JP2020033325A - 抗インフルエンザウイルス活性ペプチドおよびインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた抗インフルエンザウイルス活性を有するペプチドと、これを用いたインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬を提供すること。【解決手段】特定のアミノ酸配列を含む抗インフルエンザウイルス活性ペプチド。【選択図】図2
Description
本発明は、抗インフルエンザウイルス活性ペプチドおよびインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬に関する。
A型インフルエンザは罹患率ならびに死亡率が共に高く、また高病原性株の蔓延が危惧されており、人類にとって大きな驚異となっている。例えば、現在、治療薬として広く使用されているノイラミニダーゼ阻害薬に対しては耐性ウイルスの出現が問題となっており、近年ウイルス複製に必要な宿主因子を標的とした創薬が注目されている。
これまでに、ゲノムワイドRAN干渉スクリーニングにより295種の宿主因子が同定されている(非特許文献1)。このうち、インフルエンザウイルス侵入後の段階に働く因子として、Ca2+-カルモデュリン依存性プロテインキナーゼであるCaMKIIβが同定されているが、ウイルス複製におけるその関与機構は未解明であり、また特異的な制御分子の開発もなされていない。
また、低分子CaMK阻害剤として、KN62、KN93などの分子が知られており、これらの分子は、CaMKのカルモデュリン結合部位を標的として結合することにより、CaMK活性を阻害する。
一方、これまでに本発明者らは、多価型ペプチドライブラリースクリーニング法(特許文献1)を用い、CaMKIIの触媒部位を標的として、6種の新規CaMKII阻害ペプチドを開発している(特許文献2)。
Nature. 2010 Feb 11;463(7282):813-7.
上述したように、インフルエンザウイルスの複製におけるCaMKの関与機構は未解明であるが、本発明者らは、インフルエンザウイルス侵入後のCaMK活性を阻害することで、インフルエンザウイルスの増殖を抑制できるのではないかとの着想を得た。
しかしながら、CaMK以外にもカルモデュリン依存的に活性を示す酵素は多数知られていることから、例えばKN62、KN93などの従来の低分子CaMK阻害剤は特異性に欠け、十分な抗インフルエンザウイルス活性が期待できないという問題がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、優れた抗インフルエンザウイルス活性を有するペプチドと、これを用いたインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬を提供することを課題としている。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、配列番号1または2のアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴としている。
本発明のインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬は、前記抗インフルエンザウイルス活性ペプチドを含有することを特徴としている。
本発明のペプチドの使用は、インフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬の製造のために配列番号1または2のアミノ酸配列を含むペプチドを使用することを特徴としている。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドによれば、インフルエンザウイルスの増殖を顕著に阻害することができ、本発明のインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬によれば、確実にインフルエンザウイルス感染症を予防、治療することができる。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、以下の配列番号1または2のアミノ酸配列を含む。
配列番号1:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His (RRILLLLLARLH)
配列番号2:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His (RIILLLLLALLH)
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドには、インフルエンザウイルス増殖阻害効果を損なわないものであれば、配列番号1、2のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に、ペプチドの電荷や親水性等を考慮して、1以上のアミノ酸を付加したものや、修飾基などの修飾分子を付加した誘導体などが含まれる。
配列番号2:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His (RIILLLLLALLH)
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドには、インフルエンザウイルス増殖阻害効果を損なわないものであれば、配列番号1、2のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に、ペプチドの電荷や親水性等を考慮して、1以上のアミノ酸を付加したものや、修飾基などの修飾分子を付加した誘導体などが含まれる。
例えば、配列番号1、2のアミノ酸配列のC末端側には、膜透過性ペプチドなどを結合させることもできる。例えば、ペプチドの水溶性を担保するためのアミノ酸として、リジンが3つ連続する配列(KKK)を含むペプチドを付加することができる。本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドの長さは、例えば、20〜30アミノ酸以下の範囲を例示することができる。
配列番号1、2のアミノ酸配列のC末端側には、CaMKIIの分子構造に対応させ、分子長を調節するための修飾分子を付加することができ、このような修飾分子としては、例えば、炭素数4〜10程度の鎖長のものが好ましく、具体的には、カプロン酸(amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH])等を例示することができる。
また、配列番号1または2のアミノ酸配列を含むペプチドの誘導体としては、リン酸化、メチル化、アセチル化、アデニリル化、糖鎖付加などの修飾が加えられたもの、他のペプチドやタンパク質との融合ペプチドも挙げられる。
さらに、本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドには、インフルエンザウイルス増殖阻害効果を損なわないものであれば、その塩も含まれる。ペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基や酸との塩が用いられ、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等)の付加塩、有機酸(p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等)の付加塩、無機塩基(水酸化アンモニウム又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等)、アミノ酸の付加塩等が挙げられる。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、液相法、固相法、液相法と固相法を組み合わせたハイブリッド法等の化学合成法、遺伝子組み換え法等、公知のペプチドの製造方法によって製造することができる。また、ペプチドの誘導体も、公知の方法又はそれに準ずる方法で当業者が調製することができる。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、インフルエンザウイルス感染初期のCaMKの活性化を効率よく抑制していると考えられ、顕著にウイルス活性(増殖)を抑制することができる。
本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドが対象とするインフルエンザウイルスはその型や由来を特に制限するものでなく、A型、B型またはC型ないしヒト分離型、ブタやウマ等の他の哺乳動物分離型または鳥類分離型等のいずれであってもよい。 また、本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、ウイルスの細胞への侵入から1時間以内で起こる、CaMKが関与しているイベントを阻害することによって、強力な抗ウイルス活性を示す。したがって、本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドをプローブとして用いることにより、このイベントの分子機構やこれに伴う種々の細胞機能の詳細を解明するためのツールとして利用することもできる。その結果、新たな分子標的薬の同定、さらにその制御分子の開発へと、これまでにない創薬展開が期待できる。
本発明のインフルエンザ感染症の予防・治療薬は、上記の通りの本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドを含有する。
本明細書において、「感染」とは、ウイルスが皮膚や粘膜を介して生体に侵入する過程、又は、ウイルスが膜融合により細胞内に侵入する過程を意味している。また、本明細書において「ウイルス感染」とは、症状の有無にかかわらずウイルスが生体内に侵入している状態をいう。
また、本明細書において、「インフルエンザ感染症の予防または治療」とは、その最も広い意味で用いられ、例えば、インフルエンザウイルスの感染と関連する一つまたは複数の症状の緩和若しくは悪化の阻止、感染後の症状の発生の抑制、生体内におけるウイルスの細胞への感染の阻止(遅延又は停止)、生体内におけるウイルスの増殖の阻止(遅延又は停止)、生体内におけるウイルス数の減少等を生じさせることをいう。
本発明のインフルエンザ感染症の予防または治療薬の投与形態は特に限定されず、経口的投与でも非経口的投与でもよい。非経口投与としては、例えば、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射等の注射投与、経皮投与、経粘膜投与(経鼻、経口腔、経眼、経肺、経膣、経直腸)投与などを例示することができる。
本発明のインフルエンザ感染症の予防または治療薬は、有効成分としての上記抗インフルエンザウイルス活性ペプチドをそのまま用いてもよいし、薬学的に許容できる担体、賦形剤、添加剤等を加えて製剤化してもよい。剤形としては、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤等が挙げられる。
製剤化は、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、溶解補助剤、着色剤、矯味矯臭剤、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜使用し、常法により行うことができる。
製剤化に用いられる成分の例としては、精製水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等薬学的に許容される有機溶剤、動植物油、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ソルビトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、コーンスターチ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガント、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、高級アルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミンなどを例示することができる。
本発明のインフルエンザ感染症の予防または治療薬を哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ウマ、サル、ブタ等)、特にヒトに投与する場合の投与量は、症状、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与間隔、有効成分の種類、製剤の種類によって異なり、特に限定されないが、例えば、100μg〜500mg、100μg〜1000mgを1回または数回に分けて投与することができる。注射投与の場合、患者の体重により、1μg/kg〜3000μg/kg、3μg/kg〜1000μg/kgを1回または数回に分けて投与してもよい。
本発明のヘマグルチニン結合ペプチドおよびインフルエンザ感染症の予防・治療薬は、以上の実施形態に限定されることはなく、感染による細胞障害活性阻害効果を害さない範囲で適宜設計することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドおよびインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>ペプチドの合成
特許文献2で特定されたモチーフを含む以下の6種のCaMKII阻害ペプチド(配列番号3〜8)を合成した。
特許文献2で特定されたモチーフを含む以下の6種のCaMKII阻害ペプチド(配列番号3〜8)を合成した。
これらの合成ペプチド(配列番号3〜8)は、CaMKII 結合モチーフのN末端にMet−Ala(MA)を付加し、C末端に、配列番号9:Ala-Lys-Lys-Lys(AKKK)を付加している。N末端のMAは、多価型ペプチドライブラリーの構造に対応させて付加しているが省略することが可能である。また、C末端のAKKK(配列番号9)は、合成ペプチドの水溶性を担保するために導入しているが、設計変更可能である。
さらに、CaMKIIの分子構造に対応させるため、配列番号3〜8で示す合成ペプチドのC末端にU:amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加して分子鎖長を調整したものを使用してインフルエンザウイルスによる細胞障害活性に対する抑制効果を検討した。
以下、配列番号3の合成ペプチドのC末端にamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加したものをM1(monomer 1)と記載し、同様に、配列番号4〜8の合成ペプチドにamino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を付加したものを順に、M2(monomer 2)〜M6(monomer 6)と記載する。
M1: MA-[RRR-L-LLLL-A-RHH]-AKKKU
M2: MA-[RRI-L-LLLL-A-RHH]-AKKKU
M3: MA-[RRI-L-LLLL-A-RLH]-AKKKU
M4: MA-[RII-L-LLLL-A-LLH]-AKKKU
M5: MA-[RII-L-LLLL-A-RLH]-AKKKU
M6: MA-[RRI-L-LLLL-A-LLH]-AKKKU
M2: MA-[RRI-L-LLLL-A-RHH]-AKKKU
M3: MA-[RRI-L-LLLL-A-RLH]-AKKKU
M4: MA-[RII-L-LLLL-A-LLH]-AKKKU
M5: MA-[RII-L-LLLL-A-RLH]-AKKKU
M6: MA-[RRI-L-LLLL-A-LLH]-AKKKU
<実施例2>H1N1 ウイルス(MOI 20)による細胞障害活性に対するCaMKII 阻害ペプチドの抑制効果
MDCK細胞を上記各ペプチド(M1〜M6)で30分処理後、A型インフルエンザウイルス H1N1 A/Puerto Rico/8/34 (PR8) 株をmultiplicity of infection (MOI) 20の条件で感染させ、24時間後の細胞生存率を測定した。
MDCK細胞を上記各ペプチド(M1〜M6)で30分処理後、A型インフルエンザウイルス H1N1 A/Puerto Rico/8/34 (PR8) 株をmultiplicity of infection (MOI) 20の条件で感染させ、24時間後の細胞生存率を測定した。
その結果、感染によって生存率は40%程度に低下するが、これらペプチドのうちM3、 M4、 M5、 M6が顕著な阻害活性を示すことが見出された。 M3, M4, M5のIC50値は、それぞれ2.7、6.9、9.9 μM)であり、いずれもKN93(IC50値は算出不能)よりも強い阻害活性を示した(図1)。
そこで、M3、 M4、M5、M6を用いて、同様の実験を多重感染条件であるMOI 0.001のウイルス存在下で行ったところ、M5, M6はほとんど阻害活性を示さないこと、一方でM3ならびにM4が強い阻害活性を示すこと(それぞれのIC50値は、4.6、2.7μM)、M3はほぼ100%まで生存率を回復させること、が明らかとなった(図2)。そこで以下の検討ではM3を用いることとした。
<実施例3>M3の抗ウイルス活性に及ぼす投与タイミングの影響
M3の作用機構を明らかにするため、ウイルス感染前後にM3を投与した際の、抗ウイルス活性に及ぼす効果を検討した。MDCK細胞をM3で30分処理後、H1N1 PR8株をMOI 20の条件で1時間感染させ、さらに洗浄後24時間後の細胞生存率を測定した。
M3の作用機構を明らかにするため、ウイルス感染前後にM3を投与した際の、抗ウイルス活性に及ぼす効果を検討した。MDCK細胞をM3で30分処理後、H1N1 PR8株をMOI 20の条件で1時間感染させ、さらに洗浄後24時間後の細胞生存率を測定した。
その結果、M3は十分な細胞障害阻害活性を示すことが示された。一方で、ウイルスを1時間感染させた後、洗浄後1時間以降にM3を添加した場合にはいずれも全く阻害活性は認められなかった(図3)。
すなわち、M3の作用点は感染後1時間以内に生じる事象にあると考えられた。これまでに、A型インフルエンザウイルス感染後、20分以内に細胞Ca濃度が一過性に顕著に増加することが知られており、この細胞内Ca2+の増加がCaMKの活性を引き起こしていると考えられる。現時点でCaMKがウイルス増殖に関わる分子機構の詳細は明らかになっていないが、M3はこの感染初期のCaMKの活性化を効率よく抑制していると考えられる。
<実施例4>M3のウイルス増殖に対する抑制効果
実際にM3がウイルス増殖を抑制しているのかを検討した。MDCK細胞を各濃度のM3で30分処理後、H1N1 PR8 株をMOI 20で感染させ、16時間後培養上清中に存在しているウイルス力価を、プラークアッセイにより定量した。
実際にM3がウイルス増殖を抑制しているのかを検討した。MDCK細胞を各濃度のM3で30分処理後、H1N1 PR8 株をMOI 20で感染させ、16時間後培養上清中に存在しているウイルス力価を、プラークアッセイにより定量した。
その結果、感染によりウイルス力価は700倍程度に増加するが、M3は容量依存的に顕著にウイルスの増殖を抑制することが示された(図4)。
<実施例5>H1N1 PR8感染による致死性に対するM3の効果
マウスを用いたH1N1 PR8感染による致死性に対するM3の治癒効果を検討した。マウス個体に2000 pfuのH1N1 PR8 株をM3 (0.5, 1.25, 2.5 mg/kg)、KN93 (0.55 mg/kg; M3 2.5mg/kgと等モル数)存在下あるいは非存在下で経鼻投与し、体重変化ならびに生存率を測定した。
マウスを用いたH1N1 PR8感染による致死性に対するM3の治癒効果を検討した。マウス個体に2000 pfuのH1N1 PR8 株をM3 (0.5, 1.25, 2.5 mg/kg)、KN93 (0.55 mg/kg; M3 2.5mg/kgと等モル数)存在下あるいは非存在下で経鼻投与し、体重変化ならびに生存率を測定した。
その結果、ウイルス単独群では感染後3日から体重減少が観察され、9匹中8匹が死亡したのに対し、M3投与群ではいずれの濃度を用いた場合でも感染後1日から体重減少が観察されるものの、その後多くは回復に向かい、最も用量の低い0.5 mg/kgで9匹中2匹が死亡した以外は全例が生存するようになることが示された(図5、図6)。すなわち、M3はウイルス感染による致死性を顕著に阻害することが明らかとなった。一方で、KN93はM3 2.5mg/kgと等モル数を用いた場合でもウイルス単独群と同様9匹中8匹が死亡した(図5、図6)。
<まとめ>
以上の通り、CaMKII阻害ペプチドとして同定したM3がA型インフルエンザウイルスの細胞障害活性、ならびにマウス個体での致死性を顕著に阻害することを見出した。また、実施例2の結果を考慮すると、M4についてもM3と同等の抗インフルエンザウイルス活性を有することが推察される。
以上の通り、CaMKII阻害ペプチドとして同定したM3がA型インフルエンザウイルスの細胞障害活性、ならびにマウス個体での致死性を顕著に阻害することを見出した。また、実施例2の結果を考慮すると、M4についてもM3と同等の抗インフルエンザウイルス活性を有することが推察される。
CaMKがA型インフルエンザウイルスの増殖に関与している可能性が指摘されているが、MDCKに対するH1N1 PR8株(MOI 20)の細胞障害活性阻害能で比較すると、M3は、CaMK阻害薬として知られているKN93に較べて少なくとも40倍以上阻害能が強い。
また、これまでに、マウスの感染実験で、CaMK阻害薬によって感染による致死性が抑制されたことが示された分子は報告がなく、今回見出されたM3、M4に含まれる以下のアミノ酸配列(配列番号1、2)を含む抗インフルエンザウイルス活性ペプチドは、新たなA型インフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬の有効成分として利用することができる。
配列番号1:Arg-Arg-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Arg-Leu-His (RRILLLLLARLH)
配列番号2:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His (RIILLLLLALLH)
配列番号2:Arg-Ile-Ile-Leu-Leu-Leu-Leu-Leu-Ala-Leu-Leu-His (RIILLLLLALLH)
Claims (3)
- 配列番号1または2のアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする抗インフルエンザウイルス活性ペプチド。
- 請求項1の抗インフルエンザウイルス活性ペプチドを含有することを特徴とするインフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬。
- インフルエンザウイルス感染症の予防・治療薬の製造のための配列番号1または2のアミノ酸配列を含むペプチドの使用。
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