以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[技術思想]
まず、以下に開示される技術思想の概要について説明する。GNSSの高精度測位を利用した自動運転では、GNSSとIMUとが使用される。GNSSを使用するための信号は、屋内、例えば、立体駐車場、地下駐車場などでは受信されない。そのため、IMUの推測航法のみが使用されることになる。推測航法は、ジャイロ、加速度センサーによる相対位置を計算する。この場合、初期値、初期方向、およびドリフトなどによる位置の修正や方向の修正が必要になる。そこで、ある実施の形態において、GPS信号のスペクトラム拡散変調に使用される符号化コードと同じコードを用いてスペクトラム拡散変調することにより生成されるIMES(Indoor MEssaging System)信号を発信可能な送信機が、ターゲットの座標値を送信する。ターゲットの座標値とは、例えば、ARマーカーの位置情報に相当する。自動車その他の移動体に搭載されたGNSS対応の受信機は、送信機から発信された信号を受信すると、当該ターゲットの位置情報(座標値)を取得する。この位置情報は、移動体の位置推定装置に入力される。
一方、移動体に搭載されたカメラは、当該ターゲットを撮影し、画像処理を行って、相対位置と相対進行方向とを取得する。相対位置は、ターゲットに対する移動体の位置を表わす。相対進行方向は、当該ターゲットに対する進行方向を表わす。相対位置と相対進行方向も、位置推定装置に入力される。
位置推定装置は、DR(自立航法)装置のようなコンピュータによって実現される。位置推定装置は、ターゲットの位置情報と、相対位置と、相対進行方向とを用いて、移動体の位置と進行方向とを算出する。別の局面において、移動体は、無線通信により、屋内のネットワーク(例えば、駐車場内のネットワーク)から、当該ターゲットに対して基準となる進行方向を受信する。
なお、ターゲットと送信機とは、必ずしも同一の場所にある必要はない。複数のターゲットおよび送信機が配置されることで、誤差の修正、あるいは、立体駐車場のように高度が変わり得る場合における補正も実現され得る。
送信機から発信される情報は、データベースにも保存され得る。例えば、当該情報を含む地図情報がデータベースに保存されることで、位置推定装置は、PRN(Pseudo Randomo Noise)コードを読み取った時点で、当該データベースを参照することにより、早期に、移動体の位置および進行方向を得ることができる。
図1を参照して、ある実施の形態に従う走行支援装置が使用される局面について説明する。図1は、走行支援装置が搭載された移動体が走行を支援する信号を受信する一態様を表わす図である。
ある局面において、ある実施の形態に従う移動体は、自動車、カート、電動車椅子その他の車両100として実現される。車両100は、カメラ(図示しない)と、走行支援システム400とを搭載している。車両100は、屋内駐車場、地下道路等の場所であって、GPS衛星その他の衛星から発せられるGPS信号のような測位信号を受信できない場所も走行し得る。以下、測位信号を受信できない場所が屋内駐車場140である場合を説明する。
屋内駐車場140の走行エリアの天井には、複数の測位支援システム120A,120B,120Cが設置されている。複数の測位支援システム120A,120B,120Cは、例えば、屋内駐車場140への入り口、屋内駐車場140内の曲がり角、走行路や駐車スペースの天井に、屋内駐車場140からの出口等に設置されている。走行路の天井に設置される場合、設置の間隔は特に限定されない。複数の測位支援システム120A,120B,120Cを総称する時は、測位支援システム120と表す。測位支援システム120は、送信機110と、マーカー111とを含む。送信機110は、例えば、IMES(Indoor MEssaging System)送信機のように、GPS信号その他の測位信号を発信するためにスペクトラム拡散変調に使用されるPRNコードと同じ符号化コードを用いて信号をスペクトラム拡散変調し、スペクトラム拡散変調によって生成された信号を発信できる送信機として実現され得る。
マーカー111は、位置を表わす標識として実現される。ある局面において、マーカー111は、AR(Augmented Reality)マーカーとして実現され得る。ARマーカーは、例えば、ARToolKitPlus、レンチキュラーレンズを使用したLentiMark等によって実現されるが、マーカー111は、例示されたこれらのARマーカーに限定されない。ある局面において、マーカー111は、照明の変化の影響を受けにくいマーカーが望ましい。なお、マーカー111と送信機110とは、必ずしも、同じ場所にある必要はない。
車両100が送信機110から発信された測位信号を受信すると、車両100に搭載されるコンピュータは、GPS信号を受信した場合と同様の捕捉処理を行なう。ナビシステムは、コンピュータとして、当該測位信号を識別し、測位信号に含まれる送信機110の位置情報を抽出する。
また、車両100に搭載される車載カメラがマーカー111を撮影すると、画像認識処理を行い、マーカー111に関連付けられている位置情報を取得する。車両100に搭載されるコンピュータは、走行支援装置として、車両100の相対方位および相対位置を検出する。さらに、コンピュータは、マーカー111を認識すると、車両100の進行方向を検出し得る。
ある実施の形態に従うと、屋内駐車場140の地図情報は、ネットワーク情報130を含む。ネットワーク情報130は、例えば、屋内駐車場140に設置されているIMES送信機の識別番号、当該IMES送信機で使用されるPRNコードの識別番号、IMES送信機が設置されている場所の名称、当該場所の位置情報(緯度、経度、高度(あるいは階数等)等を含む。当該地図情報は、車両100に搭載される記憶装置に保存されている。車両100が通信機能を備える場合には、車両100は、インターネット等外部から、地図情報をダウンロードし、記憶装置にダウンロードした地図情報を保存する。例えば、屋外においてGPS信号に基づく測位の結果、車両100が立体駐車場の入口あるいは商業施設の入り口に近づいたことが検知されると、車両100は、立体駐車場あるいは商業施設に設置されている通信装置との通信を確立する。その後、車両100は、当該通信装置を介して、立体駐車場あるいは当該商業施設に設けられている地下駐車場の地図情報をダウンロードする。この場合、車両100の走行支援システム400は、走行中のエリア(立体駐車場あるいは地下駐車場)に配置される送信機110が使用するPRNコードを予め知ることができる。その結果、走行支援システム400は、送信機110から発信される信号を受信すると、その信号を特定し、その信号を特定するPRNコードの識別番号を用いて、ネットワーク情報130を参照する。PRNコードの識別番号は、送信機が設置されている場所の位置情報に関連付けられているので、走行支援システム400は、送信機から受信した信号に含まれる位置情報を読み出すことなく、早期に取得できる。なお、地図情報は、別の局面では、車両100の製造事業者によって製造時に、初期情報として記憶装置に書き込まれ、その後、適宜、更新されてもよい。
図2を参照して、測位支援システム120の使用態様について説明する。図2は、測位支援システム120A,120B,120Cが設置された屋内駐車場140に侵入した車両100が駐車スペース210に駐車する一態様を例示する図である。
屋外を走行していた車両100は、3つ以上のGPS衛星からそれぞれ発せられるGPS信号を受信し、ナビシステムを利用することができる。この車両100が、屋内駐車場140の入口200に差し掛かると、GPS信号を受信できなくなり、測位精度が低下する。入口200の天井には、測位支援システム120Aが設置されている。測位支援システム120Aは、入口200の位置情報を含む測位信号を発信する送信機と、ARマーカーとを含む。車両100は、測位支援システム120Aから発信された信号を受信すると、その信号に含まれる位置情報として、入口200の位置情報(例えば、緯度、経度、高度)を抽出し、その抽出した位置情報をナビ情報として利用できる。また、車両100の車載カメラ(図示しない)がARマーカーを認識すると、その認識結果に基づいて、当該ARマーカーに関連付けられている位置情報を取得することができる。車両100は、この位置情報もナビ情報として利用することができる。
車両100が経路220に沿って走行すると、測位支援システム120Aの送信機から発せられた信号は、車両100によって受信されなくなる。その後、車両100は、測位支援システム120Bの送信機から発せられた測位信号を受信する。測位信号は、当該送信機が設置されている場所を示す位置情報を含んでいるので、車両100は、その測位信号から測位支援システム120Bの位置情報を取得できる。また、車載カメラが測位支援システム120Bのマーカーを認識すると、当該マーカーの位置を検出する。当該位置情報は、車両100の位置の精度を高めるために使用される。
車両100は、走行を続けると、測位支援システム120Cから発せられた測位信号を受信し、その測位信号から測位支援システム120Cの位置情報を抽出し、車両の位置を特定する。
車両100は、駐車スペース210の近傍に到達すると、測位支援システム120Dの送信機から発せられた測位信号を受信する。また、車載カメラは、測位支援システム120DのARマーカーを撮影すると、画像処理の結果に基づいてARマーカーの位置(駐車スペース210の位置)を抽出し、車両100の位置を補正する。車両100は、自動駐車装置を備えている場合には、補正後の位置情報に基づいて駐車される。
図3を参照して、走行支援装置を搭載した車両100の走行例について説明する。図3は、ある実施の形態に従う車両100が、屋内駐車場140を無人走行した場合の進行経路を表わす図である。ある局面において、駐車スペース以外の走行路310が屋内駐車場140に存在する。走行路310の天井には、複数の測位支援システム120が設置されている。目的地330の天井にも、測位支援システム120が設置されている。
車両100は、停止位置から走行を開始すると、測位支援システム120から発せられる測位信号を捕捉し、当該測位支援システム120の設置場所を車両100の位置として検出する。さらに、車両100に搭載されたカメラが測位支援システム120のARマーカーを撮影すると、撮影結果を用いて画像認識処理を実行し、ARマーカーに関連付けられている位置を取得する。車両100は、送信機からの測位信号に基づく位置情報と、ARマーカーの認識に基づいて得られる位置情報とを用いて、車両100自身の位置を補正し、目的地330まで走行を継続する。車両100が実際に走行した経路は、経路320のようになる。車両100は、目的地330に到達すると、停止する。
図4Aを参照して、走行支援システム400の構成について説明する。図4Aは、ある実施の形態に従う走行支援システム400の構成の一例を表わすブロック図である。走行支援システム400は、画像制御プロセッサ420と、GNSS−DR(Dead Reckoning)回路440と、位置推定装置480とを備える。
画像制御プロセッサ420の入力は、カメラ410,411の出力に接続され得る。GNSS−DR回路440の入力は、GPSアンテナ430の出力に接続される。画像制御プロセッサ420とGNSS−DR回路440との各出力は、位置推定装置480の入力に接続される。位置推定装置480は、さらに、マップネットワークデータベース450、距離計460、CAN(Controller Area Network)コンバータ470の出力にそれぞれ接続される。
カメラ410,411は、マーカー111を撮影し、画像信号を画像制御プロセッサ420にそれぞれ出力する。画像制御プロセッサ420は、その入力された信号を用いて画像認識処理を実行し、マーカー111に関連付けられた情報を抽出する。関連付けられた情報は、例えば、マーカー111が設置される場所を特定するための情報を含む。当該情報は、緯度、経度、高度(あるいは階数)のような3次元地理的座標値のような絶対的位置情報、あるいは、予め知られている位置からの変位を表わす相対的位置情報のいずれであってもよい。なお、複数のカメラが常に必要とされるわけではなく、一つのカメラがマーカー111の撮影に使用されてもよい。
GPSアンテナ430は、GPS信号その他の測位信号および送信機110から発信される信号を受信する。車両100が屋外にある場合において周囲に遮蔽物がないとき、GPSアンテナ430はGPS信号を受信し得る。車両100が屋内にあり、かつ、送信機110の信号が届く範囲にある場合には、GPSアンテナ430は、送信機110から発信された信号を受信し得る。受信された信号は、GNSS−DR回路440に入力される。
GNSS−DR回路480は、自立航法のために必要な情報を導出する。ある局面において、GPS信号がGPSアンテナ430によって受信された場合、GNSS−DR回路440は、各GPS信号から時刻情報をそれぞれ抽出し、各時刻情報を用いて車両100の位置情報を特定する。送信機110からの信号がGPSアンテナ430によって受信された場合、GNSS−DR回路440は、その信号に含まれる送信機110の設置場所を示す情報を取得する。
位置推定装置480は、ある局面において、画像認識処理の結果検出されるマーカー111の位置情報と、GNSS−DR回路440によって取得される位置情報とを用いて、車両100の位置と、速度と、進行方向とを導出する。別の局面において、位置推定装置480は、さらに、CANコンバータ470からの出力も用いて、車両100の位置と速度と進行方向とを特定し得る。別の局面において、位置推定装置480は、マップネットワークデータベース450をさらに用いて、車両100の位置と速度と進行方向とを特定し得る。さらに別の局面において、位置推定装置480は、距離計460からの出力を用いて、車両100の位置を特定し得る。
図4Bを参照して、送信機110から発信される信号の範囲と、車両100との関係について説明する。図4Bは、車両100が送信機110の近傍に到達した状態を表わす図である。ある実施の形態に従うと、送信機110は、屋内駐車場や地下道路の天井に取り付けられている。送信機110あるいはARマーカーの設置場所は、IMES情報として示される。送信機110は、GPS衛星がGPS信号を発信する場合に使用されるPRNコードと同じコードを用いてスペクトラム拡散変調し、スペクトラム拡散変調によって生成された信号を発信する。この信号は、IMES情報を含む。送信機110がこの信号を発信すると、車両100がその照射範囲に存在する場合には、車両100は、その信号を受信し、その信号からIMES情報を抽出し、車両100の位置を特定する。したがって、車両100が照射範囲に存在する間、車両100の場所は、送信機110の設置場所として特定される。
[制御構造]
図5を参照して、走行支援システム400の制御構造について説明する。図5は、ある実施の形態に従う走行支援システム400が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
ステップS510にて、位置推定装置480は、GNSS−DR回路440からの出力に基づいて、緯度、経度、方位を示す各データを取得する。
ステップS520にて、位置推定装置480は、屋内測位処理を開始する。まず、ステップS530にて、位置推定装置480は、送信機110からIMESメッセージを受信したか否かを判定する。位置推定装置480は、IMESメッセージを受信したと判定すると(ステップS530にてYES)、制御をステップS540に切り換える。そうでない場合には(ステップS530にてNO)、位置推定装置480は、制御をステップS555に切り換える。
ステップS540にて、位置推定装置480は、IMESメッセージからデータを抽出し、マーカー111の位置座標を取得する。
ステップS545にて、位置推定装置480は、カメラ410,411によって得られた画像信号を用いたカメラ測位により、車両100とマーカー111との間の相対位置および相対角度を算出する。なお、カメラ測位では複数のカメラ410,411が例示されているが、複数のカメラが常に必要ではなく、一つの車載カメラがカメラ測位で使用されてもよい。
ステップS550にて、位置推定装置480は、マーカー111の絶対座標値(例えば、緯度、経度、階数)と、車両100とマーカー111との間の距離と、車両100とマーカー111との間の相対角度とを用いて、車両100の絶対座標値および進行方位を算出する。これにより、車両100の位置と進行方位が更新され、位置情報が初期化されることになる。算出された絶対座標値および進行方位は、メモリに保存される。制御はステップS570に移される。
ステップS555にて、位置推定装置480は、加速度センサ、ジャイロセンサ等の出力信号を用いて、車両100の移動情報を取得する。移動情報は、方位の変化量と移動距離とを含む。取得された移動情報は、メモリに保存される。
ステップS560にて、位置推定装置480は、推測航法を用いて、車両100の絶対座標値および進行方位を算出する。算出された絶対座標値(緯度、経度、階数)および進行方位は、メモリに保存される。
ステップS570にて、位置推定装置480は、制御をステップS520に戻す。
[他の制御構造]
図6を参照して、走行支援システム400の他の制御構造について説明する。図6は、他の局面に従う走行支援システム400が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。なお、前述の処理と同一の処理には同一のステップ番号を付してある。したがって、同一の処理の説明は繰り返さない。
ステップS610にて、位置推定装置480は、マップネットワークデータベース450から、マップおよびネットワークデータを取得し、取得した各データをメモリのワーク領域に格納する。格納されるデータは、例えば、屋内マップデータと、IMES送信機情報と、通路ネットワークデータ等を含む。IMES送信機情報は、PRNコード、緯度、経度、階数等を含む。制御は、ステップS520に移される。
ステップS620にて、位置推定装置480は、ステップS610において取得したデータに基づいて、PRN番号を受信したか否かを判定する。位置推定装置480は、PRN番号を受信したと判定すると(ステップS620にてYES)、制御をステップS630に切り換える。そうでない場合には(ステップS620にてNO)、位置推定装置480は、制御をステップS530に切り換える。
ステップS630にて、位置推定装置480は、PRNコードおよびマップネットワークデータを用いて、マーカー111の座標値を取得する。その後、制御は、ステップS545に戻される。
図7を参照して、送信機110が位置情報を送信する手法について説明する。図7は、送信機110によって送信されるメッセージの構成を表わす図である。メッセージ700は、例えば、4種類のIMESメッセージに分けられる。各IMESメッセージは、タイプと、名称と、ワード数と、最低頻度と、内容とを含む。タイプは、メッセージの種類を識別する。名称は、当該メッセージの名前を表わす。ワード数は、メッセージの1フレームに含まれるワード数を表わす。最低頻度は、当該メッセージが送信される頻度のうち最低値を表わす。内容は、当該メッセージに含まれる情報を表わす。
位置情報の提供に使用されるメッセージは、メッセージタイプが「000」と「001」である。しかしながら、各メッセージの内容からも明らかなように、緯度或いは経度がm単位で示されるため、cm単位の精度での位置情報は提供され得ない。そこで、ある実施の形態に従うと、送信機110は、メッセージタイプが「100」であるメッセージを利用して、差分データを合わせて送信することで、cmレベルの高精度の位置情報を提供し得る。
そこで、図8Aおよび図8Bを参照して、IMESメッセージにおいてcmレベルの位置を表現する手法について説明する。図8Aは、ある実施の形態に従うメッセージタイプが「001」のメッセージ800のフォーマットを表わす図である。図8Bは、メッセージ800の仕様を表わす図である。
図8Aに示されるように、メッセージ800は、4つのワード、Word1〜Word4を含む。緯度および経度の場合、(10−5)度は、約1.2mとなる。
図8Bに示されるように、メッセージ800において、緯度(Lat)のビット長(Bit length)は、24ビットになっている。1ビットは符号を表わし、北緯は「0」で、南緯は「1」で示される。座標値は残りの23ビットで表現される。例えば、ある座標値(北緯35.69478度)の場合、24ビットで、すなわち、「001100101100010000010011」と表される。cmレベルの距離を表わすためには、30ビットが必要になる。
図9および図10を参照して、IMESメッセージにおけるcmレベルの距離を表わす方法についてさらに説明する。図9は、メッセージタイプが3(=011)のIMESメッセージ900のフォーマットを表わす図である。図10は、メッセージタイプが4(=100)のIMESメッセージ1000のフォーマットを表わす図である。
図9に示されるように、IMESメッセージ900は、ショートID910を含む。cmレベルの単位を表現する場合、緯度および経度ともに、(10−7)度が約9mmとなる。したがって、緯度および経度をcmレベルで表現するためには、14ビット(=7+7)が必要となる。ショートID910は、12ビットであるため、14ビットを必要とするcmレベルの距離を表現できない。したがって、メッセージタイプが4であるIMESメッセージが必要となる。
図10に示されるように、IMESメッセージ1000は、ミディアムID1010を含む。ミディアムID1010は、33ビット(=12+21)である。そこで、メッセージタイムが4であるIMESメッセージ1000を用いて、距離は、cmレベルで表現できる。
図11を参照して、GPS信号が捕捉されない場所における測位を実現する方法について説明する。図11は、ある実施の形態に従う位置情報提供システム10の構成を表わす図である。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万メートルの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」ともいう。)を発信するGPS衛星1110,1111,1112,1113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置1100−1〜1010−4とを備える。位置情報提供装置1100−1〜1100−4を総称するときは、位置情報提供装置1100と表わす。位置情報提供装置1100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、従来の測位装置を有する端末として実現され得る。
ここで、測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(Galileo,GLONASS等)にも適用可能である。
測位信号の中心周波数は、たとえば、1574.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Access)信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)が流用できるため、位置情報提供装置1100は、新たな回路を追加することなく、測位信号を受信することができる。
測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzに限られない。変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。
GPS衛星1110には、測位信号を発信する送信機1120が搭載されている。GPS衛星1111,1112,1113にも、同様の送信機1121,1122,1123がそれぞれ搭載されている。位置情報提供装置1100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置1100−2,1100−3,1100−4は、立体駐車場1130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。立体駐車場1130の1階の天井には、IMES送信機1200−1が取り付けられている。位置情報提供装置1100−4は、IMES送信機1200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、立体駐車場1130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれIMES送信機1200−2,1200−3が取り付けられている。ここで、各IMES送信機1200−1,1200−2,1200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星1110,1111,1112,1113の時刻(「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、同期している必要はない。各衛星時刻は、それぞれ同期していることが好ましい。
各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機1120は、さらに、それぞれ、当該送信機1120自身、あるいは送信機1120が搭載されるGPS衛星を識別するためのデータ(PRN−ID(Identification))を有している。
位置情報提供装置1100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置1100は、測位信号を受信すると、各衛星ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星から発信されたものであるかを特定することができる。また、新しいGPS信号では、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。
GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略は、以下のとおりである。送信機1120,1121,1122は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージと、PRN−IDとを格納している。
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
ここで、各送信機1120毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機1120は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
上述のように、送信機1120は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機1120,1121,1122は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が位置情報提供装置1100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
図12を参照して、送信機110の構成の一例について説明する。図12は、送信機110の一例であるIMES送信機1200−1のハードウェア構成を示すブロック図である。
IMES送信機1200−1は、デジタル処理ブロック1210と、デジタル処理ブロック1210に電気的に接続されているEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)1240と、デジタル処理ブロック1210に電気的に接続されているUART1250と、デジタル処理ブロック1210に電気的に接続されているデジタル入出力インターフェイス1260と、デジタル処理ブロック1210に電気的に接続されているクロック1280と、デジタル処理ブロック1210に電気的に接続されているアナログ処理ブロック1290と、アナログ処理ブロック1290に電気的に接続されているアンテナ1292と、電源1294とを備える。デジタル処理ブロック1210は、CPU(Central Processing Unit)1220と、RAM(Random Access Memory)1230とを含む。
EEPROM1240は、CPU1220が実行するプログラム、IMES送信機1200−1が設置されている場所を表わすデータ等を格納する。当該プログラムあるいはデータは、IMES送信機1200−1が起動する時に、EEPROM1240から読み出され、RAM1230に転送される。EEPROM1240は、またIMES送信機1200−1の外部から入力されたデータをさらに格納することができる。なお、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM1240に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、後述するように、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM1240のデータ構造については後述する。
デジタル処理ブロック1210は、測位のための信号としてIMES送信機1200−1によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック1210は、アナログ処理ブロック1290に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
クロック1280は、CPU1220の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック1210に供給する。
デジタル入出力インターフェイス1260は、送信機の内部状態(たとえば、「PLL Cntrl」信号)を監視することができる。あるいは、デジタル入出力インターフェイス1260は、IMES送信機1200−1から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、送信出力を規定するデータの入力を、外部から受け付けることができる。さらに、IMES送信機1200−1から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、IMES送信機1200−1が設置されている場所を表わすテキストデータである。あるいは、IMES送信機1200−1がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとしてIMES送信機1200−1に入力可能である。
擬似拡散符号の符号パターンは、IMES送信機1200−1に入力されると、EEPROM1240において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM1240において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
UART1250は、IMES送信機1200−1を調整するために用いられる。外部クロック1270は、UART1250と同様に、IMES送信機1200−1を調整するために使用される。たとえば、外部クロック1270は、電力線(図示しない)から周波数の入力を受け付け、測位のための信号の送信周波数を較正するためにも使用される。
アナログ処理ブロック1290は、デジタル処理ブロック1210から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波を変調して送信信号を生成し、アンテナ1292に送出する。その信号は、アンテナ1292より発信される。このようにして、測位のための信号と同様の構成を有する信号が、IMES送信機1200−1から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではない。IMES送信機1200−1から発信される信号の構成の一例は、後述する(図15)。
電源1294は、IMES送信機1200−1を構成する各部に電力を供給する。なお、電源1294は、図12に示されるように、IMES送信機1200−1に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
以上の説明においては、デジタル処理ブロック1210における処理を実現するための演算処理装置としてCPU1220が用いられたが、その他の演算処理装置が使用されたもよい。また、IMES送信機1200−1が実現する動作は複雑ではないため、デジタル処理ブロック1210は、CPU1220に代えて、たとえば、各処理を実現するように構成された電気回路によっても実現できる。
また、図12においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック1210からアナログ処理ブロック1290に供給されているが、クロック1280からアナログ処理ブロック1290に直接に供給されてもよい。
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック1210とアナログ処理ブロック1290とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
図13を参照して、IMES送信機1200−1のデータ構造について説明する。図13は、IMES送信機1200−1が備えるEEPROM1240におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM1240は、データを格納するための領域1310〜1340を含む。
領域1300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。当該送信機に割り当てられた擬似拡散符号のPRN‐IDは、領域1310に格納されている。送信機の名称は、テキストデータとして、領域1320に格納されている。
当該送信機に割り当てられた擬似拡散符号の符号パターンは、領域1330に格納されている。擬似拡散符号の符号パターンは、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。また、前述のように、擬似拡散符号の符号パターンは、デジタル入出力インターフェイス1260を介して入力される他の符号パターンに変更可能である。
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(立体型駐車場その他のビルの階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似拡散符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似拡散符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
IMES送信機1200−1が設置されている場所を特定するための位置データは、領域1340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高度の組み合わせとして表わされる。領域1320において、当該位置データに加えて、もしくはデータに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。
図14を参照して、位置情報提供装置の構成について説明する。図14は、位置情報提供装置1100のハードウェア構成を表わすブロック図である。ある局面において、位置情報提供装置1100は、ナビゲーションシステムとして実現される。
位置情報提供装置1100は、アンテナ1402と、アンテナ1402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路1404と、RFフロント回路1404に電気的に接続されているダウンコンバータ1406と、ダウンコンバータ1406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ1408と、A/Dコンバータ1408に電気的に接続されているベースバンドプロセッサ1410と、ベースバンドプロセッサ1410に電気的に接続されているメモリ1420と、ベースバンドプロセッサ1410に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ1430と、ナビゲーションプロセッサ1430に電気的に接続されているディスプレイ1440とを備える。
メモリ1420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、擬似雑音符号の符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ1420は、図14に示されるように、領域1421−1〜1421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ1420に確保される。逆に、メモリ1420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データと、12個の予備のデータとが、領域1421−1〜1421−36に格納される。このとき、たとえば、領域1421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域1421−37〜1421−48に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域1421−37に格納されている。この場合、本実施の形態においては、12個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置してもよい。このようにすることによって、12台以上の屋内送信機を、たとえば立体駐車場1130の同一のフロアに設置することも可能になる。
ベースバンドプロセッサ1410は、A/Dコンバータ1408から出力される信号の入力を受け付けるコリレータ部1412と、コリレータ部1412の動作を制御する制御部1414と、制御部1414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断する判断部1416とを含む。ナビゲーションプロセッサ1430は、判断部1416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置1100の位置を測定するための屋外測位部1432と、判断部1416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置1100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部1434とを含む。
アンテナ1402は、GPS衛星1110,1111,112からそれぞれ発信された測位信号およびIMES送信機1200−1から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置1100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ1402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
RFフロント回路1404は、アンテナ1402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路1404から出力される信号は、ダウンコンバータ1406に入力される。
ダウンコンバータ1406は、RFフロント回路1404から出力される信号を増幅し、中間周波数として出力する。この信号は、A/Dコンバータ1408に入力される。A/Dコンバータ1408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、ベースバンドプロセッサ1410に入力される。
ベースバンドプロセッサ1410において、コリレータ部1412は、制御部1414がメモリ1420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。たとえば、コリレータ部1412は、制御部1414が提供する符号位相が1ビット異なる2種類の符号パターンと、A/Dコンバータ1408から送出されるデジタルデータとのマッチングを行なう。コリレータ部1412は、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置1100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定する。これにより、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置1100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。また、位置情報提供装置1100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
具体的には、判断部1416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ1430に送出する。判断部1416は、受信された測位信号に含まれるPRN−IDがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機に割り当てられたPRN−IDであるか否かを判断する。
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。この時、PRN−01〜PRN−24が、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用され、PRN−25〜PRN−36が、予備の衛星を識別する番号として使用される。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の送信機(たとえば、IMES送信機1200−1等)に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−37からPRN−48が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−37〜PRN−48は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。
そこで、判断部1416は、メモリ1420に格納されている擬似雑音符号の符号パターン1422を参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部1416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部1416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ1420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部1416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部1432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号がIMES送信機1200−1などから発信されたものである場合には、判断部1416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部1434に送出する。このデータは、すなわちIMES送信機1200−1の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
ナビゲーションプロセッサ1430において、屋外測位部1432は、判断部1416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置1100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部1432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置1100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
一方、ナビゲーションプロセッサ1430において、屋内測位部1434は、判断部1416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置1100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。後述するように、IMES送信機1200−1は、場所を特定するためのデータ(時刻データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置1100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置1100の位置とすることができる。屋内測位部1434は、この処理を行なう。屋外測位部1432あるいは屋内測位部1434によって算出されたデータは、ディスプレイ1440における表示のために用いられる。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像あるいはIMES送信機1200−1が設置されている場所を表示するための画像が生成され、ディスプレイ1440によって表示される。
図15を参照して、送信機から送信される測位信号について説明する。図15は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号1500の構成を表わす図である。信号1500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム1510〜1550から構成される。サブフレーム1510〜1550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム1510〜1550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。
第1番目のサブフレーム1510は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド1511と、30ビットの時刻情報1512と、240ビットのメッセージデータ1513とを含む。時刻情報1512は、詳細には、サブフレーム1510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム1510を区別するための識別番号である。メッセージデータ1513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
第2番目のサブフレーム1520は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド1521と、30ビットの時刻情報1522と、240ビットのメッセージデータ1523とを含む。時刻情報1522は、第1番目のサブフレーム1510における時刻情報1512と同様の構成を有する。メッセージデータ1523は、エフェメリスを含む。ここで、エフェメリス(ephemeris、放送暦)とは、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
第3番目のサブフレーム1530は、第2番目のサブフレーム1520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム1530は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド1531と、30ビットの時刻情報1532と、240ビットのメッセージデータ1533とを含む。時刻情報1532は、第1番目のサブフレーム1510における時刻情報1512と同様の構成を有する。メッセージデータ1533は、エフェメリスを含む。
第4番目のサブフレーム1540は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド1541と、30ビットの時刻情報1542と、240ビットのメッセージデータ1543とを含む。メッセージデータ1543は、他のメッセージデータ1513,1523,1533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time)パラメータ等を含む。
第5番目のサブフレーム1550は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド1551と、30ビットの時刻情報1552と、240ビットのメッセージデータ1553とを含む。メッセージデータ1553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ1543,1553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。サブフレーム1510〜1550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
サブフレーム1510〜1550は、送信機1120,1121,1122からそれぞれ送信される。サブフレーム1510〜1550が位置情報提供装置1100によって受信されると、位置情報提供装置1100の位置は、トランスポートオーバーヘッド1511〜1551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報1512〜1552と、メッセージデータ1513〜1553とに基づいて、計算される。
信号1560は、サブフレーム1510〜1550に含まれる各メッセージデータ1513〜1553と同じデータ長を有する。信号1560は、エフェメリス(メッセージデータ1523,1533)として表わされる軌道情報に代えて、信号1560の発信源の位置を表わすデータを有する点で、サブフレーム1510〜1550と異なる。
すなわち、信号1560は、6ビットのPRN−ID561と、15ビットの送信機ID562と、X座標値1563と、Y座標値1564と、Z座標値1565と、高度補正係数(Zhf)1566と、アドレス1567と、リザーブ1568とを含む。信号1560は、サブフレーム1510〜1550に含まれるメッセージデータ1513〜1553に代わって、IMES送信機1200−1,1200−2,1200−3から送信される。
PRN−ID1561は、信号1560の発信源である送信機(たとえば、IMES送信機1200−1,1200−2,1200−3)に対して予め割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号である。PRN−ID1561は、各GPS衛星に搭載されるそれぞれの送信機に対して割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号とは異なるが、同じ系列の符号列から生成される符号パターンに対して割り当てられた番号である。位置情報提供装置が、受信した信号1560から、屋内送信機用に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンのいずれかを取得することで、その信号が、衛星から送信されたサブフレーム1510〜1550であるのか、あるいは、屋内送信機から送信された信号1560であるのかが特定される。
X座標値1563、Y座標値1564およびZ座標値1565は、IMES送信機1200−1が取り付けられている位置を表わすデータである。X座標値1563、Y座標値1564、Z座標値1565は、たとえば緯度、経度、高度(または階数)として表わされる。高度補正係数1566は、Z座標値1565によって特定される高度を補正するために用いられる。なお、高度補正係数1566は、必須のデータ項目ではない。したがって、Z座標値1565によって特定される高度以上の精度が要求されない場合には、その係数は用いられなくてもよい。この場合、高度補正係数1566のために割り当てられる領域には、たとえば「NULL」を表わすデータが格納される。
図16を参照して、位置情報提供装置1100の制御構造について説明する。図16は、位置情報提供装置1100のベースバンドプロセッサ1410およびナビゲーションプロセッサ1430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
ステップS1610にて、位置情報提供装置1100は、測位信号を取得(追尾、捕捉)する。具体的には、ベースバンドプロセッサ1410は、A/Dコンバータ1408から、受信された測位信号(デジタル変換処理後のデータ)の入力を受け付ける。ベースバンドプロセッサ1410は、擬似雑音符号のレプリカとして、可能な遅延が反映された符号位相が異なる符号パターンを生成し、その符号パターンと受信された測位信号との相関の有無をそれぞれ検出する。生成される符号パターンの数は、たとえば、符号パターンのビット数の2倍である。一例として、たとえば、チップレートが1023ビットである場合、2分の1ビットずつの遅延、すなわち符号位相差を有する2046個の符号パターンが生成され得る。そして、各符号パターンを用いて、受信された信号との相関を取る処理が、実行される。ベースバンドプロセッサ1410は、当該相関処理において、予め規定された強度以上の出力が検出された場合に、その符号パターンをロックし、当該符号パターンによって、その測位信号を発信した衛星を特定することができる。当該符号パターンのビット配列を有する擬似雑音符号は、1つしか存在しない。これにより、受信された測位信号をスペクトラム拡散符号化するために使用された擬似雑音符号が特定される。
なお、後述するように、受信によって取得された信号と、局所的に発生されたレプリカの符号パターンとの相関を取るための処理は、並列処理としても実現可能である。
ステップS1612にて、ベースバンドプロセッサ1410は、その測位信号の発信源を特定する。具体的には、判断部1416が、その信号を生成するために変調時に使用された擬似雑音符号の符号パターンを使用する送信機に対応付けられるPRN−IDに基づいて(たとえば、図4におけるメモリ1420)、その信号の発信源を特定する。その測位信号が屋外から発信されたものである場合には、制御はステップS1620に移される。その測位信号が屋内において発信されたものである場合には、制御はステップS1630に移される。受信した複数の信号が屋外および屋内のそれぞれから発信されたものを含む場合には、制御はステップS1640に移される。
ステップS1620にて、位置情報提供装置1100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、ナビゲーションプロセッサ1430の屋外測位部1432は、その測位信号に対して、メモリ1420に一時的に保存されていた符号パターン(前述の「ロック」が行なわれた符号パターン、以下「ロックした符号パターン」)を用いて重畳することにより、その信号を構成するサブフレームから、航法メッセージを取得する。ステップS1622にて、屋外測位部1432は、取得した4つ以上の航法メッセージを用いて位置を算出するための通常の航法メッセージ処理を実行する。
ステップS1624にて、屋外測位部1432は、その処理の結果に基づいて位置情報提供装置1100の位置を計算するための処理を実行する。たとえば、位置情報提供装置1100が、4つ以上の衛星から発信された各測位信号を受信している場合には、距離の算出は、各信号から復調された航法メッセージに含まれる各衛星の軌道情報、時刻情報等を用いて行なわれる。
また、他の局面において、位置情報提供装置1100が、衛星によって発信された測位信号(屋外信号)と屋内発信機からの信号(屋内信号)とを受信している場合には(すなわち、ステップS1642の後にステップS1624が実行される場合)、位置の算出に用いる信号を決定するための振り分けが、たとえば、屋内信号および屋外信号の強度に基づいて行なわれる。一例として、屋内信号の強度が屋外信号の強度よりも大きい場合には、屋内信号が選択され、当該屋内信号に含まれる座標値が、位置情報提供装置1100の位置とされる。
ステップS1630にて、位置情報提供装置1100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋内測位部1434は、ベースバンドプロセッサ1410から送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレームから、メッセージデータを取得する。このメッセージデータは、衛星から送信される測位信号に含まれる航法メッセージに代えて、屋内送信機によって発信される測位信号に含まれるものである。メッセージデータのデータ長は、したがって、航法メッセージのデータ長と同じデータ長であることが好ましい。
ステップS1632にて、屋内測位部1434は、そのデータから座標値(すなわち、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータ(たとえば、図15の信号1560におけるX座標値1563、Y座標値1564、Z座標値1565))を取得する。なお、このような座標値に代えて、設置場所あるいは設置場所の住所を表わすテキスト情報がフレームに含まれている場合には、当該テキスト情報が取得される。
ステップS1640にて、位置情報提供装置1100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋外測位部1432は、ベースバンドプロセッサ1410によって送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレーム中のデータを取得する。この場合、位置情報提供装置1100は、衛星からの信号および屋内送信機からの信号を受信していることになるため、いわば「ハイブリッド」モードとして作動していることになる。したがって、各衛星からの信号については、同期の取れた時刻データを有する航法メッセージが取得され、屋内送信機からの信号については、上記座標値その他の位置情報を有するデータが取得される。
ステップS1642にて、屋内測位部1434は、IMES送信機1200−1によって発信された測位信号から、X座標値1563、Y座標値1564、Z座標値1565を取得する処理を行ない、また、GPS衛星によって発信された測位信号から航法メッセージを取得し、処理を行なう。その後、制御は、ステップS1624に移される。
ステップS1650にて、ナビゲーションプロセッサ1430は、位置の算出結果に基づいてディスプレイ1440に位置情報を表示させるための処理を実行する。具体的には、取得された座標を表示するための画像データあるいはIMES送信機1200−1の設置場所を表示するためのデータを生成し、ディスプレイ1440に送出する。ディスプレイ1440は、そのようなデータに基づいて表示領域に位置情報提供装置1100の位置情報を表示する。
(まとめ)
以上のようにして、ある実施の形態に従うと、車両100は、送信機110によって発信される信号に含まれるマーカー111の位置情報に基づいて、現在位置を取得し、また、補正することができる。これにより、GPS衛星からの信号を受信できない屋内駐車場や地下の道路等においても、車両100の位置が精度よく検出される。その結果、走行支援の精度が向上し得る。
また、別の局面において、車両100は、屋内駐車場あるいは地下の道路等の地図情報を保持している。この地図情報は、例えば、屋内駐車場あるいは地下の道路等に予め設置された送信機110で使用されるPRNコードの識別番号と、送信機100が設置されている場所の位置情報とを含む。このようにすると、車両100は、送信機110から受信した信号を特定するために使用されたPRNコードの識別番号に基づいて、当該地図情報に含まれるPRNコードの識別番号に関連付けられている位置情報を参照できる。その結果、車両100は、送信機100から発信された信号に含まれる位置情報を読み出すことなく、送信機100の位置を特定できるので、位置情報を早期に取得できる。
開示された技術的特徴は、プログラムを実行するプロセッサとメモリと通信インターフェイスとを備えるコンピュータにより、あるいは、当該処理を実現する回路素子の組み合わせによって実現される。また、当該プログラムは、コンピュータが移動体に搭載された後でも、更新可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。