JP2020041044A - 耐火樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】金型への付着物の形成を抑制する。【解決手段】マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物であって、耐火樹脂組成物2gをマトリックス樹脂が可溶な溶媒を用いて室温でマトリックス樹脂を溶解し、溶媒および溶解物を留去した残渣を水25mLに溶かした水溶液の総陰イオン濃度が250 ppm以下であることを特徴とする耐火樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、耐火樹脂組成物及び成形体に関する。
従来、加熱により膨張し延焼を防止するために、熱膨張性黒鉛とマトリックス樹脂を含む耐火樹脂組成物を成形した耐火成形体が提案されている(特許文献1〜3)。
熱膨張性黒鉛は、火災等の熱にさらされた場合に膨張して不燃性の膨張残渣を形成する。この膨張残渣を利用して火災の延焼、煙の拡散を防止することができることから、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物は広く建材の用途に使用されている。
特許文献4は、熱膨張性黒鉛は中和処理していない製品ではpHが3.2〜3.3程度であり、これを中和処理することでpH9.5程度になることを実施例で示している。
耐火樹脂組成物を押出成形すると、押出時、金型流路内の樹脂の分岐部、急激な段差部などに付着物が発生し、ロングラン性の低下、金型研磨による固定費の増加から製品コストが高くなる問題があった。
本発明は、高膨張倍率であって、押出成形時の金型への付着物の問題のない耐火樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
この付着物の原因は耐火樹脂中の膨張黒鉛に含まれる不純物の無機塩である。
本発明では膨張黒鉛中の不純物無機塩量の少ない黒鉛を使用し、押出成形時の金型への付着物の発生を無くした。
本発明では膨張黒鉛中の不純物無機塩量の少ない黒鉛を使用し、押出成形時の金型への付着物の発生を無くした。
本発明は、以下の耐火樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
項1. マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物であって、耐火樹脂組成物2gをマトリックス樹脂が可溶な溶媒を用いて室温でマトリックス樹脂を溶解し、溶媒および溶解物を留去した残渣を水25mLに溶かした水溶液の総陰イオン濃度が250 ppm以下であることを特徴とする耐火樹脂組成物。
項2. 総陰イオン濃度が210 ppm以下であることを特徴とする、項1に記載の耐火樹脂組成物。
項3. マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
項4. 項1、2又は3に記載の耐火樹脂組成物を押出成形してなる成形体。
項5. 建築用ガスケットに用いる項4に記載の成形体。
項1. マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物であって、耐火樹脂組成物2gをマトリックス樹脂が可溶な溶媒を用いて室温でマトリックス樹脂を溶解し、溶媒および溶解物を留去した残渣を水25mLに溶かした水溶液の総陰イオン濃度が250 ppm以下であることを特徴とする耐火樹脂組成物。
項2. 総陰イオン濃度が210 ppm以下であることを特徴とする、項1に記載の耐火樹脂組成物。
項3. マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
項4. 項1、2又は3に記載の耐火樹脂組成物を押出成形してなる成形体。
項5. 建築用ガスケットに用いる項4に記載の成形体。
本発明によれば、耐火樹脂組成物を繰り返し押出成形しても金型の樹脂の分岐部、急激な段差部などへの付着物の形成は抑制されるため、金型を研磨して付着物を除去する必要はない。
本発明の耐火樹脂組成物は、耐火樹脂組成物2gをマトリックス樹脂可溶な溶媒に加え、室温において前記マトリックス樹脂を溶解して前記溶媒の非可溶画分を得た後、前記非可溶画分を水25mLに加えて得られた水溶液の総イオン濃度が250ppm以下のものである。
本発明の耐火樹脂組成物の膨張倍率は、20倍以上、好ましくは25倍以上である。膨張倍率が大きい耐火樹脂組成物は、熱膨張性黒鉛を多く含むので、総陰イオン濃度が大きくなる傾向にある。
耐火樹脂組成物はマトリックス樹脂及び脂溶性の成分を含み得るので、これらをマトリックス樹脂可溶な有機溶媒に溶解する。有機溶媒は、マトリックス樹脂の種類により異なる。例えば、マトリックス樹脂がポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(塩素化塩ビ、CPVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂の場合、キシレン、トルエン、酢酸メチル、シクロヘキサン、フルフラール等である。オレフィン系エラストマーの場合は、キシレン、トルエン、ベンゼン等である。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)の場合は、スチレン、キシレン、シクロヘキサン、テトラクロロエタン等である。有機溶媒は、水と混ざらないものを使用すると、マトリックス樹脂を含む有機溶媒相と熱膨張性黒鉛を含む水相の2相系となり、陰イオンの純水による抽出効率が高くなるので好ましい。
耐火樹脂組成物に有機溶媒を加えて撹拌してマトリックス樹脂を溶解後、不溶物をフィルターによるろ過、遠心分離などにより分離する。不溶物中には、陰イオンが含まれている。不溶物に25mlの純水を加え、30分間攪拌後に不溶物を分離する。純水としてはイオン交換水、蒸留水などの陰イオンを実質的に含まないものが使用される。不溶物の分離は、フィルターによるろ過、遠心分離などにより行うことができる。得られた水溶液中には、耐火樹脂組成物に含まれる陰イオンが溶解しているので、総陰イオン濃度を測定することができる。
総陰イオン濃度は、好ましくは250 ppm以下、より好ましくは230 ppm以下、さらに好ましくは210 ppm以下である。耐火樹脂組成物中の総陰イオン濃度が250 ppm以下であれば、押出成形に使用する金型に付着物は実質的に形成されず、金型研磨の必要はなく、繰り返し使用することができる。
水中の総陰イオン濃度は、例えばイオンクロマトグラフ法により測定することができる。
耐火樹脂組成物中に含まれる陰イオンは、硫酸イオン(SO4 2-)が主成分であり、例えば陰イオン全体の50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、或いは95%以上である。
本発明の耐火性樹脂組成物は、マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛と、必要に応じて含有される他の添加剤を公知の混練装置を用いて溶融混練することにより耐火性樹脂組成物を得ることができる。
他の添加剤としては、無機充填材、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、リンオキソ酸の塩、熱可塑性改質剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が挙げられる。
混練装置としては、例えば、押出機、ニーダーミキサー、二本ロール、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
マトリックス樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(塩素化塩ビ、CPVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリブテン、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられ、PVC、CPVC、PE、EVA等の熱可塑性樹脂やEPDMが好ましい。EPDMに用いられる架橋用ジエンモノマーとしては特に限定されず、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン類、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン類等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の塩基で中和されていてもよい。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、日本化成社製「CA−60S」、「CA−60N」、富士黒鉛工業社製「EXP−50SL」等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛は、塩基で中和されることによりpHは中性〜弱アルカリ性になり得る。このような場合であっても、電離性無機塩を多く含む場合、金型等の腐食が発生する。したがって、熱膨張性黒鉛は中和後に十分に水洗し、中和により生じた塩類をできるだけ除くことが好ましい。熱膨張性黒鉛に含まれる塩類を洗浄によりできるだけ除去することにより、マトリックス樹脂が可溶な溶媒による抽出後の水溶液中の総陰イオン濃度を180ppm以下にすることができる。洗浄する水は、蒸留水、イオン交換水などの陰イオン含量ができるだけ低い水が好ましい。
マトリックス樹脂100質量部に対する熱膨張性黒鉛の添加量の下限は、3、5、10、20,30,40,50,60,70,80質量部が挙げられ、上限は300,280,260,240,220,200,180,160,150,140,130,120質量部が挙げられる。熱膨張性黒鉛中には陰イオンが含まれているので、膨張倍率を高めるために熱膨張性黒鉛の配合量を多くする場合には、熱膨張性黒鉛中の陰イオン含量を低下させておく必要がある。
無機充填材は、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられ、炭酸カルシウムおよび加熱時に脱水し、吸熱効果のある水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物が好ましい。また、酸化アンチモンは難燃性向上の効果があるので好ましい。
無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材の添加量は、少なくなると耐火性能が低下する傾向があり、多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。マトリックス樹脂100質量部に対して、3〜200質量部、好ましくは10〜150質量部である。
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリ‐2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤が挙げられる。
ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリ‐2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤が挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このためマトリックス樹脂100質量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200質量部である。
加硫剤としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられ、硫黄およびテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。
加硫剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
加硫剤の添加量は、少なくなると熱時の安定性が低下する傾向がある。また多くなると成形しにくくなる傾向がある。このためマトリックス樹脂100質量部に対する加硫剤の添加量は、0.1〜10質量部程度、好ましくは0.5〜5質量部程度である。
加硫剤を用いる場合には、加硫促進剤を併用することができる。
加硫促進剤としては、チアゾール含有加硫促進剤、グアニジン含有加硫促進剤、アルデヒドアミン含有加硫促進剤、イミダゾリン含有加硫促進剤、チオウレア含有加硫促進剤、チウラム含有加硫促進剤、ジチオ酸塩含有加硫促進剤、チオウレア含有加硫促進剤、ザンテート含有加硫促進剤等が挙げられる。
チアゾール含有加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等が挙げられる。
グアニジン含有加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等が挙げられる。
アルデヒドアミン含有加硫促進剤としては、例えば、アセトアルデヒド・アニリン縮合物等が挙げられる。
イミダゾリン含有加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトイミダゾリン等が挙げられる。
チオウレア含有加硫促進剤としては、例えば、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等が挙げられる。
チウラム含有加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
ジチオ酸塩含有加硫促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
チオウレア含有加硫促進剤としては、例えば、エチレンチオ尿素、N,N'−ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
ザンテート含有加硫促進剤としては、例えば、ジブチルキサトゲン酸亜鉛等が挙げられる。
加硫促進剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
マトリックス樹脂100質量部に対する加硫促進剤の添加量は、0.1〜20質量部程度が好ましい。加硫促進剤を使用することにより、加硫を効率よく進行させることができる。加硫促進剤の添加量は、0.1〜10質量部程度が好ましい。
また加硫剤を使用する場合には、加硫助剤を併用することができる。
加硫助剤としては、例えば、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系加硫助剤、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル含有加硫助剤、
ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル含有加硫助剤、マレイミド含有加硫助剤、
ジビニルベンゼン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、亜鉛華が挙げられる。
ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル含有加硫助剤、マレイミド含有加硫助剤、
ジビニルベンゼン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、亜鉛華が挙げられる。
マトリックス樹脂100質量部に対する加硫助剤の添加量は、1〜50質量部程度が好ましい。加硫助剤を使用することにより、加硫を効率よく進行させることができる。加硫反応は、150〜250℃程度、好ましくは200〜230℃の温度で行うことができる。
架橋促進剤としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ベンジル等が挙げられる。
リンオキソ酸の塩は、耐火性組成物の燃焼後の残渣を崩れないようにするため、つまり残渣の形状保持のために添加される。「リンオキソ酸」には、リン酸(オルトリン酸とも称する)、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸(ホスフィン酸とも称する)、ポリリン酸(メタリン酸とも称する)が含まれる。「リンオキソ酸の塩」には、リンオキソ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩またはそれらの組み合わせが含まれる。
リンオキソ酸の塩の例としては、粒径が小さく熱可塑性樹脂またはエラストマーに対して分散しやすく、さらには膨張後の形状保持性が高いという点で、亜リン酸塩が好ましい。
耐火性組成物中のリンオキソ酸の塩の含有量は特に限定されないが、マトリックス樹脂100質量部に対し、3〜300質量部であることが好ましく、5〜300質量部であることがより好ましく、10〜200質量部であることがさらに好ましい。
耐火性樹脂組成物におけるリンオキソ酸の塩の量が3質量部以上では耐火性樹脂組成物の燃焼後残渣の形状安定性が得られ、300質量部以下であると耐火性樹脂組成物の成形性および引張伸度が損なわれにくくなる。
熱可塑性改質剤としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)系粘度調整剤などのフッ素樹脂系粘度調整剤が挙げられる。
熱安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛熱安定剤、有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫熱安定剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸等が挙げられる。
熱安定剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、パラフィン、モンタン酸等のワックス類、各種エステルワックス類、ステアリン酸、リシノール酸等の有機酸類、ステアリルアルコール等の有機アルコール類、ジメチルビスアミド等のアミド系化合物等が挙げられる。
滑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
加工助剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレート‐エチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、アミノ化合物等が挙げられる。
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料等が挙げられる。
本発明に使用する耐火性樹脂組成物は、押出成形用に好ましく使用することができる。樹脂組成物を使用して、常法に従い、一軸押出機、二軸押出機等の押出機で130〜170℃で溶融させて押出することにより耐火性樹脂組成物の成形体を得ることができる。
本発明の耐火性樹脂組成物の成形体は、窓用板材と組み合わせて使用することができる。窓用板材の外周に、耐火性樹脂組成物の成形体を設置することにより耐火性サッシが得られる。
本発明の成形体は、耐火性部材の緩衝性材料層、建築用ガスケット、シーリング材などに好ましく使用することができる。
また本発明の耐火性樹脂組成物の成形体は、不燃枠材と組み合わせて使用することもできる。
不燃枠材の素材としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス等の金属、ガラス、セラミック等の無機物等を挙げることができる。
耐火性樹脂組成物の成形体と不燃枠材とは、例えば接着剤、両面粘着テープ等により互いに接着することができる。
また耐火性樹脂組成物の成形体と不燃枠材とは、例えば互いにスライドできるスライドレール部とスライドレール受部とをそれぞれ耐火性樹脂組成物の成形体と不燃枠材とに設置しておき、スライドレール部とスライドレール受部とを組み合わせること等により固定することができる。
本発明の成形体の残渣硬さは好ましくは0.12kgf/cm2以上、より好ましくは0.15kgf/cm2以上、さらに好ましくは0.18kgf/cm2以上、特に好ましくは0.23kgf/cm2以上である。本発明の成形体の引張伸度は、好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上、特に好ましくは300%以上である。引張伸度の上限は、3000%である。
なお、本発明の成形体としては、耐火樹脂組成物層と他の層を含む多層成形体が挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1及び比較例1〜2
(1) 耐火樹脂組成物の作製
表1に示す各成分を含む耐火樹脂組成物をニーダーで混練し、押出成形して耐火樹脂組成物の成形体を作製し、金型に付着した付着物の有無を肉眼で観察した。
実施例1及び比較例1〜2
(1) 耐火樹脂組成物の作製
表1に示す各成分を含む耐火樹脂組成物をニーダーで混練し、押出成形して耐火樹脂組成物の成形体を作製し、金型に付着した付着物の有無を肉眼で観察した。
また、耐火樹脂組成物2gをキシレン25mLに加え、室温で半日間撹拌し、遠心分離により不溶物を回収した。不溶物を蒸留水25ml中で30分間撹拌し、濾過し、濾液中の総陰イオン濃度をイオンクロマトグラフ法により測定した。結果を表1に示す。
Claims (5)
- マトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛を含む耐火樹脂組成物であって、耐火樹脂組成物2gをマトリックス樹脂が可溶な溶媒を用いて室温でマトリックス樹脂を溶解し、溶媒および溶解物を留去した残渣を水25mLに溶かした水溶液の総陰イオン濃度が250 ppm以下であることを特徴とする耐火樹脂組成物。
- 総陰イオン濃度が210 ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の耐火樹脂組成物。
- マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
- 請求項1、2又は3に記載の耐火樹脂組成物を押出成形してなる成形体。
- 建築用ガスケットに用いる請求項4に記載の成形体。
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