと低く、ジプロピレングリコールの蒸気圧は20℃で1.3Paと低い。従って、グリコール類の常温における蒸発量は極僅かで、熱伝導性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。
さらに、最も発火点が低いジプロピレングリコールの発火点が310℃である。このため、熱伝導性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、熱伝導性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に熱伝導性皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する方法であり、該絶縁性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する、絶縁性の皮膜を形成する方法である。
つまり、絶縁性に優れた扁平粉を用い、液体として絶縁性のグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に優れた絶縁性が付与される。
ところで、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素からなる扁平粉の電気抵抗率は、いずれも1014Ωcm以上の高い絶縁性を持つ。従って、極めて大きな絶縁抵抗を持つ絶縁性皮膜が形成される。なお、ガラス扁平粉は、ソーダ石灰ガラスのみが、1012Ωcmの電気抵抗率を持つ。また、ヘマタイト(酸化第二鉄Fe2O3のアルファ相からなる物質)の扁平粉は、電気抵抗率は108Ωcmと低い。しかし、扁平粉の厚みがサブミクロンであり、ヘマタイトの扁平粉の断面積を0.3μm×10μmとすると、扁平粉の単位長さ当たりの電気抵抗は、3.3×1016Ω/cmになる。いっぽう、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの電気抵抗は、極めて多数の扁平粉の電気抵抗の直列接続になり、ヘマタイトの扁平粉の集まりからなる絶縁性皮膜は、高い絶縁性を示す。なお、ヘマタイトの扁平粉は、ベンガラと呼ばれる赤色顔料で、汎用的な扁平粉である。
なお、シリカの扁平粉が、絶縁性の扁平粉の中で最も密度が小さく、2.2g/cm3である。いっぽう、グリコール類の密度は1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、シリカの密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなる扁平粉は、絶縁性の皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は絶縁性であるが、前記した扁平粉より絶縁性が低い。最も分子量が少なく、絶縁性が低い、エチレングリコールの比抵抗は106Ωcmである。しかし、皮膜を形成するグリコール類の厚みが極薄いため、例えば、厚みが0.1μmで、幅が1cmからなるエチレングリコールの皮膜の単位長さ当たりの電気抵抗は、1011Ω/cmと高い絶縁性を示す。また、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。従って、グリコール類に属する有機化合物は、前記した絶縁性の扁平粉とともに、絶縁性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類の沸点が高く、常温における蒸発量は極僅かであるため、絶縁性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類は発火点が高いため、絶縁性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。このため、メタノールは、絶縁性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
ところで、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素からなる扁平粉の電気抵抗率は、いずれも1014Ωcm以上の高い絶縁性を持つ。従って、極めて大きな絶縁抵抗を持つ絶縁性皮膜が形成される。なお、ガラス扁平粉は、ソーダ石灰ガラスのみが、1012Ωcmの電気抵抗率を持つ。また、ヘマタイト(酸化第二鉄Fe2O3のアルファ相からなる物質)の扁平粉は、電気抵抗率は108Ωcmと低い。しかし、扁平粉の厚みがサブミクロンであり、ヘマタイトの扁平粉の断面積を0.3μm×10μmとすると、扁平粉の単位長さ当たりの電気抵抗は、3.3×1016Ω/cmになる。いっぽう、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりの電気抵抗は、極めて多数の扁平粉の電気抵抗の直列接続になり、ヘマタイトの扁平粉の集まりからなる絶縁性皮膜は、高い絶縁性を示す。なお、ヘマタイトの扁平粉は、ベンガラと呼ばれる赤色顔料で、汎用的な扁平粉である。
なお、シリカの扁平粉が、絶縁性の扁平粉の中で最も密度が小さく、2.2g/cm3である。いっぽう、グリコール類の密度は1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、シリカの密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなる扁平粉は、絶縁性の皮膜を形成する際の優れた原料になる。
いっぽう、グリコール類に属する有機化合物は絶縁性であるが、前記した扁平粉より絶縁性が低い。最も分子量が少なく、絶縁性が低い、エチレングリコールの比抵抗は106Ωcmである。しかし、皮膜を形成するグリコール類の厚みが極薄いため、例えば、厚みが0.1μmで、幅が1cmからなるエチレングリコールの皮膜の単位長さ当たりの電気抵抗は、1011Ω/cmと高い絶縁性を示す。また、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物は、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備する。従って、グリコール類に属する有機化合物は、前記した絶縁性の扁平粉とともに、絶縁性皮膜を形成する際の優れた原料になる。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類の沸点が高く、常温における蒸発量は極僅かであるため、絶縁性皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類は発火点が高いため、絶縁性皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。このため、メタノールは、絶縁性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する方法であり、該潤滑性の皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する、潤滑性の皮膜を形成する方法である。
つまり、潤滑性に優れた扁平粉を用い、液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな扁平粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、優れた潤滑性を付与できる。
ところで、潤滑性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した軟質金属からなるフレーク粉がある。11段落で説明したように、摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。さらに、アスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉の集まりで、潤滑性被膜が形成できる。さらに、扁平面同士が重なり合って潤滑性被膜を形成するため、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。さらに、軟質金属は、金属間の相互溶解度が低い金属との組み合わせが可能になり、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少なくなる。例えば、銅フレーク粉の表面をメッキによって銀をコーティングした銀コート銅フレーク粉は、ないしは、銀フレーク粉は、鉄、ニッケル、コバルトないしはクロムと、銀との相互溶解度がゼロに近いため、これらの金属からなる摺接部材と、銀コート銅フレーク粉、ないしは、銀フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量はさらに少なくなる。また、鉄、クロム、アルミニウム、マグネシウムないしはケイ素と、錫との相互溶解度がゼロに近く、これらの金属からなる摺接部材と、錫フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性に優れ、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少ない。また、クロム、モリブデン、タングステンないしはニオブと、銅との相互溶解度が小さく、これらの金属からなる摺接部材と、銅フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量が少ない。
さらに、11段落で説明したように、錫とアルミニウムを除く金属フレーク粉の耐熱温度は、800℃以上と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属からなるフレーク粉の集まりからなる潤滑性皮膜は、油潤滑が適用できない高温、極低温、超真空、超高圧下など、過酷な環境でも使用できる。さらに、耐荷重性は600MPaと高い。このように、軟質金属からなるフレーク粉は、潤滑性皮膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。
潤滑性に優れた第二の扁平粉に、層状の結晶構造を持つ扁平粉がある。すなわち、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などの無機化合物からなる扁平粉と、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、いずれも層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊される。このため、摺接摩擦によって、層間結晶が優先して破壊される自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。また、本発明の潤滑性被膜の形成方法によれば、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりで潤滑性被膜が形成されるため、潤滑性皮膜の摩擦係数はさらに小さい。さらに、摺接部材が滑らかな面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜の摩耗速度がさらに遅くなる。なお、窒化ホウ素は、13段落で説明したように、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持つ。
いっぽう、耐熱温度は、窒化ホウ素は酸素ガスを含む雰囲気で900℃の耐熱性を持つ。これに対し、二硫化モリブデンは350℃付近から、二硫化タングステンは425℃付近から、黒鉛は450℃付近から酸化が始まる。フッ化黒鉛の熱分解の開始温度は、原料炭素によって変わるが、320−490℃である。このように、耐熱温度は材質によって変わるが、油潤滑より耐熱性が高い。なお、二硫化モリブデンが三酸化モリブデンに酸化されても、層状の結晶構造は維持されるため、酸化鉛に近い潤滑性能を持つが、酸化の際に硫黄ガスが発生するため、近辺にある金属を硫化させる恐れがある。また、耐荷重性が油潤滑より著しく高く、例えば、二硫化モリブデンと二硫化タングステンは780MPaで、黒鉛粉は490MPaと高い。
このように、層状の結晶構造を持つ無機化合物からなる扁平粉、ないしは、黒鉛粉は、潤滑性被膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。いっぽう、黒鉛粉は、層間に吸着するガスで潤滑され、真空中では吸着するガスがなくなり、摩擦係数が急増する。
なお、上記した潤滑性の扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。しかし、13段落で説明したように、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ無機化合物のフレーク粉と黒鉛粉とは、本発明の潤滑性被膜を形成する方法における好適な扁平粉である。従って、潤滑性被膜に求められる仕様に応じて扁平粉の材質を選択すれば、本発明における潤滑性被膜は汎用性を持つ。
いっぽう、グリコール類は、13段落で説明したように、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備し、潤滑性皮膜を形成する際の液体として用いることができる。また、潤滑性皮膜の表面を覆うグリコール類からなる被膜は、サブミクロンの厚みからなる扁平粉の厚みよりさらに薄いため、グリコール類の被膜が扁平粉の集まりと一体になって潤滑性皮膜を形成し、摺動部材が潤滑性皮膜の表面で摺接摩擦する際に、潤滑性皮膜の滑らかな面で摺動部材が滑り、被膜は摺動部材によって剥がされ難い。また、潤滑性皮膜は、摺動部材から応力を受けるが、摺動部材の応力は、潤滑性の重なり合った扁平面が受け止め、応力によってグリコール類の被膜が変形するが、応力が解除されると、グリコール類の被膜は、元の被膜に戻る。なお、グリコール類の表面の被膜が、潤滑性皮膜の表面からたとえ剥がされても、潤滑性皮膜の表面に、扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが現れるため、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。さらに、最も表層の扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが剥がされた場合は、グリコール類の極薄い皮膜が表面に現れ、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。こうした表面の摩耗現象が繰り返されるため、本発明の潤滑性皮膜の潤滑性の寿命は長い。さらに、表面の摩耗現象の際に、グリコール類と扁平粉とが剥がされるため、剥がされた扁平粉にグリコール類が付着するため、剥がされた扁平粉が潤滑性皮膜に直接凝着し、この扁平粉による凝着摩耗は起こりにくい。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、潤滑性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
ところで、潤滑性に優れた第一の扁平粉として、11段落で説明した軟質金属からなるフレーク粉がある。11段落で説明したように、摩擦係数は、0.20−0.25と小さい。さらに、アスペクト比が大きく、かつ、平面に近い滑らかな面を持つ。このため、少ない量のフレーク粉の集まりで、潤滑性被膜が形成できる。さらに、扁平面同士が重なり合って潤滑性被膜を形成するため、軟質金属からなる滑らかな面で摺接部材が滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜を形成するフレーク粉は剥がれにくい。さらに、軟質金属は、金属間の相互溶解度が低い金属との組み合わせが可能になり、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少なくなる。例えば、銅フレーク粉の表面をメッキによって銀をコーティングした銀コート銅フレーク粉は、ないしは、銀フレーク粉は、鉄、ニッケル、コバルトないしはクロムと、銀との相互溶解度がゼロに近いため、これらの金属からなる摺接部材と、銀コート銅フレーク粉、ないしは、銀フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量はさらに少なくなる。また、鉄、クロム、アルミニウム、マグネシウムないしはケイ素と、錫との相互溶解度がゼロに近く、これらの金属からなる摺接部材と、錫フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性に優れ、潤滑性皮膜の摩耗量がさらに少ない。また、クロム、モリブデン、タングステンないしはニオブと、銅との相互溶解度が小さく、これらの金属からなる摺接部材と、銅フレーク粉からなる潤滑性皮膜とは、摺接面における滑り特性が優れ、潤滑性皮膜の摩耗量が少ない。
さらに、11段落で説明したように、錫とアルミニウムを除く金属フレーク粉の耐熱温度は、800℃以上と高い。また、錫を除く軟質金属は低温脆性を持たないので、極低温での使用が可能になる。従って、軟質金属からなるフレーク粉の集まりからなる潤滑性皮膜は、油潤滑が適用できない高温、極低温、超真空、超高圧下など、過酷な環境でも使用できる。さらに、耐荷重性は600MPaと高い。このように、軟質金属からなるフレーク粉は、潤滑性皮膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。
潤滑性に優れた第二の扁平粉に、層状の結晶構造を持つ扁平粉がある。すなわち、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などの無機化合物からなる扁平粉と、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉は、いずれも層状の結晶構造を持ち、結合力が弱い層間結合が優先して破壊される。このため、摺接摩擦によって、層間結晶が優先して破壊される自己潤滑作用を発揮し、摺接摩擦における摩擦係数は、前記した金属フレーク粉よりさらに小さい。また、本発明の潤滑性被膜の形成方法によれば、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりで潤滑性被膜が形成されるため、潤滑性皮膜の摩擦係数はさらに小さい。さらに、摺接部材が滑らかな面で滑り、摺接部材によるせん断応力が緩和され、潤滑性皮膜の摩耗速度がさらに遅くなる。なお、窒化ホウ素は、13段落で説明したように、六方晶系からなる窒化ホウ素が層状の結晶構造を持つ。
いっぽう、耐熱温度は、窒化ホウ素は酸素ガスを含む雰囲気で900℃の耐熱性を持つ。これに対し、二硫化モリブデンは350℃付近から、二硫化タングステンは425℃付近から、黒鉛は450℃付近から酸化が始まる。フッ化黒鉛の熱分解の開始温度は、原料炭素によって変わるが、320−490℃である。このように、耐熱温度は材質によって変わるが、油潤滑より耐熱性が高い。なお、二硫化モリブデンが三酸化モリブデンに酸化されても、層状の結晶構造は維持されるため、酸化鉛に近い潤滑性能を持つが、酸化の際に硫黄ガスが発生するため、近辺にある金属を硫化させる恐れがある。また、耐荷重性が油潤滑より著しく高く、例えば、二硫化モリブデンと二硫化タングステンは780MPaで、黒鉛粉は490MPaと高い。
このように、層状の結晶構造を持つ無機化合物からなる扁平粉、ないしは、黒鉛粉は、潤滑性被膜を形成する扁平粉として優れた性質を持つ。いっぽう、黒鉛粉は、層間に吸着するガスで潤滑され、真空中では吸着するガスがなくなり、摩擦係数が急増する。
なお、上記した潤滑性の扁平粉の密度は、黒鉛粉の密度が2.26g/cm3と最も小さい。しかし、13段落で説明したように、黒鉛粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
以上に説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ無機化合物のフレーク粉と黒鉛粉とは、本発明の潤滑性被膜を形成する方法における好適な扁平粉である。従って、潤滑性被膜に求められる仕様に応じて扁平粉の材質を選択すれば、本発明における潤滑性被膜は汎用性を持つ。
いっぽう、グリコール類は、13段落で説明したように、6段落に記載した液体の3つの性質を兼備し、潤滑性皮膜を形成する際の液体として用いることができる。また、潤滑性皮膜の表面を覆うグリコール類からなる被膜は、サブミクロンの厚みからなる扁平粉の厚みよりさらに薄いため、グリコール類の被膜が扁平粉の集まりと一体になって潤滑性皮膜を形成し、摺動部材が潤滑性皮膜の表面で摺接摩擦する際に、潤滑性皮膜の滑らかな面で摺動部材が滑り、被膜は摺動部材によって剥がされ難い。また、潤滑性皮膜は、摺動部材から応力を受けるが、摺動部材の応力は、潤滑性の重なり合った扁平面が受け止め、応力によってグリコール類の被膜が変形するが、応力が解除されると、グリコール類の被膜は、元の被膜に戻る。なお、グリコール類の表面の被膜が、潤滑性皮膜の表面からたとえ剥がされても、潤滑性皮膜の表面に、扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが現れるため、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。さらに、最も表層の扁平同士が重なり合った扁平粉の集まりが剥がされた場合は、グリコール類の極薄い皮膜が表面に現れ、潤滑性皮膜の潤滑性は維持される。こうした表面の摩耗現象が繰り返されるため、本発明の潤滑性皮膜の潤滑性の寿命は長い。さらに、表面の摩耗現象の際に、グリコール類と扁平粉とが剥がされるため、剥がされた扁平粉にグリコール類が付着するため、剥がされた扁平粉が潤滑性皮膜に直接凝着し、この扁平粉による凝着摩耗は起こりにくい。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは、潤滑性皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
以上に説明したように、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に着色した皮膜を形成する方法であり、該着色した皮膜を形成する方法は、6段落に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、着色したフレーク粉、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、前記液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に、様々な色彩からなる着色した皮膜を形成する、着色した皮膜を形成する方法である。
つまり、扁平粉として、着色したフレーク粉、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、液体として透明性を持つグリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した扁平粉の性質を持つ皮膜を基材ないしは部品に形成する方法に従って、皮膜を形成すると、僅かな着色したフレーク粉の使用量で、基材ないしは部品の材質や形状に拘わらず、基材ないしは部品の表面に、様々な色彩に着色した皮膜が付与できる。
ところで、着色したフレーク粉には様々な種類がある。第一の着色したフレーク粉に、11段落で説明したアルミニウムや、15段落で説明したマイカなどの軽量で安価なフレーク粉に、様々な着色顔料を付着させ、さらに、合成樹脂でコーティングさせたフレーク粉がある。第二の着色したフレーク粉に、白雲母のフレーク粉に二酸化チタンをコーティングし、コーティングの膜厚が厚くなるにつれて、銀、金、赤紫、青、緑の色調を発色するパール顔料と呼ばれるフレーク粉がある。第三の着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、金や銀などの金属、ないしは、チタニアや酸化鉄などの金属酸化物をコーティングし、光沢感と透明感とがある光輝性の様々な色彩に着色されたフレーク粉がある。
いっぽう、フレーク粉の平均粒径がミクロンオーダーで、微細なフレーク粉に着色できる色彩は単色に限られる。これに対し、本発明において、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、さらに、複数種類のフレーク粉の混合割合を変えると、皮膜が放つ色彩が任意に設定できる。また、複数種類の微細なフレーク粉が、平面上にランダムに混合されて皮膜を形成するため、類似した皮膜を模倣して製造することは難しい。
従って、着色したフレーク粉を、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を、6段落に記載した塗料の製造方法における扁平粉として用い、また、13段落で説明したグリコール類を、6段落に記載した3つの性質を兼備する液体として用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造する。この塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に皮膜を形成する方法に従って、皮膜を形成すると、基材ないしは部品に、様々な色彩に着色した皮膜が形成される。この皮膜は、扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、少ない量のフレーク粉で、一定の面積を持つ皮膜が、安価に製造できる。また、フレーク粉の使用量が少なければ、厚みが数ミクロンの着色した皮膜も製造できる。
なお、着色したフレーク粉の中で、最も密度が小さいフレーク粉は、密度が3.0g/cm3より小さい着色したガラスフレーク粉がある。いっぽう、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の密度は、1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、着色したフレーク粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
さらに、13段落で説明したグリコール類に属する有機化合物の屈折率は、1.43−1.45で、可視光線に対する透明性を持ち、可視光線の波長領域(380−780nm)では、屈折率の有効数字の3桁目が変わる程度の波長依存性である。すなわち、20℃において、波長が589.3nmであるナトリウムのD線で測った屈折率(屈折率n20/Dと記載される)は、エチレングリコールが1.4316で、ジエチレングリコールが1.4472で、プロピレングリコールが1.4310で、ジプロピレングリコールが1.442である。このため、グリコール類の可視光線の波長領域における表面反射率は僅かに3%で、全光線反射率は94%に及び、グリコール類の被膜は、ガラスに劣らぬ可視光線の透過率を持つ透明性を発揮する。なお、表面反射率は、グリコール類と空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。また、グリコール類の被膜に入り込む光の透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。
なお、前記した様々な着色したフレーク粉の表面は、いずれも疎水性であり、着色したフレーク粉は、グリコールのメタノール希釈液と反応せず、塗料を製造する際に、着色したフレーク粉の表面は変化しない。また、メタノールを気化させた後は、着色したフレーク粉はグリコール類と反応せず、皮膜は長期に亘って同一の色彩を発色する。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の常温における蒸発量は極僅かで、着色した皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類の発火点が高く、着色した皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは着色した皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、着色したフレーク粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に着色した皮膜が形成できる。
ところで、着色したフレーク粉には様々な種類がある。第一の着色したフレーク粉に、11段落で説明したアルミニウムや、15段落で説明したマイカなどの軽量で安価なフレーク粉に、様々な着色顔料を付着させ、さらに、合成樹脂でコーティングさせたフレーク粉がある。第二の着色したフレーク粉に、白雲母のフレーク粉に二酸化チタンをコーティングし、コーティングの膜厚が厚くなるにつれて、銀、金、赤紫、青、緑の色調を発色するパール顔料と呼ばれるフレーク粉がある。第三の着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、金や銀などの金属、ないしは、チタニアや酸化鉄などの金属酸化物をコーティングし、光沢感と透明感とがある光輝性の様々な色彩に着色されたフレーク粉がある。
いっぽう、フレーク粉の平均粒径がミクロンオーダーで、微細なフレーク粉に着色できる色彩は単色に限られる。これに対し、本発明において、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、さらに、複数種類のフレーク粉の混合割合を変えると、皮膜が放つ色彩が任意に設定できる。また、複数種類の微細なフレーク粉が、平面上にランダムに混合されて皮膜を形成するため、類似した皮膜を模倣して製造することは難しい。
従って、着色したフレーク粉を、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を、6段落に記載した塗料の製造方法における扁平粉として用い、また、13段落で説明したグリコール類を、6段落に記載した3つの性質を兼備する液体として用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造する。この塗料を用いて、8段落に記載した基材ないしは部品に皮膜を形成する方法に従って、皮膜を形成すると、基材ないしは部品に、様々な色彩に着色した皮膜が形成される。この皮膜は、扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、少ない量のフレーク粉で、一定の面積を持つ皮膜が、安価に製造できる。また、フレーク粉の使用量が少なければ、厚みが数ミクロンの着色した皮膜も製造できる。
なお、着色したフレーク粉の中で、最も密度が小さいフレーク粉は、密度が3.0g/cm3より小さい着色したガラスフレーク粉がある。いっぽう、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の密度は、1.0−1.1g/cm3である。また、メタノールの密度は0.7918g/cm3である。従って、着色したフレーク粉の密度は、グリコール類の10重量%より低いメタノール希釈液の密度の2.5倍より大きい。
さらに、13段落で説明したグリコール類に属する有機化合物の屈折率は、1.43−1.45で、可視光線に対する透明性を持ち、可視光線の波長領域(380−780nm)では、屈折率の有効数字の3桁目が変わる程度の波長依存性である。すなわち、20℃において、波長が589.3nmであるナトリウムのD線で測った屈折率(屈折率n20/Dと記載される)は、エチレングリコールが1.4316で、ジエチレングリコールが1.4472で、プロピレングリコールが1.4310で、ジプロピレングリコールが1.442である。このため、グリコール類の可視光線の波長領域における表面反射率は僅かに3%で、全光線反射率は94%に及び、グリコール類の被膜は、ガラスに劣らぬ可視光線の透過率を持つ透明性を発揮する。なお、表面反射率は、グリコール類と空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。また、グリコール類の被膜に入り込む光の透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。
なお、前記した様々な着色したフレーク粉の表面は、いずれも疎水性であり、着色したフレーク粉は、グリコールのメタノール希釈液と反応せず、塗料を製造する際に、着色したフレーク粉の表面は変化しない。また、メタノールを気化させた後は、着色したフレーク粉はグリコール類と反応せず、皮膜は長期に亘って同一の色彩を発色する。
さらに、13段落で説明したように、グリコール類に属する有機化合物の常温における蒸発量は極僅かで、着色した皮膜の表面は、長期に亘って撥水性と防汚性を維持する。また、グリコール類の発火点が高く、着色した皮膜は難燃性の性質を持つ。
また、メタノールは、最も沸点が低いアルコールで、最も汎用的な工業用のアルコールである。また、蒸気密度が空気の密度の1.1倍で、アルコールの蒸気密度の中で最も小さい。このため、基材ないしは部品を昇温した際に、気化したメタノールが、体積膨張した空気とともに、塗膜から外界に吐き出されやすい。従って、メタノールは着色した皮膜を形成する際の優れたアルコールになる。
従って、6段落に記載した塗料の製造方法において、扁平粉として、着色したフレーク粉を用い、液体として、グリコール類に属する有機化合物を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に記載した製造方法に従って塗料を製造し、この塗料を用い、8段落に記載した皮膜を形成する方法に従って皮膜を形成すると、基材ないしは部品に着色した皮膜が形成できる。
実施例1
本実施例は、導電性扁平粉として銅フレーク粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、銅フレーク粉(福田金属箔粉工業株式会社の製品MS−800)は、見掛け密度が0.6−1.0g/cm3で、+75μmが4%より高く、+45μmが25%より高く、−45μmが75%より低い粒度分布からなり、厚みが0.3−0.4μmである。また、イオン液体は、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートC8H18BF4NO(日清紡ホールディング株式会社の製品)を用いた。このイオン液体は親水性で、密度が1.23g/cm3で、粘度が25℃において154mPa秒で、導電率が2.9mS/cmである。
最初に、イオン液体をメタノールに5重量%の割合で希釈させた。次に、イオン液体のメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、銅フレーク粉を35gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、銅フレーク粉の体積は、イオン液体の体積の2.12倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、銅フレーク粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、導電性扁平粉として銅フレーク粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、銅フレーク粉(福田金属箔粉工業株式会社の製品MS−800)は、見掛け密度が0.6−1.0g/cm3で、+75μmが4%より高く、+45μmが25%より高く、−45μmが75%より低い粒度分布からなり、厚みが0.3−0.4μmである。また、イオン液体は、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラートC8H18BF4NO(日清紡ホールディング株式会社の製品)を用いた。このイオン液体は親水性で、密度が1.23g/cm3で、粘度が25℃において154mPa秒で、導電率が2.9mS/cmである。
最初に、イオン液体をメタノールに5重量%の割合で希釈させた。次に、イオン液体のメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、銅フレーク粉を35gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、銅フレーク粉の体積は、イオン液体の体積の2.12倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、銅フレーク粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例2
実施例1で作成した塗料を用い、透明性でガスバリア性に優れたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社の製品テオネックスQ51)に、導電性皮膜を形成する。このフィルムの融点は269℃で、トリアセテートTACフィルムに次いで高い。また、絶縁破壊電圧は7.5kVで、合成樹脂のフィルムの中では最も高い。破断強度は280MPaで、ポリイミドPIフィルムと同等の強度を持つ。耐有機溶剤性は、ポリイミドPIフィルムとポリエチレンナフタレートPETフィルムとともに優れる。フィルムの厚みは50μmである。
なお、本実施例における導電性フィルムは、例えば、フレキシブル基板として用いることができる。従来のフレキシブル基板における、金属箔の接着と、金属箔のエッチングによる配線と絶縁層の形成とが不要になり、フレキシブル基板の製造費用が大幅に下がる。
最初に、実施例1で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.25Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を5mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
次に、フィルムの表面に形成した皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計(シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST―4)によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□未満であったため、皮膜は銅に近い表面抵抗を有した。
さらに、皮膜が形成された表面の摩擦係数を、摩擦感テスター(カトーテック株式会社の製品KES−SE)を用い、平均摩擦係数を測定した。つまり、皮膜の表面は、イオン液体からなる極薄い皮膜が形成されている。こうした液体で構成された表面の「なめらかさ」という感触を、平均摩擦係数の測定によって数値化できる。平均摩擦係数は0.05±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.45±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は導電性の皮膜のみならず、潤滑性皮膜の機能を発揮する。
なお、摩擦係数を測定する際に、10mm×10mmのセンサに重りを載せ、このセンサの感知面を皮膜の表面に接触させ、2mm/秒の移動速度で皮膜の表面を摺動させ、平均摩擦係数を測定する。表面抵抗と平均摩擦係数との測定後に、皮膜の表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でフィルムに付着している。
この後、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特長を持つ。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、皮膜を観察した。表面の観察では、イオン液体の被膜の内側に、銅のフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、イオン液体の被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、内側に銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、フィルムの表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の観察結果から、銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、このフレーク粉の集まりを、イオン液体が0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの導電性の皮膜が透明フィルムの表面に形成された。
以上に説明した観察結果から、透明フィルムの表面に形成した導電性の皮膜は、例えば、フレキシブル基板の潤滑性を持つ配線として用いることができる。
以上の結果を、試料の断面構造として図1に模式的に示した。1はPEN樹脂フィルムで、2は銅のフレーク粉で、3はイオン液体である。
なお、銅のフレーク粉とイオン液体とメタノールを用い、導電性皮膜を形成する実施例を示したが、導電性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。11段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に導電性の皮膜が形成できる。
実施例1で作成した塗料を用い、透明性でガスバリア性に優れたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社の製品テオネックスQ51)に、導電性皮膜を形成する。このフィルムの融点は269℃で、トリアセテートTACフィルムに次いで高い。また、絶縁破壊電圧は7.5kVで、合成樹脂のフィルムの中では最も高い。破断強度は280MPaで、ポリイミドPIフィルムと同等の強度を持つ。耐有機溶剤性は、ポリイミドPIフィルムとポリエチレンナフタレートPETフィルムとともに優れる。フィルムの厚みは50μmである。
なお、本実施例における導電性フィルムは、例えば、フレキシブル基板として用いることができる。従来のフレキシブル基板における、金属箔の接着と、金属箔のエッチングによる配線と絶縁層の形成とが不要になり、フレキシブル基板の製造費用が大幅に下がる。
最初に、実施例1で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.35Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.35Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.25Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を5mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
次に、フィルムの表面に形成した皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計(シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST―4)によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□未満であったため、皮膜は銅に近い表面抵抗を有した。
さらに、皮膜が形成された表面の摩擦係数を、摩擦感テスター(カトーテック株式会社の製品KES−SE)を用い、平均摩擦係数を測定した。つまり、皮膜の表面は、イオン液体からなる極薄い皮膜が形成されている。こうした液体で構成された表面の「なめらかさ」という感触を、平均摩擦係数の測定によって数値化できる。平均摩擦係数は0.05±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.45±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は導電性の皮膜のみならず、潤滑性皮膜の機能を発揮する。
なお、摩擦係数を測定する際に、10mm×10mmのセンサに重りを載せ、このセンサの感知面を皮膜の表面に接触させ、2mm/秒の移動速度で皮膜の表面を摺動させ、平均摩擦係数を測定する。表面抵抗と平均摩擦係数との測定後に、皮膜の表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でフィルムに付着している。
この後、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特長を持つ。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、皮膜を観察した。表面の観察では、イオン液体の被膜の内側に、銅のフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、イオン液体の被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、内側に銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、フィルムの表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の観察結果から、銅のフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのイオン液体の皮膜を介して重なり合い、このフレーク粉の集まりを、イオン液体が0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの導電性の皮膜が透明フィルムの表面に形成された。
以上に説明した観察結果から、透明フィルムの表面に形成した導電性の皮膜は、例えば、フレキシブル基板の潤滑性を持つ配線として用いることができる。
以上の結果を、試料の断面構造として図1に模式的に示した。1はPEN樹脂フィルムで、2は銅のフレーク粉で、3はイオン液体である。
なお、銅のフレーク粉とイオン液体とメタノールを用い、導電性皮膜を形成する実施例を示したが、導電性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。11段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてイオン液体を用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に導電性の皮膜が形成できる。
実施例3
本実施例は、熱伝導性の扁平粉として鱗片状黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉は、固定炭素が98.0%からなり、最も扁平率が大きい黒鉛粉で、平均粒径が250μm(伊藤黒鉛工業株式会社の製品XD−100)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、鱗片状黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、熱伝導性の扁平粉として鱗片状黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉は、固定炭素が98.0%からなり、最も扁平率が大きい黒鉛粉で、平均粒径が250μm(伊藤黒鉛工業株式会社の製品XD−100)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、鱗片状黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、鱗片状黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例4
実施例3で作成した塗料を用い、熱伝導性に優れたポリブチレンテレフタレートPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の製品HCD01−2)からなるシートに、熱伝導性皮膜を形成する。なお、PBT樹脂は、流動方向の熱伝導率が27℃で20.9W/mKと高い値を持つ。このシートの厚みは0.5mmである。
なお、実施例は、鱗片状黒鉛粉を扁平面同士が重なり合うように結合させ、熱伝導度が高い扁平面方向に優先して熱伝導するとともに、比抵抗が小さい扁平面方向に優先して導電する。従って、本実施例のシートは、優れた熱伝導性と電気導電性と潤滑性を兼ねた皮膜が、シートに形成される。
最初に、実施例3で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、シートの表面に形成した皮膜の複数個所の熱伝導度を、熱伝導率測定装置(岩崎通信機株式会社の測定装置IE1230)で測定した。75±5W/mKであったため、シートより高い熱伝導度を持つ皮膜が、シートの表面に形成されていた。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は熱伝導性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって、平均擦係数を測定した。平均摩擦係数は0.02±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.40±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、熱伝導度と表面抵抗と摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この鱗片状黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの熱伝導性と電気導電性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、鱗片状黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、熱伝導性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。13段落で説明したように、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜が形成できる。
実施例3で作成した塗料を用い、熱伝導性に優れたポリブチレンテレフタレートPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の製品HCD01−2)からなるシートに、熱伝導性皮膜を形成する。なお、PBT樹脂は、流動方向の熱伝導率が27℃で20.9W/mKと高い値を持つ。このシートの厚みは0.5mmである。
なお、実施例は、鱗片状黒鉛粉を扁平面同士が重なり合うように結合させ、熱伝導度が高い扁平面方向に優先して熱伝導するとともに、比抵抗が小さい扁平面方向に優先して導電する。従って、本実施例のシートは、優れた熱伝導性と電気導電性と潤滑性を兼ねた皮膜が、シートに形成される。
最初に、実施例3で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、シートの表面に形成した皮膜の複数個所の熱伝導度を、熱伝導率測定装置(岩崎通信機株式会社の測定装置IE1230)で測定した。75±5W/mKであったため、シートより高い熱伝導度を持つ皮膜が、シートの表面に形成されていた。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は熱伝導性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって、平均擦係数を測定した。平均摩擦係数は0.02±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、0.40±0.05であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、熱伝導度と表面抵抗と摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、鱗片状黒鉛粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この鱗片状黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの熱伝導性と電気導電性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、鱗片状黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、熱伝導性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。13段落で説明したように、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜が形成できる。
実施例5
本実施例は、絶縁性の扁平粉として六方晶系の窒化ホウ素の鱗片粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。窒化ホウ素の扁平粉(昭和電工株式会社の製品UHP−2)は、鱗片形状の扁平粉で、抵抗率が1014Ωcmで、平均粒径が11μmで、BET比表面積が3−5m2/gである。
いっぽう、窒化ホウ素は、絶縁性のセラミックスの中で、窒化アルミニウム、窒化ケイ素に次いで、高い熱伝導率を持つ。さらに、13段落で説明したように、六方晶系の窒化ホウ素は層状の結晶構造を持ち、黒鉛粉と同様に、熱伝導率が異方性を持つ。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近い熱伝導性を持ち、金属に近い熱導電性を示す。また、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の鱗片粉は、17段落で説明したように、自己潤滑性に基づく潤滑作用を発揮する。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、窒化ホウ素の扁平粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、窒化ホウ素粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.24倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、絶縁性の扁平粉として六方晶系の窒化ホウ素の鱗片粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。窒化ホウ素の扁平粉(昭和電工株式会社の製品UHP−2)は、鱗片形状の扁平粉で、抵抗率が1014Ωcmで、平均粒径が11μmで、BET比表面積が3−5m2/gである。
いっぽう、窒化ホウ素は、絶縁性のセラミックスの中で、窒化アルミニウム、窒化ケイ素に次いで、高い熱伝導率を持つ。さらに、13段落で説明したように、六方晶系の窒化ホウ素は層状の結晶構造を持ち、黒鉛粉と同様に、熱伝導率が異方性を持つ。従って、結晶面である扁平面同士が重なり合って皮膜を形成するため、熱伝導度が高い扁平面方向に熱が伝導しやすく、皮膜の熱伝導度は、窒化ホウ素の結晶面に平行な方向の熱伝導度に近い熱伝導性を持ち、金属に近い熱導電性を示す。また、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の鱗片粉は、17段落で説明したように、自己潤滑性に基づく潤滑作用を発揮する。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、窒化ホウ素の扁平粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、窒化ホウ素粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.24倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、鱗片状黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例6
実施例5で作成した塗料を用い、厚みが70μmの銅箔シートに、絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねる皮膜を形成する。
最初に、実施例5で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、絶縁抵抗計でシートの表面に形成した皮膜の抵抗を測定したところ、抵抗値は10MΩより大きい値であった。次に、実施例4と同様に、皮膜の熱伝導度を測定した。30±3W/mKであった。さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって測定した。平均摩擦係数は0.03±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、1.5±0.1であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが著しく向上した。このため、皮膜は、絶縁性とともに熱伝導性と潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、絶縁抵抗と熱伝導度と平均摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この窒化ホウ素粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、窒化ホウ素の鱗片粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、絶縁性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。15段落で説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカまたはヘマタイトからなるいずれか1種類の絶縁性扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
実施例5で作成した塗料を用い、厚みが70μmの銅箔シートに、絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねる皮膜を形成する。
最初に、実施例5で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したシートを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するシートに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、シートの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のシートの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のシートを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、絶縁抵抗計でシートの表面に形成した皮膜の抵抗を測定したところ、抵抗値は10MΩより大きい値であった。次に、実施例4と同様に、皮膜の熱伝導度を測定した。30±3W/mKであった。さらに、実施例2と同様に、皮膜の表面の平均摩擦係数を摩擦感テスターによって測定した。平均摩擦係数は0.03±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、1.5±0.1であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが著しく向上した。このため、皮膜は、絶縁性とともに熱伝導性と潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
なお、実施例2と同様に、絶縁抵抗と熱伝導度と平均摩擦係数との測定後に、皮膜表面に変化がみられなかったため、熱処理した塗膜は、一定の強度でシートに付着している。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、シート表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、窒化ホウ素粉の鱗片面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この窒化ホウ素粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの絶縁性と熱伝導性と潤滑性とを兼ねた皮膜がシートの表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、窒化ホウ素の鱗片粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、絶縁性皮膜を形成する実施例を示したが、熱伝導性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。15段落で説明したように、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカまたはヘマタイトからなるいずれか1種類の絶縁性扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜が形成できる。
実施例7
本実施例は、潤滑性の扁平粉として熱分解黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い塗料を作成した。熱分解黒鉛は、平均粒径が42μmの熱分解黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社の製品PC99−300M)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、熱分解黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、熱分解黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、潤滑性の扁平粉として熱分解黒鉛粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い塗料を作成した。熱分解黒鉛は、平均粒径が42μmの熱分解黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社の製品PC99−300M)を用いた。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、熱分解黒鉛粉を15gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、熱分解黒鉛粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.25倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に、熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例8
実施例7で作成した塗料を用い、厚みが5mmの杉の板材に、潤滑性皮膜を形成する。なお、木材の引火点は250−260℃で、グリコール類の沸点より高い。また、木材の着火点が420−460℃で、グリコール類の発火点より高い。
最初に、実施例6で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記した板材を、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動する板材に対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、板材の表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚の板材の表面に塗膜を形成した。この後、5枚の板材を大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、実施例2と同様に、板材の表面に形成した皮膜の表面の平均摩擦係数を、摩擦感テスターで測定した。平均摩擦係数は0.04±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、5.0±1.0であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は潤滑性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の熱伝導度を測定した。50±3W/mKであった。このため、皮膜は潤滑性と電気導電性とともに、熱伝導性の機能を発揮する。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、板材の表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この熱分解黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの潤滑性と電気導電性と熱伝導性とを兼ねた皮膜が板材の表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、熱分解黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、潤滑性皮膜を形成する実施例を示したが、潤滑性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。17段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛ないしは鱗状黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
実施例7で作成した塗料を用い、厚みが5mmの杉の板材に、潤滑性皮膜を形成する。なお、木材の引火点は250−260℃で、グリコール類の沸点より高い。また、木材の着火点が420−460℃で、グリコール類の発火点より高い。
最初に、実施例6で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記した板材を、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動する板材に対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、板材の表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚の板材の表面に塗膜を形成した。この後、5枚の板材を大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、実施例2と同様に、板材の表面に形成した皮膜の表面の平均摩擦係数を、摩擦感テスターで測定した。平均摩擦係数は0.04±0.01であった。なお、比較のために、皮膜を形成していない部位における平均摩擦係数は、5.0±1.0であった。従って、皮膜を形成することで、表面の滑らかさが向上した。このため、皮膜は、摺動摩擦による摩耗量が少ない潤滑性の皮膜の機能を発揮する。
次に、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、いずれも1×103Ω/□であったため、皮膜は金属に近い表面抵抗を持った。このため、皮膜は潤滑性のみならず、電気導電性の機能を発揮する。
さらに、実施例2と同様に、皮膜の複数個所の熱伝導度を測定した。50±3W/mKであった。このため、皮膜は潤滑性と電気導電性とともに、熱伝導性の機能を発揮する。
この後、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表層に形成され、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、板材の表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。
以上の結果から、熱分解黒鉛粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、この熱分解黒鉛粉の集まりを、エチレングリコールが0.2μmの厚みで覆い、厚みが3μmの潤滑性と電気導電性と熱伝導性とを兼ねた皮膜が板材の表面に形成された。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
なお、熱分解黒鉛粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、潤滑性皮膜を形成する実施例を示したが、潤滑性皮膜の形成は、本実施例に限定されない。17段落で説明したように、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛ないしは鱗状黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜が形成できる。
実施例9
本実施例は、扁平粉として着色したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉(日本板硝子株式会社の製品メタシャイン)を用いた。赤(品種E025RR)と青(品種E025RB)とに着色されたガラスフレーク粉の2種類を用い、同じ量のガラスフレーク粉を混合して塗料を作成した。なお、着色したフレーク粉は、厚みが0.5μmで、平均粒径が25μmで、密度が2.6g/cm3である。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、赤に着色されたフレーク粉と青に着色されたフレーク粉の各々を9gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、ガラスフレーク粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.35倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
本実施例は、扁平粉として着色したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、塗料を作成した。着色したフレーク粉は、ガラスのフレーク粉に、酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉(日本板硝子株式会社の製品メタシャイン)を用いた。赤(品種E025RR)と青(品種E025RB)とに着色されたガラスフレーク粉の2種類を用い、同じ量のガラスフレーク粉を混合して塗料を作成した。なお、着色したフレーク粉は、厚みが0.5μmで、平均粒径が25μmで、密度が2.6g/cm3である。
最初に、エチレングリコールをメタノールに8重量%の割合で希釈させた。次に、エチレングリコールのメタノール希釈液の50cc(41gに相当する)に対し、赤に着色されたフレーク粉と青に着色されたフレーク粉の各々を9gの割合で混合し、懸濁液を作成した。なお、ガラスフレーク粉の体積は、エチレングリコールの体積の2.35倍に相当する。この懸濁液を、平面からなる底面を持つ容器に移し、実施例1と同様に、超音波ホモジナイザー装置によって、20kHzの超音波振動を容器内の懸濁液に1分間加えた。この後、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加え、容器の底面に熱分解黒鉛粉の集まりを浸漬させ、塗料を作成した。
実施例10
実施例9で作成した塗料を用い、実施例2で用いたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルムに、着色した皮膜を形成する。なお、フィルムの厚みは100μmである。
最初に、実施例9で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社の製品CM−700d)によって、皮膜の分光反射率を調べた。分光反射率は、青の色彩を放つ470nmの波長付近と、赤の色彩を放つ700nmの波長付近で最も高かった。
次に、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、ガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、ガラスフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、フィルム表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
いっぽう、扁平粉の基材が透明で平坦なガラスフレーク粉であり、このガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合って皮膜を形成したため、強い光沢感と透明感と高い輝度感を兼ね備えた赤紫の色彩が、皮膜から発光された。さらに、エチレングリコールが透明性に優れるため、皮膜の表面での乱反射が少なく、澄んだ赤紫の色彩が皮膜から発光された。
以上に説明したように、ガラスのフレーク粉に酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、着色した皮膜を形成する実施例を示したが、着色した皮膜の形成は、本実施例に限定されない。19段落で説明したように、着色したフレーク粉として、19段落に記載したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に、様々な色彩を放つ着色した皮膜が形成できる。
実施例9で作成した塗料を用い、実施例2で用いたポリエチレンナフタレートPEN樹脂フィルムに、着色した皮膜を形成する。なお、フィルムの厚みは100μmである。
最初に、実施例9で作成した塗料を、底面が平面からなる容器に移し、実施例1と同様に、容器を小型加振機の加振台の上に載せ、左右、前後、上下の3方向に、0.25Gの振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加え、最後に、上下方向に0.25Gの振動加速度を10秒間加えた。
次に、前記したフィルムを、ベルトコンベアー上に載せ、ベルトコンベアーを、水平方向に1秒間に1cmの距離を移動する速度に設定した。さらに、前記した塗料が入った容器を、ベルトコンベアーの上方に5mmの距離で配置させ、さらに、容器を10度の角度で下方に傾け、底面に対し、底面の垂直方向に0.20Gの振動加速度を継続して加えた。この後、ベルトコンベアーを稼働させ、容器の側面を10mmの幅で開放し、ベルトコンベアー上を移動するフィルムに対し、塗料が塗料の自重で零れ落ち、ベルトコンベアーを10秒間稼働させ、さらに、容器の側面を閉じ、フィルムの表面に塗膜を形成した。再度、同一の条件で4枚のフィルムの表面に塗膜を形成した。この後、5枚のフィルムを大気雰囲気の180℃において1分間熱処理し、5枚の試料を作成した。
最初に、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社の製品CM−700d)によって、皮膜の分光反射率を調べた。分光反射率は、青の色彩を放つ470nmの波長付近と、赤の色彩を放つ700nmの波長付近で最も高かった。
次に、実施例2と同様に、皮膜の表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。なお、皮膜を厚み方向に2つに切断し、切断面を観察した。
表面の観察では、エチレングリコールの被膜の内側に、ガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合っていた。断面の観察では、エチレングリコールの被膜が0.2μmの厚みで表面に形成され、ガラスフレーク粉の扁平面同士が、0.1μm前後の厚みのエチレングリコールの皮膜を介して重なり合い、フィルム表面に形成された皮膜の厚みは3μmであった。なお、皮膜の構造は、図1に図示した実施例2と類似するため、図示しない。
いっぽう、扁平粉の基材が透明で平坦なガラスフレーク粉であり、このガラスフレーク粉の扁平面同士が重なり合って皮膜を形成したため、強い光沢感と透明感と高い輝度感を兼ね備えた赤紫の色彩が、皮膜から発光された。さらに、エチレングリコールが透明性に優れるため、皮膜の表面での乱反射が少なく、澄んだ赤紫の色彩が皮膜から発光された。
以上に説明したように、ガラスのフレーク粉に酸化チタンをコーティングした着色したフレーク粉とエチレングリコールとメタノールとを用い、着色した皮膜を形成する実施例を示したが、着色した皮膜の形成は、本実施例に限定されない。19段落で説明したように、着色したフレーク粉として、19段落に記載したフレーク粉を用い、液体としてエチレングリコールを用い、アルコールとしてメタノールを用い、6段落に説明した方法で塗料を作成する。この塗料を用い、8段落で説明した方法によって、基材ないしは部品に、様々な色彩を放つ着色した皮膜が形成できる。
1 PEN樹脂フィルム 2 銅のフレーク粉 3 イオン液体
Claims (7)
- 扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体中に沈降した塗料を製造する製造方法は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールの粘度の30倍より高い粘度を持つ第二の性質と、沸点が180℃より高い、ないしは、不揮発性である第三の性質とを兼備する液体を、前記アルコールに10重量%より少ない割合で混合してアルコール希釈液を作成し、該アルコール希釈液の密度の2.5倍より高い密度を有する扁平粉の集まりを、前記3つの性質を兼備する液体の体積の2.0倍より多い体積を占める量として、前記アルコール希釈液に投入して懸濁液を作成する、この後、該懸濁液を平面からなる底面を持つ容器に移し、該容器にホモジナイザー装置を配置し、該ホモジナイザー装置によって、前記懸濁液に衝撃を加え、さらに、前記容器に3方向の振動を繰り返し加え、最後に上下方向の振動を加える、これによって、前記扁平粉の集まりが、扁平面同士が重なり合って前記容器の底面の全体に広がって沈み、該扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、前記アルコール希釈液に沈降した構成からなる塗料が前記容器に製造される、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体中に沈降した塗料を製造する製造方法である。
- 請求項1に記載した製造方法で製造した塗料を用い、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する際に用いた容器の底面より広い平面からなる底面を持つ第一の特徴と、側面の一部が開放され、該解放された側面の部位から塗料が零れ落ちる構造を持つ第二の特徴を兼備する容器に、請求項1に記載した製造方法で製造した塗料を移し、該容器に3方向の振動を加え、最後に上下方向の振動を加える、この後、該容器を予め設定した角度に傾斜させ、さらに、前記した最後に加えた上下方向の振動より弱い振動を、前記傾斜した容器の底面に、該底面の垂直方向に継続して加える、さらに、前記塗料を塗布する基材ないしは部品は、前記傾斜させた容器の下端部からさらに3−5mm下方において、ベルトコンベアー上を水平方向に予め設定した速度で移動するように設定する、この後、前記傾斜した容器の側面の一部を、前記基材ないしは前記部品に形成する塗膜の幅に相当する幅で開放し、さらに、前記基材ないしは前記部品を、前記ベルトコンベアー上を予め定めた速度で水平方向に移動させ、前記解放した容器の側面から、前記塗膜の幅に相当する帯状の塗料が、該塗料の自重で零れ落ち、前記基材ないしは前記部品に前記塗膜を形成する、この後、前記基材ないしは前記部品を、前記塗料を構成するアルコールの沸点より高く、かつ、前記塗料を構成する液体の沸点より低い温度に昇温する、これによって、扁平面同士が重なり合った扁平粉の集まりが、液体の被膜で覆われた前記扁平粉の性質を持つ皮膜が、前記基材ないしは前記部品に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した塗料を用い、基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法である。
- 請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する方法であり、該導電性の皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてイオン液体を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、請求項1に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に導電性の皮膜を形成する、導電性の皮膜を形成する方法である。
- 請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する方法であり、該熱伝導性の皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、銀、銅ないしは金のフレーク粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素の扁平粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、請求項1に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に熱伝導性の皮膜を形成する、熱伝導性の皮膜を形成する方法である。
- 請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する方法であり、該絶縁性の皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素またはヘマタイトからなるいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、請求項1に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に絶縁性の皮膜を形成する、絶縁性の皮膜を形成する方法である。
- 請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する方法であり、該潤滑性の皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、軟質金属からなるフレーク粉、ないしは、層状の結晶構造を持つ二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素ないしはフッ化黒鉛からなる扁平粉、ないしは、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛ないしは熱分解黒鉛からなる黒鉛粉のいずれか1種類の扁平粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、請求項1に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に潤滑性の皮膜を形成する、潤滑性の皮膜を形成する方法である。
- 請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法が、基材ないしは部品に着色した皮膜を形成する方法であり、該着色した皮膜を形成する方法は、請求項1に記載した塗料を製造する方法において、前記扁平粉として、着色したフレーク粉、ないしは、互いに異なる色彩に着色した複数種類のフレーク粉を用い、前記液体としてグリコール類に属する有機化合物を用い、前記アルコールとしてメタノールを用い、請求項1に記載した製造方法に従って塗料を製造し、該塗料を用い、請求項2に記載した基材ないしは部品に扁平粉の性質を持つ皮膜を形成する方法に従って、基材ないしは部品に、様々な色彩からなる着色した皮膜を形成する、着色した皮膜を形成する方法である。
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