以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものであり、一部の寸法が大きく又は小さくなっている場合がある。
(吸収性物品の基本構造)
図1Aに、本発明の一形態による吸収性物品1の部分破断平面図を示す。また、図1Bに、吸収性物品1のI−I線断面図を示す。図1A及び図1Bに示すように、吸収性物品1は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。吸収性物品1の装着時には、表面シート3側が肌に触れる側(肌側若しくは表面側)となり、裏面シート2側が下着に固定される側(下着側若しくは裏面側)となる。
図1Aに示すように、本体8は全体として、第1方向D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向D2に所定の幅を有しており、前後方向D1に細長い形状を有する。本体8の幅は、図示の例では略一定となっているが、第1方向(長手方向)D1にわたって変化していてもよい。図1Aに示すように、吸収性物品1は、第1方向(長手方向)D1に延びる中心線(前後方向中心線)CLに対して略線対称の形状を有することができる。また、吸収性物品1の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝等の大きさや位置等を含む)は、中心線を対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
吸収性物品1における第1方向D1の長さ(本体8の全長)は、特に限定されないが、150〜450mmとすることができ、より好ましくは170〜290mmとすることができる。また、吸収性物品1における、第1方向D1に直交する第2方向D2の長さ(本体8の幅)も、特に限定されないが、50〜200mmとすることができ、好ましくは70〜120mmとすることができる。
吸収性物品1は、装着時に装着者の膣口等の体液排出口に対応する部分(体液排出口対応部)Aを有しており、体液排出口対応部Aは中心Acを有している。中心Acは、長方向中心線CL上にあり、体液排出口対応部Aの長手方向の長さの中央に位置している。中心Acの位置は、例えば、吸収性物品1の前端から70〜130mmの位置とすることができる。また、体液排出口対応部Aは、長さ(長手方向D1の長さ)が10〜50mm、好ましくは20〜40mm程度であり、体液排出口対応部Aの幅(幅方向D2の長さ)が5〜40mm、好ましくは10〜30mm程度の領域とすることができる。なお、図示の体液排出口対応部Aの形状及び大きさは、説明を容易にするための例示にすぎない。
吸収性物品1は、上述の体液排出口対応部Aが含まれる中央領域Mと、中央領域Mの前方にある前方領域Fと、中央領域Mの後方にある後方領域Rとを有する。中央領域Mは、装着時に装着者の股間に対応する領域である。中央領域Mは、後述の一対の中央圧搾溝11、11の前端から後端までの領域としてもよい。
また、中央領域Mは、その両側方から延びる、吸収性物品1を装着の際に下着に確実に固定するためのウィングW、Wを有していてよい。前方領域Fは、ウィングWの前方の起点となる位置又はそれより前方から前端縁までの領域であり、後方領域Rは、ウィングWの後方の起点となる位置又はそれより後方から後端縁までの領域とすることができる。また、中央領域Mは、後述の体液排出口対応領域を前後方向D1に含むように略前後方向に延びる中央圧搾溝が設けられている場合には、中央圧搾溝全体を含む領域とすることができる。ウィングW、Wが設けられている場合、体液排出口対応部Aの中心Acの長手方向D1での位置は、ウィングW、Wの側方の端縁の長手方向長さの中点の位置付近とすることもできる。
吸収性物品1はウィングW、Wを有しているが、吸収性物品1はウィングW、Wのない形態とすることができる。その場合、ウィングW、Wを形成すると仮定した場合に、ウィングW、W前方の起点となる位置又はその近傍から前方の領域を前方領域Fとし、ウィングW、Wの後方の起点となる位置又はその近傍から後方の領域を後方領域Rとすることができる。
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
吸収体4の厚みは、0.3〜30mmの範囲内とすることができ、1.0〜15mmの範囲であると好ましい。吸収体4は全体として、全面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口対応部50及びその近傍の領域を膨出させた構造とすることもできる。また、後述の体液誘導部45が設けられている部分の厚みは、その周囲の厚みより小さくなっていてもよい。
吸収体4は、その形状保持等を目的として、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート9によって包まれていてもよい。被包シート9によって吸収体層が包まれていることによって、吸収体4のよれや割れを防止することができる。被包シート9としては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。着色された被包シート9を用いた場合、被包シート9の色は、表面シート3側からも薄い色として反映され得る。そのため、排出された体液の色を、その反映された被包シート9の色に紛れさせて目立たなくすることができる。被包シートは、例えば、体液の色の補色に着色することができる。例えば、経血の吸収を目的として構成された吸収性物品(生理用ナプキン等)においては、被包シートを、赤色の補色である緑色に着色することができる。
吸収体4の前方及び後方の端縁部では裏面シート2と表面シート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体4の側方においては、表面シート3側の両側部に長手方向D1に沿って設けられたサイド不織布7、7と、裏面シート2とが上記接着手段によって接合されており、これにより上述のウィングW、Wが形成されている。
サイド不織布7としては、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適宜の撥水処理又は親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。サイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維又は再生繊維等を素材とすることができる。サイド不織布7の撥水処理には、シリコン系、パラフィン系等の撥水剤を用いることができる。
(圧搾溝)
図1Aに示すように、本形態による吸収性物品1においては、本体8に複数の圧搾溝が設けられていてよい。圧搾溝は、表面シート3と吸収体4とを積層させた後、両者をあわせて圧搾して得られる、表面シート3側から裏面シート2側に窪む圧搾溝(フィットエンボスともいう)である。圧搾溝は、吸収体4の上に表面シート3を積層させて得られた積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。例えば、積層体の表面シート3側に凸状ロールが、吸収体4側に平坦なロールがそれぞれ配置されるようにして、両ロールによって加圧することができる。
図1Aに示すように、吸収性物品1に設けられた圧搾溝には、一対の中央圧搾溝11、11、前方圧搾溝13、13、前方補助圧搾溝14、14、後方圧搾溝12、12が含まれる。図1Aに示す形態では、各圧搾溝は、平面視で、前後方向中心線CLに対して線対称に設けられているが、圧搾溝の配置や構成(溝の幅、深さ等)は必ずしも線対称でなくてもよく、非線対称であってもよい。
一対の中央圧搾溝11、11は、前後方向中心線CLの両側に、前後方向中心線CLから間隔を置いて、略前後方向に沿って延在する溝である。一対の中央圧搾溝11、11は、体液排出口対応部Aより側方に、体液排出口対応部Aと重ならないように設けることができる。また、一対の中央圧搾溝11、11は、前後方向D1で見て、体液排出口対応部Aを含むように延在している。一対の中央圧搾溝11、11は、前方及び後方のいずれかに中央領域Mを越えて延在していてもよいが、中央領域M内に配置されていると好ましい。
一対の中央圧搾溝11、11は、略前後方向に延びていれば、直線状であってもよいし、前後方向D1中央付近が幅方向D2内側又は外側に膨らむよう湾曲又は屈曲していてもよい。一対の中央圧搾溝11、11は、前後方向D1中央付近が幅方向D2外側に膨らむ(前後方向中心線CLから遠ざかる)ように湾曲していると、装着時に体液排出口対応部Aを、体液排出口の形状に適合するよう盛り上げることができるので、好ましい。
吸収性物品1の後方領域Rには、一対の後方圧搾溝12、12が、前後方向中心線CLの両側に、当該中心線CLから間隔を置いて設けられている。一対の後方圧搾溝12、12は、後方に向かって、より具体的には斜後方に延び、且つ後方に向かうにつれ圧搾溝間の幅が漸次大きくなる溝間幅拡大部12c、12cを有している。図示の形態では、溝間幅拡大部12c、12cは、一対の後方圧搾溝12、12の前方(すなわち中央領域Mに近い側)の部分をなしている。
一対の後方圧搾溝12、12があることで、一対の後方圧搾溝12、12に沿って吸収体4が容易に折れ、平面状の本体8を身体の形状にフィットさせることができる。また、溝間幅拡大部12c、12cを有しているので、後方領域Rを、後方に向かうにつれ次第に幅が広がる臀部の溝の形状に合わせて良好にフィットさせることができる。なお、一対の後方圧搾溝12、12は、後方に向かうにつれ圧搾溝間の幅が漸次大きくなる溝間幅拡大部12c、12cではなく、前後方向で見て圧搾溝間の幅が一定の部分を含んでいてもよい。
一対の後方圧搾溝12、12は、溝間幅拡大部12c、12cの後方にさらに延長している。その延長部分はそれぞれ、前後方向中心線CLに向かい、さらに前方に折り返され、再び幅方向D2外側を向くように湾曲している。このように、一対の後方圧搾溝12、12の形状は、全体として、略ハート形(図1Aの向きにおいては、略逆ハート形状)とすることにより、デザイン性を高めることができる。
図1Aに示す形態では、一対の後方圧搾溝12、12の前端12a、12aは接しておらず、前端12a、12a同士が離れている。これにより、後方領域Rの前後方向中心線CL付近での、本体8の柔らかさを向上させることができる。一方、この一対の後方圧搾溝12、12の前端12a、12aは連結していてもよい。連結していると、連結部を起点として変形が容易になるので、後方領域Rにおける身体に合った変形を促進させることができる。
図1Aに示すように、一対の後方圧搾溝12、12は、一対の中央圧搾溝11、11の後方に設けられている。一対の後方圧搾溝12、12は、一対の中央圧搾溝11、11から後方に離間して設けられていてもよい。すなわち、一対の後方圧搾溝12、12の前端12a、12aは、一対の中央圧搾溝11、11の後端11b、11bと前後方向D1に離間して位置していてもよい。これにより、中央領域Mから後方領域Rにかけて圧搾溝が前後方向D1で不連続になるので、中央領域Mと後方領域Rとがそれぞれ独立に動きやすくなる。そのため、身体の動きに追従した変形が可能になり、フィット性が高まる。しかし、一対の後方圧搾溝12、12は、一対の中央圧搾溝11、11と前後方向D1で部分的に重なっていてもよい。
吸収性物品1の前方領域Fには、一対の前方圧搾溝13、13が、前後方向中心線CLの両側に、当該中心線CLから間隔を置いて設けられている。一対の前方圧搾溝13、13は、前方に向かって、より具体的には斜前方に延び、且つ前方に向かうにつれ圧搾溝間の幅が漸次大きくなる溝間幅拡大部13c、13cを有している。溝間幅拡大部13c、13cは、一対の前方圧搾溝13、13の後方(中央領域Mに近い側)の部分をなしている。
一対の前方圧搾溝13、13があることで、一対の前方圧搾溝13、13に沿って吸収体4が容易に折れ、平面状の本体8を身体の形状にフィットさせることができる。また、一対の前方圧搾溝13、13が、溝間幅拡大部13c、13cを有していることで、前方領域Fを、身体の腹側に丸く突き出た恥骨のカーブに沿って良好にフィットさせることができる。なお、一対の前方圧搾溝13、13は、前方に向かうにつれ圧搾溝間の幅が漸次大きくなる溝間幅拡大部13c、13cではなく、前後方向で見て圧搾溝間の幅が一定の部分を含んでいてもよい。
一対の前方圧搾溝13、13は、溝間幅拡大部13c、13cの前方にさらに延長している。その延長部分はそれぞれ、前後方向中心線CLに向かい、さらに後方に折り返され、再び幅方向D2外側を向くように湾曲している。このように、一対の前方圧搾溝13、13の形状は、全体として略ハート形となっており、デザイン性が高い。
図1Aに示す形態では、一対の後方圧搾溝12、12とは異なり、一対の前方圧搾溝13、13同士は連結して、先端(前端)13aを形成している。このように一対の圧搾溝が連結していると、連結部を起点として変形が容易になるので、身体に合った変形を促進させることができる。一方、一対の後方圧搾溝12、12のように、一対の前方圧搾溝13、13が離間していてもよく、その場合には、前方領域Fの前後方向中心線CL付近での、本体8の柔らかさを向上させることができる。
図1Aに示すように、一対の前方圧搾溝13、13は、一対の中央圧搾溝11、11の前方に設けられている。一対の前方圧搾溝13、13は、一対の中央圧搾溝11、11から前方に離間して設けられていてよい。すなわち、一対の前方圧搾溝13、13の後端13aは、一対の中央圧搾溝11、11の前端11a、11aの前方に設けられていてよい。これにより、中央領域Mから前方領域Fにかけて圧搾溝が前後方向D1で不連続になり、中央領域Mと前方領域Fとがそれぞれ独立に動くことができるようになる。そのため、身体の動きに追従した変形が可能になり、身体にフィットさせることができる。但し、一対の中央圧搾溝11、11と前後方向D1で部分的に重なっていてもよい。
なお、前方領域Fにおいては、一対の前方補助圧搾溝14、14が設けられていてもよい。一対の前方補助圧搾溝14、14は、一対の前方圧搾溝13、13のそれぞれ後方に、すなわち、前後方向D1で見て、一対の前方圧搾溝13、13と一対の中央圧搾溝11、11との間に設けられている。一対の前方補助圧搾溝14、14があることで、一対の前方圧搾溝13、13の作用である身体の前側の部分(腹側の部分)に沿った変形を助成することができる。すなわち、前方領域Fを、恥骨のカーブに沿って幅方向D2中央が前方に突出するように変形させ、フィット性を一層向上させることができる。
(体液誘導部)
上述のように、本形態による吸収性物品1は、前方領域F及び後方領域Rに形成された圧搾溝によって、フィット性の高い構成となっている。フィット性が高いことにより、身体と吸収性物品1との隙間を小さく又はなくすことができるので、排出された体液を直ちに吸収することができ、体液が身体を伝って前方及び/又は後方へと流れて漏れることを防止できる。しかしながら、一度に大量の体液が排出された場合等には、体液が吸収体4に吸収されても吸収体4内で前後方向D1に沿って十分に拡散できないことがある。よって、前方領域F及び/又は後方領域Rにまで拡散できたとしても、体液が前方領域F及び/又は後方領域Rの幅方向外側から漏れることがある。
また、吸収性物品は、適正な装着位置から、例えば左右にずれて装着される場合もある。そのようなずれは、前後方向に細長である形状に起因して、前方領域F及び/又は後方領域Rで発生することが多い。その場合、前方領域F及び/又は後方領域Rの幅方向外側から体液が漏れやすくなる。
これに対し、図1A及び図1Bに示すように、吸収体4は、平面視で、前後方向中心線CL上に後方体液誘導部45Rを有する。後方体液誘導部45Rは、前後方向D1で見て一対の後方圧搾溝12、12と重なっている。すなわち、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raは、後方圧搾溝12、12の前端12a、12aより後方に位置する。そして、後方体液誘導部Rの後方端縁45Raの少なくとも一部は、後方圧搾溝12、12間に配置されている。図1Aの形態では、後方体液誘導部Rの後方端縁45Ra全体が、後方圧搾溝12、12間に配置されている、つまり、後方圧搾溝12、12を幅方向D2外側に越えて延びていない。
ここで、後方体液誘導部45Rは、周囲の吸収体から液体を引き込む機能が、周囲の吸収体より高い部分である。このような後方体液誘導部45Rが設けられていることで、吸収体4に吸収された体液が幅方向D2外側に広がることを防止し、一対の後方圧搾溝12、12間に誘導することができるので、後方領域Rにおける幅方向D2外側への漏れを抑制することができる。
以下、図2を参照して、後方体液誘導部45Rの機能についてより詳細に説明する。図2は、吸収性物品1の部分拡大図である。図2においては、体液の流れを矢印で模式的に示す。
矢印で示すように、中央領域Mの体液排出口対応部Aに排出された体液はまず、一対の中央圧搾溝11、11間を後方へと拡散していく。ここで、後方体液誘導部45Rが体液排出口対応部A付近に配置されていることで、体液は、後方体液誘導部45Rに引き込まれ、後方へと拡散を続ける。この際、体液は、中央領域Mにおいて、幅方向D2中央に向かって誘導されるので、幅方向D2外側には拡散しにくくなっている。
さらに体液は、一対の後方圧搾溝12、12のある位置にまで到達すると、一対の後方圧搾溝12、12に沿って移行するとともに、一対の後方圧搾溝12、12間へと誘導される。図2の形態では、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raは一対の後方圧搾溝12、12間に配置されているので、後方に拡散していく体液の少なくとも一部を、より確実に一対の後方圧搾溝12、12間に誘導することができる。よって、後方領域Rの後方、すなわち、一対の後方圧搾溝12、12間の領域及びさらにその後方の領域の吸収体も活用することができ、後方領域Rでの幅方向D2外側への漏れを低減することができる。すなわち、一度に大量の体液が排出されたり、長時間の使用により排出される体液の合計が増えたり、装着位置が多少ずれたりした場合であっても、後方領域R全体を活用することができ、後方領域Rでの漏れを低減することができる。
なお、図示の形態では、後方体液誘導部45Rは、体液排出口対応部Aと重なっているが、体液排出口対応部A付近に設けられていて体液を一対の後方圧搾溝12、12間へと誘導できる作用を有するのであれば、重なっていなくともよい。但し、後方体液誘導部45Rと体液排出口対応部Aとが重なっていた方が体液を誘導する作用が向上する。また、後方体液誘導部45Rは、後方体液誘導部45Rが設けられている領域が装着者の体液排出口に密着した時の違和感を軽減する観点から、体液排出口対応部Aの中心Acには重なっていないことが好ましい。
図1A、図1B及び図2に示す形態では、後方体液誘導部45Rの形状は、吸収性物品1の後方に(一対の後方圧搾溝12、12側に)頂点を有する二等辺三角形であるが、特に限定はされない。後方体液誘導部45Rの形状は、三角形以外の多角形、すなわち四角形、五角形等、及び楕円、並びにそれを含む又はその一部からなる形状であってもよい。また、後方体液誘導部45Rの形状は、線対称(左右対称)となっていることが好ましく、線対称の対称線が前後方向中心線CLであると好ましい。
また、後方体液誘導部45Rの形状は、後方に向かうにつれ、つまり一対の後方圧搾溝12、12に近付くにつれ、漸次又は段階的に幅が小さくなっている部分を含んでいてよい。これにより、一度に大量に排出された体液を、後方へ誘導しつつ、少しずつ側方にも拡散させると共に、少なくとも一部の体液を確実に一対の後方圧搾溝12、12間に誘導することができる。これにより、後方領域Rでの漏れを防止する作用を一層向上させることができる。
後方体液誘導部45Rの前後方向D1の長さは30〜80mmであると好ましく、40〜70mmであるとより好ましい。そして、後方体液誘導部45Rの面積は、100〜2000mm2程度とすることができる。また、後方体液誘導部45Rの最大幅は、吸収体4の幅の10〜35%とすることができる。
後方体液誘導部45Rは、周囲の吸収体よりも液体を引き込む機能が高いのであれば、その構成は特に限定されず、親水性(又は疎水性)等の化学的特性、又は毛管現象等の物理的な現象を利用して形成することができる。例えば、後方体液誘導部45Rは、吸収体4において周囲よりも密度の高い部分(高密度部)とすることができる。或いは、周囲と異なる材料又は材料の配合を用いて構成することもできる。周囲と異なる材料を用いる場合、後方体液誘導部45Rの材料が、親水性の高い材料をより多く含むようにすることもできる。また、後方体液誘導部45Rに含まれるポリマーの目付を周囲よりも増大させることもできる。
後方体液誘導部45Rが高密度部である場合、その密度は80〜170kg/m3であると好ましく、90〜120kg/m3であるとより好ましい。また、後方体液誘導部45Rの以外の吸収体の密度は60〜100kg/m3程度である。ここで、後方体液誘導部45Rの密度の、その周囲の吸収体の密度に対する比の値は、1.1〜3.0であると好ましく、1.3〜2.0であるとより好ましい。
なお、吸収体の密度は、次のようにして測定することができる。吸収体から測定したい部分(フィットエンボスが設けられていない部分)を任意の大きさに切り取り、面積を測定する。さらに、切り取った部分の重量を測定し、また厚みを測定する。厚みは、例えば、厚み測定器(株式会社尾崎製作所製「ピーコック」、型番:FFD―7)を測定することができる。そして、このように測定された面積、厚み、及び重量から密度を算出することができる。
(体液誘導部の変形例)
図3及び図4に、後方体液誘導45Rの変形例を示す。図3及び図4には、後方体液誘導部R及び一対の後方圧搾溝12、12が設けられている部分の拡大平面図を示し、それ以外の構成の詳細は省略する。
図3(a)の例では、後方体液誘導部45Rの形状は四角形、より具体的には長方形である。また、図3(a)の例では、図1A、図1B、及び図2に示す形態とは異なり、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raは、前後方向D1で見て一定の幅を有しており、一対の後方圧搾溝12、12の前端12a、12aの位置で一対の後方圧搾溝12、12を幅方向D2に越えて延在している。
図1A等の例、及び図3(a)の例のいずれにおいても、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raが、一対の後方圧搾溝12、12間に配置されている(一対の後方圧搾溝12、12の前端12a、12aを後方に越えている)ため、体液を一対の後方圧搾溝12、12間に誘導させることができる。図3(a)の例でも、後方体液誘導部45Rは、体液を引き込み、保持する機能が、周囲の吸収体に比べて高いため、体液排出口対応部に排出された体液は、後方体液誘導部45Rに引き込まれ、さらに後方へと誘導される。
また、図3(a)の例では、後方体液誘導部45Rの幅が前後方向D1で一定となっているので、後方に向かって先細になっている構成に比べ、より多くの体液を後方領域Rに誘導することができる。
図3(b)の例では、後方体液誘導部45Rの形状は、半楕円形、すなわち楕円形の一部分の形状となっている。本例は、図1A等の例と同様、後方体液誘導部45Rが、後方に向かうにつれ漸次幅が小さくなっている部分を含む形状であるが、本例では、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raの輪郭が曲線状になっている。
例えば後方体液誘導部45Rを高密度部として形成する等、曲げ剛性が異なるように形成する場合、後方体液誘導部45Rとその周囲との間の境界で吸収体4が折れて、その部分が肌に当たる場合がある。しかし、図3(b)に示すように後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raの輪郭が湾曲していると、上記境界が肌に当ったときの違和感を低減することができる。
図3(c)の例では、後方体液誘導部45Rの幅は、後方に向かって段階的に小さくなっている。本例では、段部が1つ形成されているが、2以上の段部が形成されるような形状であってもよい。図3(c)の例では、後方体液誘導部45Rが幅一定の部分を有するため、その分、後方に誘導させる体液の量を増やすことができるともに、端縁45Raを一対の後方圧搾溝12、12間に配置させることで、幅方向D2中央で後方に誘導する体液を増やすことができる。
図3(d)の例では、一対の後方圧搾溝12、12が、後方に向かうにつれ圧搾溝間の幅が漸次大きくなる部分からなっており、図1A等の例に示したような後方へ向かう延長部分は設けられていない。そのため、後方領域Rの後方部分の柔軟性を向上させることができる。また、本例でも、図1A等の例と同様、後方体液誘導部45Rの後方端縁45Raが、一対の後方圧搾溝12、12に配置されているが、後方体液誘導部45Rは、一対の後方圧搾溝12、12と平面視で重なっておらず、また接していない。本例では、一対の後方圧搾溝12、12に沿って体液の一部を後方に誘導できる一方、後方体液誘導部45Rの幅を小さくすることが可能である。よって、後方体液誘導部45Rを例えば高密度部として構成した場合には、幅を小さくした分、吸収体4の柔軟性を向上させることができる。
一方、図1A等、及び図3(a)〜(c)に示すような例では、後方体液誘導部45Rは、一対の後方圧搾溝12、12の先端(前端12a、12a)と接しているか、又は重なっている。これにより、後方体液誘導部45Rから一対の後方圧搾溝12、12にも体液を誘導しやすくなるので、後方へと誘導、拡散される体液の量を増加させることができる。
図3(e)の例では、一対の後方圧搾溝12、12間の幅が、前後方向D1で略一定となっている。このような例でも、後方領域Rを盛り上げるように変形させて、臀部の溝に合わせてフィットさせることができる。そして、図3(a)〜(c)に示す例と同様、後方体液誘導部45Rによって、体液を一対の後方圧搾溝12、12間に誘導、拡散させることができると共に、一対の後方圧搾溝12、12の、後方体液誘導部45Rに接している前端12a、12aから、一対の後方圧搾溝12、12に沿って後方へ誘導させることができる。
図4(a)及び(b)に示す例では、後方体液誘導部45Rの形状は、図1A等に示す例と同じであるが、後方体液誘導部45R内の構成が異なっている。図4(a)の例では、後方体液誘導部45Rは高密度部によって構成されているが、後方体液誘導部45R内に、当該部分45R内でより高密度になっている超高密度部45h'が形成されている。超高密度部45h'は、前後方向D1に延びるストライプ状の部分である。
超高密度部45h'は、後方体液誘導部45R内でも特に体液を引き込む機能が高いので、超高密度部45h'が前後方向D1に沿って形成されていることで、後方に沿った体液の誘導を促進することができる。
図4(a)の例では、超高密度部45h'は、3条設けられているが、この数には特に限定されない。但し、超高密度部45h'は、後方体液誘導部45Rの幅方向D2中央に、好ましくは長手方向中心線CL上にあると、幅方向D2中央に体液を誘導する作用が高まり、好ましい。
図4(b)の例では、後方体液誘導部45Rは、高密度部45hと超高密度部45h'とが、前後方向D1に2つの領域に分かれて形成されている。本例では、後方体液誘導部45R内に引き込まれた体液は、高密度部45hから超高密度部45h'へとさらに引き込まれるので、前方から後方へと向かう体液の移行をさらに促進させることができる。
なお、本明細書において、高密度、超高密度、低密度といった表現は、吸収体4においける相対的な特性を示すために使われているのであって、特定の密度値又は密度値の範囲を示すものではない。
以上、図面を参照して、後方領域Rにおける後方体液誘導部45Rの構成及び機能について主に説明したが、前方領域Fにおける前方体液誘導部45F及び一対の前方圧搾溝13、13の構成及び機能もとの関係についても、同様の説明ができ、同様の効果を奏し、また同様の変形又は変更が可能である。また、図3及び図4を参照して説明した変形例についても、前方体液誘導部45F及び一対の前方圧搾溝13、13に適用可能である。
なお、本形態による前方体液誘導部45F及び前方圧搾溝13、13を備えた所定の構成、並びに後方体液誘導部45R及び後方圧搾溝12、12を備えた所定の構成は、吸収性物品1の使用目的及び使用方法に応じて、どちらか一方設けることができるし、両方設けることもできる。
(体液誘導部の形成)
図5に、後方体液誘導部45R及び/又は前方体液誘導部45F(単に体液誘導部45という)の形成方法の一例を示す。図5においては、プレス型Pによって、高密度部を形成する例を示す。図5(a)に、吸収体4となる積繊体4sがプレス型P1で押圧される前の状態を、図5(b)に、プレス型P1を押し付けて積繊体4sを圧縮し、外した後の状態を示す。
図5の例では、積繊体4sは均一な厚みを有している。この積繊体4sを、吸収体4において体液誘導部(高密度部)45を形成したい部分に対応する部分が凸となっているプレス型P1で押圧する(図5(a))これにより、図5(b)に示すように、体液誘導部(高密度部)45の厚みがその周囲の部分の厚みより小さくなっている吸収体4が得られる。
図5の例では、体液誘導部(高密度部)45の部分の窪みになっており、その厚みは周囲の吸収体4の厚みより小さくなっている。このようにして形成された吸収体4を、吸収性物品1において使用する際には、図中の上側を表面側としても(窪みができた側を表面側としても)よいし、図中の下側を表面側としても(窪みができた側を裏面側としても)よい。いずれの場合にも、体液を引き込んで後方及び/又は前方へと誘導させる作用を有するが、前者の場合(窪みを表面側とする場合)には、少なくとも一時的に窪み内に体液を溜めおくことができるので、大量の体液が排出された場合等であっても、吸収体4の外部への漏れを防止することができる。また、後者の場合(窪みを裏面側とする場合)には、吸収体4の表面側が平坦になることから、装着時の違和感が低減される。
図6に、体液誘導部45の形成方法の別の例を示す。図6に示す例でも、図5の例と同様、プレス型P2によって、高密度部を形成する。図6(a)に、吸収体4となる積繊体4sがプレス型P2で押圧される前の状態を、図5(b)に、プレス型Pを押し付けて積繊体4sを圧縮し、外した後の状態を示す。
図6の例では、図5の例とは異なり、吸収体4となる積繊体4sの厚みは均一ではなく、体液誘導部(高密度部)45を形成したい部分の厚みを大きくしている(図6(a))。このような肉厚部が形成された積繊体4sを、表面が平坦なプレス型P2で押圧することにより、図6(b)に示すように、体液誘導部(高密度部)45の厚みとその周囲の厚みとが均一な吸収体4が得られる。