JP2020074725A - 珪藻類の回収方法及び回収装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オイル蓄積能を有する珪藻類について、低投入エネルギー且つ簡便に培地から回収する。【解決手段】オイル蓄積能を有する珪藻類を培養した培養液に対して紫外線を照射することで珪藻類の凝集体を沈降させ、沈降した珪藻類を回収する。【選択図】図11

Description

本発明は、オイル蓄積能を有する珪藻類を培養液から回収する方法及び回収する装置に関する。
現在、化石燃料の代替燃料を生産する手段として、光合成を行う単細胞生物である微細藻類が有力視されている。微細藻類は、オイル含有量が高い、食料と競合しない、陸上生物と比較して増殖速度が高い、単位面積当たりのバイオマス生産量が高いなどの優れた特徴を有する。しかしながら、微細藻類を用いたバイオ燃料生産は未だ実用化に至っていない。その要因の1つは、微細藻類の回収にコスト及びエネルギーを要することにある (非特許文献1及び2)。
一般的に、微細藻類は、サイズが小さく(3〜20μm)、培地中で密度が低く(<0.5kg/m3 dry biomass)、細胞表面が負電荷で覆われていることから液体培地全体に分散している。よって、遠心分離などによって微細藻類を回収する時には高コスト、高エネルギープロセスを要することになる。Life Cycle Assessment(LCA)に基づいて微細藻類を利用したバイオ燃料の生産エネルギーを評価したところ、遠心回収によって微細藻類の回収を行う場合、生産プロセス全体でのエネルギー消費量の92.7%が回収時に必要となることが示された(非特許文献3)。
そこで、現在、微細藻類を凝集させて回収効率を向上させる手法が検討されている。ポリマーを凝集剤として利用した回収法では、細胞表面に負電荷を有する微細藻類をカチオン性に修飾したポリマーへ凝集させて回収する。磁気微粒子を利用した回収法では、カチオン性の磁気微粒子上に細胞を凝集させ、磁力で回収を行う。また、バクテリアとの共培養を利用した回収法では、バクテリアが生産する細胞外分泌物質の粘性によって微細藻類を凝集させる。電気分解を利用した回収法では、電気分解によって溶出した金属イオンを介して細胞を凝集させて回収する。
また、現在までに、光照射を利用した微細藻類の回収法についていくつか報告がなされている。藍藻Thermosynechococcus vulcanusにおいて、青色光、低温条件下においてセルロースの合成が促進され、細胞が凝集することが報告されている(非特許文献4)。また、プラシノ藻Tetraselmis sp. M8においては、UV照射によって鞭毛が除去されて細胞が沈降したこと、培地中に混入した微生物を除去可能であることが報告された(非特許文献5)。
さらに、光照射と他の回収法を組み合わせた手法も報告されている。緑藻Chlorella zofingiensis、Scenedesmus dimorphusにおいて、Escherichia coliとの共培養によるバイオ凝集と、UV照射を組み合わせることによって、藻体凝集が可能なことが報告されている(非特許文献6)。磁気微粒子を用いた磁気回収と、UV照射による細胞凝集を組み合わせることによって藻体の回収が可能なことが報告されている(非特許文献7)。
光照射による微細藻類の回収法は、エネルギー投入量が少ないこと、簡易的な手法であること、微生物の殺菌によって、培地がリサイクルしやすいことなどの利点を有している。しかし、光照射を利用した微細藻類の回収法に関する報告例は、上述したように珪藻類以外の微細藻類に関する4報のみであり、光照射による細胞凝集の条件検討や凝集機構などに関する知見は非常に限られている。
珪藻類は、微細藻類の中でも最も多様性に富むグループである。これまでに10万種以上が確認されており、地球上の二酸化炭素固定の約25%を担っている。また、バイオディーゼル燃料生産に適した種も報告されている。中でも、海洋珪藻Fistulifera solarisはオイル含有量が65%と高いことから、有望なバイオ燃料生産株として注目されている(非特許文献8)。これまで、F. solarisについては、紫外線(UV)照射によって12時間以内にオイル蓄積が誘導されることが明らかとなっている(非特許文献9)。
Razon, L. F. and Tan, R. R. (2011). Appl Energ, 88, 3507-3514. Slade, R. and Bauen, A. (2013). Biomass Bioenergy, 53: 29-38. Sander, K. and Murthy, G. S. (2010). Int J Life Cycle Assess, 15: 704-714. Enomoto et al. (2014). J Biol Chem, 289: 24801-24809 Sharma et al. (2014). Green Chem,16: 3539-3548 Agbakpe et al. (2014). Bioresour Technol, 166: 266-272. Ge et al. (2015). Enbiron Sci Technol, 49: 1190-1196 Sato et al. (2013). J Biosci Bioeng, 117: 720-724. Arakaki, A. et al., (2017). Bioresour Technol, 245: 1520-1526.
ところで、非特許文献5に開示された方法は、鞭毛除去に起因して藻体凝集を誘導する方法であり、鞭毛を有しない珪藻類に適用することはできない。また、非特許文献6及び7に開示された方法は、Escherichia coliとの共培養や磁気微粒子の添加が必要であり、培地中の珪藻類のみを単離して回収するには、煩雑な他の工程が必要となる。
このように、オイル生産能を有することで有望なバイオ燃料生産株として注目されている珪藻類については、低投入エネルギー且つ簡便で培地から回収する方法は知られていないのが現状であった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、オイル蓄積能を有する珪藻類について、低投入エネルギー且つ簡便に培地から回収することができる方法及び装置を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、オイル蓄積能を有する珪藻類に紫外線を照射すると、その後、培地内において細胞が凝集することを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)オイル蓄積能を有する珪藻類を培養した培養液に対して紫外線を照射する工程と、上記工程の後、上記珪藻類の凝集体を沈降させ、沈降した珪藻類を回収する工程とを含むオイル蓄積能を有する珪藻類の回収方法。
(2)上記紫外線の照射量を2〜50mJ/cm2とすることを特徴とする(1)記載の珪藻類の回収方法。
(3)上記紫外線は波長範囲(100〜400nm)であることを特徴とする(1)記載の珪藻類の回収方法。
(4)上記珪藻類は、Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類であることを特徴とする(1)記載の珪藻類の回収方法。
(5)上記Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類は、Fistulifera属、Mayamaea属、Navicula属、及びSeminavis属からなる群から選ばれる1つの属に属する珪藻類であることを特徴とする(4)記載の珪藻類の回収方法。
(6)上記珪藻類は、Fistulifera solarisであることを特徴とする(1)記載の珪藻類の回収方法。
(7)上記(1)〜(6)いずれか記載の方法により回収した珪藻類からオイル成分を抽出する工程を含む、珪藻類由来オイルの製造方法。
(8)抽出したオイル成分を精製する工程を更に含む(7)記載の珪藻類由来オイルの製造方法。
(9)オイル蓄積能を有する珪藻類を培養することができる培養槽と、上記培養槽内において培養した珪藻類を含む培養液に紫外線を照射する紫外線照射装置とを備えるオイル蓄積能を有する珪藻類の回収装置。
(10)上記紫外線照射装置により紫外線を照射した後の培養液を溜める回収槽を更に備えることを特徴とする(9)記載の珪藻類の回収装置。
(11)上記培養槽と上記回収槽との間に培養液を流すことができる流路を備え、上記紫外線照射装置は当該流路に配設されていることを特徴とする(10)記載の珪藻類の回収装置。
(12)上記紫外線照射装置による紫外線の照射量を2〜50mJ/cm2とすることを特徴とする(9)記載の珪藻類の回収装置。
(13)上記紫外線照射装置は波長範囲(100〜400nm)の紫外線を照射するものであることを特徴とする(9)記載の珪藻類の回収装置。
(14)上記珪藻類は、Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類であることを特徴とする(9)記載の珪藻類の回収装置。
(15)上記Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類は、Fistulifera属、Mayamaea属、Navicula属、及びSeminavis属からなる群から選ばれる1つの属に属する珪藻類であることを特徴とする(14)記載の珪藻類の回収装置。
(16)上記珪藻類は、Fistulifera solarisであることを特徴とする(9)記載の珪藻類の回収装置。
本発明に係る珪藻類の回収方法によれば、オイル蓄積能を有する珪藻類を含む培地に紫外線を照射するだけでよく、当該珪藻類を低投入エネルギー且つ簡便に培地より回収することができる。このため、本発明に係る珪藻類の回収方法を適用することによって、例えば、オイル蓄積能を有する珪藻類を用いて低コストにオイルを製造することができる。
また、本発明に係る珪藻類の回収装置は、紫外線照射装置といった簡便な構成によって、回収槽にオイル蓄積能を有する珪藻類を低投入エネルギー且つ簡便に培地から回収することができる。このため、本発明に係る珪藻類の回収装置を適用することによって、例えば、オイル蓄積能を有する珪藻類を用いて低コストにオイルを製造することができる。
本発明を適用した藍藻類の回収装置の一例を模式的に示す構成図である。 本発明を適用した藍藻類の回収装置の他の例を模式的に示す構成図である。 本発明を適用した藍藻類の回収装置の他の例における紫外線照射装置を模式的に示す要部斜視図である。 実施例で使用した紫外線及び赤色並びに青色を照射する系の構成図である。 F. solarisに対して紫外線を照射した後の状態を撮像した写真である。 F. solarisについて、紫外線の照射量と沈降率との関係を示す特性図である。 F. solarisについて、紫外線の照射量と沈降率との関係を示す特性図である。 F. solarisに対して紫外線照射、青色光照射又は赤色光照射したときの沈降率を比較した結果を示す特性図である。 F. solaris、P. tricornutum及びC. reinhardtiiに対して紫外線を照射したときの沈降率を比較した結果を示す特性図である。 Mayamaea sp.に対して紫外線を照射したときの沈降率を検討した結果を示す特性図である。 F. solarisに対して紫外線照射したとき又は照射しないときの細胞凝集体又は細胞を撮像した写真である。 F. solarisに対して紫外線照射したとき又は照射しないときの細胞凝集体又は細胞を撮像した走査型電子顕微鏡写真である。 紫外線照射の有無によるF. solarisの単糖類組成を比較した結果を示す特性図である。 F. solaris凝集体の明視野で撮像した写真及び、クロロフィル染色、BODIPY染色及びCalcofluor White染色したときの蛍光顕微鏡写真である。 図14に示した明視野写真及び蛍光顕微鏡写真において円で囲った部分を含む領域を拡大した写真である。
以下、本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置を適用することができる珪藻類とは、単に珪藻とも呼称され、珪藻綱(Bacillariophyceae)に属し、且つオイル蓄積能を有する微細藻類を意味する。珪藻類としては、円心目(Centrales)に属する藻類及び羽状目(Pennales)に属する藻類が挙げられる。円心目(Centrales)に属する藻類としては、シクロテラ属(Cyclotella)、ミニディスクス属(Minidiscus)、タラシオシラ属(Thalassiosira)及びキートケロス属(Chaetoceros)に属する藻類等が挙げられ、羽状目(Pennales)に属する藻類としては、マヤマエア属(Mayamaea)、ディメレグラムマ属(Dimeregramma)、シリンドロテカ属(Cylindrotheca)、ナビキュラ属(Navicula)、及びフィストゥリフェラ属(Fistulifera)に属する藻類等が挙げられる。
より具体的に、オイル蓄積能を有する珪藻類としては、好ましくはFistulifera属又はMayamaea属に属する珪藻類である。
オイル蓄積能を有するFistulifera属に属する珪藻類として、特にWO2010/116611に開示されているFistulifera sp. JPCC DA0580株(Navicula sp. JPCC DA0580株から改名、本明細書ではFistulifera solaris JPCC DA0580株とも称する)を例示することができる。なお、Fistulifera solaris JPCC DA0580株は、WO2010/116611に記載されているように、FERM BP-11201(FERM P-21788より移管)として独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター (IPOD, NITE) (〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8) に国際寄託されている。
また、オイル蓄積能を有するMayamaea属に属する珪藻類として、Mayamaea sp. JPCC CTDA0820株を例示することができる。Mayamaea sp. JPCC CTDA0820株は、たとえ10℃といった低温環境下においてオイル蓄積能を示すといった特徴を有する珪藻類である。Mayamaea sp. JPCC CTDA0820株は、電源開発株式会社にて分譲可能に保存されている。
さらに、オイル蓄積能を有する珪藻類としては、上述したFistulifera属又はMayamaea属に属する珪藻類以外にも例えば、Navicula属やSeminavis属に属する珪藻類を挙げることができる。すなわち、、オイル蓄積能を有する珪藻類としてはFistulifera属、Mayamaea属、Navicula属、及びSeminavis属などを含むNaviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類を使用することができる。
ここで、オイル蓄積能を有するとは、特に限定されないが、例えば炭素数16〜24の脂肪族炭化水素を蓄積する能力を有すると言い換えることができる。但し、オイル蓄積能を有する珪藻類とは、炭素数15以下の脂肪族炭化水素や、炭素数25以上の脂肪族炭化水素を生成及び蓄積するものであっても良い。
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置は、培養液中に分散する珪藻類を回収するものであり、オイルを蓄積した状態の珪藻類を回収するものであっても良いし、オイルを蓄積する前の珪藻類を回収するものであっても良い。特に、本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置は、培養液中に分散する珪藻類であって、オイルを蓄積した状態の珪藻類を回収するものであることが好ましい。
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置では、培養液に含まれる、オイル蓄積能を有する珪藻類に対して紫外線を照射する。言い換えると、本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置では、オイル蓄積能を有する珪藻類が分散した培養液に対して紫外線を照射する。紫外線を照射した後、所定時間が経過すると、珪藻類は培養液中に凝集体を形成する。紫外線を照射することで形成された凝集体は、凝集体を形成しない状態の珪藻類と比較して培養液中を比較的早く沈降することができる。
ここで、紫外線の照射量としては、特に限定されないが、オイル蓄積能を有する珪藻類が凝集体を形成する照射量とする。具体的には、紫外線の照射量を2〜50mJ/cm2とすることが好ましく、特に4〜10mJ/cm2とすることがより好ましい。紫外線の照射量をこの範囲とすることで、珪藻類の凝集効果がより顕著になる。紫外線の照射量が上記範囲を下回る場合には珪藻類の凝集効果が得られない虞があり、上記範囲を上回る場合には珪藻類の凝集効果が低くなる虞がある。特に、オイル蓄積能を有する珪藻類としてFistulifera solarisを使用した場合には紫外線の照射量を4〜10mJ/cm2とすることが好ましい。
照射量(mJ/cm2)は、例えば、平均照射強度と照射時間の積により算出することができる。平均照射強度はBolton and Lindenの報告(Bolton, J. R. and Linden, K. G. (2003) J Environ Eng, 129: 209-215)に従って算出することができる。なお、平均照射強度は補正係数(Correction Factor)と照射サンプル液面における照射強度の積によって算出することができる。補正係数は、発散係数(Divergence Factor)、水係数(Water Factor)及び反射率(Reflection Factor)の積として算出することができる。発散係数とは、光がサンプルに届くまでに広がり、サンプルに当たらずに損失してしまう光量を考慮する項であり、光源と照射面の距離が、照射面の直径の約4倍以上であるときに補正を行う。したがって、適用する照射系において、光源と照射面の距離を、照射面の直径の4倍未満とした場合には発散係数を考慮せずに、水係数と反射率との積により補正係数を算出することができる。
また、水係数(Water Factor)とは、溶質による光の吸収により生じる照射強度の減少を補正する項であり、次の式で算出することができる(a:サンプルの吸光度、l:光路長)。
[水係数]=(1-10-al)/(al ln(10))
さらに、照射する紫外線の波長としては、特に限定されないが、例えば100〜400nmの範囲とすることができ、また特に、200〜280nm(UV-Cの波長範囲)とすることが好ましい。
なお、サンプルの吸光度は、照射する光の波長に対応する吸光光度計を使用して測定することができる。このとき、サンプルの吸光度は、培養液の同波長における吸光度をバックグランドノイズとして差し引くことが好ましい。
また、反射率(Reflection Factor)は液面における光の反射による損失を補正する項であり、例えば、光が空気から水に侵入する場合の文献値である0.975を用いることができる(上記Bolton and Linden 2003の報告参照)。
一方、照射強度については、例えば、UV LIGHT METER UV-37SD (CUSTOM corporation製)及びHD 2302.0 Photoradiometer photometers (Delta OHM製)を使用して測定することができる。
上述のように算出した補正係数と、上述のように測定した照射強度とを掛け合わせることで、平均照射強度を算出し、照射時間と平均照射強度との積として照射量を求めることができる。言い換えると、紫外線の照射量を設定した場合、設定した照射量を上述のように算出した平均照射強度で割ることで照射時間を設定することができる。
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置によれば、培養液中の珪藻類が凝集体を形成するため、凝集体を形成しない状態の珪藻類と比較して培養液中を比較的早く沈降する。この効果は、例えば、時間当たりの沈殿量、沈降速度、或いは沈降率により定量的に評価することができる。一例としては、以下のように定義する沈降率(Settling rate(%))を定義することができる。
すなわち、凝集体を含む培養液を所定形状のチューブに移し、凝集体が崩壊せず且つ凝集体が均一に分散するよう培養液を攪拌し、その後、静置する。攪拌直後、当該チューブの所定の高さ位置から培養液を採取し、採取した培養液の750nmの吸光度(A値)を測定する。そして、静置を継続して所定時間経過後、当該チューブにおける同じ高さ位置から培養液を採取し、採取した培養液の750nmの吸光度(B値)を測定する。これらA値及びB値を用いた次式により沈降率を算出することができる
[沈降率(%)]=(1-A/B)×100
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置では、凝集体が形成された後、培養液を遠心分離や濾過装置に供し、凝集体となった珪藻類を回収しても良い。本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置では、珪藻類が凝集体となっているため、遠心分離や濾過装置に供した場合でも比較的に低い投入エネルギーで珪藻類を培養液から分離して回収することができる。
本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置を適用して、オイルを蓄積した状態の珪藻類を回収し、その後、定法に従って珪藻類からオイルを抽出することができる。また、抽出したオイルは、定法に従って精製され、いわゆるバイオ燃料として利用することができる。このようにオイルを製造する際、本発明に係る珪藻類の回収方法及び回収装置を適用することで培養液から珪藻類を簡便且つ低投入エネルギーで回収できるため、オイル製造に掛かるコストを大幅に低減することができる。
ところで、上述した藍藻類の回収方法は、例えば、図1に模式的に示す回収装置により実現することができる。すなわち、図1に示すように、珪藻類の回収装置は、オイル蓄積能を有する珪藻類を培養することができる培養槽1と、培養槽1内において培養した珪藻類を含む培養液2に紫外線を照射する紫外線照射装置3とを備えている。紫外線照射装置3は、上述した所定の波長の紫外線を出力する紫外線ランプ4を備えている。
なお、培養槽1は、図示しないが、培養液2を攪拌するための攪拌翼や、培養液2の温度を調節する温調装置、所望のタイミングで培養液2を供給する培養液供給装置、その他の珪藻類の培養に必要なあらゆる装置を含むことができる。また図1に示した回収装置では、培養槽1の外方に紫外線照射装置3を配設していたが、本発明に係る回収装置はこのような構成に限定されるものではない。例えば、紫外線照射装置3は、培養槽1の内部に配設することができる。
以上のように構成された回収装置によれば、珪藻類を含む培養液2に対して紫外線照射装置3から紫外線を照射することで、培養液2中の珪藻類が凝集体を形成する。珪藻類の凝集体は、培養槽1の底面に向かって沈降する。よって、例えば、培養槽1の底面近傍において珪藻類を回収することができる。或いは、培養槽1の底面近傍から、凝集体を含む培養液を抜き出し、抜き出した培養液を遠心分離や濾過等の固液分離手段に供することで、珪藻類を回収することもできる。
また、本発明に係る回収装置は、例えば図2及び3に示すように、培養槽1内の培養液に対して紫外線照射装置3により紫外線を照射した後の培養液を溜める回収槽5を備えることもできる。図2及び3に示した回収装置は、培養槽1と回収槽5との間に培養液2を流すことができる流路6を備えており、紫外線照射装置3が当該流路6内部に配設されている。図2及び3に示した回収装置は、例えば屋外の、数百キロリットルスケールのバイオリアクターに適用することができる。
この回収装置では、流路6内を通過する培養液2に対して、流路6内に配設した紫外線照射装置3により紫外線を照射する。このため、培養液2に対して紫外線を効率的に照射することができる。また、この回収装置では、流路6における紫外線照射装置3の上流に仕切り板(図示せず)を設けることによって、流体力学的に培養液2を攪拌させ、流路6内を通過する培養液2全体に均一に紫外線を照射することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
1. 緒言
本研究では、海洋珪藻Fistulifera solaris及びMayamaea sp.へ紫外線(以下UV)を照射した際の細胞凝集誘導の解析を行うことを目的とした。具体的には、UV照射によるF. solaris及びMayamaea sp.の凝集誘導の照射量、波長依存性の解析を行い、凝集体形成の普遍性について評価した。また、比較として、異種の微細藻類についても同様の解析を行い、凝集誘導の評価を行った。
2. 実験方法
2-1. 試薬及び実験機器
試薬類は全て研究用の市販特級品またはそれに準じたものを用い、試薬等の調製は蒸留水及び蒸留水をMilli-Q Integral MT (Merck Millipore社製) で処理した純水を用いた。藻体の吸光度の測定には、マイクロプレートリーダSH-9000 (Corona electric社製) を用いた。藻体の凍結乾燥は、FreeZone Freeze Dry Systems (Labconco社製) を用いて行った。ガスクロマトグラフ・マススペクトロメリー分析 (GC-MS分析)の機器にはGC-MS-QP2010 Plus (Shimadzu Corporation製)を用いた。
2-2. 使用藻体及び培養条件
藻体F. solaris及びPhaeodactylum tricornutumの培養には、Guillard’s f medium (f培地)の1/2倍の培地成分 (f/2培地、1.5g NaNO3、100mg NaH2PO4・H2O、10μg Vitamin B12、10μg Biotin、2mg Thiamine HCl、600mg Na2SiO3・9H2O、87.2mg Na2EDTA、63mg FeCl3・6H2O、200μg CoCl4・5H2O、440μg ZnSO4・7H2O、3.6mg MnCl2・4H2O、196μg CuSO4・5H2O、126μg Na2MoO4・2H2O)を1Lの人工海水に溶解したものを使用した。人工海水はマリンアート スーパーフォーミュラ (富田製薬株式会社製)を用いて作製した。Chlamydomonas reinhardtiiの培養には、BG-11培地 (36mg CaCl2・2H2O、1.81mg MnCl2・4H2O、1.5g NaNO3、49.4μg Co(NO3)2・6H2O、1mg Na2EDTA・2H2O、390μg Na2MoO4・2H2O、20mg Na2CO3、2.86mg H3BO3、30mg K2HPO4・3H2O、75mg MgSO4・7H2O、79μg CuSO4・5H2O、222μg ZnSO4・7H2O、1μg Vitamin B12、6mg Citric acid、6mg Ferric ammonium citrate)を1Lの蒸留水に溶解したものを使用した。F. solaris及びC. reinhardtiiは25℃、P. tricornutumは15℃で、光量約62μmol/m2sで三角フラスコ内で静置培養した。
また、藻体Mayamaea属の培養には、Guillard’s f medium (f培地)の1/2倍の培地成分のうち、Na2SiO3・9H2Oの濃度を4倍としたもの (f/2培地、75 mg NaNO3、5 mg NaH2PO4・H2O、0.5 μg vitamin B12、0.5 μg biotin、100 μg thiamine HCl、120 mg Na2SiO3・9H2O、4.36 mg Na2EDTA、3.15 mg FeCl3・6H2O、10 μg CoCl4・5H2O、22 μg ZnSO4・7H2O、180 μg MnCl2・4H2O、9.8 μg CuSO4・5H2O、6.3 μg Na2MoO4・2H2O)を1Lの人工海水に溶解したものを使用した。Mayamaea属は25℃で、光量約62μmol/m2/sで三角フラスコ内で初期濃度5.0×105cells/mlで静置培養した。
2-3. 光照射系の構築
本実施例で用いたUV照射系を図4(A)に示した。UVランプ(Toshiba lighting & technology社製)を台に取り付け、下向きになるように固定した。ランプの下に振とう機を設置し、その上にシャーレ (90×15mm、Iwaki社製)を設置し、培養液20mlを導入した。ランプ下面と液面までの距離は24.4cm、シャーレ底面から液面までの距離は0.6cm、照射面積は20.3cm2とした。また、青色、赤色光の照射系を図4(B)に示した。青色LED (ピーク波長474nm (435-540nm)、Nichia corporation社製)、赤色LED (ピーク波長620nm (585-665nm)、Nichia corporation社製)を照射面が下向きになるように固定し、UVランプと同様に培養液を導入したシャーレを設置した。なお、図4中(a)はUVランプであり、(b)はシャーレ及び培養液であり、(c)は振とう器であり、(d)は青色LED又は赤色LEDである。
2-4. 照射量の算出
各光の照射量は、各光の照射時間を変えることによって制御した。照射量は、平均照射強度と照射時間の積により算出される。本実施例では、平均照射強度の算出は上述したBolton and Linden 2003の報告に従って行った。本実施例では、光源と照射面の距離が、照射面の直径の4倍未満であるため、発散係数(Divergence Factor)を考慮しなかった。サンプルの254-870nmの吸光度は紫外可視吸光光度計 UV-2550 (Shimadzu社製)を用いて測定した。この際、f/2、BG-11培地の同波長領域の吸光度をバックグラウンドノイズとして差し引いた。また、反射率(Reflection Factor)は、光が空気から水に侵入する場合の文献値である0.975を用いた。本実施例では、水係数と反射率とを掛け合わせることで補正係数(Correction Factor)を算出した。次に、UV LIGHT METER UV-37SD (CUSTOM corporation社製)及びHD 2302.0 Photoradiometer photometers (Delta OHM社製)によって照射強度の測定を行った。以上より算出したCorrection Factorと照射強度を掛け合わせることで、平均照射強度を算出し、その値を元にUV-Cの照射時間を設定した([照射時間]=[照射量]÷[平均照射強度])。
2-5. 藻体への光照射
F. solaris、Mayamaea sp.、P. tricornutum、C. reinhardtiiを初期濃度5.0×105cells/mlで培養した。120時間後、培養液40mlに対して、UVランプ及びLED用いて照射量0、0.5、1、2、4、10、25、50mJ/cm2の光を照射した。その後、培養液を三角フラスコに移し、再度静置培養した。
2-6. 沈降率の測定
静置培養後、各藻体の培養液を15mlディスポーサブルチューブ (IWAKI社製)に移した。次に、培養液を撹拌し、培養液下面から2.5cm上のサンプルを採取した。その後、培養液を静置し、0、3、5、10分後に培養液下面から2.5cm上のサンプルを採取した。その後、採取したサンプルのOD750を測定し、細胞の沈降率を以下の式を用いて算出した。
沈降率(%)=(1-A/B)×100
A:攪拌3、5、10分後に採取したサンプルのOD750
B:攪拌0分後に採取したサンプルのOD750
2-7. 正立顕微鏡及び走査型電子顕微鏡観察
UV照射24時間後、F. solaris或いはMayamaea sp.をカバーガラス上に導入し、正立顕微鏡 (BX-51, Olympus Corporation, Tokyo, Japan)によって微分干渉観察を行った。また、F. solaris培養液を超純水で1回洗浄し、カバーガラス上に導入した。次に、サンプルを風乾させ、Auコーティングをした後に走査型電子顕微鏡 (VE-9800、Keyence社製)で観察を行った。
2-8. 藻体の成分分析
2-8-1. 多糖類組成分析
UV照射24時間後、F. solarisを遠心回収 (8,500g、10min)した。その後、超純水5mlを添加し、再度細胞を遠心回収した。次に、回収した細胞に超純水1mlを添加し、凍結乾燥した。凍結乾燥後、乾燥藻体に0.1% (w/v) NaCl 1.3mlを添加し、インキュベーション (70℃、5min)した。遠心分離 (10,000g、20min、4℃)後、上清1mlを回収した。残渣には超純水1mlを加え再懸濁後、遠心分離 (10,000g、20min、4℃)し、上清1mlを先の上清に加えた。この操作をもう一度繰り返し、得られた3mlの上清を0.2μl PTFEフィルター (Advantec社製)でろ過した。次に、100%エタノールを終濃度70%になるように上清に添加し、静置 (16h、4℃)し、得られたペレットを1mlの超純水で溶解し、凍結乾燥した。
次に、サンプルのアルジトールアセテート化を行い、GC-MS分析を行った。抽出した多糖類に2Mトリフルオロ酢酸 (TFA)を250μl添加し、インキュベーション (121℃、90min)した。その後、サンプルを氷上で冷却し、TFAを揮発させた。次に、イソプロパノール300μlを添加し、攪拌後、揮発させた。その後、1mlの1M NH4OH溶液に対し、10mgのNaBH4を溶解し、調製したNaBH4溶液を200μlサンプルに添加し、静置 (室温、90min)した。その後、氷酢酸を添加して反応を停止させ、攪拌後揮発させた。酢酸/メタノール混合液 (1:9、v/v)を250μl添加し、攪拌後揮発させ、更に、メタノールを250μl添加し、再度揮発させた。無水酢酸及びピリジンを各50μl添加し、攪拌後、インキュベーション (121℃、20min)した。その後、サンプルを氷上で冷却し、試薬を揮発させた。トルエンを200μl添加し、揮発させた後、酢酸エチル500μlと超純水2mlを添加し、攪拌後、遠心分離 (1,000rpm、10min)し、上清を回収した。その後、回収した上清をアセトンで2倍に希釈し、GC-MS分析を行った。GC分析の条件は(Bafana、2013)と同様の条件とした。GCカラムにはRtx-5 GCカラム (内径0.25μm、膜厚0.25mm、長さ30m、Restek社製)を用い、分析に用いたサンプル量は1μlとした。キャリアガスにはヘリウムガスを用いた (流速1.5ml/min)。カラム温度を40℃で2分間保持した後、25℃/minで130℃まで、その後12℃/minで180℃まで、最後に3℃/minで280℃まで段階的に昇温させ、7分間保持した。標準試料には単糖類キット47267 (Sigma Aldrich Japan社製)を使用し、上記と同条件で測定を行った。
3. 結果及び考察
3-1. UV照射に伴うF. solarisの凝集誘導の評価
3-1-1. 照射量依存性の評価
F. solarisに対し、0、0.5、2mJ/cm2のUV (照射時間:0-12sec)を照射し、静置培養を行った。24時間後、F. solaris培養液の観察を行ったところ、2mJ/cm2のUVを照射した藻体は三角フラスコ内で凝集している様子が目視により観察された。次に、培養液をディスポーサブルチューブに移し、攪拌後に静置したところ、0、0.5mJ/cm2のUVを照射したF. solarisと比較し、2mJ/cm2のUVを照射したサンプルで細胞がより短時間に沈降する様子が観察された(図5)。以上より、F. solarisがUV照射によって凝集し、より早く細胞が沈降するようになることが示された。
次に、F. solarisの凝集体形成を定量的に評価し、凝集誘導の波長依存性を評価した。F. solarisに0、0.5、1、2、4mJ/cm2のUV (照射時間:0-23sec)を照射した後、静置培養を行った。6時間後、F. solaris培養液を回収し、細胞の沈降率の測定を行った。その結果、F. solarisの沈降率は、0、0.5、1mJ/cm2のUV照射時に6-24%、2、4mJ/cm2のUV照射時に86%以上となり、2mJ/cm2以上のUV照射時に沈降率の顕著な増加が見られた (図6)。従って、F. solarisの凝集は、特に2mJ/cm2以上のUVを照射した際に、照射から6時間以内に生じることが示された。
F. solarisは、6時間静置培養した後に、三角フラスコの底で凝集体を形成していた。従って、F. solarisは、UV照射から6時間以内に、凝集を誘導する因子が働くことによって凝集体を形成したことが考えられる。微細藻類は、膜表面の負電荷の緩和や、粘着性を有する細胞外分泌物質を生産することなどによって凝集することが報告されている (Enomoto et al. (2014). J Biol Chem, 289: 24801-24809)。UV照射によるF. solarisの凝集は、同様の機構によって生じたことが考えられる。また、F. solarisは10mJ/cm2のUV照射時にオイルの蓄積を開始する (Arakaki, A. et al., (2017). Bioresour Technol, 245: 1520-1526.)。従って、F. solarisの凝集は、オイル蓄積時よりも低照射量のUV照射によって生じることが示唆された。
また、同様にして、照射量0、4、10、25、50mJ/cm2の条件で1回目の検討を行い、2回目に0、1、2、4、50mJ/cm2の条件で検討を行った。1回目の検討では沈降率が10mJ/cm2で凝集のピークとなる71.0%となり、25mJ/cm2以降で凝集性の低下がみられた(図7(A))。また2回目の検討では沈降率が2mJ/cm2で55.4%、及び4mJ/cm2で70.0%となりこの条件にて凝集沈降がみられた(図7(B))。以上の検討より、2mJ/cm2以上の紫外線照射量で凝集体の形成及び凝集体の沈降が生じ、25mJ/cm2以上で凝集性が低下することが示唆された。
3-1-2. 波長依存性の評価
UVランプ及びLEDを使用し、F. solarisへ光照射を行った。光照射は、図4に示した系で行った。UVランプ及びLEDを使用した際の平均照射強度を表1に示した。
表1に示したように、UVランプを用いた系と、LEDを用いた系で、シャーレ内の平均照射強度のばらつきに顕著な差は見られなかった。両実験における照射時間の算出は、シャーレの中央の平均照射強度を用いて行った。
UVランプ及びLEDを使用し、照射量4mJ/cm2、ピーク波長254nm (UV)、474nm (青色光)、620nm (赤色光)の光をF. solarisに照射した。また、コントロールとして、光を照射していないサンプルも用意した。光照射後、F. solarisを24時間培養し、細胞の沈降率の測定を行った。その結果、細胞の沈降率は、コントロール、青色光照射サンプル、赤色光照射サンプルで12%以下、UV照射サンプルで72%以上となり、UV照射時のみで細胞の沈降率が顕著に増加した (図8)。従って、F. solarisの凝集誘導に波長依存性があることが示唆された。
3-2-1. UV照射に伴うP. tricornutum及びC. reinhardtiiの凝集誘導の評価
UVランプを使用し、F. solaris、P. tricornutum、C. reinhardtiiへ照射量0、0.5、1、2、4mJ/cm2のUVを照射し、静置培養した。24時間後、F. solaris培養液を回収し、細胞の沈降率の測定を行った。その結果、F. solarisの沈降率は、0、0.5、1mJ/cm2のUV照射時には-1-16%、2、4mJ/cm2のUV照射時に65%以上となり、UV照射によって細胞の沈降率が増加した (図9)。一方、P. tricornutumの沈降率は全ての照射量条件で4%以下となり、細胞の沈降率に顕著な増加は見られなかった。また、C. reinhardtiiの沈降率は全ての照射量条件で12%以下となり、細胞の沈降率に顕著な増加は見られなかった。オイル蓄積能を有する珪藻F. solarisで凝集が見られ、オイル蓄積能を有しない珪藻P. tricornutum及びオイル蓄積能を有しない緑藻C. reinhardtiiで凝集が見られなかったことから、UV照射による微細藻類の凝集誘導は、オイル蓄積能を有する珪藻類に特異的に見られる現象であることが示唆された。
3-2-2. UV照射に伴うMayamaea sp.の凝集誘導の評価
UVランプを使用し、Mayamaea sp.へ照射量0、4、10、25、50mJ/cm2のUVを照射し、静置培養した。24時間後、Mayamaea sp.の培養液を回収し、細胞の沈降率の測定を行った。その結果、Mayamaea sp.の沈降率は、4、10、25、50mJ/cm2のUV照射時において30%以上であり、10mJ/cm2のUV照射時に沈降率は60%で最大値を示した(図10)。
この結果からもUV照射による微細藻類の凝集誘導は、オイル蓄積能を有する珪藻類に特異的に見られる現象であることが示唆された。
3-3. F. solarisの凝集体形成誘導因子の同定
3-3-1. 正立顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いた細胞表面の観察
F. solarisへ10mJ/cm2のUVを照射し、静置培養した。また、比較としてUV照射を行わないサンプルを調製し、静置培養した (0mJ/cm2)。次に、静置培養にて凝集した細胞を正立顕微鏡によって観察した。その結果、10mJ/cm2のUVを照射したF. solarisが凝集している様子が観察された (図11(A))。また、凝集体の周りに細胞外分泌物質様の物質が観察された。一方、UVを照射していないF. solarisは凝集しておらず、培地全体に分散していた (図11(B))。次に、SEMによるF. solarisの観察を行った。その結果、UVを照射したF. solarisが凝集している様子が観察され、同様に凝集体の周りに細胞外分泌物質様の物質が観察された (図12(A))。一方、UVを照射していないF. solarisの細胞表面に分泌物質は観察されなかった (図12(B))。微細藻類は細胞外に多糖類やタンパク質を分泌し、これらの物質を介して凝集することが知られている (Salim et al. (2014). J Biotechnol, 174:34-38)。従って、顕微鏡で観察された細胞外分泌物質様の物質は多糖類かタンパク質である可能性が考えられた。
3-3-2. UVを照射したF. solarisの成分分析
4 mJ/cm2のUVを照射したF. solarisの単糖類組成を解析した。また、比較としてUV照射を行っていないサンプルを調製し、単糖類組成を解析した。その結果、いずれのサンプルでもグルコースのみが検出された (図13)。
また、糖、タンパク質及び脂質の定量を行った。その結果を表2に示す。
糖の定量を行ったところ、UV非照射時に13% (w/w dry cell)、4 mJ/cm2照射時に12% (w/w dry cell)となり、含量に顕著な変化は見られなかった。BCA法を用いて、4 mJ/cm2のUVを照射したF. solarisのタンパク質の定量を行った。また、比較としてUV照射を行っていないサンプルを調整し、タンパクの定量を行った。その結果、タンパク質量はUV非照射時に18% (w/w dry cell)、4mJ/cm2照射時に14% (w/w dry cell)であり、UV照射によってタンパク量が減少することが示唆された。また、UVを照射したF. solarisから全脂質を抽出し、定量を行った。その結果、脂質量はUV非照射時に50% (w/w dry cell)、4mJ/cm2照射時に57% (w/w dry cell)となった。
以上より、糖、タンパク質、脂質の定量を行った結果、UV照射によって糖、タンパク質が減少し、脂質が増加したことが示された。増加した脂質は、糖やタンパク質が変換されて合成された可能性が考えられた。
3-3-3. 蛍光顕微鏡を用いた凝集体の観察
F. solarisへ10mJ/cm2のUVを照射し、静置培養した。得られた凝集体について光学顕微鏡で明視野観察するとともに、クロロフィル染色、BODIPY染色及びCalcofluor White染色して蛍光観察した。
明視野で観察した結果及び蛍光顕微鏡で観察した結果を図14及び15に示した。なお、図15は、図14において円で囲った部分を含む領域を拡大した写真である。図14及び15に示すように、凝集体を観察すると、細胞間に存在して細胞間を結着させる物質はクロロフィル及びBODIPYでは染色されず、Calcofluor Whiteで染色された。この結果から、凝集に関与する物質はクロロフィルや脂質とは異なり、多糖成分である可能性が示唆された。

Claims (16)

  1. オイル蓄積能を有する珪藻類を培養した培養液に対して紫外線を照射する工程と、
    上記工程の後、上記珪藻類の凝集体を沈降させ、沈降した珪藻類を回収する工程とを含むオイル蓄積能を有する珪藻類の回収方法。
  2. 上記紫外線の照射量を2〜50mJ/cm2とすることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の回収方法。
  3. 上記紫外線は波長範囲(100〜400nm)であることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の回収方法。
  4. 上記珪藻類は、Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類であることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の回収方法。
  5. 上記Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類は、Fistulifera属、Mayamaea属、Navicula属、及びSeminavis属からなる群から選ばれる1つの属に属する珪藻類であることを特徴とする請求項4記載の珪藻類の回収方法。
  6. 上記珪藻類は、Fistulifera solarisであることを特徴とする請求項1記載の珪藻類の回収方法。
  7. 請求項1〜6いずれか一項記載の方法により回収した珪藻類からオイル成分を抽出する工程を含む、珪藻類由来オイルの製造方法。
  8. 抽出したオイル成分を精製する工程を更に含む請求項7記載の珪藻類由来オイルの製造方法。
  9. オイル蓄積能を有する珪藻類を培養することができる培養槽と、
    上記培養槽内において培養した珪藻類を含む培養液に紫外線を照射する紫外線照射装置とを備えるオイル蓄積能を有する珪藻類の回収装置。
  10. 上記紫外線照射装置により紫外線を照射した後の培養液を溜める回収槽を更に備えることを特徴とする請求項9記載の珪藻類の回収装置。
  11. 上記培養槽と上記回収槽との間に培養液を流すことができる流路を備え、上記紫外線照射装置は当該流路に配設されていることを特徴とする請求項10記載の珪藻類の回収装置。
  12. 上記紫外線照射装置による紫外線の照射量を2〜50mJ/cm2とすることを特徴とする請求項9記載の珪藻類の回収装置。
  13. 上記紫外線照射装置は波長範囲(100〜400nm)の紫外線を照射するものであることを特徴とする請求項9記載の珪藻類の回収装置。
  14. 上記珪藻類は、Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類であることを特徴とする請求項9記載の珪藻類の回収装置。
  15. 上記Naviculaceae(フナガタケイソウ科)に属する珪藻類は、Fistulifera属、Mayamaea属、Navicula属、及びSeminavis属からなる群から選ばれる1つの属に属する珪藻類であることを特徴とする請求項14記載の珪藻類の回収装置。
  16. 上記珪藻類は、Fistulifera solarisであることを特徴とする請求項9記載の珪藻類の回収装置。
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