本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、装填されたカートリッジの筒状の側壁が、外方に膨らむなど変形することを抑え、かつ長さがある範囲で異なるカートリッジを装填可能にするとともに、カートリッジの着脱作業を簡便なものとする、カートリッジ吐出装置を提供することを目的とする。本発明は、さらに、当該カートリッジ吐出装置への応用に適した、着脱容易な栓構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、筒状であり、その内周面に沿って軸方向に摺動可能な底蓋を有し、当該底蓋の内側に粘性流体が充填され、前記粘性流体の出口を頭部に有するカートリッジが、交換可能に装填され、当該カートリッジに充填された前記粘性流体を吐出するカートリッジ吐出装置であり、タンクを備えている。タンクは筒状であり、前記カートリッジが交換可能に装填される。また、前記タンクは、軸方向一端が開放されたタンク本体と、当該タンク本体の前記軸方向一端に、脱着可能かつ気密に装着されるキャップと、当該タンクの内部に圧縮気体を導く気体導入口と、を有している。一方、前記タンクは、装填された前記カートリッジの底部に当接して、当該カートリッジの内部と外部とを気密に隔てるシール材を有さない。前記キャップは、前記カートリッジの前記頭部を、着脱自在かつ気密に保持し、かつ前記キャップは、保持した前記カートリッジの前記出口に連通することにより前記粘性流体を吐出する吐出口を有している。さらに、前記カートリッジを保持した前記キャップが前記タンク本体に装着されることにより、前記カートリッジは、前記底部が前記タンクの内部に浮いた状態で、前記タンク内に装填され、かつ前記タンクの内部は、前記気体導入口を除いて前記タンクの外部から気密に保持される。
この構成によれば、カートリッジの頭部を気密に保持したキャップが、タンク本体の軸方向一端に気密に装着されることにより、カートリッジはタンク内に装填される。カートリッジが装填されることにより、気体導入口を除いて外部から気密に保持されるタンクの内部に、この気体導入口を通じて圧縮気体が導入されると、この圧縮気体により、カートリッジに充填された粘性流体が圧力を受ける。キャップの吐出口が、カートリッジの頭部にある出口に連通しているので、圧力を受けた粘性流体は、カートリッジの出口及びキャップの吐出口を通じて外部へ吐出される。
タンクは、装填されたカートリッジの底部に当接して、カートリッジの内部と外部とを気密に隔てるシール材を有さないので、装填されたカートリッジの内部と外部は、タンク内で互いに連通する。このため、圧縮気体はカートリッジの内部のみならず、外部にも圧力を及ぼす。従って、カートリッジの内外の間に圧力差が生じない。また、カートリッジは、その底部がタンクの内部において浮いた状態、すなわち何物にも触れない状態で、タンク内に装填され、特許文献1,2の装置とは異なり、カートリッジの底部がシール材に押圧されることもない。従って、カートリッジの筒状の側壁が、内圧により外側に膨らむことがなく、押圧力により変形することもない。従って、従来技術に見られ、かかる膨らみや変形によってもたらされる不都合が解消される。
また、カートリッジは、その底部がタンクの内部に浮いた状態でタンク内に装填されるので、カートリッジがタンク内に装填され得る範囲であれば、カートリッジの長さには制限がない。すなわち、長さがある範囲で異なるカートリッジを装填することが可能である。さらに、カートリッジは、タンクの軸方向の特定位置に底部の位置を定める必要がないので、ある範囲で長さの異なるカートリッジを装填可能にするために、タンク本体に螺合する深いネジをキャップに形成する必要がない。このため、カートリッジの着脱作業が簡便なものとなる。
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様によるカートリッジ吐出装置であって、ピストンと、アクチュエータと、をさらに備えている。ピストンは、前記タンクの中にあって、前記タンクの軸方向に動く。アクチュエータは、前記ピストンを駆動する。さらに、前記ピストンは、前記アクチュエータに駆動されることにより、装填された前記カートリッジの前記底蓋に当接して、当該底蓋を前記軸方向一端に向かって押圧する。
この構成によれば、装填されたカートリッジの底蓋が、アクチュエータに駆動されるピストンにより押圧されるので、底蓋の傾きが抑えられる。また、底蓋付近の粘性流体が経時的に硬化することにより、底蓋の動きが鈍ることがあっても、ピストンの押圧を受けることにより底蓋の動きが促される。
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記アクチュエータは、圧縮気体が導入され、その気体圧により前記ピストンを駆動するシリンダーを有する。
この構成によれば、圧縮気体を利用した簡単な構成によりピストンを駆動することができる。
本発明のうち第4の態様によるものは、第1から第3のいずれかの態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記キャップは、前記カートリッジの前記頭部に形成されたネジに螺合することにより、前記カートリッジの前記頭部を、着脱自在かつ気密に保持する。
この構成によれば、カートリッジのキャップへの着脱が容易に行い得る。
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記タンク本体は、少なくとも前記軸方向一端を含む端部領域において、円筒状である。また、前記キャップは、前記タンク本体の前記端部領域の内周面に対して摺動可能な円周面と、周方向に沿って回転対称となる前記円周面上の複数の部位から突起する複数の係止用突起とを有している。さらに、前記タンク本体は、複数の切れ込みを、前記端部領域に有している。当該複数の切れ込みは、前記端部領域を周方向に、前記複数の係止用突起の数で等分割した領域に、互いに分離して配置されている。前記複数の切れ込みは、前記軸方向一端に開口し、かつ周に沿って延びる部分を有し、当該部分に前記複数の係止用突起を受け入れることにより、前記複数の係止用突起を係止し、それにより前記キャップの装着状態を保持する。また、前記カートリッジ吐出装置は、前記タンク本体の前記端部領域の外周面に対して、軸方向に摺動自在であり、かつ周方向に拘束された筒状の係止部材を、さらに備えている。当該係止部材は、前記複数の切れ込みに受け入れられることにより、前記タンク本体に係止された前記複数の係止用突起を、受け入れることにより、当該複数の係止用突起の周方向の動きを拘束し、それにより前記複数の係止用突起と前記複数の切れ込みとの間の係止状態を保持する、複数の切れ込みが、前記タンク本体の前記軸方向一端に近い端縁に開口している。
この構成によれば、キャップの円周面から突起する複数の係止用突起を、タンク本体の端部領域にある複数の切れ込みに、それらの開口部から挿入し、かつ周に沿って延びる部分に沿うように、キャップを周方向に回すことにより、複数の係止用突起を複数の切れ込みに係止させることができる。それにより、キャップのタンク本体への装着状態が保持される。複数の切れ込みは、タンク本体の端部領域を周方向に、複数の係止用突起の数で等分割した領域に、互いに分離して配置されているので、キャップを回す角度は、高々360°を係止用突起の数で割った大きさで足りる。さらに、タンク本体に係止された複数の係止用突起が、係止部材の複数の切れ込みに、それらの開口部から進入するように、係止部材を摺動させることにより、係止用突起の周方向の動きが拘束される。それにより、係止用突起とタンク本体の切れ込みとの間の係止状態が保持される。すなわち、簡単な操作により、キャップがタンク本体に装着された状態を、安定して保持することができる。
本発明のうち第6の態様によるものは、第5の態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記タンク本体の前記端部領域の内周面と、前記キャップの前記円周面との少なくとも一方に、環状のガスシールが配置され、それにより前記キャップは、前記タンク本体の前記軸方向一端に気密に装着される。前記タンク本体の前記複数の切れ込みの前記周に沿って延びる部分は、周方向に対して傾斜しつつ周に沿って延びる部分を有しており、それにより、前記キャップを周方向に回すことにより、前記ガスシールの摩擦力に抗して、前記キャップを前記タンク本体に対して着脱することが可能である。
この構成によれば、キャップを周方向に回すことにより、ガスシールの摩擦力に抗して、キャップをタンク本体に装着したり、脱着したりすることが可能であるので、キャップの着脱が容易である。
本発明のうち第7の態様によるものは、第5又は第6の態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記タンク本体の前記複数の切れ込みは、前記複数の係止用突起を係止する部位において、内周面が前記タンク本体の前記軸方向一端に向かうように後退した、後退面を有する。
この構成によれば、タンクの内部に導入される圧縮気体により、キャップがタンク本体から抜ける方向に押圧されることから、キャップの係止用突起は、後退面に止まろうとする。すなわち、キャップがタンク本体に装着された状態が、さらに安定して保持される。
本発明のうち第8の態様によるものは、第5から第7のいずれかの態様によるカートリッジ吐出装置であって、前記係止部材を、前記タンク本体に対して、前記軸方向一端に向かうように付勢する付勢部材を、さらに備えている。
この構成によれば、付勢部材により、係止部材が軸方向一端に向かうように付勢されるので、タンク本体に係止された複数の係止用突起が、係止部材の複数の切れ込みに受け入れられることにより、これら複数の係止用突起の周方向の動きが拘束された状態が、安定して保持される。すなわち、キャップがタンク本体に装着された状態が、さらに安定して保持される。
本発明のうち第9の態様によるものは、栓構造であって、先端が開放された円筒状体と、前記円筒状体の先端に、脱着可能に装着されるキャップと、を備えている。前記キャップは、前記円筒状体の内周面に対して摺動可能な円周面と、周方向に沿って回転対称となる前記円周面上の複数の部位から突起する複数の係止用突起とを有している。また、前記円筒状体は、複数の切れ込みを有している。当該複数の切れ込みは、前記円筒状体を周方向に、前記複数の係止用突起の数で等分割した領域に、互いに分離して配置されている。さらに、前記複数の切れ込みは、前記先端に開口し、かつ周に沿って延びる部分を有し、当該部分に前記複数の係止用突起を受け入れることにより、前記複数の係止用突起を係止し、それにより前記キャップの装着状態を保持する。また、前記栓構造は、前記円筒状体の外周面に対して、軸方向に摺動自在であり、かつ周方向に拘束された筒状の係止部材を、さらに備えている。当該係止部材は、前記複数の切れ込みに受け入れられることにより前記円筒状体に係止された前記複数の係止用突起を、受け入れることにより、当該複数の係止用突起の周方向の動きを拘束し、それにより前記複数の係止用突起と前記複数の切れ込みとの間の係止状態を保持する、複数の切れ込みが、前記円筒状体の前記先端に近い端縁に開口している。
この構成によれば、キャップの円周面から突起する複数の係止用突起を、円筒状体にある複数の切れ込みに、それらの開口部から挿入し、かつ周に沿って延びる部分に沿うように、キャップを周方向に回すことにより、複数の係止用突起を複数の切れ込みに係止させることができる。それにより、キャップの円筒状体への装着状態が保持される。複数の切れ込みは、円筒状体を周方向に、複数の係止用突起の数で等分割した領域に、互いに分離して配置されているので、キャップを回す角度は、高々360°を係止用突起の数で割った大きさで足りる。さらに、円筒状体に係止された複数の係止用突起が、係止部材の複数の切れ込みに、それらの開口部から進入するように、係止部材を摺動させることにより、係止用突起の周方向の動きが拘束される。それにより、係止用突起と円筒状体の切れ込みとの間の係止状態が保持される。すなわち、簡単な操作により、キャップが円筒状体に装着された状態を、安定して保持することができる。なお、キャップは、円筒状体の先端を封止するものに限られず、例えば本願発明によるカートリッジ吐出装置のキャップのように、開口を有するものであってもよい。
本発明のうち第10の態様によるものは、第9の態様による栓構造であって、前記円筒状体の前記先端の付近の内周面と、前記キャップの前記円周面との少なくとも一方に、環状のシール材が配置され、それにより前記キャップは、前記円筒状体の前記先端に気密又は液密に装着されている。前記円筒状体の前記複数の切れ込みの前記周に沿って延びる部分は、周方向に対して傾斜しつつ周に沿って延びる部分を有しており、それにより、前記キャップを周方向に回すことにより、前記シール材の摩擦力に抗して、前記キャップを前記筒状体に対して着脱することが可能である。
この構成によれば、キャップを周方向に回すことにより、シール材の摩擦力に抗して、キャップを円筒状体に装着したり、脱着したりすることが可能であるので、キャップの着脱が容易である。
本発明のうち第11の態様によるものは、第9又は第10の態様による栓構造であって、前記円筒状体の前記複数の切れ込みは、前記複数の係止用突起を係止する部位において、内周面が前記円筒状体の前記先端に向かうように後退した、後退面を有する。
この構成によれば、キャップが円筒状体から抜ける方向に力を受けても、キャップの係止用突起は、後退面に止まろうとする。すなわち、キャップが円筒状体に装着された状態が、さらに安定して保持される。
本発明のうち第12の態様によるものは、第9から第11のいずれかの態様による栓構造であって、前記係止部材を、前記円筒状体に対して、前記先端に向かうように付勢する付勢部材を、さらに備えている。
この構成によれば、付勢部材により、係止部材が筒状体の先端に向かうように付勢されるので、円筒状体に係止された複数の係止用突起が、係止部材の複数の切れ込みに受け入れられることにより、これら複数の係止用突起の周方向の動きが拘束された状態が、安定して保持される。すなわち、キャップが円筒状体に装着された状態が、さらに安定して保持される。
以上のように本発明の一態様によれば、装填されたカートリッジの筒状の側壁が、外方に膨らむことなど変形することを抑え、かつ長さがある範囲で異なるカートリッジを装填可能にするとともに、カートリッジの着脱作業を簡便なものとする、カートリッジ吐出装置が実現する。また、本発明の別の態様によれば、カートリッジ吐出装置への応用に適した、着脱容易な栓構造が実現する。
図1は、本発明の一実施の形態によるカートリッジ吐出装置と、当該装置に適用されるカートリッジを例示する図であり、図1(a)は、カートリッジ吐出装置の正面図、図1(b)は、カートリッジの正面部分断面図である。このカートリッジ吐出装置101(以下において、「吐出装置101」と適宜略記する)は、円筒状のタンク1とシリンダー3とを有している。シリンダー3は、本発明のアクチュエータの具体例に相当する。カートリッジ80は、円筒状であり、その内周壁に沿って軸方向に摺動可能な底蓋81を有し、底蓋81の内側に粘性流体83が充填されている。カートリッジ80の頭部85には、粘性流体83の出口87が形成されている。図1(b)は、頭部85が下向きとなる姿勢で、カートリッジ80を表している。
カートリッジ80は、図1(b)に示す姿勢で、吐出装置101のタンク1の内部に、交換可能に装填される。使用前のカートリッジ80では、頭部85の出口87は、例えば、図示略の、ねじ式の蓋あるいはアルミニウム箔などで封止されている。カートリッジ80がタンク1に装填されるときに、封止は、例えば手操作により除去される。カートリッジ80がタンク1に装填された後に、タンク1及びシリンダー3に、それぞれ所定圧に調整された圧縮空気を供給することにより、カートリッジ80に充填された粘性流体83が、タンク1の下端に設けられた吐出口5から吐出される。吐出された粘性流体83は、例えば、粘性流体83を回路基板等の対象物に塗布するノズル(図視略)に、パイプ(図視略)を通じて圧送される。
図2は、カートリッジ吐出装置101の正面断面図であり、装填されたカートリッジ80も同時に示している。タンク1は、タンク本体7とキャップ9を有している。タンク本体7は、少なくとも下端が開いた円筒状である。キャップ9は、タンク本体7の開いた下端に、着脱可能に装着される。キャップ9は、タンク本体7の下端部領域の内周面8に摺動可能な円周面11を有している。円周面11には、周方向に環状の溝13が形成されており、この溝13には環状のエアシール15が嵌め込まれている。エアシール15は、タンク本体7と装着されたキャップ9との間の気密を保持する。エアシール15は、例えばゴム製のリングである。
キャップ9は、円周面11から径方向に突起する複数の係止用突起17を有している。一方、タンク本体7の下端部領域には、係止用突起17を受け入れることにより、係止用突起17を係止する複数の切れ込み19が形成されている。係止用突起17が切れ込み19に係止されることにより、キャップ9の装着状態が保持される。
タンク本体7の下端部には、円筒状の係止部材21が設けられている。係止部材21はタンク本体7の外周面に対して、軸方向に摺動自在である。係止部材21は、装着されたキャップ9の係止用突起17の周方向の動きを、解除可能に拘束する。それにより、係止用突起17と切れ込み19との間の係止状態が保持される。キャップ9の係止機構については、後に詳述する。
キャップ9の上端面には、ねじ穴16が形成されており、ねじ穴16の内周面には雌ねじが形成されている。また、ねじ穴16の底部には、環状のエアシール18が配置されている。カートリッジ80の頭部85の外周面には雄ねじが形成されており、この雄ねじがねじ穴16の雌ねじに螺合することにより、カートリッジ80は逆立ちした姿勢で、キャップ9に、着脱自在かつ気密に保持される。キャップ9のねじ穴16は、吐出口5に連通している。キャップ9にカートリッジ80を保持させ、キャップ9をタンク本体7の下端に装着することにより、カートリッジ80がタンク1に装填される。
図示の例では、タンク本体7は上端も開放されており、タンク1は、タンク本体7の上端に着脱可能に装着されるキャップ23をさらに有している。キャップ23は、一例として、キャップ9と同様に、タンク本体7の上端部領域の内周面8に摺動可能な円周面25を有している。円周面25には、周方向に環状の溝27が形成されており、この溝27には環状のエアシール29が嵌め込まれている。エアシール29は、タンク本体7と装着されたキャップ23との間の気密を保持する。エアシール29は、例えばゴム製のリングである。キャップ23は、一例として、ねじ蓋31により、タンク本体7への装着状態が保持される。ねじ蓋31は、環状ないし筒状であり、その内周面に雌ねじが形成されている。タンク本体7の上端部領域の外周面には、ねじ蓋31の雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。ねじ蓋31をタンク本体7の上端部に螺合させることにより、キャップ23がタンク本体7に装着された状態を保持することができる。
キャップ23には、タンク1の内部に圧縮空気を供給するための気体導入口33が形成されている。気体導入口33には、圧縮空気を供給するための配管35が接続されている。
キャップ23には、さらに、タンク1の軸方向に沿った貫通孔37が形成されている。また、キャップ23の頭部には、シリンダー3が立設されている。図示の例では、シリンダー3の下端部は、ねじ止めにより、着脱可能にキャップ23の頭部に固定されている。シリンダー3の下端部には、貫通孔37に連通する貫通孔38が形成されている。
シリンダー3の内部には、内周面に対して軸方向に摺動するピストン39が配置されている。ピストン39の下端にはピストンロッド41が連結されている。このピストンロッド41は、貫通孔38及び貫通孔37に対して摺動する。ピストンロッド41と、貫通孔38及び貫通孔37との間は、図示を略するエアシールにより、気密に保持される。ピストンロッド41の下端はタンク1の中にあり、この下端に別のピストン43が連結されている。ピストンロッド43は、装填されたカートリッジ80の底蓋81を押圧するためのものである。
シリンダー3の上端部及び下端部には、それぞれ、圧縮空気が出入りする気体入出口45,47が形成されている。これらの気体入出口45,47には、圧縮空気の供給及び排出を行うための配管49,51が接続されている。上端部の気体入出口45から圧縮空気が供給され、下端部の気体入出口47から圧縮空気が排出されるときには、ピストン39は押し下げられる。下端部の気体入出口47から圧縮空気が供給され、上端部の気体入出口45から圧縮空気が排出されるときには、ピストン39は押し上げられる。
カートリッジ80に充填された粘性流体83を吐出するときには、気体導入口33から圧縮空気が導入される。カートリッジ80がタンク1に装填されると、タンク1の内部は、気体導入口33を除いて外部から気密に保たれる。このため、気体導入口33から圧縮空気が導入されると、タンク1の内部の空気圧が高められる。導入される圧縮空気の圧力は、一例として0.4MPa程度である。タンク1の内部の空気圧が高められると、カートリッジ80に充填された粘性流体83は、直接にあるいは底蓋81を通じて圧力を受ける。その結果、粘性流体83は、カートリッジ80の出口87及びキャップ9の吐出口5を通じて、外部へ吐出される。
気体導入口33からタンク1の中に圧縮空気を導入すると同時に、シリンダー3の上端部の気体入出口45から圧縮空気が供給され、下端部の気体入出口47から圧縮空気が排出される。それにより、ピストン39が押し下げられ、これに連結するピストン43が、カートリッジ80の底蓋81を下方に押圧する。このため、底蓋81の傾斜が抑えられる。また、底蓋81の付近の粘性流体83が経時的に硬化することにより、底蓋81の動きが鈍ることがあっても、ピストン43の押圧を受けることにより底蓋81の動きが促される。気体入出口45から供給される圧縮空気の圧力は、一例として、0.1MPa程度である。ピストン39とピストン43は、径に大差がなく、ピストンロッド41の径は、それらよりも十分に小さい。このため、ピストン43は、0.1MPa程度またはそれ以下の圧力をもって、底蓋81を押圧する。
図2に例示するように、特許文献1、2に開示される技術とは異なり、タンク1には、カートリッジ80の底部(図2において上部)に当接するシール材が無い。このため、タンク1の内部の空気圧は、カートリッジ80の内部だけでなく、外部にも作用する。すなわち、カートリッジ80の内部と外部との間に、圧力差を生じない。また、カートリッジ80は、その底部がタンク1の内部に浮いた状態で、タンク1に装填され、カートリッジ80の底部が、何物かに当接して押圧を受ける、ということがない。このため、内圧や押圧力によりカートリッジ80の側壁が外側に膨らむ、ということがない。その結果、カートリッジ80の内周面と底蓋81の外周面との間に隙間を生じないので、この隙間から粘性流体83が漏れ出て、底蓋81が粘性流体83の中に沈み込む、という不都合が抑制される。また、押圧力により、カートリッジ80が変形したり破損したりする、という不都合も生じない。
カートリッジ80は、その底部がタンク1の内部に浮いた状態で、タンク1に装填されるので、カートリッジ80がタンク1内に装填され得る範囲であれば、カートリッジ80の長さには制限がない。すなわち、長さがある範囲で異なるカートリッジ80を装填することが可能である。また、カートリッジ80は、タンク1の軸方向の特定位置に底部の位置を定める必要がない。このため、従来技術とは異なり、ある範囲で長さの異なるカートリッジ80を装填可能にするために、タンク本体7に螺合する深いネジをキャップ9に形成する必要がない。キャップ9には浅いねじを形成してもよく、図示の例のように、キャップ9に係止用突起17を形成して、タンク本体7の切れ込み19によって係止させてもよい。このように、カートリッジ80の着脱作業が簡便なものとなる。
図3は、カートリッジ吐出装置101のタンク本体7の下端部を例示する側面図である。図3(a)及び図3(b)のいずれの例においても、キャップ9がタンク本体7に向かって押し込まれることにより、キャップ9の係止用突起17が、タンク本体7の下端に開口する切れ込み19の開口部から、切れ込み19の奥へ侵入する。その後、キャップ9がタンク本体7の軸(すなわち中心軸)の周りに回されることにより、係止用突起17は、切れ込み19の周に沿って延びる部分を、突き当たりまで移動する。それにより、キャップ9はタンク本体7に装着される。また、以上とは逆の工程を採ることにより、キャップ9をタンク本体7から取り外すことができる。
図示の例では、係止用突起17及び切れ込み19は、図に表れている表側と図に表れない裏側との2箇所に、それぞれ設けられている。一般に、係止用突起17は、周方向に沿って回転対称となる、キャップ9の円周面25上の複数の部位から突起する。また、切れ込み19は、周方向に沿って回転対称となる、タンク本体7の下端部領域の複数の部位に形成される。すなわち、係止用突起17及び切れ込み19は、周方向に沿って等間隔に、2つ以上の部位に形成される。また、複数の切れ込み19は、タンク本体7の下端部領域を、周方向に等分割した領域に、互いに分離して配置される。従って、係止用突起17及び切れ込み19が、周方向に沿ってN個の部位に形成されるときには、キャップ9の着脱に要するキャップ9の回転角は、大きくても360°/Nを超えない。
図3(a)の例では、切れ込み19は「L」字状の鉤型に形成されている。これに対して、図3(b)の例では、切れ込み19は実質的に鉤型ではあるが、あたかも、ねじの一部を成すように、傾斜して周に沿って延びる傾斜部分53を有している。このため、係止用突起17が傾斜部分53を摺動するように、キャップ9を回すことにより、キャップ9をタンク本体7に押し込むことができる。キャップ9の溝13(図2参照)にはエアシール15(図2参照)が嵌められているため、キャップ9を着脱するときには、エアシール15とタンク本体7との間に、相当の摩擦力が作用する。切れ込み19が傾斜部分53を有するので、エアシール15の摩擦力に抗して、キャップ9をタンク本体7に対して着脱することが容易である。係止用突起17が切れ込み19の開口部付近にあるときには、エアシール15とタンク本体7との間に摩擦力が働かないように、タンク本体7の下端部領域の内周面は、下端からある高さまでは、エアシール15に密着しないように、径が幾分大きく設定されるのが望ましい。
図4は、カートリッジ吐出装置101のタンク本体7の下端部について、斜め下方から見た外観を例示する写真である。また、図5は、カートリッジ吐出装置101のタンク本体7の下端部に、キャップ9を装着する工程を例示する工程図である。図5(a)から図5(d)の順に装着作業が進行する。図4及び図5の例は、図3(b)の形態に相当する。タンク本体7の外周面に配置される筒状の係止部材21には、タンク本体7の軸に沿って、すなわち図5において垂直方向に、長孔57が形成されている。タンク本体7の外周面には、長孔57に挿入され、長孔57に対して摺動する突起59が設けられている。このため、係止部材21は、タンク本体7に対して、軸方向に摺動可能であるとともに、周方向の動きが突起59により拘束される。
係止部材21には、下端に開口し、タンク本体7の軸に沿って伸びる切れ込み61が形成されている。切れ込み61は、装着状態にあるキャップ9の係止用突起17を受け入れ、係止用突起17の周方向の動きを拘束する。図5に例示するように、キャップ9をタンク本体7の下端に装着するときには、係止用突起17をタンク本体7の切れ込み19の開口部に導き(図5(a))、その後に、キャップ9を回すことにより、切れ込み19の傾斜部分53を利用して、キャップ9をさらに押し込む(図5(b))。この過程において、係止部材21は、係止用突起17により押し上げられてゆく。係止用突起17が、目標部位である切れ込み19の突き当たりに到達すると(図5(c))、係止部材21の切れ込み61の直下に位置することとなり、係止部材21は自重により落下し、係止用突起17を切れ込み61の中に収める(図5(d))。これにより、係止用突起17は、周方向の動きを拘束され、係止用突起17と切れ込み19との間の係止状態が保持される。すなわち、キャップ9の装着状態が安定して保持される。
図4及び図5に例示するように、タンク本体7の切れ込み19は、係止用突起17が最終的に落ち着く、突き当たりの部位において、タンク本体7の下端に向かうように、内周面が僅かに後退した後退面63を有するのが望ましい。キャップ9は、タンク1の内部に導入される圧縮空気の圧力、及びピストン43の押圧力により、タンク本体7から外れる方向に押圧力を受けるものであることから、キャップ9の係止用突起17は後退面63に止まろうとする。すなわち、キャップ9の装着状態がより一層安定することとなる。
図5(d)から図5(a)の順序の工程を経ることにより、キャップ9をタンク本体7から脱着することができる。すなわち、係止部材21を持ち上げ(図5(c))、キャップ9を、装着時とは逆方向に回すことにより(図5(b))、キャップ9をタンク本体7から取り外すことができる。
図6は、カートリッジ吐出装置101に、圧力を調整して圧縮空気を供給する制御装置を例示する空気圧回路である。制御装置70には、圧縮空気源71から、圧縮空気が、フィルタ72を通して供給される。供給された圧縮空気は、圧力調整器73及び配管35を通して、タンク1の気体導入口33に供給される。また、供給された圧縮空気は、圧力調整器74、方向制御弁75、及び配管49,51を通して、気体入出口45,47のいずれかに、切り替え可能に供給される。気体入出口45,47に連結される配管49,51には、シリンダー3から排出される圧縮空気の速度を制限するスピードコントローラ76,77が設けられる。シリンダー3の下端付近には、残量センサ78が設けられる。残量センサ78は、シリンダー3の中を摺動するピストン39が、シリンダー3の下端付近に達したことを検知する。
タンク1に供給される圧縮空気の圧力は、圧力調整器73により調整される。また、シリンダー3に供給される圧縮空気の圧力は、圧力調整器74により調整される。シリンダー3に設けられた気体入出口45,47のうち、いずれに圧縮空気を供給するかは、方向制御弁75により切り替えられる。制御装置70には、図示を略する操作盤が付随しており、ボタン操作等により、タンク1及びシリンダー3に供給される圧縮空気の圧力を調整することができ、気体入出口45,47のうち、いずれに圧縮空気を供給するかを切り替えることができる。また、残量センサ78が、ピストン39がシリンダー3の下端付近に達したことを検知すると、例えば警報器(図視略)が作動することにより、カートリッジ80が交換すべき時期にあることを、操作者に通知する。
一例として、残量センサ78及び警報器は電動である。また、残量センサ78は、一例として、磁気を感知するマグネットスイッチである。ピストン39に磁石を設けたり、あるいはピストン39自体を磁化させたりすることにより、マグネットスイッチとしての残量センサー78は、ピストン39が、シリンダー3の下端付近に達したことを検知することができる。
(その他の実施の形態)
図7は、カートリッジ吐出装置101のタンク本体7の下端部について、別の形態を例示する正面図である。図示の例では、タンク本体7の下端部を胴巻きにする圧縮スプリング91が、設けられている。圧縮スプリング91の上端は、例えばタンク本体7の外周面から突起するように設けられたピン93を介して、タンク本体7に支持され、下端は係止部材21の上端に、例えば、溶接により固着されている。このため、係止部材21は、圧縮スプリング91により、常に下方に付勢されている。この構成によれば、係止用突起17が、係止部材21の切れ込み61から外れ難くなるため、キャップ9がタンク本体7に装着された状態が、さらに安定して保持される。この構成は、タンク1が垂直の姿勢に保持されることなく、カートリッジ吐出装置101を使用する場合に、特に有利である。
図8は、本発明の別の実施の形態によるカートリッジ吐出装置の正面断面図である。このカートリッジ吐出装置102では、カートリッジ吐出装置101(図2参照)において、タンク1の上端のキャップ23に代えて、キャップ223が用いられている。キャップ223は、タンク1の下端のキャップ9と同様の構造を成している。このため、キャップ223は着脱が容易である。
キャップ223は、複数の係止用突起217を有しており、タンク本体7の上端部領域には、係止用突起217を受け入れることにより、係止用突起217を係止する複数の切れ込み219が形成されている。係止用突起217が切れ込み219に係止されることにより、キャップ223の装着状態が保持される。
タンク本体7の上端部には、円筒状の係止部材221が設けられている。係止部材221は、図5及び図7に例示した係止部材21と同様の構造を成している。すなわち、係止部材221はタンク本体7の外周面に対して、軸方向に摺動自在であり、装着されたキャップ223の係止用突起217の周方向の動きを、切れ込み61により解除可能に拘束する。それにより、係止用突起217と切れ込み219との間の係止状態が保持される。切れ込み61は、上方に開口している。
図7に例示した係止部材21と同様に、タンク本体7の上端部を胴巻きにする圧縮スプリング291が、設けられている。圧縮スプリング291の下端は、例えばタンク本体7の外周面から突起するように設けられたピン293を介して、タンク本体7に支持され、上端は係止部材221の下端に、例えば、溶接により固着されている。このため、係止部材221は、圧縮スプリング291により、常に上方に付勢されている。その結果、係止用突起217が、係止部材221の切れ込み61から外れ難くなるため、キャップ223がタンク本体7に装着された状態が、安定して保持される。
図9は、本発明のさらに別の実施の形態によるカートリッジ吐出装置の一部の正面断面図である。このカートリッジ吐出装置103は、カートリッジ80(図1及び図2参照)に代えてカートリッジ380を、タンク1に装填可能なように構成されている。カートリッジ380は、頭部85の外周面に雄ねじが形成されているカートリッジ80とは異なり、頭部385の内周面に雌ねじが形成されている。かかるカートリッジ380を着脱自在に保持するために、カートリッジ吐出装置103では、タンク1の下端のキャップ9(図2参照)に代えて、キャップ309が用いられている。
キャップ309の上端面には、凹部316が形成されており、凹部316の中心に近い部位には、上方に突出する突出部320が形成されている。突出部320の中心を、吐出口5が貫通している。突出部320の外周面には雄ねじが形成されている。また、凹部316の底部には、環状のエアシール318が配置されている。カートリッジ380の頭部385の内周面に形成された雌ねじが突出部320の雄ねじに螺合することにより、カートリッジ380は逆立ちした姿勢で、キャップ309に、着脱自在かつ気密に保持される。キャップ309にカートリッジ380を保持させ、キャップ309をタンク本体7の下端に装着することにより、カートリッジ380がタンク1に装填される。
図10は、本発明のさらに別の実施の形態によるカートリッジ吐出装置の正面断面図である。このカートリッジ吐出装置104は、ピストン43が設けられない点で、カートリッジ吐出装置101(図2参照)とは異なっている。ピストン43が無いため、ピストン43を駆動するシリンダー3を要しない。また、タンク本体7の上端のキャップ23に代えて、キャップ423が設けられる。キャップ423は、ピストンロッド41が貫通する貫通孔37を有しない点において、キャップ23とは異なっている。
カートリッジ吐出装置101と同様に、カートリッジ80に充填された粘性流体83を吐出するときには、気体導入口33から圧縮空気が導入される。カートリッジ80がタンク1に装填されると、タンク1の内部は、気体導入口33を除いて外部から気密に保たれる。このため、気体導入口33から圧縮空気が導入されると、タンク1の内部の空気圧が高められる。カートリッジ吐出装置101と同様に、タンク1には、カートリッジ80の底部に当接するシール材が無い。このため、タンク1の内部の空気圧は、カートリッジ80の内部だけでなく、外部にも作用する。すなわち、カートリッジ80の内部と外部との間に、圧力差を生じない。また、カートリッジ80は、その底部がタンク1の内部に浮いた状態で、タンク1に装填され、カートリッジ80の底部が、何物かに当接して押圧を受ける、ということがない。このため、内圧や押圧力によりカートリッジ80の側壁が外側に膨らむ、ということがない。その結果、カートリッジ吐出装置101と同様に、カートリッジ80の内周面と底蓋81の外周面との間に隙間を生じないので、この隙間から粘性流体83が漏れ出て、底蓋81が粘性流体83の中に沈み込む、という不都合が抑制される。また、押圧力により、カートリッジ80が変形したり破損したりする、という不都合も生じない。
カートリッジ80は、その底部がタンク1の内部に浮いた状態で、タンク1に装填されるので、カートリッジ80がタンク1内に装填され得る範囲であれば、カートリッジ80の長さには制限がない。すなわち、カートリッジ吐出装置101と同様に、長さがある範囲で異なるカートリッジ80を装填することが可能である。また、カートリッジ80は、タンク1の軸方向の特定位置に底部の位置を定める必要がない。このため、従来技術とは異なり、ある範囲で長さの異なるカートリッジ80を装填可能にするために、タンク本体7に螺合する深いネジをキャップ9に形成する必要がない。すなわち、カートリッジ吐出装置101と同様に、カートリッジ80の着脱作業が簡便なものとなる。
図4、図5及び図7に例示した、タンク本体7の下端にキャップ9を装着する構造は、一般に、容器などの出入口にキャップを装着する栓構造にも、適用することが可能である。
本発明のうち第10の態様によるものは、第9の態様による栓構造であって、前記円筒状体の前記先端の付近の内周面と、前記キャップの前記円周面との少なくとも一方に、環状のシール材が配置され、それにより前記キャップは、前記円筒状体の前記先端に気密又は液密に装着されている。前記円筒状体の前記複数の切れ込みの前記周に沿って延びる部分は、周方向に対して傾斜しつつ周に沿って延びる部分を有しており、それにより、前記キャップを周方向に回すことにより、前記シール材の摩擦力に抗して、前記キャップを前記円筒状体に対して着脱することが可能である。