JP2020056120A - タンパク質繊維の製造方法、紡糸ノズル、およびタンパク質繊維の製造装置 - Google Patents

タンパク質繊維の製造方法、紡糸ノズル、およびタンパク質繊維の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】より強度の高いタンパク質繊維を製造することができるタンパク質繊維の製造方法、紡糸ノズル、およびタンパク質繊維の製造装置を提供する。【解決手段】紡糸ノズルを用いてタンパク質を含む紡糸原液を吐出しタンパク質繊維を製造するタンパク質繊維の製造方法であって、紡糸ノズルが管状の吐出部を備え、吐出部の内径(D)に対する吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超であり、紡糸ノズルの吐出部から、紡糸原液を吐出させて凝固させる工程を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、タンパク質繊維の製造方法、紡糸ノズル、およびタンパク質繊維の製造装置に関する。
従来、各種の繊維を製造するための紡糸口金(紡糸ノズル)が検討されている。特許文献1には、合成繊維であるポリビニルアルコール(PVA)系繊維の製造方法が記載されている。この紡糸口金は、孔の長さLと孔径Dとの比(L/D)が、3以上の吐出孔を有する。その他にも、特許文献2にはセルロース繊維の製造方法が記載されており、紡糸ノズルにおける比(L/D)が10以上である旨が記載されている。特許文献3にはセルロースアセテート繊維の製造方法が記載されており、乾式紡糸を行うに際して、紡糸口金における比(L/D)が1以上である旨が記載されている。特許文献4には、合成繊維の製造方法が記載されており、溶融紡糸を行うに際して、紡糸口金のキャピラリーにおける比(L/D)が5以上である旨が記載されている。
一方、タンパク質繊維を製造するための紡糸ノズルも検討されている。タンパク質繊維は、合成繊維とは異なって、生分解性を有し、生産や加工のエネルギーが小さい等の利点を有する。近年の環境保全意識の高まりに応じて、タンパク質繊維に関しては、様々な分野への需要の増大が見込まれている。また、そのようなタンパク質繊は、様々な用途への適用が検討されており、その中には、より高い強度を要求されるものもある。
タンパク質繊維の中でも、シルク等の天然のタンパク質繊維は、全長のコントロールが不能であり、また、天然であるが故に一定の品質のものを安定的に得ることは困難であった。そこで、たとえば特許文献5に記載されるように、天然由来のタンパク質を含む紡糸原液を紡糸ノズルから吐出させて凝固させることにより、高物性のタンパク質繊維を人工的に製造する方法等が提案されている。
特開平7−305222号公報 特開平7−229016号公報 特開平7−331527号公報 特開2000−96336号公報 特許第5540154号公報
近年、上記したような人工的なタンパク質繊維の製造分野において、引張強度等の物性を更に高められ得る技術の確立が求められている。本発明は、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができるタンパク質繊維の製造方法、それに用いられる紡糸ノズル、およびタンパク質繊維の製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、紡糸ノズルを用いてタンパク質を含む紡糸原液を吐出しタンパク質繊維を製造するタンパク質繊維の製造方法であって、紡糸ノズルが管状の吐出部を備え、吐出部の内径(D)に対する吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超であり、紡糸ノズルの吐出部から、紡糸原液を吐出させて凝固させる工程を含む。
このタンパク質繊維の製造方法によれば、タンパク質を含む紡糸原液を吐出させ、凝固させることで、タンパク質繊維が製造される。紡糸原液を吐出するための紡糸ノズルは、30超の比(L/D)を有する吐出部を備える。この特有の比(L/D)を持つ紡糸ノズルを用いることによって、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができる。
タンパク質繊維の製造方法において、紡糸ノズルの吐出部の比(L/D)が200以下であってもよい。
タンパク質繊維の製造方法が、紡糸原液を加圧して紡糸原液の体積を減少させた圧縮状態で、紡糸ノズル内に紡糸原液を導入する加圧導入工程を含んでもよい。
タンパク質繊維の製造方法において、圧縮状態での紡糸原液のノズル内への導入が、該紡糸原液を加圧して紡糸ノズルに送り込む圧送手段によって実現されていてもよい。
タンパク質繊維の製造方法において、圧送手段がシリンジポンプまたは窒素ポンプであってもよい。
本発明の別の態様は、タンパク質を含む紡糸原液を吐出するための紡糸ノズルであって、紡糸原液を導入するように構成された導入部と、導入部に接続されて、紡糸原液を吐出するように構成された管状の吐出部と、を備え、吐出部の内径(D)に対する吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超である。
この紡糸ノズルによれば、タンパク質を含む紡糸原液を吐出し、凝固させることで、タンパク質繊維が製造される。この紡糸ノズルは、30超の比(L/D)を有する吐出部を備える。この特有の比(L/D)を持つ紡糸ノズルによって、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができる。
本発明のさらに別の態様は、紡糸ノズルを用いてタンパク質を含む紡糸原液を吐出しタンパク質繊維を製造するタンパク質繊維の製造装置であって、紡糸ノズルが管状の吐出部を備え、吐出部の内径(D)に対する吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超である。
このタンパク質繊維の製造装置によれば、タンパク質を含む紡糸原液を吐出させ、凝固させることで、タンパク質繊維が製造される。紡糸原液を吐出するための紡糸ノズルは、30超の比(L/D)を有する吐出部を備える。この特有の比(L/D)を持つ紡糸ノズルを備えた構成によって、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができる。
タンパク質繊維の製造装置が、紡糸原液を加圧して紡糸原液の体積を減少させた状態で、紡糸ノズル内に紡糸原液を導入するように構成された圧送手段を備えてもよい。
タンパク質繊維の製造装置において、圧送手段がシリンジポンプまたは窒素ポンプであってもよい。
本発明のいくつかの態様によれば、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができる。
本開示の一実施形態に係るタンパク質繊維の製造装置を概略的に示す図である。 図1中の紡糸ノズルを示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態に係るタンパク質繊維の製造装置および製造方法では、紡糸ノズルを用いて、タンパク質を含むドープ液(紡糸原液)を吐出し、凝固させ、高強度を有するタンパク質繊維を製造する。対象とされるたんぱく質は、たとえば構造タンパク質である。本実施形態では、特に、分子量500kDa以下のタンパク質を含む人造タンパク質繊維の高強度化を可能とする。高強度化の観点において、タンパク質の分子量は、好ましくは400kDa以下であり、より好ましくは300kDa以下であり、さらにより好ましくは200kDa以下である。
[構造タンパク質]
構造タンパク質とは、生体構造を構築する役割を有するタンパク質であり、酵素、ホルモン、抗体等の機能タンパク質とは異なる。構造タンパク質としては、クモ糸タンパク質やカイコシルクタンパク質等を含むフィブロイン、ケラチン、コラ−ゲン、エラスチン及びレシリン等の天然構造タンパク質、並びにそれらのタンパク質由来の構造タンパク質等が挙げられる。本実施形態に係るモールド成形体を構成する構造タンパク質としては、天然クモ糸タンパク質に由来する、いわゆる組換えクモ糸タンパク質が好適に用いられる。すなわち、構造タンパク質は、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
クモ糸タンパク質は、例えば、牽引糸タンパク質や横糸タンパク質であってもよい。
クモ糸タンパク質であって牽引糸タンパク質に由来する組換えクモ糸タンパク質として、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。組換えクモ糸タンパク質は、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、クモ糸タンパク質に特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
ここで、本明細書において「組換えクモ糸タンパク質」とは、人為的に製造されたクモ糸タンパク質(人造クモ糸タンパク質)を意味する。組換えクモ糸タンパク質は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列とは異なるクモ糸タンパク質であってもよく、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列と同一であるクモ糸タンパク質であってもよい。本明細書でいう「天然由来のクモ糸タンパク質1」もまた、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。
「組換えクモ糸タンパク質」は、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列をそのまま利用したものであってもよく、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のクモ糸タンパク質の遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のクモ糸タンパク質に依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
本明細書において「ドメイン配列」とは、クモ糸タンパク質特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。具体的には配列番号1および配列番号9で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をあげることができる。
クモ糸タンパク質であって横糸タンパク質に由来の組換えクモ糸タンパク質としては、例えば、式3:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、REP2はGly−Pro−Gly−Gly−Xから構成されるアミノ酸配列を示し、Xはアラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選ばれる一つのアミノ酸を示す。oは8〜300の整数を示す。)をあげることができる。
具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をあげることができる。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分的な配列(NCBIアクセッション番号:AAF36090、GI:7106224)のリピート部分及びモチーフに該当するN末端から1220残基目から1659残基目までのアミノ酸配列(PR1配列と記す。)と、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分配列(NCBIアクセッション番号:AAC38847、GI:2833649)のC末端から816残基目から907残基目までのC末端アミノ酸配列を結合し、結合した配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
コラーゲン由来のタンパク質として、例えば、式4:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式4中、pは5〜300の整数を示す。REP3は、Gly一X一Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号3で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
レシリン由来のタンパク質として、例えば、式5:[REP4]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式5中、qは4〜300の整数を示す。REP4はSer一J一J一Tyr一Gly一U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenBankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号8で示されるアミノ酸配列(タグ配列)が付加されたものである。
エラスチン由来のタンパク質として、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。具体的には、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号5で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
ケラチン由来のタンパク質として、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。具体的には、配列番号6で示されるアミノ酸配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含むタンパク質を挙げることができる。
<組換えタンパク質の製造方法>
組換えタンパク質は、例えば、当該組換えタンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
組換えタンパク質をコードする遺伝子の製造方法は特に制限されない。例えば、天然の構造タンパク質をコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングする方法、又は、化学的な合成によって、遺伝子を製造することができる。遺伝子の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手した構造タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製や確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなるタンパク質、をコードする遺伝子を合成してもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、組換えタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いても良い。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、組換えタンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、組換えタンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、組換えタンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
組換えタンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に組換えタンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。
無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させた組換えタンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該組換えタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
また、組換えタンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として組換えタンパク質の不溶体を回収する。回収した組換えタンパク質の不溶体は蛋白質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により組換えタンパク質の精製標品を得ることができる。当該組換えタンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該組換えタンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
[ドープ液(紡糸原液)]
ドープ液(紡糸原液)は、上述した方法に準じて製造したクモ糸フィブロイン等の構造タンパク質を、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、又はヘキサフルオロイソプロノール(HFIP)、ギ酸等の溶媒にて溶解させることにより作成される。この際、必要に応じて無機塩を添加してもよい。
[タンパク質繊維の製造装置]
図1を参照して、タンパク質繊維の製造装置について説明する。図1は、本実施形態に係るタンパク質繊維の製造装置を概略的に示す図である。図1に示される製造装置10は、タンパク質原料繊維を紡糸し、更にタンパク質原料繊維に所定の処理を施すことにより、高引張強度および高伸度を有するタンパク質繊維を簡便に製造することができる装置である。この製造装置10は、タンパク質原料繊維36を紡糸する紡糸装置25と、紡糸装置25によって紡糸されたタンパク質原料繊維36を高温で加熱して収縮させる高温加熱弛緩装置40とを備えている。製造装置10では、紡糸工程と、延伸工程と、加熱状態での弛緩収縮による防縮工程とが連続して行われる。このような連続工程の実現により、高い生産性をもって高引張強度および高伸度を有するタンパク質繊維50を製造することができる。
本実施形態では、一例として、乾湿式紡糸による紡糸装置25が適用される場合について説明する。紡糸装置25は、例えば乾湿式紡糸用の紡糸装置であり、貯留タンク60と、ポンプ(圧送手段)70と、紡糸ノズル1と、凝固装置2と、洗浄装置3と、乾燥装置4とを、上流側から順に備えている。貯留タンク60には、ドープ液が貯留される。凝固装置2は凝固浴槽20を有しており、この凝固浴槽20に凝固液11(例えば、メタノール)が貯留される。ドープ液は、圧送ポンプ70によって圧送され、凝固液11との間にエアギャップ19を開けて設けられた紡糸ノズル1から吐出される。吐出されたドープ液は、エアギャップ19を経て凝固液11内に供給される。凝固液11内でドープ液から溶媒が除去されてタンパク質が凝固する。
凝固液11としては、脱溶媒できる溶液であればよく、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトン等を挙げることができる。凝固液11は、適宜水を含んでいてもよい。凝固液11の温度は、0〜30℃であることが好ましい。凝固したタンパク質が凝固液11中を通過する距離(実質的には、糸ガイド18aから糸ガイド18bまでの距離)は、凝固液11中でのタンパク質原料繊維36の滞在時間を確保可能な長さがあればよい。凝固液11中での滞留時間は、例えば、0.01〜3分であってよく、0.5〜1分であってもよい。また、凝固液11中で延伸(前延伸)をしてもよい。
洗浄装置3は、洗浄浴槽21を有しており、この洗浄浴槽21に洗浄液12(例えば、水)が貯留される。凝固浴槽20内で凝固したタンパク質は、洗浄浴槽21に導かれ、洗浄液12により洗浄される。このタンパク質は、洗浄浴槽21内に設置された第1ニップローラ13と第2ニップローラ14により、乾燥装置4へと送られる。
洗浄装置3は、第1ニップローラ13と第2ニップローラ14を有することにより、タンパク質原料繊維36を延伸する延伸装置の機能を兼ね備えている。すなわち、第1ニップローラ13および第2ニップローラ14は、タンパク質原料繊維36を延伸する延伸手段26を構成している。例えば、第2ニップローラ14の回転速度が第1ニップローラ13の回転速度よりも速く設定されることで、回転速度比に応じた倍率で延伸されたタンパク質原料繊維36が得られる。なお、18a〜18eは糸ガイドである。
第1ニップローラ13および第2ニップローラ14には、これらの回転速度を調節することにより、タンパク質原料繊維36の延伸倍率を調節する延伸倍率調節手段が設けられてもよい。この場合、延伸手段26は、第1ニップローラ13および第2ニップローラ14を回転駆動する駆動部に対して制御信号を送信するコントローラを有してもよい。
タンパク質原料繊維を得る際に洗浄浴槽21内で実施される延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液中等で行う、いわゆる湿熱延伸であってもよい。この湿熱延伸の温度としては、例えば、0〜90℃であってよく、20〜70℃が好ましく、30〜60℃がより好ましい。湿熱延伸での未延伸糸(又は前延伸糸)の延伸倍率は、例えば、1〜10倍であってもよく、2〜8倍であってもよい。
最終的な延伸倍率は、その下限値が、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、好ましくは、1倍超、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上のうちのいずれかであり、上限値が、好ましくは100倍以下、80倍以下、60倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、15倍以下、14倍以下、13倍以下、12倍以下、11倍以下、10倍以下である。
なお、洗浄装置3が延伸装置を兼ねる場合に限られず、洗浄装置3と延伸装置(延伸手段)とがそれぞれ別個に設けられてもよい。その場合、タンパク質原料繊維36の走行方向において、洗浄装置3の下流側に延伸装置が設けられてもよい。延伸装置は、洗浄装置3と乾燥装置4との間に設けられてもよい。また、洗浄装置3の上流側に延伸装置が設けられてもよい。延伸装置は、例えば、凝固浴槽20と洗浄装置3との間に設けられてもよい。
洗浄液12中で延伸されたタンパク質原料繊維36は、洗浄浴槽21内を離脱してから、乾燥装置4内を通過する際に乾燥される。乾燥装置4は、例えば乾熱式の乾燥炉17を有している。乾燥炉17内には、送出しローラ31と巻取りローラ32とが設けられている。タンパク質原料繊維36は、これらの送出しローラ31および巻取りローラ32により、乾燥炉17内を所定の滞在時間で滞在し、その後に高温加熱弛緩装置40に送られる。乾燥炉17では、例えば、巻取りローラ32の回転速度が送出しローラ31の回転速度よりも速く設定されることで、回転速度比に応じた倍率で、タンパク質原料繊維36が延伸されてもよい。乾燥炉17内には、図示しないヒータが設けられる。乾燥炉17内の温度すなわちタンパク質原料繊維36の乾燥温度は、例えば80℃である。なお、洗浄装置3と乾燥装置4との間に、オイリング装置30が設けられてもよい。
高温加熱弛緩装置40は、タンパク質原料繊維36の走行方向における紡糸装置25の下流側に設けられている。乾式防縮装置である高温加熱弛緩装置40は、例えば乾熱式の高温加熱炉43を有している。高温加熱炉43内には、送出しローラ(送出し手段)41と巻取りローラ(巻取り手段)42とが設けられている。送出しローラ41および巻取りローラ42はいずれも円筒状であり、これらの周面に、タンパク質原料繊維36が巻き掛けられる。タンパク質原料繊維36は、これらの送出しローラ41および巻取りローラ42により、高温加熱炉43内を所定の滞在時間で滞在し、その後、ワインダーにて巻き取られる。
高温加熱炉43では、例えば、巻取りローラ42の回転速度が送出しローラ41の回転速度よりも遅く設定されることで、回転速度比に応じた倍率で、タンパク質原料繊維36が弛緩される。すなわち、送出しローラ41は、タンパク質原料繊維36を所定の送出し速度で連続的に送り出すように構成されている。巻取りローラ42は、送出しローラ41によって送り出されたタンパク質原料繊維36を、送出しローラ41の送出し速度よりも遅い巻取り速度で、連絡的に巻き取るように構成されている。このように構成された送出しローラ41および巻取りローラ42によれば、タンパク質原料繊維36はオーバーフィードされることになり、送出しローラ41と巻取りローラ42の間で、タンパク質原料繊維36の弛緩状態(緊張させない乃至は引張させない状態)が発生する。
続いて、図1および図2を参照して、本実施形態の紡糸ノズル1について詳細に説明する。紡糸ノズル1は、貯留タンク60に接続された導入ラインL1に、接続されている。紡糸ノズル1には、導入ラインL1に設けられた圧送ポンプ70によって、加圧されたドープ液が送り込まれる。導入ラインL1は、たとえば配管である。導入ラインL1の構成は、ドープ液を所定の圧力(圧送ポンプ70の吐出圧力)で送液できる構成であれば何でもよく、特に限定されない。導入ラインL1は、所定の圧力に耐え得るチューブ等であってもよく、配管およびチューブの組み合わせ等であってもよい。
図2に示されるように、紡糸ノズル1は、たとえばニードル式の吐出ノズルである。紡糸ノズル1は、ドープ液が導入される導入部6と、導入部6に接続されて、ドープ液を吐出するように構成された管状の吐出部7とを備える。導入部6は、たとえば樹脂製であるが、金属製であってもよい。導入部6の基端部6aに、上記導入ラインL1が接続される。吐出部7は、たとえば金属製のニードル等であり、ストレートな形状をなす。吐出部7の基端部7aが、導入部6の先端部6bに取り付けられ、固定されている。吐出部7の基端部7aが、導入部6の先端部6bに挿入されて、中心軸線X方向の所定の長さだけ埋没していてもよい。紡糸ノズル1では、たとえば円筒状の導入部6と、吐出部7とは、共通の中心軸線Xを有する。導入部6の内部には、ドープ液が導入される空間である導入流路6eが形成されている。導入流路6eの形状および大きさは、紡糸ノズル1に求められる性能に応じて、適宜に設定される。吐出部7は、内部に、基端部7aから先端部7bまでを貫通する吐出流路7eを有している。このような構成を有する紡糸ノズル1では、吐出部7の吐出流路7eは、導入部6の導入流路6eに連通している。吐出部7の先端部7bが、紡糸ノズル1の吐出口を含む。
紡糸ノズル1は、高強度のタンパク質繊維を製造するため、従来の紡糸ノズルに比して特殊な構造を持っている。紡糸ノズル1では、吐出部7の内径D(吐出流路7eの直径)に対する吐出部7(吐出流路7e)の長さLの比(L/D)が、30超である。吐出部7の内径は、たとえば、0.1mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよく、0.3mm以上であってもよく、0.4mm以上であってもよく、0.5mm以上であってもよい。吐出部7の内径は、1mm以上2mm未満であってもよい。吐出部7の長さLは、たとえば、3mm以上であってもよく、6mm以上であってもよく、9mm以上であってもよく、12mm以上であってもよい。吐出部7の長さLは、25mm以上であってもよく、30mm以上であってもよい。吐出部7の長さLは、50mm未満であってもよく、60mm未満であってもよい。
紡糸ノズル1において、上記した比(L/D)が、100以下であってもよく、200以下であってもよく、300以下であってもよく、370以下であってもよい。あるいは、上記した比(L/D)が、300以上であってもよく、400以上であってもよい。より詳細には、上記した比(L/D)が、375以上であってもよい。
紡糸装置25の圧送ポンプ70は、たとえば、ドープ液を加圧してドープ液の体積を減少させた状態で、言い換えればドープ液を圧縮した状態(圧縮状態)で、紡糸ノズル1にドープ液を導入するように構成されている。圧送ポンプ70は、その圧縮状態でのドープ液の紡糸ノズル1への導入を実現させる圧送手段である。圧縮状態におけるドープ液の圧力は、5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよく、20MPa以上であってもよく、30MPa以上であってもよく、40MPa以上であってもよく、50MPa以上であってもよい。圧縮状態におけるドープ液の圧力は、20MPa未満であってもよく、30MPa未満であってもよく、40MPa未満であってもよく、50MPa未満であってもよく、60MPa未満であってもよく、70MPa未満であってもよい。
圧送ポンプ70および導入ラインL1は、圧送ポンプ70の前後において、ドープ液の体積が0.5%以上減少するように構成されてもよく、1%以上減少するように構成されてもよく、3%以上減少するように構成されてもよく、5%以上減少するように構成されてもよい。
上記したドープ液の加圧および送込みを可能とする装置として、圧送ポンプ70として、たとえば、シリンジポンプまたは窒素ポンプが用いられてもよい。シリンジポンプまたは窒素ポンプが用いられた場合、上記したドープ液の体積の減少(圧縮)が可能となる。圧送ポンプ70として、一軸ねじポンプ(一例として、モーノポンプ(登録商標))が用いられてもよい。
紡糸装置25を用いたタンパク質原料繊維36の製造(製造装置10を用いたタンパク質繊維50の製造)では、貯留タンク60に貯留されたドープ液が、圧送ポンプ70によって加圧されて、紡糸ノズル1に送り込まれる。すなわち、タンパク質繊維50の製造方法は、ドープ液を加圧してドープ液の体積を減少させた圧縮状態で、紡糸ノズル1の導入部6内にドープ液を導入する加圧導入工程を含む。そして、紡糸ノズル1の吐出部7から、ドープ液を吐出させて凝固浴槽20においてタンパク質を凝固させる。
本実施形態の紡糸ノズル1、圧送ポンプ70および紡糸ノズル1を備える製造装置10、および、製造装置10を用いたタンパク質繊維50の製造方法によれば、より強度の高いタンパク質繊維を製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、本発明の紡糸ノズルは、乾湿式紡糸装置の他、湿式紡糸装置や乾式紡糸装置に適用されてもよい。その他、本発明の紡糸ノズルは、溶融紡糸装置等、各種の公知の紡糸装置に適用されてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<(1)クモ糸タンパク質(クモ糸フィブロイン:PRT799)の製造>
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
配列番号9で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列を有し、さらにN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されている。
次に、PRT799をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
PRT799をコードする核酸を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表1)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2020056120
当該シード培養液を500mlの生産培地(下記表2)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2020056120
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、PRT799を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存したPRT799に相当するサイズのバンドの出現により、PRT799の発現を確認した。
(PRT799の精製)
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収した。
得られた凍結乾燥粉末におけるPRT799の精製度は、粉末のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をTotallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析することにより確認した。その結果、PRT799の精製度は約85%であった。
(ドープ液の調製)
ギ酸に、上述のクモ糸フィブロイン(PRT799)を濃度24質量%となるよう添加した後、室温環境下にて、シェーカーを使用して溶解させた。その後、ゴミと泡を取り除き、ドープ液とした。
(紡糸)
上記のようにして得られたドープ液と図1に示される紡糸装置25および乾燥装置を用いて公知の乾湿式紡糸を行い、タンパク質繊維を得た。市販品の紡糸ノズルを用いた。なお、2つの凝固浴槽20を設けた。第1凝固浴槽には、5℃のメタノールを用いた。第2凝固浴槽には、室温のメタノールを用いた。洗浄装置3には、水を用いた。洗浄浴槽内において、表3に示す倍率で延伸を行った。タンパク質繊維の乾燥は、60℃のホットローラを用いて行った。各実施例における、圧送ポンプ70の型式、延伸倍率、ノズル長(L)、ノズル径(D)、比(L/D)を表3に示す。また、各実施例において得られたタンパク質繊維の応力を、併せて表3に示す。各比較例における上記条件および結果を表4に示す。
Figure 2020056120
Figure 2020056120
表3および表4に示されるように、比(L/D)を大きくした実施例では、比(L/D)を小さくした比較例よりも、応力が向上した。実施例8および実施例11と、実施例1とを比較すると、実施例1が、比(L/D)が比較的小さかったにもかかわらず、高応力が実現された。実施例7〜11と実施例4〜6とを比較すると、特に比(L/D)が大きい場合において窒素ポンプを使用する方が、ギヤポンプや一軸ねじポンプを使用する場合よりも、高応力が実現された。また、ドープ液を加圧して体積を減少させ得るポンプを使用すると、ドープ液の体積減少により、ドープ液中のタンパク質における分子間距離が減少し、それによって分子配向が促進されることが推察される。
1…紡糸ノズル、6…導入部、7…吐出部、7e…吐出流路、10…製造装置、25…紡糸装置、50…タンパク質繊維、70…圧送ポンプ(圧送手段)、L…(吐出部の)長さ。

Claims (9)

  1. 紡糸ノズルを用いてタンパク質を含む紡糸原液を吐出しタンパク質繊維を製造するタンパク質繊維の製造方法であって、
    前記紡糸ノズルが管状の吐出部を備え、前記吐出部の内径(D)に対する前記吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超であり、
    前記紡糸ノズルの前記吐出部から、前記紡糸原液を吐出させて凝固させる工程を含む、タンパク質繊維の製造方法。
  2. 前記紡糸ノズルの前記吐出部の前記比(L/D)が200以下である、請求項1に記載のタンパク質繊維の製造方法。
  3. 前記紡糸原液を加圧して前記紡糸原液の体積を減少させた圧縮状態で、前記紡糸ノズル内に前記紡糸原液を導入する加圧導入工程を含む、請求項1または2に記載のタンパク質繊維の製造方法。
  4. 前記圧縮状態での前記紡糸原液の前記ノズル内への導入が、該紡糸原液を加圧して前記紡糸ノズルに送り込む圧送手段によって実現されている、請求項3に記載のタンパク質繊維の製造方法。
  5. 前記圧送手段がシリンジポンプまたは窒素ポンプである、請求項4に記載のタンパク質繊維の製造方法。
  6. タンパク質を含む紡糸原液を吐出するための紡糸ノズルであって、
    前記紡糸原液を導入するように構成された導入部と、
    前記導入部に接続されて、前記紡糸原液を吐出するように構成された管状の吐出部と、を備え、
    前記吐出部の内径(D)に対する前記吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超である、紡糸ノズル。
  7. 紡糸ノズルを用いてタンパク質を含む紡糸原液を吐出しタンパク質繊維を製造するタンパク質繊維の製造装置であって、
    前記紡糸ノズルが管状の吐出部を備え、前記吐出部の内径(D)に対する前記吐出部の長さ(L)の比(L/D)が30超である、タンパク質繊維の製造装置。
  8. 前記紡糸原液を加圧して前記紡糸原液の体積を減少させた状態で、前記紡糸ノズル内に前記紡糸原液を導入するように構成された圧送手段を備える、請求項7に記載のタンパク質繊維の製造装置。
  9. 前記圧送手段がシリンジポンプまたは窒素ポンプである、請求項8に記載のタンパク質繊維の製造装置。
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