JP2020037761A - シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Tatsuya Hagiwara
達也 萩原
西村 誠
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誠 西村
田辺 昭大
Akihiro Tanabe
昭大 田辺
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Abstract

【課題】繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなるシート状物において、高密度で、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有するシート状物を提供する。【解決手段】繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤cからなるシート状物であって、前記シート状物は基材部1と銀面部2からなり、前記銀面部2の厚みは5μm以上50μm以下であり、前記銀面部2は前記不織布を構成する繊維aと炭化水素系撥水剤cが連続的に融着してなることを特徴とするシート状物である。【選択図】図1

Description

本発明は、高密度で、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有するシート状物に関するものである。
従来から天然皮革調のシート状物は、天然皮革に類似した柔軟性と機械的性能を得るために、一般的に繊維を3次元絡合させた不織布に高分子弾性体を付与して製造されている。
一方で、天然皮革の中でも独特の充実感のある風合いと高い硬度を持つ“コードバン”は、希少価値の高い馬の臀部から採れる皮革であり、極めて高密度な構造を有し、緻密で光沢感のある表面外観を有しつつ、耐久性に優れている。
緻密で表面平滑性の高い表面を有するシート状物を得るための手段として、例えば、長繊維を3次元絡合させた不織布と高分子弾性体からなる基材の表面を研削し、熱プレスした後に、合成樹脂系滑材を含む高分子弾性体を表層にコーティングする方法が提案されている(特許文献1)。
また、充実感のある風合いを有するシート状物を得るための手段として、例えば、極細繊維を3次元絡合させた不織布と高分子弾性体からなる基材を染色した後に、加脂剤とワックスを含む改質剤を付与し、乾燥する方法が提案されている(特許文献2)。
特許文献1および2が開示する方法で得られるシート状物は、表面に樹脂層を積層することで、銀面調の人工皮革に仕上げることが可能である。
その他に、表面に銀面部を有するシート状物を得るための手段として、例えば、極細繊維を3次元絡合させた不織布の表層に偏在するように高分子弾性体を付与した基材を染色した後に、熱プレスし、フッ素系撥水剤を含有する高分子弾性体を再付与してから、最後にもみ加工する方法が提案されている(特許文献3)。
また、炭化水素基含有化合物、シリコーン系化合物およびメラミン化合物を含有する樹脂被膜が繊維表面に固着した繊維構造物を提供する手段として、繊維構造物に炭化水素基含有化合物、シリコーン系化合物およびメラミン化合物を含有する組成物を付与した後に、熱プレスする方法も提案されている(特許文献4)。
特開2017−133114号公報 特開2017−82355号公報 特開2012−36523号公報 国際公開第2015/083627号
特許文献1に開示された方法で得られるシート状物は、中程度の密度と微細な立毛に由来して緻密感のある表面外観を有するが、表面に微細な立毛が存在し、かつ、光沢感に劣る点で、コードバン調の表面外観とは異なるという課題がある。
特許文献2に開示された方法で得られるシート状物は、中程度の密度と充実感のある風合いを有するが、表面はスエード調であり、光沢感に劣る点で、コードバン調の表面外観とは異なるという課題がある。
特許文献1および2に開示された方法で得られるシート状物は、表面に樹脂層を積層することで、銀面調の人工皮革に仕上げることが可能であるが、基材となるシート状物の表面平滑性に劣るため、コードバン調の光沢感は得られないという課題がある。
特許文献3に開示された方法で得られるシート状物の表面には銀面部が存在するものの、銀面部は極細繊維成分のみからなり、もみ加工により表面に立毛部が混在しているため、光沢感は中程度である。また、高分子弾性体が表層に偏在しているため、充実感のある風合いを得られないという課題がある。
また、特許文献4に開示された方法は、繊維構造物への撥水性付与を目的としており、シート状物に銀面部を形成しているわけではないため、コードバン調の光沢感は得られないという課題がある。
そこで本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなるシート状物において、高密度で、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有するシート状物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、繊維絡合体からなる不織布に高分子弾性体を付与し、染色した後に、低融点の炭化水素系撥水剤を含浸付与し、さらに熱プレスすることで、繊維と炭化水素系撥水剤を連続的に熱融着させ、銀面部を形成し、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観を有するシート状物が製造できるという知見を得た。さらに、熱カレンダー加工時に炭化水素系撥水剤が融解して、極細繊維をより把持した状態で再凝固することで、高密度化し、充実感のある風合いを有するシート状物を得ることができるということも判明した。
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
すなわち本発明のシート状物は、繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなるシート状物であって、前記シート状物は基材部と銀面部からなり、前記銀面部の厚みは5μm以上50μm以下であり、前記銀面部の表面は不織布を構成する繊維と炭化水素系撥水剤が連続的に融着してなる、シート状物である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記シート状物が高分子弾性体を含有してなる。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記高分子弾性体の軟化点が200℃以上300℃以下である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記シート状物の剛軟度が60mm以上180mm以下である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記シート状物の鏡面光沢度が5%以上60%以下である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記シート状物の見掛け密度が0.4g/cm以上1.2g/cm以下である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記不織布を構成する繊維はポリエステル樹脂からなる。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記シート状物の銀面部の上に、ポリウレタン樹脂層を有する。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の不織布が短繊維不織布である。
本発明のシート状物の製造方法は、(a)基体形成工程と、(b)染色工程と、(c)炭化水素系撥水剤付与工程と、(d)第1の熱プレス工程とを順に行う、前記シート状物の製造方法であって、前記基体形成工程は、繊維絡合体からなる不織布に軟化点が200℃以上300℃以下の高分子弾性体を付与し、シート状物を形成する工程であって、前記染色工程は、前記シート状物を液流染色機にて染色する工程であって、前記炭化水素系撥水剤付与工程は、染色したシート状物に対して、融点が50℃以上200℃以下である炭化水素系撥水剤を1%以上5%以下の割合で含浸付与する工程であって、前記第1の熱プレス工程は、温度150℃以上210℃以下のカレンダーロールにてシート状物を熱プレスし、厚みが5μm以上50μm以下の銀面部を形成する工程である。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記第1の熱プレス工程におけるシート状物が受ける線圧が500N/cm以上20000N/cm以下である。
本発明のシート状物の製造方法の好ましい態様によれば、(d)第1の熱プレス工程の後に、(e)ポリウレタン樹脂塗布工程と、(f)第2の熱プレス工程とを順に行う、シート状物の製造方法であって、前記ポリウレタン樹脂塗布工程は、シート状物の銀面部の上にポリウレタン樹脂を塗布する工程であって、前記第2の熱プレス工程は、温度100℃以上200℃以下のカレンダーロールにてシート状物を熱プレスする工程である。
本発明によれば、前記シート状物を染色後に、低融点の炭化水素系撥水剤を含浸付与し、前記炭化水素系撥水剤の融点より高温のカレンダーロールにて熱プレスすることで、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観を得ることができる。また、熱プレス時に炭化水素系撥水剤が融解して、繊維をより把持した状態で再凝固することで、高密度化し、充実感のある風合いを得ることができる。これより、本発明のシート状物は、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができる。
図1は、本発明に係るシート状物について、その厚み方向に垂直な断面について銀面部近傍の構造を図示した概念図である。 図2は、実施例1で得られたシート状物について、その厚み方向に垂直な断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
本発明のシート状物は、繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなるシート状物であって、前記シート状物は基材部と銀面部からなり、前記銀面部の厚みは5μm以上50μm以下であり、前記銀面部の表面は不織布を構成する繊維と炭化水素系撥水剤が連続的に融着してなることを特徴とするシート状物である。以下に、詳細について説明する。
[不織布]
本発明のシート状物を構成する不織布は、繊維絡合体からなるものである。繊維絡合体を構成する繊維の種類としては、例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維および合成繊維などを使用することができる。中でも、耐久性、特には機械的強度、耐熱性および耐光性の観点から、合成繊維が好ましい。
繊維絡合体に合成繊維を用いる場合には、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等適宜用途に応じて使用することができるが、機械的強度、耐熱性等の観点から、ポリエステル、ポリアミドであることが好ましい。
本発明に用いることのできるポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーであって、繊維として用いることが可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、収縮性の高いエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体等が挙げられる。
前記の共重合成分としては、製糸性や高収縮特性の発現性の観点から、イソフタル酸やビスフェノールAが好ましく用いられる。また、共重合成分の含有量は高収縮特性を十分付与するために2モル%以上であることが好ましい。しかしながら、共重合成分を、20モル%を超えて含有させると、紡糸時に糸切れが多発することから、共重合成分の含有量は20モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いることのできるポリアミド(PA)としては、たとえばポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド12、等のアミド結合を有するポリマーを挙げることができる。本発明は、中でも染色性に優れるポリアミド6が好適に使用される。
繊維絡合体に合成繊維を用いる場合には、繊維を形成するポリマーには、種々の目的に応じて、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面の断面形状を採用することもできる。
繊維絡合体を構成する繊維は平均単繊維直径が0.01μm以上10μm以下の極細繊維であることが好ましい。平均単繊維直径は、好ましくは0.1μm以上8μm以下、より好ましくは0.5μm以上6μm以下である。0.01μm未満であると、シート状物の強度が低下するため好ましくない。また10μmを越えると、表面の緻密さが損なわれるため好ましくない。
本発明における平均単繊維直径とは、シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに10本選び、単繊維直径を測定して10本の平均値を計算することにより算出されるものとする。ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面積となる円の直径を以下の式で算出する。これより得られた直径をその単繊維の単繊維直径とする。
・単繊維直径(μm)=(4×(単繊維の断面積)/π)1/2
本発明のシート状物を構成する不織布の形態としては、長繊維不織布および短繊維不織布のいずれも用いられるが、シート状物の厚み方向に絡合する繊維本数が多く、緻密性のある表面外観を得やすいことから、短繊維不織布であることが好ましい。
シート状物を構成する不織布の目付は、100g/m以上2000g/m以下の範囲であることが好ましい。不織布の目付が100g/m以上、好ましくは300g/m以上とすれば、シート状物はペーパーライクではなく、風合いに優れたシート状物を得ることができる。また、不織布の目付が2000g/m以下、好ましくは1800g/m以下とすれば、シート状物が極端に厚くなることもなく、雑貨や衣料用途に好適なシート状物を得ることができる。
本発明における不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)不織布からランダムに同一面積の試料を3個採取する。
(2)標準状態における試料の質量をそれぞれ測定し、単位面積当たりの質量を以下の式によって算出し算術平均値を求め、この平均値を四捨五入して有効数字3桁に丸める。
・単位面積当たりの質量(g/m)=試料の質量/試料の面積
[高分子弾性体]
本発明のシート状物は、シート状物を構成する繊維を把持するバインダーとして、高分子弾性体を含むことも好ましい。本発明のシート状物の硬質な風合いを考慮すると、用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン、SBR、NBRおよびアクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えたシート状物を得ることができる。また、本発明における「ポリウレタンが主成分である」とは、高分子弾性体全体の質量に対してポリウレタンの質量が50質量%より多いことをいう。
本発明においてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
また、高分子弾性体には、目的に応じて各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
高分子弾性体の軟化点は200℃以上300℃以下であることが好ましい。軟化点が200℃以上、好ましくは210℃以上であると、シート状物をカレンダーロールによる熱プレスする際に、繊維絡合体部分が高分子弾性体によって過度に把持された状態で高分子弾性体が再凝固して、風合いが硬くなるという状態を防ぐことができる。また、300℃以下、好ましくは290℃以下であると、カレンダーロールによる熱プレス時に、高分子弾性体が十分に軟化し、シート状物の密度を高め、充実感に富んだものとなる。
本発明における高分子弾性体の軟化点は、高分子弾性体が有機溶剤系の場合は、シート状物からN,N’−ジメチルホルムアミドにより高分子弾性体を抽出し、単離した後に、JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)前述のとおり、シート状物から高分子弾性体を抽出し、高分子弾性体を2個採取する。
(2)熱機械分析装置(TMA)の試料台の中央に高分子弾性体を置き、針状の圧子に0.50Nの力を加え、高分子弾性体の中央に圧子を置く。
(3)不活性ガス中にて、温度を毎分5℃で上昇させ、圧子の先端が完全に高分子弾性体に侵入が完了するまで、高分子弾性体への侵入の全過程における温度と高分子弾性体の変形量を記録する。
(4)横軸に温度、縦軸に高分子弾性体の変形量を取って描かれる曲線から、針入温度を小数点以下1桁まで読み取り、以下の式によって軟化点(軟化温度)を算出し平均値を求め、小数点以下1桁まで求めて、JIS Z8401の規則B(四捨五入法)によって整数位に丸める。
ここで、
・T:軟化温度(℃)
・T:針入温度(℃)
・T:高温側の温度校正用物質の融点(℃)
・T:低温側の温度校正用物質の融点(℃)
・ΔT:Th’−T(℃)
・ΔT:Tl’−T(℃)
・Th’:高温側の温度校正用物質で測定した針入温度(℃)
・Tl’:低温側の温度校正用物質で測定した針入温度(℃)
である。
また、高分子弾性体が水分散系の場合は、シート状物を、不織布を構成する繊維を溶解する溶媒(ポリエステルの場合、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールやオルソクロロフェノール等)を用いて繊維を除去し前記の高分子弾性体を単離した後に、前記の方法にて測定されるものとする。
[炭化水素系撥水剤]
本発明のシート状物を構成する炭化水素系撥水剤は、シート状物を構成する繊維を把持するバインダーであり、かつ、シート状物を構成する繊維と混合的に熱融着して銀面部を形成するため、シート状物を構成する繊維との親和性を考慮すると、用いられる炭化水素系撥水剤としては、ポリエチレン系撥水剤、パラフィン系撥水剤等が挙げられる。中でも、ポリエチレン系撥水剤を用いるのが好ましい態様である。ポリエチレン系撥水剤は、前記繊維を構成するポリエステルとの親和性が高く、シート状物の表層に銀面部を形成する際に、コードバン調の緻密感と光沢感を得やすい。
ポリエチレン系撥水剤としては、日華化学社製ネオシード、パラフィン系撥水剤としては、明成化学工業社製パラジットなどを用いることができる。
炭化水素系撥水剤の融点は、50℃以上200℃以下であることが好ましい。融点が50℃以上、より好ましくは70℃以上であると、熱プレス時に、カレンダーロールへの炭化水素系撥水剤の付着が低減できるため、好ましい。また、200℃以下、より好ましくは180℃以下であると、カレンダーロールによる熱プレス時に炭化水素系撥水剤が融解し、緻密で光沢感のある表面外観を得ることが容易となるため、好ましい。
なお、本発明において炭化水素系撥水剤の融点は、JIS K0064:1992「化学製品の融点及び溶融範囲測定方法」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)乾燥した試料を毛管に充填し、加熱液中に浸るように毛管を固定する。
(2)加熱液を加熱していき、試料が毛管内で溶融して固体を認めなくなったときの温度計の最小目盛の10分の1まで読み取り、融点の測定値とする。
[シート状物]
本発明のシート状物は、基材部と銀面部からなり、基材部は繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなり、銀面部は繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤が連続的に融着してなることが重要である。
ここで言う、連続的に融着してなるとは、不織布を構成する繊維同士が融着してなる部分と不織布を構成する繊維と炭化水素系撥水剤が融着してなる部分がシート状物の表面に連続的に配置されていることを示す。
シート状物の基材部には、高分子弾性体が含有されていることが好ましく、銀面部に高分子弾性体が含有されていてもよい。
本発明のシート状物の銀面部の厚みは、5μm以上50μm以下であることが重要であり、さらに好ましくは10μm以上45μm以下である。銀面部の厚みが5μm以上であると、摩耗により銀面部が劣化しにくくなるため、好ましい。また、銀面部の厚みが50μm以下であると、充実感のある風合いを得ることができるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の銀面部の厚みは、図1の概念図で示すように、シート状物の厚み方向に垂直な断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を500倍で撮影し、基材部1の上部に存在する銀面層2の、最下点からシート表面までの厚みを10ヶ所(P〜P10)で測定し、算術平均値を計算することにより算出されるものとする。
本発明のシート状物の厚みは、0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上1.8mm以下の範囲である。厚みが0.3mm以上であると、コードバンのような充実感のある風合いを得ることができるため、好ましい。また、2.0mm以下であると、雑貨や衣料用途でのシート状物の加工性に優れるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の厚みは、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.1 厚さ(ISO法) A法」に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)シート状物からランダムに同一面積の試料を10個採取する。
(2)厚さ測定器を用いて、標準状態で試験片に0.5kPaの圧力を10秒間かけて、厚さを0.01mmまで測定する。
(3)試験片10枚の算術平均値を求め、その平均値を四捨五入して有効数字2桁に丸める。
本発明のシート状物の目付は、150g/m以上2100g/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは300g/m以上1950g/m以下の範囲である。目付が150g/m以上であると、耐摩耗性が向上する傾向を示すため、好ましい。また、目付が2100g/m以下であると雑貨や衣料用途でのシート状物の加工性に優れるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)シート状物からランダムに同一面積の試料を3個採取する。
(2)標準状態における試料の質量を測定し、単位面積当たりの質量を以下の式によって算出し、算術平均値を求め、その平均値を四捨五入して有効数字3桁に丸める。
・単位面積当たりの質量(g/m)=試料の質量/試料の面積
本発明のシート状物の見掛け密度は0.4g/cm以上1.2g/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.6g/cm以上1.0g/cm以下の範囲である。見掛け密度が0.4g/cm以上であると、コードバンのような充実感のある風合いを得ることができるため、好ましい。また、見掛け密度が1.2g/cm以下であると、雑貨や衣料用途でのシート状物の加工性に優れるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の見掛け密度は、シート状物の目付をシート状物の厚みで除することで算出されるものとする。
本発明のシート状物の剛軟度は、60mm以上180mm以下であることが好ましく、80mm以上160mm以下であることがさらに好ましい。剛軟度が60mm以上であると、コードバンのような充実感のある風合いを得ることができるため、好ましい。また、180mm以下であると、コードバンのような充実感のある風合いを維持しつつ、雑貨や衣料用途でのシート状物の加工性に優れるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の剛軟度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.7.3 41.5°カンチレバー法」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)シート状物から25mm×250mmの試料を縦方向及び横方向からそれぞれ6枚採取する。
(2)41.5°カンチレバー形試験機を水平に置き、試料の一端をプラットホームの前端に合わせて置く。
(3)自動で試料を斜面の方向に緩やかに一定速度で送り出し、試料の一端の中央点が斜面に接触したときの試料の突き出た長さを測定し、算術平均値を算出して、剛軟度とする。
本発明のシート状物の鏡面光沢度は5%以上60%以下であることが好ましく、15%以上50%以下であることがさらに好ましい。鏡面光沢度が5%以上であると光沢感を有し、かつ高級感のある表面品位を達成できるため、好ましい。また、鏡面光沢度が60%以下であると過度な光反射を抑制することができるため、好ましい。
本発明におけるシート状物の鏡面光沢度は、JIS Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」で規定される方法に準じて、以下のように測定されるものとする。
(1)シート状物から60mm×60mmの試料を3個採取する。
(2)屈折率が可視波長範囲全域にわたって、一定値1.567であるガラス表面に対して、60°の入射角で規定の開き角(60°)の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角(60°)の光束Aを受光器で測定する。この光束Aを鏡面光沢度の100%の基準とする。
(3)採取した3個の試料面に対して60°の入射角で規定の開き角(60°)の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角(60°)の光束Bを受光器でそれぞれ測定する。
(4)以下の式によって鏡面光沢度を算出し、算術平均値を求め、その平均値を四捨五入して有効数字3桁に丸める。
・鏡面光沢度(%)=光束B/光束A×100
本発明のシート状物は、前記銀面部の上に、ポリウレタン樹脂層を有することが好ましい。前記銀面部の上にポリウレタン樹脂層を有することで、シート状物の表面触感を適宜調整することができる。なお、本発明のシート状物においては、ポリウレタン樹脂を塗布する前の銀面部の表面平滑性に優れるため、ポリウレタン樹脂を塗布した後も、優れた表面平滑性を維持し、コードバン調の光沢感を得ることができる。
本発明において使用するポリウレタン樹脂としては、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
また、ポリウレタン樹脂には、目的に応じて各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
[シート状物の製造方法]
次に、本発明のシート状物を製造する方法について説明する。
本発明のシート状物は、次の工程を順に行うことにより得られる。すなわち、(a)基体形成工程、(b)染色工程、(c)炭化水素系撥水剤付与工程、(d)第1の熱プレス工程である。
なお、本発明において、極細繊維束が絡合してなる不織布を得る手段として、海島型繊維等の極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維から直接不織布を製造することは困難であるが、極細繊維発生型繊維から不織布を製造し、この不織布における極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることにより、極細繊維束が絡合してなる不織布を得ることができる。以下、この例に従って、さらに詳細を説明する。
(a)基体形成工程
本工程では、はじめに極細繊維発生型繊維(複合繊維)を複合紡糸し、原綿をカットして、複合繊維ウェブを形成する。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分に用い、溶剤などを用いて海成分を溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがあるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物(繊維絡合体)の強度にも資する点から、海島型複合繊維が特に好ましく用いられる。
なお、海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合させた共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができる。紡糸安定性の点ではポリスチレンが好ましいが、有機溶剤を使用せずに容易に除去できる点でスルホン基を有する共重合ポリエステルが好ましい。
続いて、前記の複合繊維ウェブに絡合処理を施して、不織布を形成する。
不織布を得る方法としては、例えば、複合繊維ウェブをニードルパンチやウォータージェットパンチにより絡合させる方法、スパンボンド法、メルトブロー法、および抄紙法などを採用することができ、なかでも、前述のような極細繊維束の態様とする上で、高目付な複合繊維ウェブの絡合が可能であるニードルパンチの処理を経る事が重要である。
ニードルパンチ処理後の極細繊維発生型繊維からなる不織布の見掛け密度は、0.2g/cmより高く、0.7g/cm以下としておくことが好ましい。見掛け密度を0.2g/cmより高くすることで、シート状物が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を0.7g/cmより低くすることで、ニードルパンチ処理の際に針折れを防止することが可能になる。
次に、前記複合繊維から複合繊維を構成している易溶解性ポリマーを溶解除去あるいは物理的または化学的作用により剥離・分割し、極細繊維を形成する。
極細繊維発生型繊維から易溶解性ポリマー(海成分)を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンであればトルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒を用いることができ、海成分がポリ乳酸や共重合ポリエステルであれば水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いることができる。また、極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維からなる不織布を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させるには、連続染色機、バイブロウォッシャー型脱海機、液流染色機、ウィンス染色機およびジッガー染色機等の公知の装置を用いることができる。
続いて、シート状物が高分子弾性体を含む場合には、高分子弾性体を前記の不織布に付与し、高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。
なお、不織布への高分子弾性体の付与は、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる前に付与してもよいし、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる後に付与してもよいが、高分子弾性体の付量を低くするためには、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させる後に付与するのが好ましい。
高分子弾性体としてポリウレタンを付与させる際に用いられる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が好ましく用いられる。また、ポリウレタンを水中にエマルジョンとして分散させた水分散型ポリウレタン液としてもよい。
不織布を、溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に浸漬する等して前記高分子弾性体を前記不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。溶剤系のポリウレタン溶液の場合は、非溶解性の溶剤に浸漬することにより凝固させることができ、ゲル化性を有する水分散型ポリウレタン液の場合は、ゲル化させた後乾燥する乾式凝固方法等で凝固させることができる。乾燥にあたっては、不織布および高分子弾性体の性能が損なわれない程度の温度で加熱してもよい。
不織布に高分子弾性体を付与後、得られたシート状物を、シート厚み方向に半裁ないしは数枚に分割することは、生産効率に優れ好ましい態様である。
最後に、研削処理を施し表面を緻密化する工程を行うことができ、少なくともシート状物の片面が研削されていても良い。研削処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一かつ緻密性のある表面構造を形成することができる。
本発明のシート状物は、例えば、染料、顔料、柔軟剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤および耐候剤等の機能性薬剤を含んでいてもよい。
(b)染色工程
ここで、前記シート状物を染色する工程について説明する。
本発明のシート状物を染色する方法としては、特に限定されるものではなく、用いる染色機としても、液流染色機、サーモゾル染色機、高圧ジッガー染色機、ビーム染色機等いずれでもよいが、染色の揉み効果により、シート状物の風合いを調整できるため、液流染色機を用いるのが好ましい。
染料については、シート状物を構成する極細繊維にあわせて選択することができる。例えば、極細繊維がポリエステル繊維からなる場合には分散染料を用い、また、極細繊維がポリアミド繊維からなる場合には酸性染料や含金染料を用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行うことが好ましい。また、染色の均一性や再現性を向上させる目的で、染色助剤を使用することもできる。
(c)炭化水素系撥水剤付与工程
ここで、染色したシート状物に炭化水素系撥水剤を含浸付与する工程について説明する。
本発明のシート状物に炭化水素系撥水剤を付与する方法としては、シート状物に対して炭化水素系撥水剤を1%以上5%以下の割合で含浸付与することが重要であり、より好ましくは2%以上4%以下の割合である。シート状物に対する炭化水素系撥水剤の割合が1%以上であると、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観を得ることができるため、好ましい。また、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の割合が5%以下であると、シート状物の表面における色むらの発生を抑制できるため、好ましい。
(d)第1の熱プレス工程
ここで、前記シート状物を高温のカレンダーロールにより熱プレスし、シート状物の表層に銀面部を形成する工程について説明する。
この工程では、前記シート状物を、150℃以上210℃以下の温度のカレンダーロールにて熱プレスすることで、不織布の表面に存在する繊維と炭化水素系撥水剤が部分的に溶解して、連続的に融着することで、シート状物の表層に厚みが5μm以上50μm以下の銀面部を形成する。カレンダーロールの温度は、150℃以上であると、前記高分子弾性体が軟化して、シート状物の密度が増大し、充実感のある風合いとなる。また、カレンダーロールの温度が210℃以下であると、カレンダーロールに不織布を構成する繊維の成分や炭化水素系撥水剤が融解して付着するのを抑制できる。
カレンダーロールによる熱プレス時の線圧は500N/cm以上20000N/cm以下であることが好ましい。線圧が500N/cm以上であると、シート状物を構成する繊維と炭化水素系撥水剤が十分に融着して、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観を得ることができるため、好ましい。線圧が20000N/cm以下であると、コードバンのような充実感のある風合いとなるため、好ましい。
なお、カレンダーロールの温度が150℃以上210℃以下で、線圧が500N/cm以上の条件では、軟化点が200℃以上300℃以下の高分子弾性体が軟化する。
本発明のシート状物は、前記の(d)第1の熱プレス工程を行った後、さらに次の工程、すなわち、(e)ポリウレタン樹脂塗布工程と(f)第2の熱プレス工程とを行うことも好ましい。このようにすることで、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観を維持しつつ、より充実感のある風合いを有するシート状物を得ることができる。以下、これらについて詳細に説明する。
(e)ポリウレタン樹脂塗布工程
ここで、前記シート状物の銀面部の上に、ポリウレタン樹脂を塗布する工程について説明する。
この工程では、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、コンマコーティング法、ラミネート法のいずれかの方法により、前記シート状物の銀面部の上にポリウレタン樹脂を塗布する。
ポリウレタン樹脂の塗布量は、5g/m以上50g/m以下であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の塗布量が5g/m以上であると、銀面部の上に均一にポリウレタン樹脂を塗布することができ、表面平滑性と光沢感に優れたシート状物を得ることができる。また、ポリウレタン樹脂の塗布量が50g/m以下であると、充実感のある風合いを維持しつつ、表面平滑性と光沢感に優れたシート状物を得ることができる。
(f)第2の熱プレス工程
ここで、前記シート状物を高温のカレンダーロールにより熱プレスし、ポリウレタン樹脂層を平滑化する工程について説明する。
この工程では、前記シート状物を、100℃以上200℃以下の温度のカレンダーロールにて熱プレスすることで、前記シート状物の銀面部の上に塗布されたポリウレタン樹脂層を平滑化する。カレンダーロールの温度が100℃以上であると、ポリウレタン樹脂層を平滑化しつつ、繊維と炭化水素系撥水剤からなる銀面部を高密度化し、より充実感のある風合いを有するシート状物となる。また、カレンダーロールの温度が200℃以下であると、カレンダーロールにシート状物表面に存在するポリウレタン樹脂が融解して付着するのを抑制できる。
カレンダーロールによる熱プレス時の線圧は100N/cm以上20000N/cm以下であることが好ましい。線圧が100N/cm以上であると、ポリウレタン樹脂層を平滑化しつつ、繊維と炭化水素系撥水剤からなる銀面部を高密度化し、より充実感のある風合いと緻密で光沢感のある表面外観を有するシート状物となる。線圧が20000N/cm以下であると、コードバンのような充実感のある風合いとなるため、好ましい。
以上に例示された製造方法によって得られる本発明のシート状物は、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができる。
次に、実施例を用いて本発明のシート状物についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。次に、実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法および評価用加工方法]
(1)目付(g/m
不織布またはシート状物からランダムに縦方向50cm×横方向50cmの試料を3個採取して、各試料の質量をそれぞれ測定し、単位面積当たりの質量に以下の式で換算し、算術平均値を算出して有効数字3桁にまとめた。
・単位面積当たりの質量(g/m)=試料の質量/試料の面積
(2)見掛け密度(g/cm
目付測定で採取した3個のサンプルの厚みをダイヤルシクネスゲージ(尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)により測定し、目付から割り返して密度を計算し、小数点以下第四位を四捨五入した。
(3)平均繊維長(mm)
任意の3箇所から、それぞれ繊維を10本抜き出して伸長しないようにまっすぐ伸ばし繊維長を測定した。測定した30本分の繊維長の数平均を求め、平均繊維長とした。
(4)平均単繊維直径(μm)
平均単繊維直径は、シート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに10本選び、単繊維直径を測定して10本の平均値を計算することにより算出した。なお、本実施例・比較例においては、キーエンス社製「VW−9000」型走査型電子顕微鏡を用いた。異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面積となる円の直径を以下の式で算出した。これより得られた直径をその単繊維の単繊維直径とした。
・単繊維直径(μm)=(4×(単繊維の断面積)/π)1/2
(5)高分子弾性体の軟化点(℃)
前述の通り、シート状物からN,N’−ジメチルホルムアミドにより高分子弾性体を抽出し、単離した後に、前記のJIS K7196:1991で規定される方法にて高分子弾性体の軟化点を測定した。なお、本実施例・比較例においては、日立ハイテクサイエンス社製「TMA/SS6100」型熱機械分析装置を用いた。
(6)シート状物の銀面部の厚み(μm)
シート状物の厚み方向に垂直な断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を500倍で撮影し、繊維と炭化水素系撥水剤が融着してなる層の最下点からシート表面までの長さを銀面部の厚みとして測定した。なお、本実施例・比較例においては、キーエンス社製「VW−9000」型走査型電子顕微鏡を用いた。これを10ヶ所で行い、シート状物の断面の銀面部の厚みの平均値を算出した。
(7)シート状物の剛軟度(mm)
前述の通り、JIS L1913:2010の「6.7.3 41.5°カンチレバー法」により、剛軟度を測定した。なお、本実施例・比較例においては、大栄科学精器製作所社製「CAN−1MCC」型41.5°カンチレバー試験機を用いた。
(8)シート状物の鏡面光沢度
前述の通り、JIS Z8741:1997の「鏡面光沢度−測定方法」により、鏡面光沢度を測定した。なお、本実施例・比較例においては、コニカミノルタ社製「GM−268Plus」型光沢計を用いた。
(9)シート状物の表面外観
シート状物の表面外観は、健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を視覚で判別を行い、最も多かった評価を表面外観とした。評価が同数となった場合は、より高い評価をそのシート状物の表面外観とすることとした。本発明の良好なレベルは「AまたはB」とした。
・A:非常に緻密で、光沢感がある。
・B:緻密で、光沢感がある。
・C:粗く、光沢感に劣る。
・D:非常に粗く、光沢感が無い。
[実施例1]
<原綿〜繊維絡合体>
島成分としてポリエチレンテレフタレート(チップの固有粘度(IV値):0.72、表1内では「PET」と略す)を用い、海成分としてポリスチレン(MFR:2.0g/10min)を用いて、島成分と海成分からなる質量成分比が55/45、島数が36本、複合繊維の平均単繊維直径が15.5μm、繊維長が51mm、捲縮数が14山/インチの海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパーの工程を経て不織布を形成した。次いで、プレパンチ300本/cmのニードルパンチを行い、目付800g/mの不織布(フェルト)を形成した。その後、上面側と下面側から交互に計2700本/cmのニードルパンチを行い、目付が890g/m、見掛け密度が0.235g/cmの不織布を得た。
<シート状物>
上記の不織布を96℃の温度の熱水で収縮させた後、5%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、不織布の質量に対するPVA質量が4%のシートを得た。このシートをトリクロロエチレン中に浸漬して海成分を溶解除去し、極細繊維が絡合してなる脱海シートを得た。このようにして得られた脱海シートを、固形分濃度12%に調整したポリカーボネート系ポリウレタン(軟化点:210℃)のDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いでDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、平均単繊維直径が1.9μmの極細繊維(島成分)とポリウレタンからなるシート状物基体を得た。
このようにして得られたシート状物基体をエンドレスのバンドナイフを有する半裁機により厚み方向に半裁し、サンドペーパー番手320番のエンドレスサンドペーパーで研削し、緻密な表面を形成させ、見掛け密度が0.377g/cmであるシート状物を得た。
その後、液流染色機を用いて分散染料により染色を行い、さらに5%の炭化水素系撥水剤(ネオシードNR−3100、日華化学社製、融点:100℃、表1内では「A」と略す)の水溶液を含浸し、温度80℃の熱風にて乾燥することにより、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の質量が3%のシート状物を得た。
このようにして得られたシート状物を、加工速度10m/min、線圧2100N/cm、カレンダーロールの温度190℃の条件で熱プレスすることで、見掛け密度が0.659g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が27.0%、剛軟度が85mm、と風合いは充実感があり、表面外観は非常に緻密で光沢感のあるシート状物を得た。得られたシート状物の厚み方向に垂直な断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。結果を表1に示す。
[実施例2]
上記の実施例1において、シート状物が受ける線圧が2900N/cmの条件で熱プレスした以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.954g/cm、銀面部の厚みが20μm、鏡面光沢度が32.7%、剛軟度が130mm、と風合いは充実感があり、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例3]
上記の実施例1において、シート状物が受ける線圧が2900N/cm、カレンダーロールの温度210℃の条件で熱プレスした以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が1.032g/cm、銀面部の厚みが40μm、鏡面光沢度が40.2%、剛軟度が145mm、と風合いは充実感があり、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例4]
上記の実施例1において、ポリカーボネート系ポリウレタンを付与しない以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.480g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が26.5%、剛軟度が65mm、と風合いは充実感にやや欠けるが、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例5]
上記の実施例1において、軟化点が100℃であるポリカーボネート系ポリウレタンを用いた以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が1.150g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が9.0%、剛軟度が168mm、と風合いは充実感があり、表面外観は緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例6]
上記の実施例1において、軟化点が350℃であるポリカーボネート系ポリウレタンを用いた以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.562g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が25.0%、剛軟度が75mm、と風合いは充実感にやや欠けるが、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例7]
上記の実施例1において、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の質量が1.0%となるように含侵付与した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.550g/cm、銀面部の厚みが5μm、鏡面光沢度が16.1%、剛軟度が58mm、と風合いは充実感にやや欠けるが、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例8]
上記の実施例1において、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の質量が4.5%となるように含侵付与した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が1.223g/cm、銀面部の厚みが30μm、鏡面光沢度が31.5%、剛軟度が183mm、と風合いはやや堅かったが、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例9]
上記の実施例1において、島成分としてポリアミド6(相対粘度(ηr):2.70、表1内では「Ny」と略す)、海成分としてポリスチレン(MFR:2.0g/10min)からなる質量成分比を40/60、島数を200本、複合繊維の平均単繊維直径が23.9μmにしたこと以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が1.182g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が23.2%、剛軟度が180mm、と風合いはやや堅かったが、表面外観は非常に緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例10]
上記の実施例1において、複合繊維の繊維長が102mmであること以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.679g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が7.5%、剛軟度が93mm、と風合いは充実感があり、表面外観は緻密で光沢感があった。結果を表1に示す。
[実施例11]
上記の実施例1において、熱プレスにより銀面部を形成した後に、シート状物の一面にポリカーボネート系ポリウレタンのエマルジョンを固形分で20g/mの割合になるようにナイフコーティングし、100℃で乾燥させることによりポリウレタン樹脂層を形成し、さらに加工速度2.0m/min、線圧1500N/cm、カレンダーロールの温度150℃の条件で熱プレスした以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.679g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が37.3%、剛軟度が87mm、と風合いは充実感があり、表面外観は非常に緻密で光沢感のあるシート状物を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
上記の実施例1において、炭化水素系撥水剤の水溶液を含浸付与しない以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.512g/cm、繊維成分からなる銀面部の厚みが2μm、鏡面光沢度が2.0%、剛軟度が50mm、と風合いは充実感に欠けており、表面外観は非常に粗く光沢感が無かった。得られたシート状物の厚み方向に垂直な断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。結果を表2に示す。
[比較例2]
上記の実施例1において、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の質量が0.5%となるように含浸付与した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.531g/cm、銀面部の厚みが4μm、鏡面光沢度が2.5%、剛軟度が55mm、と風合いは充実感にやや欠けており、表面外観は粗く光沢感に劣っていた。結果を表2に示す。
[比較例3]
上記の実施例1において、シート状物に対する炭化水素系撥水剤の質量が6.8%となるように含浸付与した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が1.250g/cm、銀面部の厚みが55μm、鏡面光沢度が2.5%、剛軟度が185mm、と風合いは硬く、表面外観は粗く光沢感に劣っていた。結果を表2に示す。
[比較例4]
上記の実施例1において、シリコーン系撥水剤(表1内では「B」と略す)の水溶液を含浸付与した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.632g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が3.0%、剛軟度が105mm、と風合いは充実感があり、表面外観は粗く光沢感に劣っていた。結果を表2に示す。
[比較例5]
上記の実施例1において、炭化水素系撥水剤の水溶液の含浸付与および熱プレスを実施せずに、シート状物の一面にポリカーボネート系ポリウレタンとシリコーン樹脂を80:20(質量比)で含むエマルジョンを固形分で30g/mの割合になるようにグラビアコートし、乾燥させることにより銀面層を形成した以外は、実施例1と同一条件で加工してシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、見掛け密度が0.385g/cm、銀面部の厚みが10μm、鏡面光沢度が4.0%、剛軟度が65mm、と風合いは充実感にやや欠けており、表面外観は粗く光沢感に劣っていた。結果を表2に示す。
表1の実施例1〜10に示すように、染色したシート状物に対して炭化水素系撥水剤を1〜5質量%含浸付与した後に、熱プレスした場合、シート状物の表面繊維と炭化水素系撥水剤が緻密に融着して光沢感に優れた表面外観を有するシート状物となる。特に実施例1〜3に示すように、軟化点が200℃以上300℃以下の高分子弾性体を含有するシート状物に対して炭化水素系撥水剤を2〜4質量%含浸付与した場合、表面外観は非常に緻密で光沢感があり、風合いは充実感があるシート状物となる。
これに対し、実施例4に示すように、高分子弾性体を含有しないシート状物である場合、熱プレス後のシート状物の基材部の密度が低くなるため、風合いは充実感にやや欠けるが、表面外観は非常に緻密で光沢感のあるシート状物となる。
また、実施例9に示すように、不織布を構成する繊維がポリアミド樹脂である場合、ポリエステル樹脂対比、ポリアミド樹脂の融点が低いため、繊維同士がより融着して、風合いはやや堅くなるものの、表面外観は非常に緻密で光沢感のあるシート状物となる。
実施例10に示すように、長繊維不織布からなるシート状物である場合、厚み方向に配向する繊維本数が少ないため、短繊維不織布からなるシート状物対比、表面外観は緻密さと光沢感にやや劣り、風合いは充実感のあるシート状物となる。
実施例11に示すように、表面繊維と炭化水素系撥水剤が緻密に融着してなる銀面部の上にポリウレタン樹脂を塗布し、さらに熱プレスする場合、得られるシート状物の表面外観は非常に緻密で光沢感があり、かつ風合いは充実感がある。
比較例1に示すように、シート状物に炭化水素系撥水剤を含浸付与しない場合、緻密に繊維が融着しないため、表面外観は非常に粗く光沢感が無く、風合いは充実感に欠けるシート状物となる。
比較例2に示すように、シート状物に炭化水素系撥水剤を1質量%未満の割合で含浸付与した場合、シート状物の表面繊維と炭化水素系撥水剤が満遍なく融着しないため、シート状物の銀面部の厚みが小さくなり、表面外観は粗く光沢感に劣り、風合いは充実感にやや欠けるシート状物となる。
比較例3に示すように、シート状物に炭化水素系撥水剤を5質量%より大きい割合で含浸付与した場合、シート状物の銀面部の厚みが大きくなるとともに、熱プレス時に炭化水素系撥水剤がカレンダーロールに付着して、平滑な表面を形成できないため、表面外観は粗く光沢感に劣り、風合いは非常に堅いシート状物となる。
比較例4に示すように、炭化水素系撥水剤の代わりにシリコーン系撥水剤を含浸付与した場合、炭化水素系撥水剤対比、シリコーン系撥水剤は表面繊維との親和性に劣るため、緻密で光沢感のある表面外観が得られなかった。
比較例5に示すように、グラビアコートによりポリカーボネート系ポリウレタンとシリコーン樹脂からなる銀面層を形成した場合、シート状物の基材部の密度が低いため、風合いは充実感にやや欠けており、表面外観は粗く光沢感に劣るシート状物となる。
本発明のシート状物は、コードバン調の緻密で光沢感のある表面外観と充実感のある風合いを有しており、家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く用いることができる。
1: 基材部
2: 銀面部
a: 繊維
b: 高分子弾性体
c: 炭化水素系撥水剤
〜P10: 銀面部の厚みの測定箇所の一例

Claims (12)

  1. 繊維絡合体からなる不織布と炭化水素系撥水剤からなるシート状物であって、前記シート状物は基材部と銀面部からなり、前記銀面部の厚みは5μm以上50μm以下であり、前記銀面部は前記不織布を構成する繊維と炭化水素系撥水剤が連続的に融着してなる、シート状物。
  2. 前記シート状物が高分子弾性体を含有してなる、請求項1に記載のシート状物。
  3. 前記高分子弾性体の軟化点が200℃以上300℃以下である、請求項1または2に記載のシート状物。
  4. 前記シート状物の剛軟度が60mm以上180mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物。
  5. 前記シート状物の鏡面光沢度が5%以上60%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物。
  6. 前記シート状物の見掛け密度が0.4g/cm以上1.2g/cm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のシート状物。
  7. 前記不織布を構成する繊維はポリエステル樹脂からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のシート状物。
  8. 前記不織布が短繊維不織布である、請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のシート状物の銀面部の上に、ポリウレタン樹脂層を有するシート状物。
  10. (a)基体形成工程と、(b)染色工程と、(c)炭化水素系撥水剤付与工程と、(d)第1の熱プレス工程とを順に行う、請求項1〜9のいずれかに記載のシート状物の製造方法であって、
    前記基体形成工程は、繊維絡合体からなる不織布に軟化点が200℃以上300℃以下の高分子弾性体を付与し、シート状物を形成する工程であって、
    前記染色工程は、前記シート状物を液流染色機にて染色する工程であって、
    前記炭化水素系撥水剤付与工程は、染色したシート状物に対して、融点が50℃以上200℃以下である炭化水素系撥水剤を1%以上5%以下の割合で含浸付与する工程であって、
    前記第1の熱プレス工程は、温度150℃以上210℃以下のカレンダーロールにてシート状物を熱プレスし、厚みが5μm以上50μm以下の銀面部を形成する工程である、
    シート状物の製造方法。
  11. 前記(d)第1の熱プレス工程におけるシート状物が受ける線圧が500N/cm以上20000N/cm以下である、請求項10に記載のシート状物の製造方法。
  12. 請求項10または11に記載の(d)第1の熱プレス工程の後に、(e)ポリウレタン樹脂塗布工程と、(f)第2の熱プレス工程を順に行う、請求項9に記載のシート状物の製造方法であって、
    前記ポリウレタン樹脂塗布工程は、シート状物の銀面部の上にポリウレタン樹脂を塗布する工程であって、
    前記第2の熱プレス工程は、温度100℃以上200℃以下のカレンダーロールにてシート状物を熱プレスする工程である、
    シート状物の製造方法。
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