以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
以下では、接合体が、油圧シリンダ(流体圧シリンダ)1のシリンダチューブ100である場合を説明する。
まず、図1を参照して、接合体としてのシリンダチューブ100を備える油圧シリンダ1の全体構成を説明する。
油圧シリンダ1は、二つのシリンダ室であるロッド側室3及び反ロッド側室4内の作動油(作動流体)の油圧により伸縮作動するアクチュエータである。
図1に示すように、油圧シリンダ1は、円筒状のシリンダチューブ100と、シリンダチューブ100内に挿入されるピストンロッド101と、ピストンロッド101の端部に設けられシリンダチューブ100の内周面に沿って摺動するピストン2と、を備える。
シリンダチューブ100には、一端(先端)の開口部を封止すると共にピストンロッド101を摺動自在に支持する円筒状のシリンダヘッド5が設けられる。シリンダヘッド5は、周方向に並ぶ複数の締結ボルト(図示省略)を介してシリンダチューブ100に締結される。
図1に示すように、シリンダチューブ100の基端部とピストンロッド101の先端部には、油圧シリンダ1を他の機器に取り付けるための取付部(クレビス)100A、101Aがそれぞれ設けられる。ピストンロッド101の基端部には、ねじ締結によってピストン2が取り付けられる。
シリンダチューブ100の内部は、ピストン2によって、ロッド側室3及び反ロッド側室4に仕切られる。ロッド側室3及び反ロッド側室4には、作動流体としての作動油が充填される。
油圧シリンダ1は、シリンダチューブ100に設けられるポート(図示省略)を通じて作動油が反ロッド側室4に供給されるとともにロッド側室3から排出されることでピストンロッド101が伸長方向へ移動する。また、油圧シリンダ1は、作動油がロッド側室3に供給されるとともに反ロッド側室4から排出されることでピストンロッド101が収縮方向へ移動する。伸縮作動時にシリンダチューブ100内部のシリンダ室(ロッド側室3、反ロッド側室4)に作動油が給排されることにより、シリンダチューブ100には作動油の油圧が内圧として作用する。
次に、主に図2から図6を参照して、シリンダチューブ100の製造方法について説明する。
シリンダチューブ100は、図2に示すように、第1部材としてのチューブ本体10と、第2部材としてのヘッド部材20とを、摩擦圧接で接合することにより製造される。より具体的には、チューブ本体10とヘッド部材20とを回転軸O回りで相対回転させた状態で当接させ、これにより生じる摩擦熱によって接合する(後述する接合工程)。
まず、図2から図4を参照して、接合前のチューブ本体10及びヘッド部材20の構成について説明する。図2は、チューブ本体10の中心軸とヘッド部材20の中心軸とが、互いに同軸的に配置され、後述する摩擦圧接の回転軸Oと一致した状態を示すものである。
チューブ本体10は、図1及び2に示すように、軸方向の両端面15に開口する貫通孔11を有する円筒状に形成される。貫通孔11が、ヘッド部材20と接合されるチューブ本体10の端面15に形成される中空部に相当する。
図2に示すように、チューブ本体10の一方の端面15に、ヘッド部材20が接合される。ヘッド部材20が接合される端面15(接合面)は、摩擦圧接における回転軸O(チューブ本体10の中心軸)に垂直な平坦面である垂直端面16と、垂直端面16の径方向内側に設けられ回転軸Oに対して傾斜して形成される傾斜端面17と、を有する。垂直端面16は、環状の平面であり、チューブ本体10の外周面に連続して形成される。傾斜端面17は、回転軸Oに対して45°で傾斜するテーパ面であり、垂直端面16とチューブ本体10の内周面とに接続される。
中空部である貫通孔11を形成するチューブ本体10の内周面は、回転軸Oを中心とする円筒面として形成され傾斜端面17に接続される第1円筒内周面(円筒内周面)12と、第1円筒内周面12と連続し回転軸Oに対して傾斜する傾斜内周面13と、回転軸Oを中心とする円筒面として形成され傾斜内周面13に連続する第2円筒内周面14と、を有する。第2円筒内周面14は、ピストン2が摺動する摺動面である。
傾斜内周面13は、回転軸Oに対して傾斜して形成されるテーパ面(円錐面)である。傾斜内周面13は、接合面である端面15から軸方向に沿って離れるにつれて内径が小さくなる。
ヘッド部材20は、チューブ本体10の貫通孔11に嵌合するように形成される突出部21と、突出部21から径方向外側に向かって設けられるフランジ部25と、を有する。
フランジ部25には、突出部21とは軸方向の反対側に取付部100Aが設けられる。フランジ部25は、外径がチューブ本体10の外径と同一に形成される。
チューブ本体10に接合されるフランジ部25の端面26は、回転軸Oに垂直な環状の平担面であるフランジ垂直面27と、回転軸Oに傾斜するフランジ傾斜面28と、を有する。フランジ垂直面27は、フランジ部25の外周面とフランジ傾斜面28とに連続する。
フランジ傾斜面28は、中心軸に対して45°に傾斜して形成されるテーパ面(円錐面)である。フランジ傾斜面28は、フランジ垂直面27からチューブ本体10に向けて回転軸Oに沿って離れるにつれ外径が小さくなる。このように、チューブ本体10の傾斜内周面13とフランジ部25のフランジ傾斜面28は、互いに対応した形状、具体的には、回転軸Oに対して45°だけ傾いたテーパ面形状に形成される。
突出部21は、フランジ部25と同軸的に設けられる。突出部21は、外周面として、フランジ部25のフランジ傾斜面28に連続し回転軸Oを中心とする円筒面として形成される円筒外周面22と、円筒外周面22に連続し回転軸Oに対して傾斜する傾斜外周面23と、を有する。傾斜外周面23は、フランジ部25から回転軸Oに沿って離れるにつれ外径が小さくなるテーパ面(円錐面)である。つまり、突出部21は、フランジ部25に接続される根元部分が円筒外周面22を有する円柱状に形成され、フランジ部25から離れた先端部分が傾斜外周面23を有する円錐台形状に形成される。なお、以下では、突出部21において、フランジ部25側を突出部21の「根元」、根元の反対側を突出部21の「先端」と称する。
次に、接合体であるシリンダチューブ100の製造方法について説明する。
シリンダチューブ100は、以下の製造工程により製造される。なお、以下の工程(2)が第1接合工程に相当し、工程(4)が第2接合工程に相当する。
(1)まず、図2に示すように、チューブ本体10の一方の端面15(接合面)とヘッド部材20のフランジ部25の端面26(接合面)とが対向するように同軸的に配置する。
(2)次に、ヘッド部材20を回転軸Oを中心に回転させた状態で、チューブ本体10とヘッド部材20とを回転軸Oに沿って互いに近接する方向に相対移動させる。本実施形態では、チューブ本体10をヘッド部材20に向けて移動させる。これによって、図3及び図4に示すように、ヘッド部材20の突出部21がチューブ本体10の貫通孔11に所定のクリアランス(以下、「嵌合クリアランスFC」と称する。)をもって嵌合し、チューブ本体10の端面15とヘッド部材20のフランジ部25の端面26とが当接する状態(以下、「当接状態」と称する。)とする。
ここで、図4を参照して、当接状態について詳細に説明する。
チューブ本体10とヘッド部材20とを回転軸Oに沿って近接させて当接状態とする際、チューブ本体10の傾斜端面17とヘッド部材20のフランジ部25のフランジ傾斜面28とが当接する一方、チューブ本体10の垂直端面16とフランジ部25のフランジ垂直面27とは接触せずに軸方向において離間する。よって、チューブ本体10の垂直端面16とフランジ部25のフランジ垂直面27との間には所定のクリアランス(以下、「対向クリアランスOC」と称する。)が形成される。
また、当接状態では、嵌合クリアランスFCに面するフランジ部25の端面26(フランジ傾斜面28)の一部も、チューブ本体10には当接しない。
このように、フランジ部25の端面26は、当接状態において、チューブ本体10の端面15に当接するフランジ傾斜面28の一部(以下、「当接部26a」と称する。)と、当接部26aよりも径方向内側であってチューブ本体10の端面15とは当接しない部分(以下、「非当接部26b」と称する。)と、当接部26aよりも径方向外側であってチューブ本体10の端面15とは当接しない部分(以下、「逃げ部26c」と称する。)と、に分けられる。
非当接部26bは、フランジ部25の端面26において嵌合クリアランスFCに面する部位であり、フランジ傾斜面28の径方向内側の一部が非当接部26bに相当する。つまり、非当接部26bは、当接部26aと突出部21とを接続する部位である。
逃げ部26cは、フランジ部25の端面26において対向クリアランスOCに面する部位であり、フランジ傾斜面28の径方向外側の一部とフランジ垂直面27とが逃げ部26cに相当する。
当接状態では、ヘッド部材20の突出部21は、円筒外周面22がチューブ本体10の第1円筒内周面12と対向し、傾斜外周面23が第1円筒内周面12と傾斜内周面13とに対向するように、チューブ本体10の貫通孔11に嵌合する。当接状態では、嵌合クリアランスFCは、突出部21の根元側から先端側に向けて、増加する。具体的には、嵌合クリアランスFCは、チューブ本体10の第1円筒内周面12と突出部21の円筒外周面22との間における径方向のクリアランス(以下、「第1クリアランスFC1」と称する。)と、第1円筒内周面12と外周傾斜面との間における径方向のクリアランス(以下、「第2クリアランスFC2」と称する。)と、傾斜内周面13と傾斜外周面23との間のクリアランス(以下、「第3クリアランスFC3」と称する。)と、を含む。第1クリアランスFC1は、軸方向に沿って一定の大きさを有する。第2クリアランスFC2は、根元側から先端側に向けて、第1クリアランスFC1から増加する。第3クリアランスFC3は、軸方向に沿って一定の大きさを有する。つまり、第1クリアランスFC1が、嵌合クリアランスFCにおける最小のクリアランスである。また、第1クリアランスFC1が根元側クリアランスに相当し、第3クリアランスFC3が先端側クリアランスに相当する。
なお、嵌合クリアランスFCが「根元側から先端側に向けて増加」するとは、根元側から先端側へ向かうにつれてクリアランスが減少する領域がないことを意味するものであり、クリアランスが軸方向に沿って一定である領域(例えば、第1円筒内周面12と円筒外周面22との間の第1クリアランスFC1)を含むことを排除しない。つまり、嵌合クリアランスFCが「根元側から先端側に向けて増加」するとは、ある軸方向位置の嵌合クリアランスFCが、当該軸方向位置における嵌合クリアランスFCよりも根元側にある嵌合クリアランスFCと比較して、同じ又は大きい状態を意味するものである。
以上のような当接状態において、回転軸O中心に回転するヘッド部材20とチューブ本体10を所定の押し付け力で押し付けることで、チューブ本体10の傾斜端面17とヘッド部材20のフランジ傾斜面28における当接部26aとの間で摩擦熱を発生させる。摩擦熱により、傾斜端面17及び当接部26aが軟化する。軟化した当接部26aからの伝熱により、端面15とは当接しない非当接部26bと逃げ部26cも加熱される。さらに、図5に示すように、軟化したフランジ部25の当接部26a及びチューブ本体10の傾斜端面17の材料の一部は、嵌合クリアランスFC及び対向クリアランスOCへ流動する。よって、嵌合クリアランスFCに流動した材料に接触するフランジ部25の非当接部26b、突出部21の円筒外周面22、及びチューブ本体10の第1円筒内周面12も加熱される。また、対向クリアランスOCに流動した材料に接触するフランジ部25の逃げ部26cとチューブ本体10の垂直端面16も加熱される。
(3)フランジ部25における非当接部26bが充分に軟化されるまで加熱した時点で、ヘッド部材20の回転を停止させる。具体的には、予め非当接部26bが軟化するまでのチューブ本体10の押し付けによる移動量又は押し付け時間を実験等により定めておき、その移動量又は押し付け時間に達した時点でヘッド部材20の回転を制御する。
(4)ヘッド部材20の回転を停止させると、チューブ本体10を所定量だけチューブ本体10へ向けて移動させるように、チューブ本体10をさらに大きな押し付け力でヘッド部材20側に押し付ける。これにより、加熱された高温部が、外周側及び内周側に塑性流動する。内周側に塑性流動した流動材料は、チューブ本体10の内周面と突出部21の外周面との間の嵌合クリアランスFCに導かれ、突出部21の根元側から嵌合クリアランスFCを充填する。
ここで、図5中の二点鎖線は、チューブ本体10とヘッド部材20との相対回転を停止して両者を近接させた際のヘッド部材20を示すものである。上述のように、傾斜内周面13は、チューブ本体10の端面15に向かうにつれ内径が小さくなる形状である。このため、回転軸Oに沿ってヘッド部材20をチューブ本体10に向けて移動させると、図5に示すように、傾斜内周面13と外周傾斜面との間の第3クリアランスFC3は、移動に伴い小さくなる。具体的には、第3クリアランスFC3の大きさは、隙間量t1から隙間量t2へと小さくなる。
上記(4)の工程において、内周側に塑性流動する材料は、軸方向において傾斜内周面13の範囲内まで、嵌合クリアランスFC(第3クリアランスFC3)を充填する。言い換えれば、図6に示すように、内周側に塑性流動した材料の先端部Tが、傾斜内周面13の径方向の内側に設けられ傾斜内周面13の軸方向範囲内に位置するように、チューブ本体10の軸方向の移動量が設定される。
外周側に塑性流動した流動材料は、対向クリアランスOCに導かれ、当接部26aから径方向外側へ向けて流動して対向クリアランスOCを充填する。さらに、外周側に塑性流動した材料は、チューブ本体10の外周へバリBとして排出される(図6参照)。
(5)最後に、上記(4)の押し付け状態を所定時間保持することによって、加熱されて軟化したチューブ本体10の端面15とヘッド部材20のフランジ部25の端面26との相互拡散を促進させ、両者の接合が完了する(図6参照)。ヘッド部材20では、チューブ本体10の端面15が当接する当接部26aが摩擦熱により軟化すると共に、非当接部26b及び逃げ部26cも加熱されて軟化する。よって、図6に示すように、ヘッド部材20は、当接部26aに加えて非当接部26b及び逃げ部26cにおいてもチューブ本体10に接合される。なお、図6中の破線は、チューブ本体10とヘッド部材20との接合界面を示すものである。
また、上記(2)において、当接部26a及び非当接部26bで軟化した材料は、一部がチューブ本体10の内周面と突出部21の外周面との間の嵌合クリアランスFCに導かれる。嵌合クリアランスFCへ流動した材料と突出部21の外周面との間で生じる摩擦熱によって突出部21の外周面の一部も加熱される。したがって、摩擦熱で加熱され軟化された突出部21の外周面の一部も、チューブ本体10の内周面に接合される。このように、本実施形態では、フランジ部25の端面26の全域にわたってチューブ本体10に接合され、図6に破線で示す接合界面が突出部21の根元部からチューブ本体10の外周面にまで径方向外側に延びるように構成される。
以上のような接合工程により、チューブ本体10とヘッド部材20との接合が行われる。
なお、上記(4)の第2接合工程においては、チューブ本体10とヘッド部材20との相対回転を停止させて互いに押し付ける構成に限られず、上記(2)の第1接合工程における相対回転速度(具体的には、ヘッド部材20の回転数)よりも低い相対回転速度によってチューブ本体10とヘッド部材20とを互いに押し付けてもよい。別の観点からいえば、本実施形態における接合体の製造方法の摩擦圧接は、いわゆるブレーキ式であってもよいし、フライホイール式であってもよい。特許請求の範囲における「前記第1部材と前記第2部材との相対回転速度が前記第1接合工程よりも低い状態」とは、相対回転速度がゼロよりも大きく第1接合工程における相対回転速度よりも低い状態のみならず、相対回転速度がゼロの状態(つまり、相対回転を停止させた状態)も含む意味である。
チューブ本体10とヘッド部材20との接合面の外周側に排出されたバリBは、接合完了後に切除され、チューブ本体10とヘッド部材20との外周は滑らかに連続した状態に加工される。なお、バリBの存在が問題ないような場合には、バリBの切除を行わず、シリンダチューブ100の外周側にバリBが残っていてもよい。
嵌合クリアランスからシリンダチューブの内側空間にまで流動材料が流出すると、シリンダチューブの内周側にもバリが生じる。嵌合クリアランス内の流動材料が冷却されバリとなる過程においては、いわゆる酸化スケールが生じる。シリンダチューブの内周側のバリや酸化スケールは、除去や洗浄が困難である。このような内周側のバリが生じた状態でシリンダチューブの内部に作動油が導かれると、酸化スケールが作動油に混入し、いわゆるコンタミとなるおそれがある。
よって、本実施形態の接合工程においては、嵌合クリアランスFCを充填する一方、シリンダチューブ100の内側空間に流出しないように、塑性流動がコントロールされる。具体的には、流動材料の先端部Tが、突出部21の端面から図6中左側へ突出してバリとならないように、流動材料がコントロールされる。これにより、作動油内へのコンタミの発生をより効果的に防止することができる。言い換えれば、本実施形態に係る製造方法では、嵌合クリアランスFCへの塑性流動をコントロールすることにより、シリンダチューブ100の内周側に生じるバリを抑制することができる。
また、接合工程の完了後には、チューブ本体10とヘッド部材20との摩擦圧接部に対して、超音波探傷などの非破壊試験による品質検査が行われる。このような品質検査によって、摩擦圧接部における接合の不具合などを検出することができる。
次に、本実施形態に係る接合体の製造方法の作用について説明する。
本実施形態では、チューブ本体10は、チューブ本体10の端面15に向かうにつれ内径が小さくなる傾斜内周面13を有し、嵌合クリアランスFCに充填される流動材料の先端部Tは、傾斜内周面13の軸方向の範囲内に位置する。上記工程(5)において、回転軸Oに沿ってヘッド部材20をチューブ本体10に向けて移動させると、傾斜内周面13と外周傾斜面との間の第3クリアランスFC3は、移動に伴い小さくなる(図5参照)。つまり、当接状態における第3クリアランスFC3(図5中実線、隙間量t1)は相対的に大きく、接合完了時における第3クリアランスFC3(図5中二点鎖線、隙間量t2)は相対的に小さい。よって、当接状態において第3クリアランスFC3を比較的大きく設定することができ、傾斜内周面13への傾斜外周面23の意図しない接触を抑制することができる。また、接合完了時に第3クリアランスFC3が相対的に小さく設定されることにより、第3クリアランスFC3に充填される流動材料(バリ)が空気に触れる表面積が小さくなるため、バリによってチューブ本体10(シリンダチューブ100)の内部に生じる酸化スケールの発生を抑制することができる。このように、当接状態においては第3クリアランスFC3が相対的に大きく、接合完了時には第3クリアランスFC3が小さくなる構成であるため、接合不良と酸化スケールの発生とを同時に抑制することができる。
また、摩擦圧接による接合においては、ヘッド部材の加工精度や、ヘッド部材と回転軸との芯ずれなどに起因して、ヘッド部材の突出部が回転軸に対して偏心して回転し、回転軸に対する突出部の振れが生じることがある。突出部の振れが生じると、チューブ本体の貫通孔の内周面とヘッド部材の突出部とが意図せず局所的に接触するおそれがある。このような局所的な接触が生じると、接触箇所の母材が溶融し、意図しない箇所でチューブ本体とヘッド部材が接合する接合不良が生じるおそれがある。
これに対し、本実施形態では、嵌合クリアランスFCは、最も根元側にある第1クリアランスFC1が、最も小さくなるように構成される。このため、仮に、突出部21が回転軸Oに対して偏心した状態で回転軸O回りに回転して突出部21の振れが生じたとしても、根元側の円筒外周面22がチューブ本体10に接触するため、突出部21の先端側の傾斜外周面23がチューブ本体10に接触することが防止される。これにより、突出部21の先端側が意図せずチューブ本体10に接触して貫通孔11内にバリが生じることを抑制できる。また、円筒外周面22がチューブ本体10に接触することにより、それ以上の突出部21の振れが防止される。つまり、突出部21の根元側においてチューブ本体10の第1円筒内周面12と突出部21の円筒外周面22とで最小の嵌合クリアランスFC(第1クリアランスFC1)が形成されることにより、突出部21の振れは第1クリアランスFC1の大きさに抑制される。よって、接合不良をさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、チューブ本体10の端面15とフランジ部25の端面26は、径方向内側の傾斜端面17とフランジ傾斜面28とにおいて当接すると共に、径方向外側の垂直端面16とフランジ垂直面27とは接触せずに対向クリアランスOCを形成する。これにより、摩擦圧接の初期においては相対的に径方向内側の領域において摩擦熱が発生し、その後に径方向外側の領域において摩擦熱が発生する。このように、摩擦熱が径方向内側から外側に向けて順次発生するように制御できるため、流動材料を径方向外側に向けて流動させやすくなる。別の観点からいえば、径方向の外側に対向クリアランスOCが設けられることにより、初期に当接するチューブ本体10の傾斜端面17とフランジ部25のフランジ傾斜面28との間で溶融した流動材料が、対向クリアランスOCへ向けて径方向外側に流れやすい。このようにして、摩擦圧接で生じるバリを制御することができ、接合体の接合品質を向上させることができる。
また、本実施形態では、フランジ部25の端面26は、フランジ傾斜面28によって突出部21の外周面の円筒外周面22に連続する。このため、フランジ部25と突出部21との接続部分に直角の角部が形成されない。直角の角部は流動材料が充填されにくいため、直角の角部が形成されない構成とすることで、チューブ本体10の傾斜端面17とフランジ部25の当接部26aとの間からの流動材料が嵌合クリアランスFCに充足されやすい。これにより、流動材料の制御が容易となり、接合体の品質を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、チューブ本体10に当接する当接部26aに加え、非当接部26bを加熱して軟化させることにより、非当接部26bもチューブ本体10に接合される。これにより、ヘッド部材20とチューブ本体10との接合界面がヘッド部材20における突出部21の根元部からフランジ部25及びチューブ本体10の外周面まで延びるようなシリンダチューブ100が形成される。よって、接合前の嵌合クリアランスFCが残留せず、チューブ本体10とヘッド部材20との接合部は、中実構造となる。このため、接合前の嵌合クリアランスFCが非破壊試験において欠陥であると認識されることが防止され、非破壊試験による品質検査を容易に行うことができる。
次に、本実施形態の変形例について、説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、上記実施形態の説明において記載された変形例についても同様に、他の変形例と任意に組み合わせることが可能である。
以下、図7〜図9を参照して、チューブ本体10の貫通孔11の内周面と突出部21の外周面に関する変形例について説明する。
上記実施形態では、チューブ本体10の内周面は、接合面である端面15に連続する第1円筒内周面12と、第1円筒面に連続する傾斜内周面13と、傾斜内周面13に連続する第2円筒面と、を有する。突出部21の外周面は、フランジ部25の端面26に連続する円筒外周面22と、円筒外周面22に連続する傾斜外周面23と、を有する。これに対し、チューブ本体10の内周面と突出部21の外周面とは、上記工程(4)において、チューブ本体10をヘッド部材20に向けて移動させるのに伴い、嵌合クリアランスFCが小さくなるように構成される限り、任意の構成とすることができる。つまり、チューブ本体10をヘッド部材20に向けて移動させるのに伴い、嵌合クリアランスFCが小さくなるように構成される限り、接合不良の抑制と酸化スケールの発生とを同時に抑制するという効果を発揮することができる。
具体的には、チューブ本体10に傾斜内周面13が設けられ、先端部Tが傾斜内周面13の軸方向範囲内に位置する流動材料によって傾斜内周面13と突出部21の外周面とが接合される構成であればよい。例えば、図7に示すように、突出部21の外周面は、傾斜外周面23を有していなくてもよい。図7に示す変形例では、突出部21の外周面は、外径が一様な円筒外周面22のみで構成される。反対に、図8に示すように、突出部21の外周面は、円筒外周面22を有していなくてもよい。図8に示す変形例では、突出部21の外周面は、先端に向かうにつれて外径が小さくなる傾斜外周面23のみで構成される。
また、図9に示すように、チューブ本体10の内周面は、第1円筒内周面12を有していなくてもよい。図9に示す変形例では、傾斜内周面13が接合面である端面15(傾斜端面17)に連続する。
また、図9に示すように、嵌合クリアランスFCは、根元側から先端側に向かうにつれ増加するものでなくてもよい。図9に示す変形例では、チューブ本体10の内周面では、傾斜内周面13が端面15に連続し、突出部21の外周面は、傾斜外周面23のみで構成される。この変形例では、傾斜内周面13の傾斜角は、傾斜外周面23の傾斜角よりも大きい。よって、嵌合クリアランスFCは、根元側から先端側に向かうにつれ減少する。この場合であっても、先端側で形成される嵌合クリアランスFCの最小クリアランスが、突出部21の振れを許容する(振れによって突出部21がチューブ本体10に接触しない)程度の大きさを有するように設定すれば、突出部21の振れに起因する意図しない突出部21とチューブ本体10との接触を抑制することができる。
以上のような図7〜図9に示す変形例においても、チューブ本体10をヘッド部材20に向けて移動させるのに伴い、傾斜内周面13が形成する嵌合クリアランスFCが小さくなり、移動に伴って小さくなった嵌合クリアランスFCに流動材料の先端部Tが充填される、これにより、図7〜図9に示す変形例においても、接合不良の抑制と酸化スケールの発生とを同時に抑制するという効果を奏する。
なお、図示は省略するが、傾斜内周面13及び傾斜外周面23は、それぞれ回転軸Oに対して傾斜するテーパ面(円錐面)に限らず、例えば曲面であってもよい。
また、突出部21の外周面に傾斜外周面23が設けられる場合、傾斜内周面13と傾斜外周面23とは、互いに対応する形状に形成されることが望ましいが、互いに対応する形状でなくてもよい。図9に示す変形例のように、傾斜内周面13と傾斜外周面23とがテーパ面として形成される場合、互いの傾斜角は、一致することが望ましいが、一致しなくてもよい。図9に示すように、傾斜内周面13が相対的に大きな傾斜角を有していてもよいし、図示は省略するが傾斜外周面23が相対的に大きな傾斜角を有していてもよい。
次に、図10及び図11を参照して、チューブ本体10の端面15(接合面)とヘッド部材20のフランジ部25の端面26(接合面)に関する変形例について説明する。
上記実施形態では、チューブ本体10の傾斜端面17とフランジ部25のフランジ傾斜面28とが当接し、チューブ本体10の垂直端面16とフランジ部25のフランジ垂直面27とによって対向クリアランスOCが形成される。言い換えれば、フランジ部25の当接部26aは、フランジ傾斜面28に設けられ、フランジ垂直面27が主として逃げ部26cを構成する。
これに対し、チューブ本体10の端面15とフランジ部25の端面26とが初期において相対的に径方向内側の領域で当接し、その後相対的に径方向外側の領域で当接するように構成される限り、上記構成に限られない。
例えば、図10及び図11に示すように、チューブ本体10の端面15は、傾斜端面17を有しておらず、フランジ部25の端面26はフランジ傾斜面28を有していなくてもよい。つまり、チューブ本体10とヘッド部材20とは、傾斜面同士で接触するものでなくてもよい。
図10に示す変形例では、チューブ本体10の端面15は、回転軸Oに垂直な平坦面である垂直端面16のみによって構成される。フランジ部25の端面26は、突出部21の外周面に連続し回転軸Oに垂直なフランジ垂直面27と、フランジ垂直面27の径方向外側に設けられチューブ本体10の端面15から離間するように回転軸O方向に延びる外側傾斜面27aと、を有する。当接状態では、チューブ本体10の垂直端面16とフランジ部25のフランジ垂直面27とが当接し、フランジ部25の外側傾斜面27aは、チューブ本体10の垂直端面16との間に対向クリアランスOCを形成する。つまり、図10の変形例では、外側傾斜面27aが逃げ部26cを構成する。
また、図11に示す変形例では、チューブ本体10の端面15は、貫通孔11の内周面(図11では第1円筒内周面12)に連続し回転軸Oに垂直な垂直端面16と、垂直端面16の径方向外側に設けられフランジ部25の端面26から離間するように回転軸O方向に延びる外側傾斜端面16aと、を有する。フランジ部25の端面26は、回転軸Oに垂直なフランジ垂直面27のみによって構成される。当接状態では、チューブ本体10の垂直端面16とフランジ部25の垂直端面16における径方向内側の一部とが当接し、フランジ部25の垂直端面16における径方向外側の一部が、チューブ本体10の外側傾斜端面16aとの間に対向クリアランスOCを形成する。つまり、図11の変形例では、フランジ垂直面27の径方向外側の一部であって、チューブ本体10の外側傾斜端面16aに対向する部分が逃げ部26cを構成する。
図10及び図11に示す変形例においても、チューブ本体10の端面15とフランジ部25の端面26とは、相対的に径方向の内側にある領域において初期に当接し、相対的に径方向の外側の領域がその後に当接する。よって、図10及び図11に示す変形例においても、バリBを径方向外側に流動するように制御することができる。
また、図10及び図11に示す変形例では、チューブ本体10とヘッド部材20とは、押し付け方向(回転軸O方向)に垂直な平面において互いに当接する。これにより、摩擦圧接におけるチューブ本体10とヘッド部材20との回転軸Oに沿った相対移動量を制御しやすく、回転軸Oに沿った接合体の長さの寸法精度を良好にすることができる。
なお、図10に示す変形例と図11に示す変形例とを組み合わせて、チューブ本体10の端面15に外側傾斜端面16aを設け、フランジ部25の端面26に外側フランジ傾斜面28aを設けて、外側傾斜端面16aと外側フランジ傾斜面28aとによって対向クリアランスOCを形成してもよい。
次に、上記以外の変形例について説明する。
上記実施形態では、接合体は、チューブ本体10とヘッド部材20とを接合させるシリンダチューブである。これに対し、接合体は、シリンダチューブに限られず、例えばピストンロッド101でもよい。
接合体がピストンロッド101である場合には、図12に示すように、ピストンロッド101は、第1部材としてのロッド本体30と、それぞれ第2部材としてのねじ用部材40及びロッドヘッド50と、を摩擦圧接にて接合することで製造される。
ロッド本体30には、軸方向の両端面15に開口する中空部としての貫通孔30Aが形成される。詳細な図示は省略するが、貫通孔11の両端部には、それぞれ上記実施形態と同様の傾斜内周面13が設けられる。また、ロッド本体30の両端面31A、31Bは、それぞれ上記実施形態におけるチューブ本体10の端面15と同様に構成される。
ねじ用部材40は、ロッド本体30の貫通孔30Aに嵌合するように形成される突出部41と、突出部41から径方向外側に向かって設けられるフランジ部42と、を有する。フランジ部42には、突出部41とは軸方向の反対側に、ボス部44が設けられる。ボス部44は、外周に雄ねじが形成され、ピストン2がねじ締結される。フランジ部42は、外径がロッド本体30の外径と同一に形成される。
ロッドヘッド50は、ロッド本体30の貫通孔30Aに嵌合するように形成される突出部51と、突出部51から径方向外側に向かって設けられるフランジ部52と、を有する。フランジ部52には、突出部51とは軸方向の反対側に、取付部101Aが設けられる。フランジ部52は、外径がロッド本体30の外径と同一に形成される。
詳細な図示は省略するが、ねじ用部材40とロッドヘッド50のそれぞれの突出部41、51は、上記実施形態におけるヘッド部材20の突出部21と同様に構成される。また、ねじ用部材40とロッドヘッド50のそれぞれにおけるフランジ部42、52の端面43、53は、上記実施形態におけるヘッド部材20のフランジ部25の端面26と同様に構成される。
よって、上記実施形態における接合体の製造方法と同様の構成により、ロッド本体30とねじ用部材40、及び、ロッド本体30とロッドヘッド50と接合することで、ピストンロッド101を製造することができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
本実施形態では、チューブ本体10は、チューブ本体10の端面15に向かうにつれ内径が小さくなる傾斜内周面13を有し、嵌合クリアランスFCに充填される流動材料の先端部Tは、傾斜内周面13の軸方向の範囲内に位置する。このため、チューブ本体10とヘッド部材20とを回転軸Oに沿って押し付けるのに伴い、突出部21の外周面と傾斜内周面13との間における嵌合クリアランスFCは、小さくなる。よって、当接状態においてチューブ本体10とヘッド部材20の突出部21とが意図せずに接触しないように嵌合クリアランスFCを比較的大きくしても、接合完了時には比較的小さい嵌合クリアランスFCに流動材料が充填された状態となる。これにより、嵌合クリアランスFCに充填される流動材料の空気に触れる表面積が抑制され、酸化スケールの発生が抑制される。したがって、本実施形態に係る接合体の製造方法では、酸化スケールの発生と接合不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、嵌合クリアランスFCは、最も根元側にある第1クリアランスFC1が、最も小さくなるように構成される。このため、仮に、突出部21が回転軸Oに対して偏心した状態で回転軸O回りに回転して突出部21の振れが生じたとしても、根元側の円筒外周面22がチューブ本体10に接触するため、それ以上の突出部21の振れが防止されて、突出部21の先端側の外周傾斜面がチューブ本体10に接触することが防止される。よって、接合不良をさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、チューブ本体10の端面15とフランジ部25の端面26は、径方向内側の傾斜端面17とフランジ傾斜面28とにおいて当接すると共に、径方向外側の垂直端面16とフランジ垂直面27とは接触せずに対向クリアランスOCを形成する。これにより、初期に当接するチューブ本体10の傾斜端面17とフランジ部25のフランジ傾斜面28との間で溶融した流動材料が、対向クリアランスOCへ向けて径方向外側に流れやすくなる。このようにして、摩擦圧接で生じるバリを制御することができ、接合体の品質を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
端面15、31A、31Bに形成される中空部(貫通孔11、30A)を有する第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と、中空部(貫通孔11、30A)に嵌合する突出部21、41、51及び突出部21、41、51から径方向外側に向かって設けられるフランジ部25、42、52を有する第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)と、を接合して接合体(シリンダチューブ100、ピストンロッド101)を製造する製造方法であって、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とを回転軸O回りに相対回転させると共に、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52とを当接させ、端面15、31A、31Bとフランジ部25、42、52との間に摩擦熱を発生させる第1接合工程と、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)との相対回転速度が第1接合工程よりも低い状態で、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とを回転軸Oに沿って互いに近接する方向に相対移動させて、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52とを接合する第2接合工程と、を含み、第1工程では、フランジ部25、42、52における当接部26aと第1部材の端面15、31A、31Bとを当接させると共に、フランジ部25、42、52において当接部26aよりも径方向の外側に設けられ第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bから離間する逃げ部26cと第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15との間に対向クリアランスOCを形成し、第2接合工程では、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52の当接部26aとの間から塑性流動する流動材料によって、対向クリアランスOCを充填して逃げ部26cを第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bに接合する。
この構成では、フランジ部25、42、52の当接部26aが、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bに対して対向クリアランスOCを形成する逃げ部26cよりも径方向の内側に設けられる。よって、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)におけるフランジ部25、42、52の当接部26aとの間で溶融した材料は、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと逃げ部26cとの間の対向クリアランスOCに向けて径方向外側へ流れやすくなる。したがって、接合体の製造において、摩擦圧接で生じるバリを制御できる。
また、本実施形態に係る接合体の製造方法では、フランジ部25、42、52は、突出部21、41、51の外周面に連続し、回転軸Oに対して傾斜して当接部26aが設けられるフランジ傾斜面28を有し、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bには、フランジ傾斜面28に対応した形状に形成され当接部26aに当接する傾斜端面17が設けられる。
この構成では、フランジ部25、42、52は、回転軸Oに対して傾斜するフランジ傾斜面28によって突出部21に連続し、フランジ傾斜面28に当接部26aが設けられる。これにより、フランジ部25、42、52と突出部21、41、51の間に直角な角部が形成されないため、流動材料を制御しやすく、接合体の品質を向上させることができる。
また、本実施形態に係る接合体の製造方法では、フランジ部25、42、52は、当接部26aが設けられ、回転軸Oに垂直に形成されるフランジ垂直面27を有し、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bには、回転軸Oに垂直に形成され当接部26aに当接する垂直端面16が設けられ、フランジ部25、42、52の逃げ部26c及び当該逃げ部26cに対向する端面15、31A、31Bの一部の少なくとも一方は、他方から離間して対向クリアランスOCを形成するように回転軸Oに対して傾斜して形成される。
この構成では、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とは、回転軸Oに垂直なフランジ垂直面27と垂直端面16において当接するため、回転軸Oに沿った第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)との相対移動量を制御しやすく、接合体の品質を向上させることができる。
また、本明細書には、以下の発明も含まれる。
端面15、31A、31Bに形成される中空部(貫通孔11、30A)を有する第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と、中空部(貫通孔11、30A)に嵌合する突出部21、41、51及び突出部21、41、51から径方向外側に向かって設けられるフランジ部25、42、52を有する第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)と、を接合して接合体(シリンダチューブ100、ピストンロッド101)を製造する製造方法であって、中空部(貫通孔11、30A)と突出部21とが嵌合クリアランスFCを持って嵌合した状態で第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とを回転軸O回りに相対回転させ、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52とを当接させて、端面15とフランジ部25、42、52との間に摩擦熱を発生させる第1接合工程と、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)との相対回転速度が第1接合工程よりも低い状態で、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とを回転軸Oに沿って互いに押し付けて第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52とを接合する第2接合工程と、を含み、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)は、(貫通孔11、30A)を形成する内周面であって、端面15から回転軸Oに沿って離れるにつれて内径が小さくなる傾斜内周面13を有し、第2接合工程では、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bと第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)のフランジ部25、42、52から塑性流動する流動材料をその先端部Tが回転軸O方向における傾斜内周面13の範囲内に位置するまで突出部21、41、51の根元側から嵌合クリアランスFCに充填し、流動材料によって、嵌合クリアランスFCに面するフランジ部25、42、52の非当接部26bと第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)とを接合すると共に突出部21の外周面と第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)とを接合する。
この構成では、第2接合工程において、流動材料は、その先端部Tが軸方向において第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の傾斜内周面13の範囲内に位置するまで嵌合クリアランスに充填される。傾斜内周面13は、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の端面15、31A、31Bから回転軸Oに沿って離れるにつれ内径が小さくなる。このため、傾斜内周面13によって突出部21、41、51の外周面との間で形成される径方向の嵌合クリアランスFCは、第2接合工程において第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とを回転軸Oに沿って押し付けるのに伴い小さくなる。よって、第1接合工程において第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)の突出部21、41、51と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)とが意図せずに接触しないように第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)の突出部21との間の嵌合クリアランスFCを比較的大きくしても、第2接合工程では比較的小さくなった嵌合クリアランスFCに流動材料が充填される。よって、嵌合クリアランスFCに充填される流動材料の空気に触れる表面積が抑制され、酸化スケールの発生が抑制される。したがって、接合体の製造において酸化スケールの発生と接合不良が抑制される。
また、本実施形態に係る接合体の製造方法では、突出部21、41、51は、回転軸Oに沿って外径が一様に形成される円筒外周面22と、円筒外周面22よりも突出部21、41、51の先端側に設けられ流動材料により中空部(貫通孔11、30A)の傾斜内周面13と接合される突出部21の外周面であって、フランジ部25から回転軸Oに沿って離れるにつれて外径が小さくなる傾斜外周面23と、を有し、第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)は、端面15に接続され回転軸Oに沿って内径が一様に形成される第1円筒内周面12をさらに有し、第1接合工程では、突出部21の傾斜外周面23が中空部(貫通孔11、30A)の傾斜内周面13の内側に収容され、中空部(貫通孔11、30A)の第1円筒内周面12と突出部21の円筒外周面22との間に生じる第1クリアランスFC1は、中空部(貫通孔11、30A)の傾斜内周面13と突出部21、41、51の傾斜外周面23との間に生じる第2クリアランスFC2よりも、小さくなるように構成される。
この構成では、突出部21、41、51の根元側で生じる第1クリアランスFC1が、第2クリアランスFC2よりも小さいため、突出部21、41、51の振れが生じたとしても、相対的に小さい第1クリアランスFC1を形成する第1円筒内周面12と円筒外周面22とが接触する。よって、突出部21、41、51の先端側にあるチューブ本体10の傾斜内周面13と突出部21の傾斜外周面23との接触が抑制され、突出部21の先端側における意図しない第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)の接触を抑制することができる。したがって、突出部21、41、51の先端側での意図しない第1部材(チューブ本体10、ロッド本体30)と第2部材(ヘッド部材20、ねじ用部材40、ロッドヘッド50)の接触により溶融した材料が、中空部(貫通孔11、30A)内にバリとして生じることを抑制できる。
また、本実施形態に係る接合体の製造方法では、傾斜内周面13は、回転軸Oに対して所定の角度で傾斜するテーパ面であり、傾斜外周面23は、傾斜内周面13と同じ角度で回転軸Oに対して傾斜するテーパ面である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。