JP2020075274A - 溶接構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い接合強度を安定して得ること。【解決手段】本開示の溶接構造は、第1部材と、前記第1部材に積層され、前記第1部材よりも融点の低い第2部材と、前記第1部材内に配置された複数の第1凝固部と、前記第1凝固部に接するように前記第2部材内に配置された第2凝固部と、を有する。前記複数の第1凝固部は、平面視において格子状に分布する。【選択図】図14A
Description
本開示は、2つの部材を溶接する溶接構造に関する。
一般的に、種類が異なる2つの金属部材を溶接する方法では、各金属部材を溶融させ、溶融した部分が混ざり合った後に凝固させるが、金属間化合物が形成される場合がある。この金属間化合物は、応力に対して脆く、応力が加わると千切れてしまう。そのため、高い接合強度(以下、引張り強度ともいう)を安定して得ることは困難であった。
例えば特許文献1には、高い接合強度を得るための溶接方法が開示されている。以下、特許文献1の溶接方法について、図9A〜図9Cを用いて説明する。
図9Aは、特許文献1の溶接方法に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図9B、図9Cは、図9AのA−A’断面図である。具体的には、図9Bは、隙間が無い場合の溶接構造を示す走査方向と直角方向の断面図である。また、図9Cは、隙間がある場合の溶接構造を示す走査方向と直角方向の断面図である。
まず、図9Bに示すように、ニッケルめっき銅端子21の上にアルミニウムバスバー22を配置する。
次に、一定の出力値に設定されたレーザ光26aをアルミニウムバスバー22に照射しながら走査する。この走査は、図9Aに示す軌道27に沿って(図9Aでは、図の上方から下方へ。図9Bでは、図の奥側から手前側へ)行われる。本明細書において、「軌道」とは、レーザ光による走査が行われる部分である。
これにより、アルミニウムバスバー22においてレーザ光26aが照射された部分およびその近傍が溶融し、図9Bに示すように、アルミニウムバスバー22に凝固部23が形成される。凝固部23の厚みは、アルミニウムバスバー22の表面から、アルミニウムバスバー22とニッケルめっき銅端子21との界面(以下、界面という)の近傍までとなる。
一方、界面およびその近傍には、深度が小さい凝固部24が形成される。この凝固部24は、アルミニウムと、僅かなニッケル(めっき)と、銅とが混ざり合った合金である。
次に、レーザ光26aよりも高い出力値に設定されたレーザ光26bをアルミニウムバスバー22に照射しながら走査する。この走査は、図9Aに示す軌道28に沿って(図9Aでは、図の上方から下方へ。図9Bでは、図の奥側から手前側へ)行われる。
これにより、レーザ光26aを照射した場合と同様に、アルミニウムバスバー22に凝固部23が形成される。
一方、界面およびその近傍には、凝固部24よりも深度が大きい凝固部25が形成される。この凝固部25は、凝固部24と同様に、アルミニウムと、僅かなニッケル(めっき)と、銅とが混ざり合った合金である。ただし、レーザ光26bの出力がレーザ光26aよりも高いため、アルミニウムと、僅かなニッケルと、銅とがより深くまで混ざり合い、図9Bに示すように、凝固部25の深度は、凝固部24の深度よりも大きくなる。
レーザ光26bの照射は、複数回行われる。これにより、凝固部23と凝固部25とが順次形成される。そして、最終的には、図9Bに示す溶接構造が形成される。
なお、ニッケルめっき銅端子21とアルミニウムバスバー22との間に隙間を設けて上述した溶接方法を実施した場合、図9Cに示す溶接構造が形成される。
上述した溶接構造における凝固部24では、その大部分が通常の合金である固溶体となる。その理由は、レーザ光26aの出力値が低いため、溶融時の温度が低く、溶融から凝固までの時間が短くなるからである。固溶体には、格子欠陥が多く存在する。
一方、凝固部25では、格子欠陥の殆ど無い金属間化合物が多く形成される。その理由は、レーザ光26bの出力値が高いため、溶融時の温度が高くなり、溶融から凝固までの時間が長くなるからである。金属間化合物は、引っ張り応力に対して格子のズレが起き難く、応力を緩和できない。このため、凝固部24よりも低い引っ張り応力で格子間の剥離が発生し、引張り強度が低いという特徴を持つ。
特許文献1の溶接方法では、以下の課題がある。
アルミニウムは、銅と比較して融点が低い。よって、アルミニウムバスバー22にレーザ光(例えば、レーザ光26aまたはレーザ光26b)を照射して溶接を行う場合、アルミニウムバスバー22が溶融を開始した時点では、ニッケルめっき銅端子21は溶融しない。
その後、引き続きレーザ光の照射が行われた場合、アルミニウムバスバー22の溶融部分が界面に達し、その温度が銅の融点に達する。これにより、界面のニッケルめっき銅端子21が溶融し始める。溶融したニッケルめっき銅端子21は、レーザ光が照射されている間、加熱され、溶融状態が続く。
ニッケルめっき銅端子21の溶融部分の温度はレーザ光の照射時間に依存することから、金属間化合物の生成を抑制するためには、レーザ光の出力値や照射時間(走査速度)を制御すればよい。したがって、金属間化合物の生成を抑制することは、比較的容易に実現できる。
一方で、例えば、ニッケルめっき銅端子21にレーザ光を照射して溶接を行う場合では、銅の融点がアルミニウムよりかなり高いため、レーザ光の照射時間は長くなる。よって、ニッケルめっき銅端子21の溶融部分が界面に達するときには、ニッケルめっき銅端子21の溶融部分の温度は、アルミニウムの融点よりもかなり高くなっている。
したがって、アルミニウムバスバー22の溶融部分は、かなりの高温となるため、凝固するまでの時間が長くなる。その結果、金属間化合物が生成され易くなり、高い接合強度を得ることが困難となる。
本開示の一態様の目的は、高い接合強度を安定して得ることができる溶接構造を提供することである。
本開示の一態様に係る溶接構造は、第1部材と、前記第1部材に積層され、前記第1部材よりも融点の低い第2部材と、前記第1部材内に配置された複数の第1凝固部と、前記第1凝固部に接するように前記第2部材内に配置された第2凝固部と、を有し、前記複数の第1凝固部は、平面視において格子状に分布する。
本開示によれば、高い接合強度を安定して得ることができる。
以下、本開示の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図1A〜Cを用いて説明する。図1A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図1Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図1Bは、隙間がない場合の図1AのA−A’断面図である。図1Cは、隙間がある場合の図1AのA−A’断面図である。
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図1A〜Cを用いて説明する。図1A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図1Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図1Bは、隙間がない場合の図1AのA−A’断面図である。図1Cは、隙間がある場合の図1AのA−A’断面図である。
以下では、アルミニウムで構成されたアルミニウムバスバー1と、ニッケルめっき銅合金タブ端子2とを積層させて溶接する場合を例に挙げて説明する。ニッケルめっき銅合金タブ端子2は、第1部材の一例に相当し、アルミニウムバスバー1は、第2部材の一例に相当する。また、以下では、アルミニウムバスバー1を単に「バスバー1」と記し、ニッケルめっき銅合金タブ端子2を単に「タブ端子2」と記す。
まず、図1Bに示すように、バスバー1の平坦な面の上に、タブ端子2を重ねて配置する。
この配置を行う際、治具(図示略)を用いて、タブ端子2とバスバー1との隙間がなるべく小さくなるように、タブ端子2をバスバー1に押し当てる。
次に、所定の出力値に設定されたレーザ光5aをタブ端子2に照射しながら走査する。この走査は、図1Aに示す軌道6aに沿って(図1Aでは、図の上方から下方へ。図1Bでは、図の奥側から手前側へ)行われる。これにより、タブ端子2において、ニッケルめっき銅合金が溶融する。この溶融部分は、レーザ光5aの照射面から界面(バスバー1とタブ端子2との接合面)までの部分である。溶融部分は、冷却されると凝固部となる。
レーザ光5aが遠ざかると、溶融したニッケルめっき銅合金が凝固し、図1Bに示すように、凝固部3a(第1凝固部の一例)が形成される。凝固部3aは、僅かなニッケルと、銅とを含む。
一方、バスバー1では、ニッケルめっき銅合金の溶融によってアルミニウムが溶融する。このとき、アルミニウムと、僅かなニッケルと、銅とが溶融した状態で混ざり合う。そして、レーザ光5aが遠ざかると、図1Bに示すように、合金である凝固部4a(第2凝固部の一例)が形成される。凝固部4aは、アルミニウムと、僅かなニッケルと、銅とを含む。凝固部4aは、凝固部3aと接している。
次に、レーザ光5aと同じ出力値に設定されたレーザ光5bをタブ端子2に照射しながら走査する。この走査は、図1Aに示す軌道6bに沿って(図1Aでは、図の上方から下方へ。図1Bでは、図の奥側から手前側へ)行われる。これにより、タブ端子2において、ニッケルめっき銅合金が溶融する。
レーザ光5bが遠ざかると、溶融したニッケルめっき銅合金が凝固し、図1Bに示すように、凝固部3b(第1凝固部の一例)が形成される。凝固部3bは、僅かなニッケルと、銅とを含む。なお、図1Bでは、1つの凝固部3bのみに符号「3b」を付しているが、図1Aに示した複数の軌道6bに対応して、複数の凝固部3bが形成される。
一方、バスバー1では、ニッケルめっき銅合金の溶融によってアルミニウムが溶融する。このとき、アルミニウムと、ニッケルと、銅とが溶融した状態で混ざり合う。そして、レーザ光5bが遠ざかると、図1Bに示すように、合金である凝固部4b(第2凝固部の一例)が形成される。凝固部4bは、アルミニウムと、僅かなニッケルと、銅とを含む。凝固部4bは、凝固部3bと接している。なお、図1Bでは、1つの凝固部4bのみに符号「4b」を付しているが、複数の凝固部3bに対応して、複数の凝固部4bが形成される。
ニッケルめっき銅合金は、アルミニウムに比べて、融点が高く、かつ、熱伝導率も高い。よって、タブ端子2では、レーザ光5a、5bの照射部分から若干広がった領域のみが溶融し、その周辺の熱は周りに逃げていくため融点以下になる。したがって、タブ端子2では、溶融部分は、図における左右方向に大きく広がらない。よって、凝固部3a、3bも、左右方向に大きく広がらない。
一方、高温となったニッケルめっき銅合金の溶融部分がバスバー1に達すると、アルミニウムは溶融を開始する。その後、熱の広がりに応じて、アルミニウムの溶融部分は、順次周辺に広がっていく。アルミニウムは、ニッケルめっき銅合金に比べて、融点が低く、かつ、熱伝導率も低い。そのため、アルミニウムの溶融部分は、ニッケルめっき銅合金の溶融部分よりもゆっくりと大きく、左右方向に広がる。その結果、凝固部4aと凝固部4bとは融合して1つの塊となる。
レーザ光5aが軌道6aに沿って照射された後、ニッケルめっき銅合金およびアルミニウムの溶融部分は、それぞれ、速やかに冷却され、凝固部3aおよび凝固部4aとなる。
しかし、次のレーザ光5bが軌道6bに沿って照射されるときには、凝固部3aおよび凝固部4aは、まだ高い温度を保っている。したがって、例えば、レーザ光5bの照射により溶融したニッケルめっき銅合金の温度は、凝固部3aからの熱伝導により、レーザ光5bが1回のみ照射されたときの温度よりも高くなる。
仮に、軌道6aと軌道6bとの間に間隔がないとすると、レーザ光5bの照射によるニッケルめっき銅合金の溶融部分は、凝固部3aからの熱伝導により加熱され、より高い温度となる。よって、その溶融部分が凝固するまでの時間は長くなる。その結果、より多くの金属間化合物が生成され、接合強度の低下を招く。
これに対し、本実施の形態では、図1Aに示すように、複数の軌道6a、6bが、所定の間隔(以下、軌道間隔という)を空けて設定されている。軌道間隔は、隣り合う軌道間の距離と言い換えてもよい。
例えば、軌道間隔は、タブ端子2において凝固部3a、3bが互いに分離して形成されるように、かつ、バスバー1において凝固部4a、4bが融合して1つの凝固部(以下、塊ともいう)が形成されるように設定されている。換言すれば、軌道間隔は、タブ端子2内に形成される凝固部3a、3bの数が、バスバー1内に形成される凝固部4a、4bの数よりも多くなるように設定されている。
これにより、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)が凝固部3aによって加熱されることを抑制でき、その溶融部分の温度の上昇を抑えることができる。
特に、タブ端子2では、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)と、凝固部3aとの間に、未溶融のニッケルめっき銅合金が存在することになる。よって、このニッケルめっき銅合金でのレーザ走査方向と並行方向(図1Bの奥や手前側)への熱伝導により、溶融部分への熱伝導量が極端に抑制される。よって、溶融部分の温度上昇を抑制でき、凝固時の金属間化合物の生成を抑制できる。したがって、接合強度の高い溶接構造が得られる。すなわち、高品質、高信頼性の溶接構造を実現できる。
なお、図1Aにおいて、レーザ光5bの軌道6bの数を増やす程、先に形成された凝固部による溶融部分への加熱を抑制する効果が増大し、さらに、接合面積も増加するので、より接合強度の高い溶接構造を得られる。
一方、バスバー1の凝固部4a、4bは、図1Bに示すように融合して1つの大きな塊になることが好ましい。タブ端子2とバスバー1との接合面における凝固部3a、3b以外の未溶融部分は、バスバー1が溶融してタブ端子2に接触すると、物理的溶着状態(ただし、合金を形成する場合よりも接合強度は低い)となる。よって、全体としての接合強度は、合金を形成しただけの場合に比べて増加するので、接合強度を向上させることができる。
なお、上記説明では、タブ端子2とバスバー1との間に隙間なく、タブ端子2とバスバー1とを溶接する場合について説明したが、図1Cに示すように、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けてタブ端子2とバスバー1とを溶接してもよい。
その場合、バスバー1では、タブ端子2の溶融部分の近傍で溶融が開始される。このとき、バスバー1の溶融部分の温度は、アルミニウムの融点よりも十分に高いため、バスバー1の溶融部分は、流動性が高くなる。よって、その溶融部分が凝固するまでの時間は長くなる。したがって、バスバー1の溶融部分は、タブ端子2の溶融部分と十分に接触し、バスバー1とタブ端子2との接合が可能となる。
また、バスバー1の溶融部分は、先に形成されたバスバー1の凝固部と十分に接触するまで広がる。よって、タブ端子2とバスバー1との間に隙間がない場合(図1B参照)と同様に、凝固部同士(例えば、図1Cに示す凝固部4aと凝固部4b)が融合して接合強度の高い溶接構造を得ることができる。
なお、本実施の形態では、タブ端子2における全ての凝固部3a、3bが互いに分離する理想的な状態について説明したが、これに限定されない。全ての凝固部3a、3bのうちいくつかが融合しても、上記同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、バスバー1における全ての凝固部4a、4bが融合して1つの大きな凝固部(塊)となる理想的な状態について説明したが、これに限定されない。凝固部4a、4bが融合した塊が複数あっても、上記同様の効果が得られる。
すなわち、タブ端子2の凝固部の総数がバスバー1の凝固部の総数より1つ以上多い状態であれば、上記同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、相対的に融点の低い金属部材としてバスバー1を例に挙げて説明したが、これに限定されず、バスバー以外の形態を採る部材であってもよい。
また、本実施の形態では、相対的に融点の高い金属部材としてタブ端子2を例に挙げて説明したが、これに限定されず、タブ端子以外の形態を採る部材であってもよい。
また、本実施の形態では、ニッケルめっき銅合金とアルミニウムの組合せを例に挙げて説明したが、これに限定されず、金属間化合物が生成されうる金属の組合せであればよい。例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の組合せ、ニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)の組合せ、鉄(Fe)とチタン(Ti)の組合せ、鉄(Fe)とアルミニウム(Al)の組合せなどであってもよい。これらの組合せでは、相対的に融点が高い金属または合金を第1部材として適用でき、相対的に融点が低い金属または合金を第2部材として適用できる。
また、通常、めっきの厚みは、十数μm以下であり、金属部材の体積(量)と比較して非常に少ない。よって、タブ端子2におけるめっきの種類や厚みについて、特に限定はない。さらには、タブ端子2においてめっきは含まれていなくてもよい。また、タブ端子2では、銅合金の代わりに銅が用いられてもよい。また、バスバー1では、アルミニウムの代わりにアルミニウム合金が用いられてもよい。
次に、本実施の形態に係る実施例1〜3および比較例1、2について、以下に説明する。
(実施例1)
実施例1について、図1A〜図1Cを用いて説明する。
実施例1について、図1A〜図1Cを用いて説明する。
図1Bに示すように、まず、厚み5mmのアルミニウムから成るバスバー1の上に、めっき厚1μmのニッケルめっきを施した、厚み0.25mmの銅合金から成るタブ端子2を重ねた。
次に、治具(図示略)を用いてタブ端子2をバスバー1に押し当て、タブ端子2とバスバー1との間に隙間が生じないようにした。
次に、タブ端子2の表面(バスバー1との接合面とは反対側の面)に、出力1400Wのファイバーレーザから発振したレーザ光5aを照射し、5mm長の軌道6aに沿って、800mm/sの速度で走査した。
次に、図1Aにおいて軌道6aから左方向に0.2mm(軌道間隔の一例)ずらし、タブ端子2の表面に対して出力1400Wのレーザ光5bを照射し、5mm長の軌道6bに沿って、800mm/sの速度で走査した。この一連の動作を、さらに3回繰り返し行った。
以上のように、軌道間隔を0.2mmずつ空けながら、合計5回の走査(軌道6aに沿った走査は1回。軌道6bに沿った走査は4回)を行った。
上述した一連の工程を3回行って、図1Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。そして、各サンプルにおいて、タブ端子2の上方への引張り強度(剥離強度または接合強度ともいう)を測定した。その結果、3つのサンプルにおける引張り強度は、それぞれ、82N、83N、87Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に0.1mmの隙間が設けられるようにタブ端子2とバスバー1とを配置し、上記同様に溶接を行うことで、図1Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
これら3つのサンプルにおける引張り強度は、63N、69N、57Nであった。すなわち、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接した場合でも、50Nを越える高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、タブ端子2における凝固部3a、3bが互いに分離した溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、めっきの厚み、タブ端子2の厚み、およびバスバー1の厚みは、上述した各値に限定されない。また、レーザ光の出力値、走査速度、走査間隔(軌道間隔)等の条件は、上記各値に限定されるものではなく、溶接する金属部材の材料や表面状態、板厚、治具を含めた総熱容量に応じて設定すればよい。これらについては、後述する各実施例においても同様である。
また、本実施例では、レーザ発振器としてファイバーレーザを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、高出力が得られるディスクレーザ、YAGレーザ、CO2レーザ、または半導体レーザ等を用いてもよい。これについては、後述する各実施例においても同様である。
また、本実施例では、ニッケルめっき銅合金から成るタブ端子2とアルミニウムから成るバスバー1の組合せを例に挙げて説明したが、材料および部品の形態はそれらに限定されない。これについては、後述する各実施例においても同様である。
(実施例2)
実施例2について、図1A〜図1Cを用いて説明する。実施例2では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、軌道間隔を0.1mmに設定した。
実施例2について、図1A〜図1Cを用いて説明する。実施例2では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、軌道間隔を0.1mmに設定した。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図1Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、88N、87N、85Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、1つのサンプルでは、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。残りの2つのサンプルでは、凝固部3a、3bのうち一部が融合していた。よって、残りの2つのサンプルのうち、1つでは、上面から見た凝固部の数が2つであり、もう1つでは、上面から見た凝固部の数が3つであった。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図1Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、69N、72N、73Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、2つのサンプルでは、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。残りの1つのサンプルでは、凝固部3a、3bのうち一部が融合しており、上面から見た凝固部の数は、4つであった。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、タブ端子2において凝固部3a、3bの一部が融合したとしても、凝固部3a、3bの数が、バスバー1の凝固部4a、4bの数よりも多ければ、隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができる。
なお、本実施例では、軌道間隔を0.1mmに設定した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、めっきの厚み、タブ端子2の厚み、バスバー1の厚み等の各設計値や、レーザ光の出力値、溶接速度等の溶接条件に応じて、設定すればよい。
(実施例3)
実施例3について、図1A〜図1Cを用いて説明する。実施例3では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、軌道間隔を0.3mmに設定した。
実施例3について、図1A〜図1Cを用いて説明する。実施例3では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、軌道間隔を0.3mmに設定した。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図1Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、94N、92N、87Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、2つのサンプルでは、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。残りの1つのサンプルでは、凝固部の塊が2つ形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図1Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、60N、54N、66Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図1Aに示す軌道6a、6bと同様に、凝固部3a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、1つのサンプルでは、凝固部4a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。残りの2つのサンプルでは、凝固部の塊は2つまたは3つであった。
以上のように、バスバー1において凝固部4a、4bの塊が複数形成されたとしても、凝固部3a、3bの数が、バスバー1の凝固部4a、4bの数よりも多ければ、隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができる。
なお、本実施例では、軌道間隔を0.3mmに設定した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、めっきの厚み、タブ端子2の厚み、バスバー1の厚み等の各設計値や、レーザ光の出力値、溶接速度等の溶接条件に応じて、設定すればよい。
(比較例1)
比較例1について、図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図2Aは、本比較例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図2Bは、図2AのA−A’断面図である。
比較例1について、図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図2Aは、本比較例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図2Bは、図2AのA−A’断面図である。
比較例1では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。図2Aに示すように、本実施例では、軌道間隔を、図1Aに示した軌道間隔よりも小さく設定した。本実施例の軌道間隔は、例えば0.05mmである。
また、本実施例では、図2Bに示すように、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行った。そして、図2Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、46N、48N、39Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50N未満であり、高い引張り強度を実現できなかった。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部3a、3bが融合して、1つの塊が形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが融合して、1つの塊が形成されていた。
以上のように、軌道間隔が短い場合、タブ端子2の凝固部3a、3bが融合して1つの凝固部が形成される。この場合、上述したとおり、レーザ光5bの照射によって現在溶融している部分は、先に形成された隣接する凝固部からの熱伝導により、高温となる。これにより、バスバー1の凝固部4a、4bにおいて多くの金属間化合物が形成されてしまう。したがって、高い接合強度を得ることができない。
(比較例2)
比較例2について、図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aは、本比較例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図3Bは、図3AのA−A’断面図である。
比較例2について、図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aは、本比較例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図3Bは、図3AのA−A’断面図である。
比較例2では、軌道間隔以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。図3Aに示すように、本実施例では、軌道間隔を、図1Aに示した軌道間隔よりも大きく設定した。本実施例の軌道間隔は、例えば0.4mmである。
また、本実施例では、図3Bに示すように、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行った。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、25N、27N、19Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50N未満であり、高い引張り強度を実現できなかった。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光5a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部3a、3bが互いに分離していた(図3B参照)。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部4a、4bが互いに分離していた(図3B参照)。凝固部4a、4bの総数は、凝固部3a、3bの総数と同じであった。
以上のように、軌道間隔が広い場合、タブ端子2の凝固部3a、3bが互いに分離するが、それらに対応してバスバー1の凝固部4a、4bも分離する。よって、引っ張り時において、凝固部4a、4bのそれぞれが順次剥離してしまう。そのため、軌道の数を増やして溶接を行っても、結果的には、1つの軌道のみで溶接した場合と同じであり、高い接合強度を得ることはできない。
上述した実施例1〜3および比較例1、2から明らかなように、タブ端子2の凝固部3a、3bの数がバスバー1の凝固部4a、4bの数よりも多い溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図4A〜Cを用いて説明する。図4A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図4Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図4Bは、隙間がない場合の図4AのA−A’断面図である。図4Cは、隙間がある場合の図4AのA−A’断面図である。
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図4A〜Cを用いて説明する。図4A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図4Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図4Bは、隙間がない場合の図4AのA−A’断面図である。図4Cは、隙間がある場合の図4AのA−A’断面図である。
本実施の形態では、実施の形態1と異なり、出力の異なるレーザ光を使用して走査を行う。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行う場合について説明する。
最初に、図4Bに示すように、バスバー1の平坦な面の上に、タブ端子2を重ねて配置する。
次に、レーザ光8aをタブ端子2に照射しながら走査する。この走査は、図4Aに示す軌道7aに沿って(図4Aでは、図の上方から下方へ。図4Bでは、図の奥側から手前側へ)、任意の速度で行われる。また、レーザ光8aの出力値は、実施の形態1で説明したレーザ光5aの出力値よりも大きい。
上記走査により、タブ端子2においてニッケルめっき銅合金が溶融した後、バスバー1においてアルミニウムが溶融する。
レーザ光8aが遠ざかると、図4Bに示すように、タブ端子2の溶融部分が凝固して凝固部9a(第1凝固部の一例)が形成され、バスバー1の溶融部分が凝固して凝固部10a(第2凝固部、第3凝固部の一例)が形成される。凝固部10aは、凝固部9aと接している。
凝固部9aは、銅と、僅かなニッケル(めっき)とを含む。凝固部10aは、ニッケル、銅、およびアルミニウムを含む。
図4Bに示すように、凝固部10aの深度(図における上下方向の長さ)は、凝固部4bの深度よりも大きい。なお、以下では、「深度が大きい」および「深度が小さい」という表現を用いるが、これらは、それぞれ、「深度が深い」および「深度が浅い」と言い換えてもよい。
次に、レーザ光5bをタブ端子2に照射しながら走査する。この走査は、図4Aに示す軌道6bに沿って(図4Aでは、図の上方から下方へ。図4Bでは、図の奥側から手前側へ)、任意の速度で行われる。
ここで、レーザ光の出力値の大小関係は、5a=5b<8aである。また、各レーザ光の走査速度は全て同じとする。また、軌道6aと軌道6bの中心間距離と、軌道7aと軌道6bの中心間距離とは、同じである。その結果、タブ端子2の凝固部の幅(図における左右方向の長さ)の大小関係は、3a=3b<9aとなる。また、アルミバスバー1の凝固部の深度の大小関係は、4a=4b<10aとなる。ただし、生産のばらつきによる僅かな幅や深度の差は無視するものする。
上記走査により、タブ端子2においてニッケルめっき銅合金が溶融した後、バスバー1においてアルミニウムが溶融する。
レーザ光5bが遠ざかると、図4Bに示すように、タブ端子2の溶融部分が凝固して凝固部3b(第1凝固部の一例)が形成され、バスバー1の溶融部分が凝固して凝固部4b(第2凝固部、第4凝固部の一例)が形成される。
凝固部3bは、銅と、僅かなニッケル(めっき)とを含む。凝固部4bは、ニッケル、銅、およびアルミニウムを含む。また、図4Bに示すように、凝固部4bの深度は、凝固部10aの深度よりも小さい。
ニッケルめっき銅合金は、アルミニウムに比べて、融点が高く、かつ、熱伝導率も高い。よって、タブ端子2では、レーザ光8a、5bの照射部分から若干広がった領域のみが溶融し、その周辺の熱は周りに逃げていくため融点以下になる。したがって、タブ端子2では、溶融部分は、図における左右方向に大きく広がらない。よって、凝固部9a、3bも、左右方向に大きく広がらない。
一方、高温となったニッケルめっき銅合金の溶融部分がバスバー1に達すると、アルミニウムは溶融を開始する。その後、熱の広がりに応じて、アルミニウムの溶融部分は、順次周辺に広がっていく。アルミニウムは、ニッケルめっき銅合金に比べて、融点が低く、かつ、熱伝導率も低い。そのため、アルミニウムの溶融部分は、ニッケルめっき銅合金の溶融部分よりもゆっくりと大きく、左右方向に広がる。その結果、凝固部10aと凝固部4bとは融合して1つの塊となる。
レーザ光8aが軌道7aに沿って照射された後、ニッケルめっき銅合金およびアルミニウムの溶融部分は、それぞれ、速やかに冷却され、凝固部9aおよび凝固部10aとなる。
しかし、次のレーザ光5bが軌道6bに沿って照射されるときには、凝固部9aおよび凝固部10aは、まだ高い温度を保っている。したがって、例えば、レーザ光5bの照射により溶融したニッケルめっき銅合金の温度は、凝固部9aからの熱伝導により、レーザ光5bが1回のみ照射されたときの温度よりも高くなる。よって、レーザ光5bの照射により溶融した部分が凝固するまでの時間は長くなる。その結果、より多くの金属間化合物が生成され、接合強度の低下を招く。
これに対し、本実施の形態では、例えば、図4Aに示す軌道7a、6bにおける軌道間隔は、タブ端子2において凝固部9a、3bが互いに分離して形成されるように、かつ、バスバー1において凝固部10a、4bが融合して1つの凝固部が形成されるように設定されている。換言すれば、軌道間隔は、タブ端子2内に形成される凝固部9a、3bの数が、バスバー1内に形成される凝固部10a、4bの数よりも多くなるように設定されている。
これにより、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)が凝固部9aによって加熱されることを抑制でき、その溶融部分の温度の上昇を抑えることができる。
特に、タブ端子2では、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)と、凝固部9aとの間に、未溶融のニッケルめっき銅合金が存在することになる。よって、このニッケルめっき銅合金でのレーザ走査方向と並行方向(図4Bにおける奥や手前側)への熱伝導により、溶融部分への熱伝導量が極端に抑制される。よって、溶融部分の温度上昇を抑制でき、凝固時の金属間化合物の生成を抑制できる。したがって、接合強度の高い溶接構造が得られる。
なお、図4Aにおいて、レーザ光5bの軌道6bの数を増やす程、先に形成された凝固部による溶融部分への加熱を抑制する効果が増大し、さらに、接合面積も増加するので、より接合強度の高い溶接構造を得られる。
また、上記説明では、タブ端子2とバスバー1との間に隙間なく、タブ端子2とバスバー1とを溶接する場合について説明したが、図4Cに示すように、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けてタブ端子2とバスバー1とを溶接してもよい。
その場合、バスバー1では、タブ端子2の溶融部分の近傍で溶融が開始される。このとき、バスバー1の溶融部分の温度は、アルミニウムの融点よりも十分に高いため、バスバー1の溶融部分は、流動性が高くなる。よって、その溶融部分が凝固するまでの時間は長くなる。したがって、バスバー1の溶融部分は、タブ端子2の溶融部分と十分に接触し、バスバー1とタブ端子2との接合が可能となる。
また、バスバー1の溶融部分は、先に形成されたバスバー1の凝固部と十分に接触するまで広がる。よって、タブ端子2とバスバー1との間に隙間がない場合(図4B参照)と同様に、凝固部同士(例えば、図4Cに示す凝固部10aと凝固部4b)が融合して接合強度の高い溶接構造を得ることができる。
また、図4Bに示す溶接構造において、凝固部10aは、高出力のレーザ光8aの照射により溶融した後に形成された凝固部である。そのため、図1Bに示した溶接構造における凝固部4aと比べて、金属間化合物が多く生成され、接合強度が低下する。しかし、レーザ光8aよりも低出力のレーザ光5bの照射により溶融した後に形成された凝固部4bによって、金属間化合物の生成が抑制される。そのため、図4Bに示す溶接構造の全体としての接合強度と、図1Bに示した溶接構造の接合強度との間に、大きな差は生じない。これは、走査回数(例えば、軌道6bの数)が多いほど、顕著となる。
一方、図4Cに示した溶接構造では、バスバー1において凝固部10aがより深くまで溶け込んでおり、かつ、バスバー1の溶融部分の温度は、隙間の存在により、隙間がない場合におけるバスバー1の溶融部分の温度より低くなる。よって、図1Cに示した凝固部4aと比べて、金属間化合物の生成が抑えられ、接合強度が高くなる。この凝固部10aによって、隙間に対する接合強度の向上が実現される。凝固部10aの数が増えるほど、隙間が設けられた溶接構造における接合強度の向上および安定性を実現することが可能となる。
図4Cに示すように、凝固部10aの深度は、図4Cに示した凝固部4bの深度よりも大きい。また、図4B、図4Cに示した凝固部10aの大小関係は、以下の通りである。図4Cに示した凝固部10aの深度=図4Bに示した凝固部10aの深度+タブ端子2とバスバー1との間の隙間(図における上下方向の長さ)−α。
ここで、αは、非常に僅かな値である。具体的には、タブ端子2において溶融したニッケル銅は、隙間を通ってバスバー1の表面に到達するとき、隙間の雰囲気(空気)により僅かに冷やされる。そのため、バスバー1に到達したニッケル銅の温度は、僅かに低下する。これにより、凝固部10aの深度は、図4Bに示した凝固部10aの深度に比べ、僅かに小さくなる。αは、この僅かに小さくなる深度であるため、ゼロとしてもよい。
(実施例4)
実施例4について、図4A〜図4Cを用いて説明する。実施例4では、レーザ光8aの出力以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、レーザ光8aの出力を1800Wに設定した。また、レーザ光8aによる走査速度を800mm/sに設定した。また、軌道間隔(例えば、軌道7aと軌道6bとの間隔、隣り合う軌道6b間の間隔)を0.2mmとした。
実施例4について、図4A〜図4Cを用いて説明する。実施例4では、レーザ光8aの出力以外の条件を実施例1と同様に設定し、溶接を行った。本実施例では、レーザ光8aの出力を1800Wに設定した。また、レーザ光8aによる走査速度を800mm/sに設定した。また、軌道間隔(例えば、軌道7aと軌道6bとの間隔、隣り合う軌道6b間の間隔)を0.2mmとした。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図4Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、85N、85N、88Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図4Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図4Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、70N、64N、66Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図4Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい1つの凝固部10aと、それよりも深度が小さい複数の凝固部4bとが形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、凝固部10aの位置が図において最も右側である場合を例に挙げて説明したが、凝固部10aの位置は、他の位置(図4B、図4Cに示したいずれかの凝固部4bの位置)であってもよい。
(実施例5)
実施例5について、図5A〜Cを用いて説明する。図5A〜Cは、本実施例に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図5Aは、本実施例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図5Bは、隙間がない場合の図5AのA−A’断面図である。図5Cは、隙間がある場合の図5AのA−A’断面図である。
実施例5について、図5A〜Cを用いて説明する。図5A〜Cは、本実施例に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図5Aは、本実施例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図5Bは、隙間がない場合の図5AのA−A’断面図である。図5Cは、隙間がある場合の図5AのA−A’断面図である。
本実施例は、実施例4と比べて、レーザ光8a、5bによる走査をこの順に行った後、さらにレーザ光8aによって走査を行う点が異なる。すなわち、凝固部9a、10a、3b、4bが1つずつ形成されるところまでは、実施例4と同様である。
その後、本実施例では、図5Aに示す軌道7aに沿ったレーザ光8a(出力値は1800W)の走査を1回行う。これにより、タブ端子2において凝固部9aが形成され、バスバー1において凝固部10aが形成される(図5B、図5C参照)。
なお、その後は実施例4と同様に、図5Aに示す軌道6bに沿ったレーザ光5b(出力値は1400W)の走査を2回行う。これにより、タブ端子2において凝固部3bが形成され、バスバー1において凝固部4bが形成される(図5B、図5C参照)。
まず、上述した溶接方法により、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図5Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、83N、83N、87Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、上述した溶接方法により、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図5Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、77N、76N、73Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい2つの凝固部10aと、それよりも深度が小さい複数の凝固部4bとが形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、2つの凝固部10aの位置は、図5B、図5Cに示した位置に限定されず、他の位置(図5B、図5Cに示したいずれかの凝固部4bの位置)であってもよい。
(実施例6)
実施例6について、図6A〜Cを用いて説明する。図6A〜Cは、本実施例に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図6Aは、本実施例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図6Bは、隙間がない場合の図6AのA−A’断面図である。図6Cは、隙間がある場合の図6AのA−A’断面図である。
実施例6について、図6A〜Cを用いて説明する。図6A〜Cは、本実施例に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図6Aは、本実施例に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図6Bは、隙間がない場合の図6AのA−A’断面図である。図6Cは、隙間がある場合の図6AのA−A’断面図である。
本実施例は、実施例5と比べて、図6Aに示す軌道7a、6bに基づいてレーザ光8a、5bによる走査を交互に行う点が異なる。これにより、タブ端子2では、凝固部9aと凝固部3bとが交互に形成され、バスバー1では、凝固部10aと凝固部4bとが交互に形成される(図6B、図6C参照)。よって、凝固部10aの数と凝固部4bの数は、ほぼ同じとなる。
まず、上述した溶接方法により、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図6Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、82N、88N、87Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図6Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、上述した溶接方法により、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図6Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、80N、81N、83Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図6Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい凝固部10aと、それよりも深度が小さい凝固部4bとが交互に形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、深度が大きい凝固部10aの数が、深度が小さい凝固部4bの数より1つだけ多い場合を例に挙げて説明したが、両者の数は、これに限定されない。例えば、凝固部4bの数が凝固部10aの数よりも1つ多くてもよいし、凝固部10aの数と凝固部4bの数が同じ(総走査回数が偶数である場合)であってもよい。
実施の形態2の他の例に係る溶接構造および溶接方法について、図4A〜Cを用いて説明する。
本例では、レーザ光8a、5bの出力は同じで走査速度を変更する。具体的には、軌道7aに沿ったレーザ光8aによる走査の速度を、軌道6bに沿ったレーザ光5bによる走査の速度よりも遅くする。走査速度以外の条件は、実施の形態2で既に説明したものと同じである。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行う場合について説明する。
レーザ光8aによる走査が行われる場合、走査速度が相対的に遅いため、バスバー1の溶融部分(凝固部10aとなる部分)では、加熱される時間が長くなり、温度が高くなる。そして、レーザ光8a遠ざかると、溶融部分は、ゆっくりと凝固する。よって、溶融部分が凝固するまでの時間は長くなる。
その結果、図4Bに示す凝固部10aでは、金属間化合物は多く生成されるが、深度が大きくなる。この金属間化合物は、引っ張り応力に対して格子のズレが起き難く、その応力を緩和できない。よって、低い引張り強度で格子間の剥離が発生し、引張り強度が低いという特徴を持つ。
一方、レーザ光5bによる走査が行われる場合、走査速度が相対的に速いため、バスバー1の溶融部分(凝固部4bとなる部分)では、加熱される時間が短くなり、温度が低くなる。そして、レーザ光5bが遠ざかると、溶融部分は凝固するが、その溶融部分が凝固するまでの時間は短くなる。
その結果、図4Bに示す凝固部4bでは、金属間化合物は生成され難い。よって、通常の合金(格子欠陥が多く存在する固溶体)が支配的となり、引っ張り応力に対して格子のズレが簡単に起こる。そのため、その応力を緩和でき、高い引張り強度を実現できる。
ニッケルめっき銅合金は、アルミニウムに比べて、融点が高く、かつ、熱伝導率も高い。よって、タブ端子2では、レーザ光8a、5bの照射部分から若干広がった領域のみが溶融し、その周辺の熱は周りに逃げていくため融点以下になる。したがって、タブ端子2では、溶融部分は、図における左右方向に大きく広がらない。よって、凝固部9a、3bも、左右方向に大きく広がらない。
一方、高温となったニッケルめっき銅合金の溶融部分がバスバー1に達すると、アルミニウムは溶融を開始する。その後、熱の広がりに応じて、アルミニウムの溶融部分は、順次周辺に広がっていく。アルミニウムは、ニッケルめっき銅合金に比べて、融点が低く、かつ、熱伝導率も低い。そのため、アルミニウムの溶融部分は、ニッケルめっき銅合金の溶融部分よりもゆっくりと大きく、左右方向に広がる。その結果、凝固部10aと凝固部4bとは融合して1つの塊となる。
レーザ光8aが軌道7aに沿って照射された後、ニッケルめっき銅合金およびアルミニウムの溶融部分は、それぞれ、速やかに冷却され、凝固部9aおよび凝固部10aとなる。
しかし、次のレーザ光5bが軌道6bに沿って照射されるときには、凝固部9aおよび凝固部10aは、まだ高い温度を保っている。したがって、例えば、レーザ光5bの照射により溶融したニッケルめっき銅合金の温度は、凝固部9aからの熱伝導により、レーザ光5bが1回のみ照射されたときの温度よりも高くなる。よって、レーザ光5bの照射により溶融した部分が凝固するまでの時間は長くなる。その結果、より多くの金属間化合物が生成され、接合強度の低下を招く。
これに対し、本実施の形態では、例えば、図4Aに示す軌道7a、6bにおける軌道間隔は、タブ端子2において凝固部9a、3bが互いに分離して形成されるように、かつ、バスバー1において凝固部10a、4bが融合して1つの凝固部が形成されるように設定されている。換言すれば、軌道間隔は、タブ端子2内に形成される凝固部9a、3bの数が、バスバー1内に形成される凝固部10a、4bの数よりも多くなるように設定されている。
これにより、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)が凝固部9aによって加熱されることを抑制でき、その溶融部分の温度の上昇を抑えることができる。
特に、タブ端子2では、レーザ光5bの照射による溶融部分(凝固部3bとなる部分)と、凝固部9aとの間に、未溶融のニッケルめっき銅合金が存在することになる。よって、このニッケルめっき銅合金でのレーザ走査方向と並行方向(図4Bにおける奥や手前側)への熱伝導により、溶融部分への熱伝導量が極端に抑制される。よって、溶融部分の温度上昇を抑制でき、凝固時の金属間化合物の生成を抑制できる。したがって、接合強度の高い溶接構造が得られる。
なお、図4Aにおいて、レーザ光5bの軌道6bの数を増やす程、先に形成された凝固部による溶融部分への加熱を抑制する効果が増大し、さらに、接合面積も増加するので、より接合強度の高い溶接構造を得られる。
また、上記説明では、タブ端子2とバスバー1との間に隙間なく、タブ端子2とバスバー1とを溶接する場合について説明したが、図4Cに示すように、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けてタブ端子2とバスバー1とを溶接してもよい。
その場合、バスバー1では、タブ端子2の溶融部分の近傍で溶融が開始される。このとき、バスバー1の溶融部分の温度は、アルミニウムの融点よりも十分に高いため、バスバー1の溶融部分は、流動性が高くなる。よって、その溶融部分が凝固するまでの時間は長くなる。したがって、バスバー1の溶融部分は、タブ端子2の溶融部分と十分に接触し、バスバー1とタブ端子2との接合が可能となる。
また、バスバー1の溶融部分は、先に形成されたバスバー1の凝固部と十分に接触するまで広がる。よって、タブ端子2とバスバー1との間に隙間がない場合(図4B参照)と同様に、凝固部同士(例えば、図4Cに示す凝固部10aと凝固部4b)が融合して接合強度の高い溶接構造を得ることができる。
また、図4Bに示す溶接構造において、凝固部10aは、低速度の走査によるレーザ光8aの照射により溶融した後に形成された凝固部である。そのため、図1Bに示した溶接構造における凝固部4aと比べて、金属間化合物が多く生成され、接合強度が低下する。しかし、レーザ光8aよりも高速度の走査によるレーザ光5bの照射により溶融した後に形成された凝固部4bによって、金属間化合物の生成が抑制される。そのため、図4Bに示す溶接構造の全体としての接合強度と、図1Bに示した溶接構造の接合強度との間に、大きな差は生じない。これは、走査回数(例えば、軌道6bの数)が多いほど、顕著となる。
一方、図4Cに示した溶接構造では、バスバー1において凝固部10aがより深くまで溶け込んでおり、かつ、バスバー1の溶融部分の温度は、隙間の存在により、隙間がない場合におけるバスバー1の溶融部分の温度より低くなる。よって、図1Cに示した凝固部4aと比べて、金属間化合物の生成が抑えられ、接合強度が高くなる。この凝固部10aによって、隙間に対する接合強度の向上が実現される。凝固部10aの数が増えるほど、隙間が設けられた溶接構造における接合強度の向上および安定性を実現することが可能となる。
(実施例7)
実施例7について、図4A〜図4Cを用いて説明する。実施例7では、レーザ光8aの出力および走査速度以外の条件を実施例4と同様に設定し、実施例4と同様に溶接を行った。本実施例では、レーザ光8aの出力を1400Wに設定し、レーザ光8aによる走査速度を400mm/sに設定した。
実施例7について、図4A〜図4Cを用いて説明する。実施例7では、レーザ光8aの出力および走査速度以外の条件を実施例4と同様に設定し、実施例4と同様に溶接を行った。本実施例では、レーザ光8aの出力を1400Wに設定し、レーザ光8aによる走査速度を400mm/sに設定した。
まず、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けずに溶接を行い、図4Bに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、90N、87N、85Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図4Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図4Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、68N、69N、73Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図4Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい1つの凝固部10aと、それよりも深度が小さい複数の凝固部4bとが形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、凝固部10aの位置が図において最も右側である場合を例に挙げて説明したが、凝固部10aの位置は、他の位置(図4B、図4Cに示したいずれかの凝固部4bの位置)であってもよい。
(実施例8)
実施例8について、図5A〜図5Cを用いて説明する。実施例8では、レーザ光8aの出力および走査速度の条件を実施例7と同様に設定し、実施例5と同様に溶接を行った。
実施例8について、図5A〜図5Cを用いて説明する。実施例8では、レーザ光8aの出力および走査速度の条件を実施例7と同様に設定し、実施例5と同様に溶接を行った。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、83N、85N、88Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図5Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、72N、71N、79Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい2つの凝固部10aと、それよりも深度が小さい複数の凝固部4bとが形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、2つの凝固部10aの位置は、図5B、図5Cに示した位置に限定されず、他の位置(図5B、図5Cに示したいずれかの凝固部4bの位置)であってもよい。
(実施例9)
実施例9について、図6A〜図6Cを用いて説明する。実施例9では、レーザ光8aの出力および走査速度の条件を実施例7と同様に設定し、実施例6と同様に溶接を行った。
実施例9について、図6A〜図6Cを用いて説明する。実施例9では、レーザ光8aの出力および走査速度の条件を実施例7と同様に設定し、実施例6と同様に溶接を行った。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、82N、84N、84Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
次に、タブ端子2とバスバー1との間に隙間を設けて溶接を行い、図5Cに示す溶接構造のサンプルを3つ作製した。隙間は、実施例1と同様に、0.1mmに設定した。
この場合、各サンプルにおいて計測された引張り強度は、それぞれ、83N、85N、80Nであった。すなわち、全ての引張り強度が50Nを越えており、高い引張り強度を実現できた。
また、各サンプルにおいて、タブ端子2におけるレーザ光8a、5bの照射面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、図5Aに示す軌道7a、6bと同様に、凝固部9a、3bが互いに分離して形成されていた。
また、各サンプルにおいて、バスバー1をタブ端子2から剥離し、バスバー1におけるタブ端子2との接合面を観察した。その結果、全てのサンプルにおいて、凝固部10a、4bが融合して1つの大きな塊が形成されていた。
以上のように、バスバー1において、深度が大きい凝固部10aと、それよりも深度が小さい凝固部4bとが交互に形成された溶接構造では、タブ端子2とバスバー1との間の隙間の有無に関わらず、高い接合強度を得ることができた。
なお、本実施例では、深度が大きい凝固部10aの数が深度が小さい凝固部4bの数より1つだけ多い場合を例に挙げて説明したが、両者の数は、これに限定されない。例えば、凝固部4bの数が凝固部10aの数よりも1つ多くてもよいし、凝固部10aの数と凝固部4bの数が同じ(総走査回数が偶数である場合)であってもよい。
(実施例10)
<軌跡間隔の影響について>
図6Bに示した溶接構造および図6Cに示した溶接構造のそれぞれを、軌道間隔を変えて複数製造し、凝固部10a、4bそれぞれの深度と、凝固部9aと凝固部3bとの間の最長距離(凝固部9aと凝固部3bとの間の未溶融部分の最長距離)と、接合強度との関係を調べた。
<軌跡間隔の影響について>
図6Bに示した溶接構造および図6Cに示した溶接構造のそれぞれを、軌道間隔を変えて複数製造し、凝固部10a、4bそれぞれの深度と、凝固部9aと凝固部3bとの間の最長距離(凝固部9aと凝固部3bとの間の未溶融部分の最長距離)と、接合強度との関係を調べた。
軌道間隔は、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mmとした。
軌道間隔以外の条件は、実施例9と同じである。ただし、レーザ光の出力値および走査速度は、実施例9における各値に限定されるものではなく、溶接する金属部材の材料や表面状態、板厚、治具を含めた総熱容量に応じて設定したものであればよい。
表2は、軌道間隔(ピッチ)および溶接構造毎に、凝固部10aの深度、凝固部4bの深度、凝固部9aのエッジと凝固部3bのエッジとの間の最長距離(凝固部間の最長距離)、引張り強度、および判定結果を示している。判定結果は、引張り強度が50N以上である場合に合格(丸印)とし、引張り強度が50N未満である場合に不合格(バツ印)とした。この50N以上という引張り強度は、例えばバッテリシステムとして必要な条件である。また、凝固部10a、4bの深度は平均の深度とした。
表2に示すように、軌道間隔が広くなる程、凝固部10a、4bの深度は小さくなる傾向にある。軌道間隔を0.4mmとして製造した図6Cに示す溶接構造では、凝固部4bの深度が9μmとなり、引張り強度が極端に低下した。この理由について、図7に示す参考例を用いて以下に説明する。
軌道間隔が0.4mmである場合、図7に示すように、バスバー1において凝固部10a、4bが互いに分離して形成される。よって、凝固部10aと凝固部4bとの間には、未溶融部分が存在する。この場合、先に形成された凝固部からの熱伝導は、未溶融部分において拡散される。よって、レーザ光の照射によって溶融している部分へ伝わる熱量が減り、溶融部分の温度が低下して、深度が小さくなる。その結果、引張り強度が低下すると考えられる。
また、軌道間隔を0.05mmとして製造した図6Bに示す溶接構造では、凝固部間の最長距離がゼロとなり、引張り強度が低下した。この理由について、図8に示す参考例を用いて以下に説明する。
軌道間隔が0.05mmである場合、図8に示すように、タブ端子2において凝固部9a、3bが融合して1つの塊が形成され、バスバー1において凝固部10a、4bが溶融して1つの塊が形成される。この場合、先に形成された凝固部から、レーザ光の照射によって溶融している部分へ伝わる熱量は、軌道数(走査回数)が多くなればなる程、大きくなる。よって、溶融部分の温度が高くなり、溶融部分が凝固するまでの時間が長くなる。その結果、金属間化合物が多く生成され、引張り強度が低下すると考えられる。
溶接を行う際に、隙間の有無を予め確認できない場合がある。よって、隙間の有無にかかわらず、高い引張り強度を示す信頼性の高い溶接を実現するためには、軌跡間隔を、100μm以上かつ350μm以下に設定することが好ましい。
(実施の形態3)
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図10A〜Dを用いて説明する。図10A〜Dは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図10Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図10Bは、隙間がない場合の図10AのB−B’断面図である。図10Cは、隙間がない場合の図10AのA−A’断面図である。図10Dは、隙間がある場合の図10AのB−B’断面図である。
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図10A〜Dを用いて説明する。図10A〜Dは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図10Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図10Bは、隙間がない場合の図10AのB−B’断面図である。図10Cは、隙間がない場合の図10AのA−A’断面図である。図10Dは、隙間がある場合の図10AのB−B’断面図である。
実施の形態3に係る溶接構造と、実施の形態1に係る溶接構造との違いは、次の通りである。
実施の形態1では、例えば図1A〜図1Cに示したように、走査方向と直交する方向にのみ複数の凝固部3aまたは3bが離間する(走査方向に対して凝固部3a(3b)は連続する)。これに対して、実施の形態3では、図10Aに示すように、複数の軌道6a(6b)が走査方向に対しても所定の間隔を空けて形成されている。これにより、図10B、図10Dに示すように、走査方向において、複数の凝固部3a(3b)が離間して構成されている。
すなわち、複数の凝固部3a(3b)は、平面視において、直交する方向に互いに離間する。より詳細には、複数の凝固部3a(3b)は、横(行)縦(列)に配列され、横方向(行方向)にも縦方向(列方向)にも互いに接続されないよう独立して配置される。
タブ端子2の凝固部の総数がバスバー1の凝固部の総数より多い状態であれば、上記同様の効果が得られる。より詳細には、互いに直交する第1方向(主走査方向)と第2方向(副走査方向)のそれぞれの(厚さ方向の)断面において、第1凝固部の数は、第2凝固部の数より大である(多い。以下同様)ことで、当該効果を得ることができる。
ここでは、図10Cに示す走査方向と直交するA−A’方向の断面、および、図10Bまたは図10Dに示す走査方向と平行なB−B’方向の断面において、複数の凝固部3a(3b)が互いに離間している。そして、A−A’断面およびB−B’断面のいずれにおいても、凝固部3a(3b)の数が凝固部4a(4b)の数よりも大である。
これにより、レーザ光5a(5b)の主走査で発生する蓄熱の影響を軽減できる。よって、温度上昇を抑制し、凝固部内の金属間化合物の生成を抑えることができる。その結果、本実施の形態では、実施の形態1に比べて、接合強度のより高い溶接構造を得ることができる。
特に、タブ端子2では、レーザ光5a(5b)の照射による溶融部分(凝固部3a(3b)となる部分)間に、未溶融のニッケルめっき銅合金が存在することになる。よって、このニッケルめっき銅合金でのレーザ走査方向の並行方向とその直角方向への熱伝導により、溶融部分への熱伝導量が抑制される。よって、溶融部分の温度上昇を抑制でき、凝固時の金属間化合物の生成を抑制できる。したがって、接合強度の高い溶接構造が得られる。すなわち、高品質、高信頼性の溶接構造を実現できる。
一方、バスバー1の凝固部4a(4b)は、図10B〜図10Dに示すように、互いに結合して、凝固部3a(3b)の総数よりも少なくなることが好ましい。さらには、凝固部4a(4b)は、各凝固部3a(3b)よりも大きな1つの塊を形成することが望ましい。これにより、接合強度の高い溶接構造が得られる。
凝固部3a(3b)を走査方向に対しても離間して形成するためには、凝固部3a(3b)間に未溶融部を形成する必要がある。未溶融部の形成方法は、レーザ光5a(5b)の出力を、金属が溶融しない程度に弱めるか、好ましくは出力0とする。すなわち、B−B’方向に沿って、レーザ光5a(5b)の出力を1000〜2000Wに調整して凝固部3a(3b)を形成する工程と、出力を0にして未溶融部のまま残置する工程とを繰り返す。
凝固部3a(3b)を走査方向に対しても離間して形成する方法以外については、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
(実施の形態4)
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図11A〜Dを用いて説明する。図11A〜Dは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図11Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図11Bは、隙間がない場合の図11AのB−B’断面図である。図11Cは、隙間がない場合の図11AのA−A’断面図である。図11Dは、隙間がある場合の図11AのB−B’断面図である。
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図11A〜Dを用いて説明する。図11A〜Dは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図11Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図11Bは、隙間がない場合の図11AのB−B’断面図である。図11Cは、隙間がない場合の図11AのA−A’断面図である。図11Dは、隙間がある場合の図11AのB−B’断面図である。
実施の形態4に係る溶接構造と、実施の形態2に係る溶接構造との違いは、次の通りである。
実施の形態2では、例えば図4A〜図4Cに示したように、走査方向と直交する方向にのみ複数の凝固部9aが凝固部3bと離間する(走査方向に対して凝固部9a(3b)は連続する)。これに対して、実施の形態4では、図11Aに示すように、複数の軌道7a(6b)が走査方向に対しても所定の間隔を空けて形成されており、複数の凝固部9a(3b)が離間して構成されている。
すなわち、複数の凝固部9a(3b)は、平面視において、直交する方向に互いに離間する。より詳細には、複数の凝固部9a(3b)は、横方向(行方向)にも縦方向(列方向)にも互いに接続されないよう独立して配置される。
タブ端子2の凝固部の総数がバスバー1の凝固部の総数より多い状態であれば、上記同様の効果が得られる。より詳細には、互いに直交する第1方向(主走査方向)と第2方向(副走査方向)のそれぞれの(厚さ方向の)断面において、第1凝固部の数は、第2凝固部の数より大であることで、当該効果を得ることができる。
ここでは、図11Cに示す走査方向と直交するA−A’方向の断面において、凝固部9aは凝固部3bと離間している。また、図11Bまたは図11Dに示す走査方向と平行なB−B’方向の断面において、複数の凝固部9aは互いに離間している。そして、A−A’断面およびB−B’断面のいずれにおいても、凝固部9aと凝固部3bとの合計数は、凝固部10aと凝固部4bとの合計数よりも大である。
これにより、レーザ光8a(5b)の主走査で発生する蓄熱の影響を軽減できる。よって、温度上昇を抑制し、凝固部内の金属間化合物の生成を抑えることができる。その結果、本実施の形態では、実施の形態1に比べて、接合強度のより高い溶接構造を得ることができる。
特に、タブ端子2では、レーザ光8a(5b)の照射による溶融部分(凝固部9a(3b)となる部分)間に、未溶融のニッケルめっき銅合金が存在することになる。よって、このニッケルめっき銅合金でのレーザ走査方向の並行方向とその直角方向への熱伝導により、溶融部分への熱伝導量が抑制される。よって、溶融部分の温度上昇を抑制でき、凝固時の金属間化合物の生成を抑制できる。したがって、接合強度の高い溶接構造が得られる。すなわち、高品質、高信頼性の溶接構造を実現できる。
一方、バスバー1の凝固部10a(4b)は、図11B〜図11Dに示すように、互いに結合して、凝固部9a(3b)の総数よりも少なくなることが好ましい。さらには、凝固部10a(4b)は、凝固部9a(3b)よりも大きな1つの塊を形成することが望ましい。これにより、接合強度の高い溶接構造が得られる。
凝固部9a(3b)を走査方向に対しても離間して形成するためには、凝固部9a(3b)間に未溶融部を形成する必要がある。未溶融部の形成方法は、レーザ光8a(5b)の出力を、金属が溶融しない程度に弱めるか、好ましくは出力0とする。すなわち、B−B’方向に沿って、レーザ光8a(5b)の出力を1000〜2000Wに調整して凝固部9a(3b)を形成する工程と、出力を0にして未溶融部のまま残置する工程とを繰り返す。
凝固部9a(3b)を走査方向に対しても離間させる方法以外については、実施の形態2と同じであるため説明を省略する。
なお、図11Cに示すように、凝固部10aの深度(図における上下方向の長さ)は、凝固部4bの深度よりも大きい。本実施の形態では、凝固部10aが凝固部4bの列の端に配置される場合を例に挙げて説明したが、これ限定されない。例えば、本実施の形態を、実施の形態2の実施例5、6に適用することも可能である。
図12A〜12Dは、本実施の形態を実施の形態2の実施例5に適用した場合を示す図である。この場合では、図12Cに示すように、凝固部10aは、凝固部4b間に配置される。
図13A〜13Dは、本実施の形態を実施の形態2の実施例6に適用した場合を示す図である。この場合では、凝固部4bと凝固部10aとが、走査方向と直交する方向において、交互に配置される。
なお、実施の形態3、4では、走査方向(B−B’方向)における凝固部3a、3b、9aの間隔は、100μm以上かつ350μm以下が望ましい。信頼性の観点から、溶接部に要求される引張り強度は、80N以上である。しかし、凝固部の間隔が100μmを下回ると、引張り強度が76Nとなり、信頼性を損なってしまう。同様に、凝固部の間隔が350μmを上回ると、同一の走査軌跡上に分布する凝固部4a間、凝固部4b間、凝固部10a間が離間してしまう。これにより、引張り強度は、溶接される金属間に隙間がない場合でも77N、隙間がある場合では42Nとなり、大きく信頼性を損なう。以上のことから、凝固部の間隔は、100μm以上かつ350μm以下の範囲とするのが好ましい。
(実施の形態5)
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図14A〜Cを用いて説明する。図14A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図14Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図14Bは、図14AのA−A’断面図である。図14Cは、図14AのB−B’断面図である。
本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法について、図14A〜Cを用いて説明する。図14A〜Cは、本実施の形態に係る溶接構造および溶接方法の説明図である。図14Aは、本実施の形態に係るレーザ照射パターンを示す上面図である。図14Bは、図14AのA−A’断面図である。図14Cは、図14AのB−B’断面図である。
図14Aに示すように、図14Bに示す第1部材101のレーザ被照射面を平面視した場合、複数の第1凝固部103が格子状、より詳細にはチェッカーフラグ状に分布するように構成する。このとき、各第1凝固部103は、それらの端部で隣接する凝固部同士で接続され、1つの大きな凝固部を形成する。これにより、金属間化合物の生成を抑制しつつ、高い接合強度を実現することが可能である。ただし、一部未接続の凝固部があってもよいが、未接続の凝固部の合計面積が、複数の凝固部が接続された大きな凝固部の面積を超えないようにすることが望ましい。
このような凝固部の形成方法は、次の通りである。
まず、例えば上述の実施の形態1で説明した条件と同じレーザ光を第1部材101に対して直線状に照射する第1の主走査を行う。このとき、レーザ光の出力のオンとオフを繰り返すことで、第1凝固部103と未凝固部105とを交互に形成することができる。この場合、第1凝固部103は、走査方向(図14Aの左右方向)に長手方向を有する長尺状となる。
続いて、主走査方向と直交する方向(図14Aの上下方向)に副走査を行い(このとき、レーザ光は照射しない)、その後、レーザ光を第1部材101に対して直線状に照射する第2の主走査を行う。これにより、第1の主走査で形成された第1凝固部103の端部と、第2の主走査で形成された第1凝固部103の端部とが接続されるように、それぞれの第1凝固部103において溶融部が形成される。
上述した第1の主走査と第2の主走査とを交互に繰り返すことで、互いに接続された4つの第1凝固部103が1つの未凝固部105を囲う形状が構成され、チェッカーフラグ状の1つの大きな凝固部を形成することができる。
ここで、図14B、図14Cを用いて、図14Aに示した1つの大きな凝固部が形成されたときの、第1部材101および第2部材102それぞれの内部の状態について説明する。図14Bは、図14AのA−A’断面(以下、第1横断面という)を示している。図14Cは、図14AのB−B’断面(以下、第2横断面という)を示している。第1横断面および第2横断面はともに、走査方向かつ図14Aの奥行き方向の断面である。ただし、図14Aに示すように、第1横断面と第2横断面とは、走査方向と直交する方向における位置が異なる。
第1部材101は、例えば、ニッケルめっき銅合金タブ端子である。また、第2部材102は、例えば、アルミニウムで構成されたアルミニウムバスバーである。
図14Bに示すように、第1横断面では、第1部材101に形成された第1凝固部103は互いに分離しており、かつ、第2部材102に形成された第2凝固部104も互いに分離している。よって、レーザ光の照射時における金属間化合物の生成を抑制することができる。
図14Cに示すように、第2横断面では、第1部材101に形成された第1凝固部103は互いに接続しており、かつ、第2部材102内に形成された第2凝固部104も互いに接続している。よって、高い接合強度を実現できる。
また、図14Aに示したC−C’断面(以下、第1縦断面という)およびD−D’断面(以下、第2縦断面という)における、第1部材101および第2部材102それぞれの内部の状態について説明する。第1縦断面および第2縦断面はともに、走査方向と直交する方向かつ図14Aの奥行き方向の断面である。ただし、図14Aに示すように、第1縦断面と第2縦断面とは、走査方向における位置が異なる。
第1縦断面では、図14Cと同様に、第1部材101に形成された第1凝固部103は互いに接続しており、かつ、第2部材102に形成された第2凝固部104も互いに接続している。すなわち、第1凝固部103同士が接続される領域(図14Aに示した未凝固部105の端部)においては、第2凝固部104同士も接続される。よって、高い接合強度を実現できる。
第2縦断面では、図14Bと同様に、第1凝固部103は互いに分離しており、かつ、第2凝固部104も互いに分離している。すなわち、第1凝固部103同士が接続されない領域(図14Aに示した未凝固部105の中央部)においては、第2凝固部104同士も接続されない。
次に、第1凝固部103のサイズについて説明する。図14Aに示したように、第1凝固部103において、走査方向の長さ(以下、長手方向の長さという)は、走査方向と直交する方向の長さ(以下、短手方向の長さという)よりも長い。
第1凝固部103の短手方向の長さは、200μm以下かつ50μm以上が好ましい。短手方向の長さが200μmを超えると、金属間化合物が生成されてしまい、短手方向の長さが50μm未満であると、十分な溶接強度を確保できないからである。
第1凝固部103の長手方向の長さは、500μm以上が望ましい。長手方向の長さが500μm未満であると、第2部材102まで溶融しないからである。
第1凝固部103の深さ(図14B、図14Cにおける上下方向の長さ)は、2mm以下が望ましい。深さが2mmを超えると、金属間化合物が生成されるからである。
次に、図14Aに示した未凝固部105の形状について、図15を用いて説明する。図15は、図14Aの一部を拡大して示す模式図である。
図15に示すように、未凝固部105は、その周囲を複数(図15の例では4つ)の第1凝固部103により囲われて形成されている。
図15に示す長さLは、未凝固部105の長手方向(第1凝固部103の長手方向と平行)の長さである。この長さLは、100μm以上が好ましい。その理由は、金属間化合物の生成を抑制するためである。
図15に示す幅Wは、未凝固部105の短手方向(第1凝固部103の短手方向と平行)の長さである。この幅Wは、30μm以上が好ましいその理由は、幅Wが30μmを下回ると、隣り合う第1凝固部103同士または隣り合う第2凝固部104同士において熱が蓄積され、金属間化合物が生成されうるからである。
なお、本開示は、上記実施の形態1〜5の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、実施の形態1〜5のうち任意の実施の形態を組み合わせてもよい。具体的には、1つの実施の形態に係る構造または方法を他の実施の形態に適用、置換、または付加することが可能である。
<本開示のまとめ>
本開示のまとめは、以下の通りである。
本開示のまとめは、以下の通りである。
本開示の溶接構造は、第1部材と、前記第1部材に積層され、前記第1部材よりも融点の低い第2部材と、前記第1部材内に配置された複数の第1凝固部と、前記第1凝固部に接するように前記第2部材内に配置された第2凝固部と、を有し、前記複数の第1凝固部は、平面視において格子状に分布する。
なお、本開示の溶接構造において、前記平面視における横方向と平行な第1横断面における複数の第1凝固部は互いに分離し、前記第1横断面と平行な第2横断面における複数の第1凝固部は互いに接続され、前記第1横断面と直交する第1縦断面における複数の第1凝固部は互いに分離し、前記第2縦断面と平行な第2横断面における複数の第1凝固部は互いに接続されてもよい。
また、本開示の溶接構造において、前記第1横断面における複数の第2凝固部は互いに分離し、前記第2横断面における複数の第2凝固部は互いに接続され、前記第1縦断面における複数の第2凝固部は互いに分離し、前記第2縦断面における複数の第2凝固部は互いに接続されてもよい。
また、本開示の溶接構造において、前記第1部材は銅を含み、前記第2部材はアルミニウムを含んでもよい。
本開示の溶接構造は、種類が異なる部材同士の溶接に有用であり、例えば、バッテリシステム(例えば、車載用電池や定置用蓄電システム)における電池セルとバスバーとの溶接に適用できる。
1、22 アルミニウムバスバー
2 ニッケルめっき銅合金タブ端子
3a、3b、4a、4b、9a、10a、23、24、25 凝固部
5a、5b、8a、26a、26b レーザ光
6a、6b、7a、27、28 軌道
21 ニッケルめっき銅端子
101 第1部材
102 第2部材
103 第1凝固部
104 第2凝固部
2 ニッケルめっき銅合金タブ端子
3a、3b、4a、4b、9a、10a、23、24、25 凝固部
5a、5b、8a、26a、26b レーザ光
6a、6b、7a、27、28 軌道
21 ニッケルめっき銅端子
101 第1部材
102 第2部材
103 第1凝固部
104 第2凝固部
Claims (4)
- 第1部材と、
前記第1部材に積層され、前記第1部材よりも融点の低い第2部材と、
前記第1部材内に配置された複数の第1凝固部と、
前記第1凝固部に接するように前記第2部材内に配置された第2凝固部と、を有し、
前記複数の第1凝固部は、平面視において格子状に分布する、
溶接構造。 - 前記平面視における横方向と平行な第1横断面における複数の第1凝固部は互いに分離し、
前記第1横断面と平行な第2横断面における複数の第1凝固部は互いに接続され、
前記第1横断面と直交する第1縦断面における複数の第1凝固部は互いに分離し、
前記第2縦断面と平行な第2横断面における複数の第1凝固部は互いに接続される、
請求項1に記載の溶接構造。 - 前記第1横断面における複数の第2凝固部は互いに分離し、
前記第2横断面における複数の第2凝固部は互いに接続され、
前記第1縦断面における複数の第2凝固部は互いに分離し、
前記第2縦断面における複数の第2凝固部は互いに接続される、
請求項2に記載の溶接構造。 - 前記第1部材は銅を含み、前記第2部材はアルミニウムを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018210463A JP2020075274A (ja) | 2018-11-08 | 2018-11-08 | 溶接構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018210463A JP2020075274A (ja) | 2018-11-08 | 2018-11-08 | 溶接構造 |
Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2018210463A Pending JP2020075274A (ja) | 2018-11-08 | 2018-11-08 | 溶接構造 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020075274A (ja) |
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2018
- 2018-11-08 JP JP2018210463A patent/JP2020075274A/ja active Pending
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