JP2020049860A - 繊維強化樹脂体 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維強化樹脂体に力が入力された場合に、孔部の外周部に生じる応力集中により拡大した応力下であっても、当該外周部に存在する繊維層の破損を防止することができる繊維強化樹脂体を提供する。【解決手段】繊維強化樹脂体10は、積層された複数の繊維層13a〜13jを有する。複数の繊維層13a〜13jは、配向された繊維束14a,14bを含む。繊維強化樹脂体10は、複数の繊維層13a〜13jをその積層方向に貫通して、繊維束14a,14bを切断する孔部を有する。孔部11の外周部には、複数の繊維層13a〜13jのうちの2層以上の繊維層に対して、その積層方向に縫い込まれた連結糸12が設けられている。連結糸12は、前記2層以上の繊維層にそれぞれ含まれる繊維束14a,14bを、前記積層方向に束ねて固定している。【選択図】図1C

Description

本発明は、例えば車両や工作機械等に組み込まれる構造部材として用いられる繊維強化樹脂体に関するものである。
近年、繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics:FRP)は、優れた機械特性、軽量化等の要求を満たすことから、例えば車両等を構成する構造部材として使用されてきている。このような繊維強化樹脂からなる繊維強化樹脂体を構造部材として他の部材へ取り付ける際には、繊維強化樹脂体にボルト等の接続部材(締結部材、機械的結合要素)を挿通するための孔部を設ける必要がある。
例えば、特許文献1には、繊維強化樹脂シートの繊維をかき分けることによって、繊維強化樹脂シートに貫通孔を形成する方法が記載されている。
特開2008−290269号公報
特許文献1に記載されているように、繊維層を構成する繊維束をかき分けることによって、繊維強化樹脂体の繊維を切断することなく、孔部を形成することができる。しかし、特許文献1の貫通孔の形成方法では、孔部の周縁に沿って繊維を伸ばしながらかき分けることになるため、繊維の伸縮限界を超えるような大きさの孔部を形成することはできず、所望の位置に所望の直径を有する孔部を形成できない可能性がある。また、繊維強化樹脂体に孔部を形成できたとしても、孔部の外周部の繊維密度が高くなるため、孔部の外周部の繊維層の厚さが他部の繊維層に比べて厚くなってしまい、繊維強化樹脂体と他の部材との接続に支障をきたす等の問題が発生する可能性がある。加えて、孔部の外周部の繊維密度が高くなることで、繊維強化樹脂体の製造工程中の樹脂含浸工程において、孔部の外周部に樹脂が含浸されにくく、ボイド(空孔)等の欠陥が発生しやすくなるという問題も発生する。
上記特許文献1の問題を解消する繊維強化樹脂体に孔部を設ける方法として、繊維層を構成する繊維束を切断して孔部を形成する方法が考えられる。しかし、孔部の外周部にはボルト等の締め付けによる応力に加え、繊維強化樹脂体へ外部から静的なまたは衝撃的な力が入力すると、孔部の外周部では引張または圧縮等の応力が集中する。そして、上記のように繊維束を切断して孔部を形成すると、孔部の外周部の繊維層の強度が低下するため、上記した応力集中により拡大した応力が強度の低い孔部の外周部の繊維層に作用し、当該繊維層が破損し、繊維強化樹脂体が破壊する可能性がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、積層された複数の繊維層を有する繊維強化樹脂体であって、前記複数の繊維層は、配向された繊維束を含み、前記複数の繊維層をその積層方向に貫通して、前記繊維束を切断する孔部を有する繊維強化樹脂体において、繊維強化樹脂体に力が入力された場合に、孔部の外周部に生じる応力集中により拡大した応力下であっても、当該外周部に存在する繊維層の破損を防止することができる繊維強化樹脂体を提供することを目的とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
[1]繊維強化樹脂体は、積層された複数の繊維層を有する繊維強化樹脂体であって、前記複数の繊維層は、配向された繊維束を含み、前記複数の繊維層をその積層方向に貫通して、前記繊維束を切断する孔部を有している。前記孔部の外周部には、前記複数の繊維層のうちの2層以上の繊維層に対して、その積層方向に縫い込まれた連結糸が設けられ、前記連結糸は、前記2層以上の繊維層にそれぞれ含まれる前記繊維束を、前記積層方向に束ねて固定している。
[2][1]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、平面視において、前記孔部の周縁に沿って配置されている。
[3][2]記載の繊維強化樹脂体において、前記2層以上の繊維層は、第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有し、前記孔部の前記外周部には、前記孔部の周縁に沿うように前記第1の表面上に配置された第1拘束部を有し、前記連結糸が前記第1拘束部と係合することにより、前記繊維束が、前記積層方向に束ねられて固定される。
[4][3]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、前記第1拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第1折返片部と、前記第2の表面上に配置された複数の固定片部と、前記第1折返片部と前記固定片部とを連結する複数の第1連結片部とにより構成されている。前記積層方向に沿って、前記第1折返片部と前記固定片部とが前記第1連結片部によって連結されることによって、前記繊維束が、前記第1拘束部と前記固定片部との間に挟持固定される。
[5][3]記載の繊維強化樹脂体において、前記第1拘束部よりも前記孔部の径方向外側において、前記孔部の周縁に沿うように前記第1の表面上に配置された第2拘束部を有し、前記連結糸が前記第1拘束部および前記第2拘束部とそれぞれ係合することにより、前記繊維束が、前記積層方向に束ねられて固定される。
[6][5]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、前記第1拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第1折返片部と、前記第2拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第2折返片部と、前記第2の表面上に配置された複数の固定片部とを有する。前記連結糸は、前記第1折返片部と前記固定片部とを連結する第1連結片部と、前記第2折返片部と前記固定片部とを連結する第2連結片部とを有する。前記積層方向に沿って、前記第1折返片部と前記固定片部とが前記第1連結片部によって連結され、かつ、前記第2折返片部と前記固定片部とが前記第2連結片部によって連結されることによって、前記繊維束が、前記第1拘束部と前記固定片部との間および前記第2拘束部と前記固定片部との間に挟持固定される。
[7][2]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、前記孔部の周縁の一部に沿って配置されている。
[8][2]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、前記孔部の周縁の全周に亘って配置されている。
[9][1]記載の繊維強化樹脂体において、前記連結糸は、前記繊維強化樹脂体の外部に露出していない。
[10][1]記載の繊維強化樹脂体において、前記2層以上の繊維層は、前記複数の繊維層のうちの最外層を含む。
本発明によれば、積層された複数の繊維層を有する繊維強化樹脂体であって、前記複数の繊維層は、配向された繊維束を含み、前記複数の繊維層をその積層方向に貫通して、前記繊維束を切断する孔部を有する繊維強化樹脂体において、繊維強化樹脂体に力が入力された場合に、孔部の外周部に生じる応力集中により拡大した応力下であっても、当該外周部に存在する繊維層の破損を防止することができる繊維強化樹脂体を提供することができる。
第1の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す平面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す底面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体において、図1Aおよび図1BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 第1の変形例の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 第2の変形例の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 第3の変形例の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体を適用した車両用ホイールを示す平面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体を適用した車両用ホイールを示す側面図である。 第1の実施の形態の繊維強化樹脂体を適用した車両用ホイールにおいて、図3BのA−A線矢視拡大断面図である。 一実施の形態の車両用ホイールにおいて、図3CのH部分の要部拡大断面図である。 第2の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す平面図である。 第2の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す底面図である。 第2の実施の形態の繊維強化樹脂体において、図4Aおよび図4BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。 第3の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す平面図である。 第3の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す底面図である。 第3の実施の形態の繊維強化樹脂体において、図5Aおよび図5BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。 第4の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す平面図である。 第4の実施の形態の繊維強化樹脂体を示す底面図である。 第5の実施の形態の繊維強化樹脂体において、第3の実施の形態における図5Aおよび図5BのA−A’線に相当する線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。 第5の実施の形態の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 第6の実施の形態の繊維強化樹脂体において、第3の実施の形態における図5Aおよび図5BのA−A’線に相当する線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。 第6の実施の形態の繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。 一実施の形態の繊維強化樹脂体に対するせん断強度試験の模式図である。 一実施の形態の繊維強化樹脂体に対するせん断強度試験の結果を示すグラフである。
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態(以下、実施の形態1と称する)について、図面を参照して説明する。なお、各実施の形態を示す各図中において、同一または同様の部分または構成要素は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
<実施の形態1の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態1の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図1Aは、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体を示す平面図、図1Bは、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体を示す底面図、図1Cは、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体において、図1Aおよび図1BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。
図1A〜図1Cに示すように、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体10は、積層された10層(複数)の繊維層13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h,13i,13jを有している。以下、10層の繊維層の積層方向は、繊維強化樹脂体の厚さ方向と一致する。繊維層13a〜13jは、それぞれ、第1の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第1繊維束)14aと、第2の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第2繊維束)14bを含んでいる。繊維強化樹脂体10のマトリックスを構成する樹脂15は、繊維束14a,14bに含浸されている。
実施の形態1に係る繊維強化樹脂体10は、10層の繊維層13a〜13jをその積層方向の全てに貫通して、上記繊維束14a,14bを切断する孔部11を有している。孔部11の外周部には、繊維層13a〜13jに対して、その積層方向に縫い込まれた連結糸12が設けられ、連結糸12は、繊維層13a〜13jにそれぞれ含まれる全ての繊維束14a,14bを、積層方向に束ねて固定している。実施の形態1の連結糸12では、繊維強化樹脂体10を構成する繊維層13a〜13j全てを固定している。しかしながら、本発明に係る連結糸は繊維層全てを固定している必要はなく、少なくとも2層以上の繊維層を固定するように配置されていればよく、例えば最表層の繊維層13aおよび13jを除く繊維層13b〜13iを固定するように配置してもよい。以下、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体10について、詳述する。
実施の形態1の上記繊維層13a〜13jを構成する繊維束14a,14bにおいて、繊維束14aが配向する前記第1の方向と、繊維束14bが配向する前記第2の方向とは異なっており、例えば前記第1の方向と前記第2の方向とは直交している。具体的には、図1Aに示すように紙面水平方向を0°、上下方向を90°とした場合、図1Cに示す繊維束14aが0°の繊維方向の配向パターンであるとすると、繊維束14bが90°の繊維方向の配向パターンとなる。また、実施の形態1では、繊維強化樹脂体10の厚さ方向中央(図1Cに示す繊維層13eと13fとの界面)を対称面として、繊維束の繊維方向の配向パターンが対称となるように、繊維層が配置されている。すなわち、繊維層13a,13b,13c,13d,13eでは、繊維束が、上から繊維束14a,14b,14a,14b・・・の順に繊維強化樹脂体10の厚さ方向に沿って積層されている。これに対して、繊維層13f,13g,13h,13i,13jでは、繊維束が、上から繊維束14b,14a,14b,14a・・・の順に繊維強化樹脂体10の厚さ方向に沿って積層されている。こうすることで、引張応力やせん断応力に対する繊維強化樹脂体10の強度を、繊維束の繊維方向の配向パターンを対称配置にしない場合に比べて向上させることができる。また、繊維束の配向パターンは、実施の形態1の繊維層13a〜13jを構成する繊維束14a(0°)、繊維束14b(90°)のみに限定されず、例えば+45°、−45°の繊維方向を有する繊維束を使用しても、もちろん構わない。
繊維層13a〜13jは、例えば、ノンクリンプ織物(Non-crimp fabric:NCF)材を用いて構成することができる。ノンクリンプ織物材(以下、NCF材と言う)とは、所定の方向に配向された繊維束を複数積層し、ナイロンやポリエステル等の糸によってステッチ加工し、複数の繊維束を束ねたものである。図1Cに示すように、例えば0°の繊維方向の配向パターンを有する繊維束14aと、90°の繊維方向の配向パターンを有する繊維束14bとがステッチ加工により固定されたNCF材に樹脂15を含浸させることによって、1つの繊維層(例えば、繊維層13a)が形成される。なお、繊維束14aと14bとを束ねたNCF材には、後述する賦形工程において複数枚積層したNCF材同士が、その後の工程における取り扱いで形崩れしない程度に仮接合させるため、その表面に、例えばエポキシ樹脂などのバインダー(結合材)を付着させている。
また、図1Aおよび図1Bに示すように、実施の形態1の繊維強化樹脂体10は、その厚さ方向に貫通して形成された孔部11を有している。具体的には、孔部11は、繊維層13a〜13jをその積層方向に沿って貫通しており、繊維層13a〜13jに含まれる繊維束14a,14bを切断するように形成されている。孔部11は、例えば、構造部材の一例として後述する図3A〜図3Cに示す車両用ホイール1のリム部5に繊維強化樹脂体10を採用した場合において、リム部5とディスク部3とを結合する接続部材(機械的結合要素)であるボルト7を挿通するためのものである。
また、図1A〜図1Cに示すように、繊維層13a〜13jには、その積層方向に沿って、連結糸12が縫い込まれている。連結糸12は、平面視において、孔部11の周縁に沿って略円環形状に配置されている。なお、「平面視」とは、孔部11の中心軸に沿った方向から繊維強化樹脂体10を眺めた場合に、視認される視野のことを指す。
図1Cに示すように、連結糸12は、固定片部12a,12bと連結片部12cとをそれぞれ複数有している。実施の形態1では、固定片部12aは、繊維強化樹脂体10の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されている。そして、固定片部12bは、繊維強化樹脂体10の下面P2上、すなわち、下方側に配置された繊維層13jの下面(第2の表面)P2上に沿って配置されている。連結糸12の縫製の容易さの観点から、固定片部12a、12bの径方向の位置は、孔部11の周縁からの距離が2mm以上であることが好ましい、また、固定片部12a、12bの周方向の長さは2mm以上、20mm以下が好ましい。
また、連結片部12cは、繊維層13a〜13jをその積層方向に沿って、すなわち繊維強化樹脂体10の厚さ方向に沿って貫通している。固定片部12aと固定片部12bとは、連結片部12cを介して接続されている。実施の形態1では、固定片部12a,12bおよび連結片部12cは、1本の連結糸12として一体に形成されている。
従って、平面視において、孔部11の外周部では、繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12によって固定されている。より具体的には、繊維層13a〜13jが、その積層方向において固定片部12aと固定片部12bとにより挟持され、固定片部12aと固定片部12bとを接続する連結片部12cにより固定されている。
ここで、孔部11の外周部とは、孔部11の周縁方向に沿った領域であって、例えば孔部11の周囲以外の繊維強化樹脂体10の定常部に発生する応力の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上の応力が作用する領域をいう。一例として、繊維強化樹脂体10が厚さ0の無限板であり、孔部11を真円と仮定したときの前記領域について説明する。遠方から一様な引張応力を受ける場合、最大応力を含む線上での垂直応力分布は次式で与えられる。
σ=σ(1+a/2x+3a/2x
ここで、σは孔部中心を通り遠方応力に平行な線上の垂直応力、σは遠方引張応力、aは孔部の半径、xは孔部中心を通り遠方応力に平行な線上の孔部中心からの距離である。この式からわかるように、最大応力はx=aの位置(孔部の縁)で発生し、そのときの応力σy,max=は3σとなる。また、この式から、x=1.5aの位置の応力は、σy,1.5a=41/27σ≒1.52σとなる。また、この式から、x=2aの位置の応力は、σy,2a=39/32σ≒1.21σとなる。従って、この場合の前記領域は、平面視において、孔部の縁(x=a)から、孔部の中心(x=0)を基準に孔部の半径の2倍の距離(x=2a)だけ径方向外側に広がる中空円状の領域となる。そして、この場合の前記領域は、好ましくは、平面視において、孔部の縁(x=a)から、孔部の中心(x=0)を基準に孔部の半径の1.5倍の距離(x=1.5a)だけ径方向外側に広がる中空円状の領域となる。
なお、実施の形態1の繊維強化樹脂体10は、10層の繊維層13a〜13jにより構成される場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、繊維強化樹脂体は少なくとも2層の繊維層により構成されていればよい。
また、各繊維層13a〜13jは、互いに異なる方向に配向された繊維束14a,14bが複数(より具体的には2つ)積層されたNCF材により構成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。各繊維層は、例えば、1つの方向に配向された(引き揃えられた)繊維束のみを含んでいてもよい。具体的には、繊維強化樹脂体の各繊維層が、第1の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第1繊維束)14aのみを含む第1繊維層と、第2の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第2繊維束)14bのみを含む第2繊維層とにより構成され、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが交互に積層されていてもよい。この場合は、1つの繊維層につき1種類の繊維束を含むことになる。
また、繊維強化樹脂体の各繊維層が、例えば、互いに直交(交差)する向きに配向された1組の繊維束を編み込んだ平織り材により構成されていてもよい。具体的には、平織り材は、第1の方向に配向された(引き揃えられた)第1繊維束と、第2の方向に配向された(引き揃えられた)第2繊維束とが格子状に互いに編み込まれている。
繊維強化樹脂体の各繊維層がNCF材により構成されている場合は、後述するインフュージョン成形やレジントランスファーモールド(Resin Transfer Molding:RTM)成形において、金型に繊維層を敷き詰めて積層構造を構築するのが容易である点で、平織り材を用いた場合に比べて有利である。一方、繊維強化樹脂体の各繊維層が平織り材により構成されている場合は、繊維束同士が編んであるため繊維がほどけにくい点で、NCF材を用いた場合に比べて有利である。
また、繊維束14a,14bを構成する繊維の種類は特に限定されず、炭素繊維、合成繊維やガラス繊維等の各種の繊維を用いることができるが、機械的強度が高くかつ軽量な繊維強化樹脂体を得ることができる点で、繊維束14a,14bには炭素繊維を用いることが好適である。
また、連結糸12の材料は、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、後述するように、複数の繊維層をその積層方向において固定して、孔部11の外周部に応力が集中した場合であっても、当該外周部における繊維層の破損を防止できるものであればよい。連結糸12としては特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、ガラス、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレンなどの繊維を用いることができる。連結糸12の太さは10dtex以上、500dtex以下が好ましく、孔部11の大きさ、固定片部12a、12bの長さなどに合わせて適宜選択することが好ましい。連結糸12は細いと下記詳述する縫製工程で糸切れし、また太すぎると繊維強化樹脂体10を構成する繊維束14a、14bのよれが大きくなり、繊維強化樹脂体10の強度や剛性が低下するおそれがある。
実施の形態1では、繊維強化樹脂体10に1つの孔部11が形成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、繊維強化樹脂体10に孔部が複数個形成されていてもよい。
<実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。図2Aは、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。
図2Aに示すように、実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法は、積層・裁断工程(S11)、孔あけ工程(S12)、賦形工程(S13)、縫製工程(S14)および樹脂含浸工程(S15)を含んでおり、この順序で繊維強化樹脂体を製造する例である。
積層・裁断工程(S11)では、まず0°の繊維方向の配向パターンを有する繊維束14aと、90°の繊維方向の配向パターンを有する繊維束14bとがステッチ加工により固定されたNCF材16を複数用意する。そして、積層順が繊維束14a、繊維束14b、繊維束14a、繊維束14b・・・となるようにNCF材16を5枚積層したものを2つ作製する。積層されたNCF材16(以下、積層されたNCF材16を積層織物体17と称する)は、例えば裁断機(シートカッター)により所定の大きさに裁断する。
次に、孔あけ工程(S12)では、積層織物体17の厚さ方向に沿って、例えば裁断機やレーザーにより孔部11を形成する。この際、孔部11は、積層織物体17をその厚さ方向(NCF材16の積層方向)に沿って貫通して、繊維束14a,14bを切断するように形成される。
次に、賦形工程(S13)では、積層・裁断工程(S11)および孔あけ工程(S12)を経て作製された孔部11を有する2つの積層織物体17を、図1Cに示した繊維層13a〜13jの積層構造となるよう、積層織物体17を重ね、重ねた方向に沿って加熱および加圧しプリフォーム(中間体)19を形成する。ここで、NCF材16の表面には、上記したようにバインダーを付着させているので、加熱および加圧によりNCF材16同士が仮接合されたプリフォーム19を得ることができ、当該プリフォーム19は、その後の工程での取り扱いにより形崩れすることがない。なお、賦形工程(S13)において、積層織物体17は、金型に入れて加圧することが好ましい。この際、金型に予め孔部11に係合する突起を設けておくことで、平面視における孔部11の位置ずれを抑制することができる。
次に、縫製工程(S14)では、プリフォーム19を構成する各NCF材16の積層方向に沿って、連結糸12を縫い込む。具体的には、図1A〜図1Cに示すように、連結糸12をプリフォーム19の上面(第1の表面)P1上に一定の長さ分配置する。このプリフォーム19の上面P1上に配置された部分が固定片部12aに相当する。その後、連結糸12を積層織物体17の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の下面(第2の表面)P2上から出す。このプリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部12cに相当する。その後、連結糸12をプリフォーム19の下面P2上に一定の長さ分配置する。このプリフォーム19の下面P2上に配置された部分が固定片部12bに相当する。その後、連結糸12を積層織物体17の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の上面P1上から出す。これらを繰り返し、連結糸12をプリフォーム19に縫い込む。連結糸12は、平面視において、プリフォーム19に形成された孔部11の外周部に配置される。
なお、縫い込んだ連結糸12が緩まないように、被連結物の厚さが、縫製工程時およびそれ以降で変化しないことが肝要である。そのため、実施の形態1および後述する変形例1〜変形例3で示すように、積層織物体17を加圧する賦形工程を経て得られたプリフォーム19を被連結物とし、その後に縫製工程を行うことが望ましい。
次に、樹脂含浸工程(S15)では、例えばインフュージョン成形により、連結糸12を縫い込んだプリフォーム19を金型の上に配置し、フィルムで周囲をシールドした後、プリフォーム19上部に樹脂15を含浸させ硬化させる。具体的には、連結糸12を縫い込んだプリフォーム19にフィルムを被覆し、プリフォーム19に樹脂15を真空中にて含浸させ、この樹脂15を硬化させた後にフィルム及び金型から剥がす。以上の工程により、実施の形態1の繊維強化樹脂体10が完成する。
実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法は、賦形工程(S13)の前に孔あけ工程(S12)を行うため、孔あけ工程(S12)において一度に切断する繊維束14a,14bの厚さが薄く、孔部11を形成しやすい点で、有利である。また、実施の形態1では、孔あけ工程(S12)の後に縫製工程(S14)を行うため、縫製工程(S14)において孔部11を基準に連結糸12を縫製でき、平面視における、孔部11に対する連結糸12の位置精度を高められる点で、有利である。
ここで、実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法の第1の変形例〜第3の変形例について説明する。図2Bは、第1の変形例(以下、変形例1)に係る繊維強化樹脂体の製造方法を示す各工程の要部断面図である。図2Cは、第2の変形例(以下、変形例2)に係る繊維強化樹脂体の製造方法を示す各工程の要部断面図である。図2Dは、第3の変形例(以下、変形例3)に係る繊維強化樹脂体の製造方法を示す各工程の要部断面図である。変形例1〜変形例3の積層・裁断工程、賦形工程、縫製工程、孔あけ工程および樹脂含浸工程の具体的な内容は、上記した実施の形態1の積層・裁断工程(S11)、賦形工程(S13)、縫製工程(S14)、孔あけ工程(S12)および樹脂含浸工程(S15)と基本的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
図2Bに示すように、変形例1の繊維強化樹脂体の製造方法は、積層・裁断工程(S21)、賦形工程(S22)、縫製工程(S23)、孔あけ工程(S24)および樹脂含浸工程(S25)を含んでおり、この順序で繊維強化樹脂体を製造する例である。変形例1では、孔あけ工程(S24)を、賦形工程(S22)の後、かつ縫製工程(S23)の後であって樹脂含浸工程(S25)の前に行う点が、実施の形態1と相違する。
変形例1では、賦形工程(S22)によってプリフォーム19の厚さ等の寸法が決まった後に孔あけ工程(S24)によって孔部11を形成するため、プリフォーム19に対する孔部11の位置精度を高められる点で、有利である(以下説明する変形例2〜4でも同様)。また、変形例1では、縫製工程(S23)の後に孔あけ工程(S24)を行うので、切断された繊維束14a,14bの端部が縫製工程(S23)によって縫い込まれた連結糸12で拘束され、ばらけにくくなる点で、有利である。
図2Cに示すように、変形例2の繊維強化樹脂体の製造方法も、積層・裁断工程(S31)、賦形工程(S32)、孔あけ工程(S33)、縫製工程(S34)および樹脂含浸工程(S35)を含んでいるが、変形例2では、孔あけ工程(S33)を、賦形工程(S32)の後であって縫製工程(S34)の前に行う点が、実施の形態1と相違する。
変形例2では、孔あけ工程(S33)の後に縫製工程(S34)を行うため、縫製工程(S34)において孔部11を基準に連結糸12を縫製でき、平面視における孔部11に対する連結糸12の位置精度を高められる点で、有利である。
図2Dに示すように、変形例3の繊維強化樹脂体の製造方法も、積層・裁断工程(S41)、賦形工程(S42)、縫製工程(S43)、樹脂含浸工程(S44)および孔あけ工程(S45)を含んでいるが、変形例3では、孔あけ工程(S45)を、積層・裁断工程(S41)〜樹脂含浸工程(S44)を経た後、最後に行う点が、実施の形態1と相違する。
変形例3では、樹脂含浸工程(S44)の後に孔あけ工程(S45)を行うので、切断された繊維束14a,14bの端部が樹脂15で拘束さればらけにくくなる点で、有利である。
<実施の形態1の特徴および効果>
実施の形態1に係る繊維強化樹脂体10の特徴の一つは、図1A〜図1Cに示すように、10層(複数)の繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12によって固定されていることである。そして、連結糸12は、平面視において、各繊維層13a〜13jが含む繊維束14a,14bを切断するように形成された孔部11の外周部に配置されている。
実施の形態1では、このような構成を採用したことにより、繊維強化樹脂体10に力が入力し、孔部11の外周部に応力集中が生じた場合でも、当該外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損を抑制し、繊維強化樹脂体10の破壊強度を高めることができる。以下、その理由について具体的に説明する。
前述したように、孔部11を有する繊維強化樹脂体10は、当該繊維強化樹脂体10へ力が入力された場合に、形成した孔部11の外周部に応力が集中する。そして、孔部11は、繊維層13a〜13jが含む繊維束14a,14bを切断するように形成されているため、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの繊維層では、応力集中により拡大した応力下で、繊維層間における層間剥離が生じやすい。繊維層13a〜13jの層間剥離が生じると、それが一部の繊維層間であっても、剥離した繊維層の負担が大きくなり、その繊維層を構成する繊維束14a,14b自体の破断が生じやすくなる。そして、この繊維層における層間剥離、繊維束の破断が連鎖するように繊維強化樹脂体全体に進行し、繊維強化樹脂体が破壊するに至るのである。
これに対して、実施の形態1の繊維強化樹脂体10は、平面視において、孔部11の外周部では、複数の繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12(固定片部12a,12bおよび連結片部12c)によって固定されている。より具体的には、複数の繊維層13a〜13jが、その積層方向において固定片部12aと固定片部12bとにより挟持され、固定片部12aと固定片部12bとを接続する連結片部12cにより固定されている。こうすることで、繊維強化樹脂体10に力が入力された場合であっても、応力が集中する孔部11の外周部において、複数の繊維層がその積層方向において連結糸12によって固定されているため、繊維層13a〜13j間での層間剥離を抑制し、繊維強化樹脂体の破壊を防止することができる。
以下、実施の形態1の繊維強化樹脂体を適用した構造部材の具体例である車両用ホイールについて説明する。
図3Aは、実施の形態1の繊維強化樹脂体の適用例である車両用ホイールを示す平面図、図3Bは、当該車両用ホイールを示す側面図である。図3Cは、図3BのA−A線矢視拡大断面図である。図3Dは、図3CのH部分の要部拡大断面図である。
図3Aに示すように、実施の形態1の車両用ホイール1は、略円環形状のリム部5と、ディスク部3とからなる。ディスク部3とリム部5とは、機械的結合要素(例えばボルト7)によって結合されている。
ディスク部3は、車軸が締結されるハブ部3aと、ハブ部3aの外周面から放射状に伸びる複数のスポーク部3bによって構成される。ディスク部3は、例えばアルミニウム製であり、例えば、鋳造または鍛造で製造される。なお、ディスク部3の材質は特に限定されず、ディスク部3の形状は図示した例には限定されるものではない。
図3Cに示すように、リム部5は、両端部にフランジ部5a,5gが形成され、フランジ部5a、5gの内側に、それぞれ外側から順に、ビードシート部5b,5f、ハンプ部5c,5e、ドロップ部5dが形成される。なお、リム部5の形状は図示した例には限られない。
リム部5の所定の部位の内部には、樹脂部9a,9b,9c,9d,9eが配置される。より詳細には、フランジ部5aには樹脂部9aが配置され、ハンプ部5cには樹脂部9bが配置され、ドロップ部5dのハンプ部5c側の端部近傍には樹脂部9cが配置され、ハンプ部5eには樹脂部9dが配置され、フランジ部5gには樹脂部9eが配置される。各樹脂部9a〜9eは、リム部5における厚さの厚い部位となる。
図3Dに示すように、リム部5は、主に、実施の形態1の繊維強化樹脂体10により構成されている。前述したように、実施の形態1に係る繊維強化樹脂体10は、積層された10層の繊維層13a〜13jを有している。繊維層13a〜13jは、それぞれ、第1の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第1繊維束)14aと、第2の方向に配向された(引き揃えられた)繊維束(第2繊維束)14bと、繊維束14a,14bに含浸された樹脂15とにより構成されている。
ハンプ部5cには周方向に所定の間隔で孔部11が形成されている。また、それぞれの孔部11に対応する位置におけるディスク部3には、雌ネジ部3cが形成されている。リム部5の外面側から、孔部11に機械的結合要素であるボルト7が挿通される。ボルト7の先端が、リム部5の内周に配置されたディスク部3の雌ネジ部3cと螺合することによって、リム部5とディスク部3とが接合される。すなわち、ハンプ部5cがリム部5とディスク部3との結合部5hとなる。ボルト7の頭部は、樹脂で被覆されており、孔部11の外面側には樹脂が配置されている。
前述の図1A〜図1Cに示すように、実施の形態1では、繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12によって固定されている。そして、連結糸12は、平面視において、孔部11の外周部に配置されている。
そのため、図3Dに示すように、例えば、結合部5hに力が入力された場合に、応力が集中する孔部11の外周部において、繊維層13a〜13jがその積層方向において連結糸12によって固定されているため、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損が抑制され、その結果、リム部5の破壊を防止することができる。
なお、リム部5を構成する繊維強化樹脂体は、実施の形態1の繊維強化樹脂体10である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、後述する実施の形態2の繊維強化樹脂体20〜実施の形態6の繊維強化樹脂体60であってもよい。
(実施の形態2)
以下、本発明の第2の実施の形態(以下、実施の形態2と称する)について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態2を示す各図中において、実施の形態1の繊維強化樹脂体と同一または同様の部分または構成要素は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さず、省略する(以下、説明する他の実施の形態についても同様)。
<実施の形態2の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態2の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図4Aは、実施の形態2に係る繊維強化樹脂体を示す平面図、図4Bは、実施の形態2に係る繊維強化樹脂体を示す底面図、図4Cは、実施の形態2に係る繊維強化樹脂体において、図4Aおよび図4BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。図4A〜図4Cに示すように、実施の形態2の繊維強化樹脂体20は、基本的には実施の形態1の繊維強化樹脂体と同様に構成されているが、繊維層13a〜13jは、第1の表面P1(繊維層13aの上面)および第1の表面P1の反対側の第2の表面P2(繊維層13jの下面)を有し、孔部11の外周部には、孔部11の周縁に沿うように第1の表面P1上に配置された第1拘束部27を有し、連結糸22が第1拘束部である拘束糸27と係合することにより、繊維束14a,14bが、積層方向に束ねられて固定される点で、相違している。以下、実施の形態2の繊維強化樹脂体20について、詳述する。
図4A〜図4Cに示すように、実施の形態2の繊維強化樹脂体20において、繊維層13a〜13jには、その積層方向に沿って、連結糸22が縫い込まれている。連結糸22は、平面視において、孔部11の外周部に配置されている。
また、図4Aおよび図4Cに示すように、実施の形態2では、平面視において、孔部11の外周部には、繊維または繊維束からなる第1拘束部である拘束糸27が孔部11の周縁に沿って略円環形状に配置されている。糸状をなす1本の拘束糸27は、繊維強化樹脂体20の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されている。実施の形態2では、第1拘束部が糸状の拘束糸27である場合を例に説明するが、これに限定されず、第1拘束部は、リング状の一体物(例えば金属製や樹脂製)であってもよい。
図4Cに示すように、連結糸22は、折返片部(第1折返片部)22aと、固定片部22bと、連結片部(第1連結片部)22cとをそれぞれ複数有している。折返片部22aは、繊維強化樹脂体20の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置され、拘束糸27と係合している。より具体的には、拘束糸27は、折返片部22aと繊維層13aの上面P1との間に挟持されている。固定片部22bは、繊維強化樹脂体20の下面P2上、すなわち、下方側に配置された繊維層13jの下面(第2の表面)P2上に沿って配置されている。
また、連結片部22cは、繊維層13a〜13jをその積層方向に沿って、すなわち繊維強化樹脂体20の厚さ方向に沿って貫通している。折返片部22aと固定片部22bとは、連結片部22cを介して接続されている。実施の形態2では、折返片部22a、固定片部22bおよび連結片部22cは、一本の連結糸22として一体に形成されている。
従って、平面視において、孔部11の外周部では、10層(複数)の繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸22および拘束糸27によって固定されている。より具体的には、10層の繊維層13a〜13jが、その積層方向において拘束糸27と固定片部22bとにより挟持され、拘束糸27に係合する折返片部22aと固定片部22bとを接続する連結片部22cにより固定されている。
<実施の形態2の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態2の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。
実施の形態2の繊維強化樹脂体の製造方法は、図2Aに示す実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法と同様であり、積層・裁断工程(S11)、孔あけ工程(S12)、賦形工程(S13)、縫製工程(S14)および樹脂含浸工程(S15)を含んでおり、この順序で繊維強化樹脂体を製造する。しかしながら、実施の形態2の縫製工程(S14)では、図4Cに示すように、プリフォーム19の上面P1上に拘束糸27を配置した後に、プリフォーム19の厚さ方向、すなわちプリフォーム19中に含まれる積層されたNCF材16の積層方向に沿って連結糸22を縫い込む点で、相違する。なお、縫製工程(S14)におけるプリフォーム19は、図4Cにおいて、繊維強化樹脂体20を構成する繊維層13a〜13jに樹脂15を含浸する前の(樹脂15が無い)状態のものであり、積層されたNCF材16が賦形された状態のものである。以下、実施の形態2の縫製工程について、図4Cを参照しつつ詳細に説明する。
実施の形態2の製造方法の縫製工程(S14)では、図4Cに示すように、まず、拘束糸27をプリフォーム19の上面P1上に配置する。その後、連結糸22をプリフォーム19の下面P2上からNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の上面P1上へと出す。このプリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部22cに相当する。その後、拘束糸27をまたぐように拘束糸27の周縁に沿って連結糸22を屈曲させ折り返す。この折り返した部分が折返片部22aに相当する。その後、連結糸22をプリフォーム19の上面P1上からNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の下面P2上へと出す。このプリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部22cに相当する。その後、連結糸22をプリフォーム19の下面P2上に一定の長さ分配置する。このプリフォーム19の下面P2上に配置された部分が固定片部22bに相当する。その後、連結糸22をNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の上面P1上から出す。これらを繰り返し、連結糸22をプリフォーム19に縫い込む。なお、連結糸22および拘束糸27は、平面視において、プリフォーム19に形成された孔部11の外周部に配置される。
<実施の形態2の特徴および効果>
実施の形態2の繊維強化樹脂体20では、実施の形態1の繊維強化樹脂体と同様に、繊維強化樹脂体20に力が入力された場合であっても、応力が集中する孔部11の外周部において、複数の繊維層がその積層方向において連結糸22および拘束糸27によって固定されているため、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損を防止することができる。
さらに、実施の形態2に係る繊維強化樹脂体20では、拘束糸27が繊維強化樹脂体20の上面(第1の表面)P1上に、孔部11の周縁方向に沿って略円環形状に配置され、拘束糸27に係合する連結糸22の折返片部22aによって、拘束糸27が孔部11の全周に亘って繊維強化樹脂体20の上面P1に押し付けられる。そのため、拘束糸27によって、孔部11の全周に亘って複数の繊維層13a〜13jを、その積層方向に沿って確実に固定することができ、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損をより効果的に防止することができる。また、実施の形態2では、拘束糸27を上糸により、連結糸22を下糸によりそれぞれ構成することができるため、繊維強化樹脂体20に連結糸22および拘束糸27を、縫製機等を使用して機械的に容易に縫い込むことが可能であり、工業生産上コスト的に有利である。
なお、連結糸22および拘束糸27の材料は、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、複数の繊維層をその積層方向において固定して、孔部11の外周部に応力が集中した場合であっても、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損を防止できるものであればよい。ただし、前述したように、連結糸22は、折返片部22aを形成するために、拘束糸27の周縁に沿って屈曲させ折り返す必要があるため、連結糸22は、拘束糸27よりも柔軟性の高い材料からなることが好ましい。
一方、前述したように、拘束糸27は、繊維強化樹脂体20の上面P1上に、孔部11の周方向に沿って略円環形状に配置されるものであり、連結糸22に係合して孔部11の全周に亘って繊維強化樹脂体20の上面P1を均一に押圧できるようにするためには、拘束糸27は、連結糸22よりも剛直な材料からなることが好ましい。そのため、連結糸22は、例えば熱可塑性樹脂からなる繊維からなり、拘束糸27は、例えばガラス繊維からなることが好ましい。また、このような観点から、前述したように、第1拘束部27は、糸状の拘束糸27ではなく、リング状の一体物であってもよい。
(実施の形態3)
以下、本発明の第3の実施の形態(以下、実施の形態3と称する)について、図面を参照して説明する。
<実施の形態3の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態3の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図5Aは、実施の形態3に係る繊維強化樹脂体を示す平面図、図5Bは、実施の形態3に係る繊維強化樹脂体を示す底面図、図5Cは、実施の形態3に係る繊維強化樹脂体において、図5Aおよび図5BのA−A’線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。図5A〜図5Cに示すように、実施の形態3の繊維強化樹脂体30は、基本的には実施の形態2の繊維強化樹脂体と同様に構成されているが、第1拘束部37よりも孔部11の径方向外側において、孔部11の周縁に沿うように第1の表面P1上に配置された第2拘束部38を有し、連結糸32が第1拘束部37および第2拘束部38とそれぞれ係合することにより、繊維束14a,14bが、積層方向に束ねられて固定される点で、相違している。以下、実施の形態3の繊維強化樹脂体30について、詳述する。
図5A〜図5Cに示すように、実施の形態3の繊維強化樹脂体30において、10層の繊維層13a〜13jには、その積層方向に沿って、連結糸32が縫い込まれている。連結糸32は、平面視において、孔部11の外周部に配置されている。
また、図5Aおよび図5Cに示すように、実施の形態3では、平面視において、孔部11の外周部には、実施の形態2と同様に、第1拘束部である拘束糸37が孔部11の周縁に沿って略円環形状に配置されている。拘束糸37は、繊維強化樹脂体30の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されている。
そして、実施の形態3では、平面視において、孔部11の外周部において、拘束糸37よりも孔部11の径方向外側には、繊維または繊維束からなる第2拘束部である糸状の拘束糸38が孔部11の周縁に沿って略円環形状に配置されている。拘束糸38は、繊維強化樹脂体30の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されている。実施の形態3では、第1拘束部37および第2拘束部38が、それぞれ糸状の拘束糸37および拘束糸38である場合を例に説明するが、これに限定されず、第1拘束部37および第2拘束部38は、リング状の一体物(例えば金属製や樹脂製)であってもよい。
図5Cに示すように、連結糸32は、折返片部(第1折返片部)32aと、固定片部32bと、連結片部(第1連結片部)32cと、折返片部(第2折返片部)32dと、連結片部(第2連結片部)32eとをそれぞれ複数有している。折返片部32a,32dは、繊維強化樹脂体30の上面P1上、すなわち、上面P1側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置され、折返片部32aは拘束糸37と、折返片部32dは拘束糸38と、それぞれ係合している。より具体的には、拘束糸37は、折返片部32aと繊維層13aの上面P1との間に挟持され、拘束糸38は、折返片部32dと繊維層13aの上面P1との間に挟持されている。固定片部32bは、繊維強化樹脂体30の下面P2上、すなわち、下方側に配置された繊維層13jの下面(第2の表面)P2上に沿って配置されている。
また、連結片部32c,32eは、繊維層13a〜13jを、その積層方向に沿って、すなわち繊維強化樹脂体30の厚さ方向に沿って貫通している。折返片部32aと固定片部32bとは、連結片部32cを介して接続されている。また、折返片部32dと固定片部32bとは、連結片部32eを介して接続されている。実施の形態3では、折返片部32a、固定片部32b、連結片部32c、折返片部32dおよび連結片部32eは、一本の連結糸32として一体に形成されている。
従って、平面視において、孔部11の外周部では、10層の繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸32および拘束糸37,38によって固定されている。より具体的には、繊維層13a〜13jは、その積層方向において拘束糸37と固定片部32bとにより挟持され、拘束糸37に係合する折返片部32aと固定片部32bとを接続する連結片部32cにより固定されている。加えて、繊維層13a〜13jは、その積層方向において拘束糸38と固定片部32bとにより挟持され、拘束糸38に係合する折返片部32dと固定片部32bとを接続する連結片部32eにより2重に固定されている。
<実施の形態3の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態3の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。
実施の形態3の繊維強化樹脂体の製造方法は、図2Aに示す実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法と同様に、積層・裁断工程(S11)、孔あけ工程(S12)、賦形工程(S13)、縫製工程(S14)および樹脂含浸工程(S15)を含んでおり、この順序で繊維強化樹脂体を製造する。しかしながら、実施の形態3の縫製工程(S14)では、図5Cに示すように、プリフォーム19の上面P1上に拘束糸37,38を配置した後に、プリフォーム19の厚さ方向、すなわちプリフォーム19中に含まれる積層されたNCF材16の積層方向に沿って連結糸32を縫い込む点で、相違する。なお、縫製工程(S14)におけるプリフォーム19は、図5Cにおいて、繊維強化樹脂体30を構成する繊維層13a〜13jに樹脂15を含浸する前の(樹脂15が無い)状態のものであり、積層されたNCF材16が賦形された状態のものである。以下、実施の形態3の縫製工程について、図5Cを参照しつつ詳細に説明する。
図5Cに示すように、まず、拘束糸37,38をプリフォーム19の上面P1上に配置する。その後、連結糸32をプリフォーム19の下面P2上からNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の上面P1上へと出す。ここで、連結糸32のうち、プリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部32cに相当する。その後、拘束糸37をまたぐように拘束糸37の周縁に沿って連結糸32を屈曲させ折り返す。この折り返した部分が折返片部32aに相当する。その後、連結糸32をプリフォーム19の上面P1上からNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の下面P2上へと出す。このプリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部32cに相当する。
次いで、連結糸32をプリフォーム19の下面P2上に一定の長さ分配置する。このプリフォーム19の下面P2上に配置された部分が固定片部32bに相当する。その後、連結糸32をNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の上面P1上から出す。このプリフォーム19の内部に埋設されている部分が連結片部32eに相当する。その後、拘束糸38をまたぐように拘束糸38の周縁に沿って連結糸32を屈曲させ折り返す。この折り返した部分が折返片部32dに相当する。その後、連結糸32をプリフォーム19の上面P1上からNCF材16の積層方向に沿ってプリフォーム19の内部に通し、プリフォーム19の下面P2上へと出す。これらを繰り返し、連結糸32をプリフォーム19に縫い込む。なお、連結糸32および拘束糸37,38は、平面視において、プリフォーム19に形成された孔部11の外周部に配置される。
<実施の形態3の特徴および効果>
実施の形態3の繊維強化樹脂体30では、実施の形態2の繊維強化樹脂体と同様に、繊維強化樹脂体30に力が入力された場合であっても、応力が集中する孔部11の外周部において、複数の繊維層13a〜13jがその積層方向において連結糸32および拘束糸37,38によって固定されているため、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損を防止することができる。
さらに、実施の形態3の繊維強化樹脂体30では、連結糸32の折返片部32aによって拘束糸37全体が繊維強化樹脂体30の上面P1に押し付けられる。さらに、拘束糸37よりも孔部11の径方向外側において、連結糸32の折返片部32dによって拘束糸38全体が繊維強化樹脂体30の上面P1に押し付けられる。そのため、実施の形態3では、拘束糸37,38によって、孔部11の全周に亘り、かつ、孔部11の径方向の異なる位置において2重に固定しているため、10層の繊維層13a〜13jをその積層方向に沿ってより確実に固定することができ、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損をより効果的に防止することができる。また、実施の形態3の繊維強化樹脂体30でも、実施の形態2と同様に、拘束糸37および38を上糸により、連結糸32を下糸によりそれぞれ構成することができるため、繊維強化樹脂体30に連結糸32および拘束糸37,38を、縫製機等を使用して機械的に容易に縫い込むことが可能であり、工業生産上コスト的に有利である。
(実施の形態4)
以下、本発明の第4の実施の形態(以下、実施の形態4と称する)について、図面を参照して説明する。
<実施の形態4の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態4の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図6Aは、実施の形態4に係る繊維強化樹脂体を示す平面図、図6Bは、実施の形態4に係る繊維強化樹脂体を示す底面図である。図6Aおよび図6Bに示すように、実施の形態4の繊維強化樹脂体40は、基本的には実施の形態1の繊維強化樹脂体と同様に構成されているが、その連結糸12は、孔部11の周縁の一部に沿って配置されている点で、相違している。以下、実施の形態4の繊維強化樹脂体40について、詳述する。
図6Aおよび図6Bに示すように、実施の形態4の繊維強化樹脂体40において、10層の繊維層13a〜13jには、その積層方向に沿って、連結糸12が縫い込まれている。連結糸12は、平面視において、孔部11の外周部に配置されている。
そして、図7Aおよび図7Bに示すように、実施の形態4の連結糸12は、平面視において、孔部11の中心Oを基準として、周方向において角度θの範囲にのみ、つまり孔部11の周縁の一部に沿って配置されている。
実施の形態4の連結糸12は、図1A〜図1Cに示す実施の形態1の連結糸と同様に、図6Aに示す固定片部12aと、図6Bに示す固定片部12bと、固定片部12aと固定片部12bとを接続する連結片部(図示は省略する)とをそれぞれ複数有している。実施の形態4では、固定片部12aは、繊維強化樹脂体40の上面P1上、すなわち、上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されている。そして、固定片部12bは、繊維強化樹脂体40の下面P2上、すなわち、下方側に配置された繊維層13jの下面(第2の表面)P2上に沿って配置されている。
また、図示しないが、連結片部は、繊維層13a〜13jを、その積層方向に沿って、すなわち繊維強化樹脂体40の厚さ方向に沿って貫通している。
従って、平面視において、孔部11の外周部では、繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12によって固定されている。より具体的には、繊維層13a〜13jが、その積層方向において固定片部12aと固定片部12bとにより挟持され、固定片部12aと固定片部12bとを接続する連結片部により固定されている。
<実施の形態4の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態4の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。
実施の形態4の繊維強化樹脂体の製造方法は、図2Aに示す実施の形態1の繊維強化樹脂体の製造方法と同様に、積層・裁断工程(S11)、孔あけ工程(S12)、賦形工程(S13)、縫製工程(S14)および樹脂含浸工程(S15)を含んでおり、この順序で繊維強化樹脂体を製造する。しかしながら、図6Aおよび図6Bに示すように、実施の形態4の縫製工程(S14)では、平面視において、プリフォーム19に形成された孔部11の外周部に、連結糸12を縫い込む際に、孔部11の中心Oを基準として、周方向において角度θの範囲にのみ配置する点で、相違する。
<実施の形態4の特徴および効果>
実施の形態4に係る繊維強化樹脂体40の特徴の一つは、図6Aおよび図6Bに示すように、10層の繊維層13a〜13jが、その積層方向において連結糸12によって固定されていることである。そして、連結糸12は、平面視において、孔部11の外周部に配置されている。特に、実施の形態4では、連結糸12が、平面視において、孔部11の中心Oを基準として、周方向において角度θの範囲にのみ配置されている。
例えば、図3A〜図3Dに示した車両用ホイール1のリム部5のボルト7が挿通される孔部11には、構造上、特定の方向に大きな引張応力やせん断応力が作用することがある。このように特定方向に大きな応力が作用する場合に、実施の形態4に係る繊維強化樹脂体40を適用することで、効果的に、繊維強化樹脂体40の破壊を防止することができる。
すなわち、上記した特定方向に作用する応力に対応するよう、孔部11の中心Oを基準として、周方向において応力が集中する角度θの範囲に連結糸12を配置することで、応力が集中する孔部11の外周部において、複数の繊維層13a〜13jがその積層方向において連結糸12によって固定されているため、孔部11の外周部に存在する繊維層13a〜13jの破損を防止することができる。
実施の形態4では、実施の形態1の連結糸と同様の構成を有する連結糸12により、複数の繊維層がその積層方向において固定されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態2の連結糸22および拘束糸27、または、実施の形態3の連結糸32および拘束糸37,38と同様の構成により、複数の繊維層がその積層方向において固定されていてもよい。
(実施の形態5)
以下、本発明の第5の実施の形態(以下、実施の形態5と称する)について、図面を参照して説明する。
<実施の形態5の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態5の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図7は、実施の形態5に係る繊維強化樹脂体において、実施の形態3における図5Aおよび図5BのA−A’線に相当する線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。図7に示すように、実施の形態5に係る繊維強化樹脂体50は、基本的に実施形態3の繊維強化樹脂体と同様に構成されているが、連結糸32は、繊維強化樹脂体50の外部に露出していない点で、相違している。
すなわち、図7に示すように、実施の形態5に係る繊維強化樹脂体50は、実施の形態3の繊維強化樹脂体30と同様に、積層された複数の繊維層13a〜13jを有しており、その厚さ方向、つまり繊維層13a〜13jの積層方向に沿い、繊維層13a〜13jに含まれる繊維束14a,14bを切断するように貫通して形成された孔部(不図示)を有している。
ここで、実施の形態5では、複数の繊維層13a〜13jのうち、積層方向において内部に存在する4層の繊維層13d,13e,13f,13gには、その積層方向に沿って、連結糸32が縫い込まれている。連結糸32は、平面視において、孔部の外周部に配置されている。なお、連結糸32の構成は、基本的に実施の形態3と同様である。
実施の形態5では、平面視において、孔部の周縁に沿って孔部の外周部に配置される第1拘束部である拘束糸37は、連結糸32が縫い込まれる繊維層13d〜13gのうち上方側に配置された繊維層13dの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されており、その拘束糸37よりも孔部の径方向外側には、実施の形態3と同様に、第2拘束部である拘束糸38が配置されている。
上記構成の実施の形態5の繊維強化樹脂体50によれば、平面視において、孔部の外周部では、複数の繊維層13d〜13gが、その積層方向において、連結糸32および拘束糸37,38によって固定されている。より具体的には、繊維層13d〜13gは、その積層方向において繊維層13dの上面(第1の表面)P1上に配置された拘束糸37と繊維層13gの下面(第2の表面)P2上に配置された固定片部32bとにより挟持され、拘束糸37に係合する折返片部32aと固定片部32bとを接続する連結片部32cにより固定されている。加えて、繊維層13d〜13gは、その積層方向において、繊維層13dの上面(第1の表面)P1上に配置された拘束糸38と固定片部32bとにより挟持され、拘束糸38に係合する折返片部32dと固定片部32bとを接続する連結片部32eにより2重に固定されている。
<実施の形態5の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態5の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。図8は、実施の形態5に係る繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。
図8に示すように、実施の形態5の繊維強化樹脂体の製造方法は、図7に示す繊維層13d〜13gを形成するための1つのプリフォーム59aの製造工程(S51a〜S54a)と、繊維層13a〜13cおよび繊維層13h〜13jを形成するための2つのプリフォーム59bの製造工程(S51b〜S53b)と、プリフォーム59a,59bを組み合わせるアッセンブリ工程(S55a)と、組み合わせたプリフォーム59a,59bに樹脂を含浸させる樹脂含浸工程(S56a)とを有している。
プリフォーム59aの製造工程は、図7に示す繊維層13d〜13gの積層パターンとなるよう4枚のNCF材16を積層し、得られた積層織物体17aを裁断する積層・裁断工程(S51a)、積層織物体17aの孔あけ工程(S52a)、賦形工程(S53a)および縫製工程(S54a)を含んでいる。また、プリフォーム59bの製造工程は、図7に示す繊維層13a〜13cおよび繊維層13h〜13jの積層パターンとなるよう各々3枚のNCF材16を積層し、得られた積層織物体17bを裁断する積層・裁断工程(S51b)、積層織物体17bの孔あけ工程(S52b)および賦形工程(S53b)を含んでいる。
実施の形態5の積層・裁断工程(S51a,S51b)ならびに孔あけ工程(S52a,S52b)の具体的内容は、それぞれ実施の形態1の積層・裁断工程(S11)ならびに孔あけ工程(S12)と同様である。
賦形工程(S53a,S53b)では、積層・裁断工程(S51a,S51b)および孔あけ工程(S52a,S52b)によって作製された孔部11を有する積層織物体17a,17bを加圧し、プリフォーム(中間体)19a,19bを形成する。なお、賦形工程S53bで形成された繊維層13a〜13cおよび繊維層13h〜13jを形成するための2つのプリフォーム19bは、その後、そのままアッセンブリ工程S55aに供されるプリフォーム59bとなる。
上記賦形工程(S53a)で形成されたプリフォーム19aは、その後、縫製工程(S54a)に供される。実施の形態5の縫製工程(S54a)は、基本的に実施の形態3の縫製工程(S14)と同様に、プリフォーム19aの上面P1上に拘束糸37,38を配置した後に、プリフォーム19aの厚さ方向、すなわちプリフォーム19aに含まれる積層されたNCF材16の積層方向に沿って、連結糸32を縫い込んでプリフォーム59aを形成する工程である。その具体的な内容は、上述した実施の形態3の縫製工程(S14)と同様であるので、詳細な説明は省略する。
上記プリフォーム59aの縫製工程(S53a)およびプリフォーム59bの賦形工程(S53b)の後に行うアッセンブリ工程(S55a)は、図7に示す繊維層13a〜13jの積層構造となるよう、プリフォーム59b,59a,59bの順に組み合わせて積層する工程である。
樹脂含浸工程(S56a)では、上記実施の形態1の製造方法と同様に、例えばインフュージョン成形により、アッセンブリ工程(S55a)で組み合わされたプリフォーム59b,59a,59bに含まれる各NCF材16の繊維束に樹脂15を含浸させ硬化させる。以上の工程により、実施の形態5の繊維強化樹脂体50を得ることができる。
<実施の形態5の特徴および効果>
実施の形態5の繊維強化樹脂体50では、実施の形態3の繊維強化樹脂体と同様に、繊維強化樹脂体50に力が入力された場合であっても、応力が集中する孔部の外周部において、複数の繊維層13d〜13gがその積層方向において連結糸32および拘束糸37,38によって固定されているため、孔部の外周部に存在する繊維層13d〜13gの破損を防止することができる。
さらに、実施の形態5の繊維強化樹脂体50では、その繊維層13a〜13jのうち積層方向において内部に存在する繊維層13d〜13gを連結糸32および拘束糸37,38で固定しており、繊維強化樹脂体50の表面(上面および下面)に露出する繊維層13a,13jには、連結糸32および拘束糸37,38が配置されていない。そのため、繊維強化樹脂体50の表面(上面および下面)に連結糸32および拘束糸37,38が露出しない。こうすることで、実施の形態5の繊維強化樹脂体50では、繊維強化樹脂体50の孔部にボルト等の接続部材を挿通させた際に、連結糸32および拘束糸37,38が前記接続部材と干渉するおそれがない。また、実施の形態5の繊維強化樹脂体50では、上記のように連結糸32および拘束糸37,38が外部に露出していないので、繊維強化樹脂体50の製造時および使用時において、連結糸32および拘束糸37,38が摩耗する可能性を低減することができる。これらの点で、実施の形態5は、実施の形態1〜実施の形態4よりも有利である。
また、実施の形態5の繊維強化樹脂体の製造方法によれば、縫製工程(S54a)によって連結糸および拘束糸を縫い込んだプリフォーム59aと縫製工程(S54a)を経ずに連結糸等が縫い込まれていないプリフォーム59bとをアッセンブリ工程(S55a)において組み合わせることによって、繊維強化樹脂体50を形成している。そのため、プリフォーム59a,59bを適宜組み合わせることによって、積層数の異なる複数のパターンの繊維強化樹脂体を容易に作製することができる。
実施の形態5では、実施の形態3と同様の構成を有する連結糸32および拘束糸37,38により、複数の繊維層がその積層方向において固定されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1の連結糸12、または、実施の形態2の連結糸22および拘束糸27と同様の構成により、複数の繊維層がその積層方向において固定されていてもよい。
(実施の形態6)
以下、本発明の第6の実施の形態(以下、実施の形態6と称する)について、図面を参照して説明する。
<実施の形態6の繊維強化樹脂体の構成>
以下、実施の形態6の繊維強化樹脂体の構成について説明する。図9は、実施の形態6に係る繊維強化樹脂体において、実施の形態3における図5Aおよび図5BのA−A’線に相当する線に沿って切断した構造を示す要部断面図である。図9に示すように、実施の形態6に係る繊維強化樹脂体60は、基本的に実施の形態3の繊維強化樹脂体30と同様に構成されているが、連結糸32で固定される2層以上の繊維層が、繊維強化樹脂体60の上面P1側および下面P2側の各々の最表層である繊維層13a,13bおよび繊維層13i,13jである、点で、相違している。なお、上面P1側で固定された繊維層13a、13bは、繊維強化樹脂体60の上面P1側の最表層である繊維層13aを含み、下面P2側で固定された繊維層13i、13jは、繊維強化樹脂体60の下面P2側の最表層である繊維層13jを含んでいる。
すなわち、図9に示すように、実施の形態6に係る繊維強化樹脂体60は、実施の形態3の繊維強化樹脂体30と同様に、積層された10層の繊維層13a〜13jを有しており、その厚さ方向、つまり繊維層13a〜13jの積層方向に沿い、繊維層13a〜13jに含まれる繊維束14a,14bを切断するように貫通して形成された孔部(不図示)を有している。
ここで、実施の形態6の繊維強化樹脂体60では、繊維層13a〜13jのうち、積層方向において上方側に存在する繊維層13a,13b、および、下方側に存在する繊維層13j,13iには、それぞれ連結糸32が縫い込まれている。連結糸32は、平面視において、孔部の外周部に配置されている。なお、連結糸32の構成は、基本的に実施の形態3と同様である。また、繊維層13a,13bを連結糸32により固定する構成と、繊維層13i,13jを連結糸32により固定する構成とは、繊維強化樹脂体60の厚さ方向の中心線に対し対称であり、基本的に同様であるので、以下、繊維層13a,13bを固定する構成のみ説明し、繊維層13i,13jを固定する構成については説明を省略する。
実施の形態6でも、平面視において、実施の形態3と同様に、孔部の周縁に沿って孔部の外周部に配置される第1拘束部である拘束糸37は、連結糸32が縫い込まれる繊維層13a,13bのうち繊維強化樹脂体60の上方側に配置された繊維層13aの上面(第1の表面)P1上に沿って配置されており、その拘束糸37よりも孔部の径方向外側には、第2拘束部である拘束糸)38が配置されている。
上記構成の実施の形態6の繊維強化樹脂体60によれば、平面視において、孔部の外周部では、2層(複数)の繊維層13a,13bが、その積層方向において連結糸32および拘束糸37,38によって固定されている。より具体的には、繊維層13a,13bは、その積層方向において繊維層13aの上面(第1の表面)P1に配置された拘束糸37と繊維層13bの下面(第2の表面)P2に配置された固定片部32bとにより挟持され、拘束糸37に係合する折返片部32aと固定片部32bとを接続する連結片部32cにより固定されている。加えて、繊維層13a,13bは、その積層方向において繊維層13aの上面(第1の表面)P1に配置された拘束糸38と繊維層13bの下面(第2の表面)P2に配置された固定片部32bとにより挟持され、拘束糸38に係合する折返片部32dと固定片部32bとを接続する連結片部32eにより2重に固定されている。
<実施の形態6の繊維強化樹脂体の製造方法>
以下、実施の形態6の繊維強化樹脂体の製造工程について説明する。図10は、実施の形態6に係る繊維強化樹脂体の製造工程を示す要部断面図である。
図10に示すように、実施の形態6の繊維強化樹脂体の製造方法は、実施の形態5の繊維強化樹脂体の製造方法と同様に、図9に示す繊維層13a,13bおよび繊維層13i,13jを形成するための2つのプリフォーム69aの製造工程(S51a〜S54a)と、繊維層13c〜13eおよび繊維層13f〜13hを形成するための2つのプリフォーム69bの製造工程(S51b〜S53b)と、各々2つのプリフォーム69aとプリフォーム69bを組み合わせるアッセンブリ工程(S55b)と、組み合わせたプリフォーム69a,69bに樹脂を含浸させる樹脂含浸工程(S56b)を有している。なお、実施の態様6の積層・裁断工程(S51a,S51b)、孔あけ工程(S52a,S52b)、賦形工程(S53a,S53b)並びに縫製工程(S54a)の具体的内容は、それぞれ実施の形態5と同様であるので、説明を省略し、以下、アッセンブリ工程(S55b)および樹脂含浸工程(S56b)について説明する。
図10に示すように、プリフォーム69aの製造工程(S51a〜S54a)を経て、連結糸32で固定され積層された2枚のNCF材16を含む2つのプリフォーム69aが形成され、プリフォーム69bの製造工程(S51b〜S53b)を経て、連結糸32で固定されない積層された3枚のNCF材16を含む2つのプリフォーム69bが形成される。
アッセンブリ工程(S55b)は、図9に示す繊維層13a〜13jの積層構造となるよう、各々2つのプリフォーム69a,69bをプリフォーム69a,69b,69b,69aの順に積層する。
そして、樹脂含浸工程(S56b)では、上記実施の形態1の製造方法と同様に、例えばインフュージョン成形により、アッセンブリ工程(S55b)で組み合わされたプリフォーム69a,69b,69b,69aに含まれる各NCF材16の繊維束に樹脂15を含浸させ硬化させる。以上の工程により、実施の形態6の繊維強化樹脂体60を得ることができる。
<実施の形態6の特徴および効果>
実施の形態6の繊維強化樹脂体60では、実施の形態3の繊維強化樹脂体と同様に、繊維強化樹脂体60に力が入力された場合であっても、応力が集中する孔部の外周部において、繊維層13a,13bおよび繊維層13i,13jを、双方とも、その積層方向において連結糸32および拘束糸37,38によって固定している。
すなわち、実施の形態6では、破損する可能性の高い繊維強化樹脂体60の上方側の最外層である繊維層13aが繊維層13bと、下方側の最外層である繊維層13jが繊維層13iと、それぞれ連結糸32および拘束糸37,38によって固定されているので、孔部11の外周部に存在する繊維層13a,13bおよび繊維層13i,13jの破損を防止でき、繊維強化樹脂体60の破壊をより効果的に防止することができる。
なお、実施の形態6の繊維強化樹脂体の製造方法によれば、縫製工程(S54a)によって連結糸および拘束糸を縫い込んだプリフォーム69aと縫製工程(S54a)を経ずに連結糸等が縫い込まれていないプリフォーム69bとをアッセンブリ工程(S55b)において組み合わせることによって、繊維強化樹脂体60を形成している。そのため、プリフォーム69a,69bを適宜組み合わせることによって、積層数の異なる複数のパターンの繊維強化樹脂体を容易に作製することができる。
実施の形態6では、実施の形態3と同様の構成を有する連結糸32および拘束糸37,38により、複数の繊維層がその積層方向において固定されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1の連結糸12、または、実施の形態2の連結糸22および拘束糸27と同様の構成により、複数の繊維層がその積層方向において固定されていてもよい。
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例>
実施例として、図1A〜図1Cに示す構成の実施の形態1の繊維強化樹脂体10からなる試験片10aを作成し、下記詳述するせん断強度試験に供した。試験片10aの各構成要素には以下の材料を用いた。炭素繊維としては、東レ製T300を使用した。NCF材16としては東レ製T300炭素繊維を0°の一方向材からなる繊維束14aと、90°の一方向材からなる繊維束14bをポリエステル材でトリコットチェーンステッチし、2層で一枚となる厚さが0.4mmのNCF材16を用いた。NCF材16に付着させるバインダーとしてはポリアミド系ホットメルト接着剤であるEMS製Griltex2APを用いた。連結糸12には83dtexのポリエステル繊維を用いた。試験片10aを構成する樹脂15には、硬化剤を含む日進レジンZ1エポキシ樹脂を用いた。上記材料を使用し、図2Aを参照し説明した繊維強化樹脂体の製造方法に従って、実施の形態1の繊維強化樹脂体10からなる試験片10aを作成した。
[積層・裁断工程]
図2Aに示すように、繊維束14a(配向方向0°)および繊維束14b(配向方向90°)を含むNCF材16を、炭素繊維の配向方向が上から0°,90°,0°,90°,90°,0°,90°,0°となるように4枚積層して積層織物体17を形成した。ここで、配向方向が0°とは、せん断強度試験の模式図である図11Aに示したせん断応力の作用方向Hに相当するせん断強度試験の引張方向(試験片10aの長手方向)のことを指す。積層工程が完了した後、タカトリ製裁断機TAC−Cを用いて積層織物体17を所定の大きさとなるよう裁断した。
[賦形工程]
上記のように裁断された積層織物体17を、油圧プレスにより140℃で5分間、0.5MPaの加圧力で圧着し、プリフォーム19を形成した。
[孔あけ工程]
賦形工程で形成されたプリフォーム19の所望の位置に穴あけ用ポンチを使用して、プリフォーム19に含まれる繊維束14a,14bが切断されるよう8mmφの孔部(貫通孔)11を形成した。
[縫製工程]
孔あけ工程が完了したプリフォーム19の孔部11の周縁において、孔部11の開口辺縁から半径方向に3mm離れた位置に、図1A〜図1Cに示すパターンに従い連結糸12にてプリフォーム19に含まれる4層積層されたNCF材16を縫製した。プリフォーム19の上面P1および下面P2に配置される固定片部12a,12bは各々2mmピッチとした。
[樹脂含浸工程]
縫製工程が完了したプリフォーム19にインフュージョン成形により樹脂15を含浸し、その後、含浸した樹脂15の硬化処理を行い、幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmの繊維強化樹脂体10からなる5枚の試験片10aを得た。
[せん断強度試験]
上記形成した5枚の試験片10aの強度を、図11Aに示す、ASTM D935に準じたせん断強度試験(ダブルラップ試験)により評価した。具体的には、図11Aに示すように、繊維強化樹脂体からなる試験片10aと同じ形状の2枚のJIS−AC4CHからなるアルミニウム板90の間に、試験片10aの端部を挟み込んだ。アルミニウム板90と試験片10aのラップ部Iの長さは25mmとし、試験片10aの孔部11およびアルミニウム板90の孔部91は、当該ラップ部Iの略中央とした。そして、2枚のアルミニウム板90と試験片10aとのラップ部Iにおいて、2枚のアルミニウム板90の孔部91および試験片10aの孔部11が平面視において重なるように配置した後、孔部11および孔部91に金属カラー93を挿通し、さらに、金属カラー93にボルト92を挿通した。ボルト92は、ワッシャー94を介してナット95と係合固定させた。なお、金属カラー93の材質はS45Cとし、ボルト92、ワッシャー94、ナット95の材質は、それぞれSUS304とした。また、ボルト92はM6を用い、トルク9N・mで締めこんだ。この状態で、試験片10aとアルミニウム板90とを長手方向Hに沿い、図中矢印Gに示すように互いに逆方向に1mm/分の試験速度で引っ張り、5枚の試験片10aのそれぞれについて破断時の荷重を測定し、5枚の試験片10aの破断時のせん断応力の平均値を求めた。
<比較例>
連結糸12を有さない以外は、上記実施例10aと同様に形成した比較例の5枚の試験片を、上記せん断強度試験に供し、比較例の5枚の試験片の破断時のせん断応力の平均値を求めた。
<試験結果>
図11Bにせん断強度試験の結果を示す。図11Bに示すように、実施例の試験片10aの破断時のせん断荷重の平均値を10とした場合に、比較例の破断時のせん断応力の平均値は7.7であった。本発明に係る繊維強化樹脂体の構成を適用した実施例の試験片10aは、適用しなかった比較例の試験片に対し1.3倍と破壊強度が高まった。
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 車両用ホイール
3 ディスク部
3a ハブ部
3b スポーク部
3c 雌ネジ部
5 リム部
5a フランジ部
5b ビードシート部
5c ハンプ部
5d ドロップ部
5e ハンプ部
5f ビードシート部
5g フランジ部
5h 結合部
7 ボルト
9a,9b,9c,9d,9e 樹脂部
10,20,30,40,50,60 繊維強化樹脂体
10a 試験片
11 孔部
12,22,32 連結糸
12a,12b,22b,32b 固定片部
12c,22c,32c,32e, 連結片部
13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h,13i,13j 繊維層
14a,14b 繊維束
15 樹脂
16 ノンクリンプ織物材(NCF材)
17,17a,17b 積層織物体
19,19a,19b,59a,59b,69a,69b プリフォーム
22a,32a,32d 折返片部
27,37,38 拘束糸
90 アルミニウム板
91 孔部
92 ボルト
93 金属カラー
94 ワッシャー
95 ナット
I ラップ部
P1 上面
P2 下面

Claims (10)

  1. 積層された複数の繊維層を有する繊維強化樹脂体であって、
    前記複数の繊維層は、配向された繊維束を含み、
    前記複数の繊維層をその積層方向に貫通して、前記繊維束を切断する孔部を有し、
    前記孔部の外周部には、前記複数の繊維層のうちの2層以上の繊維層に対して、その積層方向に縫い込まれた連結糸が設けられ、
    前記連結糸は、前記2層以上の繊維層にそれぞれ含まれる前記繊維束を、前記積層方向に束ねて固定していることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  2. 請求項1記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、平面視において、前記孔部の周縁に沿って配置されていることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  3. 請求項2記載の繊維強化樹脂体において、
    前記2層以上の繊維層は、第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有し、
    前記孔部の前記外周部には、前記孔部の周縁に沿うように前記第1の表面上に配置された第1拘束部を有し、
    前記連結糸が前記第1拘束部と係合することにより、前記繊維束が、前記積層方向に束ねられて固定されることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  4. 請求項3記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、前記第1拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第1折返片部と、前記第2の表面上に配置された複数の固定片部と、前記第1折返片部と前記固定片部とを連結する複数の第1連結片部とにより構成され、
    前記積層方向に沿って、前記第1折返片部と前記固定片部とが前記第1連結片部によって連結されることによって、前記繊維束が、前記第1拘束部と前記固定片部との間に挟持固定されることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  5. 請求項3記載の繊維強化樹脂体において、
    前記第1拘束部よりも前記孔部の径方向外側において、前記孔部の周縁に沿うように前記第1の表面上に配置された第2拘束部を有し、
    前記連結糸が前記第1拘束部および前記第2拘束部とそれぞれ係合することにより、前記繊維束が、前記積層方向に束ねられて固定されることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  6. 請求項5記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、前記第1拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第1折返片部と、前記第2拘束部と係合し、前記第1の表面上に配置された複数の第2折返片部と、前記第2の表面上に配置された複数の固定片部と、前記第1折返片部と前記固定片部とを連結する第1連結片部と、前記第2折返片部と前記固定片部とを連結する第2連結片部とにより構成され、
    前記積層方向に沿って、前記第1折返片部と前記固定片部とが前記第1連結片部によって連結され、かつ、前記第2折返片部と前記固定片部とが前記第2連結片部によって連結されることによって、前記繊維束が、前記第1拘束部と前記固定片部との間および前記第2拘束部と前記固定片部との間に挟持固定されることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  7. 請求項2記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、前記孔部の周縁の一部に沿って配置されていることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  8. 請求項2記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、前記孔部の周縁の全周に亘って配置されていることを特徴とする繊維強化樹脂体。
  9. 請求項1記載の繊維強化樹脂体において、
    前記連結糸は、前記繊維強化樹脂体の外部に露出していないことを特徴とする繊維強化樹脂体。
  10. 請求項1記載の繊維強化樹脂体において、
    前記2層以上の繊維層は、前記複数の繊維層のうちの最外層を含むことを特徴とする繊維強化樹脂体。
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