JP2020073425A - 結晶積層構造体、及びそれを製造する方法 - Google Patents

結晶積層構造体、及びそれを製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高品質かつ大口径のβ−Ga2O3系単結晶膜を効率的に成長させることのできるβ−Ga2O3系単結晶膜の成長方法により成長したβ−Ga2O3系単結晶膜を有する結晶積層構造体を提供すること。【解決手段】Ga2O3系基板の主面上に設けられるβ−Ga2O3系単結晶膜は、残留キャリア濃度が1×1013/cm3以下であり、1×1013〜1×1020/cm3の範囲でキャリア濃度が制御可能である結晶積層構造体。【選択図】図2

Description

本発明は、結晶積層構造体、及びそれを製造する方法に関する。
従来、β−Ga単結晶膜の成長方法として、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法やPLD(Pulsed Laser Deposition)法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、ゾル−ゲル法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ミストCVD法による成長方法も知られている。
特開2013―56803号公報 特許第4565062号公報
しかしながら、MBE法では高真空チャンバー内で結晶成長を行うため、β−Ga単結晶膜の大口径化が困難である。また、一般的に成長温度を上げると高品質な膜が得られるが、原料ガスの再蒸発が増加するため十分な成膜速度が得られず、大量生産には向かない。
また、PLD法に関しては、ソース(基板への原料供給源)が点源であり、ソース直上とそれ以外の場所で成長レートが異なるために、膜厚の面内分布が不均一になりやすく、面積の大きい膜の成長に向かない。また、成膜レートが低く、厚膜の成長には長い時間を要するため、大量生産には向かない。
ゾル−ゲル法、MOCVD法、ミストCVD法に関しては、大口径化は比較的容易だが、使用原料に含まれている不純物がエピタキシャル成長中にβ−Ga単結晶膜に取り込まれてしまうため、高純度な単結晶膜を得ることが困難である。
そのため、本発明の目的の1つは、高品質かつ大口径のβ−Ga系単結晶膜を効率的に成長させることのできるβ−Ga系単結晶膜の成長方法により成長したβ−Ga系単結晶膜を有する結晶積層構造体、及びその製造方法を提供することにある。
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]及び[2]の結晶積層構造体を提供する。
[1]Ga系基板と、前記Ga系基板の主面上に設けられたβ−Ga系単結晶膜と、を含み、前記β−Ga系単結晶膜は、残留キャリア濃度が1×1013/cm以下である結晶積層構造体。
[2]前記β−Ga系単結晶膜は、1×1013〜1×1020/cmの範囲でキャリア濃度が制御可能である[1]に記載の結晶積層構造体。
本発明によれば、高品質かつ大口径のβ−Ga系単結晶膜を効率的に成長させることのできるβ−Ga系単結晶膜の成長方法、及びその成長方法により成長した結晶積層構造体、及びその製造方法を提供することができる。
図1は、実施の形態に係る結晶積層構造体の垂直断面図である。 図2は、実施の形態に係る気相成長装置の垂直断面図である。 図3は、熱平衡計算により得られた、塩化ガリウム系ガスがGaClガスのみからなる場合と、GaClガスのみからなる場合のそれぞれの場合におけるGa結晶の成長駆動力と成長温度との関係を表すグラフである。 図4は、熱平衡計算により得られた、GaとClの反応から得られるGaClガス、GaClガス、GaClガス、及び(GaClガスの平衡分圧と雰囲気温度との関係を表すグラフである。 図5は、熱平衡計算により得られた、Ga結晶成長の雰囲気温度が1000℃であるときの、GaClの平衡分圧とO/GaCl供給分圧比との関係を示すグラフである。 図6は、主面の面方位が(010)であるGa基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。 図7は、主面の面方位が(−201)であるGa基板の主面上にGa単結晶膜を1000℃でエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。 図8は、主面の面方位が(001)であるβ−Ga基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。 図9は、主面の面方位が(101)であるβ−Ga基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。 図10(a)、(b)は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した、結晶積層構造体中の不純物濃度を表すグラフである。 図11(a)は、主面の面方位が(001)であるβ−Ga基板上にβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体における、深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを表すグラフである。図11(b)は、上記の積層構造体の耐電圧特性を表すグラフである。 図12は、主面の面方位が(010)であるβ−Ga基板上にβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体における、深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを表すグラフである。
〔実施の形態〕
(結晶積層構造体の構成)
図1は、実施の形態に係る結晶積層構造体1の垂直断面図である。結晶積層構造体1は、Ga系基板10と、Ga系基板10の主面11上にエピタキシャル結晶成長により形成されたβ−Ga系単結晶膜12を有する。
Ga系基板10は、β型の結晶構造を有するGa系単結晶からなる基板である。ここで、Ga系単結晶とは、Ga単結晶、又は、Al、In等の元素が添加されたGa単結晶をいう。例えば、Al及びInが添加されたGa単結晶である(GaAlIn(1−x−y)(0<x≦1、0≦y≦1、0<x+y≦1)単結晶であってもよい。Alを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。また、Ga系基板10は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
Ga系基板10の主面11の面方位は、例えば、(010)、(−201)、(001)、又は(101)である。
Ga系基板10は、例えば、FZ(Floating Zone)法やEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法等の融液成長法により育成したGa系単結晶のバルク結晶を
スライスし、表面を研磨することにより形成される。
β−Ga系単結晶膜12は、Ga系基板10と同様に、β型の結晶構造を有するGa系単結晶からなる。また、β−Ga系単結晶膜12は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
(気相成長装置の構造)
以下に、本実施の形態に係るβ−Ga系単結晶膜12の成長に用いる気相成長装置の構造の一例について説明する。
図2は、実施の形態に係る気相成長装置2の垂直断面図である。気相成長装置2は、HVPE(Halide Vapor Phase Epitaxy)法用の気相成長装置であり、第1のガス導入ポート21、第2のガス導入ポート22、第3のガス導入ポート23、及び排気ポート24を有する反応チャンバー20と、反応チャンバー20の周囲に設置され、反応チャンバー20内の所定の領域を加熱する第1の加熱手段26及び第2の加熱手段27を有する。
HVPE法は、PLD法等と比較して、成膜レートが高い。また、膜厚の面内分布の均一性が高く、大口径の膜を成長させることができる。このため、結晶の大量生産に適している。
反応チャンバー20は、Ga原料が収容された反応容器25が配置され、ガリウムの原料ガスが生成される原料反応領域R1と、Ga系基板10が配置され、β−Ga系単結晶膜12の成長が行われる結晶成長領域R2を有する。反応チャンバー20は、例えば、石英ガラスからなる。
ここで、反応容器25は、例えば、石英ガラスであり、反応容器25に収容されるGa原料は金属ガリウムである。
第1の加熱手段26と第2の加熱手段27は、反応チャンバー20の原料反応領域R1と結晶成長領域R2をそれぞれ加熱することができる。第1の加熱手段26及び第2の加熱手段27は、例えば、抵抗加熱式や輻射加熱式の加熱装置である。
第1のガス導入ポート21は、Clガス又はHClガスであるCl含有ガスを不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を用いて反応チャンバー20の原料反応領域R1内に導入するためのポートである。第2のガス導入ポート22は、酸素の原料ガスであるOガスやHOガス等の酸素含有ガス及びβ−Ga系単結晶膜12にSi等のドーパントを添加するための塩化物系ガス(例えば、四塩化ケイ素等)を不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を用いて反応チャンバー20の結晶成長領域R2へ導入するためのポートである。第3のガス導入ポート23は、不活性ガスであるキャリアガス(Nガス、Arガス又はHeガス)を反応チャ
ンバー20の結晶成長領域R2へ導入するためのポートである。
(β−Ga系単結晶膜の成長)
以下に、本実施の形態に係るβ−Ga系単結晶膜12の成長工程の一例について説明する。
まず、第1の加熱手段26を用いて反応チャンバー20の原料反応領域R1を加熱し、原料反応領域R1の雰囲気温度を所定の温度に保つ。
次に、第1のガス導入ポート21からCl含有ガスをキャリアガスを用いて導入し、原料反応領域R1において、上記の雰囲気温度下で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させ、塩化ガリウム系ガスを生成する。
このとき、上記の原料反応領域R1内の雰囲気温度は、反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスの反応により生成される塩化ガリウム系ガスのうち、GaClガスの分圧が最も高くなるような温度であることが好ましい。ここで、塩化ガリウム系ガスには、GaClガス、GaClガス、GaClガス、(GaClガス等が含まれる。
GaClガスは、塩化ガリウム系ガスに含まれるガスのうち、Ga結晶の成長駆動力を最も高い温度まで保つことのできるガスである。高純度、高品質のGa結晶を得るためには、高い成長温度での成長が有効であるため、高温において成長駆動力の高いGaClガスの分圧が高い塩化ガリウム系ガスを生成することが、β−Ga系単結晶膜12の成長のために好ましい。
図3は、熱平衡計算により得られた、塩化ガリウム系ガスがGaClガスのみからなる場合と、GaClガスのみからなる場合のそれぞれの場合におけるGa結晶の成長駆動力と成長温度との関係を表すグラフである。計算条件は、キャリアガスとして例えばN等の不活性ガスを用い、炉内圧力を1atm、GaClガス及びGaClガスの供給分圧を1×10−3atm、O/GaCl分圧比を10とした。
図3の横軸はGa結晶の成長温度(℃)を示し、縦軸は結晶成長駆動力(atm)を表す。結晶成長駆動力の値が大きいほど、効率的にGa結晶が成長する。
図3は、Gaの原料ガスとしてGaClガスを用いる場合の方が、GaClガスを用いる場合よりも、成長駆動力が保たれる温度の上限が高いことを示している。
なお、β−Ga系単結晶膜12を成長させる際の雰囲気に水素が含まれていると、β−Ga系単結晶膜12の表面の平坦性及び結晶成長駆動力が低下するため、水素を含まないClガスをCl含有ガスとして用いることが好ましい。
図4は、熱平衡計算により得られた、GaとClの反応から得られるGaClガス、GaClガス、GaClガス、及び(GaClガスの平衡分圧と反応時の雰囲気温度との関係を表すグラフである。その他の計算条件は、キャリアガスとして例えばN等の不活性ガスを用い、炉内圧力を1atm、Clガスの供給分圧を3×10−3atmとした。
図4の横軸は雰囲気温度(℃)を示し、縦軸は平衡分圧(atm)を表す。平衡分圧が高いほど、ガスが多く生成されていることを示す。
図4は、およそ300℃以上の雰囲気温度下で金属ガリウムとCl含有ガスを反応させることにより、Ga結晶の成長駆動力を特に高めることのできるGaClガスの平衡分圧が高くなること、すなわち塩化ガリウム系ガスのうちのGaClガスの分圧比が高くなることを示している。このことから、第1の加熱手段26により原料反応領域R1の雰囲気温度を300℃以上に保持した状態で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させることが好ましいといえる。
また、例えば、850℃の雰囲気温度下では、GaClガスの分圧比が圧倒的に高くなる(GaClガスの平衡分圧がGaClガスより4桁大きく、GaClガスより8桁大きい)ため、GaClガス以外のガスはGa結晶の成長にほとんど寄与しない。
なお、第1の加熱手段26の寿命や、石英ガラス等からなる反応チャンバー20の耐熱性を考慮して、原料反応領域R1の雰囲気温度を1000℃以下に保持した状態で反応容器25内の金属ガリウムとCl含有ガスを反応させることが好ましい。
次に、結晶成長領域R2において、原料反応領域R1で生成された塩化ガリウム系ガスと、第2のガス導入ポート22から導入された酸素含有ガスとを混合させ、その混合ガスにGa系基板10を曝し、Ga系基板10上にβ−Ga系単結晶膜12をエピタキシャル成長させる。このとき、反応チャンバー20を収容する炉内の結晶成長領域R2における圧力を、例えば、1atmに保つ。
ここで、Si、Al等の添加元素を含むβ−Ga系単結晶膜12を形成する場合には、ガス導入ポート22より、添加元素の原料ガス(例えば、四塩化ケイ素(SiCl)等の塩化物系ガス)も塩化ガリウム系ガス及び酸素含有ガスに併せて結晶成長領域R2に導入する。
なお、β−Ga系単結晶膜12を成長させる際の雰囲気に水素が含まれていると、β−Ga系単結晶膜12の表面の平坦性及び結晶成長駆動力が低下するため、酸素含有ガスとして水素を含まないOガスを用いることが好ましい。
図5は、熱平衡計算により得られた、Ga結晶成長の雰囲気温度が1000℃であるときの、GaClの平衡分圧とO/GaCl供給分圧比との関係を示すグラフである。ここで、Oガスの供給分圧のGaClガスの供給分圧に対する比をO/GaCl供給分圧比と呼ぶ。本計算においては、GaClガスの供給分圧の値を1×10−3atmに固定し、キャリアガスとして例えばN等の不活性ガスを用いて炉内圧力を1atmとし、Oガスの供給分圧の値を変化させた。
図5の横軸はO/GaCl供給分圧比を示し、縦軸はGaClガスの平衡分圧(atm)を表す。GaClガスの供給分圧が小さいほど、Ga結晶の成長にGaClガスが消費されていること、すなわち、効率的にGa結晶が成長していることを示す。
図5は、O/GaCl供給分圧比が0.5以上になるとGaClガスの平衡分圧が急激に低下することを示している。
このため、β−Ga系単結晶膜12を効率的に成長させるためには、結晶成長領域R2におけるOガスの供給分圧のGaClガスの供給分圧に対する比が0.5以上である状態でβ−Ga系単結晶膜12を成長させることが好ましい。
図6は、主面の面方位が(010)であるβ−Ga基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とした。
図6の横軸はX線の入射方位と反射方位のなす角2θ(degree)を表し、縦軸はX線の回折強度(任意単位)を表す。
図6は、β−Ga基板(β−Ga結晶膜なし)のスペクトル、及び800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃、及び1050℃でそれぞれβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。これらの結晶積層構造体のβ−Ga結晶膜の厚さは、およそ300〜1000nmである。
図6によれば、800、850℃の成長温度でβ−Ga結晶膜を成長させた結晶積層構造体のスペクトルにおいて見られる、非配向グレインの存在に起因する(−313)面、(−204)面、及び(−712)面又は(512)面の回折ピークが、900℃以上の成長温度でβ−Ga結晶膜を成長させた結晶積層構造体のスペクトルにおいて消滅する。このことは、900℃以上の成長温度でGa単結晶膜を成長させることにより、β−Ga単結晶膜が得られることを示している。
なお、β−Ga基板の主面の面方位が(−201)、(001)、又は(101)である場合にも、900℃以上の成長温度でβ−Ga結晶膜を成長させることにより、β−Ga単結晶膜が得られる。また、Ga基板の代わりに他のGa系基板を用いた場合であっても、Ga結晶膜の代わりに他のGa系結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。すなわち、Ga系基板10の主面の面方位が(010)、(−201)、(001)、又は(101)である場合、900℃以上の成長温度でβ−Ga系単結晶膜12を成長させることにより、β−Ga系単結晶膜12が得られる。
図7は、主面の面方位が(−201)であるβ−Ga基板の主面上にβ−Ga単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。このβ−Ga単結晶膜の成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とし、成長温度を1000℃とした。
図7は、主面の面方位が(−201)であるβ−Ga基板(β−Ga結晶膜なし)のスペクトル、及びそのβ−Ga基板上に1000℃でβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。この結晶積層構造体のβ−Ga結晶膜の厚さは、およそ300nmである。
図8は、主面の面方位が(001)であるβ−Ga基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。このβ−Ga単結晶膜の成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とし、成長温度を1000℃とした。
図8は、主面の面方位が(001)であるβ−Ga基板(β−Ga結晶膜なし)のスペクトル、及びそのβ−Ga基板上に1000℃でβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。この結晶積層構造体のβ−Ga結晶膜の厚さは、およそ6μmである。
図9は、主面の面方位が(101)であるβ−Ga基板の主面上にGa単結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体の、2θ−ωスキャンにより得られたX線回折スペクトルを表すグラフである。このβ−Ga単結晶膜の成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とし、成長温度を1000℃とした。
図9は、主面の面方位が(101)であるβ−Ga基板(β−Ga結晶膜なし)のスペクトル、及びそのβ−Ga基板上に1000℃でβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体のスペクトルを示す。この結晶積層構造体のβ−Ga結晶膜の厚さは、およそ4μmである。
図7、8、9の横軸はX線の入射方位と反射方位のなす角2θ(degree)を表し、縦軸はX線の回折強度(任意単位)を表す。
図7、8、9によれば、1000℃の成長温度でβ−Ga結晶膜を成長させた結晶積層構造体のスペクトルの回折ピークが、β−Ga基板のスペクトルの回折ピークと一致している。この結果は、主面の面方位が(−201)、(001)、又は(101)であるβ−Ga基板の主面上に1000℃の成長温度でβ−Ga結晶膜を成長させることにより、β−Ga単結晶膜が得られることを示している。
図10(a)、(b)は、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定した、結晶積層構造体中の不純物濃度を表すグラフである。
図10(a)、(b)の横軸は結晶積層構造体のβ−Ga単結晶膜の主面13からの深さ(μm)を表し、縦軸は各不純物の濃度(atoms/cm)を表す。ここで、結晶積層構造体のβ−Ga基板とβ−Ga単結晶膜の界面の深さは、およそ0.3μmである。また、図10(a)、(b)の右側の水平な矢印は、各不純物元素の濃度の測定可能な下限値を表す。
本測定に用いた結晶積層構造体のβ−Ga単結晶膜は、主面の面方位が(010)であるβ−Ga基板の主面上に1000℃の成長温度で成長させた膜である。
図10(a)は、C、Sn、Siの結晶積層構造体中の濃度を表し、図10(b)は、H、Clの結晶積層構造体中の濃度を表す。図10(a)、(b)によれば、いずれの不純物元素も、β−Ga単結晶膜中の濃度が測定可能な下限値に近く、Ga基板中の濃度とほぼ変わらない。このことは、β−Ga単結晶膜が純度の高い膜であることを示している。
なお、β−Ga基板の主面の面方位が(−201)、(101)、又は(001)である場合にも同様の評価結果が得られる。また、β−Ga基板の代わりに他のGa系基板を用いた場合であっても、β−Ga単結晶膜の代わりに他のGa系単結晶膜を形成した場合であっても、上記の評価結果と同様の評価結果が得られる。
図10(b)によれば、β−Ga単結晶膜中におよそ5×1016(atoms/cm)以下のClが含まれている。これは、Ga単結晶膜がCl含有ガスを用いるHVPE法により形成されることに起因する。通常、HVPE法以外の方法によりGa単結晶膜を形成する場合には、Cl含有ガスを用いないため、Ga単結晶膜中にClが含まれることはなく、少なくとも、1×1016(atoms/cm)以上のClが含まれることはない。
図11(a)は、主面の面方位が(001)であるβ−Ga基板上にβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体における、深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを表すグラフである。
図11(a)の横軸はβ−Ga結晶膜の表面からの深さ(μm)を表し、縦軸はキャリア濃度、すなわち正味のドナー濃度であるドナー濃度Nとアクセプタ濃度Nの差(cm−3)を表す。また、図中の点で描かれた曲線は、β−Gaの比誘電率を10、β−GaへPtを接触させたときのビルトインポテンシャルを1.5Vとしたときのドナー濃度と空乏層厚との関係を表す理論曲線である。
図11(a)に示されるデータを測定するために用いた手順を以下に示す。まず、主面の面方位が(001)であり、Snをドープしたn型のβ−Ga基板上に、HVPE法により、アンドープのβ−Ga結晶膜をおよそ15μmの厚さにエピタキシャル成長させた。ここで、アンドープとは、意図したドーピングが行われていないことを意味し、意図しない不純物の混入を否定するものではない。
β−Ga基板は、厚さが600μmの、10mmの正方形の基板であり、キャリア濃度はおよそ6×1018cm−3であった。β−Ga単結晶膜の成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とし、成長温度を1000℃とした。
次に、表面平坦化のため、アンドープのβ−Ga結晶膜の表面をCMPによって3μm研磨した。
次に、β−Ga結晶膜上にショットキー電極、β−Ga基板上にオーミック電極を形成し、バイアス電圧を+0〜−10Vの範囲で変化させてC−V測定を行った。そして、C−V測定の結果から深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを算出した。
ここで、ショットキー電極は、厚さ15nmのPt膜、厚さ5nmのTi膜、厚さ250nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、直径800μmの円形の電極である。また、オーミック電極は、厚さ50nmのTi膜、厚さ300nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、一辺が10mmの正方形の電極である。
図11(a)においては、β−Ga結晶膜の厚さに等しい12μmよりも浅い深さの領域には測定点が存在せず、すべての測定点の横軸座標が12μmとなっている。これは、バイアス電圧が+0〜−10Vの範囲でβ−Ga結晶膜の全領域が空乏化していることを示している。
このため、当然ながら、バイアス電圧が0のときにも、β−Ga結晶膜の全領域が空乏化している。理論曲線によると、空乏層厚が12μmであるときのドナー濃度がおよそ1×1013cm−3であることから、β−Ga結晶膜の残留キャリア濃度が1×1013cm−3以下と、非常に低い値であることが推定される。
β−Ga結晶膜の残留キャリア濃度が1×1013cm−3以下であるため、例えば、IV族元素をドーピングすることにより、β−Ga結晶膜のキャリア濃度を1×1013〜1×1020cm−3の範囲で制御することができる。
図11(b)は、上記の結晶積層構造体の耐電圧特性を表すグラフである。
図11(b)の横軸は印加電圧(V)を表し、縦軸は電流密度(A/cm)を表す。
また、図中の点で描かれた直線は、測定下限値を表す。
図11(b)に示されるデータを測定するために用いた手順を以下に示す。まず、上記のβ−Ga基板とβ−Ga結晶膜からなる結晶積層構造体を用意した。
次に、β−Ga結晶膜上にショットキー電極、β−Ga基板上にオーミック電極を形成し、1000Vの電圧を印加して電流密度を測定した。
ここで、ショットキー電極は、厚さ15nmのPt膜、厚さ5nmのTi膜、厚さ250nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、直径200μmの円形の電極である。また、オーミック電極は、厚さ50nmのTi膜、厚さ300nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、一辺が10mmの正方形の電極である。
図11(b)は、1000Vの電圧が印加されても、結晶積層構造体におけるリーク電流が1×10−5A/cm程度と非常に小さく、また、絶縁破壊が生じないことを示している。この結果は、β−Ga結晶膜が結晶欠陥の少ない高品質な結晶膜であり、また、ドナー濃度が低いことによるものと考えられる。
図12は、主面の面方位が(010)であるβ−Ga基板上にβ−Ga結晶膜をエピタキシャル成長させた結晶積層構造体における、深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを表すグラフである。
図12の横軸はβ−Ga結晶膜の表面からの深さ(μm)を表し、縦軸はキャリア濃度、すなわち正味のドナー濃度であるドナー濃度Nとアクセプタ濃度Nの差(cm−3)を表す。また、図中の点で描かれた曲線は、β−Gaの比誘電率を10、β−GaへPtを接触させたときのビルトインポテンシャルを1.5Vとしたときのドナー濃度と空乏層厚との関係を表す理論曲線である。
図12に示されるデータを測定するために用いた手順を以下に示す。まず、主面の面方位が(010)であり、Snをドープしたn型のβ−Ga基板上に、HVPE法により、アンドープのβ−Ga結晶膜をおよそ0.9μmの厚さにエピタキシャル成長させた。
β−Ga基板は、厚さが600μmの、一辺が10mmの正方形の基板であり、キャリア濃度はおよそ6×1018cm−3であった。β−Ga単結晶膜の成長条件は、炉内圧力を1atm、キャリアガスをNガス、GaCl供給分圧を5×10−4atm、O/GaCl供給分圧比を5とし、成長温度を1000℃とした。
次に、アンドープのβ−Ga結晶膜上にショットキー電極、β−Ga基板上にオーミック電極を形成し、バイアス電圧を+0〜−10Vの範囲で変化させてC−V測定を行った。そして、C−V測定の結果から深さ方向のキャリア濃度のプロファイルを算出した。
ここで、ショットキー電極は、厚さ15nmのPt膜、厚さ5nmのTi膜、厚さ250nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、直径400μmの円形の電極である。また、オーミック電極は、厚さ50nmのTi膜、厚さ300nmのAu膜がこの順序で積層された積層構造を有する、一辺が10mmの正方形の電極である。
図12においては、バイアス電圧が0のときの測定点の横軸座標が0.85μmである(0.85μmよりも深い領域の測定点は、バイアス電圧が−10Vに近いときの測定点)。理論曲線によると、空乏層厚が0.85μmであるときのドナー濃度がおよそ2.3×1015cm−3であることから、β−Ga結晶膜の残留キャリア濃度が3×1015cm−3以下と、非常に低い値であることが推定される。
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、HVPE法を用いて、ガリウムの原料ガスの生成条件や、β−Ga系単結晶膜の成長条件を制御することにより、高品質かつ大口径のβ−Ga系単結晶膜を効率的に成長させることができる。また、β−Ga系単結晶膜が結晶品質に優れるため、β−Ga系単結晶膜上に品質のよい結晶膜を成長させることができる。このため、本実施の形態に係るβ−Ga系単結晶膜を含む結晶積層構造体を高品質な半導体装置の製造に用いることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1…結晶積層構造体、10…Ga系基板、11…主面、12…β−Ga系単結晶膜

Claims (2)

  1. Ga系基板と、
    前記Ga系基板の主面上に設けられたβ−Ga系単結晶膜と、
    を含み、
    前記β−Ga系単結晶膜は、残留キャリア濃度が1×1013/cm以下である結晶積層構造体。
  2. 前記β−Ga系単結晶膜は、1×1013〜1×1020/cmの範囲でキャリア濃度が制御可能である請求項1に記載の結晶積層構造体。
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