以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
最初に、図1を参照して、本実施形態に係る地図システムの概略構成について説明する。
図1に示すように、この地図システム100は、撮像装置たるカメラ10と、画像プロセッサ20と、車両の状態を取得する状態取得部たるセンサ30と、主プロセッサ40と、通信モジュール50と、地図情報が格納されたサーバ60と、ヒューマンマシンインターフェース70(以下、HMI)と、を備えている。
地図システム100は、GPS等、自車両の位置を特定する従来の機能に対して、追加的に機能してより高精度に位置の特定をすることに効果を発揮する。地図システム100は、大きく分けて、地図活用および地図更新の2つの機能を備えている。地図活用においては、サーバ60に格納された地図情報が車両にダウンロードされ、車両はダウンロードされた地図情報と、カメラ10により撮像された画像に含まれる標識等のランドマークの位置とに基づいて自車両の位置を特定する。一方、地図更新においては、車両に搭載されたカメラ10やセンサ30により得られた情報がプローブデータとしてサーバ60にアップロードされ、サーバ60内の地図情報が逐次更新される。これにより、車両は、常に最新の地図情報に基づいて高精度に位置特定がされつつ、例えば運転支援や自動ステアリングが実現される。
カメラ10は、車両に搭載され、可視光領域の波長において車両周辺の環境を撮像する。カメラ10は、例えば車両前方の環境を撮像するものでも良いし、車両前方に限らず、後方、側方を撮像しても良い。カメラ10が捉える光の波長は可視光に限定されるものではなく、紫外、赤外の光を含んでいても良い。カメラ10は、例えば図示しない撮像素子たるCMOSイメージセンサと、図示しない画像処理エンジンとを含むカメラモジュールとして構成されている。カメラ10により撮像された車両周辺の環境の情報は、静止画あるいは動画(以下、これらを総して画像と称する)の形式でメモリ80に格納される。後述の画像プロセッサ20は、メモリ80に格納されたデータに基づいて各種処理を実行する。
画像プロセッサ20は、カメラ10により撮像された画像を解析する。画像プロセッサ20は、例えば、画像中に含まれるランドマーク63を抽出する。ランドマーク63には、例えば交通標識、信号機、案内板、白線等のレーンマーク、道路標示などを含む。さらには、街灯やミラー、商業広告、店舗、歴史的建造物等の象徴的な建築物などを含んでも良い。画像プロセッサ20は、ランドマークに抽出に際して、色、輝度、色や輝度に関するコントラスト等を含む画像情報に基づいて、撮像された画像から背景とランドマーク63とを分離して抽出する。また、ランドマーク63の大きさ、形状、設置位置に基づいて抽出しても良い。
状態取得部たるセンサ30は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ(広義にはジャイロセンサ)、舵角センサ、照度センサ、測位センサ(例えばGPS受信機を含む)を含んでいる。上記した各センサは、例えば次のような車両状態を取得する。取得された車両の状態を示す情報はメモリ80に格納される。
速度センサは車両の速度を取得する。加速度センサは車両の進行方向および進行方向に直行する方向の加速度を取得する。ヨーレートセンサは車両のヨーレートを取得する。舵角センサはステアリングの舵角を取得する。照度センサは車両周辺の明るさを取得する。測位センサは車両の大まかな現在位置を取得する。
また、例えば車両が走行している道路の舗装状態や起伏、橋梁とその他道路などのジョイントなどを、車両の振動を検出するセンサ等により検出することもできる。これら、道路の舗装状態や起伏、ジョイントなどは、画像から抽出されるものではないが、地図上での位置を特定するためのランドマーク63として採用することができる。
主プロセッサ40は、上記した画像プロセッサ20およびセンサ30と通信可能に接続されており、画像プロセッサ20およびセンサ30から入力された各種情報を演算、処理している。主プロセッサ40は、例えば、車両の速度、加速度、ヨーレートに基づいて車両が走行すると予測される走行軌道を生成している。また、主プロセッサ40は、カメラ10により取得された画像に基づいて検出されたレーンマークに基づいて走路の軌道を生成している。さらに、主プロセッサ40は、画像プロセッサ20により抽出されたランドマーク63のグローバル座標系における座標を算出している。主プロセッサ40により演算、処理された結果としての情報はメモリ80に一時的に保持される。
グローバル座標の算出について、主プロセッサ40は、例えば、GPSによりグローバル座標系において車両の初期座標を大まかに推定する。そして、車両の速度ベクトルの積分により計算される車両の初期座標からの相対座標を推定する。これにより、車両の大まかな現在位置がグローバル座標系で得られる。さらに、ランドマークの車両からの相対距離および方位を、SfM(Structure from Motion)情報を含む画像から演算する。これにより、ランドマークが存在する位置のグローバル座標が得られる。ランドマークの車両からの相対距離および方位は、図示しないミリ波レーダーやレーダーの情報を用いて算出しても良い。
また、主プロセッサ40は、地図活用および地図更新(または生成)に係る種々の処理を実行している。地図活用の観点では、主プロセッサ40は、リアルタイムに撮像された画像に基づいて算出されたランドマーク63の座標と、後述するサーバ60からダウンロードされた地図情報に含まれるランドマーク63の座標とを照合して自車両の位置を特定する。特定した自車両の現在位置に基づいて、主プロセッサ40が車両に搭載されたハードウェアを動作させるためのアクチュエータ90に対して対応する命令を出力することで運転支援が実現される。アクチュエータ90とは、例えば制動装置であったり、スロットルであったり、ステアリングであったり、ランプであったり、その他、車両をハードウェア的に制御するための装置である。また、地図更新に係る処理は、例えば、主プロセッサ40が地図情報のダウンロードやアップロード、採用するランドマークの選別などを実行する。地図活用および地図更新(または生成)に係る種々の処理について、いくつかの具体的な例は追って詳述する。
通信モジュール50は、主プロセッサ40と後述するサーバ60とが相互に通信可能になるように、主プロセッサ40とサーバ60との間に介在している。通信モジュール50は、主プロセッサ40により演算され、メモリ80に保持された走行軌道、走路軌道およびランドマークのグローバル座標を含む情報を、プローブデータとしてサーバ60に送信する。また、通信モジュール50は、サーバ60に蓄積された地図情報、および関連する情報を受信し、メモリ80に格納する。これら、通信モジュール50を介して受信され、メモリ80に格納された地図情報に基づいて、主プロセッサ40は、車両のステアリング制御や加速、制動などの各種制御を実行する。
サーバ60は、地図情報を格納するとともに、サーバ60に付随するサーバプロセッサ61により地図情報の更新を実施する。地図情報は、例えば2km四方に分割されたマップタイルとして格納されている。すなわち、サーバ60には複数のマップタイルが対応する緯度、経度および高度の情報とともに格納されており、車両は、通行する道路が属するマップタイルの情報を逐次サーバ60から得つつ、ダウンロードした地図情報に基づいて走行する。
サーバ60に格納されている地図情報は、図2に示すように、道路の形状を3次スプライン曲線で表現した道路セグメント62と、道路セグメント62およびその周辺に存在するランドマーク63とを含む。道路セグメント62およびランドマーク63は、緯度、経度および高度の値をそれぞれ有している。ランドマーク63は、例えば、交通標識、信号機、案内板、白線等のレーンマーク、道路標示、街灯、ミラー、商業広告、店舗、歴史的建造物等の象徴的な建築物、さらには、道路の舗装状態、起伏、ジョイント等を含み、カメラ10や状態取得部たる各種センサ30によりリアルタイムに得られる情報のほか、すでに位置が確定しているものも統合的に地図上に構成されている。地図情報はリアルタイムに得られる情報に基づいて逐次更新される。
HMI70は、各種の情報をユーザに通知したり、ユーザが所定の操作を車両に伝達したりするためのユーザインタフェースである。HMI70は、例えばカーナビゲーション装置に付属するディスプレイ、インストルメントパネルに内蔵されたディスプレイ、ウインドシールドに投影されるヘッドアップディスプレイ、マイク、スピーカ等を含んでいる。さらには、車両と通信可能に接続されたスマートフォン等のモバイル端末も地図システム100内のHMI70になりえる。
ユーザはHMI70に表示される情報を視覚的に得るほか、音声や警告音、振動によっても情報を得ることができる。また、ユーザは、ディスプレイのタッチ操作や音声により車両に対して所望の動作を要求することができる。
例えば、ユーザが地図情報を活用して自動ステアリング等の高度運転支援のサービスを受けようとするとき、ユーザはHMI70を介して該機能を有効化する。例えば、ディスプレイ上に示された「地図連携」ボタンをタップすると地図活用の機能が有効化され、地図情報のダウンロードが開始される。別の例では、音声にて命令を与えることにより地図活用の機能が有効化される。なお、地図更新に係る地図情報のアップロードについては、車両とサーバ60との通信が確立されている間常時実行されていても良いし、「地図連携」ボタンをタップして地図活用の機能が有効化されている間に実行されるようにされても良いし、ユーザの意思を反映する別のUIによって有効化されても良い。
本実施形態における地図システム100は、車両が収集した地図に関する情報を地図システム100に含まれるサーバ60にアップロードし、サーバ60に格納された地図情報が更新できるようになっている。アップロードは、通常、所定の頻度で実行されているが、本実施形態における地図システム100は、アップロードを通常頻度で実行する通常モードに加えて、通常頻度よりもアップロードの頻度を低下させた低頻度モードを有している。
図3を参照して、主プロセッサ40が実行するフローを説明する。
図3に示すように、まず、ステップS100が実行される。ステップS100は、主プロセッサ40がGPSによる測位結果の情報に基づいて、自車両の大まかな位置を決定するステップである。
次に、ステップS101が実行される。ステップS101は、主プロセッサ40がサーバ30から、自車両の大まかな位置に対応した地図情報をダウンロードするステップである。
次に、ステップS102が実行される。ステップS102は、主プロセッサ40が自車両の詳細な位置を決定するステップである。自車両の詳細な位置とは、地球上における緯度、経度および高度を含むグローバル座標である。主プロセッサ40は、例えばGPSを利用した大まかな位置情報とともに、サーバ60からダウンロードされた地図情報に基づいて自車両の詳細なグローバル座標を決定する。
次に、ステップS103が実行される。ステップS103は、自車両の置かれた状況が所定の低頻度条件を満たすか否かを判定するステップである。本実施形態では、具体的には、自車両の位置が予め決められた所定の低頻度区域に存在しているか否かを主プロセッサ40が判定するステップである。すなわち、図3に示す例における低頻度条件は、自車両の位置が予め決められた所定の低頻度区域に存在しているか否か、である。
自車両の置かれた状況が所定の低頻度条件を満たす、すなわち、自車両の位置が予め決められた所定の低頻度区域に存在しているときには、ステップS103はYES判定となり、ステップS104に進む。低頻度区域は、図4に示すように、地図上において予め設定されている。低頻度区域は、道路セグメント62に沿った線として設定されていても良いし、図4に例示したように所定の面積を持った面として設定されても良い。
一方、自車両の置かれた状況が所定の低頻度条件を満たさない場合には、ステップS105に進む。ステップS105はアップロードの頻度を通常の頻度で行う通常頻度モードである。
上記のとおり、本実施形態において、自車両の位置が予め決められた所定の低頻度区域に存在しているときにはステップS104に進み、図3に示す通り、地図システム100は低頻度モードとなる。ステップS104またはステップS105を経て、ステップS106に進む。ステップS106は、地図情報を含むプローブデータをサーバ60に送信するステップである。ステップS104またはステップS105において設定されたプローブデータのアップロードに係る頻度モードに応じて所定の頻度でプローブデータをサーバ60にアップロードする。その後、本フローは終了する。
以下、低頻度モードについて詳しく説明する。低頻度モードが有効にされている場合には、通常頻度モードに較べて通信モジュール50とサーバ60との間の地図情報に関する通信データ量が減少する。よって、回線の負荷を低減できるとともに、通信に係るコストを低減することができる。
低頻度区域とは、例えば、都市部の幹線道路など、自車両の周囲に数多くの別の他車両が存在し、サーバ60に対して多くの他車両から十分な量の地図情報がアップロードされうる環境にあるような区域である。このような区域では、他車両からの地図情報のアップロードが多量に行われるため、自車両のアップロード頻度を低減しても、地図情報の更新のための十分な情報量を確保することができる。
また、別の例では、例えば自動車専用道路など、交通標識や道路標示等のランドマーク63の変更頻度の比較的低い区域である。このような区域では、道路上および道路近傍のハードウェアとしてのランドマーク63の更新自体が低頻度であると予想されるため、自車両のアップロード頻度を低減しても、地図情報の更新のための十分な情報量を確保することができる。
さらに、低頻度モードにおいて、アップロードの頻度をゼロにすることもできる。アップロードの頻度がゼロである状態とは、すなわちサーバ60への地図情報のアップロードを実質的に禁止する状態であり、特に禁止モードと称する。つまり、低頻度モードは禁止モードを含む。
禁止モードが有効になる低頻度区域である禁止区域は、例えば、軍事施設や企業内施設等の機密性の高い施設や、サファリパークのような車両で走行可能な道路を有しつつも自動ステアリングによる操舵の対象として相応しくない施設における区域である。このような禁止区域では、車両からサーバ60への地図情報のアップロードが禁止され、サーバ60においても地図は生成されない。よって、車両制御のためのダウンロードも行われない。
低頻度モードが有効にされる所定条件について、上記した例では、自車両の位置が予め決められた所定の低頻度区域に存在しているか否か、を採用したが、別の条件を設定することもできる。
例えば、夜間において通常頻度モードから低頻度モードに移行しても良い。夜間は昼間に較べてカメラ10により交通標識や道路標示を認識することが困難になりがちであり、ランドマーク63の位置の決定の信頼性が昼間に較べて低下するため、サーバ60へのランドマーク63の位置情報のアップロードの頻度を低下させることが好ましい場合がある。なお、夜間やそれに準じた低照度の環境下に車両が置かれる時刻帯を予め設定しておき、その時刻帯においてはアップロードの頻度を低頻度モードとすると良い。また、季節が存在する地域においては、夜間として定義される時刻帯が季節により異なるため、季節に対応して夜間として定義する時刻帯を可変とすることが好ましい。例えば、白夜のある地域においては夜間の時刻帯が比較的短く、車両の周辺環境が極端に低照度になる機会が少ない。このような地域では、低頻度モードが有効になる時間も短くなる。
さらに、車両が走行する地域の気象条件に基づいて通常頻度モードから低頻度モードに移行しても良い。例えば豪雨や豪雪、濃霧、砂嵐などの際には交通標識や道路標示を認識することが困難になりがちであり、ランドマーク63の位置の決定の信頼性が晴天に較べて低下するため、サーバ60へのランドマーク63の位置情報のアップロードの頻度を低下させることが好ましい場合がある。なお、車両がどのような気象条件下にあるかを判断する方法として、例えば、カメラ10が撮像した画像を用いて道路面の反射率を計測したり、画像のコントラストに基づいた天候の判定を実施したりすることができる。また、公的な機関が公開する情報に基づいて、豪雨や豪雪、濃霧、砂嵐などの所定の気象条件を満たす地域をリアルタイムに低頻度区域に指定しても良い。
さらに、主プロセッサ40や画像プロセッサ20の使用年数に基づいて、アップロードの頻度を段階的に減少させるように構成しても良い。主プロセッサ40や画像プロセッサ20の性能は日々進化しており、より新しいプロセッサほど画像処理やアップロードに係る時間が短く、かつ高精度に行えると推察される。よって、プロセッサの使用年数が長くなるほど、地図情報のアップロードの頻度を少なくすると良い。逆に、使用年数が短いプロセッサに積極的に地図情報をアップロードさせることで、効率的に地図情報の収集を行うことができる。
(第2実施形態)
図5〜図7を参照して、通信モジュール50を介してサーバ60に送信されたプローブデータに基づいて地図を生成する際のフローの一例を説明する。
あるマップタイルに対応する地域を走行する車両があり、当該車両は地図システム100を構成しているとする。すなわち、車両に搭載されたカメラ10により車両の環境を表す少なくとも1つの画像が取得され、画像に含まれるランドマークのグローバル座標が算出されてサーバ60にアップロードされる。
図5に示すように、まずステップS200が実行される。ステップS200は、サーバ60を構成するサーバプロセッサ61が、プローブデータを取得するステップである。サーバプロセッサ61は、同一のマップタイル上を走行する複数の車両からプローブデータをそれぞれ取得する。すなわち、サーバプロセッサ61は、1つのランドマークに対して複数の座標データを取得することになる。
次に、ステップS201が実行される。ステップS201は、サーバプロセッサ61が各ランドマークに対して座標の分散を算出し、算出された分散が所定の閾値よりも大きいか否かを判定するステップである。分散は緯度、経度、高度のそれぞれの座標に対して計算され、それぞれが予め指定された閾値と比較される。サーバプロセッサ61は、図6に示すように、複数の車両から受信したプローブデータに基づいて各ランドマーク63の分散σ2を算出する。図6に示す例では、マップタイルに4つのランドマーク63a〜63dが存在し、各ランドマークに対して、σa 2、σb 2、σc 2、σd 2、を算出する。
ステップS201において、すべてのランドマーク63の座標の分散が所定の閾値以下の場合には本ステップはNO判定となり、ステップS202に進む。
ステップS202は、サーバプロセッサ61が、各ランドマーク63の座標を統計的に算出するステップである。各ランドマーク63の座標の分散が所定の閾値以下とは、ランドマーク63の座標がある程度の精度で検出できていることを示しており、後述のリファレンスマークを用いることなく各ランドマーク63の座標を統計的に算出しても、比較的高い精度で地図を生成できることを意味している。ステップS202では、複数の車両から受信したプローブデータを用いて、各ランドマーク63に対して、例えば平均を求める処理を行い、グローバル座標を算出する。そして、本フローは終了する。
一方、ステップS201において、少なくとも1つのランドマーク63の分散が所定の閾値より大きい場合には、YES判定となりステップS203に進む。ステップS203は、分散が所定の閾値よりも大きいランドマーク63について、高精度測位データが存在するか否かを判定するステップである。高精度測位データとは、例えばリアルタイムキネマティック(RTK)や精密単独測位(PPP)など、プローブデータとは異なる手法で測量された座標データである。以下、精密な測量によって確定された座標データをリファレンス座標と称する。また、リファレンス座標が付与されたランドマーク63をリファレンスマークと称する。
上記のように、ステップS203は、該当するランドマーク63にリファレンス座標が付与されているか否かを判定するステップである。ここで、例えば図6に示すランドマーク63bにリファレンス座標が存在すると仮定する(図7において、黒塗り三角マークで示す)。すなわち、ランドマーク63bがリファレンスマークである。リファレンスマークが存在する場合には、ステップS203はYES判定となり、ステップS204に進む。
ステップS204は、サーバプロセッサ61が、リファレンスマーク63bについて、カメラ10やセンサ30によりリアルタイムに測定された当該ランドマーク63bの座標を、リファレンス座標に一致させるステップである。本実施形態では、ランドマーク63bにリファレンス座標が存在すると仮定しているが、例えばリファレンス座標がXrefであるとする。リアルタイムに測定されたプローブデータ上のランドマーク63bの座標をXとすれば、座標Xを座標Xrefに一致させる。すなわち、Xref−Xだけ平行移動する。この操作により、複数のプローブデータに記録されたすべてのリファレンスマーク63bの座標はXrefとなる。一方、図7に示すように、ランドマーク63bを除くその他のランドマーク63a,63c,63dの座標もXref−Xだけ平行移動される。なお、ここでは便宜上、座標を1次元として表現しているが、実際には緯度、経度、高度の3次元で計算される。
ステップS204の後、ステップS202が実行される。リファレンスマーク63bの座標はリファレンス座標に一致する。また、その他のランドマーク63a,63c,63dの座標は、例えば平均を求める処理を行い、グローバル座標を算出する。そして、本フローは終了する。
ステップS203において、リファレンスマークが存在しない場合には、ステップS205に進む。ステップS205は、サーバプロセッサ61が、リファレンスマークが無い旨のフラグを立てるステップである。閾値より大きな分散が算出されたランドマーク63に対して、フラグを立てることにより、高精度測位が必要である可能性を可視化することができる。その後、本フローは終了する。
上記のようなフローを採用することにより、本実施形態における地図システム100は、GPSおよびプローブデータの蓄積だけでは座標の精度が得られないランドマーク63に対して高精度測位データをリファレンス座標として用いることにより、高精度測位データを有しないその他のランドマーク63に対しても高精度に座標の算出を行うことができる。ひいては、該当するランドマーク63が属するマップタイルの精度を向上させることができる。
(第3実施形態)
第2実施形態において記載したように、マップタイルに含まれるランドマーク63は、複数のプローブデータに基づいて座標が算出されるため、統計的ばらつきが存在する。本実施形態における地図システム100は、マップタイルごとに統計的ばらつきに基づいた精度レベルを付与する。そして、精度レベルに応じて、地図情報を利用するアプリケーションを制限する。図8を参照して、地図システム100の動作フローについて説明する。
図8に示すように、まず、ステップS300が実行される。ステップS300は、サーバ60を構成するサーバプロセッサ61が、プローブデータを取得するステップである。サーバプロセッサ61は、同一のマップタイル上を走行する複数の車両からプローブデータをそれぞれ取得する。すなわち、サーバプロセッサ61は、1つのランドマークに対して複数の座標データを取得することになる。
次に、ステップS301が実行される。ステップS301は、サーバプロセッサ61が各ランドマークに対して座標の分散を算出するステップである。分散は緯度、経度、高度のそれぞれの座標に対して計算される。サーバプロセッサ61は、図6に示すように、複数の車両から受信したプローブデータに基づいて各ランドマーク63の分散σ2を算出する。図6に示す例では、マップタイルに4つのランドマーク63a〜63dが存在し、各ランドマークに対して、σa 2、σb 2、σc 2、σd 2を算出する。
次に、ステップS302が実行される。ステップS302は、サーバプロセッサ61が計算された分散σa 2、σb 2、σc 2、σd 2の中央値pを算出し、所定の閾値T1と比較するステップである。ここで、分散の中央値を算出するのは一例であり、マップタイルに属するランドマークの座標のばらつき具合を統計的に指標化できるものであればよく、例えば平均値を用いても良い。中央値pが所定の閾値T1との間で0<p≦T1の関係を満たせばステップS302はYES判定となり、ステップS303に進む。
ステップS303は、ステップS302でYES判定とされたマップタイルに対して、精度レベル「High」を付与するステップである。精度レベル「High」が付与されるマップタイルは最も精度が高いと判定されたマップタイルである。
一方、ステップS302においてNO判定であるときにはステップS304に進む。ステップS304は、サーバプロセッサ61が中央値p(平均値でも良い)を算出し、所定の閾値T1、T2と比較するステップである。中央値pが所定の閾値T1および閾値T2との間でT1<p≦T2の関係を満たせばステップS304はYES判定となり、ステップS305に進む。
ステップS303は、ステップS302でYES判定とされたマップタイルに対して、精度レベル「Middle」を付与するステップである。
一方、ステップS304においてNO判定であるときにはステップS306に進む。ステップS306は、ステップS304でNO判定とされたマップタイルに対して、精度レベル「Low」を付与するステップである。精度レベル「Low」が付与されるマップタイルは最も精度が低いと判定されたマップタイルである。
マップタイルの精度レベルは「High」「Middle」「Low」の順で高い。精度レベルが高いほど車両の現在位置を精度良く決定することができ、より高度な運転支援を実現することができる。すなわち、精度レベルが高いマップタイルに対応する地域を走行中は、例えば自動運転などの高度運転支援に供することができる。一方で、精度レベルが低いマップタイルに対応する地域を走行中は、自動運転には供さないようにアプリケーションを制限する。これにより、高精度で得られたマップタイルを有効活用できるとともに、低精度のマップタイルが自動運転等のより安全性を要するアプリケーションに誤って供されないようにできる。
(第4実施形態)
自車両の位置を特定するにあたり、地図システム100は、GPS等の衛星による測位により自車両の大まかな位置を特定し、サーバ60からダウンロードされた地図情報と、車両によりリアルタイムに撮像された画像から算出されたランドマーク63の座標と、に基づいて詳細な自車両の位置を決定している。しかしながら、自車両がトンネル内や高層ビルの間にあって、衛星による位置特定が困難なシチュエーションが存在する。
本実施形態における地図システム100は、状態取得部としてのセンサ30に測位センサを含み、測位センサとして、例えば無線LANに供される電波強度を検出する電波検出器を採用することができる。本実施形態では、無線LANの基地局(アクセスポイント)から発せられる電波による測位が代替測位手段に相当する。無線LANの電波を発信する基地局のうち、基地局が設置されたグローバル座標が既知のものの電波を車両が受信する。これにより、基地局の座標と受信した電波の強度とに基づいて自車両の位置が推定される。図9を参照して、地図システム100の動作フローについて説明する。
図9に示すように、まずステップS400が実行される。ステップS400は、主プロセッサ40が、GPS衛星からの電波の受信強度と所定の閾値とを比較するステップである。閾値は、例えば、GPSによる測位とダウンロードして得られる地図情報とで自車両の位置が十分に特定できるときのGPSの電波強度が指定される。GPS衛星からの電波の受信強度がこの閾値よりも大きい場合には、本ステップはYES判定となり、ステップS401に進む。すなわち、代替測位手段として無線LAN電波の電波検出器は無効とされる。そして、ステップS402に進み、GPSによる測位とダウンロードして得られる地図情報とで自車両の位置を特定する。また、カメラ10により得られたランドマーク63等の地図情報をサーバ60にアップロードする。自車両の位置の特定後は、該自車両位置を自動ステアリング等の運転支援に利用する。
一方、ステップS400において、GPS衛星からの電波の受信強度がこの閾値以下の場合には、本ステップはNO判定となり、ステップS403に進む。すなわち、代替測位手段として無線LAN電波の電波検出器が有効とされる。そして、ステップS404に進む。
ステップS404は、主プロセッサ40が無線LANの電波を発している基地局のセキュリティレベルを判定するステップである。セキュリティレベルとは、当該基地局の発する情報の信頼の指標である。セキュリティレベルが高ければ、主プロセッサ40は当該基地局が有する設置場所の座標の値を信頼し、基地局のグローバル座標と、車両に搭載された電波検出器が受信する電波の受信強度、およびSfM等による自車両の位置予測に基づいて自車両の現在位置を特定する。なお、セキュリティレベルの高低については任意に設定できるが、例えば公的機関や公共インフラの事業者が設けた基地局はセキュリティレベルが高いと推察できる。一方、個人が設けたような基地局はセキュリティレベルが低いと推察できる。
ステップS404において、基地局のセキュリティレベル、ひいては代替測位手段のセキュリティレベルが低いと判断されると、本ステップはNO判定となり、ステップS405に進む。ステップS405では、カメラ10により得られたランドマーク63等の地図情報をサーバ60にアップロードする。なお、本実施形態では、GPSの受信強度が十分に確保できていたり、セキュリティレベルの高い代替測位手段による測位が実現できている場合には、ステップS402の通り、代替測位手段による測位の情報は自車両の位置の特定に供されるが、セキュリティレベルが低い代替測位手段による測位しか実現できない場合には自車両の位置の特定は行わず、測位の情報は地図情報をサーバ60にアップロードすることのみに供される。
なお、代替測位手段のセキュリティレベルの高低を判定するステップについては任意であり、必ずしも実施しなくても良い。すなわち、図9におけるステップS404は実施されなくても良い。このような態様では、衛星による測位が十分に行えず、代替測位手段により測位する場合には、測位の情報は地図情報をサーバ60にアップロードすることのみに供されるようにすると良い。
ところで、代替測位手段について、設置位置の座標が既知の無線LAN基地局から発せられる電波による測位に限定されず、設置位置の座標が既知の近距離無線通信の基地局から発せられる電波による測位、IMESによる測位、地磁気による測位などを採用することができる。
なお、無線LANや近距離無線通信、IMESの電波を受信する電波検出器や、地磁気を検出する磁気検出器は必ずしも車両に固定されている必要はない。例えば、スマートフォンのようなモバイル機器に上記したような検出器が搭載されており、モバイル機器が地図システム100とリンクされている場合には、モバイル機器により得られた測位情報を地図システム100に用いることができる。
(第5実施形態)
自車両の位置を特定するにあたり、地図システム100は、GPS等の衛星による測位により自車両の大まかな位置を特定し、サーバ60からダウンロードされた地図情報と、車両によりリアルタイムに撮像された画像から算出されたランドマーク63の座標と、に基づいて詳細な自車両の位置を決定している。しかしながら、サーバ60に地図情報が存在しなかったり、地図情報が古く現状が正確に反映されていなかったりといったシチュエーションが存在する。
本実施形態における地図システム100は、マップタイルごとに「地図無し」「地図は存在するが古い」「最新の地図が存在する」の3モードが設定され、「地図無し」「地図は存在するが古い」の2モードに対してマップタイルに更新フラグを設定するものである。更新フラグが設定された地域に対応するマップタイルは優先的に地図生成あるいは更新がなされる。図10を参照して、地図システム100の動作フローについて説明する。
図10に示すように、まずステップS500が実行される。ステップS500は、主プロセッサ40がGPS等により自車両の大まかな位置を特定するステップである。このステップにより、自車両が存在する地域が把握される。
次に、ステップS501が実行される。ステップS501は、主プロセッサ40が、自車両が存在する地域に対応するマップタイルの地図情報がサーバ60に格納されているか否かを判定するステップである。地図情報がマップタイルとして格納されていない場合には本ステップはNO判定となり、ステップS502に進む。
ステップS502は、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルを「地図無し」モードに設定するステップである。その後、ステップS503に進む。
ステップS503は、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルに対して更新フラグをONに設定するステップである。更新フラグがONに設定された地域に対応するマップタイルは優先的に地図生成がなされる。ステップS503を経て本フローは終了する。
ステップS501において、自車両が存在する地域に対応するマップタイルに地図情報が存在する場合には、本ステップはYES判定となり、ステップS504に進む。
ステップS504は、マップタイルに記録された地図情報に対して、最新の情報が公的に公開されているか否かを判定するステップである。公的な公開とは、日本国の場合であれば例えば国土交通省国土地理院が公開する地図情報である。ここで、サーバ60に格納された地図情報におけるランドマークの座標と、国土地理院が公開する地図情報におけるランドマークの座標との差異が所定距離(例えば10cm)以上である場合に、最新の情報が公的に公開されていると判定する。また、一般に公にされていなくとも、国土地理院が所有する定点測量計や高精度なGPS測位等により、サーバ60に格納された地図情報におけるランドマークの座標と、測位されたランドマークの座標との差異が所定距離(例えば10cm)以上である場合に、最新の情報が公的に公開されていると判定する。このような場合には本ステップはYES判定となり、ステップS505に進む。
ステップS505は、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルを「地図は存在するが古い」モードに設定するステップである。その後、ステップS503に進む。
ステップS503は、上記のとおり、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルに対して更新フラグをONに設定するステップである。更新フラグがONに設定された地域に対応するマップタイルは優先的に地図更新がなされる。ステップS503を経て本フローは終了する。
ステップS504において、マップタイルに記録された地図情報に対して最新の情報が公的に公開されていないと判定された場合には、本ステップはNO判定となりステップS506に進む。
ステップS506は、主プロセッサ40が、サーバ60から対応するマップタイルの地図情報をダウンロードするステップである。
次に、ステップS507が実行される。ステップS507は、主プロセッサ40が、サーバ60からダウンロードされた地図情報に含まれるランドマーク63の座標と、リアルタイムに撮像された画像に基づいて算出されたランドマーク63の座標と、を照合して自車両の位置を特定(ローカライズ)するステップである。
次に、ステップS508が実行される。ステップS508は、主プロセッサ40が、自車両の座標のずれを検出したか否かを判定するステップである。
サーバ60からダウンロードされた地図情報に含まれるランドマーク63の座標と、カメラ10によりリアルタイムに撮像された画像から算出されたランドマーク63の自車位置に対する相対座標と、に基づいて特定された自車両の位置を第1の位置と称する。一方、サーバ60に格納された地図情報に依存しないGPSの電波を用いて特定された自車両の位置を第2の位置と称する。なお、リアルタイムにランドマーク63の座標の算出するための手段は、カメラ10によるものに限定されず、例えばレーダーやLIDARを利用しても良い。また、地図情報に依存せず自車両の位置を特定する手段としては、GPSに限定されず、例えばオドメトリやデッドレコニング、無線LANや近距離無線通信、IMESの電波を利用した位置特定、地磁気による位置特定を採用しても良い。
自車両の座標のずれの検出とは、例えば、第1の位置と第2の位置との乖離が所定距離以上であることを検出したことを示す。あるいは、自車両の座標のずれの検出とは、第1の位置と第2の位置との乖離が所定距離以上である状態が所定回数生じたことを示す。
また、自車両の座標ずれ検出の別の例は、地図情報を用いて自動運転や車線維持などの運転支援が実行されている際に、ドライバの操舵介入が所定の量あるいは頻度で発生したことを以って、自車両の座標のずれが検出されたとしても良い。
ステップS508において自車両の位置ずれが検出された場合には、本ステップはYES判定となりステップS505に進む。ステップS505は、上記の通り、該当する地域に対応するマップタイルを「地図は存在するが古い」モードに設定するステップであり、その後、ステップS503を経て更新フラグがONに設定される。自車両の位置ずれが検出される状態とは、例えば自然災害等により公的に情報の更新がされる前に地形やランドマーク63の位置が変化してしまったようなシチュエーションが想定される。ステップS508を経て更新フラグをONに設定することで、公的な地図更新に先立ってサーバ60に格納された地図情報の更新を促進することができる。
一方、自車両の位置のずれが検出されない場合にはステップS508はNO判定となり、ステップS509に進む。
ステップS509は、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルを「最新の地図が存在する」モードに設定するステップである。その後、ステップS510に進む。
ステップS510は、上記のとおり、主プロセッサ40が、該当する地域に対応するマップタイルに対して更新フラグをOFFに設定するステップである。更新フラグがOFFに設定された地域に対応するマップタイルは直近の地図更新は不要であり、運転支援などに積極的に活用することができる。ステップS510を経て本フローは終了する。
以上記載したように、本実施形態における地図システム100においては、ステップS501、ステップS504およびステップS508に係る所定の条件に基づいて、自車両が存在する地域に対応するマップタイルに対して、「地図無し」「地図は存在するが古い」「最新の地図が存在する」の3モードのいずれかが設定され、各モードに対応して更新フラグが設定される。具体的には、「地図無し」および「地図は存在するが古い」のモードが付与されたマップタイルに対しては更新フラグがONに設定されることにより、マップタイルに含まれる地図情報の更新あるいは生成を優先的に実行させることができる。
この地図システム100は、予め決められた所定の条件に基づいて更新が必要である旨の更新フラグが設定されるので、地図情報の更新の要否を明確に区別することができる。そして、自然災害等により突発的にランドマーク63の座標が変化した場合などに特に効果的である。
(第6実施形態)
自車両の位置を特定するにあたり、地図システム100は、GPS等の衛星による測位により自車両の大まかな位置を特定し、サーバ60からダウンロードされた地図情報と、車両によりリアルタイムに撮像された画像から算出されたランドマーク63の座標と、に基づいて詳細な自車両の位置を決定している。しかしながら、自車両の周辺にランドマーク63の撮像を阻害する障害物が存在し、ランドマーク63の座標が特定できないシチュエーションが存在する。
本実施形態における地図システム100は、自車両が上記のようなシチュエーションにあるとき、撮像装置であるカメラ10の画角内に、障害物に遮られないランドマーク63が少なくとも1つ存在するように自車両の挙動を制御する。図11を参照して、本実施形態における地図システム100の動作フローについて説明する。なお、本実施形態では、車両の前方の環境を撮像するために設置されたカメラ10を例に説明する。カメラ10は前方を監視するものの他、後方監視、側方監視を担うカメラ10が共存していても良い。また、ランドマーク63を遮る障害物として先行車を例に説明するが、障害物としては、後方監視用のカメラ10に対応した後続車であることもあるし、側方監視用のカメラ10に対応した並走車であることもある。また、車両以外のオブジェクトである場合もある。
図11に示すように、まずステップS600が実行される。ステップS600は、主プロセッサ40がGPS等により自車両の大まかな位置を特定するステップである。このステップにより、自車両が存在する地域が把握される。
次に、ステップS601が実行される。ステップS601は、主プロセッサ40が、カメラ10に撮像される画像に基づいて先行車を検出するステップである。
次に、ステップS602が実行される。ステップS602は、主プロセッサ40が先行車の車両種別を取得するステップである。車両種別は、メモリ80あるいはサーバ60に格納されたデータベースに記録されており、画像から得られる対象のシルエット情報等から種別を決定する。
次に、ステップS603が実行される。ステップS603は、主プロセッサ40が、車両種別に基づいて障害物となる先行車の車高を取得するステップである。車高の情報は車両種別に紐付いており、先行車の車両種別に対応した車高が取得される。なお、車高の情報は撮像された画像から算出されてもよい。
次に、ステップS604が実行される。ステップS604は、主プロセッサ40が、障害物としての先行車が背高車か否かを判定するステップである。先行車が背高車か否かの判定は、例えばステップS603において取得した車高と所定の閾値とを比較して、車高が閾値よりも高い場合に先行車が背高車であると判定する。あるいは別の例では、背高車に分類される車両種別を予め決めておき、先行車が該当する車両種別である場合に背高車であると判定しても良い。車両種別に応じて背高車か否かを判定する場合には、車高を取得するステップS603を省略することができる。なお、背高車として判定される車両種別としては、例えばトラックや消防車等が該当する。ステップS604において、先行車が背高車であると判定される場合にはステップS605に進む。
ステップS605は、主プロセッサ40がアクチュエータ90を制御して自車両と障害物との相対位置を変更し、カメラ10によりランドマーク63が認識可能にするステップである。具体的には、例えばアクチュエータ90は制動装置であり、主プロセッサ40は制動装置を駆動して自車両のブレーキングを実施する。これにより、自車両と障害物たる先行車との車間距離が大きくなり、画角に対して先行車が占める面積は小さくなる。このため、画角内に標識等のランドマーク63が写り込みやすい状況を実現できるので、主プロセッサ40がランドマーク63を認識できるようになり、ランドマーク63の座標を算出することができる。先行車が背高車である場合には、信号機や行き先表示などが先行車によって遮られてカメラ10が認識できない状況が発生しやすいので、ステップS605を経ることによってランドマーク63の検出頻度を向上させることができる。これに伴い、ランドマーク63の座標の画像からの算出頻度も向上するので、より長時間にわたって地図情報が有するランドマーク63の座標との照合が可能となり、自車両の位置をより正確に特定することができる。
なお、主プロセッサ40が制御するアクチュエータ90は制動装置に限定されるものではなく、例えばステアリングであっても良い。具体的には、先行車が背高車であった場合において、主プロセッサ40はステアリングを制御して車線変更し、自車両の前方に障害物となる先行車が存在しない状況を作り出しても良い。
ステップS605の後、本フローは終了する。また、ステップS604において、先行車が背高車ではないと判定された場合も同様に本フローを終了する。
以上の構成を採用することにより、本実施形態における地図システム100は、ランドマーク63の座標の画像からの算出頻度も向上するので、より長時間にわたって地図情報が有するランドマーク63の座標との照合が可能となり、自車両の位置をより正確に特定することができる。
(第7実施形態)
第6実施形態では、障害物たる先行車の車両種別を取得して、その車両種別に基づいて車両を制御する例について説明した。これに対して、本実施形態における地図システム100は、リアルタイムに計測された車間距離と画像認識により算出された車高とに基づいて、ランドマーク63が認識可能なように車両を制御するものである。図12〜図14を参照して、本実施形態における地図システム100の動作フローについて説明する。なお、第6実施形態と同様に、本実施形態でも車両の前方の環境を撮像するために設置されたカメラ10を例に説明する。カメラ10は前方を監視するものの他、後方監視、側方監視を担うカメラ10が共存していても良い。また、ランドマーク63を遮る障害物として先行車を例に説明するが、障害物としては、後方監視用のカメラ10に対応した後続車であることもあるし、側方監視用のカメラ10に対応した並走車であることもある。また、車両以外のオブジェクトである場合もある。
図12に示すように、まずステップS700が実行される。ステップS700は、主プロセッサ40がGPS等により自車両の大まかな位置を特定するステップである。このステップにより、自車両が存在する地域が把握される。
次に、ステップS701が実行される。ステップS701は、主プロセッサ40が、カメラ10により撮像される画像に基づいて先行車を検出するステップである。
次に、ステップS702が実行される。ステップS702は、主プロセッサ40が、先行車までの距離、すなわち車間距離を計測するステップである。車間距離は、レーダーやLIDAR、あるいはそれらと撮像装置とのフュージョン構成により計測が可能である。
次に、ステップS703が実行される。ステップS703は、主プロセッサ40が、先行車の高さを計測するステップである。先行車の高さは、ステップS702で取得された先行車までの距離と、カメラ10により撮像される画像において、映された先行車の上端の画像上のV方向座標と、に基づいて一意に計測することができる。
次に、ステップS704が実行される。ステップS704は、主プロセッサ40が、画角内に存在すると想定されるランドマーク63の座標を地図情報から取得するステップである。主プロセッサ40は、ステップS700において特定された大まかな自車両の位置から車両が存在する地域を特定し、該地域に対応するマップタイルを読み込む。そして、マップタイルに記録されたランドマーク63の座標を取得する。ここで、ランドマーク63とは白線を含むものであるが、先行車の体格が大きいことによりカメラ10で撮像が困難になる対象であるとより効果的であり、信号機や行き先表示、制限速度標識などが好適である。ランドマーク63の座標とは、例えばランドマーク63が車両の進行方向に直交する矩形板状であるとすれば、矩形をなす四隅の座標情報を含む。
次に、ステップS705が実行される。ステップS705は、先行車が画角内に存在するはずのランドマーク63を遮る位置に存在するか否かを判定するステップである。図13に示すように、ステップS702により取得された車間距離と、ステップS703により取得された先行車の車高と、自車両に搭載されたカメラ10の画角とによってカメラ10の死角となる部分(図13においてハッチングを施した部分)が決まる。この死角の部分にランドマーク63を構成する座標の少なくとも一部が含まれる場合には、先行車がランドマーク63を遮ると判定し、本ステップはYES判定となる。図13に示す例は、ランドマーク63が先行車の作り出す死角にすべて含まれており、本ステップがYES判定となる一例である。
ステップS705がYES判定である場合にはステップS706に進む。ステップS706は、主プロセッサ40がアクチュエータ90を制御して自車両と障害物との相対位置を変更し、カメラ10によりランドマーク63が認識可能にするステップである。具体的には、例えばアクチュエータ90は制動装置であり、主プロセッサ40は制動装置を駆動して自車両のブレーキングを実施する。
図14に示すように、主プロセッサ40は、この制動によって、ランドマーク63が死角の部分からすべて外れるように自車両と先行車との車間距離を大きくする。具体的には、先行車の上端より上の部分に、ランドマーク63の上端から下端まですべてが視認できるような車間距離になるまで自車両を制動する。なお、後述するが、ランドマーク63の一部が視認できるまで制動するような構成も可能である。これにより、主プロセッサ40がランドマーク63を認識できるようになり、ランドマーク63の座標を画像に基づいて算出することができる。
本実施形態における地図システム100では、車両種別を取得することなく、ランドマーク63が認識しやすくすることができる。これは、急な割り込み等により先行車の車両種別の取得のための十分な時間が確保できなかったり、車両以外の障害物が急に車両前方に飛び込んできた場合に特に有効である。
なお、主プロセッサ40が制御するアクチュエータ90は制動装置に限定されるものではなく、例えばステアリングであっても良い。具体的には、先行車が背高車であった場合において、主プロセッサ40はステアリングを制御して車線変更し、自車両の前方に障害物となる先行車が存在しない状況を作り出しても良い。
また、本実施形態では、先行車の死角にランドマーク63の一部でも含まれていれば、先行車がランドマーク63を遮っていると判定する例を説明したが、ランドマーク63の一部でも死角外で視認できる場合には先行車がランドマーク63を遮っていないと判定しても良い。あるいは、ランドマーク63の種類によってこれらの判定基準を可変にしても良い。
(第8実施形態)
ランドマーク63の座標が特定しにくくなるシチュエーションは、自車両の周辺にランドマーク63の撮像を阻害する障害物が存在する場合だけとは限らない。例えば、トンネル内や夜間など、車両の周辺環境が比較的暗い場合にも、カメラ10によるランドマーク63の検出および座標の算出が困難となる場合がある。
本実施形態における地図システム100は、車両の周辺環境が比較的暗所な場合でもランドマーク63の検出と座標の算出を容易にし、ひいては自車両の位置をより正確に特定するものである。
図15を参照して、本実施形態における地図システム100の動作フローについて説明する。なお、本実施形態では、車両の前方に照明光を照射するために設置されたヘッドライトの制御を例に説明する。ライトは車両前方に照射するものの他、車両後方、車両側方を照射するライトが共存していても良く、制御の対象も車両後方、車両側方を照射するライトであって良い。
図15に示すように、まずステップS800が実行される。ステップS800は、地図情報を利用するアプリケーションを起動中か否かが判定されるステップである。地図情報を利用するアプリケーションとは、例えば、画像に基づいて算出されたランドマーク63の座標と地図情報とを照合して自車両の位置を特定することによって実現される自動ステアリングなどである。地図情報を利用するアプリケーションが実行されていなければ本ステップはNO判定となり、本フローは終了する。該アプリケーションが実行されていれば、本ステップはYES判定となりステップS801に進む。
ステップS801は、車両におけるヘッドライトの制御がオートモードに設定されているか否かを判定するステップである。オートモードに設定されているとは、ヘッドライトの上下あるいは左右などの配光制御が自動に設定されている状態であり、例えばアクティブハイビームシステム(AHS)がその例である。ヘッドライトの制御がマニュアル(手動)モードである場合には本ステップはNO判定となり本フローは終了する。一方、ヘッドライトの制御がオートモードである場合には、本ステップはYES判定となりステップS802に進む。
ステップS802は、主プロセッサ40が、車両の周辺環境の明るさが所定の閾値以下であるか否かを判定するステップである。具体的には、車両に搭載された照度センサにより検出された照度と所定の閾値とを比較する。照度が閾値より大きい場合には、必ずしもヘッドライトを点灯する必要がないとの判定により、本ステップはNO判定となって本フローは終了する。一方、照度が閾値以下の場合には、ステップS803に進んでヘッドライトが点灯される。
次に、ステップS804が実行される。ステップS804は、主プロセッサ40が自車両に対する先行車あるいは対向車が存在するか否かを判定するステップである。先行車の存在は、例えばカメラ10により撮像された画像からリアライトの光を検出してその存在を認識する。あるいはカメラ10とレーダーやLIDARとによるフュージョン構成により先行車の存在を認識する。また、対向車の存在は、例えばカメラ10により撮像された画像からヘッドライトの光を検出してその存在を認識する。あるいはカメラ10とレーダーやLIDARとによるフュージョン構成により対向車の存在を認識する。
ステップS804において対向車あるいは先行車の存在が検出されると本ステップはYES判定となりステップS805に進む。ステップS805はヘッドライトの照射モードをロービームに設定するステップである。ロービームのモードでは、先行車あるいは対向車のドライバの眩光を抑制するために、少なくとも先行車あるいは対向車が存在する方向において、直接的に該当する車両に照明光を照射しないようにヘッドライトの照射方向を調整する。
その後、ステップS806が実行される。ステップS806は、主プロセッサ40が、ランドマーク63の存在が想定される方向に、選択的に照明光を照射するようにヘッドライトの配光を制御するステップである。一例として、図16に示すように、左側通行の対向二車線道路において、先行車と対向車とが存在する状況を想定する。このとき、主プロセッサ40は、アクチュエータ90たるヘッドライトを制御して、対向車が走行する対向車線側に照明光が過剰に照射されないように、車両右側のヘッドライトをロービームで維持する。一方、先行車に照明光が過剰に照射されないように、車両左側のヘッドライトの一部光源の配光を制御して、先行車周辺への照射についてはロービームで維持するとともに、標識等のランドマーク63が存在するであろう車線外、すなわち自車両が走行する車線側の路肩を含む車線外、にヘッドライトの照明光が照射されるように、車両左側のヘッドライトの一部光源の配光を制御してハイビームとする。これにより、対向車あるいは先行車のドライバの眩光を抑制しつつ、ランドマーク63の存在が想定される方向にヘッドライトの照明光を照射することができる。これに伴い、ランドマーク63の検出頻度が高くなり、ランドマーク63の座標の画像からの算出頻度も向上するので、より長時間にわたって地図情報が有するランドマーク63の座標との照合が可能となり、自車両の位置をより正確に特定することができる。
ステップS804において対向車あるいは先行車の存在が検出されないと本ステップはNO判定となりステップS807に進む。ステップS807はヘッドライトの照射モードをハイビームに設定するステップである。ハイビームのモードでは、自車両の周辺に先行車および対向車が存在しないので、遠方を視認できるようにヘッドライトの照射方向を調整する。
その後、ステップS808が実行される。ステップS808は、主プロセッサ40が、ランドマーク63の存在が想定される方向に、選択的に照明光を照射するようにヘッドライトの配光を制御するステップである。本ステップでは、ヘッドライトの配光に、例えばワイド配光や遠方配光を採用することができる。ワイド配光とは、従来のハイビームあるいはハイビームにおける左右方向の照射範囲に較べてより広範囲を照らす配光モードである。これにより、路肩を含めた車線外のランドマーク63をより容易に検出することができる。また、遠方配光とは、高速走行時において、従来のハイビームよりも遠方に照明光を集中させてより遠方まで照明光を届かせる配光モードである。これにより、高速走行時であっても、行き先標識等のランドマーク63をより容易に検出することができる。
本実施形態における地図システム100においては、ライト制御がオートモードであることを条件の一つとしてランドマーク63が検出しやすい配光を実施する例について説明したが、ライト制御が自動ではなく、ドライバの操作に依存するモードにおいて、ヘッドライトがロービームに設定され、且つ、車両周辺の環境の照度が所定の閾値以下である場合には、地図システム100がドライバに対して、ヘッドライトの配光をハイビームに変更する旨の提案を行うようにしても良い。配光の変更の提案は、例えばHMI70にその旨表示す、あるいは音声で伝達する等の方法を採用できる。
(第9実施形態)
地図情報のサーバ60からのダウンロードは、サーバ60と車両との間の限られた通信帯域の中で実行される必要があり、効率的な通信が要求される。本実施形態では、地図情報のダウンロードに係り、効率的に、漏れなくマップタイルのダウンロードを実現できる地図システム100について説明する。
この地図システム100は、車両が向かうべき目的地の設定の有無により、異なるフローでマップタイルのダウンロードを実現する。以下、目的地が設定されていない場合と、目的地が設定されている場合とで、それぞれ説明する。
<目的地が設定されていない場合>
図17および図18を参照して具体的なフローについて説明する。図17に示すように、まず、ステップS900が実行される。ステップS900は、ステップS900は、主プロセッサ40がGPS等により自車両の大まかな位置を特定するステップである。このステップにより、自車両が存在する地域が把握される。
次に、ステップS901が実行される。ステップS901は、主プロセッサ40が、自車両が存在する地域に対応するマップタイルをダウンロードするステップである。以降、自車両が存在する地域に対応するマップタイルを特に第1タイルと称する。図18にマップタイルの一例を示す。図18では80枚のマップタイルが示されている。サーバ60に格納されたマップタイルにはそれぞれ固有のIDが付与されているが、本実施形態では、便宜的に、25枚のマップタイルにa〜yの通し符号を付与している。ここで、ステップS900において特定された自車両の大まかな位置が図18に示す菱形であるとすれば、マップタイルmが第1タイルに相当する。
次に、ステップS902が実行される。ステップS902は、主プロセッサ40が、第1タイルをサブタイルに分割するステップである。主プロセッサ40は、図18に示すように、第1タイルであるマップタイルmを4つの方形領域に分割して以降の処理を実行するように設定する。
次に、ステップS903が実行される。ステップS903は、主プロセッサ40が、複数のサブタイルの中から自車両が属するサブタイルを特定するステップである。図18に示す例では、分割されたマップタイルmのなかで、自車両は右上のサブタイルに属している。
次に、ステップS904が実行される。ステップS904は、自車両が属するサブタイルに隣接するマップタイルをダウンロード対象に指定するステップである。図18に示す例では、第1タイルはマップタイルmであり、自車両が属するサブタイルは右上に位置するサブタイルであるから、ステップS904においてダウンロード対象に指定されるマップタイルは、マップタイルhと、マップタイルiと、マップタイルnの3つである。なお、サブタイルに隣接するマップタイルとは、車両がマップタイルを跨いで移動する際に、次に移動することが可能なマップタイルの候補に相当する。
次に、ステップS905が実行される。ステップS905は、ダウンロード対象に指定され、且つ、メモリ80にキャッシュされていないマップタイルをダウンロードするステップである。本実施形態では、上記の通り、マップタイルh、マップタイルiおよびマップタイルnがダウンロード対象であるが、これらのうち、過去にダウンロードされメモリ80に格納されているものが存在する場合には、該当するマップタイルはダウンロードしない。
次に、ステップS906が実行される。ステップS906は、ダウンロードしたマップタイルをメモリ80にキャッシュするステップである。キャッシュされたマップタイルは、該当するデータがメモリ80に残存している限り、ダウンロードすることなく利用することができる。
次に、ステップS907が実行される。ステップS907は、自車両が第1タイルとは異なる第2タイルに移動したか否かを判定するステップである。例えば、車両がマップタイルmからマップタイルiに移動したとすると、本ステップはYES判定となる。この例では、マップタイルiが第2タイルに相当する。なお、車両が第1タイルに引き続き存在する場合には、ステップS907の処理を継続する。本ステップがYES判定になるとステップS908に進む。
ステップS908は、第2タイル周辺のマップタイルをダウンロード対象に指定するステップである。車両がマップタイルmからマップタイルiに移動したとすると、第2タイルはマップタイルiであり、ダウンロード対象に指定されるマップタイルは、マップタイルc、マップタイルd、マップタイルe、マップタイルh、マップタイルj、マップタイルm、マップタイルn、および、マップタイルoである。
次に、ステップS909が実行される。ステップS909は、ステップS905は、ダウンロード対象に指定され、且つ、メモリ80にキャッシュされていないマップタイルをダウンロードするステップである。本実施形態では、上記の通り、マップタイルc、マップタイルd、マップタイルe、マップタイルh、マップタイルj、マップタイルm、マップタイルn、および、マップタイルoの8つのマップタイルがダウンロード対象であるが、マップタイルh、マップタイルm、および、マップタイルnは以前のステップにおいてダウンロードされキャッシュされたマップタイルであるから、ダウンロードされない。すなわち、ステップS909においてダウンロードされるマップタイルは実質的に5つである。そして、第1タイルが設定されてから連続して走行している限り、あらゆるシチュエーションにおいて、第2タイルに移動後にダウンロードされるマップタイルは最大で5つとなる。すなわち、自車両が属するマップタイルに対して周辺のすべてのタイルを改めてダウンロードしなくとも、多くとも5つのマップタイルのダウンロードを行えば、次に自車両が移動すると想定されるマップタイルの情報を確実に取得することができる。
次に、ステップS910が実行される。ステップS910は、ダウンロードしたマップタイルをメモリ30にキャッシュするステップである。キャッシュされたマップタイルは、該当するデータがメモリ80に残存している限り、ダウンロードすることなく利用することができる。
次に、ステップS911が実行される。ステップS910が、主プロセッサ40が、地図情報を必要とするアプリケーションが実行されているか否かを判定するステップである。地図情報を必要とするアプリケーションとは、地図活用に係るアプリケーションであり、例えば自車両の位置を特定しながらの自動ステアリング制御等である。地図情報が必要なアプリケーションが起動中は、引き続き車両が進行する先でのマップタイルのダウンロードが必要であり、ステップS907からステップS911のフローを繰り返す。すなわち、移動先のマップタイル周辺のマップタイルをダウンロード候補とし、キャッシュされていないマップタイルのダウンロードが継続的に実行される。一方、地図情報を活用するアプリケーションが停止され、ステップS911の実行時点でアプリケーションが起動していなければ、本フローは終了する。
上記例では、第1タイルにおいて最初に所在したサブタイルから別のサブタイルに移動することなく直接第2タイルに移動した例を説明したが、別の例についても簡単に説明する。
例えば、マップタイルmを第1タイルとし、右上のサブタイルに存在した車両が、同じ第1タイルのうち右下のサブタイルに移動したと仮定する。この場合、ステップS904において、ダウンロード対象とされるマップタイルは、車両が右上のサブタイルに所在する時点ではマップタイルh、マップタイルiおよびマップタイルnであり、右下のサブタイルに移動した時点でマップタイルn、マップタイルrおよびマップタイルsとなる。その後車両がマップタイルrに移動したとすれば、ステップS909においてダウンロードされるマップタイルは、マップタイルl、マップタイルq、マップタイルv、マップタイルw、および、マップタイルxの5つとなる。
上記したように、本実施形態における地図システム100を採用することにより、車両が走行すると想定される地域に対応するマップタイルを、最低限のダウンロード数で網羅的にダウンロードすることができる。
<目的地が設定されている場合>
次いで、目的地が設定されている場合のフローについて、図19および図20を参照して具体的に説明する。
図19に示すように、まず、ステップS920が実行される。ステップS920は、主プロセッサ40がGPS等により自車両の大まかな位置を特定するステップである。このステップにより、自車両が存在する地域が把握される。図20に示す例では、自車両の位置を点A(黒塗りの菱形)で示している。
次に、ステップS921が実行される。ステップS921は、設定された目的地のグローバル座標を取得するステップである。目的地は、ユーザである運転者の能動的な指示のほか、外部の指示系統からの自動設定その他の手段により設定され得る。また、車両に搭載されたカーナビゲーションシステムでの操作のほか、モバイル通信機器により設定された目的地を地図システムが受信することにより目的地が設定されても良い。図20に示す例では、目的地を点B(白抜きの菱形)で示している。
次に、ステップS922が実行される。ステップS922は、ステップS920により特定された自車両の位置と、ステップS921により取得された目的地の座標とに基づいて主経路Lを算出するステップである。主経路Lとは、指定された条件を満たすように、自車両が現在位置から目的地まで移動するために推奨される走行ルートである。図20に示す例では、現在位置Aと目的地Bとを結ぶ実線として示している。
次に、ステップS923が実行される。ステップS923は、分岐路Rを算出するステップである。分岐路Rとは、主経路Lに接続された路線であり、車両が主経路Lを離脱して走行する可能性が有る経路である。本実施形態では、分岐路Rが、主経路Lから直接分岐する第1分岐路R1と、主経路Lとは直接接続されないが第1分岐路R1から分岐する第2分岐路R2と、を含んでいる。
次に、ステップS924が実行される。ステップS924は、主経路Lおよび分岐路Rが属するマップタイルをダウンロード対象に指定するステップである。主経路Lが属するマップタイルはすべてがダウンロード対象となる。一方、分岐路Rが属するマップタイルについては、分岐路Rが属するマップタイルであって、主経路Lが属するマップタイルから連続する2タイルがダウンロード対象として指定される。なお、分岐路Rに係るマップタイルについては、主経路Lが属するマップタイルから連続するタイル数は限定されるものではなく、本実施形態における2タイルという数は一つの例である。図20に示す例では、ダウンロード対象となるマップタイルにハッチングを施している。
次に、ステップS925が実行される。ステップS925は、ダウンロード対象に指定され、且つ、メモリ80にキャッシュされていないマップタイルをダウンロードするステップである。過去にダウンロードされメモリ80に格納されているものが存在する場合には、該当するマップタイルはダウンロードしない。
次に、ステップS926が実行される。ステップS926は、ダウンロードしたマップタイルをメモリ80にキャッシュするステップである。キャッシュされたマップタイルは、該当するデータがメモリ80に残存している限り、ダウンロードすることなく利用することができる。
以上の工程を経ることにより、現在位置から目的地までの主経路と、主経路を離脱して走行する可能性のある分岐路について、ダウンロードするべきマップタイルを適切に選定することができる。
なお、ダウンロード対象に指定された複数のマップタイルにおいて、ダウンロードの優先度を設定することが好ましい。例えば、車両が属するマップタイルに近いマップタイルほどダウンロードの優先度を高く設定すると良い。これにより、マップタイルの到達順に沿ってマップタイルがダウンロードされるので、通信帯域を有効活用しつつ、マップタイルを漏れなく、
効率的にダウンロードすることができる。
また、主経路Lが属するマップタイルを、分岐路Rが属するマップタイルに較べて優先的にダウンロードすると良い。車両は分岐路Rよりも主経路Lを走行する確率が高いため、通信帯域を有効活用しつつ、マップタイルを効率的にダウンロードすることができる。
さらに、主経路Lおよび分岐路Rを含む、車両の走行が予測される経路のうち、車両とサーバ60との通信状態が悪化することが予め知られている地域が存在する場合には、対応するマップタイルを優先的にダウンロードすると良い。例えば通信状態が悪化する山間部を走行することが予想されるときには、通信状態が良好な都市部を走行中に、山間部に対応するマップタイルを予めダウンロードしておくと良い。
上記、ダウンロードするマップタイルに優先度を設けるいくつかの例について説明したが、これらの例に限定されない。また、これらの条件を適宜組み合わせて優先度を設定しても良い。
また、ダウンロード対象に指定するマップタイルについて、主経路Lおよび分岐路Rの両方について対応するマップタイルをダウンロードする例を説明したが、主経路Lのみに対応したマップタイルをダウンロードするようなシステムを採用しても良い。
(その他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
なお、地図システムが提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、地図システムがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。