以下、本発明の空中像形成装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の態様)
図1に示すように、本発明の一実施形態の第1の態様の空中像形成装置11は、少なくとも表示部20、遮光部30、透光結像部40、反射部50を備え、さらに補助遮光部60を備えている。
表示部20は、平坦な床面(基準面)101に立てられた表示面28を有し、偏光方向が第1の向きP1である光(第1光)71を表示面28から出射する。本明細書では、床面101に平行な方向且つ光71の進行方向をZ方向とし、表示部20に近い側を手前側、後述する空中像91及び観察者に近い側を奥側という。また、Z方向に直交し且つ床面101に対して近接離間する方向をY方向とし、床面101に近い側を手前側、床面101から遠い側を奥側という。また、Y方向及びZ方向に直交し且つ床面101に水平な方向をX方向とし、Z方向の手前側から奥側に向かって見たときに左側を手前側、右側を奥側とする。
表示部20は、液晶ディスプレイ21で構成されている。液晶ディスプレイ21は、バックライト光源と、バックライト光源のZ方向の奥側において2枚の偏光板23,24の間に、さらに2枚のガラス基板等で挟まれた液晶25を備えている。液晶25の動きと偏光板23,24の偏光方向との組み合わせによって、バックライト光源から出射される光の透過量が制御される。液晶ディスプレイ21では、X方向及びY方向に複数の画素が配列し、各画素に対してカラーフィルタや薄膜トランジスタが配置されている。図1では、液晶ディスプレイ21の構成のうち、偏光板23,24及び液晶25の層のみ示され、その他の構成は省略されている。
空中像形成装置11では、液晶25は、ツイストネマティック(twisted nematic:TN)液晶25−1である。TN液晶25−1の長軸は、X方向及びY方向を含むXY面内で回転しており、電界がON状態になるとZ方向に沿う。図2に示すように、偏光板24からは、偏光方向がX方向及びY方向に対して略45°傾いた光71がZ方向(第1光の進行方向)に沿って出射する。光71の偏光方向は、X方向及びY方向に対して略45°傾いた第1の向きP1であり、Z方向の手前側から奥側に向かって見たときに床面101を中心として非対称である。なお、図2及び後述する図10では、偏光方向及び像の向きをわかりやすく示すために、Y方向において略同じ位置に配置又は形成される構成であっても紙面の上下方向にずらして模式的に示している。
図1に示すように、第1反射部50は、Z方向において表示部20より奥側の床面101に沿って設けられている。第1反射部50、表示部20から照射される光71をZ方向の奥側に向けて光(第2光)72として反射させる反射面(第1反射面)51を有する。反射部50は、XZ面に拡がる板状の鏡52で構成されている。反射面51は、Y方向において鏡52の床面101に接する側とは反対側に向けられている。鏡52は、Z方向の手前側且つY方向の表示部20の先端側から斜めに入射する光71を、入射角と同じ反射角で、Z方向の奥側且つY方向の表示部20の先端側に反射する。光72の偏光方向は、図2に示すように第1の向きP1が反射面51を中心として折り返された第2の向きP2になっている。即ち、第2の向きP2は、X方向に対して第1の向きP1と同じ側に略45°傾き、Y方向に対して第1の向きP1とは反対側に略45°傾いている。
遮光部30は、Z方向において表示部20より奥側の床面101に設けられている。遮光部30は、光71を遮蔽し且つ光72を透過させる。図1及び図2に示すように、遮光部30は、Z方向の手前側から奥側に向かって見たときに偏光方向が第1の向きP1に直交する(第1の向きとは異なる)第2の向きP2である偏光板31を備えている。
図1に示すように、透光結像部40は、Z方向において第1反射部50より奥側の床面101に立てられ、少なくとも光72を所定の方向に透過及び結像させる。空中像形成装置11では、透光結像部40は、Z方向において遮光部30より手前側の床面101に立てられ、遮光部30に接している。
空中像形成装置11では、透光結像部40は、マイクロミラーアレイプレート(micro-mirror array plate:MMAP、再帰透過光学素子)41で構成されている。MMAP41は、Y方向において所定の間隔をあけて配置された複数のマイクロミラー42を備えている。マイクロミラー42は、XY面に延在している。図3に示すように、Y方向で隣り合うマイクロミラー42同士は、互いに平行になっている。Y方向において隣り合うマイクロミラー42−1,42−2の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101側又は床面101から離れた側から所定の入射角で入射する光は、同じ角度でZ方向の奥側且つT方向の入射時と同じ側に入射角と同じ角度の反射角で反射する。即ち、MMAP41は、入射する光を再帰透過させる。
補助遮光部60は、Z方向において透光結像部40より奥側の床面101に立てられている。補助遮光部60は、ルーバーフィルム(louver film:LF)61で構成されている。LF61は、Y方向において所定の間隔をあけて配置された複数の遮蔽素子62を備えている。遮蔽素子62は、XY面に対してZ方向の奥側に進むにしたがって下降するように傾斜している。Y方向で隣り合うマイクロミラー42同士は、互いに平行になっている。Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101側から、Z方向の奥側且つ床面101から離れる側に向けて入射する光72−2は、遮蔽素子62によって拡散又は吸光され、Z方向において遮蔽される。一方、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101かな離れている側から、Z方向の奥側且つ床面101に近づく側に向けて入射する光72−1は、そのまま直進し、遮蔽されない。
少なくともZ方向の補助遮光部60より奥側の床面(第2反射部)101は、光72を反射する。ここで、光72を反射するとは、略100%の光72を反射することに限定されず、観察者が視認可能な空中像91を形成可能な程度に光72を反射することを意味する。床面101は、大理石の床面や光沢が出るようにコーティングされた床面で構成されている。
上述の各構成を備える空中像形成装置11では、液晶ディスプレイ21の各画素から光71が出射されると、Z方向の手前側から奥側に進むにしたがってY方向において床面101に近づく光71は、反射面51で反射される。反射面51で反射される光72は、表示部20の虚像81から出射される光72としてふるまう。図2に示すように、光72の偏光方向は、第1の向きP1を床面101を中心として床面101の反対側に折り返した向きに相当し、第2の向きP2になる。虚像81では、液晶ディスプレイ21で表示される画像5が反射面51を中心として反転する。
図1に示すように、MMAP41に入射する光71−1,72−1は、MMAP41によって再帰透過する。但し、図3に示すように、Y方向で隣り合うマイクロミラー42−1,42−2の間に、床面101に対して浅い入射角でZ方向の手前側且つY方向の床面101側又は床面101から離れた側から入射する光71−2,72−2は、MMAP41を透過する。浅い入射角とは、マイクロミラー42−1,42−2のZ方向に沿う反射面に対して、マイクロミラー42−1のZ方向の手前側の端縁とマイクロミラー42−2のZ方向の奥側の端縁とを結ぶ対角面がなす角度より小さいことを意味する。図2に示すように、MMAP41で再帰反射された後でも、画像5の向きは、虚像81の向きと同じになっている。
MMAP41によって再帰反射される光71−1,72−1及びMMAP41を透過する光71−2,72−2は、偏光板31に入射する。図2に示すように、偏光板31の偏光方向は光71の偏光方向と直交しているので、偏光板31によって光71が遮断される。一方、偏光板31の偏光方向は光72の偏光方向と平行になっているので、光72は偏光板31を透過する。
偏光板31を透過する光72は、LF61に入射する。光72のうち光72−1は、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101から離れている側から、Z方向の奥側且つ床面101側に向けて入射する。図3に示すように、光72−1は、進行方向を変えずに、遮蔽素子62同士の間を通過し、LF61から出射される。一方、光72−2は、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101側から、Z方向の奥側且つ床面101から離れる側に向けて入射するので、遮蔽素子62によって拡散又は吸光され、遮断される。
図1に示すように、LF61を透過する光72−1は、床面101で反射し、空中像91を形成する。Z方向の手前側且つ床面101から、Z方向の奥側且つY方向において表示部20と遮光部30と透光結像部40と反射部50と同じ側に床面101から離れる方向に、空中像91が視認される。図2に示すように、MMAP41で再帰反射された後では、画像5の向きは、虚像81における向きとは反転している。即ち、LF61から出射される光72−1を床面101で反射させて空中像91を形成する場合には、液晶ディスプレイ21で画像5の向きを、X方向を中心に反転させる必要はなく、空中像91と同じ向きにすることができる。
以上説明した第1の態様の空中像形成装置11によれば、表示部20、遮光部30、透光結像部40、反射部50及び補助遮光部60からなる全ての構成要素が床面101に対してY方向の同じ側に配置できる。このことによって、テーブル面に限らず、床面101をはじめとするあらゆる既存の面を基準面として、既存の面に加工や工事を施すことなく、空中像91を形成できる。また、空中像形成装置11によれば、遮光部30を備えるので、表示部20から出射され且つZ方向の奥側で観察者に直接届き得る光71を、Z方向の空中像91の形成位置より手前側で遮断できる。このことによって、観察者に対して表示部20から出射される光71を直接視認させずに、空中像91のみを視認させることができる。
また、空中像形成装置11によれば、遮光部30が偏光板31で構成されているので、1枚の板状の偏光板31を用いて光71を容易に遮蔽できる。また、空中像形成装置11の小型化を図ることができる。
また、空中像形成装置11によれば、透光結像部40はMMAP41を備え、Z方向の透光結像部40より奥側の床面101は光72−1を反射させる。このことによって、空中像91の基端を表示部20及び透光結像部40の各基端と同じく床面101に合わせ、空中像91を床面101に対して表示部20、遮光部30、透光結像部40及び反射部50とY方向の同じ側に形成できる。即ち、空中像91を床面101上で容易に形成できる。また、空中像形成装置11のY方向の大きさを抑え、空中像形成装置11の小型化を図ることができる。
<空中像形成装置11の変形例>
<<偏光板31の位置>>
空中像形成装置11では、遮光部30と透光結像部40と補助遮光部60のそれぞれとして、偏光板31とMMAP41とLF61が用いられている。これらの光学素子の組み合わせを用いる場合、Z方向において手前側から奥側に向かってMMAP41、LF61の順にこれらが配置される。この順に配置されないと、空中像91を形成すべき光72がMMAP41に入射する前にLF61によって拡散又は吸光されてしまい、空中像91が形成されない。
偏光板31は、Z方向においてMMAP41の手前側に配置されてもよく、空中像形成装置11のようにMMAP41とLF61との間に配置されてもよい。一方、偏光板31は、Z方向においてMMAP41の手前側か、MMAP41とLF61との間の何れかに配置される。このような配置によって、表示部20から出射され且つ反射部50で反射されない光71が偏光板31で遮蔽された後に光72のみがMMAP41で再帰透過される、又は空中像形成装置11のように光71,72の双方が再帰透過された後に表示部20から出射され且つ反射部50で反射されない光71のみが偏光板31で遮蔽される。偏光板31がZ方向においてLF61の奥側に配置されると、表示部20から出射され且つ反射部50で反射されない光71が偏光板31で遮蔽する前にLF61で拡散する、又は光71の位相がずれてしまう。そのため、光71の偏光方向が第1の向きP1ではなくなり、結果的に光71が偏光板31で遮蔽されずに観察者に視認される虞がある。
<<MMAP41の傾きと空中像91の位置>>
Z方向において、MMAP41に対する液晶ディスプレイ21の距離及び床面101からのY方向の距離は、少なくとも光72がマイクロミラー42−1,42−2の間に斜め方向から入射可能且つ、マイクロミラー42−1,42−2の何れか一方によって反射可能である範囲で適宜調節できる。この範囲は、主に、Z方向のマイクロミラー42の大きさとY方向におけるマイクロミラー42−1,42−2の間隔によって決まる。
図4に示すように、空中像形成装置11において、床面101に接する基端を中心としてMMAP41の先端をZ方向の手前側に側面視でY方向に対する角度θで傾斜させる場合を想定する。図4から図9までの各図面では、MMAP41の傾きと空中像91が改正される位置との関係をわかりやすく示すため、床面101、液晶ディスプレイ21、虚像81、MMAP41、空中像91のみが簡略化して示され、これら以外の空中像形成装置11の構成の図示は省略されている。
図4から図9までに示す各構成では、図1に示す構成と同様の原理に基づき、光72の経路の始点D1−kと経過点D2−kとの長さと経過点D3−kと経過点D4−kとの長さが等しくなる位置に空中像91が形成される。kは、任意の自然数を表す。MMAP41がZ方向の手前側へ角度θで傾斜することによって、空中像91はZ方向の奥側に少し傾く。ここで、角度θについては、45°<θ<90°とする。光72のMMAP41への入射角γが0°<γ<θであれば、光72が床面101で反射し、空中像91をZ方向におけるMMAP41より奥側且つ床面101から立ち上がるように形成できる。但し、この場合、角度γについては、0°<γ<2θ−90°の条件を考慮している。
図4に示す角度αを導入し、床面101に基端が接してY方向に立ち上がる空中像91を得る条件を考えると、α+γ<θの関係が満たされる必要がある。言い換えれば、α+γ≧θの条件が成立すると、Y方向において床面101の近くを進行する光72がMMAP41で床面101から離れる側に再帰透過する。図5に示すように、MMAP41から出射する光72が床面101に到達せずに床面101から離れて結像し、空中像91を形成する。そこで、空中像91を床面101で立つように形成するためには、0<γ、α=90−θという条件が導かれる。
図6に示すように、角度φが45°以上になると、図5に示す構成と同様に、MMAP41から出射する光72が床面101では反射せずに床面101から離れて結像し、空中像91−kが形成される。しかしながら、空中像91−kをY方向においてMMAP41の床面101側とは反対側で視認できる。Z方向における液晶ディスプレイ21−kの基端とMMAP41の基端との距離が長くなるほど、空中像91−kはZ方向の手前側かつY方向の床面101から離れる側に形成される。
一方、図7及び図8に示すように、空中像形成装置11において、床面101に接する基端を中心としてMMAP41の先端をZ方向の奥側に側面視でY方向に対する角度θで傾斜させる場合を想定する。MMAP41を90°<θ<135°に傾ける場合、(θ−90°)<γ<(180°−θ)であれば、図7に示すように空中像91−1をZ方向のMMAP41より奥側に視認できる。基端が床面101に接するように空中像91−1を形成するためには、Y方向において床面101から離れる側に進行する光72を床面101側に折り返す鏡95を設ける必要がある。空中で空中像91を見る場合には、鏡95を設置しなくてもよい。
前述の場合、α+γ<90°及びα<γを満たさなければ、床面101に空中像91が形成されない。α=θ−90°であることから、角度θについて(θ−90°)<γ<(180°−θ)が条件式として得られる。角度θが135°である場合、角度αは45°となり、45<γとなる。そうなるとα+γ<90に当てはまらなくなるため、θ<135°の関係が満たされる必要がある。
図7に示す構成では、床面101より床の内部に入り込む側にも空中像91−2が形成される。但し、Z方向においてMMAP41の基端より奥側に不透明な床面101が続く場合は、観察者は空中像91−2を視認できない。Z方向においてMMAP41の基端より奥側に床面101がない又は床が光72を透過可能である場合には、空中像91−2を視認できる。
図8に示す構成では、図7の構成に比べてMMAP41がさらにZ方向の奥側に傾斜している。このような構成では、MMAP41で再帰透過した光71,72がZ方向においてMMAP41の基端より奥側の床面101に向かって進行する。Z方向においてMMAP41の基端より奥側の床面101が光71,72を反射可能であれば、MMAP41で再帰透過した光71,72は、再度MMAP41に入射し、マイクロミラー42−1,42−2(図8では図示略)の間を通過し、空中像91−1,92を形成する。床が光72を透過可能である場合には、MMAP41で再帰透過された光72は、空中像91−2を形成する。また、床が光72を反射可能である場合には、観察者の視野202にMMAP41の虚像82が見える。
また、第1の態様をはじめとして本発明の空中像形成装置では、各構成が基準面に対して同じ側に設けられるため、例えば、装置全体を箱状(直方体形状)に構成する等、可搬容易な形で一体として形成することができる。この場合、床面の反射を必須とする構成においては、例えば、本発明の空中像形成装置を大理石等の床面(反射面)に置くだけで空中像を表示でき、事前の設置準備等の省略できるため、簡便である。また、設置場所が大理石等の反射面でなかったとしても、装置の前面に鏡等の反射面を配置することで空中像を簡易に表示できる。なお、床面の反射を必須としない構成においても、同様に、本発明の空中像形成装置を可搬容易に一体として形成することで、事前の設置準備等を省略できるため簡便である。
(第2の態様)
次いで、本発明の一実施形態の第2の態様の空中像形成装置について説明する。以下の各態様の空中像形成装置の構成要素において、第1の態様の空中像形成装置11と共通の構成要素には、空中像形成装置11と同一の符号を付す。空中像形成装置11と共通の構成要素の説明を省略する。
図9に示すように、第2の態様の空中像形成装置12は、表示部26、遮光部35、透光結像部40、反射部50、補助遮光部60を備えている。
表示部26は、TN液晶25−1に替えてIPS(In-Plane-Switching)液晶25−2を備えていること以外は、表示部20と同様に構成されている。IPS液晶25−2の長軸は、XY面内で回転しており、電界がON状態であってもXY面内で回転する。回転するIPS液晶25−2により、バックライト光源から出射された光の屈折を起こす。偏光板24からは、偏光方向がX方向及びY方向に平行な且つX方向に直交する光71がZ方向に沿って出射する。図9及び図10の(例1)に示すように、第1の向きP1がZ方向から見て床面101に対して面対称である場合、あたかも虚像81から発せられて見える光の偏光方向の向きは、第1の向きP1になっている。
遮光部35は、偏光板31に加えて、光71の入射側に波長板(偏光光学素子)36を備えている。波長板36は、λ/4板で構成されている。波長板36は、表示部26から出射される光71の偏光方向をXY面内で光71の周波数で回転させる。即ち、図10に示すように、波長板36は、直線偏光である光71とは向きが異なる偏光の光73にする。即ち、波長板36は、光72の偏光方向を少なくとも第2の向きP2に変える。
上述の各構成を備える空中像形成装置12では、空中像形成装置11と同様にして空中像91が形成される。但し、空中像形成装置12では、液晶ディスプレイ21の各画素から出射されてZ方向の手前側から奥側に進むにしたがってY方向において床面101に近づく光71は、波長板36で所定の方向の円偏光になり、反射面51で反射されて所定の方向とは逆回りの円偏光になり、再び波長板36を通って第2の向きP2の光72になる。即ち、Z方向の手前側から奥側に進むにしたがってY方向において床面101に近づく光71の偏光方向は、波長板36によって第2の向きP2を含み且つXY面内で回転するようになる。波長板36を通過した光73は、虚像81から出射される光73としてふるまう。
MMAP40に入射する光71−1,73−1は、MMAP40によって再帰透過する。光73−1は、マイクロミラー42−1,42−2の間に、床面101に対して浅い入射角でZ方向の手前側且つY方向の床面101側又は床面101から離れた側から入射する光73を表す。
MMAP40によって再帰反射される光71−1,73−1及びMMAP40を透過する光71−2,73−2は、偏光板31に入射する。光73−2は、光73のうち、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101側から、Z方向の奥側且つ床面101から離れる側に向けて入射する光73を表す。図10に示すように、偏光板31の偏光方向は光71の偏光方向と直交しているので、偏光板31によって、光71と偏光方向が第2の向きP2の以外の光73とが遮断される。一方、偏光板31の偏光方向は第2の向きP2になっているので、光73のうち偏光方向が第2の向きP2である光73−3は偏光板31を透過する。
偏光板31を透過する光73−3は、LF61に入射する。光73−3のうち光73−3−1は、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101から離れている側から、Z方向の奥側且つ床面101側に向けて入射する。図9に示すように、光73−3−1は、進行方向を変えずに、遮蔽素子62同士の間を通過し、LF61から出射される。一方、光73−3−2は、Y方向において隣り合う遮蔽素子62の間に、Z方向の手前側且つY方向の床面101側から、Z方向の奥側且つ床面101から離れる側に向けて入射するので、遮蔽素子62によって拡散又は吸光され、LF61によって遮断される。
LF61を透過する光73−3−1は、床面101で反射し、空中像91を形成する。Z方向の手前側且つ床面101から、Z方向の奥側且つY方向において表示部20と遮光部30と透光結像部40と反射部50と同じ側に床面101から離れる方向に、空中像91が視認される。
以上説明した第2の態様の空中像形成装置12は、第1の態様の空中像形成装置11と同様の構成を備えるので、空中像形成装置11と同様の効果を奏する。
また、IPS液晶25−2のように、表示部26から出射される光71の偏光方向がZ方向から見て床面101に対して面対称であると、第1の態様で説明したように単に反射面51で折り返しても、虚像81の偏光方向は第1の向きP1と同じになる。その場合、反射面51で反射されて本来透過させるべき光が偏光板31によって遮蔽されてしまう。空中像形成装置12によれば、遮光部35が波長板36を備えるので、光71の偏光方向を第1の向きP1からXY面で回転させ、第1の向きP1とは異なる向きを含む偏光方向の光73を生成できる。このことによって、空中像形成装置12では、空中像形成装置11と同様に、表示部26から出射され且つZ方向の奥側で観察者に直接届き得る光71を、Z方向の手前側で遮断できる。したがって、観察者に対して表示部26から出射される光71を直接視認させずに、空中像91のみを視認させることができる。
なお、空中像形成装置12において、IPS液晶25−2に替えてVA(Vertical Alignment)液晶25−3を用いることができる。VA液晶25−3の長軸は、Z方向に沿っているが、電界がON状態になるとIPS液晶25−2と同様に、XY面内で回転する。そのため、IPS液晶25−2に替えてVA液晶25−3を採用した場合でも、空中像形成装置12を適用し、空中像形成装置12と同様の作用効果を得ることができる。
また、IPS液晶25−2やVA液晶25−3が用いられる場合に限らず、例えば図10の(例2)に示すように、第1の向きP1がX方向に沿って反射面51と平行になっている場合にも、波長板36を備える空中像形成装置12によって、観察者に空中像91のみを視認させることができる。即ち、光71の偏光方向がZ方向の手前側から奥側に向かって見たときに床面101を中心として対称な第1の向きP1である場合は、第2の態様の空中像形成装置12を採用できる。一方、光71の偏光方向がZ方向の手前側から奥側に向かって見たときに床面101を中心として非対称な第1の向きP1である場合は、第1の態様の空中像形成装置11を採用できる。
(第3の態様)
次いで、本発明の一実施形態の第3の態様の空中像形成装置について説明する。
図11に示すように、第3の態様の空中像形成装置13は、第1の態様の空中像形成装置11と同様の構成を備えている。但し、空中像形成装置13では、表示部20、遮光部30、透光結像部40、反射部50及び補助遮光部60が天井面(基準面)102の同じ側に設けられている。
以上説明した第3の態様の空中像形成装置13によれば、空中像形成装置11と同様の原理によって、天井面102を基準面として、天井面102に加工や工事を施すことなく、天井面102から垂下する空中像91を形成し、観察者に視認させることができる。また、空中像形成装置13においても、観察者に直接届き得る光71を遮光部30によってZ方向の手前側で遮断し、観察者に対して表示部20から出射される光71を直接視認させずに、空中像91のみを視認させることができる。
(第4の態様)
次いで、本発明の一実施形態の第4の態様の空中像形成装置について説明する。
図11に示すように、第4の態様の空中像形成装置14は、第3の態様の空中像形成装置13と同様の構成を備えている。但し、空中像形成装置14では、透光結像部40と遮光部30と補助遮光部60は、天井面102から遠い側の各先端が天井面102に近い側の各基端よりZ方向において手前側になるように、傾斜している。このような構成において、図6を参照してもわかるように、空中像91が天井面102から離れた室内空間Rに形成される。
以上説明した第4の態様の空中像形成装置14によれば、空中像形成装置13と同様の構成を備えることによって、空中像形成装置13と同様の効果を得ることができる。また、空中像形成装置14によれば、空中像91が室内空間Rに形成されるので、観察者は天井面102から離れた室内空間Rの床面側の観察位置OB−2から見上げるようにして、視野202−2内に空中像91を視認できる。観察位置OB−2より深い仰角での観察位置OB−1からは、視野202−1内に空中像91の一部が入るので、観察者は空中像91の一部を視認できる。一方、観察位置OB−3より浅い仰角での観察位置OB−3からは、視野202−3から空中像91が外れるので、観察者は空中像91を視認できない。このような原理をふまえて、観察位置に合わせ、空中像91の形成位置、及び透光結像部40と遮光部30と補助遮光部60の傾斜角度を調節できる。
なお、空中像形成装置14のように、補助遮光部60から出射される光72−1を天井面102で反射させずに空中像91を形成する場合は、液晶ディスプレイ21で表示する画像5の向きを、X方向を中心に反転させる。このようにすることによって、空中像91の向きを観察者に視認させたい画像の向きにすることができる。
(第5の態様)
次いで、本発明の一実施形態の第5の態様の空中像形成装置について説明する。
図13に示すように、第5の態様の空中像形成装置15は、第3の態様の空中像形成装置13と同様の構成を備えている。但し、空中像形成装置14では、天井面102の裏側、即ち天井面102の室内側とは反対側に天井空間Mが予め設けられており、天井面102を基準面として、各構成が天井空間Mに配置されている。空中像形成装置14において、Y方向は、天井面102から天井空間M内を進行する方向を意味する。また、Z方向において補助遮光部60より奥側には、天井面102に沿って透過面(基準面)103が設けられている。言い換えれば、Z方向において補助遮光部60より奥側の天井面102は、光72−1を透過可能になっている。透過面103は、光72−1の少なくとも一部を透過できる。空中像形成装置15では、空中像91が透過面103に接してY方向の奥側に立つように形成される。
以上説明した第5の態様の空中像形成装置15によれば、空中像形成装置13と同様の構成を備えることによって、空中像形成装置13と同様の効果を得ることができる。また、透過面103が設けられることによって、空中像形成装置15を天井空間Mに隠しつつ、透過面103から垂下する空中像91を観察者に視認させることができる。空中像形成装置15においても、液晶ディスプレイ21で表示する画像5の向きをX方向を中心に反転させることによって、空中像91の向きを観察者に視認させたい画像の向きにすることができる。
(第6の態様)
次いで、本発明の一実施形態の第6の態様の空中像形成装置について説明する。
図14に示すように、第6の態様の空中像形成装置16は、第1の態様の空中像形成装置11と同様の構成を備えている。但し、空中像形成装置16における透光結像部40は、MMAP41と同じ位置で床面101に立てられたハーフミラー44と、ハーフミラー44のY方向の先端からZ方向の奥側へ向かって延在する再帰反射光学素子46とを備えている。
上述の各構成を備える空中像形成装置16では、液晶ディスプレイ21の各画素から光71が出射されて透光結像部40に光71,72が入射するまでの原理は、空中像形成装置11と同様である。ハーフミラー44に入射する光71,72の一部は、光71−4,72−4としてハーフミラー44を透過し、光71−4は遮光部30で遮蔽され、光72−4は補助遮光部60で遮蔽される。ハーフミラー44に入射する光71,72の残部は、光71−3,72−3としてハーフミラー44で反射され、再帰反射光学素子46によって再帰反射される。再帰反射される光71−5,72−5は、ハーフミラー44に入射する。光71−5,72−5の一部は、光71−7,72−7としてハーフミラー44を透過し、光71−7は遮光部30で遮蔽され、光72−7は遮光部30及び補助遮光部60を透過する。光71−5,72−5の残部は、光71−6,72−6としてハーフミラーで再び反射され、観察者に向かう方向とは反対方向に向かい、視認されない。光72−7は、床面101で反射され、空中像91を形成する。
以上説明した第6の態様の空中像形成装置16によれば、透光結像部40としてMMAP41に替えてハーフミラー44及び再帰反射光学素子46を備えるので、空中像形成装置11と同様の原理に基づいて空中像91を形成し、空中像形成装置11と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の態様に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々変形及び変更可能である。
例えば、表示部20は液晶ディスプレイ21で構成されていることに限定されない。但し、表示部20は偏光方向が第1の向きP1である光71を出射する必要があるので、表示部20を無偏光のディスプレイや装置で構成する場合は、表示部20のZ方向の最も奥側に偏光板を設ければよい。この偏光板の偏光方向が第1の向きP1となる。
また、上述の各態様において、透光結像部40はMMAP41で構成されているが、透光結像部40はMMAP41以外の再帰透過光学素子で構成されていてもよく、再帰透過光学素子とは異なり、且つ光72を所定の方向に透過させる光学素子で構成されていてもよい。このような光学素子としては、例えばAerial Imaging Plate(AIP)、2面コーナーリフレクタアレイ(Dihedral Corner Reflector Array:DCRA)、パリティミラーが挙げられる。
また、上述の第2の態様において、遮光部35の波長板36としてλ/4波長板が用いられているが、λ/4波長板に替えて、偏光状態を変化させることが可能な光学素子が用いられてもよい。このような光学素子としては、例えばλ/8板や公知の位相板が挙げられる。即ち、光71と偏光状態が異なる虚像81を生成できる光学素子であれば、波長板36の位置に配置する遮光部35として機能する。
さらに、第2の態様の空中像形成装置12のように、反射面51で反射する光72を第1の向きP1とは向きの異なる偏光にすることは、光71の位相をずらすことと同義である。したがって、遮光部35では、光71を遮蔽し、光71とは異なる位相の光72を透過するということもできる。このような例に限らず、本発明の空中像形成装置の遮光部としては、偏光方向の向きに限定されず、任意の光学特性に基づいて光71を遮蔽し且つ光72を透過させることができる光学素子が機能し得る。
また、上述の各態様は、適宜組み合わせることができる。
次いで、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の装置及び設定を用いて、図2に示す空中像形成装置12の構成に基づく空中像形成装置17を構築した。図15に示すように、Z方向におけるLF61より奥側の床面101が光72−1を反射し難いため、空中像形成装置17では、LF61より奥側の床面101に反射材(第2反射部)110を配置した。反射材110は光72−1を反射可能且つ床面101に沿う反射面(第2反射面)111を有し、反射面111はY方向の奥側に向けた。また、空中像形成装置17では、光71,72以外の外光が透光結像部40に入射するのを防ぐために、表示部20と遮光部30と透光結像部40と第1反射部50と補助遮光部60とを囲む枠100を設けた。枠100は、骨組みの役割を担う枠体と、枠体に取り付けられた板状のカバーとを有する。
試作した空中像形成装置17では、観察者200−1が床面101にしゃがんで空中像91に手を延ばせることを想定した。この際、観察者200−1が肘をまげつつ手を延ばす方が疲れにくいこと、及び観察者200−1が女性であれば女性の肩から指先までの長さの平均値が62cmであることをふまえ、平均値62cmの0.8倍を参照値として、空中像形成装置17の各構成の位置や大きさを以下の[設定]のように決めた。
空中像形成装置17の仕様を以下に示す。
[装置等]
*液晶ディスプレイ21;7インチ高輝度LCDディスプレイDurapixel0708-T(製造元;LITEMAX社)
*偏光板31;直線偏光板SHLP41(製造元;株式会社美舘イメージングホーム)
*波長板36;シートタイプ1/4波長板MCR140N(製造元;株式会社美舘イメージングホーム)
*MMAP41;ASKA3D-488(製造元;株式会社アスカネット)
*鏡52;アクリミラー M−001 S 2 鏡シルバー (製造元;アクリサンデー株式会社)
*LF61;ウインコスビジョンコントロールフィルムW-0055(製造元;リンテック株式会社)
*反射材110;本磨き加工された大理石ネロマルキーナ
[設定]
*液晶ディスプレイ21のY方向の大きさ;15cm
*Z方向における液晶ディスプレイ21とMMAP41との距離;15cm
*MMAP41、偏光板31、LF61のY方向の大きさ;48.8cm
*Z方向におけるLF61と観察者との距離;65cm
*空中像91のY方向の大きさ;15cm
*Z方向における空中像91と観察者200−1,200−2との距離;50cm
試作した空中像形成装置17では、床面101にしゃがむ観察者200−1がY方向において床面101から79cm奥側の眼の位置から、視野202−1−1内に空中像91を観察できた。図16は、空中像91を観察者200−1の目線から撮影した写真である。図16に示すように、本実施例では、液晶ディスプレイ21で表示する画像5を白色且つ円形のパターンとした。また、Z方向において観察者200−1と同じ位置において、床面101に立ち上がる観察者200−2が床面101から168cm奥側の眼の位置から、視野202−1−2内に空中像91を観察できた。また、視野202−1−1,202−1−2には、反射面111に映る虚像82も観察された。さらに、観察者200−1,200−2には、液晶ディスプレイ21の表示画面は視認されなかった。
本実施例では、空中像形成装置17を床面101に設置したが、例えば任意のテーブルの天板に空中像形成装置17を設置し、椅子に座る観察者が空中像91を観察することもできる。
以上説明した本実施例によれば、本発明の空中像形成装置によって設置場所の自由度を高くすることができ、観察者側から表示部の表示内容が直接視認されにくいことを確認した。