以下、実施の形態を説明する。
図1は、画像表示装置の実施の1形態を説明するための図である。
図1に即して説明する画像表示装置1000は、2次元のカラー画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であり、図1(a)に装置の全体を説明図的に示す。
画像表示装置1000は、一例として、車両、航空機、船舶等の移動体に搭載され、該移動体に設けられた透過反射部材(例えばフロントガラス)を介して該移動体の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば移動速度、移動距離等に関する情報)を視認可能にする。以下では、移動体を基準に設定されたXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。ここでは、Z軸方向は、移動体の操縦者11(以下では、観察者11とも称する)から見て前後方向であり、移動体の移動方向に概ね平行である。X軸方向は、移動体の操縦者11から見て左右方向である。Y軸方向は、移動体の操縦者11から見て上下方向である。なお、「透過反射部材」とは、入射した光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる部材を意味する。
以下では、例えば移動体の操縦者11から見た左右方向(X軸方向)を「横方向」とも呼ぶ。また、例えば移動体の操縦者11から見た前後方向(Z軸方向)、上下方向(Y軸方向)等のX軸に直交する任意の方向を「縦方向」とも呼ぶ。
図1(a)において、符号100で示す部分は「光源部」であり、この光源部100からカラー画像表示用の画素表示用ビームLCが+Z方向に射出される。
画素表示用ビームLCは、赤(以下「R」と表示する。)、緑(以下「G」と表示する。)、青(以下「B」と表示する。)の3色のビームを1本に合成したビームである。
即ち、光源部100は、例えば、図1(b)の如き構成となっている。
図1(b)において、符号RS、GS、BSで示すレーザ光源としての半導体レーザは、それぞれR、G、Bのレーザ光を射出する。ここでは、各半導体レーザとして、端面発光レーザとも呼ばれるレーザダイオード(LD)が用いられている。
また、各半導体レーザは、一例として、例えば矩形、楕円形等の長手方向(長径方向)及び該長手方向に直交する短手方向(短径方向)を有する射出面(端面)を有し、該射出面から該射出面に垂直な方向(射出方向)にレーザ光を射出する。
各半導体レーザは、一例として、射出光における電界の振動方向が互いに直交する第1及び第2の偏光成分のうち第1の偏光成分が第2の偏光成分よりも多くなるように設計されている。ここでは、第1の偏光成分の電界の振動方向は、射出面の長手方向及び射出方向のいずれにも平行な平面に平行である。第2の偏光成分の電界の振動方向は、射出面の短手方向及び射出方向のいずれにも平行な平面に平行である。
なお、射出光の光量を一定とした場合に、該射出光に占める第1の偏光成分の割合は、極力大きいことが好ましく、略100%であること(射出光に占める第2の偏光成分の割合が略0%であること)が最も好ましい。
各半導体レーザは、一例として、射出面がYZ平面に垂直となるように配置されている。
詳述すると、半導体レーザRSは、一例として、射出面の長手方向がX軸に平行となり、かつ短手方向がY軸に平行となり、かつ射出方向が+Z方向となるように配置されている。この場合、半導体レーザRSでは、第1の偏光成分の電界の振動方向がYZ平面に垂直となり、かつ第2の偏光成分の電界の振動方向がYZ平面に平行となる。すなわち、半導体レーザRSからの射出光は、電界の振動方向がYZ平面に垂直な偏光成分が、電界の振動方向がYZ平面に平行な偏光成分よりも多い。
半導体レーザRSからの射出光のニアフィールドでの有効断面、すなわちニアフィールドパターン(近視野像)は、長手方向がX軸に平行となり、短手方向がY軸に平行となる。そして、半導体レーザRSからの射出光のファーフィルドでの有効断面、すなわちファーフィールドパターン(遠視野像)は、長手方向がY軸に平行となり、短手方向がX軸に平行となる(図9(a)参照)。すなわち、半導体レーザRSからの射出光のファーフィールドパターンは、縦長である。
また、半導体レーザGS、BSそれぞれは、射出面の長手方向がX軸に平行となり、かつ短手方向がZ軸に平行となり、かつ射出方向が+Y方向となるように配置されている。この場合、半導体レーザGS、BSそれぞれでは、第1の偏光成分の電界の振動方向がYZ平面に垂直となり、かつ第2の偏光成分の電界の振動方向がYZ平面に平行となる。すなわち、半導体レーザGS、BSそれぞれからの射出光は、電界の振動方向がYZ平面に垂直な偏光成分が、電界の振動方向がYZ平面に平行な偏光成分よりも多い。以下では、「電界の振動方向がYZ平面に垂直な偏光成分が、電界の振動方向がYZ平面に平行な偏光成分よりも多い」を便宜上「YZ平面に垂直な偏光成分が多い」と略記する。
半導体レーザGS、BSそれぞれからの射出光のニアフィールドでの有効断面、すなわちニアフィールドパターン(近視野像)は、長手方向がX軸に平行となり、短手方向がZ軸に平行となる。そして、半導体レーザGS、BSそれぞれからの射出光のファーフィルドでの有効断面、すなわちファーフィールドパターン(遠視野像)は、長手方向がZ軸に平行となり、短手方向がX軸に平行となる(図9(a)参照)。すなわち、半導体レーザGS、BSそれぞれからの射出光のファーフィールドパターンは、縦長である。
なお、図9(a)の符号WはファーフィールドパターンでのX軸方向の発散角を示し、符号HはファーフィールドパターンでのY軸方向又はZ軸方向の発散角を示している。
ここで、「有効断面」とは、レーザ光の断面内で相対強度が20%〜80%の部分を意味する((図9(b))参照)。
以下では、「有効断面の長手方向がX軸に平行な」を「有効断面が横長の」とも称し、「有効断面の長手方向がX軸に直交する」を「有効断面が縦長の」とも称する。
符号RCP、GCP、BCPで示すカップリングレンズは、半導体レーザRS、GS、BSから射出された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の各色レーザ光束の発散性を抑制する。
カップリングレンズRCP、GCP、BCPにより発散性を抑制された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の各色レーザ光束は、アパーチュアRAP、GAP、BAPにより整形される。
整形された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の各色レーザ光束はビーム合成プリズム101に入射する。
ビーム合成プリズム101は、R色光を透過させG色光を反射するダイクロイック膜D1と、R・G色光を透過させB色光を反射するダイクロイック膜D2を有する。
ここでは、アパーチュアRAPで整形された、有効断面の長手方向がY軸に平行かつ短手方向がX軸に平行な(有効断面が縦長の)R色光は、ダイクロイック膜D1を+Z方向に透過した後、ダイクロイック膜D2を+Z方向に透過する。すなわち、ダイクロイック膜D2を透過したR色光は、有効断面が縦長のレーザ光である。
また、アパーチュアGAPで整形されたG色光は、有効断面の長手方向がZ軸に平行かつ短手方向がX軸に平行な(有効断面が縦長の)状態でダイクロイック膜D1に入射し、該ダイクロイック膜D1で+Z方向に向けて反射され(光路を90°折り曲げられ)、有効断面の長手方向がY軸に平行かつ短手方向がX軸に平行な状態でダイクロイック膜D2を+Z方向に透過する。すなわち、ダイクロイック膜D2を透過したG色光は、有効断面が縦長のレーザ光である。
また、アパーチュアBAPで整形されたB色光は、有効断面の長手方向がZ軸に平行かつ短手方向がX軸に平行な(有効断面が縦長の)状態でダイクロイック膜D2に入射し、該ダイクロイック膜D2で+Z方向に向けて反射される(光路を90°折り曲げられる)。すなわち、ダイクロイック膜D2を透過したB色光は、有効断面が縦長のレーザ光である。
結果として、ビーム合成プリズム101からは、R、G、Bの各色のYZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長のレーザ光束が1本の光束に合成されて+Z方向に射出される。この場合、合成された光束も、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長のレーザ光束となる。
ビーム合成プリズム101から射出された光束は、レンズ102により所定の断面積の「平行ビーム」に変換される。
この「平行ビーム」が、画素表示用ビームLCである。
画素表示用ビームLCを構成するR、G、Bの各色レーザ光束は、表示するべき「2次元のカラー画像」の画像信号により(画像データに応じて)強度変調されている。強度変調は、半導体レーザを直接変調する直接変調方式であっても良いし、半導体レーザから射出されたレーザ光束を変調する外部変調方式であっても良い。
即ち、半導体レーザRS、GS、BSは、図示されない駆動手段により、R、G、Bの各色成分の画像信号により発光強度を変調される。
光源部100から射出された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の画素表示用ビームLCは、2次元偏向手段6に入射し、2次元的に偏向される。
2次元偏向手段6は、この形態例では、微小なミラーを「互いに直交する2軸」を揺動軸として揺動するように構成されたものである。
即ち、2次元偏向手段6は具体的には、半導体プロセス等で微小揺動ミラー素子として作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)である。
2次元偏向手段は、この例に限らず、他の構成のもの、例えば、1軸の回りに揺動する微小ミラーを2個、揺動方向が互いに直交するように組み合わせたもの等でもよい。
上記の如く2次元的に偏向された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の画素表示用ビームLCは、凹面鏡7に入射し、被走査面素子8に向けて反射される。
凹面鏡7の光学作用は、2次元的に偏向されて入射する画素表示用ビームLCを反射し、反射された画素表示用ビームLCの向きを、一定方向に揃えることである。
即ち、凹面鏡7により反射された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の画素表示用ビームLCは、2次元偏向手段6による偏向に伴い平行移動しつつ被走査面素子8に入射し、該被走査面素子8を2次元的に走査する。
この2次元的な走査により、被走査面素子8に「カラーの2次元画像」が形成される。
勿論、被走査面素子8に各瞬間に表示されるのは「画素表示用ビームLCが、その瞬間に照射している画素のみ」である。
カラーの2次元画像は、画素表示用ビームLCによる2次元的な走査により「各瞬間に表示される画素の集合」として形成される。
ここで、被走査面素子8は、入射された、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が縦長の画素表示用ビームLCの有効断面の長手方向を略90°回転させ射出する。すなわち、該画素表示用ビームLCは、被走査面素子8で有効断面が縦長から横長に変換される。つまり、画素表示用ビームLCは、被走査面素子8を透過する前後で有効断面の長手方向と短手方向が逆になる。
すなわち、被走査面素子8に、上記の如く、画像データに応じて変調された光により「カラーの2次元画像」が形成され、該2次元画像を形成した後の、YZ平面に垂直な偏光成分が多い有効断面が横長の画像光が凹面鏡9に入射して反射される。
図1には示されていないが、被走査面素子8は後述する「微細凸レンズ構造」を有している。凹面鏡9は「虚像結像光学系」を構成する。
「虚像結像光学系」は、前記「カラーの2次元画像」の拡大虚像12を結像させる。
拡大虚像12の結像位置の手前側には、反射面素子10が設けられ、拡大虚像12を結像する有効断面が横長の光束を、観察者11(図には観察者の目を示す。)の側へ反射する。
この反射光により、観察者11は、拡大虚像12を視認できる。
ここでは、反射面素子10は、平板状の透過反射部材から成り、YZ平面に垂直に、かつXZ平面に対して傾斜するように配置されている。この場合、反射面素子10に入射(ここでは斜入射)される画像光(反射面素子10への入射光)は、入射面に電界の振動方向が垂直なS偏光成分が該入射面に電界の振動方向が平行なP偏光成分よりも多い。逆に言うと、光源部100の各半導体レーザは、反射面素子10に入射される画像光の反射面素子10に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多くなるように配置されている。
ここで、「入射面」とは、反射面素子10における画像光が入射される面の法線と、反射面素子10に入射される画像光(反射面素子10への入射光)とを含む面を意味する。
結果として、反射面素子10には、有効断面が横長であり、かつS偏光成分がP偏光成分よりも多い画像光が入射される。
この場合、画像光の反射面素子10に対するS偏光成分はP偏光成分よりも反射率が高いため、仮に該画像光のS偏光成分がP偏光成分よりも少ない場合に比べて、観察者11に向けて反射する光の光量を大きくすることができる。また、観察者11に向けて反射する光の有効断面が横長であるため、該光の横方向の視野角が広くなる。結果として、虚像の視認性を向上させることができる。
被走査面素子8は、上述の如く、微細凸レンズ構造を有している。
後述するように、微細凸レンズ構造は「複数の微細凸レンズが、画素ピッチに近いピッチで密接して配列された」ものである。ここでは、各微細凸レンズの光軸は、一例として、Z軸に平行となっている。また、複数の微細凸レンズは、一例として、XY平面に平行な所定平面に沿って2次元配列されている。
そして、個々の微細凸レンズは、画素表示用ビームLCを拡散させる機能を持つ。以下に、この「拡散機能」を簡単に説明する。
図1(c)において、符号L1〜L4は、被走査面素子8に入射する4本の画素表示用ビームを示している。
これ等の4本の画素表示用ビームL1〜L4は、被走査面素子8に形成される2次元画像の4隅に入射する画素表示用ビームであるものとする。
これら4本の画素表示用ビームL1〜L4は、被走査面素子8を透過すると、ビームL11〜L14のように変換される。
仮に、画素表示用ビームL1〜L4で囲まれる断面が縦長の4辺形の光束を、被走査面素子8に入射させると、この光束は「ビームL11〜L14で囲まれる断面が横長の4辺形の発散性の光束」となる。なお、図1(c)では、L1〜L4で囲まれる断面は横長に見えるが、実際には縦長である。
微細凸レンズのこの機能が「拡散機能」である。
「ビームL11〜L14で囲まれる発散性の光束」は、このように発散性光束に変換された画素表示用ビームを時間的に集合した結果である。
画素表示用ビームを拡散させるのは「反射面素子10により反射された光束が、観察者11の目の近傍の広い領域を照射する」ようにするためである。
上記拡散機能が無い場合には、反射面素子10により反射された光束が「観察者11の目の近傍の狭い領域」のみを照射する。
このため、観察者11が頭部を動かして、目の位置が上記「狭い領域」から逸れると、観察者11は拡大虚像12を視認できなくなる。
上記のように、画素表示用ビームLCを拡散することにより、反射面素子10による反射光束は「観察者11の目の近傍の広い領域」を照射する。
従って、観察者が「頭を少々動かし」ても、拡大虚像12を確実に視認できる。
上記の如く、説明中の形態例において、被走査面素子8に入射する画素表示用ビームLCは平行ビームであるが、被走査面素子8を透過した後は発散性のビームとなる。
ここで、微細凸レンズは、X軸方向に関する屈折率(拡散パワー)がY軸方向に関する屈折率(拡散パワー)よりも大きい。すなわち、微細凸レンズは、X軸方向に関する曲率がY軸方向に関する曲率よりも大きい。そして、微細凸レンズに入射される縦長の画素表示用ビームLCの有効断面の短手方向(短径方向)は、X軸方向に一致している。
この場合、微細凸レンズは、入射された画素表示用ビームLCを、有効断面を縦長から横長に変換して射出する。すなわち、微細凸レンズは、画素表示用ビームLCの有効断面の長手方向(長径方向)を略90°回転させる。
そして、被走査面素子8から射出され凹面鏡9で拡大反射された画素表示用ビームLCは、反射面素子10に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多く有効断面が横長の状態で反射面素子10に入射される。
結果として、反射面素子10には、光源部100から射出された画素表示用ビームLCの光量をほぼ維持した、S偏光成分がP偏光成分よりも多い有効断面が横長のレーザ光束が入射される。
ここで、反射面素子10に入射したレーザ光束のうちS偏光成分の反射率は、P偏光成分の反射率よりも大きい。
この場合、反射面素子10に入射されるレーザ光束の光量が同じでS偏光成分よりもP偏光成分が多い場合に比べて、反射面素子10で反射されるレーザ光束の光量が多くなり、反射面素子10を介した虚像の視認性が向上する。
ところで、一般に、ヘッドアップディスプレイによって透過反射部材を介して視認可能に表示される虚像は横長(原画像も横長)であるため、該虚像の原画像の各画素を形成するのに必要とされる画角は、縦方向よりも横方向に大きい。また、観察者は、正面のみならず斜め横方向からも虚像を観察するため、縦方向よりも横方向の視野角を確保する必要がある。
そこで、被走査面素子8においてY軸方向の発散角よりもX軸方向の発散角を大きく設定することで、画像表示装置1000の要求画角を満たす必要最小限の範囲に光を発散させ、光の利用効率を向上させることができ、観察者の目に入射される画像光の輝度を向上させることが可能である。
この発明における被走査面素子8は、画素表示用ビームLCを拡散させる複数の微細凸レンズが、画素ピッチに近いピッチで密接して配列された「微細凸レンズ構造」を有する。
微細凸レンズは「画素表示用ビームLCのビーム径」より大きい。
微細凸レンズを「画素表示用ビームLCのビーム径」より大きくするのは、干渉性ノイズ低減のためであり、以下これを、図2及び図3を参照して説明する。
図2(a)において、符号802は被走査面素子を示す。
被走査面素子802は、微細凸レンズ801を配列した微細凸レンズ構造を有する。
符号803で示す「画素表示用ビーム」の光束径807は、微細凸レンズ801の大きさよりも小さい。
即ち、微細凸レンズ801の大きさ806は、光束径807よりも大きい。
なお、説明中の形態例で、画素表示用ビーム803はレーザ光束であり、光束中心のまわりにガウス分布状の光強度分布をなす。
従って、光束径807は、光強度分布における光強度が「1/e2」に低下する光束半径方向距離である。
図2(a)では、光束径807は微細凸レンズ801の大きさ806に等しく描かれているが、光束径807が「微細凸レンズ801の大きさ806」に等しい必要は無い。
微細凸レンズ801の大きさ806をはみ出さなければよい。
図2(a)において、画素表示用ビーム803は、その全体が1個の微細凸レンズ801に入射し、発散角805をもつ拡散光束804に変換される。
なお、「発散角」は、以下において「拡散角」と呼ぶこともある。
図2(a)の状態では、拡散光束804は1つで、干渉する光束が無いので、干渉性ノイズ(スペックルノイズ)は発生しない。
なお、発散角805の大きさは、微細凸レンズ801の形状により適宜設定できる。
図2(b)では、画素表示用ビーム811は、光束径が微細凸レンズの配列ピッチ812の2倍となっており、2個の微細凸レンズ813、814に跨って入射している。
この場合、画素表示用ビーム811は、入射する2つの微細凸レンズ813、814により2つの発散光束815、816のように拡散される。
2つの発散光束815、816は、領域817において重なり合い、この部分で互いに干渉して干渉性ノイズを発生する。
図3(a)は、画素表示用ビーム824が、被走査面素子821の、2つの微細凸レンズ822、823に跨って入射している状態を示す。
画素表示用ビーム824の光束径は、微細凸レンズ822等の大きさに等しい。
この場合、微細凸レンズ822に入射したビーム部分は発散光束826となり、微細凸レンズ823に入射したビーム部分は発散光束827となって拡散される。
発散光束826と827とは、互いに遠ざかる方向へ拡散されるので、これらが相互に重なり合うことはなく、従って、この状態で干渉性ノイズは発生しない。
即ち、微細凸レンズにより拡散された光束による干渉性ノイズは、画素表示用ビーム824のビーム径を、微細凸レンズ822の大きさ以下に設定すれば発生しない。
微細凸レンズの径と、被走査面素子に入射する画素表示用ビームのビーム径の具体的な数値例を例示する。
画素表示用ビームのビーム径を、例えば150μm程度に設定することは容易である。
この場合には、微細凸レンズ構造を構成する微細凸レンズの大きさは、上記150μm以上の大きさ、例えば、160μm、200μm等に設定すれば良い。
図3(a)に示す被走査面素子821では、微細凸レンズ822、823・・は隙間なく配列されている。
従って、隣接する微細凸レンズ面の「境界部の幅(以下「境界幅」とも言う。)は0」である。
このため、微細凸レンズ822、823に、図3(a)の如く入射する画素表示用ビーム824から発生する発散光束は、発散光束826、827のみである。
しかしながら、実際に形成される微細凸レンズ構造では「隣接する微細凸レンズの境界幅が0となる」ことは無い。
即ち、図3(b)に示す被走査面素子831のように、実際に形成される微細凸レンズ構造では、微細凸レンズ833、834の境界部835は「幅:0」とはならない。
微細凸レンズ833、834の境界部835は、微視的には「曲面が滑らかに連続」しており、境界部835には曲面が形成される。
このように境界部835に形成された曲面は、この部分に画素表示用ビームが入射すると、入射光部分に対して「微小なレンズ面」として作用する。
従って、微細凸レンズ833、834に跨って入射する画素表示用ビーム832は、発散光束836、837とともに発散光束838も発生させる。
発散光束838は境界部835の曲面のレンズ作用により発生し、発散光束836、837と、領域839、840において重なり合って干渉し、干渉性ノイズを発生させる。
図3(c)は、微細凸レンズ構造における「干渉性ノイズの軽減ないし防止」を説明するための図である。
微細凸レンズ構造において、微細凸レンズ841、842のレンズ面が緩やかに繋がった境界部843の曲面形状は、それ自体が「微小なレンズ面」をなしている。
境界部843の曲面形状の曲率半径を図の如く「r」とする。
ここで、説明の簡単のため、微細凸レンズ構造に入射する画素表示用ビームを「波長:λの単色レーザ光束」とする。
境界部843の曲率半径:rが、画素表示用ビームの波長:λよりも大きい場合(r>λ)、曲率半径:rの曲面は、入射する画素表示用ビームに対してレンズ作用を及ぼす。
従ってこの場合、境界部843を通過するビーム成分は発散され、微細凸レンズ841、842により拡散された光束と重なり合って干渉し、干渉性ノイズを発生する。
一方、境界部843の曲率半径:rが、画素表示用ビームの波長:λより小さくなると、境界部843は画素表示用ビームに対して「サブ波長構造」となる。
周知の如く、サブ波長構造は「サブ波長構造よりも大きい波長の光」に対してはレンズ作用を生じない。
従って、波長:λより小さい曲率半径:rをもった境界部843は「レンズ」として作用せず、画素表示用ビームを直進的に透過させ、発散させることがない。
このため、境界部843を直進的に透過したビーム部分と、微細凸レンズ841、842により拡散された発散光束とは重なり合わず、干渉による干渉性ノイズは発生しない。
即ち、画素表示用ビームのビーム径:d、波長:λ、微細凸レンズの大きさ:D、境界部をなす面の曲率半径:rの大小関係は、以下のように定めるのが良い。
D>d、λ>r。
表示すべき2次元の拡大虚像がモノクロ画像である場合には、波長:λの単色のコヒーレント光により画素表示用ビームを形成する。
従って、この場合には、上記D、d、r、λが上記大小関係を満足するように設定することにより、干渉性ノイズを抑制できる。
説明中の実施の形態のように、2次元のカラー画像(拡大虚像)を表示する場合、画素表示用ビームLCは、R、G、Bの3色のビームの合成されたものである。
これ等の3ビームの波長をλR(=640nm)、λG(=510nm)、λB(=445nm)とすると、これらの大小関係は「λR>λG>λB」である。
従って、干渉性ノイズ防止の観点からすれば、上記境界部をなす面の曲率半径:rを、最短波長:λBよりも小さく、例えば、400nmとすればよい。
しかし、最長波長:λRよりも小さい曲率半径:r(例えば600nm)を設定すれば、画像表示ビームのR成分による干渉性ノイズを防止できる。
即ち、干渉性ノイズを有効に軽減させることができる。
「r(例えば500nm)<λG」とすれば、画像表示ビームのR成分およびG成分の光による干渉性ノイズを防止できる。
画素表示用ビームLCが「R、G、Bの3色のビームの合成されたもの」である場合、干渉性ノイズは、これら3色の成分について独立に発生する。
そして、これら独立した3色R、G、Bのビームの干渉性ノイズの「総体」が、視認される干渉性ノイズとなる。
従って、3色の干渉性ノイズのうち、1色でも干渉性ノイズが無くなれば、視認される干渉性ノイズは大幅に改善され、観察画像の画質向上に寄与する。
従って、干渉性ノイズの防止効果は、3色のうちで「最も長波長のR成分」のみでも効果があり、次いでG成分、B成分という順で「低減効果」が向上する。
したがって、最長波長:λRよりも小さい曲率半径:r(例えば600nm)を設定すれば、干渉性ノイズの軽減上、一定の効果を達成できる。
干渉性ノイズの視認性は、波長やビーム径・マルチ/シングルモードなどでノイズ強度は変わるが、一般的にはR≒G>Bの順で高い。
即ち、波長:λBの光は人間の眼の視感度が低く、干渉性ノイズは目立ちにくい。
従って、波長:λGよりも小さい曲率半径:r(例えば500nm)を設定すれば、視認性の比較的高い波長:λRとλGの光による干渉性ノイズを軽減できる。
視感度が低い波長:λBの光による干渉性ノイズは発生しても、さほど目立たない。
勿論、波長:λBよりも小さい曲率半径:r(例えば400nm)を設定すれば、上記の如く、干渉性ノイズを更に有効に軽減できる。
微細凸レンズ構造を構成する複数の微細凸レンズそれぞれの大きさは、上記の如く、100μmオーダであり、これは通常の「マイクロレンズ」として実現できる。
また、複数の微細凸レンズを配列した微細凸レンズ構造は「マイクロレンズアレイ」として実現できる。
従って、以下、微細凸レンズを「マイクロレンズ」とも呼び、微細凸レンズ構造を「マイクロレンズアレイ」とも呼ぶこととする。
マイクロレンズアレイは、一般に、マイクロレンズアレイのレンズ面アレイの転写面を持つ金型を作製し、この金型を用いて、樹脂材料に金型面を転写して作製される。
金型における転写面の形成は、切削やフォトリソグラフィなどを用いて形成する方法が知られている。
また、樹脂材料への転写面の転写は、例えば「射出成形」で行うことができる。
隣接マイクロレンズの境界部における曲率半径を小さくすることは、境界幅を小さくすることにより実現できる。
小さい境界幅は、隣接マイクロレンズ面の形成する境界部の「尖鋭化」することにより実現できる。
マイクロレンズアレイ用の金型において、「隣接マイクロレンズ間の境界幅」の大きさを波長オーダまで小さくする工法は、種々の方法が知られている。
例えば、特許第4200223号公報は、異方性エッチングおよびイオン加工により各マイクロレンズの曲率半径を増加させ、境界部の非レンズ部分を除去する方法を開示している。
また、特許第5010445号公報は、等方性ドライエッチングを用いて、隣接マイクロレンズ間の平坦面を除去する方法を開示している。
例えば、これらの公知の方法を用いることにより、隣接マイクロレンズ間の境界部を成す面の曲率半径が、十分に小さいマイクロレンズアレイを作製可能である。
即ち、上に説明した被走査面素子は、複数のマイクロレンズが相互に近接して配列した構造を有するマイクロレンズアレイとして構成できる。
隣接するマイクロレンズの境界部をなす面の曲率半径:rを640nmよりも小さいマイクロレンズアレイとして形成することにより、R成分光の干渉性ノイズを防止できる。
また、上記曲率半径:rを510nmよりも小さいマイクロレンズアレイとして形成すれば、R成分光とG成分光による干渉性ノイズを防止できる。
隣接するマイクロレンズの境界部をなす面の曲率半径:rを445nmよりも小さいマイクロレンズアレイとして形成すれば、R、G、B成分光の干渉性ノイズを防止できる。
上には、図1に示す画像表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)について説明した。
図1に示す凹面鏡7は「2次元的に偏向されて入射する画素表示用ビームLCを反射し、反射された画素表示用ビームLCの向きを、一定方向に揃える機能」を持つ。
即ち、凹面鏡7は「2次元的に偏向された画素表示用ビームの偏向範囲を調整し、被走査面素子の走査範囲を規制する偏向範囲規制手段」として機能する。
このような偏向範囲規制手段は、2次元偏向手段6により2次元的に偏向された画素表示用ビームの偏向角がさほど大きくない場合には、省略することもできる。
次に、微細凸レンズ構造(マイクロレンズアレイ)における複数の微細凸レンズ(マイクロレンズ)の配列形態の例を説明する。
マイクロレンズアレイおよびマイクロレンズに対する条件は上記の如くである。
即ち、「画素表示用ビームのビーム径より大きい複数の微細凸レンズが、画素ピッチに近いピッチで密接して配列されて微細凸レンズ構造を構成」する。
そこで、このような条件を満足するマイクロレンズアレイの具体的な形態を3例、図4に示す。
図4(a)に形態例を示すマイクロレンズアレイ87は、正方形形状のマイクロレンズ8711、8712・・等を正方行列状に配列したものである。
ヘッドアップディスプレイ装置において表示される2次元画像(拡大虚像)の画素数は、マイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの配列周期で決定される。
図4(a)の配列の場合、X軸方向に隣接するマイクロレンズ8711、8712の中心間距離をX1とする。
また、図においてY軸方向に隣接するマイクロレンズ8711、8721の中心間距離をY1とする。これら、X1、Y1を「1画素の実効サイズ」と見做すことができる。
「1画素の実効サイズ」を以下において「1画素の実効ピッチ」あるいは「実効画素ピッチ」とも呼ぶ。
図4(b)に形態例を示すマイクロレンズアレイ88は、正六角形形状のマイクロレンズ8811、8821・・を稠密に配列したものである。
この場合のマイクロレンズの配列では、配列されるマイクロレンズ8811等は、X軸方向に平行な辺を持たない。
即ち、X軸方向に配列するマイクロレンズの上辺・下辺は「ジグザク状」になるので、このような配列を「ジグザグ型配列」と呼ぶ。
図4(c)に形態例を示すマイクロレンズアレイ89は、正六角形形状のマイクロレンズ8911、8921・・を稠密に配列したものである。
この場合のマイクロレンズの配列では、配列されるマイクロレンズ8911等は、X軸方向に平行な辺を持っている。この場合の配列を「アームチェア型配列」と呼ぶ。
ジグザグ型配列とアームチェア型配列を合わせて「ハニカム型配列」と呼ぶ。
図4(c)に示すアームチェア型配列は、図4(b)に示すジグザグ型配列を、90度回転させた配列である。
ジグザグ型配列では、マイクロレンズの配列では、図に示すX2を「X軸方向の実効画素ピッチ」、Y2を「Y軸方向の実効画素ピッチ」と見做すことができる。
アームチェア型配列では、図に示すX3を「X軸方向の実効画素ピッチ」、Y3を「Y軸方向の実効画素ピッチ」と見做すことができる。
図4(b)で、実効画素ピッチ:Y2は、マイクロレンズ8821の中心と、マイクロレンズ8811の右側の辺の中点との距離である。
図4(c)で、実効画素ピッチ:X3は、マイクロレンズ8911の右側に接する2つのマイクロレンズの接する辺の中点とマイクロレンズ8911の中心との距離である。
ジグザク型配列においては、X軸方向の実効画素ピッチ:X2が小さいので、画像表示におけるX軸方向の分解能を向上させることができる。
また、アームチェア型配列においては、Y軸方向の分解能を向上させることができる。
このように、マイクロレンズをハニカム型に配列することにより、実際のレンズ径よりも小さい画素を実効的に表現でき、実効画素数を向上させることが可能である。
上述の如く、被走査面素子の微細凸レンズ構造(マイクロレンズアレイ)において、隣接するマイクロレンズの境界部は、曲率半径:rを有する。
曲率半径:rは、例えば、画素表示用ビームのR成分の波長:λRよりも小さい。
従って、前述の如く、「R成分のコヒーレント光の干渉による干渉性ノイズ」は防止される。
しかし、画素表示用ビームのG成分光の波長:λGやB成分光の波長:λBよりも、前記曲率半径:rが大きければ、これ等の光は境界部で拡散され、互いに干渉する。
従って、この干渉による干渉性ノイズは発生する。
この場合、図4(a)の「正方行列状の配列」であると、境界部での発散(拡散)は、図のXa方向およびYa方向の2方向に生じ、それぞれが干渉性ノイズの原因となる。
これに対し、図4(b)の配列だと、境界部での発散は、8A、8B、8Cの3方向に起こる。また、図4(c)の場合だと、9A、9B、9Cの3方向に拡散する。
即ち、境界部での発散は、正方行列状配列では2方向に発生し、ハニカム状配列では3方向に生じる。
従って、干渉性ノイズの発生は、正方行列状の配列では2方向的、ハニカム状の配列では3方向的に生じる。
即ち、発生する干渉性ノイズは、正方行列状配列では「2方向に分散」されるのに対し、ハニカム状の配列では「3方向に分散」される。
干渉性ノイズを生じさせるコヒーレント光の最大強度は一定である。
従って、分散される数が大きいほど「発生する干渉性ノイズのコントラスト」は弱められて視認され難く(目立ち難く)なる。
従って、「境界部の曲率半径:rよりも小さい波長の成分による干渉性ノイズ」の発生を許容する場合には、マイクロレンズの配列は「ハニカム状配列」とするのがよい。
なお、境界幅が前記波長:λRより大きい場合には、R成分のコヒーレント光による干渉性ノイズも発生する。
しかし、隣接する微細凸レンズの「レンズ面間の境界幅」は微小であり、微小な境界幅の部分に入射するコヒーレント光の光エネルギは小さい。
従って、干渉性ノイズを発生させる光エネルギも大きくは無い。
従って、干渉性ノイズが発生したとしても、ハニカム状配列の場合は、上記の如く、3方向に分散されることで、コントラストは弱くなる。
従って、干渉性ノイズの視認性は有効に軽減させることとなる。
図1(a)に即して説明したように、2次元の拡大虚像12を結像する虚像結像光学系は、凹面鏡9により構成される。
即ち、拡大虚像12は、凹面鏡9により結像される画素像の集合である。
微細凸レンズであるマイクロレンズに「アナモフィックな機能」を持たせると、微小凸レンズの拡散機能を、互いに直交する方向において異ならせることができる。
図6(a)及び図6(b)を参照すると、図6(a)及び図6(b)において符号80は、被走査面素子8に稠密に形成されたマイクロレンズ(微細凸レンズ)の個々を説明図として示している。図6(a)の例では、微細凸レンズは、縦長の楕円形であり、「マトリクス状配列」で配列されている。
図6(b)の例では、微細凸レンズ80は、X軸方向に平行な辺を持つ縦長の六角形であり、「アームチェア型配列」で配列されている。
微細凸レンズ80は、そのレンズ面の曲率半径が、X軸方向とY軸方向とで異なり、X軸方向の曲率半径:Rxは、Y軸方向の曲率半径:Ryよりも小さい。すなわち、微細凸レンズ80は、X軸方向の曲率がY軸方向の曲率よりも大きい。
従って、微細凸レンズ80のX軸方向のパワー(拡散パワー)は、Y軸方向のパワー(拡散パワー)よりも大きい。
また、レンズ面のX軸方向とY軸方向との両方に曲率を持たせたので、図6(b)に示されるように、微細凸レンズを六角形にでき、上記の如く「干渉性ノイズの視認性」を弱めることができる。
図6(a)及び図6(b)は、1個の微細凸レンズ80に、画素表示用ビームLCが入射した場合を示している。図6(a)及び図6(b)では、個々の微細凸レンズ80のY軸方向の幅がX軸方向の幅よりも長い。
また、図6(a)に示されるように、画素表示用ビームLCのビーム径を「Y軸方向に長い楕円形状」とし、Y軸方向における光束径を、微細凸レンズ80のY軸方向の径より小さくする。
このようにすれば、画素表示用ビームLCを「レンズ境界を跨がずに入射」させることが可能であり、射出する発散光束の有効断面の形状は、X軸方向に長い(横長の)楕円形状になる。
微細凸レンズのY軸方向の長さおよびX軸方向の長さに拘わらず、X軸方向の曲率の方がY軸方向の曲率よりも大きければ、各微細凸レンズから射出する発散ビームの光束断面FX(有効断面)は、Y軸方向よりもX軸方向の方が長くなる。すなわち、横長となる。
上に説明したヘッドアップディスプレイ装置は、例えば、自動車等の車載用として用いることができ、X軸方向は「運転席から見て左右方向」、Y軸方向は「上下方向」である。
この場合の反射面素子10は、自動車のフロントガラスである。
この場合、フロントガラス前方に拡大虚像12として、例えば「ナビゲーション画像」を表示でき、観察者11である運転者は、この画像を運転席に居ながらフロントガラス前方から視線をほとんど逸らさずに観察できる。
このような場合、上述の如く、表示される拡大虚像は「運転者から見て横長の画像」であること、即ち、マイクロレンズに形成される画像および、拡大虚像は、X軸方向に画角の大きい画像であることが一般に好ましい。
また、上述の如く、観測者である運転者が、左右斜め方向から表示画像を見た場合にも、表示を認識できるように、横方向には「縦方向に比して大きな視野角」が要求される。
このため、拡大虚像の長手方向(X軸方向)には短手方向(Y軸方向)に比して大きな拡散角(非等方拡散)が要求される。
従って、被走査面素子の微細凸レンズをマイクロレンズ上に形成された画像もしくは拡大虚像の短手方向よりも長手方向の方が曲率が大きいアナモフィックなレンズとし、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「2次元画像の横方向を縦方向よりも広く」するのが好ましい。
このようにして、ヘッドアップディスプレイ装置の要求画角を満たす必要最小限の範囲に光を発散させ、光の利用効率を向上させ、表示画像の輝度を向上させることが可能である。
勿論、上記のような「非等方拡散」ではなく、縦方向と横方向で拡散角が等しい「等方拡散」とする場合も可能である。
しかし、自動車等の車載用として用いるヘッドアップディスプレイ装置の場合であれば、運転者が表示画像に対して上下方向の位置から観察を行なう場合はすくない。
従って、このような場合であれば、上記のように、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「2次元画像の横方向を縦方向よりも広く」するのが光利用効率の面から好ましい。
微細凸レンズ(マイクロレンズ)は、そのレンズ面を「非球面」として形成できることが従来から知られている。
直上に説明したアナモフィックなレンズ面も「非球面」であるが、微細凸レンズのレンズ面をより一般的な非球面として形成でき、収差補正を行なうこともできる。
収差の補正により「拡散の強度ムラ」を低減することも可能である。
図4に示した微細凸レンズ構造(マイクロレンズアレイ)における個々の微細凸レンズ(マイクロレンズ)は、正方形もしくは正六角形であった。
微細凸レンズの形状はこのように正多角形である必要はなく、図4に示したマイクロレンズ形状を1方向に引き伸ばした形状でもよい。
この場合、正方形形状であったものは「長方形形状」となり、正六角形状であったものは、細長い変形六角形になる。
微細凸レンズ構造の実効画素ピッチは、図4(a)〜図4(c)の配列では、X軸方向につきX1〜X3、Y軸方向につきY1〜Y3であった。
このように定められるX軸方向の実効画素ピッチを一般に「SX」、Y軸方向の実効画素ピッチを一般に「SY」とするとき、両者の比:SY/SXを「アスペクト比」と言う。
図4(a)の場合、アスペクト比は「Y1/X1」であり、X1=Y1であるから、アスペクト比は1である。
図4(b)の場合のアスペクト比は「Y2/X2」であり、Y2>X1であるから、アスペクト比は1より大きい。
図4(c)の場合のアスペクト比は「Y3/X3」であり、Y3<X3であるから、アスペクト比は1よりも小さい。
図5(a)〜図5(e)に示すマイクロレンズアレイ91〜95の微細凸レンズ構造では、実効画素ピッチを、図4の場合と同様にして以下の如くに定める。
即ち、X軸方向、Y軸方向の実効画素ピッチは、図5の「X11、Y11」、「X12、Y12」、「X13、Y13」である。
図5(a)の微細凸レンズ構造は、長方形形状の微細凸レンズ9111、9112、・・9121・・を正方行列状に配列したものであり、アスペクト比は1よりも大きい。
図5(b)〜図5(e)に示すマイクロレンズアレイ92〜95では、微細凸レンズ構造は、ハニカム型配列である。
図5(b)、図5(d)、図5(e)に示すハニカム型配列では、アスペクト比「Y12/X12」、「Y13/X13」はいずれも1より大きい。
図5に示す微細凸レンズ構造の5例は何れも「微細凸レンズ」は、Y軸方向の長さがX軸方向の長さよりも大きい。
このように「Y軸方向の長さがX軸方向の長さより大きい形状の微細凸レンズ」の場合、微細凸レンズの形状として、X軸方向の曲率をY軸方向の曲率より大きくするのが容易である。
従って、前述した「X軸方向のパワーがY軸方向のパワーよりも大きくなるアナモフィックな光学機能」を実現しやすい。
例えば、図5(a)に示す例の場合、具体例として例えば、X11=150μm、Y11=200μm、アスペクト比=200/150=4/3>1を挙げることができる。
勿論、この場合には、画素表示用ビームのビーム径はX軸方向を150μm未満、Y軸方向を200μm未満にする。
図5(b)〜図5(d)に示す微細凸レンズの配列は、何れもハニカム型配列であり、個々の微細凸レンズは「Y軸方向に長い形状」となっている。
図5(b)の配列は「ジグザグ型」であり、図5(c)〜図5(e)の配列は何れも「アームチェア型」である。
図5(b)の「ジグザグ型の縦長ハニカム型配列」と、図5(c)の「アームチェア型の縦長ハニカム配列」は何れも使用可能であることは勿論である。
しかし、図5(c)の配列例は図5(b)の配列例に対して以下の如き利点を有する。
即ち、図5(b)の配列に比して、図5(c)の配列では、微小凸レンズにおける「X軸方向とY軸方向のサイズの差」が小さく、縦横方向における「実効画素サイズの差」が小さくなる。
具体的な寸法を挙げる。
例えば、図5(b)において、微細凸レンズ9211、9212等のX軸方向のレンズ径:R2x=100μm、Y軸方向のレンズ径:R2y=200umとする。
このとき、X軸方向の実効画素ピッチ(=X12)は50μm、Y軸方向の実効画素ピッチ(=Y12)は150μmとなる。
同様に、図5(c)において、微細凸レンズ9311、9312等の、X軸方向のレンズ径:R3x=100μm、Y軸方向のレンズ径:R3y=200μmとする。
また、微細凸レンズ9311等の六角形形状の、上下の辺の長さは50μmとする。
このとき、X軸方向の実効画素ピッチ(=X13)は75μm、Y軸方向の実効画素ピッチ(=Y13)=100μmとなる。
従って「X、Y軸方向の実効画素ピッチ」は、図5(c)の配列(75μmと100μm)の方が(b)の配列(50μmと100μm)の場合よりも「互いに近い値」になる。
図5(c)、図5(d)、図5(e)においては、X軸方向の実効画素ピッチをX13、Y軸方向の実効画素ピッチをY13としている。
これは、図5(c)〜図5(e)のハニカム型配列(アームチェア型のハニカム配列)において、X軸方向の画素ピッチ、Y軸方向の画素ピッチが、同じように定義されることによる。
図5(d)においては、微細凸レンズ9411、9421等は、X軸方向に平行な上下の辺が短く、斜辺が長い。
また、図5(e)においては、微細凸レンズ9511、9521等は、X軸方向に平行な上下の辺が短く、斜辺が長い。
これらの図に示すように、微細凸レンズの六角形形状の変形により、X軸方向の画素ピッチ:X13、Y軸方向の画素ピッチ:Y13を調整できる。
図5(c)の場合と同様、これら図5(d)、図5(e)に示す配列においても「微細凸レンズ構造が縦長構造」であることにより、X、Y軸方向の「実効画素ピッチの均等化」が可能である。
例えば、図8に示すマイクロレンズアレイ96のマイクロレンズ9611、9621等は、図5(d)に示すマイクロレンズアレイ95と同様の縦長の六角形形状である。
図8に示すマイクロレンズ9611等の配列は、図5(c)と同様の「アームチェア型の縦長ハニカム配列」である。
マイクロレンズ9611等の六角形形状は、X軸方向の実効画素ピッチ:X14が、Y軸方向の実効画素ピッチ:Y14と完全に等しくなるように設定されている。
このように、アームチェア型の縦長ハニカム配列では、アスペクト比を1に設定することができる。画素表示用ビームのビーム径より大きい微細凸レンズもしくは画素表示用ビームのビーム径と同じ程度の大きさの微細凸レンズの場合、実効画素ピッチのアスペクト比が1であれば、虚像として投影される画像データに対して、虚像による再現性が高まる。虚像として投影される画像データのマイクロレンズアレイ上における画素ピッチと実効画素ピッチとを一致させる、もしくは、他の実効画素ピッチと比較して、実効画素ピッチを虚像として投影される画像データのマイクロレンズアレイ上における画像データの画素ピッチに近づけることができるからである。
2次元偏向手段6は、1つの軸について1往復の揺動(第1軸の揺動)を行う間に、もう一方の軸について往復の揺動(第2軸の揺動)を複数回行うが、多くの場合、拡大虚像の長手方向であるX軸方向が、第2軸の揺動による画素表示用ビームLCのマイクロレンズアレイに対する走査の方向に設定される。したがって、「アームチェア型」の六角形形状のマイクロレンズのX軸方向に平行な上下の辺は、画素表示用ビームLCのマイクロレンズアレイに対する走査方向とほぼ平行となり、「アームチェア型」の六角形形状の画素表示用ビームのマイクロレンズアレイに対する走査方向に最も平行に近い2辺の間隔、言い換えれば、画素表示用ビームのマイクロレンズアレイに対する走査方向に最も平行に近い辺とその対向する辺との間隔を、これら2辺に直交する方向へ拡大するように引き伸ばした形状が「アームチェア型の縦長ハニカム構造」である。
従って、アームチェア型の縦長ハニカム配列は、輝度及び実効画素数の向上に加え、X軸方向(横方向)、Y軸方向(縦方向)の実効画素ピッチの差を小さくすることができる。
図5(c)〜図5(e)に示す如き「微細凸レンズの形状」は、例えば、発散光束の発散角制御のため、任意に選択することが可能である。
図1(a)に示したヘッドアップディスプレイ装置においては、画素表示用ビームLCは、被走査面素子8の微細凸レンズ構造に直交入射している。
しかし、画素表示用ビームの被走査面素子への入射形態は、このような「直交入射」に限らない。
例えば、光源部から反射面素子に到る光学素子の配列を工夫して、ヘッドアップディスプレイ装置をコンパクト化する場合には、図7(a)のような入射形態が考えられる。
即ち、図7(a)の例では、画素表示用ビームLCが、被走査面素子8に対して傾いて入射している。
微細凸レンズのレンズ面を「非球面」とするような場合、画素表示用ビームLCは、非球面の光軸に対して傾いて入射することになり、非球面の機能を生かせない場合もある。
このような場合には、図7(b)の被走査面素子8aのように、微細凸レンズMLのレンズ面光軸AXを、被走査面素子8aの基準面に対して直交方向から傾けるのが良い。
このようにして、レンズ面光軸AXを画素表示用ビームLCの入射方向に平行、もしくはこれに近い方向とすることができる。
なお、被走査面素子8aの基準面は、微細凸レンズMLがアレイ配列された面である。
このようにすることにより、光学系の小型化や、光の利用効率の向上が可能となり「微細凸レンズによる画素表示用ビームの発散の方向」を均質化することが可能である。
上に説明したヘッドアップディスプレイ装置は、上述の自動車への搭載に限らず、列車、船舶、ヘリコプター、飛行機など各種の、操縦可能な移動体に搭載できる。例えば、オートバイのウインドシールド(風よけ)を透過反射部材とすることもできる。
この場合、操縦席前方のフロントガラスを反射面素子とすればよい。
勿論、ヘッドアップディスプレイ装置を、例えば「映画観賞用の画像表示装置」として実施できることは言うまでも無い。
微細凸レンズ構造の微細凸レンズは、上記の如く画素表示用ビームを拡散させるものであるが、X、Yの2方向のうち、1方向のみの拡散を行なう場合も考えられる。
このような場合には、微細凸レンズのレンズ面として「微細凸シリンダ面」を用いることができる。
なお、微細凸レンズの形状を、六角形状とすることや、その配列をハニカム型配列とすることは、従来から、マイクロレンズアレイの製造方法に関連して知られている。
以上説明した画像表示装置1000は、半導体レーザからの光により画像を形成し、該画像を形成した後の画像光を透過反射部材(反射面素子10)に入射させる画像表示装置であり、透過反射部材に入射される画像光の透過反射部材に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多くなるように半導体レーザが配置されている。
この場合、仮に透過反射部材に入射される画像光の透過反射部材に対するS偏光成分がP偏光成分以下である場合に比べて、虚像の視認性を向上させることができる。
また、透過反射部材に入射される画像光の有効断面は横長であるため、該画像光の有効断面が縦長の場合に比べて、虚像の視認性を向上させることができる。
また、画像表示装置1000では、特に前記画像が横長である場合に、光利用効率の向上を図ることができる。
また、画像表示装置1000は、透過反射部材に入射される画像光のS偏光成分に対応する偏光成分(電界の振動方向がYZ平面に垂直な偏光成分)がP偏光成分に対応する偏光成分(電界の振動方向がYZ平面に平行な偏光成分)よりも多い光を射出する光源(半導体レーザ)を備えている。
この場合、光源からの光を透過反射部材で観察者(移動体の操縦者)に向けてより多く反射させることができる。また、例えば、光源から射出される光の光量、及び該光の透過反射部材に対するS偏光成分に対応する偏光成分と該透過反射部材に対するP偏光成分に対応する偏光成分との比がそれぞれ同一の条件で該光を偏光フィルタに入射させS偏光成分のみを透過させて透過反射部材に入射させる場合に比べて、光量のロスがほとんどなく、透過反射部材からの反射光の光量を大きくすることができる。すなわち、光利用効率を向上させることができる。
また、光源から射出された光に占める前記S偏光成分に対応する偏光成分の割合を略100%とすることで、虚像の視認性を最大限に向上させることができる。
また、光源から射出された光の遠視野像は長手方向を有するため、有効断面が横長の光を比較的容易に透過反射部材に入射させることができる。
また、画像表示装置1000は、光源と透過反射部材との間の光路上に配置され、光源からの光の有効断面の長手方向を略90°回転させる光学素子(被走査面素子8)を備えている。
この場合、光源から射出された光の遠視野像が縦長であっても、該光を、有効断面を横長にした状態で透過反射部材に入射させることができる。
また、画像表示装置1000は、光源と透過反射部材との間の光路上に配置され、前記光源からの光を2次元的に偏向する2次元偏向手段6を備え、前記光学素子は、前記2次元偏向手段6で偏向された光により前記画像が形成される、複数のマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイを含み、前記複数のマイクロレンズそれぞれは、光軸(Z軸)に直交する面内で互いに直交するX軸方向(左右方向)及びY軸方向(上下方向)に関する曲率が異なる。より詳細には、各マイクロレンズは、X軸方向(左右方向)に関する曲率がY軸方向(上下方向)に関する曲率よりも大きい。
この場合、各マイクロレンズに入射された光の有効断面を縦長から横長に変換できるとともに、虚像の視認性をより一層向上させることができる。
また、前記光源は、半導体レーザであるため、低電力で高輝度の光を容易に取り出すことができる。
そこで、虚像の視認性に優れた画像表示装置1000が搭載された移動体では、操縦時に透過反射部材を介して視認可能に表示されるナビゲーション情報を迅速かつ正確に認識することができる。
なお、画像表示装置1000は、透過反射部材への画像光の入射角がブリュースタ角近傍である場合、すなわち例えばブリュースタ角−10°〜ブリュースタ角+10°である場合に、特に、好適である。この場合、透過反射部材でのP偏光成分の反射率が非常に低いため、透過反射部材に入射させる画像光のS偏光成分をP偏光成分よりも多くすることが極めて効果的である。
上述の如く、被走査面素子8としてのマイクロレンズアレイは、Y軸方向よりもX軸方向の発散角を大きくすることが好ましい。この場合、各マイクロレンズのアスペクト比(縦/横)を1よりも大きくし、特に、マイクロレンズアレイに形成される画像の縦方向の長さをY、横方向の長さをXとしたときにY/X>1とすることが好ましい。この結果、マイクロレンズのX軸方向の曲率が、Y軸方向の曲率よりも大きくなる。この場合、横方向の発散角が大きくなり、ヘッドアップディスプレイに必要とされる横長の画像の画角を効率よく満たし、輝度を向上させることができる。
なお、上述した画像表示装置の構成は、適宜変更可能である。例えば、被走査面素子8として、マイクロレンズアレイに代えて、画像光を透過させる透過型スクリーン(マイクロレンズを有しないもの)や画像光を反射させる反射型スクリーン(マイクロレンズを有しないもの)を用いても良い。また、拡散板を用いても良い。この場合、例えば射出光の遠視野像が横長になるように光源(例えばLD)を配置し、有効断面が横長の画像光を反射面素子10に入射させることとしても良い。
また、画像表示装置は、2次元偏向手段6、凹面鏡7、被走査面素子8及び凹面鏡9の代わりに、例えば透過型液晶パネル、反射型液晶パネル、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)のいずれかを備えていても良い。いずれにしても、透過反射部材(例えば移動体のフロントガラス)に、透過反射部材に対してS偏光成分がP偏光成分よりも多い画像光を入射させることとすれば良い。また、透過反射部材に入射される画像光の有効断面を横長とすることが好ましい。これらの場合には、光源として例えばランプを用いることもできる。
また、画像表示装置では、光源として、端面発光レーザに代えて、例えば発光ダイオード、有機EL素子、半導体レーザの一種である面発光レーザ(VCSEL)等を用いても良い。この場合に、仮に射出光の遠視野像が長手方向を有していなくても(例えば円形、正多角形の場合でも)、上記マイクロレンズアレイの各マイクロレンズからは有効断面が横長の画像光が射出される。
また、マイクロレンズアレイに代えて又は加えて、光源からの光の有効断面の長手方向を略90°回転させる(有効断面の長手方向と短手方向を逆にする)光学素子(例えばX軸方向に関する曲率とY軸方向に関する曲率が異なるレンズ)を少なくとも1つ設けても良い。該光学素子は、例えば2次元偏向手段6の前段に設けても良いし、後段に設けても良い。但し、後段に設ける場合、すなわち偏向された光の光路上に設ける場合は、被走査面を形成するようなある程度大きい単一のレンズ又は該レンズと同等の大きさの、複数のレンズを含むレンズアレイとすることが好ましい。この場合、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズのX軸方向に関する曲率とY軸方向に関する曲率を同じにしても良い(例えば円形又は正多角形のマイクロレンズ)。すなわち、各マイクロレンズを、入射されたレーザ光を全方位に略均等に拡散するものとしても良い。また、マイクロレンズアレイに加えて上記光学素子を設ける場合には、各マイクロレンズのX軸方向に関する曲率をY軸方向に関する曲率以下にしても良い。
また、画像表示装置において、射出光の遠視野像が横長となるように光源を配置する場合は、透過反射部材に有効断面が横長の画像光を入射させるために、光源からの光の有効断面の長手方向を略90°回転させる(有効断面の長手方向と短手方向を逆にする)光学素子を、偶数個設けても良いし、1つも設けなくても良い。
一方、画像表示装置において、射出光の遠視野像が縦長となるように光源を配置する場合は、透過反射部材に有効断面が横長の画像光を入射させるために、光源からの光の有効断面の長手方向を略90°回転させる(有効断面の長手方向と短手方向を逆にする)光学素子を、奇数個設けることが好ましい。
また、画像表示装置において、光源からの射出光の遠視野像が長手方向を有しない場合は、透過反射部材に有効断面が横長の画像光を入射させるために、光源からの光の有効断面を横長とする光学素子を設けることが好ましい。
また、上記マイクロレンズアレイは、2次元配列された複数のマイクロレンズを含んでいるが、これに代えて、1次元配列された複数のマイクロレンズを含んでいても良い。この場合、光によりマイクロレンズアレイを走査するための光偏向手段として、1次元偏向手段を用いても良い。この1次元偏向手段としては、例えばポリゴンミラー、ガルバノミラー、MEMSミラーを含む1軸のスキャナ等が挙げられる。
また、反射面素子10は、移動体のフロントガラスに限らず、サイドガラス、リアガラス等であっても良く、要は、移動体の外部を視認するための窓部材であれば良い。また、上記透過反射部材は、ガラス製の部材に限らず、要は、光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる性質を有する部材であれば良い。
また、反射面素子10は、例えば観察者(操縦者)から見て移動体に設けられた窓部材の手前に配置された例えばコンバイナのような透過反射部材であっても良い。
また、光源部100は、光の3原色に対応する3つの半導体レーザを有しているが、これに限らず、要は、少なくとも1つの光源(例えば半導体レーザ)を有していれば良い。すなわち、画像表示装置は、カラー画像を表示するものに限らず、モノクロ画像を表示するものであっても良い。
また、光源(例えば半導体レーザ)の配置は、図1(b)に示される配置に限らず、要は、透過反射部材(例えば反射面素子10)に入射される画像光の該透過反射部材に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多くなるように配置されていれば良い。また、光源の配置に応じて、光源部100の光学系の構成及び配置も適宜変更可能である。
また、被走査面素子8(例えばマイクロレンズアレイ)における複数の微細凸レンズ(例えばマイクロレンズ)は、図1(a)に示される配置(XY平面に平行な所定平面に沿って2次元配列)に限らず、例えばXY平面と交差する所定平面に沿って2次元配列されても良い。具体例として、マイクロレンズアレイにおける複数のマイクロレンズを、XZ平面に平行な所定平面に沿って2次元配列し、該マイクロレンズアレイに対して+Y方向から光を入射させ、該マイクロレンズアレイを−Y方向に透過した光を少なくとも1つのミラーで反射面素子10に導くこととしても良い。この場合、各マイクロレンズのX軸方向(横方向)に関する曲率をZ軸方向(縦方向)に関する曲率よりも大きくすれば、反射面素子10に横長の光を入射させることができる。
また、以上の説明では、移動体の操縦者11から見た左右方向(X軸方向)を「横方向」と呼び、移動体の操縦者11から見た前後方向(Z軸方向)、上下方向(Y軸方向)を「縦方向」と呼んでいるが、光源、マイクロレンズアレイ等の配置によっては、実情に沿わない場合もあるため、適宜、呼び方を変えることが望ましい。例えば、射出面の長手方向がZ軸に平行かつ短手方向がY軸に平行となるように光源(例えばLD)が配置される場合、X軸方向及びZ軸方向を「横方向」と呼び、Y軸方向を「縦方向」と呼んでも良い。また、例えばマイクロレンズアレイにおける複数のマイクロレンズがYZ平面に平行な所定平面に沿って2次元配列される場合、X軸方向及びZ軸方向を「横方向」と呼び、Y軸方向を「縦方向」と呼んでも良い。
また、透過反射部材に入射される画像光の有効断面は、横長に限らず、縦長であっても良いし、長手方向を有していなくても良い。具体的には、例えば射出光の遠視野像が縦長となるように光源(例えばLD)を配置し、有効断面が縦長の光で画像を形成し、該画像を形成後の有効断面が縦長の画像光を反射面素子10に入射させても良い。また、例えばVCSELからの有効断面が略円形の光で画像を形成し、該画像を形成後の有効断面が円形の画像光を反射面素子10に入射させることとしても良い。但し、いずれにしても、反射面素子10に入射される画像光の該反射面素子10に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多くなるように光源(例えばLD)が配置されることが好ましい。
また、画像表示装置1000は、例えばヘッドマウントディスプレイに応用することも可能である。この場合、反射面素子100として、小型の透過反射部材を用いることができる。
本発明は、レーザ光源からの光により画像を形成し、該画像を形成した後の画像光を透過反射部材に入射させる画像表示装置において、前記透過反射部材に入射される前記画像光の前記透過反射部材に対するS偏光成分がP偏光成分よりも多くなるように前記レーザ光源が配置されており、前記レーザ光源からの光の光路上に配置され、前記画像が形成される、複数のレンズを有するレンズアレイを備え、前記レーザ光源から射出される光の有効断面は、前記透過反射部材に対してS偏光方向に短軸を持つ形状であり、前記レンズアレイを透過した後の光の有効断面は、前記透過反射部材に対してS偏光方向に長軸を持つ形状であることを特徴とする画像表示装置である。