JP2020079370A - 複合シート - Google Patents

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Shunichi Yokoyama
俊一 横山
大輔 町田
Daisuke Machida
大輔 町田
俊規 阪上
Toshiki Sakagami
俊規 阪上
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Abstract

【課題】柔軟性、耐光性、及び、引裂耐性に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制される複合シートを提供する。【解決手段】経糸と緯糸を有し開口部が形成された織物シート11と、柔軟性と耐光性に優れた熱可塑性エラストマー12と、からなり、織物シート11は、緯糸が、所定の条件を満たすビニロン製のマルチフィラメントを有する開口率が20〜75%のシートであり、織物シート11のビニロン製のマルチフィラメントは、直径が60〜900μmであり、熱可塑性エラストマー12は、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、熱可塑性エラストマー12は、表面硬度がJIS−Aで60以上であり、且つ、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下であり、熱可塑性エラストマー12が織物シート11の開口部に侵入して織物シート11の開口部を閉塞させている複合シート100。【選択図】図1

Description

本発明は、複合シートに関する。更に詳しくは、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制される複合シートに関する。
近年、電子パスポートには、個人情報を書き込むためのプラスチックスデータページが採用されており、このプラスチックスデータページは、国籍や性別、写真、名前などの個人情報が記録された個人認証機能を付与する上で重要なページである。
このプラスチックスデータページには、耐久性と強度に優れたポリカーボネート樹脂からなるシートが主に使用されている。具体的には、このプラスチックスデータページ(以下、単に「データページ」と記す場合がある)は、その複数枚のポリカーボネート樹脂シート、ICチップとアンテナを配置したインレットと呼ばれるシート、及び、データページと電子パスポートの表紙とを接合するための柔軟なシートから構成されている。
そして、このデータページと電子パスポート表紙とを接合するための柔軟なシートは、ヒンジシートとも呼ばれており、個人情報が記録された重要なページ(データページ)が引き裂かれたりすることなどを防止するという機能などが求められる非常に重要なシートである。
このヒンジシートとしては、織物シートと、この織物シートの表面側及び裏面側に配置される熱可塑性樹脂シートと、からなるものなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第4456175号
ここで、データページは、図8に示すようにヒンジシートCの表面側及び裏面側にポリカーボネート樹脂シートP,Qを配置した積層体150を形成し、その後、この積層体150を、真空プレス機を用いて、180〜200℃の熱盤で加圧し(加熱加圧し)、その後、冷却して作製される。なお、このとき、ヒンジシートCの一部は、ポリカーボネート樹脂シートP,Qから張り出すように配置される。この張り出した部分(張り出し部分)が、電子パスポートの表紙とミシン綴じされる部分となる。そして、このような積層体を加熱加圧操作する場合、ヒンジシートCは、ポリカーボネート樹脂シートと接している部分についてはポリカーボネート樹脂シートによって抑えつけられた状態となっているために、熱による収縮率が大きな糸によって織物シートを形成していたとしてもその収縮の程度は小さい。しかし、張り出し部分は、抑えられた状態にないため(即ち、熱により自由に収縮できることになるため)、織物シートを構成する糸の収縮率が大きいと、収縮の程度が大きくなる。このように、ヒンジシートCが、その張り出し部分とそれ以外の部分とにおいて収縮率に差異が生じてしまい、このことに起因して、ヒンジシートにシワが形成されるという問題が発生することが分かった。
そして、このデータページは、パスポートの表紙やビザシートとともにミシン綴じされるが、ヒンジシートに大きなシワが形成されていると、ミシン綴じが困難になるという問題がある。特に機械を用いてミシン綴じを行う場合には、ヒンジシートに大きなシワがあると、このシワが障害となってミシン綴じができない状態(ミシン綴じの操作が進まない状態)となってしまう。その結果、パスポートを製造できないことになる。
このような問題に対して、特許文献1に記載のシートでは何ら対応がなされておらず、特に機械を用いて高速でミシン綴じをする場合、良好にミシン綴じができないことが分かった。
このようなことから、ヒンジシートの基本的な機能である柔軟性に優れ、更に、劣化し難く(耐光性を有し)、個人情報が記録された重要なページが引き裂かれることが防止されるための引裂耐性や融着強度に優れるとともに、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制されているヒンジシート(即ち、複合シート)の開発が切望されている。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものである。即ち、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制される複合シートを提供する。
本発明により、以下の複合シートが提供される。
[1] 経糸と緯糸を有し開口部が形成された織物シートと、柔軟性と耐光性に優れた熱可塑性エラストマーと、からなる複合シートであり、
前記織物シートは、前記緯糸が、以下の(1)または(2)を満たすビニロン製のマルチフィラメントを有する開口率が20〜75%の織物シートであり、
前記織物シートの前記ビニロン製のマルチフィラメントは、直径が60〜900μmであり、
前記熱可塑性エラストマーは、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、
前記熱可塑性エラストマーは、表面硬度がJIS−Aで60以上であり、且つ、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下であり、
前記熱可塑性エラストマーが前記織物シートの前記開口部に侵入して前記織物シートの前記開口部を閉塞させている複合シート。
(1)前記織物シートの前記緯糸は、全てビニロン製のマルチフィラメントからなる。
(2)前記織物シートの前記緯糸は、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとからなり、且つ前記ビニロン製のマルチフィラメントと前記ビニロン製のモノフィラメントとの比の値が60/40以上である。
[2] 前記熱可塑性エラストマーは、表面硬度がJIS−Aで60〜97である、前記[1]に記載の複合シート。
[3] 前記織物シートは、180℃で30分の加熱による加熱収縮率が、3%以下である、前記[1]または[2]に記載の複合シート。
本発明の複合シートは、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制されるという効果を奏するものである。
本発明の複合シートの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。 実施例及び比較例の複合シートにおける柔軟性の評価における説明図である。 実施例及び比較例の複合シートにおける融着強度の評価における説明図である。 実施例及び比較例の複合シートにおける融着強度の評価における説明図である。 実施例及び比較例の複合シートにおけるコスメティック性の評価における説明図である。 実施例及び比較例の複合シートにおけるコスメティック性の評価における説明図である。 本発明の複合シートの織物シートの一の実施形態の一部を拡大して模式的に示した平面図である。 データページを構成する積層体の断面を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]複合シート:
本発明の複合シートの一実施形態としては、図1に示すような複合シート100がある。複合シート100は、経糸と緯糸を有し開口部が形成された織物シート11と、柔軟性と耐光性に優れた熱可塑性エラストマー12と、からなるシートである。織物シート11は、緯糸が、以下の(1)または(2)を満たすビニロン製のマルチフィラメントを有する開口率が20〜75%の織物シートであり、この織物シート11のビニロン製のマルチフィラメントは、直径が60〜900μmである。更に、熱可塑性エラストマー12は、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、この熱可塑性エラストマー12は、表面硬度がJIS−Aで60以上であり、且つ、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下である。そして、複合シート100は、熱可塑性エラストマー12が織物シート11の開口部に侵入して織物シート11の開口部を閉塞させているものである。
(1)織物シート11の緯糸は、全てビニロン製のマルチフィラメントからなる。
(2)織物シート11の緯糸は、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとからなり、且つビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとの比の値が60/40以上である。
この複合シート100は、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制される。このような複合シート100は、特に、電子パスポートのデータページにおけるヒンジシートとして用いることができ、高い耐偽造性などを有する電子パスポートを提供することができるものである。
[1−1]織物シート:
織物シート11は、経糸と緯糸を有し開口部25(図7参照)が形成されたシートである。そして、この織物シート11の緯糸は、上述の(1)または(2)の条件を満たすビニロン製のマルチフィラメントである。このような条件を満たすことにより、加熱加圧操作時においても複合シート100におけるシワの発生が抑制される。
ここで、(2)の条件において、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとの比の値(即ち、ビニロン製のマルチフィラメント/ビニロン製のモノフィラメント)は、60/40以上であり、70/30以上であることが好ましい。上記比の値が60/40未満であると、引裂強度が十分でなくなり、更に、加熱加圧操作時に複合シートにシワが発生する。なお、上記比の値は、緯糸の全数を数えて算出する。
そして、(2)の条件の場合、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントの組み合わせからなる1つのフィラメント単位が繰り返して複数配列されていることが好ましい。1つのフィラメント単位とは、ビニロン製のマルチフィラメントを「X」とビニロン製のモノフィラメントを「Y」とした場合、例えば、XXYのように並べられた基本配置を言う。このとき、ビニロン製のマルチフィラメントXとビニロン製のモノフィラメントYとの配置順や数(但し、比の値60/40以上を満たす)は特に制限はない。(2)の条件の場合、緯糸は、このようなフィラメント単位が複数存在することでもよい。
「マルチフィラメント」とは、複数本の繊維糸(単糸)からなる糸(例えば、撚糸)のことであり、繊維糸の本数は特に制限はないが、例えば、通常は、30〜200本である。「ビニロン製のマルチフィラメント」とは、ビニロン製の複数本の繊維糸(単糸)が撚られて束になった糸のことである。また、「モノフィラメント」とは、1本の繊維糸からなる糸のことである。
ビニロン製のマルチフィラメントの撚り数は、30T/m以上であることが好ましい。上記撚り数を30T/m以上とすることにより、良好な柔軟性を有する複合シートを得ることができる。
ここで、一般に、500T/m未満を「甘撚り」、500〜1000T/mを「普通撚り」、1000〜2500T/mを「強撚り」、2500T/m超を「極強撚り」と言うことができる。本発明においては、甘織り、普通撚り、強撚り、極強撚りを採用することができ、甘織り、普通撚りとすることがよい。なお、「撚り数」とは、長さ1mの間において捩じられた回数をいう。
なお、緯糸とは、複合シート100の張り出し部分の張り出し方向(他のシートと積層させたときに張り出す部分が張り出す方向)に交差する方向に配置された糸のことである。
次に、経糸は、その少なくとも一部(即ち、複数本の経糸のうち1本以上)が高強度糸であることが好ましい。このようにすることで、複合シート100の引裂耐性が更に優れることになる。この高強度糸は、JIS−L1013に準拠して測定した引張破断強度が9cN/dtex以上の糸のことであり、高強度糸の引張破断強度は、15cN/dtex以上であることが好ましい。
高強度糸としては、具体的には、アラミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアリレート、ビニロンなどからなるものを挙げることができる。なお、これらは、一種単独でも複数を組み合わせて用いても良い。
なお、高強度糸は、透明性を有するものであることが好ましい。具体的には、ポリベンゾオキサゾール、ポリアリレート、または、ビニロンからなるものであることが好ましい。これらの高強度糸は透明性に優れるため、例えば、本発明の複合シート以外のシート(例えば、ヒンジシートの上方に配置した白シートや、レーザーマーク透明シート)に文字などの印刷画像や個人画像などが書かれていた場合においてこれらの画像と高強度糸とが重なる位置にあっても、画像の視認性を妨げないという利点がある。つまり、高強度糸が不透明である場合、高強度糸が文字などの画像と重なることによって文字などの画像が判別し難くなる場合がある。
経糸としては、緯糸と同様に、全てビニロン製のマルチフィラメントからなるものであってもよいし、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとからなり、且つビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとの比の値が60/40以上であるものであってもよい。この場合、経糸と緯糸の種類を変える手間を省略することができ、織物シートの製造が簡便になる。
また、経糸としては、ポリエステルまたはポリアミドのモノフィラメントまたはマルチフィラメントと高強度糸とから構成してもよく、ポリエステルまたはポリアミドのモノフィラメントまたはマルチフィラメントの10〜50本に1本が、高強度糸に置き換えられた状態のものとすることが好ましい。そして、この高強度糸の割合は、10〜30本のうち1本とすることが更に好ましく、20〜30本のうち1本とすることが特に好ましい。経糸として高強度糸を上記割合で用いると、織物シートが更に優れた引裂耐性を発揮すると同時に、複合シートについて優れた柔軟性を確保することができる。高強度糸の割合が少なすぎると、織物シートの引裂耐性が低下するおそれがある。一方、高強度糸の割合が多すぎると、得られる複合シートの柔軟性が低下するおそれがある。なお、電子パスポートデータページなどを安易に手で引き裂く行為による被害を回避するという観点からすれば、本発明の複合シートの織物シートに使用される高強度糸は、1本であってもよい。つまり、手で引き裂かれる際に、高強度糸が1本でも存在することでこの高強度糸によって引き裂かれることが防止されることになる。
なお、経糸とは、複合シート100の張り出し部分の張り出し方向(他のシートと積層させたときに張り出す部分が張り出す方向)に沿う方向に配置された糸のことであり、ミシン綴じの方向と直交する方向に延びる糸のことである。
ビニロン製のマルチフィラメント製の緯糸の直径は、60〜900μmであり、80〜900μmとすることが好ましい。このような条件を満たすことにより、高い引裂強度の複合シートを得ることができる。緯糸にビニロン製のモノフィラメントを用いる場合、その直径について特に限定されないが、上記ビニロン製のマルチフィラメント製の緯糸と同じ範囲とすることができ、ビニロン製のマルチフィラメント製の緯糸と同じ直径とすることができる。なお、経糸として、全てビニロン製のマルチフィラメントを用いる場合や、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとの組み合わせを用いる場合についても上記緯糸と同様とすることができる。また、「マルチフィラメント」の直径は、複数本の繊維糸の束の直径(最大の径)のことである。「モノフィラメント」の直径は、1本の繊維糸(単糸)の直径(最大の径)のことである。
経糸の直径は、特に限定されるものではなく、使用用途に応じた範囲の数値を選択できる。例えば、電子パスポートの厚みは、各国毎に定められているが、全体としての厚みはある程度規定されている。そして、全体の厚みが規定されることに起因して、その中に配置されるヒンジシートの厚みもある程度の範囲に定まる。そのため、糸の直径は、適度な大きさであることが好ましい。なお、経糸は、緯糸を90°回転させた状態のものとすることができる。
なお、経糸及び緯糸の直径は、形状を正しく測定可能な装置であれば、どの装置を用いても測定できるが、例えば、デジタルマイクロスコープ、ワンショット3D形状測定機、レーザーマイクロスコープ、画像寸法測定機、3Dスキャナ型3次元測定機、または、ノギス等種々の装置が使用できる。デジタルマイクロスコープを用いて測定した値である。
織物シート11の開口部25の開口率は、20〜75%である。このような範囲であると、織物シート11に優れた、柔軟性、融着強度、及び引裂強度が発揮される。織物シート11の開口率が下限値未満であると、織物シート11の柔軟性及び融着強度が得られない。上記開口率が上限値超であると、引裂強度の低下や網目の不均一性が生じる。
ここで、織物シート11の開口率とは、織物シート全体の面積に対する開口部25の面積の割合をいう。この開口部25は、織物シート11を構成する糸(経糸11a、緯糸11b(図7参照))に囲まれた領域、すなわち、当該経糸11a及び緯糸11bが交わる部分に、交点部15が形成され、当該交点部15により区画される孔とも言える。そして、織物シート11の開口率は、より具体的には、式:開口率=〔((A−1)×(A−2))÷((P−1)×(P−2))〕×100(%)によって算出される値である。
図7に示すように、「A−1」は、隣り合う経糸11aの間の距離であり、「A−2」は、隣り合う緯糸11bの間の距離である。「P−1」は、隣り合う緯糸11bの中間位置(中心軸がある位置)の間の距離であり、「P−2」は、隣り合う経糸11aの間の距離である。
織物シートは、特に限定されるものではないが、平織及び綾織からなる群より選択される少なくとも1種の織り方からなる織物シートであることが好ましく、平織で織られているものであることが更に好ましい。このような織り方からなるものであると、織物の生産性に優れるため織物が安価に生産できる。
織物シート11の厚みは、特に限定されるものではなく、使用用途に応じた範囲の数値を選択できる。例えば、電子パスポートの厚みは、各国毎に定められているが、全体としての厚みはある程度規定されている。そして、全体の厚みが規定されることで、その中に配置されるヒンジシートの厚みもある程度の範囲で定まることになる。この織物シートは、厚みが70〜250μmであることが好ましく、90〜200μmであることが更に好ましく、100〜180μmであることが特に好ましい。織物シートの厚みが上記範囲であると、織物シートについて優れた引裂耐性が発揮されるとともに、得られる複合シートについて柔軟性が優れるという利点がある。織物シートの厚みが下限値未満であると、織物シートの引裂耐性が低下するおそれがある。織物シートの厚みが上限値超であると、得られる複合シートの柔軟性が低下するおそれがある。
[1−2]熱可塑性エラストマー:
熱可塑性エラストマーは、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むものであり、この熱可塑性エラストマーは、表面硬度がJIS−Aで60以上であることが必要である。そして、熱可塑性エラストマーの表面硬度(JIS−A)は、60〜97であることが好ましい。JIS−Aにおける表面硬度が上記範囲であると、柔軟性とヒンジ部(張り出し部分)のシワ発生の抑制の効果が両立する。また、複合シートにおける融着強度を向上させることができる。上記表面硬度が下限値未満であると、ヒンジシートのように薄いシートを作製することが困難であり、複合シートにおける融着強度が十分に得られない。なお、上記表面硬度が60D超(比較例7は60D)であると、複合シートの柔軟性が十分に得られないことがある。また、JIS−Aにおける表面硬度97(JIS−A97)は、JIS−Dではおよそ54(54D)に相当する。
なお、ヒンジ部のシワは、織物シート11の熱収縮に起因するものではなく、熱可塑性エラストマー12にも起因して生じるものである。熱可塑性エラストマーに起因するシワは、以下のように発生する。即ち、積層体(図5参照)の加熱積層工程において、ヒンジシート中の軟質樹脂(熱可塑性エラストマー)が軟化流動してヒンジ部へはみ出し、シワが発生する。本発明においては、所定の織物シートを採用し、更に、所定の熱可塑性エラストマーを採用することによってこれらが相乗的に作用してヒンジシートのシワの発生を抑制することができる。
「表面硬度がJIS−A」とは、JIS規格においては中硬さ(一般ゴムなど)用の「タイプA」のことを意味する。
前記熱可塑性エラストマーが「無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む」とは、熱可塑性エラストマーについて、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下となるように、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む限り特に制限はない。
上記のように熱可塑性エラストマーが無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むことによって、高い耐光性を有する複合シートを得ることができる。
熱可塑性エラストマーに含まれる「無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマー」以外の成分としては、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーによる耐光性の効果を阻害するものでない限り特に制限はないが、例えば、熱可塑性ポリエステルエラストマーなどを挙げることができる。
さらに、熱可塑性エラストマーは、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むものであり、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下である。そして、当該黄色度の差(△YI)は、3以下であることが好ましく、2以下であることが更に好ましい。キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下であると、電子パスポートのように長期間使用する場合であっても耐久性が確保できる(即ち、耐光性を有する電子パスポートなどを得ることができる)。一方、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5超であると、長期間の使用によって(すなわち、経年劣化によって)変色するだけでなく、耐光性試験で変色する熱可塑性エラストマーの強度が低下するために、データページのヒンジ部(ヒンジシートの張り出し部分)の強度が低下してしまい、破損してしまう。そのため、電子パスポートのヒンジシートとしては好ましくない。
複合シート100は、熱可塑性エラストマー12が織物シート11の開口部25に侵入して織物シート11の開口部25を閉塞させているものである。別言すれば、複合シート100は、織物シート11の開口部25に熱可塑性エラストマー12からなる充填層が形成されており、この充填層によって織物シート11の開口部25が塞がれていると言える。
本発明の複合シートは、その機能を阻害しない範囲内で、無機フィラー、有機フィラー等を含有していてもよい。
本発明の複合シートは、その厚みについて特に制限はないが、例えば、70〜160μmとすることができる。
本発明の複合シートは、180℃で30分の加熱による加熱収縮率が、3%以下であることが好ましく、0.1〜3%であることが更に好ましい。このように加熱収縮率が上記範囲であると、加熱加圧操作時においても複合シートの張り出し部分(ヒンジ部)にシワが発生し難く、特に機械を用いてミシン綴じを行う場合にも、このシワが障害となってミシン綴じができない状態を回避することができる。
[1−3]複合シートの用途:
本発明の複合シートは、パスポートに用いられているヒンジシートとして、使用することができる。
[2]複合シートの製造方法:
本発明の複合シートは、従来公知の方法を適宜採用することができ、例えば以下のように作製することができる。
本発明の複合シートの製造方法は、軟質シート成形工程と軟化侵入工程とを有するものとすることができる。軟質シート成形工程は、Tダイ付押出機を用いて溶融押出成形して、熱可塑性エラストマーからなる軟質シートを成形する工程である。そして、軟化侵入工程は、軟化侵入工程A、軟化侵入工程Bが挙げられる。
軟化侵入工程Aとしては、軟質シートと、経糸及び緯糸を有し開口部が形成された織物シートと、を積層させた後、加熱用及び冷却用の金属ロール/ゴムロール(金属ロールとゴムロールが対になっているロール)を使用して、軟質シートと織物シートとを加熱加圧し、織物シートの開口部に軟質シートを構成する熱可塑性エラストマーを軟化侵入させ、これによって、織物シートと熱可塑性エラストマーが一体化した複合シートを製造する工程である。なお、ロールとしては、金属ロール/金属ロール、金属ロール/ゴムロールなどを複数用いることができる。ここで、厚みが薄いシート(20〜200μm程度)の加熱加圧ラミネート加工においては、金属ロール/ゴムロールの組み合わせが一般的であるが、金属ロール/金属ロール(金属ロールと金属ロールが対になっているロール)も使用されている。金属ロール/金属ロールの場合は、厚みが薄いシートためにロール間隙が狭く、金属ロールが加熱状態においては金属ロールの熱膨張が伴なうこととロール回転の微小振動が伴うために、狭いロール間隙では金属ロール同士が接触する懸念があるために金属ロール/ゴムロールの組み合わせが一般的である。
また、軟化侵入工程Bとしては、Tダイ付押出機から押出された直後の軟化状態の軟質シートと、経糸及び緯糸を有し開口部が形成された織物シートと、を積層させ、軟化状態の軟質シートと織物シートとを一対の金属ロールを使用して加圧圧着させる。そして、織物シートの開口部に軟質シートを構成する熱可塑性エラストマーを軟化侵入させる。その後、この複合シートを、次の加温状態の金属ロールとゴムロール間に進入させて、軟質シートを織物シートに軟化侵入させた側の反対側まで熱可塑性エラストマーを侵入させる。そして、織物シートの両面に熱可塑性エラストマーのスキン層を形成させ、所定の厚みに制御する。その後、冷却された金属ロールとゴムロールの間に複合シートを導き、複合シートを冷却して織物シートと熱可塑性エラストマーが一体化した複合シートを製造する工程である。但し、金属ロールやゴムロールの配置、数については、一例を記載したのであり、これ以外の組み合わせも当然使用することができる。
上記のような製造方法によれば、柔軟性、耐光性、及び、引裂耐性に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制された複合シートを製造することができる。
[2−1]軟質シート成形工程:
熱可塑性エラストマーは、上述の本発明の複合シートで説明した熱可塑性エラストマーと同様のものを用いることができる。
Tダイ付押出機は、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。また、溶融押出成形の条件は、従来公知の条件を適宜採用することができる。
[2−2]軟化侵入工程:
軟化侵入工程としては、例えば、上記軟化侵入工程A、Bのいずれかの工程を選択することができる。
[2−2−1]軟化侵入工程A:
「加熱用及び冷却用の金属ロール/ゴムロール」は、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
軟質シートと織物シートとを加熱加圧する条件は、従来公知のものを適宜採用することができる。
[2−2−2]軟化侵入工程B:
「押出された直後の軟化状態の軟質シート」とは、一対の金属ロールを使用して加圧することで、熱可塑性エラストマーが織物シートの開口部に侵入し、熱可塑性エラストマーと織物シートとが圧着する状態の軟質シートを意味する。
一対の金属ロールとしては、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
金属ロールを使用して加圧する条件は、特に制限はなく従来公知のものを適宜採用することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
[試験方法]
[1]軟質樹脂材料(熱可塑性エラストマー):
Tダイ付押出機を使用して成形温度220℃前後にて、厚み300μmの軟質樹脂材料からなる樹脂シートを作製し、この樹脂シートの表面硬度と耐光性を測定した。
(1)表面硬度:
作製した厚み300μmの樹脂シートを4枚重ね、JIS−K7311に準拠して表面硬度を測定した。
(2)耐光性:
スガ試験機社製のキセノンアーク試験機(ブラックパネル温度63℃)を用いて、作製した厚み300μmの樹脂シートにキセノンランプの光を400時間照射し、処理前後(光照射前後)の黄色度の変化(△YI)を測定した。
[2]複合シート:
(1)柔軟性:
複合シートを幅50mm×長さ200mmのサイズに切断してシート試験片Aを得た後、このシート試験片Aを図2に示す水平台21に配置した。このとき、水平台21の端部からシート試験片Aを50mmの長さ(長さ方向の一部)で張り出させた。その後、シート試験片A上にガラス板22(幅100mm、長さ200mm、厚さ3mm)を載置した。そして、シート試験片Aの張り出させた部分の垂れの程度(長さd)を測定した。なお、この垂れの長さdは、図2のように側面から見たときに、水平台21の載置されたシート試験片Aの上面の延長線(図2中、破線で示す)から、最も遠い部分(張り出したシート試験片Aの先端)までの距離とした。測定後、以下の4段階の評価を行った。
G1:長さdが25mm以上(即ち、「柔軟性に優れる」)
G2:長さdが20以上25mm未満(即ち、「柔軟性が良好」)
B1:長さdが15以上20mm未満(即ち、「柔軟性が不十分」)
B2:長さdが15mm未満(即ち、「柔軟性に劣る」)
(2)引裂強度:
複合シートについて、JIS−K7128−1に準拠して引裂強度を測定し、その最大値を求めた。
(3)融着強度:
複合シートを長さ15cm×幅15cmのサイズに切断してシート試験片Bを作製し、更に、シート試験片Bと同寸法の厚み200μmのポリカーボネートシート(白)(白色ポリカーボネート樹脂シート31)4枚を用意した。そして、これらを、図3に示すように、下から順に、ポリカーボネートシート(白)31、ポリカーボネートシート(白)31、シート試験片B、ポリカーボネートシート(白)31、ポリカーボネートシート(白)31となるように積層させて積層試験片を得た。その後、シート試験片Bの上に乗せられているポリカーボネートシート(白)31のシート試験片B側の表面の一部(端部から10cmの部分)に黒マジックインクを塗った(図3中、黒マジックインク部分を符号32で示す)。その後、積層試験片の上下にポリイミドフィルム35を配置し、更に、これの上下にSUS板36を配置した(図3参照)。その後、真空加熱圧縮成形機にて加熱温度185℃にて加熱加圧し、その後、冷却して加熱積層試験片を得た。なお、黒マジックインクを塗った部分は、ポリカーボネートシート(白)とシート試験片Bとが融着しない状態となり、この部分をはくり試験(180°ピール試験)の摘み部(チャック部)とした。
その後、得られた加熱積層試験片を幅が20mmとなるように切断してピール試験用試験片40を作製した。そして、このピール試験用試験片40を用いて、図4に示すように試験速度200mm/分の条件にて180°ピール試験を行い、はくり強度(N/mm)を測定した。このはくり強度を、「融着強度」として評価した。
(4)コスメティック性:
厚み100μmの透明のポリカーボネートシート(ポリカーボネート樹脂製のシート)を幅200mm×長さ200mmに切断し、PCシート試験片pを得た。このPCシート試験片pを4枚用意した。また、厚み200μmの白色のポリカーボネートシートを幅200mm×長さ200mmに切断し、PCシート試験片qを得た。このPCシート試験片qを2枚用意した。更に、複合シートを幅200mm×長さ200mmのサイズに切断してシート試験片Cを得た。その後、これらを下から順に、PCシート試験片p、PCシート試験片p、PCシート試験片q、シート試験片C、PCシート試験片q、PCシート試験片p、PCシート試験片pとなるように積層させて、図5に示すような7層の積層体(7層積層体50)を得た。
その後、7層積層体50をハードSUS板(SUS431)36で挟み(図6参照)、北川精機社製の1段真空プレス機(有効寸法400mm×400mm)に投入し、この真空プレス機を用いて、真空下(到達真空度:1.3KPa)、190℃にて加熱・加圧した。その後、加圧状態を保ったまま100℃以下まで冷却した後、真空プレス機からSUS板ごと取り出して7層加熱積層体を得た。そして、7層加熱積層体の上方約5cm程度から目視により、7層加熱積層体内の織物シートの糸が透けて見える程度を以下の3段階で評価し、「コスメティック性」の評価とした。
A:織物の糸が全く見えない。
B:織物の糸がわずかに確認できるが、実用可能と判断する。
C:織物の糸が透けて見える事から、実用困難と判断する。
(5)加熱収縮率(%):
複合シートを幅150mm×長さ150mmのサイズに切断してシート試験片Dを得た。その後、180℃の高温恒温器(エスペック社製の高温恒温器「スーパーテンプオーブン」)中にシート試験片Dを30分間入れた後、高温恒温器から取り出して室温まで自然冷却させた。その後、シート試験片Dの縦方向及び横方向の寸法を測定し、シート試験片Dの加熱冷却処理前後の収縮率を測定した。
(6)複合シートの張り出し部のシワ:
7層加熱積層体の複合シートの張り出し部(電子パスポートの表紙とミシン綴じする箇所)のシワの程度を目視で確認し、以下の4段階で評価した。
S1:シワの発生がほとんど見られない。
S2:シワの発生が確認されるが、その程度は小さく、ミシン綴じが可能である。
X1:シワの発生が大であり、ミシン綴じが困難である。
X2:7層積層体を加熱加圧する工程においてシート試験片Dの張り出し部が上部または下部のSUS板に付着した状態が確認され、ミシン綴じが困難である。
(7)耐光性:
複合シートを幅60mm×長さ60mmのサイズに切断してシート試験片Eを得た。得られたシート試験片Eに対して、スガ試験機社製のキセノンアーク試験機(ブラックパネル温度63℃)を用いて、400時間照射を行い、その後、シート試験片Eの黄色度の変化(△YI)を測定した。
(実施例1)
軟質樹脂材料として、表面硬度(JIS−K7311)が90Aの熱可塑性無黄変ポリウレタンエラストマー(東ソー社製の商品名:ミラクトランXN−2002)(表1〜表3中、「NY−TPU(1)」と記す)をTダイ付押出機に投入して220℃にて溶融押出成形して厚み80μmの軟質樹脂材料シートを押出した。
その後、離型処理ポリエステルフィルムを使用して2本の加熱金属ロール間に、ビニロン製のマルチフィラメントからなる厚みが140μmの織物シート(以下、「Vinylon−11」と記す場合がある)と軟質樹脂材料シートとを供給し、これらについて加熱加圧ラミネートを行った。このようにして、上記織物シートの開口部(空隙)に軟質樹脂材料シートの一部である軟質樹脂材料を充填して、厚み140μmの複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表1に示す。
なお、織物シートは、緯糸と経糸について同じ構成(材料や配置などの条件)としていた。つまり、経糸は、緯糸を90°回転させた状態のものということができる。以下の実施例2〜6、比較例1〜9においても同様である。
(実施例2)
表1に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表1に示す。なお、本実施例では、織物シートはビニロン製のマルチフィラメントからなるものであるが、実施例1の織物シートとは開口率が異なるため、表1中、「Vinylon−12」と記す。
(実施例3)
軟質樹脂材料として、「表面硬度(JIS−K7311)が90Aの熱可塑性無黄変ポリウレタンエラストマー(東ソー社製の商品名:ミラクトランXN−2002)」と「表面硬度(JIS−K7311)が45Aの熱可塑性ポリエステルエラストマー(三菱ケミカル社製、商品名:プリマロイA1400)」を質量比で80:20となるように混合して混合物(表1中、「NY−TPU(2)」と記す)を得た。この混合物を、Tダイ付押出機に投入して200℃にて溶融押出成形して厚み80μmの軟質樹脂材料シートを押出した。
その後、離型処理ポリエステルフィルムを使用して2本の加熱金属ロール間に、ビニロン製のマルチフィラメントからなる織物シート(以下、「Vinylon−11」と記す場合がある)と軟質樹脂材料シートとを供給し、これらについて加熱加圧ラミネートを行った。このようにして、上記織物シートの開口部(空隙)に軟質樹脂材料シートの一部である軟質樹脂材料を充填して、厚み140μmの複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例4)
軟質樹脂材料として、表面硬度(JIS−K7311)が95Aの熱可塑性無黄変ポリウレタンエラストマー(東ソー社製の商品名:ミラクトランXN−2004)(表1中、「NY−TPU(3)」と記す)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み140μmの複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例5〜7)
表1に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表1に示す。
なお、実施例5,7では、織物シートを構成する糸として、ビニロン製のマルチフィラメントの他に、ビニロン製のモノフィラメントを用いた。実施例5においては、これらの割合(糸種1と糸種2の比率(即ち、ビニロン製のマルチフィラメントの数/ビニロン製のモノフィラメントの数))は、2/1であった。また、糸種1を「X」、糸種2を「Y」としたとき、これらの糸は、XXYの順に並ぶ1つのフィラメント単位が繰り返して存在するように規則性を持って配列されていた。このように規則性を持って2種の糸を配置することによって、より効果的にシワの発生を抑制することができる。実施例5では、上述の通り、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとによって織物シートを形成しており、表1中、この織物シートを「Vinylon−13」と記す。実施例6では、実施例1〜5とは異なり、撚り数が少なく(100t/m)、線径が大きい(800μm)のビニロン製のマルチフィラメント(表1中、「Vinylon−14」と記す)を使用した。
(比較例1)
軟質樹脂材料として、表面硬度(JIS−K7311)が90Aの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASF社製の商品名:エラストランP490RSJT)(表2中「TPU−1」と記す)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み140μmの複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表2に示す。
(比較例2〜5)
表2に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表2に示す。なお、表2中、「PET−1」は、ポリエステル製のマルチフィラメントからなる織物を示す。「PA−1」は、ポリアミド製のマルチフィラメントからなる織物を示す。比較例4では、織物シートをビニロン製のモノフィラメントのみから構成しており、表2中「Vinylon−15」と記す。比較例5では、織物シートを構成する糸として、ビニロン製のマルチフィラメントの他に、ビニロン製のモノフィラメントを用いたが、これらの割合は1/2であった。表2中、この織物シートを「Vinylon−16」と記す。
(比較例6)
軟質樹脂材料として、「表面硬度(JIS−K7311)が90Aの熱可塑性無黄変ポリウレタンエラストマー(東ソー社製の商品名:ミラクトランXN−2002)」と「表面硬度(JIS−K7311)が45Aの熱可塑性ポリエステルエラストマー(三菱ケミカル社製、商品名:プリマロイA1400)」を質量比で30:70となるように混合して混合物(表3中、「NY−TPU(4)」と記す)を得た。この混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、厚み140μmの複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表3に示す。
(比較例7〜9)
表3に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表3に示す。なお、比較例7では、軟質樹脂材料として、BASF社製のエラストランC60D(ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンエラストマー)(表3中「TPU−2」と記す)を用いた。比較例8では、線径(直径)が50μmのビニロン製のマルチフィラメントによって織物シートを構成し、表3中、この織物シートを「Vinylon−17」と記す。
(比較例10,11)
表4に示す条件を満たすようにしたこと以外は、実施例1と同様にして複合シートを得た。得られた複合シートについて、上述した各種の試験を行った。試験結果を表4に示す。なお、比較例10は、織物シートの開口率が小さすぎ、NY−TPU(熱可塑性無黄変ポリウレタンエラストマー)が織物シートの開口部に侵入することが困難となるため、織物シートの開口部においてNY−TPUの連結構造が形成できない。そのために、PC樹脂シートとNY−TPUの加熱融着強度は、十分確保できているが、NY−TPUと織物シートとの間の加熱融着強度が小さく、融着強度が小さい。一方、比較例11は、織物シートの開口率が大きすぎるため、引裂強度に劣る。複合シートの引裂強度は、織物シートの強度、言い換えれば、織物シートの糸強度に依存するために、開口率が大となると、織物シートの一定面積内の糸密度が小さくなることから、引裂強度は小さくなる。
表1〜表4中、「Multi」は、糸種がマルチフィラメント(複数の繊維糸からなる1本の糸)であることを示し、「Mono」は、糸種がモノフィラメント(1本の糸)であることを示している。「本数(本)」は、マルチフィラメントについては、1本のマルチフィラメントを構成する繊維糸の本数を示している。「撚り数」は、マルチフィラメントにおける撚りの数を示している。「線径」は、マルチフィラメントについては1本のマルチフィラメントの径を示しており、繊維糸の径を示すものではない。「開口率」は、織物シートの開口率を示している。「厚み」は、織物シートの厚みを示しており、複合シーの厚みは、「複合シート 厚み」の欄に示している。また、「加熱収縮率(%)横」の欄は、加熱冷却処理前後における複合シート(シート試験片D)の横方向(緯糸が延びる方向)の寸法の収縮率を示す。「加熱収縮率(%)縦」の欄は、加熱冷却処理前後における複合シート(シート試験片D)の縦方向(縦糸が延びる方向)の寸法の収縮率を示す。
Figure 2020079370
Figure 2020079370
Figure 2020079370
(結果)
表1〜表3に示すように、実施例1〜7の複合シートは、比較例1〜11の複合シートに比べて、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制されることが分かる。更に、コスメティック性に優れることを確認した。
上述したように、実施例1〜7の複合シートは、柔軟性、耐光性、引裂耐性、及び、融着強度に優れ、加熱加圧操作時においてもシワの発生が抑制されることが確認できた。このようなことから、本発明の複合シートは、例えばパスポート用のヒンジシートなどとして用いることができる。
本発明の複合シートは、パスポート用のヒンジシートなどとして利用することができる。
11:織物シート、11a:経糸、11b:緯糸、12:熱可塑性エラストマー、15:交点部、21:水平台、22:ガラス板、31:白色ポリカーボネート樹脂シート(ポリカーボネートシート(白))、32:黒マジックインク部分、35:ポリイミドフィルム、36:SUS板、40:ピール試験用試験片、50:7層積層体、100:複合シート、150:積層体、A:シート試験片、B:シート試験片、d:垂れの長さ。

Claims (3)

  1. 経糸と緯糸を有し開口部が形成された織物シートと、柔軟性と耐光性に優れた熱可塑性エラストマーと、からなる複合シートであり、
    前記織物シートは、前記緯糸が、以下の(1)または(2)を満たすビニロン製のマルチフィラメントを有する開口率が20〜75%の織物シートであり、
    前記織物シートの前記ビニロン製のマルチフィラメントは、直径が60〜900μmであり、
    前記熱可塑性エラストマーは、無黄変または難黄変タイプの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、
    前記熱可塑性エラストマーは、表面硬度がJIS−Aで60以上であり、且つ、キセノンアーク試験による試験時間400時間後の黄色度の差(△YI)が5以下であり、
    前記熱可塑性エラストマーが前記織物シートの前記開口部に侵入して前記織物シートの前記開口部を閉塞させている複合シート。
    (1)前記織物シートの前記緯糸は、全てビニロン製のマルチフィラメントからなる。
    (2)前記織物シートの前記緯糸は、ビニロン製のマルチフィラメントとビニロン製のモノフィラメントとからなり、且つ前記ビニロン製のマルチフィラメントと前記ビニロン製のモノフィラメントとの比の値が60/40以上である。
  2. 前記熱可塑性エラストマーは、表面硬度がJIS−Aで60〜97である、請求項1に記載の複合シート。
  3. 前記織物シートは、180℃で30分の加熱による加熱収縮率が、3%以下である、請求項1または2に記載の複合シート。
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