以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る通信端末および通信方法の構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
図1は、実施の形態1に係る通信端末10の通信先となる複数の基地局BS1,BS2,BS3,BS4,BS5,BS6,BS7,BS8,BS9,BS10が置局された通信エリアAR1の一例を示す模式図である。実施の形態1に係る通信システム100は、少なくとも1台の通信端末10と、複数個の基地局BS1〜BS10とを含む構成である。通信エリアAR1における基地局の置局数を示すパラメータをiとすると、iは2以上の整数であり、図1の例ではi=10である。但し、i=10に限定されない。通信エリアAR1は、一定数(例えば10個)の基地局が置局可能な空間容積を有する場所(例えば、工場、交差点、工事現場、野球場あるいはサッカー場等のスタジアム、国際会議場等の大会議室)を例示するが、他のエリアでもよい。
通信エリアAR1は、例えば12の区画に区切られた小エリアがそれぞれ隣接して構成される。基地局BS1は識別番号6の小エリアに置局され、基地局BS2は識別番号11の小エリアに置局され、基地局BS3は識別番号3の小エリアに置局され、基地局BS4は識別番号4の小エリアに置局され、基地局BS5は識別番号1の小エリアに置局され、基地局BS6は識別番号9の小エリアに置局され、基地局BS7は識別番号12の小エリアに置局され、基地局BS8は識別番号8の小エリアに置局され、基地局BS9は識別番号5の小エリアに置局され、基地局BS10は識別番号3,4の小エリアのそれぞれに跨って置局されている。なお、端末位置を分類する小エリアは、図1の例では説明を分かり易くするためにそれぞれ同一サイズの長方形のエリアとしているが、これらの小エリアはそれぞれサイズあるいは形状が互いに異なってもよく、更に、通信エリアAR1は2次元の平面エリアでもよいし、高さ方向も含めた3次元の空間であってもよい。
通信端末10は、通信端末10(つまり、自端末)の位置(例えば図1に示す位置(X1,Y1,Z1))に応じて、基地局BS1〜BS10のうち少なくとも1つ(例えば基地局BS1,BS2、あるいは基地局BS1,BS3)との間で、無線通信回線を介して適応的に接続される。なお図1では、説明を簡単にするために、通信端末10は1台のみ図示されている。また、以下の説明において、通信端末10の位置を規定する3次元軸を構成するX軸、Y軸およびZ軸は、図1に示す方向に従うとする。
通信システム100は、通信端末10が無線通信の際に接続する通信相手となる基地局BS1〜BS10のそれぞれが同一の無線規格方式に準拠した無線通信をそれぞれ実行可能なネットワークを構成する。通信端末10は、基地局BS1〜BS10のそれぞれとの間での通信試行が成功した場合、その基地局との間で無線通信を開始する。
以下、無線規格方式として、高周波数帯(例えば、5G(第5世代移動通信システム)での使用が検討されている28GHz帯、またはミリ波(つまり、30GHz〜300GHz帯))を例示して説明する。
通信システム100により構成されるネットワークは、C/U分離型のネットワークでなくてもよいし、C/U分離型のネットワークであってもよい。実施の形態1では、C/U分離型ではないネットワークを例示する。つまり、通信システム100では、制御データの通信とユーザデータの通信とが同じ基地局により実施される。
基地局BS1〜BS10のそれぞれは、上述した28GHz帯またはミリ波に基づく高速なスループットを提供可能なスモールセル基地局であり、高密度に置局される(図1参照)。通信端末10は、いずれの基地局との間においても、制御データを通信し、ユーザデータを通信する。制御データは、C(Control)−Planeに係るデータを含む。ユーザデータは、U(User)−Planeに係るデータを含む。ユーザデータは、例えば画像データ(例えば動画、静止画)、音声データを含み、データ量の多いデータを含み得る。
C−planeは、無線通信における呼接続および無線資源割当の制御データを通信するための通信プロトコルである。U−planeは、通信端末10と基地局との間で、割り当てられた無線資源を使用して実際に通信(例えば映像通信、音声通信、データ通信)するための通信プロトコルである。
基地局BS1〜BS10のそれぞれのセル半径は、例えば10m〜100mであり、マクロセルに比べて比較的小さい。基地局BS1〜BS10のそれぞれが採用可能な無線アクセス技術は、多様であり、複数種類存在してよい。それぞれの基地局の通信可能範囲は、例えば基地局の位置とセル半径に応じて定まり、全ての基地局BS1〜BS10の通信可能範囲は同一面積でもよいし異なる面積でもよい。
通信端末10および基地局BS1〜BS10のそれぞれの使用する無線アクセス技術(例えば、無線通信規格および無線周波数)はLTEあるいはLTE−Advancedでもよい。但し、本開示に係る通信端末の特徴を最も良く発揮できる適用ケースは、遮蔽物の挿入あるいは離脱によって通信回線の品質が大きく変動する高周波数帯(例えば、28GHzあるいはEHF帯)を活用する5G(第5世代移動通信方式)あるいは60GHz帯のWiGig(登録商標)を無線アクセス技術として採用する場合である。このため、以下の説明では、通信端末10および基地局BS1〜BS10のそれぞれの使用する無線アクセス技術は、高周波数帯の5Gを例示して説明する。
図2は、実施の形態1に係る通信端末10の内部構成例を詳細に示すブロック図である。通信端末10は、プロセッサPRC1、メモリM1、GPS(Global Positioning System)アンテナ11、GPS受信部12、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)アンテナ15、BLE受信部17、送信アンテナ19および受信アンテナ21を含む構成である。具体的には、通信端末10は、ユーザにより携帯されるスマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、または据置型のセンサあるいは監視カメラ等のIoT(Interest of Things)機器等である。通信端末10は、ユーザにより携帯された場合に移動してもよいし、ユーザによる携帯の有無に拘わらず移動しなくてもよい。
プロセッサPRC1は、メモリM1と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサPRC1は、メモリM1に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、端末位置生成部23、距離計算部25、通信切断頻度判定部27、接続優先順位決定部29、無線接続制御部31、送信パケット生成部33、無線送信部35、通信監視部37、無線受信部39および受信パケット復号部41を含む。
メモリM1は、例えば通信端末10の処理時に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、通信端末10の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサPRC1により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、通信端末10の動作(例えば、実施の形態1に係る通信端末10により実行される通信方法)を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリM1は、通信エリアAR1内に置局されている基地局BS1〜BS10のそれぞれの位置(つまり座標)の情報を記憶している。
また、蓄積部の一例としてのメモリM1は、通信接続回数テーブルT1(図3参照)を記憶する通信接続回数記憶部45と、通信切断回数テーブルT2(図10参照)を記憶する通信切断回数記憶部43とを含む。つまり、メモリM1は、一次記憶装置とともに、二次記憶装置を含んでもよい。
GPSアンテナ11は、複数(例えば3つまたは4つ)のGPS衛星50から発信された時刻および各GPS衛星50の位置(つまり座標)を示す複数の信号を受信してGPS受信部13に送出する。それぞれのGPS衛星50は、時刻および各GPS衛星50の位置を示す信号を発信する。
GPS受信部13は、GPSアンテナ11により受信された複数の信号に基づいて、GPS受信部13の位置情報(つまり、自端末の位置情報)を算出して取得する。この算出により得られた位置情報は、例えばGPS衛星50からの信号を受信可能な地点に位置する通信端末10の現在位置を示し、具体的には緯度、経度、高度の情報である。なお、GPS受信部13は、プロセッサPRC1内に設けられてもよい。GPS受信部13は、算出により得られた通信端末10の位置情報をプロセッサPRC1に送出する。なお、GPS受信部13の位置情報の算出は、GPS受信部13の代わりに、プロセッサPRC1の端末位置生成部23により行われてもよい。この場合、端末位置生成部23には、GPSアンテナ11が受信した各GPS衛星50からの信号が、GPS受信部13を介して入力される。
ここで、通信端末10がGPS衛星50からの信号を受信可能な位置(例えば屋外)に位置する場合には、複数のGPS衛星50からの信号に基づいて算出された通信端末10の位置情報の信頼性は高い。しかし、通信端末10が屋内(例えば建物内または地下街、但しこれらに限定されない。以下同様。)、または屋外と屋内との境界付近に位置する場合、複数のGPS衛星50からの信号に基づいて算出された通信端末10の位置情報は一定の誤差を含む場合がある。このように、通信端末10が屋内、または屋外と屋内との境界付近に位置する場合、通信端末10は、屋内に設置された複数のBLEビーコン60から発信された時刻および各BLEビーコン60の位置(つまり座標)を示す複数の信号に基づいて、現在の自端末の位置情報を算出して取得する。通信端末10は、例えばBLEビーコン60からの信号の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)が所定の閾値より大きいと判断した場合、屋内、または屋外と屋内との境界付近に位置すると判断し、複数のBLEビーコン60から発信された信号に基づいて、自端末の位置情報を算出する。なお、通信端末10が屋内、または屋外と屋内との境界付近に位置すると判断する方法は、上述した受信電界強度と所定の閾値との比較結果に基づく方法に限定されない。
BLEアンテナ15は、複数(例えば2つ)のBLEビーコン60から発信された時刻および各BLEビーコン60の位置を示す複数の信号を受信してBLE受信部17に送出する。それぞれのBLEビーコン60は、時刻および各BLEビーコン60の位置を示す信号を発信する。また、それぞれのBLEビーコン60間の距離は既知である。通信端末10は、それぞれのBLEビーコン60間の距離情報を予め取得していてもよいし、直接またはネットワーク(図示略)を介して外部装置(図示略。例えば他の通信端末、距離情報管理サーバ)から取得してもよい。
BLE受信部17は、BLEアンテナ15により受信された複数の信号に基づいて、例えば三角測量法を用いてBLE受信部17の位置情報(つまり、自端末の位置情報)を算出して取得する。この算出により得られた位置の情報は、屋内または屋外と屋内との境界付近に位置する通信端末10の現在位置を示す。
なお、BLE受信部17は、BLEアンテナ15により受信された複数の信号と公知の方法(例えばPDR(Pedestrian Dead Reckoning)やPMM(Pedestrian Map Matching))とを組み合わせ用い、通信端末10の屋内、または屋外と屋内との境界付近における位置情報を算出してもよい。
ここで、それぞれのBLEビーコン60の設置位置は、緯度、経度および高度の情報を有すると言えるので、通信端末10が屋外に位置する場合と同様に、通信端末10が屋内、または屋外と屋内との境界付近に位置する場合でも、屋外での位置情報の取得方法は屋内に拡張できて、緯度、経度および高度と同様の位置情報を取得できる。なお、BLE受信部17は、プロセッサPRC1内に設けられても構わない。BLE受信部17は、算出により得られた通信端末10の位置情報をプロセッサ150に送出する。なお、BLE受信部17の位置情報の算出は、BLE受信部17の代わりに、プロセッサPRC1の端末位置生成部23により行われてもよい。この場合、端末位置生成部23には、BLEアンテナ15が受信した各BLEビーコン60からの情報が、BLE受信部17を介して入力される。
送信アンテナ19は、無線送信部35からの送信パケット(例えばユーザデータ)を、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方に送信する。詳細は後述するが、通信端末10の通信先である基地局は、プロセッサPRC1により選別されて決定される。
ここで、第1接続基地局80−1、第2接続基地局80−2は、図1に示す基地局BS1〜BS10のうち異なるいずれかの基地局である。実施の形態1において、自端末が同時に通信用に接続する基地局の数(以下、「同時接続基地局数」という)を示すパラメータをkとすると、通信端末10は、自端末の位置における過去の通信における接続頻度情報および切断頻度情報に基づいて、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)をプロセッサPRC1において適応的に設定する。kは1≦k≦iを満たす整数であるが、説明を分かり易くするために、以下では、kの取り得る値は1または2としている。
通信端末10は、例えばk=1の場合には基地局BS1〜BS10のうちいずれか1つの基地局(例えば基地局BS1)との間で通信用に接続する。従って、通信端末10は、例えば基地局BS1を第1接続基地局80−1として、基地局BS1との間で通信用に接続してデータ通信を行う。
同様に、通信端末10は、例えばk=2の場合には基地局BS1〜BS10のうち異なる2つの基地局(例えば基地局BS1,BS2)との間で通信用に接続する。従って、通信端末10は、例えば基地局BS1,BS2をそれぞれ第1接続基地局80−1,第2接続基地局80−2として、基地局BS1,BS2との間で通信用に2局同時接続してデータ通信を行う。
受信アンテナ21は、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方から送信された受信パケット(例えばユーザデータ)を受信してプロセッサPRC1に送出する。
次に、プロセッサPRC1により実現される機能的構成の詳細について順に説明する。
位置取得部の一例としての端末位置生成部23は、例えば通信端末10が屋外に位置する場合、GPS受信部13からの情報を基に、現在の自端末の位置情報(例えば座標P(X1,Y1,Z1))を生成して距離計算部25、通信切断頻度判定部27および接続優先順位決定部29にそれぞれ送出する。位置取得部の一例としての端末位置生成部23は、例えば通信端末10が屋内、または屋外と屋内との境界付近に位置する場合、BLE受信部17からの情報を基に、現在の自端末の位置情報(例えば座標P(X1,Y1,Z1))を生成して距離計算部25および通信切断頻度判定部27にそれぞれ送出する。
距離計算部25は、端末位置生成部23から送出された自端末の位置情報に対応する位置P(X1、Y1、Z1)と通信エリアAR1内に置局されている基地局BSiのそれぞれの位置(Xi,Yi,Zi)との間の基地局ごとの距離diを、数式(1)に従って計算する。距離計算部25は、基地局ごとの距離diの計算結果を接続優先順位決定部29に送出する。図1では基地局数は10であるため、i=1〜10としている。なお、距離diの計算例は数式(1)のハミング距離に限定されず、数式(2)のユークリッド距離であってもよい。
なお、距離計算部25は、距離diの計算時に、通信端末10の位置(緯度、経度、高度)のうち特定の要因(例えば高度)に重み付け係数を乗じてもよい(数式(3)参照)。数式(3)において、|Z1−Zi|の係数の「10」はあくまで重み付け係数の一例である。通信端末10の位置情報の中で緯度や経度が同じでも、高度が異なると通信環境が大きく異なる場合がある。このような場合、高度に上述した重み付け係数(例えば10)を考慮(具体的には乗算)することで、接続優先順位決定部29は、通信端末10の現在の自端末の位置に応じた基地局の接続優先順位を決定できる。
通信切断頻度判定部27は、端末位置生成部23から送出された自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る切断回数の情報(切断頻度情報の一例)を通信切断回数記憶部43から読み出して取得する。通信切断頻度判定部27は、取得された基地局ごとの通信に係る切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)以上であるか否かに応じて、自端末の位置での通信(例えば、電波の伝搬時の直進性が高いミリ波等を用いた通信)が切断し易い位置であるか否かを判定する。言い換えると、通信切断頻度判定部27は、現在の通信端末10の位置が基地局との通信中に遮蔽物等によって頻繁に遮蔽されて通信の切断が発生し易い地点であるか否かを判定する。
接続基地局数設定部の一例としての通信切断頻度判定部27は、上述した切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)以上であると判定した場合、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)を2と設定する。つまり、この場合、通信端末10の位置は、基地局との通信中に遮蔽物等によって頻繁に遮蔽されて通信の切断が発生し易い地点となる。通信切断頻度判定部27は、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の設定値(つまり、k=2)の情報を無線接続制御部31に送出する。
一方、接続基地局数設定部の一例としての通信切断頻度判定部27は、上述した切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)未満であると判定した場合、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)を1と設定する。つまり、この場合、通信端末10の位置は、基地局との通信中に遮蔽物等によってあまり遮蔽されず、通信の切断が発生しにくい地点となる。通信切断頻度判定部27は、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の設定値(つまり、k=1)の情報を無線接続制御部31に送出する。
決定部の一例としての接続優先順位決定部29は、端末位置生成部23から送出される自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る接続回数の情報(接続頻度情報の一例)を通信接続回数記憶部45から読み出して取得する。接続優先順位決定部29は、端末位置生成部23から送出される自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る切断回数の情報(切断頻度情報の一例)を通信切断回数記憶部43から読み出して取得する。
接続優先順位決定部29は、距離計算部25から送出される基地局ごとの距離diの計算結果と、現在の自端末の位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る接続回数(ai)および切断回数(bi)とに基づいて、自端末の位置において優先的に接続されるための基地局ごとの接続優先順位を、数式(4)に従って計算して決定する。接続優先順位決定部29は、自端末の位置において優先的に接続されるための基地局ごとの接続優先順位の決定結果を無線接続制御部31に送出する。数式(4)により、接続優先順位は、距離diが小さいほど、接続回数(ai)が大きいほど、切断回数(bi)が小さいほど大きくなる関数値として計算される。なお、数式(4)の具体的な関数が一例であることは言うまでもない。
ここで、図3および図4を参照して、接続優先順位決定部29における接続優先順位の計算例について説明する。
図3は、通信接続回数記憶部45に保存される通信接続回数テーブルT1の一例を示す図である。図4は、通信切断回数記憶部43に保存される通信切断回数テーブルT2の一例を示す図である。
図3に示されるように、通信接続回数テーブルT1は、通信端末10の位置(つまり3次元座標)ごとに、対応する小エリアの識別番号と、通信履歴のある基地局の識別番号を示すパラメータ(i)と、パラメータiに対応する基地局との過去の通信履歴における接続回数aiとを対応付けて記憶する。なお、図3において、識別番号6の小エリアにおいて、i=1に対応する基地局BS1,i=2に対応する基地局BS2,i=3に対応する基地局BS3のそれぞれに対応する接続回数が14,8,6と示されているが、接続回数の多い上位所定個(例えば3個)の基地局との接続回数が限定的に記憶されてもよいし、全ての基地局のそれぞれごとの接続回数が記憶されてもよい。図3では、上位3個の基地局BS1,BS2,BS3のそれぞれとの接続回数が例示的に示されている。
図4に示されるように、通信切断回数テーブルT2は、通信端末10の位置(つまり3次元座標)ごとに、対応する小エリアの識別番号と、通信履歴のある基地局の識別番号を示すパラメータ(i)と、パラメータiに対応する基地局との過去の通信履歴における切断回数biとを対応付けて記憶する。なお、図4において、識別番号6の小エリアにおいて、i=1に対応する基地局BS1,i=2に対応する基地局BS2,i=3に対応する基地局BS3のそれぞれに対応する切断回数が5,6,3と示されているが、切断回数の多い上位所定個(例えば3個)の基地局との切断回数が限定的に記憶されてもよいし、全ての基地局のそれぞれごとの切断回数が記憶されてもよい。図4では、図3に示される識別番号6の小エリアに対応する3個の基地局BS1,BS2,BS3のそれぞれと対応するように、3個の基地局BS1,BS2,BS3のそれぞれとの切断回数が例示的に示されている。
接続優先順位決定部29は、現在の自端末の位置がP(X1,Y1,Z1)である場合、その位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る接続回数(ai)および切断回数(bi)ならびに距離diを、i=1に対応する基地局BS1について(ai,bi,di)=(14,5,3),i=2に対応する基地局BS2について(ai,bi,di)=(8,6,4),i=3に対応する基地局BS3について(ai,bi,di)=(6,3,6)を取得する。
接続優先順位決定部29は、数式(4)に従い、i=1に対応する基地局BS1の接続優先順位を「0.78」(=14÷(6×3))と計算し、i=2に対応する基地局BS2の接続優先順位を「0.29」(=8÷(7×4))と計算し、i=3に対応する基地局BS3の接続優先順位を「0.25」(=6÷(4×6))と計算する。ここでは、説明を分かり易くするために、3個の基地局BS1,BS2,BS3の接続優先順位を計算する例を説明している。ただ、接続優先順位決定部29は、通信接続回数テーブルT1および通信切断回数テーブルT2から他の基地局での接続回数および切断回数ならびに対応する距離diを取得できれば、同様にして他の基地局の接続優先順位を計算してよい。
無線接続制御部31は、接続優先順位決定部29から送出される自端末の位置に対応する基地局ごとの接続優先順位の決定結果と、通信切断頻度判定部27から送出される自端末の位置に対応するパラメータ(k)の設定値の情報とを取得する。無線接続制御部31は、パラメータ(k)の設定値の情報に従い、基地局ごとの接続優先順位の決定結果を用いて、現在の自端末の位置における通信先として優先的に接続されるための基地局を選別して決定する。
例えば、無線接続制御部31は、自端末の位置がP(X1,Y1,Z1)であってパラメータ(k)の設定値が1である場合、接続優先順位が「0.78,0.29,0.25」の中から最も高い「0.78」に対応する基地局BS1を、優先的に接続するための基地局として選別する。この場合、接続制御部の一例としての無線接続制御部31は、基地局BS1との接続を試行し、その試行が成功した場合に基地局BS1との間で通信可能に接続する。
また例えば、無線接続制御部31は、自端末の位置がP(X1,Y1,Z1)であってパラメータ(k)の設定値が2である場合、接続優先順位が「0.78,0.29,0.25」の中から最も高い「0.78」に対応する基地局BS1とその次に高い「0.29」に対応する基地局BS2とを、優先的に接続するための基地局として選別する。この場合、接続制御部の一例としての無線接続制御部31は、基地局BS1,BS2のそれぞれとの接続を試行し、その試行がそれぞれ成功した場合に基地局BS1,BS2との間で通信可能に接続する。
また、無線接続制御部31は、選別された基地局(つまり、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方)との間の無線通信に用いる無線資源を割り当て、管理する。この無線資源は、例えば、無線通信に使用される無線周波数、無線周波数のリソースブロック(RB:Resource Block)を含む。リソースブロックは、無線周波数(例えばサブキャリア周波数)の周波数軸および時間軸(例えばタイムスロット)で分割された、無線周波数の割り当ての単位を指す。
無線接続制御部31は、無線周波数の割り当て候補のリソースブロックが割り当て可能か否かを、選別された基地局(つまり、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方)に問い合わせる。第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方は、無線周波数の割り当て候補に基づいて、この無線周波数のリソースブロックの割り当て状況を検索し、リソースブロックが割り当て可能か否かを判定し、判定結果を通信端末10へ送信する。無線接続制御部31は、この判定結果を参照し、割り当て候補の無線周波数のリソースブロックが割り当て可能か否かを判定する。判定結果は、例えばリソースブロックの割り当て可否の情報や、リソースブロックを割り当て可能な場合に割り当てられる無線周波数のリソースブロックの情報を含む。
無線接続制御部31は、上述判定結果に基づいて、選別された基地局(つまり、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方)との間の通信に用いる無線周波数の未割り当てのリソースブロックを割り当てる。無線資源割当管理部105は、リソースブロックの割り当てるとともに、AMC(Adaptive Modulation and Coding)を指定してもよい。
なお、無線接続制御部31は、割当候補の無線周波数を割当不可能な場合、無線周波数を次の優先順位のものに変更し、その次の優先順位の割当候補の無線周波数から新たに無線周波数を選定する。
無線接続制御部31は、割り当てられた無線資源の情報(つまり、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方との間の通信に用いる無線周波数およびリソースブロックの情報)を、無線送信部35または無線受信部39へ送る。つまり、無線接続制御部31は、割り当てられた上り回線無線資源の情報を無線送信部35に送る。無線接続制御部31は、割り当てられた下り回線無線資源の情報を無線受信部39に送る。
送信パケット生成部33は、入力される上り回線データを用いて、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方へ送信されるパケット(つまり送信パケット)を生成する。送信パケットは、上り回線データを含む。上り回線データ(例えば制御データ、ユーザデータ)は、例えばメモリM1、記憶装置等の外部装置(図示略)、各種ソフトウェアの処理部(図示略)から得られる。
通信部の一例としての無線送信部35は、送信パケット生成部33により生成された送信パケット(例えばユーザデータ)を、無線接続制御部31により割り当てられた上り回線無線資源を用いて、送信アンテナ19および上り回線を介して、無線接続制御部31から指示された基地局に送信する。なお、上り回線は、通信端末10から通信先の基地局に向かう無線回線である。下り回線は、通信先の基地局から通信端末10に向かう無線回線である。無線回線は、様々な公衆回線、携帯電話回線、広域無線回線等を広く含む。
監視部の一例としての通信監視部37は、現在の自端末の位置において、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方から受信アンテナ21を介して送出された受信パケット(例えばユーザデータ)の適正な受信の有無を監視する。つまり、通信監視部37は、通信中のk個の基地局のうち少なくとも1つとの間で自端末の位置における通信の切断の有無を監視する。
通信監視部37は、現在の自端末の位置において、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方からの受信パケットを適正に受信できなくなったことを検知した場合、対応する基地局との間の通信に係る切断回数(bi)の情報を通信切断回数記憶部43に更新する。また、通信監視部37は、現在の自端末の位置において、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方からの受信パケットを適正に受信できなくなったことを検知した場合、対応する基地局との通信の切断が発生した旨のメッセージを無線接続制御部31に送出する。無線接続制御部31は、このメッセージを取得すると、同時接続基地局数を示すパラメータkを2と設定して更新する。
通信部の一例としての無線受信部39は、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方からの受信パケット(例えばユーザデータ)を、無線接続制御部31により割り当てられた下り回線無線資源を用いて、下り回線および受信アンテナ21を介して受信する。
受信パケット復号部41は、無線受信部39により受信された受信パケットを復号して復号データを得る。復号データは、下り回線データを含む。下り回線データ(例えば制御データ、ユーザデータ)は、例えばメモリM1、記憶装置あるいは表示装置等の外部装置(図示略)、各種ソフトウェアの処理部(図示略)に送出される。
また、下り回線データは、無線資源の割り当てに関する制御情報を含むことがある。この制御情報は、無線接続制御部31に送出される。この制御情報は、例えば通信先となる基地局により無線資源(つまりリソースブロック)を割当可能か否かが判定された判定結果が含まれる。
次に、図5〜図10を参照して、実施の形態1に係る通信端末10の動作概要例を比較例に係る動作概要と比べながら説明する。
図5は、比較例に係る通信端末と基地局との間の通信の動作概要例を時系列に説明する模式図である。図6は、図5に示す通信端末の通信に係るスループットの推移例を示す図である。図7は、実施の形態1に係る通信端末と基地局との間の通信の第1動作概要例を時系列に説明する模式図である。図8は、図7に示す通信端末の通信に係るスループットの推移例を示す図である。図9は、実施の形態1に係る通信端末と基地局との間の通信の第2動作概要例を時系列に説明する模式図である。図10は、図9に示す通信端末の通信に係るスループットの推移例を示す図である。
図5、図7および図9において、説明を分かり易くするために、基地局BS1,BS2,BS3のそれぞれの位置は図1に示す例に対応している。また、図7の説明において、図5の説明と重複する内容の説明は同一の符号を付与して簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。同様に、図9の説明において、図5または図7の説明と重複する内容の説明は同一の符号を付与して簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
図5に示す比較例では、通信端末MS0は、時刻t0において単一の基地局BS1との間で、例えばミリ波等の高周波数帯を用いてデータ通信を行っている。時刻t0の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS0と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図6に示すように、通信端末MS0の通信に係るスループットは、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1との間の通信に対応した高速な値が得られる。
ところが、時刻t0以降の時刻t1において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SK1が通信端末MS0と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽したとする。この場合、図6に示すように、通信端末MS0と基地局BS1との間の通信が切断したため、通信端末MS0の通信に係るスループットは0になる。
通信端末MS0は、時刻t1以降の時刻t2において、基地局BS1とは異なる基地局BS2(つまり、通信端末MS0の位置から見て基地局BS1より少し遠い位置に置局された基地局)との間で通信を開始する。時刻t2の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS0と基地局BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図6に示すように、通信端末MS0の通信に係るスループットは、時刻t0時点でのスループットより劣るが、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS2との間の通信に対応したやや高速な値が得られている。
さらに、時刻t2以降の時刻t3において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SKが通信端末MS0と基地局BS1だけでなく基地局BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を同時に遮蔽したとする。この場合、図6に示すように、通信端末MS0と基地局BS2との間の通信が新たに切断したため、通信端末MS0の通信に係るスループットは0になる。
時刻t3以降の時刻t4において、遮蔽物SK1が移動したことで、通信端末MS0と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)が遮蔽されなくなったとする。この場合、通信端末MS0と基地局BS1との間の通信が再開したため、図6に示すように、通信端末MS0の通信に係るスループットは、時刻t0の時点と同様に、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1との間の通信に対応した高速な値が得られる。
従って、通信端末MS0と通信する基地局数が1である場合、通信端末MS0の位置によっては、遮蔽物SK1によって通信の切断が発生する確率が高く、その際には通信端末MS0の通信に係るスループットが0となってしまう。
図7に示す実施の形態1では、図2に示す構成を有する通信端末MS1は、時刻t0において2局(具体的には、基地局BS1,BS2)との間で、例えばミリ波等の高周波数帯を用いて同一のユーザデータの送受信等のデータ通信を行っている。図7の説明を分かり易くするために、通信端末MS1の位置は、例えば基地局BS2との間の過去の通信に係る切断回数が多い位置としており、基地局BS1,BS2の位置は遮蔽物SK1の位置によっては同時に通信端末MS1との通信が切断し易い位置としている。時刻t0の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS1と基地局BS1,BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図8に示すように、通信端末MS1の通信に係るスループットは、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1,BS2との間の通信に対応したそれぞれの値のうちより高速な値が得られる。
ところが、時刻t0以降の時刻t1において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SK1が通信端末MS1と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽したとする。一方で、遮蔽物SK1は、通信端末MS1と基地局BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。この場合、図8に示すように、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信が切断したが、通信端末MS1と基地局BS2との間の通信は切断していないため、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t0時点でのスループットより劣るが、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS2との間の通信に対応したやや高速な値が得られている。
通信端末MS0は、時刻t1以降の時刻t2において、基地局BS1とは異なる基地局BS2(つまり、通信端末MS0の位置から見て基地局BS1より少し遠い位置に置局された基地局)との間で通信を開始する。時刻t2の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS0と基地局BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図6に示すように、通信端末MS0の通信に係るスループットは、時刻t0時点でのスループットより劣るが、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS2との間の通信に対応したやや高速な値が得られている。
さらに、時刻t1以降の時刻t2において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SKが通信端末MS1と基地局BS1だけでなく基地局BS2との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を同時に遮蔽したとする。この場合、図8に示すように、通信端末MS1と基地局BS2との間の通信が新たに切断したため、通信端末MS1の通信に係るスループットは0になる。
通信端末MS0は、時刻t2以降の時刻t3において、基地局BS1,BS2とは異なる基地局BS3(つまり、通信端末MS1の位置から見て基地局BS1,BS2より少し遠い位置に置局された基地局)との間で通信を開始する。時刻t3の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図8に示すように、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t0,t1の時点でのスループットより劣るが、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS3との間の通信に対応したやや高速な値が得られている。
時刻t3以降の時刻t4において、遮蔽物SK1が移動したことで、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)が遮蔽されなくなったとする。この場合、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信が再開したため、図8に示すように、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t0の時点と同様に、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1,BS3との間の通信に対応したそれぞれの値のうちより高速な値が得られる。
従って、通信端末MS1の位置に依存してほぼ同時に通信の切断が発生する確率が高い2局(例えば基地局BS1,BS2)が、複数の同時接続基地局として通信端末10により選別されてしまうと、通信端末MS1の通信に係るスループットが0(言い換えると、通信の切断)となる確率が残ることになる。
図9に示す実施の形態1では、図2に示す構成を有する通信端末MS1は、時刻t0において2局(具体的には、基地局BS1,BS3)との間で、例えばミリ波等の高周波数帯を用いて同一のユーザデータの送受信等のデータ通信を行っている。図7の説明を分かり易くするために、通信端末MS1の位置は、例えば基地局BS2との間の過去の通信に係る切断回数が多い位置かつ基地局BS3との間の過去の通信に係る切断回数が少ない位置としており(図4参照)、基地局BS1,BS2の位置は遮蔽物SK1の位置によっては同時に通信端末MS1との通信が切断し易い位置としている。時刻t0の時点では、車両等の遮蔽物SK1は、移動中であるが、通信端末MS1と基地局BS1,BS3との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。従って、図10に示すように、通信端末MS1の通信に係るスループットは、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1,BS3との間の通信に対応したそれぞれの値のうちより高速な値が得られる。
ところが、時刻t0以降の時刻t1において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SK1が通信端末MS1と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽したとする。一方で、遮蔽物SK1は、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。この場合、図10に示すように、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信が切断したが、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信は切断していないため、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t0時点でのスループットより劣るが、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS3との間の通信に対応したやや高速な値が得られている。
また、時刻t1以降の時刻t2において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SK1が仮に通信端末MS1と基地局BS2とが通信を行っていると想定した場合の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽したとする。一方で、遮蔽物SK1は、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。この場合、図10に示すように、遮蔽物SK1は通信端末MS1と基地局BS1,BS2との間の通信路をともに遮蔽したが、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信は切断していないため、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t1時点と同様のスループットが得られている。
また、時刻t2以降の時刻t3において、遮蔽物SK1がさらに移動したことで、遮蔽物SK1が仮に通信端末MS1と基地局BS2とが通信を行っていると想定した場合の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽したままである。一方で、遮蔽物SK1は、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信路(つまり電波の伝搬路)を遮蔽していない。この場合、図10に示すように、遮蔽物SK1は通信端末MS1と基地局BS1,BS2との間の通信路をともに遮蔽したが、通信端末MS1と基地局BS3との間の通信は切断していないため、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t1時点と同様のスループットがそのまま得られている。
時刻t3以降の時刻t4において、遮蔽物SK1が移動したことで、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信路(つまり電波の伝搬路)が遮蔽されなくなったとする。この場合、通信端末MS1と基地局BS1との間の通信が再開したため、図10に示すように、通信端末MS1の通信に係るスループットは、時刻t0の時点と同様に、ミリ波等の高周波数帯を用いた基地局BS1,BS3との間の通信に対応したそれぞれの値のうちより高速な値が得られる。
従って、通信端末MS1の位置に依存してほぼ同時に通信の切断が発生する確率が低い2局(例えば基地局BS1,BS3)が、複数の同時接続基地局として通信端末10により選別されることで、通信端末MS1の通信に係るスループットが0(言い換えると、通信の切断)となる確率を著しく低減できることになる。
次に、実施の形態1に係る通信端末10の通信エリアAR1に位置する際の具体的な動作手順を、図11を参照して説明する。
図11は、実施の形態1に係る通信端末10の動作手順例を時系列に説明するフローチャートである。図11に示す各処理(ステップ)は、主に通信端末10のプロセッサPRC1により実行される。図11の各処理の説明の前提として、通信端末10のプロセッサPRC1は、常時あるいは周期的に自端末の位置情報を取得している。
図11において、プロセッサPRC1は、取得された自端末の位置情報に対応する位置P(X1、Y1、Z1)と通信エリアAR1内に置局されている基地局BSiのそれぞれの位置(Xi,Yi,Zi)との間の基地局ごとの距離diを計算する(St1)。プロセッサPRC1は、取得された自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る切断回数の情報を通信切断回数記憶部43から読み出して取得する。プロセッサPRC1は、取得された基地局ごとの通信に係る切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)以上であるか否かに応じて、自端末の位置での通信(例えば、電波の伝搬時の直進性が高いミリ波等を用いた通信)が切断し易い位置であるか否かを判定する(St2)。
プロセッサPRC1は、上述した切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)未満であると判定した場合(St2、NO)、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)を1と設定する(St3)。
プロセッサPRC1は、上述した切断回数の平均値あるいは最大値が所定値(例えば5)以上であると判定した場合(St2、YES)、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)を2と設定する(St4)。
プロセッサPRC1は、自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る接続回数の情報を通信接続回数記憶部45から読み出して取得する。プロセッサPRC1は、自端末の位置情報に対応する位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る切断回数の情報を通信切断回数記憶部43から読み出して取得する。
プロセッサPRC1は、ステップSt1において計算された基地局ごとの距離diの計算結果と、現在の自端末の位置P(X1,Y1,Z1)における過去の基地局ごとの通信に係る接続回数(ai)および切断回数(bi)とに基づいて、自端末の位置において優先的に接続されるための基地局ごとの接続優先順位を計算して決定する(St5)。
プロセッサPRC1は、ステップSt5において計算された自端末の位置に対応する基地局ごとの接続優先順位の決定結果と、ステップSt3あるいはステップSt4において設定された自端末の位置に対応するパラメータ(k)の設定値の情報とを取得する。プロセッサPRC1は、パラメータ(k)の設定値の情報に従い、基地局ごとの接続優先順位の決定結果を用いて、現在の自端末の位置における通信先として優先的に接続されるための基地局を選別して決定する。プロセッサPRC1は、決定された基地局との接続を行うとともに(St6)、その基地局との通信に係る接続回数(ai)を通信接続回数記憶部45に送出して記憶(更新)する(St6)。
通信端末10は、ステップSt6の後、ステップSt6において通信用に接続された第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方に対し、同時にデータ通信を開始して実行する(St7)。
ここで、ステップSt7において通信が開始された基地局(つまり、第1接続基地局80−1および第2接続基地局80−2のうちいずれか一方または両方)との通信中に、車両等の遮蔽物(例えば図7および図9に示す遮蔽物SK1)により、少なくとも1つの基地局との間で通信の切断が発生したか否かがプロセッサPRC1により検知される(St8)。
通信中の少なくとも1つの基地局との間で通信の切断が発生したと検知された場合(St8、YES)、プロセッサPRC1は、その基地局との通信に係る切断回数(bi)を通信切断回数記憶部43に送出して記憶(更新)する(St9)。その後、プロセッサPRC1は、以後の通信を行うに際し、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)を2と設定する(St4)。ステップSt4以降の処理は上述した通りであるため、説明を省略する。
一方、通信中の少なくとも1つの基地局との間で通信の切断が発生していないと検知された場合(St8、NO)、通信中の全ての基地局との間で正常に通信が終了した場合には(St10、YES)、図11に示す通信端末10の処理は終了する。しかし、通信中の全ての基地局との間で通信が終了していない場合(St10、NO)、プロセッサPRC1は、通信端末10の移動によって自端末の位置情報が所定距離以上変化したか否かを検知する(St11)。自端末の位置情報が所定距離未満の変化であると検知された場合には(St11、NO)、通信端末10の処理はステップSt8に戻り、ステップSt8以降の処理が実行される。
一方、自端末の位置情報が所定距離以上の変化であると検知された場合には(St11、YES)、通信端末10の処理はステップSt1に戻り、ステップSt1以降の処理が実行される。
以上により、実施の形態1に係る通信システム100では、通信端末10は、i(例えば、i=10)個の基地局BS1〜BS10のそれぞれとの間で通信可能であって、自端末の位置情報を取得する。通信端末10は、自端末の位置でのi個の基地局のそれぞれとの間の通信における接続頻度情報および切断頻度情報をメモリM1に蓄積する。通信端末10は、取得された位置情報に対応する自端末の位置での接続頻度情報および切断頻度情報に基づいて、自端末の位置において優先的に接続されるための接続優先順位をi個の基地局ごとに決定する。通信端末10は、決定された接続優先順位の高い順に、k(例えばk=1あるいはk=2)個の基地局との間の接続を制御する。通信端末10は、k個の基地局との間でデータ通信を行う。
これにより、通信端末10は、電波の伝搬の直進性が高いミリ波あるいは5G(第5世代移動通信システム)への割り当てが検討されている28GHz帯等の高周波数帯の通信において、自端末の位置に応じて、通信に係る接続頻度および切断頻度の両方を加味して優先的に接続がなされるための基地局ごとの接続優先順位を求めるので、通信の切断が起き難い基地局を適応的に選択できる。従って、通信端末10は、上述した高周波数帯の通信を行う際に、通信の切断が起き難い基地局との通信を継続できる確率が上がり、通信の切断に伴うスループットの低下を抑制して良好な通信の継続を担保できる。
また、通信端末10は、自端末とk個の基地局のそれぞれとの間での接続を確立した後、自端末の位置での接続頻度情報を、k個の基地局のそれぞれに対応付けて更新する。これにより、通信端末10は、自端末の位置に依存して通信の接続回数の情報を適正に更新することで、上述した高周波数帯の通信を行う際に、通信の切断が起き難い基地局を適応的に選択できる。
また、通信端末10は、取得された位置情報に対応する自端末の位置とi個の基地局のそれぞれとの間の距離を計算する。通信端末10は、自端末の位置での接続頻度情報および切断頻度情報と、自端末の位置とi個の基地局のそれぞれとの間の距離の計算結果とに基づいて、接続優先順位をi個の基地局ごとに決定する。これにより、通信端末10は、自端末の位置に応じて、スループットに影響する基地局との間の距離と、通信に係る接続頻度および切断頻度の両方とを総合的に加味して基地局ごとの接続優先順位を求めるので、通信の切断が起き難い基地局をより一層適応的に選択できる。
また、通信端末10は、自端末の位置での切断頻度情報に基づいて、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の値を導出する。これにより、通信端末10は、現在の自端末の位置がその位置において過去に基地局との通信の切断が頻繁に起こった位置であるかどうかを適切に判定でき、その位置で通信する際に幾つの基地局と接続すれば良いかの示唆を教示できる。
また、通信端末10は、自端末の位置での切断頻度(例えば切断回数の平均値あるいは最大値)が所定値より多い場合に、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の値を2と導出する。これにより、通信端末10は、現在の自端末の位置がその位置において過去に基地局との通信の切断が頻繁に起こった位置として、フェールセーフのように複数の基地局との間で同時に接続することで、単一の基地局とのみ接続する場合に比べて、通信時のスループットのゼロ化(つまり、通信の切断)の発生を抑制できる。
また、通信端末10は、自端末の位置での切断頻度(例えば切断回数の平均値あるいは最大値)が所定値より少ない場合に、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の値を1と導出する。これにより、通信端末10は、現在の自端末の位置がその位置において過去に基地局との通信の切断が頻繁に起こらなかった位置として、単一の基地局との間で接続すれば十分なスループットが得られる旨を判断でき、切断の起き難い安定的な通信を実行できる。
また、通信端末10は、通信中のk個の基地局のうち少なくとも1つとの間で自端末の位置における通信の切断の有無を監視する。通信端末10は、自端末の位置における通信の切断が検出されると、同時接続基地局数を示すパラメータ(k)の値を2と導出する。これにより、通信端末10は、通信中に切断が生じたような位置に自端末が存在しているので、フェールセーフのように複数の基地局との間で同時に接続することで、切断の起き難い安定的な通信の実行を準備できる。
また、通信端末10は、自端末の位置における通信の切断を検出した後、自端末の位置での切断頻度情報を、k個の基地局のうち少なくとも1つに対応付けて更新する。これにより、通信端末10は、自端末の位置に依存して通信の切断回数の情報を適正に更新することで、上述した高周波数帯の通信を行う際に、通信の切断が起き易い基地局を避けるように適応的に選択できる。
また、通信端末10は、自端末が所定距離以上移動した場合に、取得された位置情報に対応する自端末の位置での接続頻度情報および切断頻度情報に基づいて、自端末の位置に対応する接続優先順位をi個の基地局ごとに決定する。これにより、通信端末10は、自端末を所持するユーザの移動等に付随して現在位置から所定距離以上離れた場合には、移動後の位置に応じて改めてその位置において優先的に接続されるべき基地局を選択できるので、自端末の大きな移動があった場合でも安定的な通信の継続を実行できる。
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。