JP2020031443A - アンテナ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるアンテナ装置を提供する。【解決手段】互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部10と、アンテナ部10が動かされる方向に基づいて、3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する選択部11と、当該2つのアンテナ素子で形成される平面において当該2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした当該2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて、選択部11により選択された当該2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部12とを備え、合成部12は、上記受信電力の比として、当該2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときに当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、アンテナ装置に関し、特に無線通信に使用されるアンテナ装置に関する。
複数のアンテナを組み合わせてデータ送受信の帯域を広げる無線通信技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が知られており、LTE(Long Term Evolution)などMIMO技術を取り入れた高速の通信規格がある。LTEを利用できるスマ
ートホンなどの携帯端末の普及に伴い、高速移動通信技術が人々の身近な存在になってきている。
そのため、将来、MIMO技術をより高度に利用することで、クラウドベースの個人データバンク接続やマルチキャスト動画メール、超臨場感テレビ会議、4kビデオ高速ダウンロードなどの新しいサービス(利用技術)が実現されると予想される。
しかしながら、これらの新しいサービスを実現するためにはギガビットクラスの超高速通信が不可欠であるが、超高速通信を実現するには大きく2つの課題がある。
1つは、携帯端末が屋外または屋内の伝搬環境(移動通信の電波伝搬環境)で使用されることに起因する課題である。すなわち、基地局から放射された電波が周りの地物によって反射してフェージング波が生じるなど伝搬環境により到来波偏波が変化することで、無線伝送特性(伝送容量や信号誤り率など)が劣化してしまう課題である。もう1つは、携帯端末を所持する人の動作に起因する課題である。すなわち、人の動作によって携帯端末に搭載されるアンテナが傾くことによってアンテナの受信する偏波(到来波偏波)が大きく変化してしまい、無線伝送特性(伝送容量や信号誤り率など)が劣化してしまう課題である。
それに対して、例えば特許文献1では、直交する2つの固定アンテナに対して受信信号を利用して重み付けを行う技術が開示されている。特許文献1では、2つのアンテナ素子の受信信号の合成偏波を干渉信号の偏波と直交させることで、合成偏波と直交する干渉信号を受信させず、干渉信号の方向にヌルを形成させない構成が開示されている。これにより、伝搬環境によって到来波偏波が変化する場合でも無線伝送特性(伝送容量や信号誤り率など)の劣化を抑制することができる。
特開2010−21919号公報
K. Ogawa, H. Iwai, A. Yamamoto, and J. Takada: "Channel Capacity of a Handset MIMO Antenna Influenced by the Effects of 3D Angular Spectrum,Polarization, and Operator", IEEE AP-S Intl. Symp. Digest, pp. 153-156, July 2006.
しかしながら、上記特許文献1では、伝搬環境によって到来波偏波が変化する課題解決には一定の効果があるものの、人の動作に起因する課題すなわち人の動きによって到来波偏波が変化することに対する課題への考慮はなされていない。すなわち、上記特許文献1では、人の動きによって到来波偏波が変化した場合には、無線伝送特性の劣化のない安定した受信信号を得られないという問題がある。
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたもので、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係るアンテナ装置は、無線通信に使用されるアンテナ装置であって、互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部と、前記アンテナ部が動かされる方向に基づいて、前記3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する選択部と、前記2つのアンテナ素子で形成される平面において前記2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした前記2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、前記2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて、前記選択部により選択された前記2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部と、を備え、前記合成部は、前記受信電力の比として、前記2つのアンテナ素子の一方が前記第1位置にあるときに前記2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出する。
この構成により、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるアンテナ装置を実現できる。
また、前記3つのアンテナ素子はそれぞれ、ダイポールアンテナと電気的に等価な働きをする等価ダイポール素子であるとしてもよい。
ここで、前記アンテナ部が動かされる方向は、前記3つのアンテナ素子のいずれかを軸として回転する方向であるとしてもよい。
また、前記第1位置は、前記2つのアンテナ素子の一方が地面と垂直かつ前記2つのアンテナ素子の他方が前記地面と平行となるときの前記2つのアンテナ素子の一方の位置であり、前記到来波の受信電力の比は、交差偏波電力の比であるとしてもよい。
また、前記選択部は、前記3つのアンテナ素子それぞれを軸とする3次元空間において前記アンテナ部が動かされる方向の成分を前記それぞれの軸に射影した際に、最も変位が少ない方向の成分を有する軸のアンテナ素子を除く2つのアンテナ素子を選択するとしてもよい。
また、前記選択部は、前記3つのアンテナ素子のうち、動かされる前記アンテナ部の動きに応じて受信電力の大きさが最も変化しない一のアンテナ素子を除いた2つのアンテナ素子を選択するとしてもよい。
また、さらに、磁気センサおよび角速度センサのうち少なくとも1方を有するセンサ部を備え、前記選択部は、前記センサ部の検出結果を用いて算出された前記方向である前記3つのアンテナ素子の一を軸とする回転方向に基づき、当該軸に対して直交する前記2つのアンテナ素子を選択し、前記合成部は、前記センサ部の検出結果を用いて前記受信電力の比および前記変数を算出するとしてもよい。
また、前記合成部は、前記選択部により2つのアンテナ素子が選択される毎に、前記第1位置を再設定し、前記受信電力の比を算出するとしてもよい。
また、前記合成部は、前記選択部で選択された2つのアンテナ素子における位相シフト量がさらに反映された前記重み付け関数を用いて、前記2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係るアンテナ装置は、無線通信に使用されるアンテナ装置であって、互いに直交する2つのアンテナ素子を有するアンテナ部と、前記2つのアンテナ素子で形成される平面において前記2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした前記2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、前記2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数と位相シフト量を用いて、前記選択部により選択された前記2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部と、を備え、前記合成部は、前記受信電力の比として、前記2つのアンテナ素子の一方が前記第1位置にあるときに前記2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出する。
ここで、例えば、前記位相シフト量はπ/2もしくは−π/2であり、前記合成部は、当該位相シフトが反映された前記重み付け関数を用いて、前記2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
また、例えば、前記位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値であり、前記合成部は、当該位相シフト量が反映された前記重み付け関数を用いて、前記2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係るアンテナ装置は、無線通信に使用されるアンテナ装置であって、互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部と、前記3つのアンテナ素子が3次元座標上のx、y、z軸と平行となる位置を基準とした場合の前記アンテナ部の3次元座標上の傾きを示す変数と、前記アンテナ部に到来する到来波の交差偏波電力の比とで定義され、前記3つのアンテナ素子における位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部と、を備える。
ここで、例えば、前記位相シフト量は2π/3と−π/3であり、前記合成部は、当該位相シフト量が反映された前記重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
また、例えば、前記位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値であり、前記合成部は、当該位相シフト量が反映された前記重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本発明のアンテナ装置によれば、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。
実施の形態1におけるアンテナ装置の構成の一例を示すブロック図である。 実施の形態1における合成部の詳細構成の一例を示す図である。 実施の形態1におけるアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態1における到来波の交差偏波電力の比を示す図である。 実施の形態1におけるアンテナ装置が搭載されたタブレット端末を使用する際の様子の一例を示す図である。 実施の形態1におけるアンテナ装置が搭載された腕時計端末を腕に装着したときの様子の一例を示す図である。 実施の形態1におけるアンテナ装置の動作の一例を示すフローチャートである。 θを0度に固定してXPRを変化させた時のxy平面における放射指向特性を示す図である。 XPRを20dBに固定してθを変化させた時のxy平面における指向性を示す図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を横置き使用したときの解析モデルを示す図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を縦置き使用したときの解析モデルを示す図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を横置きで使用する場合のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を横置きで使用する場合の解析結果を説明するための図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を縦置きにて使用する場合のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態2に係るタブレット端末を縦置きにて使用する場合の解析結果を説明するための図である。 実施の形態3に係る腕装着端末の解析モデルを示す図である。 実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢のユースケースを説明するための図である。 実施の形態3に係る腕装着端末のユーザの腕振り歩行のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態3に係る腕装着端末のユーザの腕振り歩行のユースケースを説明するための図である。 実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢時の解析結果を示す図である。 実施の形態3に係る腕装着端末の腕振り歩行時の解析結果を示す図である。 本開示のアンテナ装置を腕装着端末に実装する場合の一態様を示す図である。 本開示のアンテナ装置をタブレット端末に実装する場合の一態様を示す図である。 垂直アンテナで8素子MIMOアレーを構成する解析モデルを示す図である。 8×8MIMO伝送容量の解析結果を示す図である。 本発明に係るアンテナ装置をOn−body通信に適用するときのモデルを示す図である。 第3世代移動通信システムでの到来波の様子を示す図である。 第5世代移動通信システムでの到来波の様子を示す図である。 実施の形態5におけるアンテナ装置の構成の一例を示すブロック図である。 実施の形態5における合成部の詳細構成の一例を示す図である。 実施の形態5におけるアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。 実施の形態5におけるアンテナ部の傾きを示す変数である傾き角度θおよび回転角度φを説明するための図である。 実施の形態5におけるアンテナ装置の動作の一例を示すフローチャートである。 傾き角度θを0度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 傾き角度θを45度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 傾き角度θを90度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 3次元周辺散乱モデルを示す図である。 解析したアレーモデルを示す図である。 3本重み付け関数を適用し2×2MIMO伝送容量の解析を行った解析結果を示す図である。 実施の形態5に係るアンテナ装置2を搭載したタブレット端末を縦置き使用したときの解析モデルを示す図である。 実施の形態5に係るアンテナ装置2を搭載したタブレット端末を横置き使用したときの解析モデルを示す図である。 実施の形態6に係る位相シフト量について説明するための図である。 実施の形態6に係るタブレット端末のアンテナ装置2の具体的構成の一例を示す図である。 タブレット端末の保持角度の平均値を説明するための図である。 タブレット端末の保持角度の平均値を説明するための図である。 タブレット端末の保持角度の平均値を説明するための図である。 傾き角度θを55度に固定して位相シフト量を変化させた時のxy平面における放射指向特性を示す図である。 傾き角度θを55度に固定して位相シフト量を変化させた時のxy平面における放射指向特性を示す図である。 傾き角度θを55度に固定して位相シフト量を変化させた時の伝送容量特性を示す図である。 異なる位相シフト量において傾き角度θを変化させた時の伝送容量特性を示す図である。 異なる位相シフト量において回転角度φを変化させた時の伝送容量特性を示す図である。 XPRが変化した時の最適な位相シフト量の結果を示す図である。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
1.1 アンテナ装置の構成
図1は、実施の形態1におけるアンテナ装置の構成の一例を示すブロック図である。図2は、実施の形態1における合成部の詳細構成の一例を示す図である。図3は、実施の形態1におけるアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。
図1に示すアンテナ装置1は、無線通信に使用され、アンテナ部10と、選択部11と、合成部12と、センサ部13とを備える。
アンテナ部10は、互いに直交する3つのアンテナ素子を有する。アンテナ部10は、例えば図3に示すように、直交する3本のダイポールアンテナ(Ax,Ay,Az)で構成される。ここで、ダイポールアンテナAx、ダイポールアンテナAyおよびダイポールアンテナAzはそれぞれ、3次元座標系のx軸、y軸およびz軸と平行な向きで設置されたダイポールアンテナ(アンテナ素子)である。なお、このダイポールアンテナ(Ax,Ay,Az)は必ずしも実際のダイポールアンテナである必要はなく、電気的に等価な動作をする等価ダイポール素子であってもよい。電気的に等価な動作をするアンテナの一例としては、後述する図16Aおよび図16Bに示すようなアンテナも考えられる。
選択部11は、アンテナ部10が動かされる方向に基づいて、3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する。
例えば、選択部11は、3つのアンテナ素子それぞれを軸とする3次元空間においてアンテナ部10が動かされる方向の成分をそれぞれの軸に射影した際に、最も変位が少ない方向の成分を有する軸のアンテナ素子を除く2つのアンテナ素子を選択する。また、選択部11は、3つのアンテナ素子のうち、動かされるアンテナ部10の動きに応じて受信電力の大きさが最も変化しない一のアンテナ素子を除いた2つのアンテナ素子を選択する。
また、例えば、選択部11は、センサ部13の検出結果を用いて算出された方向(アンテナ部10が動かされる方向)である前記3つのアンテナ素子の一を軸とする回転方向に基づき、当該軸に対して直交する2つのアンテナ素子を選択する。ここで、アンテナ部10が動かされる方向は、3つのアンテナ素子のいずれかを軸として回転する方向である。
具体的には、選択部11は、例えば図3に示すように、2つのスイッチ(SW1,SW2)を有し、アンテナ部10が動かされる方向に基づいて、3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する。
例えば、アンテナ装置1を搭載する携帯端末の使用者の動作によってダイポールアンテナAyを回転軸としてアンテナ部10が動作しているとする。この場合、選択部11は、ダイポールアンテナAy以外の2つのダイポールアンテナ(Az、Ax)を選択する。すなわち、図3に示す選択部11は、2つのスイッチ(SW1,SW2)にそれぞれダイポールアンテナAzとダイポールアンテナAxを選択させる。このように、選択部11は、アンテナ部10の動作に応じて、到来する到来波の偏波が最も変化する2つのアンテナ素子を選択する。上記の例の場合、選択部11は、アンテナ素子(ダイポールアンテナAy)の回転軸に対して直交する2本のアンテナ素子(ダイポールアンテナAzとダイポールアンテナAx)を選択する。
センサ部13は、磁気センサおよび角速度センサのうち少なくとも1方を有する。センサ部13は、磁気センサおよび角速度センサのうち少なくとも一方を用いて、検出した検出結果を選択部11および合成部12に出力する。
合成部12は、選択部11により選択された2つのアンテナ素子で形成される平面においてそれら2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、それら2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。
ここで、例えば、上記受信電力の比をRVH、上記の傾きを示す変数をθ、上記2つのアンテナ素子の一方の受信信号をSおよび上記2つのアンテナ素子の他方の受信信号をSとする。また、合成部12が出力する合成信号をaとし、上記一方の受信信号(S)に乗算する重み付け関数をW、上記他方の受信信号(S)に乗算する重み付け関数をWとする。
この場合、合成部12は、式1〜式4にしたがって、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
より詳細には、合成部12は、図2に示すように、算出部121と、重み付け部122と、加算部123とで構成されている。
算出部121は、センサ部13の検出結果を用いて上記の受信電力の比(RVH)および上記の変数(θ)を算出する。具体的には、算出部121は、上記の受信電力の比(RVH)として、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときに当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出する。また、算出部121は、選択部11により2つのアンテナ素子が選択される毎に、第1位置を再設定し、上記の受信電力の比を算出する。
ここで、第1位置は、任意の初期位置であるが、例えば、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の一方が地面と垂直かつ当該2つのアンテナ素子の他方が地面と平行となるときの当該2つのアンテナ素子の一方の位置としてもよい。この場合、上記到来波の受信電力の比(RVH)は、交差偏波電力の比(XPR:Cross-Polarization Ratio)となる。
重み付け部122は、算出部121で算出される上記傾きを示す変数(θ)と上記の受信電力の比(RVH)とで定義される重み付け関数を、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の受信信号それぞれに乗算する。本実施の形態では、重み付け部122は、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の一方の受信信号(S)に重み付け関数(W)を乗算し、他方の受信信号(S)に重み付け関数(W)を乗算する。
加算部123は、重み付け部122で乗算された値を加算(合成)して、出力する。本実施の形態では、加算部123は、重み付け部122で乗算された値を加算した合成信号(a)を出力する。
このようにして、合成部12は、重み付け関数を用いて、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。
1.2 重み付け関数
以下、上述の重み付け関数について説明する。
(伝搬環境による到来波偏波の変化を考慮した場合)
伝搬環境による到来波偏波の変化を考慮した重み付け関数の定義について説明する。
ここで、選択部11により2つのアンテナ素子(例えば図3に示すダイポールアンテナA、ダイポールアンテナA)が選択されているとする。また、選択部11により選択された2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比をRVH、当該2つのアンテナ素子の一方の受信信号をSおよび上記2つのアンテナ素子の他方の受信信号をSとし、合成部12が出力する合成信号をaとする。
この場合、合成部12は、式5に示す重み付け関数を用いて合成した合成信号aを出力する。
Figure 2020031443
具体的には、合成部12は、受信信号SおよびSそれぞれに到来波の受信電力の比(RVH)によって重み付けした重み付け関数(W,W)を乗算し、その結果を加算することで合成信号aを合成する。なお、到来波の受信電力の比(RVH)はアンテナ装置1の置かれた伝搬環境において、選択部11により選択された2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときに当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の偏波を受信したときの受信電力の割合RVH=P/Pによって定義される。
上記式5からわかるように、式5に示される重み付け関数(W,W)により、アンテナ装置1の置かれた伝搬環境(受信環境)において優勢な到来波偏波を選択的に抽出して合成することができる。このように重み付け関数を定義することで、例えばXPRの大きな屋外の伝搬環境およびXPRの小さな屋内の伝搬環境のいずれであっても最適な受信信号(安定した合成信号a)が得ることができる。
(人の動きによる到来波偏波の変化をさらに考慮した場合)
次に、さらに人の動きによる到来波偏波の変化を考慮した重み付け関数の定義について説明する。
例えば、図1や図3に示すアンテナ装置1が腕時計端末(携帯端末)に搭載され、腕時計端末が人の腕に装着されている場合、人の動きによりアンテナ装置1が動くことで、アンテナ部10のアンテナ素子(ダイポールアンテナ(Ax,Ay,Az))が傾き、受信する到来波の偏波が変化する。このように、人の動きによりアンテナ装置1に構成されるアンテナ素子が傾いてしまう場合、上記の式5に示される重み付け関数の定義では、人の動きによる到来波偏波の変化は考慮されておらず、最適ではない。
そこで、合成部12は、式7および式8に示す重み付け関数(W’,W’)を用いて式6に示すように、合成信号aを合成して出力する。
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
ここで、選択部11により選択された2つのアンテナ素子で形成される平面においてそれら2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数をθとしている。また、合成部12が出力する合成信号をaとし、受信信号SおよびSそれぞれに対する重み付け関数をW’,W’とする。なお、到来波の受信電力の比RVH、受信信号Sv、および受信信号Sは上述の通りであるので説明を省略する。
さらに、上記の式6に対して,エネルギー保存則を満足するようW’とW’をそれぞれ2乗和が1となるように規格化すると式9のように重み付け関数を定義することができる。ここで、式9の第1項の係数(重み付け関数)が式1の重み付け関数Wに相当し、式9の第2項の係数(重み付け関数)が式1の重み付け関数Wに相当する。
Figure 2020031443
式6と式5とを比較するとわかるように、人の動きによりアンテナ装置1が動くすなわち人の動きによりアンテナ素子が傾く場合、上記の式5により定義される重み付け関数をさらにアンテナ素子の傾きを示す変数θに応じて重み付けしている。したがって、式6に示す重み付け関数を用いれば、伝搬環境による偏波の変化に加えて人の動きによる偏波の変化を考慮して信号合成を行うことができる。それにより、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。
なお、式9(または式1)を用いるためには,アンテナ装置1の置かれた伝搬環境(受信環境)における到来波の受信電力の比RVHを予め知る必要がある。比RVHは、第1位置(θ=0)のときに2つのアンテナ素子の一方と他方とが受信した受信電力Pと受信電力Pにより比RVH=P/Pとして求めることができる。さらに、第1位置からの傾きを示す変数θは、タブレット端末やスマートホンなどで実用化されている磁気センサや角速度センサを携帯端末に搭載して用いることで、算出することができる。
以下、図4A〜図4Cを用いて、到来波の受信電力の比(RVH)として、交差偏波電力の比を用いる場合について説明する。図4Aは、実施の形態1における到来波の交差偏波電力の比を示す図である。図4Bは実施の形態1におけるアンテナ装置が搭載されたタブレット端末を使用する際の様子の一例であり、図4Cは実施の形態におけるアンテナ装置が搭載された腕時計端末を腕に装着したときの様子の一例である。ここで、図4Bおよび図4Cでは、選択部11により、ダイポールアンテナAxおよびダイポールアンテナA
が選択された場合の例が示されている。また、図4Bに示す例では、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、鉛直方向上向きをz軸としたとき、ダイポールアンテナAのz軸上の第1位置からの傾き角としている。同様に、図4Cに示す例では、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、ダイポールアンテナAの鉛直方向のz軸(−z軸)上の第1位置を基準とした傾き角としている。
この場合において、上述した式6〜式9は、以下に示す式10〜式13となる。ここで、式10〜式13は、第1位置をz軸上に設定した場合の変数θとRVHをXPRに置き換えたものに相当する。
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
なお、式13を用いるためには,アンテナ装置1の置かれた伝搬環境(受信環境)のXPRを予め知る必要があるが、XPRは腕の振り角θ=0のときに到来する到来波の垂直偏波成分および水平偏波成分を受信するダイポールアンテナAおよびダイポールアンテナAxの受信電力Pおよび受信電力Pを用いてXPR=垂直偏波成分の受信電力P
/水平偏波成分の受信電力Pの関係から求めることができる。さらに、腕の振り角θ(瞬時角度)は現行タブレット端末やスマートホンによって実用化されている磁気センサや角速度センサを用いて検出された検出結果から算出することができる。
このように重み付け関数を定義することで到来波偏波電力とアンテナ素子の傾き角に応じて選択された2つの直交するアンテナ素子の出力を合成することができるので、伝搬環境と人の動きによって変化する到来波偏波に対して最適な重み付けを行うことができる。
1.3 アンテナ装置の動作
次に、以上のように構成されたアンテナ装置1の動作について説明する。
図5は、実施の形態1におけるアンテナ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、アンテナ装置1は、人の動きによって動かされているとする。
この場合、アンテナ装置1は、直交する3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する(S10)。具体的には、アンテナ装置1は、直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部10が動かされる方向に基づいて、3つのアンテナ素子のうち2つのアンテナ素子を選択する。
次に、アンテナ装置1は、重み付け関数を用いて、選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成する(S20)。具体的には、アンテナ装置1は、選択された2つのアンテナ素子で形成される平面において当該2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした当該2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて、当該2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。ここで、アンテナ装置1は、上記の受信電力の比として、当該2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときに当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出する。
1.4 効果
このように、本実施の形態のアンテナ装置1によれば、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。
具体的には、本実施の形態のアンテナ装置1は、人の動作に伴うアンテナ素子の傾きを示す変数と、2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて受信信号を合成することで、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。それにより、超高速の無線通信を実現することができる。
より詳細には、本実施の形態のアンテナ装置1は、アンテナ装置1が動かされる際の動きに基づいて、アンテナ装置1に構成される3つのアンテナ素子から2つのアンテナ素子を選択する。これは、アンテナ装置1の動きに基づいて、3つのアンテナ素子のうちからその動きと直交する(または最も動きによる到来波偏波の変化の少ない)1つのアンテナ素子の受信信号を合成しないよう選択しないことを意味する。つまり、アンテナ装置1の動き(傾き、回転等)に関係ない1軸のアンテナ素子を選択せず、アンテナ装置1の動きに関係する2軸のアンテナ素子を選択することを意味する。それにより、人の動作に伴うアンテナ素子の傾きを示す変数と、2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数は、振幅関数(スカラー)で定義することができる。つまり、当該重み付け関数が、位相情報を必要としないことから、選択された2つのアンテナ素子の受信信号のフィードバックを必要としないので、演算に負荷がかからずリアルタイムでかつ適応的に算出することができることを意味する。
それにより、本実施の形態のアンテナ装置1は、非常にシンプルなオープンループ制御系によって構成することができ、その重み付けを行う回路には、ダイオードやFETなどを用いた簡便な可変減衰器を用いることができる。このことから、本実施の形態のアンテナ装置1は、小型化・低コスト化が容易であり、スマートホン、タブレット端末および腕時計端末といった携帯端末に搭載でき、本実施の形態のアンテナ装置1が搭載された携帯端末では超高速ギガビット通信を実現できる。
1.5 有効性の確認
次に、本実施の形態に係るアンテナ装置1の有効性を確認するために、計算機シミュレーションを使用してシミュレーションを行った。
以下では、上記到来波の受信電力の比(RVH)が交差偏波電力の比(XPR)であり、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、鉛直方向上向きの軸である第1位置からのダイポールアンテナAの傾き角とした場合について説明する。
図6は、θを0度に固定してXPRを変化させた時のxy平面における放射指向特性を示す図である。
図6の(a)〜(c)から、XPRの変化によって放射指向特性が大きく変化していることがわかる。具体的には、図6の(a)ではXPR=0dB、図6の(b)ではXPR=10dB、図6の(c)ではXPR=20dBとなっている。XPRの定義すなわちXPR=(垂直偏波成分の受信電力P)/(水平偏波成分の受信電力P)により図6の(a)、図6の(b)および図6の(c)の順番に徐々に垂直偏波成分が優勢になっているのがわかる。
本実施の形態に係るアンテナ装置1が有効であるためには、垂直偏波成分が優勢である時に、合成された受信信号が垂直偏波に対して優れた感度を有することが必要である。この観点で図6を確認すると、図6の(a)、図6の(b)および図6の(c)の順番に垂直偏波成分(図中の太線)が大きくなるにつれて水平偏波成分(図中の細線)が小さくなっていることがわかる。つまり、垂直偏波成分が優勢である時に、合成された受信信号が垂直偏波に対して優れた感度を有することがわかるので、本実施の形態に係るアンテナ装置1は、伝搬環境に適したアンテナ放射指向特性を有するのがわかる。それにより、本実施の形態に係るアンテナ装置1は、有効であるのがわかる。
図7は、XPRを20dBに固定してθを変化させた時のxy平面における指向性を示す図である。図7の(a)〜(c)から、θの変化によって放射指向特性が大きく変化していることがわかる。
本実施の形態に係るアンテナ装置1が有効であるためには、伝搬環境はXPR=20dBで一定であるので、合成された受信信号の垂直偏波成分が常に優勢であることが必要である。
この観点で図7を確認すると、図7の(a)および(c)より、θ=0degおよびθ=90degにおける放射指向特性は同じであるが、共に垂直偏波成分(図中の太線)の方が水平偏波成分(図中の細線)よりも大きく垂直偏波成分(図中の太線)が優勢であることがわかる。これはθ=0degとθ=90degとにおいて、式10〜式13に示す重み付け関数W’の値と重み付け関数W’の値とが入れ替わっているからであり、重み付け関数がアンテナ部10の傾きに応じて変化していることの証となる。
なお、図7の(b)に示すように、θ=45degの時は、垂直偏波成分および水平偏波成分の両方が同等の大きさで観測される。しかし、重要である垂直偏波成分(図中の太線)はθ=0degやθ=90degの時と同等のレベルである。これにより、θ=45degの時でも、合成することで最適な受信信号を得ることができる。
したがって、垂直偏波成分が優勢である時に、合成された受信信号が垂直偏波に対して優れた感度を有するので、本実施の形態に係るアンテナ装置1は、有効であるのがわかる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明したアンテナ装置1をタブレット端末に搭載した場合について説明する。本実施の形態では、上記の到来波の受信電力の比(RVH)が交差偏波電力の比(XPR)であり、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、鉛直方向上向きの軸である第1位置からのアンテナ素子の一方の傾き角であるとして説明する。
2.1 タブレット端末の解析モデル
図8Aは実施の形態2に係るタブレット端末を横置き使用したときの解析モデルを示す図であり、図8Bは実施の形態2に係るタブレット端末を縦置き使用したときの解析モデルを示す図である。すなわち、本実施の形態で使用するタブレット端末の解析モデルは、図8Aおよび図8Bに示すように、互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部10をy軸方向に4列、z軸方向に2列配列して8素子MIMOアレーアンテナを構成したものである。ここで、アレー間隔は9cmとしている。以下、互いに直交する3つのアンテナ素子はそれぞれ、図3に示すダイポールアンテナAx、ダイポールアンテナAyおよびダイポールアンテナAzであるとして説明する。
例えば、ユーザがタブレット端末を使用する時、図8Aに示すようにタブレット端末を横置きで使用する場合と、図8Bに示すようにタブレット端末を回転させて縦置きで使用する場合の2つのユースケースが考えられる。
図8Aに示すように、タブレット端末を横置きで使用する場合、アンテナ部10が動かされる方向は、図8Aのy軸を回転軸としてzx面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAz)の角度(図で傾き角度α)が変わると考えられる。この場合、到来波の垂直偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAz(図で太線)、到来波の水平偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAx(図で細線)の2つのアンテナ素子が選択される。
一方、図8Bに示すように、タブレット端末を縦置きで使用する場合、アンテナ部10が動かされる方向は、図8Bのx軸を回転軸としてzy面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAy)の角度(図で回転角度β)が変わると考えられる。この場合、到来波の垂直偏波を受けるダイポールアンテナAz、到来波の水平偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAyの2つのアンテナ素子が選択される。
2.2 解析結果
図8Aおよび図8Bに示す2つの状態について、8×8MIMO伝送容量の解析を行った。比較対象として、垂直設置の半波長ダイポールを用いて8素子MIMOアレーを構成した場合の解析結果をともにプロットした。なお、MIMO伝送容量の計算方法は非特許文献1に示されているので、ここでの説明は省略する。
図9Aは実施の形態2に係るタブレット端末を横置きで使用する場合のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図であり、図9Bは実施の形態2に係るタブレット端末を横置きで使用する場合の解析結果を説明するための図である。図9Aには、ダイポールアンテナAzとダイポールアンテナAxとの2つのアンテナ素子が選択されていることが示されている。図9Bには、タブレット端末を横置きで使用する場合の解析結果が実施例1としてプロットされており、垂直設置の半波長ダイポールを用いて8素子MIMOアレーを構成した場合(以下「垂直アンテナ」と呼ぶ)の解析結果がプロットされている。なお、傾き角度αは0°から90°まで変化させた。XPRは20dBと10dBの2通りとした。SNRは30dBである。
図9Bより、垂直偏波成分が強い環境(XPR=20dB)において、垂直アンテナでは垂直設置の半波長ダイポールの傾き角度αが大きくなると伝送容量が劣化することがわかる。これは垂直設置の半波長ダイポールが水平に配置され、垂直偏波成分に対する利得が小さくなることが原因である。一方、実施例1(本開示のアンテナ装置1を用いた場合)では、ダイポールアンテナAzの傾き角度αが90°の時、伝送容量は垂直アンテナと比較して17.5bits/s/Hzの改善を示すことがわかる。
これにより、タブレット端末を横置き使用した際、タブレット端末を傾けて到来波偏波が変化した場合でも安定した受信信号を得ることができることがわかる。
図10Aは実施の形態2に係るタブレット端末を縦置きにて使用する場合のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図であり、図10Bは、実施の形態2に係るタブレット端末を縦置きにて使用する場合の解析結果を説明するための図である。図10Aには、ダイポールアンテナAzとダイポールアンテナAyとの2つのアンテナ素子が選択されていることが示されている。図10Bには、タブレット端末を縦置きで使用する場合の解析結果が実施例2としてプロットされており、垂直設置の半波長ダイポールを用いて8素子MIMOアレーを構成した場合(以下「垂直アンテナ」と呼ぶ)の解析結果がプロットされている。なお、回転角度βは0°から90°まで変化させた。XPRは20dBと10dBの2通りとした。SNRは30dBである。
図10Bより、垂直アンテナでは垂直設置の半波長ダイポールの回転角度βが大きくなると伝送容量が劣化することがわかる。一方、実施例2(本開示のアンテナ装置1を用いた場合)では、ダイポールアンテナAyの回転角度βが90°の時、垂直アンテナと比較して24.4bits/s/Hzの改善を示すことがわかる。
これにより、タブレット端末を縦置き使用する際、タブレット端末を回転させて到来波偏波が変化した場合でも安定した受信信号を得ることができることがわかる。
2.3 効果
以上、本実施の形態によれば、アンテナ装置1を用いることによって、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。すなわち、タブレット端末にアンテナ装置1を搭載することによって、XPRやタブレット端末の保持角度によらず、70bits/s/Hzの高い伝送容量を極めて安定に維持できる、超高速の無線通信を実現することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1で説明したアンテナ装置1を腕装着端末に搭載した場合について説明する。本実施の形態でも、上記の到来波の受信電力の比(RVH)が交差偏波電力の比(XPR)であり、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、鉛直方向上向きの軸である第1位置からのアンテナ素子の一方の傾き角であるとして説明する。
3.1 腕装着端末の解析モデル
図11は、実施の形態3に係る腕装着端末の解析モデルを示す図である。すなわち、本実施の形態で使用する腕装着端末の解析モデルは、図11に示すように、互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部10をx軸方向に2列、z軸方向に4列配列して8素子MIMOアレーアンテナを構成したものである。ここで、アレー間隔は9cmとしている。
以下、互いに直交する3つのアンテナ素子はそれぞれ、図3に示すダイポールアンテナAx、ダイポールアンテナAyおよびダイポールアンテナAzであるとして説明する。
図12Aは実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図であり、図12Bは実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢のユースケースを説明するための図である。図13Aは実施の形態3に係る腕装着端末のユーザの腕振り歩行のアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図であり、図13Bは実施の形態3に係る腕装着端末のユーザの腕振り歩行のユースケースを説明するための図である。
ユーザが腕装着端末を腕に装着したとき、ユースシーンとして2つのシーンが考えられる。すなわち、図12Bに示すように、ユーザが立ち止まって腕装着端末を見るようなブラウジング姿勢時の場合と、図13Bに示すようにユーザが歩行時に腕を振りながらデータをダウンロードするような腕振り歩行時の場合である。
図12Bに示すブラウジング姿勢時の場合、ユーザによりアンテナ部10が動かされる方向は、図12Aに示すy軸を回転軸としてzx面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAz)の角度を変えて端末を見ると考えることができる。この場合(ブラウジング姿勢を行う場合)、図12Aに示すように、到来波の垂直偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAy、到来波の水平偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAxの2つのアンテナ素子が選択される。
一方、図13Bに示す腕振り歩行時の場合、ユーザによりアンテナ部10が動かされる方向は、図12Aに示すy軸を回転軸としてzx面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAz)角度を変えて腕を振るシーンを考察する。
2つのユースシーン共に図12Aおよび図13Aに示すy軸を回転軸としてアンテナ部10の角度が変化するが、図12Bおよび図13Bに示す腕に対する腕装着端末の向きが異なる。そのため、図12Aおよび図13Aに示すように2つのユースケースそれぞれで選択されるアンテナ素子は異なっている。
3.2 解析結果
図14は、実施の形態3に係る腕装着端末のブラウジング姿勢時の解析結果を示す図である。図14には、ブラウジング姿勢における腕装着端末のXPRに対する伝送容量の変化を実施例3として示している。なお、腕装着端末は図12Bに示すように地面に対して平行に設置されている(θ=0deg)として解析を行った。SNRは30dBとしている。なお、図14には、比較対象として、図3に示す3軸のダイポールアンテナ(Ax、Ay、Az)の重みをXPRとθとよって変化させず等分配した場合(以下「等分配合成アンテナ」とも呼ぶ)の解析結果を示している。また、図14には、比較対象として腕装着端末のベルトにアンテナを配置したアンテナ(Ax)(以下「ベルトアンテナ」とも呼ぶ)の解析結果を示している。
図14より、垂直偏波成分が強い環境(XPR=20dB)において、ベルトアンテナでは高い伝送容量が得られないことがわかる。これはベルトアンテナが水平に配置されており、水平偏波成分を強く受信することが原因である。等分配合成アンテナでは、垂直偏波成分および水平偏波成分の両方を受信することができるため、ベルトアンテナより高い伝送容量が得られることがわかる。
それに対して、実施例3(本開示のアンテナ装置1を用いた場合)では、伝送容量はベルトアンテナと比較して23bits/s/Hzの改善を示し、等分配合成アンテナと比較して7bits/s/Hzの改善を示していることがわかる。これは、ベルトアンテナおよび等分配合成アンテナは伝搬環境が変化してもアンテナの放射指向特性が不変なのに対し、本開示のアンテナ装置1を用いた場合には、図6で示したように、XPRに応じて最適な放射指向特性となることに起因している。
さらに、図14から、帯域幅100MHzにおけるスマートホンやタブレット端末における伝送容量を読み取ると、XPR=20dBにおいてベルトアンテナでは伝送容量は5Gbpsであるのに対して、本開示のアンテナ装置1を用いた場合には7.4Gbpsの超高速ギガビット通信が可能であることがわかる。
これにより、腕装着端末をブラウジング姿勢で使用した場合でも安定した受信信号を得ることができることがわかる。
図15は、実施の形態3に係る腕装着端末の腕振り歩行時の解析結果を示す図である。
図15には、腕振り歩行時における腕装着端末のアレーアンテナの角度を−90度から90度まで変えたときの伝送容量の変化を実施例4として示している。解析条件はXPRを20dBと10dBの2通りとしている。なお、図15には、比較対象として、図3に示す3軸のダイポールアンテナ(Ax、Ay、Az)の重みをXPRとθとよって変化させず等分配した場合(以下「等分配合成アンテナ」とも呼ぶ)の解析結果を示している。また、図15には、比較対象として腕装着端末のベルトにアンテナを配置したアンテナ(Ax)(以下「ベルトアンテナ」とも呼ぶ)の解析結果を示している。
図15より、XPRが20dBの垂直偏波成分が強い環境(図中の実線)において、実施例4(本開示のアンテナ装置1を用いた場合)では、ベルトアンテナと比較して27bits/s/Hzの改善が観測される。さらに等分配合成アンテナと比較した場合は7bits/s/Hzの改善が観測される。この原因は、ブラウジング姿勢で説明したのと同様に、本開示のアンテナ装置1を用いた場合には、図7で示したように、XPRとアンテナ素子の傾き角θに応じて放射指向特性が変化するからである。
また、図15からわかるように、実施例4(本開示のアンテナ装置1を用いた場合)では、XPRや腕の振り角θによらず、70bits/s/Hzの高い伝送容量を維持している。これを上述同様帯域幅100MHzにおけるスマートホンやタブレット端末における伝送容量として読み取ると、7Gbpsの伝送レートを維持することに相当する。
このように、本開示のアンテナ装置1を用いた場合には、腕を振りながら歩行するという使用者のダイナミックな動特性環境下においても、超高速ギガビット通信が安定に実現できることがわかる。
3.3 効果
以上、本開示のアンテナ装置1を用いることによって、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。すなわち、腕装着端末にアンテナ装置1を搭載することによって、ブラウジング姿勢時や歩行時など使用者のダイナミックな動特性環境下においても、XPRや腕の振り角θ等によらず、高い伝送容量を極めて安定に維持できる、超高速の無線通信を実現することができる。
(実施の形態4)
実施の形態4では、タブレット端末や腕装着端末といった携帯端末に実装可能なアンテナ装置1の実装態様の一例について説明する。
図16Aは、本開示のアンテナ装置を腕装着端末に実装する場合の一態様を示す図であり、図16Bは本開示のアンテナ装置をタブレット端末に実装する場合の一態様を示す図である。図16Aと図16Bでは、同様の要素には同一の符号を付している。
図16Aに示すアンテナ装置300は、腕装着端末に実装され、複数のアンテナ部10Aと、誘電体基板310と、グランド320と、重み付け回路330とを備える。
重み付け回路330は、実施の形態1の選択部11と合成部13とを少なくとも含む構成に対応するものである。
複数のアンテナ部10Aそれぞれは、実施の形態1のアンテナ部10に対応するものである。アンテナ部10Aは、直交モードパッチアンテナ101と、垂直偏波Lアンテナ102とで構成される。例えば、直交モードパッチアンテナ101は、アンテナ部10を構成するダイポールアンテナAxおよびダイポールアンテナAyに対応し、垂直偏波Lアンテナ102は、アンテナ部10を構成するダイポールアンテナAzに対応する。すなわち、実施の形態1で説明したように等価ダイポールとして機能する。
垂直偏波Lアンテナ102は、図16Aに示すように誘電体基板に設置されることで、ダイポールアンテナAzを設置する場合と比較して誘電体基板の垂直方向のスペースを必要とせず、ダイポールアンテナAzの指向性特性を実現できる。
図16Bに示すアンテナ装置301は、タブレット端末に実装され、複数のアンテナ部10Aと、誘電体基板311と、グランド321と、重み付け回路331とを備える。誘電体基板311と、グランド321と、重み付け回路331は、上記の誘電体基板310と、グランド320と、重み付け回路330とサイズが異なるのみで同様の機能を有するため説明は省略する。
なお、アンテナ装置1を携帯端末に実装する態様は、図16Aおよび図16Bで説明した場合に限られない。本実施の形態で説明した実装の態様はあくまで一例である。
(効果)
最後に、本発明に係るアンテナ装置の効果を確認するため、固定されているアンテナ(以下垂直アンテナと呼ぶ)と比較する。以下でも、到来波の受信電力の比(RVH)が交差偏波電力の比(XPR)であり、2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数θを、鉛直方向上向きの軸である第1位置からのアンテナ素子の一方の傾き角であるとして説明する。
図17は、垂直アンテナで8素子MIMOアレーを構成する解析モデルを示す図であり、図18は、8×8MIMO伝送容量の解析結果を示す図である。
なお、図18には、本開示に係るアンテナ装置(アンテナ装置と記載)の解析結果を示している。また、図18には、比較対象として、図3に示す3軸のダイポールアンテナ(Ax、Ay、Az)の重みをXPRとθとよって変化させず等分配した場合(以下「等分配合成アンテナ」とも呼ぶ)の解析結果を示している。
図18より、XPRが−20dBの環境において、アンテナ装置(本開示に係るアンテナ装置)は、垂直アンテナと比較して伝送容量が42bits/s/Hz改善していることがわかる。また、XPRが20dBの環境において、アンテナ装置(本開示に係るアンテナ装置)は、等分配合成アンテナと比較して7bits/s/Hz改善していることがわかる。
以上のシミュレーション結果より、到来波偏波を重み付けて合成する本開示に係るアンテナ装置を用いることによって、アンテナ素子の角度変化によって生じるアンテナ特性の劣化と屋外または屋内などで伝搬環境が変化したことによって生じるアンテナ特性の劣化をリアルタイムに適応的に制御することができる。したがって、MIMOアンテナの飛躍的な性能向上が期待できる。
以上のように、本発明によれば、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるアンテナ装置1を実現することができる。
以上、本発明のアンテナ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、本発明におけるアンテナ装置を、ボディエリアネットワークにおけるOn−body通信の際のアクセスポイントに応用する場合も本発明の範囲内に含まれる。以下具体的に説明する。
図19は、本発明に係るアンテナ装置をOn−body通信に適用するときのモデルを示す図である。
ここで、ボディエリアネットワークは、生体モニタ用センサやIC(Integrated Circuit)等が内蔵されている無線通信装置をユーザが携帯または装着して通信を行うためのネットワークである。ボディエリアネットワークを構成するシステムでは、ボディエリアネットワーク内において、センサデバイスとアクセスポイントとが無線通信を行う。
このアクセスポイントに本発明に係るアンテナ装置を構成するとよい。なぜなら、センサデバイスは図19に示すように頭だけではなく胸や足など人体の様々な場所に取り付けられることが予想されるからである。つまり、センサデバイスに内蔵されるアンテナは人体の様々な向きで装着されることが予想されるので、受信側のアクセスポイントのアンテナ素子は様々な方向から到来する電波を受信する必要があるからである。
センサデバイスから送られてくる電波を受信するアクセスポイント(図中の腕)へ本発明に係るアンテナ装置を搭載することで、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。
図19に示すように、センサデバイスからアクセスポイントへ到来する電波A(到来波)をベクトル分解すると、垂直成分Aおよび水平成分Aは以下の式14および式15となる。
Figure 2020031443
Figure 2020031443
ここで、αは到来波の角度であり、θはセンサデバイスとアクセスポイントのなす角である。ベクトル分解した到来波の垂直成分と水平成分の受信電力の比を求めると、以下の式16となる。
Figure 2020031443
これは、RVHと考えることもできるので、式7および式8のRVHに代入することによって本発明に係る重み付け関数を適用できる。
(実施の形態5)
図20Aは、第3世代移動通信システムでの到来波の様子を示す図である。図20Bは、第5世代移動通信システムでの到来波の様子を示す図である。
図20Aに示す第3世代移動通信システムでは、例えば携帯電話などの端末400と基地局401との距離が遠いので、基地局401から発する電波(到来波)は、建物402、403、自動車404、森林405等に反射し、反射波としてあらゆる方向から端末400に到来する。つまり、第3世代移動通信システムでは、端末400に、一様な到来波があらゆる方向から到来する。
一方、図20Bに示す第5世代移動通信システムでは、例えば携帯電話などの端末500と基地局501との距離が近くなるので、基地局501からの到来波が直接に端末500に届くことになる。しかし、基地局501からの到来波が直接に端末500に届くようになることで、端末500に届く到来波は、あらゆる方向でなく基地局501のある方向近傍に限られてしまう(到来波角度が狭い)ことが予想される。
実施の形態1〜4におけるアンテナ装置では、人の動作に伴うアンテナ部10の傾きを示す変数と、アンテナ部10の2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数とを用いて受信信号を合成することで、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができることについて説明した。これは、図20Aに示す第3世代移動通信システムのように、アンテナ部10に一様な到来波があらゆる方向から到来する場合に顕著な効果を発揮するが、図20Bに示す第5世代移動通信システムのように到来波角度が狭くなる場合には、選択しないアンテナ素子の軸方向(特定方向)の到来波は受信できないことになり、さらなる改善を必要とする。
そこで、本実施の形態では、到来波角度が狭い場合にも、人の動作に伴うアンテナ素子の傾きを示す変数と、2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数を用いて受信信号を合成することで、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるアンテナ装置について説明する。
5.1 アンテナ装置の構成
図21は、実施の形態5におけるアンテナ装置の構成の一例を示すブロック図である。図22は、実施の形態5における合成部の詳細構成の一例を示す図である。図23は、実施の形態5におけるアンテナ装置の具体的構成の一例を示す図である。なお、図1〜3と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図21に示すアンテナ装置2は、無線通信に使用され、アンテナ部10と、合成部22と、センサ部13とを備える。図21〜図23に示すアンテナ装置2は、実施の形態1等に係る図1に示すアンテナ装置1に対して、選択部11の構成がなく、合成部22の構成が異なる。
合成部22は、3つのアンテナ素子が3次元座標上のx、y、z軸と平行となる位置を基準とした場合のアンテナ部10の3次元座標上の傾きを示す変数と、アンテナ部10に到来する到来波の交差偏波電力の比とで定義され、受信信号の位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。より具体的には、合成部22は、3つのアンテナ素子で構成されるアンテナ部10の傾きを示す変数である傾き角度θおよび回転角度φと、アンテナ部10の3つのアンテナ素子に到来する到来波の交差偏波電力の比(XPR:Cross-Polarization Ratio)とで定義され、3つのアンテナ素子における受信信号の位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。
ここで、図24は、実施の形態5におけるアンテナ部10の傾きを示す変数である傾き角度θおよび回転角度φを説明するための図である。
アンテナ部10の傾きを示す変数である傾き角度θおよび回転角度φは、アンテナ部10を構成する3つのアンテナ素子が正位置(図24の座標の原点に示す位置のように、ダイポールアンテナAx、ダイポールアンテナAy、ダイポールアンテナAzがそれぞれ3次元座標系のx軸、y軸およびz軸と平行な向きで設置された位置)であるとき、0(ゼロ)である。一方、図24のP点の位置で示される3つのアンテナ素子の傾きは、傾き角度θおよび回転角度φを用いて表すことができる。ここで、回転角度φは、P点をXY平面上に射影した場合における3つのアンテナ素子(例えばダイポールアンテナAy)の正位置からの回転角度である。傾き角度θは、3次元座標系におけるアンテナ部10のz軸からの傾き角度を意味し、3次元座標系におけるz軸に平行は線を基準にしたときの3つのアンテナ素子(例えばダイポールアンテナAz)の傾きの補角である。
また、本実施の形態では、上記到来波の交差偏波電力の比をXPR、上記の傾き角度θおよび回転角度φ、ダイポールアンテナAzの受信信号をS、ダイポールアンテナAxの受信信号をSHx、並びにダイポールアンテナAyの受信信号をSHyとする。また、合成部22が出力する合成信号をaとし、受信信号Sに乗算する重み付け関数をW、受信信号SHxに乗算する重み付け関数をWHx、受信信号SHyに乗算する重み付け関数をWHyとする。
この場合、合成部22は、式17〜式21を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力すると表現できる。
Figure 2020031443
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より詳細には、合成部22は、図22に示すように、算出部221と、重み付け部222と、加算部223とで構成されている。
算出部221は、センサ部13の検出結果を用いて交差偏波電力の比(XPR)と、傾き角度θと、回転角度φとを算出する。
重み付け部222は、算出部221で算出される交差偏波電力の比(XPR)と、傾き角度θおよび回転角度φで定義される重み付け関数を、3つのアンテナ素子の受信信号それぞれに乗算する。なお、
Figure 2020031443

Figure 2020031443
は、受信信号の位相シフト量を示しており、実施の形態1〜4で説明した受信信号Sの位相をシフトしたものに対応する。受信信号の位相シフト量は、アンテナ素子がどの方向に傾いたり回転したりしても良いように、3つのアンテナ素子の受信信号は2π/3(120度)ずつ位相をシフトして合成する。
加算部223は、重み付け部222で乗算された値を加算(合成)して、出力する。本実施の形態では、加算部223は、重み付け部222で乗算された値を加算した合成信号(a)を出力する。
このようにして、合成部22は、式17〜式21で示される重み付け関数(3本重み付
け関数)を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する。
なお、式17を用いるためには,実施の形態1で説明したのと同様に、アンテナ装置2の置かれた伝搬環境(受信環境)のXPRを予め知る必要があるが、XPR=垂直偏波成
分の受信電力P/水平偏波成分の受信電力Pの関係があることから、XPRは傾き角度θ=0のときに到来する到来波の垂直偏波成分および水平偏波成分を受信するダイポールアンテナAおよびダイポールアンテナAxの受信電力Pおよび受信電力Pを用い
て求めることができる。さらに、傾き角度θ(瞬時角度)および回転角度φ(瞬時角度)は現行タブレット端末やスマートホンによって実用化されている磁気センサや角速度センサを用いて検出された検出結果から算出することができる。
このように重み付け関数(3本重み付け関数)を定義することで3つのアンテナ素子の出力を合成することができるので、到来波角度が狭い到来波偏波に対しても最適な重み付けを行うことができる。
なお、式17〜式21で示される重み付け関数(3本重み付け関数)は、実施の形態1〜4で説明した重み付け関数を発展したものに相当し、実施の形態1で説明した式10〜式13で示される重み付け関数(2本重み付け関数)を包含する。
具体的には、実施の形態1〜4で説明したように3本のうち2本のアンテナ素子を用いる場合には、式17〜式21で示される重み付け関数(3本重み付け関数)において、除く1本のアンテナ素子の重みを0、位相シフト量を0degにすることにより、実施の形態1で説明した式10〜式13で示される重み付け関数に相当するものになる。
例えば、y軸と平行な向きで設置されるアンテナ素子(ダイポールアンテナAy)が除
かれるとした場合には、式17〜式21において、重み「WHy」を0にすることで、実施の形態1で説明した式10〜式13で示される重み付け関数と同等の式22〜式25で示される重み付け関数(2本重み付け関数)を得ることができる。
Figure 2020031443
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5.2 アンテナ装置の動作
次に、以上のように構成されたアンテナ装置2の動作について説明する。
図25は、実施の形態5におけるアンテナ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、アンテナ装置2は、位相シフト量の算出を行う(S11)。本実施の形態では、位相シフト量は、受信電力aのアンテナ素子の傾き角θに対する依存性が小さくなるようにπ/2と、予め定められた値となっている。なお、位相シフト量は、−π/2でもよい。また、位相シフト量は、アンテナ装置2が搭載される端末やユースシーンに応じて制御するとしてもよい。位相シフト量を制御する場合については、後述するためここでの説明は省略する。
次に、アンテナ装置2は、位相シフト量を反映した3本重み付け関数を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成する(S21)。
5.3 効果
このように、本実施の形態のアンテナ装置2によれば、到来波角度が狭い到来波偏波に対して、伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができる。
具体的には、本実施の形態のアンテナ装置2は、人の動作に伴うアンテナ素子の傾きを示変数である傾き角度θおよび回転角度φと、3つのアンテナ素子に到来する到来波の交差偏波電力の比(XPR)と、位相シフト量を反映した3本重み付け関数とを用いて受信信号を合成する。それにより、到来波角度が狭い到来波偏波に対して伝搬環境や人の動きによって到来波偏波が変化しても安定した受信信号を得ることができるので、超高速の無線通信を実現することができる。
さらに、アンテナ素子の傾きを示す変数である傾き角度θおよび回転角度φと、3つのアンテナ素子に到来する到来波の交差偏波電力の比(XPR)と位相シフト量が反映される3本重み付け関数は、振幅関数(スカラー)で定義することができる。つまり、当該重み付け関数は、位相情報を必要とせずに算出できるので、3つのアンテナ素子の受信信号のフィードバックを必要としない。それにより、本実施の形態のアンテナ装置2は、演算に負荷がかからずリアルタイムでかつ適応的に受信信号の合成の算出をすることができる。
5.4 有効性の確認
次に、本実施の形態に係るアンテナ装置2の有効性を確認するために、計算機シミュレーションを使用してシミュレーションを行った。
図26は、傾き角度θを0度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置2の放射指向特性を示す図である。図27は、傾き角度θを45度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置2の放射指向特性を示す図である。図28は、傾き角度θを90度に固定して回転角度φを変化させた時のxy平面におけるアンテナ装置2の放射指向特性を示す図である。なお、これらの図において、解析周波数は2GHzである。
図26〜図28より、傾き角度θおよび回転角度φの変化に応じて、垂直偏波成分(図中の太線)と水平偏波成分(図中の細線)が変化しているから、重み付け関数がアンテナ部10の傾きに応じて変化していることの証となる。
5.4.1 解析方法と解析アレーモデル
続いて、本実施の形態に係るアンテナ装置2の有効性を確認するために、3次元周辺散乱モデルを用いて、MIMO伝送特性として2×2MIMO伝送容量の解析を行った。
図29は、3次元周辺散乱モデルを示す図である。図30は、解析したアレーモデルを示す図である。
図29において、携帯端末600は、N個のアンテナ素子が搭載されており、基地局601には、M個のアンテナが搭載されているとする。また、携帯端末600への到来波は、基地局601から発せられた到来波が建物602、603、604、605を反射した反射波であるとしている。ここで、解析周波数を2GHz、SNRを30dB、XPRを10dB、アジマス方向散乱体数を30、エレベーション方向散乱体数を37、アジマス方向を一様分布、エレベーション方向をガウス分布(中心角度:20deg、広がり角度:20deg)としている。
また、本解析では、図30に示すように回転角度φのみを0degから90degに変化させ、その後に傾き角度θを0degから90degに変化させて解析した。
5.4.2 解析結果
図31は、3本重み付け関数を適用し2×2MIMO伝送容量の解析を行った解析結果を示す図である。傾き角度θ、回転角度φを変化させて2×2MIMO伝送容量の解析を行った。なお、傾き角度θおよび回転角度φはそれぞれ、図30に示すように0°から90°まで変化させた。XPRは10dBとした。図中の3本重み付け関数の特性において印可電圧制御有はアンテナ素子とケーブルを接続するときにアンテナ性能を発揮できるよう電圧の正負を考慮した場合であり、印可電圧制御無は印可電圧制御有のときとは逆にアンテナ素子とケーブルを接続した場合である。すなわち、3本のアンテナ素子を合成する重み付け関数を用いる際は、アンテナ素子が傾いた時に伝搬環境の主たる偏波成分が打ち消し合わないようにアンテナ素子とケーブルを接続する必要がある。アンテナ素子に印可する電圧の正負と偏波の詳細な関係については、後述するためここでの説明は省略する。比較対象として、2本重み付け関数を適用した場合の解析結果をともにプロットした。図中の2本重み付け関数の特性においてスイッチ切り替え有は選択部11において動かされるアンテナ部10の動きに応じて受信電力の大きさが最も変化しない一のアンテナ素子を除いた2つのアンテナ素子を選択した場合であり、スイッチ切り替え無は選択部11においてアンテナの選択を行わなかった場合である。なお、MIMO伝送容量の計算方法は非特許文献1に示されているので、ここでの説明は省略する。
図31より、回転角度φのみ変化させたときには、式17〜式21で示される3本重み付け関数を適用した場合と式22〜式25で示される2本重み付け関数を適用した場合に差はなかったものの、傾き角度θのみを変化させた場合には3本重み付け関数を適用した場合の方の伝送容量が改善することがわかる。
これにより、3本重み付け関数を適用した場合には、アンテナ素子に印可する電圧の正負を伝搬環境とアンテナの傾き方向に注意して接続することにより、2本重み付け関数より安定した受信信号を得ることができることがわかる。
(実施の形態6)
実施の形態5では、重み付け関数に適用される位相シフト量は、予め定めた値であったが、アンテナ装置1や2が搭載される端末や、ユースシーンに応じて制御してもよい。そうすることで、アンテナ装置1や2が搭載される端末や、ユースシーンにおいてより安定した受信信号を得ることができる。以下、この場合について説明する。
なお、式17〜式21で示される重み付け関数(3本重み付け関数)は、実施の形態1〜4で説明した重み付け関数を発展したものに相当し、実施の形態1で説明した式10〜式13で示される重み付け関数(2本重み付け関数)を包含する。
したがって、アンテナ装置1の場合、以下の式26〜29のように位相シフトτは適用される。
Figure 2020031443
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Figure 2020031443
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また、アンテナ装置2の場合、以下の式30〜34のように位相シフトτは適用される。
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
Figure 2020031443
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以下では、実施の形態5で説明したアンテナ装置2をタブレット端末に搭載した場合を例にあげて説明する。また、説明を容易にするため、アンテナ装置2に2本重み付け関数を適用する場合、すなわちアンテナ装置2で2本のアンテナ素子の受信信号を合成する場合の位相シフト量について説明する。
6.1 タブレット端末の解析モデル
図32は、実施の形態5に係るアンテナ装置2を搭載したタブレット端末を縦置き使用したときの解析モデルを示す図である。図33は、実施の形態5に係るアンテナ装置2を搭載したタブレット端末を横置き使用したときの解析モデルを示す図である。図34は、実施の形態6に係る位相シフト量について説明するための図である。図35は、実施の形態6に係るタブレット端末のアンテナ装置2の具体的構成の一例を示す図である。
本実施の形態で使用するタブレット端末の解析モデルは、図32および図33に示すように、互いに直交する3つのアンテナ素子であるダイポールアンテナAx、ダイポールアンテナAyおよびダイポールアンテナAzを有するアンテナ部10を搭載したものである。ここで、3つのアンテナ素子はタブレット端末を縦置きにアンテナ素子の角度θが0degとしたときにx軸に平行なダイポールアンテナをAx、y軸に平行なダイポールアンテナをAy、z軸に平行なダイポールアンテナをAzとした。
図32および図33に示すように、実施の形態5に係るアンテナ装置2をタブレット端末に搭載した場合、人間はタブレット端末の画面を見ながら使用することが予想されるので、アンテナを傾ける角度は0度から90度に限られる。この場合、図34に示すように、到来波の垂直偏波を受けるアンテナ素子をz軸に平行なアンテナAz、水平偏波を受けるアンテナ素子をx軸に平行なアンテナAxとし、それぞれの軸のプラス方向に正の電圧を、マイナス方向に負の電圧を印加するとする。2つの素子が+θ方向に傾いた場合、それぞれのアンテナ素子は垂直偏波成分と水平偏波成分の両成分を受ける。図34に示すようにベクトル分解して別々に考えると、2つの素子の垂直偏波成分は印可電圧が逆相となり打ち消し合い、水平偏波成分は印可電圧が同相となり強め合う。
そのため、実施の形態1〜4におけるアンテナ装置1に位相シフト量を適用する場合には、アンテナ素子がどの方向に傾いても安定して受信信号を得ることができるように位相シフト量はπ/2と予め定めた値として適用するとよい。さらに、ユースシーンを限れば、アンテナ素子の傾く方向を限ることができるので、位相シフト量を制御することで受信信号をさらに高めることができる。なお、アンテナ素子の傾く方向が限られる場合、かつ、選択する2つのアンテナ素子が変化しない場合には、予め3つのアンテナ素子ではなく2つのアンテナ素子が直交するアンテナをアンテナ部10として選択部11を除くアンテナ装置1の構成を適用するとしてもよい。
図32に示すように、タブレット端末を縦置きで使用する場合、実施の形態2で説明したのと同様に、アンテナ部10が動かされる方向は、図32のy軸を回転軸としてzx面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAxとAz)の角度(図で傾き角度θ)が変わると考えられる。この場合、到来波の垂直偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAz(図で太線)、到来波の水平偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAx(図で細線)の2つのアンテナ素子が選択される。すなわち、図35に示す合成部22aは、3本重み付け関数においてダイポールアンテナAyに乗算する重みを0にして、ダイポールアンテナAyの受信信号を除くことで(例えば式35を適用することで)、ダイポールアンテナAxおよびダイポールアンテナAzの2つのアンテナ素子を選択することができる。そして、合成部22aは、式35に示す重み付け関数を適用することで、この2つのアンテナ素子の受信信号を合成することができる。
Figure 2020031443
ここで、
Figure 2020031443
はユースシーンに応じて制御された位相シフト量を示し、τだけ位相がシフトすることを示している。
なお、図33に示すように、タブレット端末を横置きで使用する場合、アンテナ部10が動かされる方向は、図33のy軸を回転軸としてzx面でアンテナ素子(図ではダイポールアンテナAxとAy)の角度(図で傾き角度θ)が変わると考えられる。この場合、到来波の垂直偏波を受けるダイポールアンテナAy、到来波の水平偏波を受けるアンテナ素子としてダイポールアンテナAxの2つのアンテナ素子が選択されることに相当するが、数学的には、式35と等価であるため、図32に示す場合で以下の解析を行った。
6.2 解析結果
図36A〜図36Cは、タブレット端末の保持角度の平均値を説明するための図である。図36Aには、ユーザがタブレット端末を手で保持するときの水平面(xy平面)からの角度である端末保持角度x1と、ユーザの手がタブレット端末を保持するときの端末保持位置x2の定義が示されている。図36Bにはユーザがタブレット端末を手で保持するときの端末保持角度x1の統計結果が示されており、図36Cには、端末保持角度x1と端末保持位置x2とそれぞれの統計の解析結果が示されている。すなわち、図36Cから、端末保持角度x1の平均値は35度であり、傾き角度θはz軸から55度であるのがわかる。
図37Aおよび図37Bは、傾き角度θを55度に固定して位相シフト量を変化させた時のxy平面における放射指向特性を示す図である。図37Aの(a)〜(c)と図37Bの(d)、(e)から、位相シフト量を増やす(0度〜180度)と、垂直偏波成分が大きくなるように放射指向特性が大きく変化していることがわかる。
図38は、傾き角度θを55度に固定して位相シフト量を変化させた時の伝送容量特性を示す図である。図38には、タブレット端末を縦置きで使用する場合の解析結果がプロットされている。なお、位相シフト量は0度から180度まで変化させた。XPRは10dBとした。SNRは30dBである。
図38から、τ1点すなわち位相シフト量が180度(π)であるときに伝送容量が最大となることがわかる。ここで、τ2点すなわち実施の形態5で説明した2本重み付け関数で用いられる位相シフト量が90度(π/2)である場合と比較して、1.4bits/s/Hzの改善を示すことがわかる。
図39Aは、異なる位相シフト量において傾き角度θを変化させた時の伝送容量特性を示す図である。図39Bは、異なる位相シフト量において回転角度φを変化させた時の伝送容量特性を示す図である。図39Aおよび図39Bにはそれぞれ、位相シフト量が0度、90度および180度の場合の伝送容量特性が示されている。
図39Bから、アンテナ部10が回転すなわち回転角度φが異なる場合には、位相シフト量の違いは影響しない。一方、図39Aから、アンテナ部10が傾いたときすなわち傾き角度θが異なる場合には、位相シフト量の違いが大きく影響することがわかる。そして、アンテナ部10の傾き角度θが異なっていても位相シフト量が180度(π)であるときに伝送容量が変化せずに一定となる(最大を維持する)ことがわかる。
図40は、XPRが変化した時の最適な位相シフト量の結果を示す図である。すなわち、XPR≧−3dBのときは位相シフト量を180度、XPR≦−3のときは位相シフト量を0度とすることで、実施の形態5と比較して大きな伝送容量が得られることがわかる。
6.3 効果
以上のように、本実施の形態によれば、位相シフト量を、アンテナ装置1および2を搭載する端末やユースシーンに応じて制御することにより、さらなる伝送容量の向上が図れる。
例えば、アンテナ装置2では、位相シフト量は2π/3(120度)と−2π/3(−120度)とし、合成部22は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。また、位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値とし、合成部22は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
また、例えば、アンテナ装置1では、さらに合成部12は、選択部11で選択された2つのアンテナ素子における位相シフト量がさらに反映された重み付け関数を用いて、当該2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてよい。
ここで、例えば、位相シフト量はπ/2(90度)もしくは−π/2(−90度)とし、合成部12は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、選択部11で選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。また、位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値とし、合成部12は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、選択部11で選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
なお、上述したように、ユースシーンが限定される場合には、アンテナ素子の傾く方向を限ることができるので、本発明に係るアンテナ装置は、無線通信に使用されるアンテナ装置であって、互いに直交する2つのアンテナ素子を有するアンテナ部と、2つのアンテナ素子で形成される平面において2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときを基準とした当該2つのアンテナ素子の一方の傾きを示す変数と、当該2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比とで定義される重み付け関数と位相シフト量を用いて、当該選択部により選択された2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部と、を備え、当該合成部は、上記受信電力の比として、当該2つのアンテナ素子の一方が第1位置にあるときに2つのアンテナ素子に到来する到来波の受信電力の比を算出するとしてもよい。ここで、位相シフト量はπ/2(90度)もしくは−π/2(−90度)とし、当該合成部は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。また、位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値とし、当該合成部は、当該位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、2つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力するとしてもよい。
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係るアンテナ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。
また、例えば、アンテナ装置を構成するモジュールを、IC(集積回路)、ASIC(特定用途向け集積回路)、およびLSI(大規模集積)などの形態で実現されるか、ARMなどのCPUに基づくプロセッサおよびPC(パーソナルコンピュータ)などの機械により実現するとしてもよい。これらの各モジュールは、多くの単機能LSIまたは1つのLSIに含まれ得る。ここで用いられた名称はLSIであるが、集積度に応じて、IC、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称されることもある。さらに、集積方法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサなどによっても集積することができる。これには、プログラム命令により指示可能なDSP(デジタル信号プロセッサ)などの特殊なマイクロプロセッサも含まれる。LSIの製造後にプログラム可能なFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)もしくはLSIの接続または配置を再構成できる再構成可能プロセッサを同様の目的で用いることができる。今後は、製造と処理技術の発展に伴い、全く新しい技術がLSIに置き換わるかもしれない。集積はそのような技術によって実現され得る。
本発明は、無線通信に使用されるアンテナ装置に利用され、特にスマートホン、タブレット端末および腕時計端末などの携帯端末、無線ルーターなどの固定端末やボディエリアネットワークのOn−body通信のアクセスポイントなどに搭載されるアンテナ装置に利用することができる。
1、2、300、301 アンテナ装置
10、10A アンテナ部
11 選択部
12、22、22a 合成部
13 センサ部
101 直交モードパッチアンテナ
102 垂直偏波Lアンテナ
121、221 算出部
122、222 重み付け部
123、223 加算部
310、311 誘電体基板
320、321 グランド
330、331 重み付け回路
400、500 端末
401、501、601 基地局
402、602、603、604、605 建物
404 自動車
405 森林
600 携帯端末

Claims (3)

  1. 無線通信に使用されるアンテナ装置であって、
    互いに直交する3つのアンテナ素子を有するアンテナ部と、
    前記3つのアンテナ素子が3次元座標上のx、y、z軸と平行となる位置を基準とした場合の前記アンテナ部の3次元座標上の傾きを示す変数と、前記アンテナ部に到来する到来波の交差偏波電力の比とで定義され、前記3つのアンテナ素子における位相シフト量が反映された重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する合成部と、を備える、
    アンテナ装置。
  2. 前記位相シフト量は2π/3と−2π/3であり、
    前記合成部は、当該位相シフト量が反映された前記重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記位相シフト量は、ユースシーンと伝搬環境に応じて定められた値であり、
    前記合成部は、当該位相シフト量が反映された前記重み付け関数を用いて、前記3つのアンテナ素子の受信信号を合成して出力する、
    請求項1に記載のアンテナ装置。
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