JP2020034115A - 真空断熱体及びそれを用いた断熱容器、断熱壁 - Google Patents

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俊明 平野
秀司 河原崎
Hideji Kawarasaki
秀司 河原崎
智章 北野
Tomoaki Kitano
智章 北野
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Abstract

【課題】剛性を維持しながら独立気泡の連続気泡化をより促進させた真空断熱体を提供することを目的とする。【解決手段】この目的を達成するために本発明は、真空断熱体を構成する連続気泡ウレタンは、内部のコア層よりもウレタン気泡骨格及び気泡膜の厚みが大きいスキン層が形成されており、前記スキン層の厚みは1mm以下(ゼロを含まず)であることを特徴とするものであり、これにより、発泡体の表面全体に亘ってスキン層が存在していることにより、ウレタンフォーム全体の剛性が上がり、変形や反りの低減を図ることができる。また連通化をさらに促進させることが可能であり、真空排気する際に、排気時間を短縮することができる。また、真空断熱体の真空度並びに断熱性能を長期に亘り維持することができ、信頼性の高い真空断熱体を提供することができる。【選択図】図6

Description

本発明は真空断熱体及びそれを用いた断熱容器、断熱壁に関するものである。
近年、地球温暖化防止の観点から、省エネルギー性の向上が強く望まれており、家庭用電化製品においても、緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫および自動販売機等の保温保冷機器では、熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
一般的な断熱材として、グラスウール等の繊維材、および、ウレタンフォーム等の発泡体から選択されるものが用いられている。これらの断熱材の断熱性能を向上させるためには、断熱材の厚さを増す必要があるが、断熱材を充填すべき空間に制限があるような場合、例えば省スペース化または空間の有効利用が必要な場合には、適用することができない。
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外包材中に挿入し、内部を減圧して封止した断熱体である。
この真空断熱材は、ウレタンフォームと比べると、約20倍の断熱性能を有しており、厚さを薄くしても十分な断熱性能が得られるという優れた特性を有している。
したがって、この真空断熱材は、断熱箱体の内容積を大きくしたい顧客要望を満たしつつ、断熱性能の向上による省エネルギー性の向上を図るための有効な手段として注目されている。
例えば、冷蔵庫では、冷蔵庫本体を構成する断熱箱体において、ウレタンフォームを、内外箱間の断熱用空間に発泡充填している。そして、その断熱用空間に真空断熱材を追加設置して、その断熱性を高め、断熱箱体の内容積を大きくしている。
冷蔵庫等に使用する場合、一般的に、その断熱箱体の断熱用空間は、複雑な形状を呈している。また、真空断熱材は、複雑な形状に追従するような加工、特に厚み方向の加工を行うことが一般的に困難であり平板形状として供される。このため、真空断熱材が被覆できる面積、言い換えると、断熱箱体の伝熱総面積に対して真空断熱材の面積が占める割合の向上には限界がある。
そこで、例えば断熱箱体のブロー成形用のエアー送入口から、断熱箱体の断熱用空間に連続気泡ウレタンを充填し、発泡させた後、エアー送入口に接続された真空排気装置によって断熱箱体内を排気して真空化し、断熱箱体自体を真空断熱材とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、本出願人も、特許文献1と同様に、冷蔵庫本体となる断熱箱体の断熱用空間に、連続気泡ウレタンを充填発泡させて真空引きし、断熱箱体自体を真空断熱材としたものを提案している。さらに、断熱用空間に連続気泡ウレタンを充填発泡させた時に生じる、箱体内面近傍のスキン層に残る独立気泡をも連続気泡化して連続気泡率を高め、その断熱性を更に向上させた技術を提案している(例えば、特許文献2参照)。
上述した特許文献1および特許文献2に記載された、断熱用空間に充填発泡させた連続気泡ウレタンフォームを真空封止して構成された断熱箱体、換言すると真空断熱体は、連続気泡ウレタンフォームの空隙率が高くなるほど、連続気泡ウレタンフォームの内部の表面積が増える。外部からの熱は、この連続気泡ウレタンフォームの表面に沿って伝わることになるから、その表面積が増えることによって断熱性が向上する。
なお、連続気泡が熱の移動方向に整列形成されてしまえば、断熱性が向上することはないが、気泡は、発泡によって無秩序に形成されるものであるから、熱の移動方向に整列形成される可能性はほとんどなく、内部の表面積が増えると断熱性は向上する。よって、特許文献2に記載の真空断熱体技術によれば、箱体内面近傍のスキン層に残る独立気泡をもより連続気泡化して、その表面積を増加させることができるので、断熱性が向上する。
以上述べたように、上記特許文献2に記載の、連続気泡ウレタンを真空封止して構成された真空断熱体は、その外観形状が、断熱箱体のように複雑なものであっても、その全域を真空断熱することができる。よって、例えば、冷蔵庫に用いることにより、断熱箱体自体の厚みを薄くして、内容積(貯蔵空間)を更に大きくすることができる。
特開平9−119771号公報 特開2014−149090号公報
しかしながら、更なる断熱性の向上を考えた場合、スキン層における独立気泡を連続気泡化することでより少なくする必要がある。
その一方で、スキン層そのものをなくすことで独立気泡をなくす方法も考えられるが、スキン層が完全にない、すなわち、コア層のみの連続気泡ウレタンの場合、剛性が低く、表面の張りが小さいために真空排気後の変形や反りが大きくなる課題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、剛性を維持しながら独立気泡の連続気泡化をより促進させた真空断熱体を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明は、真空断熱体を構成する連続気泡ウレタンは、内部のコア層よりもウレタン気泡骨格及び気泡膜の厚みが大きいスキン層が形成されており、前記スキン層の厚みは1mm以下(ゼロを含まず)であることを特徴とするものである。
本発明の真空断熱体は、発泡体の表面全体に亘ってスキン層が存在していることにより、ウレタンフォーム全体の剛性が上がり、変形や反りの低減を図ることができる。また連通化をさらに促進させることが可能であり、真空排気する際に、排気時間を短縮することができる。また、連通化がさらに促進されることで、残留した独立気泡から、連通気泡との間の「差圧」によりガスが徐々に湧き出して真空度が全体として悪化するということが低減できるため、真空断熱体の真空度並びに断熱性能を長期に亘り維持することができ、信頼性の高い真空断熱体を提供することができる。
本発明の実施の形態1における真空断熱体を備えた冷蔵庫の断面図 本発明の実施の形態1における真空断熱体となる冷蔵庫扉の一部を示す拡大斜視図 (a)図2のA−A断面図、(b)図3(a)のB−B断面図 (a)図3(a)の真空断熱体部分、(b)(a)の下面から見た図 本発明の実施の形態1における真空断熱体の製造方法を示すフローチャート 本発明の実施の形態1の連続気泡ウレタンフォームの構造例を模式的に示した図 図6に示す連続気泡ウレタンフォームの互いに対向する1以上の対の気泡の間の状態を表した拡大写真 図7に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡の構成を説明する図 図8に示す連続気泡ウレタンフォームの気泡膜部の拡大写真 図9に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡膜部の構成を説明する図 図6に示す連続気泡ウレタンフォームの互いに対向する1以上の対の気泡の間のうち、微粉末の紛体により気泡骨格部に貫通孔が形成されている拡大写真 図11に表した状態を説明するための図 図12に示す連続気泡ウレタンフォームの気泡骨格部の状態をさらに詳しく表した拡大写真 図13に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡骨格部の構成を説明する図 本発明の実施の形態1の評価結果で観察した走査型電子顕微鏡写真 本発明の実施の形態1の評価結果で測定した金型温度とスキン層厚みの関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態1の評価結果で測定したスキン層厚みと連続気泡率の関係を示すグラフ
第一の発明は、真空断熱体を構成する連続気泡ウレタンは内部のコア層よりもウレタン気泡骨格及び気泡膜の厚みが大きいスキン層が形成されており、前記スキン層の平均厚みは1mm以下(ゼロを含まず)とするものであり、発泡体の表面全体に亘ってスキン層が存在していることにより、ウレタンフォーム全体の剛性が上がり、変形や反りの低減を図ることができる。また厚みの1mmはスキン層全体の平均であって、部分的に1mmを越える箇所があっても構わない。平均厚みを1mm以下とすることで、連通化をさらに促進させることが可能であり、真空排気する際に、排気時間を短縮することができる。また、連通化がさらに促進されることで、残留した独立気泡から、連通気泡との間の「差圧」によりガスが徐々に湧き出して真空度が全体として悪化するということが低減できるため、真空断熱体の真空度並びに断熱性能を長期に亘り維持することができ、信頼性の高い真空断熱体を提供することができる。
第二の発明は、第一の発明の前記連続気泡ウレタンは、ウレタン樹脂と非親和性の粒子を含み、前記スキン層の厚みは、前記非親和性の粒子の最大径の10倍以下とするものであり、これによりスキン層の気泡骨格と非親和性の粒子との間に形成されている隙間が、1対の気泡間で確実に貫通孔となり、連通化をさらに促進させることができる。
第三の発明は、第一または第二の発明の前記スキン層の密度は80kg/m3以上とするものであり、これによりスキン層の剛性が確保され、ウレタンフォーム全体の剛性が上がり、変形や反りの低減を図ることができる。
第四の発明は、第一から第三のいずれか一つの発明の前記スキン層を含んだ連続気泡ウレタンの10%歪み時の圧縮強度は、250kPa以上とするものであり、これによりスキン層の剛性が確保され、ウレタンフォーム全体の剛性が上がり、変形や反りの低減を図ることができる。
第五の発明は、第一から第四のいずれか一つの発明の前記スキン層の気泡骨格径は200μm以下とするものであり、これによりスキン層の気泡骨格と非親和性の粒子との間に形成されている隙間が、1対の気泡間で確実に貫通孔となり、連通化が促進されることでウレタンフォーム全体に亘って完全に連通化することが可能となる。
第六の発明は、第一から第五のいずれか一つの発明の真空断熱体を用いた断熱容器であり、これにより、安価で、長期間にわたって断熱性能を維持できる断熱容器を提供することができる。
第七の発明は、第一から第五のいずれか一つの発明の真空断熱体を用いた断熱壁であり、これにより、安価で、長期間にわたって断熱性能を維持できる断熱壁を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱体を備えた冷蔵庫の断面図、図2は、本発明の実施の形態1における真空断熱体となる冷蔵庫扉の一部を示す拡大斜視図、図3(a)は、図2に示す冷蔵庫扉のA−A断面図、(b)は、図3(a)のB−B断面図,図4(a)は、図3(a)の庫外外観部品14及び庫内外観部品15を除いた、真空断熱体のみの断面図、図4(b)は、図4(a)の下面から見た図である。つまり、図4(a)の真空断熱体を接着剤を用いて、庫外外観部品14及び庫内外観部品15とを組立〜接着したものが図3(a)となる。
1.[冷蔵庫扉への適用例]
図1において、冷蔵庫1は、外箱2と内箱3に発泡断熱材を充填し断熱箱体7を形成する。断熱箱体の内部は仕切体8により冷凍室9と冷蔵室10を構成している。断熱箱体7の上部機械室には圧縮機18、下部機械室には蒸発皿20を備え、冷凍室9の背面に形成した冷却室には蒸発器19を備える。冷凍室9と冷却室は冷却室壁体21で仕切られている。断熱箱体7の前面開口部にはそれぞれ冷蔵庫扉25を備えている。
本発明の実施の形態1に係る真空断熱体13を備えているのは、冷蔵庫扉25である。図2、図3(a)、(b)に示すように、本実施の形態1に係る真空断熱体13を備えた冷蔵庫扉25は、外板27と、外板27の表面に配されたガラス板や金属板の庫外外観部品14と、酸素等のガスバリア層31が内部に形成された内板26と、内板26の表面に配されたABS樹脂等の庫内外観部品15、さらには外板27と内板26との間の断熱用空間に充填された連続気泡ウレタンフォーム4(真空断熱体の芯材)と、を有する。ここで、外板27と内板26が外包材に相当する。なお、この外包材とは、連続気泡ウレタンフォーム4(真空断熱体の芯材)の外面を包みこむものである。
具体的には、真空断熱体13は、スペーサの役割を持つ芯材(連続気泡ウレタンフォーム4)と、ガスバリア性を有する外包材(外板27と内板26)とからなるものであって、芯材を外包材中に挿入し、排気口16を通して内部を減圧して封止材17を用いて封止したものである。外板27と内板26は、外周を熱溶着層32で接着し封止されている。
また、図4(a)、(b)に示すように、本実施の形態1に係る真空断熱体13に対して、庫外外観部品14と庫内外観部品15とを接着剤等で貼り合わせることによって、冷蔵庫扉25が完成する。
2.[製造方法]
次に、本実施の形態1に係る真空断熱体13を備えた冷蔵庫扉25の製造方法について説明する。
図5は、本実施の形態1の冷蔵庫扉の製造方法を示すフローチャートである。
内板26は、酸素ガスバリア性や水蒸気ガスバリア性の高い材料で構成され、主に、空気と水蒸気の透過を抑制する必要がある。
よって例えば、酸素透過度の低い材料であるエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)を、成形性を上げるために、水蒸気透過度の低い材料であるポリプロピレンやポリエチレンで挟んだ多層シートを押出し成形機等で作成し(ステップ1)、真空成形、圧空成形、またはブロー成形などで断熱が必要な箇所に形状が沿う形に成形する(ステップ2)。なお、EVOHの代わりにポリビニルアルコール(PVA)を用いても同様の効果が得られる。また、内板26には排気口16が設けられ、溶着機構が接続された封止材17によって封止される。真空断熱体13を備えた冷蔵庫扉25の完成品において、この排気口16は封止材17により封止されている。封止材17は少なくとも酸素ガスバリア性の高い金属箔を有している。
外板27は、内板26と同様、酸素ガスバリア性の高い材料で構成される。冷蔵庫扉25の場合、外板27は平面形状であることから、アルミやステンレスなど金属層を含む樹脂ラミネートフィルム、シートなどを用いる。
例えば、外側層に、保護材であるポリエチレンテレフタレート層、中間層に、ガスバリア材であるアルミニウム箔層、内側層には、図3(a)や図4(a)に示すように、内板26の接着層がポリプロピレン層である場合は、CPP(無延伸ポリプロピレン層)を設けたラミネートフィルムもしくはシートを用いる。熱溶着後、成形加工は外板27のサイズにカットするのみである(ステップ3)。
連続気泡ウレタンフォーム4は、外板27と内板26の間の断熱用空間の形状の金属金型にウレタン液を注入、発泡、離型して成形する(ステップ4、5)。
図6は連続気泡ウレタンフォーム4の構造例を模式的に示した図である。
図7は連続気泡ウレタンフォーム4の互いに対向する1以上の対の気泡の間の状態を表した拡大写真である。図8は図7に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡の構成を説明するための図である。図9は連続気泡ウレタンフォーム4の気泡膜部の状態を表した拡大写真である。図10は図9に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡膜部の構成を説明するための図である。図11は図1に示す連続気泡ウレタンフォームの互いに対向する1以上の対の気泡の間のうち微粉末の紛体により気泡骨格部に貫通孔(第2貫通孔)が形成されている状態を表した拡大写真である。図12は図11に表した状態を説明するための図である。図13は図11に示す連続気泡ウレタンフォームの気泡骨格部の状態をさらに詳しく表した拡大写真である。図14は図13に表した連続気泡ウレタンフォームの気泡骨格部の構成を説明するための図である。
連続気泡ウレタンフォーム4は、コア層4bと、コア層4bの外周を覆うスキン層4aと、を有している。なお、スキン層は、発泡時に金型などの壁面との界面近傍に生成される樹脂厚みの厚い(発泡不十分な)芯材(ウレタンフォーム)の層である。
連続気泡ウレタンフォーム4は、空隙率が大きい(例えば、95%)部材であって、複数の気泡47と、互いに対向する1以上の対の気泡47の間に膜状に形成された気泡膜部42と、互いに対向する1以上の対の気泡47の間に、対向する1対の気泡47と他の1対の気泡47との間の気泡膜部42に連続し、且つ対向する1対の気泡の間の距離が気泡膜部42の厚みより大きく形成された気泡骨格部43とから成っている。
具体的には、気泡膜部42の厚み(1対の気泡の間の距離)は3(μm)程度であり、気泡骨格部43の厚み(1対の気泡の間の距離)は150(μm)程度である。
なお、気泡骨格部43の割合は、コア層4bよりも発泡が不十分なスキン層4aの方が大きい。
なお、連続気泡ウレタンフォーム4の発泡が不十分な領域では、バルクの樹脂に気泡が分散するような態様が存在し得るが、そのような態様においても、上述の気泡膜部42及び気泡骨格部43の定義は当てはまる。
すなわち、そのような態様においては、大部分が気泡骨格部43であると想定される。
また、上述の厚みの実態から、互いに対向する一対の気泡間の距離が3(μm)以下の部分が、典型的な気泡膜部42であり、互いに対向する一対の気泡間の距離が150(μm)以上の部分が、典型的な気泡骨格部43であると言える。
そして、連続気泡ウレタンフォーム4の全ての気泡間の連続通気性を確保するために、全ての気泡膜部42には第1貫通孔44が形成されるとともに、気泡骨格部43には第2貫通孔45が形成されている。
気泡膜部42に形成される第1貫通孔44は、例えば、互いに親和性が無く分子量が異なる2種類以上のウレタン粉末を用いて発泡させることにより、分子レベルで生じる歪に基づいて形成される。
なお、2種類以上のウレタン粉末としては、例えば、所定の組成を有するポリオール(polyol)の混合物と、ポリイソシアネート(polyisocyanate)と、を採用することができ、これらを水などの発泡剤の存在下で反応させることにより第1貫通孔を形成することできる。この他には、ステアリン酸カルシウム(calcium stearate)などを用いても、第1貫通孔44を形成することができる。
第1貫通孔44の平均径は2〜8μmであり、連続気泡ウレタンフォーム4の通気孔を形成する。
一方、気泡骨格部43に形成される第2貫通孔45は、ウレタン粉末とは親和性の無い(接着しにくい)微粉末(ポリエチレン(polyethylene)粉末、ナイロン(nylon)粉末など)をウレタン粉末に混合させて充填させることにより、微粉末の粉体46と気泡との界面に形成することができる。
なお、気泡47の粒径が約100(μm)であるのに対し、微粉末の粉体46の粒径は約10〜30(μm)に設定すると、第2貫通孔45による連通率を最適化できる。よって、第2貫通孔45の平均径は10〜30μmであり、連続気泡ウレタンフォーム4の通気孔を形成する。
以上により、注入されるウレタン液は、発泡後の気泡の気泡膜部42に第1貫通孔44を形成するために、互いに親和性の無い2種類以上のウレタン粉末が混合されたものであるとともに、発泡後の気泡を形作る気泡骨格部43に第2貫通孔45を形成するために、ウレタン粉末とは親和性の無い微粉末の粉体46が混合されたものである。
また、連続気泡ウレタンの連通孔径は高々200μm程度であり、排気抵抗が大きいため、排気時間を短くするために排気口16につながった排気用溝を形成する方法、排気口周辺部を排気抵抗の小さいグラスウールなど繊維上のものを一体発泡する方法があり、排気時間を短縮して生産性を格段に上げることが可能となる。
図5を用いて、引き続き本発明の実施の形態1の冷蔵庫扉の製造方法について説明する。
連続気泡ウレタンフォーム4の成形品を、内板26に収め、外板27をかぶせ(ステップ6)、内板26と外板27が接触する外周部に熱と圧力を加えて、内板26と外板27を熱溶着する(ステップ7)。
このとき、図3(a)や図4(a)に示すように、内板26の接着層がポリプロピレン層である場合は、外板27の接着層CPP(無延伸ポリプロピレン層)との間で熱溶着する。
なお、図示されていないが、種々のガス吸着剤を、連続気泡ウレタンフォーム4と共に箱体内部に設置してもよい。
主に、ガス吸着剤としては、空気を選択的に吸着する空気吸着剤、あるいは、水分を吸着する水分吸着剤が知られている。このガス吸着剤により、真空排気で排気しきれずに残存するガスや、長期間の間にガスバリア性の高い内板26、外板27を透過して侵入する微量なガスを吸着することで、長期間真空度を維持することが可能となる。
熱溶着された内板26、外板27で構成された断熱体を排気口16を通して真空排気装置により、所定時間排気を行い(ステップ8)、封止材17を用いて超音波溶着などで溶着封止し(ステップ9)、真空断熱体13を得ることができる。
排気時間を短縮し、生産性を向上させるためには連続気泡ウレタンフォーム(芯材)4の通気孔23が排気口16につながっていることが望ましい。また封止材17は排気口から近いほうから、接着層33、金属箔34、耐熱保護層35で構成されている。
接着層33は金属箔34の内側で融点が180℃以下の接着層であり、耐熱保護層35は金属箔34の外側で融点が200℃以上の耐熱層である。
なお、排気口16は略円形とし、排気口16の穴径は1mm以上としている。
その後、得られた真空断熱体13に庫内外観部品および庫外外観部品をそれぞれ接着し(ステップ10、11)、冷蔵庫扉が完成する。
3.[評価結果]
(表1)は、本発明の実施の形態1における連続気泡ウレタンフォーム成形時の金型温度と得られたウレタンフォームのスキン層の厚みの関係を一覧にまとめたものである。
Figure 2020034115
金型温度は例えば接触式の温度計(例えば安立計器株式会社製のHD−1100E)で発泡する面内を少なくとも9点測定し、平均したものである。またスキン層の厚みは、断面を走査型電子顕微鏡(例えば株式会社キーエンス製のVE−9800)で観察し、フォーム全体に亘って少なくとも9点測定し、平均したものである。図15に観察写真とスキン層とコア層の区別の例を示す。また、本結果をグラフにしたものを図16に示す。
本結果によれば、成形時の金型温度を上げることで、スキン層の厚みが減少することがわかる。
(表2)は、本発明の実施の形態1における連続気泡ウレタンフォームのスキン層の厚みと連通率の関係を一覧にまとめたものである。
Figure 2020034115
連続気泡率は100%−独泡率で算出され、独泡率は、貫通孔がなく独立気泡となった気泡で囲われた空間容積の、ウレタンフォーム全体空間容積に対する比率である。連続気泡率は、乾式自動密度計(例えば島津製作所製のアキュピックII1340)でウレタンフォーム内の貫通した気泡空間容積を測定し、ウレタンフォーム中の空間容積(かさ容積−ウレタン樹脂容積)で比率を算出して求めた。スキン層を観察した箇所と、連続気泡率を測定した箇所はごく近傍(距離10mm以内)である。また、本結果をグラフにしたものを図17に示す。
本結果によれば、スキン層の厚みが減少するとともに、連続気泡率が増加し、スキン層の厚みを1mm以下とすることで、連続気泡率を100%、つまりより連通化を促進させることができる。
(表3)は、本発明の実施の形態1における、連続気泡ウレタンフォームに混合したポリエチレン粒子の最大径とスキン層の厚み及びその比とそのときの連続気泡率の関係をまとめたものである。
Figure 2020034115
本結果によれば、ポリエチレンの粒子の最大径とスキン層の厚みの比が10倍以下とすることで、連続気泡率を100%、つまりより連通化を促進させることができる。スキン層の厚みが大きくなるほど、それに応じて気泡膜の厚み及び気泡骨格の厚みが大きくなるため、貫通させる補助材料としてのポリエチレンの粒子径もそれに応じて大きくする必要があることを示している。一方でポリエチレンの粒子径を大きくすると、ウレタン発泡機の循環ポンプの上流側に付属されているストレーナーのメッシュにポリエチレン粒子が詰まることで、循環できなくなる不具合や、発泡機注入ヘッド先端のオリフィスにポリエチレン粒子が詰まることで、注入できなくなる不具合が発生し、生産に支障をきたすため通常ポリエチレン粒子の最大径は高々200〜300μmのものが使用される。このため、使用するポリエチレン粒子の最大径に対して、スキン層の厚みをその10倍以下となるように小さくすることが有効となる。
(表4)は、本発明の実施の形態1における、スキン層の密度及び圧縮強度と組立〜真空排気後の真空断熱体の反りの測定結果をまとめたものである。
Figure 2020034115
圧縮強度は、精密万能試験機(例えば島津製作所製のオートグラフAG−50kNplus)で10%歪み時の応力を測定したものである。
本結果によれば、スキン層の密度を80kg/m3、望ましくは90kg/m3、また、圧縮強度を250kPa、望ましくは300kPaとすることで、真空断熱体の反りを2mm以下に抑えることができる。ここで、2mm以下の反りに抑えることができれば、その後の外観部品との接着後に反りがほぼゼロに抑えることが可能となる。
(表5)は、本発明の実施の形態1における、連続気泡ウレタンフォームのスキン層の厚みとスキン層の気泡骨格径及び連続気泡率の関係をまとめたものである。なお、気泡骨格径は、気泡の最大径とし、電子顕微鏡(SEM)にて測定した。
Figure 2020034115
本結果によれば、スキン層の厚みが2mm以下になればスキン層の気泡骨格径が200μm以下となり、連続気泡率が100%、つまり完全に連通化させることができる。一般的にコア層の気泡骨格径が大きくなるほど、それに応じてスキン層の気泡骨格径も大きくなる。また、スキン層の厚みが大きくなるほど、それに応じてスキン層の気泡骨格径も大きくなる。つまり、コア層の気泡骨格径あるいはスキン層の厚みに関わらず、スキン層の気泡骨格径を200μm以下にすることが有効となる。
以上のように本発明は、安価で断熱性能の高い高品質な真空断熱体を提供することができ、例えば貯蔵室内の食品を収容するケースなどを始め、冷蔵庫や電気給湯器等の民生用機器から自動販売機用、自動車用、住宅用の断熱体及びこれを用いた断熱容器、断熱壁として幅広く適用することができる。
1 冷蔵庫
2 外箱
3 内箱
4 連続気泡ウレタンフォーム(芯材)
4a スキン層
4b コア層
7 断熱箱体
8 仕切体
9 冷凍室
10 冷蔵室
13 真空断熱体
14 庫外外観部品
15 庫内外観部品
16 排気口
17 封止材
18 圧縮機
19 蒸発器
20 蒸発皿
21 冷却室壁体
25 冷蔵庫扉
26 内板
27 外板
31 ガスバリア層
32 熱溶着層
33 接着層
34 金属箔
35 耐熱保護層
42 気泡膜部
43 気泡骨格部
44 第1貫通孔
45 第2貫通孔
46 粉体
47 気泡

Claims (7)

  1. 真空断熱体を構成する連続気泡ウレタンは、内部のコア層よりもウレタン気泡骨格及び気泡膜の厚みが大きいスキン層が形成されており、前記スキン層の厚みは1mm以下(ゼロを含まず)であることを特徴とする真空断熱体。
  2. 前記連続気泡ウレタンは、ウレタン樹脂と非親和性の粒子を含み、前記スキン層の厚みは、前記非親和性の粒子の最大径の10倍以下とすることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱体。
  3. 前記スキン層の密度は80kg/m3以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱体。
  4. 前記スキン層を含んだ連続気泡ウレタンの10%歪み時の圧縮強度は、250kPa以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空断熱体。
  5. 前記スキン層の気泡骨格径は200μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空断熱体。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱体を用いた断熱容器。
  7. 請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱体を用いた断熱壁。
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