JP2020079238A - 3−アルケニルセフェム化合物の晶析率を制御した晶析方法 - Google Patents

3−アルケニルセフェム化合物の晶析率を制御した晶析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な結晶粒を提供する。【解決手段】等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物を準安定領域で晶析させる工程を含んで、等電点と酸解離定数を有する化合物の結晶粒を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な結晶粒などに関する。
セフェム系化合物(例えば、下記式の化合物)は、セファロスポリン系抗生物質の製造中間体として有用である。
特許文献1には、上記式の化合物のアルカリ金属塩の水溶液を、ハイポーラスポリマーや活性炭で処理することによって、Z体の純度が高い当該化合物が得られることが開示されている。また、特許文献1には、このようにして得られた上記式の化合物の水溶液に酸を加えることによって、上記式の化合物を晶析させることが開示されている。
特開2005−343854号公報
本発明の目的は、新規な結晶粒を提供することにある。
本発明の他の目的は、結晶粒の新規な製造方法を提供することにある。
本発明者は、特許文献1の実施例に記載の方法を用いてセフェム系化合物の晶析を行ったところ、理由は定かではないが、得られる粒子の凝集が激しく、濾過に時間を要し、効率良く結晶を得られない場合があることを見出した。
本発明者は、この問題を解決すべく、セフェム系化合物の晶析を準安定領域で行うことに着想したが、上手く晶析を行うことができなかった。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物の酸解離指数(pKa)に着目した。そして、本発明者は、当該化合物の溶液を、酸解離指数(pKa)を考慮した準安定領域外のpHとした後、準安定領域で晶析させることによって、効率良く晶析を行えることなどを見出した。
また、本発明者は、このような晶析方法により、新規な結晶粒が得られることなどを見出し、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の発明などに関する。
[1]
平均粒径d50が30μm以上である、式(1)で示す化合物の結晶粒。

(式中、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又はアルコキシ基を示す。)
[2]
一次粒子の平均粒径が0.5μm以下である[1]に記載の結晶粒。
[3]
一次粒子の個数が1×10個以上である[1]又は[2]に記載の結晶粒。
[4]
等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物を準安定領域で晶析させる工程を含む、等電点と酸解離定数を有する化合物の結晶粒の製造方法。
[5]
準安定領域での晶析率が50%以上である[4]に記載の製造方法。
[6]
準安定領域外で等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物の溶液を調製する工程を含む、[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]
種晶を添加して晶析を行う[4]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
さらに、等電点±1のpHで晶析させる工程を含む[4]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]
等電点と酸解離定数を有する化合物が、セフェム系化合物である[4]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
等電点と酸解離定数を有する化合物が、式(1)で示す化合物である[4]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、新規な結晶粒を提供できる。
このような結晶粒は、平均粒径が大きいため、濾過の効率が良い。
また、本発明の結晶粒は、一次粒子の平均粒径が小さく、一次粒子の個数が多い。このように、本発明の結晶粒は、一次粒子の平均粒径が小さいため、一次粒子の凝集力が大きく、一次粒子の凝集体である二次粒子が崩壊しにくい。
また、本発明の結晶粒は、嵩密度が大きいため、圧縮率が低く、紛体内部の空隙が減少するため、製品充填量を多くすることができる。
また、本発明の結晶粒は、結晶純度が高いため、品質に優れる。
また、本発明では、等電点と酸解離定数を有する化合物の結晶粒の、新規な製造方法を提供することができる。このような方法では、上記のような結晶粒を、効率良く得ることができる。
実施例において、式(2)の化合物のHPLCの分析を行い、pKaを調査した結果である。 式(2)の化合物の溶解度曲線及び過溶解度曲線と、実施例1及び比較例1の晶析工程における挙動を示す。 実施例において、式(4)の化合物のHPLCの分析を行い、pKaを調査した結果である。 式(4)の化合物の溶解度曲線及び過溶解度曲線と、実施例4の晶析工程における挙動を示す。
[等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物の結晶粒]
等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物(以下、「化合物A」ということがある)の結晶粒(結晶、結晶粒子)としては、例えば、式(1)の化合物の結晶が挙げられる。式(1)の化合物の結晶粒は、通常、後述する平均粒径を有する。
(式中、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又はアルコキシ基を示す。)
において、置換基としては、例えば、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、(式)―R―XRで表される基(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、Rは、アルキレン基を示し、Rは、アルキル基、アシル基、カルバモイル基又は複素環基を示す。)などが挙げられる。
なお、R〜R及び後述のR〜R10における各置換基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基など)は、置換可能な位置に、任意の数の置換基を有していてもよい。
該置換基としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子(例えば、後述するハロゲン原子)、水酸基、アミノ基、アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、後述するヒドロキシアルキル基)、アリール基(例えば、後述するアリール基)、複素環基(例えば、後述する複素環基)などが挙げられる。
において、炭化水素基としては、例えば、脂肪族基{飽和脂肪族基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1−10アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、特に好ましくはC1−4アルキル基)]、不飽和脂肪族基[例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC2−10アルケニル基、好ましくはC2−8アルケニル基、より好ましくはC2−6アルケニル基、特に好ましくはC2−4アルケニル基)などの少なくとも一つの二重結合を有する脂肪族基]など}、脂環族基[例えば、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3−12シクロアルキル基、好ましくはC3−7シクロアルキル基)]、芳香族基{例えば、アリール基(例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基などのC6−20アリール基)}などが挙げられる。
これらの中でも、脂肪族基が好ましく、中でもC2−4アルケニル基などの不飽和脂肪族基が特に好ましい。
これらの炭化水素基は、さらに置換基[例えば、上記した炭化水素基、複素環基、スルファニル基、カルバモイル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などの後述するアルコキシ基)]を有していてもよい。
複素環基としては、例えば、ピリジン環含有基[例えば、ピリジル基(例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基)、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン−1−イル基など]、ピラジン環含有基[例えば、ピラジニル基(例えば、2−ピラジニル基)など]、ピリミジン環含有基[例えば、ピリミジル基(例えば、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基)など]、ピリダジン環含有基[例えば、ピリダジル基(例えば、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基)、イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−1−イル基など]、トリアジン環含有基{例えば、トリアジニル基[例えば、4−(1,2,3−トリアジニル)基、5−(1,2,3−トリアジニル)基、2−(1,3,5−トリアジニル)基、3−(1,2,4−トリアジニル)基、5−(1,2,4−トリアジニル)基、6−(1,2,4−トリアジニル)基]など}、キノリン環含有基[例えば、キノリル基(例えば、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基)など]、イソキノリン環含有基[例えば、イソキノリル基(例えば、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基)など]、キノキサリン環含有基[例えば、キノキサリル基(例えば、2−キノキサリル基、3−キノキサリル基、5−キノキサリル基、6−キノキサリル基、7−キノキサリル基、8−キノキサリル基)など]、シンノリン環含有基[例えば、シンノリル基(例えば、3−シンノリル基、4−シンノリル基、5−シンノリル基、6−シンノリル基、7−シンノリル基、8−シンノリル基)など]、キナゾリン環含有基[例えば、キナゾリル基(例えば、2−キナゾリル基、4−キナゾリル基、5−キナゾリル基、6−キナゾリル基、7−キナゾリル基、8−キナゾリル基)など]、フタラジン環含有基[例えば、フタラジル基(例えば、1−フタラジル基、4−フタラジル基、5−フタラジル基、6−フタラジル基、7−フタラジル基、8−フタラジル基)など]、テトラヒドロキノン環含有基[例えば、テトラヒドロキノリル基(例えば、1−テトラヒドロキノリル基、2−テトラヒドロキノリル基、3−テトラヒドロキノリル基、4−テトラヒドロキノリル基、5−テトラヒドロキノリル基、6−テトラヒドロキノリル基、7−テトラヒドロキノリル基、8−テトラヒドロキノリル基)など]、ピロリン環含有基[例えば、ピロリル基(例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基)など]、フラン環含有基[例えば、フリル基(例えば、2−フリル基、3−フリル基)など]、チオフェン環含有基[例えば、チエニル基(例えば、2−チエニル基、3−チエニル基)など]、イミダゾリン環含有基[例えば、イミダゾリル基(例えば、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、5−イミダゾリル基)など]、ピラゾリン環含有基[例えば、ピラゾリル基(例えば、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、5−ピラゾリル基)など]、オキサゾリン環含有基[例えば、オキサゾリル基(例えば、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基)など]、チアゾール環含有基[例えば、チアゾリル基(例えば、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基)など]、イソオキサゾール環含有基[例えば、イソオキサゾリル基(例えば、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基)など]、イソチアゾール環含有基[例えば、イソチアゾリル基(例えば、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基)など]、チアジアゾール環含有基[例えば、チアジアゾリル基{例えば、4−(1,2,3−チアジアゾリル)基、5−(1,2,3−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、3−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,5−チアジアゾリル)基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基}など]、オキサジアゾール環含有基[例えば、オキサジアゾリル基{例えば、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基}など]、トリアゾール環含有基[例えば、トリアゾリル基{例えば、1−(1,2,3−トリアゾリル)基、4−(1,2,3−トリアゾリル)基、5−(1,2,3−トリアゾリル)基、1−(1,2,4−トリアゾリル)基、3−(1,2,4−トリアゾリル)基、5−(1,2,4−トリアゾリル)基}など]、テトラゾール環含有基[例えば、テトラゾリル基{例えば、1−テトラゾリル基、5−テトラゾリル基}など]、インドール環含有基[例えば、インドリル基(例えば、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基)など]、イソインドール環含有基[例えば、イソインドリル基(例えば、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基)など]、ベンゾイミダゾール環含有基[例えば、ベンゾイミダゾリル基(例えば、1−ベンゾイミダゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、4−ベンゾイミダゾリル基、5−ベンゾイミダゾリル基、6−ベンゾイミダゾリル基、7−ベンゾイミダゾリル基)など]、ベンゾフラン環含有基[例えば、ベンゾフラニル基(例えば、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基)など]、イソベンゾフラン環含有基[例えば、イソベンゾフラニル基(例えば、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフニル基)など]、ベンゾチオフェン環含有基[例えば、ベンゾチエニル基(例えば、2−ベンゾチエニル基、3−ベンゾチエニル基、4−ベンゾチエニル基、5−ベンゾチエニル基、6−ベンゾチエニル基、7−ベンゾチエニル基)など]、ベンゾオキサゾール環含有基[例えば、ベンゾオキサゾリル基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、4−ベンゾオキサゾリル基、5−ベンゾオキサゾリル基、6−ベンゾオキサゾリル基、7−ベンゾオキサゾリル基)など]、ベンゾチアゾール環含有基[例えば、ベンゾチアゾリル基(例えば、2−ベンゾチアゾリル基、4−ベンゾチアゾリル基、5−ベンゾチアゾリル基、6−ベンゾチアゾリル基、7−ベンゾチアゾリル基)など]、ジチエタン含有基(例えば、1,3−ジチアタン−2−イル基など)、インダゾール環含有基[例えば、インダゾリル基(例えば、1−インダゾリル基、3−インダゾリル基、4−インダゾリル基、5−インダゾリル基、6−インダゾリル基、7−インダゾリル基)など]、モルホリン環含有基[例えば、モルホリル基(例えば、2−モルホリル基、3−モルホリル基、4−モルホリル基)など]、ピペラジン環含有基[例えば、ピペラジル基(例えば、1−ピペラジル基、2−ピペラジル基)、2,3−ジオキソピペラジン−1−イル基など]、ピペリジン環含有基[例えば、ピペリジル基(例えば、1−ピペリジル基、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、4−ピペリジル基)など]、テトラヒドロピラン環含有基[例えば、テトラヒドロピラニル基(例えば、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基、4−テトラヒドロピラニル基)など]、テトラヒドロチオピラン環含有基[例えば、テトラヒドロチオピラニル基(例えば、2−テトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオピラニル基、4−テトラヒドロチオピラニル基)など]、ピロリジン環含有基[例えば、ピロリジル基(例えば、1−ピロリジル基、2−ピロリジル基、3−ピロリジル基)など]、フラン環含有基(例えば、フラニル基など)、テトラヒドロフラン環含有基[例えば、テトラヒドロフラニル基(例えば、2−テトラヒドロフラニル基、3−テトラヒドロフラニル基)など]、テトラヒドロチオフェン環含有基[例えば、テトラヒドロチエニル基(例えば、2−テトラヒドロチエニル基、3−テトラヒドロチエニル基)など]、及びこれらの塩などが挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、ピロリジル基、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン−1−イル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、これらの塩等を好ましく挙げることができる。
これら複素環基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルキル基、置換基を有することのあるアミノ基、カルバモイル基などが挙げられる。
複素環基は、このような置換基を一つ又は複数以上有していてもよい。
置換基を有する複素環基としては、例えば、4−カルバモイルピリジン−1−イウム−1−イル基、1−メチルピラゾリン−1−イウム−1−イル基、3−アミノ−4−(2−アミノエチルカルバモイルアミノ)−2−メチルピラゾールー1−イウム−1−イル基、などが挙げられる。
において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
において、アルコキシ基としては、例えば、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの直鎖状、分岐鎖状又は環状のC1−10アルキルオキシ基、好ましくはC1−8アルキルオキシ基、より好ましくはC1−6アルキルオキシ基、特に好ましくはC1−4アルキルオキシ基など)などが挙げられる。
(式)―R―XRで表される基のRにおいて、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、tert−ブチレン基、1−エチルプロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1−8アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基などが挙げられる。
(式)―R―XRで表される基のRにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1−8アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基などが挙げられる。
(式)―R―XRで表される基のRにおいて、アシル基としては、例えば、アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルカノイル基、好ましくはC1−6アルカノイル基、より好ましくはC1−4アルカノイル基)、アルケニルカルボニル基(例えば、アクリロイル基、メタクロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−8アルケニルカルボニル基、好ましくはC2−6アルケニルカルボニル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基などのC6−20アリールカルボニル基など)が挙げられる。
(式)―R―XRで表される基のRにおいて、複素環基としては、例えば、上記炭化水素基の置換基として例示される複素環基を挙げることができ、それらの中でもチアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基を好ましく挙げることができる。
これら複素環基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基などが挙げられる。
複素環基は、このような置換基を一つ又は複数以上有していてもよい。
置換基を有する複素環基としては、例えば、4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル基、5−(カルボキシメチル)−4−メチル−1,3−チアゾール−2−イル基、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル基、1−メチルテトラゾール−5−イル基、1−(スルホメチル)テトラゾール−5−イル基、1−(カルボキシメチル)テトラゾール−5−イル基、1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]テトラゾール−5−イル基、2−メチル−5,6−ジオキソ−1H−1,2,4−トリアジン−3−イル基、1−(2−ヒドロキシエチル)テトラゾリル基などが挙げられる。
において、置換基としては、例えば、前記例示のRにおけるアシル基{例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルカノイル基(例えば、C1−4アルカノイル基)、直鎖状又は分岐鎖状C2−8アルケニルカルボニル基(例えば、C2−6アルケニルカルボニル基)、アリールカルボニル基(例えば、C6−20アリールカルボニル基)などが挙げられる。
において、アシル基は、式(a)で表される基、式(b)で表される基又は式(c)で表される基であってもよい。
(式中、Rはアリール基又は複素環基を示し、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、アミノ基、スルホ基、カルボキシル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)
(式中、Rはアリール基又は複素環基を示し、Rは、アルキル基又はカルボキシアルキル基を示す。)
(式中、R10は、ハロアルキル基、シアノアルキル基、アミノ酸残基又は複素環基を示す。)
において、アリール基としては、例えば、C6−20アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、ジヒドロインデニル基、9H−フルオレニル基など)などが挙げられる。
において、複素環基としては、例えば、上記炭化水素基の置換基として例示される複素環基を挙げることができ、それらの中でもチエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピペラジニル基、ジチアタニル基を好ましく挙げることができる。
これら複素環基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、アルキル基、アミノ基、置換基を有することのあるアルキリデン基などが挙げられる。
複素環基は、このような置換基を一つ又は複数以上有していてもよい。
置換基を有する複素環基としては、例えば、2−アミノ−1,3−チアゾール−4−イル基、4−エチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル基、5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基、4−(2−アミノ−1−カルボキシ−2−オキソエチリデン)−1,3−チチエタン−2−イル基などが挙げられる。
及びRにおいて、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシC1−4アルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基など)などが挙げられる。
において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基などが挙げられる。
において、カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ−n−プロピル基、カルボキシイソプロピル基、カルボキシ−n−ブチル基、カルボキシ−イソブチル基、カルボキシ−s−ブチル基、カルボキシ−tert−ブチル基、カルボキシ−1−エチルプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状カルボキシC1−8アルキル基、好ましくはカルボキシC1−4アルキル基などが挙げられる。
10において、ハロアルキル基としては、例えば、モノ―ハロアルキル基(例えば、
フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヨードエチル基、1−フルオロイソプロピル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、4−フルオロブチル基、4−クロロブチル基などのモノ―ハロC1−8アルキル基)、ポリハロアルキル基(例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基などのジ乃至ペンタ―ハロC1−8アルキル基)などの直鎖状又は分岐鎖状ハロアルキル基(例えば、ハロC1−8アルキル基、好ましくはハロC1−4アルキル基など)などが挙げられる。
10において、シアノアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のシアノC1−4アルキル基(例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基など)などが挙げられる。
10において、アミノ酸残基としては、例えば、アラニル基、2−アミノ−2−カルボキシエチル基等を挙げることができる。
10において、複素環基としては、例えば、上記炭化水素基の置換基として例示される複素環基を挙げることができ、それらの中でもテトラゾリル基を好ましく挙げることができる。
において、アルコキシ基としては、前記例示のRにおけるアルコキシ基[例えば、直鎖状又は分岐鎖状のC1−10アルキルオキシ基(例えば、C1−4アルキルオキシ基)]などが挙げられる。
代表的な式(1)で表される化合物としては、例えば、式(1A)で示す化合物(式(1)においてRが複素環基を有するアルケニル基である化合物)などが挙げられる。
(式中、R11はアルケニレン基を示し、Yは水素原子、アルキル基又は複素環基を示し、Rは前記と同じ。)
11において、アルケニレン基としては、前記アルケニル基に対応する基[例えば、C2−10アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などのC2−8アルケニレン基、好ましくはC2−6アルケニレン基、より好ましくはC2−4アルケニレン基)など]などが挙げられる。
Yにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC1−10アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基などが挙げられる。
Yにおいて、複素環基としては、Rにおける前記炭化水素基の置換基として例示される複素環基(例えば、置換基を有していてもよいチアゾリル基、ピロリジウム基、テトラゾリル基、イミダゾピリダジニウム基、トリアジニル基)などが挙げられ、チアゾリル基、アルキルチアゾリル基(例えば、メチルチアゾリル基などのC1−4アルキルチアゾリル基など)などが好ましい。
具体的な式(1)で表される化合物としては、例えば、セファゾリン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファドロキシル、セファロリジン、セフテゾール、セファトリジン、セフロキサジン、セファマンドール、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セファクロル、セフプロジル、セポドキシム、ロラカルベフ、セフォチアム、セフトリアクソン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフタジヂム、セフォペラゾン、セフォサロジン、セフチブテン、セフィキシム、セフェタメト、セフジトレン、セフォジジム、セフカペン、セフポドキシム、セフェピム、セフピロム、セフォゾプラン、セフォキシチン、セフォテタン、セフメタゾール、セフブペラゾン、セフミノクス、セフェピム、ラタモキセフ、フロモキセフ、セフトロザンなどのセフェム系化合物などが挙げられる。
また、これらセフェム系化合物の製造中間体に相当するセフェム化合物も好適に挙げることができ、中でも、7−アミノ−3−[2−(4−メチルチアゾール−5−イル)ビニル]−3−セフェム−4−カルボン酸、7−フェニルアセトアミド−3−[2−(4−メチルチアゾール−5−イル)ビニル]−3−セフェム−4−カルボン酸を好ましく例示できる。
本発明の結晶粒の平均粒径は、個数換算法で積算値50%の粒子径(平均粒径d50)が、通常、30μm以上であり、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上である。
本発明の結晶粒の平均粒径d50の上限値は、特に限定されないが、例えば、210μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは190μm以下である。
本発明の結晶粒の平均粒径d50は、例えば、35μm〜210μm、45μm〜210μm、55μm〜210μmなどであってもよい。
なお、平均粒径d50の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって測定してもよい。
本発明の結晶粒の粒度分布の相関係数(CV)値は、例えば、40%以下であり、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
なお、CV値は、平均粒径d50の標準偏差÷平均粒径d50×100によって算出することができる。
本発明の結晶粒において、一次粒子の平均粒径は、例えば、0.5μm以下(例えば、0.01μm〜0.5μm)であり、好ましくは0.05μm〜0.5μm(例えば、0.05μm〜0.4μm、0.08μm〜0.5μm)である。
本発明の結晶粒において、一次粒子の個数は、例えば、1×10個以上(例えば、1×10個〜1×1011個、1×10個〜1×1010個)であり、2×10個〜1×1011個(例えば、2×10個〜1×1010個、3×10個〜1×1011個)が好ましい。
なお、一次粒子の平均粒径及び個数の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって測定してもよい。
本発明の結晶粒の嵩密度は、例えば、0.26g/cm以上(例えば、0.26〜0.6g/cm、0.26〜0.5g/cm、0.26〜0.4g/cm)であり、好ましくは0.28g/cm以上(例えば、0.28〜0.6g/cm、0.28〜0.5g/cm、0.28〜0.4g/cm)である。
なお、嵩密度の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって測定してもよい。
本発明の結晶粒の結晶純度は、例えば、98.9%以上、好ましくは98.95%以上である。
なお、結晶純度の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって測定してもよい。
本発明の結晶粒の圧縮率は、例えば、20%以下、好ましくは18%以下である。
なお、圧縮率の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって測定してもよい。
本発明の結晶粒は、例えば、後述する製造方法によって得ることができる。
(製造方法)
本発明は、等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物(化合物A)を準安定領域で晶析させる工程(以下、単に「晶析工程I」ということがある)を含む、等電点と酸解離定数を有する化合物の結晶粒の製造方法も含有する。
化合物Aとしては、等電点と酸解離定数を有するものであれば特に限定されないが、例えば、1以上のアミノ基と1以上のカルボキシ基を有する化合物などであってもよい。アミノ基及びカルボキシ基の数は、1以上であればよく、特に限定されないが、例えば、1〜5個(例えば、1〜3個など)であってよい。
化合物Aとしては、例えば、セフェム系化合物(例えば、セファロスポリン系化合物、オキサセフェム系化合物、セファマイシン系化合物、式(1)の化合物)、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、イソロイシン)、アルカロイド化合物(例えば、リゼルグ酸、シロシビン)が好ましい。
本発明の製造方法は、準安定領域外で化合物Aの溶液を調製する工程(以下、単に「溶液の調製工程」ということがある)を含んでいてもよい。
本発明では、少なくとも晶析工程Iを含んでいればよいが、溶液の調製工程も含むことが好ましい。
溶液の調製工程では、化合物Aの溶液のpHを、化合物AのpKa付近とすることが好ましい。
その際、化合物Aの溶液のpHは、|pH―pKa|が、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。化合物Aの溶液のpHは、pH≧pKaであってもよい。
なお、溶液のpHは、例えば、化合物Aの溶液に、酸又は塩基を加えることによって調整することができる。
化合物Aは、等電点を有するため、酸解離定数(Ka)を少なくとも2つ有する(すなわち、酸解離指数(pKa)を少なくとも2つ有する)が、溶液の調製工程における化合物Aの溶液のpHは、いずれのpKaを基準として設定してもよい。なお、化合物Aが、酸解離指数(pKa)を3つ有する場合、化合物Aの溶液のpHは、等電点により近いpKaを基準とすることが好ましい。
溶液の調製工程における化合物Aの溶液のpHは、pKa以上のpH、pKa以下のpHのいずれであってもよいが、化合物Aのイオン種((+)体、フリー体(±体)及び(−)体)のうち、少なくともフリー体が存在するpHであればよく、フリー体の存在率が最も高くなるpH(すなわち、全イオン種におけるフリー体の存在率が50%以上であるpH)であることが好ましい。
例えば、式(2)の化合物の場合、pHと各イオン種の存在率との関係(図1)から、(+)体とフリー体の酸解離指数pK(1.7)を基準とする場合、溶液の調製工程において、式(2)の化合物の溶液のpHは、1.7〜2.3が好ましく、1.7〜2.2がより好ましく、1.7〜2.0が特に好ましい。また、(−)体とフリー体の酸解離指数pK(6.6)を基準とする場合、式(2)の化合物の溶液のpHは、6.0〜6.6が好ましく、6.1〜6.6がより好ましく、6.3〜6.6が特に好ましい。
化合物Aの溶液において、溶媒としては、特に限定されず、化合物Aの種類に応じて適宜選択できるが、例えば、水、有機溶媒{例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)}などが挙げられ、水が好ましい。
溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
溶液中の化合物Aの濃度は、化合物Aの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、0.005〜0.060mol/Lであり、0.010〜0.050mol/Lが好ましい。
特に、化合物Aがセフェム系化合物である場合、溶液中の当該化合物の濃度は、例えば、0.005〜0.060mol/Lであり、0.010〜0.050mol/Lが好ましい。
本発明では、通常、晶析工程Iにおいて、化合物Aの準安定領域で晶析させる。
準安定領域とは、溶解度曲線と過溶解度曲線との間の領域のことである。
なお、溶解度曲線及び過溶解度曲線の作成方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法などによって作成してよい。
溶解度曲線は、例えば、横軸をpH、縦軸を化合物Aの溶質濃度(mol/L)として、pHと化合物Aの飽和溶解度との関係を複数点プロットし、指数関数でフィッティングすることによって作成してもよい。
飽和溶解度は、例えば、化合物Aの水溶液に酸(例えば、塩酸など)を添加し、酸性のpH(例えば、pH0.9〜4.5など)となる複数点{例えば、3〜10点(例えば、8点)など}において化合物Aのみを溶け残りが生じるまで添加することによって、調査してもよい。
また、過溶解度曲線は、例えば、横軸をpH、縦軸を化合物Aの溶質濃度(mol/L)として、pHと化合物Aの過溶解度との関係を複数点プロットし、指数関数でフィッティングすることによって作成してもよい。
pHと化合物Aの過溶解度との関係は、例えば、飽和溶解度を観測した複数点(例えば、8点)において、各pHのスラリーから化合物Aの溶け残りのみを濾別し、得られた濾液に塩基(例えば、苛性ソーダなど)を添加し、飽和溶解度において結晶が析出するpHを確認することによって、調査してもよい。
晶析の温度は、化合物Aの種類に応じて適宜選択できるが、例えば、0〜20℃、好ましくは0〜10℃であってよい。
特に化合物Aが、セフェム系化合物である場合、晶析の温度は、例えば、10℃以下(例えば、0〜10℃)、好ましくは5℃以下(例えば、0〜5℃)であってよい。
晶析は、化合物Aの種晶を添加して行うことが好ましい。
種晶は、予め別途調製したものであってよい。
また、種晶は、本発明の製造方法を用いて得られたもの、本発明以外の製造方法を用いて得られたもののいずれであってもよい。
種晶を添加するタイミングは、特に限定されず、晶析工程I及び溶液の調製工程のいずれであってもよい。
種晶の添加割合は、特に限定されないが、基質(化合物A)の10重量%以下(例えば、0.05〜10重量%、0.1〜8重量%、0.1〜5重量%)であることが好ましい。
晶析工程Iの晶析では、化合物Aの溶液を熟成させることが好ましい。
なお、熟成は、例えば、化合物Aの溶液に、他の成分を添加する操作を行わず、撹拌又は静置させる操作であってよい。
熟成時間は、化合物Aの種類などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、0.5時間以上、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜24時間である。
熟成は、1回又は複数回(例えば、2回以上、2〜10回など)行ってよい。
なお、熟成を複数回行う場合、各熟成の終了後、溶液の調製工程を経てから行ってもよい。
準安定領域での晶析率(すなわち、晶析工程Iでの晶析率)は、得られる結晶粒の平均粒径が大きくなるなどの観点から、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、55%以上(例えば、60%以上)が特に好ましい。
本発明では、例えば、溶液の調製工程において、化合物AのpKa付近のpHとし、準安定領域外の溶液を調製した後、晶析工程Iにおいて、準安定領域で晶析させることによって、化合物Aを製造することができる。
なお、晶析は、溶液の調製工程において開始されていてもよい。
さらに、本発明の製造方法は、等電点(平均電荷が±0)付近のpH(例えば、等電点±1、等電点±0.8、等電点±0.5などのpH)で晶析させる工程(以下、単に、「晶析工程II」ということがある)を含んでもよい。
晶析工程IIは、通常、上記した晶析工程Iに次いで行われることが好ましい。
等電点のpHへの調整は、酸又は塩基を添加することにより行ってもよい。
なお、晶析工程IIでの晶析は、準安定領域内外のいずれで行われてもよい。
晶析工程IIにおいて、晶析の温度は、特に限定されないが、例えば、晶析工程Iにおける晶析の温度と同一であってよい。
晶析工程IIでは、晶析工程Iで得られたスラリーを熟成させることが好ましい。
熟成時間は、化合物Aの種類などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、0.5時間以上、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜5時間である。
上記した製造方法によって得られた化合物Aは、一般的な固液分離操作(例えば、ろ過、遠心分離など)によって単離してもよい。
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(化合物Aの溶液の作製)
以下の実施例及び比較例では、化合物Aとして、式(2)で示す化合物を用いた。
式(2)で示す化合物のスラリーは、特開2005−343854号公報の実施例1の操作1及び操作2に従って調製し、上記操作2において活性炭を添加して撹拌後、活性炭を濾過して除いた後のスラリーを使用した。
(pKa調査)
式(2)の化合物は、酸解離定数が二点存在し、イオン種として、(+)体、フリー体((±)体)、(―)体の三種類存在する。塩酸又は炭酸ナトリウム水を添加することによりpH0.7−8.1に調整された試料溶液に、式(2)の化合物を添加し、溶けた溶質量をHPLCで測定することにより、各イオン種の存在比を調査した。結果を図1に示す。
図1から、(+)体とフリー体の酸解離指数pKはpH1.7であった。また、式(2)の化合物の等電点は、pH4.5であった。
HPLCの分析条件は、以下の通りである。
装置:Shimazu LC20AT
解析ソフト:LC−Solution
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム: Symmetry Shield RP8 5μm 4.6×250mm(Waters社製)
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:pH2.0 リン酸バッファー
流量:化合物の保持時間が約6分になるように調整
(平均粒径及びCV値の測定方法)
真空乾燥後に得られた結晶を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)により観察した。SEM測定で得られた500倍での画像を用い、解析ソフトDiditizerを使用し、100個の粒子の粒径から平均粒径d50、(相関係数)CV値を算出した。
(1次粒子の個数及び平均粒径の測定方法)
式(2)の化合物の1次粒子は、真空乾燥後に得られた結晶に超音波を与え、凝集状態を分散させることによって得た。詳細には、水200mL中に、得られた式(2)の化合物の結晶100mgを添加し、5分超音波処理後、Shimazuの湿式粒度分布計SALD−2100を用いて、レーザー回折法で1次粒子の個数及び平均粒径を測定した。
(嵩密度の測定方法)
5gの試料を圧密せずに乾いた25mLメスシリンダー(最小目盛単位:1mL)に静かに入れた。粉体層の上面を圧密せずに注意深くならし、メスシリンダーの目盛りVを最小目盛単位まで読み取った。5g/Vによって嵩密度(g/mL)を計算した。
(圧縮率の測定方法)
圧縮率は嵩密度V0とタップ密度Vを用いた式(3)によって算出した。
(式3) 圧縮率(%)=(1/V0-1/V)/(1/V0)×100
なお、タップ密度は、上記の嵩密度を測定した後の試料をメスシリンダー中で手動にて50回タップし得られた密度である。
(結晶純度の測定方法)
実験により得られた結晶25mgを1%重層水で50mLに希釈し、254nmに波長を設定したHPLC(Shimazu LC20AT、解析ソフト:LC−solution)で測定した。移動相に0.3%リン酸水素二アンモニウム水層液を使用し、式(2)の化合物が5分に検出されるように、流速を1分に設定した。
(溶解度曲線及び過溶解度曲線の作成方法)
特開2005−343854号公報の実施例1の操作2において調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530gに、塩酸を添加し、pH0.9〜4.5までの8点において式(2)の化合物のみを溶け残りが生じるまで添加した。
各pHの飽和溶解度は、式(2)の化合物の溶け残りを濾別し得られた濾液0.5mLを水で50mLに希釈し、254nmに波長を設定したHPLC(Shimazu LC20AT、解析ソフト:LC−solution)で測定することによって算出し、pH0.9〜4.5の8点の飽和溶解度データを取得した。
溶解度曲線は、縦軸に溶質濃度(mol/L)、横軸にpHを取りプロットし、指数関数でフィッティングして作成した。
過溶解度曲線は、飽和溶解度を観測した上記8点において、各pHのスラリーから式(2)の化合物の溶け残りのみを濾別し、得られた濾液に苛性ソーダを添加し、各pHの飽和溶解度から、苛性ソーダによりpHを上昇させた際に結晶化するポイントを(縦軸に溶質濃度(mol/L)、横軸にpHを取り)プロットし、指数関数でフィッティングすることにより作成した。
(実施例1)
上記のようにして得られた式(2)の化合物のスラリーに塩酸を加え調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530g(式(2)の化合物濃度:0.034mol/L、pH:0.8)を5℃以下に冷却し、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを1.7に調整し、式(2)の化合物の種晶を水溶液中の式(2)の化合物量に対して1.0wt%添加して準安定領域で12時間熟成後、スラリーを得た。その後、25%苛性ソーダ水溶液を滴下して、上記のようにして見積もった準安定領域から外れないように調整しながら1.5時間熟成させる工程を、8回繰り返した。この晶析工程Iでは、晶析率が68%であった。
その後、25%苛性ソーダ水溶液を用い、速やかにpH4.5に調整した後、準安定領域外で1時間熟成した。
析出した結晶を常圧で濾過し、水及びアセトンで洗浄してウェット結晶を得た。
真空乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
(実施例2)
上記のようにして得られた式(2)の化合物のスラリーに塩酸を加え調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530g(式(2)の化合物濃度:0.034mol/L、pH:0.8)を5℃以下に冷却し、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを1.7に調整し、式(2)の化合物の種晶を水溶液中の式(2)の化合物量に対して1.0wt%添加して準安定領域で4時間熟成後、スラリーを得た。その後、25%苛性ソーダ水溶液を滴下して、上記のようにして見積もった準安定領域から外れないように調整しながら1時間熟成させる工程を、4回繰り返した。この晶析工程Iでは、晶析率が60%であった。
その後、25%苛性ソーダ水溶液を用い、速やかにpH4.5に調整した後、準安定領域外で1時間熟成した。
析出した結晶を常圧で濾過し、水及びアセトンで洗浄してウェット結晶を得た。
真空乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
(実施例3)
上記のようにして得られた式(2)の化合物のスラリーに塩酸を加え調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530g(式(2)の化合物濃度:0.034mol/L、pH:0.8)を5℃以下に冷却し、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpHを1.7に調整し、式(2)の化合物の種晶を水溶液中の式(2)の化合物量に対して1.0wt%添加して準安定領域で20時間熟成後、スラリーを得た。その後、25%苛性ソーダ水溶液を滴下して、上記のようにして見積もった準安定領域から外れないように調整しながら20時間熟成させる工程を、1回行った。この晶析工程Iでは、晶析率が60%であった。
その後、25%苛性ソーダ水溶液を用い、速やかにpH4.5に調整した後、準安定領域外で1時間熟成した。
析出した結晶を常圧で濾過し、水及びアセトンで洗浄しウェット結晶を得た。
真空乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
(比較例1)
上記のようにして得られた式(2)の化合物のスラリーに塩酸を加え調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530g(式(2)の化合物濃度:0.034mol/L、pH:0.8)を5℃以下に冷却し、その後、25%苛性ソーダ水溶液を滴下すると、準安定領域外であるpH2付近で一気に晶析した。
その後、pH4.5となるまで連続して25%苛性ソーダ水溶液を滴下した後、準安定領域外で1時間熟成した。
析出した結晶を、No.2の定性濾紙を使用して常圧で濾過し、水及びアセトンでウェット結晶を洗浄して乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
(参考例1)
上記のようにして得られた式(2)の化合物のスラリーに塩酸を加え調製した式(2)の化合物の酸性水溶液530g(式(2)の化合物濃度:0.034mol/L、pH:0.8)を5℃以下に冷却し、25%苛性ソーダ水溶液を滴下してpH1.5に調整した後、式(2)の化合物の種晶を水溶液中の式(2)の化合物量に対して1.0wt%添加し、12時間熟成したが、全く晶析しなかった。
その後、25%苛性ソーダ水溶液を滴下すると、準安定領域外であるpH2付近で一気に晶析した。
その後、pH4.5となるまで連続して25%苛性ソーダ水溶液を滴下した後、準安定領域外で1時間熟成した。
析出した結晶を常圧で濾過し、水及びアセトンで洗浄しウェット結晶を得た。真空乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
以下の実施例4では、化合物Aとして、式(4)で示す化合物を用いた。
なお、実施例4において、各種物性の測定方法は、上記した式(2)の化合物と同様に行った。
式(4)で示す化合物は、特開2000−26470号公報の実施例21において、化合物(1e)におけるR(=CHCl)をCHCHに変更した以外は当該実施例21に従って作製した。
(式(4)の化合物の溶解度曲線及び過溶解度曲線の作成方法)
式(4)の化合物の塩基性水溶液145gに、塩酸を添加し、pH1.9〜9.4までの5点において式(4)の化合物のみを溶け残りが生じるまで添加した。
各pHの飽和溶解度は、式(4)の化合物の溶け残りを濾別し得られた濾液0.5mLを水で50mLに希釈し、254nmに波長を設定したHPLC(Shimazu LC20AT、解析ソフト:LC−solution)で測定することによって算出し、pH1.9〜9.4の5点の飽和溶解度データを取得した。
溶解度曲線は、縦軸に溶質濃度(mol/L)、横軸にpHを取りプロットし、指数関数でフィッティングして作成した。
過溶解度曲線は、飽和溶解度を観測した上記3点(pH7.1、8.5、9.4)において、各pHのスラリーから式(4)の化合物の溶け残りのみを濾別し、得られた濾液に苛性ソーダを添加し、各pHの飽和溶解度から、苛性ソーダによりpHを上昇させた際に結晶化するポイントを(縦軸に溶質濃度(mol/L)、横軸にpHを取り)プロットし、指数関数でフィッティングすることにより作成した。
(実施例4)
式(4)の化合物に炭酸水を加え調製した式(4)の化合物の塩基性水溶液145g(式(4)の化合物濃度:0.016mol/L、pH:7.6)を5℃以下に冷却し、4N塩酸水溶液を滴下してpHを7.0に調整し、式(4)の化合物の種晶を水溶液中の式(4)の化合物量に対して1.0wt%添加して準安定領域で1時間熟成後、スラリーを得た。その後、4N苛性ソーダ水溶液を滴下して、図4のようにして見積もった準安定領域から外れないように調整しながら2時間熟成させる工程を、4回繰り返した。この晶析工程Iでは、晶析率が50%であった。
その後、25%苛性ソーダ水溶液を用い、速やかに等電点であるpH4.1に調整した後、準安定領域外で30分熟成した。
析出した結晶を、No.2の定性濾紙を使用して常圧で濾過し、水及びアセトンで洗浄してウェット結晶を得た。
真空乾燥後、SEM画像解析と湿式の粒度分布測定を行った。
実施例1〜4、比較例1及び参考例1の結果を、表1に示す。
表1が示すように、実施例1〜3では、準安定領域で晶析させることによって、比較例1及び参考例1と比べて、平均粒径の大きな結晶が得られた。また、結晶の平均粒径が大きいことによって、濾過時間が短くなり、効率よく濾過を行うことができた。
また、実施例1〜3では、比較例1及び参考例1と比べて、一次粒子径が小さく、一次粒子の個数が多い結晶が得られた。
また、実施例1〜3では、比較例1及び参考例1と比べて、嵩密度が大きい結晶が得られた。
また、実施例1〜3では、比較例1及び参考例1と比べて、圧縮率が高い結晶が得られた。
さらに、実施例1〜3では、比較例1及び参考例1と比べて、結晶純度が高い結晶が得られた。
一方、比較例1及び参考例1では、従来法と同様に、晶析が準安定領域外で行われたため、得られた結晶の平均粒径が小さかった。また、結晶の平均粒径が小さいことによって、濾過時間が長くなった。
このように、本発明によって得られる結晶粒は、従来法で得られる結晶と比較して、平均粒径が大きいため濾過時間が短いことや、圧縮率が高いため製品充填量を多くできることなどから、本発明は有用である。
本発明の結晶粒は、平均粒径が大きいため、濾過の効率が良く、工業的に極めて有用である。

Claims (10)

  1. 平均粒径d50が30μm以上である、式(1)で示す化合物の結晶粒。
    (式中、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又は置換基を示し、Rは、水素原子又はアルコキシ基を示す。)
  2. 一次粒子の平均粒径が0.5μm以下である請求項1に記載の結晶粒。
  3. 一次粒子の個数が1×10個以上である請求項1又は2に記載の結晶粒。
  4. 等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物を準安定領域で晶析させる工程を含む、等電点と酸解離定数を有する化合物の結晶粒の製造方法。
  5. 準安定領域での晶析率が50%以上である請求項4に記載の製造方法。
  6. 準安定領域外で等電点と酸解離定数(Ka)を有する化合物の溶液を調製する工程を含む、請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 種晶を添加して晶析を行う請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. さらに、等電点±1のpHで晶析させる工程を含む請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 等電点と酸解離定数を有する化合物が、セフェム系化合物である請求項4〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 等電点と酸解離定数を有する化合物が、式(1)で示す化合物である請求項4〜9のいずれかに記載の製造方法。
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