以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る超音波観測装置3を備えた超音波観測システム1の構成を示すブロック図である。同図に示す超音波観測システム1は、観測対象である被検体へ超音波を送信し、該被検体で反射された超音波を受信する超音波内視鏡2(超音波プローブ)と、超音波内視鏡2が取得した超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置3と、超音波観測装置3が生成した超音波画像を表示する表示装置4と、を備える。
超音波内視鏡2は、その先端部に、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号に変換して出力する超音波振動子21を有する。超音波振動子21は、コンベックス振動子、リニア振動子およびラジアル振動子のいずれでも構わない。超音波内視鏡2は、超音波振動子21をメカ的に走査させるものであってもよいし、超音波振動子21として複数の素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる素子を電子的に切り替えたり、各素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものであってもよい。
超音波内視鏡2は、撮像光学系および撮像素子を有しており、被検体の消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、または呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管や呼吸器、その周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、胆道、リンパ節、縦隔臓器、血管等)を撮像することが可能である。また、超音波内視鏡2は、撮像時に被検体へ照射する照明光を導くライトガイドを有する。このライトガイドは、先端部が超音波内視鏡2の被検体への挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置に接続されている。なお、超音波内視鏡2に限らず、撮像光学系および撮像素子を有しない超音波プローブであってもよい。
超音波観測装置3は、超音波内視鏡2と電気的に接続され、所定の波形および送信タイミングに基づいて高電圧パルスからなる送信信号(パルス信号)を超音波振動子21へ送信するとともに、超音波振動子21から電気的な受信信号であるエコー信号を受信してデジタルの高周波(RF:Radio Frequency)信号のデータ(以下、RFデータという)を生成、出力する送受信部31と、送受信部31から受信したRFデータをもとにデジタルのBモード用受信データを生成する信号処理部32と、送受信部31から受信したRFデータに対して所定の演算を施す演算部33と、各種画像データを生成する画像処理部34と、画像処理部34が生成した画像データに対して関心領域を設定する関心領域設定部35と、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて実現され、各種情報の入力を受け付ける入力部36と、超音波観測システム1全体を制御する制御部37と、超音波観測装置3の動作に必要な各種情報を記憶する記憶部38と、を備える。
送受信部31は、エコー信号を増幅する信号増幅部311を有する。信号増幅部311は、受信深度が大きいエコー信号ほど高い増幅率で増幅するSTC(Sensitivity Time Control)補正を行う。図2は、信号増幅部311が行う増幅処理における受信深度と増幅率との関係を示す図である。図2に示す受信深度zは、超音波の受信開始時点からの経過時間に基づいて算出される量である。図2に示すように、増幅率β(dB)は、受信深度zが閾値zthより小さい場合、受信深度zの増加に伴ってβ0からβth(>β0)へ線型に増加する。また、増幅率βは、受信深度zが閾値zth以上である場合、一定値βthをとる。閾値zthの値は、観測対象から受信する超音波信号がほとんど減衰してしまい、ノイズが支配的になるような値である。より一般に、増幅率βは、受信深度zが閾値zthより小さい場合、受信深度zの増加に伴って単調増加すればよい。なお、図2に示す関係は、予め記憶部38に記憶されている。
送受信部31は、信号増幅部311によって増幅されたエコー信号に対してフィルタリング等の処理を施した後、A/D変換することによって時間ドメインのRFデータを生成し、信号処理部32および演算部33へ出力する。なお、超音波内視鏡2が複数の素子をアレイ状に設けた超音波振動子21を電子的に走査させる構成を有する場合、送受信部31は、複数の素子に対応したビーム合成用の多チャンネル回路を有する。
送受信部31が送信するパルス信号の周波数帯域は、超音波振動子21におけるパルス信号の超音波パルスへの電気音響変換の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にするとよい。また、信号増幅部311におけるエコー信号の各種処理周波数帯域は、超音波振動子21による超音波エコーのエコー信号への音響電気変換の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にするとよい。これらにより、後述する周波数スペクトルの近似処理を実行する際、精度のよい近似を行うことが可能となる。
送受信部31は、制御部37が出力する各種制御信号を超音波内視鏡2に対して送信するとともに、超音波内視鏡2から識別用のIDを含む各種情報を受信して制御部37へ送信する機能も有する。
信号処理部32は、RFデータに対してバンドパスフィルタ、包絡線検波、対数変換など公知の処理を施し、デジタルのBモード用受信データを生成する。対数変換では、RFデータを基準電圧Vcで除した量の常用対数をとってデシベル値で表現する。信号処理部32は、生成したBモード用受信データを、画像処理部34へ出力する。信号処理部32は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサやASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
演算部33は、送受信部31が生成したRFデータに対して受信深度zによらず増幅率βを一定とするよう増幅補正を行う増幅補正部331と、増幅補正を行ったRFデータに高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施して周波数解析を行うことにより周波数スペクトルを算出する周波数解析部332と、周波数解析部332により算出された周波数スペクトルをもとに、該周波数スペクトルの特徴量を算出する特徴量算出部333と、特徴量算出部333が算出した特徴量をもとにヒストグラムを生成するヒストグラム生成部335と、ヒストグラム生成部335が生成したヒストグラムを用いて、所定の特徴量の頻度を示す累積度数を算出する累積度数算出部336と、累積度数算出部336が算出した累積度数をもとに、組織の良悪性を判定する判定部337と、を有する。演算部33は、CPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
図3は、増幅補正部331が行う増幅補正処理における受信深度と増幅率との関係を示す図である。図3に示すように、増幅補正部331が行う増幅補正処理における増幅率β(dB)は、受信深度zがゼロのとき最大値βth−β0をとり、受信深度zがゼロから閾値zthに達するまで線型に減少し、受信深度zが閾値zth以上のときゼロである。このように定められる増幅率βによって増幅補正部331がRFデータを増幅補正することにより、信号処理部32におけるSTC補正の影響を相殺し、一定の増幅率βthの信号を出力することができる。なお、増幅補正部331が行う受信深度zと増幅率βの関係は、信号処理部32における受信深度と増幅率の関係に応じて異なることは勿論である。
このような増幅補正を行う理由を説明する。STC補正は、アナログ信号波形の振幅を全周波数帯域にわたって均一に、かつ、深度に対しては単調増加する増幅率で増幅させることで、アナログ信号波形の振幅から減衰の影響を排除する補正処理である。このため、エコー信号の振幅を輝度に変換して表示するBモード画像を生成する場合、かつ、一様な組織を走査した場合には、STC補正を行うことによって深度によらず輝度値が一定になる。すなわち、Bモード画像の輝度値から減衰の影響を排除する効果を得ることができる。
一方、本実施の形態のように超音波の周波数スペクトルを算出して解析した結果を利用する場合、STC補正でも超音波の伝播に伴う減衰の影響を正確に排除できるわけではない。なぜなら、一般に減衰量は周波数によって異なるが(後述する式(1)を参照)、STC補正の増幅率は距離だけに応じて変化し、周波数依存性がないためである。
上述した問題、すなわち、超音波の周波数スペクトルを算出して解析した結果を利用する場合、STC補正でも超音波の伝播に伴う減衰の影響を正確に排除できるわけではない、という問題を解決するには、Bモード画像を生成する際にSTC補正を施した受信信号を出力する一方、周波数スペクトルに基づいた画像を生成する際に、Bモード画像を生成するための送信とは異なる新たな送信を行い、STC補正を施していない受信信号を出力することが考えられる。ところがこの場合には、受信信号に基づいて生成される画像データのフレームレートが低下してしまうという問題がある。
そこで、本実施の形態では、生成される画像データのフレームレートを維持しつつ、Bモード画像用にSTC補正を施した信号に対してSTC補正の影響を排除するために、増幅補正部331によって増幅率の補正を行う。
周波数解析部332は、増幅補正部331が増幅補正した各音線のRFデータ(ラインデータ)を所定の時間間隔でサンプリングし、サンプルデータを生成する。周波数解析部332は、サンプルデータ群にFFT処理を施すことにより、RFデータ上の複数の箇所(データ位置)における周波数スペクトルを算出する。ここでいう「周波数スペクトル」とは、サンプルデータ群にFFT処理を施すことによって得られた「ある受信深度zにおける強度の周波数分布」を意味する。また、ここでいう「強度」とは、例えばエコー信号の電圧、エコー信号の電力、超音波エコーの音圧、超音波エコーの音響エネルギー等のパラメータ、これらパラメータの振幅や時間積分値やその組み合わせのいずれかを指す。
一般に、周波数スペクトルは、観測対象が生体組織である場合、超音波が走査された生体組織の性状によって異なる傾向を示す。これは、周波数スペクトルが、超音波を散乱する散乱体の大きさ、数密度、音響インピーダンス等と相関を有しているためである。ここでいう「生体組織の性状」とは、例えば悪性腫瘍(癌)、良性腫瘍、内分泌腫瘍、粘液性腫瘍、正常組織、嚢胞、脈管などのことである。
図4は、超音波信号の1つの音線におけるデータ配列を模式的に示す図である。同図に示す音線SRkにおいて、白または黒の長方形は、1つのサンプル点におけるデータを意味している。また、音線SRkにおいて、右側に位置するデータほど、超音波振動子21から音線SRkに沿って計った場合の深い箇所からのサンプルデータである(図4の矢印を参照)。音線SRkは、送受信部31が行うA/D変換におけるサンプリング周波数(例えば50MHz)に対応した時間間隔で離散化されている。図4では、番号kの音線SRkの8番目のデータ位置を受信深度zの方向の初期値Z(k) 0として設定した場合を示しているが、初期値の位置は任意に設定することができる。周波数解析部332による算出結果は複素数で得られ、記憶部38に格納される。
図4に示すデータ群Fj(j=1、2、・・・、K)は、FFT処理の対象となるサンプルデータ群である。一般に、FFT処理を行うためには、サンプルデータ群が2のべき乗のデータ数を有している必要がある。この意味で、サンプルデータ群Fj(j=1、2、・・・、K−1)はデータ数が16(=24)で正常なデータ群である一方、サンプルデータ群FKは、データ数が12であるため異常なデータ群である。異常なデータ群に対してFFT処理を行う際には、不足分だけゼロデータを挿入することにより、正常なサンプルデータ群を生成する処理を行う。この点については、周波数解析部332の処理を説明する際に詳述する(図12を参照)。
図5は、周波数解析部332により算出された周波数スペクトルの例を示す図である。図5では、横軸が周波数fである。また、図5では、縦軸が、強度I0を基準強度Ic(定数)で除した量の常用対数(デシベル表現)I=10log10(I0/Ic)である。図5に示す回帰直線L10については後述する。なお、本実施の形態において、曲線および直線は、離散的な点の集合からなる。
図5に示す周波数スペクトルC1において、以後の演算に使用する周波数帯域の下限周波数fLおよび上限周波数fHは、超音波振動子21の周波数帯域、送受信部31が送信するパルス信号の周波数帯域などをもとに決定されるパラメータである。以下、図5において、下限周波数fLおよび上限周波数fHによって定まる周波数帯域を「周波数帯域F」という。
特徴量算出部333は、周波数解析部332が算出した複数の周波数スペクトルについて、各周波数スペクトルの特徴量をそれぞれ算出する。特徴量算出部333は、周波数スペクトルを直線で近似することによって減衰補正処理を行う前の周波数スペクトルの特徴量(以下、補正前特徴量という)を算出する近似部333aと、近似部333aが算出した補正前特徴量に対して減衰補正を行うことによって特徴量を算出する減衰補正部333bと、を有する。
近似部333aは、所定周波数帯域における周波数スペクトルの回帰分析を行って周波数スペクトルを一次式(回帰直線)で近似することにより、この近似した一次式を特徴付ける補正前特徴量を算出する。例えば、図5に示す周波数スペクトルC1の場合、近似部333aは、周波数帯域Fで回帰分析を行い周波数スペクトルC1を一次式で近似することによって回帰直線L10を得る。換言すると、近似部333aは、回帰直線L10の傾きa0、切片b0、および周波数帯域Fの中心周波数fM=(fL+fH)/2の回帰直線上の値であるミッドバンドフィット(Mid-band fit)c0=a0fM+b0を補正前特徴量として算出する。
3つの補正前特徴量のうち、傾きa0は、超音波の散乱体の大きさと相関を有し、一般に散乱体が大きいほど傾きが小さな値を有すると考えられる。また、切片b0は、散乱体の大きさ、音響インピーダンスの差、散乱体の数密度(濃度)等と相関を有している。具体的には、切片b0は、散乱体が大きいほど大きな値を有し、音響インピーダンスの差が大きいほど大きな値を有し、散乱体の数密度が大きいほど大きな値を有すると考えられる。ミッドバンドフィットc0は、傾きa0と切片b0から導出される間接的なパラメータであり、有効な周波数帯域内の中心におけるスペクトルの強度を与える。このため、ミッドバンドフィットc0は、散乱体の大きさ、音響インピーダンスの差、散乱体の数密度に加えて、Bモード画像の輝度とある程度の相関を有していると考えられる。なお、特徴量算出部333は、回帰分析によって二次以上の多項式で周波数スペクトルを近似するようにしてもよい。
減衰補正部333bが行う補正について説明する。一般に、超音波の減衰量A(f,z)は、超音波が受信深度0と受信深度zとの間を往復する間に生じる減衰であり、往復する前後の強度変化(デシベル表現での差)として定義される。減衰量A(f,z)は、一様な組織内では周波数に比例することが経験的に知られており、以下の式(1)で表現される。
A(f,z)=2αzf ・・・(1)
ここで、比例定数αは減衰率と呼ばれる量である。また、zは超音波の受信深度であり、fは周波数である。減衰率αの具体的な値は、観測対象が生体である場合、生体の部位に応じて定まる。減衰率αの単位は、例えばdB/cm/MHzである。なお、本実施の形態において、減衰率αの値を入力部36からの入力によって変更できる構成とすることも可能である。
減衰補正部333bは、近似部333aが抽出した補正前特徴量(傾きa0、切片b0、ミッドバンドフィットc0)に対し、以下に示す式(2)〜(4)にしたがって減衰補正を行うことにより、特徴量a、b、cを算出する。本実施の形態では、減衰補正部333bが減衰補正することにより、周波数特徴量である特徴量a、b、cが算出される。
a=a0+2αz ・・・(2)
b=b0 ・・・(3)
c=c0+A(fM,z)=c0+2αzfM(=afM+b) ・・・(4)
式(2)、(4)からも明らかなように、減衰補正部333bは、超音波の受信深度zが大きいほど、補正量が大きい補正を行う。また、式(3)によれば、切片に関する補正は恒等変換である。これは、切片が周波数0(Hz)に対応する周波数成分であって減衰の影響を受けないためである。
図6は、減衰補正部333bが算出した特徴量a、b、cをパラメータとして有する直線を示す図である。直線L1の式は、
I=af+b=(a0+2αz)f+b0 ・・・(5)
で表される。この式(5)からも明らかなように、回帰直線L1は、減衰補正前の回帰直線L10と比較して、傾きが大きく(a>a0)、かつ切片が同じ(b=b0)である。
統計値算出部334は、特徴量算出部333が算出した特徴量a、b、cのうち、組織の良悪性判定に用いる特徴量について、統計値を算出する。本実施の形態において、良悪性判定に用いる統計値として、統計値算出部334は、特徴量cの平均値を算出する。特徴量cの平均値とは、特徴量cの分布から算出される平均値である。統計値算出部334は、平均値のほか、特徴量の標準偏差や、特徴量の中央値、特徴量(分布)の尖度、特徴量(分布)の歪度を算出するようにしてもよい。良悪性判定に用いる統計値は、上述した平均値に代えて、標準偏差、中央値、4分位値、分散、標準偏差、尖度、歪度のうちのいずれかを用いてもよいし、複数組み合わせてもよい。
ヒストグラム生成部335は、特徴量算出部333が各サンプル点において算出した特徴量a、b、cのうち、組織の良悪性判定に用いる特徴量について、特徴量と、相対頻度(相対的な出現頻度)である相対度数との関係を示すヒストグラムを生成する。相対度数は、関心領域内における、総画素数に対する同一の特徴量を有する画素数の割合(%)を示す。なお、ヒストグラム生成部335は、周波数特徴量に限らず、エコー信号の振幅から変換される輝度をもとに算出される特徴量のヒストグラムを生成してもよい。
累積度数算出部336は、ヒストグラム生成部335が生成したヒストグラムに基づいて、設定されている特徴量の範囲における累積相対度数を算出する。ここで、累積相対度数は、正規化された累積度数である。累積度数算出部336は、例えば、閾値として設定されている特徴量以下の特徴量の相対度数を累積することによって、累積相対度数を算出する。ここで、累積相対度数(%)は、後述する関心領域内における閾値以下の特徴量を有する画素数の、関心領域内の総画素数に対する割合である。
判定部337は、統計値算出部334が算出した平均値や、累積度数算出部336が算出した累積相対度数に基づいて、その特徴量を有する組織の良悪性を判定する。具体的に、判定部337は、平均値が閾値より大きければ、その組織は良性の疑いがある(以下、単に「良性疑い」ということもある)と判定し、平均値が閾値以下であれば、その組織は良性ではなく、良悪性の再判定が必要であると判定する。再判定する場合、判定部337は、累積相対度数が、予め設定されている閾値以下であるか否かを判断し、累積相対度数が閾値以下の場合、その組織は良性疑いであると判定する。これに対し、判定部337は、累積相対度数が閾値より大きいと判断した場合、その組織は悪性の疑いがある(以下、単に「悪性疑い」ということもある)と判定する。
ここで、リンパ節など、辺縁部から癌浸潤が進行する組織における良悪性の判定について、図7〜9を参照して説明する。図7〜図9は、リンパ節における組織の良悪性の判定について説明する図であって、組織の状態に応じたヒストグラムの一例を示す図である。具体的に、図7に示すヒストグラムH1は良性の組織のヒストグラムの一例であり、図8に示すヒストグラムH2は悪性の組織のヒストグラムの一例である。また、図9の(a)に示すヒストグラムH3は癌浸潤が開始した直後の組織のヒストグラムの一例であり、図9の(b)に示すヒストグラムH4は癌浸潤が進行した組織のヒストグラムの一例である。
まず、組織が良性である場合(図7参照)、特徴量の平均値は、組織が悪性である場合(図8参照)と比して、相対度数の平均値が、特徴量が高い側となる。良性の場合の特徴量の平均値と、悪性の場合の特徴量の平均値とをもとに閾値を設定することによって、組織の良悪性を判定するための特徴量の閾値を設定することができる。
一方、癌浸潤が開始した直後は、閾値よりも小さい側の特徴量における相対度数の和が、閾値以上の特徴量における相対度数の和より小さく、全体としての平均値も閾値より大きくなる(図9の(a)参照)。この場合、組織の一部が癌浸潤しているにも関わらず、この状態から癌浸潤が進行して、閾値を境界とする相対度数の和の関係が逆転するまで(図9の(b)参照)、組織が良性であると判定されてしまう。
画像処理部34は、エコー信号の振幅を輝度に変換して表示する超音波画像であるBモード画像データを生成するBモード画像データ生成部341と、減衰補正部333bが算出した特徴量を視覚情報と関連づけてBモード画像とともに表示する特徴量画像データを生成する特徴量画像データ生成部342と、を有する。画像処理部34は、CPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
Bモード画像データ生成部341は、信号処理部32から受信したBモード用受信データに対してゲイン処理、コントラスト処理、γ補正処理等の公知の技術を用いた信号処理を行うとともに、表示装置4における画像の表示レンジに応じて定まるデータステップ幅に応じたデータの間引き等を行うことによってBモード画像データを生成する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。
Bモード画像データ生成部341は、信号処理部32からのBモード用受信データに走査範囲を空間的に正しく表現できるよう並べ直す座標変換を施した後、Bモード用受信データ間の補間処理を施すことによってBモード用受信データ間の空隙を埋め、Bモード画像データを生成する。Bモード画像データ生成部341は、生成したBモード画像データを特徴量画像データ生成部342へ出力する。
特徴量画像データ生成部342は、特徴量算出部333が算出した特徴量に関連する視覚情報を付与した特徴量画像データを生成するとともに、この特徴量画像データをBモード画像データにおける画像の各画素に対して重畳することによって重畳画像データを生成する。
特徴量画像データ生成部342は、例えば図4に示す1つのサンプルデータ群Fj(j=1、2、・・・、K)のデータ量に対応する画素領域に対し、そのサンプルデータ群Fjから算出される周波数スペクトルの特徴量に対応する視覚情報を割り当てる。特徴量画像データ生成部342は、例えば上述した傾き、切片、ミッドバンドフィットのいずれか一つに視覚情報としての色相を対応付けることによって特徴量画像を生成する。具体的に、特徴量画像データ生成部342は、特徴量aに視覚情報としての色相を対応付ける場合、予め設定された配色に基づいて視覚情報を割り当てる。特徴量に関連する視覚情報としては、色相のほか、例えば彩度、明度、輝度値、R(赤)、G(緑)、B(青)などの所定の表色系を構成する色空間の変数を挙げることができる。
関心領域設定部35は、入力部36が受け付けた入力に応じて関心領域を設定する。この関心領域は、組織の良悪性を判定するために設定される領域である。図10は、本発明の一実施の形態に係る超音波観測装置の関心領域設定部が設定する関心領域について説明する図である。具体的には、関心領域設定部35は、入力部36が受け付けた入力に応じて、外縁部GOと、内縁部GIとを設定する。関心領域設定部35は、設定された外縁部GOおよび内縁部GIによって囲まれる環状(ドーナツ型)の領域R1を関心領域として設定する。例えば、図10に示すリンパ節300に対して関心領域(外縁部GOおよび内縁部GI)を設定する場合、少なくとも一つのリンパ小節301に内接する外縁部GOと、少なくとも一つのリンパ小節301に外接し、かつ髄質302の少なくとも一部を取り囲む内縁部GIとを設定する。これにより、外縁部GOの内部全体を関心領域とする場合と比して、関心領域において、リンパ小節301を含むリンパ節300の外縁側の領域が占める割合を大きくし、辺縁部からの癌浸潤の判定精度を高くすることができる。なお、図10に示す領域は一例であり、リンパ小節を含む領域であれば、円をなす領域であってもよいし、矩形や角形をなす領域であってもよいし、外縁部GOと内縁部GIとの中心位置が一致していてもよいし、外縁部GOと内縁部GIとの中心位置が偏心していてもよい。また、入力部36を通じた領域設定のほか、画像処理によりリンパ小節301を検出し、自動で関心領域を設定するようにしてもよい。関心領域設定部35は、CPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
一般的に、リンパ節の場合は外縁部から浸潤が進むことが多い。そのため、組織の良悪性判断においては、外縁部と、外縁部近傍とを含む領域に関する情報が重要である。累積相対度数を用いて良悪性疑いの判断を行う場合は、累積相対度数という指標の特性上、重要な部分の情報が多い方が、浸潤に関して精度の高い情報が得られる。本実施の形態のように、リンパ小節を含む環状の関心領域を設定することは、高精度に良悪性疑いを判断するという観点で好ましい。
図11は、従来の関心領域設定におけるリンパ節における組織の良悪性の判定について説明する図であって、組織の状態に応じたヒストグラムの一例を示す図である。図11は、例えば、図10に示す外縁部GOの内部すべてを関心領域とした場合のヒストグラムを示している。具体的に、図11に示すヒストグラムH10は、癌浸潤が開始した直後の組織のヒストグラムの一例である。図11に示すように、環状ではない、従来の関心領域の設定では、ヒストグラムがなだらかになってしまい、良悪性疑いの判定精度が低下してしまうおそれがある。
また、超音波画像においてリンパ節の内側に存在する髄質は画像内で輝度が高いため、超音波画像における髄質を容易に判別できる。そのため、環状の内周側の領域に髄質を容易に合わせることができ、ユーザによる操作性(使い易さ)を確保できる。
制御部37は、演算および制御機能を有するCPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。制御部37は、記憶部38が記憶、格納する情報を記憶部38から読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を統括して制御する。なお、制御部37を信号処理部32および演算部33と共通のCPU等を用いて構成することも可能である。
記憶部38は、減衰補正部333bが周波数スペクトルごとに算出した複数の特徴量や、画像処理部34が生成した画像データを記憶する。また、記憶部38は、統計値に対する閾値や、累積相対度数に対する閾値などの組織の良悪性判定に用いる閾値を記憶する良悪性判定情報記憶部381を有する。これら組織の良悪性判定に用いる閾値は、臨床的な統計に基づいて設定される。なお、入力部36を通じてユーザが入力した設定により閾値を変更することも可能である。ユーザは、例えば、判定する組織に応じて、閾値を変更することができる。
記憶部38は、上記以外にも、例えば増幅処理に必要な情報(図2に示す増幅率βと受信深度zとの関係)、増幅補正処理に必要な情報(図3に示す増幅率βと受信深度zとの関係)、減衰補正処理に必要な情報(式(1)参照)、周波数解析処理に必要な窓関数(Hamming、Hanning、Blackman等)の情報等を記憶する。
また、記憶部38は、超音波観測装置3の作動方法を実行するための作動プログラムを含む各種プログラムを記憶する。作動プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
以上の構成を有する記憶部38は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
図12は、以上の構成を有する超音波観測装置3が行う処理の概要を示すフローチャートである。まず、超音波観測装置3は、超音波内視鏡2から超音波振動子21による観測対象の測定結果としてのエコー信号を受信する(ステップS1)。
超音波振動子21からエコー信号を受信した信号増幅部311は、そのエコー信号の増幅を行う(ステップS2)。ここで、信号増幅部311は、例えば図2に示す増幅率βと受信深度zとの関係に基づいてエコー信号の増幅(STC補正)を行う。
続いて、Bモード画像データ生成部341は、信号増幅部311が増幅したエコー信号を用いてBモード画像データを生成して、表示装置4へ出力する(ステップS3)。Bモード画像データを受信した表示装置4は、そのBモード画像データに対応するBモード画像を表示する(ステップS4)。
ステップS4に続くステップS5において、関心領域設定部35は、入力部36が受け付けた入力に応じて、外縁部GOと、内縁部GIとを設定する。関心領域35は、設定された外縁部GOおよび内縁部GIによって囲まれる領域R1を、上述した良悪性判定を行うための関心領域に設定する(関心領域設定ステップ:図10参照)。
増幅補正部331は、送受信部31から出力された信号に対して受信深度によらず増幅率が一定となる増幅補正を行う(ステップS6)。ここで、増幅補正部331は、例えば図3に示す増幅率と受信深度との関係が成立するように増幅補正を行う。
この後、周波数解析部332は、FFT演算による周波数解析を行うことによって全てのサンプルデータ群に対する周波数スペクトルを算出する(ステップS7:周波数解析ステップ)。図13は、ステップS7において周波数解析部332が実行する処理の概要を示すフローチャートである。以下、図13に示すフローチャートを参照して、周波数解析処理を詳細に説明する。
まず、周波数解析部332は、解析対象の音線を識別するカウンタk(番号k)をk0とする(ステップS21)。
続いて、周波数解析部332は、FFT演算用に取得する一連のデータ群(サンプルデータ群)を代表するデータ位置(受信深度に相当)Z(k)の初期値Z(k) 0を設定する(ステップS22)。例えば、図4では、上述したように、音線SRkの8番目のデータ位置を初期値Z(k) 0として設定した場合を示している。
その後、周波数解析部332は、サンプルデータ群を取得し(ステップS23)、取得したサンプルデータ群に対し、記憶部38が記憶する窓関数を作用させる(ステップS24)。このようにサンプルデータ群に対して窓関数を作用させることにより、サンプルデータ群が境界で不連続になることを回避し、アーチファクトが発生するのを防止することができる。
続いて、周波数解析部332は、データ位置Z(k)のサンプルデータ群が正常なデータ群であるか否かを判定する(ステップS25)。図4を参照した際に説明したように、サンプルデータ群は、2のべき乗のデータ数を有している必要がある。以下、正常なサンプルデータ群のデータ数を2n(nは正の整数)とする。本実施の形態では、データ位置Z(k)が、できるだけデータ位置Z(k)が属するサンプルデータ群の中心になるよう設定される。具体的には、サンプルデータ群のデータ数は2nであるので、データ位置Z(k)はそのサンプルデータ群の中心に近い2n/2(=2n-1)番目の位置に設定される。この場合、サンプルデータ群が正常であるとは、データ位置Z(k)の前方に2n-1−1(=Nとする)個のデータがあり、データ位置Z(k)の後方に2n-1(=Mとする)個のデータがあることを意味する。図4に示す場合、サンプルデータ群F1、F2、F3、・・・、FK-1はともに正常である。なお、図4ではn=4(N=7,M=8)の場合を例示している。
ステップS25における判定の結果、データ位置Z(k)のサンプルデータ群が正常である場合(ステップS25:Yes)、周波数解析部332は、後述するステップS27へ移行する。
ステップS25における判定の結果、データ位置Z(k)のサンプルデータ群が正常でない場合(ステップS25:No)、周波数解析部332は、不足分だけゼロデータを挿入することによって正常なサンプルデータ群を生成する(ステップS26)。ステップS25において正常でないと判定されたサンプルデータ群(例えば図4のサンプルデータ群FK)は、ゼロデータを追加する前に窓関数が作用されている。このため、サンプルデータ群にゼロデータを挿入してもデータの不連続は生じない。ステップS26の後、周波数解析部332は、後述するステップS27へ移行する。
ステップS27において、周波数解析部332は、サンプルデータ群を用いてFFT演算を行うことにより、振幅の周波数分布である周波数スペクトルを得る(ステップS27)。
続いて、周波数解析部332は、データ位置Z(k)をステップ幅Dで変化させる(ステップS28)。ステップ幅Dは、記憶部38が予め記憶しているものとする。図4では、D=15の場合を例示している。ステップ幅Dは、Bモード画像データ生成部341がBモード画像データを生成する際に利用するデータステップ幅と一致させることが望ましいが、周波数解析部332における演算量を削減したい場合には、ステップ幅Dとしてデータステップ幅より大きい値を設定してもよい。
その後、周波数解析部332は、データ位置Z(k)が音線SRkにおける最大値Z(k) maxより大きいか否かを判定する(ステップS29)。データ位置Z(k)が最大値Z(k) maxより大きい場合(ステップS29:Yes)、周波数解析部332はカウンタkを1増加させる(ステップS30)。これは、処理をとなりの音線へ移すことを意味する。一方、データ位置Z(k)が最大値Z(k) max以下である場合(ステップS29:No)、周波数解析部332はステップS23へ戻る。このようにして、周波数解析部332は、音線SRkに対して、[(Z(k) max−Z(k) 0+1)/D+1]個のサンプルデータ群に対するFFT演算を行う。ここで、[X]は、Xを超えない最大の整数を表す。
ステップS30の後、周波数解析部332は、カウンタkが最大値kmaxより大きいか否かを判定する(ステップS31)。カウンタkが最大値kmaxより大きい場合(ステップS31:Yes)、周波数解析部332は一連の周波数解析処理を終了する。一方、カウンタkが最大値kmax以下である場合(ステップS31:No)、周波数解析部332はステップS22に戻る。この最大値kmaxは、術者等のユーザが入力部36を通じて任意に指示入力した値、もしくは、記憶部38にあらかじめ設定された値とする。
このようにして、周波数解析部332は、解析対象領域内の(kmax−k0+1)本の音線の各々について複数回のFFT演算を行う。FFT演算の結果は、受信深度および受信方向とともに記憶部38に格納される。
なお、以上の説明では、周波数解析部332が超音波信号を受信したすべての領域に対して周波数解析処理を行うものとしたが、設定された関心領域内においてのみ周波数解析処理を行うようにすることも可能である。
以上説明したステップS7の周波数解析処理に続いて、特徴量算出部333は、複数の周波数スペクトルの補正前特徴量をそれぞれ算出し、各周波数スペクトルの補正前特徴量に対して超音波の減衰の影響を排除する減衰補正を行うことによって各周波数スペクトルの補正特徴量を算出する(ステップS8〜S9:特徴量算出ステップ)。
ステップS8において、近似部333aは、周波数解析部332が生成した複数の周波数スペクトルをそれぞれ回帰分析することにより、各周波数スペクトルに対応する補正前特徴量を算出する(ステップS8)。具体的には、近似部333aは、各周波数スペクトルを回帰分析することによって一次式で近似し、補正前特徴量として傾きa0、切片b0、ミッドバンドフィットc0を算出する。例えば、図5に示す回帰直線L10は、近似部333aが周波数帯域Fの周波数スペクトルC1に対し回帰分析によって近似した回帰直線である。
続いて、減衰補正部333bは、近似部333aが各周波数スペクトルに対して近似した補正前特徴量に対し、減衰率αを用いて減衰補正を行うことにより、補正特徴量を算出し、算出した補正特徴量を記憶部38に格納する(ステップS9)。図6に示す回帰直線L1は、減衰補正部333bが減衰補正処理を行うことによって得られる直線の例である。
ステップS9において、減衰補正部333bは、上述した式(2)、(4)における受信深度zに、超音波信号の音線のデータ配列を用いて得られるデータ位置Z=(fsp/2vs)Dnを代入することによって算出する。ここで、fspはデータのサンプリング周波数、vsは音速、Dはステップ幅、nは処理対象のサンプルデータ群のデータ位置までの音線の1番目のデータからのデータステップ数である。例えば、データのサンプリング周波数fspを50MHzとし、音速vsを1530m/secとし、図4に示すデータ配列を採用してステップ幅Dを15とすると、z=0.2295n(mm)となる。
その後、ステップS5において設定された関心領域に対し、演算部33が、関心領域内の組織の良悪性判定処理を行う(ステップS10)。図14は、本発明の一実施の形態に係る超音波観測装置の演算部が実行する良悪性判定処理の概要を示すフローチャートである。
ステップS41において、まず、統計値算出部334は、関心領域における特徴量の平均値を算出する。そして、判定部337は、特徴量の平均値が、特徴量について設定される閾値(以下、第1閾値という)以下であるか否かを判断する(ステップS42)。ここで、判定部337は、特徴量の平均値が第1閾値以下であれば(ステップS42:Yes)、ステップS45に移行する。これに対し、判定部337は、特徴量の平均値が第1閾値より大きいと判断すれば(ステップS42:No)、ステップS43に移行する。
ステップS43において、ヒストグラム生成部335は、組織の良悪性判定に用いる特徴量について、特徴量と、相対頻度である相対度数との関係を示すヒストグラムを生成する(ヒストグラム生成ステップ)。
ステップS43に続くステップS44において、累積度数算出部336が、上述した特徴量の閾値以下の特徴量における相対度数の和である累積相対度数を算出し、判定部337が、算出された累積相対度数が、累積相対度数について設定される閾値(以下、第2閾値という)以下であるか否かを判断する。判定部337は、累積相対度数が、第2閾値より大きいと判断した場合(ステップS44:No)、ステップS45に移行する。これに対し、判定部337は、累積相対度数が、第2閾値以下であると判断した場合(ステップS44:Yes)、ステップS46に移行する。
ステップS45において、判定部337は、関心領域に存在する組織が、悪性疑いであると判定し、その判定結果を制御部37に出力する。
ステップS46において、判定部337は、関心領域に存在する組織が、良性疑いであると判定し、その判定結果を制御部37に出力する。
このようにして、演算部33は、関心領域内の組織について、良悪性の判定を行う。演算部33は、良悪性の判定が終了すると、ステップS11に移行する。
図12に戻り、ステップS11において、特徴量画像データ生成部342は、Bモード画像データ生成部341が生成したBモード画像データにおける各画素に対し、ステップS9で算出された特徴量に関連づけた視覚情報を重畳することによって特徴量画像データを生成する。この際、特徴量画像データ生成部342は、判定部337による判定結果を、特徴量画像データに付与する。
この後、表示装置4は、制御部37の制御のもと、特徴量画像データ生成部342が生成した特徴量画像データに対応する特徴量画像をBモード画像に重畳した重畳画像を表示する(ステップS12)。特徴量画像には、例えば、Bモード画像に特徴量に関する視覚情報が重畳された画像を表示する重畳画像や、観測対象の識別情報、良悪性判定結果などが含まれる。図15に、この表示例を示す。同図に示す画面201は、合成画像を表示する合成画像表示部202と、被検体のIDや、良悪性判定に用いたパラメータなどを表示する情報表示部203とを有する。合成画像表示部202に表示される合成画像は、扇状のBモード画像に、ハッチングで示す視覚情報(特徴量)が重畳されている。情報表示部203に表示されるパラメータとして、特徴量の平均値であるMEAN、標準偏差であるSD、累積相対度数であるCRF、特徴量の中央値であるMED、特徴量(分布)の尖度であるKURT、特徴量(分布)の歪度であるSKEWがある。なお、情報表示部203に、特徴量の情報、近似式の情報、ゲインやコントラスト等の情報等をさらに表示するようにしてもよい。また、合成画像に対応するBモード画像を合成画像と並べて表示してもよい。
なお、表示する画像には、特徴量の情報、近似式の情報、ゲインやコントラスト等の画像情報等を含めてもよい。また、重畳画像に対応するBモード画像を特徴量画像と並べて表示してもよい。
以上説明した本発明の一実施の形態では、Bモード画像として造影されるリンパ節に対し、リンパ小節を含む中空円環状の関心領域を設定し、その関心領域において、ヒストグラムの生成や、累積相対度数の算出を経て、組織の良悪性判定を行うようにした。本実施の形態によれば、関心領域におけるリンパ節の辺縁部が占める割合を大きくし、ヒストグラムから求まる辺縁の特徴量の特性から良悪性を判定するため、辺縁から癌浸潤(悪性化)する組織の良悪性を適切に判定することができる。
なお、上述した実施の形態では、特徴量の頻度を、関心領域の総画素数で正規化した相対度数を用いてヒストグラムを生成するようにしたが、正規化前の累積度数(画素数)を用いてヒストグラムを生成してもよい。
また、上述した実施の形態では、特徴量の平均値、および累積相対度数を用いて、組織の良悪性を判定するものとして説明したが、組織の大きさを判定基準として加えてもよい。一般に、直径が5mm以下の大きさの組織は良性であることが多いため、組織の直径が5mm以下の場合は、一律に「良性疑い」と判定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、統計値として、特徴量の平均値を用いて組織の良悪性を判定するものとして説明したが、複数の統計値を組み合わせて良悪性を判定するようにしてもよい。例えば、図13に示すステップS41において、統計値算出部334が、特徴量の平均値と、標準偏差とを算出し、判定部337が、算出した平均値および標準偏差に基づいて良悪性を判定するようにしてもよい。この際、判定部337は、平均値および標準偏差について、それぞれに設定される閾値によって判定してもよいし、平均値と標準偏差とをもとに算出される代表統計値を用いて、設定される閾値により良悪性を判定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、表示装置4の画面に表示される情報表示部203は、図14に示す画面201に限らない。以下、情報表示部203の変形例について説明する。
(実施の形態の変形例1)
図16は、本発明の一実施の形態の変形例1に係る超音波観測システムの表示装置が表示する画像の一例を示す図である。図16は、CRFの値によって「悪性疑い」と判定された場合を示している。図16に示す情報表示部203では、CRFの表示が網掛けになっている。このように、悪性疑いであると判定された値を他とは異なる表示とすることによって、悪性判定に影響した値を容易に把握することができる。
(実施の形態の変形例2)
図17は、本発明の一実施の形態の変形例2に係る超音波観測システムの表示装置が表示する画像の一例を示す図である。図17は、平均値の値によって「悪性疑い」と判定され、CRFの値も「悪性疑い」に相当する場合を示している。図17に示す情報表示部203では、MEANの数値及びCRFの数値のみが表示される。このように、悪性疑いであると判定された値のみを表示することによって、悪性判定に影響した値を容易に把握することができる。
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、リンパ節300を判定対象として説明したが、辺縁部から悪性化する組織であれば適用可能である。
また、本実施の形態では、超音波プローブとしてライトガイド等の光学系を有する超音波内視鏡2を用いて説明したが、超音波内視鏡2に限らず、撮像光学系および撮像素子を有しない超音波プローブであってもよい。さらに、超音波プローブとして、光学系のない細径の超音波ミニチュアプローブを適用してもよい。超音波ミニチュアプローブは、通常、胆道、胆管、膵管、気管、気管支、尿道、尿管へ挿入され、その周囲臓器(膵臓、肺、前立腺、膀胱、リンパ節等)を観察する際に用いられる。
また、超音波プローブとして、被検体の体表から超音波を照射する体外式超音波プローブを適用してもよい。体外式超音波プローブは、通常、腹部臓器(肝臓、胆嚢、膀胱)、乳房(特に乳腺)、甲状腺を観察する際に体表に直接接触させて用いられる。
また、超音波振動子は、リニア振動子でもラジアル振動子でもコンベックス振動子でも構わない。また、超音波内視鏡は、超音波振動子をメカ的に走査させるものであってもよいし、超音波振動子として複数の素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる素子を電子的に切り替えたり、各素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものであってもよい。
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な実施の形態を含みうるものである。