JP2020015020A - 触媒、触媒の製造方法、触媒担持担体、分解方法、水素の製造方法、及び、担体 - Google Patents

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【課題】大きな熱エネルギーを付与せずとも、触媒表面に吸着された化学種を光照射によって還元し、所望の生成物を選択的に得る反応を起こすことができる触媒を提供する。また、触媒の製造方法、触媒担持担体、分解方法、水素の製造方法、及び、担体も提供する。【解決手段】被処理物に由来して、少なくともその表面に吸着された化学種を、光照射によって還元して生成物を得るための触媒であって、上記触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなり、上記第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、上記第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、上記化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有する、触媒。【選択図】図2

Description

本発明は、触媒、触媒の製造方法、触媒担持担体、分解方法、水素の製造方法、及び、担体に関する。
触媒の存在下、原料に熱エネルギーを付与して、選択的に所望の反応を起こさせる技術が知られている。例えば、炭化水素を改質して、水素を得る反応では、改質触媒の存在下で、改質反応を行う技術が知られている。このような方法として、特許文献1には、「予熱温度まで加熱された炭化水素、酸素及び水又は水蒸気からの出発混合物を触媒上に導通することによる炭化水素の自熱式接触蒸気改質法において、この方法を断熱的に作動させること、及び触媒は、支持体上に、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン又はこれらの混合酸化物及びゼオライトの群からの酸化物担体物質上に少なくとも1種の白金族金属を含有する触媒物質の被覆を有することを特徴とする、炭化水素の自熱式接触蒸気改質法。」が記載されている。
特開2002−12408号公報
本発明者らは特許文献1に記載された自熱式接触蒸気改質法について検討したところ、実用的な反応速度を得るためには、大きな熱エネルギーを反応系に付与しなければならず、結果的に生成物(水素等)の製造コストが高くなってしまうこと、更に、高温下で反応させるため、使用する触媒が劣化しやすい等の問題があった。
そこで、本発明は、大きな熱エネルギーを付与せずとも、触媒表面に吸着された化学種を光照射によって還元し、所望の生成物を選択的に得る反応を起こすことができる触媒を提供することを課題とする。
また、本発明は、触媒の製造方法、触媒担持担体、分解方法、水素の製造方法、及び、担体も提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 被処理物に由来して、少なくともその表面に吸着された化学種を、光照射によって還元して生成物を得るための触媒であって、上記触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなり、上記第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、上記第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、上記化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有する、触媒。
[2] 上記非占準位バンドBが、上記第2金属原子のd軌道成分、及び、f軌道成分からなる群より選択される少なくとも一方を含む、[1]に記載の触媒。
[3] 上記第1金属原子、及び、上記第2金属原子は、周期律表第4〜6周期の金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子であり、上記非占準位バンドBが、上記第2金属のd軌道成分を含み、Nが4〜11の整数である時、上記第1金属原子が周期律表の第N族の金属であり、かつ、上記第2金属原子が周期律表第3〜第(N−1)族の金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属である、[1]又は[2]に記載の触媒。
[4] 上記触媒中における、上記第2金属原子同士の平均距離が0.4nm以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒。
[5] 上記領域は、上記触媒の占有最高準位から、3.3eV高い準位までの間に存在する、[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒。
[6] 上記第1金属原子がCu、Ni、及び、Coからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子であり、上記第2金属原子がTiである、[1]〜[5]のいずれかに記載の触媒。
[7] 上記第1金属原子がRhであり、上記第2金属原子が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及び、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子である、[1]〜[5]のいずれかに記載の触媒。
[8] 上記被処理物が有機化合物であり、上記生成物が、二酸化炭素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[7]のいずれかに記載の触媒。
[9] 上記化学種がプロトンであり、上記生成物が水素である、[1]〜[8]のいずれかに記載の触媒。
[10] 担体と、上記担体に担持された、[1]〜[9]のいずれかに記載の触媒とを有する、触媒担持担体。
[11] 上記担体が、上記第2金属原子を含有する[10]に記載の触媒担持担体。
[12] 上記担体が、半導体であって、上記触媒担持担体の電子構造における占有最高準位Xが、上記担体における、上記半導体由来の非占有最低準位から300meV低いエネルギー位置Yと同じエネルギーに位置するか、又は、上記Yより高いエネルギーに位置する、[11]に記載の触媒担持担体。
[13] 上記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対応する数であるとき、MOで表される最高酸化数の金属酸化物を含有する、[12]に記載の上記触媒担持担体。
[14] 上記金属酸化物が、MgO、AlO3/2、TiO、TaO5/2、WO、MoO、SrTiO、CuWO、及び、TiCa(POからなる群より選択される少なくとも1種である、[13]に記載の触媒担持担体。
[15] 上記担体がn型半導体である、[10]〜[14]のいずれかに記載の上記触媒担持担体。
[16] 上記n型半導体がリン、ヒ素、及び、アンチモンからなる群より選択される少なくとも1種がドープされたSiである、[15]に記載の上記触媒担持担体。
[17] 上記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対応する数であり、δは0より大きい数であって、上記p未満の数であるとき、MO(p−δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有する、[10]に記載の上記触媒担持担体。
[18] 上記金属酸化物が、δを0より大きく2未満の数とした時、TiO(2−δ)で表される化合物を含有する、[17]に記載の触媒担持担体。
[19] [1]〜[10]のいずれかに記載の触媒を製造する、触媒の製造方法であって、第2金属原子を含有する基材に、第1金属原子を含有する組成物を塗布し、上記基材上の少なくとも一部に組成物層を有する、組成物層付き基材を得る工程aと、上記組成物層付き基材を加熱した後、触媒前駆体を得る工程bと、 上記触媒前駆体を還元雰囲気中で熱処理し、上記触媒を得る工程cと、を有する触媒の製造方法。
[20] [1]〜[10]のいずれかに記載の触媒と、被処理物とを接触させ、上記触媒に光を照射して、被処理物を分解して、生成物を得る、分解方法であって、上記被処理物が、有機化合物を含有する、分解方法。
[21] 上記被処理物が有機化合物であり、上記生成物が、二酸化炭素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である[20]に記載の分解方法。
[22] [1]〜[10]のいずれかに記載の触媒と、被処理物とを接触させ、上記触媒に光を照射して、水素を得る、水素の製造方法であって、上記被処理物が、有機化合物、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、水素の製造方法。
[23] 上記被処理物が更に二酸化炭素を含有する、[22]に記載の水素の製造方法。
[24] 更に、上記触媒を加熱する、[22]又は[23]に記載の水素の製造方法。
[25] 上記有機化合物が、炭化水素である、[21]〜[24]のいずれかに記載の水素の製造方法。
[26] 上記炭化水素がメタンを含有する、[25]に記載の水素の製造方法。
[27] 半導体である担体であって、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対応する数であり、δは0より大きい数であって、上記p未満の数であるとき、MO(p−δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有する、担体。
本発明によれば、大きな熱エネルギーを付与せずとも、触媒表面に吸着された化学種を光照射によって還元し、所望の生成物を選択的に得る反応を起こすことができる触媒を提供することができる。
また、本発明は、触媒の製造方法、及び、水素の製造方法も提供できる。
本発明の実施形態に係る触媒の電子構造の概念図である。1−Aは第1金属原子を含有する第1材料の電子構造を示し、1−Bは第1材料にドープされた第2金属原子の電子構造を示し、1−Cは第1材料に第2金属原子がドープされた触媒に吸着したプロトンのH1s成分を示す。 反応分子CHとHOと(被処理物に該当する)が存在する、Rh−Ti触媒とRh−Si触媒システムの、摂氏247℃における量子分子動力学シミュレーションである。 図2における触媒反応システムの電子構造を表す。Rhの4d軌道成分(図中「Rh4d」と示した。)と、吸着したプロトンのH1s成分とドープされたTiの3d軌道成分(図中「Ti3d」と示した)との位置の比較である。図中、黒く帯状に示された部分は、バンドの重なりを示す(以下の図において同じ)もので、破線は占有最高準位である。(実施例) 図2における触媒反応システムの電子構造を表す。Rhの4d軌道成分と吸着したプロトンのH1s成分とドープされたSiの3sと3p軌道成分との位置の比較。破線は占有最高準位である。(比較例) 比較的高濃度でTiがRhにドープされたRh−Ti触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) RhにHfがドープされたRh−Hf触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) RhにTaがドープされたRh−Ta触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) MoがドープされたRh−Mo触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) WがドープされたRh−W触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) NiにTiがドープされたNi−Ti触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) CoにTiがドープされたCo−Ti触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) CuにTiがドープされたCu−Ti触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(比較例) RhにCoがドープされたRh−Co触媒表面にプロトンが吸着した場合の触媒システムの電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(比較例) 希土類ドープされたRh−希土類触媒のRh4d軌道成分とその表面に吸着したプロトンのH1s軌道成分の位置と希土類4f軌道成分位置の比較説明図である。非占有希土類4f軌道(Ce4f、Pr4f、Tb4f)成分のバンドと非占有プロトンH1s軌道成分のバンドと重なりが多い場合の例。破線は占有最高準位である。(実施例) 希土類ドープされたRh−希土類触媒のRh4d軌道成分とその表面に吸着したプロトンのH1s軌道成分の位置と希土類4f軌道成分位置の比較説明図。非占有希土類4f軌道(Ho4f、Yb4f)成分のバンドと非占有プロトンH1s軌道成分のバンドとの重なりが殆どない場合の例。破線は占有最高準位である。(比較例) CuにCeがドープされたCu−Ce触媒のCu3d軌道成分のバンド、Ce4f軌道成分のバンド、及び、その表面に吸着したプロトンのH1s軌道成分のバンドの位置の比較説明図である。破線は占有最高準位である。(実施例) NiにCeドープされたNi−Ce触媒のNi3d軌道成分のバンド、Ce4f軌道成分のバンド、及び、その表面に吸着したプロトンのH1s軌道成分のバンドの位置の比較説明図である。破線は占有最高準位である。(実施例) 最高酸化数の金属酸化物である担体に、第1材料に第2金属原子がドープされた触媒を担持させた場合の、触媒と担体の複合体(触媒担持担体)の電子構造の概念図である。破線は占有最高準位。18−Aは第1材料の電子構造を表し、18−Bは第2金属原子の電子構造を表し、18−Cは担体の電子構造を表す。担体の伝導帯の底(CBM)より少し下に占有最高準位Xが位置する場合である。Xは、CBMより下にあり、かつ、CBMより300meV低い位置Yより高い位置にある。熱励起により担体にもキャリアが現れる。VBMは担体の占有準位(価電子帯)の最高値を表す。 最高酸化数の金属酸化物の表面に酸素欠損を設けた担体(最高酸化数未満の金属イオンを含む金属酸化物)に、第1材料に第2金属原子がドープされた金属触媒を担持させた場合の触媒と担体の複合体の電子構造の概念図である。破線は占有最高準位である。19−Aは第1金属原子を含有する第1材料の電子構造を表し、19−Bは第1金属原子にドープされた第2金属原子の電子構造を表し、19−Cは触媒に吸着したプロトンのH1s成分を表し、最高酸化数の金属酸化物と酸素欠損を有する金属酸化物とを含有する担体の電子構造である。酸素欠損量を調整し、占有最高準位Xを、担体の伝導帯の底(CBM)より少し上に位置させた場合である。熱励起なしでも担体にもキャリアが存在する。そのため金属に似ているが、イオン結合物質としての性質もあるため、担体表面では、極性分子を静電気的な電界で引きつけることができる。 酸素欠損のない(最高酸化数の)TiO担体にRh−Ti触媒を担持している触媒担持担体の電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) 最高酸化数の酸化チタン(TiO)表面に酸素欠損を有するTiO2−δを有する担体に、Rh−Ti触媒を担持させた触媒担持担体の電子構造を表す。破線は占有最高準位である。(実施例) 酸素欠損のないSiO担体にRh−Si触媒を担持している触媒担持担体の電子構造を表す。破線は占有最高準位Xである。XがCBMよりずっと低い位置にあるため、通常の熱励起では、担体にキャリアを存在させることができない。(比較例) 有機化合物分解測定観測用反応装置の概略図である。 表面に酸素欠損を作ったCuWO4−δ 微粒子担体自体を触媒として、有機化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)と乾燥空気の混合ガスに可視光(>420nm)を照射し、IPAを分解したときのCO生成速度を示す図である。(実施例) 特に酸素欠損を作らないCuWO微粒子担体自体を触媒として、有機化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)と乾燥空気の混合ガスに可視光(>420nm)を照射し、IPAを分解したときのCO生成速度を示す図である。(比較例) TiO担体担持のRh−Ti触媒のTEM画像である。Rh原料仕込量は、3(原料質量)% (実施例) 水蒸気メタン改質による水素生成測定観測用反応装置の概略図である。 Rh−Ti触媒に関する明暗条件下260℃における水素生成活性のRh原料仕込量依存性である。(実施例)
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[触媒]
本発明の実施形態に係る触媒は、被処理物に由来して、少なくともその表面に吸着された化学種を、光照射によって還元して生成物を得るための触媒であって、上記触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなり、第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有する、触媒である。
上記触媒によって処理する被処理物(言い換えれば、原料)としては特に制限されず、気体、液体、又は、個体のいずれであってもよく、また、上記の混合物であってもよい。
被処理物に含まれる成分としては特に制限されず、所望の生成物が得られるよう、適宜被処理物を選択すればよい。例えば、生成物が水素である場合には、被処理物としては特に制限されないが、有機化合物、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、更に、二酸化炭素を含有していてもよい。
なお、有機化合物は、酸素原子、及び、窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種を含有していてもよく。被処理物は、酸素ガス、及び、窒素ガスからなる群より選択される少なくとも1種のガスを更に含有していてもよい。
有機化合物としては特に制限されないが、例えば、炭化水素、及び、アルコール等が挙げられる。
本発明の実施形態に係る触媒は、上記非生成物に由来して、少なくとも触媒表面に吸着された化学種を選択的に還元して(例えば、電子を供与して)目的の生成物を生成する。
例えば、生成物が水素である場合には、非生成物に由来して、本触媒の表面に吸着した化学種(例えば、プロトン)は、本触媒から電子を供与され、水素ガスとして本触媒から脱離する(生成物として水素が発生する。)。
本触媒は、被処理物が混合物等であり、本触媒の表面に様々な化学種が吸着している場合であっても、選択的に生成物を生成させる反応を起こすことができる。これは、本触媒が、触媒表面に吸着した化学種のうち、所望の化学種(生成物が水素であれば、プロトン)に選択的に電子が供与されやすいよう、設計されているためである。
本触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされた構造(第1金属原子と第2金属原子の混合物、又は、第2金属原子を含有する材料に、第1材料が担持された形態とは異なる)を有しており、かつ、第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有するよう構成されている。
このため、光照射により励起された電子が、表面に吸着された化学種のうち、選択的に還元したい化学種に供与されやすく、結果として、高い選択性をもって所望の生成物が得られるという特徴を有する。
第1金属原子の種類としては上記の関係を満たすよう選択されれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する触媒が得られる点で、周期律表第4〜6周期の金属から選択されることが好ましい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する触媒が得られる点で、第1金属原子としては、Cu、Ni、及び、Coからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子が好ましい。また、他の形態として、より優れた本発明の効果が得られる点で、第1金属原子としてはRhが好ましい。
第1材料は、第1金属原子を含有する材料であれば特に制限されず、第1金属原子の単体であってもよく、第1金属原子と他の原子との複合体であってもよい。複合体としては、例えば、第1金属原子の酸化物、及び、窒化物等が挙げられる。
第2金属原子の種類としては、上記の関係を満たすよう選択されれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する触媒が得られる点で、周期律表第4〜6周期の金属から選択されることが好ましい。
なかでも、第1金属原子との関係では、Nを4〜11の整数としたとき、第1金属原子が周期律表の第N族の金属であるとき、第2金属原子としては、周期律表第3〜第(N−1)続の金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子が好ましい。
また、更に優れた本発明の効果を有する触媒が得られる点で、第1金属原子がCu、Ni、及び、Coからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子であるとき、第2金属原子としては、Tiが好ましい。
また、第1金属原子がRhであるとき、第2金属原子としては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及び、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子が好ましい。
本触媒は第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなるが、第1材料中における第2金属原子の含有量としては特に制限されない。なかでも、より優れた本発明の効果を有する触媒が得られる点で、触媒中における第2金属原子同士の平均距離が0.4nm以上であることが好ましい。
上記第2金属原子同士の平均距離は第2金属原子のドープ量によって調整可能である。すなわち、第2金属原子のドープ量を多くすると、上記平均距離はより近づく傾向にある。なお、上記平均距離の条件値としては特に制限されない。
本触媒においては、第1材料の非占準位バンドAに対して、触媒中の第2金属原子に由来する非占準位バンドB、及び、(選択的に還元されるべき)化学種の非占準位バンドCに重複する領域が存在する点に特徴がある。
このような触媒に光照射すると、励起された電子が、選択的に上記化学種に供与されやすく、結果として所望の生成物が高効率で得られる。
なお、上記重複する領域は、第1金属原子、第2金属原子、及び、(選択的に還元されるべき)化学種に応じて、適宜変更できるが、可視光照射により反応を進行しやすい点で、上記領域を、触媒の占有最高準位(フェルミ準位)から3.3ev高い準位までの間に存在するよう調整することが好ましい。
また、非占準位バンドBは、第2金属原子のd軌道成分、及び、f軌道成分からなる群より選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、d軌道成分を含むことがより好ましい。
[触媒の製造方法]
本触媒の製造方法としては特に制限されないが、以下の工程を有する触媒の製造方法が好ましい。すなわち、第2金属原子を含有する基材に、第1金属原子を含有する組成物を塗布し、基材上の少なくとも一部に組成物層を有する、組成物層付き基材を得る工程aと、組成物層付き基材を加熱した後、触媒前駆体を得る工程bと、触媒前駆体を還元雰囲気中で熱処理し、触媒を得る工程cと、を有する触媒の製造方法である。
工程aにおいて、第2金属原子を含有する基材としては特に制限されず、その形状も、平板上、及び、球状等いずれであってもよい。また、基材としては、第2金属原子を含有していれば、その他の成分を含有していてもよく、典型的には、第2金属原子の酸化物、及び、窒化物等が挙げられるが上記に制限されない。
第1金属原子を含有する組成物としては特に制限されないが、第1金属原子を含有する化合物等の溶液が挙げられる。第1金属原子を含有する化合物としては、第1金属原子の塩化物等が挙げられる。上記溶液が含有する溶媒としては特に制限されず、水、及び、有機溶媒が挙げられ、水が好ましい。
なお、上記組成物は、上記以外の成分を含有していてもよい。
上記基材に組成物を塗布する方法としては特に制限されないが、基材を組成物に浸漬する方法、及び、基材に組成物を噴霧する方法等が挙げられるが、基材を組成物に浸漬する方法が好ましい。
基材を組成物に浸漬する場合、組成物中における第1金属原子の含有量としては特に制限されないが、組成物中における第1金属原子の含有量として1.0〜50mMが好ましい。
基材に組成物を塗布することによって、基材上の少なくとも一部に、上記組成物を含有する組成物層が形成され、組成物層付き基材が得られる。
工程aは、得られた組成物層付き基材を乾燥させる工程を更に有していてもよい。組成物層付き基材を乾燥させる際の温度としては特に制限されないが、一般に、20〜100℃が好ましい。
工程bは、上記組成物層付き基材を加熱し、触媒前駆体を得る工程である。
加熱温度としては特に制限されないが、一般に、200〜500℃が好ましい。加熱時間としては特に制限されないが、一般に、1〜3時間が好ましい。
加熱の際の雰囲気としては特に制限されず、不活性ガス雰囲気であってもよいし、大気雰囲気であってもよいが、大気雰囲気が好ましい。
工程cは、工程bによって得られた触媒前駆体を還元雰囲気中で熱処理し、触媒を得る工程である。還元雰囲気として、還元性のガスの存在下であれば特に制限されず、一般に、水素雰囲気が好ましい。
加熱時間としては特に制限されず、200〜500℃が好ましい。加熱時間としては特に制限されず、一般に、1〜3時間が好ましい。
工程bと工程cの間に、更に、触媒前駆体を粉砕する工程を更に有していてもよい。粉砕の方法としては特に制限されず、公知の方法が適用可能である。また、粉砕した触媒前駆体を分級する工程を更に有していてもよい。
上記の触媒の製造方法によれば、工程cにおいて、還元雰囲気で触媒前駆体を加熱するため、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がわずかに取り込まれ、結果として、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなる触媒が得られる。
本触媒は、被処理物に由来して、表面に吸着された化学種を、光照射によって還元して生成物を得る反応に使用できる。
このとき、照射する光の波長としては特に制限されず、上述した重複する領域に応じたエネルギーを有する光を照射すればよい。すなわち、照射する光としては、自然光、可視光、紫外光、及び、赤外光等、上記領域に応じて適宜選択すればよい。
例えば、生成物が水素である場合、被処理物としては特に制限されないが、有機化合物、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、その形態としてはすでに説明したとおりである。
また、反応の際、触媒を加熱してもよい。触媒を加熱する際の温度としては特に制限されないが、例えば、100〜500℃が好ましく、150〜300℃がより好ましい。
以下に、本触媒について、更に詳細に説明するが、簡単のため、以下では、第1金属原子がRh、第2金属原子をTiとして、すでに説明した方法により作成した触媒を例に、水蒸気メタンから水素を選択的に得る反応を触媒するメカニズムについて説明する。
メタンは、非常に便利で、貯蔵燃料として豊富であり、今日の産業における重要な用途を占めるものとしてよく知られている。しかしながら、メタンの直接的活性化という課題は、CH分子内におけるC−H結合エネルギーが高い(104Kcal/mol)ことと、その分子自体に分極性が無いことから、大きな挑戦的課題として残っている。
今日では、メタンの工業的用途の大部分は、水素生成あるいはシンガス生成のため水蒸気メタンを高温(800〜1000℃)で改質処理(SMR(steam methane reforming)、CH+HO−>3H+CO、ΔH298K=+206kJ/mol)することである。
低温でCHを活性化させる技術は、製造過程を簡素化し、投入エネルギーを削減するために重要である。低温におけるSMRの触媒活性を高めるためになされた多くの努力は、主に金属触媒や担体の調整による最適化であり、エネルギー投入に関する研究は殆どなかった。最近になって、熱力学的には不利なメタンの室温ドライ改質を駆動させるためのエネルギー投入のやり方として、熱的プラズマでない方法が注目を集めている。触媒効率の増強と反応活性化エネルギーの低減のため、投入エネルギーの新しい形態を提供することでCHの活性化のためのエネルギー効率の高い触媒反応過程を開発することは重要な意義がある。
分子とナノ構造金属の光励起による電子とホール(ホットキャリア)間の相互作用を通じて反応の活性化を行うことは触媒活性を促進する新しい方法を与える。光照射の下、光励起による電子は金属表面に吸着した分子の非占有軌道に注入され、エネルギーは吸着体に蓄えられ、化学反応を促進する。金属中で光励起された電子が、適当な半導体とカップルし金属半導体界面を通じて、金属ナノ構造に隣接する半導体の伝導帯に注入されることも可能である。一方、光励起でできたホールは金属に残り、吸着体を酸化する。この方策は、酸素存在下での酸化、水の分離、二酸化炭素の還元、等の様々な表面化学反応をおこさせる場合おいて、効果的にホット電子とホールを分離し、キャリアの寿命を延ばすものである。
本発明の実施形態に係る触媒は、典型的には、TiがドープされたRh金属ナノ粒子単独の作用、あるいは、TiがドープされたRh金属ナノ粒子と酸素欠損を有する酸化チタン担体(後述する触媒担持担体に該当する)との協働作用により、光と熱エネルギーを利用した触媒として機能し、300℃以下の穏やかな動作温度でSMR反応を通じて水蒸気メタンをHに化学変換できる。
本発明は、TiドープされたRhナノ粒子触媒内で光励起された電子や、酸素欠損を有するTiO2−δ担体で光励起された伝導電子が、TiがドープされたRhナノ粒子表面上や、酸素欠損を有するTiO2−δ担体表面上に解離吸着したプロトン(−X−H、ここでXは、Rh、Ti、あるいは、O)を還元し、水素生成を増強する効果が得られるものである。TiがドープされたRhナノ粒子触媒のTi3d成分は、触媒中で光励起された電子の、解離吸着したプロトンへ移動を促進するし、TiO2−δ担体中の酸素欠損のために存在する伝導電子も光励起され、その励起された電子も担体に解離吸着したプロトンへ移動し、結果水素生成を促進する。また、TiO2−δ担体は、イオン結合性物質であるため、水蒸気メタンの反応分子を解離吸着させやすく、その表面に多数のプロトンを吸着させることができ、このこともプロトン還元効率を高めていると考えることができる。但し、担体への解離吸着のし易さのメリットは担体にキャリアが存在する時にその威力を発揮するが、キャリアが少ないときその効果は発現しにくい。
TiO2−δ担体の例を考えればわかるように、最高酸化数の金属イオンで構成される金属酸化物に、ある程度の酸素欠損を設けることにより、その伝導帯に伝導電子を存在させ、この伝導電子を光励起することで、その表面に解離吸着させた有機化合物を分解できる可能性がある。
[触媒担持担体]
本発明の実施形態に係る触媒担持担体は、上記触媒と、上記触媒が担持された担体とを含有する触媒担持担体である。
上記担体としては特に制限されず、触媒の担体として公知の担体が使用できる。なかでも、より優れた本発明の効果を有する触媒担持担体が得られる点で、担体としては、上記第2金属原子を含有することが好ましい。
担体としては特に制限されないが、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及び、希土類元素(セリウム、イットリウム等)等の酸化物が挙げられる。
なかでも、更に優れた本発明の効果を有する触媒担持担体が得られる点で、担体が、半導体(n型半導体が好ましい。高濃度のリン、ヒ素、及び、アンチモンからなる群より選択される少なくとも1種がドープされたSiが挙げられる。なお、最高ドープ濃度(cm−3)は、およそ、 P 4*1020 > As 3*1020 > Sb 5*1019 >> Bi 8*1017 >> N 5*1015である。)であって、触媒担持担体の電子構造における占有最高準位Xが、担体における、半導体由来の非占有最低準位から300meV低いエネルギー位置Yと同じエネルギーに位置するか、又は、Yより高いエネルギーに位置する、ことが好ましい。
より具体的には、担体としては、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、Mの最高酸化数に対応する数であるとき、MOで表される最高酸化数の金属酸化物を含有することが好ましい。
このような金属酸化物としては、MgO、AlO3/2、TiO、TaO5/2、WO、MoO、SrTiO、CuWO、及び、TiCa(POからなる群より選択される少なくとも1種である形態が挙げられる。
担体の他の形態としては、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、Mの最高酸化数に対応する数であり、δは0より大きい数であって、p未満の数であるとき、MO(p−δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有することも好ましい。
このような金属酸化物としては、δを0より大きく2未満の数とした時、TiO(2−δ)で表される化合物を含有することが好ましい。
担体としては上記の最高酸化数の金属酸化物と、酸素欠損を有する金属酸化物とをいずれをも含んでいてもよいが、少なくとも酸素欠損を有する金属酸化物を含有することが好ましい。酸素欠損を有する金属酸化物を含有する場合、触媒上に吸着した化学種への電子の受け渡しがよりスムーズに行われやすい。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
まず、典型例であるRh−Ti触媒に解離吸着したプロトンへの光励起電子の結合性の良さを確認するため、反応条件を模した、Rh−Ti触媒とRh−Si触媒システムの局所密度近似に基づく局所密度汎関数理論による第一原理量子分子動力学と電子構造計算を行い比較した。
計算モデル:
比較を容易にするため、TiとSiが表面にドープされたRh金属スラブ(190Rh,1Ti,1Si原子)で構成され、反応物質分子はメタン2分子と水4分子が用いられた(図2)。詳細は以下のとおりである。
格子定数3.803Å(オングストローム、1オングストロームは0.1nm、以下同じ)の面心立方格子のRh金属結晶(無機結晶構造データベース、ICSDcode650222)が、4a(15.212Å)×4a×3a(11.409Å)のサイズで切り出され、4a×4a×24Åのサイズのシミュレーションセルの底部に設置された。その(001)表面のRh原子の内二つのRh原子が、TiとSiに置換された。
そして、メタン2分子と水分子4個が、望まれない不均衡をさけるためそれぞれの分子同士の距離や、分子とRhスラブ表面の距離が適度な距離を保つようにして、シミュレーションセルの空間(厚み約14Å)に置かれた。結局、シミュレーションセル中に含まれるRh,Ti,Si,C,O,そして,Hの原子数はそれぞれ、190,1,1,2,4,16であった。
計算手法詳細:
第一原理量子分子動力学シミュレーションはスピン自由度をもつカー・パリネロ法(CPMD)でなされ、Becke−Lee−Yang−Parr(BLYP)にちなむ一般化された勾配補正が施された交換相関ポテンシャルが用いられている。Rh、Ti、Si、C、O、及び、Hの価電子とコアの相互作用は、ノルム保存型のTroullier−Martins(TM)擬ポテンシャルによってモデル化されている。Rhの5s、4d、Tiの4s、3d、Siの3s、3p、Cの2s、2p、Oの2s、2p、Hの1s電子が価電子として扱われ、Rhの5p、Siの3dポテンシャルも計算に勘案されている。RhとTiについては非線形コア補正された擬ポテンシャルが用いられている。計算では、波動関数は、カットオフ値80Ryのエネルギーまでの平面波基底セットで展開され、ブリルアンサンプリングはΓ点のみである。仮想電子質量は1200原子ユニット、逐次計算ステップ幅は5.0原子ユニット時間として計算し、各保存量は良好に制御された。
247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを図3と図4に示す。メタン分子は247℃で表面で自然解離した。電子構造の性質では重要成分だけを表示している。実線で示されているように、−6.2eVまで電子が占有されている。占有状態と非占有状態の両方が主にRh4d軌道成分で構成されている。
非占有状態のTi3d成分と、この解離吸着による吸着物の非占有状態のH1s成分について調べると、非占有Ti3dバンドは−5.0eV〜−3.0eVのエネルギー領域に位置しており、Rh基金属スラブ上に吸着したH由来の非占有H1s成分はちょうどそのTi3dバンドの付近に位置しているのである。したがって、Rh4d軌道の電子は、可視光照射で、励起され非占有4d、5s、あるいは、5p軌道に励起されることができ、同時に非占有Ti3dあるいは非占有H1s軌道にも励起されることを示している。このことはTi3d軌道成分が光励起された電子を解離吸着したプロトンに移動することに大きく寄与していることを意味する。また、この計算結果は、触媒中のTiの濃度が大変小さい(原子数比で1/192)にも関わらず、Ti3d成分が大きく(エネルギー範囲−5EeVから−3eVまでで、最大約0.15)、エネルギー軸におけるそのバンド位置はH1s非占有バンドの位置とよく合っていることを示していて(図3、図中の黒く帯状に示され、バンドの表示が白く反転している部分)、少量でもその効果が高いことを示唆している。ところが、Si3sとSi3pの成分はそれぞれ0.01、0.025より小さく、このことは光励起された電子がSiを介して解離吸着したプロトンに移動することはほとんどできないことを意味している(図4)。したがって、Siをドープすることは、表面吸着プロトンの還元(水素の生成)に対して効果は小さい。
上記と同様の方法により確かめた本発明の他の実施形態に係る触媒について説明する。
図5は、Rhに対して、高濃度(具体的には原子%として13%)でTiをドープした場合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なり(図中、黒く帯状に示した部分)から、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。しかしながら、図3と比較すると、図5はH1s成分が小さく、重なる領域がより狭い。したがって、高濃度にドープすることは必ずしも好ましくないことが分かる。
図6は、Rhに対して、Hfを0.5原子%の濃度でドープした場合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Hf5d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なり(図中、黒く帯状に示した部分)から、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図7は、Rhに対して、Taを0.5原子%の濃度でドープした場合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ta5d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図8は、Rhに対して、Moを0.5原子%の濃度でドープした場合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Mo4d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図9は、Rhに対して、Wを0.5原子%の濃度でドープした場合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有W5d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図10は、Niに対して、Tiを0.8原子%の濃度でドープした場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図11は、Coに対して、Tiを0.8原子%の濃度でドープした場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図12は、Cuに対して、Tiを0.9原子%の濃度でドープした場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図13は、Rhに対して、Coを0.5原子%の濃度でドープした場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位を示している。バンドに重複する領域がほとんどなく、所望の効果が得られないことがわかる(比較例)。
上記は、M2金属のd軌道の例を挙げたが、f軌道でも同様の効果が期待できる。Rh−Ce触媒、Rh−Pr触媒、Rh−Tb触媒、のそれぞれにプロトンが吸着した場合の概念図を図14に示す。非占有準位のH1s軌道成分のバンドとの重なり(図中、黒く帯状に示された部分)から、Rh−Pr触媒が可視域での活性が期待できる。
上記のf電子をもつ希土類元素をドープされた金属触媒の電子構造も第一原理で計算されているが、その具体的な手法は原子球近似を用いたリニアマフィンティン軌道法(LMTO−ASA)によるものである。f電子軌道に関するバンドのエネルギー位置はまず、希土類元素をドープされた金属(例えばRh)のバルクにおける電子構造を求め、そのf電子軌道の状態密度プロファイルとその系の占有最高準位(Aとする)を得る。次に、CPMD法により求めた原子配置状態(例えばRh金属スラブにプロトン等が吸着した状態)のコーンシャム方程式を解いて得られた電子構造とその系の占有最高準位(Bとする)を得る。AとBが一致するように両者の電子構造を並べることで、近似的に各構成原子軌道由来のバンド位置(4f軌道のエネルギー位置と吸着プロトン由来のバンド位置等)を比較することが可能となり、好適な触媒を見つけることができる。
図15は、Rh−Ho触媒、Rh−Yb触媒、のそれぞれにプロトンが吸着した場合の電子構造の概念図である。いずれの場合も、非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌道のバンドが重ならないため、もともとのRhを大きく超える高活性は期待できないことがわかる。
図16は、Cu−Ce触媒にプロトンが吸着した場合の電子構造の概念図である。非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌道のバンドに重なり(図中、黒く帯状に示した部分)があるため、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
図17は、Ni−Ce触媒にプロトンが吸着した場合の電子構造の概念図である。非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌道のバンドに重なり(図中、黒く帯状に示した部分)があるため、光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
以上は、第2金属元素がドープされた第1材料による触媒単体に関するもので、その反応促進効果は、第2金属元素の非占有d軌道あるいは非占有f軌道成分と触媒に解離吸着したプロトンの非占有H1s軌道成分の重なり(カップリング、混成)に起因するものであった。別の形態として、触媒に加え、触媒とそれを担持する担体との協働作用(触媒担持担体を用いた形態)により更に反応促進効果を高める例について説明する。
図18は、最高酸化数の金属イオンで構成される酸化物でできた担体に、第1材料に第2金属原子がドープされた触媒を担持させた場合の、触媒と担体の複合体(触媒担持担体)の電子構造の概念図である。破線は占有最高準位。担体の伝導帯の底(CBM)より少し下に占有最高準位Xが位置する場合であってXが、CBMより下にあり、かつ、CBMより300meV低い位置Yより高い位置にある場合。熱励起により担体にもキャリアが現れる。VBMは担体の占有準位(価電子帯)の最高値を表す。
なお、18−Aは、第1材料の電子構造、18−Bはドープされた第2金属原子の電子構造成分、18−Cは金属酸化物担体の電子構造を表し、CBMは、非占有準位(伝導帯)最小値、VBMは占有準位(価電子帯)最高値を表す。
図19は、最高酸化数の金属酸化物の表面に酸素欠損を設けた担体(最高酸化数未満の金属イオンを含む金属酸化物)に、第1材料に第2金属原子がドープされた触媒を担持させた場合の触媒と担体の複合体(触媒担持担体)の電子構造の概念図である。破線は占有最高準位。酸素欠損量を調整し、占有最高準位Xを、担体の伝導帯の底(CBM)より少し上に位置させた場合。熱励起なしでも担体にもキャリアが存在する。そのため金属に似ているが、イオン結合物質としての性質もあるため、担体表面では、極性分子を静電気的な電界で引きつけることができる。
なお、19−Aは第1金属原子を含有する第1材料の電子構造、19−Bは第1材料にドープされた第2金属原子の電子構造、19−Cは触媒に吸着したプロトンのH1s成分、19−Dは最高酸化数の金属酸化物と酸素欠損を有する金属酸化物とを含有する担体の電子構造を表す。CBMは、非占有準位(伝導帯)最小値、VBMは占有準位(価電子帯)最高値を表す。
具体的に、酸素欠損のないTiO担体にTiドープRh金属触媒を担持している物質の電子構造を図20に示す。破線は占有最高準位X。Xが、CBMより下にあり、かつ、CBMより300meV低い位置Yより高い位置にあることがわかる。熱励起により担体にもキャリアが現れ、反応促進効果が期待できる。(実施例)
図20の計算は次のように行われた。まず、アナターゼ型TiOの(101)面にRh金属を接触させ全体の温度を数百度以上に設定してTiとRhに拡散を起させ、TiO担体表面にTiドープされたRh金属状態を作ることで、Rh−Ti触媒を担持したTiO担体のスラブモデルをシミュレーションセル内に作る。次に、メタン分子、水分子をそのスラブ上の少し離れた位置に配置し、実際の反応温度に設定して暫く分子を運動させ、反応分子が一部吸着した状態で、その温度における全系の平衡状態を得る。しかる後に、その一コマの電子構造の詳細を計算し、図20を得た。
更に、先に用いたシミュレーションモデルの酸化チタン表面の酸素原子の一部を取り去り、TiO2−δ担体にTiドープのRh金属触媒を担持させた複合体(触媒担持担体)に反応分子の一部が吸着した熱平衡状態を得る。同様にその一コマの電子構造の詳細を計算する。
その複合体(触媒担持担体)の電子構造を図21に示す。破線は占有最高準位。占有最高準位Xが、担体の伝導帯の底(CBM)より少し上に位置しており、熱励起なしでも担体にもキャリアが存在する。そのため金属に似ているが、イオン結合物質としての性質もあるため、担体表面では、極性分子を静電気的な電界で引きつけることができ、解離吸着を促進できる。つまりこの系では、光励起された電子は、TiドープのRh金属触媒上に吸着したプロトンや、担体に吸着したプロトンの両方を還元し、その相乗効果のために高い水素生成能力を有する触媒担持担体となる。(実施例)
一方、酸素欠損のないSiO担体にSiドープRh金属触媒を担持し、反応分子の一部が複合体に吸着した状態の電子構造ついても前述同様の計算手続きで求められた。
図22にその全系の電子構造を示す。破線は占有最高準位X。XがCBMよりずっと低い位置にあるため、通常の熱励起では、担体にキャリアを存在させることができない。担体物質がプロトンの還元に寄与することはできず、また、SiドープRh金属触媒におけるSiのプロトンの還元促進作用もほとんどないため、SiドープRh金属触媒に解離吸着したプロトンのみをRh金属のみの触媒作用で還元することになり、その効率は低いものになるということが容易に推測される。(比較例)
図21と図22の理論予測は実験でも確認できる。
有機化合物の分解:
実施例
フルウチ化学市販品CuWO粉末(CUC−26222A、99.9%、−200mesh(粒径<75μm))をアルゴン希釈の水素雰囲気中で400℃1時間、還元処理して粒子表面に酸素欠損を作ったCuWO4−δ担体自体を触媒として、有機化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)と空気(酸素だけでもよい)の混合ガスを可視光照射(>420nm)で分解した。
IPA分解に関するCuWO4−δ担体自体の触媒活性に関する評価は、可視光照射対応可能な手製の石英窓付反応容器(高さ約4cm、直径約13cm)で常温常圧で測定された(図23)。典型例では、3〜4mgのCuWO4ーδ担体が反応容器内に設置された試料用シャーレに均一に分散された。その後、反応容器は乾燥空気で数分フラッシングし、容器内を乾燥空気で満たして密封した。
続いて、IPAガスをシリンジを使って約190〜200ppm程度の濃度になるようにセルに注入し、その後、光を照射。光照射による温度上昇をさけるため、反応容器の温度は水冷装置により室温に保った。生成された炭酸ガスは、定期的にシリンジにてサンプリングし、熱電動式検出器と火炎イオン化検出器を装備したガスクロマトグラフで定量測定された。
なお、図23において、230は反応容器、231は触媒、232は石英窓、233はIPA、及び、乾燥空気を満たした空間、234はサンプリング用シリコンゴム栓、235はサンプリング用シリンジを表す。
Xeランプが光源として使用された。L42フィルタが紫外光(λ<420nm)を取り除くために使用された。
上記測定手法によるCO生成量の時間変化を図24に示す。この測定では、初期IPA濃度189ppm、触媒量0.50g。1時間当たりのCO生成量は約3.4ppm/hであった。
比較例
同様に、フルウチ化学市販品CuWO粉末を空気中で400℃、1時間加熱した、特に酸素欠損を導入しないCuWO担体自体を触媒として、有機化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)と乾燥空気の混合ガスに可視光(>420nm)を照射し、IPAを分解した。初期濃度198ppm、触媒量0.40gであった。上記同様の測定方法によって得られたCO生成速度を図25に示す。図24における測定条件との僅かな違いは補正してある。1時間当たりのCO生成量は約0.46ppm/hであった。
酸素欠損を導入した場合に比べ、CO生成速度は数分の1以下であることが分かる。
水素の生成:
材料:塩化ロジウム(III)水和物(RhCl・3HO)はシグマアルドリッチ社から供給されている。TiO(AEROXIDE TiO P25, Lot No. 614041498)はEvonik−Degussa社から購入した。
触媒の調製:全ての触媒は、含浸法により調製された。
まず、1gのTiOがRhCl・3HO水溶液(2.43、4.86、7.29、9.72、14.58、と、24.23mM)20mLに加えられた。
次に、1時間の撹拌後、上記試料は60℃で乾燥され、400℃で2時間焼成された。昇温速度は毎分5度であった。
その後、試料はすり潰され、水素雰囲気で400℃で1時間還元処理された。昇温速度は毎分5度であった。
上記の様にして、TiO2−δを担体として、上記担体に担持されたTiがドープされたRh粒子(本発明の実施形態に係る触媒に該当する。以下、「TiO2−δ担体担持Rh−Ti触媒」ともいう。)が得られた。
得られたTiO2−δ担体担持Rh−Ti触媒は、製造工程におけるTiO原料重量に対するRh重量に応じて、x%Rh−Ti(x=0.5〜5重量%)と命名した。
また、2%Rh−M2という「2重量%」という表現は、それぞれ相応する担体担持された、異種元素(第2金属原子M2)ドープされたRh触媒、に対して上記同様の方法で作成した触媒を意味する。すなわち、本明細書では、特に明言しない限り、2%Rh−M2とは、原料の担体(TiO等)の質量に対してRhを原料重量比として2重量%添加して作製した触媒であることを表す。
ここでは、TiOを担体原料とし、それに含まれるTiをRh金属にドープしているが、例えば、TiOを担体原料とし、Rh金属にTiの他更に別の金属(M3)をドープしたい場合は、RhCl・3HO水溶液にM3を含む水溶液をまぜ、同様に含浸法で製造することにより、M3もRh金属にドープさせることができる場合もある。
なお、上記濃度の定義は、触媒の製造時に原料として投入したRhの質量を原料である担体(酸化チタン等)の質量に対する割合で表示したもので、ドープ量を示していない。すなわち、仕込み原料としての担体質量に対する、Rhの仕込み原料の質量の比を示している。
触媒活性測定:水蒸気メタン改質による水素生成触媒活性に関する評価は、可視光照射対応可能な手製の石英窓付底固定フロータイプの反応容器(高さ3cm、直径8.5cm)で常圧で測定された。典型例では、20mgの触媒担持担体が反応セル内に均一に分散された。その後、反応セルは純水なArガスで2時間フラッシングし、セル内の空気を取り除いた。
続いて、触媒はまず400℃で2時間還元性のガス、CH(10%)とHO蒸気(3%)の混合ガスを毎分10mL流して活性化された。その後、活性化された触媒は所望の反応温度まで冷却され、安定した触媒性能に到達した。全ての生成物は、熱電動式検出器と火炎イオン化検出器を装備したガスクロマトグラフで定量測定された。
LA−251 Xeランプが光源として使用された。HA30フィルタとL42フィルタが赤外光と紫外光(λ<420nm)を取り除くためそれぞれ使用された。温度は反応容器下の熱電対で検出され、光照射による加熱効果を軽減するため、TC−1000温度制御装置(JASCO)で制御された。
触媒特性:TiO担持x%Rh−Ti(xは触媒を製造過程におけるRhの重量%、x=0.5〜5)触媒は含浸法により準備され、400℃、1時間の水素還元処理が施された(この工程でTiO2−δが形成されるが、触媒反応中も還元雰囲気にさらされるため、δの値は製造直後の値と触媒反応中の値とが同じとは限らない。)。X線回折(XRD)測定の結果、全ての試料が、担体であるTiOがアナターゼ相とルチル相でできていることを示していた。
2%Rh−Ti触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)像(図26)から、触媒が、平均粒径約2.5nmの酸化チタン表面上に均一に分散していることが判明した。なお、図26において、Aで示した領域は、TiO2−δ担体粒子に対応しており、Bで示した領域は、Rh−Ti触媒に対応している。
触媒活性の光増強効果:水蒸気メタン改質による水素生成速度の測定は、石英窓付の底部固定反応容器を使い、常圧下、可視光(420〜800nm、580mW/cm−2)照射のもとで行われた(図27)。
なお、図27中、271は反応容器を示し、272は石英窓を示し、273は触媒担持担体を示す。
図28は、TiO2−δ担体担持Rh−Ti触媒における、水素生成速度のRh担持量の依存度を示す(260℃で観測)。黒が光照射しない場合を示し、白が光照射した場合である。いずれも、Rh仕込み量が、0.5重量%から2.0重量%に増えるにつれ、水素生成速度は増加するが、2.0重量%から5.0重量%の範囲ではその増加は緩やかであった。
上記の結果から、酸化チタン担体をRh金属が活性化しているが、一定量以上のRhでその活性化は飽和することが示唆される。一方Rh−Ti触媒はその量が増えるほど反応は促進されるはずであるが、もともとTiO2−δ担体の活性が高いため、Rh−Tiの増加の効果が見えにくく、飽和したように見えるものと推測される。
光照射時、水素生成量は、(光照射のない)純粋な熱触媒作用のそれの、およそ3倍に増加していることが分かる。この、Rh−Ti触媒に関する水素生成速度の可視光照射増強効果は再現性があった。測定温度範囲220℃から300℃でも同様の測定を行ったが、水素生成速度は、暗反応条件のそれより常に高かった。この反応促進効果は、COとCO生成でも観測された。(副反応としての水ガスシフト反応(CO+HO−>H+CO)が存在する。しかしながら、COが主要生成物である。)また、反応ガス(CH)のガス流量を増やすと、それに応じて、反応速度もまた改善された。
一方、可視光照射のもとでの反応速度を達成しようとすると、光なしの純粋な熱的反応条件では温度を20〜30℃高める必要があることが分かった。つまり、同じ水素生成速度を得ようとする場合、Rh−Ti触媒を利用して、可視光照射すれば、より低温で、SMR反応が実現できることが分かった。また、Rh−Ti触媒は暗反応と明反応の条件で優れた触媒安定性を示していた。
同様の方法で、酸化ケイ素(SiO、Wako Co.から購入した。)、酸化ジルコニウム(ZrO、Wako Co.から購入した。)、酸化タンタル(Ta、Wako Co.から購入した。)を担体原料とした系についても検討を行った。Si、Zr、及びTaがドープされたRh触媒(Rh仕込原料重量比として2%))、すなわち、2%Rh−Si、2%Rh−Zr、2%Rh−Ta、をそれぞれ担持させ、同様の反応方法、同様の測定方法で水素生成速度を観測した。その結果を表1に示す。2%Rh−Si、2%Rh−Zrの粒子の平均サイズは、3〜4nmである。
なお、表1中、2%Rh−Tiの、2%とは、Rhの原料と担体も含む全原料重量に対するRhの原料の質量比を意味する。
また、2%Rh−Tiにおいて、母体Rh金属に微量に含まれるTiの実際の量は、Rh原子数に対し概ね2〜5原子%程度と推定される。
L/Dの値から担体がSiOのとき最も照光射の影響が少ない。これはRhにドープされたSi原子の反応促進能力が小さく、触媒機能が殆どRh金属単独の作用で果たされているためと考えられる。
一方、Rh−TaやRh−Zr触媒は、Ta5dやZr4dの非占有状態の軌道成分がプロトンの還元反応を促進していると考えられる。
しかしながら、以上3者はともに担体自体は触媒機能に殆ど寄与していないと考えられる。
高い位置に伝導帯を有するSiO、ZrO、Taは光励起された電子のRhからそれらの伝導帯への遷移を抑える。そのため、担体側では仮に解離吸着によるプロトンが存在してもそのプロトンに光励起電子を結合させることができないため、担体はプロトン還元(水素生成)に関し不活性となったものと推定される。
ところが、酸化チタン担体にRh−Tiを担持させた系では、Rh−Ti触媒中のTi3d非占有状態の軌道成分によるプロトン還元反応の促進効果のみならず、担体が酸素欠損によりTiO2−δ状態(TiO担体のごく表面近くの領域において概ね8%程度の酸素欠損と推測される。)となり、Rh−Ti触媒より遥かに大きな表面積をもつTiO2−δ担体自体も吸着プロトンの還元作用を促進する(主に酸素欠損が原因で、その担体の伝導帯に多数電子キャリア存在するため)こととなり、水素生成速度が他者をより遥かに大きくなったと考えられる。

Claims (27)

  1. 被処理物に由来して、少なくともその表面に吸着された化学種を、光照射によって還元して生成物を得るための触媒であって、
    前記触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなり、
    前記第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、
    前記第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、前記化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有する、触媒。
  2. 前記非占準位バンドBが、前記第2金属原子のd軌道成分、及び、f軌道成分からなる群より選択される少なくとも一方を含む、請求項1に記載の触媒。
  3. 前記第1金属原子、及び、前記第2金属原子は、周期律表第4〜6周期の金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子であり、
    前記非占準位バンドBが、前記第2金属のd軌道成分を含み、
    Nが4〜11の整数である時、
    前記第1金属原子が周期律表の第N族の金属であり、かつ、
    前記第2金属原子が周期律表第3〜第(N−1)族の金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属である、請求項1又は2に記載の触媒。
  4. 前記触媒中における、前記第2金属原子同士の平均距離が0.4nm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
  5. 前記領域は、前記触媒の占有最高準位から、3.3eV高い準位までの間に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
  6. 前記第1金属原子がCu、Ni、及び、Coからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子であり、前記第2金属原子がTiである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
  7. 前記第1金属原子がRhであり、前記第2金属原子が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及び、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
  8. 前記被処理物が有機化合物であり、前記生成物が、二酸化炭素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒。
  9. 前記化学種がプロトンであり、前記生成物が水素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒。
  10. 担体と、前記担体に担持された、請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒とを有する、触媒担持担体。
  11. 前記担体が、前記第2金属原子を含有する請求項10に記載の触媒担持担体。
  12. 前記担体が、半導体であって、前記触媒担持担体の電子構造における占有最高準位Xが、前記担体における、前記半導体由来の非占有最低準位から300meV低いエネルギー位置Yと同じエネルギーに位置するか、又は、前記Yより高いエネルギーに位置する、請求項11に記載の触媒担持担体。
  13. 前記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、前記Mの最高酸化数に対応する数であるとき、MOで表される最高酸化数の金属酸化物を含有する、請求項12に記載の触媒担持担体。
  14. 前記金属酸化物が、MgO、AlO3/2、TiO、TaO5/2、WO、MoO、SrTiO、CuWO、及び、TiCa(POからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の触媒担持担体。
  15. 前記担体がn型半導体である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の触媒担持担体。
  16. 前記n型半導体がリン、ヒ素、及び、アンチモンからなる群より選択される少なくとも1種がドープされたSiである、請求項15に記載の触媒担持担体。
  17. 前記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、前記Mの最高酸化数に対応する数であり、δは0より大きい数であって、前記p未満の数であるとき、MO(p−δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有する、請求項10に記載の触媒担持担体。
  18. 前記金属酸化物が、δを0より大きく2未満の数とした時、TiO(2−δ)で表される化合物を含有する、請求項17に記載の触媒担持担体。
  19. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒を製造する、触媒の製造方法であって、
    第2金属原子を含有する基材に、第1金属原子を含有する組成物を塗布し、
    前記基材上の少なくとも一部に組成物層を有する、組成物層付き基材を得る工程aと、
    前記組成物層付き基材を加熱した後、触媒前駆体を得る工程bと、
    前記触媒前駆体を還元雰囲気中で熱処理し、前記触媒を得る工程cと、を有する触媒の製造方法。
  20. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒と、被処理物とを接触させ、前記触媒に光を照射して、被処理物を分解して、生成物を得る、分解方法であって、
    前記被処理物が、有機化合物を含有する、分解方法。
  21. 前記被処理物が有機化合物であり、前記生成物が、二酸化炭素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である請求項20に記載の分解方法。
  22. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒と、被処理物とを接触させ、前記触媒に光を照射して、水素を得る、水素の製造方法であって、
    前記被処理物が、有機化合物、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、水素の製造方法。
  23. 前記被処理物が更に二酸化炭素を含有する、請求項22に記載の水素の製造方法。
  24. 更に、前記触媒を加熱する、請求項22又は23に記載の水素の製造方法。
  25. 前記有機化合物が、炭化水素である、請求項21〜24のいずれか1項に記載の水素の製造方法。
  26. 前記炭化水素がメタンを含有する、請求項25に記載の水素の製造方法。
  27. 半導体である担体であって、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは0より大きい数であって、前記Mの最高酸化数に対応する数であり、δは0より大きい数であって、前記p未満の数であるとき、MO(p−δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有する、担体。
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