JP2020077288A - 制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 制御対象モデルの出力の将来予測値を算出し、制御対象から出力される制御出力が所定の制約条件を満たすように、将来予測値を用いて、現在の制御入力を適切に算出し、制約条件の満たす範囲内で制御性能を可能な限り高める。【解決手段】 制御対象の過渡状態において通常制御モードを適用した場合において、制御対象モデルの特性を示すモデルパラメータの不確かさを考慮した制御出力の将来予測値である出力ベクトルy(k0+j)の集合である可到達集合Rysetを算出し、その予測値集合Rysetに含まれる出力ベクトルy(k0+j)の少なくとも一つが制約条件を満たさなくなる制約抵触時期(k0+jSR)を決定し、その制約抵触時期(k0+jSR)に応じて第1制御モード切換時期を決定し、第1制御モード切換時期において、制御モードを通常制御モードから制約充足制御モードへ切り換える。【選択図】 図6
Description
本発明は、制御対象をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、制御対象に入力する制御入力を算出する制御装置に関する。
特許文献1には、過給機を備える内燃機関を制御対象とする制御装置が示されている。この制御装置によれば、車両減速時に過給機のコンプレッサがサージング状態になるか否かが判定され、サージング状態になると判定されたときは、過給機のタービンを駆動する排気の流量(以下「タービン駆動排気流量」という)を可変するノズルベーンの開度を、サージ回避用目標開度以上となるように制御することにより、サージング状態が回避される。
特許文献1に示された制御装置では、車両減速時において機関回転数及び過給圧が何れも判定閾値以上であるときにサージング状態になる可能性があると判定され、タービン駆動排気流量を可変するノズルベーンの開度を、サージ回避用目標開度以上に設定することで、サージング状態が回避される。
しかし、ターボチャージャを構成するコンプレッサ、タービンなどの動作特性(例えばターボチャージャの効率など)は、これらを量産する場合には、設計上の中心値(ノミナル値)からある程度の幅でずれるため、サージング状態になる可能性を判定する場合には、それらの特性ずれを考慮してより安全側の判定を行う必要がある。そのため、ノズルベーン開度(タービンのノズルベーンに代えて、ウエストゲート弁を使用する場合にはウエストゲート弁の開度)を変更する過渡制御においては、開度変更後の制御性能、あるいは制御応答性をある程度犠牲にして、サージング状態を回避するための安全側の制御を行うことになる。安全側の制御とは、例えば開度変更後の目標開度をより安全側の開度に設定した制御、あるいは開度の変更速度を低下させた制御などが相当する。
制約条件の下で過渡制御性能と高めるための制御手法としては、制御対象をモデル化した制御対象モデルを用いて制御出力の将来予測値を算出し、将来予測値に基づいて制御性能への影響を最小限に抑制しつつ制約条件を確実に満たすような現在の制御入力を算出する手法(例えばモデル予測制御)が公知であるが、制御出力の予測値を変動させるモデルパラメータのばらつきの影響まで適切に考慮し、例えばサージング状態を回避するという制約条件を満たす範囲内で制御性能を最大限に高めるような制御手法は未だ提案されていない。
なお、制御対象を構成する多数の構成部材の特性ばらつきを考慮して制約条件を満たすように制御を行うことは、予め実験あるいはシミュレーションによって各構成部材の特性ばらつきを考慮した制御系の設計を行うことによってもある程度の性能を確保できるが、種々の組み合わせに対応した実験等が必要となり設計工数が膨大なものなる課題、あるいは制御実行中における動的な対応が困難であるという課題がある。
本発明はこの点に着目してなされたものであり、制御対象モデルの出力の将来予測値を算出し、制御対象から出力される制御出力が所定の制約条件を満たすように、将来予測値を用いて、現在の制御入力を適切に算出し、制約条件の満たす範囲内で制御性能を可能な限り高めることができる制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、制御対象をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、該制御対象モデルの出力(y)の将来予測値(y(k0+j))を算出し、前記制御対象から出力される制御出力(y)が所定の制約条件を満たすように、前記将来予測値を用いて、前記制御対象に入力する制御入力(uwg)を算出する制御装置において、前記モデル化対象は非線形な伝達特性を有し、前記制御入力(uwg)の通常制御値を算出する通常制御モードと、前記通常制御値より前記制約条件を満たす可能性が高い制約充足制御値を算出する制約充足制御モードとによって前記制御入力(uwg)を算出することが可能であり、前記制御対象の過渡状態において前記通常制御モードを適用した場合において、前記制御対象モデルの特性を示すモデルパラメータ(θ)の不確かさ(Δθ)を考慮した前記将来予測値(y(k0+j))の集合である予測値集合(Ryset)を算出する予測値集合算出手段と、前記予測値集合(Ryset)に含まれる将来予測値(yset)の少なくとも一つが前記制約条件を満たさなくなるタイミングである制約抵触時期(k0+jSR)を決定する制約抵触時期決定手段と、前記制約抵触時期(k0+jSR)に応じて第1制御モード切換時期を決定し、該第1制御モード切換時期において、前記通常制御モードから前記制約充足制御モードへ切り換える制御モード切換手段とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、制御対象の過渡状態において通常制御モードを適用した場合において、制御対象モデルの特性を示すモデルパラメータの不確かさを考慮した将来予測値の集合である予測値集合が算出され、その予測値集合に含まれる将来予測値の少なくとも一つが制約条件を満たさなくなるタイミングである制約抵触時期が決定され、この制約抵触時期に応じて第1制御モード切換時期が決定され、第1制御モード切換時期において、制御モードが通常制御モードから制約充足制御モードへ切り換えられる。制御対象を構成する要素の特性ばらつきに起因してモデルパラメータは不確かさを有する(とりうるモデルパラメータ値が変動する)ため、将来予測値は設計上狙った中心値であるノミナル値からずれる。しかも将来予測値を変動させる主因となる要素が複数ある場合には、それらの複数の要素の特性ずれ態様の組み合わせに対応して、同じ時刻における将来予測値は多数の値を含む予測値集合を形成する。したがって、算出された予測値集合に含まれる将来予測値の一つでも制約条件を満たさなくなる制約抵触時刻に応じて決定される第1制御モード切換時期に、通常制御モードを制約充足制御モードへ切り換えることで、初めから安全側の制御モードである制約充足制御モードを適用する場合に比べて制御性能の低下を抑制し、かつ制約条件を確実に満たすことが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記制約抵触時期(jSR)より後において、前記予測値集合に含まれる将来予測値(yset)の全てが前記制約条件を満たすタイミングである制約充足時期(k0+jNS)を決定する制約充足時期決定手段を備え、前記制御モード切換手段は、前記制約充足時期(k0+jNS)に応じて第2制御モード切換時期を決定し、該第2制御モード切換時期において、前記制約充足制御モードから前記通常制御モードへ切り換えることを特徴とする。
この構成によれば、制約抵触時期より後において、予測値集合に含まれる将来予測値の全てが制約条件を満たすタイミングである制約充足時期が決定され、制約充足時期に応じて第2制御モード切換時期が決定され、該第2制御モード切換時期において、制約充足制御モードから通常制御モードへ切り換えが行われる。制御性能を高めるためには、できるだけ通常制御モードを適用することが有効であることから、予測値集合に含まれる将来予測値の全てが制約条件を満たすタイミングである制約充足時期に応じた第2制御モード切換時期において、通常制御モードに復帰させることにより、制約条件を確実に満たす範囲内で制御性能を最大限に高めることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の制御装置において、前記制御入力の指令値の変化時点から前記制御入力が実際に変化する時点までの制御遅れ時間(jD)が存在する場合には、前記制御モード切換手段は、前記制御遅れ時間(jD)分だけ前記制約抵触時期(k0+jSR)より早い時期(k0+jSR-jD)を前記第1制御モード切換時期と決定し、前記制御遅れ時間(jD)分だけ前記制約充足時期(k0+jNS)より早い時期(k0+jNS-jD)を前記第2制御モード切換時期と決定することを特徴とする。
この構成によれば、制御入力の指令値の変化に対応して制御入力が実際に変化する時点までの制御遅れ時間分だけ制約抵触時期より早い時期が第1制御モード切換時期と決定され、制御遅れ時間分だけ制約充足時期より早い時期が第2制御モード切換時期と決定されるので、制御遅れ時間が比較的大きな制御対象の制御において、適切な制御モード切換を行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の制御装置において、前記予測値集合算出手段は、前記将来予測値を変動させる要因となる変動要因パラメータ(ηtc,Tb)と、該変動要因パラメータを含む前記制御対象モデルを定義する数式(式(21),(22))とを用いて、前記変動要因パラメータ(ηtc,Tb)が所定変動幅で変動した場合における前記予測値集合(Ryset)を算出することを特徴とする。
この構成によれば、将来予測値を変動させる要因となる変動要因パラメータと、該変動要因パラメータを含む制御対象モデルを定義する数式とを用いて、変動要因パラメータが所定変動幅で変動した場合における予測値集合が算出されるので、制約条件を満たす上で影響度合が大きいと想定されるモデルパラメータを変動要因パラメータとすることによって、制約条件を確実に満たすことができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)の構成を模式的に示す図であり、エンジン1は、4つの気筒6を有し、気筒6の燃焼室内に燃料を直接噴射する直噴エンジンであり、各気筒6にはインジェクタ7、点火プラグ8、及び吸気弁及び排気弁(図示せず)が設けられている。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)の構成を模式的に示す図であり、エンジン1は、4つの気筒6を有し、気筒6の燃焼室内に燃料を直接噴射する直噴エンジンであり、各気筒6にはインジェクタ7、点火プラグ8、及び吸気弁及び排気弁(図示せず)が設けられている。
エンジン1は、吸気通路2、排気通路10、及びターボチャージャ(過給機)12を備えている。吸気通路2は、サージタンク4に接続され、サージタンク4は吸気マニホールド5を介して各気筒6の燃焼室に接続されている。吸気通路2には、加圧された空気を冷却するためのインタークーラ3及びスロットル弁13が設けられ、スロットル弁13は、スロットルアクチュエータ13aによって駆動可能に構成されている。サージタンク4には、加圧された吸入空気圧を過給圧Pbとして検出する過給圧センサ21、及び加圧された吸入空気の温度(加圧吸気温)Tbを検出する加圧吸気温度センサ22が設けられている。
ターボチャージャ12は、排気通路9に設けられ、排気の運動エネルギにより回転駆動されるタービン121と、シャフト122を介してタービン121に連結されたコンプレッサ123とを備えている。コンプレッサ123は、吸気通路2に設けられ、エンジン1に吸入される空気の加圧(圧縮)を行う。吸気通路2の、コンプレッサ123の上流側には、コンプレッサ通過空気流量mdotCに相当する吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ23が設けられている。
エンジン1の各気筒6の燃焼室は排気マニホールド9を介して排気通路10に接続されている。排気通路10には、タービン121をバイパスするバイパス通路11が接続されており、バイパス通路11には、バイパス通路11を通過する排気の流量(換言すれば、タービン121を駆動する排気の流量)を調整する流量調整弁であるウエストゲート弁(以下「WG弁」という)14が設けられている。また、図示を省略しているが、エンジン1は排気を吸気通路2に還流する周知の排気還流機構を備えている。
図2は、エンジン1の制御を行う制御系の構成を示すブロック図であり、電子制御ユニット(以下「ECU」という)40には、上述した過給圧センサ21、加圧吸気温度センサ22、吸入空気流量センサ23の他、スロットル弁13の開度THを検出するスロットル弁開度センサ24、エンジン1の回転数NEを検出するエンジン回転数センサ25、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ26、WG弁14の開度WGOを検出する弁開度センサ27(図3にも示す)、大気圧Paを検出する大気圧センサ28、大気温度Taを検出する大気温度センサ、及び図示しない他のセンサが接続されており、これらのセンサの検出信号がECU40に供給される。ECU40の出力側には、インジェクタ7、点火プラグ8、スロットルアクチュエータ13a、及びWG弁14が接続されている。
ECU40は、エンジン運転状態(主としてエンジン回転数NE及び目標トルクTRQD)に応じて、インジェクタ7による燃料噴射制御、点火プラグ8による点火制御、WG弁14によるタービン駆動制御、及びスロットル弁13による吸入空気量制御を行う。目標トルクTRQDは、主としてアクセルペダル操作量APに応じて算出され、アクセルペダル操作量APが増加するほど増加するように算出される。
インジェクタ7による燃料噴射量(質量)GINJは、気筒吸入空気量GAIRCYLに応じて算出される基本燃料量GINJBを、目標当量比KCMD及び空燃比センサ(図示せず)により検出される空燃比AFに応じた空燃比補正係数KAFを用いて補正することによって制御される。空燃比補正係数KAFは、検出される空燃比AFが目標空燃比AFCMDと一致するように算出される。なお、燃料噴射量GINJは公知の手法を用いて、燃圧PF及び燃料の密度などに応じてインジェクタ7の開弁時間TOUTに変換され、1サイクル当たりに燃焼室内の供給する燃料量が燃料噴射量GINJとなるように制御される。また、WG弁14の開度は、検出される過給圧Pbが目標過給圧PbCMDと一致するように制御される。
図3は、WG弁14の弁体47を駆動する駆動機構を模式的に示す図であり、モータ41、ロッド42、遮熱部材43、及びリンク機構44によって弁体47が開閉駆動される。図3(b)は、図3(a)の矢印Aの方向からみた図である。リンク機構44は弁体47が固定された保持部材46が回転軸45を中心として回動可能に構成されている。
図3(a)は、WG弁14が全閉である状態、すなわちバイパス通路11を閉塞している状態に対応する。モータ41が回転駆動されると、ロッド42が図3(a)において、矢印Bで示す直線方向に移動し、リンク機構44の回転軸45を中心として保持部材46及び弁体47が矢印Cで示すように回動し、WG弁14が開弁する。WG弁14の弁開度センサ27が、ロッド42の近傍に配置されており、ロッド42の直線方向(矢印B方向)の位置を検出することによって、WG弁14の開度(以下「WG開度」という)WGOが検出される。WG弁14の作動(開閉弁)速度VOPは、モータ41の回転速度を変更することによって容易に変更可能である。
なお、本実施形態ではWG弁14は、バイパス通路11がタービン121の下流側で排気通路10に開口する開口部を開閉するように構成されている。
図4は、本実施形態におけるWG弁14の開度制御の概要を説明するための図であり、コンプレッサ通過空気流量mdotC及び過給圧Pbによって定義される運転領域が示されている。図4(a)は、アクセルペダルが踏み込まれている初期動作点POPI1においてアクセルペダルが戻された動作例に対応し、図4(b)は、初期動作点POPI2において同様にアクセルペダルが戻された動作例に対応する。サージング状態が発生する可能性が高いサージング領域RSURGEがハッチングを付して示されており、エンジン1の動作点がサージング領域RSURGEに入らないという制約条件を満たすように、WG弁14の開度制御を行う必要がある。
図4(a)に示す曲線L1は、初期動作点POPI1においてWG弁14は全閉状態にあり、作動速度VOPを最大として全開状態まで開弁駆動した場合における動作点の移動軌跡(軌道)を示し、最終的には最終動作点POPF1に達して安定する。図4(b)に示す曲線L2は、初期動作点POPI2においてWG弁14は全閉状態にあり、作動速度VOPを最大として全開状態まで開弁駆動した場合における動作点の移動軌跡を示し、最終的には最終動作点POPF2に達して安定する。
曲線L1及びL2は、ターボチャージャ12の制御系(以下単に「制御系」という)を構成する部材の特性、具体的にはターボチャージャ12を構成するタービン121,コンプレッサ123、WG弁14などの部材、及び制御に適用されるセンサ(過給圧センサ21、加圧吸気温度センサ22など)の特性が設計上想定した特性である場合の移動軌跡を示し、以下「ノミナル軌道L1」及び「ノミナル軌道L2」という。
ノミナル軌道L1の沿って示される円形の領域ROP1(k0+j)(j=1〜8)は、制御系を構成する部材の特性が設計上想定した特性からずれた場合において、離散化時刻(k0+j)における動作点POP(k0+j)が分布する領域を示し、領域ROP1(k0+j)内に含まれる動作点の集合を、以下「可到達集合Ryset(k0+j)」という。ノミナル軌道L2の沿って示される円形の領域ROP2(k0+j)(j=1〜8)も同様に、制御系を構成する部材の特性が設計上想定した特性からずれた場合において、離散化時刻(k0+j)における動作点POP(k0+j)が分布する領域を示す。
本実施形態では、初期動作点POPI1,POPI2でアクセルペダルが戻された時点において、制御系に含まれる制御対象をモデル化した制御対象モデルを定義する数式を用いて、通常制御モードを適用した場合のノミナル軌道L1,L2(軌道上の離散化時刻毎の動作点)を算出するとともに、可到達集合Ryset(k0+j)(k0:アクセルペダルが戻された時刻、j=1〜8)を算出し、図4(a)に破線で示すように可到達集合Rysetの外縁を示す領域ROP1(k0+j)(j=3〜5)の一部がサージング領域RSURGEと重なる場合には、通常制御モードをサージング状態を回避するための回避制御モードに変更して、WG弁14の開弁速度VOPを低下させることによって、サージング状態を確実に回避するようにしている。なお、可到達集合Ryset(k0+j)の演算手法は、後述する。
本実施形態では、動作点POP(k0+j)をばらつかせる要因として、ターボチャージャ12の効率(以下「ターボ効率」という)ηtc、及び加圧吸気温度Tbの値のばらつきを考慮して、可到達集合Ryset(k0+j)を算出する。加圧吸気温度Tbの値のばらつきは、加圧吸気温度センサ22の特性ばらつきに起因して発生する。
図4(b)に示す例では、可到達集合Rysetの外縁を示す領域ROP2(k0+j)がサージング領域RSURGEと全く重ならないので、制御モードの変更を行う必要がない。
図5は、制御モードの変更を説明するためのタイムチャートであり、図5(a)及び(c)は、サージングが発生し易い運転状態であるか否かを示すサージングフラグFSURGEの推移を示し、図5(b)及び(d)は、制御入力uwg(具体的には、WG弁14の開度指令値に相当する)の推移を示す。図5(a)及び(b)が、図4(a)に示す例に対応し、図5(c)及び(d)が図4(b)に示す例に対応する。
時刻k0において、制御入力uwgは「0」から最大開度指令値uwgMAXに変更され、その後最大開度指令値uwgMAXに維持される通常制御モードが適用される。
図4(a)に示す例では、時刻(k0+3)〜(k0+5)における可到達集合Ryset(k0+j)(j=3〜5)に含まれる少なくとも一つの動作点POP(k0+j,i)は、サージング領域RSURGE内にあることが予測されるため、サージングフラグFSURGEが「1」に設定され、時刻(k0+3)において通常制御モードから、制御入力uwgを徐々に増加させる回避制御モードに移行し、時刻(k0+5)において回避制御モードから通常制御モードに復帰する。動作点POP(k0+j,i)を特定するためのインデクスパラメータiは、1からMまでの整数値であり、Mは可到達集合Ryset(k0+j)に含まれる動作点POP(k0+j,i)の数である。
図4(b)に示す例では、サージングフラグFSURGEが「0」に維持され、通常制御モードが継続される。
図6は、時刻k0にECU40において実行される制御モード切換判定処理のフローチャートである。
ステップS11ではノミナル軌道L1,L2上の動作点に対応するノミナル出力ベクトルynm(k0+j)(j=1〜N)を算出する。ノミナル出力ベクトルynm(k0+j)は、下記式(1)で示される。Nは、時刻k0における予測ステップ数であり、例えば「8」に設定される。制御対象モデルを定義する数式(後述する式(21),(22)を離散時間系の定義式に変換した数式))に初期動作点POPIに相当する初期出力ベクトルを適用して、次のノミナル出力ベクトルynm(k0+1)を算出し、次に算出されたノミナル出力ベクトルynm(k0+1))をモデル定義式(使用するパラメータの値はすべてノミナル値に設定する)に適用して次のノミナル出力ベクトルynm(k0+2)を算出する逐次演算を繰り返すことで、ノミナル出力ベクトルynm(k0+j)(j=1〜N)を算出することができる。
ynm(k0+j)T=[mdotC(k0+j),Pb(k0+j)] (1)
ステップS11ではノミナル軌道L1,L2上の動作点に対応するノミナル出力ベクトルynm(k0+j)(j=1〜N)を算出する。ノミナル出力ベクトルynm(k0+j)は、下記式(1)で示される。Nは、時刻k0における予測ステップ数であり、例えば「8」に設定される。制御対象モデルを定義する数式(後述する式(21),(22)を離散時間系の定義式に変換した数式))に初期動作点POPIに相当する初期出力ベクトルを適用して、次のノミナル出力ベクトルynm(k0+1)を算出し、次に算出されたノミナル出力ベクトルynm(k0+1))をモデル定義式(使用するパラメータの値はすべてノミナル値に設定する)に適用して次のノミナル出力ベクトルynm(k0+2)を算出する逐次演算を繰り返すことで、ノミナル出力ベクトルynm(k0+j)(j=1〜N)を算出することができる。
ynm(k0+j)T=[mdotC(k0+j),Pb(k0+j)] (1)
ステップS12では、後述する演算手法を適用して出力ベクトルy(k0+j)(動作点POP(k0+j))の可到達集合Ryset(k0+j)(j=1〜N)を算出する。可到達集合Ryset(k0+j)に含まれる動作点数Mは例えば「25」とする。
ステップS13及びS14では、それぞれインデクスパラメータj及びiをそれそれ「1」に設定する。ステップS15では、可到達集合Ryset(k0+j)に含まれる出力ベクトルyset(k0+j,i)がサージング領域RSURGEに含まれるか否かを判別する。ステップS15の答が否定(NO)であるときは、インデクスパラメータiを「1」だけ増加させ(ステップS16)、インデクスパラメータiの値が動作点数Mを超えたか否かを判別する(ステップS17)。その答が否定(NO)であるときは、ステップS15に戻る。
ステップS15の答が肯定(YES)であるときは、ステップS18に進み、サージングフラグFSURGEを「1」に設定するとともに、そのときのインデクスパラメータjの値を、制約条件に抵触する時刻を示す制約抵触値jSR(図5(a)に示す例では、jSR=3である)に設定する。その後ステップS21に進む。
ステップS17の答が肯定(YES)となると、ステップS19に進んで、サージングフラグFSURGEが「1」であるか否かを判別する。その答が否定(NO)であるときは直ちにステップS21に進む。ステップS19の答が肯定(YES)であるときは、サージングフラグFSURGEを「0」に戻すとともに、そのときのインデクスパラメータjの値を、制約条件を満たす時刻を示す制約充足値jNS(図5(a)に示す例では、jNS=6である)に設定する。
ステップS21では、インデクスパラメータjを「1」だけ増加させ、インデクスパラメータjの値が、予測ステップ数Nを超えたか否かを判別する(ステップS22)。その答が否定(NO)であるときは、ステップS14に戻り、肯定(YES)となると処理を終了する。
図7は、図6の処理により得られる判定結果に応じて実行される制御モード切換処理のフローチャートである。この処理は、時刻(k0+1)以後において所定演算周期TCALでECU40により実行される。なお、本処理開始前の初期状態では、通常制御モードフラグFCNMLが「1」に設定され、回避制御モードフラグFCSFが「0」に設定され、通常制御モードによる制御が実行される。また離散化時刻kは、所定演算周期TCALによって離散化した時刻である。
ステップS31では、本処理の実行時刻kが、制約抵触時刻(k0+jSR)より前であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)である間は直ちに処理を終了し、否定(NO)であるとき、すなわち実行時刻kが制約抵触時刻(k0+jSR)以後であるときは、実行時刻kが制約抵触時刻(k0+jSR)と等しいか否かを判別する(ステップS32)。
ステップS32の答が肯定(YES)であるときは、通常制御モードフラグFCNMLを「0」に設定し、回避制御モードフラグFCSFを「1」に設定する。これにより制御モードが通常制御モードから回避制御モードへ移行する。ステップS32の答が否定(NO)であるときは、実行時刻kが制約充足時刻(k0+jNS)と等しいか否かを判別する(ステップS34)。ステップS34の答が否定(NO)である間は、回避制御モードを継続し、肯定(YES)となると、通常制御モードフラグFCNMLを「1」に設定するとともに回避制御モードフラグFCSFを「0」に設定する(ステップS35)。これにより、回避制御モードから通常制御モードに復帰する。
図6及び図7に示す処理によって、図5(a)に示す制御モードの切換が実行され、あるいは図5(b)に示すように通常制御モードが継続される。
次に可到達集合Rysetの算出方法を説明する。以下の説明では、連続時間系において下記式(2)及び(3)によって、非線形な特性を有する制御対象をモデル化した制御対象モデルを定義する。
xdot(t)=f(x(t),θ,u(t)),x(0)=xI (2)
y(t)=g(x(t),θ,u(t)) (3)
xdot(t)=f(x(t),θ,u(t)),x(0)=xI (2)
y(t)=g(x(t),θ,u(t)) (3)
ここで、xは制御対象の状態を示す状態パラメータベクトル、xdotは状態パラメータベクトルxの時間微分ベクトル、yは制御対象の出力ベクトル、θは制御対象モデルのモデルパラメータベクトル、uは制御対象への制御入力ベクトル、f(x(t),θ,u(t))及びg(x(t),θ,u(t))は、x及びθに関して微分可能な関数であり、xIは状態パラメータベクトルxの各要素の初期値を要素とする初期状態パラメータベクトルである。
特性ばらつきなどによる変動要因を含むモデルパラメータベクトルθは下記式(4)で示されるものとする。
θ=θ0+Δθ (4)
ここで、θ0は設計上想定したノミナルモデルパラメータベクトルであり、Δθはノミナルモデルパラメータベクトルθ0とモデルパラメータベクトルθとの差分を示す差分パラメータベクトルである。
θ=θ0+Δθ (4)
ここで、θ0は設計上想定したノミナルモデルパラメータベクトルであり、Δθはノミナルモデルパラメータベクトルθ0とモデルパラメータベクトルθとの差分を示す差分パラメータベクトルである。
ノミナル軌道に対応するノミナル状態パラメータベクトルx(t,θ0)及びノミナル出力ベクトルy(t,θ0)はモデル定義式から算出可能であるものと仮定する。
モデルパラメータベクトルθの変動を考慮した出力ベクトルを
y(t,θ0+Δθ)
と表すこととしてテイラー展開を適用すると、下記式(5)が得られる。この式(5)において、差分パラメータベクトルΔθに乗算される係数行列、すなわちモデルパラメータベクトルθの変化に対する出力ベクトルyの変化度合を示す行列であって、モデルパラメータベクトルθがノミナルモデルパラメータベクトルθ0と等しいときの変化度合を示す行列を、式(6)で示すように感度行列Syθ(t)と定義する。式(5)の右辺第3項は、テイラー展開の2次以上の高次項の全体を表している。
モデルパラメータベクトルθの変動を考慮した出力ベクトルを
y(t,θ0+Δθ)
と表すこととしてテイラー展開を適用すると、下記式(5)が得られる。この式(5)において、差分パラメータベクトルΔθに乗算される係数行列、すなわちモデルパラメータベクトルθの変化に対する出力ベクトルyの変化度合を示す行列であって、モデルパラメータベクトルθがノミナルモデルパラメータベクトルθ0と等しいときの変化度合を示す行列を、式(6)で示すように感度行列Syθ(t)と定義する。式(5)の右辺第3項は、テイラー展開の2次以上の高次項の全体を表している。
本実施形態では式(5)の高次項を無視して1次のテイラー展開を用いた近似を適用し、出力パラメータベクトルyの近似値の可到達集合を、可到達集合Rysetとして算出する。差分パラメータベクトルΔθの集合をΘで表わすと、モデルパラメータベクトルθが変動したときの可到達集合Ryset(t,Θ)は、感度行列Syθ(t)を用いて下記式(7)によって算出可能である。式(7)は、ミンコフスキー和として知られる集合の加算演算を行うものである。なお、式(7)の右辺第1項は、構成要素が1つの集合とみなされるため、式(7)の演算では、右辺第1項と、右辺第2項の集合を構成する各要素との和の集合が、可到達集合Ryset(t,Θ)となる。
式(7)を適用するためには、感度行列Syθ(t)を求める必要があり、下記式(8)、(9)、(10)で示される連立微分方程式を解くことによって、感度行列Syθ(t)を算出することができる。式(9)及び(10)に含まれる感度行列Sxθ(t)は、モデルパラメータベクトルθの変化に対する状態パラメータベクトルxの変化度合を示す行列であって、モデルパラメータベクトルθがノミナルモデルパラメータベクトルθ0と等しいときの変化度合を示す行列であり、下記式(11)で示される。なお、式(8)は状態パラメータベクトルx(t)の初期ベクトルx(0)が所定ベクトルx0であることを示す数式を含み、式(9)は感度行列Sxθ(t)の初期行列Sxθ(0)が「0」(行列を構成する全ての要素が「0」である行列)であることを示す数式を含む。
この連立微分方程式は、解析的に解を求めることは困難であり、ノミナル状態パラメータベクトルx(t,θ0)及びノミナル出力ベクトルy(t,θ0)を適用し、公知の数値解析ソフトウエアを使用して解を求める、すなわち感度行列Syθ(t)を求めることができる。
図8は、式(7)で示される関係を説明するためのイメージ図である。時刻t=0において、制御対象の初期動作点がPOP0(出力ベクトルy(0,θ0))で示される場合に、時刻tにおけるノミナル出力ベクトルy(t,θ0)は、曲線L11で示されるノミナル軌道を経てノミナル動作点POPtで示され、可到達集合Rysetに含まれる一つの動作点POPtD(出力ベクトルy(t,θ0+Δθ))は、式(7)の右辺第2項に相当する変位ベクトルDyをノミナル動作点POPtに加算することによって示される。一点鎖線が、真の出力ベクトルの可到達集合RysetTrueの外縁を示すとすると、式(7)によって得られる出力ベクトルの近似値の集合である可到達集合Rysetの外縁は、例えば実線で示される。
式(8)〜(10)の連立微分方程式は、上述した制御対象モデルを定義する式(2)及び(3)から、以下に説明するように導出される数式であることから、感度行列Syθ(t)は、式(8)〜(10)の連立微分方程式を解くことによって得られる。
式(8)は、式(2)におけるθをθ0とすることで得られる。また式(10)は、式(3)で示される出力ベクトルy(t)をモデルパラメータベクトルθに関して連鎖律を適用して微分することによって得られる。
式(8)は、式(2)におけるθをθ0とすることで得られる。また式(10)は、式(3)で示される出力ベクトルy(t)をモデルパラメータベクトルθに関して連鎖律を適用して微分することによって得られる。
また式(2)の右辺に対して連鎖律を適用し、θ=θ0とすると、下記式(12)が得られる。式(12)の両辺をθに関して連鎖律を適用して微分し、式(2)を適用すると、上記式(10)が得られる。時刻t=0の初期状態ではx(0)=x0であるとしているため、式(9)に示すようにSxθ(0)は「0」である。以上より、感度行列Syθ(t)は式(8)〜(10)で示される連立微分方程式の解として算出可能である。
ここで状態パラメータベクトルx(t)及び出力ベクトルy(t)は、下記式(23)及び(24)で示される。また式(21)、(22)に含まれる係数α1〜α4及びβ1〜β4はそれぞれ下記式(31)〜(38)で示され、係数β5〜β8は実験的に求められた値が適用される。
x(t)=[Pb(t),Wc(t)]T (23)
y(t)=[Pb(t),mdotC(t)]T (24)
x(t)=[Pb(t),Wc(t)]T (23)
y(t)=[Pb(t),mdotC(t)]T (24)
ここで、上記式(21)〜(24)及び(31)〜(38)に含まれるパラメータは、下記の通りである。
Pb:過給圧[Pa],Wc:コンプレッサ仕事率{J/s],mdotC:コンプレッサ通過空気流量[g/s],Ta:外気温度[K],Tb:加圧吸気温度[K],vs:シリンダ容積[m3],vb:サージタンク容積[m3],NE:エンジン回転数[rpm],n:ポリトロープ指数,ηtc:ターボ効率,ηv:体積効率,R:気体定数[J/(kg・K)],cp:空気の定圧比熱[J/(kg・K)],τtc:一次遅れ時定数[s],κ:空気の比熱比
Pb:過給圧[Pa],Wc:コンプレッサ仕事率{J/s],mdotC:コンプレッサ通過空気流量[g/s],Ta:外気温度[K],Tb:加圧吸気温度[K],vs:シリンダ容積[m3],vb:サージタンク容積[m3],NE:エンジン回転数[rpm],n:ポリトロープ指数,ηtc:ターボ効率,ηv:体積効率,R:気体定数[J/(kg・K)],cp:空気の定圧比熱[J/(kg・K)],τtc:一次遅れ時定数[s],κ:空気の比熱比
式(21)で示されるように、状態パラメータベクトルx(t)の時間微分は、状態パラメータベクトルx(t)、制御入力uwg(t)、及び係数α1〜α4及びβ1〜β4などで構成されるモデルパラメータベクトルの関数で示され、式(22)で示されるように、出力ベクトルy(t)は、状態パラメータベクトルx(t)、及び係数α1〜α4及びβ1〜β4などで構成されるモデルパラメータベクトルの関数で示される。したがって、上述したように感度行列Syθ(t)を算出し、その感度行列Syθ(t)を式(7)に適用することにより、可到達集合Rysetを算出することができる。
本実施形態では、ターボ効率ηtc及び加圧吸気温度Tbの不確かさ(ばらつき)を考慮して、出力ベクトルyの可到達集合Rysetを算出する。ターボ効率ηtcは、ターボチャージャの仕様書に記載されているばらつきの範囲内(例えば±3%の範囲内)で、設計中心値、最小値、最大値、設計中心値と最小値との平均値、設計中心値と最大値との平均値の5つの値を想定する。加圧吸気温度Tbについては、温度センサの特性ばらつきの範囲内で同様に5つの値を想定すると、2つのパラメータηtc及びTbの値がばらついたときの組合わせは25通りとなり、1つの可到達集合Rysetには25個の動作点が含まれる。したがって、上述した動作点数Mが「25」となる。
図9(a)は、式(5)の高次項O(‖Δθ‖2)を無視することによって得られる近似式(7)を適用して算出した出力ベクトルy(t)の可到達集合Rysetの外縁(例えばターボ効率ηtcを変化させた場合の外縁)を示し、図9(b)は同じモデルパラメータの値を、想定される変動範囲内でランダムに1000通りに変化させて算出した出力ベクトルy(t)の集合の外縁を示す。両者はほぼ同一であり、近似式(7)を適用しても高い精度で可到達集合Rysetを算出可能であることが確認されている。図9に示す可到達集合は、t=0における初期動作点POP1から、t=TOP(例えば0.4秒)までの期間における出力ベクトルy(t)で示される動作点の集合に相当するものである。
以上のように本実施形態では、出力ベクトルy(k)の将来予測値y(k0+j)を変動させる要因となる変動要因パラメータとして、ターボ効率ηtc及び加圧吸気温度Tbを適用し、これらの変動要因パラメータに基づいて、制御対象(ターボチャージャ12、及びWG弁14などの周辺部材)の過渡状態において通常制御モードを適用した場合における可到達集合Ryset(k0+j)、すなわち変動要因パラメータが変動した場合の出力ベクトルy(k0+j)の集合が算出され、その可到達集合Ryset(k0+j)に含まれる出力ベクトルyset(k0+j,i)の少なくとも一つが制約条件を満たさなくなるタイミング、すなわち出力ベクトルyset(k0+j,i)で示される動作点POPがサージング領域RSURGEに含まれるタイミングである制約抵触時刻(k0+jSR)が決定され、この制約抵触時刻(k0+jSR)において、制御モードが通常制御モードから回避制御モードへ切り換えられる。変動要因パラメータであるターボ効率ηtc及び加圧吸気温度Tbのずれに対応して、出力ベクトルyset(k0+j,i)は設計上狙った中心値であるノミナル値からずれ、しかも2個の変動要因パラメータのずれ態様の組み合わせに対応して、同じ時刻における出力ベクトルyset(k0+j,i)は多数の動作点からなる可到達集合Rysetを形成する。例えば上述したように各パラメータについてノミナル値を中心として5通りの値をとることを想定すると、可到達集合Rysetは25個の動作点を含む。したがって、算出された可到達集合Rysetに含まれる出力ベクトルyset(k0+j,i)の一つでもサージング領域RSURGEに属することとなる制約抵触時刻(k0+jSR)において、通常制御モードを回避制御モードへ切り換えることで、初めから安全側の制御モードである回避制御モードを適用する場合に比べて制御性能の低下を抑制し、かつサージング状態を回避するという制約条件を確実に満たすことが可能となる。
また制約抵触時刻(k0+jSR)より後において、可到達集合Rysetに含まれる出力ベクトルyset(k0+j,i)の全てが制約条件を満たすタイミングである制約充足時刻(k0+jNS)が決定され、制約充足時刻(k0+jNS)において、回避制御モードから通常制御モードへ切り換えが行われる。制御性能を高めるためには、できるだけ通常制御モードを適用することが有効であることから、可到達集合Rysetに含まれる出力ベクトルyset(k0+j,i)の全てが制約条件を満たすタイミングである制約充足時刻(k0+jNS)において通常制御モードに復帰させることにより、制約条件を確実に満たす範囲内で制御性能を最大限に高めることができる。
また将来の出力ベクトルyset(k0+j)を変動させる要因となる変動要因パラメータであるターボ効率ηtc及び加圧吸気温度Tbと、それらの変動要因パラメータを含む制御対象モデルを定義する式(21)及び(22)とを用いて、変動要因パラメータが所定変動幅(±3%)で変動した場合における可到達集合Rysetが算出されるので、制約条件を満たす上で影響度合が大きいと想定されるモデルパラメータを変動要因パラメータとすることによって、制約条件を確実に満たすことができる。
本実施形態では、回避制御モードが制約充足制御モードに相当し、可到達集合Rysetが将来予測値集合に相当し、制約抵触時刻(k0+jSR)が第1制御モード切換時期に相当し、制約充足時刻(k0+jNS)が第2制御モード切換時期に相当する。
[変形例]
本変形例は、WG弁開度WGOの指令値である制御入力uwgが変化した時点から遅延を伴って実際のWG弁開度WGOが変化する場合(制御遅れがある場合)に相当するものである。
本変形例は、WG弁開度WGOの指令値である制御入力uwgが変化した時点から遅延を伴って実際のWG弁開度WGOが変化する場合(制御遅れがある場合)に相当するものである。
図10は、本変形例における制御モード切換判定処理のフローチャートであり、図6に示す処理のステップS18及びS20を、それぞれステップS18a及びS20aに変更したものである。
ステップS18aでは、サージングフラグFSURGEを「1」に設定するとともに、制約抵触値jSRを、そのときのインデクスパラメータjに離散遅延時間jd(例えば「1」)を加算した値に設定し、ステップS20aでは、サージングフラグFSURGEを「0」に戻すとともに、制約充足値jNSを、その時点のインデクスパラメータjに離散遅延時間jdを加算した値に設定する。
図11は、本変形例における制御モード切換処理のフローチャートであり、図7に示す処理のステップS31,S32,及びS34を、それぞれステップS31a,S32a,及びS34aに変更したものである。
ステップS31aでは、本処理の実行時刻kが、制約抵触時刻から離散遅延時間jDを減算した時刻(k0+jSR−jD)より前であるか否かを判別し、ステップS32aでは、本処理の実行時刻kが、制約抵触時刻から離散遅延時間jDを減算した時刻(k0+jSR−jD)と等しいか否かを判別し、ステップS34aでは、本処理の実行時刻kが、制約充足時刻(k0+jNS)から離散遅延時間jDを減算した時刻(k0+jNS−jD)と等しいか否かを判別する。
図12は、図10及び図11の処理による制御動作を説明するためのタイムチャートであり、実線が制御入力uwgの推移を示し、一点鎖線がWG弁開度WGOの推移を示す。本変形例では、離散遅延時間jD(=1)だけWG弁WGOの変化が遅れるため、制約抵触値jSRは「4」となり、制約充足値jNSは「7」となる。したがって、サージングフラグFSURGEは、時刻(k0+jSR(=4))において「0」から「1」に変化し、時刻(k0+jNS(=7))において「1」から「0」に変化する。また、制御モードの切換は、時刻(k0+jSR-jD)、及び時刻(k0+jNS-jD)において実行される。
このように本変形例では、制御入力の指令値uwgの変化に対応して実際の制御入力であるWG弁開度WGOが変化する時点までの制御遅れ時間に相当する離散遅延時間jD分だけ制約抵触時刻(k0+jSR)より早い時期が、通常制御モードから回避制御モードへの切換時期(第1制御モード切換時期)と決定され、離散遅延時間jD分だけ制約充足時刻(k0+jNS)より早い時期が回避制御モードから通常制御モードへの切換時期(第2制御モード切換時期)と決定されるので、制御遅れ時間が比較的大きな制御対象の制御において、適切な制御モード切換を行うことができる。
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、制御対象モデルを定義する数式(モデル定義式)が既知であり、そのモデル定義式を用いて可到達集合を求める例を示したが、制御対象の特性を記述する数式を、制御対象の制御入力ベクトルと、制御出力ベクトルとの組み合わせデータを実験的に大量に(ビッグデータを)取得し、そのビッグデータから制御対象の特性を記述する数式を帰納的に求めるようにしてもよい。その場合には、拡張動的モード分解の手法を用いて、クープマン作用素を近似的に導出し、非線形特性を有する制御対象の状態遷移を、高次の線形システム(線形近似モデル)によって推定することにより、可到達集合が算出される。
制御対象は、内燃機関のターボチャージャに限らず、例えば自動運転を行う際のステアリングを駆動するアクチュエータ、アクセルペダルを駆動するアクチュエータ、ブレーキペダルを駆動するアクチュエータを制御対象とすることもできる。
不確かなパラメータを伴う非線形系の可到達解析については、下記の非特許文献1が知られている。またターボチャージャ制御系のモデル化については、下記の非特許文献2及び3が知られている。またクープマン作用素による非線形システムの特性解析については、下記の非特許文献4〜6が知られている。
非特許文献1:Proceedings of the 47th IEEE Conference on Decision and Control, Dec.9-11, 2008
非特許文献2:Modeling of a turbocharged SI engine, Annual Reviews in Control, Vol.26, No.1, pp.129-137 (2002)
非特許文献3:Time to surge concept and surge control for acceleration performance, IFAC Proceedings Volumes, Vol.41, No.2, pp.2063-2068 (2008)
非特許文献4:システム/制御/情報,Vol.61, No.5, pp.175-181 (2017)
非特許文献5:Linear predictors for nonlinear dynamical systems: Koopman operator meets model predictive control, Automatica, vol.93, pp.149-160 (2018)
非特許文献6:A data-driven approximation of the koopman operator: Extending dynamic mode decomposition, Journal of Nonlinear Science, vol.25, no.6, pp.1307-1346 (2015)
非特許文献2:Modeling of a turbocharged SI engine, Annual Reviews in Control, Vol.26, No.1, pp.129-137 (2002)
非特許文献3:Time to surge concept and surge control for acceleration performance, IFAC Proceedings Volumes, Vol.41, No.2, pp.2063-2068 (2008)
非特許文献4:システム/制御/情報,Vol.61, No.5, pp.175-181 (2017)
非特許文献5:Linear predictors for nonlinear dynamical systems: Koopman operator meets model predictive control, Automatica, vol.93, pp.149-160 (2018)
非特許文献6:A data-driven approximation of the koopman operator: Extending dynamic mode decomposition, Journal of Nonlinear Science, vol.25, no.6, pp.1307-1346 (2015)
1 内燃機関
2 吸気通路
4 サージタンク
10 排気通路
11 バイパス通路
12 ターボチャージャ
14 ウエストゲート弁
21 過給圧センサ
22 加圧吸気温度センサ
23 吸入空気流量センサ
40 電子制御ユニット
121 タービン
123 コンプレッサ
2 吸気通路
4 サージタンク
10 排気通路
11 バイパス通路
12 ターボチャージャ
14 ウエストゲート弁
21 過給圧センサ
22 加圧吸気温度センサ
23 吸入空気流量センサ
40 電子制御ユニット
121 タービン
123 コンプレッサ
Claims (4)
- 制御対象をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、該制御対象モデルの出力の将来予測値を算出し、前記制御対象から出力される制御出力が所定の制約条件を満たすように、前記将来予測値を用いて、前記制御対象に入力する制御入力を算出する制御装置において、
前記モデル化対象は非線形な伝達特性を有し、
前記制御入力の通常制御値を算出する通常制御モードと、前記通常制御値より前記制約条件を満たす可能性が高い制約充足制御値を算出する制約充足制御モードとによって前記制御入力を算出することが可能であり、
前記制御対象の過渡状態において前記通常制御モードを適用した場合において、前記制御対象モデルの特性を示すモデルパラメータの不確かさを考慮した前記将来予測値の集合である予測値集合を算出する予測値集合算出手段と、
前記予測値集合に含まれる将来予測値の少なくとも一つが前記制約条件を満たさなくなるタイミングである制約抵触時期を決定する制約抵触時期決定手段と、
前記制約抵触時期に応じて第1制御モード切換時期を決定し、該第1制御モード切換時期において、前記通常制御モードから前記制約充足制御モードへ切り換える制御モード切換手段とを備えることを特徴とする制御装置。 - 前記制約抵触時期より後において、前記予測値集合に含まれる将来予測値の全てが前記制約条件を満たすタイミングである制約充足時期を決定する制約充足時期決定手段を備え、
前記制御モード切換手段は、前記制約充足時期に応じて第2制御モード切換時期を決定し、該第2制御モード切換時期において、前記制約充足制御モードから前記通常制御モードへ切り換えることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。 - 前記制御入力の指令値の変化時点から前記制御入力が実際に変化する時点までの制御遅れ時間が存在する場合には、前記制御モード切換手段は、前記制御遅れ時間分だけ前記制約抵触時期より早い時期を前記第1制御モード切換時期と決定し、前記制御遅れ時間分だけ前記制約充足時期より早い時期を前記第2制御モード切換時期と決定することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
- 前記予測値集合算出手段は、前記将来予測値を変動させる要因となる変動要因パラメータと、該変動要因パラメータを含む前記制御対象モデルを定義する数式とを用いて、前記変動要因パラメータが所定変動幅で変動した場合における前記予測値集合を算出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の制御装置。
Priority Applications (1)
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