JP2020044478A - 多管式固定床リアクターおよびそれを用いた気相接触反応方法 - Google Patents

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誠人 中繁
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Abstract

【課題】二成分以上の原料を用いた固定床多管式リアクターにおいて、反応温度制御性を向上させたリアクターの提供。【解決手段】複数の邪魔板9付きシェル部を有し、二成分以上の原料を反応させる多管式固定床リアクター7を用い、気体の熱媒が流通する邪魔板と邪魔板で囲まれた空間10(邪魔板の面方向に熱媒が流通する部分)の熱媒滞在時間を0.20秒以下に制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、二成分以上の原料多成分系気相接触反応において、リアクター内の反応温度制御性が高く、反応原料の転化率低下の少ない多管式固定床リアクターおよびそれを用いた気相接触反応方法に関する。
気相接触反応プロセスにおいて、その反応により生じた熱(発熱または吸熱)を効率的に除去するために多管式固定床リアクターが一般的に用いられている。多管式固定床リアクターは、触媒を充填した複数の反応管をリアクターシェル内に備え、該リアクターシェル内に熱媒を流動させることによって反応管を除熱または加温することで、反応管内の反応温度を制御している。
多管式固定床リアクターを用いた発熱反応においては、熱媒流れの偏流あるいは淀みによって反応熱の除去効率が低くなる箇所ができ、熱暴走が生じる場合がある。熱暴走による触媒の劣化やコーキングの増大により、触媒活性の著しい低下が起こり、触媒寿命が短くなることが考えられる。一方、多管式固定床リアクターを用いた吸熱反応においては、熱媒流れの偏流あるいは淀みによって十分な加温ができない箇所ができ、反応原料の転化率の低下を引起すことが考えられる。
熱媒を供給してリアクターの除熱または加熱を行なう際には、リアクター長手方向と垂直をなす方向における流れが主にリアクターの伝熱性能を左右する。つまり、熱暴走の抑制、または、反応原料の転化率低下を防止するためには、リアクターシェル内における熱媒の横方向の流れを均一にすることが有効である。
熱暴走を抑制する方法として、特許文献1には、熱交換媒体(熱媒)の循環装置を備える多管式リアクターであって、リアクターシェル内に邪魔板を配列したリアクターが開示されている。該邪魔板の存在により、該邪魔板で区切られた一区域の中における熱媒の横流れ、すなわち反応管に対して垂直方向の流れの速さがほぼ一定に保たれ、該一区域の中の熱移動を一定とするものである。
特許文献2には、円板型邪魔板を有する多管式リアクターにおいて、リアクターシェル中央部に反応管を配列しない空間部を設置することにより、縦流れによる除熱性低下の影響を軽減することが開示されている。
特許文献3には、多管式固定床リアクターによる気相接触酸化方法において、リアクターシェル内での熱媒流れの不均一による熱暴走防止のために、反応管内部の反応状態を予測し、その予測結果に応じて、反応管の間の反応状態の不均一性が減少されるように、反応管における触媒の充填仕様を変更することが記載されている。
特許文献4には、熱媒の流れが悪い箇所に対して、反応管を配列しない空間部と、空間部と反応管との間に設けられた、反応管と同一の長手方向を有する整流棒群とを備えることにより、熱暴走を抑えることが記載されている。
特公昭52−15272号公報 特開2001−137689公報 特開2003−206244公報 特開2005−296921公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術は、横流れに比べて、縦流れ、すなわち反応管に沿う方向の流れにおける除熱が悪く、リアクター内の一部で熱暴走が起き、その結果として触媒失活、あるいはコーキング増大を生じるという課題がある。また、上記特許文献2、3、4に開示された技術においては、反応管の長手方向で発熱と吸熱が交互に繰り返され、温度制御が困難な二成分以上の原料を用いる多管式固定床リアクターによる反応では、シェル内の一部に熱媒の偏流あるいは淀み部が発生することにより、反応管に伝熱の悪い部分が残り、リアクター内の一部で熱暴走による触媒失活、コーキング増大、あるいは反応温度低下による原料反応の転化率の低下を生じるという課題がある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、反応管の長手方向(縦方向)で発熱と吸熱が交互に繰り返され、温度制御が困難な二成分以上の原料を用いた固定床多管式リアクターにおいて、熱媒の淀み部の発生を抑制して伝熱の悪い部分をなくし、良好な反応温度制御性を実現するため、シェル部の邪魔板と邪魔板で囲まれた空間(邪魔板の面方向に熱媒が流れる部分)の熱媒滞在時間を0.20秒以下にすることにより、多管式固定床リアクター内の全ての反応管内の反応温度制御を容易にすることを見出して、本発明を完成させるに至った。また、シェル中心の邪魔板と邪魔板に囲まれていない部分(縦方向、反応管に沿って熱媒が流れる部分)において、邪魔板の開口部面積に対して反応管の断面積の総和を制限する、あるいは、円筒状の構造物を設置することにより、リアクター内の反応温度制御性が更に向上することを見出した。
以下、本発明について説明する。
固定床リアクターは、図1〜4に示すように、リアクター内部に触媒が充填されており、リアクターの一端に温度調整した原料を連続的に供給し、リアクターのもう一端から反応生成物を排出するものである。原料は、リアクターの一端からもう一端へ移動する過程において触媒により化学反応を起こし、反応により発生する反応熱によってリアクター内部の温度が変化する。つまり、分解反応(吸熱)の場合、温度が低下し、合成反応(発熱)の場合、温度が上昇する。リアクター内の一部で反応温度が上昇した場合、触媒の失活、あるいはコーキング増大の可能性があり、また、リアクター内の反応温度が低くなった場合、反応転化率が低下して目標収率に未達になる可能性がある。反応温度の変動幅を小さくするために、熱媒を用いる加熱冷却可能な多管式固定床リアクターが使用される。
以下に、多管式固定床リアクターについて詳細に説明する。
多管式固定床リアクターとは、一般的に管状胴体の両端部にそれぞれ1枚以上の管板を内蔵し、該管板間に両端部外周を固定されたリアクターの長手方向に相互に平行に配列された多数本の伝熱管(反応管)を有するものである。伝熱管の本数は、複数本であれば良く、例えば500〜5000本でも良い。この多管式熱交換器の伝熱管の内部に固定触媒が充填され、伝熱管の中に原料ガスが流通され、一方伝熱管の外側を熱媒が流通することにより、伝熱管の管壁を介して反応熱が授受され、リアクター内の反応温度を制御することができる。また、反応管の全てが邪魔板を貫通して保持されていることが好ましい。この場合、邪魔板の面方向に流れる熱媒を選択的に反応管に接触させることになるため伝熱が良好となる。
しかし、熱媒が流れるシェル構造によっては熱媒の偏流あるいは淀み部が発生し、伝熱性能が低い反応管ができ、良好な反応温度制御ができない場合がある。そのため、熱媒の偏流が発生し難い気体の熱媒を用い、また、熱媒の淀みの発生を防止するために、図1〜4で示す邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の熱媒滞在時間を0.20秒以下にすることにより、良好な反応温度制御ができることを見出した。
本発明においては、反応管のサイズは特に限定されず、気相接触反応において一般的に使用される反応管を用いることができる。例えば、内径10〜100mm、外径13〜110mm、管長1000〜10000mm程度のサイズを有する反応管は、反応効率および除熱効率の点から好ましく採用される。また、本発明によるリアクターは円筒形であり、好ましくは0.5〜8m、より好ましくは2.5〜5mの内径を有する。
また、本発明の多管式固定床リアクターにおける反応管のレイアウトは特に限定されないが、各反応管の中心の間隔が、反応管外径の1.1〜1.6倍の範囲内となるように配列されることが好ましく、更に1.15〜1.4倍の範囲内とされることが好ましい。各反応管の中心の間隔が反応管外径の1.1倍以上であれば、熱媒の流路が十分確保されるために反応熱の除熱性が良好であり、1.6倍以下であれば、反応装置が大型化することによる製造コストの上昇が防止されるとともに、熱媒の線速低下および/または偏流による除熱性の低下も防止される。
反応管の材質は、耐食性材料、例えばステンレス鋼、好ましくは二相鋼、またはニッケル合金もしくはニッケルから作製される。管板および反応器全体もまた、好ましくは上述の材料、特にステンレス鋼または二相鋼から作製される。本発明の多管式反応装置における反応管の好ましい材質としては、SUS304、SUS310、SUS316L、ハステロイS、ハステロイCおよびインコネル等が挙げられる。
反応管への触媒充填方法は特に限定されるものではないが、触媒以外の成分の充填物と混合することも可能である。触媒以外の充填物の組成については特に限定されるものではないが、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボールやステンレス鋼、グラファイト、カーボン等、目的とする反応に寄与しない物質であれば何を用いても良いが、特に、触媒層の平均的な活性を調整するために不活性担体で触媒濃度の希釈操作を行っている場合には、同一の不活性担体を用いると、反応終了後の抜き取り、篩別操作が簡便となり好都合である。
本発明における邪魔板としては、図1〜3に示した、欠円型、二重欠円型、ディスク&ドーナツ型などの既存の邪魔板が使用できるが、好ましくはディスク型とドーナツ型の邪魔板の組合せであることが好ましい。また、熱媒流速が遅く、伝熱が悪いドーナツ部については、反応管を配置しない、または、図4に示した円筒状の構造物を設置しても良い。
本発明で使用される好ましい熱媒は気体であり、空気、窒素、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素の単一またはその混合気体であることが好ましいが、原料ガスや生成ガスを熱媒として用いることも可能である。熱媒の供給ノズル入口は1つでも良いが、より好ましくは複数個の供給ノズル入口から供給する方法を用いた方が好ましい。また、反応器円周から均一に熱媒を供給する方法を用いても良い。供給ノズルを用いる場合は、リアクターへの供給口に角度を持たせ、できるだけ均一に導入することが好ましい。リアクターへの熱媒を供給する方法は、圧力差を利用してそのままリアクターに導入しても良いし、送風機または圧縮機で押し込む操作を行っても良い。また、熱媒は循環せずにリアクター出口より排出しても良いし、リアクター出口の熱媒を入口側に循環し、再利用しても良い。
また、リアクターへ原料ガスを供給する方法は、原料の形態によって適宜選定すれば良い。例えば、原料が液体の場合には原料を揮発させて供給することもできるし、原料が気体の場合には圧力差を利用してそのままリアクターに導入しても良いし、送風機または圧縮機で押し込む操作を行っても良い。また、リアクターに原料ガスが導入される前に、原料ガスを予熱する操作を行っても良い。
本発明において、邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の熱媒滞在時間は、邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積や熱媒の流通速度により調整することができる。邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積は、邪魔板の枚数や間隔、邪魔板の開口面積を調整することにより行う。また、熱媒の流通速度は、熱媒流量や温度、圧力を調整することにより行う。
次に、リアクター内温度分布を計算する方法について説明する。
この計算は、反応挙動を解析するシミュレーションプログラムを用いて行うものである。ここで、原料は気体または液体の少なくともいずれかであり、かつ、反応温度の範囲で化学反応を生じる物質(以下、「反応物質」という。)を含有する。このシミュレーション方法は、化学工学や石油化学の分野で広く使用されているプロセスシミュレーションの手法をベースにしたもので、その処理には、CPU、RAM、記憶装置、入力装置および表示装置等を有する周知のコントローラーが利用される。このコントローラーの記憶装置には、CPUにより実行される各種処理プログラム(プロセスシミュレーションソフトなど)や制御データ等を記憶する記憶領域、上記プログラムで扱われる各種データ(各モデルの定義データなど)を記憶する記憶領域などが設けられ、この記憶装置に格納されたプログラムをCPUが実行することにより、以下に示す各ステップの処理等が行われるようになっている。
(演算モジュール)
演算モジュールでは、図5、図6に示すように、固定床リアクターの内部を反応物質が移動する方向に沿って複数の離散要素に分割し、離散化した1次元モデルとして捉えることが好ましい。そして、後述の物質収支モデル、熱収支モデルに基づき、この1次元モデル上の離散要素ごとの原料、または、反応物質の物質収支、熱収支を算出する。このようなシミュレーションを行うためには、固定床リアクター内部において発生し得る物理現象のうち、特に原料、または反応物質の移動と熱の移動の両方とを扱う必要がある。演算モジュールでは、これら原料、または反応物質の移動と熱の移動とを正確に把握するために、後述の化学反応モデルに基づき計算された反応物質の反応量、およびそれに基づく発熱量を反映させる必要がある。即ち、各離散要素において、物質収支モデル、熱収支モデル、化学反応モデルを用いて計算を行うことにより、反応物質の量の増減、および温度の上昇・低下を算出する。
以下、第n番目の離散要素を例として、化学反応モデル、物質収支モデル、および熱収支モデルの順に説明する。
(化学反応モデル)
化学反応モデルでは、離散要素毎の多成分原料を含む反応物質に対して進行する化学反応を取り扱う。このモデルでは多成分原料における反応物質の濃度、反応物質の変化量などの物質収支に関する値、および化学反応に伴い発生する吸発熱量などの収支に関する値を算出する。算出には、多成分原料を含む反応物質に対して進行する各種化学反応に対する反応速度(以下、「r」という。)を用いる。ここでは、化学工学分野において基本的な反応速度式として一般的に用いられているアレニウスモデルに基づいて定式化したものを用いる。しかしながら、当該モデルに限定されるものではなく、他の反応速度式を用いることもできる。
in = (kia+kib) × [C (1)
ia = kia0 × EXP(−Eia/R[TFeed) (2)
ib = kib0 × EXP(−Eib/R[TFeed) (3)

上式(1)、(2)、(3)における変数の意味は以下のとおりである。
in:第n番目の離散要素における反応物質iの反応速度
ia:反応物質iの分解の反応速度定数
ib:反応物質iの合成の反応速度定数
ia0:反応物質iの分解反応の頻度因子
ib0:反応物質iの合成反応の頻度因子
ia:反応物質iの分解反応の活性化エネルギー
ib:反応物質iの合成反応の活性化エネルギー
R:気体定数
[TFeed:第n番目の離散要素における多成分原料の温度
[C:第n番目の離散要素における多成分原料中の反応物質iの濃度
m:反応物質iの反応次数

反応物質の反応速度定数は、ラボ設備において滞在時間を変更した実験結果を基に、実験値と計算値の差が最小となるよう最小二乗法により得たものである。また、当該測定結果、および式(1)〜(3)を用いて、Y軸をLn(rin)、X軸を1/Tとして、アレニウスプロットを行う。当該プロットから、近似曲線の傾き=−Eia/R、更にEiaを算出した。また、プロットの通過する点より、切片であるLn(kia0)を算出した。同様にEib、kib0を算出した。上記方法で得られたEia、kia0、Eib、kib0より反応速度式を決定する。
(物質収支モデル)
物質収支モデルは、各離散要素における多成分原料、および反応物質の物質収支を計算する。本モデルでは、第n+1番目の離散要素に着目した場合、反応物質の物質収支は、第n+1番目の離散要素より上流側の第n番目の離散要素から流入するもの([C]n+1)と、同じ離散要素内における化学反応により消費されるもの([ΔC])とに分けられる。これを数式で記述すると以下の式(4)で表すことができる。
[Cn+1 = [C − [ΔC (4)

上式(4)における変数の意味は以下のとおりである。
[Cn+1:第n+1番目の離散要素における反応物質iの濃度
[C:第n番目の離散要素における反応物質iの濃度
[ΔC:第n番目の離散要素における、化学反応による反応物質iの濃度の増減

更に、[ΔCは以下の式(5)で表すことができる。
[ΔC = rin × Δθ (5)

上式(5)における変数の意味は以下のとおりである。
Δθ:第n番目の離散要素における原料、または反応物質の滞在時間
in:第n番目の離散要素における反応物質iの化学反応速度

ここで、滞在時間Δθは、固定床リアクターの体積から原料供給量を除すことで表すことができる。
(熱収支モデル)
第n+1番目の離散要素における原料、または反応物質の温度[TFeedn+1は、第n番目の原料、または反応物質の温度[TFeedと、第n番目の原料、または反応物質の温度変化[ΔTFeedにより以下の式(6)で計算される。
[TFeedn+1 = [TFeed + [ΔTFeed (6)

[ΔTFeedは、以下の式(7)により計算できる。
[ΔTFeed = [ΔQ]Feed / FFeed /原料、または反応物質の比熱 (7)

Feed:供給される多成分原料の流量

第n番目の離散要素に着目した場合、熱の収支は多成分原料の反応熱と、多成分原料と管壁を通したシェル熱媒との伝熱量の2種類が支配的とみなせる。
これら熱収支は、以下の式(8)〜(9)を用いることができる。
[ΔQ]Feed = (反応熱) + (管壁を通した伝熱量) (8)
[ΔQ]熱媒 = (管壁を通した伝熱量) (9)

上式(8)〜(9)における変数の意味は以下のとおりである。
[ΔQ]Feed:多成分原料の熱の増減
[ΔQ]熱媒:シェル熱媒の熱の増減

ここで反応熱の導出方法は、第n番目の前後でのエンタルピー(Gibbs自由エネルギー)の変化量から得たものであるが、ラボ実験により得られたデータを用いることもできる。
管壁を通した伝熱量は、以下の式(10)を用いることができる。
(管壁を通した伝熱量) = U × A × ([T熱媒−[TFeed) (10)

上式(10)における変数の意味は以下のとおりである。
[T熱媒:第n番目の離散要素における熱媒の温度
U:多成分原料とシェル熱媒の総括伝熱係数
A:離散要素の伝熱面積

第n+1番目の離散要素におけるシェル熱媒の温度[T熱媒n+1は、第n番目の熱媒温度[T熱媒と、第n番目の熱媒の温度変化[ΔT熱媒により以下の式(11)で計算される。
[T熱媒n+1 = [T熱媒 + [ΔT熱媒 (11)

[ΔT熱媒は、以下の式(12)により計算できる。
[ΔT熱媒 = [ΔQ]熱媒 / F熱媒 /熱媒の比熱 (12)

熱媒:供給される熱媒の流量

多成分原料とシェル熱媒の総括伝熱係数は、以下の式(13)で計算される。伝熱概略図を図7に示した。
1/U = 1/h + l/λ + 1/h (13)

:管内の多成分原料の熱伝達係数
:管外(シェル側)の熱媒の熱伝達係数
:管壁の厚み
λ:管壁の熱伝導度

は触媒層の有効熱伝導度を用い、一般的に使用される失木・国井の式より計算される。
1/h = 1/h + R /(3.07 ×k) (14)
/k = k /k + α × β × Pr × Re (15)
× d/k = 1/(1/2×(1/(kew/k)− 1/(k/k)) (16)

R:固定床リアクターの反応管半径
:触媒層の有効熱伝導度
:反応管内の流体熱伝導度
:静止流体を含む触媒層の有効熱伝導度
α×β:触媒形状に関する係数
Pr:プラントル数
Re:粒子基準レイノルズ数
:触媒の粒子径
ew:壁近傍での有効熱伝導度

は多管式熱交換器の計算で一般的に使用されるBellの式より計算される。市販の熱交換器計算ソフト(例えば、Aspen Exchanger Design and Rateing)を用いて算出しても良い。
= F × j × (C × G) × (C × μ/λ(−2/3) × (φ × ξ / X) × F (17)

:管の種類による係数
:伝熱因子(レイノルズ数の関数)
:管外(シェル側)の熱媒の比熱
:熱交換器の中心線に最も近い管列での直交流れの最大質量速度
μ:管外(シェル側)の熱媒の粘度
λ:管外(シェル側)の熱媒の熱伝導度
φ:邪魔板切欠部の流れによる補正係数
ξ:胴と管束との間を通る流れによる補正係数
X:管列数による補正係数
:邪魔板と胴内径との間を通る流れと邪魔板の管穴と内管との間を通る流れによる補正係数
本発明によれば、原料多成分系(二成分以上)気相接触反応において、リアクター内の反応温度の上昇、あるいは下降を防止することができ、その結果として触媒失活、コーキング増大、または反応転化率の低下を抑制することが可能になる。
多管式固定床リアクター(欠円型)の概略図である。 多管式固定床リアクター(二重欠円型)の概略図である。 多管式固定床リアクター(ディスク&ドーナツ型)の概略図である。 多管式固定床リアクター(ディスク&ドーナツ型/円筒状構造物有り)の概略図である。 離散要素の概略構成図1(物質収支)を示す。 離散要素の概略構成図2(熱収支)を示す。 熱収支の伝熱概略図を示す。 実施例4の固定床リアクター内温度分布(原料入口温度570℃)を示す。
以下に、本発明の実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されて解釈されるものではない。
本実施例では、シェル内の熱媒流速の計算のため、流体解析を行った。シェル内の形状をDesign Modeler(ANSYS社製)にて作製後、Ansys Meshing(ANSYS社製)にて、1,000〜4,000万個のメッシュに細分化した。細分化されたリアクターシェル形状モデルをFluent(ANSYS社製)にインポートし、流体の輸送方程式であるナビエ・ストークス式を数値的に解析することにより、熱媒の流速を計算した。熱媒流速より反応管毎の長手方向のU値分布を計算し、反応管との伝熱が最小/中間/最大の反応管に関して、上述した反応シミュレーション方法を使用し、原料としてブテン、ブタン、プロピレン、プロパンを用い、反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた。尚、原料温度範囲が広い程、反応温度制御性に優れることを示しており、運転変動を踏まえると、原料温度範囲は10℃以上が好ましい。
実施例1
内径70mm、長さ5.7mのチューブ805本からなり、熱媒を流すことのできる複数の邪魔板付きシェル構造を有するシェル径3m、高さ9mの多管式固定床リアクターに、触媒を15.6m充填した。そこに、原料としてブテン72.5mol%、ブタン6.3mol%、プロピレン5.5mol%、プロパン15.7mol%の多成分系原料を13,000kg/hで流通させた。また、シェル構造は邪魔板構造がディスク&ドーナツ型であり、邪魔板枚数は9枚、邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積は1.13mであり、熱媒としてAirを10,000Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.13秒)。リアクター入口の熱媒温度は原料温度と±50℃以内となるように調整した。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、11℃(554〜565℃)であった。
実施例2
シェル中心部にφ500mmの円筒上の構造物を設置すること以外、実施例1と同じ条件で実施した。邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積は1.09mであり、熱媒としてAirを10,000Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.13秒)。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、12℃(553〜565℃)であり、実施例1と比較して原料温度範囲が広かった。
実施例3
熱媒としてAirを20,000Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.06秒)以外、実施例2と同じ条件で実施した。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、20℃(550〜570℃)であり、実施例2より原料温度範囲が広かった。
実施例4
邪魔板枚数が15枚であること以外、実施例1と同じ条件で実施した。邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積は0.70mであり、熱媒としてAirを10,000Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.08秒)。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、15℃(555〜570℃)であり、実施例1と比較して原料温度範囲が広かった。また、反応管の長さ方向の温度分布を図8に示した。
比較例1
邪魔板枚数が5枚であること以外、実施例1と同じ条件で実施した。邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の体積は1.89mであり、熱媒としてAirを10,000Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.22秒)。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、9℃(556〜565℃)であり、原料温度範囲が10℃以下となり、反応温度制御性に劣ることがわかった。
比較例2
熱媒としてAirを2,500Nm/h流した(邪魔板間の滞在時間0.53秒)こと以外、実施例1と同じ条件で実施した。反応管との伝熱により、最小/中間/最大の反応管の温度が585±15℃を満たす原料温度(リアクター入口温度)範囲を計算により求めた結果、7℃(558〜565℃)であり、比較例1と比較して原料温度範囲が更に狭まり、反応温度制御性に劣ることがわかった。
このように、邪魔板と邪魔板で囲まれた空間の熱媒滞在時間を調整することにより、全ての反応管の温度分布を制御することが可能になる。その結果として、触媒失活、コーキング増大、または反応転化率の低下を抑制することが可能になる。
本発明によれば、分解反応(吸熱)と合成反応(発熱)が混在した原料多成分系(二成分以上)気相接触反応において、反応温度の上昇、あるいは下降を防止することができ、その結果として触媒失活、コーキング増大、または反応転化率の低下を抑制することが可能になる。
1 多成分系原料の流量調節弁
2 原料温度調節装置
3 他の原料の流量調節弁
4 シェルに流す熱媒の流量調節弁
5 シェルに流す熱媒の温度調節装置
6 原料組成測定装置
7 多管式固定床リアクター
8 反応管(触媒層)
9 邪魔板
10邪魔板と邪魔板で囲まれた空間
11円筒状の構造物

Claims (6)

  1. 複数の邪魔板付きシェル部を有し、二成分以上の原料を反応させる多管式固定床リアクターにおいて、気体の熱媒が流通する邪魔板と邪魔板で囲まれた空間(邪魔板の面方向に熱媒が流通する部分)の熱媒滞在時間を0.20秒以下に制御することにより、全ての反応管の温度分布を制御することを特徴とする多管式固定床リアクター。
  2. シェルの邪魔板構造がディスク型とドーナツ型の組合せであることを特徴とする請求項1に記載の多管式固定床リアクター。
  3. ドーナツ型邪魔板の開口部面積に対して、ドーナツ型邪魔板の開口部に存在する反応管の断面積の総和が0.50m/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多管式固定床リアクター。
  4. シェル中心に反応管を設置せず、かつ、熱媒が通らない円筒状の構造物を設置することを特徴とする請求項1または2に記載の多管式固定床リアクター。
  5. 熱媒が、空気、窒素、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素の単一またはその混合気体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定床リアクター。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定床リアクターを用い、鎖式、環式、飽和、または不飽和炭化水素基を含む炭化水素系化合物であり、かつ、その成分比が5mol%以上である炭化水素系化合物を二種類以上含む原料を、500〜650℃の温度で反応させることを特徴とする気相接触反応方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115672195A (zh) * 2021-07-23 2023-02-03 中国石油天然气股份有限公司 增压式小颗粒型催化剂加注设备

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