JP2020012789A - 粒度分布定数推定装置、粒度分布定数推定プログラム、及び粒度分布定数推定方法 - Google Patents

粒度分布定数推定装置、粒度分布定数推定プログラム、及び粒度分布定数推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を簡易的かつ直接的に推定可能な粒度分布定数推定方法を提供する。【解決手段】粒度分布定数推定方法は、還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得し、前記弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算し、前記AEエネルギのフラクタル次元を演算し、前記フラクタル次元と前記製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて前記定数を推定し、前記定数を示す粒度分布定数信号を出力する。【選択図】図3

Description

本発明は、粒度分布定数推定装置、粒度分布定数推定プログラム、及び粒度分布定数推定方法に関する。
高炉及び直接還元製鉄法の還元炉等(以下、単に高炉等と称する)を用いた製鉄法において、高炉等に装入される製鉄用原料の品質を管理して、高炉等の操業を安定させることが知られている。製鉄用原料は、焼結鉱、焼成ペレット、非焼成塊成鉱、塊鉱石等を含む。高炉等の操業のために管理される製鉄用原料の品質は、例えば、鉄分等の化学成分、粉率、強度、被還元性、及び耐還元粉性を含み、測定方法はJISにおいて規定されている。例えば、製鉄用原料の強度は落下強度SI(JIS-M8711(2011))及び回転強度TI(JIS-M8712(2009))で規定され、製鉄用原料の被還元性は還元指数RI(Reduction Index、JIS-M8713(2009))で規定される。また、製鉄用原料の耐還元粉性は、製鉄用原料を昇温する昇温工程、製鉄用原料を還元する還元工程、製鉄用原料を冷却する冷却工程、及び製鉄用原料を転動する転動工程を含むRDI試験で測定された還元粉化指数RDI(Reduction Degradation Index、JIS-M8720(2009))で規定される。高炉等の操業を管理する作業者は、JISで規定される測定方法により測定される製鉄用原料の品質項目が管理条件を充足するように、製鉄用原料の製造方法を調整し、高炉等に装入される製鉄用原料の配合割合を調整することで、高炉等の操業を安定させることができる。
JIS-M8720(2009)に規定されるRDI試験における作業工程を以下に示す。
(1)約5L/minの流量で窒素を流して還元反応管内の空気を置換しながら、製鉄用原料を収納する還元反応管を電熱炉で加熱して製鉄用原料を550℃±10℃に達するまで加熱する(昇温工程)。
(2)15L/minの流量で窒素を流し、温度平衡のため少なくとも15分間550℃の等温を保持する(保持工程)。
(3)窒素を還元ガスに置換し、還元ガスを還元反応管に15L/min±0.5L/minの流量で30分間流し、製鉄用原料を還元する(還元工程)。
(4)電気炉の加熱を止め、且つ約5L/min±0.5Lの流量で窒素を流して製鉄用原料を100℃以下の温度になるまで冷却する(冷却工程)。
(5)還元反応管から製鉄用原料を取り出し、ドラムに装入してドラムを30回転/分±1回転/分の回転速度で合計900回転させて転動する(転動工程)。
(6)ドラムからすべての製鉄用原料を取り出し、公称目開き2.8mmのふるいを用いて製鉄用原料をふるう(ふるい分け工程)。
(7)還元粉化指数RIDを以下の式によって算出する(算出工程)。
Figure 2020012789
ここで、m0は製鉄用原料の還元後、転動前の質量(g)であり、m1は2.8mmのふるいに残った製鉄用原料の質量(g)である。JISに規定されるRDI試験では、温度が550℃である還元反応管に還元ガスを流すことで製鉄用原料を還元し、還元された製鉄用原料を回転するドラム内で転動させることで粉化の程度を測定することで、高炉等の模擬的条件下での還元粉化性を測定する。
また、亀裂及び亀裂破壊により発生する弾性波のアコースティックエミッション(Acoustic Emission、AE)エネルギを測定し、測定したAEエネルギの波形を解析することで、亀裂等を評価するAE法が知られている。
さらに、AE法を使用して、還元粉化指数RDIを推定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される技術では、還元粉化指数RDIは、RDI試験におけるAEエネルギの総和と、還元粉化指数還元粉化指数及び回転強度SIの差である還元粉化指数変化量ΔRDIとの間の相関関係とに基づいて推定される。すなわち、特許文献1に記載される技術では、還元粉化指数RDIは、RDI試験におけるAEエネルギの総和が還元粉化指数変化量ΔRDIに相関するとの知見に基づいて推定される。特許文献1に記載される技術は、RDI測定中に発生するAEエネルギの総和から、簡易的かつ直接的に還元粉化指数RDIを推定することができる。
特開2016−79500号公報
装入される製鉄用原料の初期粒度、製鉄用原料の還元で発生する粉率(特許文献1に記載される技術において推定される還元粉化指数RDIと関連付けることができる)、及び製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布が分かれば、製鉄用原料の還元粉化後の炉内での粒度分布を推定できる。この粒度分布から、一田の式、及びErgun式を使用して高炉等の通気性を示す圧力損失を推定することができる。
しかしながら、高炉等において、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を簡易的かつ直接的に推定する技術は知られていない。
そこで、本発明は、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を簡易的かつ直接的に推定可能な粒度分布定数推定方法を提供することを目的とする。
このような課題を解決する本発明は、以下に記載する粒度分布定数推定装置、粒度分布定数推定プログラム、及び粒度分布定数推定方法を要旨とするものである。
(1)還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得し、
弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算し、
AEエネルギのフラクタル次元を演算し、
フラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて定数を推定し、
定数を示す粒度分布定数信号を出力する、
ことを含むことを特徴とする粒度分布定数推定方法。
(2)定数は、粉の粒度分布と、粉の最大粒度に対する粉のそれぞれの粒度の比率との関係を示す式において、比率を底としたときの指数である(1)に記載の粒度分布定数推定方法。
(3)定数は、フラクタル次元に反比例する(2)に記載の粒度分布定数推定方法。
(4)還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得し、
弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算し、
AEエネルギのフラクタル次元を演算し、
フラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて定数を推定し、
定数を示す粒度分布定数信号を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする粒度分布定数推定プログラム。
(5)還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得する弾性波取得部と、
弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算するAEエネルギ演算部と、
AEエネルギのフラクタル次元を演算するフラクタル次元演算部と、
フラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて定数を推定する粒度分布定数推定部と、
定数を示す粒度分布定数信号を出力する粒度分布定数出力部と、
を有することを特徴とする粒度分布定数推定装置。
一実施形態では、高炉等の内部での製鉄用原料の還元粉化性を精度良く管理することができる。
実施形態に係る粒度分布定数推定システムの概略図である。 図1に示す演算装置を示す図である。 図1に示す粒度分布定数推定システムが高炉等に装入される製鉄用原料の還元粉化性を管理する粒度分布定数推定処理のフローチャートである。 AEエネルギのフラクタル次元の一例を示す図である。 式(3)におけるα及びβを決定する実験の結果の一例を示す図である。
以下図面を参照して、粒度分布定数推定装置、粒度分布定数推定プログラム、及び粒度分布定数推定方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
(実施形態に係る粒度分布定数推定方法の概要)
本願発明の発明者らは、還元炉における還元過程に発生するAEエネルギのフラクタル次元と、還元粉化後の粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係があることを見出した。還元炉における還元過程に発生するAEエネルギのフラクタル次元は、AEエネルギの振幅と、それぞれの振幅を有するAEエネルギに対応する弾性波の個数とが両対数で示したときの傾きで示される。AEエネルギのフラクタル次元の絶対値が大きいとき、製鉄用原料に発生する亀裂により生じるAEエネルギの振幅の広がりが狭いことを示すので、還元炉における還元過程において製鉄用原料に発生する亀裂は均一であることを示す。一方、AEエネルギのフラクタル次元の絶対値が小さいとき、製鉄用原料に発生する亀裂により生じるAEエネルギの振幅の広がりが広いことを示すので、還元炉における還元過程において製鉄用原料に発生する亀裂は不均一であることを示す。このように、還元炉における還元過程に発生するAEエネルギのフラクタル次元は、還元炉における還元過程において製鉄用原料の亀裂による粉化の態様に応じた値となる。
実施形態に係る粒度分布定数推定方法は、この知見に基づいて、AEエネルギのフラクタル次元から、AEエネルギのフラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて、粒度分布式の定数を推定するものである。実施形態に係る粒度分布定数推定方法は、AEエネルギのフラクタル次元から粒度分布式の定数を推定することで、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を簡易的かつ直接的に推定することができる。
(実施形態に係る粒度分布定数推定システム)
図1は、実施形態に係る粒度分布定数推定システムの概略図である。
粒度分布定数推定システム1は、還元炉部10と、ガス供給部20と、排ガス処理部30と、AE検出部40と、演算装置50を有する。粒度分布定数推定システム1は、RDI試験の還元工程におけるAEエネルギのフラクタル次元から製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数を推定する。
還元炉部10は、製鉄用原料Sを収納する反応管11と、反応管11を内包して加熱する加熱炉12とを有する。反応管11は、反応管内管13と、反応管外管14と、一対のガス整流用穴あき目皿15と、ガス流入口16と、ガス排出口17と、試料温度測定用熱電対18と、反応管蓋19とを有する。反応管外管14は反応管11の外縁を形成し、反応管内管13は反応管11の内縁を形成する。一対のガス整流用穴あき目皿15は反応管内管13の上下方向に互いに離隔される。製鉄用原料Sは、一対のガス整流用穴あき目皿15の間に装入される。ガス流入口16はガス供給部20から供給されるガスを反応管11の内部に導入する導入口であり、ガス排出口17は反応管11の内部からガスを排出する排出口である。試料温度測定用熱電対18は、反応管11の内部の温度に応じた電流が流れる熱電対であり、試料温度測定用熱電対18を流れる電流は、不図示の制御装置に供給される。試料温度測定用熱電対18から電流が供給される制御装置は、反応管内管13の内部の温度が所望の温度になるように加熱炉12を制御する。反応管蓋19は、反応管11の開口部に着脱可能に配置され、反応管11を密封する蓋である。
加熱炉12は、筐体120と、炉温制御用熱電対121とを有する。筐体120は、反応管11を内包可能な大きさを有する。炉温制御用熱電対121のそれぞれは、試料温度測定用熱電対18から電流が供給される制御装置によって制御される電流が、不図示の電源から通電されることで発熱する。炉温制御用熱電対121のそれぞれが発熱することで、製鉄用原料Sを収納する反応管11が加熱される。
ガス供給部20は、複数のガスシリンダ21と、複数のガスシリンダ21のそれぞれに接続されたガス流量計22と、ガス混合容器23とを有し、複数のガスシリンダ21のそれぞれから供給されるガスをガス混合容器23で混合して還元ガスを製造する。複数のガスシリンダ21のそれぞれは、N2ガス、COガス、CO2ガス、H2ガスを収容する。ガス流量計22のそれぞれは、複数のガスシリンダ21のそれぞれから供給されるガスの流量を測定する。ガス混合容器23は、例えば、昇温工程、保持工程及び冷却工程では、N2ガスが供給され、還元工程ではCOガスの体積分率が30%及びN2ガスの体積分率が70%である還元ガスが供給される。
排ガス処理部30は、排ガス管31と、排ガス処理設備32とを有する。排ガス管31は、一端がガス排出口17に接続され、他端が排ガス処理設備32に接続され、反応管11の内部から還元ガス等を排ガス処理装置32に排出する。排ガス処理設備32は、毒性のあるCOガスや爆発性のH2ガスなどを含有する排出ガスの種類及び量に応じた反応処理が実行可能な設備である。
AE検出部40は、AE導波部材41と、AEセンサ42とを有する。AE導波部材41は、棒状のAE導波棒であり、一対のガス整流用穴あき目皿15の間に装入された試料S内に延出しており、試料Sから発生する弾性波をAEセンサ42に伝搬させる。AEセンサ42は、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電素子を含み、AE導波部材41を伝搬する弾性波を検出し、検出した弾性波に応じた信号を出力する。
図2は、演算装置50を示す図である。
演算装置50は、通信部51と、記憶部52と、入力部53と、出力部54と、処理部60とを有する。通信部51、記憶部52、入力部53、出力部54及び処理部60は、バス200を介して互いに接続される。演算装置50は、RDI試験の還元工程におけるAEエネルギのフラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数との対応関係に基づいて定数を推定する。一例では、演算装置50は、高炉等への装入物の搬送を監視制御する監視制御装置である。また、演算装置50は、単一の装置として示されるが、複数の装置として構成されてもよい。例えば、演算装置50は、AEセンサ42が検出した弾性波の周波数及びAEエネルギを測定するAE測定装置と、AE測定装置が測定した弾性波の周波数及びAEエネルギから対象物の粒度を想定する解析用パーソナルコンピュータとで構成されてもよい。
通信部51は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部51は、LAN43を介してAEセンサ42及び不図示の上位制御装置と通信を行う。
記憶部52は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部52は、処理部60での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部52は、アプリケーションプログラムとして、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数を推定する粒度分布定数推定処理を処理部60に実行させるための粒度分布定数推定プログラム等を記憶する。粒度分布定数推定プログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部52にインストールされてもよい。また、記憶部52は、粒度分布定数推定処理で使用される種々のデータを記憶する。
入力部53は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。作業者は、入力部53を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部53は、作業者により操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、作業者の指示として、処理部60に供給される。
出力部54は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等である。出力部54は、処理部60から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部54は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
処理部60は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部60は、演算装置50の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部60は、記憶部52に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部60は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
処理部60は、弾性波取得部61と、AEエネルギ演算部62と、フラクタル次元演算部63と、粒度分布定数推定部64と、粒度分布定数出力部65とを有する。これらの各部は、処理部60が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして演算装置50に実装されてもよい。
(実施形態に係る粒度分布定数推定システムによる粒度分布定数推定処理)
図3は、粒度分布定数推定システム1により実行される粒度分布定数推定処理のフローチャートである。図3に示す粒度分布定数推定処理は、予め記憶部52に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部60により演算装置50の各要素と協働して実行される。
まず、弾性波取得部61は、還元工程の間、AEセンサ42が検出した複数の弾性波のそれぞれの波形を示す弾性波信号を取得する(S101)。弾性波取得部61は、COガスを収容するガスシリンダ21の排出弁が開動作することを検知して弾性波信号の取得を開始してもよく、不図示の作業者による入力部53を介する還元工程開始指示の入力に応じて弾性波信号の取得を開始してもよい。また、弾性波取得部61は、COガスを収容するガスシリンダ21の排出弁が閉動作することを検知して弾性波信号の取得を終了してもよく、不図示の作業者による入力部53を介する還元工程終了指示の入力に応じて弾性波信号の取得を終了してもよい。
次いで、AEエネルギ演算部62は、還元工程の間に弾性波取得部61によって取得された弾性波信号に対応する複数の弾性波のそれぞれのAEエネルギを演算する(S102)。AEエネルギ演算部62は、複数の弾性波のそれぞれの波形の包絡線で囲まれた部分の面積を、複数の弾性波のそれぞれのAEエネルギとして演算する。
次いで、フラクタル次元演算部63は、S102の処理で演算されたAEエネルギのフラクタル次元を演算する(S103)。AEエネルギのフラクタル次元は、式(1)で示されるように、AEエネルギの振幅Aと、それぞれの振幅を有するAEエネルギに対応する弾性波の個数f(A)とが両対数で示したときの傾きFで示される。
Figure 2020012789
式(1)において、cは定数である。
図4は、AEエネルギのフラクタル次元の一例を示す図である。図4において、横軸はAEエネルギの振幅を対数で示し、縦軸はそれぞれの振幅を有するAEエネルギに対応する弾性波の個数を対数で示す。
近似直線401で示される1次式は、「y = -1.57 x + 7.60」で示される。近似直線401において、xはAEエネルギの振幅の対数log10Aに対応し、yはそれぞれの振幅を有するAEエネルギに対応する弾性波の個数の対数log10f(A)に対応する。図4において、フラクタル次元Fは、1.57である。
次いで、粒度分布定数推定部64は、AEエネルギのフラクタル次元と製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数との対応関係に基づいて、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数を推定する(S104)。
製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式は、一例では、式(2)で示されるGaudin-Schuhmann分布を示す式である。
Figure 2020012789
式(2)において、dmaxは製鉄用原料の還元で発生する粉の最大粒度(直径)を示し、dpは製鉄用原料の還元で発生する粉のそれぞれの粒度を示す。mは粒度分布の広がりを表す指数(定数)である。U(dp)は、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示し、粒径ゼロからdpまでの累積比率で表される。式(2)における指数mは、S104で推定される製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数の一例である。すなわち、定数は、粉の粒度分布U(dp)と、粉の最大粒度に対する粉のそれぞれの粒度の比率(dp/dmax)との関係を示す式において、比率(dp/dmax)を底としたときの指数mとしてもよい。
粒度分布定数推定部64は、AEエネルギのフラクタル次元FとGaudin-Schuhmann分布を示す式の指数mとの対応関係情報に基づいて、Gaudin-Schuhmann分布を示す式の指数mを推定する。対応関係情報は、式(3)で示す1次式として記憶部52に記憶されてもよく、AEエネルギのフラクタル次元Fと指数mとの対応関係を示すテーブルとして記憶部52に記憶されてもよい。
Figure 2020012789
式(3)において、α及びβは、複数の製鉄用原料を使用した実験により予め決定される定数である。
図5は式(3)におけるα及びβを決定する実験の結果の一例を示す図である。図5において、横軸は還元炉における還元過程に発生するAEエネルギのフラクタル次元Fを示し、縦軸はGaudin-Schuhmann分布を示す式の指数mを示す。
図5は、表1に示す試料1〜9を使用して作成された。試料1〜9のそれぞれは焼結鉱であり、表1において、項目「成分」は試料1〜9に含まれる化合物の含有量を示し、項目「RDI」はRDI試験により算出される還元粉化指数を示す。また、表1において、項目「GS分布指数」はGaudin-Schuhmann分布を示す式(2)の指数mを示し、項目「AEのフラクタル次元」はRDI試験において発生する弾性波に対応するAEエネルギのフラクタル次元の絶対値を示す。なお、RDI試験では、還元工程のみならず冷却工程においても製鉄用原料に亀裂が発生するので、項目「AEのフラクタル次元」はRDI試験の還元工程及び冷却工程で発生した弾性波に対応するAEエネルギのフラクタル次元の絶対値を示す。
Figure 2020012789
図5に示す例では、αは0.487であり、βは1.365である。
そして、粒度分布定数出力部65は、S104の処理で演算された製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数を示す粒度分布定数信号を出力する(S105)。
(実施形態に係る粒度分布定数推定システムの作用効果)
粒度分布定数推定システム1は、AEエネルギのフラクタル次元から粒度分布を示す粒度分布式の定数を推定することで、製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を簡易的かつ直接的に推定することができる。
(実施形態に係る粒度分布定数推定システムの変形例)
粒度分布定数推定システム1では、粉の粒度分布を示す式としてGaudin-Schuhmann分布を示す式が使用されるが、実施形態に係る粒度分布定数推定システムでは、粉の粒度分布を示す他の式を使用してもよい。式(4)は、実施形態に係る粒度分布定数推定システムにおいて粉の粒度分布を示す式と使用可能なRosin-Rammler分布を示す式である。
Figure 2020012789
式(4)において、deはRが0.368になる粉の粒径を示し、dは製鉄用原料の還元で発生する粉のそれぞれの粒径を示し、nは粒度分布の広がりを示すパラメータであり、Rはふるい上分布とも称され、粒径がd以上の粉の質量分率を示す。
実施形態に係る粒度分布定数推定システムでは、式(4)に示すパラメータnを製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す式の定数としてもよい。
1 粒度分布定数推定システム
10 還元炉部
20 ガス供給部
30 排ガス処理部
40 AE検出部
50 演算装置
61 弾性波取得部
62 AEエネルギ演算部
63 フラクタル次元演算部
64 粒度分布定数推定部
65 粒度分布定数出力部

Claims (5)

  1. 還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得し、
    前記弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算し、
    前記AEエネルギのフラクタル次元を演算し、
    前記フラクタル次元と前記製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて前記定数を推定し、
    前記定数を示す粒度分布定数信号を出力する、
    ことを含むことを特徴とする粒度分布定数推定方法。
  2. 前記定数は、前記粉の粒度分布と、前記粉の最大粒度に対する前記粉のそれぞれの粒度の比率との関係を示す式において、前記比率を底としたときの指数である、請求項1に記載の粒度分布定数推定方法。
  3. 前記定数は、前記フラクタル次元に反比例する、請求項2に記載の粒度分布定数推定方法。
  4. 還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得し、
    前記弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算し、
    前記AEエネルギのフラクタル次元を演算し、
    前記フラクタル次元と前記製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて前記定数を推定し、
    前記定数を示す粒度分布定数信号を出力する、
    処理をコンピュータに実行させることを特徴とする粒度分布定数推定プログラム。
  5. 還元炉における還元過程において、製鉄用原料から伝搬する弾性波を示す弾性波信号を取得する弾性波取得部と、
    前記弾性波信号のそれぞれに対応するAEエネルギを演算するAEエネルギ演算部と、
    前記AEエネルギのフラクタル次元を演算するフラクタル次元演算部と、
    前記フラクタル次元と前記製鉄用原料の還元で発生する粉の粒度分布を示す粒度分布式の定数との対応関係に基づいて前記定数を推定する粒度分布定数推定部と、
    前記定数を示す粒度分布定数信号を出力する粒度分布定数出力部と、
    を有することを特徴とする粒度分布定数推定装置。
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