従って、更なる改良の必要がある。
本発明の目的は、車両に含まれる異なるエネルギーバッファの間でエネルギーがどのように流れるかを制御して、場合により車両の燃料消費を低減できるようにする改良をもたらすことにある。この目的は、第1及び第2のエネルギーバッファ、第1及び第2のエネルギーバッファに作動的に接続されているパワーコンバータ、及び請求項1に従って構成される特別に適合された車両システム制御装置、を備える車両によって達成される。より具体的には、本発明の目的はまた、異なるエネルギー形態間でのエネルギーの変換を制御する方法を提供することにある。このことは、エネルギーシステムの異なるエネルギーサブシステムの間で少なくとも一つの方向におけるエネルギーの供給を可能にするエネルギーコンバータによってなされる。
本発明の一つの態様によると、車両が提供され、その車両は、そのバッファエネルギーレベルを車両の作動に基づいて増減することができる第1エネルギーバッファ、そのバッファエネルギーレベルを車両の作動に基づいて増減することができる第2のエネルギーバッファ、第1及び第2のエネルギーバッファに作動的に接続されているパワーコンバータ、及び車両システム制御装置、を備え、その車両システム制御装置は、第1エネルギーバッファの現在のバッファエネルギーレベルと第1エネルギーバッファについて予め定められたバッファ範囲とに基づいて、第1エネルギーバッファについての現在のバッファ比率を決定し、パワーコンバータにより供給されるエネルギーを用いて第1エネルギーバッファの現在のバッファ比率を高めるべきかどうかを決定する、ように構成されており、その決定は、第1エネルギーバッファについての現在のバッファ比率と、パワーコンバータを用いて第2エネルギーバッファに蓄積されているエネルギーからエネルギーを発生させるためのコストとに基づくものである。
この独創的な概念は、複数のエネルギーサブシステムを含んでいるエネルギーシステムを備えた車両のエネルギーの流れを制御すべく実施されることが意図されている。すべてのエネルギーサブシステムは、例えば機械的エネルギー、電気エネルギー、空気エネルギーあるいは熱エネルギーといったエネルギーの一つの特定の形態を用いる。あらゆるエネルギーサブシステムについて、エネルギーの各形態のエネルギー市場が形成され、エネルギーサブシステムの異なるエンジン部品の間でエネルギーを配分することができる。いくつかのエネルギーサブシステムは、例えば交流あるいは直流といった同じエネルギー形態ではあるが異なる利用形態のエネルギーを、又はある電気エネルギーサブシステムについて異なる効果レベルの電気エネルギーを、用いることができる。この文脈において、同じエネルギー形態の異なる効果レベルは、異なるエネルギー形態とみなされる。例を挙げると、トランスは高電圧を低電圧に変換するために一般的に用いられる。
この独創的な概念によるとトランスは、エネルギーの一つの形態、高電圧パワーを、一つのエネルギーサブシステム、高電圧パワー電気エネルギーサブシステムから、他のエネルギーサブシステム、低電圧パワー電気エネルギーサブシステムの、他の形態のエネルギー、低電圧パワーに変換するコンバータであるとみなすことができる。
どのエネルギーサブシステムも、少なくとも一つの消費体を備え、その消費体は、各サブシステム内の少なくとも一つの形態のエネルギーを少なくとも消費する装置である。どのエネルギーサブシステムもまた、少なくとも一つの生産体を備え、その生産体は、少なくとも一つの形態のエネルギーを各エネルギーサブシステムに供給するように構成された装置である。どのエネルギーサブシステムも、少なくとも一つのコンバータを備える。各エネルギーサブシステムは、少なくとも一つの他のエネルギーサブシステムと共通のコンバータを有している。このコンバータは、少なくとも一つのエネルギー形態を、他のエネルギー形態のエネルギーへと変換すべく設けられている。このことは、異なるエネルギーサブシステムの間の少なくとも一つの方向においてエネルギーを供給できるようにする。一つのエネルギー形態からより多くのエネルギー形態へとエネルギーを変換することができ、それによってそのようなコンバータは二つ以上のエネルギーサブシステムにとって共通となるコンバータと、二つあるいはより多くの形態のエネルギーを第3のエネルギー形態に変換できるコンバータもある。これらのコンバータは、例えば機械的パワーを電気的パワーに変換するオルタネータのように、一つの特定のエネルギー形態を他のエネルギー形態に変換するように構成され、あるいはエネルギーを二つの方向で変換するように構成されるが、これは、そのようなコンバータが、第1のエネルギー形態から第2のエネルギー形態への、また第2のエネルギー形態から第1のエネルギーの形態への両方向でエネルギーを変換できることを意味する。これらのコンバータは、双方向コンバータと呼ばれる。
しかしながら、この独創的な概念によると、コンバータは、エネルギーの一つの形態をエネルギーの他の形態に変換する常に一方向のコンバータであるとみなされる。従って、エネルギー二つの方向に変換できるコンバータは、エネルギーを反対方向に変換する二つの別々のコンバータであると考えられる。この独創的な概念が実施されるときに、効果は同じことになる。
前述したように、消費体は、各サブシステム内の少なくとも一つの形態のエネルギーを消費する装置である。電子制御装置、暖房装置及びパワーステアリングは、エネルギーサブシステムに存在し得る消費体の実例である。生産体は、少なくとも一つの形態のエネルギーを各サブシステムに少なくとも供給するべく構成された装置である。アクチュエータ、コンプレッサ、バッテリー及び第1の及び主要な内燃機関は、エネルギーサブシステムに存在し得る生産体の実例である。
一つのエネルギー形態を他のエネルギー形態に変換するコンバータは、一つのエネルギーサブシステムの消費体として、かつ他のエネルギーサブシステムの生産体として作動する。前に開示したように、各エネルギーサブシステムは、そのエネルギーサブシステムにエネルギーを供給する少なくとも一つのエネルギー生産体と、そのエネルギーサブシステム内でエネルギーを消費する少なくとも一つのエネルギー消費体とを、含むことが求められる。コンバータが生産体あるいは消費体として作用し得るので、エネルギーサブシステムは、生産体と消費体として作用するコンバータと、生産体と消費体として作用するコンバータあるいは第1のコンバータが生産体として作用すると共に第2のコンバータが消費体として作用する2つのコンバータと、を含んでいれば充分である。生産体あるいは消費体として以下に参照するときに、生産体として作用しあるいは消費体として作用するコンバータもまた考慮される。
通常、あらゆるエネルギーサブシステムの大多数は、前に開示した最小限の要件に加えて以下の複数の装置を含む;生産体及び消費体、生産体として作用するコンバータ及び消費体、生産体及び消費体として作用するコンバータ、あるいは一つのコンバータが生産体として作用し一つのコンバータが消費体として作用する2つのコンバータ。この独創的な概念を説明するために、かなり限定された数の装置だけを含む著しく簡略化された実施例が本明細書に開示される。
追加されたあらゆるエネルギーサブシステムについて、また追加されたエネルギー装置について、エネルギーシステムの複雑さは高くなる。しかしながら、この独創的な概念は、それが適用されるエネルギーシステムの複雑さとは無関係に機能する。実際に、この独創的な概念の利点の一つは、そのエネルギーシステムのエネルギー管理システムに如何なる調整をもすることなしに、そのエネルギーシステムに追加の装置及び/又はエネルギーサブシステムを追加できることである。
この独創的な概念のある実施形態においては、少なくとも一つのエネルギーサブシステムがエネルギーバッファを含むことができる。エネルギーバッファは、ある時点における、そのエネルギーサブシステムの現在のエネルギーバランスに応じて、エネルギーサブシステムのエネルギー生産体あるいはエネルギー消費体として作用することができる。エネルギーバッファと、エネルギーバッファを用いるこの独創的な概念の実施形態は、この明細書においてより詳細に開示される。
この独創的な概念によると、その車両のエネルギーシステム内のエネルギーの流れを第1のサンプル頻度S1で制御するために、各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格がある時間サンプル間隔t+nについて連続的に設定される。ここで、tはサンプルが始まる時間であり、かつnはサンプルの長さを定める。各単位エネルギー価格は、各エネルギーサブシステムのコンバータ、消費体及び生産体の全体エネルギー需要及び全体エネルギー供給に依存する。更に、その時間サンプル間隔t+nの間、ある量のパワーが、第2のエネルギーサブシステムから、第1のエネルギーサブシステムに供給され、供給される量のパワーは、その第1のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格において決定された共通のコンバータの供給量のパワーに対応する。決定された供給量のパワーは、第1のエネルギーサブシステムについて独創的な概念に従って決定される単位エネルギー価格に対し、そのコンバータが第1のエネルギーサブシステムに供給できるパワーの量である。
第2のエネルギーサブシステムから第1のエネルギーサブシステムに供給される上記のパワーの量は、この独創的な概念の範囲内にあるとみなされる異なる関連の算出方法に従って決定することができる。
この独創的な概念の好ましい一実施形態によると、第2のエネルギーサブシステムから第1のエネルギーサブシステムに供給される、供給されるパワーの量は、コンバータにより消費されるパワーの量に対応し、この実施形態によるコンバータは第2のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格において消費体として作用する。
上述したように、共通のコンバータは、供給されるパワーの量に依存する限界効率を有する。この独創的な概念の更に好ましい一実施形態によると、第2のエネルギーサブシステムからの第1のエネルギーサブシステムに供給されるパワーの量は、共通のコンバータの限界効率で除算した、第1及び第2のエネルギーサブシステムの間の市場価格の定額に対応してコンバータにより供給されるパワーの量に対応する。限界効率については、後により詳細に説明する。
このことは、第1のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格は、共通コンバータの限界効率で除算した第2のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に等しい、あるいは第2のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格は、限界効率を乗算した第1のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に等しい、と表すこともできる。
各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格は、利用可能なパワーの全体量が最もエネルギー効率的な方法でエネルギーシステムに分配されるように設定される。供給されるパワーの量は、共通のコンバータのパワー制限によっても制限される。各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格がどのように設定されるか、供給されるパワーの量がどのように決定されるか、及び供給されるパワーがパワー制限によりどのように制限されるかの実例は、この明細書において後により詳しく説明する。
この独創的な概念は、エネルギーシステムの全てのエネルギーサブシステムについて連続的に適用される。従って、単位エネルギー価格が正確に設定されると、全体的なエネルギー消費を最小化する問題は各サブシステムのエネルギーコストを最小化する問題に変化し、総最適化アルゴリズムの必要性を無くす。
この独創的な概念の一実施形態によると、単位エネルギー価格は、好ましくは、例えば、供給される有用なエネルギーの1単位について消費される燃料のグラム数あるいは供給される有用なエネルギーの1単位のコストといった、供給されるパワーの1単位について消費される適切な単位の消費量あるいは単位の値で表される。エネルギーサブシステムについての単位エネルギー価格は、エネルギーサブシステム内の全てのエネルギー生産体及び全てのエネルギー消費体における、全体的な可能なエネルギー供給及び全体な可能なエネルギー需要に依存する。従って、エネルギーサブシステムに接続されている全ての生産体及び/又は消費体は、そのエネルギーサブシステムについてのパワーの単位エネルギー価格に影響を及ぼすことになる。時間サンプル間隔t+nについて各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格を計算するために、以前のサンプル間隔tの単位エネルギー価格が入力として用いられる。
この独創的な概念の他の実施形態によると、車両のエネルギーシステムのエネルギーの流れを制御するために、第1のサンプル頻度S1が設定される。この第1のサンプル頻度S1は、第1のサンプル間隔t+nを生じさせる。従って、各サンプルの長さはnに設定される。より高いサンプル頻度は、より短いサンプル間隔、従ってサンプル間のより短い時間に対応する。この独創的な概念は連続的であり、この独創的な概念に従って実行される動作が、第1のサンプル頻度S1に従って反復されることを意味する。各サンプルの始めに、各エネルギーサブシステムのエネルギーの各形態について各単位エネルギー価格が決定される。時間サンプル間隔t+nについて各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格を決定するための入力として、各単位エネルギー価格の決定に含められる、各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格、各コンバータ及び生産体の限界効率、エネルギーサブシステムの全ての関連する部品の特定のパラメータが、時点tにおいて取得される。
それゆえに、この独創的な概念の好ましい一実施形態によると、時間サンプル間隔t+nにおける各エネルギーサブシステムの特定のパラメータの値は、サンプル間隔tにおける実際のパラメータ値である。
各サンプルについて入力として用いた特定のパラメータがいつ十分に変化したかを決定し、各単位エネルギー価格を再計算するためにそれを価値があるようにする、連続的に作動する機能を用いることも可能である。本明細書において、前に開示した時間サンプル間隔の方法について言及するが、この他の実施形態もまた可能であることは留意しなければならない。
この独創的な概念の更に好ましい一実施形態によると、各エネルギーサブシステムの各単位エネルギー価格は、各エネルギーサブシステムについて特定のパラメータに依存する。各エネルギーサブシステムについての特定のパラメータのすべては、そのエネルギーサブシステムの少なくとも一つの部品が特定のパラメータに依存しているところのパラメータに関連付けることができる。従って、エネルギーサブシステムは、そのエネルギーサブシステムの部品のいずれかが依存する特定のパラメータに依存することになる。実例を挙げると、空圧エネルギーサブシステムは周囲の空気の温度に極めて依存し得る。この温度が空気圧タンクの空気圧に著しい影響を及ぼすからである。また熱エネルギーシステムは、無視できない経時的な温度の均等化により、この独創的な概念を実行するための手段が設けられている車両がどのくらいの頻度で用いられるかに極めて依存し得る。
全てのコンバータについて、効率eta_tot、及び限界効率eta_margを決定することができる。この効率は次式に従って計算される:
ここで、P_outはコンバータが供給する出力パワーであり、出力としてP_outを供給するためにP_inはコンバータに供給される入力パワーであり、かつeta_totはコンバータによって供給されるパワーに依存する全体効率である。
明確にすると、コンバータの効率は、コンバータに供給されるパワーとの関係において、変換の後にどれだけのパワーが残るかを表している。供給されたパワーの残りは変換損失である。一般に、コンバータの効率は変換されるパワーに依存し、それは、効率がパワーの変換量によって実際に変化することを意味している。従って、コンバータの効率は、固定された量の変換パワーにおいてのみ有効である。
限界効率の測定は、所与の固定された量の変換パワーにおいて、供給されるパワーが変化する場合に変換されるパワーがどれだけ変化するかとして定めることができる。限界効率は、帯域における効率であり、効率の限界ではない。より詳しくは、限界効率は、(コンバータの)それぞれ可能な出力パワーにおいて、(コンバータに)入力するパワーの追加の単位について出力される追加のパワーとして定義される。
より正式には、出力されるパワーP_outが入力されるパワーP_inの関数として書かれる場合、P_out=f(P_in)であり、限界効率はこの関数の導関数である。
すなわち限界効率、eta_margは、以下により定められる:
各コンバータが供給できるパワーは、一般に、各コンバータについて供給されるパワーの最大量により、また供給されるパワーの最小量により制限される。また、コンバータが変換できるパワーの量は、最大変換パワーと最小変換パワーの両方に関して制限することができる。同じことは、その他の生産体及び消費体にも当てはまる。最大及び最小のレベルを設定することにより、コンバータ、生産体及び/又は消費体のあり得るパワー制限が破られないことを確実なものとすることができる。
コンバータあるいは生産体により供給される、又はコンバータあるいは消費体により消費されるパワーの量が決定され、かつそのように決定された値が各コンバータ、生産体あるいは消費体の最大の限界値あるいは最小の限界値を越えたとき、供給されあるいは補充されるパワーの量は、その決定された量にできるだけ近く、しかしながら各コンバータ、生産体及び/又は消費体の最大の限界値及び最小の限界値の範囲内に設定される。
この独創的な概念の一実施形態によると、各エネルギー生産体にはエネルギー供給価格関数が与えられ、かつ各エネルギー消費体にはエネルギー需要価格関数が与えられる。従って、消費体及びコンバータの両方として作用するコンバータ及びエネルギーバッファは、エネルギー供給価格関数とエネルギー需要価格関数の両方を有している。
供給価格関数は、エネルギー生産体の単位エネルギー価格が、各生産体から供給されるパワーの量によってどのように変化するかを説明する関数である。同様に、需要価格関数は、制御可能な消費体の単位エネルギー価格が、消費されるパワーの量によってどのように変化するかを説明する関数である。
消費体と制御可能な消費体の違いは、この明細書において後で開示される。
各エネルギー供給価格関数及び/又は各エネルギー需要価格関数は、各コンバータ、生産体及び/又は消費体について特定のパラメータに依存する。この独創的な概念の実施形態により単位エネルギー価格を設定するために、以下のことが各エネルギーサブシステムについて実行される;
各エネルギーサブシステムの生産体あるいは生産体として作用するコンバータのエネルギー供給価格関数を合計供給価格関数に合計すること、及び、各エネルギーサブシステムの消費体あるいは生産体として作用するコンバータのエネルギー需要価格関数を合計需要価格関数に合計すること。
各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格は、この実施形態に従い、各エネルギーサブシステムの合計供給価格関数と合計需要価格関数を比較することによって与えられ、それによって単位エネルギー価格は、エネルギー供給とエネルギー需要が等しいところの単位エネルギー価格に対応する値に設定される。
この独創的な概念によると、供給価格関数と要求価格関数の決定は、第1のサンプル頻度に従って連続的に実行される。従って、時間サンプル間隔毎に、新しい供給価格需要関数と需要価格関数が全ての消費体及び/又は生産体についてそれぞれ決定される。
合計エネルギー供給価格関数のエネルギー供給価格関数は、各生産体における各エネルギー量供給分配を加算することによって合計される。同様に、合計エネルギー需要価格関数のエネルギー需要価格関数は、各消費体における各エネルギー量需要分配を加算することによって合計される。従って、合計供給価格関数及び合計需要価格関数は、エネルギーサブシステムの全ての生産体及び消費体の全体的なエネルギーの需要と供給をそれぞれ表す。合計供給価格関数及び合計需要価格関数を比較することにより、関数が一致するところに平衡が見いだされる。
例えばマーシャル均衡理論を適用するときに、車両の全体的な燃料消費を最小化するこの用途において、合計供給価格関数と合計需要価格関数とが交差するところの点が、各エネルギーサブシステムのエネルギーの最適な単位エネルギー価格を与えることができる。マーシャルの均衡理論は、供給と需要の間の均衡が、いわゆる完全市場経済に見いだされることを述べるミクロ経済理論である。この均衡においては、資源の最適な配分がある。
エネルギーサブシステムについて単位エネルギー価格が一旦もたらされると、この単位エネルギー価格は、各生産体によって供給されるべきエネルギーの量を決定するために用いることができる。生産体及び消費体に言及するときに、生産体あるいは消費体として作用するコンバータもまた考慮される。独創的な概念の一実施形態によると、このことは、各生産体の各供給価格関数に注目することにより、かつ決定された単位エネルギー価格に対してどれだけの量のパワーを生産体が供給するかを決定することにより、決定することができる。同様に、各消費体に供給されるパワーの量は、それぞれの需要価格関数と、決定された単位エネルギー価格において各消費体にどれだけの量のパワーが供給されるかに注目することによって決定することができる。
各エネルギー生産体は、それ自身の個別の供給価格関数を有しており、かつ各エネルギー生産体は、一つの形態のエネルギーを他の形態のエネルギーに変換するときに供給されるパワーにより生産体の効率がどのように変化するかを表す、それ自身の限界効率を有している。
明確にするための実施例として、内燃機関の形態の生産体が開示される。
内燃機関は、本明細書において生産体と呼ぶが、燃料に化学的に蓄積されたエネルギーの形態の結合されたエネルギーを機械エネルギーに変換する。燃焼効率(従って、最初は、機械的エネルギーに実際に変換される燃料において蓄積される化学的に縛られたエネルギーの量)は、内燃機関の効率である。
この実施例によると、生成されたパワーの価格はグラム燃料/kWhで定められ、かつ供給されるパワーの量はワットで定められる。一般に、特定量のパワーを供給するための価格は、生産体の限界効率により除算された、生産体により消費されるパワーの単位エネルギー価格により与えられる。この実施例は消費体に適用されているが、消費体として作用するコンバータについても同じことが適用される。生産体についての供給価格関数は、以下に従って決定される:
ここで、Prod_eta_margは生産体の限界効率であり、p_power_inは消費されるパワーの単位エネルギー価格であり、p_power_outは生産されるパワーの単位エネルギー価格である。コンバータについて生産されるパワーは、コンバータがパワーをそれに変換したエネルギーの形態である。
内燃機関を有する前の実施例によると、このことは以下を与える:
ここで、p_Meは機械エネルギーサブシステムの機械エネルギーの単位エネルギー価格であり、p_Fuelは内燃機関により消費される燃料の価格であり、かつCombEng_eta_margは内燃機関の限界効率である。
従って、パワーインは燃料に蓄積されたエネルギーであり、かつパワーアウトは内燃機関により生産される機械エネルギーである。
ここで、オルタネータ、従ってコンバータの供給価格関数の決定の他の実施例について注目すると、
ここで、p_Elは電気エネルギー市場における電気エネルギーの単位エネルギー価格であり、Alt_eta_margは、オルタネータの限界効率であり、かつ上記によると、p_Meは機械エネルギーサブシステムにおける機械エネルギーの単位エネルギー価格である。コンバータについては、供給価格関数はコンバータが消費するパワーの単位エネルギー価格を与える。
同様に、需要価格関数は、消費されるパワーの量によって制御可能な消費体の単位エネルギー価格がどのように変化するかを説明する関数である。同様に、制御可能な各消費体は、消費されるパワーによって消費体の効率がどのように変化するかを表す、それ自身の限界効率を有している。
制御可能な消費体の需要価格関数は、次式に従い、制御可能な消費体の限界効率に消費体のサブシステムの単位エネルギー価格を乗算することによって決定される:
ここで、Cons_eta_margは消費体の限界効率であり、p_power_inはサブシステムの単位エネルギー価格であり、かつp_power_outはそこから利益を得ることができるパワーの価格である。制御可能な消費体については、この明細書において後により詳しく説明により開示する。
ここで機械エネルギーサブシステムの消費体として作用するオルタネータにもう一度注目すると:
ここで、p_Meは消費される機械エネルギーの単位エネルギー価格であり、p_Elは生産される電気エネルギーの単位エネルギー価格であり、かつAlt_eta_margはオルタネータの限界効率である。
エネルギーサブシステムの消費体は、制御可能とし、あるいは制御不能とすることができる。制御不能な消費体は価格の影響を受けない。従って、制御不能な消費体の需要価格関数は、制御不能な消費体が必要とするパワーの量に固定される。コンバータは好ましくは制御可能な消費体であり、消費されるパワーの量を制御できることを意味する。また、エネルギーバッファは、この明細書において後に詳しく開示するが、制御可能な消費体であるとみなすことができる。エネルギーバッファの動作は直接的に制御しあるいは間接的に制御することができ、各エネルギーサブシステムにエネルギーの余剰があるときにはエネルギーバッファにエネルギーを供給することができ、かつエネルギーサブシステムにエネルギーが不足しているときには各エネルギーサブシステムにエネルギーを供給することができる。消費されるパワーの量を制御することができるので、そのような制御可能な消費体については、車両の現在のエネルギーバランスに依存して、消費されるパワーの量を調整することができる。そのような消費体は価格に依存する。
例えばランプや電子制御装置といったいくつかの消費体は、他の消費体あるいはコンバータと同じ意味において制御可能ではない。例えば実施例としてECU(電子制御装置)及び車両の電気エネルギーサブシステムの区画照明装置を例に取ると、電子制御装置は、車両が始動するときにデフォルトで起動する。従って、車両がイグニッションオンされる限り、電気エネルギーを供給する必要がある。区画照明装置は、好ましくはデフォルトでオンされないが、車両全体のエネルギーバランスとは無関係に、ドライバが区画照明装置のオンを求める場合、充分な電気パワーがすぐに供給されなければならない。そのような消費体は制御不能の消費体である。制御不能な消費体は、パワーのそれぞれの量の価格とはに無関係に固定量のパワーを消費する。従って、制御不能な消費体は価格とは無関係である。
価格とは無関係な制御不能の消費体の需要価格関数は、制御不能な各消費体のそれぞれのエネルギーの必要性に対応するパワーの量により、各エネルギーサブシステムの合計需要価格関数をオフセットする垂直スカラーの形態となる。
もう一度、供給価格関数及び需要価格関数を見ると;各コンバータ、生産体及び/又は消費体について供給されあるいは消費されるパワーの最小及び最大の量は、各供給価格関数及び/又は各需要価格関数の量により与えられる。上述したように、この独創的な概念を適用して、生産体がエネルギーシステムに供給しなければならないパワーの量あるいは消費体に供給されなければならないパワーの量の先に説明した決定を実行するときに、各生産体及び/又は各消費体は、最大の量あるいは最小の量を越える決定された量を供給しあるいは供給されることができる。このことが生じる場合、供給しあるいは供給されるパワーの量は、決定された量にできるだけ近いが、各生産体及び/又は消費体の最大及び最小の限界の範囲内で、用いられる。
この独創的な概念の他の好ましい実施形態によると、この方法は、エネルギーサブシステムのうちの少なくとも1つがエネルギーバッファを含んでいるエネルギーシステムについて適用することができる。エネルギーバッファは、エネルギーを蓄積して各エネルギーサブシステムにエネルギーを供給すべく構成されるが、エネルギーバッファに蓄積されるエネルギーは、各エネルギーサブシステムと同じエネルギー形態である。エネルギーバッファが、エネルギーサブシステムにエネルギーを供給すべきかあるいは追加のエネルギーを蓄積すべきかを決定するために、単位エネルギーバッファ価格が設定される。
エネルギーバッファの単位エネルギーバッファ価格は、各エネルギーバッファに蓄積されている現在のエネルギー量を少なくとも含む、エネルギーバッファに特有の多くのパラメータに依存する。単位エネルギーバッファ価格は、図面の詳細な説明においてより詳細に開示される。この独創的な概念の実施形態においては、各エネルギーサブシステムについて設定された単位エネルギー価格に応じ、エネルギーバッファは、そのサブシステムの単位エネルギー価格が単位エネルギーバッファ価格より高い場合にはエネルギーサブシステムにパワーを供給し、あるいは単位エネルギー価格が単位エネルギーバッファ価格より低い場合にはエネルギーサブシステムからのパワーを蓄積することができる。
単位エネルギー価格が単位エネルギーバッファ価格と等しい場合、この独創的な概念の一実施形態によると、エネルギーバッファは、各エネルギーサブシステム内のエネルギーバランスが維持されるように、エネルギーが供給されあるいは各エネルギーサブシステムにエネルギーを供給する。
エネルギーサブシステム内にエネルギーバッファが存在することには多くの効果があり、例えばエネルギーバッファの存在は、多くの状況において、エネルギーシステムのエネルギーバランスがより変動しにくく、かつより安定したレベルに保たれることに貢献し得る。
前に開示したように、単位エネルギー価格は、第1のサンプル頻度S1に従って再計算される。この独創的な概念の一実施形態によると、単位エネルギーバッファ価格は第2のサンプリング頻度S2に従って計算することができるが、第1のサンプリング頻度S1は、その第2のサンプル頻度S2より短くあるいは等しい。より低い第2のサンプリング頻度S2を有することは、CPU(中央処理装置)の負荷を減らす。
この独創的な概念の他の好ましい実施形態によると、この独創的な概念を実行する機能が設けられている車両が始動されるときに、この方法は開始される。その開始を起動させるために、例えば車両をイグニッションオンとするといった、あらゆる適切な始動操作を用いることができる。
前述したように、この独創的な概念に従って実行される動作は、第1の所定のサンプル頻度S1に従って反復される。また、前述したように、単位エネルギーバッファ価格は第2のサンプル頻度S2に従って決定することができるが、用いるサンプル頻度とは無関係に、例えば単位エネルギー価格の決定への入力は以前のサンプルからの値に基づいたものである。しかしながら、車両の始動においてこの方法を開始するときには、例えば単位エネルギー価格を決定するための入力として用いることができる以前の値がない。
この独創的な概念の一実施形態によると、この独創的な概念が適用されるエネルギーサブシステムは、エネルギーバッファを含んでおり、この方法を開始した後の第1のサンプル間隔においては、単位エネルギー価格は各エネルギーバッファ価格と同じに設定される。エネルギーバッファがエネルギーサブシステム内に存在する場合、エネルギーバッファのエネルギーバランス、従って単位エネルギーバッファ価格は、通常、各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格にとって重要である。
この実施形態には、最初のサンプルについてこの独創的な概念を適用するときに、例えば車両をイグニッションオンした後に、入力として用いる各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格が、車両を始動する際に何らかの複雑な計算を実行すること無しに合理的に正確なものになるという利点がある。このシステムは、後に続くサンプリングの間、それ自体を更に調整する。
ここで、車両を始動してこの独創的な概念を開始するときの、各エネルギーバッファの単位エネルギーバッファ価格に注目する。多かれ少なかれあらゆる車両部品について、車両の内側を意味する内部的に、及び車両の外側を意味する外部的に、支配的な車両状態は、エネルギーバッファに大きく影響を及ぼし、従って各エネルギーバッファの特定のパラメータに含まれる。上述したように、単位エネルギーバッファ価格は特定のパラメータにに依存している。
従って、この独創的な概念の一実施形態によると、この方法を開始するときの各単位エネルギーバッファ価格の設定は、例えば外気温度、バッテリー電池温度、冷却水温度、あるいは全体車両の質量といった少なくとも一つの支配的な車両状態に依存する。この実施形態により単位エネルギー価格を決定する方法は、エネルギーバッファのないエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格を計算するときにも有利に適用することができる。
この独創的な概念の他の実施形態によると、この方法を終了するときの各エネルギーバッファの現在の単位エネルギーバッファ価格は、連続的に保存される。単位エネルギーバッファ価格は、好ましくは電子制御装置に格納される。この方法をその後に開始においては、車両を始動するときに、各単位エネルギーバッファのエネルギーバッファ価格は、前に保存されている単位エネルギーバッファ価格に従って設定される。このことは、その車両を始動する際にこの独創的な概念を開始するときの最初の入力値が合理的に正確であるという利点がある。続いて、このシステムは、後に続くサンプリングの間に自身を更に調整する。この実施形態は、車両が短期間にわたってイグニッションオフされていた場合に特に有利である。この実施形態は、最初に述べた実施形態と有利に結合し、単位エネルギーバッファ価格を決定しているときに、保存されている単位エネルギーバッファ価格と支配的な状態の両方を考慮に入れるようにすることができる。このことは、車両を始動するときに、更により正確な単位エネルギーバッファ価格を設定できるという利点がある。
本発明の他の目的は、車両の別個の状態の間での切り換えを制御することにある。この独創的な概念のこの態様は、複数の別個の状態に適用することができると共に、車両の異なる別個の状態、例えば変速、空調のスイッチオン/オフ、あるいは電動アクチュエータのスイッチオン/オフの間の切り換えを制御する。前述したようにこの独創的な概念によると、車両の状態の切り換えを実行すべきかどうかの決定は、車両のエネルギーシステム内の一時的なエネルギーの必要性と一時的に利用可能なエネルギーとにより、真っ先に実行される。この独創的な概念のこの態様によると、そのような判断は複数の車両の機能について連続的に実行することができ、車両の全てのサブシステムを最もエネルギー効果的な状態に連続的に設定されることを保証する。この独創的な概念のこの実施形態は、連続的に作動すると共に車両の様々な態様を制御し、一時的な状態に留まるか予測される状態に切り換わるかのどちらがより有利であるかの判断を実行することができる。
この独創的な概念のこの態様を適用することにより、車両は常に最もエネルギー効果的な状態で作動できるようにして、更に燃料消費を減らすことを可能にする。
この独創的な概念のこの態様の好ましい一実施形態によると、車両の異なる状態の間での切り換えは、先に述べた独創的な概念に追加して、例えばスタートストップ機能の実施を可能とし得る。従って、この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、車両の2つの別個の状態は、作動状態とイグニッションオフ状態との間での内燃機関の切り換えとすることができる。
以下、この独創的な概念のこの態様について、一般論として、かつ内燃機関のスタートストップ機能を制御すべくこの独創的な概念のこの態様を実施する特定の実施形態に関連して、説明する。
この独創的な概念の更なる態様の一実施形態によると、少なくとも2つの別個の状態のうちの一つを選択するために、以下の動作を実行する;
・車両をその一時的な状態に留めるための一時的な正味コストを計算すること、
・車両を予測される状態とするための予測される正味コストを計算すること、
・及び車両の状態を切り換えるための切り換えコストを計算すること。
一時的な正味コスト及び予測される正味コストは、車両の状態の切り換えを実行する要素を含むエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に依存する。上記したこの独創的な概念の実施形態によると、この独創的な概念のこの態様はスタートストップ機能を制御するために実行され、関連するエネルギーサブシステムが内燃機関を含む機械エネルギーサブシステムであり、かつ全てのエネルギーサブシステムがコンバータにより機械エネルギーサブシステムに接続されている。
従って、単位エネルギー価格は、好ましくは、前述したような車両のエネルギーサブシステム内のエネルギーの流れを管理する独創的な概念を適用することによって得ることができる。続いて、一時的な正味コスト、予測される正味コスト、及び車両の状態を切り換えるためのコストに基づいて、一時的な状態から予測される状態への車両の状態の切り換えを実行すべきかどうかを決定することができる。
一時的な正味コスト、予測される正味コスト、及び切り換えコストは、後により詳細に説明する。
一時的な別個の状態から予測される別個の状態にいつ切り換えるのが有利であるかを全体のエネルギーのコスト観点から決定する、車両のこの独創的な概念を実施することにより、最もエネルギー効率的な方法で車両を連続的に作動させることが保証される。
この独創的な概念の一実施形態によると、一時的な状態が第1の状態であり、予測される状態が第2の状態であり、かつ切り換えコストはスイッチオンのコストあるいはスイッチオフのコストである。この独創的な概念の更なる態様の一実施形態によると、車両の状態を切り換えるためのコストは、第1の状態から第2の状態へ切り換えるためのコストである。
この独創的な概念のこの態様の更に他の好ましい実施形態によると、スイッチコスト、あるいは車両の状態を切り換えるためのコストは、その間にその車両が第2の状態にあると予測される予測時間に依存する。車両の状態の切り換えのコストを時間に依存させることにより、ドライバによって不快であると認められ得る、内燃機関が繰り返してイグニッションオフ及びイグニッションオンされることを防止しあるいは少なくとも反作用させることができるこのことは、以下に説明するように、状態を切り換えるためのコストの算出に注目することによって理解することができる。
この特徴は、スタートストップ機能として実施されるときの、車両の別個の状態の間での切り換えを制御するための、独創的な概念の実施形態を参照することにより更に明確にすることができる。この実施形態によると、この独創的な概念は、車両が静止しているときに内燃機関をオンあるいはイグニッションオフに保つべきかどうかを制御する。
この実施形態によると、例えば車両が赤信号で停止するときに、内燃機関の状態をオンに切り換えるためのコストが、次式により計算される:
ここで、Q_starter_engineは、t_start_engineと呼ばれて秒で定められるスタータエンジンが内燃機関を起動するためにかかる時間の間に、内燃機関を起動するために用いられるスタータエンジンの平均的な効力であり、kWで定められる。p_el_engine_offは、内燃機関がイグニッションオフされているときの電気パワーの価格であり、g/kWhで定められる。また、t_pred_engine_offは、車両が発進するまでの予測された残り時間であり、秒で定められる。
内燃機関の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateは、図7と共により詳細に説明する。
車両が発進する前の予測時間をどのように決定するかは、車両の用途に依存し得る。予測時間は、記録された情報の平均値、中央値あるいはその他を用いることにより、又はECU(エンジン制御装置)あるいはその他にデフォルトで供給される情報を用いることによって計算することができる。記録情報は、実際の車両の停止時間の長さの記録、あるいは例えばその車両と同じフリートに所属する同じ運転挙動を示すと思われる他の車両から来るものとすることができる。車両が静止することになる時間を予測するために、例えば地勢学、やがて現れる道路の特徴あるいは交通渋滞といった、GPS、交通情報放送、その他から取得できる情報を用いることもできる。
そのような独創的な概念の更なる好ましい一実施形態によると、切り換えコストはスイッチオンのコストである。例えばこの実施形態は、スタートストップ機能を制御するためにこの独創的な概念が適用される上記した実施形態に適用できる。
その実施形態の進展によると、スイッチオンコストは一定値とすることができる。内燃機関をイグニッションオンするために一定値を設定することにより、スタートストップ機能の予測性を改善することができる。
この独創的な概念のこの態様のさらにより好ましい実施形態によると、その一定なスイッチオンコストは、本質的にゼロに等しく設定される。スタートストップ機能が設けられている車両については、内燃機関は、ある時点において、すなわちドライバが加速を要求して車両が発進するときに、イグニッションオンする必要がある。この独創的な概念のこの実施形態によると、内燃機関をイグニッションオンすることに関連するコストはゼロに設定されるが、その代わりエンジンをイグニッションオフにするためのコストは、エンジンを再びイグニッションオンするための追加のコストを負担しなければならない。このことは、一時的な状態から予測される状態への状態の切り換えに対して特有の抵抗を加え、スタートストップ機能を制御すべくこの独創的な概念が実施される実施形態においては、車両が停止するときに内燃機関をイグニッションオフにすることに対し特有の抵抗を示す。ドライバが不快であると感じることになる、内燃機関が数秒後に再びイグニッションオンされるためだけにイグニッションオフされることに対して反対方向に作用する。
この独創的な概念のこの態様が内燃機関に適用される実施形態については、すなわち、いつ内燃機関をイグニッションオン/オフすべきかを制御するために、短期間での状態の切り換えを回避することでき、それはエンジンがイグニッションオンあるいはオフにされる全体の回数を減らすことになる。
燃費効率の観点からは、例えば赤信号で停止するときの場合であり得る、内燃機関が発生させる機械パワーがもはや必要でないときに、内燃機関をイグニッションオフすることは明らかに有利である。しかしながら、燃料消費は内燃機関を始動する間に最も高く、かつ内燃機関の排気ガスエミッションの主要な部分は、特にエンジンが冷えている場合のエンジン始動の間に放出される。従って、車両が静止しているときにエンジンをイグニッションオフにするためにスタートストップ機能を用いる場合は、内燃機関の始動の回数を制限することもまた重要である。内燃機関がイグニッションオフされ、続いて、イグニッションオンが繰り返される場合、このことはドライバにとって不快なものと感じられる。
従って、スタートストップ機能を用いるときに、車両の始動の数を制限することは燃料を節約してエミッションを低下させるが、それはまた内燃機関の過度の摩耗を防止すると共に、繰り返して再始動される内燃機関の不快感を低減させる。
この独創的な概念の他の実施形態によると、内燃機関の状態を制御するために適用されるときに、その車両の内燃機関は、車両の第1の状態において作動し、かつ車両の第2の状態においてイグニッションオフされる。
エンジンを実際にイグニッションオフすることに関連してコストを上昇させる追加の燃料消費あるいはその他がないので、エンジンをイグニッションオフするための唯一のコストは、続いて内燃機関を起動するときのエネルギー消費とシステムの摩耗によるコストである。内燃機関の始動は、通常、スタータエンジンを用いることにより実行される。従って、この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、イグニッションオフのコストは、内燃機関を起動するときのスタータエンジンのエネルギー消費に依存する。
上述したように、内燃機関の頻繁に発生する始動及び停止は、ドライバにとって不快である。一時的な状態から予測される状態へと車両の状態を切り換えるためのこの独創的な概念のこの態様の他の実施形態によると、状態の切り換えをいつ実行すべきかの判断は、不快感のペナルティの条件に依存する。この不快感のペナルティの条件は、好ましくは予測される状態につての追加コストとして加算され、この状態はより有利でなくなる。この不快感のペナルティの条件を追加することにより、ヒステリシスがシステムに追加され、それは内燃機関の始動及び停止の頻繁な発生を減少させる。不快感のペナルティの条件は、好ましくは、その不快感のペナルティの条件がどれだけ影響力があることが望ましいかに応じて選択される。
本発明の更に他の態様は、最適化された変速段の選択によって燃料消費を最適化することである。
車両の内燃機関によって供給されるトルクがその内燃機関によって最終的に供給できるものに近い場合、現在の変速段で運転するときに、要求される内燃機関負荷の増加がシフトダウンを強制し、それによって燃料消費が増加することとなり得る。内燃機関の全体的な負荷には、車両の任意の補助システムによるエネルギー需要と、車両を推進するために要求される内燃機関トルクが含まれている。
補助システムは、車両のエネルギーシステムのエネルギー消費体であり、車両の推進に直接接続されていないので動力伝達装置の一部ではないが、それでも車両の全体的な機能にとって必要である。そのような補助システムの実例は、冷却ファン、オイルポンプ、オルターネータランプ、及び空調である。内燃機関の機械エネルギーサブシステムに直接接続されてはいないが、そのような補助システムにより消費されるパワーは機械エネルギーサブシステムからの必要な機械パワーの量を増加させ得るため、そのような補助システムのエネルギーサブシステムは、機械サブシステムに直接又は間接的に接続することができる。従って、内燃機関がより多くの機械パワーを発生させなければならないことにより、そのような補助システムのエネルギー需要は追加の内燃機関負荷を最終的に引き起こし得る。これは、補助負荷と呼ばれる。
この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、車両のエネルギーシステム内のエネルギーの流れを管理することにより、補助負荷を減らすことによってダウンシフトを回避することができる。この独創的な概念のこの実施形態は、サンプル頻度S1、S2及びS3と等しいあるいは異なるものとし得るサンプル頻度S4に従って実行される。
従って、この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、この方法は、好ましくは、機械エネルギーサブシステムを含む車両のエネルギーシステムに適用することができるが、その機械エネルギーサブシステムは機械エネルギーを用いるものであり、かつその機械エネルギーサブシステムは内燃機関を含む。その車両は、様々なエネルギーサブシステムの複数の補助システムを追加的に含んでいる。その内燃機関は、多段変速機を更に含む動力伝達装置の一部である。それらの複数の補助システムは、車両の任意の補助システムとすることができる。
更に、この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、この方法は、所定の時間範囲内にやがて現れる移動経路に関する情報にアクセスすることを含む。そのような情報は、例えばナビゲーション装置あるいはその他により、例えばGPS(全世界測位システム)と電子マップに基づいてもたらすことができる。
続いて、この情報は分析され、やがて現れる移動経路が上り勾配を含んでいるか、かつその上り勾配がどれだけ長いかを決定するために、その情報は周知の方法で用いることができる。
更に、やがて現れる移動経路が上り勾配を含んでいる場合、すでに係合している変速段でその上り勾配を登るために内燃機関から必要なパワーが決定される。
更に、その上り勾配を登るために現在最大限の利用可能なパワーは、その上りの勾配の情報に基づいて予測される走行抵抗から決定される。内燃機関から必要とするパワーは、例えばその上り勾配の長さ及びその上り勾配がどれだけ険しいかに、依存し得る。その最大限に利用可能なパワーは、車両の推進のために用いることができる内燃機関によって生産される機械パワーの全体量の一部である。機械パワーの全体量のうちのこの部分は、各補助システムにパワーを供給するために、機械エネルギーサブシステムに接続されている各エネルギーサブシステムのエネルギーコンバータにより現在変換されている機械パワーを、前述したエネルギーシステム内のエネルギーの流れを管理する方法に従って減算した後に残っている、機械パワーである。
その決定された必要とされるパワーは、最大限に利用可能なパワーと比較され、かつその比較に基づいて、その車両がすでに係合している変速段でその上り勾配を登ることができるかどうかが判定される。変速あるいは補助負荷を減らすことなしにその上り勾配を運転することができると判定されると、この方法は、更なるアクションを起こすことなしに連続的に実行される。
その上り勾配を登るために車両は変速しなければならないと判定されると、低い変速段を選択するためのペナルティコストが割り当てられる。そのようなペナルティコストは、続いて、機械エネルギーの単位エネルギー価格に追加される。前述したように、この独創的な概念のこの実施形態はサンプル頻度S4に従って実行される。エネルギーシステム内のエネルギーの流れを管理するこの独創的な概念によると、この独創的な概念を続いて実行するときに、ペナルティコストの追加は機械エネルギーの単位エネルギー価格を上昇させ、そのことは、機械エネルギーサブシステムからのパワーにより供給される機械エネルギーが以前から供給されているエネルギーサブシステムにとって、より高いコストとなることに帰着する。内燃機関を含む機械エネルギーサブシステムがエネルギーの主な供給源であることにより、機械エネルギーの単位エネルギー価格のそのような増加は全てのエネルギーサブシステムに大きなインパクトを及ぼすと共に、全てのエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に、従ってエネルギーシステム内の全てのエネルギー分配に影響を及ぼす。
従って、ペナルティコストを追加することによって機械エネルギーの単位エネルギー価格を操作することにより、この独創的な概念は、エネルギーシステム内のエネルギーの流れを自動的に採用し、近づきつつある上り勾配を運転する前に車両の推進のために必要なパワーが利用可能となるようにする。
例を挙げると、オルタネータによって電気パワーに変換される機械パワーが以前に供給されてきている、かつバッテリーが連続的に充電されてきている、電気エネルギーサブシステムについて、その電気エネルギーサブシステムの消費体に電気パワーを供給するために、機械エネルギーの単位エネルギー価格がペナルティコストの追加により増加した後、消費体にはどこか他の所からパワーを供給しなければならず、電気エネルギーサブシステムにとっては、好ましくは電機によって機械パワーに変換される電気エネルギーを、機械エネルギーサブシステムに対して供給することが有利であり得る。この独創的な概念は、機械エネルギーについての単位エネルギー価格の操作に由来する、エネルギーシステム内のエネルギーの流れの全ての変化を、自動的に実行する。
この独創的な概念のこの態様の一実施形態によると、そのペナルティコストは上り勾配の長さに依存する。この独創的な概念のこの態様の他の実施形態によると、このペナルティコストは、その上り勾配がどれだけ険しいかに依存する、言い換えると走行抵抗の程度に依存する。上り勾配の長さ及び/又は険しさに従ってペナルティコストを設定することには、その上り勾配を走行することによって生じる内燃機関負荷の増加との関係においてペナルティコストを設定できるという利点がある。このことは、より正確なペナルティコストをもたらし、それは全体的でより正確な機械パワーの分配バランスを与える。
また、本発明の範囲内で、車両のエネルギー流れを制御するための制御装置はある。そこにおいて、制御装置は独創的な概念の段階を実行するために構成されている。その制御装置は、好ましくは車両に設けられ、その車両はエネルギーシステムを備える。そのエネルギーシステムは、複数のエネルギーサブシステムを含んでおり、そのエネルギーサブシステムは、少なくとも生産体、あるいは生産体として作用するコンバータ、消費体、あるいは消費体として作用するコンバータを含み、車両にはそのような制御装置が設けられる。そのような車両は、本発明の範囲内にある。最後に、本発明の範囲内には、コンピュータプログラムであって、そのプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、この独創的な概念のいずれかの実施形態に記載した段階を実行するためのプログラムコード手段を含んでいるコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体であって、そのプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、この独創的な概念のいずれかの実施形態に記載した段階を実行するためのプログラムコード手段を含んでいるコンピュータ可読媒体がある。
図1aは車両Vを示している。車両Vの図示の実施形態においては、車両VがエネルギーシステムESを含んでいることが示されている。
図1bは、車両Vの簡略化されたエネルギーシステムES_1の実施形態の概略図を示している。図示のエネルギーシステムES_1の実施形態は、この独創的な概念を明確にかつ簡潔なやり方で説明するために、著しく単純化されている。図示の実施形態において、エネルギーシステムES_1は3つのエネルギーサブシステムを含んでいる。機械エネルギーサブシステムMe、電気エネルギーサブシステムEl_1、及び熱エネルギーサブシステムTh_1である。
機械エネルギーサブシステムMeは、機械パワーが生産されかつ消費されるパワー形態であるところの機械エネルギーの市場を形成する。それに対応して、電気エネルギーサブシステムEl_1は電気エネルギー市場を形成し、かつ熱エネルギーサブシステムTh_1は熱エネルギー市場を形成し、そこにおいて電気パワー及び熱パワーがそれぞれ生産されかつ消費される。サブシステムMe;El_1;Th_1は、それぞれ少なくとも一つのコンバータConv_1;Conv_2を含み、コンバータConv_1;Conv_2は、例えば機械エネルギー、電気エネルギーあるいは熱エネルギーといった一つの形態からエネルギーの他の形態へと、エネルギーを変換することができる。コンバータConv_1;Conv_2は、コンバータConv_1;Conv_2がパワーを変換するエネルギーサブシステムMe;El_1の消費体として、かつコンバータConv_1;Conv_2がパワーを供給するエネルギーサブシステムEl_1;Th_1の生産体として、作用する。
この独創的な概念によると、生産されかつ消費されるパワーの間のバランスに応じて、各エネルギー市場でのパワーについて単位エネルギー価格が設定される。
図1bに示される実施形態によると、エネルギーシステムES_1の生産体Me_Prodは内燃機関であり、単位エネルギー価格は、好ましくは、供給される有用なエネルギーの単位毎に消費される燃料のグラム数で表される。このことは、後により詳しく開示する。ここで、単位エネルギー価格を説明するために、この実施形態について言及する。
生産体のタイプに応じて、エネルギーシステムは様々な燃料が可能ではあるが、エネルギーシステムが圧縮点火内燃機関を備える本発明の好ましい実施形態によると、燃料をディーゼルとすることになる。もちろん、他のタイプの周知の内燃機関もまた可能である。
燃料の価格は、1キロワット時に対応する燃料のグラム数で与えられる燃料のエネルギー密度である。従って、生産されるエネルギーの価格はg/kWhで定められる。図1bの実施形態によると、これはエネルギーシステムES_1の単位エネルギー価格と呼ばれる。
生産体及び/又は消費体についての単位エネルギー価格は、一般的に、生産されるあるいは消費されるエネルギーの量によって変化する。これは、あらゆる生産体及び/又は消費体の限界効率が、生産され及び/又は消費されるパワーに依存するからである。各生産体及び/又は消費体について、このことは、供給価格関数及び/又は需要価格関数を生じさせる。このことについては、図2a、図2b及び図2cと共に十分に言及することになる。
一般的に、例えばプラグイン機能のような内燃機関とは別の生産体を用いるときに、あるいは様々な生産体の組合せを用いる場合は、例えばキロワット時当たりのユーロあるいはドルでエネルギーコストを特定することがより適切である。従って、内燃機関とは別の生産体が存在する場合は、好ましくは、例えばユーロ/kWh等を用いる。
二つのエネルギーサブシステムの各単位エネルギー価格、及び二つのエネルギーサブシステムに共通のコンバータの限界効率に基づいて、サブシステムのうちの一つにおいて生産されるパワーを他のサブシステムに供給することができる。この独創的な概念によると、第2のエネルギーサブシステムから第1のエネルギーサブシステムへとエネルギーを変換するコンバータの限界効率で除算した、第1のエネルギーサブシステムの算出した単位エネルギー価格が第2のエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に等しい場合、パワーは第2のエネルギーサブシステムから第1のエネルギーサブシステムに供給される。開示するように、コンバータの限界効率は、次には、変換するパワーによって定まる。従って、2つのエネルギーサブシステムの間でパワーを変換するか及びどれだけの大きさのパワーを変換するかは、関係するコンバータの特性及び各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格に依存する。また、後で説明するように、第2のエネルギーサブシステムから第1のエネルギーサブシステムに供給するパワーの量は、各コンバータが供給可能であるパワーの最大量の制限によって制限され得る。
図1bに示すエネルギーシステムES_1の実施形態において、機械エネルギーサブシステムMeは、生産体Me_Prod及びコンバータConv_1を含んでおり、コンバータConv_1は生産体Me_Prodに接続されている。コンバータConv_1は、生産体Me_Prodによって生産された機械パワーを電気パワーに変換し、そのコンバータConv_1は続いて、ここに表される電気エネルギーサブシステムEl_1の要素であるConv_2;El_Cons_1;El_Eb_1である電気エネルギーのマーケットに供給することができる。例証する実施形態によると、生産体Me_Prodを内燃機関とし、かつコンバータConv_1をオルタネータとし得るが、機械パワーを生産しかつ変換する他の生産体及びコンバータもあるいは用いられる。
機械エネルギーサブシステムEl_1は、コンバータConv_1を電気エネルギーサブシステムEl_1と共有している。従って、コンバータConv_1は、機械パワーサブシステムMe及び電気エネルギーサブシステムEl_1にとって共通である。コンバータConv_1の全体効率は一般的に1より低いので、機械パワーを電気パワーに変換することによるパワー損失があることになる。
図1bに示される実施形態によると、共通のコンバータConv_1を除いて、電気サブシステムEl_1は、エネルギーバッファEl_Eb_1、消費体El_Cons_1、及び第2のコンバータConv_2を含んでいる。第1の共通のコンバータConv_1は、バッファEl_Eb_1、消費体El_Cons_1及び第2のコンバータConv_2に接続されていて、電気パワーを共通のコンバータConv_1によりエネルギーバッファEl_Eb_1、消費体El_Cons_1及び第2のコンバータConv_2に供給できるようになっている。エネルギーバッファEl_Eb_1は消費体EI_Cons_1に接続されていて、消費体EI_Cons_1もまたエネルギーバッファEl_Eb_1から電気パワーを供給できるようになっている。エネルギーバッファは、電気エネルギーサブシステムMeが熱エネルギーサブシステムTh_1と共有している、第2のコンバータConv_2にも接続されている。図1bに示されている実施形態によると、エネルギーバッファEl_Eb_1はバッテリーとすることができ、かつ消費体El_Cons_1は、例えばランプや電子制御装置といった電気パワーを消費する多くの構成部品を表すことができる。
熱エネルギーサブシステムTh_1においても、共通の第2のコンバータConv_2はエネルギーバッファTh_Eb_1に接続されていて、エネルギーバッファTh_Eb_1には共通の第2のコンバータConv_2から熱パワーを供給できるようになっている。エネルギーバッファTh_Eb_1は消費体Th_Cons_1に接続されて、エネルギーバッファTh_Eb_1が消費体Th_Cons_1に熱エネルギーを供給できるようになっている。図1bに示されている実施形態によると、共通の第2のコンバータConv_2は電動冷却ファンとすることができ、エネルギーバッファTh_Eb_1はあらゆるタイプの熱エネルギーバッファとすることができ、かつ消費体Th_Cons_1はリターダとすることができる。
エネルギーバッファEl_Eb_1;Th_Eb_1は、両方とも、エネルギーバッファEl_Eb_1;Th_Eb_1に供給されると共に、優勢なエネルギーバランスに応じて各エネルギーサブシステムEl_1;Th_1に供給される、エネルギーを蓄積できる装置である。従って、エネルギーバッファは、エネルギーサブシステムの生産体あるいは消費体として作用することもできる。エネルギーバッファEl_Eb_1;Th_Eb_1のタイプに応じて、異なる形態のエネルギーを蓄積しかつ供給することができる。
エネルギーバッファの関数を説明するために、明確な実施例として車両のバッテリーを用いることにする。
車両に設けられてエネルギーバッファとして作用するバッテリーは、電気エネルギーサブシステムに電気パワーの余剰がある場合に、電気パワーを蓄積することができると共に、現在の充電状態(SoC)に応じ、電気エネルギーの不足がある場合には電気エネルギーサブシステムにパワーに供給することができる。最大SoCは、エネルギーバッファとして作用するバッテリー重要な特定のパラメータの実例である。
ここで留意されるべきことは、図1bに示されている実施形態は、ちょうど3つのエネルギーサブシステムMe;El_1;Th_1と極めて限られた数の要素Me_Prod;Conv_1;Conv_2;EI_Cons_1;Th_Cons_1;Th_Eb_1;El_Eb_1を含んでいるが、明確さのために著しく単純化されていることである。また、示唆する生産体、コンバータ、エネルギーバッファ及び消費体は、各生産体、コンバータ、エネルギーバッファ及び消費体が表し得るもののまさしく実例である。この実施形態は、明確にするための実施例とみなされなければならず、かつ本発明を限定するものとみなされるべきではない。
図1bに示されている実施形態を始めとして、エネルギーシステムES_1のより詳細な説明をここで説明する。機械エネルギーサブシステムMeの生産体Me_Prodは、好ましくは内燃機関である。この内燃機関は燃料で作動する。
上に開示したように、共通のコンバータConv_1;Conv_2は少なくとも2つのエネルギーサブシステムMe;El_1;Th_1に含まれると共に、少なくとも一方向においてエネルギーを変換することができる。エネルギーの一つの形態をエネルギーの他の形態に変換することにより、コンバータConv_1;Conv_2は、第1のエネルギーサブシステムの消費体として、かつ第2のエネルギーサブシステムの生産体として作用する。前述したように、コンバータにより実行される変換の効率の測定値である各コンバータには効率と、限界効率がある。コンバータの限界効率は、どれだけ小さい供給パワーの変化が変換されるパワーを変化させるかを、変換されるパワーの量に応じて表している。
図1bに開示されている実施形態において、コンバータConv_1は、内燃機関である生産体Me_Prodにより生産される機械パワーを電気エネルギーサブシステムEl_1に供給される電気パワーに変換するオルタネータである。コンバータConv_1は、機械パワーを電気パワーに変換できるだけであり、電気パワーを機械パワーには変換できない。電気エネルギー市場において生産体として作用するコンバータConv_1を除いて、電気エネルギーサブシステムEl_1は、バッテリーの形態のエネルギーバッファEl_Eb_1、ランプ及び電子制御装置を表す消費体EI_Cons_1、及び電動冷却ファンの形態の第2の共通のコンバータConv_2を含んでいる。
バッテリーEl_Eb_1にはオルタネータConv_1から電気パワーを供給することができ、かつEl_Eb_1は電動冷却ファンConv_2と消費体EI_Cons_1に電気パワーを供給することができる。電動冷却ファンConv_2は、熱エネルギーバッファTh_Eb_1の冷却水を冷却するためにバッテリーEl_Eb_1からの電気パワーを用いることができる。従って、電気エネルギー市場からの電気パワーは、電動冷却ファンConv_2によって変換されることにより、熱パワーに変換される。この設定において、電動冷却ファンConv_2は電気エネルギー市場において消費体として、かつ熱エネルギー市場において生産体として作用する。
エネルギーバッファの単位エネルギーバッファ価格は、エネルギーバッファの多くの特定パラメータに依存する。バッテリーの形態のエネルギーバッファを含むこの独創的な概念の実施形態について、単位エネルギーバッファ価格を設定する上で最も影響があるパラメータはバッテリーの現在のSoCである。バッテリーEl_Eb_1のSoCが高い場合には単位エネルギーバッファ価格は低く、かつバッテリーEl_Eb_1のSoCが低い場合には単位エネルギーバッファ価格は高い。従って、バッテリーEl_Eb_1のSoCが低い場合、バッテリーEl_Eb_1は電気エネルギー市場上において消費体として作用することになり、かつバッテリーEl_Eb_1のSoCが低い場合、バッテリーEl_Eb_1は電気エネルギー市場上で生産体として作用することになり得る。しかしながら、この実施例は、やがて現れるルートに関する情報が利用可能でない場合何よりもまず有効となる。例えば、車両が適切な速度で進行していて長い下り坂に接近していることが判っている場合、制動に伴う再生によってバッテリーのSoCの上昇が可能となり、バッテリーをすぐに再充電できるから、そのバッテリーについて低い単位エネルギーバッファ価格を設定することが可能である。
特定パラメータは各エネルギーバッファについて単位エネルギーバッファ価格を設定するために重要であり、かつエネルギーバッファの供給価格関数及び需要価格関数を決定するときに用いることができる多くの他の特定パラメータもある。特定パラメータには、バッテリーの連続的に進行する間接的な放電あるいはバッテリーの消耗に影響を及ぼす、例えば外気温度やバッテリーセルの池温度といったパラメータを含めることができ、あるいは、例えば目的地までの距離といった、ルートに特定のパラメータを含めることができる。このことは、それ自体は本発明の一部ではなく、従来技術に十分に開示されている。
エネルギーバッファの供給価格関数及び需要価格関数は、コンバータの需要価格関数及び供給価格関数と同様のやり方で決定される。
エネルギーバッファ供給価格関数は、以下に従って決定される:
ここで、p_supply(Q_out)は、エネルギーバッファにより供給されるパワーの単位エネルギー価格Q_outに依存するパワー、すなわちエネルギーバッファ供給価格関数であり、p_bufferは単位エネルギーバッファ価格であり、かつeta_marg_buffer_discharge(Q_out)は放出されるときのエネルギーバッファの限界効率である。
エネルギーバッファ需要価格関数は、以下に従って判定される:
ここで、p_demand(Q_out)は、エネルギーバッファにより要求されるパワーのQ_outの単位エネルギー価格に依存するパワー、すなわちバッファ需要価格関数であり、p_bufferは単位エネルギーバッファ価格であり、かつeta_marg_buffer_charge(Q_out)は充電されるときのエネルギーバッファの限界効率である。
エネルギーバッファの限界効率は次式により計算することができる:
ここでQ_outは、充電時にエネルギーバッファに供給されるパワー(あるいは、放電時にエネルギーバッファから放電されるパワー)であり、かつQ_lossesは、例えばバッテリーの内部抵抗によるエネルギーバッファ内のパワー損失である。
更に、電気エネルギーシステムEl_1は消費体El_Cons_1を含んでいる。図1bに示される実施形態において、消費体El_Cons_1は、ランプ及び電子制御装置の合計されたエネルギー需要を含んでいる。電子制御装置は車両の多くの関数を管理しているので、電子制御装置が作動する間に必要とする量の電気パワーを電子制御装置に連続的に供給することが重要である。また、ランプは、起動されるための及び/又は起動したままであるための固定量の電力を必要とする消費体の実例である。このことは、図2bの説明により詳しく開示される。
熱エネルギー市場は、他のエネルギー市場と同じやり方で作用する。上に開示したように、電動冷却ファンConv_2は熱エネルギーバッファTh_Eb_1に接続されている。熱エネルギーバッファが、熱パワーを供給することにより生産体として作用するか、あるいは熱パワーをバッファすることにより消費体として作用するかの可能性は、熱エネルギーバッファTh_Eb_1のバッファ媒体の現在の温度、及び冷却あるいは加熱が必要かどうかに依存する。熱エネルギーバッファTh_Eb_1の単位エネルギーバッファ価格は、例えばトップタンク温度、エンジン冷却装置の最高許容冷却水温といった、各熱エネルギーサブシステムの冷却媒体の最高あるいは最低許容温度に関する熱エネルギーバッファTh_Eb_1の現在の温度に依存し得る。
図1bのエネルギーシステムES_1の例示的実施形態において、どのようなエンジン装置が存在しているか、またこれらの装置がどのように接続されているかは、まさしく説明を目的したものであり、本発明を限定するものとみなされてはならない。
ここで図2a、図2b及び図2cを参照すると、図1bの電気エネルギーシステムの電気エネルギー市場について、図2aには供給価格関数線図SFD_1が、図2bには需要価格関数線図DFD_1が、かつ図2cには合計供給需要関数線図ASDFD_1が示されている。示されている全ての線図SFD_1;DFD_1;ASDFD_1は、図1bに示されている実施形態についての供給価格関数線図SFD_1、需要価格関数線図DFD_1、あるいは供給需要関数線図ASDFD_1が、どのように見えるかの概略的な実例である。
図1bに示される実施形態を参照する供給価格関数は、各生産体が供給できる範囲のパワーを生産するために必要な各燃料噴射割合から決定される。対応して、需要価格関数は、パワーを消費することにより消費体が得る限界収益点の利益から決定される。
前述したように、この独創的な概念は連続的であり、この独創的な概念に従って実行される動作が所定の時間サンプル間隔t+nに従って反復されることを意味する。生産体及び消費体の供給価格関数及び需要価格関数は、その時間サンプル間隔t+nに従ってそれぞれ再計算される。前述したように、各生産体及び/又は消費体の供給価格関数及び/又は需要価格関数は、多くの特定のパラメータに依存している。生産体及び/又は消費体の供給価格関数及び需要価格関数を時間t+nについて計算するときに、これらのパラメータは時間tにおいて取得される。従って、各供給価格関数及び/又は各需要価格関数から得ることができる、各単位エネルギー価格の設定は、時間サンプル間隔t+nにおいて反復される。
更に、生産体及び制御可能な消費体のそれぞれについて供給価格関数及び/又は需要価格関数を計算するためには、それぞれの生産体及び制御可能な消費体のそれぞれについて時間tにおける限界効率が必要である。消費体として作用するコンバータは、制御可能な消費体の実例である。
生産体についての供給価格関数は、以下に従って計算される:
ここで、Prod_eta_marg(Q_power_out)は生産体の限界効率であり、p_power_inは消費されるパワーの単位エネルギー価格であり、p_power_out(Q_power_out)は生産されるパワーの単位エネルギー価格である。コンバータについて、生産されるパワーは、例えばランプの形態の生産体のためにコンバータがエネルギーを変換したエネルギーの形態であり、生産されるパワーは光の形態である。
制御可能な消費体の需要価格関数は、制御可能な消費体の限界効率を消費体のサブシステムの単位エネルギー価格と乗算することにより、以下に従って決定される:
ここで、Cons_eta_margは、消費体の限界効率、すなわち消費することからの限界収益点の利益であり、p_power_inはサブシステムの単位エネルギー価格であり、かつp_power_outは、そこから利益を得られることができるパワーの単位エネルギー価格である。
供給価格関数及び需要価格関数は、各生産体、消費体あるいはコンバータにより供給できる、あるいはそこから利益を得られる、最小パワー及び最大パワーに依存する量において制限される。
この文脈において記憶していることが重要なのは、例えばコンバータ及びエネルギーバッファが、生産体及び消費体の両方として作用できることである。コンバータは、常に一方のエネルギーサブシステムの消費体として作用し、かつ他方のエネルギーサブシステムの生産体として作用するのに対し、エネルギーバッファは好ましくは一時に生産体あるいは消費体として作動する。
また、制御不能な消費体については、図2bに関連してより詳細に開示するが、需要価格関数はスカラーの形態となる。制御不能な消費体にもまた限界効率があるが、それらは制御できないし、かつそのような消費体が必要とするエネルギー量は固定されているので、そのような制御不能の消費体は単位エネルギー価格とは関係がない。
ここで図2a、図2b及び図2cの線図に注目する。図2aは、図1bに示されているエネルギーシステムの実施形態の供給価格関数Conv_1_SF;EI_Eb_SFと合計供給価格関数 ASF_1を示している。図2bは、図1bに示されているエネルギーシステムの実施形態の需要価格関数Conv_2_DF;EI_Eb_DF;El_Cons_DFと合計需要価格関数ADF_1を示している。最後に、図2cは合計供給価格関数ASF_1と合計需要価格関数ADF_1を示している。唯一の主要なエネルギー源が内燃機関である図1bのこの実施形態によると、線図SFD_1;DFD_1;ASDFD_1のx軸はW(ワット)で定められるエネルギーの量を示し、かつy軸はg/kWhで定められる価格を示している。
通常は、生産体の限界効率はパワーの取り出しが増えるにつれて減少する。このことは、そのような生産体から供給されるパワーの価格は量に応じて高まることを意味する。このことは、供給価格関数の線図SFD_1に示されていて、各生産体の供給価格関数Conv_1_SF;El_Eb_SFはわずかに傾いている。図2aは、オルタネータの供給価格関数Conv_1_SFの傾斜が、バッテリーの供給価格関数El_Eb_SFの傾斜より急であることを開示している。この特定の実施例から、所与のオルタネータの限界効率が、バッテリーの限界効率よりも、パワーの取り出しが大きくなるほど低下すると結論付けることができる。ここで注目されるべき事は、各エネルギー生産体の供給価格関数Conv_1_SF;El_Eb_SFが、各エネルギー生産体から供給できるパワーの最小の量及び最大の量を開示していることである。
第1供給価格関数Conv_1_SFと第2供給価格関数El_Eb_SFは、合計供給価格関数ASF_1に合計されている。合計供給価格関数ASF_1は、各供給価格関数Conv_1_SF;EI_Eb_SFの各パワー量の貢献を合計供給価格関数ASF_1に加算することによって得られる。その加算は、各生産体からのエネルギー量の貢献をX方向に加算することによって実行される。従って、全ての加算される供給価格関数について、合計供給価格関数はエネルギー量が高い方にオフセットされることになる。
需要価格関数線図DFD_1は、エネルギー生産体に代えて、需要価格関数線図DFD_1がエネルギー消費体のための需要価格関数Conv_2_DF;EI_Eb_DF;EI_Cons_DF、及び合計需要価格関数ADF_1を開示している点を除いて、対応する方法で得られ、各需要価格関数はある単位エネルギー価格において必要とされるパワーの量を表している。制御可能なエネルギー消費体は、例えば、一つの形態のエネルギーを他の形態のエネルギーに変換するエネルギーコンバータとすることができる。いくつかの実施形態においては、エネルギーバッファは制御可能なエネルギー消費体であるとみなすことができる。
図2bには、図1bの実施形態の電気パワーサブシステムに設けられている3つのエネルギー消費体の需要価格関数が示されている;電動冷却ファンのConv_2_DF、ランプ及び電子制御装置の形態の消費体のEI_Cons_DF、及びバッテリーのEI_Eb_DFである。エネルギー生産体についての方法に対応して、各需要価格関数Conv_2_DF;El_Eb_DF;El_Cons_DFを決定するときには、各エネルギー消費体の限界効率あるいは限界収益点の利益が考慮される。しかしながら、エネルギー消費体については、限界効率は一般的に負荷が高まるにつれて低下し、各エネルギー消費体の需要価格関数Conv_2_DF;El_Eb_DF;El_Cons_DFは供給価格関数Conv_1_SF;El_Eb_SFとは反対の外観となることが示されている。
例えば電子制御装置や制動システムのように基本的かつ本質的な車両関数に関連付けられている消費体といった多くの消費体は、制御することができない。それらの活性化及び非活性化、あるはそのような制御できない消費体が活性状態あるいは非活性状態である期間は、ドライバは全く制御できない。そのような消費体の各パワー消費は制御できない電気的な負荷であり、そのような消費体が価格とは無関係であることを意味する。このことは、そのような消費体の需要価格関数が、各関数が要求するパワーの量において需要価格関数の線図に配置される垂直スカラーにより表されることを示している。
そのような消費体は、本質的な車両関数の全てを含んでおり、かつ車両の基本的な電気的負荷を構成する。図2bの需要価格関数の線図DFD_1を参照すると、全てのそのような消費体は、より大きな量のパワーに向かって、従って需要価格関数の線図DFD_1の右側へと、そのような各消費体が必要とするパワーに対応する大きさで、合計需要価格関数ADF_1をオフセットさせている。
図2bにおいて、需要価格関数El_Cons_DFはそのような消費体を表しており、その消費体はランプ及び電子制御装置のパワーの合計の消費を含んでいる。
需要価格関数Conv_2_DF;El_Eb_DF;El_Cons_DFは、合計需要価格関数ADF_1に合計されている。
図2aの合計供給価格関数ASF_1と図2bの合計需要価格関数ADF_1は、合計供給需要関数線図ASDFD_1(図2cを参照)において比較されている。電気エネルギーサブシステムの合計供給価格関数ASF_1及び合計需要価格関数ADF_1は点Eq_1において一致しており、その点Eq_1は電気エネルギーサブシステムがエネルギー的にバランスしていることを示している。エネルギーがバランスしているパワーの量は、電気エネルギーサブシステムの電気エネルギーについての単位エネルギー市場価格P_EIを与える。点Eq_1において、図2bの電気エネルギーサブシステムのエネルギー供給とエネルギー需要は等しい。
単位エネルギー市場価格p_Elは、続いて、図2aの供給価格関数線図SFD_1と図2bの需要価格関数線図DFD_1にフィードバックされる。電気エネルギーサブシステムの生産体及び消費体は、決定された単位エネルギー市場価格p_Elにおいて各生産体及び消費体が生産しかつ消費するパワーの量を生産しあるいは消費しなければならない。
オルターネーターコンバータについて図2aの供給価格関数Conv_1_SFに注目すると、単位エネルギー市場価格p_Elにおいて、オルターネーターコンバータは電気エネルギーサブシステムにパワー量Q_Conv_1を供給しなければならないと結論することができる。従って、コンバータは電気エネルギーサブシステムの生産体として作用する。バッテリーについての供給価格関数El_Eb_SFから、単位エネルギー市場価格p_Elにおいて、図2aに示されている実施形態による生産体としても作用するがバッテリーは、電気エネルギーサブシステムにパワー量Q_El_Ebを供給しなければならないと結論することができる。
図2bから、電気エネルギーサブシステムの電気パワーについての単位エネルギー価格p_Elにおいて、需要価格関数Conv_2_DFにより表される電動冷却ファンには、Q_Conv_2のパワー量が供給されると結論することができる。価格とは無関係の電子制御装置及びランプについての需要価格関数EI_Cons_DFは、電子制御装置及びランプに設定されたパワー量Q_EI_Consが供給されることを示している。バッテリーEl_Eb_DFのための需要価格関数は、p_EIにおいて、バッテリーには如何なるパワーも供給されないことを示している。このことは、供給価格関数線図DFD_1に視覚化されており、それにより、バッテリーの需要価格関数EI_Eb_DFは、電気エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格p_EIより上に配置されている。
この独創的な概念を用いることにより、より小さくより複雑でないサブシステムのエネルギー管理を含むだけとなるように、エネルギーシステムのエネルギー管理を分配することが可能となる。また、この独創的な概念を用いることにより、完全なエネルギー管理システムを調整し直す必要無しに、新しい車両部品あるいは新しいサブシステムをエネルギーシステムに追加しあるいはエネルギーシステムから取り除くことができる。
ここで図3、図4a、図4b及び図4cを参照する。図3に示されている実施形態はエネルギーシステムES_2の著しく簡略化された概略図ではあるが、各エネルギーサブシステムMe;El_2;Th_1;Pn;Th_2;Th_3によって追加された複雑さと、各エネルギーサブシステムMe;El_2;Th_1;Pn;Th_2;Th_3内の活動が他のエネルギーサブシステムMe;El_2;Th_1;Pn;Th_2;Th_3に如何に影響を及ぼしているかを強調することが意図されている。
図3は、より複雑な電気エネルギーサブシステムEl_2を含むエネルギーシステムES_2の実施形態の概略図を示している。図3に示されているエネルギーシステムES_2の実施形態によると、電気エネルギーサブシステムEl_2は、冷却ファンの形態のコンバータConv_2を介して熱エネルギーサブシステムTh_1に接続されると共に、オルタネータの形態のコンバータConv_1を介して機械エネルギーサブシステムMeに接続されている。熱エネルギーサブシステムTh_1は、熱エネルギーバッファの形態のエネルギーバッファTh_Eb_1と、リターダの形態の消費体Th_Cons_1を追加的に含んでいる。機械エネルギーサブシステムMeは、内燃機関の形態の生産体Me_Prodを含んでいる。図1bの実施形態によると、電気エネルギーサブシステムEl_2は、バッテリーの形態のエネルギーバッファEl_Eb_1と、電子制御装置及びランプを表す消費体El_Cons_1を追加的に含んでいる。
電気エネルギーサブシステムEl_2はまた、エアコンディショナの形態のコンバータConv_4を介してA/CエネルギーサブシステムTh_2に接続されている。A/CエネルギーサブシステムTh_2は、エバポレータの温度あるいは圧力の形態のエネルギーバッファTh_Eb_2を含んでおり、またA/CエネルギーサブシステムTh_2は、次にコンバータConv_5を介してキャビン冷房エネルギーサブシステムTh_3に接続されており、コンバータはキャビン送風機の形態である。図3に示されている概略的な実施例において、キャビン冷房エネルギーサブシステムTh_3は、空調エネルギーバッファの形態のエネルギーバッファTh_Eb_3と、外気温度の形態の消費体Th_Cons_2とを追加的に含んでいる。更に、電気エネルギーサブシステムEl_2は、空気圧縮機の形態のコンバータConv_3を介して、空圧エネルギーサブシステムPnに接続されている。空圧エネルギーサブシステムPnは、空気タンクの圧力の形態のエネルギーバッファPn_Ebと、制動装置及びサスペンションの形態の消費体Pn_Consとを追加的に含んでいる。
図3のエネルギーシステムES_2の例示的な実施形態において、エンジン装置が如何なるものか、及びこれらの装置が如何に接続されているかは、この独創的な概念及びこの独創的な概念によって制御されるシステムの複雑さの高さを強調するために与えられた、ほんの一例である。図3に示されている実施形態は、本発明を限定するものとみなされるべきできではない。従って、エネルギーサブシステムの異なる装置がどのように接続されるかは、限定するものとみなされるべきではない。それらは、明確化のために与えられており、実際には、各エンジン部品は他の方法で接続することができる。
ここで、図3に示されている実施形態による電気エネルギーサブシステムの供給価格関数の線図SFD_1、需要価格関数の線図DFD_2、及び合計供給需要関数の線図ASDFD_2を示している、図4a、図4b及び図4cを参照する。図4aは、供給価格関数線図SFD_1を、オルタネータを表す供給価格関数Conv_1_SF、バッテリーを表す供給価格関数EI_Eb_SF、及び2つの供給価格関数Conv_1_SF;EI_Eb_SFが前述した通りに合計されている合計供給価格関数ASF_1と共に示している。
図4bは、需要価格関数の線図DFD_2をも多くの需要価格関数と共に示している;Conv_4_DFはA/Cを表しており、Conv_2_DF電動冷却ファンを表しており、EI_Eb_DFはバッテリーを表しており、Conv_3_DFはエアコンプレッサを表しており、かつEI_Cons_DFは電子制御装置とランプを表している。需要価格関数Conv_4_DF;Conv_2_DF;EI_Eb_DF;Conv_3_DF;El_Cons_DFの合計需要価格関数ADF_2もまた示されている。
供給価格及び需要価格の関数Conv_1_SF;El_Eb_SF;Conv_4_DF;Conv_2_DF;El_Eb_DF;Conv_3_DF;El_Cons_DFと、合計した関数ASF_1;ADF_2;ASDFD_2は、図2a、図2b及び図2cを参照しつつ説明したことによって得られる。
図から判るように、図4aの供給価格関数の線図SFD_1は、図2aの供給価格関数の線図SFD_1と同じである。しかしながら、図4bの需要価格関数の線図DFD_2は、図2bの対応する需要価格関数の線図DFD_1よりはるかに複雑である。これは、図3に示されているエネルギーシステムの複雑さが高いことによる。
実際の用途においては、エネルギーシステムはより複雑である。この独創的な概念を適用することにより、全エネルギーシステム内のエネルギー消費を如何にして最適化するかという問題を、各サブシステムのエネルギーコストを最小化するという問題に変形させることを可能にし、それは総最適化アルゴリズムの必要性を無くす。
最後に、図5はこの独創的な概念の実施形態の概略のフローチャートを示しており、最も重要な方法段階が強調されている。図5に示されているこの独創的な概念の実施形態は、エネルギーバッファを含んでいるエネルギーシステムに適用される。図5に示されている実施形態によると、この方法は3つの主な動作に分けることができる。方法の開始MI、方法の主な動作MMA、及び単位エネルギーバッファ価格の設定Eb_PSである。
単位エネルギーバッファ価格の設定Eb_PSは、単位エネルギーバッファ価格の再計算と更新プロセスEb_PRを連続的に行うことによって実行される。単位エネルギーバッファ価格は、例えばエネルギーバッファに蓄積されている現在のエネルギー量といった、エネルギーバッファに特有の多くのパラメータに依存する。単位エネルギーバッファ価格の再計算と更新プロセスEb_PRは、好ましくは第2のサンプル頻度S2に従って行われる。この独創的な概念の好ましい実施形態によると、単位エネルギーバッファ価格は、この独創的な概念の終端において保存することができる。
この方法の開始MIは、車両がイグニッションオフされた後で、この方法を開始するときに実行される。この独創的な概念の図示されている実施形態において、方法の開始Mlは、エンジン制御システム、好ましくは電子制御装置が、単位エネルギーバッファ価格取得プロセスEb_PAPに従って最新の単位エネルギーバッファ価格を取得することにより開始される。これは、この独創的な概念Eb_PRの以前の終了時に保存された単位エネルギーバッファ価格であり得る。取得した単位エネルギーバッファ価格は、初期値設定プロセスIVSPの時点tにおいて、各エネルギーサブシステムの最初の単位エネルギー価格として設定される。従って、この単位エネルギーバッファ価格は、時点tにおけるエネルギーサブシステムの最初に設定された単位エネルギー価格になる。
そのエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格の初期値としてその単位エネルギーバッファ価格を用いることには利点がある。エネルギーバッファのエネルギーバランスは、エネルギーサブシステムの完全なエネルギーバランスにとって重要であるからである。従って、そのエネルギーバッファを含んでいるエネルギーサブシステムの単位エネルギー価格を決定するときに単位エネルギーバッファ価格は重要であり、エネルギーサブシステムの最初の単位エネルギー価格は、如何なる複雑な計算を実行することなしに、合理的に正確なものになる。
設定された単位エネルギー価格は、次に、この方法の主な動作MMAの第1のプロセスに供給され、それは供給価格及び需要価格の関数のプロセスFDPの決定である。この方法の主な動作MMAは、好ましくは、第1のサンプル頻度S1に従って実行される。第1のサンプル頻度S1は第2のサンプル頻度S2より長いものとすることができ、従って、この方法の主な動作MMAは、単位エネルギーバッファ価格の設定Eb_PSよりも頻繁に実行することができる。
上述したように、図5に示されている実施形態によると、第1のサンプルについて、この独創的な概念が、時点tで、方法の開始MIにおいて開始されるときに、時点tにおいて、単位エネルギーバッファ価格の再計算及び更新プロセスEb_PRからの単位エネルギーバッファ価格が、エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格として用いられる。供給価格及び需要価格関数を決定するプロセスFDPは、時点tにおいて取得されたこれらの値と、時点tにおいて取得された他の関連する特定パラメータ用いて、時点t+nにおける各エネルギーサブシステムの供給価格関数及び需要価格関数を決定する。なお、nはサンプルの長さである。決定された供給価格関数及び需要価格関数は、続いて、時点t+nにおける各エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格を決定するために、単位エネルギー価格設定プロセスEPSPにおいて用いられる。この方法主な動作MMAの最終工程において、各エネルギーサブシステムの決定された単位エネルギー価格は、一つのエネルギーサブシステムから他のエネルギーサブシステムにどの程度のエネルギーを供給しなければならないかを決定するために、エネルギー変換プロセスECPにおいて用いられる。このエネルギー変換プロセスECPにおいて、時点t+nにおいて各エネルギーサブシステムについて決定された単位エネルギー価格は、この明細書において説明したように、可能なパワーの変換を決定するために用いられる。一つのエネルギーサブシステムの一つのエネルギー形態のパワーの、他のエネルギーサブシステムの他のエネルギー形態のパワーへの転送及び変換は、そのエネルギーサブシステムの共通のコンバータによって実行される。
各エネルギーサブシステムの時点t+nにおいて決定された単位エネルギー価格、並びに他のあり得る特定のパラメータは、その後、この方法の主な動作MMAにおける供給価格及び需要価格関数プロセスの決定FDPにフィードバックされる。
この方法が一旦開始されると、この主な動作MMAの方法と単位エネルギーバッファ価格の設定Eb_PSは、連続的に実行される。この主な動作MMAの方法は好ましくはサンプル頻度S1に従って、かつ単位エネルギーバッファ価格の設定Eb_PSはサンプル頻度S2に従って実行される。この方法を実行するときに、単位エネルギーバッファ価格の再計算及び更新プロセスEb_PRは、供給価格及び需要価格関数プロセスFDPに対し、更新された単位エネルギーバッファ価格をサンプル頻度S2に従って連続的に供給する。
図6は、著しく簡略化されたエネルギーシステムES_3の他の実施形態の概略図を示している。図6に示されているこの独創的な概念の実施形態によると、車両のエネルギーシステム内のエネルギーの流れを管理するこの独創的な概念は、その車両の2つの別個の状態の切り換えを制御するために用いられる。更に、2つの別個の状態の間の切り換えは、スタートストップ機能を追加するために用いられる。この独創的な概念のこの態様を、図6を参照しつつ説明するが、この独創的な概念のこの態様は、図1b及び図3に示すエネルギーシステムの例証的な実施形態に適用することもできる。
図示する実施形態において、エネルギーシステムES_3は、機械エネルギーサブシステムMe_2、電気エネルギーサブシステムEl_3、及び熱エネルギーサブシステムTh_4の、3つのエネルギーサブシステムを含んでいる。
機械エネルギーサブシステムMe_2は、図6に示されている実施形態によると、スタートストップ機能が与えられた内燃機関の形態の、機械エネルギー生産体、Me_Prod_SSを含んでいる。スタートストップ機能が与えられた内燃機関の形態の機械エネルギー生産体Me_Prod_SSは、以下において単純に内燃機関と呼ぶ。この内燃機関は、好ましくは、例えばディーゼル燃料といった燃料で作動する。更に、この機械エネルギーサブシステムは、エネルギーを変換するための第1コンバータConv_6、第2コンバータConv_7及び第3コンバータConv_8を含んでいる。
第1及び第3のコンバータConv_6;Conv_8と内燃機関は、内燃機関からコンバータConv_6;Conv_8に機械パワーを供給できるように接続されている。第2のコンバータConv_7は、第2のコンバータConv_7が電気エネルギーサブシステムEl_3のエネルギーバッファEl_Eb_2から電気エネルギーを供給できるように、かつ電気パワーを第2コンバータConv_7によって内燃機関に供給することができる機械パワーに変換できるように設けられている。図6の実施形態において、第2コンバータはスタータエンジンであり、内燃機関に供給される機械パワーは内燃機関をイグニッションオフした後で起動するために用いられる。第1コンバータConv_6は好ましくはオルタネータとすることができ、かつ第3コンバータConv_8は好ましくは冷却ファンとすることができる。
電気エネルギーサブシステムEl_3は、第1及び第2コンバータConv_6;Conv_7を機械エネルギーサブシステムMe_2と共有すると共に、電気的な消費体El_Cons_2とエネルギーバッファEl_Eb_2を追加で含んでいる。第1及び第2コンバータConv_6;Conv_7、電気的な消費体El_Cons_2及び電気的なエネルギーバッファEl_Eb_2は、電気エネルギーサブシステムEl_3の異なる部品Conv_6;Conv_7;El_Eb_2;El_Cons_2の間で電気パワーを供給できるように接続されている。電気的な消費体El_Cons_2は好ましくはランプ及び電子制御装置の形態とすることができ、かつバッファEl_Eb_2は好ましくはバッテリーの形態とすることができる。
熱エネルギーサブシステムTh_4は、第3コンバータConv_8を機械エネルギーサブシステムMe_2と共有しており、加えて熱エネルギーサブシステムTh_4は、好ましくはリターダの形態の熱消費体Th_Cons_3と、熱エネルギーバッファTh_Eb_4を含んでいる。第3コンバータConv_8、熱エネルギーバッファTh_Eb_4、及び熱消費体Th_Cons_3は、熱エネルギーサブシステムTh_4の異なる部品Conv_8;Th_Eb_4;Th_Cons_3の間で熱パワー供給できるように接続されている。
第1及び第3コンバータConv_6;Conv_8は、内燃機関により生産された機械パワーを、各エネルギーサブシステムEl_3;Th_4のエネルギーの形態のエネルギーに変換し、かつ第2コンバータConv_7は、電気エネルギーサブシステムEl_3からの電気エネルギーを機械パワーに変換する。
通常運転の間、つまり車両が通常運転するときに、内燃機関は燃料中に化学的に蓄積されているエネルギーを機械エネルギーに連続的に変換する。この機械エネルギーは主に車両を推進するために用いられるが、この機械エネルギーは、機械エネルギーサブシステムMe_2に接続されているエネルギーサブシステムEl_3;Th_4に対し、コンバータConv_6;Conv_8により機械エネルギーを供給するためにも用いられ、各エネルギーサブシステムEl_3;Th_4の各エネルギー消費体El_Cons_2;El_Eb_2;Th_Cons_3;Th_Eb_4に対しコンバータConv_6;Conv_8がエネルギーを供給できるようになっている。
図6に示されている実施形態を参照すると、このことは以下によって例証することができる。すなわち、機械エネルギーサブシステムMe_2を電気エネルギーサブシステムEl_3に接続するオルタネータの形態のコンバータConv_6が、スタートストップ機能が設けられている内燃機関の形態の機械エネルギー生産体Me_Prod_SSが生産した機械エネルギーを変換し、ランプ及び電子制御装置の形態の電気的な消費体El_Cons_2に対しコンバータConv_6が電気エネルギーを供給できるようになっているのである。
車両が作動する間は、適切に作動するために、ランプや電子制御装置に電気エネルギーを連続的に供給する必要がある。従って、内燃機関がイグニッションオフされると、ランプ及び電子制御装置にはどこか他の所から、好ましくはバッテリーの形態のエネルギーバッファEl_Eb_2から、電気エネルギーを供給する必要がある。バッテリーがどれだけ長い時間にわたってランプ及び電子制御装置に電気エネルギーを供給できるかは、バッテリーの現在の充電状態(SoC)に依存する。従って、ランプ及び電子制御装置がバッテリーからの電気パワーに依存する場合、バッテリーに蓄積されているエネルギーのレベルは低下し、最終的にSoCは予め定められた閾値より低くなる。この独創的な概念によると、このことは、オルタネータにより機械エネルギーから電気エネルギーに変換される機械エネルギーを、機械エネルギーサブシステムMe_2から電気エネルギーサブシステムEl_3に供給すべく、内燃機関の始動を誘発し、ランプと電子制御装置、好ましくはバッテリーにも、内燃機関に由来するエネルギーを供給できるようになっている。ランプと電子制御装置が必要とするよりも多い電気エネルギーが、内燃機関によって電気エネルギーサブシステムEl_3に供給される場合、余剰な電気エネルギーはバッテリーを再充電するために用いることができる。
内燃機関の始動は、図6に示した実施形態について述べたスタータエンジンである第2コンバータConv_7によって実行される。スタータエンジンは、内燃機関の始動を容易にするために、バッテリーからの電気パワーを必要とする。従って、上述した予め定められる閾値は、好ましくは、バッテリーのSoCが、内燃機関を始動させるべくスタータエンジンに十分なエネルギーを供給するのに充分であることを確実にするように、設定される。
上に開示する実施例は、著しく単純化されており、かつこの独創的な概念のこの実施形態の基本的な原理を強調すべく単に開示されるだけである。この実施形態によると、エネルギーサブシステムには、内燃機関が動いている限り内燃機関からエネルギーが供給される、多くの補助システムがある。内燃機関がイグニッションオフされると、これらの補助システムにはどこか他の所からエネルギーを供給する、例えばエネルギーバッファに蓄積されているエネルギーを供給する必要がある。エネルギーバッファに蓄積されるエネルギーには限界があり、いくつかの点において、このことは内燃機関の再始動を強制し得る。
簡単に言うと、図6に示されている実施形態によれば、このことは、バッテリーのSoCが低下するにつれてバッテリーからの電気パワーの価格が十分に高くなり、内燃機関を再始動させるのによりコスト効果的とする。ここで図7を参照すると、この独創的な概念の一実施形態のフローチャートが開示されているが、エネルギーシステム内のエネルギーの流れを制御することにより、車両の二つの別個の状態の間の切り換えを実行することができる。図7に示されている実施形態において、これらの2つの別個の状態は、以下において内燃機関と呼ぶ車両のスタートストップ機能が設けられている内燃機関が作動している第1の状態と、内燃機関がイグニッションオフされている第2の状態である。この方法は、サンプル頻度S3に従って実行される。S3は、他のサンプル頻度S1あるいはS2に等しく、あるいは異なるものとすることができる。
スタートストップ機能を含んでいる、独創的な概念のこの実施形態は、例えば赤信号での停車のように車両が一時的に停止するときに、あるいは車両が配達用の車両である場合に再発生する配達中の停車において実施されることが意図されている。従って、独創的な概念のこの実施形態は、車両の停止STOPにより開始される。車両が停止したときに、内燃機関はまだ動いていて、ドライバが即時の発進を要求する場合の即時の加速を可能にしている。
ある時点において、n個のエネルギーサブシステムは、そのn個のエネルギーサブシステムの補助システムに電気エネルギーを供給するために、内燃機関から特定の量の機械エネルギーを一斉に必要とする。少なくとも特定のエネルギー量を発生させるために内燃機関を作動させることは、特定のコストを発生させる。代わりに、そのn個のエネルギーサブシステムが、エネルギーシステム内のどこか他の所に由来する、例えばn個の各エネルギーサブシステムのエネルギーバッファから電気エネルギーが供給されることになると、このことは他の特定のコストを生み出すことになる。独創的な概念のこの実施形態の背後にある全体的な原理は、これらの2つの状態が互いに評価されることにある。この場合、この独創的な概念が切り換えを制御する異なる状態は、内燃機関が作動している状態と、内燃機関がイグニッションオフされている状態である。
車両が停止するときに、スタートストップ機能を含んでいるこの独創的な概念の第1車両状態決定動作1−VSD関数は、エンジンを作動させ続けるための一時的なコストC_Eng_onと、内燃機関から機械エネルギーが供給されるn個のエネルギーサブシステムにおいて瞬間的に消費されるエネルギーの予測コストn(C_ESS)計算する。
エンジンを作動させ続けるための一時的なコストC_Eng_onは以下により計算される:
ここでQ_Eng_onは内燃機関が瞬間的に供給するパワーである。このfuel_rate(Q_Eng_on)は、Q_Eng_onを供給するために必要な燃料の量である。従って、C_Eng_onはg/sで定められる。
Q_Eng_onは、好ましくは、例えば内燃機関といった生産体あるいはコンバータが、決定された単位エネルギー価格において供給するパワーの量を決定するための、先に述べたマーシャル均衡理論を用いることによって得ることができる。
この実施形態によると、内燃機関を含む機械エネルギーサブシステムの単位エネルギー価格は、Q_Eng_onを決定するために用いられることになる。
予測される正味コストn(C_ESS)は、内燃機関がイグニッションオフされた場合に、n個のエネルギーサブシステムについて、各エネルギーサブシステムが必要とするエネルギーのコストであり、次式に従って計算される:
ここで、p_ESS_engine_offは、内燃機関がイグニッションオフされたときの各エネルギーサブシステム内のエネルギーの価格であり、かつQ_ConvESSは、内燃機関が作動しているときに、各エネルギーサブシステムの機械エネルギーサブシステムが必要とするエネルギーの量である。従って、Q_ConvESSは、機械エネルギーサブシステムの共通のコンバータと各エネルギーサブシステムが、機械エネルギーから各エネルギーサブシステムのエネルギー形態に変換するエネルギーの量である。しかしながら、これは、予測される正味コストを如何に計算するかの一つの可能なアプローチであり、他の方法もまた可能である。n(C_ESS)は、g/sで定められる。
従って、n(C_ESS)は、内燃機関がイグニッションオフされる場合に、各エネルギーサブシステムに供給されるパワーを生産するためのコストを表す。Q_ConvESSは、好ましくは、前述したマーシャル平衡理論を用いることによって得ることもできる。
第1車両状態決定動作1−VSDの間、この実施形態においては内燃機関がイグニッションオフされている状態から内燃機関が作動している状態への切り換えを意味する、車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateもまた計算される。
車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateは、それらの間で切り換えられる車両の二つの独立した状態が何であるかに依存する。二つの別個の状態が二つの変速段である場合、車両の状態を切り換えるためのコストは、例えば変速によって生じる摩耗に依存するものとなり得る。二つの別個の車両の状態が、内燃機関がイグニッションオンである状態と内燃機関がイグニッションオフである状態である上記した実施形態について、車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateは、既に開示してきたように、次式に従って計算することができる:
ここでQ_starter_engineは、t_start_engineと呼ぶ、スタータエンジンが内燃機関を始動させるためにかかる秒で定める時間の間に、内燃機関を始動させるために用いるスタータエンジンの平均的な効力であり、kWで定められる。p_el_engine_offは、内燃機関をイグニッションオフするときの電気パワーの価格であり、グラム/kWhで定められる。また、t_pred_engine_offは、秒で定められる、車両が発進するまでに予測される残り時間であるC_SwEngStateは、グラム/秒で定められる。
その後、エンジンを作動させた状態に保つための一時的なコストC_Eng_onは、第1車両切り換え評価動作1−VSAにおいて、そのエネルギーサブシステムn(C_ESS)について予測されるコスト及びこの車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateと比較され、
の場合、内燃機関はイグニッションオンの状態のままとなり、かつ、
の場合、内燃機関はイグニッションオフされる。
第1車両切り換え評価動作1−VEAにより実行される評価が、内燃機関を作動させ続けるべきであると決定すると、第1車両切り換え評価動作1−VEAが後に続く第1車両状態決定動作1−VSDは、サンプル頻度S3に従って反復されることになる。
第1車両切り換え評価動作1−VEAにより実行される評価が、内燃機関をイグニッションオフしなければならないと決定すると、それに応じて内燃機関はイグニッションオフされることになる。
第1車両状態決定動作1−VSD及び第1車両切り換え評価動作1−VEAにより実行される評価を適用することは、トータルコストの視野からこのことが好ましい場合にだけ内燃機関はイグニッションオフされることになるという利点がある。
更にこの独創的な概念によると、内燃機関がイグニッションオフされていると、続いて、第2車両状態決定動作2−VSDが適用される。第1車両状態決定動作1−VSDによると、第2車両状態決定動作2−VSDにおいて、内燃機関がまだ作動している場合に内燃機関が発生させるコストとして計算されるエンジンを作動させ続けるための予測コストC_Eng_on、及びn個のエネルギーサブシステムにおいて一時的に消費されるエネルギーの一時的なコストn(C_ESS)の決定が実行される。エンジン作動させ続けるためのコストC_Eng_on、及び一時的なコストn(C_ESS)は、続いて第2車両切り換え評価動作2−VEAに送られ、
の場合、内燃機関はイグニッションオフのままとなり、かつ、
の場合、内燃機関はイグニッションオンとされる。
従って、一時的な状態と予測される状態の評価は、内燃機関がイグニッションオンにされる状態と内燃機関がイグニッションオフにされる状態について、実際に無関係である。それらの異なる状態の間で異なるものは、その切り換えが内燃機関のイグニッションオンあるいはイグニッションオフを意味する実施形態による、状態を切り換えるためのコストが、一つの切り換えにつき一つの切り換えコストが追加されることである。内燃機関を有する実施形態によると、この切り換えコストは内燃機関を起動するためにスタータエンジンを利用することに関連するコストであるが、他の実施形態においては、この切り換えのコストは、例えば変速によって生じる摩耗といった状態の切り換えに関連する他のコストとなり得る。この切り換えコストは、そのコストが実際に発生する状態の切り換えに対するコストとして、あるいは切り換え戻すときに最終的にコストを生じさせることになる状態の切り換えを実行するときのコストとして、追加することができる。図7に示されている実施形態において、これらの二つのアプローチのうちの後者が選択される。
第2車両切り換え評価動作2−VEAにより実行される評価が、内燃機関はイグニッションオフのままでなければならないと決定する限り、第2車両切り換え評価動作2−VEAが後に続く第2車両状態決定動作2−VSDは、サンプル頻度S3に従って反復される。
第2の車両切り換え評価動作2−VEAにより実行される評価が、内燃機関を始動させなければならないと決定すると、内燃機関はそれに応じてイグニッションオンとされる。車両の内燃機関を始動させると、車両は発進すべく設定されることになり、車両はドライバによる加速の要求に対しすぐに反応できるようになる。
内燃機関が始動される場合、第1車両状態決定動作1−VSDと第1車両切り換え評価動作1−VEAに従うこの方法の各段階は、サンプル頻度S3に従って反復される。しかしながら、車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateが、前述したことにより、車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateを経時的に増加させる時間依存パラメータを含んでいるので、エネルギーシステムの状態が全体として大幅に変化しない場合、内燃機関をもう一度イグニッションオフする見込みはない。内燃機関をイグニッションオンに戻すのが遅くなるほど、この独創的な概念のスタートストップ機能がエンジンを再びイグニッションオフにする傾向は小さくなる。
車両の内燃機関がイグニッションオフされているときに、ドライバが加速ARを要求することもあり得る。このことが生じた場合、この独創的な概念のスタートストップ機能は即座に覆されて内燃機関はすぐに始動され、車両は発進TOするように設定される。
上述した説明を考慮し、かつ図6に開示されているエネルギーシステムES_3の実施形態を参照すると、車両の一時的な状態から車両の予測される状態への切り換えを実行しなければならないかどうかを決定する全体的な方法は、図6に開示されているエネルギーシステムES_3に適用される。図6の実施形態において、一時的な状態は内燃機関をイグニッションオンする状態であり、かつ予測される状態は内燃機関がイグニッションオフされる状態である。従って、車両の状態の切り換えは、内燃機関をイグニッションオフしあるいはイグニッションオンすることを意味する。
図6のエネルギーシステムES_3の実施形態は、機械エネルギーサブシステムMe_2、電気エネルギーサブシステムEl_3、及び熱エネルギーサブシステムTh_4を含んでいる。
機械エネルギーサブシステムMe_2は、第1コンバータConv_6を介してエネルギーサブシステムEl_3に、かつ第3コンバータConv_8を介して熱エネルギーサブシステムTh_4に、電気エネルギーを供給することができる。
従って、図6のエネルギーシステムES_3の実施形態について図7の説明と共に前に開示したように、この独創的な概念の評価判定基準を適用することにより、以下の方程式を設定することができ:
エンジンを作動状態に保つために一時的なコストをもたらす。
電気エネルギーサブシステムEl_3及び熱エネルギーサブシステムTh_4についてのn(C_ESS)は、n=2である故に次式をもたらす:
及び、
ここで、Q_ConvEl及びQ_ConvThは、内燃機関が作動しているときに各エネルギーサブシステムEl_3;Th_4のコンバータにより、各エネルギーサブシステムEl_3;Th_4のエネルギー形態のエネルギーに変換される、機械エネルギーの量である。例えば電気エネルギーサブシステムEl_3について、これは、オルタネータによって電気エネルギーに変換される機械パワーの量とすることができる。従って、C_El及びC_Thは、内燃機関がイグニッションオフされるときに必要な電気パワー及び必要な熱パワーの値あるいはコストとみなすことができる。車両の状態を切り換えるためのコストは、以下に従って決定される:
ここで、
の場合、内燃機関はイグニッションオンの状態のままとなり、かつ、
の場合、内燃機関はイグニッションオフにされる。
Q_Eng_on、Q_El及びQ_Thは、好ましくは、前述したマーシャル均衡理論を用いることによって得ることができる。しかしながら、Q_Eng_on、Q_El及びQ_Thが他の手段によって得られる場合、少なくとも二つの別個の状態の間の切り換えを管理するこの独創的な概念もまた適用される。
内燃機関がイグニッションオフされているときに、この独創的な概念によると、以下の評価が連続的に実行される。ここで、
の場合、内燃機関はイグニッションオフのままとなり、また、
の場合、内燃機関は再びイグニッションオンの状態に戻る。
ここで、この独創的な概念の一実施形態の機能を開示する図8を参照すると、車両の停止が予測される三つの時点における、エンジンを作動状態に保つためのg/kWhで定められるコストと、kWで定められる有用なパワー取り出しとの間の関係が示されている。エンジンを作動させ続けるためのコストがY軸に示され、有用なパワー取り出しがX軸に示されている。
先に説明したように、車両の状態を切り換えるためのコストC_SwEngStateには、車両が発進するまでの残りの予測時間が含まれる。このパラメータは、例えば、異なる算出方法を用いることや、車両のタイプあるいは予測されるルートに依存する、又は統計的な情報をベースとし得る予め定められる値を設定することといった、様々な方法で決定することができる。電子制御装置に対し、例えばWi−Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)を用いて交通信号からそのような情報を供給することもまた可能である。
図8は、この独創的な概念の一実施形態について、パワー取り出し対エンジンを作動させ続けるためのコストの線図PPDを示しており、ここで第1、第2、及び第3の予測される残り停止時間のパワー価格関数がStopT−1;StopT−2;StopT−3で示されている。図示の実施形態において、第1の予測される残りの停止時間StopT−1は、予測される残りの停止時間が5秒であることを表しており、第2の予測される残りの停止時間StopT−2は、予測される残りの停止時間が15秒であることを表しており、かつ第3の予測される残りの停止時間StopT−3は、予測される残りの停止時間が60秒であることを表している。
図8に示すように、車両が発進するまでの予測時間が長いほど、エンジンを作動させ続けるための価格は高いものとなる。このことは合理的である。車両が静止していると予測される時間がより長くなるほど、内燃機関が作動しているときに発生させる機械パワーを充分に利用できないおそれがより高くなるからである。それに対して、車両が発進するまでの予測時間が短いほど、車両が静止している間にエンジンを作動させ続けるための価格は低いものになる。
内燃機関がイグニッションオフされると、内燃機関は、好ましくはバッテリーから電気パワーが供給されるスタータエンジンを用いて始動されることになる。前に開示したように、この独創的な概念によると、車両の状態を切り換えるためのコストは、予測される状態のコストを計算するときに一つのコストとして追加される。従って、この独創的な概念がどのような状態の間での切り換えの制御を意図しているかとは無関係に、一時的な状態から予測される状態へと状態を切り換えることに対し特有の抵抗があることになる。
また、本発明の一実施形態によると、車両の状態を切り換えるためのコストは、車両が発進するまでに予測される残りの時間によって切り換えコストが除算される点において時間に依存するものになる。これは、車両が発進するまでの予測される残りの時間が短いほど、車両の状態を切り換えるためのコストの影響がより大きくなることを意味している。これは、予測される残りの時間が短くなるほど、この独創的な概念が切り換えを開始する傾向が小さくなることを意味する。
この独創的な概念のこれらの二つの態様は、切り換えが頻繁に発生し過ぎることに対し反対方向に作用する。
内燃機関にスタートストップ機能が設けられている一実施形態においては、エンジンをイグニッションオフした後に内燃機関を始動するためのコストに、エンジンをイグニッションオンする代わりにエンジンをイグニッションオフするときの追加のコストが加算されることを示すことになるこのことは、この独創的な概念が車両の状態を切り換えようとする傾向が小さくなるという利点があり、この実施形態においては、内燃機関がイグニッションオフされる傾向が小さくなることを示す。
パワー取り出しの要求が小さいほど、エンジンを作動させ続けるためのコストは高くなる。パワー取り出しの要求がゼロに近づくに連れて、エンジンを作動させ続けるための価格は無限大となる。従って、エネルギーサブシステムのコンバータにより極めて限られた量のパワーが内燃機関に要求される場合、エネルギーサブシステムの消費体にこの限られた量のパワーを供給するために、この限られた量のパワーをまさしく供給すべく内燃機関を作動させ続けるコストは高くなり、また、例えば一つ存在する場合には各エネルギーサブシステムの、あるいは他のエネルギーサブシステムのエネルギーバッファが低コストに供給できることになる。
ここで図9を参照すると、シフトダウンを回避すべく変速段の選択を制御する、独創的な概念の一実施形態の概略のフローチャートが開示されている。この独創的な概念の実施形態は、エネルギーシステムを含んでおり、かつそのエネルギーシステムの機械エネルギーサブシステムが内燃機関を含んでいる車両について実行される。
この独創的な概念によると、電子制御装置(ECU)あるいはその他は、この独創的な概念を連続的に実行するMe_In。この方法を実行する間、所定時間内にやがて現れる移動経路に関する情報は連続的にアクセスされるlnf_Acc。次に、やがて現れる移動経路に関して供給される情報は、その移動経路が上り勾配を含んでいるかどうかを決定できるように分析されるRo_An。
そのような上り勾配が検出されない場合、やがて現れる移動経路に関する情報にアクセスする方法は、次にこの方法が実行されるときに反復されるMe_In。
やがて現れる上り勾配が検出されると、その上り勾配を運転するために内燃機関が必要とするパワーが決定されるEn_Req。また、現在の変速段と現在の補助負荷で運転するときに、その上り勾配を登坂するために最大限に利用可能なパワーが決定されるEn_Ava。
その上り勾配を運転するために必要な決定されたパワーEn_Reqと決定された最大限に利用可能なパワーEn_Avaは、その車両の推進のために利用可能なパワーがその上り勾配を運転するために充分であるかを決定するために比較されるEn_Comp。
その場合、やがて現れる移動経路に関する情報にアクセスする方法は、次にその方法を実行するときに反復されるMe_In。
変速無しにその上り勾配を運転するために利用可能なパワーが不十分であると決定されると、低い変速段を選択することのペナルティコストが決定される。上述したように、このペナルティコストの量は、上り勾配の長さ及び/又は険しさに依存して決定されるC_Det。続いて、そのペナルティコストが機械エネルギーの単位エネルギー価格に追加されると、前に開示してきたことに従って車両のエネルギーシステム内のエネルギーの流れを管理するこの独創的な概念を次に実行するとMe_In、機械エネルギーは実質的により高い単位エネルギー価格となる。
主要なエネルギー源として内燃機関を含む機械エネルギーサブシステムからの機械エネルギーについて単位エネルギー価格を上昇させることにより、エネルギーシステム内のエネルギーの分配とエネルギーの流れはそれに応じて自動的に変化する。
この独創的な概念によると、機械エネルギーの単位エネルギー価格を操作することによって機械エネルギーの利用が影響を受け、車両を推進するためにより多くの機械パワーが利用可能となる。
図10を更に参照すると、バス100として図示される車両が与えられている。このバス100は、図示の実施形態においては、複数の人104を輸送するための乗員区間102として設けられた第1のエネルギーバッファを備えている。温度センサ106は、乗員区画102の内部温度をサンプリングすべく乗員区画102の中に配置されている。バス100の外側の温度をサンプリングするために屋外温度センサ108を設けることもできる。このバス100には、加えて、乗員区画102の内部の温度を調整すべく構成された機械式の空調ユニット110が設けられている。この機械式の空調ユニット110は、動力伝達装置/内燃機関(ICE)112に作動的に接続されている。機械式の空調ユニット110及び動力伝達装置/内燃機関112は共同でパワーコンバータを形成している。動力伝達装置/内燃機関112はまた、バス100を推進すべく構成されている。
更に、バス100には、図示の実施形態においては、内燃機関110に作動的に接続された燃料タンク114として設けられている、第2エネルギーバッファが設けられている。更にまた、バス100には、例えばマイクロプロセッサ、電子制御装置他を含む、典型的に演算機能を備える車両システム制御装置116が設けられている。車両システム制御装置116は、温度センサ106,108、空調ユニット110、内燃機関112及び(例えば燃料タンク116内の燃料の量を決定するために)燃料タンク114に接続されると共に、例えば空調ユニット110や内燃機関112の作動を制御すべく構成されている。
上述したように、乗員区画102は、バス100の作動に基づいてそのエネルギーレベルを高低させることができる第1のエネルギーバッファを形成している。本実施例に関して、乗員区画102内部の温度は、バス100が作動している間に、典型的に乗員区画102の外部の温度、乗員区画102の内部の人々104に基づいて、かつ空調ユニット110の作動に基づいて、上下させることができる。暖かい環境において、乗員区画102の外部温度は乗員区画102の内部の温度を典型的に高め、かつ空調ユニット110は乗員区画102の内部温度を低下させる。機械式の空調ユニット110の作動は、本実施形態においては、動力伝達装置/内燃機関112から得られるエネルギーに基づくエネルギーを必要とする。
動力伝達装置/内燃機関112で利用可能なエネルギーは、例えば第2エネルギーバッファ、すなわち(例えばガソリンあるいはディーゼルを保持する)燃料タンク114に蓄積されている燃料から変換される。同様に、上記したように、第2のエネルギーバッファのエネルギーレベルは、バス100の作動に基づいて高低させることができる。内燃機関112について、燃料タンク114のエネルギーレベルは、通常はバス100の作動の間に低下する。しかしながら、第2バッファは、例えばバッテリー、スーパーコンデンサ等の電気的な貯蔵手段として実施することもでき、そのエネルギーレベルはバス100の作動の間に高低させることができる。例えば、バス100は、(例えば下り坂を進むときに)エネルギーを回生すべく構成されたハイブリッドバスとすることができ、回生されたエネルギーは第2バッファに蓄積することができる、第2バッファは、機械エネルギーを蓄積すべく、例えばフライホイールとして構成することもできる。
バス100が作動する間、車両システム制御装置116は、温度センサ106、108を用いて、乗員区画102の内部及び外部の温度をそれぞれ決定する。通常の実施に関しては、乗員区画102の内部の温度は、予め定められた温度範囲、例えば18〜23℃の間で変動することが許容される。本実施に際して、車両システム制御装置116は、乗員区画102についての現在のバッファ比率を決定する。乗員区画102についての現在のバッファ比率は、内部温度が予め定められた温度範囲内にあると決定されるかどうかに基づく(すなわち、温度センサ106からのデータに基づく)ものである。
乗員区画102についての現在のバッファ比率が一旦決定されると、乗員区画102の内部の現在のバッファ比率を増加させるべきかどうか、すなわち乗員区画102の内部の温度を低下させるべきかどうか、を決定することができる。この決定は、乗員区画102についての現在のバッファ比率と、パワーコンバータを用いて第2エネルギーバッファに蓄積されているエネルギーからエネルギーを発生させるためのコストとに基づくものである。本実施形態の文脈において言うと、このコストは、燃料タンク114に蓄積されているエネルギーを、動力伝達装置/内燃機関112及び乗員区画102を冷房するための機械式空調ユニット110を用いて変換するプロセスに基づくものとなる。
燃料タンク114に蓄積されている燃料からエネルギーを発生させるためのコストは、典型的に、パワーコンバータの効率及び第2エネルギーバッファに蓄積されているエネルギーの価値に更に基づくものとなる。本実施形態おいて、その効率は、動力伝達装置/内燃機関112及び機械式空調ユニット110の全体効率に基づくものとなる。従って、第2エネルギーバッファに蓄積されているエネルギーの価値は、(例えば1単位当たりの)燃料コストに基づくものとなる。
本実施形態においては、乗員区画102に蓄積されているエネルギーを考慮して更なる価値が決定される。従って、燃料タンク114に蓄積されている燃料の価値と乗員区画102の内部の温度の価値との間の関係を見い出し得ることになる。この関係に従うと、本実施形態においては、これらの価値の間に平衡を見い出すことが可能である。すなわち、温度を低下させるためのコストが「高い」場合、空調ユニットは起動されないことになる。理解されるように、乗員区画102の外部の温度に基づく、乗員区画102の内部の温度を高めるための「コスト」があることになり、そのコストはその温度が温度範囲の上限により近いときに高くなる。従って、このコストは、乗員区画102の内部で温度を下げるべく空調ユニット110を作動させるためのコストと比較される。
従って、例えばバス100の作動に依存する機械エネルギーについてのコストと区別することができる。バス100が暖かい気候において丘の多い地形を移動しているという、簡略化された実施例において、機械エネルギーのコストは、上り坂を進行するときには(比較すると)高く、下り坂を進行するときは(比較すると)低いものとみなすことができる。このように、パワーコンバータの効率は、下り坂を進行するときには、上り坂を進行するときに比較してより効率的であるとみなすことができる。具体的には、下り坂を進行するときに乗員区画102を冷やすために必要な燃料の量は、上り坂を進行するときに比較して、より少ないものになる。
空調ユニットを作動させるためのコストは、典型的に、上り坂を進行するときよりも、下り坂を進行するときのほうが低い。乗員区画102の内部の温度が一定なときに、このことは、上り坂を進行するときにではなく、下り坂を進行するときに空調ユニット110を作動させることに帰着し得る。従って、上り坂を進行するときに比較して(低コストな)下り坂を進行するときに、第1エネルギーバッファ(すなわち乗員区画102)にエネルギーを供給することが有利となり得る。
上記は、本発明の概念を実施するための一つの実施例である。上記のように、例えばバッテリー、コンデンサあるいはフライホイールといった、他の車両要素をバッファとして機能させることができる。従って、上の議論は、例えば、第1のエネルギーバッファが(乗員区画102であることに代えて)バッテリーである場合も、等しく関連する。加えて、第1及び第2のエネルギーバッファより多くのものが設けられている「複数段階の実施」に関して、本発明の概念を適用することができる。
例えば、第1バッファはバッテリーとすることができ、かつ電動空調ユニットをそのバッテリーに追加的に接続することができる。このように、本発明の概念は、バッテリーを「充電する」ための機械エネルギーに関する第1段階において、かつバッテリーから電動空調ユニットにエネルギーを供給する第2段階において適用することができる。すなわち、内燃機関112と、燃料タンク114に蓄積されている燃料をバッテリーの充電に用いる電気エネルギーに変換する発電機(図示せず)との間に、コストの関係を見いだすことになる。この実施例において、バッテリーは第1エネルギーバッファとして機能し、内燃機関112と発電機はパワーコンバータとして機能し、かつ燃料タンク114は第2エネルギーバッファとして機能する。第2の段階においては、本発明の概念により、乗員区画102は第1バッファとして機能し、電動空調ユニットはパワーコンバータとして機能し、かつバッテリーは第2バッファとして機能する。
ここで留意されるべきことは、選択的に、その上を車両が進行する道路の地形に関する情報を更に含みうることである。そのような情報は、例えば、時には車両についてeHorizonと称される、やがて現れる上り坂あるいは下り坂の部分に関する情報、その他を含むことができる。このように、地形/eHorizonは、本発明により、パワーコンバータにより供給されるエネルギーを用いて第1エネルギーバッファの現在のバッファ比率を高めるべきかどうかの決定に含めることができる。例えば、車両が(機械的に及び/又は電気的に作動する)空調ユニットを含んでいる実施例に関して、このことは、空調ユニットを上り坂の部分ではなく下り坂の部分において起動させるという、車両システム制御装置による決定に帰着し得る。すなわち、やがて現れる下り坂の部分に区分に関する情報を車両が有しているので、(コストの観点から)下り坂の部分まで待つことが有利であり得る。従って、本発明の一つの可能な実施形態においては、第1エネルギーバッファについて予め定めるバッファ範囲を動的なものとすることが好ましい。このことは、上の実施例においては、下り坂の部分に達すると温度を低下させるためのコストが比較してより低くなるので、短い期間にわたって温度が範囲を上回る(例えば23℃を超える)ことを許容できることに帰着し得る。
加えて、本開示の制御機能は、既存のコンピュータプロセッサを用いて、あるいはこの目的あるいは他の目的のために組み込まれた適切なシステムの専用コンピュータプロセッサにより、又はハードウェアに組み込みのシステムにより、実行することができる。本開示の範囲内の実施形態には、その上に蓄積されて機械によって実行可能な命令あるいはデータ構造を保持しあるいは有するための機械可読媒体を含むプログラム製品が含まれる。そのような機械可読媒体は、汎用あるいは専用のコンピュータ又はプロセッサを有する他のマシンによりアクセスすることができるあらゆる利用可能なメディアとすることができる。例えば、そのような機械可読媒体には、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD―ROMあるいは他の光学的ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置あるいは他の磁気記憶装置、又は機械によって実行可能な命令あるいはデータ構造の形態の所望のプログラムコードを保持しあるいは格納するために用いることができると共に汎用あるいは専用のコンピュータ又はプロセッサを有する他のマシンによりアクセスすることができる任意の他の媒体、を含めることができる。情報が、ネットワークあるいは他の通信接続(ハードウェア組み込み、無線、あるいはハードウェア組み込みと無線の組合せ)によりマシンに転送されあるいは供給されるときに、そのマシンはその接続を機械読み取り可読媒体として適切に見る。従って、そのようなあらゆる接続も、機械読み取り可読媒体と適切に称される。上記の組合せもまた、機械可読媒体の範囲に含まれる。機械によって実行可能な命令には、例えば、汎用コンピュータ、専用的コンピュータあるいは専用処理マシンに一つの機能あるいは機能グループを実行させるための命令及びデータが含まれる。
図面が順序を示し得るにもかかわらず、それらの段階の順序は、描かれているものとは異なるものとすることができる。また、二つあるいはより多くの段階は、同時にあるいは部分的な同時発生によって実行することができる。そのような変形は、選択されたソフトウェア及びハードウェアシステムに、かつデザイナーの選択に依存する。全てのそのような変形は、本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウェアの実行は、様々な接続段階処理段階、比較段階及び決定段階を達成するための規則ベースのロジック及び他のロジックの、標準的なプログラミング技法によって達成することができる。加えて、その特定的に例証する実施形態を参照しつつ本発明を説明してきたが、多くの異なる変更、変形及び同類のものは、当業者にとって明らかとなる。更に、単一のユニットは、請求の範囲に列挙されているいくつかの手段の機能を実行することができる。請求の範囲において、括弧の間に配置されている如何なる参照符号も、請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。更に、請求の範囲において、「含む」という用語は他の要素あるいは段階を除外せず、また不定冠詞「a」あるいは「an」は複数であることを除外しない。
開示された実施形態の変形は、請求の範囲に記載された発明を実施する際に、図面、開示及び添付の請求の範囲の検討により、当業者(skilled addressee)が理解しかつ達成できるところである。本発明が好ましい実施形態に限定されないことは、当業者が理解するところである。