JP2020083796A - コラーゲン様ペプチド及びリン酸カルシウムの複合体並びにこれを含む生体組織修復材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、骨等の生体組織の修復能又は再生能を有する生体組織修復材を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドの顆粒にβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる複合体、及び当該複合体を含む生体組織修復材に関する。本発明による生体組織修復材は、従来よりも優れた骨形成促進能を持ち、骨等の生体組織をより効果的に修復又は再生することができる。【選択図】図2
Description
本発明は、ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドの顆粒にβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる複合体、及び当該複合体を含む生体組織修復材に関する。
再生医療は、生体が持っている自然治癒力だけでは回復困難な損傷を受けた生体組織に対してその修復又は再生を促す処置を行って、元の形態や機能を回復させる治療法である。再生医療においては、幹細胞に代表される修復能又は再生能を有する細胞や、足場又は増殖因子に代表される細胞の増殖又は分化誘導を促し得る物質が利用される。特に整形外科領域又は歯科領域の再生医療では、生体組織の損傷部位に埋植、充填、被覆等することで生体組織の再生に寄与し得る、生体適合性に優れた組織修復材がしばしば利用される。
例えば、ハイドロキシアパタイトやβ−リン酸三カルシウム(β-TCP)等のリン酸カルシウムはセラミックス骨補填材として利用されているが、生体吸収性が低いという課題を持つ。一方、コラーゲン等の天然高分子を基材とした骨補填材は、生体吸収性に優れるものの骨伝導能が低い。本発明者らは、これらの材料の複合化について研究を進めた結果、β-TCPをナノサイズに粉砕して生体吸収性を高め、これをウシ真皮由来コラーゲンスポンジに付着させた複合体を開発し、この複合体が骨形成促進に有効であることを見出している(非特許文献1〜3)。
また近年、動物由来成分を含まず、動物性コラーゲンと同等以上の細胞接着性や生体吸収性を示すヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドが開発され(特許文献1)、このリコンビナントペプチドをリン酸カルシウム成形体にコーティングした移植用材料も報告されている(特許文献2)。
A. Ibara et al., Journal of Nanomaterials, 2013, 1-11, 2013.
加藤昭人ら、日歯保存誌 59 (4): 351-358, 2016.
S. Murakami et al., Dent. Mater. J., 36, 573-583, 2017.
本発明は、骨等の生体組織の修復能又は再生能を有する生体組織修復材を提供することを目的とする。
本発明者らは、顆粒形態のヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドにβ-TCPナノ粒子を付着させてなる複合体が優れた骨形成促進能を有することを見出し、以下の発明を完成させた。
(1) 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位;配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位;又は配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位を1又は複数個含むヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドの顆粒に、β−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる、複合体。
(2) リコンビナントペプチドが前記繰り返し単位を1〜10個含む、(1)に記載の複合体。
(3) β−リン酸三カルシウムのナノ粒子のレーザ回折法で測定される体積平均粒径が500 nm〜900 nmである、(1)又は(2)に記載の複合体。
(4) リコンビナントペプチドの顆粒とβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子との重量比が1:0.001〜1:0.25である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の複合体。
(5) (1)〜(4)のいずれか一項に記載の複合体を含む、生体組織修復材。
(6) 骨、皮膚、歯、歯周組織、軟骨又は半月板の修復又は再生のための、(5)に記載の生体組織修復材。
(2) リコンビナントペプチドが前記繰り返し単位を1〜10個含む、(1)に記載の複合体。
(3) β−リン酸三カルシウムのナノ粒子のレーザ回折法で測定される体積平均粒径が500 nm〜900 nmである、(1)又は(2)に記載の複合体。
(4) リコンビナントペプチドの顆粒とβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子との重量比が1:0.001〜1:0.25である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の複合体。
(5) (1)〜(4)のいずれか一項に記載の複合体を含む、生体組織修復材。
(6) 骨、皮膚、歯、歯周組織、軟骨又は半月板の修復又は再生のための、(5)に記載の生体組織修復材。
本発明の複合体は、従来のコラーゲン及びβ-TCPの複合体よりも優れた骨形成促進能を持ち、骨等の生体組織をより効果的に修復又は再生することができる。また、本発明の複合体は動物由来成分を含まないため、従来の動物由来成分を用いたものと比べて、ヒトの生体組織修復材としての安全性が高い。
本発明の第1の態様は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位;配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位;又は配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位を1又は複数個含むヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドの顆粒にβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる複合体に関する。
ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド
本発明におけるヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(以下、単にリコンビナントペプチドともいう)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位を1又は複数個含むポリペプチドである。
本発明におけるヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(以下、単にリコンビナントペプチドともいう)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位を1又は複数個含むポリペプチドである。
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ヒトI型コラーゲンα1鎖からその745〜747位のRGDモチーフを含むように切り出された4種類の断片を連結したポリペプチドのアミノ酸配列であり、WO2008/103041において配列番号1のCBEモノマーとして開示されている。
配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列同一性を有する。配列同一性は、アラインメント長に対する同一アミノ酸残基数の割合で表され、比較される2つのアミノ酸配列のアラインメントは、同一となるアミノ酸残基の数が最も多くなるように常法に従って行われる。配列同一性は、当業者に公知の任意の方法により、例えばBLAST等の配列比較プログラムを用いて決定することができる。
配列番号1に示されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、最も好ましくは2〜5個のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列であるか、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列に例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、最も好ましくは2〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列である。
アミノ酸残基の置換はいわゆる保存的置換が好ましく、そのような例としては、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、グリシンとアラニン(Ala)又はバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、スレオニンとセリン(Ser)又はアラニン、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等のアミノ酸の間での置換を挙げることができる。
RGD(Arg-Gly-Asp)モチーフは、多くの細胞接着性タンパク質に共通する細胞接着活性配列として知られている。本発明において、リコンビナントペプチドを構成する繰り返し単位は少なくとも4個のRGDモチーフを有する。好ましい実施形態において、繰り返し単位は、配列番号1に示されるアミノ酸配列内に存在する4個のRGDモチーフが保存されたものであり、さらに任意選択で1個以上の新たなRGDモチーフを含んでもよい。
リコンビナントペプチドは、1又は複数個の、例えば1〜10個の、好ましくは3個以上の、例えば3〜10個の上記繰り返し単位を含む。リコンビナントペプチドに複数個の繰り返し単位が含まれる場合、複数個の繰り返し単位は、それぞれが上記の要件を満たすアミノ酸配列からなるものであるかぎり、全てが同一のアミノ酸配列を有していても、全てが互いに異なるアミノ酸配列を有していても、同一のアミノ酸配列と互いに異なるアミノ酸配列とが混在していてもよいが、全てが同一のアミノ酸配列を有していることが好ましい。複数個の繰り返し単位が異なるアミノ酸配列を有する場合、繰り返し単位が連結される順番に制限はない。
複数個の繰り返し単位は、互いに直接連結されていても、1〜数個、例えば1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸からなるリンカー配列を介して連結されていてもよい。また、リコンビナントペプチドは、繰り返し単位が連結されてなるポリペプチドであっても、かかるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に1〜数個、例えば1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸がさらに付加されたものであってもよい。
好ましい実施形態において、リコンビナントペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位を3個連結し、そのN末端に3個のアミノ酸残基GAPを、C末端に1個のアミノ酸残基Gを付加したポリペプチド(配列番号2)である。
リコンビナントペプチドは、例えばEP1014176、US6992172、WO2004/085473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて、当業者に公知の遺伝子組み換え技術を用いて調製することができる。典型的には、リコンビナントペプチドは、そのアミノ酸配列をコードするcDNAを用意し、これを発現ベクターに組み込んで組換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して作製した形質転換体を適当な培地で培養し、産生されたリコンビナントペプチドを回収することにより調製することができる。
リコンビナントペプチドの顆粒
リコンビナントペプチドの顆粒は、形状が顆粒であるリコンビナントペプチドである。顆粒の径は、一般に顆粒と称される粒子の径と同程度であればよく、例えばヘイウッド径(投影面積円相当径)で0.1 mm〜数mm程度、好ましくは0.5 mm〜2 mmである。リコンビナントペプチドの顆粒の個数平均粒径及び粒度分布は、顕微鏡法に基づいて市販の装置を用いて測定することができる。
リコンビナントペプチドの顆粒は、形状が顆粒であるリコンビナントペプチドである。顆粒の径は、一般に顆粒と称される粒子の径と同程度であればよく、例えばヘイウッド径(投影面積円相当径)で0.1 mm〜数mm程度、好ましくは0.5 mm〜2 mmである。リコンビナントペプチドの顆粒の個数平均粒径及び粒度分布は、顕微鏡法に基づいて市販の装置を用いて測定することができる。
リコンビナントペプチドの顆粒は、1400μmの目開きのふるいを通過し、300μmのふるいに残留する粒子群であることが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、リコンビナントペプチドの顆粒は、1400μmの目開きのふるいを通過し、300μmのふるいに残留する顆粒状のリコンビナントペプチドとして表すこともできる。なお、顆粒のふるい分けは、ISO3310規格の試験ふるいを用いて、第17改正日本薬局方3.04節の第2法に記載のふるい分け法に準じて行うことができる。
また、リコンビナントペプチドの顆粒は、空隙を有する多孔質体であることが好ましく、それぞれの孔がつながった連通孔を有していてもよい。
リコンビナントペプチドの顆粒は、例えばWO2014/141877に記載の方法に準じて、典型的にはリコンビナントペプチド(例えば富士フイルム株式会社のcellnest)を溶解した水溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥物を粉砕し、必要に応じて分級及び/又は架橋することにより製造することができる。
リコンビナントペプチドの顆粒は、架橋されたものであってもよい。リコンビナントペプチドの架橋は、例えばWO2014/141877、WO2017/209136等に記載の方法に準じて、当業者に公知の一般的な架橋方法、例えば熱架橋、トランスグルタミナーゼ等の酵素による架橋、アルデヒド類又は縮合剤等の化学架橋剤による架橋、UV架橋等によって行うことができる。本発明においては、製造される複合体の安全性の観点で、熱架橋、酵素架橋又はUV架橋が好ましく用いられ、特に熱架橋が好ましい。
β−リン酸三カルシウムのナノ粒子
本発明におけるβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子は、直径がナノメートル・オーダーのβ−リン酸三カルシウム粒子である。ある実施形態において、β−リン酸三カルシウムのナノ粒子は、レーザ回折法で測定される体積平均粒径が500 nm〜900 nm、好ましくは550 nm〜850 nm、より好ましくは600 nm〜800 nmである。
本発明におけるβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子は、直径がナノメートル・オーダーのβ−リン酸三カルシウム粒子である。ある実施形態において、β−リン酸三カルシウムのナノ粒子は、レーザ回折法で測定される体積平均粒径が500 nm〜900 nm、好ましくは550 nm〜850 nm、より好ましくは600 nm〜800 nmである。
また、ある実施形態において、β−リン酸三カルシウムナノ粒子の体積基準粒度分布は、10%径が150-750 nm、50%径(メジアン径)が500-900 nm、90%径が750-1600 nmであり、好ましくは10%径が250-700 nm、50%径が550-850 nm、90%径が800-1500 nmであり、より好ましくは10%径が300-600 nm、50%径が600-800 nm、90%径が850-1400 nmである。
β−リン酸三カルシウムのナノ粒子は、当業者に公知の一般的なナノ粒子製造技術を用いて、例えば原料β−リン酸三カルシウムをジェットミル、ハンマーミル、ボールミル等のミルを使用して湿式粉砕し、必要に応じて分級することによって製造することができる。また、ナノ粒子の体積平均粒径及び粒度分布は、レーザ回折法に基づいて市販の装置を用いて測定することができる。
リコンビナントペプチド及びβ−リン酸三カルシウムの複合体
本発明において、リコンビナントペプチド及びβ−リン酸三カルシウムの複合体は、リコンビナントペプチドの顆粒にβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる複合体である。β−リン酸三カルシウムナノ粒子のリコンビナントペプチド顆粒への付着は、共有結合やイオン結合等の強固な結合である必要はなく、リコンビナントペプチド顆粒の表面にナノ粒子が付いている状態であればよい。
本発明において、リコンビナントペプチド及びβ−リン酸三カルシウムの複合体は、リコンビナントペプチドの顆粒にβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる複合体である。β−リン酸三カルシウムナノ粒子のリコンビナントペプチド顆粒への付着は、共有結合やイオン結合等の強固な結合である必要はなく、リコンビナントペプチド顆粒の表面にナノ粒子が付いている状態であればよい。
複合体におけるリコンビナントペプチドとβ−リン酸三カルシウムとの重量比は、β−リン酸三カルシウムナノ粒子がリコンビナントペプチド顆粒に付着しているかぎり制限はないが、例えばリコンビナントペプチド:β−リン酸三カルシウムで1:0.0005〜1:1、好ましくは1:0.0005〜1:0.5であり、より好ましくは1:0.001〜1:0.25であり、さらに好ましくは1:0.005〜1:0.2であり、さらにより好ましくは1:0.015〜1:0.15である。
複合体は、適当な濃度のβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子の分散液をリコンビナントペプチドの顆粒に滴下し又はかかる分散液にリコンビナントペプチド顆粒を浸漬し、その後に溶媒を乾燥させ、必要に応じて洗浄することで調製することができる。製造される複合体の安全性の観点で、ナノ粒子の分散液は生体組織に対して使用可能なものが好ましく、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等が用いられる。製造された複合体におけるβ−リン酸三カルシウムナノ粒子のリコンビナントペプチド顆粒への付着は、電子顕微鏡での観察により確認することができる。
生体組織修復材
本発明は、第1の態様の複合体を含む生体組織修復材を別の態様として提供する。生体組織修復材は、損傷を受けた又は機能を喪失した生体組織の修復又は再生に寄与する材料であり、典型的には、修復又は再生が必要とされる生体組織の欠損部又は損傷部に埋植又は充填して用いられる。
本発明は、第1の態様の複合体を含む生体組織修復材を別の態様として提供する。生体組織修復材は、損傷を受けた又は機能を喪失した生体組織の修復又は再生に寄与する材料であり、典型的には、修復又は再生が必要とされる生体組織の欠損部又は損傷部に埋植又は充填して用いられる。
本態様の生体組織修復材は、好ましくは骨、皮膚、歯、歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜等)、軟骨又は半月板の修復又は再生のために、特に骨の修復又は再生のために好適である。したがって、生体組織修復材は、生体組織の、好ましくは骨、皮膚、歯、歯周組織、軟骨又は半月板の、特に骨の修復又は再生が必要とされる疾患又は症状の治療のための医薬として用いることもできる。このような疾患又は症状としては、例えば歯周病、外傷性骨損傷、骨腫瘍切除後の骨欠損、嚢胞性疾患、脊椎変性疾患、加齢や廃用性萎縮による骨吸収等を挙げることができる。
生体組織修復材は、第1の態様の複合体そのものであってもよいが、ハイドロキシアパタイト等の別の無機材料と複合化されたものであってもよい。また、他の有効成分、例えば生体組織の修復又は再生を促進する他の物質や、生体組織修復材が適用される対象が有する疾患又は症状に対する別の治療剤等と組み合わせてもよい。骨組織の修復又は再生のための生体組織修復材における、生体修復又は再生を促進する他の物質の例としては、BMP(骨形成因子)及びFGF-2(線維芽細胞増殖因子2)等の増殖因子や、骨芽細胞及び間葉系幹細胞等の骨形成に寄与する細胞を挙げることができる。このような有効成分は、生体組織修復材が適用される前若しくは後に、又は同時に、生体組織修復材が適用される部位と同一又は近傍の部位に、一緒に又は別々に適用することができる。
生体組織修復材を細胞と組み合わせる実施形態において、細胞は生体組織修復材と別々に移植してもよいが、細胞を生体組織修復材上で培養して細胞が付着した生体組織修復材を得て、これを移植してもよい。この実施形態において、生体組織修復材は再生医療用足場材として機能し得る。
このように、本態様の生体組織修復材は、生体組織の修復又は再生のために用いることができる。したがって、本発明は、修復又は再生が必要とされる生体組織の欠損部又は損傷部に生体組織修復材を適用、典型的には埋植又は充填することを含む、生体組織の修復又は再生が必要とされる疾患又は症状の治療方法をも提供する。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 TCP-RCP複合体の製造
1)β-TCPナノ粒子の調製
β-TCP粉砕品(β-TCP-100 milled product、太平化学産業株式会社)の10重量%水懸濁液100gを、湿式超高圧微粒化装置ナノヴェイタ(NVL-AS200-D10 エア駆動式ラボ機)を用いて、処理圧力200MPa、パス回数10回で湿式粉砕した。粉砕後のβ-TCP分散液に含まれるβ-TCPの体積基準粒度分布をレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-2100、島津製作所)を用いてレーザ回折法で測定した。粒度分布の測定においては、分散媒として水を使用した。湿式粉砕後のβ-TCPは、10%径が0.452μm、50%径が0.697μm、90%径が1.319μm、体積平均径が0.734μmのナノ粒子となっていることが確認された(図1)。
1)β-TCPナノ粒子の調製
β-TCP粉砕品(β-TCP-100 milled product、太平化学産業株式会社)の10重量%水懸濁液100gを、湿式超高圧微粒化装置ナノヴェイタ(NVL-AS200-D10 エア駆動式ラボ機)を用いて、処理圧力200MPa、パス回数10回で湿式粉砕した。粉砕後のβ-TCP分散液に含まれるβ-TCPの体積基準粒度分布をレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD-2100、島津製作所)を用いてレーザ回折法で測定した。粒度分布の測定においては、分散媒として水を使用した。湿式粉砕後のβ-TCPは、10%径が0.452μm、50%径が0.697μm、90%径が1.319μm、体積平均径が0.734μmのナノ粒子となっていることが確認された(図1)。
2)TCP-RCP複合体の調製
顆粒状ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(RCP)は、WO2014/141877に記載の方法に準じて作成した。市販のRCP(cellnest、富士フイルム和光純薬株式会社)の7.5質量%水溶液約4mLを円筒型容器に流し込んだ後、-40℃の冷凍庫(日立、超低温フリーザーRS-U30T)内で1時間以上静置した。得られた凍結物を凍結乾燥(タカラ、TF5-85ATNNN)した後、粉砕機(クワドロ、コーミルU5)によって粉砕し、目開き1400μmのふるい下、且つ、目開き300μmのふるい上の画分を回収後、窒素雰囲気下で142℃(ヤマト科学、DP-43)で5時間処理することで、顆粒状のRCPを得た。RCP顆粒のヘイウッド径(投影面積円相当径)を静的画像解析システム(Morphologi G3、Malvern)を用いて計測し、顕微鏡法による個数基準粒度分布の測定を行った。RCP顆粒の10%径は835.06μm、50%径は1170.8μm、90%径は1419.4μm(いずれも5回分の測定値の平均)であった。
顆粒状ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(RCP)は、WO2014/141877に記載の方法に準じて作成した。市販のRCP(cellnest、富士フイルム和光純薬株式会社)の7.5質量%水溶液約4mLを円筒型容器に流し込んだ後、-40℃の冷凍庫(日立、超低温フリーザーRS-U30T)内で1時間以上静置した。得られた凍結物を凍結乾燥(タカラ、TF5-85ATNNN)した後、粉砕機(クワドロ、コーミルU5)によって粉砕し、目開き1400μmのふるい下、且つ、目開き300μmのふるい上の画分を回収後、窒素雰囲気下で142℃(ヤマト科学、DP-43)で5時間処理することで、顆粒状のRCPを得た。RCP顆粒のヘイウッド径(投影面積円相当径)を静的画像解析システム(Morphologi G3、Malvern)を用いて計測し、顕微鏡法による個数基準粒度分布の測定を行った。RCP顆粒の10%径は835.06μm、50%径は1170.8μm、90%径は1419.4μm(いずれも5回分の測定値の平均)であった。
上記1)で調製したβ-TCPナノ粒子分散液をPBSで希釈し、0.001、0.01、0.1、1及び10重量%のβ-TCPナノ粒子分散液を調製した。100mgのRCP顆粒に上記分散液0.5mLを滴下した後に乾燥させることで、RCP 1mgあたりのβ-TCP量がそれぞれ0.00005、0.0005、0.005、0.05及び0.5mgであるRCP顆粒とβ-TCPナノ粒子の複合体(それぞれTCP 0.001%-RCP、TCP 0.01%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP、TCP 10%-RCP)を製造した。また、β-TCPナノ粒子分散液の代わりに0.5mLのPBSを用いたものをコントロール(TCP 0%-RCP)とした。
3)比較用複合体であるウシコラーゲン顆粒とβ-TCPナノ粒子の複合体の調製
市販ウシ真皮由来コラーゲンスポンジ(テルダーミス、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)を直径1mmの顆粒状に裁断し、これに上記1)及び2)で調製した0.1、1又は10重量%のβ-TCPナノ粒子分散液0.5mLを滴下し、乾燥させることで、ウシコラーゲン顆粒1mgあたりのβ-TCP量がそれぞれ0.005、0.05及び0.5mgであるウシコラーゲン顆粒とβ-TCPナノ粒子の複合体(それぞれTCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG、TCP 10%-TerG)を製造した。
市販ウシ真皮由来コラーゲンスポンジ(テルダーミス、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)を直径1mmの顆粒状に裁断し、これに上記1)及び2)で調製した0.1、1又は10重量%のβ-TCPナノ粒子分散液0.5mLを滴下し、乾燥させることで、ウシコラーゲン顆粒1mgあたりのβ-TCP量がそれぞれ0.005、0.05及び0.5mgであるウシコラーゲン顆粒とβ-TCPナノ粒子の複合体(それぞれTCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG、TCP 10%-TerG)を製造した。
4)比較用複合体であるウシコラーゲンスポンジとβ-TCPナノ粒子の複合体の調製
β-TCP(富田製薬株式会社)を高圧湿式メディアレス微粒化装置(ナノマイザー、ナノマイザー)を用いて、10%径が0.1499μm、50%径が0.2158μm、90%径が0.3099μm、算術平均径が0.2239μm(動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500、株式会社堀場製作所)を用いて動的光散乱法により測定、分散媒としてN-メチルピロリドンを使用、散乱光強度基準)のナノ粒子に粉砕した後、0.2重量%コール酸ナトリウムによる孤立分散処理を行い、N-メチルピロリドンを用いて10重量%のβ-TCPナノ粒子分散液を調製し、さらにその10倍希釈分散液及び100倍希釈分散液を調製した。
β-TCP(富田製薬株式会社)を高圧湿式メディアレス微粒化装置(ナノマイザー、ナノマイザー)を用いて、10%径が0.1499μm、50%径が0.2158μm、90%径が0.3099μm、算術平均径が0.2239μm(動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500、株式会社堀場製作所)を用いて動的光散乱法により測定、分散媒としてN-メチルピロリドンを使用、散乱光強度基準)のナノ粒子に粉砕した後、0.2重量%コール酸ナトリウムによる孤立分散処理を行い、N-メチルピロリドンを用いて10重量%のβ-TCPナノ粒子分散液を調製し、さらにその10倍希釈分散液及び100倍希釈分散液を調製した。
市販のウシ真皮由来コラーゲンスポンジ(テルダーミス、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)を6×6×3 mm(重量4mg)に成形し、上の平均粒子径100nmの10重量% β-TCPナノ粒子分散液、その10倍希釈分散液又は100倍希釈分散液をそれぞれ100μLずつスポンジに注入した後、エタノールにて洗浄、乾燥させることで、ウシコラーゲンスポンジ1mgあたりのβ-TCP量が0.025、0.25及び2.5mgであるウシコラーゲンスポンジとβ-TCPナノ粒子の複合体(それぞれTCP 0.1%-TerS、TCP 1%-TerS、TCP 10%-TerS)を製造した。
5)複合体の顕微鏡観察
コントロール(TCP 0%-RCP)、TCP-RCP複合体(TCP 0.001%-RCP、TCP 0.01%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP、TCP 10%-RCP)及び2種類の比較用複合体を常法に従ってpt-pdコーティングし、10kV加速電圧でSEM観察した(図2)。TCP-RCP複合体はRCPの表面にβ-TCPが付着した状態にあること、比較用複合体はウシコラーゲンスポンジ又は顆粒の表面にβ-TCPが付着した状態にあることが確認された。β-TCPナノ粒子の付着は、SEM-EDS分析によりTCP-RCP表面にCa及びPがTCP用量依存的に検出されたことによっても確認された。
コントロール(TCP 0%-RCP)、TCP-RCP複合体(TCP 0.001%-RCP、TCP 0.01%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP、TCP 10%-RCP)及び2種類の比較用複合体を常法に従ってpt-pdコーティングし、10kV加速電圧でSEM観察した(図2)。TCP-RCP複合体はRCPの表面にβ-TCPが付着した状態にあること、比較用複合体はウシコラーゲンスポンジ又は顆粒の表面にβ-TCPが付着した状態にあることが確認された。β-TCPナノ粒子の付着は、SEM-EDS分析によりTCP-RCP表面にCa及びPがTCP用量依存的に検出されたことによっても確認された。
6)複合体への細胞接着性
48ウェルプレートの各ウェルにコントロール(TCP 0%-RCP)又はTCP-RCP複合体(TCP 0.01%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)100mgを設置し、マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1(理研バイオリソースセンターより入手)の懸濁液(10,000個/mL培地)を0.5mLずつ播種し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。懸濁及び培養には、10% ウシ胎児血清(Qualified FBS, Thermo Fisher Scientific)及び1% 抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン、Thermo Fisher Scientific)を添加したα-MEM培地(MEM alpha, GlutaMAX-I, Thermo Fisher Scientific)を用いた。
48ウェルプレートの各ウェルにコントロール(TCP 0%-RCP)又はTCP-RCP複合体(TCP 0.01%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)100mgを設置し、マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1(理研バイオリソースセンターより入手)の懸濁液(10,000個/mL培地)を0.5mLずつ播種し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。懸濁及び培養には、10% ウシ胎児血清(Qualified FBS, Thermo Fisher Scientific)及び1% 抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン、Thermo Fisher Scientific)を添加したα-MEM培地(MEM alpha, GlutaMAX-I, Thermo Fisher Scientific)を用いた。
アクチン染色した複合体の蛍光顕微鏡観察画像を図3に、LIVEDEAD染色した複合体の蛍光顕微鏡観察画像を図4に示す。コントロール(図中のPBS)、TCP-RCP複合体のいずれにも細胞が付着しており、付着細胞のほぼ全てがLIVEDEAD染色により緑色の蛍光を示す、すなわち生細胞であることが確認された。
実施例2 骨形成に対するTCP-RCP複合体の効果
全身麻酔及び局所麻酔下のWister系ラット(10週齢)の頭部皮膚切開後、約1×1.5 cm四方の骨膜を除去し、骨面に外径4.5mmのトレフィンバーを用いて脳硬膜に達する骨欠損をラット1匹あたり2箇所形成した。動物を5群(n=6)に分け、うち4群のラットに実施例1で作製したTCP 0%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP又はTCP 10%-RCPを欠損部1穴あたり4mg埋植した後、皮膚を縫合して通常飼育を続けた。残り1群のラットは欠損部に何も埋植しない対照群とした。埋植から2週間後にラットを安楽死させ、頭蓋骨を採取し、ホルマリン固定した。固定後の頭蓋骨をCT撮影し、撮影した画像をイメージソフトウェア(Image J、NIH)で解析して、欠損部に相当する領域内の黒色部分の面積を計測した。
全身麻酔及び局所麻酔下のWister系ラット(10週齢)の頭部皮膚切開後、約1×1.5 cm四方の骨膜を除去し、骨面に外径4.5mmのトレフィンバーを用いて脳硬膜に達する骨欠損をラット1匹あたり2箇所形成した。動物を5群(n=6)に分け、うち4群のラットに実施例1で作製したTCP 0%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP又はTCP 10%-RCPを欠損部1穴あたり4mg埋植した後、皮膚を縫合して通常飼育を続けた。残り1群のラットは欠損部に何も埋植しない対照群とした。埋植から2週間後にラットを安楽死させ、頭蓋骨を採取し、ホルマリン固定した。固定後の頭蓋骨をCT撮影し、撮影した画像をイメージソフトウェア(Image J、NIH)で解析して、欠損部に相当する領域内の黒色部分の面積を計測した。
欠損部の黒色面積定量結果を図5に示す。CT画像の黒色部分は骨が欠損している状態を表すので、欠損部の黒色部分が少ない(Intensityが低い)ほど骨形成が起こっていることを意味する。TCP-RCP複合体埋植群はいずれも対照群及びTCP 0%-RCP群(図中のPBS)と比べて骨形成が亢進しており、その程度はTCP 1%-RCP、TCP 0.1%-RCP、TCP 10%-RCPの順に優れていた。
実施例3 骨形成に対するTCP-RCP複合体及び比較用複合体の効果
実施例2と同様にして、実施例1で作製したTCP 1%-RCP、TCP 10%-TerS及びTCP 1%-TerGの骨形成促進効果を評価した。埋植から2週間後のラット頭蓋骨のCT画像を図6上段に、欠損部の黒色面積定量結果を図6下段に示す。TCP 1%-RCPを埋植したラットでは欠損部の全体において空隙が少なくなっている、すなわち骨形成が亢進しているのに対し、比較用複合体であるTCP 10%-TerS又はTCP 1%-TerGを埋植したラットでは骨形成は欠損部辺縁の一部でしか確認されなかった。
実施例2と同様にして、実施例1で作製したTCP 1%-RCP、TCP 10%-TerS及びTCP 1%-TerGの骨形成促進効果を評価した。埋植から2週間後のラット頭蓋骨のCT画像を図6上段に、欠損部の黒色面積定量結果を図6下段に示す。TCP 1%-RCPを埋植したラットでは欠損部の全体において空隙が少なくなっている、すなわち骨形成が亢進しているのに対し、比較用複合体であるTCP 10%-TerS又はTCP 1%-TerGを埋植したラットでは骨形成は欠損部辺縁の一部でしか確認されなかった。
CT撮影後の頭蓋骨試料をEDTAで脱灰し、常法に従ってパラフィン包埋処理を行った。5ミクロンの薄切切片を作製してHE染色を行い、新生骨の長さ及び面積をイメージソフトウェアにて計測した。HE染色試料の顕微鏡観察画像を図7上中段に、新生骨の長さ及び面積を図7下段にそれぞれ示す。TCP 1%-RCPは、比較用複合体であるTCP 10%-TerS又はTCP 1%-TerGよりも新生骨の長さ及び面積を増加させる、すなわち骨形成を促進することが確認された。また、組織学的観察の結果、ラット頭蓋骨に埋植されたTCP 1%-RCPは、その孔構造の内部に骨様組織の添加が認められた。埋植から4週間後にはさらに骨様組織の添加が亢進され、血管様構造も確認された。
実施例4 骨芽細胞の増殖及び分化に対するTCP-RCP複合体及び比較用複合体の効果
1)細胞増殖
実施例1の6)と同様の手法で、TCP-RCP複合体(TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)又は比較用複合体(TCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG、TCP 10%-TerS)上でMC3T3-E1細胞を培養した。培養開始から1、3、5、7日後の細胞数を、WST-8を発色基質として用いたCell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所)によって測定した(図8)。TCP-RCP複合体は、比較用複合体であるTCP 1%-TerGと同程度の細胞増殖を示した。
1)細胞増殖
実施例1の6)と同様の手法で、TCP-RCP複合体(TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)又は比較用複合体(TCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG、TCP 10%-TerS)上でMC3T3-E1細胞を培養した。培養開始から1、3、5、7日後の細胞数を、WST-8を発色基質として用いたCell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所)によって測定した(図8)。TCP-RCP複合体は、比較用複合体であるTCP 1%-TerGと同程度の細胞増殖を示した。
2)細胞分化
48ウェルプレートの各ウェルにTCP-RCP複合体(TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)又は比較用複合体(TCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG)150mgを設置し、これにMC3T3-E1細胞を150,000細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO2環境下で14日間培養した。培養後の細胞からTrizol を用いてRNAを抽出し、逆転写酵素Rever Tra Ace-αFSK-101(Toyobo)を用いてcDNAを合成した。プライマーとしてAlpl(Mm00475834_m1, Applied Biosystems)及びglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH, Mm99999915_g1, Applied Biosystems)を、リアルタイムPCR装置としてABI Prism 7300 sequence detection system(Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRを行い、骨芽細胞への分化マーカーであるアルカリホスファターゼ及び内部標準GAPDHの遺伝子発現量を測定した(図9)。TCP-RCP複合体上で培養した細胞はアルカリホスファターゼを高発現したことから、TCP-RCP複合体は骨芽細胞への分化をより強く促進することが示された。分化の促進は、特にTCP 1%-RCPで顕著であった。
48ウェルプレートの各ウェルにTCP-RCP複合体(TCP 0.1%-RCP、TCP 1%-RCP)又は比較用複合体(TCP 0.1%-TerG、TCP 1%-TerG)150mgを設置し、これにMC3T3-E1細胞を150,000細胞/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO2環境下で14日間培養した。培養後の細胞からTrizol を用いてRNAを抽出し、逆転写酵素Rever Tra Ace-αFSK-101(Toyobo)を用いてcDNAを合成した。プライマーとしてAlpl(Mm00475834_m1, Applied Biosystems)及びglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH, Mm99999915_g1, Applied Biosystems)を、リアルタイムPCR装置としてABI Prism 7300 sequence detection system(Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRを行い、骨芽細胞への分化マーカーであるアルカリホスファターゼ及び内部標準GAPDHの遺伝子発現量を測定した(図9)。TCP-RCP複合体上で培養した細胞はアルカリホスファターゼを高発現したことから、TCP-RCP複合体は骨芽細胞への分化をより強く促進することが示された。分化の促進は、特にTCP 1%-RCPで顕著であった。
配列番号:1
<223>CBEモノマー
配列番号:2
<223>ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(RCP)
<223>CBEモノマー
配列番号:2
<223>ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(RCP)
Claims (6)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位;
配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位;又は
配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも4個のRGDモチーフを有する繰り返し単位
を1又は複数個含むヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドの顆粒に、β−リン酸三カルシウムのナノ粒子が付着してなる、複合体。 - リコンビナントペプチドが前記繰り返し単位を1〜10個含む、請求項1に記載の複合体。
- β−リン酸三カルシウムのナノ粒子のレーザ回折法で測定される体積平均粒径が500 nm〜900 nmである、請求項1又は2に記載の複合体。
- リコンビナントペプチドの顆粒とβ−リン酸三カルシウムのナノ粒子との重量比が1:0.001〜1:0.25である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体を含む、生体組織修復材。
- 骨、皮膚、歯、歯周組織、軟骨又は半月板の修復又は再生のための、請求項5に記載の生体組織修復材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018217792A JP2020083796A (ja) | 2018-11-20 | 2018-11-20 | コラーゲン様ペプチド及びリン酸カルシウムの複合体並びにこれを含む生体組織修復材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018217792A JP2020083796A (ja) | 2018-11-20 | 2018-11-20 | コラーゲン様ペプチド及びリン酸カルシウムの複合体並びにこれを含む生体組織修復材 |
Publications (1)
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JP2020083796A true JP2020083796A (ja) | 2020-06-04 |
Family
ID=70906431
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JP2018217792A Pending JP2020083796A (ja) | 2018-11-20 | 2018-11-20 | コラーゲン様ペプチド及びリン酸カルシウムの複合体並びにこれを含む生体組織修復材 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2020083796A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114425104A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-05-03 | 中国人民解放军空军军医大学 | 一种载药骨引导/诱导复合结构及其制备方法和应用 |
-
2018
- 2018-11-20 JP JP2018217792A patent/JP2020083796A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114425104A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-05-03 | 中国人民解放军空军军医大学 | 一种载药骨引导/诱导复合结构及其制备方法和应用 |
CN114425104B (zh) * | 2021-12-21 | 2023-03-03 | 中国人民解放军空军军医大学 | 一种载药骨引导/诱导复合结构及其制备方法和应用 |
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