JP2020033322A - パーキンソン病の治療のための医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供する。【解決手段】N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬を含み、線条体内投与される、パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供する。N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬は、メマンチンまたはアマンタジンであってよく、好ましくはメマンチンである。本願の医薬組成物は、パーキンソン病患者、特にパーキンソン病の薬物治療を受けている患者におけるパーキンソン症状および/または薬物誘発性ジスキネジアの治療のために用いられる。本願の医薬組成物は線条体内に持続的に投与され得る。【選択図】なし
Description
本願は、パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供する。
ドパミン前駆体であるレボドパの投与はパーキンソン病を治療するための強力な手段である。しかしながら、レボドパへの長期間の曝露はレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)と呼ばれる異常不随意運動(AIM)を引き起こす(非特許文献1)。LIDは身体障害の主要な原因であり、5年間毎日レボドパを投与されたパーキンソン病患者の80%以上に生じると報告されている(非特許文献2)。
パーキンソン病の症状は、相反性の生理作用を有するドパミンシグナルとグルタミン酸シグナルとの間の不均衡による線条体の機能異常に起因する(非特許文献3)。線条体における不適応なシナプス可塑性を導くグルタミン酸作動性の皮質線条体入力の脱制御が、LIDの発生の基盤メカニズムであることが立証されている(非特許文献4)。線条体のシナプス後レベルにおいて、D1型ドパミン受容体とグルタミン酸受容体(特にN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体)との相互作用が特に関連性が高いと考えられている(非特許文献4〜7)。したがって、NMDA受容体を標的とする化合物の経口投与が臨床診療において試みられている(非特許文献6)。現在、非競合的NMDA受容体拮抗薬であるアマンタジンの経口投与が、パーキンソン病患者のLIDを減少させるのに推奨されている唯一の補助治療である(非特許文献7)。
しかしながら、NMDA受容体拮抗薬、特にアマンタジンの経口投与は、心血管、胃腸および皮膚反応などの脳以外の部位に重大な副作用を引き起こす(非特許文献5、8)。またNMDA受容体は脳内に広く分布しているため(非特許文献9)、脳の線条体以外の部位において精神病、幻覚、学習障害および記憶障害などの有害事象を引き起こす。これらの全身性の副作用のために、NMDA受容体拮抗薬の使用可能な用量は制限され、その臨床的効果は満足の行くものではない(非特許文献10)。
Jenner P. Nat Rev Neurosci 2008;9:665-677
Ahlskog JE et al., Mov Disord 2001;16:448-458.
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Pahwa R et al., JAMA Neurol 2017;74:941-949.
本願は、パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供することを目的とする。特に、パーキンソン病の薬物治療を受けている対象において、パーキンソン症状および/またはパーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアの治療のために使用される医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬を含む医薬組成物を線条体内投与することによって、パーキンソン病に起因する症状を抑制できることを初めて見出した。
本願は、NMDA受容体拮抗薬を含み、線条体内投与される、パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供する。NMDA受容体拮抗薬はメマンチンまたはアマンタジンであってよく、好ましくはメマンチンである。本願の医薬組成物は、パーキンソン病患者、特にパーキンソン病の薬物治療を受けている患者におけるパーキンソン症状および/または薬物誘発性ジスキネジアの治療のために用いられる。本願の医薬組成物は線条体内に持続的に投与され得る。
本願の医薬組成物を線条体内投与することによって、パーキンソン病におけるパーキンソン症状を抑制することができる。特に本願の医薬組成物をパーキンソン病の薬物治療を受けている患者に線条体内投与することによって、当該患者におけるパーキンソン症状および/またはパーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアを抑制することができる。
本願は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬を含み、線条体内投与される、パーキンソン病の治療のための医薬組成物を提供する。
1つの実施態様において、本願の医薬組成物を投与する対象はパーキンソン病を有するヒトを含む哺乳動物、特にヒトである。
1つの実施態様において、本願の医薬組成物を投与する対象はパーキンソン病の薬物治療および/または外科治療を受けているヒトを含む哺乳動物、特にヒトである。該薬物治療におけるパーキンソン病治療薬は限定されないが、ドパミン前駆体(レボドパなど)、ドパミン脱炭素酵素阻害薬(カルビドパ、ベンセラジドなど)、MAO-B阻害薬(ラサギリン、セレギリン、ゾニサミドなど)、COMT阻害薬(エンダカポン、トルカポンなど)、ノルアドレナリン作動薬(ドロキシドパなど)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン、アマンタジンなど)、ドパミン受容体刺激薬(プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、アポモルヒネ、カベルゴリン、ブロモクリプチン、ペルコリドなど)、アデノシンA2a受容体拮抗薬(イストラデフィリンなど)および抗コリン薬(トリへキシフェニジル、プロメタジン、ビぺリデン、プロフェナミン、メチキセン、ピロヘプチンなど)を含む。1つの実施態様において、該薬物治療におけるパーキンソン病治療薬はレボドパである。
本明細書において、「N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬」は競合性拮抗薬または非競合性拮抗薬であってよく、例えば、メマンチン、アマンタジン、アカンプロセート、ベソンプロジル、ケタミン、デキストロメトルファン、デキストロルファンおよびメタドンなどが挙げられる。1つの実施態様において、NMDA受容体拮抗薬はメマンチンまたはアマンタジンであり、好ましくはメマンチンである。
本願における「医薬組成物」は、NMDA受容体拮抗薬に必要に応じて蒸留水、pH調整剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、抗酸化剤、保存剤等を添加することにより、液状製剤として製造することができる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられ、懸濁化剤としては、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられ、溶解補助剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられ、安定化剤としては、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、エーテル等が挙げられ、等張剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられ、保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書における「線条体内投与」とは、本願の医薬組成物を線条体内に直接投与することを意味する。本願の医薬組成物を線条体内投与することにより、脳以外の部位および/または脳内の線条体以外の部位における副作用の発生を抑制し、線条体における治療効果を増加させ得る。「線条体内投与」は、例えば本願の医薬組成物を、線条体内に埋め込んだカテーテルを介して線条体内に注入させることによって達成され得る。
1つの実施態様において、本願の医薬組成物は線条体内に持続的に投与され得る。本明細書における「持続的な投与」は、本願の医薬組成物を対象に慢性的に投与し続けることを意味する。投与期間に定めはなく、例えばパーキンソン病の薬物治療を受けている患者に投与する場合、当該薬物治療を受けている限り、持続的に投与することが例示される。患者の生涯に渡り持続的に投与することもあり得る。
1つの実施態様において、「持続的な投与」はプログラム可能なポンプまたは浸透圧ポンプを備えた脳内インフュージョン(iCBI)システムを用いて達成され得る。iCBIシステムにより、適切に調節された用量の薬剤を脳の特定の領域に送達することができる。本願の医薬組成物は、iCBIシステムによって、プログラム可能なポンプまたは浸透圧ポンプから線条体に埋め込んだカテーテルを介して、一定の流速で線条体内に持続的に投与され得る。iCBIシステムの一例の概略図を図4に示す(J. Clin. Invest. 2015;125(3): 1339-1346より抜粋改変)。図中、線条体内に投与するためのインフュージョンチップ、カテーテル、およびポンプはアボットメディカルジャパンより入手可能である。本願の医薬組成物は、持続的投与のための装置に適合する、薬剤タンクに格納した形で提供されてもよい。
本願の医薬組成物は、パーキンソン症状および/またはパーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアを有効に治療できる量を対象に投与する。本願医薬組成物中に含まれる有効成分の濃度、1日当たりの有効成分の投与量は、対象の年齢、体重、症状の重篤度、他の治療などによって適宜決定すればよい。例えば、本願の医薬組成物中に含まれる有効成分の濃度は2.5mM〜500mM、好ましくは5mM〜250mM、より好ましくは25mM〜50mMであり、1日当たりの有効成分の投与量は0.05mg〜10mg、好ましくは0.1mg〜5.0mg、より好ましくは0.5mg〜1.0mgである。
本明細書において、「治療」は、症状の予防、症状の軽減・減弱、疾患の進行の停止あるいは遅延などのあらゆる疾患または症状の管理を含む。
本願における医薬組成物は、パーキンソン症状および/またはパーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアの治療に用いられ得る。「パーキンソン症状」は、パーキンソン病に起因して生じる、振戦、筋強剛、動作緩慢、姿勢反射障害などの症状を意味する。「パーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジア」は、上記のパーキンソン病治療薬を長期間投与することによって誘発される異常不随意運動を意味する。ある実施態様において、「パーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジア」はレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)である。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本願は実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、成体雄性C57BL/6マウス(8〜9週齢)を用いた。また全ての実験手順は徳島大学の動物実験委員会によって認可されたものである。
以下の実施例において、成体雄性C57BL/6マウス(8〜9週齢)を用いた。また全ての実験手順は徳島大学の動物実験委員会によって認可されたものである。
黒質線条体の6-OHDA病変
N2Oおよびイソフルラン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)での麻酔下において、マウスに6-OHDA-HCl(Sigma-Aldrich;3μgを、0.2%アスコルビン酸を含む0.2μlの生理食塩水に溶解した)を、内側前脳束を標的として定位的に注入した。標的の座標(AP=-1.2、L=+1.1、DV=+5.0)はマウスの脳アトラスに従った(Paxinos G et al., The mouse brain in stereotaxic coordinates, Ed 2. San Diego: Academic Press, 2001.)。
N2Oおよびイソフルラン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)での麻酔下において、マウスに6-OHDA-HCl(Sigma-Aldrich;3μgを、0.2%アスコルビン酸を含む0.2μlの生理食塩水に溶解した)を、内側前脳束を標的として定位的に注入した。標的の座標(AP=-1.2、L=+1.1、DV=+5.0)はマウスの脳アトラスに従った(Paxinos G et al., The mouse brain in stereotaxic coordinates, Ed 2. San Diego: Academic Press, 2001.)。
レボドパ/ベンセラジド処置
マウスに、生理食塩水に溶解したベンセラジド-HCl(Sigma-Aldrich;12.5 mg/kg)を腹腔内注射し、その20分後に0.9%生理食塩水に溶解したレボドパ(Sigma-Aldrich;15 mg/kg)を腹腔内注射した。
マウスに、生理食塩水に溶解したベンセラジド-HCl(Sigma-Aldrich;12.5 mg/kg)を腹腔内注射し、その20分後に0.9%生理食塩水に溶解したレボドパ(Sigma-Aldrich;15 mg/kg)を腹腔内注射した。
6-OHDA病変マウスにおけるAIMおよび回転行動の評価
Morigaki R et al., Front Cell Neurosci 2017;11:26.に従って、AIMスコア化を最後のレボドパ注射から150〜180分間にわたり、10分毎に1分間行った。6-OHDA病変と反対側のレボドパ誘発性回転(Boix J et al., Behav Brain Res 2015;284:196-206.)を、最後のレボドパ投与の30分後に測定した。パーキンソン病様誘発性の回転行動を、最後のレボドパ投与の6時間後に6-OHDA病変と同側の自発的な回転(Boix J et al., Behav Brain Res 2015;284:196-206.)を測定することによって評価した。
Morigaki R et al., Front Cell Neurosci 2017;11:26.に従って、AIMスコア化を最後のレボドパ注射から150〜180分間にわたり、10分毎に1分間行った。6-OHDA病変と反対側のレボドパ誘発性回転(Boix J et al., Behav Brain Res 2015;284:196-206.)を、最後のレボドパ投与の30分後に測定した。パーキンソン病様誘発性の回転行動を、最後のレボドパ投与の6時間後に6-OHDA病変と同側の自発的な回転(Boix J et al., Behav Brain Res 2015;284:196-206.)を測定することによって評価した。
iCBIデバイスの配置およびMMT投与
イソフルラン(Sigma-Aldrich)での麻酔下において、プログラム可能なiPRECIO(商標)マイクロインフュージョンポンプ(Model SMP-300, Primetech Co., Tokyo, Japan)またはAlzet(商標)ミニ浸透圧ポンプ(Model 2001, Durect Co., Cupertino, CA)を備えたiCBIデバイスをマウスに埋め込んだ。インフュージョンカニューレをドパミンが欠乏した線条体内に定位的な座標(AP=+0.3、L=+2.3、DV=+3.0)で埋め込んだ。MMT-HCl(Wako Chemical, Osaka, Japan)を10.79μg/μL(約50mM)となるようにH2O中に溶解し、インフュージョンポンプに適用した。
イソフルラン(Sigma-Aldrich)での麻酔下において、プログラム可能なiPRECIO(商標)マイクロインフュージョンポンプ(Model SMP-300, Primetech Co., Tokyo, Japan)またはAlzet(商標)ミニ浸透圧ポンプ(Model 2001, Durect Co., Cupertino, CA)を備えたiCBIデバイスをマウスに埋め込んだ。インフュージョンカニューレをドパミンが欠乏した線条体内に定位的な座標(AP=+0.3、L=+2.3、DV=+3.0)で埋め込んだ。MMT-HCl(Wako Chemical, Osaka, Japan)を10.79μg/μL(約50mM)となるようにH2O中に溶解し、インフュージョンポンプに適用した。
免疫組織化学
免疫染色法および顕微鏡イメージング法は、Morigaki R et al., Front Cell Neurosci 2017;11:26.に記述されているように行った。チロシンヒドロキシラーゼのウサギポリクローナル抗体(TH、1:200,000)を用いた(Morigaki R et al., Front Neuroanat 2016;10:34.)。
免疫染色法および顕微鏡イメージング法は、Morigaki R et al., Front Cell Neurosci 2017;11:26.に記述されているように行った。チロシンヒドロキシラーゼのウサギポリクローナル抗体(TH、1:200,000)を用いた(Morigaki R et al., Front Neuroanat 2016;10:34.)。
統計解析
全ての分析は群平均±SEMとして表現されている。2群間比較のために対応のある両側t検定を用いた。複数の比較のために分散分析を用い、その後に対比較のためにボンフェローニの事後検定を行った。統計解析はGraphPad Prism 7ソフトウェア(GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を用いて行った。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした。
全ての分析は群平均±SEMとして表現されている。2群間比較のために対応のある両側t検定を用いた。複数の比較のために分散分析を用い、その後に対比較のためにボンフェローニの事後検定を行った。統計解析はGraphPad Prism 7ソフトウェア(GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を用いて行った。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした。
運動障害マウスモデルの作製
脳内インフュージョン(iCBI)実験に使用する運動障害マウスを作製するための実験計画を図1Aに示す。
脳内インフュージョン(iCBI)実験に使用する運動障害マウスを作製するための実験計画を図1Aに示す。
未処理のマウスおよび6-OHDA病変マウスにおいて、最後のレボドパ投与から180分間にわたり、10分毎に異常不随意運動(AIM)をスコア化した(図1B)。評価のために、各マウスを直径12cmのガラスシリンダー内に配置した。以下のAIMのサブタイプを調べた:軸(首および上半身の反対側への捻れた姿勢)、前肢(反対側の前肢のけいれん様の動き、および/または反対側の足のつかむ動作)および口舌(顎運動および反対側への舌の突出)。また、各サブタイプを以下のようにスコア化した:0、なし;1、たまに起こる;2、頻繁に起こる;3、継続的に起こる;4、継続的に起こり、感覚刺激によって中断されない。AIMはレボドパ投与後10〜60分後に最大となり、120分後にはほぼ消失した。AIMスコア化テストの結果、80%以上の同側の回転率を示した6-OHDA病変マウスの全てが3週間のレボドパ/ベンセラジド処置後にLIDを示したことがわかった。
6-OHDA誘導性病変を有するマウスの非病変側および病変側(矢印)における、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)を染色した線条体の代表的な顕微鏡写真を図1Cに示す。TH免疫染色の結果、運動障害マウスの線条体においてドパミン作動性求心性軸索が著しく減少していることがわかった。
図1Dに、非病変側(Non-lesion)および病変側(Lesion)の背外側の線条体における平均のTH染色強度の定量化を示す。定量化の結果、6-OHDA病変側の背側線条体におけるTH免疫活性が、非病変側と比較して80%以上減少していることがわかった(図1D;P<0.001、対応のある両側t検定)。
運動障害マウスに対するiPRECIO (商標) マイクロインフュージョンポンプによる線条体内MMTインフュージョンの効果
iPRECIO(商標)マイクロインフュージョンポンプを備えたプログラム可能なiCBIシステムを用い、線条体内MMTインフュージョンが運動障害マウスのLIDを減少できるかを調べた(Tan T et al., Front Pharmacol 2011;2:44.)。実験プロトコル(図2A)の28日目に、インフュージョンカニューレを含むiCBIデバイス(図1E)をドパミンが欠乏した線条体に埋め込んだ(図1F)。レボドパ/ベンセラジド処置を31日目に再開した。同時に、MMT処置を行う運動障害マウスにはMMT(10.79μg/μl)の継続的な線条体内インフュージョンを、最初の5日間(31〜35日目)は0.3μl/時間の流速、次の5日間(36〜40日目)は0.8μl/時間の流速、最後の5日間(41〜45日目)は2.0μl/時間の流速で行った。平行して、生理食塩水で処置される運動障害マウスには生理食塩水を用いて同じプロトコルを行った。MMT処置されたマウスまたは生理食塩水処置されたマウスのAIMスコア化テストを35日目(図2B)、40日目(図2C)および45日目(図2D)に行った。
iPRECIO(商標)マイクロインフュージョンポンプを備えたプログラム可能なiCBIシステムを用い、線条体内MMTインフュージョンが運動障害マウスのLIDを減少できるかを調べた(Tan T et al., Front Pharmacol 2011;2:44.)。実験プロトコル(図2A)の28日目に、インフュージョンカニューレを含むiCBIデバイス(図1E)をドパミンが欠乏した線条体に埋め込んだ(図1F)。レボドパ/ベンセラジド処置を31日目に再開した。同時に、MMT処置を行う運動障害マウスにはMMT(10.79μg/μl)の継続的な線条体内インフュージョンを、最初の5日間(31〜35日目)は0.3μl/時間の流速、次の5日間(36〜40日目)は0.8μl/時間の流速、最後の5日間(41〜45日目)は2.0μl/時間の流速で行った。平行して、生理食塩水で処置される運動障害マウスには生理食塩水を用いて同じプロトコルを行った。MMT処置されたマウスまたは生理食塩水処置されたマウスのAIMスコア化テストを35日目(図2B)、40日目(図2C)および45日目(図2D)に行った。
総AIMスコアに対する一元配置分散分析(図2E)の結果、MMTインフュージョン処置の有意な効果が認められた(F(5,69)=13.99、P<0.0001)。MMTインフュージョンは40日目および45日目においてAIMを有意に減少させた(ボンフェローニの事後検定:40日目の生理食塩水 vs 40日目のMMT、P<0.05;45日目の生理食塩水 vs 45日目のMMT、P<0.001)。さらに、35日目、40日目および45日目のAIMの重症度において有意な差が認められた(ボンフェローニの事後検定:35日目のMMT vs 40日目のMMT、P<0.05;40日目のMMT vs 45日目のMMT、P<0.001)。したがって、線条体内MMTインフュージョンは用量依存的な様式でレボドパ誘発性AIMを有意に軽減させたことがわかった。
運動障害マウスに対するAlzet (商標) ミニ浸透圧ポンプによる線条体内メマンチンインフュージョンの効果
Alzet(商標)ミニ浸透圧ポンプを備えたiCBIシステムを用い、線条体内MMTインフュージョンが運動障害マウスのLIDおよび異常な回転行動を軽減できるかを調べた。図3Aに示すように、Alzet(商標)ミニ浸透圧ポンプを備えたiCBIデバイスを運動障害マウスに30日目に埋め込み、レボドパ/ベンセラジド処置を31日目に再開した。同時に、運動障害マウスにMMT(21.58μg/μl)または生理食塩水の継続的な線条体内インフュージョンを1.0μl/時間の流速で5日間(31〜35日目)行った。MMT処置されたマウスまたは生理食塩水処置されたマウスの行動テストを35日目に行った(図3B)。
Alzet(商標)ミニ浸透圧ポンプを備えたiCBIシステムを用い、線条体内MMTインフュージョンが運動障害マウスのLIDおよび異常な回転行動を軽減できるかを調べた。図3Aに示すように、Alzet(商標)ミニ浸透圧ポンプを備えたiCBIデバイスを運動障害マウスに30日目に埋め込み、レボドパ/ベンセラジド処置を31日目に再開した。同時に、運動障害マウスにMMT(21.58μg/μl)または生理食塩水の継続的な線条体内インフュージョンを1.0μl/時間の流速で5日間(31〜35日目)行った。MMT処置されたマウスまたは生理食塩水処置されたマウスの行動テストを35日目に行った(図3B)。
線条体内MMTインフュージョンは総AIMスコアを70%以上減少させた(図3C;生理食塩水のインフュージョン、99.3±4.5;MMTインフュージョン、23.9±9.0;対応のある両側t検定、P<0.001)。また生理食塩水をインフュージョンしたマウスと比較して、MMTインフュージョンを施された運動障害マウスでは6-OHDA病変側と反対側のレボドパ誘発性回転の著しい減少が見出された(図3D;対応のある両側t検定、P<0.001)。
注目すべきことに、生理食塩水をインフュージョンしたマウスと比較して、MMTインフュージョンを施された運動障害マウスでは片側パーキンソン病様による6-OHDA病変側と同側の自発的な回転(Morigaki R et al., Front Cell Neurosci 2017;11:26.)の有意な減少が見出された(図3E;対応のある両側t検定、P<0.05)。全体の回転に対する同側の自発的な回転の割合の一元配置分散分析(図3F)はまた、MMTインフュージョン処置の有意な効果を明らかにした(F(2,25)=6.179、P=0.0066)。MMTインフュージョンは回転の非対称性を著しく正常化した(ボンフェローニの事後検定:未処理の対照 vs MMTインフュージョン、有意差なし;未処理の対照 vs 生理食塩水のインフュージョン、P<0.05;生理食塩水のインフュージョン vs MMTインフュージョン、P<0.01)。
したがって、線条体内MMTインフュージョンはレボドパ誘発性AIMおよび回転を軽減するだけでなく、運動障害マウスにおける片側パーキンソン病様誘発性の回転行動も軽減することがわかった。
以上から、線条体内MMTインフュージョンが片側パーキンソン病様マウスにおいてLIDおよびパーキンソン病の回転行動に対する治療効果を発揮することが示された。
本願の医薬組成物を線条体内投与することによって、パーキンソン病を治療できる。また、本願の医薬組成物の線条体内投与は、パーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアを伴うパーキンソン病を治療する新規な治療手段である。
Claims (8)
- N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬を含み、線条体内投与される、パーキンソン病の治療のための医薬組成物。
- N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬がメマンチンまたはアマンタジンである、請求項1に記載の医薬組成物。
- N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬がメマンチンである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
- パーキンソン病の薬物治療を受けている対象に投与される、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
- パーキンソン病治療薬がレボドパである、請求項4に記載の医薬組成物。
- 線条体内に持続的に投与される、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
- パーキンソン症状および/またはパーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアの治療のための、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
- パーキンソン病治療薬誘発性ジスキネジアの治療のための、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
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JP2018163116A JP2020033322A (ja) | 2018-08-31 | 2018-08-31 | パーキンソン病の治療のための医薬組成物 |
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