JP2020026810A - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】走行中に急減速に至るダウンシフトが発生した際、駆動輪のタイヤグリップを確保することで、車両挙動が不安定になるのを防止すること。【解決手段】ベルト式無段変速機CVTの変速制御装置は、バリエータとCVTコントロールユニットを備える。CVTコントロールユニットに、クライテリア設定部と、減速対応変速制御部と、を有する。クライテリア設定部は、バリエータの変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度(タービン回転変化速度)の上限領域値によるクライテリアBを設定する。減速対応変速制御部は、バリエータの変速機入力回転変化速度(タービン回転変化速度)がクライテリアB以上になると、バリエータの変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。【選択図】図4
Description
本発明は、車両に搭載される無段変速機の変速制御装置に関する。
従来、作動油供給排出弁のフェールセーフを有効に行うことにより製品の信頼性を向上させ得るベルト式無段変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このベルト式無段変速機は、変速比の遷移時にて、作動油供給排出弁が開弁すると共に、油圧制御装置が所定の供給油圧Pinの作動油を可動シーブに供給する。これにより、可動シーブが駆動されてベルトの挟圧力が制御される。また、作動油供給排出弁の開弁状態の保持動作がフェールする可能性が高いときに、変速比の変速速度の上限値が設定される。
上記従来のベルト式無段変速機にあっては、プライマリ油圧を制御するプライマリ圧制御弁に変速速度上限値を上回らないような電流値を指示しても、プライマリ圧制御弁の故障等により、実際の電流値が所望の電流値にならない虞がある。特に、所望の変速制御よりロー側へ変速(ダウンシフト)してしまうような電流値が指示されると、車両の減速度が大きくなり、車両挙動が不安定になってしまう、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行中に急減速に至るダウンシフトが発生した際、駆動輪のタイヤグリップを確保することで、車両挙動が不安定になるのを防止することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、走行用駆動源と駆動輪との間に介装される無段変速機構と、無段変速機構の変速比を制御する変速機コントローラと、を備える。
この無段変速機の変速制御装置において、変速機コントローラに、クライテリア設定部と、減速対応変速制御部と、を有する。
クライテリア設定部は、無段変速機構の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアを設定する。
減速対応変速制御部は、無段変速機構の変速機入力回転変化速度がクライテリア以上になると、無段変速機構の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
この無段変速機の変速制御装置において、変速機コントローラに、クライテリア設定部と、減速対応変速制御部と、を有する。
クライテリア設定部は、無段変速機構の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアを設定する。
減速対応変速制御部は、無段変速機構の変速機入力回転変化速度がクライテリア以上になると、無段変速機構の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
このように、変速機入力回転変化速度がクライテリア以上になると、ダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替えられることで、変速機入力回転変化速度の上昇の継続により駆動輪がタイヤグリップを失うことがない。この結果、走行中に急減速に至るダウンシフトが発生した際、駆動輪のタイヤグリップを確保することで、車両挙動が不安定になるのを防止することができる。
以下、本発明の無段変速機の変速制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
実施例1における変速制御装置は、トルクコンバータと前後進切替機構とバリエータと終減速機構により構成されるベルト式無段変速機(自動変速機の一例)を搭載したエンジン車に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「変速制御装置の構成」、「ハイ側変速による変速制御処理構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の無段変速機の変速制御装置が適用されたエンジン車の駆動系と制御系を示す。以下、図1に基づいて、全体システム構成を説明する。
図1は、実施例1の無段変速機の変速制御装置が適用されたエンジン車の駆動系と制御系を示す。以下、図1に基づいて、全体システム構成を説明する。
エンジン車の駆動系は、図1に示すように、エンジン1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4と、終減速機構5と、駆動輪6,6と、を備えている。
ここで、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とバリエータ4と終減速機構5を図外の変速機ケースに内蔵することにより構成される。
ここで、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とバリエータ4と終減速機構5を図外の変速機ケースに内蔵することにより構成される。
エンジン1は、ドライバーによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号により出力トルクを制御可能である。このエンジン1には、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等によりトルク制御を行う出力トルク制御アクチュエータ10を有する。例えば、アクセル足離し操作によるコースト走行時、燃料カット制御が実行される。
トルクコンバータ2は、トルク増幅機能やトルク変動吸収機能を有する流体継手による発進要素である。トルク増幅機能やトルク変動吸収機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21を直結可能なロックアップクラッチ20を有する。このトルクコンバータ2は、ポンプインペラ23と、タービンランナ24と、ステータ26と、を構成要素とする。ポンプインペラ23は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結される。タービンランナ24は、トルクコンバータ出力軸21に連結される。ステータ26は、変速機ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられる。
前後進切替機構3は、バリエータ4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向で切り替える機構である。この前後進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数枚のクラッチプレートによる前進クラッチ31と、複数枚のブレーキプレートによる後退ブレーキ32と、を有する。前進クラッチ31は、Dレンジ等の前進走行レンジ選択時に前進クラッチ圧Pfcにより油圧締結される。後退ブレーキ32は、Rレンジ等の後退走行レンジ選択時に後退ブレーキ圧Prbにより油圧締結される。なお、前進クラッチ31と後退ブレーキ32は、Nレンジ(ニュートラルレンジ)の選択時には、前進クラッチ圧Pfcと後退ブレーキ圧Prbをドレーンすることでいずれも解放される。
バリエータ4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、プーリベルト44と、を有し、ベルト接触径の変化により変速比(バリエータ入力回転とバリエータ出力回転の比)を無段階に変化させる無段変速機構能を備える。プライマリプーリ42は、バリエータ入力軸40の同軸上に配された固定プーリ42aとスライドプーリ42bにより構成され、スライドプーリ42bはプライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriによりスライド動作する。セカンダリプーリ43は、バリエータ出力軸41の同軸上に配された固定プーリ43aとスライドプーリ43bにより構成され、スライドプーリ43bはセカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecによりスライド動作する。プーリベルト44は、プライマリプーリ42のV字形状をなすシーブ面と、セカンダリプーリ43のV字形状をなすシーブ面とに掛け渡されている。このプーリベルト44は、環状リングを内から外へ多数重ね合わせた2組の積層リングと、打ち抜き板材により形成され、2組の積層リングに沿って挟み込みにより環状に積層して取り付けられた多数のエレメントにより構成されている。なお、プーリベルト44としては、プーリ進行方向に多数配列したチェーンエレメントを、プーリ軸方向に貫通するピンにより結合したチェーンタイプのベルトであっても良い。
終減速機構5は、バリエータ出力軸41からのバリエータ出力回転を減速すると共に差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、減速ギヤ機構として、バリエータ出力軸41に設けられたアウトプットギヤ52と、アイドラ軸50に設けられたアイドラギヤ53及びリダクションギヤ54と、デフケースの外周位置に設けられたファイナルギヤ55と、を有する。そして、差動ギヤ機構として、左右のドライブ軸51,51に介装されたディファレンシャルギヤ56を有する。
エンジン車の制御系は、図1に示すように、油圧制御ユニット7と、CVTコントロールユニット8(略称「CVTCU」)と、エンジンコントロールユニット9(略称「ECU」)と、を備えている。電子制御系であるCVTコントロールユニット8とエンジンコントロールユニット9は、互いの情報を交換可能なCAN通信線13により接続されている。
油圧制御ユニット7は、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppri、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psec、前進クラッチ31への前進クラッチ圧Pfc、後退ブレーキ32への後退ブレーキ圧Prb、等を調圧するユニットである。この油圧制御ユニット7は、走行用駆動源であるエンジン1により回転駆動されるオイルポンプ70と、オイルポンプ70からの吐出圧に基づいて各種の制御圧を調圧する油圧制御回路71と、を備える。なお、オイルポンプとしては、オイルポンプ70と電動オイルポンプとを併用しても良い。油圧制御回路71には、ライン圧ソレノイド弁72と、プライマリ圧ソレノイド弁73と、セカンダリ圧ソレノイド弁74と、セレクトソレノイド弁75と、ロックアップ圧ソレノイド弁76と、を有する。なお、各ソレノイド弁72,73,74,75,76は、CVTコントロールユニット8から出力される制御指令値(指示電流)によって調圧動作を行う。
ライン圧ソレノイド弁72は、CVTコントロールユニット8から出力されるライン圧指令値に応じ、オイルポンプ70からの吐出圧を、指令されたライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、各種の制御圧を調圧する際の元圧であり、駆動系を伝達するトルクに対してベルト滑りやクラッチ滑りを抑える油圧とされる。
プライマリ圧ソレノイド弁73は、CVTコントロールユニット8から出力されるプライマリ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令されたプライマリ圧Ppriに減圧調整する。セカンダリ圧ソレノイド弁74は、CVTコントロールユニット8から出力されるセカンダリ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令されたセカンダリ圧Psecに減圧調整する。
セレクトソレノイド弁75は、CVTコントロールユニット8から出力される前進クラッチ圧指令値又は後退ブレーキ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令された前進クラッチ圧Pfc又は後退ブレーキ圧Prbに減圧調整する。
ロックアップ圧ソレノイド弁76は、CVTコントロールユニット8から出力される指示電流Aluに応じ、ロックアップクラッチ20を締結/スリップ締結/解放するLU指示圧Pluに調圧する。
CVTコントロールユニット8は、ライン圧制御や変速制御や前後進切替制御やロックアップ制御、等を行う。ライン圧制御では、アクセル開度等に応じた目標ライン圧を得る指令値をライン圧ソレノイド弁72に出力する。変速制御では、目標変速比(目標プライマリ回転Npri*)を決めると、決めた目標変速比(目標プライマリ回転Npri*)を得る指令値をプライマリ圧ソレノイド弁73及びセカンダリ圧ソレノイド弁74に出力する。前後進切替制御では、選択されているレンジ位置に応じて前進クラッチ31と後退ブレーキ32の締結/解放を制御する指令値をセレクトソレノイド弁75に出力する。ロックアップ制御では、ロックアップクラッチ20を締結/スリップ締結/解放するLU指示圧Pluを制御する指示電流Aluをロックアップ圧ソレノイド弁76に出力する。
CVTコントロールユニット8には、プライマリ回転センサ90、車速センサ91、セカンダリ圧センサ92、油温センサ93、インヒビタスイッチ94、ブレーキスイッチ95、タービン回転センサ96からのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。さらに、セカンダリ回転センサ97、プライマリ圧センサ98、車輪速センサ99等からのセンサ情報が入力される。
エンジンコントロールユニット9には、エンジン回転センサ12、アクセル開度センサ14、等からのセンサ情報が入力される。CVTコントロールユニット8は、エンジン回転情報やアクセル開度情報をエンジンコントロールユニット9へリクエストすると、CAN通信線13を介し、エンジン回転数Neやアクセル開度APOの情報を受け取る。さらに、エンジントルク情報をエンジンコントロールユニット9へリクエストすると、CAN通信線13を介し、エンジンコントロールユニット9において推定演算される実エンジントルクTeの情報を受け取る。
図2は、Dレンジ選択時に自動変速モードでの無段変速制御をバリエータ4により実行する際に用いられるDレンジ無段変速スケジュールの一例を示す。
「Dレンジ変速モード」は、車両運転状態に応じて変速比を自動的に無段階に変更する自動変速モードである。「Dレンジ変速モード」での変速制御は、車速VSP(車速センサ91)とアクセル開度APO(アクセル開度センサ14)により特定される図2のDレンジ無段変速スケジュール上での運転点(VSP,APO)により、目標プライマリ回転数Npri*を決める。そして、プライマリ回転センサ90からの実プライマリ回転数Npriを、目標プライマリ回転数Npri*に一致させるプーリ油圧のフィードバック制御により行われる。なお、変速比は、Dレンジ無段変速スケジュールの最Low変速比線や最High変速比線から明らかなように、ゼロ運転点から引かれる変速比線の傾きであらわされる。よって、運転点(VSP,APO)により目標プライマリ回転数Npri*を決めることは、バリエータ4の目標変速比を決めることになる。
即ち、「Dレンジ変速モード」で用いられるDレンジ無段変速スケジュールは、図2に示すように、運転点(VSP,APO)に応じて最Low変速比と最High変速比による変速比幅の範囲内で変速比を無段階に変更するように設定されている。例えば、車速VSPが一定のときは、アクセル踏み込み操作を行うと目標プライマリ回転数Npri*が上昇してダウンシフト方向に変速し、アクセル戻し操作を行うと目標プライマリ回転数Npri*が低下してアップシフト方向に変速する。アクセル開度APOが一定のときは、車速VSPが上昇するとアップシフト方向に変速し、車速VSPが低下するとダウンシフト方向に変速する。
なお、アクセル足離し操作によるコースト減速時の無段変速は、Dレンジ無段変速スケジュールのコースト変速線(APO=0)に沿って、矢印Aに示すように最ロー変速比に向かってダウンシフトしながら車速VSPが減速方向に変化することで行われる。
[変速制御装置の構成]
図3は、実施例1の変速制御装置を示す。以下、図3に基づいて変速制御装置の概要構成を説明する。
図3は、実施例1の変速制御装置を示す。以下、図3に基づいて変速制御装置の概要構成を説明する。
変速制御装置が適用される駆動系は、図3に示すように、エンジン1(走行用駆動源)と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4と、終減速機構5と、駆動輪6と、を備えている。エンジン1は、オイルポンプ70を駆動する。トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ20を有する。前後進切替機構3は、前進クラッチ31と後退ブレーキ32を有する。バリエータ4は、プライマリプーリ42とセカンダリプーリ43とプーリベルト44を有する。
変速制御装置が適用される制御系は、図3に示すように、CVTコントロールユニット8と、エンジンコントロールユニット9と、プライマリ圧ソレノイド弁73と、セカンダリ圧ソレノイド弁74と、を備えている。CVTコントロールユニット8とエンジンコントロールユニット9は、CAN通信線13により接続される。CVTコントロールユニット8には、車速センサ91、インヒビタスイッチ94、タービン回転センサ96、車輪速センサ99等からの情報が入力される。エンジンコントロールユニット9には、エンジン回転センサ12、アクセル開度センサ14、等からの情報が入力される。
CVTコントロールユニット8は、クライテリア設定部8aと、減速対応変速制御部8bと、復帰処理部8cと、を有する。
クライテリア設定部8aは、バリエータ4の変速機入力回転(プライマリ回転数Npri)が上昇変化するとき、駆動輪6のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度(プライマリ回転変化速度ΔNpri)の上限領域値によるクライテリアBを設定する。
ここで、クライテリアBの値は、プライマリ回転変化速度ΔNpriに代え、タービン回転変化速度ΔNtの大きさにより設定する。
ここで、クライテリアBの値は、プライマリ回転変化速度ΔNpriに代え、タービン回転変化速度ΔNtの大きさにより設定する。
クライテリア設定部8aは、タービン回転変化速度ΔNtによるクライテリア特性を、車速VSPとタービン回転数Ntの大きさにより予め設定したクライテリアマップ(図5)を有する。そして、クライテリアマップを用い、そのときの車速VSPとタービン回転数Ntの大きさに応じてクライテリアBを設定する。
ここで、クライテリアマップのクライテリア特性は、駆動輪6のタイヤグリップを確保できるタービン回転変化速度ΔNtの上限領域値を多数の実験により求めて決める。
ここで、クライテリアマップのクライテリア特性は、駆動輪6のタイヤグリップを確保できるタービン回転変化速度ΔNtの上限領域値を多数の実験により求めて決める。
減速対応変速制御部8bは、バリエータ4の変速機入力回転変化速度(プライマリ回転変化速度ΔNpri)がクライテリアB以上になると、バリエータ4の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。なお、プライマリ回転変化速度ΔNpriの情報は、前後進切替機構3に有する前進クラッチ31の締結時におけるタービン回転変化速度ΔNtにより取得する。
ここで、「変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御」とは、通常変速制御に代え、変速機入力回転数を上昇させる変速モードであるダウンシフトの進行を抑制する強制的な変速制御をいう。よって、減速対応変速制御には、ダウンシフトの変速速度を通常変速速度よりも低く抑える制御、ダウンシフトの進行を止めてそのときの変速比を維持する制御、変速比をハイ側変速比へ向かわせるアップシフトによる制御が含まれる。
減速対応変速制御部8bは、バリエータ4のタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対してプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧する指示電流を出力する。このとき、プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡故障以外の時と天絡故障時とでセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流を異ならせる。
復帰処理部8cは、減速対応変速制御部8bによる減速対応変速制御への切り替え中に解除条件が成立すると、切り替え前の通常変速制御に復帰する処理を行う。この復帰処理部8cにおいては、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量をクリアすると共に、フィードバック制御を停止する。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する。
[ハイ側変速による変速制御処理構成]
図4は、実施例1のCVTコントロールユニット8のクライテリア設定部8a、減速対応変速制御部8b及び復帰処理部8cにて実行されるハイ側変速による変速制御処理の流れを示す。以下、図4の各ステップについて説明する。
図4は、実施例1のCVTコントロールユニット8のクライテリア設定部8a、減速対応変速制御部8b及び復帰処理部8cにて実行されるハイ側変速による変速制御処理の流れを示す。以下、図4の各ステップについて説明する。
ステップS1では、スタート、或いは、S5でのタイマー値クリア、或いは、S7でのタイマー値<設定値であるとの判断に続き、タービン回転数変化速度ΔNtを算出し、ステップS2へ進む。
ここで、「タービン回転数変化速度ΔNt」は、前後進切替機構3に有する前進クラッチ31が締結状態のとき、タービン回転センサ96から今回読み込まれたタービン回転数Nt(n)と所定制御周期前に読み込まれたタービン回転数Nt(n-a)との差を求める。そして、タービン回転数差を読み込み時間差による所要時間にて除算する微分演算処理により算出する。
また、「上昇変化によるタービン回転数変化速度ΔNt」は、バリエータ4の変速機出力回転数が短い時間で変化していないと仮定すると、ダウンシフトの変速速度とみなすことができる。
ステップS2では、S1でのタービン回転数変化速度ΔNtの算出に続き、タービン回転数変化速度ΔNtのクライテリアBを設定し、ステップS3へ進む。
ここで、クライテリアBは、図5に示すクライテリアマップを用い、そのときの車速VSPとタービン回転数Ntの大きさに応じて設定する。クライテリアマップには、タービン回転数Ntが同じであるとき、車速VSPが低車速であるほどクライテリアBを低い値に設定する。そして、車速VSPが同じであるとき、タービン回転数Ntが高回転数であるほどクライテリアBを低い値に設定するクライテリア特性が設定されている。
ステップS3では、S2でのクライテリアBの設定に続き、S1で算出されたタービン回転数変化速度ΔNtが、S2で設定されたクライテリアB以上であるか否かを判断する。YES(タービン回転数変化速度ΔNt≧クライテリアB)の場合はステップS4へ進み、NO(タービン回転数変化速度ΔNt<クライテリアB)の場合はステップS5へ進む。
ステップS4では、S3でのタービン回転数変化速度ΔNt≧クライテリアBであるとの判断に続き、他の開始条件が成立するか否かを判断する。YES(他の開始条件成立)の場合はステップS6へ進み、NO(他の開始条件不成立)の場合はステップS5へ進む。
ここで、他の開始条件とは、
(a) 第1設定車速≦車速≦第2設定車速(第1設定車速<第2設定車速)
(b) エンジントルク≦0(コースト状態)
(c) ブレーキOFF(ブレーキフラグ)
(d) レンジ位置=前進レンジ位置(Lレンジ位置、Dレンジ位置)
(e) トルクコンバータ2がロックアップ状態(ロックアップ圧ソレノイド弁76へのモニタ電流がL/U判定電流値以上であることにより判定)
をいう。よって、タービン回転数変化速度ΔNt(上昇速度)≧クライテリアBという条件と、上記(a)〜(e)の条件とが全て成立すると、ステップS4からステップS6へ進む。
(a) 第1設定車速≦車速≦第2設定車速(第1設定車速<第2設定車速)
(b) エンジントルク≦0(コースト状態)
(c) ブレーキOFF(ブレーキフラグ)
(d) レンジ位置=前進レンジ位置(Lレンジ位置、Dレンジ位置)
(e) トルクコンバータ2がロックアップ状態(ロックアップ圧ソレノイド弁76へのモニタ電流がL/U判定電流値以上であることにより判定)
をいう。よって、タービン回転数変化速度ΔNt(上昇速度)≧クライテリアBという条件と、上記(a)〜(e)の条件とが全て成立すると、ステップS4からステップS6へ進む。
ステップS5では、S3でのタービン回転数変化速度ΔNt<クライテリアBであるとの判断、或いは、S4での他の開始条件不成立であるとの判断に続き、それまでにタイマー値がカウントされていたらタイマー値をクリアし、ステップS1へ戻る。
ステップS6では、S4での他の開始条件成立であるとの判断に続き、タイマー値をカウントし、ステップS7へ進む。
ステップS7では、S6でのタイマー値のカウントに続き、タイマー値が、設定値以上であるか否かを判断する。YES(タイマー値≧設定値)の場合はステップS8へ進み、NO(タイマー値<設定値)の場合はステップS1へ戻る。
ここで、「設定値」は、タービン回転数変化速度ΔNt≧クライテリアBという条件と、上記(a)〜(e)の条件とが全て成立する継続時間であり、処置作動フラグを立てる判定時間として設定される。
ステップS8では、S7でのタイマー値≧設定値であるとの判断に続き、処置作動フラグを、処置作動フラグ=1にセットし、ステップS9へ進む。
ステップS9では、S8での処置作動フラグセット、或いは、S11又はS12での処置出力に続き、処置の解除条件が不成立であるか否かを判断する。YES(解除条件不成立)の場合はステップS10へ進み、NO(解除条件成立)の場合はステップS13へ進む。
ここで、解除条件とは、
(f) 車速<第1設定車速、或いは、車速<第2設定車速
(g) エンジントルク>設定トルク(ドライブ状態)
(h) レンジ位置≠前進レンジ位置
(i) タービン回転数変化速度ΔNt(上昇速度)<クライテリアB
のうち、(i)が成立、かつ、(f)〜(h)の何れかの条件が成立したら解除条件が成立と判断され、それ以外は解除条件が不成立と判断される。
(f) 車速<第1設定車速、或いは、車速<第2設定車速
(g) エンジントルク>設定トルク(ドライブ状態)
(h) レンジ位置≠前進レンジ位置
(i) タービン回転数変化速度ΔNt(上昇速度)<クライテリアB
のうち、(i)が成立、かつ、(f)〜(h)の何れかの条件が成立したら解除条件が成立と判断され、それ以外は解除条件が不成立と判断される。
ステップS10では、S9での解除条件不成立であるとの判断に続き、プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡時以外であるか否かを判断する。YES(PRISOL天絡時以外)の場合はステップS11へ進み、NO(PRISOL天絡時)の場合はステップS12へ進む。
ここで、プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡時以外は、PRISOL天絡フラグ=0により判断される。プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡時は、プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡故障をあらわすPRISOL天絡フラグ=1の入力により判断される。
ステップS11では、S10でのPRISOL天絡時以外であるとの判断に続き、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流をPRISOLモニタ電流とする減速対応変速制御を実行し、ステップS9へ戻る。
ここで、「PRISOL指示電流=0」とは、プライマリ圧ソレノイド弁73に対して最大油圧を出力する電流値(指示電流0mA)を指示することをいう。「SECSOL指示電流=PRISOLモニタ電流」とは、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対してプライマリ圧ソレノイド弁73への実電流値を指示することをいう。つまり、プライマリ圧ソレノイド弁73に対して出力されるモニタ電流が0mAになると、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して0mAの電流値が指示される。
ステップS12では、S10でのPRISOL天絡時であるとの判断に続き、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流を最大電流値とする減速対応変速制御を実行し、ステップS9へ戻る。
ここで、「PRISOL指示電流=0」とは、プライマリ圧ソレノイド弁73に対して最大油圧を出力する電流値(指示電流0mA)を指示することをいう。「ECSOL指示電流=最大電流値」とは、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して最小油圧を出力する電流値を指示することをいう。
ステップS13では、S9での解除条件成立であるとの判断に続き、処置作動フラグを、処置作動フラグ=0にリセットし、ステップS14へ進む。
ステップS14では、S13での処置作動フラグリセット、或いは、S15での復帰処理未終了であるとの判断に続き、減速対応変速制御から通常変速制御への復帰処理を実行し、ステップS15へ進む。
ここで、「復帰処理」とは、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量をクリアすると共に、フィードバック制御を停止する。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する処理をいう。
なお、通常変速制御を維持するのに必要なプライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74等の故障時(天絡・地絡・断線等)には、復帰処理に代え、図外のフェールセーフ制御へと移行する。
次に、実施例1の作用を、「背景技術」、「課題解決方策」、「減速対応変速制御作用」、「PRI圧とSEC圧の同圧制御によりアップシフトになる理由」、「故障モード毎の減速対応変速制御作用」に分けて説明する。
[背景技術]
図7に示すような平坦な郊外路でのコースト減速旋回シーンでの走行中、不意にダウンシフトして急減速すると、自車が車線を逸脱してしまう挙動に至ることがある。このような事象に対して、車線逸脱するのを抑えたいという要求がある。
図7に示すような平坦な郊外路でのコースト減速旋回シーンでの走行中、不意にダウンシフトして急減速すると、自車が車線を逸脱してしまう挙動に至ることがある。このような事象に対して、車線逸脱するのを抑えたいという要求がある。
現状分析として、アクセル足離し操作によるコースト減速旋回中において、ダウンシフトにより急減速が発生するメカニズムを、図8のタイムチャートに基づいて説明する。
図8に示す時刻t1と時刻t2の短い時間区間で変速比変化速度が高いダウンシフト(変速比特性の勾配角度が大きなダウンシフト)があるとする。この場合、時刻t1と時刻t2の区間でエンジントルクが低下し、時刻t1と時刻t2の区間で駆動軸トルクとして、コーストルク分とイナーシャトルク分を合算した減速トルクが発生する。このとき、変速比変化速度が高いダウンシフトにより、変速機入力回転数が急上昇して質量と角速度に比例して発生するイナーシャトルク分が大きくなる。
よって、ダウンシフトによって引き起こされる時刻t1からの減速トルクによる減速G(負の加速度)で駆動輪がスリップ(=制動ロック)を開始し、その後、徐々に減速Gを高くしながら時刻t2までの区間でスリップが継続する。つまり、時刻t1から時刻t2までの間において、変速速度が高いダウンシフトに伴うイナーシャトルク分によって減速トルクが大きくなることで急減速が発生する。なお、コーストルク分だけの減速トルクでは急減速は発生しない。
一方、“急減速”のクライテリア定義は、ダウンシフトによって引き起こされる減速Gによりスリップし始めるタイミングとスリップ継続時間で決まる車線逸脱量の大きさで定義することができる。
しかし、バリエータは、有段変速機構とは異なり変速プロフィールが可変であるため、減速Gのプロフィールを規定することができない。言い換えると、“急減速”のクライテリアを一律の減速Gで定義することができない。
上記現状分析に基づいて課題を明確化する。課題は、クライテリアを一律の減速Gで定義することができないバリエータシステムにおいて、アクセル足離しコースト旋回シーン等であっても車両挙動の安定性を確保することにある。
[課題解決方策]
(クライテリア)
クライテリアを、駆動輪がタイヤグリップを確保することが可能な限界域の変速速度と定義する。
(クライテリア)
クライテリアを、駆動輪がタイヤグリップを確保することが可能な限界域の変速速度と定義する。
(検知)
タイヤグリップを確保することが可能な限界域の変速速度を、結果系であるプライマリ回転数Npriの回転変化速度で検知する。ただし、PRI回転センサの故障がSPF(Single Point of Failure)となっているため、前進クラッチ締結時のタービン回転数Ntのタービン回転変化速度ΔNtで代替する。
タイヤグリップを確保することが可能な限界域の変速速度を、結果系であるプライマリ回転数Npriの回転変化速度で検知する。ただし、PRI回転センサの故障がSPF(Single Point of Failure)となっているため、前進クラッチ締結時のタービン回転数Ntのタービン回転変化速度ΔNtで代替する。
(処置)
上記検知時、ハイ変速させることで車線逸脱挙動を回避する。PRI/SECの受圧面積比とバランス推力比の設定では同圧にすることでハイ変速比側に変速するため、PRISOL天絡時以外はPRISOLに0mA、SECSOLにPRISOLのモニタ電流値を指示する。PRISOL天絡時はPRISOLに0mA、SECSOLに最大電流値を指示する。
上記検知時、ハイ変速させることで車線逸脱挙動を回避する。PRI/SECの受圧面積比とバランス推力比の設定では同圧にすることでハイ変速比側に変速するため、PRISOL天絡時以外はPRISOLに0mA、SECSOLにPRISOLのモニタ電流値を指示する。PRISOL天絡時はPRISOLに0mA、SECSOLに最大電流値を指示する。
(復帰処置)
変速速度が正常に戻った場合は、通常変速制御に移行する。その際にSOL電流の急激な変化が起こり、油圧のオーバーシュート等が懸念される。このため、移行時はSOL電流の指示値に変化率制限を設ける。また、通常変速制御への復帰時は変速フィードバック及び油圧フィードバックの操作量のクリアを行う。
変速速度が正常に戻った場合は、通常変速制御に移行する。その際にSOL電流の急激な変化が起こり、油圧のオーバーシュート等が懸念される。このため、移行時はSOL電流の指示値に変化率制限を設ける。また、通常変速制御への復帰時は変速フィードバック及び油圧フィードバックの操作量のクリアを行う。
[減速対応変速制御作用]
本発明は、上記課題を解決する手段として、下記の手段を採用した。
CVTコントロールユニット8に、クライテリア設定部8aと、減速対応変速制御部8bと、を有する。クライテリア設定部8aは、バリエータ4の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪6のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアBを設定する。減速対応変速制御部8bは、バリエータ4の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、バリエータ4の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
本発明は、上記課題を解決する手段として、下記の手段を採用した。
CVTコントロールユニット8に、クライテリア設定部8aと、減速対応変速制御部8bと、を有する。クライテリア設定部8aは、バリエータ4の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪6のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアBを設定する。減速対応変速制御部8bは、バリエータ4の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、バリエータ4の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
例えば、バリエータ4の変速制御として、変速機入力回転変化速度の上昇変化にかかわらず通常変速制御を維持していると、ダウンシフトによる変速が進行し、変速機入力回転変化速度がクライテリアBを上回って上昇する。変速機入力回転変化速度がクライテリアBを上回っている状態が継続すると、駆動輪6がタイヤグリップを失うことになり、車両挙動が不安定になる。
これに対し、バリエータ4の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、ダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替えられる。この減速対応変速制御への切り替えにより、ダウンシフトの変速進行が抑えられ、変速機入力回転変化速度がクライテリアBを下回ることになる。この結果、走行中に急減速に至るダウンシフトが介入した際、駆動輪6のタイヤグリップが確保されることで、車両挙動が不安定になるのを防止することができる。
即ち、コースト減速走行中、タービン回転速度ΔNt≧クライテリアBという条件と他の開始条件が成立すると、図4のフローチャートにおいて、S1→S2→S3→S4→S6→S7へと進む。そして、全ての開始条件が成立する状態が設定時間継続すると、図4のフローチャートにおいて、S7からS8へと進み、S8では、処置作動フラグが、処置作動フラグ=1にセットされる。
処置作動フラグ=1にセットされた後、解除条件が不成立で、かつ、PRISOL天絡時以外であると判断されると、図4のフローチャートにおいて、S8からS9→S10→S11へと進む。S11では、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流をPRISOLモニタ電流とする減速対応変速制御が実行される。そして、解除条件が成立するまでは、S9→S10→S11へと進む流れが繰り返され、減速対応変速制御が維持される。
一方、処置作動フラグ=1にセットされた後、解除条件が不成立で、かつ、PRISOL天絡時であると判断されると、図4のフローチャートにおいて、S8からS9→S10→S12へと進む。S12では、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流を最大電流値とする減速対応変速制御が実行される。そして、解除条件が成立するまでは、S9→S10→S12へと進む流れが繰り返され、減速対応変速制御が維持される。
この減速対応変速制御の実行中、解除条件が成立すると、図4のフローチャートにおいて、S9からS13→S14→S15へと進む。S13では、処置作動フラグが、処置作動フラグ=0にリセットされる。そして、S15にて復帰処理終了と判断されるまで、S14→S15へと進む流れが繰り返され、S14にて復帰処理が行われる。S14の復帰処理では、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量がクリアされると共に、フィードバック制御が停止される。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタがつけられて通常変速制御へ戻される。そして、復帰処理が終了すると、フィードバック制御による通常変速制御へ移行し、S15からリターンへ進み、再度、S1からの減速対応変速制御処理を開始する。
[PRI圧とSEC圧の同圧制御によりアップシフトになる理由]
上記のように、S11では、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流をPRISOLモニタ電流とする減速対応変速制御が実行される。このため、PRISOL天絡時以外のとき、ステップS11での電流制御にすると、プライマリ圧ソレノイド弁73がプライマリ圧として最大油圧を出力し、PRISOLモニタ電流=0になると、セカンダリ圧ソレノイド弁74がセカンダリ圧として最大油圧を出力することになる。よって、バリエータ4のプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする制御になる。
上記のように、S11では、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流をPRISOLモニタ電流とする減速対応変速制御が実行される。このため、PRISOL天絡時以外のとき、ステップS11での電流制御にすると、プライマリ圧ソレノイド弁73がプライマリ圧として最大油圧を出力し、PRISOLモニタ電流=0になると、セカンダリ圧ソレノイド弁74がセカンダリ圧として最大油圧を出力することになる。よって、バリエータ4のプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする制御になる。
一方、S12では、PRISOL指示電流=0とし、SECSOL指示電流を最大電流値とする減速対応変速制御が実行される。このため、PRISOL天絡時のとき、ステップS12での電流制御にすると、プライマリ圧ソレノイド弁73に対するPRISOL指示電流は0mAであるが、プライマリ圧ソレノイド弁73が天絡(電源への短絡)であるため、実電流値は最大電流値になる。つまり、プライマリ圧ソレノイド弁73がプライマリ圧として最小油圧を出力し、セカンダリ圧ソレノイド弁74がセカンダリ圧として最小油圧を出力することになる。よって、バリエータ4のプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする制御になる。
しかし、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする制御を行ったとき、変速比がハイ側変速比へ向かうアップシフトになり、変速比がハイ側変速比へ向かう減速対応変速制御が確保される。以下、その理由を説明する。
実施例1のバリエータ4の場合、プライマリプーリ42とセカンダリプーリ43の受圧面積を1:1の等受圧面積比にしているのではなく、プライマリプーリ受圧面積>セカンダリプーリ受圧面積の関係による受圧面積比にしている。このとき、バランス推力比は、コースト減速時はトルク比の負側が対象となるため、図6に示すバランス推力比の関係特性となる。よって、ダウンシフトにより変速比がロー側変速比であるとき、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にすると、図6に示すように、バランス推力比が1.00より小さい値(例えば、0.60程度)から1.00より大きな値(例えば、1.28程度)へと移行する。つまり、バリエータ4がロー側変速比であるとき、プライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする制御を行うと、バランス推力比の関係により、変速比がハイ変速比側(図6の上向き)へ向かうアップシフトになる。
[故障モード毎の減速対応変速制御作用]
(PRI回転センサ断線故障モード:解除条件が車速条件)
プライマリ回転センサ90の断線故障時であって解除条件が車速条件であるときの減速対応変速制御作用を、図9に示すタイムチャートに基づいて説明する。
(PRI回転センサ断線故障モード:解除条件が車速条件)
プライマリ回転センサ90の断線故障時であって解除条件が車速条件であるときの減速対応変速制御作用を、図9に示すタイムチャートに基づいて説明する。
コースト走行中、時刻t1にてプライマリ回転センサ90に断線故障が発生すると、プライマリ回転センサ90からのプライマリ回転数Npriがゼロになる。このため、実変速比がハイ側変速比であると誤認識し、時刻t1の直後にて変速フィードバックによりロー変速指示が出される。
その後、急減速と共にバリエータ4の変速比が最ロー変速比へ向かうダウンシフトが開始されると、タービン回転変化速度ΔNtが急上昇し、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になる。タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、時刻t2から判定時間を経過した時刻t3にて減速対応変速制御が開始される。つまり、時刻t3になるとプライマリ圧ソレノイド弁73に対して指示PRISOL電流=0mAが出力される。そして、時刻t3の直後にてPRISOLモニタ電流=0mAになると、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して指示SECSOL電流=0mAが出力される。
よって、時刻t3から油圧応答時間を経過した時刻t4になると、バリエータ4の変速がダウンシフトから同圧アップシフトへ切り替えられ、タービン回転変化速度ΔNtの急低下によりタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満になる。このため、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になっても、減速対応変速制御により時刻t4にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満に収束する。このように、タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上の継続時間が短い時間に抑えられることで、駆動輪6がタイヤグリップを失うことが無い。
その後、時刻t5にてブレーキ操作を行って減速すると、時刻t6にて車速が第1設定車速未満になって解除条件が成立する。解除条件が成立し、復帰フラグが立てられると、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量がクリアされると共に、フィードバック制御が停止される。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する処理が行われる。
時刻t7にて復帰処理を終了し、通常変速制御での指示電流に一致すると、時刻t7以降において、変速フィードバックによる通常変速制御(図9の場合はプライマリ回転数情報を用いないでタービン回転数情報により代替えする変速比制御)を再開する。
(PRI回転センサ断線故障モード:解除条件がドライブ条件)
プライマリ回転センサ90の断線故障時であって解除条件がドライブ条件であるときの減速対応変速制御作用を、図10に示すタイムチャートに基づいて説明する。
プライマリ回転センサ90の断線故障時であって解除条件がドライブ条件であるときの減速対応変速制御作用を、図10に示すタイムチャートに基づいて説明する。
コースト走行中、時刻t1にてプライマリ回転センサ90に断線故障が発生すると、プライマリ回転センサ90からのプライマリ回転数Npriがゼロになる。このため、実変速比がハイ側変速比であると誤認識し、時刻t1の直後にて変速フィードバックによりロー変速指示が出される。
その後、急減速と共にバリエータ4の変速比が最ロー変速比へ向かうダウンシフトが開始されると、タービン回転変化速度ΔNtが急上昇し、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になる。タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、時刻t2から判定時間を経過した時刻t3にて減速対応変速制御が開始される。つまり、時刻t3になるとプライマリ圧ソレノイド弁73に対して指示PRISOL電流=0mAが出力される。そして、時刻t3の直後にてPRISOLモニタ電流=0mAになると、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して指示SECSOL電流=0mAが出力される。
よって、時刻t3から油圧応答時間を経過した時刻t4になると、バリエータ4の変速がダウンシフトから同圧アップシフトへ切り替えられ、タービン回転変化速度ΔNtの急低下によりタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満になる。このため、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になっても、減速対応変速制御により時刻t4にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満に収束する。このように、タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上の継続時間が短い時間に抑えられることで、駆動輪6がタイヤグリップを失うことが無い。
その後、時刻t5にてエンジントルクが設定トルクを超えると、コーストからドライブへ移行する解除条件が成立する。解除条件が成立し、復帰フラグが立てられると、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量がクリアされると共に、フィードバック制御が停止される。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する処理が行われる。
時刻t6にて復帰処理を終了し、通常変速制御での指示電流に一致すると、時刻t6以降において、変速フィードバックによる通常変速制御(図10の場合はプライマリ回転数情報を用いないでタービン回転数情報により代替えする変速比制御)を再開する。
(μC油圧制御故障モード:解除条件がエンジントルク条件)
プライマリ圧下げ側やセカンダリ圧上げ側のマイコン故障時であって解除条件がエンジントルク条件であるときの減速対応変速制御作用を、図11に示すタイムチャートに基づいて説明する。なお、μC油圧制御故障モードとは、CVTコントロールユニット8を構成するマイコンでの油圧制御故障モードをいう。
プライマリ圧下げ側やセカンダリ圧上げ側のマイコン故障時であって解除条件がエンジントルク条件であるときの減速対応変速制御作用を、図11に示すタイムチャートに基づいて説明する。なお、μC油圧制御故障モードとは、CVTコントロールユニット8を構成するマイコンでの油圧制御故障モードをいう。
コースト走行中、時刻t1にてプライマリ圧下げ側やセカンダリ圧上げ側のマイコン故障が発生すると、プライマリ圧ソレノイド弁73に対してMAX指示電流(低油圧)を出力し、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対してMIN指示電流(高油圧)を出力する。このため、時刻t1の直後からプライマリプーリ42へのベルト接触径を拡大し、セカンダリプーリ43へのベルト接触径を縮小するロー変速比に向かう指示になる。
その後、急減速と共にバリエータ4の変速比がロー変速比へ向かうダウンシフトが開始されると、タービン回転変化速度ΔNtが急上昇し、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になる。タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、時刻t2から判定時間を経過した時刻t3にて減速対応変速制御が開始される。つまり、時刻t3になるとプライマリ圧ソレノイド弁73に対して指示PRISOL電流=0mAが出力される。そして、時刻t3の直後にてPRISOLモニタ電流=0mAになると、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して指示SECSOL電流=0mAが出力される。
よって、時刻t3から油圧応答時間を経過した時刻t4になると、バリエータ4の変速がダウンシフトから同圧アップシフトへ切り替えられ、タービン回転変化速度ΔNtの急低下によりタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満になる。このため、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になっても、減速対応変速制御により時刻t4にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満に収束する。このように、タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上の継続時間が短い時間に抑えられることで、駆動輪6がタイヤグリップを失うことが無い。
その後、時刻t5にてエンジントルクが設定トルクを超えると、コーストからドライブへ移行する解除条件が成立する。解除条件が成立し、復帰フラグが立てられると、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量がクリアされると共に、フィードバック制御が停止される。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する処理が行われる。時刻t6にて復帰処理を終了すると、時刻t6以降において、μC油圧制御故障モードのフェールセーフ制御へ移行する。
(PRISOL天絡故障モード:解除条件がエンジントルク条件)
プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡故障時であって解除条件がエンジントルク条件であるときの減速対応変速制御作用を、図12に示すタイムチャートに基づいて説明する。
プライマリ圧ソレノイド弁73の天絡故障時であって解除条件がエンジントルク条件であるときの減速対応変速制御作用を、図12に示すタイムチャートに基づいて説明する。
コースト走行中、時刻t1にてプライマリ圧ソレノイド弁73が天絡故障すると、プライマリ圧ソレノイド弁73に対してMAX電流値(最低油圧)を出力し、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して通常電流値を出力する。このため、時刻t1の直後からプライマリプーリ42へのベルト接触径を拡大し、セカンダリプーリ43へのベルト接触径を縮小するロー変速比に向かう指示になる。
その後、急減速と共にバリエータ4の変速比がロー変速比へ向かうダウンシフトが開始されると、タービン回転変化速度ΔNtが急上昇し、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になる。タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、時刻t2から判定時間を経過した時刻t3にて減速対応変速制御が開始される。つまり、時刻t3になるとプライマリ圧ソレノイド弁73に対して指示PRISOL電流=0mAが出力され、セカンダリ圧ソレノイド弁74に対して指示SECSOL電流=最大電流値が出力される。なお、PRISOL天絡故障モードのときは、プライマリ圧ソレノイド弁73に対して指示PRISOL電流=0mAを出力しても、実PRISOL電流=最大電流値になる。
よって、時刻t3から油圧応答時間を経過した時刻t4になると、バリエータ4の変速がダウンシフトから同圧アップシフトへ切り替えられ、タービン回転変化速度ΔNtの急低下によりタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満になる。このため、時刻t2にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になっても、減速対応変速制御により時刻t4にてタービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB未満に収束する。このように、タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上の継続時間が短い時間に抑えられることで、駆動輪6がタイヤグリップを失うことが無い。
その後、時刻t5にてエンジントルクが設定トルクを超えると、コーストからドライブへ移行する解除条件が成立する。解除条件が成立し、復帰フラグが立てられると、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量がクリアされると共に、フィードバック制御が停止される。そして、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する処理が行われる。時刻t6にて復帰処理を終了すると、時刻t6以降において、PRISOL天絡故障モードのフェールセーフ制御へ移行する。
以上説明したように、実施例1のベルト式無段変速機CVTの変速制御装置にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
(1) 走行用駆動源(エンジン1)と駆動輪6との間に介装される無段変速機構(バリエータ4)と、無段変速機構(バリエータ4)の変速比を制御する変速機コントローラ(CVTコントロールユニット8)と、を備える無段変速機構(ベルト式無段変速機CVT)の変速制御装置において、
変速機コントローラ(CVTコントロールユニット8)に、クライテリア設定部8aと、減速対応変速制御部8bと、を有し、
クライテリア設定部8aは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪6のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアBを設定し、
減速対応変速制御部8bは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、無段変速機構(バリエータ4)の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
このため、走行中に急減速に至るダウンシフトが発生した際、駆動輪6のタイヤグリップを確保することで、車両挙動が不安定になるのを防止することができる。
即ち、変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、ダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替えられることで、変速機入力回転変化速度の上昇により駆動輪6がタイヤグリップを失うことがない。
変速機コントローラ(CVTコントロールユニット8)に、クライテリア設定部8aと、減速対応変速制御部8bと、を有し、
クライテリア設定部8aは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転が上昇変化するとき、駆動輪6のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアBを設定し、
減速対応変速制御部8bは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、無段変速機構(バリエータ4)の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える。
このため、走行中に急減速に至るダウンシフトが発生した際、駆動輪6のタイヤグリップを確保することで、車両挙動が不安定になるのを防止することができる。
即ち、変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、ダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替えられることで、変速機入力回転変化速度の上昇により駆動輪6がタイヤグリップを失うことがない。
(2) クライテリア設定部8aは、走行用駆動源(エンジン1)と無段変速機構(バリエータ4)との間にトルクコンバータ2と前後進切替機構3が介装され、
クライテリア設定部8aは、クライテリアBの値をタービン回転変化速度ΔNtの大きさにより設定し、
減速対応変速制御部8bは、変速機入力回転変化速度の情報を、前後進切替機構3に有する前進クラッチ31の締結状態におけるトルクコンバータ2のタービン回転変化速度ΔNtにより取得する。
このため、プライマリ回転センサ90等が故障モードで使えなくなっても、タービン回転センサ96からのセンサ値を用いて減速対応変速制御を実行することができる。
即ち、変速機入力回転変化速度の情報は、通常、プライマリ回転センサ90からのプライマリ回転数Npriに基づいて取得される。しかし、プライマリ回転センサ90が故障モードになると、変速機入力回転変化速度の情報が取得できず、減速対応変速制御を実行することができなくなる。
クライテリア設定部8aは、クライテリアBの値をタービン回転変化速度ΔNtの大きさにより設定し、
減速対応変速制御部8bは、変速機入力回転変化速度の情報を、前後進切替機構3に有する前進クラッチ31の締結状態におけるトルクコンバータ2のタービン回転変化速度ΔNtにより取得する。
このため、プライマリ回転センサ90等が故障モードで使えなくなっても、タービン回転センサ96からのセンサ値を用いて減速対応変速制御を実行することができる。
即ち、変速機入力回転変化速度の情報は、通常、プライマリ回転センサ90からのプライマリ回転数Npriに基づいて取得される。しかし、プライマリ回転センサ90が故障モードになると、変速機入力回転変化速度の情報が取得できず、減速対応変速制御を実行することができなくなる。
(3) クライテリア設定部8aは、タービン回転変化速度ΔNtによるクライテリア特性を、車速VSPとタービン回転数Ntの大きさにより予め設定したクライテリアマップ(図5)を有し、
クライテリアマップを用い、そのときの車速VSPとタービン回転数Ntの大きさに応じてクライテリアBを設定する。
このため、車速VSPとタービン回転数Ntの大きさによる減速走行状況の変化に応じて適切なクライテリアBに設定することができる。
クライテリアマップを用い、そのときの車速VSPとタービン回転数Ntの大きさに応じてクライテリアBを設定する。
このため、車速VSPとタービン回転数Ntの大きさによる減速走行状況の変化に応じて適切なクライテリアBに設定することができる。
(4) 無段変速機構(バリエータ4)は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、両プーリ42,43に掛け渡されるプーリベルト44と、を有し、
プライマリプーリ42への油圧とセカンダリプーリ43への油圧を、電流値の大きさにより制御するプライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74を有し、
減速対応変速制御部8bは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対してプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする指示電流を出力する。
このため、プライマリプーリ受圧面積>セカンダリプーリ受圧面積の設定としている無段変速機構(バリエータ4)の場合、減速対応変速制御が同圧アップシフトになり、変速機入力回転変化速度を速やかにクライテリアB未満に低下させることができる。
プライマリプーリ42への油圧とセカンダリプーリ43への油圧を、電流値の大きさにより制御するプライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74を有し、
減速対応変速制御部8bは、無段変速機構(バリエータ4)の変速機入力回転変化速度がクライテリアB以上になると、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対してプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする指示電流を出力する。
このため、プライマリプーリ受圧面積>セカンダリプーリ受圧面積の設定としている無段変速機構(バリエータ4)の場合、減速対応変速制御が同圧アップシフトになり、変速機入力回転変化速度を速やかにクライテリアB未満に低下させることができる。
(5) 減速対応変速制御部8bによる減速対応変速制御への切り替え中に解除条件が成立すると、切り替え前の通常変速制御に復帰する復帰処理部8cを設け、
復帰処理部8cは、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量をクリアすると共に、フィードバック制御を停止し、
プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する。
このため、減速対応変速制御から通常変速制御へ復帰する際、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の急変化を抑え、油圧のオーバーシュート等を防止することができる。
復帰処理部8cは、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量をクリアすると共に、フィードバック制御を停止し、
プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する。
このため、減速対応変速制御から通常変速制御へ復帰する際、プライマリ圧ソレノイド弁73とセカンダリ圧ソレノイド弁74に対する指示電流の急変化を抑え、油圧のオーバーシュート等を防止することができる。
以上、本発明の無段変速機の変速制御装置を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、減速対応変速制御部8bとして、タービン回転変化速度ΔNtがクライテリアB以上になると、バリエータ4のダウンシフトをプライマリ圧Ppriとセカンダリ圧Psecを同圧にする同圧アップシフトへ切り替える例を示した。しかし、減速対応変速制御部としては、タービン回転変化速度がクライテリア以上になると、タービン回転変化速度の上昇勾配を抑え込む油圧制御としても良いし、また、タービン回転変化速度の上昇勾配を平坦に戻す油圧制御としても良い。さらに、バリエータ4のダウンシフトをアップシフトへ切り替える場合、プライマリ圧>セカンダリ圧というように異なる油圧にする制御を行っても勿論良い。
実施例1では、本発明の変速制御装置を、自動変速機としてベルト式無段変速機CVTを搭載したエンジン車に適用する例を示した。しかし、本発明の変速制御装置は、自動変速機として、ステップATと呼ばれる有段変速機を搭載した車両や副変速機付き無段変速機構を搭載した車両等に適用しても良い。また、適用される車両としても、エンジン車に限らず、走行用駆動源にエンジンとモータを搭載したハイブリッド車、走行用駆動源にモータを搭載した電気自動車等に対しても適用できる。
1 エンジン(走行用駆動源)
CVT ベルト式無段変速機
2 トルクコンバータ
3 前後進切替機構
31 前進クラッチ
4 バリエータ(無段変速機構)
5 終減速機構
6 駆動輪
7 油圧制御ユニット
73 プライマリ圧ソレノイド弁
74 セカンダリ圧ソレノイド弁
8 CVTコントロールユニット(変速機コントローラ)
80a クライテリア設定部
80b 減速対応変速制御部
80c 復帰制御部
9 エンジンコントロールユニット
12 エンジン回転センサ
14 アクセル開度センサ
91 車速センサ
94 インヒビタスイッチ
96 タービン回転センサ
99 車輪速センサ
CVT ベルト式無段変速機
2 トルクコンバータ
3 前後進切替機構
31 前進クラッチ
4 バリエータ(無段変速機構)
5 終減速機構
6 駆動輪
7 油圧制御ユニット
73 プライマリ圧ソレノイド弁
74 セカンダリ圧ソレノイド弁
8 CVTコントロールユニット(変速機コントローラ)
80a クライテリア設定部
80b 減速対応変速制御部
80c 復帰制御部
9 エンジンコントロールユニット
12 エンジン回転センサ
14 アクセル開度センサ
91 車速センサ
94 インヒビタスイッチ
96 タービン回転センサ
99 車輪速センサ
Claims (5)
- 走行用駆動源と駆動輪との間に介装される無段変速機構と、前記無段変速機構の変速比を制御する変速機コントローラと、を備える無段変速機の変速制御装置において、
前記変速機コントローラに、クライテリア設定部と、減速対応変速制御部と、を有し、
前記クライテリア設定部は、前記無段変速機構の変速機入力回転が上昇変化するとき、前記駆動輪のタイヤグリップを確保できる変速機入力回転変化速度の上限領域値によるクライテリアを設定し、
前記減速対応変速制御部は、前記無段変速機構の変速機入力回転変化速度が前記クライテリア以上になると、前記無段変速機構の変速制御を、変速比がロー側変速比へ向かうダウンシフトを抑える減速対応変速制御に切り替える
ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1に記載された無段変速機の変速制御装置において、
前記走行用駆動源と前記無段変速機構との間にトルクコンバータと前後進切替機構が介装され、
前記クライテリア設定部は、前記クライテリアの値をタービン回転変化速度の大きさにより設定し、
前記減速対応変速制御部は、前記変速機入力回転変化速度の情報を、前記前後進切替機構に有する前進クラッチの締結状態における前記トルクコンバータのタービン回転変化速度により取得する
ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項2に記載された無段変速機の変速制御装置において、
前記クライテリア設定部は、タービン回転変化速度によるクライテリア特性を、車速とタービン回転数の大きさにより予め設定したクライテリアマップを有し、
前記クライテリアマップを用い、そのときの車速とタービン回転数の大きさに応じて前記クライテリアを設定する
ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項1から3までの何れか一項に記載された無段変速機の変速制御装置において、
前記無段変速機構は、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、両プーリに掛け渡されるプーリベルトと、を有し、
前記プライマリプーリへの油圧と前記セカンダリプーリへの油圧を、電流値の大きさにより制御するプライマリ圧ソレノイド弁とセカンダリ圧ソレノイド弁を有し、
前記減速対応変速制御部は、前記無段変速機構の変速機入力回転変化速度が前記クライテリア以上になると、前記プライマリ圧ソレノイド弁と前記セカンダリ圧ソレノイド弁に対してプライマリ圧とセカンダリ圧を同圧にする指示電流を出力する
ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。 - 請求項3又は4に記載された無段変速機の変速制御装置において、
前記減速対応変速制御部による減速対応変速制御への切り替え中に解除条件が成立すると、切り替え前の通常変速制御に復帰する復帰処理部を設け、
前記復帰処理部は、復帰処理開始時に、変速フィードバック量と油圧フィードバック量をクリアすると共に、フィードバック制御を停止し、
前記プライマリ圧ソレノイド弁と前記セカンダリ圧ソレノイド弁に対する指示電流の変化率にリミッタをつけて通常変速制御に復帰する
ことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018150367A JP2020026810A (ja) | 2018-08-09 | 2018-08-09 | 無段変速機の変速制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018150367A JP2020026810A (ja) | 2018-08-09 | 2018-08-09 | 無段変速機の変速制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020026810A true JP2020026810A (ja) | 2020-02-20 |
Family
ID=69622118
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018150367A Pending JP2020026810A (ja) | 2018-08-09 | 2018-08-09 | 無段変速機の変速制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020026810A (ja) |
-
2018
- 2018-08-09 JP JP2018150367A patent/JP2020026810A/ja active Pending
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