JP2020012063A - 赤熱コークスの湿式消火方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、乾式消火は設備が複雑であるため、赤熱コークスに散水する湿式消火も依然として行われている。
湿式消火されたコークスは、ワーフと呼ばれる場所に払い出され、乾燥空冷処理された後、ベルトコンベアに切り出し、高炉へと搬送される。
一次散水された後のコークスの温度を正確に把握できれば、一次散水や二次散水を適正化でき、赤熱コークスを確実に消火した上で水分低減を実現できる。例えば、一次散水された後のコークスにおいて、どの部分に温度が高いコークスが存在するかが分かれば、その部分のみに二次散水を行えばよい。
また、一次散水の量を少なくしたとしても、二次散水により確実に消火冷却できるのであれば、後段設備が焼損する懸念はなくなる。そのため、散水量が多い一次散水の量を減らすことが可能となり、コークス水分の低減に繋がる。
特許文献1に記載の技術は、赤熱コークスを散水冷却した後、コークス搭載ボックスに搭載される消火後コークスの温度分布を、ワーフに払い出す直前に測定するものである。
特許文献1に記載の技術は、消火後のコークスを払い出した後、消火車に新たに赤熱コークスを搭載し、消火塔内部において、散水消火する際、前記温度分布および層高分布を基に散水条件を調整するフィードフォワード制御を特徴とする。
特許文献2に記載の技術は、ワーフに払い出されたコークス中に残留する未消火の赤熱コークスを自動的に消火する設備に関する。温度測定装置およびポンプを搭載した台車が、ワーフに沿って走行し、温度測定装置はワーフの上下方向を走査してコークス堆積面各部の温度を測定する。この測定された上下方向各位置の温度は演算制御装置に送られる。
演算制御装置は、測定温度を予め未消火温度と設定して、ある温度と比較演算し、赤熱コークス残留の有無を判定する。赤熱コークスの存在があれば、演算制御装置は台車を停止させ、ポンプを起動させて散水し、更に散水管の角度を、調節装置を駆動させて赤熱コークスの存在位置に散水するようにしている。
また、特許文献2に記載の技術による温度計測は、コークス堆積層表面のみである。堆積層底部に未消火コークスや高温コークスが存在した場合は検知が難しい。この方法では、温度が高いコークスが表層にあるか底部にあるかの判断も難しい。
具体的には、本発明は、以下を要旨とする。
(3)二次散水の総量(トン)を、ワーフに払い出されるコークスの総量(トン)で除した値が、0.02以下であり、二次散水がワーフへの消火コークスの払い出しが終了してから、3分以内に終了することを特徴とする(2)の赤熱コークスの湿式消火方法。
(4)二次散水が、コークス表面温度が400℃を超えるコークス、および前記ワーフの後段の搬送設備の耐熱温度より、”57.9×ln(t)−20.3”℃(tはワーフ内での乾燥空冷処理時間(分))を加えた温度を超える温度のコークスに向けて行われることを特徴とする(2)または(3)に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
図1は、コークス搭載ボックス5よりワーフ8に払い出されるコークス3の状態を、コークス搭載ボックス5の進行方向から見た図である。コークス搭載ボックス5の傾斜角度αである底板19の下端部にある払い出しゲート16の開度を調整することにより、コークス3が少量ずつ、ワーフ8上を連続的に滑り落ちる。ワーフ8に払い出されたコークス3は、払い出しゲート21を閉止することによりワーフ8内に静置されて、乾燥空冷される。乾燥空冷後のコークス3は、払い出しゲート21を開けてベルトコンベア10に払い出す。
ワーフ8上を滑り落ちるコークス3の温度を、動画形式での計測が可能な赤外線サーモグラフィ22を用いて連続計測すれば、ワーフ8で乾燥空冷されているほぼ全てのコークス3の温度を把握できる。
また、どのタイミングで、どこの場所から赤熱コークスや高温コークスが払い出されているかも確認できるので、コークス搭載ボックス5の内部おいて、散水が不足している箇所や過剰となっている箇所の特定も可能となる。
一次散水する消火設備が散水配管の向きや散水分布を制御できる装置であれば、温度計測結果を基にそれらを最適化することもできる。これにより、一次散水後のコークス温度が均一化され、目標とする温度範囲への制御が容易となる。
ワーフ8に払い出されたコークス3に、未消火コークスやベルトコンベア耐熱温度以上の高温コークスが含まれると、後段のベルトコンベア10での焼損トラブルが懸念される。前記特許文献1に記載の温度計測は、コークスの払い出しが完了した後にコークス堆積層表面のみを行うため、堆積層底部の温度状態を正確に把握することが難しい。
堆積層の下部に高温コークスが存在した場合、検知できないこともある。ワーフ8を流れ落ちるコークス3を、赤外線サーモグラフィ22によって連続計測すれば、未消火コークスの存在位置を正確に把握でき、そこに二次散水すれば設備焼損を抑制できる。また、二次散水は、コークス3の払い出し中から可能である。但し、散水を早いタイミングで行う場合でも、高温コークスのみに二次散水すべきで、温度が低いコークスへの散水は水分を増加させる原因となる。すなわち、温度が低いコークスと高いコークスを見極めることが重要である。そのためにも、ワーフ8を流れ落ちるコークス3を、赤外線サーモグラフィ22によって連続計測することは有効である。
一方、二次散水は高温コークスのみに限定することが好ましいが、実際上は困難である。本発明者らは、温度が低いコークスであっても、そのコークスの温度によって、散水の影響が異なるメカニズムがある事を知見した。具体的には、2次散水が終了した直後のコークス堆積層表層にあるコークスの温度が60℃以上、好ましくは80℃以上であれば、散水された水の多くは蒸発してコークス水分はあまり増加しないが、コークスの温度が60℃より低いと、水が十分に蒸発せず、コークス水分は増加することである。
そのため、散水した水の多くは未消火コークスや高温コークスの周辺に存在する温度が低い消火コークスに取り込まれ、コークス水分を増加させる原因となる。また、二次散水後のワーフでの乾燥空冷時間が不十分となるため、コークス水分を増加させる原因となる。
この場合、二次散水した水が十分に蒸発せず、コークス水分は増加する。また、ワーフ8に払い出された直後のコークス3は、高い温度であるため、二次散水された水の蒸発が進行しやすい。二次散水後の蒸発を進める観点から、散水された場所における散水終了直後のコークス堆積層表層コークス温度は、二次散水すべき温度ではない範囲であれば高い方が好ましいが、少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上であることが有効である。
前述した動画形式での計測が可能な赤外線サーモグラフィ22を用いた方法により、赤熱コークスの確実な消火と消火後コークスの水分低減を実現できる。但し、より確実な防災を実現する観点から、ワーフ8の後段のベルトコンベア10上でも、コークス温度を監視して、ベルトコンベア耐熱温度よりも高い温度のコークス3を検知した場合は、そのコークス3に散水(三次散水)できるようにすべきである。
三次散水もベルトコンベア10の焼損抑制および三次散水後のベルトコンベア10上での乾燥を長くする観点から早い時期に行うことが好ましい。
三次散水を、コークス3が高い温度を維持しているうちに行う観点から、ワーフ8での乾燥空冷時間は20分以下とすることが好ましい。また、乾燥空冷時間を短縮することは設置するワーフ8の数を減らすことができ、設備コストやメンテナンスコストの削減が可能となる観点からも有効である。
また、赤外線サーモグラフィ22での連続計測により、残留する未消火コークスや高温コークスが存在する場所が容易に特定でき、二次散水を効率的に行うことができる。二次散水を行う時間を短縮することも可能となる。
これにより、二次散水後のワーフ8での乾燥空冷時間を長くとることができる。また、未消火コークスや高温コークスが存在しない箇所への散水は、ワーフ8に払い出されたコークス3の温度を下げ、その後の水分蒸発を進行しにくくする原因でもある。未消火コークスや高温コークスが存在する場所を正確に特定し、その場所だけに二次散水を行うことは、コークス水分の低減に繋がる。
[4.1]炭化室1から高炉へ搬送するまでの設備構成
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図2は、コークス炉を構成する複数の炭化室1の一室から赤熱したコークス3を押し出し、高炉へ搬送するまでの設備構成を示す。
炭化室1から押し出されたコークス3は、消火貨車4に牽引されるコークス搭載ボックス5に受骸される。赤熱コークスを搭載したコークス搭載ボックス5は、軌道6上を走行して、湿式消火設備7へと移動し、散水(一次散水)により湿式消火される。 湿式消火設備7の詳細については後述する。
その際、図1に示されるように、ワーフ8上を連続的に滑り落ちるコークス3の温度を、赤外線サーモグラフィ22により連続計測する。図1は、コークス搭載ボックス5より、ワーフ8に払い出されるコークス3の状態を、コークス搭載ボックス5の進行方向から見た図である。コークス搭載ボックス5より、コークス3が少量ずつ、ワーフ8上を連続的に滑り落ちる。この間の温度を、動画形式での測温が可能な赤外線サーモグラフィ22により連続計測する。
この処理により、コークス3に含まれる水分が蒸発されるとともに、温度が高いコークス3は冷却される。
温度が高いコークス3または一次散水による消火が不十分な未消火コークスが残留する場合は、そこに向けて二次散水が行われる。
ベルトコンベア10にて搬送される間も、コークス3の乾燥は進行する。但し、この時点では、大部分のコークス3は、水分の蒸発が著しく進行しないレベルまで温度低下しているので、ベルトコンベア10で搬送される間に減少するコークス水分は僅かである。
高炉に供給する時点でのコークス水分を、確実に3質量%以下とするためには、三次散水装置24を通過した時点で、3質量%以下とすべきである。
図2に示すように、赤熱コークスの消火が完了した後、湿式消火設備7から消火貨車4を、ワーフ8に移動させ、コークス搭載ボックス5の払い出しゲートを開いて、湿式消火したコークス3をワーフ8−1、ワーフ8−2、およびワーフ8−3のいずれかに払い出しする。
図1は、コークス搭載ボックス5よりワーフ8に払い出されるコークス3の状態を、コークス搭載ボックス5の進行方向から見た図である。コークス搭載ボックス5より、コークス3が少量ずつ、ワーフ8上を、連続的に滑り落ちる。この間の温度を赤外線サーモグラフィ22により連続計測する。広い範囲を計測できる赤外線サーモグラフィ22であれば、約20mあるワーフ8の幅方向全てを、一度に計測できる。
コークス搭載ボックス5において、温度が高いコークス3が存在した場所の推定も可能である。また、赤外線サーモグラフィ22の解析ツールを用いて、ワーフ8の幅方向 に1本のラインを引き、このラインを通過するコークス3の温度を約1秒おきに収集すれば、ワーフ8を流れる全てのコークス3の温度を定量的に把握することもできる。約1秒おきに収集したデータを基に、ワーフ8の幅方向の温度分布の変化を調査することも可能である。
コークス炉の操業が大きく変化する等して、コークス搭載ボックス5に受骸される赤熱コークスの温度が大幅に変化しない限り、前のチャージで一次散水された後の温度測定結果を基に、それ以降に行われる一次散水での散水量を決めることも有効と考えられる。
一次散水設備において、場所ごとに散水量を調整ができない場合は、ワーフ8への払い出し時に連続計測された温度から、ワーフ8内にある未消火コークスや高温コークスが残留する箇所を特定し、その部分だけに二次散水すればよい。
散水する箇所が、所定時間の連続計測から検知された温度の高い箇所に限定されるので、二次散水によるコークス水分の増加は最小限とすることができる。
ΔT=57.9×ln(t)−20.3・・・(1)
時間が経ってからの二次散水は、空冷により温度が低下した後のコークス3への散水となるため、水の蒸発が進みにくく、コークス水分は高くなりやすい。
しかし、空冷処理により冷却されたコークス3への散水は水分増加の原因となるので、二次散水は早急に終了させるべきである。場合によっては、ワーフ8に払い出される赤熱コークスが多く、3分で十分な消火冷却ができない場合もある。その場合は、一次散水量を増やして対応すべきである。
二次散水の量が、この値よりも大きくなると、高炉に投入されるコークス3の水分を3質量%以下に制御することが困難となる。例えば、ワーフ8に堆積するコークス3の下層に、高温コークスや未消火コークスが残留する場合、二次散水を行っても消火冷却が効率的に行うことができないことがある。
高炉に投入されるコークス3の水分を3質量%以下とするためには、二次散水量をワーフ8に払い出されるコークス3の総重量(トン)で除した値が、0.02以下となるように上限を設定することが有効である。
最大0.02まで二次散水を行っても、消火冷却が不十分な場合は、後段の三次散水での消火冷却が有効である。下層部にあるコークス3が、二次散水により、完全に消火冷却されなかった場合でも、その上層に二次散水が行われていれば、ベルトコンベア10に切り出された直後のコークス3がベルトコンベア10の焼損原因となることはない。この場合の三次散水量は、僅かであるため、コークス3の水分を大幅に上昇させることは考えにくい。
場合によっては、ワーフ8に払い出される赤熱コークスが多く、3分で十分な消火冷却ができない場合もある。また、最大0.02まで二次散水を行っても十分な消火冷却ができない場合もある。その場合は、一次散水量を増やして対応すべきである。すなわち、二次散水で効率的に消火できない場合は、一次散水量を増加して対応する。
ワーフ8にて乾燥空冷処理されたコークス3は、ベルトコンベア10に切り出され、高炉へと搬送される。より確実に防災を行う観点から、ワーフ8の後段のベルトコンベア10上でも、コークス温度を監視して、所定温度よりも高いコークス3を検知した場合は、そのコークス3に散水(三次散水)できるようにすべきである。
二次散水での消火冷却が不十分であっても、ある程度の消火冷却が行われ、三次散水を早い時期に行えば、ベルトコンベア10を焼損する可能性は低くなる。三次散水を早い時期に実施することは、ベルトコンベア10上での乾燥を長く確保する観点からも有効である。
非接触式温度計23としては、赤外線サーモグラフィ等がある。ベルトコンベア10の耐熱温度よりも高い温度を有するコークス3を検知した場合、三次散水装置24から、そのコークス3に向けて散水を行う。
但し、高炉でのコークス水分を下げる観点から、三次散水は、できる限り行わないことが好ましい。そのためには、ベルトコンベア10の耐熱温度は150℃以上とする。
[4.4.1]従来の散水方式
図4は、一般的に使用されている湿式消火設備7に消火貨車4が引き込まれた状態を、消火貨車4の進行方向(前後方向)から見たものである。消火貨車4に備えられたコークス搭載ボックス5の底板19は、消火貨車4の幅方向に所定の角度αで傾斜し、その上に赤熱コークス3が積載されている。
赤熱コークス3を消火するための散水配管はコークス搭載ボックス5の上方に設置されている。
赤熱コークス3を搭載したコークス搭載ボックス5が湿式消火設備7に引き込まれると、バルブ14が開き、ヘッドタンク11内の消火水12が、散水配管13を経由して、散水ノズル15から、赤熱コークス3の上面に散水される。
図5は、消火貨車4が湿式消火設備7Aに引き込まれた状態を、消火貨車の進行方向(前後方向)から見たものである。散水配管13は、コークス搭載ボックス5の幅方向に分岐され、各々の場所への散水量を、バルブ14−1、バルブ14−2、およびバルブ14−3の開閉により制御する。例えば、前述した赤外線サーモグラフィ22での連続計測により、コークス搭載ボックス5の底板19の上部に赤熱コークスが多く存在することが分かった場合(赤熱コークス3または高温コークス3が、払い出しの末期に払い出された場合)、バルブ14−2とバルブ14−3とを早く閉めて散水を停止し、バルブ14−1のみを「開」のままとすることも可能である。これにより、底板19の下端または中間位置にあるコークス3への過剰な散水を抑制するとともに、上部にあるコークス3を火残りがない状態まで確実に消火できる。
各々の場所への散水量を、バルブ14−4、バルブ14−5、およびバルブ14−6の開閉により制御できる。「開」の状態で長時間おけば、その場所への散水量は多くなる。
例えば、赤外線サーモグラフィ22での計測により、消火貨車4の両端からワーフ8に払い出されるコークス3の温度が、中央と比べ低い場合は、バルブ14−4およびバルブ14−6を開いている時間を、バルブ14−5よりも短くすることにより、両端部への過剰な一次散水を抑制できる。
赤熱コークス3への散水は、図7および図8に示すように、コークス搭載ボックス5の斜め上方に配置された複数のパイプ型の散水配管17−1、散水配管17−2、および散水配管17−3から行ってもよい。なお、図7は、消火貨車4が湿式消火設備7Bに引き込まれた状態を、消火貨車4の進行方向(前後方向)から見たものである。図8は、消火貨車4の進行方向(前後方向)に対して垂直位置から見たものである。散水配管17−1、散水配管17−2、および散水配管17−3には、図8に示すように、コークス搭載ボックス5の進行方向(前後方向)に対して、複数の散水孔18が設けられ、斜め下方の赤熱コークス3に向けて消火水12が散水される。斜め上からの散水は、図4から図6に示す直上からの散水と比べ、湿式消火設備7Bの設置スペースを小さくできるメリットがある。
また、斜め上からの散水においても、直上からの散水と同様に、コークス搭載ボックス5内の赤熱コークス3の層高レベルを考慮して、散水量を調整する必要がある。
中央部、端部1および端部2に設けられる散水孔18の数を増減することにより、中央部、端部1および端部2から散水される水の量を調整することができる。例えば、端部1からの散水量が過剰な場合は、端部1の散水孔18にシリコンゴムを詰め、その上から金属製バンドを巻き、ボルトにて固定する。これにより、散水孔18を閉塞し、端部1からの散水量を減らすことができる。
また、中央部、端部1、および端部2の散水配管を、ルーズフランジ20を介して接続し、各々の部分で散水角度を調整してもよい。ルーズフランジ20を使用することにより、散水配管の設置角度を容易に行うことができる。また、設置角度の調整を厳密に行うこともできる。ワーフ8に払い出されるコークス3の温度を連続で計測した結果を基に、温度が高いコークス3が、コークス搭載ボックス5内のどの部分に存在しているかが推測できれば、それを基に、各々の部分において、散水角度を調整すればよい。
[1]コークス温度の計測方法
図2に示す炭化室1から押し出された赤熱コークス3を、コークス搭載ボックス5に受骸し、図7および図8に示す斜め上から散水する湿式消火設備7Bにて、一次散水を行った。コークス3の重量は25トン、一次散水量は72トンとした。一次散水が完了した後、湿式消火設備7Bから消火貨車4をワーフ8の上に移動させ、コークス搭載ボックス5の払い出しゲートを開いて、コークス3をワーフ8に払い出しした。ワーフ8の後段のベルトコンベア10の耐熱温度は180℃で、ワーフ8での乾燥空冷処理時間は10分とした。この場合、式(1)より、ワーフ8に払い出された直後の温度が293℃を超えるコークス3への二次散水が必要となる。
計測例1では、この間の温度を赤外線サーモグラフィ22で連続計測した。赤外線サーモグラフィ22としては、アピステ製のFSV−2000を用いた。赤外線サーモグラフィ22のカメラレンズの角度は50度とし、ワーフ8の全面が計測対象となるようにした。
温度データの収集間隔は1秒とした。赤外線サーモグラフィ22の解析ツール(ライントレンド出力)上で、ワーフ8の幅方向に1本のラインを引き、そのライン上を通過するコークス3の温度を1秒おきに収集した。これにより、ワーフ8の幅方向の温度分布の変化を1秒ごとに定量的に知ることができる。この結果に基づき、散水量や散水角度等を最適化することも可能である。また、実際の操業では、ワーフ8を連続的に流れるコークス3の熱画像データを動画形式で見れば、温度が高いコークス3が流れ落ちる場所とタイミングを容易に特定でき、そのコークス3が落下した場所に二次散水を行えばよい。
計測例1および計測例2について、計測方法および計測結果を表1に示す。
この場合、ワーフ8への払い出しが開始されて1秒後に温度が高いコークス3が確認されたことから、ワーフ8における堆積層の下層部に高温コークスが残留していると判断される。
ワーフ8への二次散水は、計測例2の結果に基づき行わずに、ベルトコンベア10に切り出しした。 その結果、ベルトコンベア10の耐熱温度(180℃)を超えるコークス3が含まれていることが確認された。
下層に293℃よりも高い温度のコークス3が存在しているのであれば、温度を低めに設定することは有効である。しかし、表層に他と比べ、高い温度ではあるが、293℃未満のコークス3が存在しているだけの場合は、二次散水は、本来は不要である。コークス水分を高くするだけである。しかし、ワーフ8に払い出された後の計測では、温度が高いコークス3が上層に存在するか下層かを判断することはできない。したがって、二次散水が必要かどうかは判断ができない。
図2に示す炭化室1から押し出された赤熱コークス3を、コークス搭載ボックス5に受骸し、図7および図8に示す斜め上から散水する湿式消火設備7Bにて一次散水を行った。コークス3の質量は25トン、一次散水量は72トン一定とした。一次散水が完了した後、湿式消火設備7Bから消火貨車4をワーフ8の上に移動させ、コークス搭載ボックス5の払い出しゲート16(図1参照)を開いて、コークス3をワーフ8に払い出しした。
ワーフ8の後段のベルトコンベア10の耐熱温度は180℃で、ワーフ8での乾燥空冷処理時間は10分とした。この場合、式(1)により計算されるワーフ8での降下温度ΔTは113℃であるので、ワーフ8に払い出された直後の温度が293℃を超えるコークス3への二次散水が必要となる。
試験の条件および結果を表2に示す。比較例1では、一次散水で消火されたコークス3が、ワーフ8に払い出しが完了した直後に、堆積するコークス3の温度を、赤外線サーモグラフィ22で計測した。すなわち、計測例2の方法を採用した。前述したように、ワーフ8に払い出しが完了した直後の温度計測では、堆積するコークス3の表層しか温度を計測できず、実際には下層部に293℃を超えるコークス3が存在したとしても、それを検知することができない。293℃を超えるコークス3は、ベルトコンベア10を焼損させることが懸念される。そこで、200℃を超えるコークス3に向けて二次散水を行った。
三次散水の量は、1回当たり3kgで、散水回数は21回であった。したがって、三次散水の総量は63kg、二次散水と三次散水の散水量の総量は381kgとなる。三次散水を実施したということから、二次散水終了の時点で、十分な消火冷却が行われていなかったと判断される。三次散水での対応により問題はなかったが、ベルトコンベア10を焼損させてしまう懸念は残る。図2に示す三次散水装置24を通過した後に採取したコークス3の水分を、JIS M 8820に基づき計測した平均値は5.3質量%、目標の3質量%以下をクリアできなかった。
比較例2でも、ワーフ8に払い出された直後に、堆積するコークス3の温度を赤外線サーモグラフィ22で計測した。ワーフ8での乾燥空冷処理時間は10分とし、後段のベルトコンベア10の耐熱温度は180℃とした。比較例1と同様に、ワーフ8に払い出された直後に温度を計測し、180℃を超える場所に二次散水を行った。二次散水する箇所を、180℃を超える場所と、比較例1よりも低い温度とすることにより、ベルトコンベア10に切り出されるコークス3の温度が、確実にベルトコンベア10の耐熱温度以下になることを考慮した。
二次散水するための散水ホースは2箇所に設置され、同時に散水消火を行った。散水ホースからの水の流量は118kg/分であった。二次散水はワーフ8への払い出しが完了してから、約30秒後に開始した。二次散水を行った場所は7箇所であるが、各々の箇所への散水時間を合わせると206秒であった(散水ホースは2箇所に設置したが、各々の散水ホースでの散水時間は115秒と、91秒でトータル206秒)。散水量の総量は 405kgとなる。
2箇所に設置した散水ホースからの散水時間を合わせると60秒であった(各々の散水ホースでの散水時間は35秒と、25秒でトータル60秒)。この時間帯の散水量の総量は118kgで、二次散水総量は523kgとなる。
二次散水量をコークス質量で除した値は0.021となる。三次散水は0回で、二次散水と三次散水の総量は523kgとなる。図2に示す三次散水装置24を通過した後に採取したコークス3の水分を、JIS M 8820に基づき計測した平均値は6.5質量%であった。
実施例1では、一次散水で消火されたコークス3が、ワーフ8に払い出される間の温度を、赤外線サーモグラフィ22(アピステ製、FSV−2000)を用いて1/10秒おきに連続計測した。ワーフ8に払い出される際のコークス温度を、赤外線サーモグラフィ22にて計測し、293℃を超えるコークス3が存在する箇所に向けて二次散水を行った。
赤外線サーモグラフィ22の熱画像にて、293℃を超えるコークス3が2箇所で確認することができた。二次散水するための散水ホースは2箇所に設置され、同時に散水消火を行った。散水ホースからの水の流量は118kg/分であった。二次散水はワーフ8への払い出しが完了してから、約30秒後に開始した。
ワーフ8に払い出されるコークス3の総量が25トンであることから、二次散水量をコークス質量で除した値は0.017となる。その後、約7分間の乾燥空冷処理を行い、後段のベルトコンベア10への切り出しを開始した。
設備焼損を抑制する観点から、計測例1の方法は有効といえる。図2に示す三次散水装置24を通過した後に採取したコークス3の水分を、JIS M8820に基づき計測した平均値は2.1質量%で、目標の3質量%以下をクリアした。コークス水分を低減する観点からも、計測例1の方法は有効といえる。
また、周辺に存在する更に温度が低いコークス3へも散水することにもなる。このような温度が低い場所に二次散水が行われると、コークス3の温度が更に低下して、水の蒸発が進みにくくなる。コークス3は、二次散水された水を吸収するだけでなく、一次散水によりコークス3に取り込まれた水の蒸発が進行しにくくなり,コークス水分を増加させる原因となる。
逆に、下層に400℃を超える赤熱状態の未消火コークスが存在した場合でも、その上に温度が低いコークス3が堆積した場合は、二次散水が不要と判定されてしまうこともある。
また、実施例1は、散水が終了するタイミングが早かったことも重要である。早い段階で散水した方が、その後のワーフ8での乾燥空冷処理時間を長くとることができ、蒸発は進みやすくなる。早いタイミングで散水を行うことは、温度が高いコークス3に水をかけることである。
温度が高いコークス3であれば、散水により赤熱部の消火や高温部分は冷却されるが、散水後も保有する自己顕熱は大きく、一次散水や二次散水によって持ち込まれた水分の蒸発が進行する。100℃未満となっても、ワーフ8での乾燥空冷処理中およびベルトコンベア10での搬送中に、徐々に水分の蒸発が進行する。
それらに散水した場合、周囲にある100℃未満のコークス3にも水がかかることになる。100℃未満のコークス3に水がかかった場合、ほとんどのコークス3は、自己顕熱による蒸発が著しく進行しないレベルまで温度が低下してしまう。その結果、散水量が少なくても、水分が高くなりやすい。
したがって、ワーフ8に払い出しが終了した後、早い時期に二次散水を終了させることが重要と考えられる。そのためには、動画形式の赤外線サーモグラフィ22を用いて、ワーフ8に払い出される間のコークス温度を連続計測し、温度が高いコークス3が存在する場所を正確に把握することが有効である。
それを抑制するため、ワーフ8に払い出される間のコークス温度を連続計測し、温度が高いコークス3が消火貨車4のどの部分に残留しやすいかを把握した上で、一次散水時の散水量や散水量分布量の調整を行うことも有効である。
Claims (4)
- 炭化室から押し出された赤熱コークスを、消火貨車に牽引されるコークス搭載ボックスに受骸した後、消火設備内に移動し、前記消火設備内の散水配管から、前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲に散水処理することにより赤熱コークスを消火し、その後、消火コークスをワーフに払い出し、乾燥空冷処理する赤熱コークスの湿式消火方法において、
前記コークス搭載ボックスから前記ワーフに払い出されて移動する消火コークスの温度を、赤外線サーモグラフィを用いて、連続計測することを特徴とする赤熱コークスの湿式消火方法。 - 前記赤外線サーモグラフィでの連続計測において、所定の温度を超えるコークスの存在が確認されたワーフ内の箇所に向けて二次散水を行うことを特徴とする請求項1に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 二次散水の総量(トン)を、ワーフに払い出されるコークスの総量(トン)で除した値が、0.02以下であり、二次散水がワーフへの消火コークスの払い出しが終了してから、3分以内に終了することを特徴とする請求項2に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 二次散水が、コークス表面温度が400℃を超えるコークス、および前記ワーフの後段の搬送設備の耐熱温度より、”57.9×ln(t)−20.3”℃(tはワーフでの乾燥空冷処理時間(分))を加えた温度を超える温度のコークスに向けて行われることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
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